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特許7514777マイクロLEDを基板に組み付けるための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】マイクロLEDを基板に組み付けるための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/33 20060101AFI20240704BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240704BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240704BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20240704BHJP
【FI】
G09F9/33
G09F9/00 338
G09F9/30 338
H01L33/48
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021015246
(22)【出願日】2021-02-02
(65)【公開番号】P2021140144
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2024-02-02
(31)【優先権主張番号】16/805,911
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ヨンダ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】チョンピン・ル
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ソウラブ、レイチャウドフリ
【審査官】村上 遼太
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-536264(JP,A)
【文献】特表2019-530201(JP,A)
【文献】特表2019-527465(JP,A)
【文献】特開2019-140400(JP,A)
【文献】特開2019-138949(JP,A)
【文献】特開2003-162231(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0393069(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0189477(US,A1)
【文献】国際公開第2019/147589(WO,A1)
【文献】特開2021-110875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F9/00-9/46
H01L33/00
33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシーウェハから第1のクーポン基板にマイクロLEDチップを移送することであって、前記第1のクーポン基板は、前記マイクロLEDチップを一時的に保持する第1の軟質接着層を有する、ことと、
1つ以上の移送基板を介して、前記マイクロLEDチップのサブセットを前記第1のクーポン基板から、前記マイクロLEDチップの前記サブセットを一時的に保持する第2の軟質接着層を有する第2のクーポン基板に移送することと、
前記1つ以上の移送基板を介して、マイクロLEDチップのパターンを別の基板から前記第2のクーポン基板に移送して、前記マイクロLEDチップの前記サブセット内の空孔を充填することであって、前記1つ以上の移送基板は、前記マイクロLEDチップの前記サブセット及び前記マイクロLEDチップの前記パターンをグループとして保持し、解放するように個別に作動する複数の移送要素を有する、ことと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1のクーポン基板から前記第2のクーポン基板への前記マイクロLEDチップの前記サブセットは、前記第1のクーポン基板上の前記マイクロLEDチップのピッチと比較して、前記第2のクーポン基板上で増加したピッチを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のクーポン基板上で不良マイクロLEDを検出することを更に含み、前記マイクロLEDチップの前記サブセットは、前記不良マイクロLEDを除外するように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記不良マイクロLEDを検出することは、フォトルミネッセンス検査、エレクトロルミネッセンス検査、及び顕微鏡を用いた目視検査のうちの1つ以上を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記移送要素のそれぞれ1つは、前記移送要素の接着性及びヤング率のうちの少なくとも1つを変化させるそれぞれの加熱要素を介して起動させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の軟質接着層及び前記第2の軟質接着層は、前記移送要素のそれぞれ1つの保持力よりも小さく、かつ前記移送要素のそれぞれ1つの剥離力よりも大きい接着力を及ぼす、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記空孔は、前記第1のクーポン基板から前記第2のクーポン基板に1つ以上のマイクロLEDチップが移送されなかったことから生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記空孔は、前記第1のクーポン基板から前記第2のクーポン基板に不良マイクロLEDチップを意図的に移送しないことから生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2のクーポン基板から1つ以上の不良マイクロLEDチップを選択的に除去して、前記第2のクーポン基板上に前記空孔をもたらすことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記不良マイクロLEDチップを選択的に除去すること及び前記空孔を充填することは、前記クーポン基板上の全てのマイクロLEDチップが収率閾値を満たすまで繰り返される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記エピタキシーウェハから前記第1のクーポン基板に前記マイクロLEDチップを移送することは、
キャリア基板上に接着剤をコーティングすることと、
前記マイクロLEDチップが前記接着剤に接合されるように、前記エピタキシーウェハを移動して前記キャリア基板に接触させることと、
前記エピタキシーウェハを前記マイクロLEDチップから熱的又は光学的に解放することと、
前記マイクロLEDチップが前記第1の軟質接着層に付着するように、前記キャリア基板を移動して前記第1のクーポン基板に接触させることと、
前記マイクロLEDチップを前記キャリア基板から前記第1のクーポン基板に移送することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記エピタキシーウェハから前記キャリア基板に前記マイクロLEDチップを移送することは、前記キャリア基板及び前記エピタキシーウェハのうちの1つを介してレーザ光を当てることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記キャリア基板から前記第1のクーポン基板に前記マイクロLEDチップを移送することは、前記キャリア基板を反転させて前記第1のクーポン基板と向き合わせることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記キャリア基板から前記第1のクーポン基板に前記マイクロLEDチップを移送することは、紫外線、熱、又は機械的力を適用することのうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記キャリア基板上の前記マイクロLEDチップを試験することを更に含み、前記試験することは、前記マイクロLEDチップのエレクトロルミネッセンス測定及びフォトルミネッセンス測定のうちの1つ以上を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の軟質接着層及び前記第2の軟質接着層は、シリコーンゲル及びポリジメチルシロキサンのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のクーポン基板からバックプレーン基板に前記マイクロLEDチップの全てを移送してディスプレイを形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記バックプレーン基板は、薄膜トランジスタが上に形成されている基板を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記バックプレーン基板は、PCB基板又はシリコン基板を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記マイクロLEDチップは、1マイクロメートル~1ミリメートルの最大寸法を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記他の基板は、前記マイクロLEDチップのパターンを保持する第3の軟質接着層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
複数のマイクロLEDチップをグループとして保持し、解放するように個々に作動する複数の移送要素をそれぞれ有する1つ以上の移送基板と、
複数のマイクロLEDチップが形成されるエピタキシーウェハと、
それぞれの第1の軟質接着層及び第2の軟質接着層を含む、第1のクーポン基板及び第2のクーポン基板と、
前記1つ以上の移送基板に連結されたコントローラであって、
前記エピタキシーウェハから前記第1のクーポン基板の前記第1の軟質接着層に複数の前記マイクロLEDチップを移送し、
前記1つ以上の移送基板を介して、前記第1のクーポン基板から前記第2のクーポン基板の前記第2の軟質接着層に前記複数のマイクロLEDチップのサブセットを移送し、
前記1つ以上の移送基板を介して、別の基板から前記第2のクーポン基板にマイクロLEDチップのパターンを移送して、前記マイクロLEDチップのサブセット内の空孔を充填するように動作可能である、コントローラと、を備える、システム。
【請求項23】
ディスプレイのバックプレーン基板を更に備え、前記コントローラは、前記第2のクーポン基板から前記バックプレーン基板に前記マイクロLEDチップの全てを移送して、前記ディスプレイを形成するように更に動作可能である、請求項22に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイクロLEDを基板に組み付けるための方法及びシステムを対象とする。一実施形態では、マイクロLEDチップは、エピタキシーウェハから第1のクーポン基板に移送される。第1のクーポン基板は、マイクロLEDチップを一時的に保持する、第1の軟質接着層を有する。マイクロLEDチップのサブセットは、第1の移送基板を介して、第1のクーポン基板から、マイクロLEDチップのサブセットを一時的に保持する、第2の軟質接着層を有する第2のクーポン基板に移送される。マイクロLEDチップのパターンは、第2の移送基板を介して、別の基板から第2のクーポン基板に移送されて、マイクロLEDチップのサブセット内の空孔を充填する。第1の移送基板及び第2の移送基板は、複数の微小物体を同時に保持し、解放するように動作可能である。
【0002】
様々な実施形態のこれら及び他の特徴及び態様は、以下の詳細な考察及び添付の図面を考慮して理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0003】
以下の考察は、以下の図を参照するが、同じ参照番号は、多数の図において類似の/同じ構成要素を識別するために使用されてもよい。図面は必ずしも縮尺どおりではない。
【0004】
図1】例示的な実施形態によるアセンブリプロセスを示すブロック図である。
図2】例示的な実施形態によるアセンブリプロセスを示すブロック図である。
【0005】
図3】例示的な実施形態による装置及びシステムのブロック図である。
【0006】
図4】例示的な実施形態による高次のアセンブリプロセスを示すブロック図である。
【0007】
図5図4に示すプロセスの詳細な処理工程を示すブロック図である。
図6図4に示すプロセスの詳細な処理工程を示すブロック図である。
図7図4に示すプロセスの詳細な処理工程を示すブロック図である。
【0008】
図8】例示的な実施形態による方法を示すフロー図である。
図9】例示的な実施形態による方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、個々の微小物体の高度な位置合わせを維持しつつ、ドナー基板から別の基板に多数の微小物体(例えば、粒子、チップレット、ミニ/マイクロLEDダイ)を並行して移送するためのシステム及び方法に関する。この方法及びシステムにより、移送基板から微小物体を選択的に移送し、微小物体を宛先、つまりターゲット基板に選択的に配置することが可能になる。この方法及びシステムは、マイクロLEDディスプレイ及び類似のデバイスを組み立てるために使用することができる。
【0010】
マイクロLEDは、より薄い、より明るい、より軽い、低電力ディスプレイとなる可能性があるために、次世代ディスプレイ技術として登場している。マイクロLEDディスプレイは、それぞれ画素を形成する、微小LEDのアレイで作製される。OLEDディスプレイ及びマイクロLEDディスプレイの両方は、従来のLCDシステムと比較して、大幅に低減されたエネルギー要件を提供する。OLEDとは異なり、マイクロLEDは、従来のGaN LED技術に基づくものであり、これは、OLEDが生成するものよりも高い総輝度のみならず、単位出力発光に関してより高い効率を提供する。これはまた、OLEDのより短い寿命に悩まされない。
【0011】
マイクロLEDを利用する単一の4Kテレビは、次に組み立てられる必要がある約2500万の小型LEDサブピクセルを有する。チップレットの大量移送は、マイクロLED製造に使用され得る1つの技術である。大量移送技術に依存するディスプレイアセンブリプロセスは、マイクロLED製造プロセスにおけるボトルネックのうちの1つである。ディスプレイは、通常、単一のエピタキシーウェハが達成し得るよりも高い画素収率を必要とする。したがって、アセンブリ技術は、機能しないLEDがディスプレイ基板に移送されることを回避する方法を提供するべきである。例えば、ウェハ及びドナーキャリア上の不良マイクロLEDは、大量移送プロセス中に効率的な方法で除去され、正常なものと交換され得、低製造コストで全体的な収率向上をもたらす。
【0012】
本開示では、このような種類の選択的移送ヘッドを活用して、効率的な方法で高画素収率のマイクロLEDディスプレイを組み立てることができる、大量移送方法及びシステムについて説明する。このシステム及び方法は、Known Good Die(KGD)チップ移送及び大量移送プロセス中の並行ピクセル修理をサポートする。
【0013】
要望に応じて任意のパターンでチップレットを選択的に移送することが可能であることは、マイクロLEDディスプレイ製造のために効果的な移送プロセス、画素修理、孔/空孔の再充填を容易にするのに有用であり、高いプロセス収率をもたらすであろう。エラストマースタンプは、この種類の用途のための微小スケールのLEDチップを決定的に移送するために使用されてきた。しかしながら、エラストマースタンプは、固定パターンを有し、チップレットの任意のパターンを移送することができない。必然的に、チップレットの一部のサブセットは不良になり、したがって、そのようなスタンプを使用してそれらのいくつかの選択を置き換えることは困難になる。
【0014】
図1及び図2では、例示的な実施形態によるデバイス、システム、及び方法を使用して達成することができるアセンブリプロセスの例を示す。図1では、基板100上に成長又は配置した可能性があるチップレット101のアレイを含むドナーウェハ/基板100が示されている。アレイ101内の陰影付きチップレットは不良であると識別されており、チップレットがターゲット基板102に移送されると、チップレットアレイのサブセット101a、すなわち、陰影付けられていない良好なチップレットのみが移送される。これは、特定されると、ドナー基板100からサブセット101aのみを選択的にピックアップすることができる、図2に示すような移送基板202によって達成され得る。図2に示されるように、移送基板202はその後、(例えば、異なるドナー基板から)チップレット200の第2のセットをピックアップする。セット200内のチップレットの位置は、第1のドナー基板100上の不良チップレットの位置に対応する。移送基板202は、このセット200をターゲット基板102に移動させ、結果として、ターゲット基板102上に位置する動作チップレットの完全なセット201が得られる。
【0015】
1組の移送要素(例えば、移送画素)を有する移送基板は、微小物体のサブセットを選択的に保持することができる。したがって、全ての移送要素がサブセットよりも大きい微小物体のアレイと接触している場合であっても、サブセットのみが接着及び移送され、サブセットの外側の物体は、取り残されるか、又はさもなければ影響を受けない。同様に、移送要素の全てが微小物体を現在保持していても、サブセットのみがターゲットに移送されるように、移送基板は、基板に現在取り付けられている微小物体のサブセットを選択的に解放することができ得る。このプロセスは、物体の選択的な保持又は解放に影響を及ぼす恒久的な結合が必要とされないように、反復可能かつ可逆的である。
【0016】
図3の側面図は、例示的な実施形態による装置300の詳細を示す。装置は、2つ以上の移送要素304を有する移送基板302を含む。移送要素304は、剛性を変化させるために選択的に作製することができ、これは、要素が作製される材料のヤング率として表すことができる。ヤング率は、線状弾性レジームの材料におけるひずみ(比例変形)で割った応力(単位面積当たりの力)の尺度である。一般に、より高いヤング率(応力σに対するより低いひずみ)を有する材料は、より低いヤング率(同じσに対するより高いひずみ)を有する材料よりも剛性である。また、材料の動的性能も考慮する貯蔵弾性率などの材料の剛性を表すために他の尺度を使用してもよい。部品の性能を定義する際に機能的に同等であり得るばね定数などの部品の剛性を表すためにいくつかの尺度を使用してもよい。剛性は定義されるけれども、移送要素304は、以下に記載されるようにデバイスの移送に利用することができる温度に応じて、剛性に変化がある。
【0017】
移送要素304のそれぞれは、より低い温度で6MPaを超えるより高いヤング率、及びより高い温度で1MPa未満のより低いヤング率を有する接着要素306を含む。移送要素304のそれぞれはまた、例えば入力310を介して、入力に応じて接着要素306の温度を変化させるように動作可能な熱要素308を含む。コントローラ312は、入力310を熱要素308に提供するように結合され、それによって、移送要素304のサブセットが物体314を選択的にピックアップし、保持し、(任意選択的に)物体314を移送基板302から解放する。具体的には、物体314は、より低い温度で移送要素304に固着しないが、より高い温度で固着する。接着の信頼性を高めるために、移送要素は、移送基板302から物体314を引き離すことを試みる前に冷却されてもよい。温度の変化は、粘着性(tackiness)、粘着性(stickiness)、多孔性、流体含有量、密度など物体314の選択的接着及び解放を支援し得る接着要素306の他の特性に影響を及ぼし得ることに留意されたい。
【0018】
装置300は、移送基板302からターゲット基板316に微小物体(例えば、1μm~1mm)を移送するために使用されるシステムである微小移送システム319の一部であってよい。接着要素306は、ステアリルアクリレート系(SA)を含有するマルチポリマーで形成されてもよい。そのような場合、より高い温度とより低い温度との間の差は、接着要素306の粘着性を調節するために20℃未満(又は他の場合では50℃未満)であってもよく、これにより、例えば、より高い温度で1MPa未満からより高い温度で6MPa超えまで、表面接着とヤング率に顕著な違いがある。システムなどの中のコントローラ312は、本明細書に記載されるように、物体の移送を容易にするために、基板間の相対運動を誘導するアクチュエータに結合されてもよい。
【0019】
熱要素308は、加熱要素及び冷却要素の一方又は両方を含んでもよい。入力310は、電気信号及び/又はレーザ光を含んでもよい。入力310は、移送要素304の総数よりもコントローラ312に進むラインが少ないように(例えば、マトリックス回路を使用して)構成されてもよい。移送要素304は、接着要素306と移送基板302との間に断熱材309を更に含んでもよい。断熱材309は、基板302への熱伝達を防止するのに役立ち、それによって接着要素306における温度変化に影響を及ぼし、応答時間を減少させるために必要なエネルギーの量を減少させる。
【0020】
一般に、移送要素304は、温度に応じてコンプライアンスを調節する(例えば、急な剛性から軟質への転移を有する)ことができる中間移送表面を形成する。このような表面を使用して、制御された及び選択可能な方法で微小物体のグループをピックアップ及び解放することができる。各移送要素304は、1マイクロメートル以上~数百マイクロメートルの横方向寸法Wを有して、同様の寸法のマイクロオブジェクトをピックアップし得る。各移送要素304は、1マイクロメートル未満~数百マイクロメートルの総厚さTを有し得る。移送アレイのピッチは、数マイクロメートル~数ミリメートルで変動し得る。いくつかの実施形態では、熱要素308及び絶縁層309は、互いに物理的に分離されていない連続層である。したがって、移送要素「画素」は、加熱/冷却要素が個別にアドレス指定され、制御され得る領域である。基板302材料としては、ガラス、石英、シリコン、ポリマー、及び炭化ケイ素(SiC)が挙げられ得るが、これらに限定されない。基板302は、数十マイクロメートル~数ミリメートルの厚さ範囲、及び数ミリメートル~1メートルの横方向寸法を有してもよい。
【0021】
上記のように、移送基板302は、マイクロコンポーネントからデバイスを構築するために使用される自動システムの一部であり得る。例えば、マイクロLEDは、移送基板302を使用してディスプレイへと組み立てられ得る。コントローラ312(複数のプロセッサ及び装置を含み得る)を使用して他のデバイスを制御し、この自動アセンブリを実行することができる。例として、微小物体の反転、接合、選択的除去、及び追加などウェハ322上での動作を実行することができるロボットアーム320及びコンベヤ324を示す。マイクロデバイスアセンブリのためのこれらのデバイス及び他の自動デバイスの構成及び動作は、当該技術分野において十分に確立されている。
【0022】
図3に示す移送基板302の構造には、多くの可能な変形例が存在する。また、移送要素に使用され得る異なる材料が存在する。これらの代替実施形態のより完全な説明は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、2019年11月12日に出願された同一所有者の米国特許出願第16/681,215号に示され、記載されている。これらの実施形態の多くは、以下により詳細に記載するように、マイクロLEDデバイスの製造に適用可能であり得る。
【0023】
図4では、図は、例示的な実施形態によるマイクロLEDデバイス(例えば、ディスプレイ)の製造プロセスの高次の工程を示す。第1の工程400は、チップが製造されたエピタキシーウェハから移送基板にマイクロLEDチップ(の全て又はサブセット、例えばKGD)を移送することを含む。移送基板は、チップを一時的に保持するための接着面を有する。
【0024】
移送基板からチップのサブセットを選択的に移送することにより、高収率クーポンが生成される(401)。これは、(1)クーポン基板からチップのサブセットを選択的に除去すること、(2)移送基板又は別のクーポン基板からのチップで空孔を充填することの2つの活動のうちの少なくとも1つを介してクーポン画素を修理することを含み得る。工程401は、クーポンの画素収率が、例えば、KGP閾値の99.9999%などある要件を達成するまで繰り返され得る。次いで、チップは、クーポン基板から、バックプレーンに電気的に相互接続される最終基板に移送される(402)。
【0025】
図5では、図は、図4に示す工程400を含む、より詳細なプロセスを示す。これらのプロセスの一部は任意であってもよく、プロセス工程の完全なリストは、例示の目的で提供されるものであり、限定するものではない。複数のマイクロLEDチップ502を含むエピタキシーウェハ500が形成される(520)。ウェハ500上の陰影付き矩形によって示すように、チップ502の一部は、例えば、目視検査(例えば、顕微鏡)、エレクトロルミネッセンス測定、及び/又はフォトルミネッセンス測定によって不良が判定され得る。マイクロLEDチップ502の全て又はサブセットは、(これらが製造される)エピタキシーウェハ500から、接着剤コーティング506を有するキャリア基板504(本明細書ではキャリアウェハとも称する)へと移送される(521)。一実施形態では、この移送は、エピタキシーウェハ500を反転させ、キャリア基板504の接着剤コーティング506に押し付けることを含む。エピタキシーウェハ500は、次いで、レーザを使用して、例えば、エピタキシーウェハ500及び/又はキャリア基板504を通してレーザ光を当てることによって、解放される(工程521に示す)。
【0026】
接着剤コーティング506は、紫外線(UV)剥離性接着剤及び熱剥離性接着剤を含むが、これらに限定されない。これらの場合、接着剤は、加熱又はUV照明で処理されたときに接着性を失う。522に示すように、キャリア基板504は反転させられ、チップ502を保持して修理プロセスを容易にする、軽度の接着力を有する基板であるクーポン基板508と接触するように配置される。クーポン基板508(ガラス、シリコン、石英などであり得る)は、PDMS及び/又はシリコーンゲルなど材料の少なくとも軟質接着層510でコーティングされる。軟質接着層510はまた、軽度接着層及び/又は弱接着層と称し得る。523に見られるように、キャリア基板504は熱剥離されている。
【0027】
一般に、軟質接着層510は、チップ502を定位置に保持するのに十分な接着力を有するが、図3の装置300に示すような移送基板302を使用して、チップを選択的に除去することを可能にする。例えば、1~9MPaの引張強度を有する材料を、この除去層及び本明細書に記載の他の軟質接着層に使用することができる。軟質接着材料510に選択される極限引張強度は、保持状態及び解放状態にある移送要素の引張強度に依存し得る。一般に、軟質接着層510によって及ぼされる接着力は、(移送要素を保持状態にするために信号が印加されるときには)移送要素の保持力未満であり、(移送要素を解放状態にするために信号が印加されるときには)移送要素の解放力未満である。例えば、移送要素の解放/保持ヤング率が1MPa~6MPaの範囲である場合、軟質接着層510のヤング率は、3.5MPa前後であるように選択され得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、図4に示す動作は、工程524に見られるように、アレイ内のチップ502のピッチを調整するプロセスを更に含んでよい。これは、残りのチップが新しいピッチ仕様を満たすように、チップのサブセットをクーポン基板508から除去することを含み得る。あるいは、図3に示すように、チップ502のサブセットは、第2のクーポン基板512に移送され得る。第2のクーポン基板512は、材料層510に類似の特性を有する材料層514を有する。移送プロセス、例えば、あるクーポン基板508から第2のクーポン基板512へとチップ502のサブセットを除去することは、図3の装置300に示すような移送基板302を使用して達成され得る。
【0029】
図3では、故障/不良マイクロLED502が第2のクーポン基板512に移送されていることを示すことに留意されたい。他の実施形態では、第1のクーポン基板508から第2のクーポン基板512への移送は、任意の不良マイクロLEDを除外してよい。これは、移送されたマイクロLED502のピッチの変化の有無によって達成され得る。不良マイクロLEDが第2のクーポン基板512への移送から除外される場合であっても、以下に記載するように、第2のクーポン基板512に対する更なる追加/除外を不可能にするものではない。
【0030】
図6では、図は、図4に示す工程401を含む、より詳細なプロセスを示す。このプロセスは第2のクーポン基板512上で実施され得るが、第1のクーポン基板508を使用して示す。一般に、工程600によって示すように、不良チップのサブセット(例えば、図5に示す陰影付きチップ502)が識別され、移送基板302を使用してクーポン基板508から持ち上げられる。この技術はまた、誤った位置に配置されるか、又は図5に示すピッチ調整プロセスにおいて除去されなかったチップを除去するために使用されてよい。
【0031】
例えば、適切に配置されたが、不良チップが配置された場合など、クーポン基板508からのチップ502のサブセットの除去は、空孔を形成し得る。これらの空孔は、工程601に示すように、新たなチップ600で充填されて、高収率クーポンを形成する。これは、移送基板302を使用して、別のクーポン又は類似のドナー基板(例えば、PDMS、シリコーンゲルなどでコーティングされるガラス、シリコン、石英などの基板)からチップ600を選択的に除去することを含み得る。除去されたチップ600のパターン(移送基板302の移送要素304に適切な起動信号を印加することによって設定される)は、クーポン基板508上の空孔のパターンに対応し得る。次いで、除去されたチップ600は、移送基板302によってクーポン基板508上に配置され、次いで、これらは、対応する移送要素304への信号の選択的印加(又は除去)によって解放される。
【0032】
いくつかの実施形態では、クーポン基板508に必要なチップ600よりも多くのチップ600が、移送基板302によってドナー基板から偶発的に又は意図的に除去される場合、空孔を充填するために必要なチップ600のみが選択的に解放され得、その一方、他のチップは移送基板302に取り付けられたままである。これは、移送されるべきではないチップが移送基板302上に保持され、その一方、移送されるべきチップは、影響を受ける搬送要素304に異なる信号を送信することによって解放されるように、これらの移送要素304への信号の選択的な印加/除去によって達成することができる。これが生じた後、新しいチップ600を、古いチップ600と共にクーポン基板208上で試験して、クーポン収率が確実に十分に高いようにし得る。
【0033】
図7では、図は、図4に示す工程402を含む、より詳細なプロセスを示す。工程710に見られるように、図6の高収率画素クーポン基板508(代替的に高収率クーポン基板512であり得る)が反転され、次いでマイクロLEDチップ502は、ディスプレイアセンブリの一部であるバックプレーン基板700と位置合わせされ、これに押し付けられる。バックプレーン基板700は、マイクロLEDチップ502上の対応する電極と接続する表面電極702を含む。表面電極702は、他の部品(例えば、電気トレース、受動的又は能動的電気部品、例えば、抵抗器、コンデンサ、薄膜トランジスタなど)に連結されている。これらの他の部品(図示せず)は、電極702と同じ表面及び/若しくは別の表面(例えば、対向面)上にあり得る、並びに/又はバックプレーン基板700の層内の内部に埋め込まれ得る。
【0034】
一実施形態では、このプロセスは、マイクロLEDチップ502が、はんだ付け、インジウム、低融点融合金(low temperature metaling alloys)などを使用して、バックプレーン700上の電極702に接合される永久接合プロセス(工程710の一部として実行され得る)を更に含む。この接合中、チップは、クーポン基板508とバックプレーン700との間に挟まれてよい。いくつかの実施形態では、接合の形成後、クーポン基板508は除去(例えば、剥離)され得、工程711に示すように、マイクロLEDチップをバックプレーン上に固定し、かつバックプレーンに電気的に接続したままにする。工程712に示すようないくつかの実施形態では、前面カバー704は、バックプレーン700及びマイクロLEDチップ502の積層体の上に配置され得る。
【0035】
図8において、フロー図は、例示的な実施形態による方法を示す。この方法は、エピタキシーウェハから第1のクーポン基板にマイクロLEDチップを移送すること(800)を含む。第1のクーポン基板は、マイクロLEDチップを一時的に保持する第1の軟質接着層を有する。マイクロLEDチップのサブセットは、第1の移送基板を使用して、第1のクーポン基板から、マイクロLEDチップのサブセットを一時的に保持する第2の軟質接着層を有する第2のクーポン基板に移送される(801)。マイクロLEDチップのパターンは、第2の移送基板を介して別の基板から第2のクーポン基板に移送されて、マイクロLEDチップのサブセット内の空孔を充填する(802)。第2の移送基板は、第1移送基板と同じであり得ることに留意されたい。空孔は、例えば、1つ以上のマイクロLEDが、第1の移送基板によってピックアップされなかった、又は第1の移送基板から解放されなかったなど、第1のクーポンから第2のクーポンへの移送の失敗に起因するものであり得る。空孔はまた、第2のクーポン基板から最初に選択的に除去された不良マイクロLEDに起因するものであり得る。第1の移送基板及び第2の移送基板は、複数の微小物体を同時に保持し、解放するように動作可能であり、同じ移送基板であり得る。
【0036】
図9では、フロー図は、例示的な実施形態による、キャリア基板から第1のクーポン基板にマイクロLEDチップを移送する方法800を示す。この方法は、キャリア基板に接着剤をコーティングすること(900)を含む。エピタキシーウェハは、マイクロLEDチップが接着剤に接合されるように移動されて(例えば、反転させる)、キャリア基板に接触する(901)。エピタキシー層の基板は、例えば、キャリア基板及びエピタキシーウェハのうちの1つを介してレーザ光を当てることによって、マイクロLEDチップから熱的又は光学的に解放される(902)。キャリア基板は、マイクロLEDチップが第1の軟質接着層に付着するように移動されて、第1のクーポン基板に接触する(903)。マイクロLEDチップはキャリア基板から第1のクーポン基板に移送される(904)。移送(904)は、紫外線、熱、又は機械的力(例えば、衝撃及び/又は振動)の適用によって生じ得る。
【0037】
特段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される特徴サイズ、量及び物理的特性を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、それと異なる指示がない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本明細書に開示される教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。端点による数値範囲の使用は、その範囲内の全ての数(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)及びその範囲内の任意の範囲を含む。
【0038】
上記の様々な実施形態は、特定の結果を提供するために相互作用する回路、ファームウェア、及び/又はソフトウェアモジュールを使用して実装され得る。当業者は、当該技術分野において一般的に公知である知識を使用して、モジュール式レベル又は全体でのいずれかで、こうして記載された機能を容易に実装することができる。例えば、本明細書に例解されるフローチャート及び制御図は、プロセッサにより実行されるためのコンピュータ可読命令/コードを作成するために使用されてもよい。こうした命令は、非一時的コンピュータ可読媒体上に格納され、当該技術分野において既知であるように実行するためにプロセッサに転送されてもよい。上記の構造及び手順は、上述の機能を提供するために使用され得る実施形態の代表的な例に過ぎない。
【0039】
例示的な実施形態の前述の説明は、図解及び説明の目的のために提示される。これは、網羅的であること、又は実施形態を、開示される形態に厳密に限定することを意図するものではない。上記の教示に照らして、多くの修正及び変形が可能である。開示される実施形態の任意の又は全ての特徴は、個別に、又は任意の組み合わせで適用することができ、限定することを意図するものではなく、純粋に例示である。本発明の範囲は、この「発明を実施するための形態」に限定されるものではなく、むしろ本明細書に添付の「特許請求の範囲」によって決定されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9