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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】防音壁
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
E01F8/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021095366
(22)【出願日】2021-06-07
(65)【公開番号】P2022000566
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2020104747
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】000192615
【氏名又は名称】日鉄神鋼建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】山極 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆博
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-001727(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/077959(JP,A1)
【文献】実開昭48-014161(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第01760210(EP,A2)
【文献】特開昭57-196298(JP,A)
【文献】特開2013-087433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 3/00- 8/02
G10K 11/00-13/00
E04B 1/62- 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源側と受音側とを仕切るように立設される本体壁と、
前記本体壁の上端に設置される吸音パネルと、
を備え、
前記吸音パネルは、
多数の貫通孔が設けられた音源側の第1多孔板と、
多数の貫通孔が設けられた受音側の第2多孔板と、
前記第1多孔板の上端と前記第2多孔板の上端とを接続する上枠と、
を有し、
前記吸音パネルは、音源側と受音側とを結ぶ方向で対向する多孔板同士の間が中空とされ
前記吸音パネルの内部の空気層が、閉塞した仕切板で上下方向に分割されており、
前記吸音パネルのうちの前記仕切板の上側部分を上側吸音パネル部、下側部分を下側吸音パネル部としたとき、
前記第1多孔板および前記第2多孔板の前記下側吸音パネル部の開口率と、前記第1多孔板および前記第2多孔板の前記上側吸音パネル部の開口率とが異なる、
防音壁。
【請求項2】
音源側と受音側とを仕切るように立設される本体壁と、
前記本体壁の上端に設置される吸音パネルと、
を備え、
前記吸音パネルは、
多数の貫通孔が設けられた音源側の第1多孔板と、
多数の貫通孔が設けられた受音側の第2多孔板と、
前記第1多孔板の上端と前記第2多孔板の上端とを接続する上枠と、
を有し、
前記吸音パネルは、音源側と受音側とを結ぶ方向で対向する多孔板同士の間が中空とされ
前記吸音パネルの内部の空気層が、閉塞した仕切板で上下方向に分割されており、
前記吸音パネルのうちの前記仕切板の上側部分を上側吸音パネル部、下側部分を下側吸音パネル部としたとき、
前記下側吸音パネル部の上下方向の長さと、前記上側吸音パネル部の上下方向の長さとが異なる、
防音壁。
【請求項3】
音源側と受音側とを仕切るように立設される本体壁と、
前記本体壁の上端に設置される吸音パネルと、
を備え、
前記吸音パネルは、
多数の貫通孔が設けられた音源側の第1多孔板と、
多数の貫通孔が設けられた受音側の第2多孔板と、
前記第1多孔板の上端と前記第2多孔板の上端とを接続する上枠と、
を有し、
前記吸音パネルは、音源側と受音側とを結ぶ方向で対向する多孔板同士の間が中空とされ
前記第1多孔板の前記音源側の面に沿って、当該第1多孔板の厚みより厚く、当該第1多孔板の開口率より大きい開口率を有する多孔板からなる第1保護部材が併設され、
前記第2多孔板の前記受音側の面に沿って、当該第2多孔板の厚みより厚く、当該第2多孔板の開口率より大きい開口率を有する多孔板からなる第2保護部材が併設されている、
防音壁。
【請求項4】
請求項1または2に記載の防音壁において、
前記第1多孔板および前記第2多孔板の前記下側吸音パネル部の開口率が、前記第1多孔板および前記第2多孔板の前記上側吸音パネル部の開口率よりも小さくされている、
防音壁。
【請求項5】
請求項1、2、4のいずれかに記載の防音壁において、
前記下側吸音パネル部の上下方向の長さが、前記上側吸音パネル部の上下方向の長さよりも長くされている、
防音壁。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の防音壁において、
前記吸音パネルの内部の空気層が、多数の貫通孔が設けられた第3多孔板で前記吸音パネルの厚み方向において分割されている、
防音壁。
【請求項7】
請求項1、2、4、5のいずれかに記載の防音壁において、
前記下側吸音パネル部の内部の空気層が、多数の貫通孔が設けられた第3多孔板で前記吸音パネルの厚み方向において分割されている、
防音壁。
【請求項8】
請求項1、2、4、5のいずれかに記載の防音壁において、
前記第1多孔板および前記第2多孔板の、音源側と受音側とを結ぶ方向で対向する部分の開口率が等しくされている、
防音壁。
【請求項9】
請求項6または7に記載の防音壁において、
前記第1多孔板、前記第2多孔板、および前記第3多孔板の、音源側と受音側とを結ぶ方向で対向する部分の開口率が等しくされている、
防音壁。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の防音壁において、
前記上枠は、下端部が開口し且つ上下方向の断面がコの字、または下端部が閉塞し且つ上下方向の断面がロの字の、上下方向において厚みを有する中空構造とされている、
防音壁。
【請求項11】
請求項10に記載の防音壁において、
前記上枠は、下端部が閉塞し且つ上下方向の断面がロの字の、上下方向において厚みを有する中空構造とされている、
防音壁。
【請求項12】
請求項1、2、4、5、7、8のいずれかに記載の防音壁において、
前記第1多孔板の前記音源側の面に沿って、当該第1多孔板の厚みより厚く、当該第1多孔板の開口率より大きい開口率を有する多孔板からなる第1保護部材が併設され、
前記第2多孔板の前記受音側の面に沿って、当該第2多孔板の厚みより厚く、当該第2多孔板の開口率より大きい開口率を有する多孔板からなる第2保護部材が併設されている、
防音壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路などに敷設される防音壁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、例えば特許文献1、2、および非特許文献1に記載のものがある。特許文献1には、防音壁の上端にエッジ効果抑制型防音壁用パネルというパネルを設置することが記載されている。このエッジ効果抑制型防音壁用パネルは、繊維状物よりなる吸音材を通気性を有する保形布で包み込んで上方に向かって受音側及び音源側にそれぞれ傾斜する傾斜面を音源側及び受音側に有する、下端側の幅に対し上端側の幅が狭く、下端から上端に向かって進むにしたがって次第に幅が狭くなる断面楔形状に保形してパネル本体が構成され、このパネル本体を、通気孔を有する保護カバーで覆ったものである。繊維状物よりなる吸音材は、ポリエステルウール、撥水性グラスウールなどである。
【0003】
特許文献2には、最上段の防音パネルの上に次のような構成の吸音パネルを設置することが記載されている。吸音パネルは、一対の縦枠とこれら一対の縦枠の上下に渡しかけられる上枠及び下枠とこれら矩形に組み合わされた一対の縦枠、上枠及び下枠の音源側及び背面側に取り付けられる隔壁とを有してなりその内部に吸音空間を有する外枠体、並びに、この吸音空間に配置される吸音材を備える。吸音空間とその外方とに亘る音の出入りを可能にする音挿通孔を上記隔壁に多数設けてある。吸音材は例えばポリエステルウールである。
【0004】
非特許文献1には、一般的な遮音壁の上端部にハイシャットという消音装置が設置されることが記載されている。このハイシャットと呼ばれる消音装置は、アルミニウム繊維とエキスパンドメタルとを圧着加工した吸音材を備え、遮音壁よりもその外側へ張り出す形状とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5885221号公報
【文献】特許第6445183号公報
【文献】株式会社栗本鐵工所、“騒音・消音関連製品 遮音壁頂部設置型消音装置 ハイシャット”、[online]、[令和2年4月13日検索]、インターネット<URL:http://www.kurimoto.co.jp/product/item/s005.php>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載の消音装置は、遮音壁よりもその外側へ張り出す形状とされているため、設置場所によっては、その張り出し量の大きさゆえに、設置できない場合がある。一方、特許文献1に記載のエッジ効果抑制型防音壁用パネルや、特許文献2に記載の吸音パネルは、それぞれの下側部分と厚みがほぼ同じであるため、非特許文献1に記載の消音装置のように遮音壁よりもその外側へ張り出して設置できないという問題はない。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のエッジ効果抑制型防音壁用パネルや、特許文献2に記載の吸音パネルは、ポリエステルウールなどの吸音材が内部に配置された構成とされている。ポリエステルウールなどの吸音材は、廃棄、リサイクルの点で問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ポリエステルウールなどの吸音材が内部空間に配置されていない吸音パネルを上端部に有する防音壁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、音源側と受音側とを仕切るように立設される本体壁と、前記本体壁の上端に設置される吸音パネルと、を備える防音壁である。前記吸音パネルは、多数の貫通孔が設けられた音源側の第1多孔板と、多数の貫通孔が設けられた受音側の第2多孔板と、前記第1多孔板の上端と前記第2多孔板の上端とを接続する上枠と、を有し、音源側と受音側とを結ぶ方向で対向する多孔板同士の間が中空とされている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリエステルウールなどの吸音材が内部空間に配置されていない吸音パネルを上端部に有する防音壁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明の第1実施形態に係る防音壁の断面図である。
図1B】本発明の第2実施形態に係る防音壁の断面図である。
図1C】本発明の第3実施形態に係る防音壁の断面図である。
図1D】本発明の第4実施形態に係る防音壁の断面図である。
図2】比較例に係る防音壁の断面図である。
図3】騒音の解析条件を説明するための図であって、音源、防音壁、および観測点の位置関係を示す図である。
図4】騒音の解析結果を示すグラフである。
図5】騒音の解析結果を示すグラフである。
図6】騒音の解析結果を示すグラフである。
図7】騒音の解析結果を示すグラフである。
図8】実大の防音壁を用いてスピーカ試験を行った結果を示すグラフである。
図9】本発明の第5実施形態に係る防音壁の断面図である。
図10】本発明の第6実施形態に係る防音壁の断面図である。
図11】本発明の第7実施形態に係る防音壁の断面図である。
図12A】本発明の第8実施形態に係る防音壁の断面図である。
図12B】本発明の第9実施形態に係る防音壁の断面図である。
図12C】本発明の第10実施形態に係る防音壁の断面図である。
図13】騒音の解析結果を示すグラフである。
図14】騒音の解析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る防音壁100の断面図である。防音壁100は、例えば、高速道路に敷設されるものである。なお、鉄道、工場などにおいて防音壁100が用いられてもよい。以下の説明では、高速道路用の防音壁を想定して、防音壁100について説明する。
【0014】
図1Aに示すように、防音壁100は、音源側と受音側とを仕切るように立設される本体壁1と、本体壁1の上端に設置される吸音パネル2とを備える。音源側が高速道路側である。防音壁100は、高速道路の端に高速道路に沿って設置される。所定長さの複数の防音壁100が、高速道路に沿って並べて設置されることで、高速道路に沿って連続する壁が形成される。
【0015】
本体壁1は、中空の壁であってもよいし、中実の壁であってもよい。本体壁1の材質は、鉄、ステンレス、アルミニウム合金などの金属であってもよいし、コンクリートであってもよいし、さらには樹脂であってもよい。また、本体壁1が中空構造とされ、且つ本体壁1の音源側(高速道路側)の面を構成する部材1aが多数の貫通孔が設けられた多孔板とされることなどで、本体壁1が例えば樹脂やガラス繊維からなる吸音材を内包する吸音構造の壁とされてもよい。なお、図1Aには、受音側の部材1bだけでなく音源側の部材1aも貫通孔を有さない遮音構造の本体壁1が例示されている。
【0016】
吸音パネル2は、多数の貫通孔3aが設けられた音源側の第1多孔板3と、多数の貫通孔4aが設けられた受音側の第2多孔板4とを備える。第1多孔板3の上端と第2多孔板4の上端とは上枠5で接続される。第1多孔板3と第2多孔板4との間、すなわち音源側と受音側とを結ぶ方向で対向する多孔板同士の間は中空とされている。吸音パネル2の厚みは、本体壁1の厚みと同程度とされる。本体壁1の上端で且つ吸音パネル2の下端には下枠12が位置する。本体壁1が中実の壁である場合などにおいては、下枠12は省略される場合がある。吸音パネル2の材質は、鉄、ステンレス、アルミニウム合金などの金属であってもよいし、樹脂であってもよい。
【0017】
上記吸音パネル2には、ポリエステルウールなどの吸音材が使用されていないので、パネルの廃棄、リサイクルの点で優れている。
【0018】
音源側(高速道路側)の音源(自動車)から発生した音波は、一部は吸音パネル2の上方から受音側(沿線側)へ回り込み、一部は第1多孔板3の貫通孔3aから吸音パネル2の内部空間に入った後、第2多孔板4の貫通孔4aから出て受音側(沿線側)へ伝搬する。この両者が干渉することにより観測点での騒音が低減する。なお、多孔板3、4の開口率、および多孔板3、4の開口分布は、観測点での騒音がより良く低減するように調整される。多孔板の開口率とは、多孔板に設けられた各貫通孔の孔面積の総和を、貫通孔部分を含む多孔板の全体面積で除した(割った)値のことをいう。
【0019】
図1Bは、本発明の第2実施形態に係る防音壁101の断面図である。
【0020】
第2実施形態の防音壁101を構成する吸音パネル2は、閉塞した(貫通孔があけられていない)仕切板6で吸音パネル2の内部の空気層が上下方向に分割されている。吸音パネル2は、仕切板6の上側部分である上側吸音パネル部7と、仕切板6の下側部分である下側吸音パネル部8とで構成される。このように本実施形態の吸音パネル2は、内部の空気層が上下方向において2つに分割されたものとなっている。換言すれば、2段配置構造の吸音パネル2となっている。なお、吸音パネル2の内部の空気層が上下方向において複数の仕切板6で3つ以上に分割されてもよい。
【0021】
第1多孔板3は、仕切板6の上側部分と下側部分とで(上側吸音パネル部7と下側吸音パネル部8とで)別々の多孔板とされてもよいし、同じ1枚の多孔板とされてもよい。同様に、第2多孔板4は、仕切板6の上側部分と下側部分とで(上側吸音パネル部7と下側吸音パネル部8とで)別々の多孔板とされてもよいし、同じ1枚の多孔板とされてもよい。
【0022】
図1Cは、本発明の第3実施形態に係る防音壁102の断面図である。
【0023】
第3実施形態の防音壁102を構成する吸音パネル2は、多数の貫通孔9aが設けられた第3多孔板9で吸音パネル2の内部の空気層が吸音パネル2の厚み方向において分割されている。なお、ここでの吸音パネル2の厚み方向とは、防音壁102が鉛直方向に立設される場合における水平方向である。このように本実施形態の吸音パネル2は、内部の空気層がパネルの厚み方向において2つに分割されたものとなっている。換言すれば、パネルの厚み方向に2層配置構造の吸音パネル2となっている。なお、吸音パネル2の内部の空気層がパネルの厚み方向において複数の第3多孔板9で3つ以上に分割されてもよい。
【0024】
図1Dは、本発明の第4実施形態に係る防音壁103の断面図である。
【0025】
第4実施形態の防音壁103を構成する吸音パネル2は、第2実施形態における吸音パネル2の下側吸音パネル部8の内部の空気層が、多数の貫通孔9aが設けられた第3多孔板9で吸音パネル2の厚み方向において分割されているものである。このように本実施形態の吸音パネル2の下側吸音パネル部8は、内部の空気層がパネルの厚み方向において2つに分割されたものとなっている。換言すれば、パネルの厚み方向に2層配置構造の下側吸音パネル部8となっている。なお、下側吸音パネル部8の内部の空気層がパネルの厚み方向において複数の第3多孔板9で3つ以上に分割されてもよい。さらには、上側吸音パネル部7の内部の空気層がパネルの厚み方向において多孔板で複数の空気層に分割されてもよい。
【0026】
図3は、騒音の解析条件を説明するための図であって、音源、防音壁、および観測点の位置関係を示す図である。
【0027】
図3に示すように、騒音低減効果を比較する観測点は、防音壁100(各防音壁)の上端から2.5m離れ、且つ防音壁100(各防音壁)の上端から下方45°となる点とした。この点は、高架高速道路などにおける沿線測定点を代表する点である。また、音源(自動車)は、防音壁100(各防音壁)の上端から音源側に2.0m斜め下方離れた点とした。
【0028】
図2は、比較例に係る防音壁500の断面図である。防音壁500は、その上端部に吸音パネル2のような防音壁用パネルを有さない防音壁である。
【0029】
解析条件を同じとするために、比較例に係る防音壁500、および各実施形態の防音壁100~103の高さは全て同一とした。また、防音壁500、および防音壁100~103を構成する本体壁1は全て剛壁とした。剛壁とは、音を全て反射する壁面で構成された壁のことである。
【0030】
防音壁100~103を構成するその上端部の各吸音パネル2の仕様は、次のとおりとした。
【0031】
図1Aに示す第1実施形態の防音壁100について
吸音パネル2の高さ(上下方向の長さ):500mm、第1多孔板3および第2多孔板4の板厚:0.1mm、貫通孔3aおよび貫通孔4aの孔径:0.1mm、第1多孔板3および第2多孔板4の開口率:0.3%。
【0032】
図1Bに示す第2実施形態の防音壁101について
上側吸音パネル部7の高さ(上下方向の長さ):140mm、第1多孔板3および第2多孔板4の上側吸音パネル部7の板厚:0.1mm、第1多孔板3および第2多孔板4の上側吸音パネル部7の貫通孔3aおよび貫通孔4aの孔径:0.1mm、第1多孔板3および第2多孔板4の上側吸音パネル部7の開口率:0.5%。
下側吸音パネル部8の高さ(上下方向の長さ):310mm、第1多孔板3および第2多孔板4の下側吸音パネル部8の板厚:0.1mm、第1多孔板3および第2多孔板4の下側吸音パネル部8の貫通孔3aおよび貫通孔4aの孔径:0.1mm、第1多孔板3および第2多孔板4の下側吸音パネル部8の開口率:0.21%。
【0033】
図1Cに示す第3実施形態の防音壁102について
吸音パネル2の高さ(上下方向の長さ):450mm、第1多孔板3、第2多孔板4、および第3多孔板9の板厚:0.1mm、貫通孔3a、貫通孔4a、および貫通孔9aの孔径:0.1mm、第1多孔板3、第2多孔板4、および第3多孔板9の開口率:0.3%。
【0034】
図1Dに示す第4実施形態の防音壁103について
上側吸音パネル部7の高さ(上下方向の長さ):140mm、第1多孔板3および第2多孔板4の上側吸音パネル部7の板厚:0.1mm、第1多孔板3および第2多孔板4の上側吸音パネル部7の貫通孔3aおよび貫通孔4aの孔径:0.1mm、第1多孔板3および第2多孔板4の上側吸音パネル部7の開口率:0.5%。
下側吸音パネル部8の高さ(上下方向の長さ):310mm、第1多孔板3、第2多孔板4、および第3多孔板9の下側吸音パネル部8の板厚:0.1mm、第1多孔板3、第2多孔板4、および第3多孔板9の下側吸音パネル部8の貫通孔3a、貫通孔4a、および貫通孔9aの孔径:0.1mm、第1多孔板3、第2多孔板4、および第3多孔板9の下側吸音パネル部8の開口率:0.21%。
【0035】
図4図7は、図3に示す2次元断面を模擬した境界要素法による音響解析の結果に自動車騒音の重み付きを考慮した解析結果を示すグラフである。
【0036】
図4に示すグラフは、比較例の防音壁500、および第1実施形態の防音壁100の解析結果を示す。グラフの横軸は周波数(Hz)であり、縦軸は自動車騒音の重み付き音圧レベル(dB)である。なお、図4に示すグラフでの解析結果は1/3オクターブバンドの定周波数比フィルタを用いた分析によるものであり、グラフの横軸には1/3Oct.Band[Hz]と表記している。また、音圧レベルにはA特性による補正を施しており、グラフの縦軸にはSPL [dBA]と表記している(図5図7に示すグラフについても同様)。
【0037】
図4に示す解析結果より、第1実施形態の防音壁100によると、比較例の防音壁500の場合に比べて、全ての周波数帯域において騒音低減効果が得られることがわかる。なお、防音壁100を構成する吸音パネル2は、パネルの仕様で記載したように、その製作を容易とするため、第1多孔板3の孔径・開口率と第2多孔板4の孔径・開口率とが等しくされている。
【0038】
図5に示すグラフは、比較例の防音壁500、第1実施形態の防音壁100、および第2実施形態の防音壁101の解析結果を示す。一点鎖線と丸マーカーで解析結果を示す防音壁101においても、防音壁100と同じく、比較例の防音壁500の場合に比べて、全ての周波数帯域において騒音低減効果が得られた。
【0039】
防音壁101の場合、400Hz以上の高周波数帯域で騒音低減効果が特に高いことがわかる。ここで、防音壁101を構成する吸音パネル2は、第1多孔板3および第2多孔板4の下側吸音パネル部8の開口率と、第1多孔板3および第2多孔板4の上側吸音パネル部7の開口率とが異なる。このように、第2実施形態の防音壁101を構成する吸音パネル2は、第1実施形態の防音壁100と違い、上段部下段部で開口率が異なるパネルである。すなわち、上段部下段部で開口率が異なるパネルとされることで、高周波数帯域での騒音低減効果を向上させることができる。本実施形態では、パネルの仕様で記載したように、第1多孔板3および第2多孔板4の下側吸音パネル部8の開口率が、第1多孔板3および第2多孔板4の上側吸音パネル部7の開口率よりも小さくされている。
【0040】
なお、上記とは逆に、第1多孔板3および第2多孔板4の下側吸音パネル部8の開口率が、第1多孔板3および第2多孔板4の上側吸音パネル部7の開口率よりも大きくされてもよい。
【0041】
また、本実施形態の防音壁101を構成する吸音パネル2は、下側吸音パネル部8の上下方向の長さと、上側吸音パネル部7の上下方向の長さとが異なる。さらには、下側吸音パネル部8の上下方向の長さが、上側吸音パネル部7の上下方向の長さよりも長くされている。なお、下側吸音パネル部8の上下方向の長さと、上側吸音パネル部7の上下方向の長さとが等しくされてもよいし、下側吸音パネル部8の上下方向の長さが、上側吸音パネル部7の上下方向の長さよりも短くされてもよい。
【0042】
また、本実施形態の防音壁101を構成する吸音パネル2は、下側吸音パネル部8においても上側吸音パネル部7においても、それぞれにおいて、互いに対向する第1多孔板3の開口率と第2多孔板4の開口率とが等しくされている。すなわち、本実施形態の防音壁101を構成する吸音パネル2は、第1多孔板3および第2多孔板4の、音源側と受音側とを結ぶ方向(吸音パネルの厚み方向)で対向する部分の開口率が等しくされている。この構成によると、パネルの製作が容易というメリットに加えて、取付時に表裏を取り違えることによる性能低下を避けることができるというメリットがある。また、部品の種類の削減によるコストダウンを図ることができる。
【0043】
図6に示すグラフは、比較例の防音壁500、第1実施形態の防音壁100、および第3実施形態の防音壁102の解析結果を示す。一点鎖線と三角マーカーで解析結果を示す防音壁102においても、防音壁100と同じく、比較例の防音壁500の場合に比べて、全ての周波数帯域において騒音低減効果が得られた。
【0044】
防音壁102の場合、315Hz~630Hzの周波数帯域で防音壁100の場合よりも騒音低減効果が高いことがわかる。なお、防音壁102を構成する吸音パネル2は、パネルの仕様で記載したように、その製作を容易とするため、第1多孔板3、第2多孔板4、および第3多孔板9の孔径・開口率が等しくされている。
【0045】
図7に示すグラフは、比較例の防音壁500、第2実施形態の防音壁101、第3実施形態の防音壁102、および第4実施形態の防音壁103の解析結果を示す。点線と三角マーカーで解析結果を示す防音壁103においても、比較例の防音壁500の場合に比べて、全ての周波数帯域において騒音低減効果が得られた。防音壁103の騒音低減特性は、第2実施形態の防音壁101の騒音低減特性と同等である。防音壁103の騒音低減特性は、第2実施形態の防音壁101の騒音低減特性と比べて周波数による効果の大小が小さくなる(500Hz、800Hzなど)。
【0046】
なお、本実施形態の防音壁103を構成する吸音パネル2は、防音壁101を構成する吸音パネル2と同様、下側吸音パネル部8においても上側吸音パネル部7においても、それぞれにおいて、互いに対向する多孔板の開口率が等しくされている。すなわち、本実施形態の防音壁103を構成する吸音パネル2は、第1多孔板3、第2多孔板4、および第3多孔板9の、音源側と受音側とを結ぶ方向(吸音パネルの厚み方向)で対向する部分の開口率が等しくされている。この構成によると、パネルの製作が容易というメリットに加えて、取付時に表裏を取り違えることによる性能低下を避けることができるというメリットがある。また、部品の種類の削減によるコストダウンを図ることができる。
【0047】
図8は、第4実施形態の実大の防音壁103を用いて無響室内でスピーカ試験を行った結果を示すグラフである。グラフの横軸は周波数(1/3oct、Hz)であり、縦軸は自動車騒音の重み付き音圧レベル(dB)である。グラフ中に点線と三角マーカーで示す実験結果は、実大の防音壁103の実験結果であり、実線と丸マーカーで示す実験結果は、非特許文献1に記載されている外側へ張り出すタイプの消音装置が上端部に設置された防音壁(従来技術)の実験結果である。
【0048】
図8に示す実験結果より、第4実施形態の防音壁103によると、外側へ張り出すタイプの消音装置が上端部に設置された従来技術の防音壁と同等の騒音低減効果が得られることがわかる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【0050】
例えば、上述の本発明の実施の形態と異なる、別の実施の形態として、図9のものを示す。図9に示したものは、本発明の第5実施形態に係る防音壁104の断面図である。この本発明の第5実施形態に係る防音壁104の構造は、本発明の第1実施形態に係る防音壁100の構造とほぼ共通している。ただし、防音壁104には、防音壁100の構造に加えて、第1多孔板3の音源側(高速道路側)の面に沿って、多数の貫通孔10aが設けられた多孔板からなる保護部材10(第1保護部材)が併設されている。さらに防音壁104には、防音壁100の構造に加えて、第2多孔板4の受音側の面に沿って、多数の貫通孔11aが設けられた多孔板からなる保護部材11(第2保護部材)が併設されている。
【0051】
この防音壁104での上枠5は、その上枠5と第1多孔板3の上端との接続部分、また上枠5と第2多孔板4の上端の接続部分より、それぞれ幅方向に迫り出している。そして本体壁1の上端に位置し、吸音パネル2の下端に位置する下枠12は、その下枠12と第1多孔板3の下端との接続部分、また下枠12と第2多孔板4の下端の接続部分より、それぞれ幅方向に迫り出している。そして、上枠5および下枠12の幅方向の迫り出した部分に、保護部材10および保護部材11は接続されている。
【0052】
すなわち、第1多孔板3の音源側(高速道路側)の面に沿って、保護部材10が併設されているが、第1多孔板3と保護部材10との間にはわずかな空隙が設けられている。同様に、第2多孔板4の受音側の面に沿って、保護部材11が併設されているが、第2多孔板4と保護部材11との間にはわずかな空隙が設けられている。
【0053】
また、第1多孔板3および第2多孔板4の板厚、貫通孔、開口率は、本発明の第1実施形態に係る防音壁100におけるそれらの数値と同等である(板厚:0.1mm、貫通孔3aおよび貫通孔4aの孔径:0.1mm、第1多孔板3および第2多孔板4の開口率:0.3%。)。これに対し、防音壁104の保護部材10、11の板厚は、第1多孔板3および第2多孔板4の板厚よりも厚く、例えば、板厚:1.0mmである。また、防音壁104の保護部材10、11の貫通孔10a、11aの孔径は、貫通孔3aおよび貫通孔4aの孔径よりも大きく、例えば、孔径4.0mmである。さらに、防音壁104の保護部材10、11の開口率は、第1多孔板3および第2多孔板4よりも大きく、例えば、22.6%である。
【0054】
なお、保護部材10、11の材質は、鉄、ステンレス、アルミニウム合金などの金属であってもよいし、樹脂であってもよい。例えば、保護部材10、11には、マグネシウムを主要添加物質としたアルミ合金、A5052などが好適に用いられる。
【0055】
上述したような、吸音の効果は、微細な孔径の貫通孔3a、貫通孔4aを有し、比較的開口率の小さい第1多孔板3、第2多孔板4の構成に大きく依拠する。第1多孔板3、第2多孔板4の板厚が薄ければ、微細な孔径の貫通孔3a、貫通孔4aを形成しやすかったり、吸音パネル2が軽量化されるので本体壁1の上端に設置しやすいといった利点を得られるが、運搬や設置時に他の部材との衝突や、設置後の飛び石により、第1多孔板3、第2多孔板4が変形し、壊れやすくなるとの懸念も生じる。本発明の第5実施形態に係る防音壁104では、第1多孔板3、第2多孔板4の板厚に比して十分厚い保護部材10、11をそれらに併設することで、上述の懸念を解消している。すなわち、本発明の第5実施形態に係る防音壁104では、保護部材10、11でもって、第1多孔板3、第2多孔板4を保護することができるという効果を奏する。
【0056】
なお、この保護部材10、11に準じるものを、本発明の他の実施形態に係る防音壁101、102、103に設けても良い。また、図9では、上枠5および下枠12の幅方向の迫り出した部分に、保護部材10および保護部材11が接続されている形態を示した。本発明の実施の形態はこれに限らず、上枠5および下枠12の幅方向の迫り出した部分を設けずに、第1多孔板3と第2多孔板4との間隔を図9で示したものより若干狭め、保護部材10、11を含めた吸音パネル2の厚みを、本体壁1の厚みと同程度としても良い。図10に示したものは、本発明の第6実施形態に係る防音壁105の断面図である。この本発明の第6実施形態に係る防音壁105の構造は、第1多孔板3と第2多孔板4との間隔を図9で示したものより若干狭め、保護部材10、11を含めた吸音パネル2の厚みを、本体壁1の厚みと同程度としている以外は、本発明の第5実施形態に係る防音壁104の構造とほぼ共通している。
【0057】
図11に示したものは、本発明の第7実施形態に係る防音壁106の断面図である。この防音壁106に示したものでは、上述の本発明の第5実施形態に係る防音壁104と異なり、上枠5および下枠12に幅方向の迫り出した部分を有さない。そして、保護部材10は第1多孔板3と、その第1多孔板3の音源側(高速道路側)の面で接合されている。また、保護部材11は第2多孔板4と、その第2多孔板4の受音側の面で接合されている。なお、図11において、保護部材10を示す直線と第1多孔板3を示す直線との間をあけている。これは、各部材(10、11)を示す直線同士を接しさせると各部材(10、11)の区別がつかなくなるからである。保護部材10は第1多孔板3と、その第1多孔板3の音源側(高速道路側)の面で接合されるため、第5実施形態でのような保護部材10と第1多孔板3との間の空隙は、第7実施形態の保護部材10と第1多孔板3との間には存在しない。保護部材11と第2多孔板4との関係についても同様である。
【0058】
防音壁106の保護部材10は、第1多孔板3に沿って、リベット等による「かしめ」での接合や圧入による接合、ボルト・ナット等の締結部材による締結、スポット溶接等により、併設されている。防音壁106の保護部材11もまた、第2多孔板4に沿って、上述した各種の接合方法や締結方法によって、併設されている。
【0059】
本発明の第7実施形態に係る防音壁106でも、本発明の第5実施形態に係る防音壁104や本発明の第6実施形態に係る防音壁105と同様に、保護部材10、11でもって、第1多孔板3、第2多孔板4を保護することができるという効果を奏する。また、この保護部材10、11に準じるものを、本発明の他の実施形態に係る防音壁100、101、102、103に設けても良い。
【0060】
図12A図12B、および図12Cは、それぞれ、本発明の第8実施形態、第9実施形態、および第10実施形態に係る防音壁の断面図である。なお、図12A図12B、および図12Cに示す防音壁において、第1実施形態の防音壁100等、他の前記実施形態の防音壁を構成する部材と同様の部材については同様の符号を付している。
【0061】
図12Aに示す第8実施形態の防音壁107を構成する吸音パネル2は、図1Bに示す防音壁101と同様に、仕切板6で吸音パネル2の内部の空気層が上下方向に分割されている。吸音パネル2は、仕切板6の上側部分である上側吸音パネル部7と、仕切板6の下側部分である下側吸音パネル部8とで構成される。
【0062】
また、下側吸音パネル部8は、図1Dに示す防音壁103と同様に、多数の貫通孔9aが設けられた第3多孔板9で内部の空気層がパネルの厚み方向において2つに分割されたものとなっている。
【0063】
第8実施形態においては、上側吸音パネル部7においても、第1多孔板3と第2多孔板4との間に多数の貫通孔13aが設けられた第4多孔板13が配置されている。
【0064】
ここで、図1Bに示す防音壁101等では、第1多孔板3の上端と第2多孔板4の上端とを接続する上枠5は板状とされている。これに対して、第8実施形態の防音壁107では、上枠5は、下端部が開口し且つ上下方向の断面がコの字の、上下方向において厚み(高さ)を有する中空構造とされている。上枠5の下端部が開口しているため、上側吸音パネル部7の内部の空気層は、第4多孔板13によってパネルの厚み方向において完全には2つに分割されていない。図1B等に示す板状の上枠5に代えて、上下方向において厚みを有する中空構造の上枠5を用いることで、上枠5の軽量化と強度向上とを両立することができる。
【0065】
また、第8実施形態では、第1多孔板3の音源側の面に沿って、多孔板からなる保護部材10が併設され、且つ、第2多孔板4の受音側の面に沿って、多孔板からなる保護部材11が併設されている。保護部材10、11を含めた吸音パネル2の厚みは、図10に示す防音壁105と同様に、本体壁1の厚みと同程度とされている。なお、図9に示す防音壁104、または図11に示す防音壁106のように、保護部材10、11が設けられてもよい(第9、第10実施形態においても同様)。さらには、吸音パネル2部分に関し、吸音パネル2を構成する上枠5を除く部分の構成が、防音壁100、101、102、103の吸音パネル2のような構成とされてもよい(第9、第10実施形態においても同様)。
【0066】
図12Bは、第9実施形態の防音壁108を示す。この防音壁108と、図12Aに示す防音壁107との違いは、次のとおりである。第9実施形態の防音壁108では、上枠5は、下端部が閉塞し且つ上下方向の断面がロの字の、上下方向において厚みを有する中空構造とされている。そのため、上側吸音パネル部7の内部の空気層は、第4多孔板13によってパネルの厚み方向において2つに分割されている。
【0067】
図12Cは、第10実施形態の防音壁109を示す。この防音壁109と、図12Bに示す防音壁108との違いは、上枠5の高さである。防音壁109の上枠5の高さは、防音壁108の上枠5の高さよりも低く(短く)されている。
【0068】
次に、防音壁107~109を用いた場合の騒音の解析結果について説明する。
【0069】
騒音低減効果を比較する観測点は、防音壁の上端から2.5m離れ、且つ防音壁の上端から下方52.5°となる点とした(図3参照、図4図7に結果を示す解析では、前記のとおり下方45°)。この点は、下方45°の点と同じく、高架高速道路などにおける沿線測定点を代表する点である。なお、音源(自動車)は、前記と同じく、防音壁の上端から音源側に2.0m斜め下方離れた点とした。
【0070】
防音壁107~109を構成するその上端部の各吸音パネル2の仕様は、次のとおりとした。
【0071】
図12Aに示す第8実施形態の防音壁107について
上側吸音パネル部7の高さ(上下方向の長さ):140mm、第1多孔板3、第2多孔板4、および第4多孔板13の上側吸音パネル部7の板厚:0.1mm、第1多孔板3、第2多孔板4、および第4多孔板13の上側吸音パネル部7の貫通孔3a、貫通孔4a、および貫通孔13aの孔径:0.1mm、第1多孔板3、第2多孔板4、および第4多孔板13の上側吸音パネル部7の開口率:0.5%。
下側吸音パネル部8の高さ(上下方向の長さ):310mm、第1多孔板3、第2多孔板4、および第3多孔板9の下側吸音パネル部8の板厚:0.1mm、第1多孔板3、第2多孔板4、および第3多孔板9の下側吸音パネル部8の貫通孔3a、貫通孔4a、および貫通孔9aの孔径:0.1mm、第1多孔板3、第2多孔板4の下側吸音パネル部8の開口率:0.30%、第3多孔板9の開口率:0.15%。
保護部材10、および保護部材11の板厚:1.0mm、保護部材10、および保護部材11の貫通孔10a、および貫通孔11aの孔径:4.0mm、保護部材10、および保護部材11の開口率:22.6%。
上枠5の高さ(上下方向の長さ):30mm(図12Aに図示)。
【0072】
図12Bに示す第9実施形態の防音壁108について
上枠5の下端部が開口しているか(図12A)、閉塞しているか(図12B)の違いのみで、その他の仕様は、防音壁107と同じ。
【0073】
図12Cに示す第10実施形態の防音壁109について
上枠5の高さ(上下方向の長さ):20mm(図12Cに図示)。その他の仕様は、防音壁108と同じ。
【0074】
図13図14は、図3に示す2次元断面を模擬した境界要素法による音響解析の結果に自動車騒音の重み付きを考慮した解析結果を示すグラフである。
【0075】
図13に示すグラフは、第8実施形態の防音壁107、および第9実施形態の防音壁108の解析結果を示す。グラフの横軸は周波数(Hz)であり、縦軸は自動車騒音の重み付き音圧レベル(dB)である。なお、図13に示すグラフでの解析結果は1/3オクターブバンドの定周波数比フィルタを用いた分析によるものであり、グラフの横軸には1/3Oct.Band[Hz]と表記している。また、音圧レベルにはA特性による補正を施しており、グラフの縦軸にはSPL [dBA]と表記している(図14に示すグラフについても同様)。防音壁107の解析結果を点線と丸マーカーで示し、防音壁108の解析結果を実線と丸マーカーで示している。
【0076】
図13に示す解析結果より、上枠5の下端部が閉塞した下側塞ぎが有る防音壁108は、上枠5の下端部が開口した下側塞ぎが無い防音壁107よりも、500Hz~2000Hzの広範囲で、1600Hzの近傍の範囲を除き、音圧レベルが低く、騒音低減効果が大きい。この結果より、上枠5を上下方向において厚みを有する中空構造とする場合、下端部が閉塞した断面がロの字の上枠5とすることが好ましい。なお、上枠5の下端部が開口した下側塞ぎが無い防音壁107であっても、図2に示す比較例に係る防音壁500よりは十分に騒音低減効果を有する。
【0077】
図14に示すグラフは、第9実施形態の防音壁108、および第10実施形態の防音壁109の解析結果を示す。防音壁108の解析結果を実線と丸マーカーで示し、防音壁109の解析結果を点線と三角マーカーで示している。
【0078】
図14に示す解析結果より、上枠5の高さ(上下方向の長さ)が防音壁108よりも10mm短い防音壁109の方が、315Hz~2000Hzで、630Hzから800Hzの間を除き、音圧レベルが低く、騒音低減効果が大きい。この結果より、上枠5の高さ(上下方向の長さ)は低い(短い)方が好ましいことがわかる。
【符号の説明】
【0079】
1:本体壁
2:吸音パネル
3:第1多孔板
3a:貫通孔
4:第2多孔板
4a:貫通孔
5:上枠
6:仕切板
7:上側吸音パネル部
8:下側吸音パネル部
9:第3多孔板
9a:貫通孔
10:保護部材(第1保護部材)
10a:貫通孔
11:保護部材(第2保護部材)
11a:貫通孔
12:下枠
100、101、102、103、104、105、106、107、108、109:防音壁
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14