(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】伸縮可能な電子ペン
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
(21)【出願番号】P 2021511158
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(86)【国際出願番号】 JP2020003668
(87)【国際公開番号】W WO2020202761
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2019071085
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】青木 信也
(72)【発明者】
【氏名】西澤 直也
(72)【発明者】
【氏名】江口 徹
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-129086(JP,A)
【文献】特開2014-170273(JP,A)
【文献】実開平05-043231(JP,U)
【文献】特開2001-209493(JP,A)
【文献】特開2014-165708(JP,A)
【文献】登録実用新案第3177061(JP,U)
【文献】特開2013-047927(JP,A)
【文献】登録実用新案第3177874(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン先となる部材であって、導電性材料により構成された芯体と、
導電性材料により構成され、先端部分に前記芯体が設けられる筒状筐体と、
を備え、
前記筒状筐体は、同一の軸心を有する複数の筒状筐体からなり、当該複数の筒状筐体は、重なって短状態となり、引き伸ばして長状態となる
ものであり、
前記筒状筐体は、最内部筐体と、前記最内部筐体の外側に位置する1つ以上の中間部筐体と、前記中間部筐体の外側に位置する最外部筐体とから構成
され、
前記最外部筐体の外側側面は、非導電性材料により形成されたカバーが設けられ、
スイッチ部が接続され、前記スイッチ部に対する操作に応じた信号を送出するための回路部を備え、
前記スイッチ部は、前記筒状筐体を
引き伸ばして長状態のあるときのペン先側とは反対の端部の
前記最外部筐体の外側側面に設けられ、
前記スイッチ部は、
導電材料で形成され、前記最外部筐体に電気的に接続
されている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記回路部は、前記筒状筐体を行き伸ばして長状態のあるときの、ペン先側の端部の
前記最内部筐体に設けられる
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項3】
請求項1に記載の電子ペンであって、
前記回路部は、前記筒状筐体を行き伸ばして長状態のあるときの、ペン先側とは反対の端部の
前記最外部筐体に設けられる
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項4】
信号送信部と、
前記信号送信部に接続され、前記信号送信部から所望の信号を送信するための回路部と、
前記信号送信部と前記回路部とが搭載される筒状筐体と
を備え、
前記筒状筐体は、同一の軸心を有する複数の筒状筐体からなり、当該複数の筒状筐体は、重なって短状態となり、引き伸ばして長状態となる
ものであり、
前記筒状筐体は、最内部筐体と、前記最内部筐体の外側に位置する1つ以上の中間部筐体と、前記中間部筐体の外側に位置する最外部筐体とから構成
され、
前記筒状筐体を行き伸ばして長状態のあるときのペン先側の端部の
前記最内部筐体に、前記信号送信部と前記回路部とが設けられ
、
前記信号送信部は、芯体の周囲に設けられたフェライトコアの周囲に導電線が巻回されて形成されたコイルと、前記回路部に搭載されたコンデンサとが並列に接続さて構成された共振回路であ
り、
前記最内部筐体の全部あるいは少なくなくとも先端部分は、非導電材料で構成されている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項5】
信号送信部と、
前記信号送信部に接続され、前記信号送信部から所望の信号を送信するための回路部と、
前記信号送信部と前記回路部とが搭載される筒状筐体と
を備え、
前記筒状筐体は、同一の軸心を有する複数の筒状筐体からなり、当該複数の筒状筐体は、重なって短状態となり、引き伸ばして長状態となる
ものであり、
前記筒状筐体は、最内部筐体と、前記最内部筐体の外側に位置する1つ以上の中間部筐体と、前記中間部筐体の外側に位置する最外部筐体とから構成
され、
前記筒状筐体を行き伸ばして長状態のあるときのペン先側の端部の
前記最内部筐体に、前記信号送信部が設けられ、
前記筒状筐体を行き伸ばして長状態のあるときのペン先側とは反対側の端部の
前記最外部筐体に、前記回路部が設けられ
、
前記信号送信部は、芯体の周囲に設けられたフェライトコアの周囲に導電線が巻回されて形成されたコイルと、前記回路部に搭載されたコンデンサとが並列に接続さて構成された共振回路であ
り、
前記最内部筐体の全部あるいは少なくなくとも先端部分は、非導電材料で構成されている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項6】
信号送信部と、
前記信号送信部に接続され、前記信号送信部から所望の信号を送信するための回路部と、
前記信号送信部と前記回路部とが搭載される筒状筐体と
を備え、
前記筒状筐体は、同一の軸心を有する複数の筒状筐体からなり、当該複数の筒状筐体は、重なって短状態となり、引き伸ばして長状態となる
ものであり、
前記筒状筐体は、最内部筐体と、前記最内部筐体の外側に位置する1つ以上の中間部筐体と、前記中間部筐体の外側に位置する最外部筐体とから構成
され、
前記筒状筐体を行き伸ばして長状態のあるときのペン先側の端部の
前記最内部筐体に、前記信号送信部が設けられ、
前記筒状筐体を行き伸ばして長状態のあるときのペン先側とは反対側の端部の
前記最外部筐体に、前記回路部が設けられ
、
前記信号送信部となる導電性材料により形成された芯体と、前記回路部に搭載された発信回路とが、前記最内部筐体の外側側面と、1つ以上の前記中間部筐体の内側側面と外側側面と、前記最外部筐体の内側側面とに設けられた、畳み込んだ場合と引き延ばした場合のいずれにおいても電気的に接続される導体パターンによって接続される
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項7】
請求項4、請求項5または請求項6のいずれかに記載の電子ペンであって、
前記回路部には、スイッチ部が接続され、当該スイッチ部は、前記最外部筐体の外側側面に設けられている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項8】
信号送信部と、
前記信号送信部に接続され、前記信号送信部から所望の信号を送信するための回路部と、
前記信号送信部と前記回路部とが搭載される筒状筐体と
を備え、
前記筒状筐体は、同一の軸心を有する複数の筒状筐体からなり、当該複数の筒状筐体は、重なって短状態となり、引き伸ばして長状態となる
ものであり、
前記筒状筐体は、最内部筐体と、前記最内部筐体の外側に位置する1つ以上の中間部筐体と、前記中間部筐体の外側に位置する最外部筐体とから構成
され、
前記筒状筐体を行き伸ばして長状態のあるときのペン先側の端部の
前記最内部筐体には、前記信号送信部を設け、
前記筒状筐体を行き伸ばして長状態のあるときのペン先側とは反対側の端部の
前記最外部筐体には、前記回路部と、
前記回路部に駆動電源を供給する電池と
を搭載し、前記最外部筐体の外側側面には、前記回路部に接続されたスイッチ
部を設け
、
前記信号送信部となる導電性材料により形成された芯体と、前記回路部に搭載された発信回路とが、前記最内部筐体の外側側面と、1つ以上の前記中間部筐体の内側側面と外側側面と、前記最外部筐体の内側側面とに設けられた、畳み込んだ場合と引き延ばした場合のいずれにおいても電気的に接続される導体パターンによって接続される
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項9】
請求項4、請求項5、請求項6または請求項8に記載の電子ペンであって、
前記芯体のペン先とは反対側の端部により押圧されることにより、前記芯体にかかる筆圧を検出し、前記回路部に通知する筆圧検出部を備え、
前記回路部は、前記筆圧検出部において検出された筆圧を示す情報を、前記信号送信部から送信する信号に含めることができるものである
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項10】
請求項1に記載の電子ペンであって、
外部からの情報を受信する情報受信部と、
前記情報受信部を通じて受信した前記情報を記憶する記憶部と
を備えることを特徴とする電子ペン。
【請求項11】
請求項10に記載の電子ペンであって、
前記記憶部に記憶した情報を外部機器に送信する情報送信部
を備えることを特徴とする電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、位置検出装置と共に使用されるペン型の位置指示器である電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペンは、使用者により把持されて、位置検出装置の位置検出センサ(座標検出センサ)上における位置指示のために用いられる。電子ペンによるセンサ上の指示位置は、電子ペンと位置検出センサとの間で、電磁誘導方式や静電容量方式などの種々の方式によって位置検出用信号の授受が行われることによって、位置検出装置で検出される。なお、電磁誘導方式の位置検出センサと電子ペンとで構成される入力装置の一例については、後に記す特許文献1に開示されており、また、静電容量方式の位置検出センサと電子ペンとで構成される入力装置の一例については、後に記す特許文献2に開示されている。なお、位置検出装置は、位置検出センサと、当該位置検出センサからの検出出力の供給を受けて指示位置を検出する位置検出回路とから構成されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平07-044304号公報
【文献】特開平07-295722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、学校の授業や企業のセミナーなどにおいては、65インチ以上の大きな表示画面と、これに対応した位置検出センサとを備えた表示装置をパーソナルコンピュータに接続して利用することも増えてきている。この場合、従来の電子ペンでは短すぎて、柔軟な指示操作が行えない場合がある。また、電子ペンは、位置検出センサとの間において、上述したように、電磁誘導により結合したり、静電容量により結合したりして、位置を指示する。この動作だけを見ると、電子ペンと位置検出センサとにより、一種のスイッチが構成されていると見做すことができる。このような性質を利用して、電子ペンと位置検出センサとの新たな利用態様の開発も望まれる。
【0005】
以上のことに鑑み、この発明は、活用範囲をより広範囲にすることができる電子ペンを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、
ペン先となる部材であって、導電性材料により構成された芯体と、
導電性材料により構成され、先端部分に前記芯体が設けられる筒状筐体と、
を備え、
前記筒状筐体は、同一の軸心を有する複数の筒状筐体からなり、当該複数の筒状筐体は、重なって短状態となり、引き伸ばして長状態となるものであり、
前記筒状筐体は、最内部筐体と、前記最内部筐体の外側に位置する1つ以上の中間部筐体と、前記中間部筐体の外側に位置する最外部筐体とから構成され、
前記最外部筐体の外側側面は、非導電性材料により形成されたカバーが設けられ、
スイッチ部が接続され、前記スイッチ部に対する操作に応じた信号を送出するための回路部を備え、
前記スイッチ部は、前記筒状筐体を引き伸ばして長状態のあるときのペン先側とは反対の端部の前記最外部筐体の外側側面に設けられ、
前記スイッチ部は、導電材料で形成され、前記最外部筐体に電気的に接続されている
ことを特徴とする電子ペンを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態の電子ペンの外観と回路部の配置位置について説明するための図である。
【
図2】第1の実施の形態の電子ペンの構成について説明するための図である。
【
図3】実施の形態の電子ペンにカバーを用いるようにした場合について説明するための図である。
【
図4】第2の実施の形態の電子ペンの構成について説明するための図である。
【
図5】第3の実施の形態の電子ペンの構成について説明するための図である。
【
図6】実施の形態の電子ペンの利用態様について説明するための図である。
【
図7】実施の形態の電子ペンの利用態様について説明するための図である。
【
図8】電子ペンにメモリを搭載した場合について説明するための図である。
【
図9】メモリを搭載した電子ペンの利用態様について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
電子ペンと位置検出装置とからなる入力デバイスにおいて用いられている主要な位置指示のための方式には、電磁誘導方式(EMR(Electro Magnetic Resonance technology)方式)と静電容量方式とがある。静電容量方式には、使用者の手の指によるタッチの検出も可能な静電容量方式(ES(Electrostatic)方式)と、電子ペンから積極的に信号を送信するアクティブ静電容量方式(AES(Active Electrostatic)方式)とがある。
【0011】
この発明の電子ペンは、どの方式の電子ペンとしても構成することができる。しかし、いずれの方式の電子ペンとして構成する場合あっても、その外観形状はほぼ同様に構成することができる。特に、筐体部分の構成は、電子ペンの方式にかかわらず同様のものとなる。
【0012】
そこで、以下においては、まず、実施の形態の電子ペンの外観構成について説明し、その後に、静電容量方式、電磁誘導方式、アクティブ静電容量方式のそれぞれで構成した実施の形態の電子ペンについて説明する。なお、以下においては、静電容量方式をES方式と、電磁誘導方式をEMR方式と、アクティブ静電容量方式をAES方式と記載する。
【0013】
[実施の形態の電子ペンの外観]
図1は、実施の形態の電子ペンの外観と回路部の配置位置について説明するための図である。以下に説明する実施の形態の電子ペンは、芯体11と、先端部に芯体11が設けられる筒状筐体からなる。この筒状筐体は、円筒状のものであり、同一の軸心を有する複数の筒状筐体が連結するようにされて構成され、この複数の筒状筐体は、互いに重なり合うように畳み込むことによって、
図1(B)に示したように短状態(短い状態)となる。また、引き伸ばして互いに重なり合う部分を最小になるようにした場合には、
図1(A)に示すように長状態(長い状態)となる。
【0014】
図1に示した例の電子ペンの場合には、芯体11と、4つの筒状筐体12、13(1)、13(2)、14からなっている。筒状筐体12は、短状態(
図1(B))にした場合に最内部に位置するものである。筒状筐体14は、短状態(
図1(B))にした場合に最外部に位置し、その側面は使用者によって触ることができるものである。筒状筐体13(1)は、筒状筐体12の外側に位置するものであり、筒状筐体13(2)は、筒状筐体13(1)の外側に位置するものである。
【0015】
すなわち、筒状筐体12は、最内部筐体であり、筒状筐体13(1)、13(2)が1以上の中間部筐体であり、筒状筐体14が、最外部筐体となる。この場合、各筐体の直径の関係は、筒状筐体12<筒状筐体13(1)<筒状筐体13(2)<筒状筐体14となる。これにより、
図1(A)に示したように、引き伸ばして長状態にしたり、畳み込んで短状態にしたりすることができる。
【0016】
図1(A)、(B)に示すように、筒状筐体14の側面には、いわゆるサイドスイッチSW1、SW2が設けられている。サイドスイッチSW1、SW2は、ポインティングデバイスであるいわゆるマウスの左ボタン、右ボタンに相当する。従って、サイドスイッチSW1を押下すると周波数Aの信号が芯体11を通じて送信され、例えば、使用者が目的する位置を指示してカーソルを位置付けることができる。また、サイドスイッチSW2を押下すると、周波数Bの信号が芯体11を通じて送信され、例えば、現在のカーソル位置の近傍に所定のウィンドウを表示する(開く)とことができる。
【0017】
もちろん、これ以外の機能をサイドスイッチSW1、SW2に割り当てることもできる。また、位置検出装置が搭載されている表示装置が接続されているコンピュータの実行状態に応じて、サイドスイッチSW1、SW2の操作に応じて実行させる機能を変えることもできる。このように、サイドスイッチSW1、SW2の操作に応じて信号を送出するための回路部(回路基板)15が、
図1(C)に示すように、筒状筐体12、あるいは、筒状筐体14に搭載される。回路部15には、制御IC(Integrated circuit)や発信回路などが含まれる。
【0018】
筒状筐体12、あるいは、筒状筐体14に回路部15を搭載するのは、筒状筐体12には、これよりも先に続く筐体はなく、逆に筒状筐体14には、これよりも後に続く筐体はなく、いずれの場合にも回路部15を内部に固定しやすいためである。なお、ES方式やAES方式の場合には、回路部15を機能させるための電源が必要であり、
図1(C)に示すように、例えば、筒状筐体14の端部部分に、電池16の搭載部が設けられ、電池の着脱ができるようになっている。
【0019】
なお、
図1(C)に示した例の場合、電池16は、いわゆるボタン型電池を想定しているが、単三型、単四型の電池を用いる場合には、筒状筐体14の後端側の部分を長くするように構成すればよい。以上のような外観構成は、ES方式の電子ペン、EMR方式の電子ペン、AES方式の電子ペンのいずれの場合でもほぼ同じである。以下においては、ES方式の電子ペン、EMR方式の電子ペン、AES方式の電子ペンの構成例について説明する。
【0020】
[第1の実施の形態:ES方式の電子ペンの構成例]
図2は、第1の実施の形態の電子ペンである、ES方式の電子ペン1の構成について説明するための図である。ES方式の電子ペン1の場合、使用者の身体を通じて接地させるため、電子ペン1の芯体11及び筒状筐体12、13(1)、13(2)、14は、導電性材料により形成される。例えば、芯体11は、導電ゴムにより形成され、筒状筐体12、13(1)、13(2)、14のそれぞれは、鉄やアルミニュウムなどの金属により形成されているものとする。当該構成により、ES方式の電子ペンとしては機能することができる。
【0021】
すなわち、使用者が電子ペン1を手に持って位置検出センサに芯体11を接触させるようにすると、電子ペン1は使用者を通じて接地されるので、位置検出センサと電子ペン1との間に微弱な電流が流れ、静電容量が変化する。これを位置検出センサ及び位置検出回路で検出することで、電子ペン1により指示されたこと、また、その指示位置を検出できる。
【0022】
更に、
図2に示すように、芯体11と回路部15は、電気的に接続されていない。サイドスイッチの情報は、回路部15に搭載されている制御IC接続されたアンテナ152を通して、位置検出センサ側に送信する。この場合、制御IC151は、近距離無線通信部としての機能をも備えるものであり、給電回路153を通じて、電池16からの駆動電源が供給されている。また、給電回路153は、必要な各部にも駆動電源を供給する。これにより、制御IC151は、サイドスイッチSW1やサイドスイッチSW2が押下操作された場合には、アンテナ152を通じて、位置検出センサ側にサイドスイッチの情報を送信できるようにしている。
【0023】
これにより、電子ペン1は、
図1(B)に示したように、畳み込まれて短状態にある時にも、また、
図1(A)に示したように、引き伸ばされて長状態にあるときにも、ES方式の電子ペンとして機能する。また、サイドスイッチSW1、SW2が押下操作された時には、操作されたサイドスイッチに応じた周波数の信号を、位置検出センサ側に送信することができる。これにより、サイドスイッチSW1、SW2の操作に応じて、位置検出センサ側に対して、指示を出すことができる。
【0024】
図3は、実施の形態の電子ペンにカバーを用いるようにした場合について説明するための図である。
図3に示すように、電子ペン1の筒状筐体14に対しては、美観をよくしたり、筐体を保護したりするため、カバー17を取り付けることができる。カバー17の素材としては、木材、皮革(天然、合成)、ゴム(天然、合成)、布などの非導電性材料を用いることが考えられる。
【0025】
この場合、筒状筐体14の外側全面をカバー17で覆ってしまうと、使用者との電気的な接続が断たれ、使用者の身体を通じての接地ができなくなる。そこで、カバー17に開口部17hを設け、使用者の掌または使用者の手の指と、筒状筐体14の外側側面との接続を維持することができるようにする。
図3に示した例の場合には、サイドスイッチSW1、SW2が設けられた部分に開口部17hを設けている。この場合、サイドスイッチSW1、SW2自体を、導電性材料で形成しておくことによって、使用者の身体とのより確実な電気的接続を確保できる。
【0026】
[第2の実施の形態:EMR方式の電子ペンの構成例]
図4は、第2の実施の形態の電子ペンである、EMR方式の電子ペン1Aの構成について説明するための図であり、
図4(A)は、電子ペン1Aの断面図を、
図4(B)は電子ペン1Aの等価回路を示している。まず、
図4(A)を用いて、電子ペン1Aの構成につて説明する。筒状筐体12Aは、
図1に示した筒状筐体12に対応し、直径が一番短い最内部筐体に相当する。筒状筐体12A内には、EMR方式の電子ペン機能を実現するための種々の部材が搭載される。
【0027】
芯体11Aは、
図1に示した芯体11に対応するものであるが、この第2の実施の形態の芯体11Aは、例えば樹脂等により形成される棒状のものである。芯体11Aのペン先となる端部部分は、当該部分より後端に延びる軸部の径よりも長い径を有すると共に、先端部が半球状に加工され、位置検出センサなどの操作面上において、スムーズに移動させることができるようにしたものである。
【0028】
フェライトコア22は、例えば円柱状のフェライト材料に、所定の径の軸心方向の貫通孔が、軸心方向の中心線を含む位置に形成されたものである。フェライトコア22の貫通孔には、芯体11Aがフェライトコア22を貫通するように挿入される。すなわち、芯体11Aは、フェライトコア22の軸心方向の長さよりも長いものである。また、フェライトコア22の当該貫通孔に挿入される芯体11Aの軸部分は、当該貫通孔の径よりもやや短い径を有するものであり、当該貫通孔内を軸心方向に摺動移動することができるようにされる。
【0029】
図4(A)に示すように、フェライトコア22の軸心方向の所定の長さの部分はコイル21が巻回されたコイル巻回部となり、その両端はコイルが巻回されていないコイル非巻回部となっている。フェライトコア22に巻回されたコイル21の端部からの延伸線(導体線)21a,21bは、筒状筐体12Aの内側を、回路部15Aまで延伸されて、回路部15Aに設けられているコンデンサ(キャパシタ)に接続される。これにより、コイル21と回路部15A上のキャパシタとによって共振回路を構成し、位置検出装置との間において、電磁誘導により結合して、相互に信号(磁界)を送受することができる。
【0030】
回路部15Aは、
図1(C)に示した回路部15に相当し、いわゆるプリント基板の構成とされたものである。回路部15には、制御回路として機能する制御ICや複数のコンデンサなどの種々の回路部品が絶縁基板上に搭載され、それらが接続されて電子回路を形成している。回路部15Aは、
図4(A)に示すように、基板保護パイプ24の内部に収納されて保護される。
【0031】
芯体11Aのペン先とは反対側には、モールド部23A、筆圧検出部23B、嵌合部23C、接続端子部23Dからなる接続部23が設けられる。この接続部23は、コイル21とフェライトコア22と芯体11Aとからなる部分と、回路部15A及び基板保護パイプ24とを一体的に接続する部分である。モールド部23Aのフェライトコア22と対向する端面側にはフェライトコア22のコイル非巻回部が嵌合する凹部が設けられている。
【0032】
更に、モールド部23Aの内部には、
図4(A)に示すように、芯体保持部A1、導電ゴムA2、リングスペーサA3、誘電体A4、端子部材A5が設けられている。これらの各部が、モールド部23Aと、嵌合部23Cとによって挟み込まれ、筆圧を検出する筆圧検出部23Bとなる。
【0033】
すなわち、導電ゴム(第1の電極)A2と端子部材(第2の電極)A5とが、誘電体A4を挟み込むことにより、可変容量コンデンサ(キャパシタ)を構成している。導電ゴムA2に接続された導電線と、端子部材に接続された導電線とが、例えば、モールド部23Aと嵌合部23Cの外側を通り、接続端子部23Dの端子に接続され、接続端子部23Dの端子を通じて回路部15Aの電子回路に接続される。これにより、回路部15Aの電子回路部において、芯体11Aに加えられる筆圧を、可変容量コンデンサの構成とされた筆圧検出部23Bの静電容量の変化として検出できる。
【0034】
この例において、芯体保持部A1、導電ゴムA2、リングスペーサA3、誘電体A4、端子部材A5により構成される筆圧検出部23Bは、例えば特許文献:特開平5-275283号公報に記載されている周知の構成の筆圧検出手段と同様のものである。また、筆圧検出部23Bは、特開2011-186803号公報に記載されている周知の構成の筆圧検出手段と同様に構成することもできる。また、例えば、特開2013-161307号公報に開示されているような筆圧に応じて静電容量を可変とする半導体素子を用いた構成とすることもできる。
【0035】
嵌合部23Cは、基板保護パイプ24と嵌合する部分である。嵌合部23Cは、樹脂や硬質ゴムなどにより例えば略円筒状に形成され、モールド部23Aと強固に嵌合して一体的になっている。これにより、上述もしたように、モールド部23Aと嵌合部23Cとによって、芯体保持部A1、導電ゴムA2、リングスペーサA3、誘電体A4、端子部材A5が挟みこまれ、これらの部材から構成される筆圧検出部23Bが、筒状筐体12A内に安定に保持される。
【0036】
そして、嵌合部23Cの内側には、回路部15Aの先端部が嵌合する凹部が設けられている。接続端子部23Dは、
図4(A)に示すように、嵌合部23Cに連結する上下に2枚の板部からなる部分である。この板部が回路部15Aを挟み込むようになっている。これら2枚の板部の一方、例えば、
図4(A)において上側の板部には、上述した導電ゴムA2と、端子部材A5からの導電線が接続された端子が配置されている。このため、接続端子部23Dに回路部15Aを差し込んだ時に、自動的に回路部15Aに設けられている電子回路の端子部と接続されるようになっている。
【0037】
基板保護パイプ24は、金属、カーボン素材、合成樹脂などが用いられて形成され、折れたり曲がったりしにくい硬質管状部材である。芯体側開口部から基板保護パイプ24の内側の所定範囲の部分に、接続部23の嵌合部23Cが差し込まれて両者が嵌合する。同様に、後端側開口部から基板保護パイプ24の内側の所定範囲の部分に、パイプ蓋25が差し込まれて両者が嵌合する。
【0038】
これにより、コイル21が巻回されたフェライトコア22に芯体11Aが挿通されたペン先側の部分と、接続部23と、回路部15Aを収納した基板保護パイプ24と、パイプ蓋25とが一体的に接続される。これにより、EMR方式の電子ペンの機能を実現する主要部分が構成される。この主要部分が、筒状筐体12Aに収納され、後端側の開口部に、筒状筐体13(1)に筒状筐体12Aを接続するための接続部材26が嵌合するように取り付けられる。
【0039】
そして、筒状筐体12Aが、筒状筐体13(1)の後端側から筒状筐体13(1)内に装填される。この筒状筐体12Aが装填された筒状筐体13(1)が、筒状筐体13(2)の後端側から筒状筐体13(2)内に装填される。この筒状筐体12Aと筒状筐体13(1)が装填された筒状筐体13(2)が、筒状筐体14の後端側から筒状筐体14内に装填されて、
図1に示した対応の伸縮するEMR方式の電子ペン1Aが構成できる。
【0040】
なお、EMR方式の電子ペンの場合には、電磁誘導により位置検出装置との間で信号(磁界)のやり取りを行うので、駆動電源は必要ないため、電池は搭載されない。また、
EMR方式の電子ペンの場合にも、筒状筐体14には、
図1に示した場合と同様にしてサイドスイッチSW1A、SW2Aが設けられる。サイドスイッチSW1A、SW2Aは、例えば、
図4(A)において、導電線27によって回路部15Aに接続される。
【0041】
次に、
図4(B)に示す電子ペン1Aの等価回路を参照して、電子ペン1Aの機能について説明する。EMR方式の電子ペン1Aの場合には、コイル21と回路部15Aに搭載されたコンデンサCfとによって共振回路を構成し、位置検出装置との間で電磁誘導により信号(磁界)の送受が行える。更に、可変容量コンデンサの構成とされた筆圧検出部23Bが共振回路に並列に接続されることにより、検出する筆圧に応じて、位置検出装置に対して送信する信号(磁界)の位相を変化させることができ、筆圧情報の送信も行える。
【0042】
更に、
図4(B)に示したように、コンデンサC1とサイドスイッチSW1Aとを直列に接続した部分と、コンデンサC2とサイドスイッチSW2Aとを直列に接続した部分とが、共振回路に対して並列に接続される。これにより、サイドスイッチSW1A、SW2Aのオン/オフによっても、送信する信号(磁界)の位相を変化させることができ、サイドスイッチSW1A、SW2Aのそれぞれ毎に、操作されたことを通知することができる。
【0043】
なお、電子ペン側の共振回路とセンサとの電磁誘導の結合により相互に信号(磁界)を送受するので、筒状筐体12Aは、導電性材料ではなく樹脂等で構成される必要がある。樹脂の部分は、筒状筐体12Aの先端部分だけでも良い。
【0044】
[第3の実施の形態:AES方式の電子ペンの構成例]
図5は、第3の実施の形態の電子ペンである、AES方式の電子ペン1Bの構成について説明するための図であり、
図5(A)は、電子ペン1Bのペン先側の断面図であり、
図5(B)は、電子ペン1Bの概略構成を示している。まず、
図5(A)を用いて、電子ペン1Bの構成につて説明する。筒状筐体12Bは、
図1に示した筒状筐体12に対応し、直径が一番短い最内部筐体に相当する。筒状筐体12B内には、AES方式の電子ペン機能を実現するための種々の部材が搭載される。
【0045】
図5(A)に示すように、この例のAES方式の電子ペン1Bにおいても、基本的には
図4に示したEMR方式の電子ペン1Aの場合と同様の構成を有する。しかし、AES方式の電子ペン1Bの場合には、芯体11Bを通じて信号を位置検出装置に送信するため、芯体11Bは導電性を有するものである。芯体11Bは、例えば、金属、カーボン材料を混ぜた合成樹脂などが用いられて構成される。
【0046】
図5(A)に示すように、AES方式の電子ペン1Bの場合には、芯体保持部A1の内側に、これに指し込まれる芯体11Bが接触するように電極A7が設けられる。この電極A7から導線A8が延伸され、回路部15Bに搭載されている発振回路に接続される。これにより、回路部15Bに搭載されている発振回路からの信号が、芯体11Bを通じて、位置検出装置へ送信される。なお、芯体保持部A1自体を、例えば、導電ゴムやカーボンを混ぜた樹脂等の導電性を有する材料により形成し、導電性を有するようにされた芯体保持部A1と発振回路とを導電線により接続する構成としてもよい。
【0047】
この例の場合には、コイルとフェライトコアは存在しない。このため、電子ペン1Bの場合には、モールド部23Aは、ペン先側に延伸され、先が細くなった部分の端面に突合するようになっている。そして、芯体11B、モールド部23A、筆圧検出部23B、嵌合部23C、接続端子部23D、電極A7及び導線A8、回路部15B、基板保護パイプ24、図示しないパイプ蓋25、接続部材26が、筒状筐体12B内に収納されて、電子ペン1Bが構成される。
【0048】
このようにして、AES方式の電子ペン機能が搭載された筒状筐体12Bが、
図4を用いて説明したEMR方式の電子ペン1Aの場合と同様に、筒状筐体13(1)、13(2)、14と組み合わされて、
図1に示した伸縮するAES方式の電子ペン1Bが構成できる。
【0049】
次に、
図5(B)の電子ペン1Bの概略構成を参照して、電子ペン1Bの機能について説明する。
図5(B)に示すように、芯体11Bには、制御IC151Bを通じて、発振回路152Bが接続されている。制御IC151Bには、給電回路153Bを通じて、電池16Bからの駆動電源が供給されている。また、給電回路153Bは、必要な各部にも駆動電源を供給する。また、制御IC151Bには、サイドスイッチSW1B、SW2Bに加えて、可変容量コンデンサの構成とされた筆圧検出部23Bが接続されている。
【0050】
これにより、筆圧検出部23Bで検出された筆圧情報を、制御IC151Bは、発振回路152Bからの基準信号に基づいて周波数を変えるなどして、芯体11Bから送信する信号に含めて送信することができる。また、制御IC151Bは、サイドスイッチSW1やSW2が押下操作された場合には、発振回路152Bからの基準信号に基づいて、目的とする周波数の信号を形成して、芯体11から送出し、位置検出センサ側に送信することができる。
【0051】
[電子ペン1、1A、1Bの利用態様]
図6は、実施の形態の電子ペン1、1A、1Bの利用態様について説明するための図である。
図6は、大きな表示画面100を備えると共に、表示画面100の全面に対応して位置検出センサ100Sが設けられた表示装置が、パーソナルコンピュータに接続されて利用される場合の利用態様を説明するための図である。この場合、当該表示装置をいわゆる黒板やホワイトボードの代わりとして用いることができる。なお、当該表装置に搭載された位置検出センサが、静電容量方式か、電磁誘導方式か、アクティブ静電容量方式のものかに応じて、用いる電子ペンがES方式の電子ペン1か、EMR方式の電子ペン1Aか、AES方式の電子ペン1Bかが決まる。
【0052】
そして、
図6の左側に示したように、電子ペン1、1A、1Bを引き伸ばした状態(長状態)で、そのペン先を位置検出センサ100Sに近づければ、その指示位置にカーソルを位置付けて、所定の表示H1を表示するといったことができる。同様に、電子ペン1、1A、1Bを引き伸ばした状態で、そのペン先を位置検出センサ100Sに近づけて、その指示位置にカーソルを位置付け、更にサイドスイッチSW1、SW1A、SW1Bを押下操作したとする。この場合には、その指示位置を基準にして、所定のウィンドウM1を表示し(開き)、選択項目を指し示すことで、目的とする選択項目を選択するといったことができる。このように、電子ペン1、1A、1Bを、いわゆる指示棒としての機能とポインティングデバイスとしての機能とを合わせ持ったものとすることができる。
【0053】
また、
図6の右側に示したように、電子ペン1、1A、1Bを畳み込んだ状態(短状態)で、そのペン先を位置検出センサ100Sに接触させて、移動するように操作すれば、文字や図形を描画することができる。このように、電子ペン1、1A、1Bを、いわゆるチョーク(白墨)やホワイトボード用マーカーなどの筆記具として用いることができる。
【0054】
図7は、実施の形態の電子ペン1、1A、1Bの他の利用態様について説明するための図である。
図7は、例えば、室内の壁、柱、テーブルの上面など、使用者と対する面に対して、複数の位置検出センサSS1、SS2、SS3、…を設け、これらをコントローラ200に接続する。位置検出センサSS1、SS2、SS3、…は、ES方式用、EMR用、AES用のものがある。従って、設けられている位置検出センサの方式に応じて、用いる電子ペンが、ES用の電子ペン1か、EMR用の電子ペン1Aか、AES用の電子ペン1Bかが決められる。
【0055】
また、位置検出センサSS1、SS2、SS3、…のそれぞれには、予め機能が割り当てられる。割り当てられる機能には、例えば、電灯のオン/オフ、テレビのオン/オフ、テレビの音量調整、テレビのチャンネル切り替え、エアコンのオン/オフ、エアコンのモード切り替え、エアコンの温度調整、電子メールの受信表示といった種々のものがある。
【0056】
コントローラ200は、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ、リモコン信号送信部、通信I/F、外部機器との接続I/Fなどを備えたものである。コントローラ200は、通信I/Fを通じてインターネット300にも接続されている。
【0057】
これにより、例えば、電灯のオン/オフ機能が割り当てられた位置検出センサ上の位置が、対応する方式の電子ペン1、1A、1Bによって指示されたとする。当該指示は、当該位置検出センサからの出力信号によって、コントローラ200に通知される。これにより、コントローラ200は、電灯に対するリモコン信号をリモコン信号送信部から送信し、電灯のオン/オフを行うことができる。
【0058】
同様にして、目的とする機能が割り当てられている位置検出センサを、対応する方式の電子ペン1、1A、1Bで指示することで、目的とする機能を実行できる。すなわち、テレビのオン/オフ、テレビの音量調整、テレビのチャンネル切り替え、エアコンのオン/オフ、エアコンのモード切り替え、エアコンの温度調整、電子メールの受信表示といった処理を、位置検出センサを電子ペンで指示するという簡単な操作で行える。
【0059】
従って、位置検出センサが実現するスイッチに対する操作指示子として機能する電子ペン1、1A、1Bを実現できる。この場合、電子ペン1、1A、1Bを用いなければ、位置検出センサSS1、SS2、SS3、…に対する指示操作ができない。特に、EMR方式の位置検出センサの場合には、使用者が指で触れても、これを検出することができない。このため、電子ペン1、1A、1Bを用いた、確実な操作が行えることにより、誤操作を防止できる。
【0060】
なお、例えば、テレビの音量調整やエアコンの温度調整のように、上げ下げの調整を伴う場合には、アップ用の位置検出センサとダウン用の位置検出センサを設けるようにすればよい。もちろん、1つの位置検出センサの指示領域を2つに分け、一方の領域をアップ用、他方の領域をダウン用として用いるようにしてもよい。
【0061】
また、例えば、電灯のオン/オフのための位置検出センサの場合には、細かな指示位置まで特定する必要はないので、複数のライン電極やループ電極を配置した位置検出センサである必要はなく、指示されたか否かの検出が可能なものであればよい。従って、理論的には、交差する2本のライン電極、あるいは、交差する2本のループ電極により、位置検出センサを構成できる。もちろん、検出の精度を上げるためには、複数のライン電極、複数のループ電極を用いて、位置検出センサを構成することが望ましい。
【0062】
[情報の受信保持機能]
図8は、電子ペンにメモリを搭載した場合について説明するための図である。上述したように、電子ペン1、1A、1Bは、アンテナ152、芯体11Bやコイル21を通じて、情報を送信する機能を有する。逆に考えると、アンテナ152、芯体11Bやコイル21を通じて、位置検出装置などからの情報を受信することもできる。そこで、電子ペン1、1A、1Bに、メモリ155、155A、155Bを搭載しておく。
【0063】
そして、
図8(A)に示すように、芯体11と電気的に切り離された状態で、アンテナ152を通じて受信した情報を取り込んで、メモリ155に記録する受信部154を設ける。同様に、
図8(B)に示すように、コイル21とコンデンサCfとからなる共振回路とメモリ155Aの間に当該共振回路を通じて受信した情報を取り込んで、メモリ155Aに記録する受信部154Aを設ける。同様に、
図8(C)に示すように、芯体11Bとメモリ155Bの間に芯体11Bを通じて受信した情報を取り込んで、メモリ155Bに記録する受信部154Bを設ける。このようにすれば、外部からの情報を取り込んで、メモリ155、155A、155Bに記録する機能を、電子ペン1、1A、1Bに持たせることができる。
【0064】
なお、
図8(A)の受信部154は、例えば、BlueTooth(登録商標)規格などの近距離無線通信機能として実現することができる。なお、受信部154の機能は、
図2に示した制御IC151の機能として設けることができる。もちろん、近距離無線通信機能を実現する近距離無線通信部を、制御IC151とは別個に設けるように構成することも可能である。また、芯体11Bやコイル21とは別に、近距離無線通信機能を、別途、電子ペン1A、1Bに持たせることもできる。
【0065】
図9は、メモリを搭載した電子ペンの利用態様について説明するための図である。
図8を用いて取り込んだ情報は、
図9に示すように、位置検出センサ400Sを備えた情報端末400に対して、例えば、位置指示信号に含めて送信する。これにより、情報端末400に対して、電子ペン1、1A、1Bが収集した情報を引き渡すことができる。このようにして受け渡す情報には、種々のものが考えられる。
【0066】
一例を挙げれば、
図6を用いて説明した利用態様において、電子ペン1、1A、1Bを通じて指示した表示画面100の位置や入力し文字や図形の情報の提供を受けて、電子ペン1、1A、1Bのメモリ155、155A、155Bに記憶保持する。そして、例えば、タブレットPCである情報端末400に当該情報を提供し、行った授業や講義の内容を再現するようにして、再確認することができる。
【0067】
また、
図7を用いて説明した利用態様において、電子ペン1、1A、1Bを通じて指示した位置検出センサに割り当てられている機能を示す情報の提供を受ける。この提供を受けた情報と、電子ペン1、1A、1Bが備える時計回路が提供する現在時刻と対応付けて、電子ペン1、1A、1Bのメモリ155、155A、155Bに記憶保持する。そして、例えば、タブレットPCである情報端末400に当該情報を提供し、電子ペン1、1A、1Bを通じて行った操作履歴を確認するといったことが可能になる。
【0068】
[実施の形態の効果]
上述した実施の形態の電子ペン1、1A、1Bは、授業や講義などで教師や講師が用いる指示棒としての機能と、パーソナルコンピュータのマウスのようなポインティングデバイスとの機能を併せ持つ電子ペンを実現できる。また、位置検出センサの構成とされたスイッチに対する操作指示子としての機能する電子ペンを実現できる。これにより、位置検出装置が搭載された情報端末に対する情報の入力だけでなく、活用範囲をより広範囲にすることができる電子ペンを実現できる。
【0069】
[変形例]
なお、上述した実施の形態の電子ペン1、1A、1Bは、
図1に示したように、4段の構成としたが、これに限るものではない。2段以上の多段の構成を有する電子ペンを
構成できる。また、電子ペンを構成する複数の筒状筐体12、13(1)、13(2)、…、14の太さや長さは、使用目的などに応じて種々のものとすることができる。
【0070】
また、筒状筐体12、13(1)、13(2)、…、14は、円筒状のものに限るものではなく、多角柱状のものであってもよい。要は、端面が相似形となる形状の複数の筒状筐体を組み合わせることにより、多段の電子ペンを構成することができる。従って、端面が星形や楕円形となる筒状体を用いて、多段の構成となる電子ペンを構成することもできる。
【0071】
また、回路部15を、筒状筐体12に設ける場合には、回路部15と、サイドスイッチSW1、SW2とを電気的に接続しなければならない。また、回路部15を、筒状筐体14に設ける場合には、回路部15と、芯体11とを電気的に接続しなければならない。これらの場合には、筒状筐体12、13(1)、13(2)、14の内部において、畳み込んだり引き伸ばしたりしても、接続導線が切れることがない態様で接続する必要がある。EMR方式の電子ペン1A、AES方式の電子ペン1Bについても同様である。
【0072】
このため、筒状筐体12の外側側面、筒状筐体13(1)、13(2)の内側側面と外側側面、筒状筐体14の内側側面に、畳み込んだ場合と引き伸ばした場合のいずれの場合でも、電気的に接続される導体パターンを形成しておくようにしてもよい。もちろん、導電線により接続するようにしてもよい。
【0073】
また、筒状筐体12、13(1)、13(2)、…、14の外側側面は、木目プリントを施した、色彩を付与したりするなど、種々の加工や装飾が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1…ES方式の電子ペン、11…芯体、12…筒状筐体(最内部筐体)、13(1)、13(2)…筒状筐体(中間部筐体)、14…筒状筐体(最外部筐体)、15…回路部、151…制御IC、152…アンテナ、153…給電回路、16…電池、17…カバー、17h…開口部(電気的接続部)、SW1、SW2…サイドスイッチ、1A…EMR方式の電子ペン、11A…芯体、12A…筒状筐体(最内部筐体)、15A…回路部、21…コイル、22…フェライトコア、23…接続部、23B…筆圧検出部、24…基板保護パイプ、25…パイプ蓋、26…接続部材、27…導電線、SW1A、SW2A…サイドスイッチ、Cf、C1、C2…コンデンサ、1B…AES方式の電子ペン、11B…芯体、12B…筒状筐体(最内部筐体)、15B…回路部、151B…制御IC、152B…発振回路、153B…給電回路、16B…電池、SW1B、SW2B…サイドスイッチ、100…表示画面、101…位置検出センサ、200…コントローラ、SS1、SS2、SS3…位置検出センサ、300…インターネット、154、154A、154B…受信部、155、155A、155B…メモリ、400…情報端末、400S…位置検出センサ