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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】ウエハ載置台
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240704BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20240704BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALN20240704BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
H01L21/302 101G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021168603
(22)【出願日】2021-10-14
(65)【公開番号】P2023058845
(43)【公開日】2023-04-26
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-053576(JP,A)
【文献】特開2014-160790(JP,A)
【文献】特開2016-207777(JP,A)
【文献】特開2021-028960(JP,A)
【文献】特開2016-115933(JP,A)
【文献】特開2020-145238(JP,A)
【文献】特開2010-272873(JP,A)
【文献】特開2017-201669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハを載置可能なウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
前記セラミック基材の下面に接合され、冷媒流路を有する冷却基材と、
前記冷却基材を上下方向に貫通する複数の穴と、
前記複数の穴のうちの少なくとも1つの穴の周辺領域に設けられ、前記冷媒流路を流れる冷媒と前記ウエハ載置面に載置されるウエハとの熱交換を促進する熱交換促進部と、
を備え
前記熱交換促進部では、前記穴の周辺領域を外れた領域に比べて、前記ウエハから前記冷媒流路の天井面までの距離が短くなっている、
ウエハ載置台。
【請求項2】
上面にウエハを載置可能なウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
前記セラミック基材の下面に接合され、冷媒流路を有する冷却基材と、
前記冷却基材を上下方向に貫通する複数の穴と、
前記複数の穴のうちの少なくとも1つの穴の周辺領域に設けられ、前記冷媒流路を流れる冷媒と前記ウエハ載置面に載置されるウエハとの熱交換を促進する熱交換促進部と、
前記ウエハ載置面の基準面に、頂面でウエハの下面を支持する複数の小突起と、
を備え、
前記複数の小突起の頂面は、同一平面上にあり、
前記熱交換促進部では、前記穴の周辺領域を外れた領域に比べて、前記小突起の面積率が大きくなっているか、前記基準面が嵩上げされている、
ウエハ載置台。
【請求項3】
前記熱交換促進部では、前記穴の周辺領域を外れた領域に比べて、前記ウエハから前記冷媒流路の天井面までの距離が短くなっている、
請求項2に記載のウエハ載置台。
【請求項4】
前記熱交換促進部では、前記穴の周辺領域を外れた領域に比べて、前記冷媒流路が細くなっている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のウエハ載置台。
【請求項5】
前記熱交換促進部では、前記穴の周辺領域を外れた領域に比べて、前記冷媒流路を平面視したときに前記冷媒流路の幅が狭くなっている、
請求項に記載のウエハ載置台。
【請求項6】
前記熱交換促進部では、前記冷媒流路の内面にフィンが設けられている、
請求項1~のいずれか1項に記載のウエハ載置台。
【請求項7】
前記穴は、前記ウエハ載置台のうち前記電極から下方に向かって設けられ前記電極へ給電する給電部材が挿通される給電部材挿通穴、前記ウエハ載置台を上下方向に貫通しリフトピンが挿通されるリフトピン穴及び前記ウエハ載置を上下方向に貫通し前記ウエハ載置面にガスを供給するガス穴の少なくとも1つである、
請求項1~6のいずれか1項に記載のウエハ載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウエハ載置面を有し電極を内蔵するセラミック基材と、冷媒流路を有する冷却基材と、セラミック基材と冷却基材とを接合する接合層とを備えたウエハ載置台が知られている。例えば、特許文献1,2には、こうしたウエハ載置台において、冷却基材として、線熱膨張係数がセラミック基材と同程度の金属マトリックス複合材料で作製されたものを用いる点が記載されている。また、特許文献1,2には、ウエハ載置台に、電極に給電するための給電端子を挿通する端子穴やウエハの裏面にHeガスを供給するためのガス穴やウエハをウエハ載置面から持ち上げるリフトピンを挿通するためのリフトピン穴を設ける点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5666748号公報
【文献】特許第5666749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、端子穴やガス穴やリフトピン穴の周辺では抜熱能力が劣るため、ウエハのうちそうした穴の直上周辺は他の部分に比べて温度が高くなるいわゆるホットスポットになることがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ウエハにホットスポットが発生するのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のウエハ載置台は、
上面にウエハを載置可能なウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
前記セラミック基材の下面に接合され、冷媒流路を有する冷却基材と、
前記冷却基材を上下方向に貫通する複数の穴と、
前記複数の穴のうちの少なくとも1つの穴の周辺領域に設けられ、前記冷媒流路を流れる冷媒と前記ウエハ載置面に載置されるウエハとの熱交換を促進する熱交換促進部と、
を備えたものである。
【0007】
このウエハ載置台では、複数の穴のうちの少なくとも1つの穴の周辺領域に、冷媒流路を流れる冷媒とウエハ載置面に載置されるウエハとの熱交換を促進する熱交換促進部が設けられている。一般にウエハのうちこうした穴の直上周辺はホットスポットになりやすいが、本発明ではこうした穴の周辺領域に熱交換促進部が設けられているため、穴の周辺領域の抜熱が促進される。したがって、ウエハにホットスポットが発生するのを抑制することができる。
【0008】
本発明のウエハ載置台において、前記熱交換促進部では、前記穴の周辺領域を外れた領域に比べて、前記冷媒流路が細くなっていてもよい。冷媒流路が細くなっている部分を流れる冷媒は、冷媒流路が細くなっていない部分を流れる場合に比べて流速が速くなる。そのため、穴の周辺領域の抜熱が促進される。例えば、前記熱交換促進部では、前記穴の周辺領域を外れた領域に比べて、前記冷媒流路を平面視したときに前記冷媒流路の幅が狭く
なっていてもよい。冷媒流路が細くなっている部分の流路断面積は、細くなっていない部分の流路断面積の60~90%であることが好ましい。
【0009】
本発明のウエハ載置台において、前記熱交換促進部では、前記冷媒流路の内面にフィンが設けられていてもよい。冷媒流路にフィンが設けられている部分を流れる冷媒は、フィンが設けられていない部分を流れる場合に比べて乱流になりやすい。そのため、穴の周辺領域の抜熱が促進される。冷媒流路にフィンが設けられている部分の流路断面積は、フィンが設けられていない部分の流路断面積の60~90%であることが好ましい。
【0010】
本発明のウエハ載置台において、前記熱交換促進部では、前記穴の周辺領域を外れた領域に比べて、前記ウエハから前記冷媒流路の天井面までの距離が短くなっていてもよい。ウエハから冷媒流路の天井面までの距離が短い部分を流れる冷媒は、ウエハから冷媒流路の天井面までの距離が短くなっていない部分を流れる場合に比べて冷媒とウエハとの間の熱抵抗が小さくなる。そのため、穴の周辺領域の抜熱が促進される。熱交換促進部におけるウエハから冷媒流路の天井面までの距離は、熱交換促進部以外のウエハから冷媒流路の天井面までの距離の50~90%であることが好ましい。
【0011】
本発明のウエハ載置台は、前記ウエハ載置面の基準面に、頂面でウエハの下面を支持する複数の小突起を備えていてもよく、前記複数の小突起の頂面は、同一平面上にあってもよく、前記熱交換促進部では、前記穴の周辺領域を外れた領域に比べて、前記小突起の面積率が大きくなっていてもよいし、前記基準面が嵩上げされていてもよい。「小突起の面積率」とは、単位面積に占める、小突起の頂面の総面積の割合である。小突起はセラミックであり、セラミックは空隙に比べて熱伝導率が良好である。小突起の面積率が大きい部分では、小突起の面積率が大きくない部分に比べて、平面方向でセラミックが占める割合が高いためウエハと冷媒との熱交換が促進され、抜熱が促進される。穴の中心から半径25mm以内に存在する小突起の面積率は、それ以外の場所の2倍以上であることが好ましい。また、基準面が嵩上げされている部分では、基準面が嵩上げされていない部分に比べて、基準面とウエハとの空隙の厚みが薄くなる。基準面が嵩上げされている部分では、基準面が嵩上げされていない部分に比べて、厚み方向でセラミックが占める割合が高いためウエハと冷媒との熱交換が促進され、抜熱が促進される。なお、熱交換促進部では、穴の周辺領域を外れた領域に比べて、小突起の面積率が大きく、且つ、基準面が嵩上げされていてもよい。
【0012】
本発明のウエハ載置台において、前記穴は、前記ウエハ載置台のうち前記電極から下方に向かって設けられ前記電極へ給電する給電部材が挿通される給電部材挿通穴、前記ウエハ載置台を上下方向に貫通しリフトピンが挿通されるリフトピン穴及び前記ウエハ載置を上下方向に貫通し前記ウエハ載置面にガスを供給するガス穴の少なくとも1つであってもよい。一般にウエハのうち給電部材挿通穴、リフトピン穴及びガス穴の直上領域はホットスポットになりやすい。そのため、本発明を適用する意義が高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】チャンバ94に設置されたウエハ載置台10の縦断面図。
図2】ウエハ載置台10の平面図。
図3】冷媒流路32を通る水平面でウエハ載置台10を切断したときの断面図。
図4】冷媒流路32の要部を示す拡大断面図。
図5】ウエハ載置台10の製造工程図。
図6】冷媒流路32の別例の要部を示す拡大断面図。
図7】冷媒流路32の別例の要部を示す拡大断面図。
図8】冷媒流路32の別例の要部を示す拡大断面図。
図9】ウエハ載置面22aの別例の要部を示す拡大断面図。
図10図9のウエハ載置面22aの要部を示す平面図。
図11】ウエハ載置面22aの別例の要部を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。図1はチャンバ94に設置されたウエハ載置台10の縦断面図(ウエハ載置台10の中心軸を含む面で切断したときの断面図)、図2はウエハ載置台10の平面図、図3は冷媒流路32を通る水平面でウエハ載置台10を切断したときの断面図、図4は冷媒流路32の要部を示す拡大断面図である。
【0015】
ウエハ載置台10は、ウエハWにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うために用いられるものであり、半導体プロセス用のチャンバ94の内部に設けられた設置板96に固定されている。ウエハ載置台10は、セラミック基材20と、冷却基材30と、金属接合層40とを備えている。
【0016】
セラミック基材20は、円形のウエハ載置面22aを有する中央部22の外周に、環状のフォーカスリング載置面24aを有する外周部24を備えている。以下、フォーカスリングは「FR」と略すことがある。ウエハ載置面22aには、ウエハWが載置され、FR載置面24aには、フォーカスリング78が載置される。セラミック基材20は、アルミナ、窒化アルミニウムなどに代表されるセラミック材料で形成されている。FR載置面24aは、ウエハ載置面22aに対して一段低くなっている。
【0017】
セラミック基材20の中央部22は、ウエハ載置面22aに近い側に、ウエハ吸着用電極26を内蔵している。ウエハ吸着用電極26は、例えばW、Mo、WC、MoCなどを含有する材料によって形成されている。ウエハ吸着用電極26は、円板状又はメッシュ状の単極型の静電吸着用電極である。セラミック基材20のうちウエハ吸着用電極26よりも上側の層は誘電体層として機能する。ウエハ吸着用電極26には、ウエハ吸着用直流電源52が給電端子54(本発明の給電部材に相当)を介して接続されている。給電端子54は、ウエハ載置台10のうちウエハ吸着用電極26の下面と冷却基材30の下面との間に設けられた端子穴51に挿通されている。給電端子54は、端子穴51のうち冷却基材30及び金属接合層40を上下方向に貫通する貫通穴に配置された絶縁管55を通過して、セラミック基材20の下面からウエハ吸着用電極26に至るように設けられている。ウエハ吸着用直流電源52とウエハ吸着用電極26との間には、ローパスフィルタ(LPF)53が設けられている。
【0018】
ウエハ載置面22aには、図2に示すように、外縁に沿ってシールバンド22bが形成され、全面に複数の小突起22cが形成されている。シールバンド22b及び複数の小突起22cは、ウエハ載置面22aの基準面22dに形成されている。小突起22cは、本実施形態では扁平な円柱突起である。シールバンド22bの頂面及び複数の小突起22cの頂面は、同一平面上に位置している。シールバンド22b及び小突起22cの高さ(つまり基準面22dからこれらの頂面までの距離)は数μm~数10μmである。ウエハWは、シールバンド22bの頂面及び複数の小突起22cの頂面に接触した状態でウエハ載置面22aに載置される。
【0019】
冷却基材30は、金属マトリックス複合材料(メタル・マトリックス・コンポジット(MMC)ともいう)製の円板部材である。冷却基材30は、内部に冷媒が循環可能な冷媒流路32を備えている。この冷媒流路32は、図示しない冷媒供給路及び冷媒排出路に接続されており、冷媒排出路から排出された冷媒は温度調整されたあと再び冷媒供給路に戻される。MMCとしては、Si,SiC及びTiを含む材料やSiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料などが挙げられる。Si,SiC及びTiを含む材料をSiSiCTiといい、SiC多孔質体にAlを含浸させた材料をAlSiCといい、SiC多孔質体にSiを含浸させた材料をSiSiCという。セラミック基材20がアルミナ基材の場合、冷却基材30に用いるMMCとしては熱膨張係数がアルミナに近いAlSiCやSiSiCTiなどが好ましい。冷却基材30は、RF電源62に給電端子64を介して接続されている。冷却基材30とRF電源62との間には、ハイパスフィルタ(HPF)63が配置されている。冷却基材30は、下面側にウエハ載置台10を設置板96にクランプするのに用いられるフランジ部34を有する。
【0020】
金属接合層40は、セラミック基材20の下面と冷却基材30の上面とを接合する。金属接合層40は、例えば、はんだや金属ロウ材で形成された層であってもよい。金属接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。
【0021】
セラミック基材20の外周部24の側面、金属接合層40の外周及び冷却基材30の側面は、絶縁膜42で被覆されている。絶縁膜42としては、例えばアルミナやイットリアなどの溶射膜が挙げられる。
【0022】
ウエハ載置台10は、ウエハ載置台10を上下方向に貫通する穴を複数有している。こうした穴としては、図2に示すように、ウエハ載置面22aの基準面22dに開口する複数のガス穴44やウエハ載置面22aに対してウエハWを上下させるリフトピンを挿通させるためのリフトピン穴48がある。ガス穴44は、ウエハ載置面22aを平面視したときに基準面22dの適当な位置に複数個(本実施形態では3個)設けられている。ガス穴44には、外部のガス供給源46(図1参照)からHeガスのような熱伝導ガスが供給される。ウエハ載置面22aにウエハWが載置された状態でガス穴44に熱伝導ガスが供給されると、ウエハWとシールバンド22bと小突起22cと基準面22dとによって囲まれた空間が熱伝導ガスによって充填される。熱伝導ガスは、真空に比べると熱伝導率が高いため、ウエハWとセラミック基材20との間の熱伝導を良好にする役割を果たす。リフトピン穴48は、ウエハ載置面22aを平面視したときにウエハ載置面22aの同心円に沿って等間隔に複数個(本実施形態では3個)設けられている。
【0023】
冷却基材30の内部に設けられた冷媒流路32は、図3に示すように、冷媒流路32をを水平面で切断した断面を上からみたときに、冷却基材30のうちフランジ部34を除く領域の全体にわたって入口32pから出口32qまで一筆書きの要領で形成されている。本実施形態では、冷媒流路32は渦巻き状に形成されている。冷媒流路32のうち、端子穴51の周辺領域(図2及び図3において2点鎖線で囲った領域)、ガス穴44の周辺領域及びリフトピン穴48の周辺領域を通過する部分32aでは、これらの穴の周辺領域以外の部分と比べて、幅が狭く(流路が細く)なるように形成されている。すなわち、冷媒流路32のうちこれらの部分32aは、それ以外の部分に比べて流路断面積が小さくなっている。そのため、冷媒流路32のうちこれらの部分32aを流れる冷媒は、それ以外の部分を流れる場合と比べて、流速が速くなる。冷媒流路32の部分32aが本発明の熱交換促進部に相当する。冷媒流路32はこれらの穴51,44,48の左右両側を通過しているが、本実施形態では穴51,44,48の片側を細くしている。
【0024】
こうしたウエハ載置台10は、チャンバ94の内部に設けられた設置板96にクランプ部材70を用いて取り付けられる。クランプ部材70は、断面が略逆L字状の環状部材であり、内周段差面70aを有する。ウエハ載置台10と設置板96とは、クランプ部材70によって一体化されている。ウエハ載置台10の冷却基材30のフランジ部34に、クランプ部材70の内周段差面70aを載置した状態で、クランプ部材70の上面からボルト72が差し込まれて設置板96の上面に設けられたネジ穴に螺合されている。ボルト72は、クランプ部材70の円周方向に沿って等間隔に設けられた複数箇所(例えば8箇所とか12箇所)に取り付けられる。クランプ部材70やボルト72は、絶縁材料で作製されていてもよいし、導電材料(金属など)で作製されていてもよい。
【0025】
次に、ウエハ載置台10の製造例を図5を用いて説明する。図5はウエハ載置台10の製造工程図である。まず、セラミック基材20の元となる円板状のセラミック焼結体120を、セラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製する(図5A)。セラミック焼結体120は、ウエハ吸着用電極26を内蔵している。次に、セラミック焼結体120の下面からウエハ吸着用電極26までの間に端子穴上部151aを形成すると共に、所定位置にセラミック焼結体120を上下方向に貫通するガス穴上部144aやリフトピン穴上部(図示せず)をあける(図5B)。そして、端子穴上部151aに給電端子54を挿入して給電端子54とウエハ吸着用電極26とを接合する(図5C)。
【0026】
これと並行して、2つのMMC円板部材131,136を作製する(図5D)。そして、両方のMMC円板部材131,136に上下方向に貫通する複数の穴をあけると共に、上側のMMC円板部材131の下面に最終的に冷媒流路32となる溝132を形成する(図5E)。具体的には、上側のMMC円板部材131に、端子穴中間部151b、ガス穴中間部144b及びリフトピン穴中間部(図示せず)をあける。また、下側のMMC円板部材136に、端子穴下部151c、ガス穴下部144c及びリフトピン穴下部(図示せず)をあける。溝132のうち冷媒流路32の幅の狭い部分32aに対応する部分132aは、溝幅を狭くする。セラミック焼結体120がアルミナ製の場合、MMC円板部材131,136はSiSiCTi製かAlSiC製であることが好ましい。アルミナの熱膨張係数とSiSiCTiやAlSiCの熱膨張係数とは、概ね同じだからである。
【0027】
SiSiCTi製の円板部材は、例えば以下のように作製することができる。まず、炭化珪素と金属Siと金属Tiとを混合して粉体混合物を作製する。次に、得られた粉体混合物を一軸加圧成形により円板状の成形体を作製し、その成形体を不活性雰囲気下でホットプレス焼結させることにより、SiSiCTi製の円板部材を得る。
【0028】
次に、上側のMMC円板部材131の下面と下側のMMC円板部材136の上面との間に金属接合材を配置すると共に、上側のMMC円板部材131の上面に金属接合材を配置する。各金属接合材には、各穴に対向する位置に貫通穴を設けておく。そして、セラミック焼結体120の給電端子54を端子穴中間部151b及び端子穴下部151cに挿入し、セラミック焼結体120を上側のMMC円板部材131の上面に配置された金属接合材の上に載せる。これにより、下側のMMC円板部材136と金属接合材と上側のMMC円板部材131と金属接合材とセラミック焼結体120とを下からこの順に積層した積層体を得る。この積層体を加熱しながら加圧することにより(TCB)、接合体110を得る(図5F)。接合体110は、冷却基材30の元となるMMCブロック130の上面に、金属接合層40を介してセラミック焼結体120が接合されたものである。MMCブロック130は、上側のMMC円板部材131と下側のMMC円板部材136とが金属接合層135を介して接合されたものである。MMCブロック130は、内部に冷媒流路32、端子穴51、ガス穴44及びリフトピン穴(図示せず)を有する。冷媒流路32のうち各穴の周辺領域を通過する部分32aは幅が狭くなっている。端子穴51は、端子穴上部151aと端子穴中間部151bと端子穴下部151cとが連なった穴であり、ガス穴44は、ガス穴上部144aとガス穴中間部144bとガス穴下部144cとが連なった穴である。リフトピン穴は、図示しないが、リフトピン穴上部とリフトピン穴中間部とリフトピン穴下部とが連なった穴である。
【0029】
TCBは、例えば以下のように行われる。すなわち、金属接合材の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す。これにより、金属接合材は金属接合層になる。このときの金属接合材としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。例えば、Al-Si-Mg系接合材を用いてTCBを行う場合、真空雰囲気下で加熱した状態で積層体を加圧する。金属接合材は、厚みが100μm前後のものを用いるのが好ましい。
【0030】
続いて、セラミック焼結体120の外周を切削して段差を形成することにより、中央部22と外周部24とを備えたセラミック基材20とする。また、MMCブロック130の外周を切削して段差を形成することにおり、フランジ部34を備えた冷却基材30とする。また、端子穴51のうちセラミック基材20の下面から冷却基材30の下面まで、給電端子54を挿通する絶縁管55を配置する。更に、セラミック基材20の外周部24の側面、金属接合層40の周囲及び冷却基材30の側面を、セラミック粉末を用いて溶射することにより絶縁膜42を形成する(図5G)。シールバンド22bや小突起22cは例えばブラスト加工により形成する。これにより、ウエハ載置台10を得る。
【0031】
なお、図1の冷却基材30は、一体品として記載したが、図5Gに示すように2つの部材が金属接合層で接合された構造であってもよいし、3つ以上の部材が金属接合層で接合された構造であってもよい。
【0032】
次に、ウエハ載置台10の使用例について図1を用いて説明する。チャンバ94の設置板96には、上述したようにウエハ載置台10がクランプ部材70によって固定されている。チャンバ94の天井面には、プロセスガスを多数のガス噴射孔からチャンバ94の内部へ放出するシャワーヘッド98が配置されている。
【0033】
ウエハ載置台10のFR載置面24aには、フォーカスリング78が載置され、ウエハ載置面22aには、円盤状のウエハWが載置される。フォーカスリング78は、ウエハWと干渉しないように上端部の内周に沿って段差を備えている。この状態で、ウエハ吸着用電極26にウエハ吸着用直流電源52の直流電圧を印加してウエハWをウエハ載置面22aに吸着させる。そして、チャンバ94の内部を所定の真空雰囲気(又は減圧雰囲気)になるように設定し、シャワーヘッド98からプロセスガスを供給しながら、冷却基材30にRF電源62からのRF電圧を印加する。すると、ウエハWとシャワーヘッド98との間でプラズマが発生する。そして、そのプラズマを利用してウエハWにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。なお、ウエハWがプラズマ処理されるのに伴ってフォーカスリング78も消耗するが、フォーカスリング78はウエハWに比べて厚いため、フォーカスリング78の交換は複数枚のウエハWを処理したあとに行われる。
【0034】
ハイパワープラズマでウエハWを処理する場合には、ウエハWを効率的に冷却する必要がある。ウエハ載置台10では、セラミック基材20と冷却基材30との接合層として、熱伝導率の低い樹脂層ではなく、熱伝導率の高い金属接合層40を用いている。そのため、ウエハWから熱を引く能力(抜熱能力)が高い。また、セラミック基材20と冷却基材30との熱膨張差は小さいため、金属接合層40の応力緩和性が低くても、支障が生じにくい。更に、冷媒流路32のうち各穴の周辺領域を通過する部分32aは細くなっているため、この部分32aを流れる冷媒の流速はそれ以外の部分よりも速くなり、ウエハWと冷媒との熱交換が促進される。
【0035】
以上説明した本実施形態のウエハ載置台10では、穴(端子穴51やガス穴44やリフトピン穴48)の周辺領域に、冷媒流路32を流れる冷媒とウエハ載置面22aに載置されるウエハWとの熱交換を促進する熱交換促進部(冷媒流路32のうち細くなっている部分32a)が設けられている。一般にウエハWのうちこうした穴の直上周辺はホットスポットになりやすいが、本実施形態ではこうした穴の周辺領域に熱交換促進部が設けられているため、穴の周辺領域の抜熱が促進される。したがって、ウエハWにホットスポットが発生するのを抑制することができる。
【0036】
また、一般にウエハWのうち端子穴51やガス穴44やリフトピン穴48の直上領域はホットスポットになりやすい。そのため、これらの穴の周辺領域に熱交換促進部(冷媒流路32のうち細くなっている部分32a)を適用する意義が高い。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0038】
上述した実施形態では、端子穴51の左右両側を通過する冷媒流路32のうち片方に細くなっている部分32aを設けたが、特にこれに限定されない。例えば、図6の拡大断面図に示すように、端子穴51の左右両側を通過する冷媒流路32の両方に細い部分32aを設けてもよい。こうすれば、端子穴51の周辺領域がホットスポットになるのをより防止しやすくなる。ガス穴44やリフトピン穴48の左右両側を通過する冷媒流路32についても、これと同様の構造を採用してもよい。
【0039】
上述した実施形態では、端子穴51の周辺領域を通過する冷媒流路32に、熱交換促進部として冷媒流路32が細くなっている部分32aを設けたが、特にこれに限定されない。例えば、図7の拡大断面図に示すように、端子穴51の周辺領域を通過する冷媒流路32の内面に、熱交換促進部としてフィン32bを設けてもよい。冷媒流路32にフィン32bが設けられている部分を流れる冷媒は、フィンが設けられていない部分を流れる場合に比べて乱流になりやすい。そのため、端子穴51の周辺領域の抜熱が促進される。なお、フィン32bの数や長さは、希望する抜熱量に応じて適宜設定すればよい。ガス穴44やリフトピン穴48の周辺領域を通過する冷媒流路32についても、これと同様の構造を採用してもよい。
【0040】
あるいは、図8の拡大断面図に示すように、端子穴51の周辺領域におけるウエハWから冷媒流路32の天井面までの距離d1が、端子穴51の周辺領域を外れた領域におけるウエハWから冷媒流路32の天井面までの距離d2よりも短くなるようにしてもよい。ウエハWから冷媒流路32の天井面までの距離が短い部分(距離d1の部分)を流れる冷媒は、ウエハWから冷媒流路32の天井面までの距離が短くなっていない部分(距離d2の部分)を流れる場合に比べて冷媒とウエハWとの間の熱抵抗が小さくなる。そのため、端子穴51の周辺領域の抜熱が促進される。なお、図8では、ウエハWから冷媒流路32の天井面までの距離が短い部分では、冷媒流路32の上下方向の長さを他の部分よりも長くしたが、他の部分と同じ長さにしてもよい。ガス穴44やリフトピン穴48の周辺領域についても、これと同様の構造を採用してもよい。
【0041】
あるいは、図9の拡大断面図及び図10の平面図に示すように、ウエハ載置面22aのうち端子穴51の周辺領域Xに形成された基準面22eを、端子穴51の周辺領域Xから外れた領域に形成された基準面22dに比べて、嵩上げしてもよい。こうすることにより、小突起22cに支持されるウエハWと基準面22eとの空隙の厚さは、ウエハWと基準面22dとの空隙の厚さよりも薄くなる。ウエハ載置面22aのうち嵩上げされた基準面22eが形成された端子穴51の周辺領域Xでは、端子穴51の周辺領域Xから外れた領域(基準面22dが形成された領域)に比べて、厚み方向でセラミックが占める割合が高いためウエハWと冷媒との熱交換が促進され、抜熱が促進される。ガス穴44やリフトピン穴48の周辺領域についても、これと同様の構造を採用してもよい。
【0042】
あるいは、図11A~Dに示すように、端子穴51の周辺領域Xでは、端子穴51の周辺領域Xを外れた領域に比べて、小突起の面積率を大きくしてもよい。図11A~Dはウエハ載置面22aの別例の要部(図2で1点鎖線で囲った部分に相当)を示す平面図である。小突起の面積率とは、単位面積に占める、小突起の頂面の総面積の割合である。例えば、図11Aでは、端子穴51の周辺領域Xにおいて、小突起22cの配置密度を、端子穴51の周辺領域Xを外れた領域に比べて高くしている。図11Bでは、端子穴51の周辺領域Xにおいて、小突起22cよりも頂面の面積の大きな小突起22fを配置している。図11Cでは、端子穴51の周辺領域Xにおいて、小突起22cよりも頂面の面積の大きな小突起22gを、端子穴51の周辺領域Xを外れた領域に比べて密に配置している。図11Dでは、端子穴51の周辺領域Xにおいて、その周辺領域Xをほぼ覆う面積を備えた小突起22hを1つ配置している。いずれの場合においても、端子穴51の周辺領域Xは、端子穴51の周辺領域Xを外れた領域に比べて、小突起の面積率が大きい。小突起はセラミックであり、セラミックは空隙に比べて熱伝導率が良好である。小突起の面積率が大きい部分では、小突起の面積率が大きくない部分に比べて、平面方向でセラミックが占める割合が高いためウエハと冷媒との熱交換が促進され、抜熱が促進される。ガス穴44やリフトピン穴48の周辺領域についても、これと同様の構造を採用してもよい。
【0043】
上述した実施形態では、端子穴51、ガス穴44及びリフトピン穴48のすべての周辺領域に熱交換促進部を設けたが、特にこれに限定されない。例えば、これらの穴のうちの一部の穴の周辺領域(例えば特にホットスポットになりやすい領域)に熱交換促進部を設けてもよい。
【0044】
上述した実施形態では、穴の周辺領域を通過する部分32aは冷媒流路32の幅を狭くしたが、特にこれに限定されない。例えば、穴の周辺領域を通過する部分32aは冷媒流路32の上下方向の長さを小さくしてもよい。
【0045】
上述した実施形態では、冷却基材30をMMCで作製したが、特にこれに限定されない。冷却基材30を金属(例えばアルミニウムやチタン、モリブデン、タングステン及びそれらの合金)で作製してもよい。
【0046】
上述した実施形態では、セラミック基材20と冷却基材30とを熱伝導率が良く発明の効果が高い金属接合層40を介して接合したが、特にこれに限定されない。例えば、金属接合層40の代わりに、樹脂接合層を用いてもよい。
【0047】
上述した実施形態では、冷媒流路32を平面視したときの形状を渦巻き状としたが、特にこれに限定されない。例えば、冷媒流路32を平面視したときの形状をジグザグ状としてもよい。具体的には、平面視で冷却基材30の中心を対称中心とする点対称の外周付近の2点に入口と出口を設け、入口から出口まで一筆書きの要領でジグザグになるように冷媒流路32を形成してもよい。
【0048】
上述した実施形態では、セラミック基材20の中央部22にウエハ吸着用電極26を内蔵したが、これに代えて又は加えて、プラズマ発生用のRF電極を内蔵してもよいし、ヒータ電極(抵抗発熱体)を内蔵してもよい。また、セラミック基材20の外周部24にフォーカスリング(FR)吸着用電極を内蔵してもよいし、RF電極やヒータ電極を内蔵してもよい。
【0049】
上述した実施形態では、図5Aのセラミック焼結体120はセラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製したが、そのときの成形体は、テープ成形体を複数枚積層して作製してもよいし、モールドキャスト法によって作製してもよいし、セラミック粉末を押し固めることによって作製してもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 ウエハ載置台、20 セラミック基材、22 中央部、22a ウエハ載置面、22b シールバンド、22c,22f,22g,22h 小突起、22d,22e 基準面、24 外周部、24a フォーカスリング載置面、26 ウエハ吸着用電極、30 冷却基材、32 冷媒流路、32a 冷媒流路のうち穴の周辺領域を通過する部分、32b フィン、32p 入口、32q 出口、34 フランジ部、40 金属接合層、42 絶縁膜、44 ガス穴、46 ガス供給源、48 リフトピン穴、51 端子穴、52 ウエハ吸着用直流電源、53 ローパスフィルタ(LPF)、54 給電端子、55 絶縁管、62 RF電源、63 ハイパスフィルタ(HPF)、64 給電端子、70 クランプ部材、70a 内周段差面、72 ボルト、78 フォーカスリング、94 チャンバ、96 設置板、98 シャワーヘッド、110 接合体、120 セラミック焼結体、130 MMCブロック、131 MMC円板部材、132 溝、135 金属接合層、136 MMC円板部材、144a ガス穴上部、144b ガス穴中間部、144c ガス穴下部、151a 端子穴上部、151b 端子穴中間部、151c 端子穴下部、d1,d2 距離、W ウエハ。
図1
図2
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図11