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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】電子ペン用芯体及び電子ペン
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20240704BHJP
   G06F 3/046 20060101ALI20240704BHJP
   G06F 3/0354 20130101ALI20240704BHJP
【FI】
G06F3/03 400A
G06F3/03 400F
G06F3/046 A
G06F3/0354 445
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021520693
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2020018482
(87)【国際公開番号】W WO2020235342
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】P 2019094201
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】神山 良二
(72)【発明者】
【氏名】堀江 利彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅充
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 大介
【審査官】石川 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/185915(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/006030(WO,A1)
【文献】特開2016-021134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/046
G06F 3/0354
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端構成部が軸心構成部と結合されて構成される電子ペン用芯体であって、
前記軸心構成部は、少なくとも前記先端構成部との結合側となる軸心方向の一端側が前記先端構成部よりも硬質の部材で構成され、少なくとも前記軸心方向の一端側に前記先端構成部と結合するための凹孔を備えると共に、前記軸心方向の他端側に、電子ペンに設けられる筆圧検出部に対して直接的に、あるいは間接的に嵌合して、前記筆圧検出部に筆圧を伝達するための嵌合部を備え、
前記先端構成部は、前記軸心構成部と結合されたときに、前記軸心構成部の軸心方向の前記一端側から外部に突出する先端部と、前記軸心構成部の軸心方向の一端側において、前記軸心構成部の前記凹孔内に挿入される状態で結合される結合芯部とを備え、前記先端部の前記結合芯部との結合部側には、前記軸心構成部の前記軸心方向の前記一端側の凹孔の周囲の第1のリング状端面と衝合する第2のリング状端面を有し、前記第1のリング状端面は第2のリング状端面で覆われるように構成されており、
さらに、
前記先端構成部は、先端中心部と先端周辺部とからなり、
前記先端中心部は、フェルトで構成され、前記先端部と前記結合芯部とに亘って延伸されており、
前記先端周辺部は、前記フェルトよりも硬質の材料で構成されると共に、前記先端中心部の前記先端部側の端部を除いた部分を覆うように構成され、
前記第2のリング状端面は、前記先端周辺部に形成されている
ことを特徴とする電子ペン用芯体。
【請求項2】
記先端中心部に対して前記先端周辺部が融解接合されている
ことを特徴とする請求項に記載の電子ペン用芯体。
【請求項3】
前記先端構成部の前記結合芯部は、前記軸心構成部の前記凹孔に圧入嵌合される
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン用芯体。
【請求項4】
前記先端構成部の前記結合芯部は、前記先端部側との結合部ほど太くなるようなテーパー形状を備えている
ことを特徴とする請求項に記載の電子ペン用芯体。
【請求項5】
前記先端構成部の前記結合芯部は、前記軸心構成部の前記凹孔に圧入嵌合されると共に接着される
ことを特徴とする請求項に記載の電子ペン用芯体。
【請求項6】
前記先端構成部の前記先端部の側周面は、前記先端構成部が前記軸心構成部と結合された状態においては、前記軸心構成部の側周面と面一となるように構成されている
ことを特徴とする請求項に記載の電子ペン用芯体。
【請求項7】
前記先端構成部の前記先端部の前記第2のリング状端面側の側周面は、前記軸心構成部の側周面よりも、前記軸心方向に直交する方向に張り出すように構成されている
ことを特徴とする請求項に記載の電子ペン用芯体。
【請求項8】
前記軸心構成部は、前記先端構成部よりも硬質の部材で構成される筒状の軸心本体部材と、前記筆圧検出部に筆圧を伝達するための前記嵌合部を備える嵌合用部材とで構成されており、
前記先端構成部を結合させるための凹孔は、前記筒状の軸心本体部材の中空部の前記軸心方向の一端側の部分とされ、
前記嵌合用部材は、前記筒状の軸心本体部材の中空部の前記軸心方向の他端側の部分に挿入されて嵌合される嵌合部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン用芯体。
【請求項9】
前記筒状の軸心本体部材は金属で構成され、前記嵌合用部材は樹脂で構成されている
ことを特徴とする請求項に記載の電子ペン用芯体。
【請求項10】
前記先端構成部の前記先端中心部は、柱状部材で構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン用芯体。
【請求項11】
前記先端構成部の前記柱状部材で構成されている前記先端中心部の前記先端は、外側に凸の曲面形状を備える
ことを特徴とする請求項10に記載の電子ペン用芯体。
【請求項12】
筒状の筐体と、
前記筒状の筐体の一方の開口から先端が突出可能に配設される芯体と、
前記筒状の筐体内に設けられ、前記芯体に印加される筆圧を検出する筆圧検出部と、
を備え、
前記芯体は、
先端構成部と前記先端構成部と結合される軸心構成部とを備え、
前記軸心構成部は、少なくとも前記先端構成部との結合側となる軸心方向の一端側が前記先端構成部よりも硬質の部材で構成され、少なくとも前記軸心方向の一端側に前記先端構成部と結合するための凹孔を備えると共に、前記軸心方向の他端側に、前記筆圧検出部に対して直接的に、あるいは間接的に嵌合して、前記筆圧検出部に筆圧を伝達するための嵌合部を備え、
前記先端構成部は、前記軸心構成部と結合されたときに、前記軸心構成部の軸心方向の前記一端側から外部に突出する先端部と、前記軸心構成部の軸心方向の一端側において、前記軸心構成部の前記凹孔内に挿入される状態で結合される結合芯部とを備え、前記先端部の前記結合芯部との結合部側には、前記軸心構成部の前記軸心方向の前記一端側の凹孔の周囲の第1のリング状端面と衝合する第2のリング状端面を有し、前記第1のリング状端面は第2のリング状端面で覆われるように構成されており、
さらに、
前記先端構成部は、先端中心部と先端周辺部とからなり、
前記先端中心部は、フェルトで構成され、前記先端部と前記結合芯部とに亘って延伸されており、
前記先端周辺部は、前記フェルトよりも硬質の材料で構成されると共に、前記先端中心部の前記先端部側の端部を除いた部分を覆うように構成され、
前記第2のリング状端面は、前記先端周辺部に形成されている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項13】
記先端中心部に対して前記先端周辺部が融解接合されている
ことを特徴とする請求項12に記載の電子ペン。
【請求項14】
前記筒状の筐体内には、前記芯体を挿通させる貫通孔を有し、コイルが巻回されている磁性体コアが設けられており、
前記筆圧検出部は、前記筐体の軸心方向において、前記磁性体コアの前記筐体の一方の開口側とは反対側に設けられ、
前記芯体の前記軸心構成部は、前記磁性体コアの前記貫通孔を挿通可能に構成されている
ことを特徴とする請求項12に記載の電子ペン。
【請求項15】
前記芯体は、前記軸心構成部が前記磁性体コアの前記貫通孔を挿通され、前記嵌合部が、前記筆圧検出部に対して直接的に、あるいは間接的に嵌合されたときに、前記先端構成部の先端部と前記軸心構成部の一部が、前記磁性体コアよりも外部に突出するように構成されている
ことを特徴とする請求項14に記載の電子ペン。
【請求項16】
前記筐体の一方の開口から前記芯体の先端が外部に突出する状態では、前記磁性体コアの一部も、前記開口から外部に突出する状態となる
ことを特徴とする請求項15に記載の電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ペン用芯体及び電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示画面付きの携帯端末などの電子機器では、ボタン操作やキーボードによる入力手段に代わって、表示画面上においてタッチパネルでの指操作に加え、電子ペンによる操作入力ができるようになっている入力装置が採用されることが多くなっている。
【0003】
そして、携帯端末は小型化が進んでおり、これに伴い、電子ペンの小型化及び細型化の要望が高い。さらに、電子ペンについては、小型化及び細型化に加えて、書き味向上の要望も大きくなっている。
【0004】
電子ペンの書き味は、ペン先(芯体)の材質と、電子ペンによる入力を受ける側(携帯端末の表示画面の表面)の材質との兼合いで決まる。従来は、携帯端末の表示画面の表面のガラス面に対して、少なくともペン先となる先端部がPOM(Polyoxymethylene)等の硬質な樹脂で作られた芯体を用いた電子ペンにより操作されていた(例えば特許文献1(特開2014-21674号公報)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-21674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、硬質の樹脂からなる芯体の先端部とガラス面という組み合わせの場合、電子ペンの先端部がガラス面上において滑りやすく、電子ペンによって正確に所定の場所を位置指示することが困難であった。そのため、様々な材質の芯体が試されており、その中で、フェルトで構成された芯体は柔らかく、ガラス表面での書き味は良いと評価が高い。そこで、フェルトで構成された芯体を電子ペンに用いることが考えられ、一部、実現されている。
【0007】
フェルトは、合成繊維の束を粘着剤等で固めたものである。フェルトで構成される芯体は、本来的には、インクを蓄えたタンクから毛細管現象によりインクを吸い上げ、インクで筆記をするという筆記文具の用途用のものであり、芯体の強度は問題とされず、フェルトで構成された芯体の強度は低い。
【0008】
しかし、電子ペンでは、一般的に、筆圧検出部を備え、この筆圧検出部で、芯体の先端部に印加される筆圧を正確に検出することができるように構成することが重要である。このため、芯体は、その先端部に印加される筆圧を筆圧検出部に正確に伝達することができる強度を有する必要がある。
【0009】
ところが、上述したように、フェルトで構成された芯体は、強度が低いため、その軸心方向に圧力を印加したときに、折れ曲がったり、繊維がばらけてしまって、先端に印加された圧力が他端側に伝達されにくい。そのため、従来は、強度を保つことができる程度に太いフェルト材料の芯体を用いるようにする必要があり、フェルトで構成された芯体の細型化は、非常に困難であった。
【0010】
また、フェルトで構成される芯体は筆記時の耐久性が低いので、交換できるように構成する必要がある。そのため、芯体は、筆圧検出部に対する直接的な嵌合部、あるいは、圧力伝達部材(押子部材)との嵌合部から抜き差し可能となるように構成される。ただし、この場合に、筆圧検出部に対して筆圧をできるだけ正確に伝達するためには、芯体は、嵌合部にしっかりと嵌合するようにすることが肝要である。
【0011】
しかし、フェルトは、上述したように、繊維の束なので嵌合部にしっかりと嵌合させるようにすることが難しかった。
【0012】
また、電子ペンにおいては、芯体の先端部に筆圧が印加されると、芯体が、印加された筆圧に応じてその軸心方向に移動して、筆圧検出部に筆圧を伝達する。例えば、電磁誘導方式の電子ペンの場合には、芯体の先端部とは反対側は、コイルが巻回されている磁性体コアに形成されている貫通孔を通して、嵌合部に嵌合されるように構成され、芯体は、磁性体コアの貫通孔内を移動することになる。
【0013】
フェルトで構成した芯体は、繊維の束なので、その側周面がやや毛羽立ってしまう。このため、フェルトで構成した芯体が軸心方向に移動する際に、その側周面の毛羽立ちが、磁性体コアの貫通孔の内周面に接触して、筆圧検出部に芯体からの圧力が正確に伝わらない恐れがあった。
【0014】
さらに、フェルトで構成した芯体は、繊維の束なので、その軟質及び毛羽立ちなどのために、軸心方向の長さや、太さを既定の値に正確に加工することが困難であるために、寸法公差が大きいという問題もあった。
【0015】
なお、フェルトに限らず、柔らかく、ガラス表面での書き味は良い材料としては、例えばエラストマーなどの弾性材料があるが、このエラストマーなどの弾性材料で構成される芯体も、強度に関しては上述したフェルトと同様の問題がある。
【0016】
以上のように、従来は、携帯端末等の小型の電子機器で用いられる細型化の電子ペンではフェルトやエラストマーなどの弾性材料の芯を用いることができず、書き味の良くない筆記操作しか得られていなかった。
【0017】
この発明は、以上の問題点を解決することができるようにした電子ペン用芯体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、
端構成部が軸心構成部と結合されて構成される電子ペン用芯体であって、
前記軸心構成部は、少なくとも前記先端構成部との結合側となる軸心方向の一端側が前記先端構成部よりも硬質の部材で構成され、少なくとも前記軸心方向の一端側に前記先端構成部と結合するための凹孔を備えると共に、前記軸心方向の他端側に、電子ペンに設けられる筆圧検出部に対して直接的に、あるいは間接的に嵌合して、前記筆圧検出部に筆圧を伝達するための嵌合部を備え、
前記先端構成部は、前記軸心構成部と結合されたときに、前記軸心構成部の軸心方向の前記一端側から外部に突出する先端部と、前記軸心構成部の軸心方向の一端側において、前記軸心構成部の前記凹孔内に挿入される状態で結合される結合芯部とを備え、前記先端部の前記結合芯部との結合部側には、前記軸心構成部の前記軸心方向の前記一端側の凹孔の周囲の第1のリング状端面と衝合する第2のリング状端面を有し、前記第1のリング状端面は第2のリング状端面で覆われるように構成されており、
さらに、
前記先端構成部は、先端中心部と先端周辺部とからなり、
前記先端中心部は、フェルトで構成され、前記先端部と前記結合芯部とに亘って延伸されており、
前記先端周辺部は、前記フェルトよりも硬質の材料で構成されると共に、前記先端中心部の前記先端部側の端部を除いた部分を覆うように構成され、
前記第2のリング状端面は、前記先端周辺部に形成されている
ことを特徴とする電子ペン用芯体を提供する。
【0019】
上述の構成の電子ペン用芯体は、フェルトからなる先端構成部と、フェルトよりも硬質の非繊維部材で構成される軸心構成部とが結合されて構成されている。先端構成部は、結合芯部と、先端部とを有し、結合芯部が、軸心構成部の凹孔に挿入される状態で軸心構成部と結合される。
【0020】
先端構成部の先端部の結合芯部との結合部には、軸心構成部の軸心方向の一端側の凹孔の周囲の第1のリング状端面と衝合する第2のリング状端面が形成されている。したがって、フェルトの先端部が軸心構成部の軸心方向の一端側から外部に突出する状態となると共に、第2のリング状端面が軸心構成部の軸心方向の一端側の第1のリング状端面と衝合している状態で、先端構成部と軸心構成部とが結合される。
【0021】
そして、軸心構成部の軸心方向の他端側には、筆圧検出部に対して直接的に、あるいは間接的に嵌合するための嵌合部が設けられている。つまり、筆圧検出部との直接的、あるいは間接的な嵌合部は、フェルトではなく、フェルトよりも硬質の非繊維部材で構成されている。したがって、芯体と筆圧検出部との直接的、あるいは圧力伝達部材との嵌合は、良好になされる。
【0022】
上記の構成の電子ペン用芯体を電子ペンの芯体として用いれば、芯体の先端構成部の先端部がフェルトで構成されているので、書き味の良い筆記操作が可能となる。
【0023】
そして、上記の構成の電子ペン用芯体は、フェルトの部分は、軸心構成部から突出する先端部のみであって、芯体の軸心部は、フェルトよりも硬質の非繊維部材からなる軸心構成部で構成されている。このため、上記の構成の電子ペン用芯体は、芯体の全てをフェルトで構成する場合に比較して、軸心構成部の強度を上げることができ、当該軸心構成部の太さを細くすることが可能である。軸心構成部は、フェルト製の先端部を除く芯体の軸心部を構成するものであり、軸心構成部の細型化は、すなわち、芯体の細型化に直結する。よって、上記の構成の電子ペン用芯体を電子ペンの芯体として用いれば、電子ペンの細型化が可能となる。
【0024】
そして、上記の構成の電子ペン用芯体のフェルト製の先端部に筆圧が印加されると、上述した先端構成部の第2のリング状端端面と軸心構成部の第1のリング状端面との衝合部を通じて、筆圧は、軸心構成部に伝達される。上述したように、上記の構成の電子ペン用芯体の軸心構成部の軸心方向の他端側の嵌合部は、筆圧検出部に対して、直接的あるいは間接的に、しっかりと嵌合されているので、上記の構成の電子ペン用芯体のフェルト製の先端部に印加された筆圧は、より正確に筆圧検出部に伝達される。
【0025】
しかも、軸心構成部は、フェルトよりも硬質の非繊維部材で構成されているので、その側周面に毛羽立ちが生じることもない。したがって、軸心構成部が、例えば磁性体コアの貫通孔を挿通された筆圧検出部と直接的あるいは間接的に嵌合されている場合であっても、印加された筆圧が、正確に筆圧検出部に伝達される。
【0026】
また、芯体の大部分を占める軸心部は、フェルトよりも硬質の非繊維部材からなる軸心構成部で構成されているので、軸心方向の長さや、太さを既定の値に正確に加工することが容易であり、寸法公差も小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】この発明による電子ペンの実施形態を説明するための図である。
図2】この発明による電子ペン用芯体の実施形態を備える電子ペン本体部を説明するための拡大図である。
図3】この発明による電子ペン用芯体の実施形態の構成例を説明するための図である。
図4】この発明による電子ペン用芯体の他の実施形態の構成例を説明するための図である。
図5】この発明による電子ペン用芯体の他の実施形態の構成例を説明するための図である。
図6】この発明による電子ペン用芯体の他の実施形態の構成例を説明するための図である。
図7】この発明による電子ペン用芯体の他の実施形態の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明による電子ペン用芯体の実施形態を、この実施形態の電子ペン用芯体を用いた電子ペンの実施形態と共に、図を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態の電子ペンは、電磁誘導方式により、位置検出装置と結合することで位置指示をする場合の例である。
【0029】
図1は、この発明による電子ペン用芯体の実施形態を用いた電子ペンの実施形態の構成例を示す図である。この実施形態の電子ペン1は、筒状の筐体2の中空部2a内に、電子ペン本体部3が収納され、ノックカム機構部4により、電子ペン本体部3のペン先側が、筐体2の長手方向の一端の開口部2b側から出し入れされるノック式の構成を備える。この実施形態では、電子ペン本体部3は、カートリッジ式の構成とされ、筐体2に対して着脱可能とされている。電子ペン本体部3は、実施形態の電子ペン用芯体(以下、芯体と略称する)7を備える。芯体7は、電子ペン本体部3に対して着脱可能とされている。なお、図1の例では、電子ペン1の筐体2が透明の合成樹脂で構成されていて、その内部が透けて見える状態として示している。
【0030】
この実施形態の電子ペン1は、市販のノック式ボールペンと互換性が取れる構成とされており、筐体2及び当該筐体2内に設けられるノックカム機構部4は、周知の市販のノック式ボールペンの筐体及びノックカム機構と同一の構成とされると共に、寸法関係も同一に構成される。ノックカム機構部4は、図1に示すように、カム本体41と、ノック棒42と、回転子43とが組み合わされた周知の構成とされている。
【0031】
図1(A)の状態において、ノック棒42の端部42aが押下されると、ノックカム機構部4により、電子ペン本体部3は、筐体2内において図1(B)の状態にロックされ、電子ペン本体部3のペン先側が、筐体2の開口部2bから突出する状態になる。そして、この図1(B)の状態から、ノック棒42の端部42aが再度押下されると、ノックカム機構部4によりロック状態が解除され、復帰用バネ5により、電子ペン本体部3の筐体2内の位置は、図1(A)の状態に戻る。ノックカム機構部4の詳細な構成及びその動作は、周知であるので、ここでは、その説明を省略する。
【0032】
図1(C)は、電子ペン本体部3の構成例を示す図である。また、図2は、電子ペン本体部3のペン先側の構成を説明するための部分拡大図である。さらに、図3は、電子ペン本体部3に装着される実施形態の芯体7の構成例を説明するための図である。
【0033】
この実施形態の電子ペン本体部3においては、図1(C)に示すように、コイル31が巻回された磁性体コア、この例ではフェライトコア32が筒状体部33と結合されている。そして、芯体7が、フェライトコア32の貫通孔(図1(C)では図示を省略)を通じて挿通されて、後述するように、筒状体部33内に設けられている筆圧検出部6(図1では図示を省略、図2参照)に着脱自在に嵌合されて電子ペン本体部3の一部として設けられる。図1(C)及び2(B)に示すように、芯体7は、ペン先側の端部が、フェライトコア32から突出する。
【0034】
図2(A)に示すように、この例のフェライトコア32は、例えば円柱状形状のフェライト材料に、芯体7を挿通するための所定の径r1(例えばr1=1mm)の軸心方向の貫通孔32aが形成されたものとされている。このフェライトコア32の、ペン先側には、徐々に先細となるテーパー部32bが形成されており、位置検出装置のセンサとの間の磁気的な結合を、テーパー部32bがない場合に比して、より強くなるように構成されている。
【0035】
そして、この実施形態では、図2(A)に示すように、コイル31のフェライトコア32における巻回位置は、ペン先側とは反対側に偏った、フェライトコア32の全長の約1/2の長さの部分位置とされ、フェライトコア32のペン先側の端部から、コイル巻回部の一方の端までの部分は、コイルが巻回されない非巻回部とされている。
【0036】
そして、この実施形態では、筒状体部33のフェライトコア32との結合部の近傍には、筆圧検出部6が設けられている。この筆圧検出部6は、この例では、例えば、特開2013-161307号公報に開示されているような筆圧に応じて静電容量を可変とする半導体素子を用いた構成としている。なお、筆圧検出部6は、例えば特許文献:特開2011-186803号公報に記載されている周知の機構的な構成の筆圧検出手段を使用した、筆圧に応じて静電容量が変化する可変容量キャパシタの構成とすることもできる。
【0037】
筒状体部33内には、さらにプリント基板34が収納されている。このプリント基板34には、コイル31に並列に接続されて共振回路を構成するキャパシタ35が設けられている。そして、筆圧検出部6で構成される可変容量キャパシタは、このプリント基板34に形成されているキャパシタ35に並列に接続されて、前記共振回路の一部を構成するようにされている。
【0038】
この実施形態の電子ペン1は、共振回路により、位置検出装置の位置検出センサのループコイルとの間で電磁誘導結合して信号をインタラクションする。位置検出装置では、電子ペン1から受信する信号の位置検出センサ上での位置を検出することにより、電子ペン1による指示位置を検出すると共に、電子ペン1から受信した信号の周波数あるいは位相の変化を検出することにより、電子ペン1に印加されている筆圧を検出する。
【0039】
そして、図2(B)に示すように、フェライトコア32の、ペン先側とは反対側のコイル非巻回部が、筒状体部33に設けられている凹部33aに嵌合されることで、フェライトコア32が筒状体部33と結合される。図示は省略するが、このフェライトコア32の筒状体部33との結合の際に、コイル31の一端31a及び31bが、筒状体部33のプリント基板34に設けられているキャパシタ35と並列に接続されるように電気的に接続される。
【0040】
芯体7は、この実施形態では、図3に示すように構成されている。すなわち、図3(A)は、この実施形態の芯体7の拡大断面図を示すもので、この実施形態の芯体7は、フェルトからなる先端構成部71と軸心構成部72とからなり、両者が結合されることで構成される。
【0041】
先端構成部71は、図3(B)の斜視図に示すように、先端部711と、結合芯部712とからなる。
【0042】
先端部711は、この例では、ペン先側となる軸心方向の一端側が半球状に形成されている円柱状形状を有する。
【0043】
結合芯部712は、この円柱状形状の先端部711の軸心方向においてペン先側とは反対側の端面の中心位置から軸心方向に突出するように、先端部711と一体的に構成されている。この結合芯部712は、円柱状形状の先端部711の外径Raよりも小さい外径Rb(Rb<Ra)の棒状に形成されている。したがって、先端構成部71の先端部711のペン先側とは反対側の端面には、結合芯部712の周囲のリング状端面713が形成される。
【0044】
軸心構成部72は、フェルトよりも硬質の非繊維材料、この例では弾性を有する樹脂材料、例えばPOM(Polyoxymethylene)で構成されており、軸心本体部721と、筆圧検出部6との嵌合部722とを備える。
【0045】
軸心本体部721は、この例では、先端部711の外径Raに等しい外径を有する棒状部とされており、その軸心方向の長さは、フェライトコア32の貫通孔32aの軸心方向の長さよりも長く構成されている。この場合に、外径Raは、フェライトコア32の貫通孔32aの内径r1よりも小さい寸法とされている。
【0046】
嵌合部722は、図2(A)及び(B)に示すように、筆圧検出部6の嵌合穴6aに挿入されて嵌合される部位である。この例では、嵌合部722は、図3(A)及び(C)に示すように、軸心本体部721よりも細い棒状とされる。そして、この例では、嵌合部722の側周面には、筆圧検出部6の嵌合穴6aの内壁面に形成されているリング状の凹溝(図示は省略)に係合して、芯体7を筆圧検出部6に対して確実に係止させるようにするためのリング状の膨出部722aが形成されている。そして、軸心本体部721の、軸心方向において嵌合部722側とは反対側に先端構成部71が結合される。
【0047】
この例では、図3(A)に示すように、先端構成部71の結合芯部712が軸心構成部72の軸心本体部721に形成される凹部721aに挿入される状態で、先端構成部71に対して軸心構成部72が融解接合される。ここで、融解接合とは、樹脂を加熱により融解(溶融)させて、フェルトなどの他の部材と結合した後、冷却して樹脂を固化させる結合方法を意味する。この例では、軸心構成部72は、例えば次のようにして先端構成部71に対して融解接合されることで形成される。
【0048】
例えば、内径がRaで、軸心方向の長さが軸心構成部72よりも長い円柱状の凹部を備える耐熱型部材を用意し、その耐熱型部材の円柱状の凹部の底部に、フェルトからなる先端構成部71を、先端部711側が下側(底部側)となるように保持しておく。そして、耐熱型部材の凹部内に、先端構成部71の結合芯部712を覆うようにして、加熱により融解させて液体にした樹脂を流し込む。次に、耐熱型部材の凹部を、軸心構成部72の嵌合部722に対応する形状の凹部を備える蓋部材により蓋をする。
【0049】
そして、融解している樹脂が冷えて固まったら、耐熱型部材及び蓋部材を外す。すると、図3(A)に示すように、軸心構成部72に先端構成部71が結合された芯体7が形成される。この場合に、先端構成部71と軸心構成部72とは融解接合されるので、樹脂が、フェルトの繊維に絡み合うようになり、先端構成部71と軸心構成部72とは強固に結合される。このとき、軸心構成部72の軸心本体部721には、先端構成部71の結合芯部712が挿入される状態となる凹部721aが形成される。
【0050】
また、この場合に、融解して液体とされた樹脂は、先端構成部71の結合芯部712のみではなく、先端部711のリング状端面713とも接触して、この部分でもフェルトの繊維に絡み合うようになって、先端構成部71と軸心構成部72とは強固に結合される。そして、軸心構成部72の軸心本体部721の凹部721aの周囲にリング状端面721bが形成され、先端構成部71の先端部711のリング状端面713と衝合する状態となる。
【0051】
この実施形態では、以上のようにして構成された芯体7は、図2(B)に示すように、軸心構成部72の軸心本体部721がフェライトコア32の貫通孔32aを挿通され、軸心構成部72の嵌合部722が、筆圧検出部6の嵌合穴6aに嵌合されることで、筆圧検出部6に直接的に嵌合される。そして、この嵌合状態では、芯体7は、フェライトコア32の先端側の開口から、先端構成部71の先端部711と、軸心構成部72の軸心本体部721の一部が突出する状態とされる。
【0052】
芯体7の先端部711のみがフェライトコア32から突出している場合には、芯体7を電子ペン本体部3から引き抜こうとする場合には、フェルトからなる先端部711の部分を把持して引き抜き動作をしなければならないため、引き抜くにくく、また、フェルト製の先端部分に損傷させてしまう恐れがある。
【0053】
これに対して、上述の実施形態では、硬質の樹脂からなる軸心構成部72の軸心本体部721の一部が、先端部711と共に、フェライトコア32のペン先側の開口から突出するので、この突出している軸心本体部721の一部を把持して引き抜くようにすることができる。したがって、芯体7を、フェルト製の先端部を損傷させることなく、電子ペン本体部3から容易に引き抜くことができる。
【0054】
上述の実施形態の芯体7は、以上説明したように、硬質の樹脂からなる軸心構成部72が、フェライトコア32の貫通孔32a内を挿通されて筆圧検出部6と嵌合されるような長さに構成されると共に、この軸心構成部72と軸心方向の一端側に、軸心方向の長さが短くて良いフェルト製の先端部711が結合される構成されている。したがって、芯体7は、長さが短くてよいフェルト製の先端部711以外は、硬質の樹脂からなる軸心構成部72で構成されるので、芯体の全体をフェルトで構成する場合に比べて強度が各段に大きくなる。
【0055】
このため、上記の構成の芯体7は、細型化しても十分な強度を有するものとなり、この芯体7を用いれば、先端部711がフェルトで構成されているので書き味の良い筆記操作が可能となる電子ペンの細型化が可能となる。
【0056】
また、この実施形態では、芯体7は、先端構成部71と軸心構成部72と結合された状態では、フェルト製の先端部711のリング状端面713が軸心構成部72のリング状端面721bと衝合部を形成するように構成されている。このため、先端構成部71の先端部711に印加された筆圧は、これらリング状端面713及びリング状端面721bの衝合部を通じて軸心構成部に伝達される。さらに、芯体7の軸心構成部72の嵌合部722が、筆圧検出部に対して嵌合されているので、先端部711に印加された筆圧は、正確かつ確実に筆圧検出部6に伝達される。
【0057】
また、芯体7の軸心構成部72は、硬質の樹脂で構成されているので、当該部分がフェルトで構成される場合のような毛羽立ちは存在しない。このため、芯体7は、印加された筆圧に応じてフェライトコア32の貫通孔32a内を摩擦なく、軸心方向に移動することが可能である。したがって、芯体7の先端部711をフェルトで構成していても、筆圧を正確、かつ、確実に筆圧検出部6に伝達させるようにすることができる。
【0058】
さらに、この実施形態の芯体7は、フェルト製の先端構成部71に対して、樹脂からなる軸心構成部72が融解接合されるので、先端構成部71のフェルトの繊維と、軸心構成部72の樹脂とが絡み合うように結合され、先端構成部71と軸心構成部72とが強固に結合される。
【0059】
なお、この実施形態の電子ペン1おいては、芯体7の先端部711が外部に突出する電子ペン1の使用時には、図2(B)に示すように、芯体7のみではなく、フェライトコア32の一部も筐体2の開口部2bから突出しており、フェライトコア32のテーパー部32bの先端から、位置検出センサの入力面までの距離が短くなる。したがって、この実施形態の電子ペン1によれば、フェライトコア32が、筐体2の中空部2a内に留まっている従来の電子ペンに比較して、センサとの電磁結合が強くなる。さらに、この実施形態では、フェライトコア32の芯体7の先端部711側は、テーパー部32bとされているので、フェライトコア32の先端の断面積が小さくなり、より磁束密度が大きくなって、位置検出センサと強く電磁結合するようになる。
【0060】
したがって、この実施形態の電子ペン1は、細型化された場合であっても、位置検出センサと強く電磁結合することができ、位置検出装置においては、電子ペン1による指示位置の検出を感度良く検出することができるようになる。
【0061】
[電子ペン用芯体の他の実施形態]
上述の実施形態の芯体7は、フェルト製の先端構成部71に対して、樹脂製の軸心構成部72を融解接合することで構成したが、先端構成部を、軸心構成部に圧入嵌合することで結合して芯体を構成してもよい。
【0062】
<電子ペン用芯体の他の実施形態の第1の例>
図4は、電子ペン用芯体の他の実施形態の第1の例を説明するための拡大断面図である。この第1の例の電子ペン用芯体7A(以下、芯体7Aと略称する)は、図4(A)に示すように、上述の実施形態の芯体7と同様に、フェルト製の先端構成部71Aと、硬質の樹脂からなる軸心構成部72Aとで構成される。
【0063】
この第1の例の芯体7Aの先端構成部71Aは、先端構成部71と同様に、フェルトで構成されると共に、先端部711Aと結合芯部712Aとを備える。この例の芯体7Aの先端構成部71Aの先端部711Aは、芯体7の先端構成部71の先端部711と同様に構成され、ペン先側となる軸心方向の一端側が半球状に形成され、外径がRaの円柱状形状に構成されている。
【0064】
結合芯部712Aは、芯体7の先端構成部71の結合芯部712と同様に、円柱状形状の先端部711の軸心方向においてペン先側とは反対側の端面の中心位置から軸心方向に棒状に突出するように、先端部711と一体的に構成されている。ただし、この例の芯体7Aにおいては、結合芯部712Aは、結合芯部712よりも軸心方向の長さが若干長くされている。また、棒状の結合芯部712Aは、図4(A)に示すように、その外径が先端部711A側が最も太く、その先端側に行くほど細くなるように、テーパー状に形成されている。図4(A)に示すように、テーパー状の棒状の結合芯部712Aの軸心方向の例えば中ほどの外径が、この例では、先端部711の外径Raよりも小さい外径Rb(Rb<Ra)に等しく構成されている。
【0065】
一方、軸心構成部72Aは、上述の実施形態の軸心構成部72と同様に、外径がRaの円柱状の軸心本体部721Aと、嵌合部722Aとを備えるが、この例では、予め樹脂により固体物として形成されたものとして構成されている。そして、軸心構成部72Aの軸心本体部721Aの軸心方向の、嵌合部722A側と反対側には、図4(A)に示すように、先端構成部71Aの結合芯部712Aと嵌合する凹部721Aaが形成されている。
【0066】
この凹部721Aaの内径は、図4(A)に示すように、テーパー状の棒状の結合芯部712Aの軸心方向の例えば中ほどの外径Rbに等しく構成されている。そして、この例では、凹部721Aaの深さ(軸心方向の長さ)は、先端構成部71Aの結合芯部712Aの軸心方向の長さよりも大きく構成されている。なお、凹部721Aaの深さ(軸心方向の長さ)は、先端構成部71Aの結合芯部712Aが、完全に嵌合される長さであればよく、先端構成部71Aの結合芯部712Aの軸心方向の長さと等しい長さであってもよい。
【0067】
そして、先端構成部71Aの結合芯部712Aが、軸心構成部72Aの軸心本体部721Aの凹部721Aa内に、圧入されて、嵌合される。この場合に、先端構成部71Aの結合芯部712Aは、先端ほど細いテーパー状に形成され、先端部711Aとの結合側は、凹部721Aaの内径Rbよりも若干大きく構成されているので、先端構成部71Aの結合芯部712Aは、凹部721Aa内に強固に嵌合される。
【0068】
さらに、この例では、先端構成部71Aの結合芯部712A及び先端部711Aのリング状端面713Aには、凹部721Aa内に挿入される前に接着材が塗布され、あるいは、凹部721Aa内及びリング状端面721Abには接着材が塗布されて、先端構成部71Aの結合芯部712A及び先端部711Aのリング状端面713Aと、凹部721Aa内及びリング状端面721Abとが接着され、先端構成部71Aの結合芯部712Aと凹部721Aa内とは強固に結合される。
【0069】
この第1の例の芯体7Aは、上述した実施形態の芯体7と同様の作用効果を備えることは言うまでもない。
【0070】
<電子ペン用芯体の他の実施形態の第2の例>
図5は、電子ペン用芯体の他の実施形態の第2の例を説明するための拡大断面図である。この第2の例の電子ペン用芯体7B(以下、芯体7Bと略称する)は、図5(A)及び(B)に示すように、上述の実施形態の芯体7及び7Aと同様に、先端構成部71Bと、軸心構成部72Bとで構成される。先端構成部71Bと軸心構成部72Bとが結合されることで、図5(C)に示すように、この第2の例の芯体7Bが構成される。
【0071】
この第2の例の芯体7Bの先端構成部71Bは、フェルトで構成されると共に、上述の第1の例の芯体7Aの先端構成部71Aと同様の構成の先端部711B及び結合芯部712Bとを備え、結合芯部712Bは先細のテーパー形状を有する。ただし、図5(A)及び(B)に示すように、結合芯部712Bの軸心方向の長さは、第1の例の結合芯部712Aよりも長く構成されている。もっとも、結合芯部712Bの軸心方向の長さは、第1の例の結合芯部712Aと同じであってもよいし、短くてもよい。
【0072】
この第2の例の軸心構成部72Bでは、軸心本体部721Bと、嵌合部722Bとは、別部材として構成され、軸心本体部721Bに対して、嵌合部722Bが嵌合されて軸心構成部72Bが構成される。
【0073】
この第2の例の軸心構成部72Bの軸心本体部721Bは、フェルトよりも硬質の非繊維部材、この例では、金属、例えばSUSで構成され、図5(A)に示すように、筒状のパイプ状に形成される。この金属パイプからなる軸心本体部721Bの外径は、先端構成部71Bの先端部711Bの外径Raと等しく構成される。また、この軸心本体部721Bの中空部721Baの内径は、先端構成部71Bの、テーパー状に形成されている結合芯部712Bの軸心方向の例えば中ほどの外径Rbに等しく構成されている。
【0074】
そして、図5(A),(B)に示すように、この金属パイプからなる軸心本体部721Bの軸心方向の一端側において、中空部721Ba内に、先端構成部71Bの結合芯部712Bが圧入されると共に、接着材で接着されることで、軸心本体部721Bに対して先端構成部71Bが、先端部711Bが軸心本体部721Bから突出する状態で結合され、図5(C)に示すように、芯体7Cが構成される。このとき、図5(C)に示すように、先端部711Bのリング状端面713Bbが、軸心本体部721Bのリング状端面721Bbに衝合するのは、上述の例の芯体7及び7Aと同様である。
【0075】
軸心構成部72Bの嵌合部722Bは、フェルトよりも硬質の非繊維部材、この例では、例えばPOMなどの弾性を有する硬質の樹脂で構成される。そして、この嵌合部722Bは、図5(A)及び(B)に示すように、筆圧検出部6に嵌合される筆圧検出部嵌合部722Baと、軸心本体部721Bの中空部721Ba内に挿入されて軸心本体部721Bに嵌合される軸心本体部嵌合部722Bbとが、連結部722Bcを介して軸心方向に連結される構成とされている。
【0076】
筆圧検出部嵌合部722Baは、上述の例の芯体7Aの軸心構成部72Aの嵌合部722Aと同様に構成され、筆圧検出部6の嵌合穴6aに嵌合されて係止させるためのリング状の膨出部722Baaを備える。
【0077】
軸心本体部嵌合部722Bbは、軸心本体部721Bの中空部721Baの内径Rbと等しいあるいは若干小さい外径を有し、軸心本体部721Bの中空部721Ba内に圧入される、あるいは圧入されると共に接着材で接着される。
【0078】
連結部722Bcは、この例では、軸心本体部721Bの外径Raと等しい外径を有する円板状に形成されており、図5(B)に示すように、嵌合部722Bの軸心本体部嵌合部722Bbが軸心本体部721Bの中空部721Ba内に嵌合されたときに、軸心本体部721Bの端面に衝合する
【0079】
この第2の例の芯体7Bは、軸心構成部72Bの軸心本体部721Bが金属パイプであるので、樹脂で構成した場合よりも更に強度が大きくなり、より細型化が可能となる。また、この第2の例の芯体7Bは、金属パイプからなる軸心本体部721Bの軸心方向の一端側に、フェルトからなる先端構成部71Bを結合すると共に、軸心方向の他端側に、樹脂製の嵌合部722Bを嵌合させることで、製造することができるので、製造が容易であるという効果を備える。
【0080】
なお、上述の第1の例の芯体7A及び第2の例の芯体7Bの先端構成部71A及び71Bの結合芯部712A及び712Bは、先端側ほど細くなるようなテーパー状に形成したが、一定の外径の棒状としてテーパー状としなくてもよい。
【0081】
[その他の実施形態及び変形例]
上述の実施形態の芯体7,7A及び7Bにおいては、先端構成部71,71A及び71Bの先端部711,711A及び711Bの外径は、軸心本体部721,721A及び721Bの外径と等しくしたが、先端部711,711A及び711Bのリング状端面713,713A及び713Bと、軸心本体部721,721A及び721Bのリング状端面721b,721Ab及び721Bbとが衝合する状態であれば、等しい外径を有する必要はない。
【0082】
図6は、上述の実施形態の芯体7における先端構成部71の先端部711を変形した例の芯体7´を示している。この図6の例の芯体7´においては、先端構成部71´の先端部711´の結合芯部712との結合部分側の外径が、軸心本体部721の外径よりも大きくなるように構成されている。この場合には、先端部711´のリング状端面713´は、軸心本体部721のリング状端面713bよりも大きくなり、先端部711´に印加される筆圧が、軸心本体部721に対して、より確実に伝達される。
【0083】
また、上述の実施形態では、芯体7,7A及び7Bの嵌合部722,722A及び722Bは、筆圧検出部6に対して直接的に嵌合するようにした。しかし、芯体7,7A,7Bと筆圧検出部6との間に圧力伝達部材を設けて、芯体7,7A,7Bを、筆圧検出部6にこの圧力伝達部材36を介して間接的にで嵌合するようにしてもよい。
【0084】
例えば図6の例の芯体7用であれば、芯体7の嵌合部722が嵌合される嵌合凹部36aを備えると共に、筆圧検出部の嵌合凹部に嵌合される嵌合突部36bを備える圧力伝達部材36が、芯体7と筆圧検出部との間に介在される。
【0085】
なお、上述の実施形態の芯体の先端構成部は、フェルト単体で構成されている例であったが、以下に説明するように、硬さの異なる2種の材料で構成されていてもよい。
【0086】
図7は、そのように構成される電子ペン用芯体7Cの構成例を説明するための拡大断面図である。この例の電子ペン用芯体7C(以下、芯体7Cと略称する)は、図7(A)及び(B)に示すように、上述の例と同様にして、先端構成部71Cと、軸心構成部72Cとで構成されるが、軸心構成部72Cは、図5を用いて説明した電子ペン用芯体の他の実施形態の第2の例の芯体7Bの軸心構成部72Bと同様の構成を有し、先端構成部71Cの構成が上述の例と異なる。先端構成部71Cと軸心構成部72Cとが結合されることで、図7(C)に示すように、この例の芯体7Cが構成される。
【0087】
この図7の例の軸心構成部72Cは、図5を用いて説明した芯体7Bの軸心構成部72Bと同様に、先端構成部71Cよりも硬質の材料の例である金属、例えばSUSで構成され、筒状のパイプ状に形成される軸心本体部721C(図7(A))と、この軸心本体部721Cの先端構成部71Cとの結合側とは反対側に、例えばPOMなどの弾性を有する硬質の樹脂で構成される嵌合部722Cが結合されて構成されている。
【0088】
軸心構成部72Cの嵌合部722Cは、上述の例と同様に、図7(B)の右側に示すように、筆圧検出部6に嵌合される筆圧検出部嵌合部722Caと、軸心本体部721Cの中空部721Ca内に挿入されて軸心本体部721Cに嵌合される軸心本体部嵌合部722Cbとが、連結部722Ccを介して軸心方向に連結される構成とされている。筆圧検出部嵌合部722Caは、図5の例と同様に、筆圧検出部6の嵌合穴6aに嵌合されて係止させるためのリング状の膨出部722Caaを備える。
【0089】
軸心本体部嵌合部722Cbは、図7(A)に示すように、軸心本体部721Cの中空部721Caの内径Rdと等しいあるいは若干小さい外径を有し、軸心本体部721Cの中空部721Ca内に圧入される、あるいは圧入されると共に接着材で接着される。
【0090】
嵌合部722Cの連結部722Ccは、この例では、軸心本体部721Cの外径Rcと等しい外径を有する円板状に形成されており、図7(B)に示すように、嵌合部722Cの軸心本体部嵌合部722Cbが軸心本体部721Cの中空部721Ca内に嵌合されたときに、軸心本体部721Cの端面に衝合する。
【0091】
そして、この図7(B)及び(C)に示すように、この例の芯体7Cの先端構成部71Cは、上述の例の芯体と同様に、軸心構成部72Cから突出する先端部711Cと結合芯部712Cとを備える外観を有するが、書き味が良好となる軟質の材料(例えば弾性材料)として、この例では、エラストマーで構成される先端中心部714と、この先端中心部714よりも硬質の材料であって、軸心構成部72Cよりは軟質の材料、この例ではPOMで構成される先端周辺部715とで構成される。
【0092】
先端中心部714は、芯体Cの軸心方向において、先端部711Cから結合芯部712Cに亘る長さで、軸心本体部721Cの中空部721Caの内径Rdよりも小さい外径Rf(<Rd)の円柱状の構成とされている。この例では、先端中心部714の先端714aは、例えば球面の一部形状あるいはドーム形状などの曲面形状とされている。
【0093】
先端周辺部715は、先端中心部714の先端714aを除いた部分を覆うように構成されている。この場合に、図7(B)及び(C)に示すように、先端周辺部715の結合芯部712Cの部分715bは、先端中心部714の結合芯部712Cの部分を同心円状に覆って、外径が軸心本体部721Cの中空部721Caの内径Rdと等しい、あるいは内径Rdよりわずかに小さい径となるように構成されている。
【0094】
そして、先端周辺部715の先端部711Cの部分715aは、図7(B)及び(C)に示すように、この先端部711Cの結合芯部712Cとの結合部から軸心方向に直交する方向に張り出す部分を備え、かつ、先端中心部714の先端714aに近づくにつれて先細となるテーパー形状を有する形状とされる。この場合に、先端中心部714の先端714aの曲面形状部分は、先端周辺部715には覆われず、露出する状態となる。したがって、先端中心部714の先端714aが、電子ペンのペン先として位置検出センサの入力面と接触して、書き味の良い感触が得られる。
【0095】
先端周辺部715は、以上のような形状とされるので、この先端周辺部715の先端部711Cの部分715aと、結合芯部712Cの部分715bとの間には、リング状端面715cを有する段部が形成される。この例では、先端周辺部715の先端部711Cの部分715aの軸心方向に直交する方向に張り出す部分の外径Rgは、軸心構成部72Cの軸心構成部本体721Cの外径Reよりも大きく構成されている。したがって、軸心構成部本体721Cのリング状端面721Cbは、先端周辺部715のリング状端面715cにより覆われる状態となる。
【0096】
なお、軸心構成部本体721Cのリング状端面721Cbは、先端周辺部715のリング状端面715cにより覆われる状態とする場合に、先端周辺部715の先端部711Cの部分715aの軸心方向に直交する方向に張り出す部分の外径Rgは、軸心構成部本体721Cの外径Reと等しく構成されてもよい。
【0097】
そして、この例の先端構成部71Cは、先端中心部714に対して先端周辺部715が融解接合されることで構成される。なお、融解接合するのではなく、先端周辺部715の貫通孔に先端中心部714を挿通させて両者を接着材で固定したり、圧入嵌合の状態で固定するようにしてもよい。
【0098】
そして、図7(A),(B)に示すように、金属パイプからなる軸心本体部721Cの軸心方向の一端側において、中空部721Ca内に、先端構成部71Cの結合芯部712Cが圧入されると共に、接着材で接着されることで、軸心本体部721Cに対して先端構成部71Cが、先端部711Cが軸心本体部721Cから突出する状態で結合され、図7(C)に示すように、芯体7Cが構成される。このとき、図7(C)に示すように、先端部711Cの先端周辺部715のリング状端面715Cbが、軸心本体部721Cのリング状端面721Cbに衝合するのは、上述の例の芯体7,7A,7Bと同様である。
【0099】
この例の芯体7Cは、先端構成部71Cが、先端周辺部715よりも軟質の先端中心部714を、その先端714aを除いて、軸心構成部72Cよりも軟質であるが先端中心部714よりも硬質の先端周辺部715で覆うようにする構成であるので、フェルトのみからなる先端構成部で構成される芯体7,7A,7Bと比較して、先端構成部の強度を高くすることができる。
【0100】
したがって、この例の芯体7Cによれば、先端中心部714の先端714aに印可される筆圧を、筆圧検出部6に対して、より確実に伝達することができる。
【0101】
なお、上述の図7の例では、先端中心部714は、エラストマーを用いるようにしたが、フェルトで構成してもよいし、その他の軟質の材料の部材で構成してもよい。
【0102】
なお、上述の例では、電子ペンは、電子ペン本体部をカートリッジの構成として、ノック式機構を備える構成としたが、カートリッジの構成の電子ペン本体部やノック式機構を備えることなく、少なくとも電子ペン用芯体の先端部を筒状の筐体の開口から外部に突出するように構成する電子ペンであれば、この発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0103】
1…電子ペン、2…筐体、3…電子ペン本体部、6…筆圧検出部、7,7A,7B…電子ペン用芯体、31…コイル、32…フェライトコア、71,71A,71B,71C…先端構成部、72,72A,72B,72C…軸心構成部、711,711A,711B,711C…先端部、712,712A,712B,712C…結合芯部、714…先端中心部、715…先端周辺部、721,721A,721B,721C…軸心本体部、722,722A,722B,722C…嵌合部、713,713A,713B,715c…リング状端面、721B,721Ab,721Bb,721Cb…リング状端面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7