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特許7514813売上不正発見業務支援装置、売上不正発見業務支援方法および売上不正発見業務支援プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】売上不正発見業務支援装置、売上不正発見業務支援方法および売上不正発見業務支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/12 20230101AFI20240704BHJP
   G06Q 20/20 20120101ALI20240704BHJP
【FI】
G06Q40/12
G06Q20/20
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021177734
(22)【出願日】2021-10-29
(65)【公開番号】P2023066886
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2024-05-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 崇士
(72)【発明者】
【氏名】新田 駿侍
(72)【発明者】
【氏名】小関 峻介
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛光
【審査官】関 博文
(56)【参考文献】
【文献】特許第6463532(JP,B1)
【文献】特開2011-065328(JP,A)
【文献】特表2009-532798(JP,A)
【文献】特開2014-106804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0063108(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部および記憶部を備え、売上の実績に関する不正を発見する業務を支援することができる売上不正発見業務支援装置であって、
前記記憶部には、
期間と、事業所識別データ、部門識別データおよび担当者識別データのうちの少なくとも一つの集計単位と、売上金額および売上取消金額の組合せならびに売上回数および売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の集計対象と、を含む売上金額・売上取消データが格納されており、
前記制御部は、
前記期間および前記集計単位の組合せ毎に、前記集計対象として金額が指定された場合には、前記売上金額・売上取消データ中の前記売上取消金額を前記売上金額・売上取消データ中の前記売上金額で割ることにより、前記集計対象として回数が指定された場合には、前記売上金額・売上取消データ中の前記売上取消回数を前記売上金額・売上取消データ中の前記売上回数で割ることにより、前記期間および前記集計単位の組合せ毎の売上取消率を算出する売上取消率算出手段と、
所定の統計手法に従い、前記売上取消率算出手段で算出した売上取消率のうち上限値を上回っているものを異常値として検知する異常値検知手段と、
前記異常値検知手段で異常値として検知した売上取消率ならびに当該検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せを表示する異常表示手段と、
を備えること、
を特徴とする売上不正発見業務支援装置。
【請求項2】
前記記憶部には、
前記期間と、前記集計単位と、プラスの値とマイナスの値の両方からなる売上計上金額と、を有するレコードを含む売上計上履歴データが更に格納されており、
前記制御部は、
前記期間および指定された集計単位の組合せ毎に、前記売上計上履歴データ中の前記売上計上金額を集計する金額集計手段を更に備え、
前記金額集計手段は、
新規登録された前記レコード中の前記売上計上金額がマイナスの金額である場合には当該マイナスの金額の絶対値、修正前後の関係にある2つの前記レコード同士の前記売上計上金額の合計値がマイナスの金額である場合には当該マイナスの金額の絶対値および削除された前記レコード中のマイナスの前記売上計上金額の絶対値を集計することで、前記期間および前記指定された集計単位の組合せ毎の前記売上取消金額を算出し、
前記売上取消金額の集計の対象とならなかった前記レコード中の前記売上計上金額を集計することで、前記期間および前記指定された集計単位の組合せ毎の前記売上金額を算出すること、
を特徴とする請求項1に記載の売上不正発見業務支援装置。
【請求項3】
前記記憶部には、
前記期間と、前記集計単位と、プラスの値とマイナスの値の両方からなる売上計上金額と、を有するレコードを含む売上計上履歴データが更に格納されており、
前記制御部は、
前記期間および指定された集計単位の組合せ毎に、前記売上計上履歴データ中の前記レコードを回数として集計する回数集計手段を更に備え、
前記回数集計手段は、
新規登録された前記レコード中の前記売上計上金額がマイナスの金額である場合には当該レコード1つを1回分とし、修正前後の関係にある2つの前記レコード同士の前記売上計上金額の合計値がマイナスの金額である場合には当該2つのレコードを1回分とし、削除された前記レコード1つを1回分として集計することで、前記期間および前記指定された集計単位の組合せ毎の前記売上取消回数を算出し、
新規登録された前記レコード中の前記売上計上金額がプラスの金額である場合には当該レコード1つを1回分とし、修正前後の関係にある2つの前記レコード同士の前記売上計上金額の合計値がプラスの金額である場合には当該2つのレコードを1回分とすることで、前記期間および前記指定された集計単位の組合せ毎の前記売上回数を算出すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の売上不正発見業務支援装置。
【請求項4】
前記異常表示手段は、
前記所定の統計手法および前記上限値も併せて表示すること、
を特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の売上不正発見業務支援装置。
【請求項5】
前記所定の統計手法が、四分位範囲を用いる方法であり、
前記上限値が、第三四分位数に、前記四分位範囲を1.5倍した値を足すことより算出された値であること、
を特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の売上不正発見業務支援装置。
【請求項6】
前記記憶部には、
前記期間と、前記事業所識別データ、前記部門識別データおよび前記担当者識別データのうちの少なくとも一つの前記集計単位と、前記売上金額および前記売上取消金額の組合せならびに前記売上回数および前記売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の前記集計対象と、を含む売上取消率算出結果データが更に格納されており、
前記制御部は、
前記売上取消率算出結果データに基づいて、前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記集計単位についての前記期間毎の前記売上金額および前記売上取消金額を示す棒グラフ、または、前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記集計単位についての前記期間毎の前記売上回数および前記売上取消回数を示す棒グラフを生成する期間毎-金額・回数棒グラフ生成手段を更に備え、
当該棒グラフは、
前記売上取消率算出結果データ中の前記売上金額および前記売上取消金額、または、前記売上取消率算出結果データ中の前記売上回数および前記売上取消回数を縦軸とし、
前記売上取消率算出結果データ中の前記期間を横軸とすること、
を特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の売上不正発見業務支援装置。
【請求項7】
前記記憶部には、
前記期間と、前記事業所識別データ、前記部門識別データおよび前記担当者識別データのうちの少なくとも一つの前記集計単位と、前記売上取消率算出手段で算出した売上取消率と、を含む売上取消率算出結果データが更に格納されており、
前記制御部は、
前記売上取消率算出結果データに基づいて、前記期間毎の前記売上取消率の推移を示す折れ線グラフを、特定の前記集計単位に含まれる種類の分だけ生成する期間毎-売上取消率折れ線グラフ生成手段を更に備え、
当該折れ線グラフは、
前記売上取消率算出結果データ中の前記売上取消率を縦軸とし、
前記売上取消率算出結果データ中の前記期間を横軸とすること、
を特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の売上不正発見業務支援装置。
【請求項8】
前記記憶部には、
前記期間と、前記事業所識別データ、前記部門識別データおよび前記担当者識別データのうちの少なくとも一つの前記集計単位と、前記売上金額および前記売上取消金額の組合せならびに前記売上回数および前記売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の前記集計対象と、を含む売上取消率算出結果データが更に格納されており、
前記制御部は、
前記売上取消率算出結果データに基づいて、前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記期間についての前記集計単位毎の前記売上金額および前記売上取消金額を示す棒グラフ、または、前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記期間についての前記集計単位毎の前記売上回数および前記売上取消回数を示す棒グラフを生成する集計単位毎-金額・回数棒グラフ生成手段を更に備え、
当該棒グラフは、
前記売上取消率算出結果データ中の前記売上金額および前記売上取消金額、または、前記売上取消率算出結果データ中の前記売上回数および前記売上取消回数を縦軸とし、
前記売上取消率算出結果データ中の前記集計単位を横軸とすること、
を特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の売上不正発見業務支援装置。
【請求項9】
前記記憶部には、
前記期間と、登録処理日と、前記事業所識別データ、前記部門識別データおよび前記担当者識別データのうちの少なくとも一つの前記集計単位と、前記売上金額および前記売上取消金額の組合せならびに前記売上回数および前記売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の前記集計対象と、を含む日別売上取消データが更に格納されており、
前記制御部は、
前記日別売上取消データに基づいて、前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せについての前記登録処理日毎の前記売上金額を示す折れ線グラフならびに前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せについての前記登録処理日毎の前記売上取消金額を示す折れ線グラフという2つのグラフの組合せ、または、前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せについての前記登録処理日毎の前記売上回数を示す折れ線グラフならびに前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せについての前記登録処理日毎の前記売上取消回数を示す折れ線グラフという2つのグラフの組合せ、を生成する日毎-金額・回数折れ線グラフ生成手段を更に備え、
当該折れ線グラフは、
前記日別売上取消データ中の前記売上金額、前記売上取消金額、前記売上回数または前記売上取消回数を縦軸とし、
前記日別売上取消データ中の前記登録処理日を横軸とすること、
を特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の売上不正発見業務支援装置。
【請求項10】
制御部および記憶部を備える情報処理装置で実行される、売上の実績に関する不正を発見する業務を支援することができる売上不正発見業務支援方法であって、
前記記憶部には、
期間と、事業所識別データ、部門識別データおよび担当者識別データのうちの少なくとも一つの集計単位と、売上金額および売上取消金額の組合せならびに売上回数および売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の集計対象と、を含む売上金額・売上取消データが格納されており、
前記制御部で実行される、
前記期間および前記集計単位の組合せ毎に、前記集計対象として金額が指定された場合には、前記売上金額・売上取消データ中の前記売上取消金額を前記売上金額・売上取消データ中の前記売上金額で割ることにより、前記集計対象として回数が指定された場合には、前記売上金額・売上取消データ中の前記売上取消回数を前記売上金額・売上取消データ中の前記売上回数で割ることにより、前記期間および前記集計単位の組合せ毎の売上取消率を算出する売上取消率算出ステップと、
所定の統計手法に従い、前記売上取消率算出ステップで算出した売上取消率のうち上限値を上回っているものを異常値として検知する異常値検知ステップと、
前記異常値検知ステップで異常値として検知した売上取消率ならびに当該検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せを表示する異常表示ステップと、
を含むこと、
を特徴とする売上不正発見業務支援方法。
【請求項11】
制御部および記憶部を備える情報処理装置に実行させるための、売上の実績に関する不正を発見する業務を支援することができる売上不正発見業務支援プログラムであって、
前記記憶部には、
期間と、事業所識別データ、部門識別データおよび担当者識別データのうちの少なくとも一つの集計単位と、売上金額および売上取消金額の組合せならびに売上回数および売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の集計対象と、を含む売上金額・売上取消データが格納されており、
前記制御部に実行させるための、
前記期間および前記集計単位の組合せ毎に、前記集計対象として金額が指定された場合には、前記売上金額・売上取消データ中の前記売上取消金額を前記売上金額・売上取消データ中の前記売上金額で割ることにより、前記集計対象として回数が指定された場合には、前記売上金額・売上取消データ中の前記売上取消回数を前記売上金額・売上取消データ中の前記売上回数で割ることにより、前記期間および前記集計単位の組合せ毎の売上取消率を算出する売上取消率算出ステップと、
所定の統計手法に従い、前記売上取消率算出ステップで算出した売上取消率のうち上限値を上回っているものを異常値として検知する異常値検知ステップと、
前記異常値検知ステップで異常値として検知した売上取消率ならびに当該検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せを表示する異常表示ステップと、
を含むこと、
を特徴とする売上不正発見業務支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、売上不正発見業務支援装置、売上不正発見業務支援方法および売上不正発見業務支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、POS端末で売上時に、売上データを取り消す必要が生じたときは新たに設けた誤打申請キーを押下して新たに設けた売上データ中の誤打申請フラグをセットして誤打売上と設定して精算すると共に、誤打申請フラグがセットされている売上データ一覧を表示して管理者が承認して反映し、売上の取り消しを簡易な操作で実現すると共に取消データ一覧を表示して承認して不正防止を図ることを目的とするPOS端末およびPOS管理システムが開示されている(特許文献1の0006段落参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-30210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、売上実績に関する不正(売上不正)の発見を行う分野においては、売上取消率という指標を用いることがよくある。売上取消率は、例えば、売上取消金額/売上金額という計算式により算出される。売上取消率が大きな値となっている場合、売上金額の改ざん等の不正が行われている可能性があるため、売上取消率の増減を注意深く確認することが重要である。
【0005】
しかしながら、売上取消率を算出するためには、売上の計上履歴のデータ等を参照して、必要なデータを担当者が集める必要がある。このため、売上不正の発見業務には時間および労力がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、売上取消率の算出および当該算出した売上取消率のうち異常に数値が増加しているものの検知を自動で行うことにより、売上不正の発見業務を支援することができる売上不正発見業務支援装置、売上不正発見業務支援方法および売上不正発見業務支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る売上不正発見業務支援装置においては、制御部および記憶部を備え、売上の実績に関する不正を発見する業務を支援することができる売上不正発見業務支援装置であって、前記記憶部には、期間と、事業所識別データ、部門識別データおよび担当者識別データのうちの少なくとも一つの集計単位と、売上金額および売上取消金額の組合せならびに売上回数および売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の集計対象と、を含む売上金額・売上取消データが格納されており、前記制御部は、前記期間および前記集計単位の組合せ毎に、前記集計対象として金額が指定された場合には、前記売上金額・売上取消データ中の前記売上取消金額を前記売上金額・売上取消データ中の前記売上金額で割ることにより、前記集計対象として回数が指定された場合には、前記売上金額・売上取消データ中の前記売上取消回数を前記売上金額・売上取消データ中の前記売上回数で割ることにより、前記期間および前記集計単位の組合せ毎の売上取消率を算出する売上取消率算出手段と、所定の統計手法に従い、前記売上取消率算出手段で算出した売上取消率のうち上限値を上回っているものを異常値として検知する異常値検知手段と、前記異常値検知手段で異常値として検知した売上取消率ならびに当該検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せを表示する異常表示手段と、を備えること、を特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る売上不正発見業務支援装置においては、前記記憶部には、前記期間と、前記集計単位と、プラスの値とマイナスの値の両方からなる売上計上金額と、を有するレコードを含む売上計上履歴データが更に格納されており、前記制御部は、前記期間および指定された集計単位の組合せ毎に、前記売上計上履歴データ中の前記売上計上金額を集計する金額集計手段を更に備え、前記金額集計手段は、新規登録された前記レコード中の前記売上計上金額がマイナスの金額である場合には当該マイナスの金額の絶対値、修正前後の関係にある2つの前記レコード同士の前記売上計上金額の合計値がマイナスの金額である場合には当該マイナスの金額の絶対値および削除された前記レコード中のマイナスの前記売上計上金額の絶対値を集計することで、前記期間および前記指定された集計単位の組合せ毎の前記売上取消金額を算出し、前記売上取消金額の集計の対象とならなかった前記レコード中の前記売上計上金額を集計することで、前記期間および前記指定された集計単位の組合せ毎の前記売上金額を算出すること、を特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る売上不正発見業務支援装置においては、前記記憶部には、前記期間と、前記集計単位と、プラスの値とマイナスの値の両方からなる売上計上金額と、を有するレコードを含む売上計上履歴データが更に格納されており、前記制御部は、前記期間および指定された集計単位の組合せ毎に、前記売上計上履歴データ中の前記レコードを回数として集計する回数集計手段を更に備え、前記回数集計手段は、新規登録された前記レコード中の前記売上計上金額がマイナスの金額である場合には当該レコード1つを1回分とし、修正前後の関係にある2つの前記レコード同士の前記売上計上金額の合計値がマイナスの金額である場合には当該2つのレコードを1回分とし、削除された前記レコード1つを1回分として集計することで、前記期間および前記指定された集計単位の組合せ毎の前記売上取消回数を算出し、新規登録された前記レコード中の前記売上計上金額がプラスの金額である場合には当該レコード1つを1回分とし、修正前後の関係にある2つの前記レコード同士の前記売上計上金額の合計値がプラスの金額である場合には当該2つのレコードを1回分とすることで、前記期間および前記指定された集計単位の組合せ毎の前記売上回数を算出すること、を特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る売上不正発見業務支援装置においては、前記異常表示手段は、前記所定の統計手法および前記上限値も併せて表示すること、を特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る売上不正発見業務支援装置においては、前記所定の統計手法が、四分位範囲を用いる方法であり、前記上限値が、第三四分位数に、前記四分位範囲を1.5倍した値を足すことより算出された値であること、を特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る売上不正発見業務支援装置においては、前記記憶部には、前記期間と、前記事業所識別データ、前記部門識別データおよび前記担当者識別データのうちの少なくとも一つの前記集計単位と、前記売上金額および前記売上取消金額の組合せならびに前記売上回数および前記売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の前記集計対象と、を含む売上取消率算出結果データが更に格納されており、前記制御部は、前記売上取消率算出結果データに基づいて、前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記集計単位についての前記期間毎の前記売上金額および前記売上取消金額を示す棒グラフ、または、前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記集計単位についての前記期間毎の前記売上回数および前記売上取消回数を示す棒グラフを生成する期間毎-金額・回数棒グラフ生成手段を更に備え、当該棒グラフは、前記売上取消率算出結果データ中の前記売上金額および前記売上取消金額、または、前記売上取消率算出結果データ中の前記売上回数および前記売上取消回数を縦軸とし、前記売上取消率算出結果データ中の前記期間を横軸とすること、を特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る売上不正発見業務支援装置においては、前記記憶部には、前記期間と、前記事業所識別データ、前記部門識別データおよび前記担当者識別データのうちの少なくとも一つの前記集計単位と、前記売上取消率算出手段で算出した売上取消率と、を含む売上取消率算出結果データが更に格納されており、前記制御部は、前記売上取消率算出結果データに基づいて、前記期間毎の前記売上取消率の推移を示す折れ線グラフを、特定の前記集計単位に含まれる種類の分だけ生成する期間毎-売上取消率折れ線グラフ生成手段を更に備え、当該折れ線グラフは、前記売上取消率算出結果データ中の前記売上取消率を縦軸とし、前記売上取消率算出結果データ中の前記期間を横軸とすること、を特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る売上不正発見業務支援装置においては、前記記憶部には、前記期間と、前記事業所識別データ、前記部門識別データおよび前記担当者識別データのうちの少なくとも一つの前記集計単位と、前記売上金額および前記売上取消金額の組合せならびに前記売上回数および前記売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の前記集計対象と、を含む売上取消率算出結果データが更に格納されており、前記制御部は、前記売上取消率算出結果データに基づいて、前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記期間についての前記集計単位毎の前記売上金額および前記売上取消金額を示す棒グラフ、または、前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記期間についての前記集計単位毎の前記売上回数および前記売上取消回数を示す棒グラフを生成する集計単位毎-金額・回数棒グラフ生成手段を更に備え、当該棒グラフは、前記売上取消率算出結果データ中の前記売上金額および前記売上取消金額、または、前記売上取消率算出結果データ中の前記売上回数および前記売上取消回数を縦軸とし、前記売上取消率算出結果データ中の前記集計単位を横軸とすること、を特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る売上不正発見業務支援装置においては、前記記憶部には、前記期間と、登録処理日と、前記事業所識別データ、前記部門識別データおよび前記担当者識別データのうちの少なくとも一つの前記集計単位と、前記売上金額および前記売上取消金額の組合せならびに前記売上回数および前記売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の前記集計対象と、を含む日別売上取消データが更に格納されており、前記制御部は、前記日別売上取消データに基づいて、前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せについての前記登録処理日毎の前記売上金額を示す折れ線グラフならびに前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せについての前記登録処理日毎の前記売上取消金額を示す折れ線グラフという2つのグラフの組合せ、または、前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せについての前記登録処理日毎の前記売上回数を示す折れ線グラフならびに前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せについての前記登録処理日毎の前記売上取消回数を示す折れ線グラフという2つのグラフの組合せ、を生成する日毎-金額・回数折れ線グラフ生成手段を更に備え、当該折れ線グラフは、前記日別売上取消データ中の前記売上金額、前記売上取消金額、前記売上回数または前記売上取消回数を縦軸とし、前記日別売上取消データ中の前記登録処理日を横軸とすること、を特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る売上不正発見業務支援方法においては、制御部および記憶部を備える情報処理装置で実行される、売上の実績に関する不正を発見する業務を支援することができる売上不正発見業務支援方法であって、前記記憶部には、期間と、事業所識別データ、部門識別データおよび担当者識別データのうちの少なくとも一つの集計単位と、売上金額および売上取消金額の組合せならびに売上回数および売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の集計対象と、を含む売上金額・売上取消データが格納されており、前記制御部で実行される、前記期間および前記集計単位の組合せ毎に、前記集計対象として金額が指定された場合には、前記売上金額・売上取消データ中の前記売上取消金額を前記売上金額・売上取消データ中の前記売上金額で割ることにより、前記集計対象として回数が指定された場合には、前記売上金額・売上取消データ中の前記売上取消回数を前記売上金額・売上取消データ中の前記売上回数で割ることにより、前記期間および前記集計単位の組合せ毎の売上取消率を算出する売上取消率算出ステップと、所定の統計手法に従い、前記売上取消率算出ステップで算出した売上取消率のうち上限値を上回っているものを異常値として検知する異常値検知ステップと、前記異常値検知ステップで異常値として検知した売上取消率ならびに当該検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せを表示する異常表示ステップと、を含むこと、を特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る売上不正発見業務支援プログラムにおいては、制御部および記憶部を備える情報処理装置に実行させるための、売上の実績に関する不正を発見する業務を支援することができる売上不正発見業務支援プログラムであって、前記記憶部には、期間と、事業所識別データ、部門識別データおよび担当者識別データのうちの少なくとも一つの集計単位と、売上金額および売上取消金額の組合せならびに売上回数および売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の集計対象と、を含む売上金額・売上取消データが格納されており、前記制御部に実行させるための、前記期間および前記集計単位の組合せ毎に、前記集計対象として金額が指定された場合には、前記売上金額・売上取消データ中の前記売上取消金額を前記売上金額・売上取消データ中の前記売上金額で割ることにより、前記集計対象として回数が指定された場合には、前記売上金額・売上取消データ中の前記売上取消回数を前記売上金額・売上取消データ中の前記売上回数で割ることにより、前記期間および前記集計単位の組合せ毎の売上取消率を算出する売上取消率算出ステップと、所定の統計手法に従い、前記売上取消率算出ステップで算出した売上取消率のうち上限値を上回っているものを異常値として検知する異常値検知ステップと、前記異常値検知ステップで異常値として検知した売上取消率ならびに当該検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せを表示する異常表示ステップと、を含むこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、売上取消率の算出および当該算出した売上取消率のうち異常に数値が増加しているものの検知を自動で行うことにより、売上不正の発見業務を支援することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、売上不正発見業務支援装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、売上実績に関する不正のイメージの一例を示す図である。
図3図3は、売上取消率の算出のイメージの一例を示す図である。
図4図4は、売上取消金額の一例を示す図である。
図5図5は、分析用初期画面の一例を示す図である。
図6図6は、分析用画面の一例を示す図である。
図7図7は、修正対象の売上データおよび蓄積される売上計上履歴データの一例を示す図である。
図8図8は、通常の売上データ登録をする場合(パターン1)における売上データ登録画面および売上計上履歴データの一例を示す図である。
図9図9は、売上データの増額修正登録をする場合(パターン2)における売上データ登録画面および売上計上履歴データの一例を示す図である。
図10図10は、売上データの減額修正登録をする場合(パターン3)における売上データ登録画面および売上計上履歴データの一例を示す図である。
図11図11は、売上データの削除登録をする場合(パターン4)における売上データ登録画面および売上計上履歴データの一例を示す図である。
図12図12は、マイナス売上データ(赤伝票)の登録をする場合(パターン5)における売上データ登録画面および売上計上履歴データの一例を示す図である。
図13図13は、自動検知実行スケジュールデータおよびその取得に用いるパラメータの一例を示す図である。
図14図14は、取得範囲条件データおよびその取得に用いるパラメータの一例を示す図である。
図15図15は、売上取消率算出結果データからのデータ取得に用いるパラメータの一例を示す図である。
図16図16は、売上計上履歴データ、売上金額・売上取消データおよび売上取消率算出結果データの一例を示す図である。
図17図17は、四分位範囲を用いた異常値の検知の一例を示す図である。
図18図18は、異常判定結果データ、異常判定結果メッセージデータおよび異常判定結果メッセージ詳細データの一例を示す図である。
図19図19は、異常判定結果メッセージデータの取得に用いるパラメータの一例を示す図である。
図20図20は、分析用初期画面における概要メッセージ表示の一例を示す図である。
図21図21は、分析用初期画面における基準日のセットの一例を示す図である。
図22図22は、分析用画面における詳細メッセージ表示の一例を示す図である。
図23図23は、グラフの出力領域の一例を示す図である。
図24図24は、分析用データ取得範囲条件の一例を示す図である。
図25図25は、抽出条件初期値の一例を示す図である。
図26図26は、分析用画面における抽出条件のセットの一例を示す図である。
図27図27は、グラフ1~3の生成の元となるデータ取得に用いるパラメータとして、集計単位「担当者」および集計対象「計上金額」が指定された場合の一例を示す図である。
図28図28は、売上計上履歴データ、売上金額・売上取消データおよび売上取消率算出結果データの一例を示す図である。
図29図29は、グラフ4の生成の元となるデータ取得に用いるパラメータとして、集計単位「担当者」および集計対象「計上金額」が指定された場合の一例を示す図である。
図30図30は、売上計上履歴データおよび日別売上取消データの一例を示す図である。
図31図31は、集計単位が「担当者」かつ集計対象が「計上金額」である場合におけるグラフ1の一例を示す図である。
図32図32は、集計単位が「担当者」かつ集計対象が「計上金額」である場合におけるグラフ2の一例を示す図である。
図33図33は、集計単位が「担当者」かつ集計対象が「計上金額」である場合におけるグラフ3の一例を示す図である。
図34図34は、集計単位が「担当者」かつ集計対象が「計上金額」である場合におけるグラフ4の一例を示す図である。
図35図35は、集計単位が「担当者」かつ集計対象が「計上金額」である場合におけるグラフ1~4の一覧の一例を示す図である。
図36図36は、グラフの着色による強調表示を行う際に設定が必要な着色パラメータの一例を示す図である。
図37図37は、グラフ1~3の生成の元となるデータ取得に用いるパラメータとして、集計単位「担当者」および集計対象「計上回数」が指定された場合の一例を示す図である。
図38図38は、売上計上履歴データ、売上金額・売上取消データおよび売上取消率算出結果データの一例を示す図である。
図39図39は、グラフ4の生成の元となるデータ取得に用いるパラメータとして、集計単位「担当者」および集計対象「計上回数」が指定された場合の一例を示す図である。
図40図40は、売上計上履歴データおよび日別売上取消データの一例を示す図である。
図41図41は、集計単位が「担当者」かつ集計対象が「計上回数」である場合におけるグラフ1の一例を示す図である。
図42図42は、集計単位が「担当者」かつ集計対象が「計上回数」である場合におけるグラフ2の一例を示す図である。
図43図43は、集計単位が「担当者」かつ集計対象が「計上回数」である場合におけるグラフ3の一例を示す図である。
図44図44は、集計単位が「担当者」かつ集計対象が「計上回数」である場合におけるグラフ4の一例を示す図である。
図45図45は、集計単位が「担当者」かつ集計対象が「計上回数」である場合におけるグラフ1~4の一覧の一例を示す図である。
図46図46は、グラフの着色による強調表示を行う際に設定が必要な着色パラメータの一例を示す図である。
図47図47は、グラフ3を、集計対象が「計上金額」である場合と「計上回数」である場合とで比較した場合の一例を示す図である。
図48図48は、グラフ1~3の生成の元となるデータ取得に用いるパラメータとして、集計単位「部門」および集計対象「計上金額」が指定された場合の一例を示す図である。
図49図49は、売上計上履歴データ、売上金額・売上取消データおよび売上取消率算出結果データの一例を示す図である。
図50図50は、グラフ4の生成の元となるデータ取得に用いるパラメータとして、集計単位「部門」および集計対象「計上金額」が指定された場合の一例を示す図である。
図51図51は、売上計上履歴データおよび日別売上取消データの一例を示す図である。
図52図52は、集計単位が「部門」かつ集計対象が「計上金額」である場合におけるグラフ1の一例を示す図である。
図53図53は、集計単位が「部門」かつ集計対象が「計上金額」である場合におけるグラフ2の一例を示す図である。
図54図54は、集計単位が「部門」かつ集計対象が「計上金額」である場合におけるグラフ3の一例を示す図である。
図55図55は、集計単位が「部門」かつ集計対象が「計上金額」である場合におけるグラフ4の一例を示す図である。
図56図56は、集計単位が「部門」」かつ集計対象が「計上金額」である場合におけるグラフ1~4の一覧の一例を示す図である。
図57図57は、グラフの着色による強調表示を行う際に設定が必要な着色パラメータの一例を示す図である。
図58図58は、グラフ2を、集計単位が「担当者」である場合と「部門」である場合とで比較した場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る売上不正発見業務支援装置、売上不正発見業務支援方法および売上不正発見業務支援プログラムの実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0021】
[1.概要]
本項目では、本発明における背景、課題および概要・効果を、項目立てて順に説明する。
【0022】
[1-1.背景]
近年、会社の不正および従業員や幹部の横領等の不祥事(以下、これらをまとめて単に「不正」という。)が増加傾向にある。また、コロナによる影響も重なり、このような不正は更に増加傾向にある。このため、不正は、人の手で検知できる範囲を超えてきており、人の手以外の手段で早期発見し対処できる仕組みが求められている。
【0023】
不正には、様々なものがある。一つ目に、売上実績に関する不正がある。この不正は、売上金額の改ざんにより、実績増しをする不正である。二つ目に、仕入実績に関する不正がある。この不正は、取引先との共謀による架空支払により、癒着をする不正である。三つ目に、在庫に関する不正がある。この不正は、期末在庫金額の水増し等により、利益操作をする不正である。本実施形態は、これらのうち一つ目の売上実績に関する不正(以下、「売上不正」という。)を扱う。
【0024】
売上不正は、通常、担当者毎または組織毎の売上目標を達成するために行われることが多い。売上不正は、特に子会社での発生事例が多く、親会社側で不正を防止する対策が求められている。
【0025】
売上不正の仕方として、例えば、図2に示すように、期末時点で高額な売上額の増加操作を行い、翌期首に高額な売上の取消操作を行うという方法が挙げられる。
【0026】
売上不正を行うと、月毎の売上実績で見た場合に、売上実績の割に明らかに高額な売上取消額が発生する形となる。このため、図3に示すように、単月内の売上金額および売上取消金額から、売上取消率を算出すれば、当該算出した売上取消率が異常に大きい数値となっている担当者または組織を、異常対象として検知することができる。
【0027】
売上取消率は、金額に着目した場合、例えば、「売上取消金額/売上金額」という計算式により算出可能である。当該計算式における売上取消金額は、絶対値である。従来においては、担当者が、膨大なデータを参照して手作業で売上取消率の算出を行うことで、売上不正の発見を行っていた。
【0028】
[1-2.課題]
しかしながら、担当者による人の手による売上不正の発見に関しては、以下の(1)および(2)の問題があった。
【0029】
(1)まず、問題の一つ目として、担当者毎または組織毎に売上実績および取消実績の集計をするのは、時間がかかるという問題があった。すなわち、売上の不正を発見するためには、担当者または組織のすべてを確認対象として、売上実績および売上計上履歴の全データから当該確認対象別に集計し、取消実績を確認するために売上の減額処理となっているデータのみを抽出して集計し、集計した売上実績および売上取消実績を比較して確認する必要がある。要するに、膨大な取引データから条件を絞って集計確認する必要があるため、作業時間がかかる上にミス発生のリスクも高いという問題があった。
【0030】
(2)また、問題の二つ目として、不正が行われやすい期末実績と翌期首実績を担当者毎または組織毎に比較して確認する必要があり、作業量および時間がかかる上に、確認ミスおよび確認漏れが発生するリスクがあるという問題があった。すなわち、売上の不正を発見するためには、前期末実績および翌期首実績を確認対象として、売上実績および取消実績を当該確認対象同士で比較し、不自然な売上実績発生および月替わりでの不自然な売上取消発生を確認する必要がある。要するに、単月のデータのみの確認では売上不正かどうかの判断までつかないケースが多いため、複数月の実績を確認する翌期末時点でようやく売上不正が発覚する形となるため、不正発覚までに時間がかかるという問題があった。
【0031】
[1-3.概要・効果]
そこで、本実施形態においては、上記課題(1)および(2)を解決するために、例えば、以下の(1)および(2)の機能を実装した。
【0032】
(1)まず、単月内の売上金額および売上取消金額から、売上取消率を算出して、異常に高い売上取消率を自動で検知できるようにした。具体的には、単月内の売上計上履歴を参照して、担当者毎または組織毎の売上取消率を自動算出し、年間の月と比較して異常に売上取消率が高くなっている月および担当者または組織をユーザに知らせることができるようにした。これにより、例えば、担当者毎または組織毎に売上実績を集計するコストを排除することに成功した。
【0033】
(2)また、異常検知された月および周辺の月について、売上金額および売上取消金額を可視化して比較することで、異常検知された月の売上取消金額について、異常と判断する根拠を示せるようにした。具体的には、異常と判断された際に通知される売上取消率の内訳を確認できるようにすることで、金額の大きさや過去月からの実績発生傾向から、売上取消金額の妥当性を分析できるようにした。要するに、複数月との比較において、売上金額および売上取消金額の2軸同時確認を1度にできるようにした。
【0034】
以上をまとめると、本実施形態においては、例えば、不正パターンをシナリオ化して、定期的に自動で検知することにより、売上不正の早期発見および売上不正への対処を手動ではなく自動で行えるようにした。
【0035】
なお、本願明細書および本願図面においては、「売上取消金額」とは、売上実績から減額処理された金額を指すものとする。具体的には、図4の表の右列に示すように、「売上取消金額」とは、売上のマイナス額計上をした場合の減額分、売上の減額修正をした場合の減額分および売上の削除をした場合の削除分を指す。以下、具体的な構成および動作について説明する。
【0036】
[2.構成]
本実施形態に係る売上不正発見業務支援装置100の構成の一例について、図1を参照して説明する。図1は、売上不正発見業務支援装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0037】
売上不正発見業務支援装置100は、市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータである。なお、売上不正発見業務支援装置100は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置に限らず、市販されているノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置であってもよい。
【0038】
売上不正発見業務支援装置100は、制御部102と通信インターフェース部104と記憶部106と入出力インターフェース部108と、を備えている。売上不正発見業務支援装置100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0039】
通信インターフェース部104は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、売上不正発見業務支援装置100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インターフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、売上不正発見業務支援装置100とサーバ200とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。なお、後述する各種マスタ等のデータは、例えばサーバ200に格納されてもよい。
【0040】
入出力インターフェース部108には、入力装置112および出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、及びマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。なお、以下では、出力装置114をモニタ114とし、入力装置112をキーボード112またはマウス112として記載する場合がある。
【0041】
記憶部106には、各種のデータベース、テーブルおよびファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および光ディスク等を用いることができる。
【0042】
記憶部106は、例えば、自動検知実行スケジュールデータ106aと、取得範囲条件データ106bと、売上計上履歴データ106cと、売上金額・売上取消データ106dと、売上取消率算出結果データ106eと、日別売上取消データ106fと、異常判定結果データ106gと、異常判定結果メッセージデータ106hと、異常判定結果メッセージ詳細データ106iと、を備えている。
【0043】
各データの内容について詳細に説明する前に、各データの概要および位置付けを説明する。
【0044】
自動検知実行スケジュールデータ106aおよび取得範囲条件データ106bは、「異常検知実行用データ」に属し、異常検知を行うための事前設定データである。
【0045】
売上計上履歴データ106c、売上金額・売上取消データ106dと、売上取消率算出結果データ106eおよび日別売上取消データ106fは、「業務データ」に属し、業務の中で蓄積されている想定のデータである。売上計上履歴データ106cには、業務の中で行われる売上計上、売上修正および売上削除のデータが含まれる。修正の履歴については、修正前の赤伝票データと修正後の黒伝票データが存在する形となる。図7には、2021/4/15に計上された売上金額1000円を、2021/4/20に700円に修正する場合に蓄積される売上計上履歴データ106cを示している。
【0046】
異常判定結果データ106g、異常判定結果メッセージデータ106hおよび異常判定結果メッセージ詳細データ106iは、「異常判定結果データ」に属し、異常検知実行の判定結果を格納するデータである。
【0047】
以下、各データの内容について詳細に説明する。
【0048】
自動検知実行スケジュールデータ106aは、図13に示すように、例えば、検知IDと、スケジュールIDと、実行条件と、実行時間と、等を含む。
【0049】
取得範囲条件データ106bは、例えば、売上計上履歴データ106cからデータを取得する際の範囲を設定するためのデータである。取得範囲条件データ106bは、図14に示すように、例えば、前記検知IDと、前記スケジュールIDと、対象列と、FROM条件と、TO条件と、等を含む。
【0050】
ここで、本実施形態においては、売上金額および売上取消金額の組合せ、ならびに、売上回数および売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一つの組合せが、集計対象である。また、本実施形態においては、事業所識別データ(事業所)、部門識別データ(部門)および担当者識別データ(担当者)のうちの少なくとも一つは、前記集計対象を集計する際の集計単位である。
【0051】
売上計上履歴データ106cは、日々の売上計上を積み上げたデータである。売上計上履歴データ106cは、図28図30図38図40図49および図51等に示すように、例えば、登録処理分類と、履歴連番と、期間(会計年月)と、伝票番号と、売上日と、前記事業所識別データ(事業所)と、前記部門識別データ(部門)と、前記担当者識別データ(担当者)と、売上計上金額(売上金額)と、登録処理日と、等を有するレコードを含む。前記売上計上金額(売上金額)は、プラスの値とマイナスの値の両方からなる。前記登録処理分類としては、例えば、前記レコードが新規登録されたものであることを示す分類(新規登録)、前記レコードが修正前のものであることを示す分類(修正前)、前記レコードが修正後のものであることを示す分類(修正後)および前記レコードが削除されたものであることを示す分類(削除)等が挙げられる。
【0052】
ここで、業務上の売上計上履歴データ106cの蓄積パターンとして、5つのパターンについて説明する。
【0053】
一つ目のパターンとして、図8に示すように、通常の売上データ登録が挙げられる。図8の売上計上履歴データ106cにおいて履歴連番「1」で示す明細が、一つ目のパターンで登録される明細である。
【0054】
二つ目のパターンとして、図9に示すように、売上データの増額修正登録が挙げられる。関連する履歴は伝票番号で紐付いている。また、修正データについては、一方の明細が「修正前」の登録処理分類を有し、他方の明細が「修正後」の登録処理分類を有するという関係にあり、かつ、これら2明細の履歴連番が連続している場合、これら2明細を1セットとして考える。図9の売上計上履歴データ106cの例では、登録処理分類「修正前」かつ履歴連番「2」の明細と、登録処理分類「修正後」かつ履歴連番「3」の明細と、が1セットである。図9の売上計上履歴データ106cにおいて履歴連番「2」および「3」でそれぞれ示す2明細が、二つ目のパターンで登録される明細である。
【0055】
三つ目のパターンとして、図10に示すように、売上データの減額修正登録が挙げられる。伝票番号の紐付きの考え方、および、修正前後の明細同士を1セットとする考え方については、二つ目のパターンと同様である。図10の売上計上履歴データ106cにおいて履歴連番「4」および「5」でそれぞれ示す2明細が、三つ目のパターンで登録される明細である。
【0056】
四つ目のパターンとして、図11に示すように、売上データの削除登録が挙げられる。伝票番号の紐付きの考え方については、二つ目のパターンと同様である。図11の売上計上履歴データ106cにおいて履歴連番「6」で示す明細が、四つ目のパターンで登録される明細である。
【0057】
五つ目のパターンとして、図12に示すように、マイナス売上データ(赤伝票)の登録が挙げられる。図12の売上計上履歴データ106cにおいて履歴連番「7」で示す明細が、五つ目のパターンで登録される明細である。
【0058】
記憶部106に含まれるデータの説明に戻り、売上金額・売上取消データ106dは、売上計上履歴データ106cを参照して算出した、前記売上金額および前記売上取消金額、または、前記売上回数および前記売上取消回数を、前記期間(会計年月)および指定された前記集計単位の組合せ毎に含むデータである。売上金額・売上取消データ106dは、図28図38および図49等に示すように、例えば、前記期間(会計年月)と、前記事業所識別データ(事業所)、前記部門識別データ(部門)および前記担当者識別データ(担当者)のうちの少なくとも一つの前記集計単位と、前記売上金額および前記売上取消金額の組合せならびに前記売上回数および前記売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の集計対象と、等を含む。
【0059】
売上取消率算出結果データ106eは、売上金額・売上取消データ106dを参照して算出した売上取消率を、前記期間(会計年月)および指定された前記集計単位の組合せ毎に含むデータである。売上取消率算出結果データ106eは、図28図38および図49等に示すように、例えば、前記期間(会計年月)と、前記事業所識別データ(事業所)、前記部門識別データ(部門)および前記担当者識別データ(担当者)のうちの少なくとも一つの前記集計単位と、前記売上金額および前記売上取消金額の組合せならびに前記売上回数および前記売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の集計対象と、算出した売上取消率と、等を含む。
【0060】
売上取消率算出結果データ106eは、前記売上取消金額の内訳として、例えば、マイナス修正金額、削除金額およびマイナス売上金額を更に含んでいてもよい。また、売上取消率算出結果データ106eは、前記売上取消回数の内訳として、例えば、マイナス修正回数、削除回数およびマイナス売上回数を更に含んでいてもよい。
【0061】
日別売上取消データ106fは、売上計上履歴データ106cを参照して算出した、前記売上金額および前記売上取消金額、または、前記売上回数および前記売上取消回数を、前記期間(会計年月)、前記登録処理日および前記指定された集計単位の組合せ毎に含むデータである。日別売上取消データ106fは、図30図40および図51等に示すように、例えば、前記期間(会計年月)と、前記登録処理日と、前記事業所識別データ(事業所)、前記部門識別データ(部門)および前記担当者識別データ(担当者)のうちの少なくとも一つの前記集計単位と、前記売上金額および前記売上取消金額の組合せならびに前記売上回数および前記売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の前記集計対象と、等を含む。
【0062】
異常判定結果データ106gは、図18等に示すように、例えば、売上取消率の異常を検知(以下、本段落では「異常検知」という。)した前記検知IDである異常検知ID(検知ID)と、異常検知したJOBを識別するためのIDである異常検知JOBID(JOBID)と、異常検知した際に出力するメッセージを識別するためのIDであるメッセージIDと、異常検知した期間(会計年月)と、異常検知した事業所についての前記事業所識別データ(事業所)と、異常検知した部門についての前記部門識別データ(部門)と、異常検知した担当者についての前記担当者識別データ(担当者)と、検知した異常な売上取消率と、所定の統計手法を用いて求めた上限値と、等を含む。
【0063】
異常判定結果メッセージデータ106hは、図18等に示すように、例えば、前記異常検知ID(検知ID)と、前記異常検知JOBID(JOBID)と、前記メッセージIDと、異常の有無を識別するための区分(異常度)と、前記異常検知JOBIDで特定される定義名と、概要と、検知した内容(検知対象)と、等を含む。当該検知した内容とは、検知した異常な売上取消率ならびにこれに対応する前記期間(会計年月)および前記担当者識別データ(担当者)の組合せである。
【0064】
異常判定結果メッセージ詳細データ106iは、図18等に示すように、例えば、前記異常検知ID(検知ID)と、前記異常検知JOBID(JOBID)と、前記メッセージIDと、前記所定の統計手法(検知手法)と、閾値と、判定方法と、前記上限値と、等を含む。
【0065】
制御部102は、売上不正発見業務支援装置100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。
【0066】
制御部102は、機能概念的に、例えば、(1)前記期間および指定された集計単位の組合せ毎に、前記売上計上履歴データ中の前記売上計上金額を集計する金額集計手段としての金額集計部102aと、(2)前記期間および指定された集計単位の組合せ毎に、前記売上計上履歴データ中の前記レコードを回数として集計する回数集計手段としての回数集計部102bと、(3)前記期間および前記集計単位の組合せ毎に、前記集計対象として金額が指定された場合には、前記売上金額・売上取消データ中の前記売上取消金額を前記売上金額・売上取消データ中の前記売上金額で割ることにより、前記集計対象として回数が指定された場合には、前記売上金額・売上取消データ中の前記売上取消回数を前記売上金額・売上取消データ中の前記売上回数で割ることにより、前記期間および前記集計単位の組合せ毎の売上取消率を算出する売上取消率算出手段としての売上取消率算出部102cと、(4)所定の統計手法に従い、前記売上取消率算出手段で算出した売上取消率のうち上限値を上回っているものを異常値として検知する異常値検知手段としての異常値検知部102dと、(5)前記異常値検知手段で異常値として検知した売上取消率ならびに当該検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せを表示する異常表示手段としての異常表示部102eと、(6)前記売上取消率算出結果データに基づいて、前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記集計単位についての前記期間毎の前記売上金額および前記売上取消金額を示す棒グラフ、または、前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記集計単位についての前記期間毎の前記売上回数および前記売上取消回数を示す棒グラフを生成する期間毎-金額・回数棒グラフ生成手段としての期間毎-金額・回数棒グラフ生成部102fと、(7)前記売上取消率算出結果データに基づいて、前記期間毎の前記売上取消率の推移を示す折れ線グラフを、特定の前記集計単位に含まれる種類の分だけ生成する期間毎-売上取消率折れ線グラフ生成手段としての期間毎-売上取消率折れ線グラフ生成部102gと、(8)前記売上取消率算出結果データに基づいて、前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記期間についての前記集計単位毎の前記売上金額および前記売上取消金額を示す棒グラフ、または、前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記期間についての前記集計単位毎の前記売上回数および前記売上取消回数を示す棒グラフを生成する集計単位毎-金額・回数棒グラフ生成手段としての集計単位毎-金額・回数棒グラフ生成部102hと、(9)前記日別売上取消データに基づいて、前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せについての前記登録処理日毎の前記売上金額を示す折れ線グラフならびに前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せについての前記登録処理日毎の前記売上取消金額を示す折れ線グラフという2つのグラフの組合せ、または、前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せについての前記登録処理日毎の前記売上回数を示す折れ線グラフならびに前記異常値検知手段で検知した売上取消率に対応する前記期間および前記集計単位の組合せについての前記登録処理日毎の前記売上取消回数を示す折れ線グラフという2つのグラフの組合せ、を生成する日毎-金額・回数折れ線グラフ生成手段としての日毎-金額・回数折れ線グラフ生成部102iと、を備えている。
【0067】
金額集計部102aは、前記会計年月および指定された集計単位の組合せ毎に、前記会計年月と前記集計単位とプラスの値とマイナスの値の両方からなる前記売上計上金額とを有する前記レコードを含む売上計上履歴データ106c中の前記売上計上金額を集計する。
【0068】
具体的には、金額集計部102aは、新規登録された前記レコード中の前記売上計上金額がマイナスの金額である場合には当該マイナスの金額の絶対値、修正前後の関係にある2つの前記レコード同士の前記売上計上金額の合計値がマイナスの金額である場合には当該マイナスの金額の絶対値および削除された前記レコード中のマイナスの前記売上計上金額の絶対値を集計することで、前記会計年月および前記指定された集計単位の組合せ毎の前記売上取消金額を算出する。また、金額集計部102aは、前記売上取消金額の集計の対象とならなかった前記レコード中の前記売上計上金額を集計することで、前記会計年月および前記指定された集計単位の組合せ毎の前記売上金額を算出する。
【0069】
回数集計部102bは、前記会計年月および指定された集計単位の組合せ毎に、前記会計年月と前記集計単位とプラスの値とマイナスの値の両方からなる前記売上計上金額とを有する前記レコードを含む売上計上履歴データ106c中の前記レコードを回数として集計する。
【0070】
具体的には、回数集計部102bは、新規登録された前記レコード中の前記売上計上金額がマイナスの金額である場合には当該レコード1つを1回分とし、修正前後の関係にある2つの前記レコード同士の前記売上計上金額の合計値がマイナスの金額である場合には当該2つのレコードを1回分とし、削除された前記レコード1つを1回分として集計することで、前記会計年月および前記指定された集計単位の組合せ毎の前記売上取消回数を算出する。また、回数集計部102bは、新規登録された前記レコード中の前記売上計上金額がプラスの金額である場合には当該レコード1つを1回分とし、修正前後の関係にある2つの前記レコード同士の前記売上計上金額の合計値がプラスの金額である場合には当該2つのレコードを1回分とすることで、前記会計年月および前記指定された集計単位の組合せ毎の前記売上回数を算出する。
【0071】
売上取消率算出部102cは、前記会計年月と、前記集計単位と、前記売上金額および前記売上取消金額の組合せならびに前記売上回数および前記売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の集計対象と、を含む売上金額・売上取消データ106dに基づいて、前記会計年月および前記集計単位の組合せ毎に、前記集計対象として「金額」が指定された場合には、売上金額・売上取消データ106dの前記売上取消金額を売上金額・売上取消データ106d中の前記売上金額で割ることにより、前記会計年月および前記集計単位の組合せ毎の売上取消率を算出する。また、売上取消率算出部102cは、売上金額・売上取消データ106dに基づいて、前記会計年月および前記集計単位の組合せ毎に、前記集計対象として「回数」が指定された場合には、売上金額・売上取消データ106dの前記売上取消回数を売上金額・売上取消データ106d中の前記売上回数で割ることにより、前記会計年月および前記集計単位の組合せ毎の売上取消率を算出する。
【0072】
異常値検知部102dは、所定の統計手法に従い、売上取消率算出部102cで算出した売上取消率のうち上限値を上回っているものを異常値として検知する。前記所定の統計手法は、特に限定されないが、例えば、四分位範囲を用いる方法である。四分位範囲を用いる場合、前記上限値は、例えば、第三四分位数に、前記四分位範囲を1.5倍した値を足すことより算出された値である。
【0073】
異常表示部102eは、異常値検知部102dで異常値として検知した売上取消率ならびに当該検知した売上取消率に対応する前記会計年月および前記集計単位の組合せを表示する。この際、異常表示部102eは、前記所定の統計手法および前記上限値も併せて表示してもよい。
【0074】
期間毎-金額・回数棒グラフ生成部102fは、前記会計年月と、前記集計単位と、前記売上金額および前記売上取消金額の組合せならびに前記売上回数および前記売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の前記集計対象と、を含む売上取消率算出結果データ106eに基づいて、異常値検知部102dで検知した売上取消率に対応する前記集計単位についての前記会計年月毎の前記売上金額および前記売上取消金額を示す棒グラフ(図31および図52参照)、または、異常値検知部102dで検知した売上取消率に対応する前記集計単位についての前記会計年月毎の前記売上回数および前記売上取消回数を示す棒グラフ(図41参照)を生成する。
【0075】
前段落で説明した棒グラフの縦軸および横軸は、以下のとおりである。
縦軸:売上取消率算出結果データ106e中の前記売上金額および前記売上取消金額、または、売上取消率算出結果データ106e中の前記売上回数および前記売上取消回数
横軸:売上取消率算出結果データ106e中の前記会計年月
【0076】
期間毎-売上取消率折れ線グラフ生成部102gは、前記会計年月と、前記集計単位と、売上取消率算出部102cで算出した売上取消率と、を含む売上取消率算出結果データ106eに基づいて、前記会計年月毎の前記売上取消率の推移を示す折れ線グラフ(図32図42および図53参照)を、特定の前記集計単位に含まれる種類の分だけ生成する。
【0077】
前段落で説明した折れ線グラフの縦軸および横軸は、以下のとおりである。
縦軸:売上取消率算出結果データ106e中の前記売上取消率
横軸:売上取消率算出結果データ106e中の前記会計年月
【0078】
集計単位毎-金額・回数棒グラフ生成部102hは、前記会計年月と、前記集計単位と、前記売上金額および前記売上取消金額の組合せならびに前記売上回数および前記売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の前記集計対象と、を含む売上取消率算出結果データ106eに基づいて、異常値検知部102dで検知した売上取消率に対応する前記会計年月についての前記集計単位毎の前記売上金額および前記売上取消金額を示す棒グラフ(図33および図54参照)、または、異常値検知部102dで検知した売上取消率に対応する前記会計年月についての前記集計単位毎の前記売上回数および前記売上取消回数を示す棒グラフ(図43参照)を生成する。
【0079】
前段落で説明した棒グラフの縦軸および横軸は、以下のとおりである。
縦軸:売上取消率算出結果データ106e中の前記売上金額および前記売上取消金額、または、売上取消率算出結果データ106e中の前記売上回数および前記売上取消回数
横軸:売上取消率算出結果データ106e中の前記集計単位
【0080】
日毎-金額・回数折れ線グラフ生成部102iは、前記会計年月と、前記登録処理日と、前記集計単位と、前記売上金額および前記売上取消金額の組合せならびに前記売上回数および前記売上取消回数の組合せのうちの少なくとも一方の前記集計対象と、を含む日別売上取消データ106fに基づいて、異常値検知部102dで検知した売上取消率に対応する前記会計年月および前記集計単位の組合せについての前記登録処理日毎の前記売上金額を示す折れ線グラフならびに異常値検知部102dで検知した売上取消率に対応する前記会計年月および前記集計単位の組合せについての前記登録処理日毎の前記売上取消金額を示す折れ線グラフという2つのグラフの組合せ(図34および図55参照)、または、異常値検知部102dで検知した売上取消率に対応する前記会計年月および前記集計単位の組合せについての前記登録処理日毎の前記売上回数を示す折れ線グラフならびに異常値検知部102dで検知した売上取消率に対応する前記会計年月および前記集計単位の組合せについての前記登録処理日毎の前記売上取消回数を示す折れ線グラフという2つのグラフの組合せ(図44参照)、を生成する。
【0081】
前段落で説明した折れ線グラフの縦軸および横軸は、以下のとおりである。
縦軸:日別売上取消データ106f中の前記売上金額、前記売上取消金額、前記売上回数または前記売上取消回数
横軸:日別売上取消データ106f中の前記登録処理日
【0082】
[3.処理の概要および画面構成]
[3-1.処理の概要]
本実施形態においては、「売上実績に対する売上取消率」を出力する。また、本実施形態においては、更に、「検知した情報に関連する業務データ」も併せて出力する。異常検知した情報は、異常と一目でわかるように、色や文字サイズを変えて強調表現を行ってもよい。検知の対象となるデータは、例えば、月および担当者の組合せ毎の、売上実績に対する売上取消率である。例えば、単月内で売上取消金額が異常に多い担当者が検知される。
【0083】
[3-2.画面構成]
本実施形態においては、以下の(1)→(2)の順番で表示される画面が切り替わる。
【0084】
(1)異常検知結果の表示
まず、図5の画面例にAで示すように、売上取消率の異常を検知した結果が、概要メッセージレベルで表示される。図5にAで示すエリアは、異常検知処理に関するメッセージを表示するエリアである。具体的には、このエリアには、異常として検知されたタイミング、担当者および売上取消率が表示される。なお、異常として検知された情報が複数存在する場合は、図5にAで示すように、複数の情報が縦並びで表示される。このエリアには、概要ベースでの異常検知結果が表示されるに過ぎないため、詳細ベースでの異常検知結果を見たい場合には、概要メッセージを選択して画面を切り替える必要がある。
【0085】
(2)検知された異常な情報に関連する業務データの表示
次に、検知された異常な情報の分析に必要な詳細メッセージおよびグラフが表示される。
【0086】
図6のAのうち下半分に示すエリアは、異常検知結果に関する詳細メッセージを表示するエリアである。このエリアには、「異常を検知する際に使用した検知方法」および「異常を検知したデータのキーとなる情報」等が表示される。なお、異常として検知された情報が複数存在する場合は、その数分の概要メッセージ表示がなされるが、当該表示された概要メッセージのうち選択されたものについてのみ、詳細メッセージが表示される。更に、詳細メッセージの表示後、続けて以下のB~Eのグラフが表示される。
【0087】
図6のBのエリアに示すグラフは、特定の担当者が計上した売上実績金額および売上取消金額を示すグラフである。すなわち、「異常検知された担当者の月毎の売上実績金額および売上取消金額がどれだけ発生しているか」を確認するためのグラフである。なお、出力する対象となる担当者は、指定することで切り替えることができるため、別担当者との傾向の違いを確認することもできる。
【0088】
図6のCのエリアに示すグラフは、担当者毎の売上取消率を示すグラフである。すなわち、「月および担当者毎の、売上実績金額に対する売上取消率推移」を確認するためのグラフである。このグラフにより、異常検知された担当者と他担当者について、売上取消率の推移状況を比較することができる。
【0089】
図6のDのエリアに示すグラフは、単月内における担当者毎の売上実績金額および売上取消金額を示すグラフである。すなわち、「担当者毎の売上実績金額および売上取消金額の内訳」を確認するためのグラフである。このグラフにより、異常検知された担当者と他担当者について、訂正金額の発生額の違いを比較することができる。なお、取消の手段としては、マイナス金額計上、削除および減額修正等があるが、このグラフにおいては、前記取消の手段毎の内訳も表示することができる。
【0090】
図6のEのエリアに示すグラフは、特定担当者が計上した、単月内における日別の売上金額および売上取消金額を示すグラフである。すなわち、「異常検知された担当者が計上した日付別売上金額および日付別売上取消金額」を確認するためのグラフである。このグラフにより、単月内のどのタイミングで実績が計上されているか、および、集中しているタイミングが無いか、等を確認することができる。
【0091】
図6のFのエリアは、データ抽出用の抽出条件を設定するエリアである。すなわち、図6のB~Eのエリアに表示されたグラフについて、条件を変えてデータを抽出した結果を表示したい場合に使用されるエリアである。例えば、組織レベルで出力データを切り替えて分析したい場合には、図6のFのエリアにおいて、「事業所」または「部門」が指定されることになる。また、売上の登録回数の視点に切り替えて分析したい場合には、図6のFのエリアにおいて、「計上回数」が指定されることになる。
【0092】
[4.処理の具体例]
本項目では、本実施形態に係る処理の具体例を説明する。[4-1]においては、業務データ内にある売上計上履歴データ106cの内容を確認して、売上の実績に対する売上の取消率が異常に高い担当者を自動で検知する処理(異常検知処理)について説明する。[4-2]においては、検知した異常なデータ、および、検知するために参照した、当該異常なデータと関連のあるデータを分析用画面に表示する処理(分析用画面表示処理)について説明する。
【0093】
[4-1:異常検知処理]
(1)事前設定
事前設定として、異常検知に必要な情報をテーブルに予め保存しておく。本例においては、自動検知実行スケジュールデータ106aは図13に示す内容で、取得範囲条件データ106bは図14に示す内容で設定されて保存されているものとする。
【0094】
(2)自動実行
(2-1)自動検知実行スケジュールデータ106aの取得
まず、(1)で設定されている自動検知実行スケジュールデータ106aが自動取得される。具体的には、パラメータとして、図13に示すように「検知ID:AB001、スケジュールID:SH001」が設定されているとすると、当該検知IDおよび当該スケジュールIDを有するデータとして、図13に示す自動検知実行スケジュールデータ106aが自動取得される。
【0095】
(2-2)異常検知タイミングであるか否かの判定
次に、(2-1)で自動取得されたタイミングが、異常を検知するタイミングであるか否かが判定される。具体的には、(2-1)で自動取得されたタイミングが、「2021/04/07(4月の5営業日目)」であるとする。なお、業務データベースに存在するカレンダーマスタを参照することで、休日および営業日は判断可能であり、カレンダーマスタは、販売の営業カレンダーベースで常に最新化されていることを想定している。
【0096】
ここで、(2-1)で自動取得された図13の自動検知実行スケジュールデータ106aを参照すると、実行条件は、「毎月5営業日目」である。このように、自動検知実行スケジュールデータ106aが自動取得されたタイミングと、自動検知実行スケジュールデータ106a中に設定された実行条件で定義されるタイミングと、が一致する場合には、実行判定結果は「実行する」となり、(2-3)以降の処理が実行される。これに対して、一致しない場合には、実行判定結果は「実行しない」となり、処理は終了する。
【0097】
(2-3)異常を検知するデータの範囲条件の取得
次に、(1)で設定された取得範囲条件データ106bが自動取得される。具体的には、(2-1)で設定されたパラメータ「検知ID:AB001、スケジュールID:SH001」を有するデータとして、図14に示す取得範囲条件データ106bが自動取得される。
【0098】
(2-4)売上取消率が異常に高い担当者の検知
最後に、業務データ内の売上計上履歴データ106cを参照して、売上取消率が異常に高い担当者が検知される。なお、本例においては、売上計上履歴データ106cは、図16に示す内容で設定されて保存されているものとする。
【0099】
(2-4-1)売上取消率の算出
まず、金額集計部102aは、図16の売上計上履歴データ106cを参照して、以下のルールに基づいて、売上取消金額および売上金額を集計する。
(ルール)
売上取消金額については、以下のa~cのいずれかの集計条件に該当するレコード中の金額を絶対値で集計する。
a.登録処理分類が「新規登録」、かつ、金額がマイナス
b.登録処理分類が「修正」、かつ、修正前後の合計金額がマイナス
c.登録処理分類が「削除」
売上金額については、売上取消金額の集計条件に該当しないレコード中の金額を集計する。
【0100】
なお、(2-3)で自動取得された図14に示す「売上計上履歴データの取得範囲条件データ106b」に基づいて、図15に示すように、「抽出条件列:会計年月、FROM条件:2020/05、TO条件:2021/04」というパラメータが自動設定されているとする。この場合、金額集計部102aは、図16の売上計上履歴データ106cのうち、会計年月2020/05~2021/04を有するレコードのみを集計の対象とする。
【0101】
集計結果は、図16の売上金額・売上取消データ106dに示すとおりであるとする。続けて、売上取消率算出部102cは、売上取消率の算出式(売上取消金額/売上金額)に基づいて、売上取消率を%の値に変換して取得する。算出結果は、図16の売上取消率算出結果データ106eに示すとおりであるとする。
【0102】
(2-4-2)異常値の検知
次に、統計手法の一つである「四分位範囲」を用いて、売上取消率算出結果データ106eから上限値および下限値が求められ、当該上限値に基づいて異常値が検知される。図17は、図16の売上取消率算出結果データ106e中の担当者Aに着目した場合における、上限値(20%)および下限値(0%)の取得の仕方を示す図である。図17に示すように、担当者Aについての売上取消率を箱ひげ図にプロットしていくと、2021/04の売上取消率31%は、上限値20%を上回る。このため、異常値検知部102dは、2021/04の売上取消率31%を異常値として検知する。なお、本段落の例では、説明を簡便にするために、担当者Aについての異常の検知についてのみ説明したが、実際の処理としては、異常値検知部102dは、すべての担当者について異常値の検知を行う。
【0103】
ここで、代表的な3つの統計手法について説明する。一つ目に、標準偏差は、ある地点での値の分布をとり、信頼区間を設けて正常・異常を判断する手法である。標準偏差は、時間軸の概念を含まない分析のため、「過去からの傾向」という横断データ分析に向かない手法となる。二つ目に、本例で用いた四分位範囲は、データの分析範囲を定め、縦軸に集約し、四分位の範囲を定めて正常と判断できる範囲倍率を指定する手法である。四分位範囲は、時系列データも地点データも縦軸要素として扱うため、横断データ分析に対応が可能である。三つ目に、移動平均+外れ値は、平均値をとる範囲を定め、時系列毎に算出する手法である。移動平均+外れ値は、平均値の値より異常と判断する閾値を事前に設定する必要があるが、時系列の推移において、異常な増減検知に対応が可能である。本実施形態においては、四分位範囲および移動平均+外れ値が候補として上がるが、移動平均+外れ値については、ユーザ側で異常と判断する平均値の閾値を設定する必要がある。このため、本実施形態においては、自動で閾値を算出して異常を判断可能な四分位範囲を採用することが好ましい。
【0104】
(2-4-3)異常値の保存
最後に、異常値検知部102dは、異常判定結果(会計年月:2021/04、担当者:担当者A、売上取消率:31%)等の情報をテーブルに保存し、同時に、分析用画面に表示するためのメッセージも保存する。当該異常判定結果を保存することで生成された異常判定結果データ106g、異常判定結果メッセージデータ106hおよび異常判定結果メッセージ詳細データ106iを、図18に示す。
【0105】
[4-2:分析用画面表示処理]
(1)概要メッセージの表示
続いて、業務データ内の売上計上履歴データ106cより、異常として自動検知された情報が分析用初期画面に出力される。以下、分析用初期画面の取得や表示について、(1-1)~(1-3)で詳細に説明する。
【0106】
(1-1)異常を検知した結果メッセージの取得
まず、パラメータとして、図19に示すように、「JOBID:売上取消アラート」が設定されているとする。なお、検知された情報を一覧に表示するため、検知IDは、図19に示すように未設定の状態であるものとする。この場合、異常表示部102eは、「JOBID:売上取消アラート」を有するデータとして、(2-4-3)で生成された図18の異常判定結果データ106g、異常判定結果メッセージデータ106hおよび異常判定結果メッセージ詳細データ106iを取得する。取得したこれらのデータを、図20にも改めて示す。
【0107】
(1-2)異常を検知した結果メッセージの画面への表示
次に、異常表示部102eは、(1-1)で取得した図20の異常判定結果メッセージデータ106h中の異常度「×」、定義名「売上取消アラート」、概要「担当者Aが検出されました」および検知対象「2021/04 担当者A 31%」を、図20に示す分析用初期画面に表示する。当該表示された異常度、定義名、概要および検知対象をまとめて、概要メッセージという。
【0108】
これにより、オペレータは、売上取消率が異常に高い担当者がいたこと、および、その担当者が誰であるか(本例では担当者A)であることを把握することができる。また、この際、オペレータは、異常があった会計年月(本例では2021/04)および異常値として検出された売上取消率の数値(本例では31%)も併せて把握することができる。
【0109】
(1-3)基準日のセット
異常の表示後に、図21に示すように、分析用初期画面中の抽出条件のエリアにおける基準日として、分析用初期画面を起動した日付(2021/05/10とする)がセットされる。
【0110】
(2)詳細メッセージおよびグラフの表示
次に、詳細メッセージおよび4つのグラフが、分析用画面に出力される。以下、詳細メッセージの表示および4つのグラフの取得や表示について、以下の(2-1)~(2-4)で説明する。
【0111】
(2-1)詳細メッセージの表示およびグラフの出力領域の確保
1.まず、(1-2)で表示された概要メッセージが選択されると、分析用画面が起動される。異常表示部102eは、(1-1)で取得した異常判定結果メッセージ詳細データ106i中の検知手法「四分位範囲」、閾値「正常範囲1.5倍」および上限値「20%」を、図22に示す分析用画面に表示する。当該表示された検知手法、閾値および上限値をまとめて、詳細メッセージという。
【0112】
このように、(1-2)で説明した概要メッセージおよび本項目(2-1)で説明した詳細メッセージを表示することで、オペレータは、異常検知された対象(担当者)、検知の手法(計算手法)、異常と判断した基準値(売上取消率)等を把握できる。これにより、オペレータは、売上取消率の異常がある担当者を分かっている状態から分析を行うことが可能となる。売上取消率の異常がある担当者の売上取消率および異常と判断した根拠となる過去実績は、以下で説明する4つのグラフにより分析可能である。
【0113】
2.次に、グラフの出力領域が確保される。本実施形態においては、4つのグラフの出力が行われるため、図23の分析用画面に4つの空白で示すように、グラフ4つ分の出力領域が確保される。
【0114】
(2-2)抽出条件の設定
次に、グラフを出力するためには、分析用データから出力対象となるデータを抽出する必要があるが、抽出に先立って、抽出条件が本項目(2-2)で説明する方法で設定される。
【0115】
1.まず、(1-2)で表示された概要メッセージと紐付く図20の異常判定結果データ106gが保持する会計年月(2021/04)に基づいて、分析用データの取得範囲が取得される。
【0116】
(i)具体的には、異常検知した会計年月(2021/04)の前後1年の範囲になる会計年月が、前記取得範囲として取得される。すなわち、1年前の会計年月は2020/04となり、1年後の会計年月は2022/04となる。
【0117】
なお、前後1年の範囲になる会計年月が取得されるという設定は、異常検知用に事前に提供するデータである「売上計上履歴データの取得範囲条件データ106b」における1年範囲で検知するという条件に合わせたものである。範囲を広げて分析したい場合は、分析用画面の抽出条件のエリアにおける期間開始日および期間終了日を変更することで対応可能である。
【0118】
(ii)前記取得された取得範囲(2020/04~2022/04)に基づいて、分析用データが存在する範囲に絞って、分析用データ取得範囲条件が設定される。本例では、分析用データとして、2020/05~2021/04の範囲でのみ分析用データが存在するものとする。この場合、分析用データ取得範囲条件は、図24に示すように、
・抽出条件列:会計年月
・FROM条件:2020/05(前記1年前の会計年月である2020/04より後の月から採用)
・TO条件:2021/04(前記1年後の会計年月である2022/04より前の月から採用)
となる。
【0119】
2.次に、「1.」で設定された分析用データ取得範囲条件を初期値としてセットした状態のものが、抽出条件初期値(基準日、期間開始および期間終了)となる。抽出条件初期値を図25に示す。そして、当該抽出条件初期値は、図26に示すように、分析用画面の抽出条件のエリアにセットされる。なお、当該エリアにセットされた期間開始日および期間終了日は、オペレータが手動で変更することが可能である。
【0120】
そして、グラフ表示状態に切り替わるタイミングで、グラフ出力用のデータを抽出するための抽出項目が表示される。図26に示すように、集計対象(表示切替)については「計上金額」が、集計単位(集計)については「担当者」が、固定の初期値として設定されて表示される。本例(2)においては、固定の初期値のまま変更されないものとする。
【0121】
(2-3)グラフの生成の元となるデータの取得
次に、(2-2)でセットされた抽出条件に基づいて、分析用データが取得される。以下、特定の担当者についての月毎の売上金額(売上回数)および売上取消金額(売上取消回数)を示す棒グラフを「グラフ1」という。また、担当者毎の月毎の売上取消率の推移を示す折れ線グラフを「グラフ2」という。そして、特定の月における担当者毎の売上金額(売上回数)および売上取消金額(売上取消回数)を示す棒グラフを「グラフ3」という。更に、特定の月および特定の担当者についての日毎の売上取消率の推移を示す折れ線グラフを「グラフ4」という。
【0122】
グラフ1~3の生成の元となるデータの取得について、以下の(2-3-1)で説明し、グラフ4の生成の元となるデータの取得について、以下の(2-3-2)で説明する。
【0123】
(2-3-1)グラフ1~3の生成の元となるデータの取得
(2-2)でセットされた抽出条件(図27の画面例に改めて示す)に基づいて、グラフ1~3を取得するためのパラメータが、図27に示すように設定される。図27に示すパラメータにおいて、期間開始「2020/05」、期間終了「2021/04」、表示モード「計上金額」および集計モード「担当者」は、(2-2)でセットされた抽出条件に基づいて設定されたものであり、指定会計年月「2021/04」は、異常判定結果データ106gに基づいて設定されたものである。
【0124】
そして、当該設定された図27に示すパラメータに基づいて、グラフ1~3を生成する元となるデータである売上取消率算出結果データ106eが、以下のようにして生成される。
【0125】
すなわち、金額集計部102aは、図28の売上計上履歴データ106cを参照して、以下のルールに基づいて、売上取消金額および売上金額を集計する。なお、金額集計部102aは、図28の売上計上履歴データ106cのうち、図27に示すパラメータで設定された期間開始「2020/05」~期間終了「2021/04」に属する会計年月を有するレコードのみを集計の対象とする。
(ルール)
売上取消金額については、以下のa~cのいずれかの集計条件に該当するレコード中の金額を絶対値で集計する。
a.登録処理分類が「新規登録」、かつ、金額がマイナス
b.登録処理分類が「修正」、かつ、修正前後の合計金額がマイナス
c.登録処理分類が「削除」
売上金額については、売上取消金額の集計条件に該当しないレコード中の金額を集計する。
【0126】
ここで、図27のパラメータに示すように、本例(2)においては、表示モードとして「計上金額」が指定され、集計モードとして「担当者」が指定されているため、集計結果は、図28の売上金額・売上取消データ106dに示すように、会計年月および担当者の組合せ毎の売上金額および売上取消金額を含むものとなる。
【0127】
売上取消率算出部102cは、図28の売上金額・売上取消データ106dに基づいて、会計年月および担当者の組合せ毎の売上取消率を算出する。売上取消率算出部102cは、表示モードが「計上金額」である場合の売上取消率の算出式(売上取消金額/売上金額)に基づいて、売上取消率を%の値に変換して取得する。なお、売上取消率算出部102cは、会計年月および担当者の組合せ毎の売上取消率のみならず、図28に示すように、会計年月および担当者の組合せ毎の売上金額、売上取消金額、マイナス修正金額、削除金額およびマイナス売上金額を含んでいてもよい。生成された売上取消率算出結果データ106eを、図28に示す。
【0128】
(2-3-2)グラフ4の生成の元となるデータの取得
(2-2)でセットされた抽出条件(図29の画面例に改めて示す)に基づいて、グラフ4を取得するためのパラメータが、図29に示すように設定される。図29に示すパラメータにおいて、表示モード「計上金額」および集計モード「担当者」は、(2-2)でセットされた抽出条件に基づいて設定されたものであり、指定会計年月「2021/04」および指定担当者「担当者A」は、異常判定結果データ106gに基づいて設定されたものである。
【0129】
そして、当該設定された図29に示すパラメータに基づいて、グラフ4を生成する元となるデータである日別売上取消データ106fが、以下のようにして生成される。
【0130】
すなわち、金額集計部102aは、図30の売上計上履歴データ106cを参照して、(2-3-1)と同様のルールに基づいて、売上取消金額および売上金額を集計する。ただし、本項目(2-3-2)においては、日別のデータとして取得するために、会計年月、登録処理日および担当者の組合せ毎に売上取消金額および売上金額を集計する。集計結果は、図30の日別売上取消データ106fに示すとおりである。
【0131】
(2-4)グラフの出力(表示)
次に、(2-3)で生成された売上取消率算出結果データ106eまたは日別売上取消データ106fに基づいて、4つのグラフが出力される。
【0132】
1.グラフ1にデータをバインドする際に用いるデータバインド情報および生成されるグラフ1を、図31に示す。期間毎-金額・回数棒グラフ生成部102fは、図28の売上取消率算出結果データ106eに基づいて、売上金額および売上取消金額を縦軸とし、会計年月を横軸とする棒グラフ(図31のグラフ1)を、売上取消率の異常があった担当者である担当者Aについて生成する。
【0133】
オペレータは、グラフ1を見ることで、異常検知された担当者の売上金額および売上取消金額の発生状況を確認することができる。また、月別に比較して異常検知された月と他の月での発生状況の違いを比較することもできる。図31のグラフ1からは、2021/04の売上取消金額が異常に多いということがわかる。
【0134】
2.グラフ2にデータをバインドする際に用いるデータバインド情報および生成されるグラフ2を、図32に示す。期間毎-売上取消率折れ線グラフ生成部102gは、図28の売上取消率算出結果データ106eに基づいて、売上取消率を縦軸とし、会計年月を横軸とする折れ線グラフ(図32のグラフ2)を、担当者別に生成する。
【0135】
オペレータは、グラフ2を見ることで、担当者別の売上取消金額の発生率を確認することができる。また、グラフ1で確認した売上金額および売上取消金額という2点から算出している売上取消率をベースとして、担当者毎の売上取消の発生傾向を比較することもできる。図32のグラフ2からは、担当者Aについての2021/04の売上取消率が明らかに高いことがわかる。
【0136】
3.グラフ3にデータをバインドする際に用いるデータバインド情報および生成されるグラフ3を、図33に示す。集計単位毎-金額・回数棒グラフ生成部102hは、図28の売上取消率算出結果データ106eに基づいて、売上金額ならびに売上取消金額(マイナス修正金額、削除金額およびマイナス売上金額)を縦軸とし、担当者を横軸とする棒グラフ(図33のグラフ3)を、2021/04について生成する。なお、グラフ3に表示される「2021/04」は、異常判定結果データ106gが保持する会計年月に基づく。
【0137】
オペレータは、グラフ3を見ることで、特定担当者の売上計上方法別発生金額を確認することができる。売上取消に関する要素として、マイナス修正、削除およびマイナス売上という3つの要素があるが、当該3つの要素毎の実績を確認することで、オペレータは、担当者が様々な取消方法に分散して取消を行っていないかを確認することができる。一つの方法のみで取消処理を行うのに比べて、様々な取消方法に分散して取消処理を行う方が、1つの要素あたりの取消発生額を少なく見せることができるが、グラフ3を見ることで、このような様々な取消方法に分散させたより悪質な取消処理を発見することが可能となる。
【0138】
4.グラフ4にデータをバインドする際に用いるデータバインド情報および生成されるグラフ4を、図34に示す。日毎-金額・回数折れ線グラフ生成部102iは、図30の日別売上取消データ106fに基づいて、売上金額を縦軸とし、登録処理日を横軸とする折れ線グラフ(図34のグラフ4)、および、売上取消金額を縦軸とし、登録処理日を横軸とする折れ線グラフ(図34のグラフ4)を、2021/04および担当者Aについて生成する。なお、グラフ4に表示される「2021/04」および「担当者A」は、それぞれ、異常判定結果データ106gが保持する会計年月および担当者に基づく。
【0139】
オペレータは、グラフ4を見ることで、特定月および特定担当者についての計上日別の売上および売上取消の計上傾向を確認することができる。期末金額にて架空売上を計上し、その売上を翌期首早々削除するという不正ケースを想定した場合、月頭に売上取消金額が多く発生することが考えられる。図34のグラフ4は、この不正ケースをイメージしたグラフである。図34のグラフ4からは、月初に集中して売上取消金額が多く発生していることが確認できる。
【0140】
5.生成されたグラフ1~4は、図35に示すように、分析用画面に一覧で表示される。
【0141】
6.異常判定結果メッセージ詳細データ106iに紐付く異常判定結果データ106gが含む担当者の情報に基づいて、異常検知されたデータは強調表示(例えば、色彩を変えることによる表示)されてもよい。例えば、グラフ2の表示を行う際に、図36に示すように、異常検知された担当者(=異常判定結果データ106gが含む担当者)については、凡例の異常フラグがTrueの色(赤色)を適用し、これに対して、異常検知された担当者以外については、凡例の異常フラグがFalseの色(グレー色)を適用するという設定を行ってもよい。
【0142】
また、グラフ2以外にも、同様の方法により、強調表示(例えば、色彩を変えることによる表示)することが可能である。強調の対象は、売上取消に関わる情報となる。すなわち、グラフ1の場合、強調の対象は、「売上取消金額」の棒グラフとなる。また、グラフ3の場合、強調の対象は、棒グラフにおける「マイナス修正金額」、「削除金額」および「マイナス売金額上」の部分となる。そして、グラフ4の場合、強調の対象は、「売上取消金額」の折れ線グラフとなる。
【0143】
(3)グラフの表示の切り替え
次に、分析用のグラフの表示の切り替えについて、以下の(3-1)および(3-2)で説明する。ここまでの説明においては、集計対象(表示切替)として「計上金額」が指定され、かつ、集計単位(集計)として「担当者」が指定された場合について説明した。これに対して、以下の(3-1)においては、集計対象(表示切替)として「計上回数」が指定され、かつ、集計単位(集計)として「担当者」が指定される場合について説明する。以下の(3-2)においては、集計対象(表示切替)として「計上金額」が指定され、かつ、集計単位(集計)として「部門」が指定される場合について説明する。
【0144】
(3-1)集計対象として「計上回数」が指定され、かつ、集計単位として「担当者」が指定される場合の分析用グラフの表示
本項目(3-1)においては、表示切替機能を使用して、売上計上回数ベースの状況を確認および分析する場合の例について説明する。本項目においては、売上計上回数における売上訂正回数率に着目したデータを出力することができる。
【0145】
1.まず、図37の画面例に示すように、分析用画面の抽出条件を設定するエリアにおいて、集計対象(表示切替)の項目として「計上回数」が選択される。言い換えると、集計対象(表示切替)の項目が、「計上金額」から「計上回数」に変更される。なお、集計単位(集計)の項目は、図37に示すように、「担当者」のまま変更されない。
【0146】
当該セットされた抽出条件に基づいて、グラフ1~3を取得するためのパラメータが、図37に示すように設定される。図37に示すパラメータにおいて、期間開始「2020/05」、期間終了「2021/04」、表示モード「計上回数」および集計モード「担当者」は、前段落で説明した抽出条件に基づいて設定されたものであり、指定会計年月「2021/04」は、異常判定結果データ106gに基づいて設定されたものである。
【0147】
2.そして、当該設定された図37に示すパラメータに基づいて、グラフ1~3を生成する元となるデータである売上取消率算出結果データ106eが、以下のようにして生成される。
【0148】
すなわち、回数集計部102bは、図38の売上計上履歴データ106cを参照して、以下のルールに基づいて、売上取消回数および売上回数を集計する。なお、回数集計部102bは、図38の売上計上履歴データ106cのうち、図37に示すパラメータで設定された期間開始「2020/05」~期間終了「2021/04」に属する会計年月を有するレコードのみを集計の対象とする。
(ルール)
売上取消回数については、以下のa~cのいずれかの集計条件に該当するレコードを集計する。
a.登録処理分類が「新規登録」、かつ、金額がマイナス
b.登録処理分類が「修正」、かつ、修正前後の合計金額がマイナス
c.登録処理分類が「削除」
売上回数については、以下のd~eのいずれかの集計条件に該当するレコードを集計する。
d.登録処理分類が「新規登録」、かつ、金額がプラス
e.登録処理分類が「修正」、かつ、修正前後の合計金額がプラス
【0149】
ここで、図37のパラメータに示すように、本例(3-1)においては、表示モードとして「計上回数」が指定され、集計モードとして「担当者」が指定されているため、集計結果は、図38の売上金額・売上取消データ106dに示すように、会計年月および担当者の組合せ毎の売上回数および売上取消回数を含むものとなる。
【0150】
売上取消率算出部102cは、図38の売上金額・売上取消データ106dに基づいて、会計年月および担当者の組合せ毎の売上取消率を算出する。売上取消率算出部102cは、表示モードが「計上回数」である場合の売上取消率の算出式(売上取消回数/売上回数)に基づいて、売上取消率を%の値に変換して取得する。なお、売上取消率算出部102cは、会計年月および担当者の組合せ毎の売上取消率のみならず、図38に示すように、会計年月および担当者の組合せ毎の売上回数、売上取消回数、マイナス修正回数、削除回数およびマイナス売上回数を含んでいてもよい。生成された売上取消率算出結果データ106eを、図38に示す。
【0151】
3.次に、「1」でセットされた抽出条件に基づいて、グラフ4を取得するためのパラメータが、図39に示すように設定される。図39に示すパラメータにおいて、表示モード「計上回数」および集計モード「担当者」は、「1.」で説明した抽出条件に基づいて設定されたものであり、指定会計年月「2021/04」および指定担当者「担当者A」は、異常判定結果データ106gに基づいて設定されたものである。
【0152】
そして、当該設定された図39に示すパラメータに基づいて、グラフ4を生成する元となるデータである日別売上取消データ106fが、以下のようにして生成される。
【0153】
すなわち、回数集計部102bは、図40の売上計上履歴データ106cを参照して、「2.」と同様のルールに基づいて、売上取消回数および売上回数を集計する。ただし、本例「3.」においては、日別のデータとして取得するために、会計年月、登録処理日および担当者の組合せ毎に売上回数および売上取消回数を集計する。集計結果は、図40の日別売上取消データ106fに示すとおりである。
【0154】
4.次に、「2.」で生成された売上取消率算出結果データ106eまたは「3.」で生成された日別売上取消データ106fに基づいて、4つのグラフが出力される。
【0155】
グラフ1にデータをバインドする際に用いるデータバインド情報および生成されるグラフ1を、図41に示す。期間毎-金額・回数棒グラフ生成部102fは、図38の売上取消率算出結果データ106eに基づいて、売上回数および売上取消回数を縦軸とし、会計年月を横軸とする棒グラフ(図41のグラフ1)を、売上取消率の異常があった担当者である担当者Aについて生成する。
【0156】
グラフ2にデータをバインドする際に用いるデータバインド情報および生成されるグラフ2を、図42に示す。期間毎-売上取消率折れ線グラフ生成部102gは、図38の売上取消率算出結果データ106eに基づいて、売上取消率を縦軸とし、会計年月を横軸とする折れ線グラフ(図42のグラフ2)を、担当者別に生成する。
【0157】
グラフ3にデータをバインドする際に用いるデータバインド情報および生成されるグラフ3を、図43に示す。集計単位毎-金額・回数棒グラフ生成部102hは、図38の売上取消率算出結果データ106eに基づいて、売上回数ならびに売上取消回数(マイナス修正回数、削除回数およびマイナス売上回数)を縦軸とし、担当者を横軸とする棒グラフ(図43のグラフ3)を、2021/04について生成する。なお、グラフ3に表示される「2021/04」は、異常判定結果データ106gが保持する会計年月に基づく。
【0158】
グラフ4にデータをバインドする際に用いるデータバインド情報および生成されるグラフ4を、図44に示す。日毎-金額・回数折れ線グラフ生成部102iは、図40の日別売上取消データ106fに基づいて、売上回数を縦軸とし、登録処理日を横軸とする折れ線グラフ(図44のグラフ4)、および、売上取消回数を縦軸とし、登録処理日を横軸とする折れ線グラフ(図44のグラフ4)を、2021/04および担当者Aについて生成する。なお、グラフ4に表示される「2021/04」および「担当者A」は、それぞれ、異常判定結果データ106gが保持する会計年月および担当者に基づく。
【0159】
5.生成されたグラフ1~4は、図45に示すように、分析用画面に一覧で表示される。
【0160】
6.異常判定結果メッセージ詳細データ106iに紐付く異常判定結果データ106gが含む担当者の情報に基づいて、異常検知されたデータは強調表示(例えば、色彩を変えることによる表示)されてもよい。例えば、グラフ2の表示を行う際に、図46に示すように、異常検知された担当者(=異常判定結果データ106gが含む担当者)については、凡例の異常フラグがTrueの色(赤色)を適用し、これに対して、異常検知された担当者以外については、凡例の異常フラグがFalseの色(グレー色)を適用するという設定を行ってもよい。
【0161】
また、グラフ2以外にも、同様の方法により、強調表示(例えば、色彩を変えることによる表示)することが可能である。強調の対象は、売上取消に関わる情報となる。すなわち、グラフ1の場合、強調の対象は、「売上取消回数」の棒グラフとなる。また、グラフ3の場合、強調の対象は、棒グラフにおける「マイナス修正回数」、「削除回数」および「マイナス売上回数」の部分となる。そして、グラフ4の場合、強調の対象は、「売上取消回数」の折れ線グラフとなる。
【0162】
7.ここで、表示された1~4のグラフについて、例えば、以下の点を確認することがポイントとなる。
【0163】
まず、売上計上金額のみならず、売上計上回数でも取消の発生数が多いか否かである。売上計上回数でも取消の発生数が多いということは、複数の伝票で少しずつ取消を行っていることを意味する。つまり、複数の伝票で取消をすることで、不正がわかりにくい形で売上取消をしている可能性がある。このように、売上計上回数に注目することで、後の不正の実態調査を行う場合に、複数伝票に少額の取消が複数発生しているという情報を持った状態で、調査をすることが可能となる。
【0164】
また、複数の取消操作(マイナス修正、マイナス売上および削除)について、いずれも多く取消を行っているか否かである。
【0165】
ここで、具体例として、計上金額を基準として生成したグラフ3(図33に示したもの)と、計上回数を基準として生成したグラフ3(図43に示したもの)と、を横並びにして比較した図を、図47に示す。図47に示すように、担当者Aは、計上金額および計上回数ともに、取消に関する処理を多く行っていることがわかるため、担当者Aが、複数の取消操作を用いた不正の隠蔽操作を「意図的に」行っているという可能性を読み取ることができる。
【0166】
(3-2)集計対象として「計上金額」が指定され、かつ、集計単位として「部門」が指定される場合の分析用グラフの表示
本項目(3-2)においては、表示切替機能を使用して、組織別の売上金額および売上取消金額の計上状況を確認および分析する場合の例について説明する。本項目(3-2)では、部門単位での集計を行うものとし、また、異常判定結果データ106gに含まれる担当者Aは、部門Aに所属しているものとする。
【0167】
1.まず、図48の画面例に示すように、分析用画面の抽出条件を設定するエリアにおいて、集計単位(集計)の項目として「部門」が選択される。言い換えると、集計単位(集計)の項目が、「担当者」から「部門」に変更される。なお、集計対象(表示切替)の項目は、図48に示すように、「計上金額」のまま変更されない。
【0168】
当該セットされた抽出条件に基づいて、グラフ1~3を取得するためのパラメータが、図48に示すように設定される。図48に示すパラメータにおいて、期間開始「2020/05」、期間終了「2021/04」、表示モード「計上金額」および集計モード「部門」は、前段落で説明した抽出条件に基づいて設定されたものであり、指定会計年月「2021/04」は、異常判定結果データ106gに基づいて設定されたものである。
【0169】
2.そして、当該設定された図48に示すパラメータに基づいて、グラフ1~3を生成する元となるデータである売上取消率算出結果データ106eが、以下のようにして生成される。
【0170】
すなわち、金額集計部102aは、図49の売上計上履歴データ106cを参照して、以下のルールに基づいて、売上取消金額および売上金額を集計する。なお、金額集計部102aは、図49の売上計上履歴データ106cのうち、図48に示すパラメータで設定された期間開始「2020/05」~期間終了「2021/04」に属する会計年月を有するレコードのみを集計の対象とする。
(ルール)
売上取消金額については、以下のa~cのいずれかの集計条件に該当するレコード中の金額を絶対値で集計する。
a.登録処理分類が「新規登録」、かつ、金額がマイナス
b.登録処理分類が「修正」、かつ、修正前後の合計金額がマイナス
c.登録処理分類が「削除」
売上金額については、売上取消金額の集計条件に該当しないレコード中の金額を集計する。
【0171】
ここで、図48のパラメータに示すように、本例(3-2)においては、表示モードとして「計上金額」が指定され、集計モードとして「部門」が指定されているため、集計結果は、図49の売上金額・売上取消データ106dに示すように、会計年月および部門の組合せ毎の売上金額および売上取消金額を含むものとなる。
【0172】
売上取消率算出部102cは、図49の売上金額・売上取消データ106dに基づいて、会計年月および部門の組合せ毎の売上取消率を算出する。売上取消率算出部102cは、表示モードが「計上金額」である場合の売上取消率の算出式(売上取消金額/売上金額)に基づいて、売上取消率を%の値に変換して取得する。なお、売上取消率算出部102cは、会計年月および部門の組合せ毎の売上取消率のみならず、図49に示すように、会計年月および部門の組合せ毎の売上金額、売上取消金額、マイナス修正金額、削除金額およびマイナス売上金額を含んでいてもよい。生成された売上取消率算出結果データ106eを、図49に示す。
【0173】
3.次に、「1」でセットされた抽出条件に基づいて、グラフ4を取得するためのパラメータが、図50に示すように設定される。図50に示すパラメータにおいて、表示モード「計上金額」および集計モード「部門」は、「1.」で説明した抽出条件に基づいて設定されたものであり、指定会計年月「2021/04」および指定部門「部門A」は、異常判定結果データ106gに基づいて設定されたものである。
【0174】
そして、当該設定された図50に示すパラメータに基づいて、グラフ4を生成する元となるデータである日別売上取消データ106fが、以下のようにして生成される。
【0175】
すなわち、回数集計部102bは、図51の売上計上履歴データ106cを参照して、「2.」と同様のルールに基づいて、売上取消金額および売上金額を集計する。ただし、本例「3.」においては、日別のデータとして取得するために、会計年月、登録処理日および部門の組合せ毎に売上金額および売上取消金額を集計する。集計結果は、図51の日別売上取消データ106fに示すとおりである。
【0176】
4.次に、「2.」で生成された売上取消率算出結果データ106eまたは「3.」で生成された日別売上取消データ106fに基づいて、4つのグラフが出力される。
【0177】
グラフ1にデータをバインドする際に用いるデータバインド情報および生成されるグラフ1を、図52に示す。期間毎-金額・回数棒グラフ生成部102fは、図49の売上取消率算出結果データ106eに基づいて、売上金額および売上取消金額を縦軸とし、会計年月を横軸とする棒グラフ(図52のグラフ1)を、売上取消率の異常があった担当者である担当者Aが属する部門である「部門A」について生成する。
【0178】
グラフ2にデータをバインドする際に用いるデータバインド情報および生成されるグラフ2を、図53に示す。期間毎-売上取消率折れ線グラフ生成部102gは、図49の売上取消率算出結果データ106eに基づいて、売上取消率を縦軸とし、会計年月を横軸とする折れ線グラフ(図53のグラフ2)を、部門別に生成する。
【0179】
グラフ3にデータをバインドする際に用いるデータバインド情報および生成されるグラフ3を、図54に示す。集計単位毎-金額・回数棒グラフ生成部102hは、図49の売上取消率算出結果データ106eに基づいて、売上金額ならびに売上取消金額(マイナス修正金額、削除金額およびマイナス売上金額)を縦軸とし、部門を横軸とする棒グラフ(図54のグラフ3)を、2021/04について生成する。なお、グラフ3に表示される「2021/04」は、異常判定結果データ106gが保持する会計年月に基づく。
【0180】
グラフ4にデータをバインドする際に用いるデータバインド情報および生成されるグラフ4を、図55に示す。日毎-金額・回数折れ線グラフ生成部102iは、図51の日別売上取消データ106fに基づいて、売上金額を縦軸とし、登録処理日を横軸とする折れ線グラフ(図55のグラフ4)、および、売上取消金額を縦軸とし、登録処理日を横軸とする折れ線グラフ(図55のグラフ4)を、2021/04および部門Aについて生成する。なお、グラフ4に表示される「2021/04」および「部門A」は、それぞれ、異常判定結果データ106gが保持する会計年月および部門に基づく。
【0181】
5.生成されたグラフ1~4は、図56に示すように、分析用画面に一覧で表示される。
【0182】
6.異常判定結果メッセージ詳細データ106iに紐付く異常判定結果データ106gが含む部門の情報に基づいて、異常検知されたデータは強調表示(例えば、色彩を変えることによる表示)されてもよい。例えば、グラフ2の表示を行う際に、図57に示すように、異常検知された担当者が属する部門(=異常判定結果データ106gが含む部門)については、凡例の異常フラグがTrueの色(赤色)を適用し、これに対して、異常検知された部門以外については、凡例の異常フラグがFalseの色(グレー色)を適用するという設定を行ってもよい。
【0183】
また、グラフ2以外にも、同様の方法により、強調表示(例えば、色彩を変えることによる表示)することが可能である。強調の対象は、売上取消に関わる情報となる。すなわち、グラフ1の場合、強調の対象は、「売上取消金額」の棒グラフとなる。また、グラフ3の場合、強調の対象は、棒グラフにおける「マイナス修正金額」、「削除金額」および「マイナス売上金額」の部分となる。そして、グラフ4の場合、強調の対象は、「売上取消金額」の折れ線グラフとなる。
【0184】
7.ここで、表示された1~4のグラフについて、例えば、特定部門において売上取消金額が多く発生している否かを確認することがポイントとなる。特定部門において売上取消金額が多く発生しているということは、部門単位で不正が行われている可能性があるということである。そして、不正が行われている部門においては、複数の担当者が取消の操作を行っている可能性がある。
【0185】
ここで、具体例として、担当者で集計した場合のグラフ2(図32に示したもの)と、部門で集計した場合のグラフ2(図53に示したもの)と、を横並びにして比較した図を、図58に示す。図58に示すように、不正は部門Aで行われており、また、部門Aの中でも担当者Aが不正を行っていることを読みとることができる。
【0186】
[5.本実施形態のまとめ]
このように、本実施形態に係る売上不正発見業務支援装置100によれば、主に[4-1]で説明したように、売上取消率の算出および当該算出した売上取消率のうち異常に数値が増加しているものの検知を自動で行うことにより、売上不正の発見業務を支援することができる。
【0187】
また、本実施形態に係る売上不正発見業務支援装置100によれば、主に[4-2]で説明したように、分析用画面に表示される4つのグラフを参照することで、売上取消率の異常が発生した原因の分析も併せて行うことができる。
【0188】
ここで、従来においては、定期的に多数発生する売上の取引について、担当者が手動でデータ登録時の履歴を確認することで、売上の取消に関する異常に気付くことができた。しかしながら、この方法では、売上不正の発覚までに、専門知識を駆使した様々なデータ収集および計算処理が必要となるため、多くの作業時間が発生し、また、作業ミス発生および確認漏れ発生のリスクも高いという問題があった。
【0189】
そこで、本実施形態においては、例えば、販売業務におけるトランザクションデータ内で、売上不正により登録されたデータを自動で検知して通知することができるようにした。具体的には、単月における売上に対する売上の取消の発生率を求めて異常を検知することができるようにした。また、売上および売上取消について、発生したタイミング、金額および処理担当者等の分析が可能な画面を出力できるようにした。
【0190】
言い換えると、本実施形態においては、例えば、売上データを、売上減額に掛かるデータと売上増額に掛かるデータとに振り分けて、それぞれのデータを集計し、売上取消の状況を可視化できるようにした。また、集計の方法およびアラートの方法も工夫した。
【0191】
これにより、本実施形態は、例えば以下の効果を奏する。まず、膨大な売上取引履歴の情報の中から、売上不正を定期的にかつ自動で検知できるようになった。つまり、専門知識のない者でも、売上不正に気付くことができる。また、様々な条件でデータを集計して比較が必要となる内容をシステムにより自動で処理するため、作業ミスのリスクを回避することができる。そして、異常とその根拠を分析および確認する画面を出力できるため、信頼性の高い異常の検知が可能である。
【0192】
[6.国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び9に貢献することが可能となる。
【0193】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、13及び15に貢献することが可能となる。
【0194】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0195】
[7.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0196】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0197】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0198】
また、売上不正発見業務支援装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0199】
例えば、売上不正発見業務支援装置100が備える処理機能、特に制御部にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて売上不正発見業務支援装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0200】
また、このコンピュータプログラムは、売上不正発見業務支援装置100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0201】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0202】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0203】
記憶部に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0204】
また、売上不正発見業務支援装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、売上不正発見業務支援装置100は、当該装置に本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0205】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0206】
本発明は、例えば、売上実績の管理が発生するあらゆる業界および業種において有用である。
【符号の説明】
【0207】
100 売上不正発見業務支援装置
102 制御部
102a 金額集計部
102b 回数集計部
102c 売上取消率算出部
102d 異常値検知部
102e 異常表示部
102f 期間毎-金額・回数棒グラフ生成部
102g 期間毎-売上取消率折れ線グラフ生成部
102h 集計単位毎-金額・回数棒グラフ生成部
102i 日毎-金額・回数折れ線グラフ生成部
104 通信インターフェース部
106 記憶部
106a 自動検知実行スケジュールデータ
106b 取得範囲条件データ
106c 売上計上履歴データ
106d 売上金額・売上取消データ
106e 売上取消率算出結果データ
106f 日別売上取消データ
106g 異常判定結果データ
106h 異常判定結果メッセージデータ
106i 異常判定結果メッセージ詳細データ
108 入出力インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
200 サーバ
300 ネットワーク
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