(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20240704BHJP
H04B 1/38 20150101ALI20240704BHJP
H01P 3/12 20060101ALI20240704BHJP
H01P 5/12 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
H01Q1/32 Z
H04B1/38
H01P3/12
H01P5/12 A
(21)【出願番号】P 2021529716
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2019075999
(87)【国際公開番号】W WO2021004645
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】102019118533.5
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508237443
【氏名又は名称】コンダクティクス-バンプフラー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウインター,ニコラス
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102012006412(DE,A1)
【文献】特開2003-101314(JP,A)
【文献】特開2013-005076(JP,A)
【文献】W.D. SCHUCK et al.,“The Slotted-Waveguide Communication System of the Maglev Test Rangein the Emsland, Germany”,13th European Microwave Conference,1983年09月08日,pp.681-686,DOI: 10.1109/EUMA.1983.333317
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/32
H04B 1/38
H01P 3/12
H01P 5/12
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の
軌道に沿って案内される少なくとも1つの車両(4;5)と、前記車両(4;5)の前記
軌道に平行に延在し、固定局(6)の送受信デバイス(10;11;12)に接続された少なくとも1つの
第一のアンテナ(16A,16B;17A,17B;18A,18B)
が突出し、および前記車両(4
;5)の少なくとも1つの
第二のアンテナ(21A,21B;22A,22B)が突出するスロット付き導波路(1)を使用する前記固定局(6)との間の通信のための通信システムであって、前記車両(4
;5)の前記
第二のアンテナ(21A,21B;22A,22B)は、前記車両(4;5)
が移動するとき、
前記スロット付き導波路(1)の長手方向に移動され、前記スロット付き導波路(1)は、ギャップ(7;8;9)によって互いに分離された少なくとも2つの区画(1A;1B;1C;1D)からなり、
前記区画(1A;1B;1C;1D)に突出する少なくとも1つの
第一のアンテナ(16A,16B
,17A,17B
,18A,18B)は、前記スロット付き導波路(1)の各区画(1A;1B;1C;1D)
に対して設けられ、スロット付き導波路(1)の異なる区画(1A;1B;1C;1D)に
互いに隣接するとともに突出する2つの隣接する
第一のアンテナ(16A,16B;17A,17B;18A,18B)は、
共通する一つの結合デバイス(13;14;15)を介して前記固定局(6)の共通の送受信デバイス(10;11;12)に相互に結合されることを特徴とする、通信システム。
【請求項2】
前記結合デバイス(13;14;15)は、入力接続(A1)および2つの出力接続(A2,A3)を有する
相互双方向電力分配器(23)からなり、前記
入力接続(A1)は、前記送受信デバイス(10;11;12)に接続され、前記出力接続(A2,A3)がそれぞれ、
第一のアンテナ(16A,16B;17A,17B
,18A,18B)
の1つに接続されることを特徴とする、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記結合デバイス(13;14;15)は、2つの相互双方向指向性結合器(24;25)および相互双方向電力分配器(26)を有し、
2つの前記相互双方向指向性結合器(24;25)の
それぞれの入力接続(B1;C1)
は、前記
第一のアンテナ(16A,16B;17A,17B;18A,18B)のうちの1つに接続され、各
相互双方向指向性結合器(24;25)のうちの1つの出力接続(B2;C2)は、他方の
相互双方向指向性結合器(25;24)の
対応する前記出力接続(C2;B2)に接続され、各
相互双方向指向性結合器(24;25)のうちの他方の出力接続(B3;C3)は、前記
相互双方向電力分配器(26)の
2つの出力接続(D2,D3)のうちの1つに接続され、前記
相互双方向電力分配器(26)の入力コネクタ(D1)は、前記送受信デバイス(10;11;12)に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記
相互双方向電力分配器(26)はウィルキンソン分配器であることを特徴とする、請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
出力接続(B2;C2)
の1つにおいて互いに接続された
前記2つの
相互双方向指向性結合器(24;25)が、4つの外部接続(B1,B3,C1,C3)を有する構造ユニット(26)
に組み合わされることを特徴とする、請求項3または4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記
相互双方向電力分配器(23;26)は対称的であることを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記結合デバイス(13;14;15)は、分岐接続(E1)および2つの貫通接続(E2,E3)を有する相互双方向タップ(28)からなり、前記分岐接続(E1)は、前記送受信デバイス(10;11;12)に接続され、前記貫通接続(E2,E3)
のおのおのは、前記
第一のアンテナ(16A,16B;17A,17B;18A,18B)のうちの1つに接続されることを特徴とする、請求項1に記載の通信システム。
【請求項8】
前記
相互双方向タップ(28)が対称的であることを特徴とする、請求項7に記載の通信システム。
【請求項9】
前記スロット付き導波路(1)は、ギャップ(7;8;9)によって互いに分離された複数の区画(1A;1B;1C;1D)を有し、前記固定局(6)の複数の送受信デバイス(10;11;12)が設けられ、各送受信デバイス(10;12)は、
関連付けられた結合デバイス(13;14;15)
によって、
前記スロット付き導波路
(16A,16B;17A,17B;18A,18B)の異なる区画(1A;1B;1C;1D)内に突出する2つの
第一のアンテナ(16A,16B)に接続されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項10】
前記固定局(6)の
個々の前記送受信デバイス(10;11;12)は
、前記車両(4;5)の前記送受信デバイス(19;20)と
異なるチャネルを介して少なくとも部分的に通信することを特徴とする、請求項9に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような通信システムは、たとえば、特許文献1から知られている。その通信システムは、所定の移動経路に沿って案内される車両と、固定局との間の高帯域幅および雑音耐性を有する通信を可能にする。アンテナは、スロットを通って導波路の空洞内に突出し、車両が移動している間に導波路に沿って伝搬する電磁波を受信および/または送信できるように、車両に配置される。固定局の対応するアンテナは、導波路の一端に配置される。
【0003】
そのようなシステムにおける通信範囲は、スロット付き導波路に沿った電磁波の伝播中の電磁波の減衰によって制限される。大きな長さのスロット付き導波路はまた、いくつかの区画から組み立てる必要があり、これは、温度変化中の長さの熱変化の結果として変形の問題を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第10 2013 002 227 B4号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の根本的な問題は、一般的な通信システムのために、車両の移動経路の長さが長くても、信頼できる通信を可能にする広い範囲を実現するための適切な解決策を作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する通信システムによって解決される。有利な実施形態は、従属請求項に示される。
【0007】
本発明によれば、スロット付き導波路は、所定の移動経路に沿って案内される車両と、車両の移動経路に平行に延在し、車両の送受信デバイスに接続された少なくとも1つのアンテナおよび固定局の送受信デバイスに接続された少なくとも1つのアンテナが突出するスロット付き導波路を使用する固定局との間の通信のための、通信システム内のギャップによって互いに分離された少なくとも2つの区画からなり、車両のアンテナは、車両の移動中にスロットの長手方向に移動される。スロット付き導波路の各区画について、対応する区画内に突出する少なくとも1つのアンテナが設けられ、スロット付き導波路の異なる区画内に突出する2つの隣接するアンテナは、結合デバイスを介して固定局の共通の送受信デバイスと互いに結合される。
【0008】
スロット導波路の区画間のギャップは、個々の区画の長さの熱変化を可能にし、送受信デバイスは、各区画にアンテナを配置することによって、両方の区画の領域で車両と通信することができる。さらに、結合デバイスを介して両方の区画を互いに結合することにより、区画間のギャップ(空間、隙間)がブリッジされ(ギャップを乗り越えて)、ある区画から別の区画へのギャップを介した通信が可能になる。車両の送受信デバイスは、それら自体の送信信号との衝突を認識するために、またはそれらを最初から回避するために、他の車両の送受信デバイスから送信信号を受信しなければならないので、これは通信のノイズ耐性にとって特に重要である。
【0009】
第1の適切な実施態様において、結合デバイスは、入力接続および2つの出力接続を有する相互反応的な双方向電力分配器からなり、その入力接続は、送受信デバイスに接続され、その出力接続は、アンテナのうちの1つに接続される。本明細書における入力接続および出力接続という用語は、供給電力が、2つのより小さい部分電力に分割される伝送方向を指し、伝送挙動は相互的である。
【0010】
代替として、第2の適切な実施態様における結合デバイスは、2つの相互双方向指向性結合器および相互双方向電力分配器を有し、この場合、指向性結合器の入力接続はアンテナのうちの1つに接続され、各指向性結合器の出力接続は、他方の指向性結合器の対応する出力接続に接続され、各指向性結合器の他方の出力接続は、電力分配器の出力接続のうちの1つに接続され、電力分配器の入力接続は、送受信デバイスに接続される。ここでも、電力分配器および指向性結合器の両方における入力接続および出力接続という用語は、供給電力が2つのより小さい部分電力に分割される伝送方向を指し、伝送挙動も相互的である。
【0011】
第2の実施形態で使用するための電力分配器の特に適切な形態は、ウィルキンソン分配器である。出力接続において互いに接続される2つの双方向指向性結合器は、4つの外部接続を有する構造ユニットを形成するために適切に組み合わせることもできる。
【0012】
結合デバイスの2つの実施形態において使用される電力分配器は対称であることが好ましく、すなわち、入力において供給される電力は、2つの出力において、2つの等しい部分電力に分割されるが、不可避の損失のために、これらはそれぞれ供給される電力の半分未満である。対称電力分配器の使用は、送受信デバイスから送られる電力が分配されるべきスロット付き導波路の区画が、同じ長さである場合に特に有利である。反対の伝送方向において、信号が出力接続のうちの1つに供給されるとき、入力接続において利用可能な供給電力の割合は、それがどの入力接続に供給されるかに関わらず同じである。
【0013】
結合デバイスの第3の適切な実施態様では、結合デバイスは、分岐接続および2つの貫通接続を有する相互双方向タップからなり、分岐接続は、送受信デバイスに接続され、貫通接続はおのおの、アンテナのうちの1つに接続される。タップの特定の利点は、2つの貫通接続間の制限された挿入損失にあり、これは、制限された減衰でスロット付き導波路の異なる区画内の2つのアンテナを結合するのに特に有利であり、したがって、ある区画から別の区画への直接信号伝送に有利である。
【0014】
結合デバイスの第3の実施態様におけるタップは、好ましくは対称的であり、すなわち、信号が分岐接続で供給されると、供給電力の等しい区画が2つの貫通接続のおのおので結合され、その場合、2つの貫通接続で利用可能な電力が供給電力の半分よりもはるかに小さくなるように、ここでも損失が発生する。対称タップの使用は、送受信デバイスから送信される信号が分配されるスロット付き導波路の区画が同じ長さである場合に特に有利である。反対の伝送方向において、信号が1つの貫通接続で供給されるとき、分岐接続において利用可能な供給電力の割合は、どの貫通接続に供給されるかに関わらず同じである。
【0015】
本発明は、2つの区画からなるスロット付き導波路に限定されないが、スロット付き導波路が、ギャップによって互いに分離されたいくつかの区画を有し、いくつかの送受信デバイスが設けられ、そのおのおのが、スロット付き導波路に割り当てられた結合デバイスを介して、スロット付き導波路の異なる区画にそれぞれ突出する2つのアンテナに接続される場合に特に有用である。したがって、本発明によれば、非常に長い移動経路を有する車両の伝送システムのために、非常に長い伝送経路を実施することができる。
【0016】
スロット付き導波路がいくつかの区画からなり、したがって固定局のいくつかの異なる送受信デバイスが設けられる場合、これら送受信デバイスはまた、異なるチャネルを介して車両の送受信デバイスと少なくとも部分的に通信することができる。結合デバイスを介した個々の区画の直接接続を介して、固定送受信デバイスと、固定送受信デバイスのアンテナが突出していないスロット導波路の別の区画の領域に位置する車両の送受信デバイスとの間で、スロット導波路の異なる区画間のギャップを介して信号を送信することもできる。したがって、スロット付き導波路の区画の境界上の異なるチャネルにおいて同時通信が可能になる。
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】アンテナが突出しているスロット付き導波路の概略断面図である。
【
図2】本発明による通信システムの追加の構成要素のブロック図を有する、
図1によるスロット付き導波路の概略縦断面図である。
【
図3】結合デバイスとして適した反応的双方向電力分配器の回路シンボルを示す図である。
【
図4】結合デバイスとして適した2つの指向性結合器と双方向電力分配器との組合せのブロック図である。
【
図5】結合デバイスとして適した双方向タップの回路シンボルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、所定の移動経路(
図2)に沿って案内される車両4および5と、固定局6との間の、および/または、いくつかのそのような車両4と5との間の互いの通信のための通信システムにおいて、従来技術で使用されるスロット付き導波路1の概略断面図を示す。車両のアンテナ3は、スロット付き導波路1に沿って伝搬する電磁波を送受信するために、スロット2を通ってスロット付き導波路1内に突出する。車両4または5が、その所定の移動経路に沿って移動すると、アンテナ3はそれと共にスロット付き導波路1の長手方向に移動する。車両4または5は、特に規定の走行経路に沿ってレールを介して案内され得る。
【0020】
図2に示すように、スロット付き導波路1は、いくつかの別個の区画1A、1B、1Cおよび1Dから構成され、おのおのがギャップ7、8、または9によって互いに分離されている。スロット付き導波路1が単一部品では実現できない長さを有し、温度が変化する区画1A~1Dに対して長さの変化が可能でなければならないために、ギャップ7~9が必要である。スロット付き導波路1の全長が長いため、固定局6は、スロット付き導波路1に沿って分散された、以下トランシーバと呼ばれるいくつかの送受信デバイス10、11および12に接続される。各トランシーバ10~11は、結合デバイス13または14または15を介して、2つのアンテナ16Aおよび16B、または17Aおよび17B、または18Aおよび18Bに接続され、そのおのおのは、スロット付き導波路1の2つの隣接する区画1Aと1B、または1Bと1C、または1Cと1Dのうちの1つに突出する。したがって、トランシーバ10からの信号は、結合デバイス13を介して区画1Aおよび1Bに結合することができ、信号は、区画1Aおよび1Bから、結合デバイス13を介してトランシーバ10に結合することができる。同じことが、区画1Bと1C、トランシーバ11と結合デバイス14、ならびに区画1Cと1D、トランシーバ12と結合デバイス15にも当然当てはまる。
【0021】
車両4および5はまた、トランシーバと呼ばれる送受信デバイス19または20を装備し、そのおのおのは、2つのアンテナ接続を有し、これらの接続を介して2つのアンテナ21Aおよび21B、または22Aおよび22Bに接続される。アンテナ21Aおよび21B、ならびにアンテナ22Aおよび22Bはおのおの、ギャップ7から9の幅よりも大きいスロット付き導波路1の長手方向において互いからの間隔を有し、それにより、車両4または車両5の各可能な位置において、その2つのアンテナ21Aまたは21B、および22Aまたは22Bのうちの1つは、スロット付き導波路1の区画1A~1Dのうちの1つに常に突出し、したがって、送信および受信の準備ができる。
【0022】
固定局6と車両4との間の双方向通信は、車両4および5の瞬時位置に関わらず、上述した構成により、3つのトランシーバ10~12のうちの少なくとも1つ、結合デバイス13~15のうちの1つ、および6つの固定アンテナ16A~18Bのうちの1つ、ならびに車両側のアンテナ21Aまたは21Bのうちの1つ、およびトランシーバ19を介して、いつでも可能である。固定局6と車両5との間の双方向通信についても同様であり、その側ではアンテナ22Aまたは22Bの一方およびトランシーバ20が関与する。
【0023】
本発明による固定結合デバイス13は、トランシーバ10を、割り当てられたアンテナ16Aおよび16Bに接続するだけでなく、スロット付き導波路1の隣接する区画1Aおよび1Bのうちの1つに突出するアンテナ16Aおよび16Bにも接続する。これに対応して、結合デバイス14と、区画1Bおよび1C、ならびに結合デバイス15と、区画1Cおよび1Dにも適用される。したがって、結合デバイス13~15は、同時にギャップ7~9もブリッジし、その区画1A~1Dの間のギャップ7~9にわたってスロット付き導波路1に沿った連続的な信号伝送を可能にする。結合デバイス13~15は、接続されたアンテナ16Aおよび16B、または17Aおよび17B、または18Aおよび18Bの間に特定の挿入損失を生成することが理解される。しかしながら、これは、結合デバイス7~9がなければ、ギャップ7~9が引き起こす減衰と比較して非常に限定される。
【0024】
結合デバイス13~15のおのおのの1つの可能な実施態様は、スプリッタとも呼ばれる反応的双方向電力分配器23であり、それ自体は従来技術に属する。このような反応的相方向電力分配器23の回路シンボルが
図3に示される。これは、その入力接続A1において供給された信号電力を、所定の分割比率にしたがって、出力接続A2およびA3に分配するが、供給電力の一部を吸収する。この比率は、対称電力分配器において1:1である。これは、反対の動作方向において、結合器として作用し、接続A2およびA3に供給される接続A1における信号電力を結合する。
【0025】
結合デバイス13~15のおのおのの第2の可能な実施態様は、
図4に示す2つの指向性結合器24および25の組合せであり、それ自体も従来技術に属し、双方向電力分配器26を有する。指向性結合器24は、入力接続B1を出力接続B2に直接接続し、入力接続B1を低減衰で第2の出力接続B3と結合するが、出力接続B2およびB3を互いに分離する。第2の指向性結合器25の入力接続C1および出力接続C2およびC3についても同様である。結合デバイス13~15のうちの1つの本発明による実施態様のために、2つの指向性結合器の出力接続B2およびC2は互いに接続され、他の出力接続B3およびC3はおのおの、双方向電力分配器26の出力接続D2またはD3に接続される。本発明によれば、電力分配器26の入力接続D1はトランシーバ13~15のうちの1つに接続され、指向性結合器24および25の入力接続B1およびC1はおのおの、アンテナ16Aおよび16B、または17Aおよび17B、または18Aおよび18Bのうちの1つに接続される。
【0026】
指向性結合器24および25ならびに電力分配器26の両方の相互性により、
図4の回路は、原則として、両方の伝送方向において、すなわち電力分配器および結合器の両方としても機能する。2つの別個の指向性結合器24および25の回路の代わりに、4つの接続B1、B3、C1およびC3を有する指向性結合器27を使用することができ、これは同じ機能を提供し、破線の輪郭によって
図4に示される構造ユニットの形態で既に設計されている。指向性結合器24および25の入力接続B1とC1との間の結合は、それらの直接接続された出力接続B2およびC2を介して既に生成されているので、この変形例における電力分配器26は、その2つの出力接続D2およびD3を互いに結合するようには意図されていない。したがって、特にウィルキンソン分配器など、その2つの出力接続を互いに分離する電力分配器は、反応的電力分配器23の代わりに電力分配器26としてこの変形形態においてより適している。
【0027】
結合デバイス13から15のおのおのの第3の可能な実施態様は、双方向タップ28であり、それ自体も従来技術に属する。このような双方向タップ28の回路シンボルを
図5に示す。これは、その分岐接続E1において供給された信号電力の一部を、貫通接続E2およびE3に所定の比率で結合する。この比率は、対称タップでは1:1である。反対の動作方向では、貫通接続E2およびE3において供給される信号電力の一部を接続E1と結合する。分岐接続E1と、貫通接続E2およびE3のおのおのとの結合は、大きな減衰で接続されるが、貫通接続E2およびE3は、比較的限定された減衰で互いに結合される。
【0028】
一方では、トランシーバ接続とアンテナ接続との間の、他方では、互いのアンテナ接続間の、結合デバイス13から15の3つの変形例の挿入損失は、著しく異なる。双方向タップ28では、アンテナ接続E2とE3との間の挿入損失が一般に最も低い一方、反応的双方向電力分配器23では、トランシーバ接続A1と、アンテナ接続A2およびA3との間の挿入損失が最も低い。2つの指向性結合器24および25と、双方向電力分配器26との組合せにより、アンテナ接続B1とC1との間の挿入損失は、一般に、反応的双方向電力分配器23単独よりも低いが、双方向タップ28よりも高く、トランシーバ接続D1と、アンテナ接続B1およびC1との間の挿入損失は、他の2つの変形例よりも高い。
【0029】
変形例の選択は、異なる要件を考慮し、検討した後に行われるべきである。スロット付き導波路1の隣接する区画間の可能な限り少ない挿入損失が重要である場合、双方向タップが最適であるように見え、電力分配器を有する2つの指向性結合器の組合せが、2番目に最良の解決策である。スロット付き導波路1の区画1A~1Dの長さが異なる場合、結合デバイス13から15の非対称な電力分割比率が有用であり得るが、一般に、区画1A~1Dの長さがすべて同じになるように選択し、したがって、結合デバイス13~15に、対称な電力分割も提供することが適切である。
【0030】
結合デバイス13~15のアンテナ接続間の低い挿入損失が特に重要であるように見える1つの考慮事項は、異なるチャネルを介した異なる固定トランシーバと、車両側の異なるトランシーバとの間の通信であり、チャネルは、特定の幅の周波数帯域を示す。たとえば、
図2の構成では、トランシーバ11が第1のチャネルXを介してトランシーバ20と通信し、トランシーバ12が第2のチャネルYを介してトランシーバ19と通信することが望ましい場合があり、そのためには、チャネルXにおける信号は、ギャップ9を介して送信され、チャネルYにおける信号は、ギャップ8を介して送信されねばならず、そのためには、アンテナ17Aと17Bとの間、またはアンテナ18Aと18Bとの間の結合デバイス14および15の低い挿入損失が望ましい。