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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240704BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALN20240704BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021211864
(22)【出願日】2021-12-27
(65)【公開番号】P2023096244
(43)【公開日】2023-07-07
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-150257(JP,A)
【文献】特開2006-344766(JP,A)
【文献】特開2013-243267(JP,A)
【文献】特開2013-232640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置面を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの下面に設けられた導電性基材と、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通する第1穴と、
前記導電性基材を上下方向に貫通し、前記第1穴に連通する第2穴と、
下面に開口する有底穴を有し、前記第1穴及び前記第2穴に配置された緻密質の絶縁ケースと、
前記有底穴の底部を上下方向に貫通する複数の細孔と、
前記有底穴に配置されて前記底部に接する多孔質プラグと、
を備えた半導体製造装置用部材。
【請求項2】
前記ウエハ載置面は、ウエハを支持する多数の小突起を有し、
前記絶縁ケースの上面は、前記ウエハ載置面のうち前記小突起の設けられていない基準面と同じ高さにあり、
前記細孔の上下方向の長さは、0.01mm以上0.5mm以下である、
請求項1に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項3】
前記第1穴は、細径の第1穴上部と、太径の第1穴下部と、前記第1穴上部と前記第1穴下部との境界をなす段差部とを有し、
前記絶縁ケースは、前記第1穴上部に挿入される細径の絶縁ケース上部と、前記第1穴下部に挿入される太径の絶縁ケース下部と、前記絶縁ケース上部と前記絶縁ケース下部との境界をなし前記段差部に突き当たる肩部とを有する、
請求項1又は2に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項4】
前記細孔は、直径が0.1mm以上0.5mm以下であり、前記絶縁ケースの前記底部に10個以上設けられている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項5】
前記多孔質プラグの下面は、前記導電性基材の前記第2穴の内部に位置している、
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項6】
前記絶縁ケースは、上方部材と下方部材とを一体化したものであり、
前記上方部材の上下方向の長さは、前記セラミックプレートの上下方向の長さよりも短く、
前記多孔質プラグの下面は、前記上方部材の下面と同じかそれよりも上に位置する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置用部材としては、ウエハ載置面を有する静電チャックが冷却装置上に設けられたものが知られている。例えば、特許文献1の半導体製造装置用部材は、冷却装置に設けられたガス供給孔と、ガス供給孔と連通するように静電チャックに設けられた凹部と、凹部の底面からウエハ載置面まで貫通する細孔と、凹部に充填された絶縁材料からなる多孔質プラグとを備えている。ヘリウム等のバックサイドガスがガス供給孔に導入されると、そのガスはガス供給孔、多孔質プラグおよび細孔を通ってウエハの裏面側の空間に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-232640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した半導体製造装置用部材では、静電チャックを構成するセラミックプレートの凹部の底部に細孔が設けられているため、加工上、細孔の上下方向の長さを小さくすることは困難であった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ウエハ載置面と多孔質プラグの上面とを連通する細孔の加工性を良くすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体製造装置用部材は、
上面にウエハ載置面を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの下面に設けられた導電性基材と、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通する第1穴と、
前記導電性基材を上下方向に貫通し、前記第1穴に連通する第2穴と、
下面に開口する有底穴を有し、前記第1穴及び前記第2穴に配置された緻密質の絶縁ケースと、
前記有底穴の底部を上下方向に貫通する複数の細孔と、
前記有底穴に配置されて前記底部に接する多孔質プラグと、
を備えたものである。
【0007】
この半導体製造装置用部材では、セラミックプレートとは別体である絶縁ケースの有底穴の底部に複数の細孔が設けられている。そのため、セラミックプレートに直に複数の細孔が設けられている場合に比べて、細孔の加工性が良好になる。
【0008】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記ウエハ載置面は、ウエハを支持する多数の小突起を有していてもよく、前記絶縁ケースの上面は、前記ウエハ載置面のうち前記小突起の設けられていない基準面と同じ高さにあってもよく、前記細孔の上下方向の長さは、0.01mm以上0.5mm以下であってもよい。こうすれば、ウエハの裏面と多孔質プラグの上面との間の空間の高さが低く抑えられるため、この空間でアーク放電が発生するのを防止することができる。なお、基準面の高さは、小突起ごとに異なる高さであってもよい。また、基準面の高さは、第1穴の直近に存在する小突起の底面と同じ高さであってもよい。
【0009】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記第1穴は、細径の第1穴上部と、太径の第1穴下部と、前記第1穴上部と前記第1穴下部との境界をなす段差部とを有していてもよく、前記絶縁ケースは、前記第1穴上部に挿入される細径の絶縁ケース上部と、前記第1穴下部に挿入される太径の絶縁ケース下部と、前記絶縁ケース上部と前記絶縁ケース下部との境界をなし前記段差部に突き当たる肩部とを有していてもよい。こうすれば、第1穴の段差部に絶縁ケースの肩部を突き当てることにより、絶縁ケースの上面を容易に位置決めすることができる。
【0010】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記細孔は、直径が0.1mm以上0.5mm以下であってもよく、前記絶縁ケースの前記底部に10個以上設けられていてもよい。こうすれば、第2穴に供給されたガスはウエハの裏面に向かってスムーズに流出する。
【0011】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記多孔質プラグの下面は、前記導電性基材の上面以下(好ましくは導電性基材の上面よりも下)に位置していてもよい。多孔質プラグの下面が金属接合層の上面よりも上に位置している場合には多孔質プラグの下面と導電性基材との間でアーク放電が発生する。これに対し、多孔質プラグの下面が金属接合層の上面以下に位置している場合にはそうしたアーク放電を抑制することができる。
【0012】
本発明の半導体製造装置用部材において、前記絶縁ケースは、上方部材と下方部材とを一体化したものであってもよく、前記上方部材の上下方向の長さは、前記セラミックプレートの上下方向の長さより短くてもよく、前記多孔質プラグの下面は、前記上方部材の下面と同じかそれよりも上に位置していてもよい。こうすれば、半導体製造装置用部材を製造する際、長さの短い上方部材の有底穴に長さの短い多孔質プラグを挿入し、その後上方部材と下方部材とを一体化することができる。このように、多孔質プラグの挿入距離が短くなるため、多孔質プラグが崩れにくい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】半導体製造装置用部材10の縦断面図。
図2】セラミックプレート20の平面図。
図3図1の部分拡大図。
図4】一体化部材As1の製造工程図。
図5】半導体製造装置用部材10の製造工程図。
図6】一体化部材As2及びその周辺を示す部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。図1は半導体製造装置用部材10の縦断面図、図2はセラミックプレート20の平面図、図3図1の部分拡大図である。
【0015】
半導体製造装置用部材10は、セラミックプレート20と、冷却プレート30と、金属接合層40と、多孔質プラグ50と、絶縁ケース60とを備えている。
【0016】
セラミックプレート20は、アルミナ焼結体や窒化アルミニウム焼結体などのセラミック製の円板(例えば直径300mm、厚さ5mm)である。セラミックプレート20の上面は、ウエハ載置面21となっている。セラミックプレート20は、電極22を内蔵している。セラミックプレート20のウエハ載置面21には、図2に示すように、外縁に沿ってシールバンド21aが形成され、全面に複数の円形小突起21bが形成されている。シールバンド21a及び円形小突起21bは同じ高さであり、その高さは例えば数μm~数10μmである。電極22は、静電電極として用いられる平面状のメッシュ電極であり、直流電圧を印加可能となっている。この電極22に直流電圧が印加されるとウエハWは静電吸着力によりウエハ載置面21(具体的にはシールバンド21aの上面及び円形小突起21bの上面)に吸着固定され、直流電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置面21への吸着固定が解除される。なお、ウエハ載置面21のうちシールバンド21aや円形小突起21bの設けられていない部分を、基準面21cと称する。
【0017】
セラミックプレート20には、第1穴24が設けられている。第1穴24は、セラミックプレート20及び電極22を上下方向に貫通する貫通穴である。第1穴24は、図3に示すように段差付きの穴となっており、第1穴上部24aが細く、第1穴下部24bが太くなっている。第1穴24は、細径の円柱状の第1穴上部24aと太径の円柱状の第1穴下部24bとが連なった穴であり、第1穴上部24aと第1穴下部24bとの境界に段差部24cを有する。第1穴24は、セラミックプレート20の複数箇所(例えば周方向に沿って等間隔に設けられた複数箇所)に設けられている。
【0018】
冷却プレート30は、熱伝導率の良好な円板(セラミックプレート20と同じ直径かそれよりも大きな直径の円板)である。冷却プレート30の内部には、冷媒が循環する冷媒流路32やガスを多孔質プラグ50へ供給するガス穴34が形成されている。冷媒流路32は、平面視で冷却プレート30の全面にわたって入口から出口まで一筆書きの要領で形成されている。ガス穴34は、円柱状の穴であり、第1穴24と同軸で第1穴24に連通するように設けられている。ガス穴34の径は、第1穴下部24bの径と略同じである。冷却プレート30の材料は、例えば、金属材料や金属マトリックス複合材料(MMC)などが挙げられる。金属材料としては、Al、Ti、Mo又はそれらの合金などが挙げられる。MMCとしては、Si,SiC及びTiを含む材料(SiSiCTiともいう)やSiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料などが挙げられる。冷却プレート30の材料としては、セラミックプレート20の材料と熱膨張係数の近いものを選択するのが好ましい。冷却プレート30は、RF電極としても用いられる。具体的には、ウエハ載置面21の上方には上部電極(図示せず)が配置され、その上部電極とセラミックプレート20に内蔵された冷却プレート30とからなる平行平板電極間に高周波電力を印加するとプラズマが発生する。
【0019】
金属接合層40は、セラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面とを接合している。金属接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。金属接合層40には、セラミックプレート20の第1穴24及び冷却プレート30のガス穴34に連通するように上下方向に貫通する貫通穴42が設けられている。貫通穴42の直径は、ガス穴34の直径と同じである。本実施形態の金属接合層40及び冷却プレート30が本発明の導電性基材に相当し、本実施形態の貫通穴42及びガス穴34が本発明の第2穴に相当する。
【0020】
多孔質プラグ50は、ガスが上下方向に流通するのを許容する多孔質円柱部材である。多孔質プラグ50は、例えばアルミナなどの電気絶縁性材料で形成されている。多孔質プラグ50の上面50aは、絶縁ケース60の底部65に接している。多孔質プラグ50の下面50bは、金属接合層40の上面40a以下で絶縁ケース60の下面60bよりも上に位置している。
【0021】
絶縁ケース60は、緻密質セラミック(例えば緻密質アルミナなど)で形成されたコップ形の部材である。絶縁ケース60は、下面に開口する有底穴64を有する。絶縁ケース60の外周面は、第1穴24の上面からガス穴34の内部に至る接着層70によって第1穴24、貫通穴42及びガス穴34の各内周面に接着固定されている。有底穴64の内径は、一定である。絶縁ケース上部61の外径は細く、絶縁ケース下部62の外径は太くなっている。絶縁ケース上部61と絶縁ケース下部62との境界は肩部63となっている。絶縁ケース上部61の外周面は、第1穴24の第1穴上部24aの内周面に上部接着層71を介して接着固定されている。絶縁ケース下部62の外周面は、第1穴下部24bの内周面、金属接合層40の貫通穴42及び冷却プレート30のガス穴34の各内周面に下部接着層72を介して接着固定されている。第1穴24の段差部24cに絶縁ケース60の肩部63が突き当たると、絶縁ケース60の上面60aがウエハ載置面21の基準面21cと同じ高さになるように設計されている。なお、「同じ」とは、完全に同じの場合のほか、実質的に同じの場合(例えば公差の範囲に入る場合など)も含む(以下同じ)。絶縁ケース60の下面60bは、ガス穴34の内部に位置している。絶縁ケース60は、複数の細孔66を有している。細孔66は、絶縁ケース60の有底穴64の底部65を上下方向に貫通するように設けられている。細孔66の上下方向の長さは、0.01mm以上0.5mm以下が好ましく、0.05mm以上0.2mm以下がより好ましく、また、高電圧を印加する装置においては0.05mm以上0.1mm以下が特に好ましい。細孔66の直径は、0.1mm以上0.5mm以下とするのが好ましく、0.1mm以上0.2mm以下とするのがより好ましい。細孔66は、底部65に10個以上設けることが好ましい。
【0022】
絶縁ケース60と多孔質プラグ50とは、一体化されて一体化部材As1を構成している。一体化部材As1は、絶縁ケース60の有底穴64に多孔質プラグ50が差し込まれ、底部65に多孔質プラグ50の上面50aが接した状態で、多孔質プラグ50の外周面が接着剤によって有底穴64の内周面に接着されたものである。
【0023】
次に、こうして構成された半導体製造装置用部材10の使用例について説明する。まず、図示しないチャンバー内に半導体製造装置用部材10を設置した状態で、ウエハWをウエハ載置面21に載置する。そして、チャンバー内を真空ポンプにより減圧して所定の真空度になるように調整し、セラミックプレート20の電極22に直流電圧をかけて静電吸着力を発生させ、ウエハWをウエハ載置面21(具体的にはシールバンド21aの上面や円形小突起21bの上面)に吸着固定する。次に、チャンバー内を所定圧力(例えば数10~数100Pa)の反応ガス雰囲気とし、この状態で、チャンバー内の天井部分に設けた図示しない上部電極と半導体製造装置用部材10の冷却プレート30との間に高周波電圧を印加させてプラズマを発生させる。ウエハWの表面は、発生したプラズマによって処理される。冷却プレート30の冷媒流路32には、冷媒が循環される。ガス穴34には、図示しないガスボンベからバックサイドガスが導入される。バックサイドガスとしては、熱伝導ガス(例えばヘリウム等)を用いる。バックサイドガスは、冷却プレート30のガス穴34、絶縁ケース60の有底穴64、多孔質プラグ50及び複数の細孔66を通って、ウエハWの裏面とウエハ載置面21の基準面21cとの間の空間に供給され封入される。このバックサイドガスの存在により、ウエハWとセラミックプレート20との熱伝導が効率よく行われる。
【0024】
次に、半導体製造装置用部材10の製造例を図4及び図5に基づいて説明する。図4は一体化部材As1の製造工程図、図5は半導体製造装置用部材10の製造工程図である。まず、厚底の絶縁コップ80の底部85に複数の貫通孔86をレーザ加工で形成する(図4A)。貫通孔86の直径は、細孔66の直径と同じである。続いて、絶縁コップ80の底部85の厚みが絶縁ケース60の底部65の厚みになるように、絶縁コップ80を切削加工する(図4B)。これにより、貫通孔86の上下方向の長さを0.05mm以上0.2mm以下に調整することができる。その結果、貫通孔86は細孔66になる。続いて、絶縁コップ80の有底穴の内周面に接着剤を塗布し、その有底穴に別途準備した多孔質プラグ50を底部85に接するまで差し込んで接着する(図4C)。最後に、絶縁コップ80の外形が絶縁ケース60の外形となるように絶縁コップ80を切削加工することにより、絶縁ケース60と多孔質プラグ50とが一体化された一体化部材As1を得る(図4D)。なお、絶縁コップ80の底部85の厚みを絶縁ケース60の底部65の厚みになるように絶縁コップ80を切削加工したあと、貫通孔86をレーザ加工で形成してもよい。
【0025】
これとは別に、セラミックプレート20、冷却プレート30及び金属接合材90を準備する(図5A)。セラミックプレート20は、電極22を内蔵し、第1穴24を備えている。冷却プレート30は、冷媒流路32を内蔵し、ガス穴34を備えている。金属接合材90は、予め貫通穴42に相当する位置に予備穴92を開けたものである。
【0026】
そして、セラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面とをTCBによって接合して接合体94を得る(図5B)。TCBは、例えば以下のように行われる。まず、セラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面との間に金属接合材90を挟み込んで積層体とする。このとき、セラミックプレート20の第1穴24と金属接合材90の予備穴92と冷却プレート30のガス穴34とが同軸になるように積層する。そして、金属接合材90の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す。これにより、金属接合材90は金属接合層40になり、予備穴92は貫通穴42になり、セラミックプレート20と冷却プレート30とを金属接合層40で接合した接合体94が得られる。このときの金属接合材としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。例えば、Al-Si-Mg系接合材を用いてTCBを行う場合、真空雰囲気下で加熱した状態で積層体を加圧する。金属接合材90は、厚みが100μm前後のものを用いるのが好ましい。
【0027】
続いて、セラミックプレート20の第1穴24の内周面と金属接合層40の貫通穴42の内周面と冷却プレート30のガス穴34の内周面の一部に接着剤を塗布する。そして、第1穴24の上部開口を閉じた状態で第1穴24、貫通穴42及びガス穴34を真空引きすることにより接着剤を脱泡しつつ、一体化部材As1をこれらの穴34,42,24に挿入する。一体化部材As1の絶縁ケース60の肩部63が第1穴24の段差部24cに突き当たると絶縁ケース60の上面60aがウエハ載置面21の基準面21c(図3参照)と同一平面になるように設計されている。その後、接着剤が硬化して接着層70となり、半導体製造装置用部材10が得られる(図5C)。
【0028】
以上詳述した半導体製造装置用部材10では、セラミックプレート20とは別体である絶縁ケース60の有底穴64の底部65に複数の細孔66が設けられている。そのため、セラミックプレート20に直に複数の細孔が設けられている場合に比べて、細孔66の加工性が良好になる。
【0029】
また、絶縁ケース60の上面60aは、ウエハ載置面21のうち小突起21bの設けられていない基準面21cと同じ高さであり、細孔66の上下方向の長さは、0.05mm以上0.2mm以下であることが好ましい。0.05mm以上であれば、良好な加工性を確保しやすい。また、0.2mm以下であれば、ウエハWの裏面と多孔質プラグ50の上面50aとの間の空間の高さが低く抑えられるため、この空間でアーク放電が発生するのを防止することができる。ちなみに、この空間の高さが高いと、ヘリウムが電離するのに伴って生じた電子が加速して別のヘリウムに衝突することによりアーク放電が起きるが、この空間の高さが低いと、そうしたアーク放電が抑制される。
【0030】
更に、第1穴24は、細径の第1穴上部24aと、太径の第1穴下部24bと、第1穴上部24aと第1穴下部24bとの境界をなす段差部24cとを有し、絶縁ケース60は、第1穴上部24aに挿入される細径の絶縁ケース上部61と、第1穴下部24bに挿入される太径の絶縁ケース下部62と、絶縁ケース上部61と絶縁ケース下部62との境界をなし段差部24cに突き当たる肩部63とを有している。そのため、第1穴24の段差部24cに絶縁ケース60の肩部63を突き当てることにより、絶縁ケース60の上面60aを容易に位置決めすることができる。
【0031】
更にまた、細孔66は、直径が0.1mm以上0.5mm以下であることが好ましく、絶縁ケース60の底部65に10個以上設けられていることが好ましい。こうすれば、ガス穴34に供給されたバックサイドガスはウエハWの裏面に向かってスムーズに流出する。
【0032】
そして、多孔質プラグ50の下面50bは、金属接合層40の上面40a以下(ここでは金属接合層40の上面40aよりも下)に位置している。多孔質プラグ50の下面50bが金属接合層40の上面40aよりも上に位置している場合には多孔質プラグ50の下面50bと導電性基材(金属接合層40及び冷却プレート50)との間でアーク放電が発生する。これに対し、多孔質プラグ50の下面50bが金属接合層40の上面40a以下に位置している場合にはそうしたアーク放電を抑制することができる。
【0033】
そしてまた、多孔質プラグ50の上面50aは細孔66が設けられた絶縁ケース60の底部65によって覆われているため、多孔質プラグ50からパーティクルが発生するのを抑制することができる。
【0034】
そして更に、絶縁ケース60の下面60bは、多孔質プラグ50の下面50bよりも下に位置している。そのため、ウエハWから冷却プレート30までの沿面距離が長くなり、多孔質プラグ50内での火花放電を抑制することができる。特に、絶縁ケース60の下面60bは、ガス穴34の内部に位置しているため、火花放電を抑制しやすい。
【0035】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0036】
上述した実施形態において、一体化部材As1の代わりに、図6に示す一体化部材As2を採用してもよい。図6では、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。一体化部材As2は、絶縁ケース160と多孔質プラグ150とを一体化したものであり、セラミックプレート20の第1穴24、金属接合層40の貫通穴42及び冷却プレート30のガス穴34の各内周面に接着層170を介して接着固定されている。絶縁ケース160は、上方部材161と下方部材162とを一体化したものである。上方部材161は、緻密質セラミック(例えば緻密質アルミナなど)で形成されたコップ形の部材である。上方部材161は、下面に開口する有底穴164を有する。有底穴164の内径は一定である。上方部材161の上部161aの外径は細く、下部161bの外径は太くなっている。上方部材161のうち上部161aと下部161bとの境界は肩部161cとなっている。第1穴24の段差部24cに上方部材161の肩部161cを突き当てると、上方部材161の上面161dがウエハ載置面21の基準面21cと同じ高さになるように設計されている。上方部材161の有底穴164には、多孔質プラグ150が接着固定されている。多孔質プラグ150は、ガスが上下方向に流通するのを許容する多孔質円柱部材である。多孔質プラグ150の上面150aは有底穴164の底部165に接し、多孔質プラグ150の下面150bは上方部材161の下面161eと同じかそれよりも上に位置している。上方部材161は、複数の細孔166を有している。細孔166は、上方部材161の有底穴164の底部165を上下方向に貫通するように設けられている。細孔166の上下方向の長さや直径、個数の数値範囲は、上述した実施形態の細孔66と同じである。上方部材161の下面161eには、下方部材162の上面が樹脂接着層又は金属接合層によって一体化されている。下方部材162は、緻密質セラミック(例えば緻密質アルミナなど)で形成されたパイプである。下方部材162の外径は上方部材161の下部161bの外径と同じかやや小さく、下方部材162の内径は上方部材161の有底穴164の内径と同じかやや大きい。図6の構成によれば、上述した実施形態と同様、細孔166の加工性が良好になる。加えて、半導体製造装置用部材を製造する際、長さの短い上方部材161の有底穴164に長さの短い多孔質プラグ150を挿入し、その後上方部材161と下方部材162とを一体化することができる。このように、多孔質プラグ150の挿入距離が短くなるため、多孔質プラグ150が崩れにくい。
【0037】
上述した実施形態では、多孔質プラグ50の下面50bを冷却プレート30のガス穴34の内部(つまり冷却プレート30の上面よりも下方)に位置するようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、多孔質プラグ50の下面50bを金属接合層40の貫通穴42の内部(つまり金属接合層40の上面よりも下方)に位置するようにしてもよい。このようにしても上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0038】
上述した実施形態において、金属接合層40の代わりに樹脂接着層を用いてもよい。その場合、冷却プレート30が本発明の導電性基材に相当し、ガス穴34が第2穴に相当する。
【0039】
上述した実施形態では、絶縁ケース60を1つの部材で構成したが、複数の部材で構成してもよい。
【0040】
上述した実施形態では、絶縁ケース60の内周面に多孔質プラグ50を接着固定したが、特にこれに限定されない。例えば、絶縁ケース60の内周面と多孔質プラグ50の外周面とを焼結固定してもよい。具体的には、両面の少なくとも一方に焼結助剤を塗布して焼結してもよく、その場合、界面に焼結助剤の組成が凝集していてもよい。
【0041】
上述した実施形態において、セラミックプレート20に内蔵される電極22として、静電電極を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、電極22に代えて又は加えて、セラミックプレート20にヒータ電極(抵抗発熱体)を内蔵してもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 半導体製造装置用部材、20 セラミックプレート、21 ウエハ載置面、21a シールバンド、21b 円形小突起、21c 基準面、22 電極、24 第1穴、24a 第1穴上部、24b 第1穴下部、24c 段差部、30 冷却プレート、32 冷媒流路、34 ガス穴、40 金属接合層、42 貫通穴、50 多孔質プラグ、50a 上面、50b 下面、60 絶縁ケース、60a 上面、61 絶縁ケース上部、62 絶縁ケース下部、63 肩部、64 有底穴、65 底部、66 細孔、70 接着層、71 上部接着層、72 下部接着層、80 絶縁コップ、85 底部、86 貫通孔、90 金属接合材、92 予備穴、94 接合体、150 多孔質プラグ、150a 上面、150b 下面、160 絶縁ケース、161 上方部材、161a 上部、161b 下部、161c 肩部、161d 上面、161e 下面、162 下方部材、164 有底穴、165 底部、166 細孔、170 接着層、As1,As2 一体化部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6