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特許7514834抗191P4D12抗体薬物コンジュゲートを含む薬学的組成物、およびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】抗191P4D12抗体薬物コンジュゲートを含む薬学的組成物、およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20240704BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240704BHJP
   A61K 31/401 20060101ALI20240704BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240704BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240704BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240704BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240704BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240704BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240704BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240704BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240704BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240704BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20240704BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240704BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K31/401
A61K47/26
A61K47/22
A61K47/02
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K9/08
A61K9/19
A61P35/04
A61K38/05
C07K16/28 ZNA
【請求項の数】 45
(21)【出願番号】P 2021531103
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 US2019056214
(87)【国際公開番号】W WO2020117373
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】62/774,819
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500553659
【氏名又は名称】アジェンシス,インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】507154181
【氏名又は名称】シージェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】マクガーヴェイ オルラ
(72)【発明者】
【氏名】ラトナスワミー ギャヤスリ
(72)【発明者】
【氏名】サン インキン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン シュラヴェンダイク マリー ローズ
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-543498(JP,A)
【文献】特表2008-521411(JP,A)
【文献】特表2012-514651(JP,A)
【文献】米国特許第08758758(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/
A61K 47/
A61P 35/
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)モノメチルアウリスタチンE(MMAE)の1つまたは複数の単位にコンジュゲートされた、191P4D12に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む、抗体薬物コンジュゲートであって、該抗体またはその抗原結合断片が、SEQ ID NO:7に示される重鎖可変領域の3つの相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:8に示される軽鎖可変領域の3つのCDRのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、抗体薬物コンジュゲート;ならびに
(b)5~50mMの範囲のL-ヒスチジン、0.001~0.1%(v/v)の範囲のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))、および4%~7%(w/v)の範囲のトレハロース二水和物、ならびにHClを含み、15℃~27℃で5.5~6.5の範囲のpHである、薬学的に許容される賦形剤
を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
抗体またはその抗原結合断片が、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDR H1、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDR H2、SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含むCDR H3、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むCDR L1、SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR L2、およびSEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDR L3を含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
抗体またはその抗原結合断片が、SEQ ID NO:7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から136番目のアミノ酸(セリン)までの範囲のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から130番目のアミノ酸(アルギニン)までの範囲のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項4】
抗体が、SEQ ID NO:7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲のアミノ酸配列を含む重鎖と、SEQ ID NO:8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項5】
抗原結合断片がFab、F(ab')2、FvまたはscFvである、請求項1~4のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項6】
抗体が完全ヒト抗体である、請求項1~5のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項7】
抗体またはその抗原結合断片が組換え産生される、請求項1~6のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項8】
抗体薬物コンジュゲートが以下の構造:
を有し、ここで、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは1~10である、
請求項1~7のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項9】
pが2~8である、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項10】
pが3.8である、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項11】
抗体または抗原結合断片が、リンカーを介してモノメチルアウリスタチンE(MMAE)の各単位に連結されている、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項12】
リンカーが、酵素切断可能なリンカーであり、抗体またはその抗原結合断片の硫黄原子と結合を形成する、請求項11記載の薬学的組成物。
【請求項13】
リンカーが-Aa-Ww-Yy-の式を有し、
式中、-A-は伸長単位であり、aは0または1であり、-W-はアミノ酸単位であり、wは0~12の範囲の整数であり、-Y-はスペーサ単位であり、yは0、1、または2である、
請求項11記載の薬学的組成物。
【請求項14】
伸長単位が以下の式(1)の構造を有し、アミノ酸単位がバリンシトルリンであり、スペーサ単位が以下の式(2)の構造を含むPAB基である、請求項13記載の薬学的組成物:

【請求項15】
伸長単位が抗体またはその抗原結合断片の硫黄原子と結合を形成し、スペーサ単位がカルバメート基を介してMMAEに連結されている、請求項13記載の薬学的組成物。
【請求項16】
1~20mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む、請求項1~15のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項17】
5~15mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む、請求項16記載の薬学的組成物。
【請求項18】
8~12mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む、請求項16記載の薬学的組成物。
【請求項19】
約10mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む、請求項16記載の薬学的組成物。
【請求項20】
L-ヒスチジンが(i) 10~40mMの範囲で、(ii) 15~35mMの範囲で、(iii) 15~30mMの範囲で、(iv) 15~25mMの範囲で、または(v) 約20mMで存在する、請求項1~19のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項21】
TWEEN-20の濃度が(i) 0.0025~0.075%(v/v)の範囲、(ii) 0.005~0.05%(v/v)の範囲、(iii) 0.01~0.03%(v/v)の範囲、または(iv) 約0.02%(v/v)である、請求項1~20のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項22】
トレハロース二水和物を含み、前記トレハロース二水和物が4~6%(w/v)の範囲で、存在する、請求項1~21のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項23】
(i) 5.7~6.3の範囲、または(ii) 約6.0のpHを有する、請求項1~22のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項24】
pHが室温で測定される、請求項23記載の薬学的組成物。
【請求項25】
pHが25℃で測定される、請求項23記載の薬学的組成物。
【請求項26】
pHがHClによって調整される、請求項1~25のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項27】
約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、および約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物を含む、請求項1~15のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項28】
pHが室温または25℃で6.0である、請求項27記載の薬学的組成物。
【請求項29】
抗体薬物コンジュゲートが約10mg/mLの濃度である、請求項27または28記載の薬学的組成物。
【請求項30】
(a) 液体形態であるもしくは凍結乾燥形態である、または(b) -80℃、4℃、25℃または37℃で保存される、請求項1~29のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項31】
凍結乾燥形態である、請求項1~29のいずれか一項記載の薬学的組成物
【請求項32】
ヒト対象における癌を予防または治療するための医薬の調製における、請求項1~31のいずれか一項記載の薬学的組成物の使用。
【請求項33】
癌が、結腸癌、膵臓癌、卵巣癌、肺癌、膀胱癌、尿路上皮癌、乳癌、食道癌、頭部癌、頸部癌、または非小細胞肺癌である、請求項32記載の使用。
【請求項34】
膀胱癌が進行性膀胱癌、進行性尿路上皮癌、転移性膀胱癌、または転移性尿路上皮癌である、請求項33記載の使用。
【請求項35】
癌が、191P4D12を発現する腫瘍細胞を有する、請求項32~34のいずれか一項記載の使用。
【請求項36】
免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される、請求項32~35のいずれか一項記載の使用。
【請求項37】
免疫チェックポイント阻害剤が、(a) PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤である、(b) ニボルマブである、または(c) アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブからなる群より選択される、請求項36記載の使用。
【請求項38】
薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートが、(i) 1~10mg/kg対象体重、(ii) 1~5mg/kg対象体重、(iii) 1~2.5mg/kg対象体重、(iv) 1~1.25mg/kg対象体重、(v) 約1mg/kg対象体重、または(vi) 約1.25mg/kg対象体重の用量で投与される、請求項32~37のいずれか一項記載の使用。
【請求項39】
薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートが、静脈内(IV)注射または注入によって投与される、請求項38記載の使用。
【請求項40】
薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートが、3週間に2回のサイクルで、約30分かけて静脈内(IV)注射または注入によって投与される、請求項39記載の使用。
【請求項41】
薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートが、3週間のサイクルごとの第1日および第8日に約30分かけて静脈内(IV)注射または注入によって投与される、請求項40記載の使用。
【請求項42】
薬学的組成物が、3週間のサイクルごとの第1日に静脈内(IV)注射または注入によって投与される免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与され、免疫チェックポイント阻害剤が、約30分または60分かけて約100mg~約1500mgの量で投与される、請求項41記載の使用。
【請求項43】
薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートが、4週間に3回のサイクルで、約30分かけて静脈内(IV)注射または注入によって投与される、請求項39記載の使用。
【請求項44】
薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートが、4週間のサイクルごとの第1日、第8日および第15日に約30分かけて静脈内(IV)注射または注入によって投与される、請求項43記載の使用。
【請求項45】
静脈内(IV)注射または注入によって免疫チェックポイント阻害剤が投与される、請求項36記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月3日に出願された米国仮特許出願第62/774,819号に対する優先権の恩典を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
1. 分野
抗191P4D12抗体薬物コンジュゲートを含む薬学的組成物が本明細書で提供される。この薬学的組成物を使用する方法も本明細書で提供される。
【背景技術】
【0003】
2. 背景
原薬は、通常、様々な特殊化された薬学的機能を果たす1つまたは複数の他の剤と組み合わせて製剤の一部として投与される。薬学的賦形剤は、様々な機能を有し、多くの異なる方法で、例えば、可溶化、希釈、増粘、安定化、防腐、着色、着香などで薬学的製剤に寄与する。活性原薬を製剤化する場合に考慮され得る特性には、バイオアベイラビリティ、製造の容易さ、投与の容易さ、および剤形の安定性が含まれる。製剤化される活性原薬の様々な特性のために、剤形は、典型的には、有利な物理的および薬学的特性を達成するために、活性原薬に合わせて独自に調整された薬学的賦形剤を必要とする。
【0004】
したがって、有利な物理的および薬学的特性を有する抗191P4D12抗体薬物コンジュゲートの薬学的組成物に関する必要性が存在する。本発明は、この必要性を満たし、関連する利益を提供する。
【発明の概要】
【0005】
3. 概要
一局面では、(a)モノメチルアウリスタチンE(MMAE)の1つまたは複数の単位にコンジュゲートされた、191P4D12に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む抗体薬物コンジュゲートであって、抗体またはその抗原結合断片が、SEQ ID NO:7に示される重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含むCDRを含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:8に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域とを含む、抗体薬物コンジュゲートと、(b)L-ヒスチジン、ポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))、およびトレハロース二水和物とスクロースの少なくとも一方を含む、薬学的に許容される賦形剤と、を含む薬学的組成物が本明細書で提供される。
【0006】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDR H1、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDR H2、SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含むCDR H3;SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むCDR L1、SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR L2、およびSEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDR L3を含む。
【0007】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から136番目のアミノ酸(セリン)までの範囲のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から130番目のアミノ酸(アルギニン)までの範囲のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0008】
いくつかの態様では、抗体は、SEQ ID NO:7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲のアミノ酸配列を含む重鎖と、SEQ ID NO:8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0009】
いくつかの態様では、抗原結合断片は、Fab、F(ab')2、FvまたはscFv断片である。
【0010】
いくつかの態様では、抗体は完全ヒト抗体である。
【0011】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は組換え産生される。
【0012】
いくつかの態様では、抗体薬物コンジュゲートは、以下の構造:
を有し、ここで、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは1~10である。
【0013】
いくつかの態様では、pは2~8である。
【0014】
いくつかの態様では、抗体または抗原結合断片は、リンカーを介してモノメチルアウリスタチンE(MMAE)の各単位に連結されている。
【0015】
いくつかの態様では、リンカーは酵素切断可能なリンカーであり、一態様では、リンカーは抗体またはその抗原結合断片の硫黄原子と結合を形成する。
【0016】
いくつかの態様では、リンカーは、-Aa-Ww-Yy-の式を有し、式中、-A-は伸長単位であり、aは0または1であり、-W-はアミノ酸単位であり、wは0~12の範囲の整数であり、-Y-はスペーサ単位であり、yは0、1、または2である。
【0017】
いくつかの態様では、伸長単位は以下の式(1)の構造を有し、アミノ酸単位はバリンシトルリンであり、スペーサ単位は以下の式(2)の構造を有するPAB基である。
【0018】
いくつかの態様では、伸長単位は、抗体またはその抗原結合断片の硫黄原子と結合を形成し、スペーサ単位は、カルバメート基を介してMMAEに連結されている。
【0019】
いくつかの態様では、抗体薬物コンジュゲートは、抗体またはその抗原結合断片当たり1単位~10単位のMMAEを含む。
【0020】
いくつかの態様では、抗体薬物コンジュゲートは、抗体またはその抗原結合断片当たり2単位~8単位のMMAEを含む。
【0021】
いくつかの態様では、薬学的組成物は、約1mg/mL~約20mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、約5mg/mL~約15mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。他の態様では、薬学的組成物は、約8mg/mL~約12mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。さらに他の態様では、薬学的組成物は、約10mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。
【0022】
いくつかの態様では、L-ヒスチジンは、約5mM~約50mMの範囲で存在する。他の態様では、L-ヒスチジンは、約10mM~約40mMの範囲で存在する。他の態様では、L-ヒスチジンは、約15mM~約35mMの範囲で存在する。他の態様では、L-ヒスチジンは、約15mM~約30mMの範囲で存在する。他の態様では、L-ヒスチジンは、約15mM~約25mMの範囲で存在する。さらに他の態様では、L-ヒスチジンは約20mMで存在する。
【0023】
いくつかの態様では、TWEEN-20の濃度は、約0.001%~約0.1%(v/v)の範囲である。他の態様では、TWEEN-20の濃度は、約0.0025%~約0.075%(v/v)の範囲である。他の態様では、TWEEN-20の濃度は、約0.005%~約0.05%(v/v)の範囲である。他の態様では、TWEEN-20の濃度は、約0.01%~約0.03%(v/v)の範囲である。さらに他の態様では、TWEEN-20の濃度は、約0.02%(v/v)の範囲である。
【0024】
いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、トレハロース二水和物を含む。いくつかの態様では、トレハロース二水和物は、約1%~約20%(w/v)の範囲で存在する。いくつかの態様では、トレハロース二水和物は、約2%~約15%(w/v)の範囲で存在する。他の態様では、トレハロース二水和物は、約3%~約10%(w/v)の範囲で存在する。さらに他の態様では、トレハロース二水和物は、約4%~約6%(w/v)の範囲で存在する。さらに他の態様では、トレハロース二水和物は約5.5%(w/v)で存在する。
【0025】
いくつかの態様では、トレハロース二水和物は、約50mM~約300mMの範囲で存在する。いくつかの態様では、トレハロース二水和物は、約75mM~約250mMの範囲で存在する。他の態様では、トレハロース二水和物は、約100mM~約200mMの範囲で存在する。さらに他の態様では、トレハロース二水和物は、約130mM~約150mMの範囲で存在する。さらに他の態様では、トレハロース二水和物は約146mMで存在する。
【0026】
いくつかの態様では、薬学的組成物はスクロースを含む。いくつかの態様では、スクロースは、約1%~約20%(w/v)の範囲で存在する。いくつかの態様では、スクロースは、約2%~約15%(w/v)の範囲で存在する。他の態様では、スクロースは、約3%~約10%(w/v)の範囲で存在する。他の態様では、スクロースは、約4%~約6%(w/v)の範囲で存在する。さらに他の態様では、スクロースは約5.5%(w/v)で存在する。
【0027】
いくつかの態様では、スクロースは、約50mM~約300mMの範囲で存在する。他の態様では、スクロースは、約75mM~約250mMの範囲で存在する。他の態様では、スクロースは、約100mM~約200mMの範囲で存在する。さらに他の態様では、スクロースは、約130mM~約150mMの範囲で存在する。さらに他の態様では、スクロースは約146mMで存在する。
【0028】
いくつかの態様では、薬学的組成物は、約5.5~約6.5の範囲のpHを有する。いくつかの態様では、薬学的組成物は、約5.7~約6.3の範囲のpHを有する。他の態様では、薬学的組成物は約6.0のpHを有する。
【0029】
いくつかの態様では、pHは室温で測定される。いくつかの態様では、pHは、約15℃~約27℃で測定される。他の態様では、pHは約4℃で測定される。他の態様では、pHは約25℃で測定される。
【0030】
いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は塩酸(HCl)を含む。いくつかの態様では、pHはHClによって調整される。
【0031】
他の態様では、本明細書で提供される薬学的組成物はコハク酸を含む。いくつかの態様では、pHはコハク酸によって調整される。
【0032】
いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、および約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物または約5%(w/v)のスクロースの少なくとも一方を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、HClまたはコハク酸をさらに含む。いくつかの態様では、pHは、室温で約6.0である。他の態様では、pHは、25℃で約6.0である。
【0033】
いくつかの具体的な態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、
(a)以下の構造:
を有し、ここで、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは1~10である、抗体薬物コンジュゲート;ならびに
(b)約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物、およびHClを含む、薬学的に許容される賦形剤
を含み、pHは25℃で約6.0である。
【0034】
いくつかの態様では、抗体薬物コンジュゲートは約10mg/mLの濃度である。
【0035】
他の具体的な態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、
(a)以下の構造:
を含み、ここで、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは1~10である、抗体薬物コンジュゲート;ならびに
(b)約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物、およびコハク酸を含む、薬学的に許容される賦形剤
を含み、pHは25℃で約6.0である。
【0036】
いくつかの態様では、抗体薬物コンジュゲートは、本明細書で提供される薬学的組成物中、約10mg/mLの濃度である。
【0037】
さらに他の具体的な態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、
(a)以下の構造:
を含み、ここで、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは1~10である、抗体薬物コンジュゲート;ならびに
(b)約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5.0%(w/v)のスクロース、およびHClを含む、薬学的に許容される賦形剤
を含み、pHは25℃で約6.0である。
【0038】
いくつかの態様では、抗体薬物コンジュゲートは、本明細書で提供される薬学的組成物中、約10mg/mLの濃度である。
【0039】
いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は液体形態である。
【0040】
他の態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は凍結乾燥されている。
【0041】
別の局面では、本明細書で提供される薬学的組成物を凍結乾燥することによって作製された凍結乾燥組成物が本明細書で提供される。
【0042】
いくつかの態様では、薬学的組成物は、-80℃、4℃、25℃または37℃で保存される。
【0043】
別の局面では、有効量の本明細書で提供される薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、対象において疾患または障害を予防または治療する方法が、本明細書で提供される。
【0044】
いくつかの態様では、対象はヒト対象である。
【0045】
いくつかの態様では、癌は固形腫瘍である。いくつかの態様では、癌は、結腸癌、膵臓癌、卵巣癌、肺癌、膀胱癌、乳癌、食道癌、頭部癌、または頸部癌である。
【0046】
具体的な態様では、癌は結腸癌である。具体的な態様では、癌は膵臓癌である。具体的な態様では、癌は卵巣癌である。具体的な態様では、癌は肺癌である。いくつかの態様では、肺癌は非小細胞肺癌である。具体的な態様では、癌は膀胱癌である。具体的な態様では、癌は進行性膀胱癌である。具体的な態様では、癌は転移性膀胱癌である。具体的な態様では、癌は乳癌である。具体的な態様では、癌は食道癌である。具体的な態様では、癌は頭部癌である。具体的な態様では、癌は頸部癌である。具体的な態様では、癌は、191P4D12を発現する腫瘍細胞を有する。
【0047】
いくつかの態様では、本明細書で提供される方法は、第2の治療薬を対象に投与する工程をさらに含む。いくつかの態様では、第2の治療薬は免疫チェックポイント阻害剤である。いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤である。他の態様では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1阻害剤である。さらに他の態様では、PD-1阻害剤は、ペムブロリズマブまたはニボルマブである。他の態様では、免疫チェックポイント阻害剤はPD-L1阻害剤である。他の態様では、PD-L1阻害剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブからなる群より選択される。
【0048】
いくつかの態様では、薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートは、1~10mg/kg対象体重の用量で投与される。他の態様では、薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートは、1~5mg/kg対象体重の用量で投与される。さらに他の態様では、薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートは、1~2.5mg/kg対象体重の用量で投与される。いくつかの態様では、薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートは、1~1.25mg/対象体重kgの用量で投与される。いくつかの態様では、薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートは、約1mg/kg対象体重の用量で投与される。いくつかの態様では、薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートは、約1.25mg/kg対象体重の用量で投与される。
【0049】
いくつかの態様では、薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートは、静脈内(IV)注射または注入によって投与される。
【0050】
いくつかの態様では、薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートは、3週間に2回のサイクルで、約30分かけて静脈内(IV)注射または注入によって投与される。いくつかの態様では、薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートは、3週間のサイクルごとの第1日および第8日に約30分かけて静脈内(IV)注射または注入によって投与される。いくつかの態様では、この方法は、3週間のサイクルごとの第1日に静脈内(IV)注射または注入によって免疫チェックポイント阻害剤を投与する工程をさらに含む。いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブであり、ペムブロリズマブは、約30分かけて約200mgの量で投与される。他の態様では、免疫チェックポイント阻害剤はアテゾリズマブであり、アテゾリズマブは、約60分または約30分かけて約1200mgの量で投与される。
【0051】
他の態様では、薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートは、4週間に3回のサイクルで、約30分かけて静脈内(IV)注射または注入によって投与される。いくつかの態様では、薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートは、4週間のサイクルごとの第1日、第8日および第15日に約30分かけて静脈内(IV)注射または注入によって投与される。いくつかの態様では、この方法は、静脈内(IV)注射または注入によって免疫チェックポイント阻害剤を投与する工程をさらに含む。いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブである。他の態様では、免疫チェックポイント阻害剤はアテゾリズマブである。
[本発明1001]
(a)モノメチルアウリスタチンE(MMAE)の1つまたは複数の単位にコンジュゲートされた、191P4D12に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む、抗体薬物コンジュゲートであって、該抗体またはその抗原結合断片が、SEQ ID NO:7に示される重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含むCDRを含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:8に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域とを含む、抗体薬物コンジュゲート;ならびに
(b)L-ヒスチジン、ポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))、およびトレハロース二水和物とスクロースの少なくとも一方を含む、薬学的に許容される賦形剤
を含む、薬学的組成物。
[本発明1002]
抗体またはその抗原結合断片が、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDR H1、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDR H2、SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含むCDR H3、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むCDR L1、SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR L2、およびSEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDR L3を含む、本発明1001の薬学的組成物。
[本発明1003]
抗体またはその抗原結合断片が、SEQ ID NO:7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から136番目のアミノ酸(セリン)までの範囲のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から130番目のアミノ酸(アルギニン)までの範囲のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、本発明1001の薬学的組成物。
[本発明1004]
抗体が、SEQ ID NO:7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲のアミノ酸配列を含む重鎖と、SEQ ID NO:8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、本発明1001の薬学的組成物。
[本発明1005]
抗原結合断片がFab、F(ab') 2 、FvまたはscFv断片である、本発明1001~1004のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1006]
抗体が完全ヒト抗体である、本発明1001~1005のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1007]
抗体またはその抗原結合断片が組換え産生される、本発明1001~1006のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1008]
抗体薬物コンジュゲートが以下の構造:
を有し、ここで、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは1~10である、
本発明1001~1007のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1009]
pが2~8である、本発明1008の薬学的組成物。
[本発明1010]
抗体または抗原結合断片が、リンカーを介してモノメチルアウリスタチンE(MMAE)の各単位に連結されている、本発明1001の薬学的組成物。
[本発明1011]
リンカーが、酵素切断可能なリンカーであり、抗体またはその抗原結合断片の硫黄原子と結合を形成する、本発明1010の薬学的組成物。
[本発明1012]
リンカーが-A a -W w -Y y -の式を有し、
式中、-A-は伸長単位であり、aは0または1であり、-W-はアミノ酸単位であり、wは0~12の範囲の整数であり、-Y-はスペーサ単位であり、yは0、1、または2である、
本発明1010の薬学的組成物。
[本発明1013]
伸長単位が以下の式(1)の構造を有し、アミノ酸単位がバリンシトルリンであり、スペーサ単位が以下の式(2)の構造を含むPAB基である、本発明1012の薬学的組成物:

[本発明1014]
伸長単位が抗体またはその抗原結合断片の硫黄原子と結合を形成し、スペーサ単位がカルバメート基を介してMMAEに連結されている、本発明1012の薬学的組成物。
[本発明1015]
抗体薬物コンジュゲートが、抗体またはその抗原結合断片当たり1~10単位のMMAEを含む、本発明1001の薬学的組成物。
[本発明1016]
抗体薬物コンジュゲートが、抗体またはその抗原結合断片当たり2~8単位のMMAEを含む、本発明1015の薬学的組成物。
[本発明1017]
1~20mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む、本発明1001~1016のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1018]
5~15mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む、本発明1017の薬学的組成物。
[本発明1019]
8~12mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む、本発明1017の薬学的組成物。
[本発明1020]
約10mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む、本発明1017の薬学的組成物。
[本発明1021]
L-ヒスチジンが5~50mMの範囲で存在する、本発明1001~1020のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1022]
L-ヒスチジンが10~40mMの範囲で存在する、本発明1001~1020のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1023]
L-ヒスチジンが15~35mMの範囲で存在する、本発明1001~1020のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1024]
L-ヒスチジンが15~30mMの範囲で存在する、本発明1001~1020のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1025]
L-ヒスチジンが15~25mMの範囲で存在する、本発明1001~1020のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1026]
L-ヒスチジンが約20mMで存在する、本発明1001~1020のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1027]
TWEEN-20の濃度が0.001~0.1%(v/v)の範囲にある、本発明1001~1026のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1028]
TWEEN-20の濃度が0.0025~0.075%(v/v)の範囲にある、本発明1001~1026のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1029]
TWEEN-20の濃度が0.005~0.05%(v/v)の範囲にある、本発明1001~1026のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1030]
TWEEN-20の濃度が0.01~0.03%(v/v)の範囲にある、本発明1001~1026のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1031]
TWEEN-20の濃度が約0.02%(v/v)の範囲にある、本発明1001~1026のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1032]
トレハロース二水和物を含む、本発明1001~1031のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1033]
トレハロース二水和物が1~20%(w/v)の範囲で存在する、本発明1032の薬学的組成物。
[本発明1034]
トレハロース二水和物が2~15%(w/v)の範囲で存在する、本発明1032の薬学的組成物。
[本発明1035]
トレハロース二水和物が3~10%(w/v)の範囲で存在する、本発明1032の薬学的組成物。
[本発明1036]
トレハロース二水和物が4~6%(w/v)の範囲で存在する、本発明1032の薬学的組成物。
[本発明1037]
トレハロース二水和物が約5.5%(w/v)で存在する、本発明1032の薬学的組成物。
[本発明1038]
トレハロース二水和物が50mM~300mMの範囲で存在する、本発明1032の薬学的組成物。
[本発明1039]
トレハロース二水和物が75mM~250mMの範囲で存在する、本発明1032の薬学的組成物。
[本発明1040]
トレハロース二水和物が100mM~200mMの範囲で存在する、本発明1032の薬学的組成物。
[本発明1041]
トレハロース二水和物が130mM~150mMの範囲で存在する、本発明1032の薬学的組成物。
[本発明1042]
トレハロース二水和物が約146mMで存在する、本発明1032の薬学的組成物。
[本発明1043]
スクロースを含む、本発明1001~1031のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1044]
スクロースが1~20%(w/v)の範囲で存在する、本発明1043の薬学的組成物。
[本発明1045]
スクロースが2~15%(w/v)の範囲で存在する、本発明1043の薬学的組成物。
[本発明1046]
スクロースが3~10%(w/v)の範囲で存在する、本発明1043の薬学的組成物。
[本発明1047]
スクロースが4~6%(w/v)の範囲で存在する、本発明1043の薬学的組成物。
[本発明1048]
スクロースが約5.5%(w/v)で存在する、本発明1043の薬学的組成物。
[本発明1049]
スクロースが50mM~300mMの範囲で存在する、本発明1043の薬学的組成物。
[本発明1050]
スクロースが75mM~250mMの範囲で存在する、本発明1043の薬学的組成物。
[本発明1051]
スクロースが100mM~200mMの範囲で存在する、本発明1043の薬学的組成物。
[本発明1052]
スクロースが130mM~150mMの範囲で存在する、本発明1043の薬学的組成物。
[本発明1053]
スクロースが約146mMで存在する、本発明1043の薬学的組成物。
[本発明1054]
5.5~6.5の範囲のpHを有する、本発明1001~1053のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1055]
5.7~6.3の範囲のpHを有する、本発明1001~1053のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1056]
約6.0のpHを有する、本発明1001~1053のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1057]
pHが室温で測定される、本発明1054~1056のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1058]
pHが15℃~27℃で測定される、本発明1054~1056のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1059]
pHが4℃で測定される、本発明1054~1056のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1060]
pHが25℃で測定される、本発明1054~1056のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1061]
塩酸(HCl)を含む、本発明1001~1060のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1062]
pHがHClによって調整される、本発明1001~1060のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1063]
コハク酸を含む、本発明1001~1060のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1064]
pHがコハク酸によって調整される、本発明1001~1060のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1065]
約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、および約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物または約5%(w/v)のスクロースの少なくとも一方を含む、本発明1001~1016のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1066]
HClまたはコハク酸をさらに含む、本発明1065の薬学的組成物。
[本発明1067]
pHが室温で6.0である、本発明1065または本発明1066の薬学的組成物。
[本発明1068]
pHが25℃で6.0である、本発明1065または本発明1066の薬学的組成物。
[本発明1069]
(a)以下の構造:
を含み、ここで、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは1~10である、抗体薬物コンジュゲート;ならびに
(b)約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20(登録商標)、約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物、およびHClを含む、薬学的に許容される賦形剤
を含み、pHが25℃で約6.0である、
薬学的組成物。
[本発明1070]
抗体薬物コンジュゲートが約10mg/mLの濃度である、本発明1069の薬学的組成物。
[本発明1071]
(a)以下の構造:
を含み、ここで、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは1~10である、抗体薬物コンジュゲート;ならびに
(b)約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20(登録商標)、約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物、およびコハク酸を含む、薬学的に許容される賦形剤
を含み、pHが25℃で約6.0である、
薬学的組成物。
[本発明1072]
抗体薬物コンジュゲートが約10mg/mLの濃度である、本発明1071の薬学的組成物。
[本発明1073]
(a)以下の構造:
を含み、ここで、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは1~10である、抗体薬物コンジュゲート;ならびに
(b)約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20(登録商標)、約5.0%(w/v)のスクロース、およびHClを含む、薬学的に許容される賦形剤
を含み、pHが25℃で約6.0である、
薬学的組成物。
[本発明1074]
抗体薬物コンジュゲートが約10mg/mLの濃度である、本発明1073の薬学的組成物。
[本発明1075]
液体形態である、本発明1001~1074のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1076]
凍結乾燥されている、本発明1001~1074のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1077]
本発明1001~1074のいずれかの薬学的組成物を凍結乾燥することによって作製される凍結乾燥組成物。
[本発明1078]
-80℃、4℃、25℃または37℃で保存される、本発明1001~1074のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1079]
有効量の本発明1001~1078のいずれかの薬学的組成物を対象に投与する工程を含む、対象の疾患または障害を予防または治療する方法。
[本発明1080]
対象がヒト対象である、本発明1079の方法。
[本発明1081]
癌が、結腸癌、膵臓癌、卵巣癌、肺癌、膀胱癌、尿路上皮癌、乳癌、食道癌、頭部癌、または頸部癌である、本発明1080の方法。
[本発明1082]
癌が結腸癌である、本発明1081の方法。
[本発明1083]
癌が膵臓癌である、本発明1081の方法。
[本発明1084]
癌が卵巣癌である、本発明1081の方法。
[本発明1085]
癌が肺癌であり、肺癌が任意で非小細胞肺癌である、本発明1081の方法。
[本発明1086]
癌が膀胱癌または尿路上皮癌である、本発明1081の方法。
[本発明1087]
膀胱癌が進行性膀胱癌または進行性尿路上皮癌である、本発明1086の方法。
[本発明1088]
膀胱癌が転移性膀胱癌または転移性尿路上皮癌である、本発明1086の方法。
[本発明1089]
癌が乳癌である、本発明1081の方法。
[本発明1090]
癌が食道癌である、本発明1081の方法。
[本発明1091]
癌が頭部癌である、本発明1081の方法。
[本発明1092]
癌が頸部癌である、本発明1081の方法。
[本発明1093]
癌が、191P4D12を発現する腫瘍細胞を有する、本発明1080の方法。
[本発明1094]
第2の治療薬を対象に投与する工程をさらに含む、本発明1079~1093のいずれかの方法。
[本発明1095]
第2の治療薬が免疫チェックポイント阻害剤である、本発明1094の方法。
[本発明1096]
免疫チェックポイント阻害剤がPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤である、本発明1095の方法。
[本発明1097]
免疫チェックポイント阻害剤がPD-1阻害剤である、本発明1096の方法。
[本発明1098]
PD-1阻害剤がニボルマブである、本発明1097の方法。
[本発明1099]
免疫チェックポイント阻害剤がPD-L1阻害剤である、本発明1096の方法。
[本発明1100]
PD-L1阻害剤が、アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブからなる群より選択される、本発明1099の方法。
[本発明1101]
薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートが、1~10mg/kg対象体重の用量で投与される、本発明1079~1100のいずれかの方法。
[本発明1102]
薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートが、1~5mg/kg対象体重の用量で投与される、本発明1101の方法。
[本発明1103]
薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートが、1~2.5mg/kg対象体重の用量で投与される、本発明1101の方法。
[本発明1104]
薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートが、1~1.25mg/kg対象体重の用量で投与される、本発明1101の方法。
[本発明1105]
薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートが、約1mg/kg対象体重の用量で投与される、本発明1101の方法。
[本発明1106]
薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートが、約1.25mg/kg対象体重の用量で投与される、本発明1101の方法。
[本発明1107]
薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートが、静脈内(IV)注射または注入によって投与される、本発明1101~1106のいずれかの方法。
[本発明1108]
薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートが、3週間に2回のサイクルで、約30分かけて静脈内(IV)注射または注入によって投与される、本発明1107の方法。
[本発明1109]
薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートが、3週間のサイクルごとの第1日および第8日に約30分かけて静脈内(IV)注射または注入によって投与される、本発明1108の方法。
[本発明1110]
3週間のサイクルごとの第1日に静脈内(IV)注射または注入によって免疫チェックポイント阻害剤を投与する工程をさらに含む、本発明1109の方法。
[本発明1111]
免疫チェックポイント阻害剤が、約30分または60分かけて約100mg~約1500mgの量で投与される、本発明1110の方法。
[本発明1112]
薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートが、4週間に3回のサイクルで、約30分かけて静脈内(IV)注射または注入によって投与される、本発明1107の方法。
[本発明1113]
薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートが、4週間のサイクルごとの第1日、第8日および第15日に約30分かけて静脈内(IV)注射または注入によって投与される、本発明1112の方法。
[本発明1114]
静脈内(IV)注射または注入によって免疫チェックポイント阻害剤を投与する工程をさらに含む、本発明1113の方法。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1A】40℃での製剤F1~F14の14日間の安定性試験のSDS-PAGE分析の結果を示す。
図1B】40℃での製剤F1~F14の14日間の安定性試験のSDS-PAGE分析の結果を示す。
図1C】40℃での製剤F1~F14の14日間の安定性試験のSDS-PAGE分析の結果を示す。
図1D】40℃での製剤F1~F14の14日間の安定性試験のSDS-PAGE分析の結果を示す。
図1E】セクション6.1に記載されているPR-HPLC試験の概要を示す。図1F図1Gおよび図1Hは、40℃での製剤F1~F14のSE-HPLC分析の結果を示す。
図1F】40℃での製剤F1~F14のSE-HPLC分析の結果を示す。
図1G】40℃での製剤F1~F14のSE-HPLC分析の結果を示す。
図1H】40℃での製剤F1~F14のSE-HPLC分析の結果を示す。
図2A】T0での製剤F4、F9およびF14の振とう試験の結果を示す。
図2B】製剤F4、F9、およびF14のサイクル凍結融解試験のSDS-PAGE結果を示す。
図2C】製剤F4、F9、およびF14についてHIACによって測定された1mL当たりの総累積数を示す。
図3A】製剤F4、F9、およびF14の残留水分分析の結果を示す。
図3B】12週間の同時BDSおよびDP製剤試験におけるA280(濃度)の結果を示す。
図3C】12週間の同時BDSおよびDP製剤試験におけるA330(濁度)の結果を示す。
図3D】T0でのBDS(凍結乾燥前)のSDS-PAGE分析の結果を示す。
図3E】-70℃または2~8℃で12週間保存したBDSのSDS-PAGE分析の結果を示す。
図3F】T0での凍結乾燥および再構成後のDPのSDS-PAGE分析の結果を示す。
図3G】25℃または40℃で12週間保存したDP(凍結乾燥および再構成後)のSDS-PAGE分析の結果を示す。
図3H】2~8℃で12週間保存したDP(凍結乾燥および再構成後)のSDS-PAGE分析の結果を示す。
図3I】2~8℃および-70℃で12週間保存したAGS-22M6E BDS、ならびに2~8℃、25℃/60%RHおよび40℃/75%RHで12週間保存した凍結乾燥AGS-22M6EのSE-HPLC分析の結果を示す。
図4】3.0mLおよび1.5mLの両方の充填容量でのF4の凍結乾燥製剤のSDS-PAGE分析の結果を示す。
図5A-1】191P4D12タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
図5A-2】191P4D12タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
図5B】Ha22-2(2.4)6.1の重鎖および軽鎖のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。
図5C】Ha22-2(2.4)6.1の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
5. 詳細な説明
本開示をさらに説明する前に、本開示は本明細書に記載される特定の態様に限定されないことが理解されるべきであり、また、本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的としており、限定することを意図しないことも理解されるべきである。
【0054】
5.1 定義
本明細書に記載または参照される技術および手順には、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3d ed.2001);Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.eds.,2003);Therapeutic Monoclonal Antibodies:From Bench to Clinic(An ed.2009);Monoclonal Antibodies:Methods and Protocols(Albitar ed.2010);およびAntibody Engineering Vols 1 and 2(Kontermann and Dubel eds.,2d ed.2010)に記載されている広く利用されている方法などの、当業者によって従来の方法論を使用して一般によく理解されているおよび/または一般に採用されているものが含まれる。
【0055】
本明細書で特に定義されない限り、本説明で使用される技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。本明細書を解釈する目的で、以下の用語の説明が適用され、必要に応じて、単数形で使用される用語は複数形も含み、その逆も同様である。記載される用語の説明が参照により本明細書に組み入れられる文書と矛盾する場合、以下に記載される用語の説明が優先されるものとする。
【0056】
「抗体」、「免疫グロブリン」または「Ig」という用語は、本明細書では互換的に使用され、最も広い意味で使用され、具体的には、例えば、以下に記載されるように、モノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、中和抗体、完全長または無傷のモノクローナル抗体を含む)、ポリエピトープ特異性またはモノエピトープ特異性を有する抗体組成物、ポリクローナル抗体または一価抗体、多価抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、所望の生物学的活性を示す限り、二重特異性抗体)、一本鎖抗体、およびそれらの断片を包含する。抗体は、ヒト、ヒト化、キメラおよび/または親和性成熟抗体、ならびに他の種、例えば、マウスおよびウサギ由来の抗体などであり得る。「抗体」という用語は、特定の分子抗原に結合することができ、ポリペプチド鎖の2つの同一の対から構成され、各対が1本の重鎖(約50~70kDa)と1本の軽鎖(約25kDa)とを有し、各鎖の各アミノ末端部分が約100個~約130個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含み、各鎖の各カルボキシ末端部分が定常領域を含む、免疫グロブリンクラスのポリペプチド内のB細胞のポリペプチド産物を含むことが意図されている。例えば、Antibody Engineering(Borrebaeck ed.,2d ed.1995);およびKuby,Immunology(3d ed.1997)を参照。具体的な態様では、特定の分子抗原は、ポリペプチドまたはエピトープを含む、本明細書で提供される抗体によって結合され得る。抗体には、合成抗体、組換え産生抗体、ラクダ化抗体、イントラボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、および上記のいずれかの機能的断片(例えば、抗原結合断片)も含まれるが、これらに限定されず、機能的断片とは、断片が由来する抗体の結合活性の一部または全部を保持する抗体の重鎖または軽鎖ポリペプチドの一部を指す。機能的断片(例えば、抗原結合断片)の非限定的な例としては、単鎖Fv(scFv)(例えば、単一特異性、二重特異性などを含む)、Fab断片、F(ab')断片、F(ab)2断片、F(ab')2断片、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、Fd断片、Fv断片、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、およびミニボディが挙げられる。特に、本明細書で提供される抗体は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、例えば、抗原結合ドメインまたは抗原に結合する抗原結合部位を含む分子(例えば、抗体の1つまたは複数のCDR)を含む。そのような抗体断片は、例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual(1989);Mol.Biology and Biotechnology:A Comprehensive Desk Reference(Myers ed.,1995);Huston et al.,1993,Cell Biophysics 22:189-224;Pluckthun and Skerra,1989,Meth.Enzymol.178:497-515;およびDay,Advanced Immunochemistry(2d ed.1990)に見出すことができる。本明細書で提供される抗体は、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、およびIgA)または任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)のものであり得る。抗体は、アゴニスト抗体またはアンタゴニスト抗体であり得る。
【0057】
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在し得る天然に存在する可能性のある変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一の抗原部位に向けられる。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むことができるポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に向けられる。
【0058】
「抗原」は、抗体が選択的に結合することができる構造体である。標的抗原は、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン、または他の天然または合成化合物であり得る。いくつかの態様では、標的抗原はポリペプチドである。特定の態様では、抗原は、細胞と会合し、例えば細胞上または細胞内、例えば癌細胞上または癌細胞内に存在する。
【0059】
「無傷の」抗体は、抗原結合部位ならびにCLならびに少なくとも重鎖定常領域、CH1、CH2およびCH3を含むものである。定常領域は、ヒト定常領域またはそのアミノ酸配列変異体を含み得る。特定の態様では、無傷の抗体は1つまたは複数のエフェクタ機能を有する。
【0060】
「抗原結合断片」、「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」という用語および同様の用語は、抗原と相互作用し、抗原に対する特異性および親和性を結合物質に付与するアミノ酸残基を含む抗体の部分(例えば、CDR)を指す。本明細書で使用される「抗原結合断片」には、無傷の抗体の一部、例えば、無傷の抗体の抗原結合領域または可変領域を含む「抗体断片」が含まれる。抗体断片の例としては、限定されることなく、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片;ダイアボディおよびジ-ダイアボディ(例えば、Holliger et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.90:6444-48;Lu et al.,2005,J.Biol.Chem.280:19665-72;Hudson et al.,2003,Nat.Med.9:129-34;国際公開公報第93/11161号;および米国特許第5,837,242号および同第6,492,123号を参照);一本鎖抗体分子(例えば、米国特許第4,946,778号;同第5,260,203号;同第5,482,858号;および同第5,476,786号を参照);二重可変ドメイン抗体(例えば、米国特許第7,612,181号を参照);単一可変ドメイン抗体(sdAb)(例えば、Woolven et al.,1999,Immunogenetics 50:98-101;およびStreltsov et al.,2004,Proc Natl Acad Sci USA.101:12444-49を参照);ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0061】
「結合する」または「結合すること」という用語は、例えば複合体を形成することを含む、分子間の相互作用を指す。相互作用は、例えば、水素結合相互作用、イオン結合相互作用、疎水性相互作用、および/またはファンデルワールス相互作用を含む非共有結合相互作用であり得る。複合体はまた、共有結合もしくは非共有結合、相互作用、または力によって一緒に保持された2つまたはそれ以上の分子の結合を含み得る。抗体上の単一の抗原結合部位と抗原などの標的分子の単一のエピトープとの間の全非共有結合相互作用の強度が、そのエピトープに対する抗体または機能的断片の親和性である。一価抗原に対する結合分子(例えば、抗体)の解離速度(koff)と会合速度(kon)の比(koff/kon)が解離定数KDであり、これは親和性に反比例する。KD値が低いほど、抗体の親和性が高い。KDの値は、抗体と抗原の異なる複合体で異なり、konとkoffの両方に依存する。本明細書で提供される抗体の解離定数KDは、本明細書で提供される任意の方法または当業者に周知の任意の他の方法を使用して決定することができる。1つの結合部位における親和性は、必ずしも抗体と抗原との間の相互作用の真の強度を反映するとは限らない。多価抗原などの複数の反復抗原決定基を含む複合抗原が、複数の結合部位を含む抗体と接触する場合、1つの部位での抗体と抗原との相互作用は、第2の部位での反応の確率を高める。多価抗体と抗原との間のそのような複数の相互作用の強度は、アビディティと呼ばれる。
【0062】
本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片に関連して、「に結合する」、「に特異的に結合する」などの用語および類似の用語もまた、本明細書では互換的に使用され、ポリペプチドなどの抗原に特異的に結合する抗原結合ドメインの結合分子を指す。抗原に結合するまたは抗原に特異的に結合する抗体または抗原結合断片は、関連する抗原と交差反応性であり得る。特定の態様では、抗原に結合するまたは抗原に特異的に結合する抗体または抗原結合断片は、他の抗原と交差反応しない。抗原に結合するまたは抗原に特異的に結合する抗体または抗原結合断片は、例えば、イムノアッセイ、Octet(登録商標)、Biacore(登録商標)、または当業者に公知の他の技術によって同定することができる。いくつかの態様では、抗体または抗原結合断片は、ラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの実験技術を使用して決定される任意の交差反応性抗原よりも高い親和性で抗原に結合する場合、抗原に結合するまたは抗原に特異的に結合する。典型的には、特異的または選択的な反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、バックグラウンドの10倍を上回る場合もある。結合特異性に関する考察については、例えば、Fundamental Immunology 332-36(Paul ed.,2d ed.1989)を参照。特定の態様では、「非標的」タンパク質への抗体または抗原結合断片の結合の程度は、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析またはRIAによって決定される場合、その特定の標的抗原への結合分子または抗原結合ドメインの結合の約10%未満である。「特異的結合」、「に特異的に結合する」、または「に特異的である」などの用語は、非特異的相互作用と測定可能な程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般に結合活性を有さない類似の構造の分子である対照分子の結合と比較して分子の結合を決定することによって測定することができる。例えば、特異的結合は、標的に類似する対照分子、例えば過剰の非標識標的との競合によって決定することができる。この場合、プローブへの標識標的の結合が過剰の非標識標的によって競合的に阻害される場合、特異的結合が示される。抗原に結合する抗体または抗原結合断片は、結合分子が、例えば抗原を標的とする際の診断薬として有用であるように、十分な親和性で抗原に結合することができるものを含む。特定の態様では、抗原に結合する抗体または抗原結合断片は、1000nM未満、800nM未満、500nM未満、250nM未満、100nM未満、50nM未満、10nM未満、5nM未満、4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、0.9nM未満、0.8nM未満、0.7nM未満、0.6nM未満、0.5nM未満、0.4nM未満、0.3nM未満、0.2nM未満、もしくは0.1nM未満、または1000nM、800nM、500nM、250nM、100nM、50nM、10nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、もしくは0.1nMの解離定数(KD)を有する。特定の態様では、抗体または抗原結合断片は、異なる種由来の抗原間で(例えば、ヒト種とカニクイザル種との間で)保存されている抗原のエピトープに結合する。
【0063】
「結合親和性」は、一般に、分子(例えば、抗体などの結合タンパク質)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の総和の強度を指す。特に指示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体および抗原)間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。結合分子Xのその結合パートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含む、当技術分野で公知の一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は、一般に抗原にゆっくりと結合し、容易に解離する傾向があるのに対し、高親和性抗体は、一般に抗原により速く結合し、より長く結合したままである傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当技術分野で公知であり、そのいずれもが本開示の目的のために使用できる。具体的な例示的態様は、以下を含む。一態様では、「KD」または「KD値」は、当技術分野で公知のアッセイ、例えば結合アッセイによって測定され得る。KDは、例えば、目的の抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて行われるRIAで測定され得る(Chen et al.,1999,J.Mol Biol 293:865-81)。KDまたはKD値はまた、例えばOctet(登録商標)QK384システムを使用するOctet(登録商標)による、または例えばBiacore(登録商標)TM-2000もしくはBiacore(登録商標)TM-3000を使用するBiacore(登録商標)による、バイオレイヤー干渉法(BLI)または表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイを使用することによって測定され得る。「オンレート」または「会合の速度」または「会合速度」または「kon」もまた、例えば、Octet(登録商標)QK384、Biacore(登録商標)TM-2000、またはBiacore(登録商標)TM-3000システムを使用して、上述したのと同じバイオレイヤー干渉法(BLI)または表面プラズモン共鳴(SPR)技術を用いて決定され得る。
【0064】
特定の態様では、抗体または抗原結合断片は、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であるが、鎖(1本または複数)の残りが、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である「キメラ」配列、ならびに、所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体の断片を含むことができる(米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al.,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-55を参照)。
【0065】
特定の態様では、抗体または抗原結合断片は、天然CDR残基が、所望の特異性、親和性および能力を含む、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長動物などの非ヒト種の対応するCDR(例えば、ドナー抗体)からの残基で置き換えられたヒト免疫グロブリン(例えば、レシピエント抗体)を含むキメラ抗体である非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態の部分を含むことができる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンの1つまたは複数のFR領域残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見られない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体性能をさらに洗練するために行われる。ヒト化抗体の重鎖または軽鎖は、少なくとも1つまたは複数の可変領域の実質的にすべてを含むことができ、CDRのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのCDRに対応し、FRのすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のFRである。特定の態様では、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部を含む。さらなる詳細については、Jones et al.,1986,Nature 321:522-25;Riechmann et al.,1988,Nature 332:323-29;Presta,1992,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-96;Carter et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285-89;米国特許第6,800,738号;同第6,719,971号;同第6,639,055号;同第6,407,213号;および同第6,054,297号を参照。
【0066】
特定の態様では、抗体または抗原結合断片は、「完全ヒト抗体」または「ヒト抗体」の一部を含むことができ、これらの用語は、本明細書では互換的に使用され、ヒト可変領域および、例えばヒト定常領域を含む抗体を指す。具体的な態様では、これらの用語は、ヒト起源の可変領域および定常領域を含む抗体を指す。「完全ヒト」抗体は、特定の態様では、ポリペプチドに結合し、ヒト生殖系列免疫グロブリン核酸配列の天然に存在する体細胞変異体である核酸配列によってコードされる抗体も包含し得る。「完全ヒト抗体」という用語は、Kabat et al.(Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242を参照)によって記載されているヒト生殖系列免疫グロブリン配列に対応する可変領域および定常領域を含む抗体を含む。「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するもの、および/またはヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して作製されたものである。ヒト抗体のこの定義は、具体的には、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ(Hoogenboom and Winter,1991,J.Mol.Biol.227:381;Marks et al.,1991,J.Mol.Biol.222:581)および酵母ディスプレイライブラリ(Chao et al.,2006,Nature Protocols 1:755-68)を含む、当技術分野で公知の様々な技術を使用して産生することができる。Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy 77(1985);Boerner et al.,1991,J.Immunol.147(1):86-95;およびvan Dijk and van de Winkel,2001,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74に記載されている方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してそのような抗体を産生するように改変されているが、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物、例えばマウスに抗原を投与することによって調製することができる(例えば、Jakobovits,1995,Curr.Opin.Biotechnol.6(5):561-66;Bruggemann and Taussing,1997,Curr.Opin.Biotechnol.8(4):455-58;およびXENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号および同第6,150,584号を参照)。また、例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体に関するLi et al.,2006,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:3557-62も参照のこと。
【0067】
特定の態様では、抗体または抗原結合断片は、「組換えヒト抗体」の一部を含むことができ、この語句は、組換え手段によって調製、発現、作製または単離されるヒト抗体、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離される抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックおよび/もしくはトランスクロモソーマルである動物(例えば、マウスもしくはウシ)から単離される抗体(例えば、Taylor,L.D.et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295を参照)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、作製もしくは単離される抗体を含む。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有することができる(Kabat,E.A.et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242を参照)。しかしながら、特定の態様では、そのような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックな動物を使用する場合、インビボ体細胞突然変異誘発)に供され、したがって、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列に由来し、それらに関連するが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリ内に天然には存在し得ない配列である。
【0068】
特定の態様では、抗体または抗原結合断片は、「モノクローナル抗体」の一部を含むことができ、本明細書で使用されるこの用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、集団を構成する個々の抗体は、少量存在し得る天然に存在する可能性のある変異を除いて同一であり、各モノクローナル抗体は、典型的には抗原上の単一のエピトープを認識する。具体的な態様では、本明細書で使用される「モノクローナル抗体」は、単一のハイブリドーマまたは他の細胞によって産生される抗体である。「モノクローナル」という用語は、抗体を作製するための特定の方法に限定されない。例えば、本開示において有用なモノクローナル抗体は、Kohler et al.,1975,Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって調製され得るか、または細菌もしくは真核動物もしくは植物細胞において組換えDNA法を使用して作製され得る(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al.,1991,Nature 352:624-28およびMarks et al.,1991,J.Mol.Biol.222:581-97に記載されている技術を使用して、ファージ抗体ライブラリから単離され得る。クローン細胞株およびそれによって発現されるモノクローナル抗体を調製するための他の方法は、当技術分野で周知である。例えば、Short Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.eds.,5th ed.2002)を参照。
【0069】
典型的な4鎖抗体単位は、2本の同一の軽(L)鎖と2本の同一の重(H)鎖で構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgGの場合、4鎖単位は一般に約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に連結され、2本のH鎖は、H鎖アイソタイプに応じて1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに連結される。各H鎖およびL鎖はまた、規則的な間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(VH)を有し、続いてα鎖およびγ鎖のそれぞれについて3つの定常ドメイン(CH)、μアイソタイプおよびεアイソタイプについて4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)を有し、続いて他方の末端に定常ドメイン(CL)を有する。VLはVHと整列し、CLは重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列する。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの接触面を形成すると考えられている。VHとVLとの対形成は、単一の抗原結合部位を形成する。様々なクラスの抗体の構造および特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology 71(Stites et al.eds.,8th ed.1994);およびImmunobiology(Janeway et al.eds.,5th ed.2001)を参照。
【0070】
「Fab」または「Fab領域」という用語は、抗原に結合する抗体領域を指す。従来のIgGは、通常、それぞれがY字型IgG構造の2つのアームの一方に存在する、2つのFab領域を含む。各Fab領域は、典型的には、重鎖および軽鎖のそれぞれの1つの可変領域と1つの定常領域で構成される。より具体的には、Fab領域における重鎖の可変領域および定常領域はVHおよびCH1領域であり、Fab領域における軽鎖の可変領域および定常領域はVLおよびCL領域である。Fab領域内のVH、CH1、VL、およびCLは、本開示による抗原結合能力を付与するために様々な方法で配置することができる。例えば、従来のIgGのFab領域と同様に、VHおよびCH1領域は1つのポリペプチド上にあり得、VLおよびCL領域は別個のポリペプチド上にあり得る。あるいは、VH、CH1、VLおよびCL領域はすべて同じポリペプチド上にあり得、以下のセクションでより詳細に説明するように異なる順序で配向され得る。
【0071】
「可変領域」、「可変ドメイン」、「V領域」または「Vドメイン」という用語は、一般に軽鎖または重鎖のアミノ末端に位置し、重鎖では約120アミノ酸~約130アミノ酸、軽鎖では約100アミノ酸~約110アミノ酸の長さを有し、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合および特異性に使用される、抗体の軽鎖または重鎖の一部を指す。重鎖の可変領域は、「VH」と称され得る。軽鎖の可変領域は、「VL」と称され得る。「可変」という用語は、可変領域の特定のセグメントが抗体間で配列が大きく異なるという事実を指す。V領域は、抗原結合を媒介し、特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を規定する。しかしながら、可変性は、可変領域の110アミノ酸スパンにわたって均一に分布していない。代わりに、V領域は、それぞれが約9~12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれるより大きな可変性(例えば、極端な可変性)のより短い領域によって分離された、約15アミノ酸~約30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれるより可変性の低い(例えば、比較的不変の)ストレッチからなる。重鎖および軽鎖の可変領域はそれぞれ、βシート構造を接続し、場合によってはβシート構造の一部を形成するループを形成する3つの超可変領域によって接続された、主にβシート形状を採用する4つのFRを含む。各鎖の超可変領域は、FRによって近接して一緒に保持され、他方の鎖の超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest(5th ed.1991)を参照)。定常領域は、抗原への抗体の結合には直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)への抗体の関与などの様々なエフェクタ機能を示す。可変領域は、異なる抗体間で配列が大きく異なる。具体的な態様では、可変領域はヒト可変領域である。
【0072】
「Kabatによる可変領域残基ナンバリング」または「Kabatにおけるようなアミノ酸位置ナンバリング」という用語、およびその変形は、Kabat et al.前出における抗体の編集物の重鎖可変領域または軽鎖可変領域に使用されるナンバリングシステムを指す。このナンバリングシステムを使用すると、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはCDRの短縮またはFRもしくはCDRへの挿入に対応するより少ないまたは追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、残基52の後に単一のアミノ酸挿入物(Kabatによる残基52a)および残基82の後に3つの挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82bおよび82cなど)を含み得る。残基のKabatナンバリングは、抗体の配列と「標準的な」Kabatナンバリング配列との相同性領域でのアラインメントによって、所与の抗体について決定され得る。Kabatナンバリングシステムは、一般に、可変ドメイン中の残基(およそ軽鎖の残基1~107および重鎖の残基1~113)を指す場合に使用される(例えば、Kabat et al.前出)。「EUナンバリングシステム」または「EUインデックス」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基を指す場合に使用される(例えば、Kabat et al.前出に報告されているEUインデックス)。「KabatにおけるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを指す。他のナンバリングシステムは、例えば、AbM、Chothia、Contact、IMGT、およびAHonによって記載されている。
【0073】
「重鎖」という用語は、抗体に関して使用される場合、約50~70kDaのポリペプチド鎖を指し、アミノ末端部分は約120~130個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分は定常領域を含む。定常領域は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいて、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)、およびミュー(μ)と称される5つの異なるタイプ(例えば、アイソタイプ)のうちの1つであり得る。異なる重鎖はサイズが異なり、α、δおよびγは約450個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を含む。軽鎖と組み合わせると、これらの異なるタイプの重鎖は、IgGの4つのサブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む、それぞれ5つの周知のクラス(例えば、アイソタイプ)の抗体、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMを生じる。
【0074】
「軽鎖」という用語は、抗体に関して使用される場合、約25kDaのポリペプチド鎖を指し、アミノ末端部分は約100個~約110個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分は定常領域を含む。軽鎖のおおよその長さは、211アミノ酸~217アミノ酸である。定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)またはラムダ(λ)と称される2つの異なるタイプがある。
【0075】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」、「HVR」、「相補性決定領域」、および「CDR」という用語は互換的に使用される。「CDR」は、免疫グロブリン(Igまたは抗体)VH βシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(H1、H2もしくはH3)のうちの1つ、または抗体VL βシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(L1、L2またはL3)のうちの1つを指す。したがって、CDRは、フレームワーク領域配列内に散在する可変領域配列である。
【0076】
CDR領域は当業者に周知であり、周知のナンバリングシステムによって定義されている。例えば、Kabat相補性決定領域(CDR)は配列の可変性に基づいており、最も一般的に使用される(例えば、Kabat et al.前出を参照)。代わりに、Chothiaは構造ループの位置を指す(例えば、Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-17を参照)。Kabatのナンバリング規則を使用して番号付けした場合のChothia CDR-H1ループの末端は、ループの長さに応じてH32とH34の間で異なる(これは、KabatナンバリングスキームがH35AおよびH35Bに挿入を配置するためであり;35Aも35Bも存在しない場合、ループは32で終了し;35Aのみが存在する場合、ループは33で終了し;35Aと35Bの両方が存在する場合、ループは34で終了する)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループとの間の妥協点を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用される(例えば、Antibody Engineering Vol.2(Kontermann and Dubel eds.,2d ed.2010)を参照)。「接触」超可変領域は、利用可能な複雑な結晶構造の分析に基づいている。開発され、広く採用されている別のユニバーサルナンバリングシステムは、ImMunoGeneTics(IMGT)Information System(登録商標)(Lafranc et al.,2003,Dev.Comp.Immunol.27(1):55-77)である。IMGTは、ヒトおよび他の脊椎動物の免疫グロブリン(IG)、T細胞受容体(TCR)、および主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に特化した統合情報システムである。本明細書では、CDRは、アミノ酸配列および軽鎖または重鎖内の位置の両方に関して言及される。免疫グロブリン可変ドメインの構造内のCDRの「位置」は種間で保存され、ループと呼ばれる構造内に存在するので、構造的特徴に従って可変ドメイン配列を整列させるナンバリングシステムを使用することによって、CDRおよびフレームワーク残基が容易に同定される。この情報は、1つの種の免疫グロブリンからのCDR残基を、典型的にはヒト抗体からのアクセプタフレームワークに移植および置換する際に使用することができる。さらなるナンバリングシステム(AHon)が、Honegger and Pluckthun,2001,J.Mol.Biol.309:657-70によって開発されている。例えば、KabatナンバリングおよびIMGT固有のナンバリングシステムを含むナンバリングシステム間の対応は、当業者に周知である(例えば、Kabat前出;Chothia and Lesk,前出;Martin,前出;Lefranc et al.前出を参照)。これらの超可変領域またはCDRのそれぞれからの残基を以下に示す。
【0077】
(表30)
【0078】
所与のCDRの境界は、同定のために使用されるスキームによって異なり得る。したがって、特に指定されない限り、所与の抗体またはその領域、例えば可変領域の「CDR」および「相補性決定領域」という用語、ならびに抗体またはその領域の個々のCDR(例えば、「CDR-H1、CDR-H2)は、本明細書中上記に記載される公知のスキームのいずれかによって定義される相補性決定領域を包含すると理解されるべきである。場合によっては、Kabat、Chothia、またはContact法によって定義されるCDRなどの、特定の1つまたは複数のCDRを同定するためのスキームが指定される。他の場合には、CDRの特定のアミノ酸配列が与えられる。
【0079】
超可変領域は、以下のような「拡張超可変領域」を含み得る:VLにおける24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)、および89~97または89~96(L3)、ならびにVHにおける26~35または26~35A(H1)、50~65または49~65(H2)、および93~102、94~102、または95~102(H3)。
【0080】
「定常領域」または「定常ドメイン」という用語は、抗原への抗体の結合には直接関与しないが、Fc受容体との相互作用などの様々なエフェクタ機能を示す軽鎖および重鎖のカルボキシ末端部分を指す。この用語は、抗原結合部位を含む免疫グロブリンの他の部分、可変領域と比較してより保存されたアミノ酸配列を含む免疫グロブリン分子の部分を指す。定常領域は、重鎖のCH1、CH2、およびCH3領域ならびに軽鎖のCL領域を含み得る。
【0081】
「フレームワーク」または「FR」という用語は、CDRに隣接する可変領域残基を指す。FR残基は、例えば、キメラ、ヒト化、ヒト、ドメイン抗体、ダイアボディ、直鎖抗体、および二重特異性抗体に存在する。FR残基は、超可変領域残基またはCDR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0082】
本明細書における「Fc領域」という用語は、例えば、天然配列Fc領域、組換えFc領域、および変異体Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、多くの場合、Cys226位のアミノ酸残基またはPro230位のアミノ酸残基からそのカルボキシル末端までに及ぶと定義される。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステムによる残基447)は、例えば、抗体の産生もしくは精製中に、または抗体の重鎖をコードする核酸を組換え操作することによって除去し得る。したがって、無傷の抗体の組成物は、すべてのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、およびK447残基を有する抗体と有さない抗体の混合物を含む抗体集団を含み得る。「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクタ機能」を有する。例示的な「エフェクタ機能」には、C1q結合;CDC;Fc受容体結合;ADCC;食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御などが含まれる。そのようなエフェクタ機能は、一般に、Fc領域が結合領域または結合ドメイン(例えば、抗体可変領域または抗体可変ドメイン)と組み合わされることを必要とし、当業者に公知の様々なアッセイを使用して評価することができる。「変異体Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾(例えば、置換、付加、または欠失)によって天然配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。特定の態様では、変異体Fc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域中に約1個~約10個のアミノ酸置換、または約1個~約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書における変異体Fc領域は、天然配列Fc領域および/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、またはそれらと少なくとも約90%の相同性、例えば、それらと少なくとも約95%の相同性を有し得る。
【0083】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」は当技術分野の用語であり、結合分子(例えば、抗体)が特異的に結合することができる抗原の局所領域を指す。エピトープは、線状エピトープ、立体配座エピトープ、非線状エピトープ、または不連続エピトープであり得る。ポリペプチド抗原の場合、例えば、エピトープは、ポリペプチドの連続するアミノ酸であり得るか(「線状」エピトープ)、またはエピトープは、ポリペプチドの2つまたはそれ以上の不連続な領域由来のアミノ酸を含み得る(「立体配座」、「非線状」または「不連続」エピトープ)。一般に、線状エピトープは、二次、三次、または四次構造に依存しても依存しなくてもよいことが当業者には理解されるであろう。例えば、いくつかの態様では、結合分子は、天然の三次元タンパク質構造に折り畳まれているかどうかにかかわらず、アミノ酸の群に結合する。他の態様では、結合分子は、エピトープを認識して結合するために、特定の立体配座(例えば、屈曲、ねじれ、回転、または折り畳み)を示すようにエピトープを構成するアミノ酸残基を必要とする。
【0084】
「ポリペプチド」および「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは直鎖または分岐鎖であり得、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されてもよい。この用語はまた、天然にまたは介入によって、例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾によって修飾されたアミノ酸ポリマーを包含する。非天然アミノ酸を含むがこれらに限定されるわけではないアミノ酸の1つまたは複数の類似体、ならびに当技術分野で公知の他の修飾を含むポリペプチドも定義に含まれる。本開示のポリペプチドは、抗体または免疫グロブリンスーパーファミリーの他のメンバーに基づき得るので、特定の態様では、「ポリペプチド」は、一本鎖として、または2つもしくはそれ以上の関連鎖として存在することができることが理解される。
【0085】
「ベクター」という用語は、核酸配列を宿主細胞に導入するために、例えば、本明細書に記載される結合分子(例えば、抗体)をコードする核酸配列を含む、核酸配列を担持または含有するために使用される物質を指す。使用に適用可能なベクターとしては、例えば、発現ベクター、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター、エピソーム、および人工染色体が挙げられ、これらは、宿主細胞の染色体への安定な組み込みのために操作可能な選択配列またはマーカを含むことができる。さらに、ベクターは、1つまたは複数の選択マーカ遺伝子および適切な発現制御配列を含むことができる。含めることができる選択マーカ遺伝子は、例えば、抗生物質もしくは毒素に対する耐性を提供し、栄養要求性欠損を補完し、または培養培地中にはない重要な栄養素を供給する。発現制御配列は、当技術分野で周知の構成的プロモータおよび誘導性プロモータ、転写エンハンサ、転写ターミネータなどを含み得る。2つまたはそれ以上の核酸分子を同時発現させる場合(例えば、抗体の重鎖と軽鎖の両方、または抗体のVHとVL)、両方の核酸分子を、例えば、単一の発現ベクターまたは別々の発現ベクターに挿入することができる。単一ベクター発現の場合、コード核酸を、1つの共通の発現制御配列に機能的に連結し得るか、または1つの誘導性プロモータおよび1つの構成的プロモータなどの異なる発現制御配列に連結し得る。核酸分子の宿主細胞への導入は、当技術分野で周知の方法を用いて確認することができる。そのような方法には、例えば、mRNAのノーザンブロットまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などの核酸分析、遺伝子産物の発現についてのイムノブロッティング、または導入された核酸配列もしくはその対応する遺伝子産物の発現を試験するための他の適切な分析方法が含まれる。核酸分子は、所望の産物を生成するのに十分な量で発現されることが当業者によって理解され、当技術分野で周知の方法を使用して十分な発現を得るために発現レベルを最適化できることがさらに理解される。
【0086】
本明細書で使用される「宿主」という用語は、哺乳動物(例えば、ヒト)などの動物を指す。
【0087】
本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、核酸分子でトランスフェクトされ得る特定の対象細胞およびそのような細胞の子孫または潜在的な子孫を指す。そのような細胞の子孫は、後続の世代で起こり得る突然変異もしくは環境の影響、または核酸分子の宿主細胞ゲノムへの組み込みのために、核酸分子でトランスフェクトされた親細胞と同一ではない場合がある。
【0088】
「単離された核酸」は、天然配列に天然に付随する他のゲノムDNA配列ならびにリボソームおよびポリメラーゼなどのタンパク質または複合体から実質的に分離されている核酸、例えば、RNA、DNA、または混合核酸である。「単離された」核酸分子は、核酸分子の天然源に存在する他の核酸分子から分離されている核酸分子である。さらに、cDNA分子などの「単離された」核酸分子は、組換え技術によって産生される場合、他の細胞物質もしくは培養培地を実質的に含まない、または化学合成される場合、化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まないものであり得る。具体的な態様では、本明細書に記載の抗体をコードする1つまたは複数の核酸分子を単離または精製する。この用語は、天然に存在する環境から取り出された核酸配列を包含し、組換えまたはクローニングされたDNA単離物および化学合成された類似体または異種系によって生物学的に合成された類似体を含む。実質的に純粋な分子は、分子の単離された形態を含み得る。
【0089】
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、および/またはそれらの類似体、あるいはDNAもしくはRNAポリメラーゼによって、または合成反応によってポリマーに組み込むことができる任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」は、一般に約200ヌクレオチド未満の長さであるが必ずしもそうとは限らない、短い、一般に一本鎖の合成ポリヌクレオチドを指す。「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語は互いに排他的ではない。ポリヌクレオチドについての上記の説明は、オリゴヌクレオチドにも等しくおよび完全に適用可能である。本開示の結合分子を産生する細胞には、親ハイブリドーマ細胞、ならびに抗体をコードする核酸が導入された細菌および真核宿主細胞が含まれ得る。特に指定されない限り、本明細書に開示される任意の一本鎖ポリヌクレオチド配列の左端は5'末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左方向は5'方向と称される。新生RNA転写物の5'から3'への付加の方向は転写方向と称され、RNA転写物の5'末端の5'側にあるRNA転写物と同じ配列を含むDNA鎖上の配列領域は「上流配列」と称され、RNA転写物の3'末端の3'側にあるRNA転写物と同じ配列を含むDNA鎖上の配列領域は「下流配列」と称される。
【0090】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、連邦もしくは州政府の規制機関によって承認されていること、または動物、より具体的にはヒトでの使用について米国薬局方欧州薬局方、もしくは他の一般に認められている薬局方に記載されていることを意味する。
【0091】
「賦形剤」は、液体または固体の充填剤、希釈剤、溶媒、または封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを意味する。賦形剤には、例えば、吸収促進剤、酸化防止剤、結合剤、緩衝剤、担体、コーティング剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、増量剤、充填剤、香味剤、保湿剤、潤滑剤、香料、防腐剤、噴射剤、放出剤、滅菌剤、甘味料、可溶化剤、湿潤剤およびそれらの混合物などの封入材料または添加剤が含まれる。「賦形剤」という用語は、希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全もしくは不完全)またはビヒクルを指すこともできる。
【0092】
いくつかの態様では、賦形剤は、薬学的に許容される賦形剤である。薬学的に許容される賦形剤の例としては、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(例えば、約10アミノ酸残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;l-ヒスチジン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、スクロース、トレハロース二水和物、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;ならびに/またはTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(商標)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。薬学的に許容される賦形剤の他の例は、Remington and Gennaro,Remington's Pharmaceutical Sciences(18th ed.1990)に記載されている。
【0093】
一態様では、各成分は、薬学的製剤の他の成分と適合性であり、合理的な利益/リスク比に見合って、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、または他の問題もしくは合併症なしにヒトおよび動物の組織または器官と接触して使用するのに適しているという意味で「薬学的に許容される」。例えば、Lippincott Williams&Wilkins:Philadelphia,PA,2005;Handbook of Pharmaceutical Excipients,6th ed.;Rowe et al.,Eds.;The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association:2009;Handbook of Pharmaceutical Additives,3rd ed.;Ash and Ash Eds.;Gower Publishing Company:2007;Pharmaceutical Preformulation and Formulation,2nd ed.;Gibson Ed.;CRC Press LLC:Boca Raton,FL,2009を参照。いくつかの態様では、薬学的に許容される賦形剤は、使用される投与量および濃度で、それに曝露される細胞または哺乳動物に対して非毒性である。いくつかの態様では、薬学的に許容される賦形剤は、pH緩衝水溶液である。
【0094】
いくつかの態様では、賦形剤は、滅菌液体、例えば水、ならびに石油、動物、植物または合成起源のものを含む油、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などである。水は、組成物(例えば、薬学的組成物)を静脈内投与する場合の例示的な賦形剤である。生理食塩水ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液もまた、特に注射用溶液のための液体賦形剤として使用することができる。賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなども含まれ得る。組成物は、所望する場合、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含むことができる。組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、持続放出製剤などの形態をとることができる。
【0095】
薬学的化合物を含む組成物は、適切な量の賦形剤と共に、例えば単離または精製された形態の結合分子(例えば、抗体)を含み得る。
【0096】
「MMAE」という略語は、モノメチルアウリスタチンEを指す。
【0097】
特に明記されない限り、「アルキル」という用語は、約1個~約20個の炭素原子(ならびにその中の範囲および特定の数の炭素原子のすべての組合せおよび部分的組合せ)を含む飽和直鎖または分岐鎖炭化水素を指し、約1個~約8個の炭素原子が好ましい。アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、2-メチル-2-ブチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、3-メチル-2-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-1-ブチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、および3,3-ジメチル-2-ブチルである。アルキル基は、単独でまたは別の基の一部としてのいずれでも、-ハロゲン、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C 8アルキニル)、-アリール、-C(O)R'、-OC(O)R'、-C(O)OR'、-C(O)NH2、-C(O)NHR'、-C(O)N(R')2、-NHC(O)R'、-SR'、-SO3R'、-S(O)2R'、-S(O)R'、-OH、=O、-N3、-NH2、-NH(R')、-N(R')2および-CNを含むが、これらに限定されるわけではない1個または複数の基、好ましくは1個~3個の基(およびハロゲンから選択される任意のさらなる置換基)で置換されていてもよく、ここで、各R'は、-H、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、または-アリールから独立して選択され、前記-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C8アルキニル)、-アリール、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、および-C2~C8アルキニル基は、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、-ハロゲン、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C8アルキニル)、-アリール、-C(O)R''、-OC(O)R''、-C(O)OR''、-C(O)NH2、-C(O)NHR''、-C(O)N(R'')2、-NHC(O)R''、-SR''、-SO3R''、-S(O)2R''、-S(O)R''、-OH、-N3、-NH2、-NH(R'')、-N(R'')2および-CNを含むが、これらに限定されるわけではない1個または複数の基でさらに置換されていてもよく、ここで、各R''は、-H、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、または-アリールから独立して選択される。
【0098】
特に明記されない限り、「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、約2個~約20個の炭素原子(ならびにその中の範囲および特定の数の炭素原子のすべての組合せおよび部分的組合せ)を含む直鎖および分岐炭素鎖を指し、約2個~約8個の炭素原子が好ましい。アルケニル鎖は、鎖中に少なくとも1つの二重結合を有し、アルキニル鎖は、鎖中に少なくとも1つの三重結合を有する。アルケニル基の例としては、エチレンまたはビニル、アリル、-1-ブテニル、-2-ブテニル、-イソブチレニル、-1-ペンテニル、-2-ペンテニル、-3-メチル-1-ブテニル、-2-メチル-2-ブテニル、および-2,3-ジメチル-2-ブテニルが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。アルキニル基の例としては、アセチレン、プロパルギル、アセチレニル、プロピニル、-1-ブチニル、-2-ブチニル、-1-ペンチニル、-2-ペンチニルおよび-3-メチル-1ブチニルが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。アルケニル基およびアルキニル基は、単独でまたは別の基の一部としてのいずれでも、-ハロゲン、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C 8アルキニル)、-アリール、-C(O)R'、-OC(O)R'、-C(O)OR'、-C(O)NH2、-C(O)NHR'、-C(O)N(R')2、-NHC(O)R'、-SR'、-SO3R'、-S(O)2R'、-S(O)R'、-OH、=O、-N3、-NH2、-NH(R')、-N(R')2および-CNを含むが、これらに限定されるわけではない1個または複数の基、好ましくは1個~3個の基(およびハロゲンから選択される任意のさらなる置換基)で置換されていてもよく、ここで、各R'は、-H、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、または-アリールから独立して選択され、前記-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C8アルキニル)、-アリール、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、および-C2~C8アルキニル基は、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、-ハロゲン、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2C8アルキニル)、-アリール、-C(O)R''、-OC(O)R''、-C(O)OR''、-C(O)NH2、-C(O)NHR''、-C(O)N(R'')2、-NHC(O)R''、-SR''、-SO3R''、-S(O)2R''、-S(O)R''、-OH、-N3、-NH2、-NH(R'')、-N(R'')2および-CNを含むが、これらに限定されるわけではない1個または複数の置換基でさらに置換されていてもよく、ここで、各R''は、-H、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、または-アリールから独立して選択される。
【0099】
特に明記されない限り、「アルキレン」という用語は、約1~約20個の炭素原子(ならびにその中の範囲および特定の数の炭素原子のすべての組合せおよび部分的組合せ)を含む飽和分岐鎖または直鎖炭化水素ラジカルを指し、約1個~約8個の炭素原子が好ましく、親アルカンの同じまたは2個の異なる炭素原子から2個の水素原子を除去することによって誘導される2つの一価ラジカル中心を有する。典型的なアルキレンには、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デカレン、1,4-シクロヘキシレンなどが含まれるが、これらに限定されるわけではない。アルキレン基は、単独でまたは別の基の一部としてのいずれでも、-ハロゲン、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C 8アルキニル)、-アリール、-C(O)R'、-OC(O)R'、-C(O)OR'、-C(O)NH2、-C(O)NHR'、-C(O)N(R')2、-NHC(O)R'、-SR'、-SO3R'、-S(O)2R'、-S(O)R'、-OH、=O、-N3、-NH2、-NH(R')、-N(R')2および-CNを含むが、これらに限定されるわけではない1個または複数の基、好ましくは1個~3個の基(およびハロゲンから選択される任意のさらなる置換基)で置換されていてもよく、ここで、各R'は、-H、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、または-アリールから独立して選択され、前記-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C8アルキニル)、-アリール、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、および-C2~C8アルキニル基は、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、-ハロゲン、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C8アルキニル)、-アリール、-C(O)R''、-OC(O)R''、-C(O)OR''、-C(O)NH2、-C(O)NHR''、-C(O)N(R'')2、-NHC(O)R''、-SR''、-SO3R''、-S(O)2R''、-S(O)R''、-OH、-N3、-NH2、-NH(R'')、-N(R'')2および-CNを含むが、これらに限定されるわけではない1個または複数の置換基でさらに置換されていてもよく、ここで、各R''は、-H、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、または-アリールから独立して選択される。
【0100】
特に明記されない限り、「アルケニレン」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む、置換されていてもよいアルキレン基を指す。例示的なアルケニレン基としては、例えば、エテニレン(-CH=CH-)およびプロペニレン(-CH=CHCH2-)が挙げられる。
【0101】
特に明記されない限り、「アルキニレン」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む、置換されていてもよいアルキレン基を指す。例示的なアルキニレン基としては、例えば、アセチレン(-C≡C-)、プロパルギル(-CH2C≡C-)、および4-ペンチニル(-CH2CH2CH2C≡CH-)が挙げられる。
【0102】
特に明記されない限り、「アリール」という用語は、親芳香環系の1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導される6個~20個の炭素原子(ならびにその中の範囲および特定の数の炭素原子のすべての組合せおよび部分的組合せ)の一価芳香族炭化水素ラジカルを指す。いくつかのアリール基は、例示的な構造において「Ar」として表される。典型的なアリール基には、ベンゼン、置換ベンゼン、フェニル、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどから誘導されるラジカルが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0103】
アリール基は、単独でまたは別の基の一部としてのいずれでも、-ハロゲン、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C 8アルキニル)、-アリール、-C(O)R'、-OC(O)R'、-C(O)OR'、-C(O)NH2、-C(O)NHR'、-C(O)N(R')2、-NHC(O)R'、-SR'、-SO3R'、-S(O)2R'、-S(O)R'、-OH、-NO2、-N3、-NH2、-NH(R')、-N(R')2および-CNを含むが、これらに限定されるわけではない1個または複数、好ましくは1個~5個、さらには1個~2個の基で置換されていてもよく、ここで、各R'は、-H、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、または-アリールから独立して選択され、前記-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C 8アルキニル)、および-アリール基は、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、-ハロゲン、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C8アルキニル)、-アリール、-C(O)R''、-OC(O)R''、-C(O)OR''、-C(O)NH2、-C(O)NHR''、-C(O)N(R'')2、-NHC(O)R''、-SR''、-SO3R''、-S(O)2R''、-S(O)R''、-OH、-N3、-NH2、-NH(R'')、-N(R'')2および-CNを含むが、これらに限定されるわけではない1個または複数の置換基でさらに置換されていてもよく、ここで、各R''は、-H、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、または-アリールから独立して選択される。
【0104】
特に明記されない限り、「アリーレン」という用語は、二価(すなわち、親芳香環系の同じまたは2個の異なる炭素原子から2個の水素原子を除去することによって誘導される)である、置換されていてもよいアリール基を指し、例示的なアリール基としてフェニルを有する以下の構造に示されるようにオルト、メタ、またはパラ配置であり得る。
典型的な「-(C1~C8アルキレン)アリール」、「-(C2~C8アルケニレン)アリール」、「および-(C2~C8アルキニレン)アリール」基には、ベンジル、2-フェニルエタン-1-イル、2-フェニルエテン-1-イル、ナフチルメチル、2-ナフチルエタン-1-イル、2-ナフチルエテン-1-イル、ナフトベンジル、2-ナフトフェニルエタン-1-イルなどが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0105】
特に明記されない限り、「複素環」という用語は、3個~14個の環原子(環員とも称される)を有する単環式、二環式、または多環式環系を指し、少なくとも1つの環の少なくとも1つの環原子は、N、O、P、またはSから選択されるヘテロ原子(ならびにその中の範囲および特定の数の炭素原子およびヘテロ原子のすべての組合せおよび部分的組合せ)である。複素環は、N、O、P、またはSから独立して選択される1個~4個の環ヘテロ原子を有することができる。複素環中の1個または複数のN、C、またはS原子は酸化され得る。単環式複素環は、好ましくは3個~7個の環員(例えば、2個~6個の炭素原子およびN、O、P、またはSから独立して選択される1個~3個のヘテロ原子)を有し、二環式複素環は、好ましくは5個~10個の環員(例えば、4個~9個の炭素原子およびN、O、P、またはSから独立して選択される1個~3個のヘテロ原子)を有する。ヘテロ原子を含む環は、芳香族または非芳香族であり得る。特に明記されない限り、複素環は、安定な構造をもたらす任意のヘテロ原子または炭素原子でそのペンダント基に結合している。複素環は、Paquette,"Principles of Modern Heterocyclic Chemistry"(W.A.Benjamin,New York,1968)、特に第1、3、4、6、7、および9章;"The Chemistry of Heterocyclic Compounds,A series of Monographs"(John Wiley&Sons,New York,1950~現在)、特に第13、14、16、19、および28巻;ならびにJ.Am.Chem.Soc.82:5566(1960)に記載されている。「複素環」基の例には、例として、限定されることなく、ピリジル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、チアゾリル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアナフタレニル、インドリル、インドレニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ピペリジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、2-ピロリドニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、ビス-テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ビス-テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H-1,2,5-チアジアジニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、チエニル、チアントレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチニル、2H-ピロリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H-インドリル、1H-インダゾリル、プリニル、4H-キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、4H-カルバゾリル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、オキシインドリル、ベンゾオキサゾリニル、およびイサチノイルが含まれる。好ましい「複素環」基には、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、ベンゾピラゾリル、クマリニル、イソキノリニル、ピロリル、チオフェニル、フラニル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、キノリニル、ピリミジニル、ピリジニル、ピリドニル、ピラジニル、ピリダジニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリルおよびテトラゾリルが含まれるが、これらに限定されるわけではない。複素環基は、単独でまたは別の基の一部としてのいずれでも、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、-ハロゲン、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C 8アルキニル)、-アリール、-C(O)R'、-OC(O)R'、-C(O)OR'、-C(O)NH2、-C(O)NHR'、-C(O)N(R')2、-NHC(O)R'、-SR'、-SO3R'、-S(O)2R'、-S(O)R'、-OH、-N3、-NH2、-NH(R')、-N(R')2および-CNを含むが、これらに限定されるわけではない1個または複数の基、好ましくは1個~2個の基で置換されていてもよく、ここで、各R'は、-H、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、または-アリールから独立して選択され、前記-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C 8アルキニル)、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、および-アリール基は、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、-ハロゲン、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C8アルキニル)、-アリール、-C(O)R''、-OC(O)R''、-C(O)OR''、-C(O)NH2、-C(O)NHR''、-C(O)N(R'')2、-NHC(O)R''、-SR''、-SO3R''、-S(O)2R''、-S(O)R''、-OH、-N3、-NH2、-NH(R'')、-N(R'')2および-CNを含むが、これらに限定されるわけではない1個または複数の置換基でさらに置換されていてもよく、ここで、各R''は、-H、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、またはアリールから独立して選択される。
【0106】
限定ではなく例として、炭素結合複素環は、以下の位置:ピリジンの2位、3位、4位、5位もしくは6位;ピリダジンの3位、4位、5位もしくは6位;ピリミジンの2位、4位、5位もしくは6位;ピラジンの2位、3位、5位もしくは6位;フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロールもしくはテトラヒドロピロールの2位、3位、4位もしくは5位;オキサゾール、イミダゾールもしくはチアゾールの2位、4位もしくは5位;イソオキサゾール、ピラゾールもしくはイソチアゾールの3位、4位もしくは5位;アジリジンの2位もしくは3位;アゼチジンの2位、3位もしくは4位;キノリンの2位、3位、4位、5位、6位、7位もしくは8位;またはイソキノリンの1位、3位、4位、5位、6位、7位、もしくは8位で結合することができる。さらにより典型的には、炭素結合複素環には、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、5-ピリジル、6-ピリジル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、5-ピリダジニル、6-ピリダジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、6-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-ピラジニル、5-ピラジニル、6-ピラジニル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、または5-チアゾリルが含まれる。
【0107】
限定ではなく例として、窒素結合複素環は、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2-ピロリン、3-ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2-イミダゾリン、3-イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2-ピラゾリン、3-ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、または1H-インダゾールの1位;イソインドールまたはイソインドリンの2位;モルホリンの4位;およびカルバゾールまたはβ-カルボリンの9位で結合することができる。さらにより典型的には、窒素結合複素環には、1-アジリジル、1-アゼテジル、1-ピロリル、1-イミダゾリル、1-ピラゾリル、および1-ピペリジニルが含まれる。
【0108】
特に明記されない限り、「炭素環」という用語は、3個~14個の環原子を有する飽和または不飽和の非芳香族単環式、二環式、または多環式環系(ならびにその中の範囲および特定の数の炭素原子のすべての組合せおよび部分的組合せ)を指し、すべての環原子は炭素原子である。単環式炭素環は、好ましくは3個~6個の環原子、さらにより好ましくは5個または6個の環原子を有する。二環式炭素環は、好ましくは、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]もしくは[6,6]系として配置された7個~12個の環原子、またはビシクロ[5,6]もしくは[6,6]系として配置された9個もしくは10個の環原子を有する。「炭素環」という用語は、例えば、アリール環に縮合した単環式炭素環(例えば、ベンゼン環に縮合した単環式炭素環)を含む。炭素環は、好ましくは3個~8個の炭素環原子を有する。炭素環基は、単独でまたは別の基の一部としてのいずれでも、例えば、-ハロゲン、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C 8アルキニル)、-アリール、-C(O)R'、-OC(O)R'、-C(O)OR'、-C(O)NH2、-C(O)NHR'、-C(O)N(R')2、-NHC(O)R'、-SR'、-SO3R'、-S(O)2R'、-S(O)R'、-OH、=O、-N3、-NH2、-NH(R')、-N(R')2および-CNを含むが、これらに限定されるわけではない1個または複数の基、好ましくは1個または2個の基(およびハロゲンから選択される任意のさらなる置換基)で置換されていてもよく、ここで、各R'は、-H、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、または-アリールから独立して選択され、前記-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C8アルキニル)、および-アリール基は、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、-ハロゲン、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C2~C8アルケニル)、-O-(C2~C8アルキニル)、-アリール、-C(O)R''、-OC(O)R''、-C(O)OR''、-C(O)NH2、-C(O)NHR''、-C(O)N(R'')2、-NHC(O)R''、-SR''、-SO3R''、-S(O)2R''、-S(O)R''、-OH、-N3、-NH2、-NH(R'')、-N(R'')2および-CNを含むが、これらに限定されるわけではない1個または複数の置換基でさらに置換されていてもよく、ここで、各R''は、-H、-C1~C8アルキル、-C2~C8アルケニル、-C2~C8アルキニル、または-アリールから独立して選択される。
【0109】
単環式炭素環式置換基の例としては、-シクロプロピル、-シクロブチル、-シクロペンチル、-1-シクロペンタ-1-エニル、-1-シクロペント-2-エニル、-1-シクロペント-3-エニル、シクロヘキシル、-1-シクロヘキス-1-エニル、-1-シクロヘキス-2-エニル、-1-シクロヘキス-3-エニル、-シクロヘプチル、-シクロオクチル、-1,3-シクロヘキサジエニル、-1,4-シクロヘキサジエニル、-1,3-シクロヘプタジエニル、-1,3,5-シクロヘプタトリエニル、および-シクロオクタジエニルが挙げられる。
【0110】
「カルボシクロ」は、単独で使用されるか別の基の一部として使用されるかにかかわらず、二価(すなわち、親炭素環系の同じまたは2個の異なる炭素原子から2個の水素原子を除去することによって誘導される)である、上記で定義された置換されていてもよい炭素環基を指す。
【0111】
文脈上特に指示されない限り、ハイフン(-)はペンダント分子への結合点を指定する。したがって、「-(C1~C8アルキレン)アリール」または「-C1~C8アルキレン(アリール)」という用語は、本明細書で定義されるC1~C8アルキレンラジカルを指し、アルキレンラジカルは、アルキレンラジカルの炭素原子のいずれかでペンダント分子に結合しており、アルキレンラジカルの炭素原子に結合した水素原子の1つは、本明細書で定義されるアリールラジカルで置き換えられている。
【0112】
特定の基が「置換されて」いる場合、その基は、置換基のリストから独立して選択される1個または複数の置換基、好ましくは1個~5個の置換基、より好ましくは1個~3個の置換基、最も好ましくは1個~2個の置換基を有し得る。しかしながら、基は、一般に、ハロゲンから選択される任意の数の置換基を有することができる。置換されている複数の基もそのように示される。分子内の特定の位置における任意の置換基または変数の定義は、その分子内の他の場所におけるその定義とは無関係であることが意図されている。本発明の化合物上の置換基および置換パターンは、化学的に安定であり、当技術分野で公知の技術および本明細書に記載の方法によって容易に合成することができる化合物を提供するために、当業者によって選択され得ることが理解される。
【0113】
本明細書で使用される保護基は、多官能性化合物中の1つの反応部位を一時的または永続的に、選択的にブロックする基を指す。本発明で使用するための適切なヒドロキシ保護基は、薬学的に許容され、化合物が活性であるために、対象への投与後に親化合物から切断される必要があってもよくまたは必要がなくてもよい。切断は、体内の正常な代謝過程によるものである。ヒドロキシ保護基は当技術分野で周知であり、その全体がすべての目的のために参照により本明細書に組み入れられる、Protective Groups in Organic Synthesis by T.W.Greene and P.G.M.Wuts(John Wiley&sons,3rd Edition)を参照されたく、ならびに、例えば、エーテル(例えば、ジアルキルシリルエーテル、トリアルキルシリルエーテル、ジアルキルアルコキシシリルエーテルを含む、アルキルエーテルおよびシリルエーテル)、エステル、カーボネート、カルバメート、スルホネート、およびホスフェート保護基を含む。ヒドロキシ保護基の例としては、メチルエーテル;メトキシメチルエーテル、メチルチオメチルエーテル、(フェニルジメチルシリル)メトキシメチルエーテル、ベンジルオキシメチルエーテル、p-メトキシベンジルオキシメチルエーテル、p-ニトロベンジルオキシメチルエーテル、o-ニトロベンジルオキシメチルエーテル、(4-メトキシフェノキシ)メチルエーテル、グアヤコールメチルエーテル、t-ブトキシメチルエーテル、4-ペンテニルオキシメチルエーテル、シロキシメチルエーテル、2-メトキシエトキシメチルエーテル、2,2,2-トリクロロエトキシメチルエーテル、ビス(2-クロロエトキシ)メチルエーテル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチルエーテル、メントキシメチルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、1-メトキシシクロヘキシルエーテル、4-メトキシテトラヒドロチオピラニルエーテル、4-メトキシテトラヒドロチオピラニルエーテルS,S-ジオキシド、1-[(2-クロロ-4-メチル)フェニル]-4-メトキシピペリジン-4-イルエーテル、1-(2-フルオロフェニル)-4-メトキシピペリジン-4-イルエーテル、1,4-ジオキサン-2-イルエーテル、テトラヒドロフラニルエーテル、テトラヒドロチオフラニルエーテル;置換エチルエーテル、例えば1-エトキシエチルエーテル、1-(2-クロロエトキシ)エチルエーテル、1-[2-(トリメチルシリル)エトキシ]エチルエーテル、1-メチル-1-メトキシエチルエーテル、1-メチル-1-ベンジルオキシエチルエーテル、1-メチル-1-ベンジルオキシ-2-フルオロエチルエーテル、1-メチル-1フェノキシエチルエーテル、2-トリメチルシリルエーテル、t-ブチルエーテル、アリルエーテル、プロパルギルエーテル、p-クロロフェニルエーテル、p-メトキシフェニルエーテル、ベンジルエーテル、p-メトキシベンジルエーテル3,4-ジメトキシベンジルエーテル、トリメチルシリルエーテル、トリエチルシリルエーテル、トリプロピルシリルエーテル、ジメチルイソプロピルシリルエーテル、ジエチルイソプロピルシリルエーテル、ジメチルヘキシルシリルエーテル、t-ブチルジメチルシリルエーテル、ジフェニルメチルシリルエーテル、ベンゾイルホルメートエステル、アセテートエステル、クロロアセテートエステル、ジクロロアセテートエステル、トリクロロアセテートエステル、トリフルオロアセテートエステル、メトキシアセテートエステル、トリフェニルメトキシアセテートエステル、フェニルアセテートエステル、ベンゾエートエステル、アルキルメチルカーボネート、アルキル9-フルオレニルメチルカーボネート、アルキルエチルカーボネート、アルキル2,2,2,-トリクロロエチルカーボネート、1,1,-ジメチル-2,2,2-トリクロロエチルカーボネート、アルキルスルホネート、メタンスルホネート、ベンジルスルホネート、トシレート、メチレンアセタール、エチリデンアセタール、およびt-ブチルメチリデンケタールが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。好ましい保護基は、式-Ra,Si(Ra)(Ra)(Ra)、-C(O)Ra、-C(O)ORa、-C(O)NH(Ra)、-S(O)2Ra、-S(O)2OH、P(O)(OH)2,、および-P(O)(OH)ORaによって表され、ここで、Raは、C1~C20アルキル、C2~C20アルケニル、C2~C20アルキニル、-C1~C20アルキレン(炭素環)、-C2~C20アルケニレン(炭素環)、-C2~C20アルキニレン(炭素環)、-C6~C10アリール、-C1~C20アルキレン(アリール)、-C2~C20アルケニレン(アリール)、-C2~C20アルキニレン(アリール)、-C1~C20アルキレン(複素環)、-C2~C20アルケニレン(複素環)、または-C2~C20アルキニレン(複素環)であり、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリール、炭素環、および複素環ラジカルは、単独でまたは別の基の一部としてのいずれでも、置換されていてもよい。
【0114】
本明細書で使用される「有効量」または「治療有効量」という用語は、所望の結果をもたらすのに十分な、本明細書で提供される結合分子(例えば、抗体)または薬学的組成物の量を指す。
【0115】
「対象」および「患者」という用語は、互換的に使用され得る。本明細書で使用される場合、特定の態様では、対象は、非霊長動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)または霊長動物(例えば、サルおよびヒト)などの哺乳動物である。特定の態様では、対象はヒトである。一態様では、対象は、状態または障害と診断された哺乳動物、例えばヒトである。別の態様では、対象は、状態または障害を発症するリスクがある哺乳動物、例えばヒトである。
【0116】
「投与する」または「投与」は、粘膜、皮内、静脈内、筋肉内送達、および/または本明細書に記載されているもしくは当技術分野で公知の任意の他の物理的送達方法などによって、体外に存在する物質を患者に注射または他の方法で物理的に送達する行為を指す。
【0117】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」および「治療すること」という用語は、1つまたは複数の治療法の投与に起因する疾患または状態の進行、重症度、および/または持続期間の減少または改善を指す。治療は、患者が依然として基礎疾患に罹患している可能性があるにもかかわらず、患者に関して改善が観察されるように、基礎疾患に関連する1つまたは複数の症状の減少、緩和および/または軽減があったかどうかを評価することによって決定され得る。「治療すること」という用語は、疾患の管理と改善の両方を含む。「管理する」、「管理すること」、および「管理」という用語は、対象が必ずしも疾患の治癒をもたらさない治療法から得る有益な効果を指す。
【0118】
「予防する」、「予防すること」、および「予防」という用語は、疾患、障害、状態、または関連する1つもしくは複数の症状(例えば、癌)の発症(または再発)の可能性を低減することを指す。
【0119】
「癌」または「癌細胞」という用語は、本明細書では、正常な組織または組織細胞からそれを区別する特性を有する、新生物に見られる組織または細胞を示すために使用される。そのような特性には、退形成の程度、形状の不規則性、細胞輪郭の不明瞭さ、核の大きさ、核または細胞質の構造の変化、他の表現型の変化、癌または前癌状態を示す細胞タンパク質の存在、有糸分裂の数の増加、および転移する能力が含まれるが、これらに限定されるわけではない。「癌」に関連する単語には、癌腫、肉腫、腫瘍、上皮腫、白血病、リンパ腫、ポリープ、および硬性癌、形質転換、新生物などが含まれる。
【0120】
「約」および「およそ」という用語は、所与の値または範囲の20%以内、15%以内、10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、またはそれ未満を意味する。
【0121】
本開示および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形を含む。
【0122】
態様が「含む」という用語を用いて本明細書で説明される場合は常に、「からなる」および/または「から本質的になる」に関して説明される他の類似の態様も提供されることが理解される。また、態様が「から本質的になる」という語句を用いて本明細書で説明される場合は常に、「からなる」に関して説明される他の類似の態様も提供されることが理解される。
【0123】
本明細書で「Aおよび/またはB」などの語句で使用される「および/または」という用語は、AとBの両方;AまたはB;A(単独);およびB(単独)を含むことが意図されている。同様に、「A、B、および/またはC」などの語句で使用される「および/または」という用語は、以下の態様:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)のそれぞれを包含することが意図されている。
【0124】
5.2 薬学的組成物
一局面では、本明細書で提供される抗体薬物コンジュゲートと、1つまたは複数の薬学的に許容されるまたは生理学的に許容される賦形剤とを含む「薬学的組成物」が、本明細書で提供される。特定の態様では、抗体薬物コンジュゲートは、1つもしくは複数のさらなる剤と組み合わせて、またはそれとは別個に提供される。そのような1つまたは複数のさらなる剤、および1つまたは複数の薬学的に許容されるまたは生理学的に許容される賦形剤を含む組成物も提供される。特定の態様では、抗体薬物コンジュゲートおよびさらなる剤(1つまたは複数)は、治療上許容される量で存在する。薬学的組成物は、本明細書で提供される方法および使用に従って使用され得る。したがって、例えば、薬学的組成物は、本明細書で提供される治療方法および使用を実施するために、対象にエクスビボまたはインビボで投与することができる。本明細書で提供される薬学的組成物は、意図される方法または投与経路と適合するように製剤化することができ、例示的な投与経路は本明細書に記載されている。
【0125】
いくつかの態様では、癌または腫瘍を調節する抗体薬物コンジュゲートの薬学的組成物が提供される。
【0126】
いくつかの局面では、薬学的組成物は、本明細書に記載の様々な疾患および障害(例えば、癌)の治療または予防に使用することができる、本明細書に開示されるまたは当業者に公知の他の治療活性作用物質または化合物をさらに含み得る。上記のように、さらなる治療活性作用物質または化合物は、別個の薬学的組成物(1つまたは複数)中に存在してもよい。
【0127】
薬学的組成物は、典型的には、治療有効量の本明細書で提供される抗体薬物コンジュゲートの少なくとも1つ、および1つまたは複数の薬学的に許容される製剤化剤を含む。特定の態様では、薬学的組成物は、本明細書に記載の1つまたは複数のさらなる剤をさらに含む。
【0128】
一態様では、薬学的組成物は、本明細書で提供される抗体薬物コンジュゲートを含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、治療有効量の本明細書で提供される抗体薬物コンジュゲートを含む。特定の態様では、薬学的組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0129】
いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物中の抗体薬物コンジュゲートは、以下のセクション5.3に記載される抗体薬物コンジュゲートから選択される。
【0130】
特定の態様では、薬学的組成物は、0.1mg/mL~100mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、1mg/mL~20mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。他の態様では、薬学的組成物は、5mg/mL~15mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。他の態様では、薬学的組成物は、8mg/mL~12mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。他の態様では、薬学的組成物は、9mg/mL~11mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、約9.5mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、約9.6mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、約9.7mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、約9.8mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、約9.9mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。さらに他の態様では、薬学的組成物は、約10mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。さらに他の態様では、薬学的組成物は、約10.1mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、約10.2mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、約10.3mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、約10.3mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、約10.4mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、約10.5mg/mLの濃度の抗体薬物コンジュゲートを含む。
【0131】
いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、L-ヒスチジン、TWEEN-20、およびトレハロース二水和物またはスクロースの少なくとも一方を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、塩酸(HCl)またはコハク酸をさらに含む。
【0132】
いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物において有用なL-ヒスチジンの濃度は、5mM~50mMの範囲である。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、10mM~40mMの範囲である。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、15mM~35mMの範囲である。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、15mM~30mMの範囲である。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、15mM~25mMの範囲である。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、15mM~35mMの範囲である。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物中のL-ヒスチジンの濃度は約16mMである。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物中のL-ヒスチジンの濃度は約17mMである。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物中のL-ヒスチジンの濃度は約18mMである。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物中のL-ヒスチジンの濃度は約19mMである。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物中のL-ヒスチジンの濃度は約20mMである。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物中のL-ヒスチジンの濃度は約21mMである。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物中のL-ヒスチジンの濃度は約22mMである。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物中のL-ヒスチジンの濃度は約23mMである。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物中のL-ヒスチジンの濃度は約24mMである。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物中のL-ヒスチジンの濃度は約25mMである。
【0133】
いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物に有用なTWEEN-20の濃度は、0.001%~0.1%(v/v)の範囲である。別の態様では、TWEEN-20の濃度は、0.0025%~0.075%(v/v)の範囲である。一態様では、TWEEN-20の濃度は、0.005%~0.05%(v/v)の範囲である。別の態様では、TWEEN-20の濃度は、0.0075%~0.025%(v/v)の範囲である。別の態様では、TWEEN-20の濃度は、0.0075%~0.05%(v/v)の範囲である。別の態様では、TWEEN-20の濃度は、0.01%~0.03%(v/v)の範囲である。特定の一態様では、TWEEN-20の濃度は約0.01%(v/v)である。特定の一態様では、TWEEN-20の濃度は約0.015%(v/v)である。特定の一態様では、TWEEN-20の濃度は約0.016%(v/v)である。特定の一態様では、TWEEN-20の濃度は約0.017%(v/v)である。特定の一態様では、TWEEN-20の濃度は約0.018%(v/v)である。特定の一態様では、TWEEN-20の濃度は約0.019%(v/v)である。特定の一態様では、TWEEN-20の濃度は約0.02%(v/v)である。特定の一態様では、TWEEN-20の濃度は約0.021%(v/v)である。特定の一態様では、TWEEN-20の濃度は約0.022%(v/v)である。特定の一態様では、TWEEN-20の濃度は約0.023%(v/v)である。特定の一態様では、TWEEN-20の濃度は約0.024%(v/v)である。特定の一態様では、TWEEN-20の濃度は約0.025%(v/v)である。
【0134】
一態様では、本明細書で提供される薬学的組成物に有用なトレハロース二水和物の濃度は、1%~20%(w/v)の範囲である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は、2%~15%(w/v)の範囲である。一態様では、トレハロース二水和物の濃度は、3%~10%(w/v)の範囲である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は、4%~9%(w/v)の範囲である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は、4%~8%(w/v)の範囲である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は、4%~7%(w/v)の範囲である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は、4%~6%(w/v)の範囲である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は、4.5%~6%(w/v)の範囲である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約4.6%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約4.7%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約4.8%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約4.9%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約5.0%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約5.1%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約5.2%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約5.3%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約5.4%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約5.5%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約5.6%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約5.7%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約5.8%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約5.9%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約6.0%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約6.1%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約6.2%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約6.3%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約6.4%(w/v)である。別の態様では、トレハロース二水和物の濃度は約6.5%(w/v)である。
【0135】
特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は、50mM~300mMである。他の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は、75mM~250mMである。いくつかの態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は、100mM~200mMである。他の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は、130mM~150mMである。いくつかの態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は、135mM~150mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約135mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約136mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約137mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約138mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約139mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約140mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約141mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約142mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約143mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約144mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約145mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約146mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約150mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約151mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約151mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約152mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約153mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約154mMである。特定の態様では、トレハロース二水和物のモル濃度は約155mMである。
【0136】
一態様では、本明細書で提供される薬学的組成物に有用なスクロースの濃度は、1%~20%(w/v)の範囲である。別の態様では、スクロースの濃度は、2%~15%(w/v)の範囲である。一態様では、スクロースの濃度は、3%~10%(w/v)の範囲である。別の態様では、スクロースの濃度は、4%~9%(w/v)の範囲である。別の態様では、スクロースの濃度は、4%~8%(w/v)の範囲である。別の態様では、スクロースの濃度は、4%~7%(w/v)の範囲である。別の態様では、スクロースの濃度は、4%~6%(w/v)の範囲である。別の態様では、スクロースの濃度は、4.5%~6%(w/v)の範囲である。別の態様では、スクロースの濃度は約4.6%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約4.7%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約4.8%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約4.9%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約5.0%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約5.1%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約5.2%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約5.3%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約5.4%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約5.5%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約5.6%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約5.7%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約5.8%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約5.9%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約6.0%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約6.1%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約6.2%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約6.3%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約6.4%(w/v)である。別の態様では、スクロースの濃度は約6.5%(w/v)である。
【0137】
特定の態様では、スクロースのモル濃度は、50mM~300mMである。他の態様では、スクロースのモル濃度は、75mM~250mMである。いくつかの態様では、スクロースのモル濃度は、100mM~200mMである。他の態様では、スクロースのモル濃度は、130mM~150mMである。いくつかの態様では、スクロースのモル濃度は、135mM~150mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約135mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約136mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約137mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約138mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約139mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約140mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約141mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約142mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約143mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約144mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約145mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約146mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約150mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約151mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約151mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約152mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約153mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約154mMである。特定の態様では、スクロースのモル濃度は約155mMである。
【0138】
いくつかの態様では、本明細書に提供される薬学的組成物はHClを含む。他の態様では、本明細書で提供される薬学的組成物はコハク酸を含む。
【0139】
いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、5.5~6.5の範囲のpHを有する。他の態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、5.7~6.3の範囲のpHを有する。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、約5.7のpHを有する。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、約5.8のpHを有する。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、約5.9のpHを有する。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、約6.0のpHを有する。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、約6.1のpHを有する。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、約6.2のpHを有する。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、約6.3のpHを有する。
【0140】
いくつかの態様では、pHは室温で測定される。他の態様では、pHは15℃~27℃で測定される。さらに他の態様では、pHは4℃で測定される。さらに他の態様では、pHは25℃で測定される。
【0141】
いくつかの態様では、pHはHClによって調整される。いくつかの態様では、薬学的組成物はHClを含み、薬学的組成物は室温で5.5~6.5の範囲のpHを有する。いくつかの態様では、薬学的組成物はHClを含み、薬学的組成物は室温で5.7~6.3の範囲のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はHClを含み、薬学的組成物は室温で約5.7のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はHClを含み、薬学的組成物は室温で約5.8のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はHClを含み、薬学的組成物は室温で約5.9のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はHClを含み、薬学的組成物は室温で約6.0のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はHClを含み、薬学的組成物は室温で約6.1のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はHClを含み、薬学的組成物は室温で約6.2のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はHClを含み、薬学的組成物は室温で約6.3のpHを有する。
【0142】
いくつかの態様では、薬学的組成物はHClを含み、薬学的組成物は15℃~27℃で5.5~6.5の範囲のpHを有する。いくつかの態様では、薬学的組成物はHClを含み、薬学的組成物は、15℃~27℃で5.7~6.3の範囲のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はHClを含み、薬学的組成物は15℃~27℃で約5.7のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はHClを含み、薬学的組成物は15℃~27℃で約5.8のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はHClを含み、薬学的組成物は15℃~27℃で約5.9のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はHClを含み、薬学的組成物は、15℃~27℃で約6.0のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はHClを含み、薬学的組成物は15℃~27℃で約6.1のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はHClを含み、薬学的組成物は15℃~27℃で約6.2のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はHClを含み、薬学的組成物は15℃~27℃で約6.3のpHを有する。
【0143】
いくつかの態様では、pHはコハク酸によって調整される。いくつかの態様では、薬学的組成物はコハク酸を含み、薬学的組成物は室温で5.5~6.5の範囲のpHを有する。いくつかの態様では、薬学的組成物はコハク酸を含み、薬学的組成物は室温で5.7~6.3の範囲のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はコハク酸を含み、薬学的組成物は室温で約5.7のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はコハク酸を含み、薬学的組成物は室温で約5.8のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はコハク酸を含み、薬学的組成物は室温で約5.9のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はコハク酸を含み、薬学的組成物は室温で約6.0のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はコハク酸を含み、薬学的組成物は室温で約6.1のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はコハク酸を含み、薬学的組成物は室温で約6.2のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はコハク酸を含み、薬学的組成物は室温で約6.3のpHを有する。
【0144】
いくつかの態様では、薬学的組成物はコハク酸を含み、薬学的組成物は15℃~27℃で5.5~6.5の範囲のpHを有する。いくつかの態様では、薬学的組成物はコハク酸を含み、薬学的組成物は15℃~27℃で5.7~6.3の範囲のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はコハク酸を含み、薬学的組成物は15℃~27℃で約5.7のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はコハク酸を含み、薬学的組成物は15℃~27℃で約5.8のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はコハク酸を含み、薬学的組成物は15℃~27℃で約5.9のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はコハク酸を含み、薬学的組成物は15℃~27℃で約6.0のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はコハク酸を含み、薬学的組成物は15℃~27℃で約6.1のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はコハク酸を含み、薬学的組成物は15℃~27℃で約6.2のpHを有する。いくつかのより具体的な態様では、薬学的組成物はコハク酸を含み、薬学的組成物は15℃~27℃で約6.3のpHを有する。
【0145】
いくつかの特定の態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、および約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物または約5%(w/v)のスクロースの少なくとも一方を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、HClまたはコハク酸をさらに含む。いくつかの態様では、pHは室温で約6.0である。いくつかの態様では、pHは25℃で約6.0である。
【0146】
いくつかの具体的な態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物およびHClを含む。いくつかの態様では、pHは室温で約6.0である。いくつかの態様では、pHは25℃で約6.0である。
【0147】
いくつかの特定の態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5%(w/v)のスクロースおよびHClを含む。いくつかの態様では、pHは室温で約6.0である。いくつかの態様では、pHは25℃で約6.0である。
【0148】
他の特定の態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物およびコハク酸を含む。いくつかの態様では、pHは室温で約6.0である。いくつかの態様では、pHは25℃で約6.0である。
【0149】
いくつかの特定の態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5%(w/v)のスクロースおよびコハク酸を含む。いくつかの態様では、pHは室温で約6.0である。いくつかの態様では、pHは25℃で約6.0である。
【0150】
具体的な態様では、本明細書で提供されるものは、
(a)以下の構造:
を有し、ここで、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは1~10である、抗体薬物コンジュゲート;ならびに
(b)約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物、およびHClを含む、薬学的に許容される賦形剤
を含み、ここで、抗体薬物コンジュゲートは約10mg/mLの濃度であり、pHは25℃で約6.0である。
【0151】
別の具体的な態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、
(a)以下の構造:
を含み、ここで、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは1~10である、抗体薬物コンジュゲート;ならびに
(b)約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物、およびコハク酸を含む、薬学的に許容される賦形剤
を含み、ここで、抗体薬物コンジュゲートは約10mg/mLの濃度であり、pHは25℃で約6.0である。
【0152】
さらに別の特定の態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、
(a)以下の構造:
を含み、ここで、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは1~10である、抗体薬物コンジュゲート;ならびに
(b)約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5.0%(w/v)のスクロース、およびHClを含む、薬学的に許容される賦形剤
を含み、ここで、抗体薬物コンジュゲートは約10mg/mLの濃度であり、pHは25℃で約6.0である。
【0153】
特定の数(およびその数値範囲)が提供されているが、特定の態様では、前記数(または数値範囲)の例えば2%、5%、10%、15%または20%以内の数値も企図されることが理解される。他の例示的な薬学的組成物は、下記の実験のセクションで提供される。
【0154】
ビヒクル中の一次溶媒は、本質的に水性または非水性のいずれかであり得る。さらに、ビヒクルは、薬学的組成物のpH、オスモル濃度、粘度、無菌性または安定性を改変または維持するための他の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。特定の態様では、薬学的に許容されるビヒクルは水性緩衝液である。他の態様では、ビヒクルは、例えば、塩化ナトリウムおよび/またはクエン酸ナトリウムを含む。
【0155】
本明細書で提供される薬学的組成物は、本明細書に記載されるように、抗体薬物コンジュゲートおよび/またはさらなる剤の放出速度を改変または維持するためのさらに他の薬学的に許容される製剤化剤を含み得る。そのような製剤化剤には、徐放性製剤の調製において当業者に公知の物質が含まれる。薬学的および生理学的に許容される製剤化剤に関するさらなる参考文献については、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences,18th Ed.(1990,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.18042)pages 1435-1712、The Merck Index,12th Ed.(1996,Merck Publishing Group,Whitehouse,NJ);およびPharmaceutical Principles of Solid Dosage Forms(1993,Technonic Publishing Co.,Inc.,Lancaster,Pa.)を参照。投与に適したさらなる薬学的組成物は当技術分野で公知であり、本明細書で提供される方法および組成物に適用可能である。
【0156】
いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は液体形態である。他の態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は凍結乾燥されている。
【0157】
薬学的組成物は、溶液、懸濁液、ゲル、エマルジョン、固体、または脱水もしくは凍結乾燥粉末として滅菌バイアルに保存され得る。そのような組成物は、すぐに使用できる形態、使用前に再構成を必要とする凍結乾燥形態、使用前に希釈を必要とする液体形態、または他の許容される形態のいずれかで保存され得る。いくつかの態様では、薬学的組成物は、単回使用容器(例えば、単回使用バイアル、アンプル、シリンジ、または自動注射器(例えば、EpiPen(登録商標)と同様の))で提供され、他の態様では、多回使用容器(例えば、多回使用バイアル)で提供される。ペプチドおよび本明細書に記載の他の剤を送達するために、インプラント(例えば、植込み型ポンプ)およびカテーテルシステムを含む任意の薬物送達装置を使用してもよく、これらは両方とも当業者に公知である。一般に皮下または筋肉内に投与されるデポ注射も、本明細書に記載のペプチドおよび/または他の剤を定義された期間にわたって放出するために利用され得る。デポ注射は、通常、固体または油ベースのいずれかであり、一般に、本明細書に記載の製剤成分の少なくとも1つを含む。当業者は、デポ注射の可能な製剤および使用に精通している。特定の態様では、Nano Precision Medicalのデポ送達技術(Nano Precision Medical;Emeryville,CA)の使用が企図される。この技術は、タンパク質およびペプチド治療薬などの高分子のゼロ次放出速度を生じるチタニアナノチューブ膜を利用する。生体適合性膜は、治療用高分子の長期(例えば、最大1年)の定速送達を提供する小型の皮下インプラントに収容される。
【0158】
薬学的組成物は、その意図される投与経路と適合するように製剤化することができる。したがって、薬学的組成物は、非経口(例えば、皮下(s.c.)、静脈内、筋肉内、または腹腔内)、皮内、経口(例えば、摂取)、吸入、腔内、頭蓋内、および経皮(局所)を含む経路による投与に適した賦形剤を含む。他の例示的な投与経路は本明細書に記載されている。
【0159】
薬学的組成物は、滅菌注射用の水性または油性の懸濁液の形態であり得る。この懸濁液は、本明細書に開示されているかまたは当業者に公知の適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して製剤化され得る。滅菌注射用調製物はまた、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液のような、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液であり得る。使用され得る許容される希釈剤、溶媒および分散媒には、水、リンガー液、等張塩化ナトリウム溶液、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)、ならびにそれらの適切な混合物が含まれる。さらに、滅菌固定油は、溶媒または懸濁媒として従来から使用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油を使用し得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製に使用される。特定の注射用製剤の長期吸収は、吸収を遅延させる剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチン)を含めることによって達成することができる。
【0160】
一態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、局所または全身投与のために、注射、注入、または埋め込みによって非経口投与され得る。本明細書で使用される非経口投与には、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑液包内、および皮下投与が含まれる。
【0161】
一態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、注射前の液体中の溶液または懸濁液に適した溶液、懸濁液、エマルジョン、ミセル、リポソーム、ミクロスフェア、ナノシステム、および固体形態を含む、非経口投与に適した任意の剤形で製剤化され得る。そのような剤形は、薬学の当業者に公知の従来の方法に従って調製することができる(例えば、Remington,The Science and Practice of Pharmacy、前出を参照)。
【0162】
一態様では、非経口投与を意図した薬学的組成物は、水性ビヒクル、水混和性ビヒクル、非水性ビヒクル、微生物の増殖に対する抗菌剤または防腐剤、安定剤、溶解促進剤、等張剤、緩衝剤、酸化防止剤、局所麻酔剤、懸濁化剤および分散剤、湿潤剤または乳化剤、錯化剤、金属イオン封鎖剤またはキレート剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、増粘剤、pH調整剤、および不活性ガスを含むが、これらに限定されるわけではない1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。
【0163】
一態様では、適切な水性ビヒクルには、水、生理食塩水、食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロースおよび乳酸加リンゲル注射液が含まれるが、これらに限定されるわけではない。非水性ビヒクルには、植物起源の固定油、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、落花生油、ペパーミント油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、硬化植物油、硬化大豆油、およびココナッツ油の中鎖トリグリセリド、およびパーム種子油が含まれるが、これらに限定されるわけではない。水混和性ビヒクルには、エタノール、1,3-ブタンジオール、液体ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール300およびポリエチレングリコール400)、プロピレングリコール、グリセリン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、およびジメチルスルホキシドが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0164】
一態様では、適切な抗菌剤または防腐剤には、フェノール、クレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-ヒドロキシ安息香酸メチルおよびプロピル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム(例えば、塩化ベンゼトニウム)、メチル-およびプロピル-パラベン、ならびにソルビン酸が含まれるが、これらに限定されるわけではない。適切な等張剤には、塩化ナトリウム、グリセリンおよびデキストロースが含まれるが、これらに限定されるわけではない。適切な緩衝剤には、リン酸塩およびクエン酸塩が含まれるが、これらに限定されるわけではない。適切な酸化防止剤は、重亜硫酸塩およびメタ重亜硫酸ナトリウムを含む、本明細書に記載されるものである。適切な局所麻酔剤にはプロカイン塩酸塩が含まれるが、これに限定されるわけではない。適切な懸濁化剤および分散剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンを含む、本明細書に記載されるものである。適切な乳化剤には、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート80、およびトリエタノールアミンオレエートを含む、本明細書に記載されるものが含まれる。適切な金属イオン封鎖剤またはキレート剤には、EDTAが含まれるが、これに限定されるわけではない。適切なpH調整剤には、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、および乳酸が含まれるが、これらに限定されるわけではない。適切な錯化剤には、シクロデキストリン、例えばα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、およびスルホブチルエーテル7-β-シクロデキストリン(CAPTISOL(登録商標)、CyDex、Lenexa、KS)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0165】
一態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、単回投与または複数回投与用に製剤化され得る。単回投与製剤は、アンプル、バイアル、またはシリンジに包装される。複数回投与非経口製剤は、静菌濃度または静真菌濃度の抗菌剤を含み得る。すべての非経口製剤は、当技術分野で公知でありかつ実施されているように、無菌でなければならない。
【0166】
一態様では、薬学的組成物は、すぐに使用できる滅菌溶液として提供される。別の態様では、薬学的組成物は、使用前にビヒクルで再構成される、凍結乾燥粉末および皮下注射用錠剤を含む滅菌乾燥可溶性製品として提供される。さらに別の態様では、薬学的組成物は、すぐに使用できる滅菌懸濁液として提供される。さらに別の態様では、薬学的組成物は、使用前にビヒクルで再構成される滅菌乾燥不溶性製品として提供される。さらに別の態様では、薬学的組成物は、すぐに使用できる滅菌エマルジョンとして提供される。
【0167】
一態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出、およびプログラム放出形態を含む、即時放出または改変放出剤形として製剤化され得る。
【0168】
一態様では、薬学的組成物は、埋め込みデポ剤として投与するための懸濁液、固体、半固体、またはチキソトロピー液体として製剤化され得る。一態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、体液に不溶性であるが薬学的組成物中の活性成分が拡散することを可能にする外側ポリマー膜によって囲まれた、固体内部マトリックス中に分散される。
【0169】
一態様では、適切な内部マトリックスには、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化または非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネートコポリマー、アクリル酸およびメタクリル酸のエステルのヒドロゲルなどの親水性ポリマー、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール、および架橋部分加水分解ポリ酢酸ビニルが含まれる。
【0170】
一態様では、適切な外側ポリマー膜には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/エチルアクリレートコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルとの塩化ビニルコポリマー、塩化ビニリデン、エチレンおよびプロピレン、アイオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/ビニルオキシエタノールコポリマー、ならびにエチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマーが含まれる。
【0171】
水性懸濁液は、その製造に適した賦形剤と混合された活性材料を含む。そのような賦形剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴムである;分散剤または湿潤剤は、天然のホスファチド、例えばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えばポリオキシエチレンステアレート、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合生成物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートであり得る。水性懸濁液はまた、1つまたは複数の防腐剤を含み得る。
【0172】
油性懸濁液は、活性成分を植物油、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナッツ油、または流動パラフィンなどの鉱油に懸濁することによって製剤化され得る。油性懸濁液は、増粘剤、例えば蜜蝋、硬質パラフィンまたはセチルアルコールを含み得る。上記のような甘味剤および香味剤を添加して、口当たりのよい経口製剤を提供し得る。
【0173】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した分散性粉末および顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤および1つもしくは複数の防腐剤と混合された活性成分を提供する。適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤が本明細書に例示される。
【0174】
本明細書で提供される薬学的組成物は、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。油相は、植物油、例えばオリーブ油もしくは落花生油、または鉱油、例えば流動パラフィン、またはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤は、天然ゴム、例えば、アラビアゴムまたはトラガカントゴム;天然ホスファチド、例えば、大豆、レシチン、および脂肪酸由来のエステルまたは部分エステル;ヘキシトール無水物、例えばソルビタンモノオレエート;ならびに部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであり得る。
【0175】
薬学的組成物はまた、インプラント、リポソーム、ヒドロゲル、プロドラッグおよびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤などの、急速な分解または身体からの排出から組成物を保護するための賦形剤を含むことができる。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を単独で、またはワックスと組み合わせて使用し得る。注射用薬学的組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを含めることによって達成することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。
【0176】
本明細書で提供される薬学的組成物は、-80℃、4℃、25℃または37℃で保存し得る。
【0177】
凍結乾燥組成物は、本明細書で提供される液体薬学的組成物を凍結乾燥することによって作製することができる。具体的な態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、凍結乾燥薬学的組成物である。いくつかの態様では、薬学的製剤は凍結乾燥粉末であり、溶液、エマルジョンおよび他の混合物として投与するために再構成することができる。それらはまた、固体またはゲルとして再構成および製剤化され得る。
【0178】
いくつかの態様では、本明細書で提供される凍結乾燥製剤の調製は、凍結乾燥、無菌濾過、バイアルへの充填、凍結乾燥チャンバ内でのバイアルの凍結のための製剤化されたバルク溶液のバッチ処理、その後の凍結乾燥、栓締めおよびキャッピングを含む。
【0179】
凍結乾燥製剤の調製には、凍結乾燥機を使用することができる。例えば、VirTis Genesis Model ELパイロットユニットを使用することができる。ユニットは、3つの作業棚(使用可能な全棚面積は約0.4平方メートル)を有するチャンバ、外部コンデンサ、および機械式真空ポンプシステムを組み込んでいる。カスケード式の機械的冷凍により、棚を-70℃またはそれ以下に、外部コンデンサを-90℃またはそれ以下に冷却することができる。棚温度およびチャンバ圧力は、それぞれ+/-0.5℃および+/-2ミクロン(milliTorr)に自動的に制御された。ユニットは、キャパシタンスマノメータ真空計、ピラニ真空計、圧力変換器(0~1気圧を測定するため)、および相対湿度センサを備えていた。
【0180】
凍結乾燥粉末は、本明細書で提供される抗体薬物コンジュゲートまたはその薬学的に許容される誘導体を適切な溶媒に溶解することによって調製することができる。いくつかの態様では、凍結乾燥粉末は滅菌されている。溶液のその後の滅菌濾過、続いて当業者に公知の標準条件下での凍結乾燥により、所望の製剤が提供される。一態様では、得られた溶液は、凍結乾燥のためにバイアルに分配される。各バイアルは、単回投与量または複数回投与量の抗体薬物コンジュゲートを含む。凍結乾燥粉末は、適切な条件下、例えば約4℃から室温で保存することができる。
【0181】
この凍結乾燥粉末を注射用水で再構成することにより、非経口投与に使用するための製剤が提供される。再構成のために、凍結乾燥粉末を滅菌水または他の適切な賦形剤に添加する。そのような量は、経験的に決定し、特定のニーズに応じて調整することができる。
【0182】
例示的な再構成手順を以下に示す:(1)5mLまたは3mLのシリンジに18または20ゲージの針を取り付け、注射用水(WFI)グレードの水をシリンジに充填する;(2)シリンジに気泡がないことを確保しながら、シリンジの目盛を使用して適切な量のWFIを測定する;(3)ゴム栓に針を挿入する;(4)シリンジの内容物全体をバイアル壁から容器に分注し、シリンジおよび針を取り外し、シャープコンテナに入れる;(4)バイアルを連続的に旋回させて、バイアルの内容物全体を完全に再構成されるまで慎重に可溶化し(例えば、約20秒~約40秒)、発泡をもたらし得るタンパク質溶液の過度の撹拌を最小限に抑える。
【0183】
5.3 抗191P4D12抗体薬物コンジュゲート
本明細書で提供される薬学的組成物、製剤および剤形は、抗191P4D12抗体薬物コンジュゲートを含む。本明細書で提供される抗191P4D12抗体薬物コンジュゲートは、細胞傷害剤(または薬物単位)の1つまたは複数の単位にコンジュゲートされた、191P4D12に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む。細胞傷害剤(または薬物単位)は、直接またはリンカー単位(LU)を介して共有結合され得る。
【0184】
いくつかの態様では、抗体薬物コンジュゲート化合物は、以下の式を有するか、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である:
L-(LU-D)p (I)
式中、
Lは、抗体単位、例えば、下記のセクション5.3.1で提供される抗191P4D12抗体またはその抗原結合断片であり、
(LU-D)は、リンカー単位-薬物単位部分であり、
ここで、
LU-はリンカー単位であり、
Dは、標的細胞に対して細胞増殖抑制活性または細胞傷害活性を有する薬物単位であり、
pは1~20の整数である。
【0185】
いくつかの態様では、pは、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、または1~2の範囲である。いくつかの態様では、pは、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、または2~3の範囲である。他の態様では、pは約1である。他の態様では、pは約2である。他の態様では、pは約3である。他の態様では、pは約4である。他の態様では、pは約5である。他の態様では、pは約6である。他の態様では、pは約7である。他の態様では、pは約8である。他の態様では、pは約9である。他の態様では、pは約10である。
【0186】
いくつかの態様では、抗体薬物コンジュゲート化合物は、以下の式を有するか、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である:
L-(Aa-Ww-Yy-D)p (II)
式中、
Lは、抗体単位、例えば、下記のセクション5.3.1で提供される抗191P4D12抗体またはその抗原結合断片であり;および
-Aa-Ww-Yy-はリンカー単位(LU)であり、ここで、
-A-は伸長単位であり、
aは0または1であり、
各-W-は独立してアミノ酸単位であり、
wは0~12の範囲の整数であり、
-Y-は自己犠牲スペーサ単位であり、
yは、0、1または2であり、
Dは、標的細胞に対する細胞増殖抑制活性または細胞傷害活性を有する薬物単位であり、
pは1~20の整数である。
【0187】
いくつかの態様では、aは0または1であり、wは0または1であり、yは0、1または2である。いくつかの態様では、aは0または1であり、wは0または1であり、yは0または1である。いくつかの態様では、pは、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、または1~2の範囲である。いくつかの態様では、pは、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、または2~3の範囲である。他の態様では、pは1、2、3、4、5または6である。いくつかの態様では、pは2または4である。いくつかの態様では、wが0でない場合、yは1または2である。いくつかの態様では、wが1~12である場合、yは1または2である。いくつかの態様では、wは2~12であり、yは1または2である。いくつかの態様では、aは1であり、wおよびyは0である。
【0188】
複数の抗体またはその抗原結合断片を含む組成物の場合、薬物負荷は、抗体単位当たりの薬物分子の平均数であるpによって表される。薬物負荷は、抗体当たり薬物(D)1~20の範囲であり得る。コンジュゲーション反応の調製物中の抗体当たりの薬物の平均数は、質量分析、ELISAアッセイ、およびHPLCなどの従来の手段によって特徴付けることができる。pに関する抗体薬物コンジュゲートの定量的分布も決定し得る。場合によっては、他の薬物負荷を有する抗体薬物コンジュゲートからの、pが特定の値である均一な抗体薬物コンジュゲートの分離、精製および特徴付けは、逆相HPLCまたは電気泳動などの手段によって達成し得る。例示的な態様では、pは2~8である。
【0189】
5.3.1 抗191P4D12抗体または抗原結合断片
一態様では、191P4D12関連タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む191P4D12タンパク質に特異的に結合する抗体または抗原結合断片である(図5Aを参照)。191P4D12タンパク質をコードする対応するcDNAは、SEQ ID NO:1の配列を有する(図5Aを参照)。
【0190】
SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む191P4D12タンパク質に特異的に結合する抗体には、他の191P4D12関連タンパク質に結合することができる抗体が含まれる。例えば、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む191P4D12タンパク質に結合する抗体は、191P4D12変異体およびそのホモログまたは類似体などの191P4D12関連タンパク質に結合することができる。
【0191】
いくつかの態様では、本明細書で提供される抗191P4D12抗体はモノクローナル抗体である。
【0192】
いくつかの態様では、抗体は、図5Bに示すように、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列(SEQ ID NO:3のcDNA配列)を含む重鎖、および/またはSEQ ID NO:6のアミノ酸配列(SEQ ID NO:5のcDNA配列)を含む軽鎖を含む。
【0193】
いくつかの態様では、抗191P4D12抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:7に示される重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含むCDRを含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:8に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域とを含む。SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8は、図5Cに示され、以下に列挙される通りである。
【0194】
いくつかの態様では、抗191P4D12抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:22に示される重鎖可変領域のアミノ酸配列(これはSEQ ID NO:7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から136番目のアミノ酸(セリン)までの範囲のアミノ酸配列である)を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:23に示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列(これはSEQ ID NO:8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から130番目のアミノ酸(アルギニン)までのアミノ酸配列である)を含む軽鎖可変領域とを含む。他の態様では、抗191P4D12抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:22に示される重鎖可変領域のアミノ酸配列(これはSEQ ID NO:7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から136番目のアミノ酸(セリン)までの範囲のアミノ酸配列である)からなる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:23に示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列(これはSEQ ID NO:8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から130番目のアミノ酸(アルギニン)までのアミノ酸配列である)からなる軽鎖可変領域とを含む。SEQ ID NO:22およびSEQ ID NO:23を以下に列挙する。
【0195】
CDR配列は、周知のナンバリングシステムに従って決定することができる。上記のように、CDR領域は当業者に周知であり、周知のナンバリングシステムによって定義されている。例えば、Kabat相補性決定領域(CDR)は配列の可変性に基づいており、最も一般的に使用される(例えば、Kabat et al.前出を参照)。代わりに、Chothiaは構造ループの位置を指す(例えば、Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-17を参照)。Kabatのナンバリング規則を使用して番号付けした場合のChothia CDR-H1ループの末端は、ループの長さに応じてH32とH34の間で異なる(これは、KabatナンバリングスキームがH35AおよびH35Bに挿入を配置するためであり;35Aも35Bも存在しない場合、ループは32で終了し;35Aのみが存在する場合、ループは33で終了し;35Aと35Bの両方が存在する場合、ループは34で終了する)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループとの間の妥協点を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用される(例えば、Antibody Engineering Vol.2(Kontermann and Dubel eds.,2d ed.2010)を参照)。「接触」超可変領域は、利用可能な複雑な結晶構造の分析に基づいている。開発され、広く採用されている別のユニバーサルナンバリングシステムは、ImMunoGeneTics(IMGT)Information System(登録商標)(Lafranc et al.,2003,Dev.Comp.Immunol.27(1):55-77)である。IMGTは、ヒトおよび他の脊椎動物の免疫グロブリン(IG)、T細胞受容体(TCR)、および主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に特化した統合情報システムである。本明細書では、CDRは、アミノ酸配列および軽鎖または重鎖内の位置の両方に関して言及される。免疫グロブリン可変ドメインの構造内のCDRの「位置」は種間で保存され、ループと呼ばれる構造内に存在するので、構造的特徴に従って可変ドメイン配列を整列させるナンバリングシステムを使用することによって、CDRおよびフレームワーク残基が容易に同定される。この情報は、1つの種の免疫グロブリンからのCDR残基を、典型的にはヒト抗体からのアクセプタフレームワークに移植および置換する際に使用することができる。さらなるナンバリングシステム(AHon)が、Honegger and Pluckthun,2001,J.Mol.Biol.309:657-70によって開発されている。例えば、KabatナンバリングおよびIMGT固有のナンバリングシステムを含むナンバリングシステム間の対応は、当業者に周知である(例えば、Kabat前出;Chothia and Lesk,前出;Martin,前出;Lefranc et al.前出を参照)。これらの超可変領域またはCDRのそれぞれからの残基は、上記の表30に示されている。
【0196】
いくつかの態様では、抗191P4D12抗体またはその抗原結合断片は、KabatナンバリングによるSEQ ID NO:7に示される重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含むCDRを含む重鎖可変領域と、KabatナンバリングによるSEQ ID NO:8に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域とを含む。
【0197】
いくつかの態様では、抗191P4D12抗体またはその抗原結合断片は、AbMナンバリングによるSEQ ID NO:7に示される重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含むCDRを含む重鎖可変領域と、AbMナンバリングによるSEQ ID NO:8に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域とを含む。
【0198】
他の態様では、抗191P4D12抗体またはその抗原結合断片は、ChothiaナンバリングによるSEQ ID NO:7に示される重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含むCDRを含む重鎖可変領域と、ChothiaナンバリングによるSEQ ID NO:8に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域とを含む。
【0199】
他の態様では、抗191P4D12抗体またはその抗原結合断片は、ContactナンバリングによるSEQ ID NO:7に示される重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含むCDRを含む重鎖可変領域と、ContactナンバリングによるSEQ ID NO:8に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域とを含む。
【0200】
さらに他の態様では、抗191P4D12抗体またはその抗原結合断片が、IMGTナンバリングによるSEQ ID NO:7に示される重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含むCDRを含む重鎖可変領域と、IMGTナンバリングによるSEQ ID NO:8に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域とを含む。
【0201】
上記のように、異なるナンバリングシステムによるCDR配列は、例えば抗原受容体ナンバリングおよび受容体分類(Antigen receptor Numbering And Receptor ClassificatIon)(ANARCI)によって提供されるものなどのオンラインツールを使用して容易に決定することができる。例えば、ANARCIによって決定されたKabatナンバリングによるSEQ ID NO:7内の重鎖CDR配列、およびSEQ ID NO:8内の軽鎖CDR配列を以下の表31に列挙する。
【0202】
(表31)
【0203】
別の例として、ANARCIによって決定されたIMGTナンバリングによるSEQ ID NO:22内の重鎖CDR配列、およびSEQ ID NO:23内の軽鎖CDR配列を以下の表32に列挙する。
【0204】
(表32)
【0205】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDR H1、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDR H2、SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含むCDR H3、SEQ ID NO:NO:12のアミノ酸配列を含むCDR L1、SEQ ID NO:NO:13のアミノ酸配列を含むCDR L2、およびSEQ ID NO:NO:14のアミノ酸配列を含むCDR L3を含む。
【0206】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から136番目のアミノ酸(セリン)までの範囲のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から130番目のアミノ酸(アルギニン)までの範囲のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0207】
いくつかの態様では、抗体は、SEQ ID NO:7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲のアミノ酸配列を含む重鎖と、SEQ ID NO:8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0208】
いくつかの態様では、本明細書に記載される抗体のアミノ酸配列修飾(1つまたは複数)が企図される。例えば、特異性、熱安定性、発現レベル、エフェクタ機能、グリコシル化、免疫原性の低下、または溶解度を含むがこれらに限定されるわけではない、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を最適化することが望ましい場合がある。したがって、本明細書に記載の抗体に加えて、抗体変異体が調製され得ることが企図される。例えば、抗体変異体は、適切なヌクレオチド変化をコードDNAに導入することによって、および/または所望の抗体もしくはポリペプチドの合成によって調製することができる。アミノ酸変化が抗体の翻訳後プロセスを変化させ得ること、例えばグリコシル化部位の数もしくは位置を変化させ得ること、または膜固定特性を変化させ得ることを認識する当業者。
【0209】
いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体は、例えば、抗体への任意の種類の分子の共有結合によって化学的に修飾される。抗体誘導体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への結合などによって化学修飾された抗体が含まれ得る。多くの化学修飾のいずれもが、特異的な化学的切断、アセチル化、製剤化、ツニカマイシンの代謝合成などを含むがこれらに限定されるわけではない公知の技術によって実施され得る。さらに、抗体は、1つまたは複数の非古典的アミノ酸を含み得る。
【0210】
変異は、元の抗体またはポリペプチドと比較してアミノ酸配列の変化をもたらす、単一ドメイン抗体またはポリペプチドをコードする1つまたは複数のコドンの置換、欠失または挿入であり得る。アミノ酸置換は、ロイシンのセリンによる置換などの、1つのアミノ酸を類似の構造的および/または化学的特性を含む別のアミノ酸で置換した結果、例えば保存的アミノ酸置換であり得る。当業者に公知の標準的な技術を使用して、例えば、アミノ酸置換をもたらす部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発を含む、本明細書で提供される分子をコードするヌクレオチド配列に突然変異を導入することができる。挿入または欠失は、約1~5アミノ酸の範囲であってもよい。特定の態様では、置換、欠失、または挿入は、元の分子と比較して、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4未満のアミノ酸置換、3未満のアミノ酸置換、または2未満のアミノ酸置換を含む。具体的な態様では、置換は、1つまたは複数の予測される非必須アミノ酸残基で行われる保存的アミノ酸置換である。許容される変異は、配列中のアミノ酸の挿入、欠失または置換を体系的に行い、得られた変異体を親抗体によって示される活性について試験することによって決定され得る。
【0211】
アミノ酸配列挿入には、1つの残基から複数の残基を含むポリペプチドまでの長さに及ぶアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。
【0212】
保存的アミノ酸置換によって生成された抗体は、本開示に含まれる。保存的アミノ酸置換では、アミノ酸残基は、同様の電荷を有する側鎖を含むアミノ酸残基で置換される。上記のように、類似の電荷を有する側鎖を含むアミノ酸残基のファミリーが当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。あるいは、飽和突然変異誘発などによって、突然変異をコード配列の全部または一部に沿ってランダムに導入することができ、得られた突然変異体を生物学的活性についてスクリーニングして、活性を保持する突然変異体を同定することができる。突然変異誘発後、コードされたタンパク質を発現させることができ、タンパク質の活性を決定することができ、特性を維持するかまたは有意に変化させないように保存的(例えば、類似の特性および/または側鎖を有するアミノ酸のグループ内での)置換を行い得る。
【0213】
アミノ酸は、それらの側鎖の特性の類似性に従ってグループ化し得る(例えば、Lehninger,Biochemistry 73-75(2d ed.1975)を参照):(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M);(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q);(3)酸性:Asp(D)、Glu(E);および(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)。あるいは、天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいてグループに分けられ得る:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;および(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0214】
例えば、抗体の適切な立体配座の維持に関与しない任意のシステイン残基を、例えば、アラニンまたはセリンなどの別のアミノ酸で置換して、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を防止することもできる。
【0215】
変形は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャニングおよびPCR突然変異誘発などの当技術分野で公知の方法を使用して行うことができる。部位特異的突然変異誘発(例えば、Carter,1986,Biochem J.237:1-7;およびZoller et al.,1982,Nucl.Acids Res.10:6487-500を参照)、カセット突然変異誘発(例えば、Wells et al.,1985,Gene 34:315-23を参照)、または他の公知の技術をクローン化DNAに対して実施して、抗抗MSLN抗体変異体DNAを産生することができる。
【0216】
抗体の共有結合修飾は、本開示の範囲内に含まれる。共有結合修飾には、抗体の標的アミノ酸残基を、抗体の選択された側鎖またはN末端もしくはC末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることが含まれる。他の修飾には、グルタミニル残基およびアスパラギニル残基のそれぞれ対応するグルタミル残基およびアスパルチル残基への脱アミド化、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリル残基またはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化(例えば、Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties 79-86(1983)を参照)、N末端アミンのアセチル化、ならびに任意のC末端カルボキシル基のアミド化が含まれる。
【0217】
本開示の範囲内に含まれる抗体の他の種類の共有結合修飾には、抗体またはポリペプチドの天然のグリコシル化パターンを変化させること(例えば、Beck et al.,2008,Curr.Pharm.Biotechnol.9:482-501;およびWalsh,2010,Drug Discov.Today 15:773-80を参照)、および抗体を様々な非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンの1つに、例えば、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号;または同第4,179,337号に記載されている方法で連結することが含まれる。
【0218】
いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:NO:7に示される重鎖と70%を超える相同性を有する重鎖を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:7に示される重鎖と75%を超える相同性を有する重鎖を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:7に示される重鎖と80%を超える相同性を有する重鎖を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:7に示される重鎖と85%を超える相同性を有する重鎖を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:7に示される重鎖と90%を超える相同性を有する重鎖を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:7に示される重鎖と95%を超える相同性を有する重鎖を含む。
【0219】
いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:8に示される軽鎖と70%を超える相同性を有する軽鎖を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:8に示される軽鎖と75%を超える相同性を有する軽鎖を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:8に示される軽鎖と80%を超える相同性を有する軽鎖を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:8に示される軽鎖と85%を超える相同性を有する軽鎖を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:8に示される軽鎖と90%を超える相同性を有する軽鎖を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:8に示される軽鎖と95%を超える相同性を有する軽鎖を含む。
【0220】
いくつかの態様では、本明細書で提供される抗191P4D12抗体は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生されるHa22-2(2,4)6.1と称される抗体の重鎖および軽鎖CDR領域、またはHa22-2(2,4)6.1の重鎖および軽鎖CDR領域のアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖CDR領域を含み、ここで、抗体は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生されるHa22-2(2,4)6.1と称される抗191P4D12抗体の所望の機能的特性を保持する。
【0221】
いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化重鎖可変領域およびヒト化軽鎖可変領域を含み、ここで、
(a)重鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体に示される重鎖可変領域CDRのアミノ酸配列を含むCDRを含み;
(b)軽鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体に示される軽鎖可変領域CDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む。
【0222】
いくつかの態様では、本明細書で提供される抗191P4D12抗体は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生されるHa22-2(2,4)6.1と称される抗体(図3を参照)の重鎖および軽鎖可変領域、またはHa22-2(2,4)6.1の重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変領域を含み、ここで、抗体は、本明細書で提供される抗191P4D12抗体の所望の機能的特性を保持する。本発明の抗体の定常領域として、任意のサブクラスの定常領域を選択することができる。一態様では、重鎖定常領域としてヒトIgG1定常領域を、軽鎖定常領域としてヒトIgκ定常領域を使用することができる。
【0223】
いくつかの態様では、本明細書で提供される抗191P4D12抗体は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生されるHa22-2(2,4)6.1と称される抗体(図3を参照)の重鎖および軽鎖、またはHa22-2(2,4)6.1の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖を含み、ここで、抗体は、本明細書で提供される抗191P4D12抗体の所望の機能的特性を保持する。
【0224】
いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、ここで、
(a)重鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含み;および
(b)軽鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含む。
【0225】
いくつかの態様では、重鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも85%相同なアミノ酸配列を含む。他の態様では、重鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む。さらに他の態様では、重鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも95%相同なアミノ酸配列を含む。他の態様では、重鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%相同であり得る。
【0226】
いくつかの態様では、軽鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも85%相同なアミノ酸配列を含む。他の態様では、軽鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む。さらに他の態様では、軽鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも95%相同なアミノ酸配列を含む。他の態様では、軽鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%相同であり得る。
【0227】
他の態様では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、重鎖および軽鎖を含み、ここで、
(a)重鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖アミノ酸配列と少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含み;および
(b)軽鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖アミノ酸配列と少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含む。
【0228】
いくつかの態様では、重鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖アミノ酸配列と少なくとも85%相同なアミノ酸配列を含む。他の態様では、重鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖アミノ酸配列と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む。さらに他の態様では、重鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖アミノ酸配列と少なくとも95%相同なアミノ酸配列を含む。他の態様では、重鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖アミノ酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%相同であり得る。
【0229】
いくつかの態様では、軽鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖アミノ酸配列と少なくとも85%相同なアミノ酸配列を含む。他の態様では、軽鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖アミノ酸配列と少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含む。さらに他の態様では、軽鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖アミノ酸配列と少なくとも95%相同なアミノ酸配列を含む。他の態様では、軽鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖アミノ酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%相同であり得る。
【0230】
本明細書で提供される操作された抗体には、VHおよび/またはVL内のフレームワーク残基に修飾が行われたものが含まれる(例えば、抗体の特性を改善するために)。典型的には、そのようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を低下させるために行われる。例えば、1つのアプローチは、1つまたは複数のフレームワーク残基を対応する生殖系列配列に「復帰突然変異」させることである。より具体的には、体細胞突然変異を受けた抗体は、抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含み得る。そのような残基は、抗体フレームワーク配列を、抗体が由来する生殖系列配列と比較することによって同定することができる。フレームワーク領域配列をそれらの生殖系列配置に戻すために、体細胞突然変異を、例えば部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発によって生殖系列配列に「復帰突然変異」させることができる(例えば、ロイシンからメチオニンに「復帰突然変異」させる)。そのような「復帰突然変異」された抗体も本発明に包含されることが意図されている。
【0231】
別の種類のフレームワーク修飾は、T細胞エピトープを除去し、それによって抗体の潜在的な免疫原性を低下させるために、フレームワーク領域内、またはさらには1つもしくは複数のCDR領域内の1つまたは複数の残基を変異させる工程を含む。このアプローチは、「脱免疫化」とも称され、Carr et al.による米国特許出願公開第2003/0153043号にさらに詳細に記載されている。
【0232】
フレームワーク領域またはCDR領域内で行われる修飾に加えて、またはその代わりに、本発明の抗体は、典型的には血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、および/または抗原依存性細胞傷害などの抗体の1つまたは複数の機能的特性を改変するために、Fc領域内に修飾を含むように操作され得る。さらに、本明細書で提供される抗191P4D12抗体は、やはり抗体の1つまたは複数の機能的特性を改変するために、化学的に修飾され得る(例えば、1つもしくは複数の化学部分を抗体に結合させることができる)か、またはそのグリコシル化を改変するように修飾され得る。これらの態様のそれぞれを以下でさらに詳細に説明する。
【0233】
一態様では、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域内のシステイン残基の数が変化する、例えば増加または減少するように修飾される。このアプローチは、Bodmer et al.による米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域内のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖および重鎖の組み立てを容易にするために、または抗191P4D12抗体の安定性を増加もしくは減少させるために変更される。
【0234】
別の態様では、抗体のFcヒンジ領域は、抗191P4D12抗体の生物学的半減期を減少させるように変異される。より具体的には、抗体が天然のFc-ヒンジドメインSpA結合と比較して低下したブドウ球菌(Staphylococcyl)プロテインA(SpA)結合を有するように、Fc-ヒンジ断片のCH2-CH3ドメイン界面領域に1つまたは複数のアミノ酸変異が導入される。このアプローチは、Ward et al.による米国特許第6,165,745号にさらに詳細に記載されている。
【0235】
別の態様では、抗191P4D12抗体は、その生物学的半減期を増加させるように修飾される。様々なアプローチが可能である。例えば、Wardの米国特許第6,277,375号に記載されているように変異を導入することができる。あるいは、生物学的半減期を増加させるために、Presta et al.による米国特許第5,869,046号および同第6,121,022号に記載されているように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから得られるサルベージ受容体結合エピトープを含むように、抗体をCH1またはCL領域内で変化させることができる。
【0236】
さらに他の態様では、Fc領域は、抗体のエフェクタ機能(1つまたは複数)を改変するために、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置き換えることによって改変される。例えば、アミノ酸特異的残基から選択される1つまたは複数のアミノ酸を、抗体がエフェクタリガンドに対して変化した親和性を有するが、親抗体の抗原結合能を保持するように、異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。親和性が変化するエフェクタリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1成分であり得る。このアプローチは、どちらもWinter et al.による米国特許第5,624,821号および同第5,648,260号にさらに詳細に記載されている。
【0237】
抗191P4D12抗体と191P4D12関連タンパク質との反応性は、必要に応じて191P4D12関連タンパク質、191P4D12発現細胞またはその抽出物を使用して、ウェスタンブロット、免疫沈降、ELISA、およびFACS分析を含む多くの周知の手段によって確立することができる。191P4D12抗体またはその断片は、検出可能なマーカで標識され得るか、または第2の分子にコンジュゲートされ得る。適切な検出可能なマーカには、放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤または酵素が含まれるが、これらに限定されるわけではない。さらに、2つまたはそれ以上の191P4D12エピトープに特異的な二重特異性抗体は、当技術分野で一般的に公知の方法を使用して生成される。ホモ二量体抗体はまた、当技術分野で公知の架橋技術によって生成することができる(例えば、Wolff et al.,Cancer Res.53:2560-2565)。
【0238】
さらに別の具体的な態様では、本明細書で提供される抗191P4D12抗体は、Ha22-2(2,4)6.1と称される抗体の重鎖および軽鎖を含む抗体である。Ha22-2(2,4)6.1の重鎖は、SEQ ID NO:7の20番目のE残基から466番目のK残基までの範囲のアミノ酸配列からなり、Ha22-2(2,4)6.1の軽鎖は、SEQ ID NO:8の配列の23番目のD残基から236番目のC残基までの範囲のアミノ酸配列からなる。
【0239】
Ha22-2(2,4)6.1と称される抗体を産生するハイブリドーマは、2010年8月18日にAmerican Type Culture Collection(ATCC),P.O.Box 1549,Manassas,VA 20108に送付され(Federal Expressを介して)、アクセッション番号PTA-11267が割り当てられた。
【0240】
5.3.2 細胞傷害剤(薬物単位)
いくつかの態様では、ADCは、ドラスタチンまたはドロスタチンのペプチド類似体および誘導体であるアウリスタチン(米国特許第5,635,483号;同第5,780,588号)にコンジュゲートされた抗体またはその抗原結合断片を含む。ドラスタチンおよびアウリスタチンは、微小管の動態、GTP加水分解、ならびに核および細胞分裂を妨げ(Woyke et al(2001)Antimicrob.Agents and Chemother.45(12):3580-3584)、抗癌活性(米国特許第5,663,149号)および抗真菌活性(Pettit et al(1998)Antimicrob.Agents Chemother.42:2961-2965)を有することが示されている。ドラスタチンまたはアウリスタチン薬物単位は、ペプチド性薬物単位のN(アミノ)末端またはC(カルボキシル)末端を介して抗体に結合され得る(国際公開公報第02/088172号)。
【0241】
例示的なアウリスタチンの態様は、2004年3月28日に発表されたSenter et al,Proceedings of the American Association for Cancer Research,Volume 45,Abstract Number 623に開示され、米国特許出願公開第2005/0238649号に記載されているN末端結合モノメチルアウリスタチン薬物単位DEおよびDFを含み、その開示は参照によりその全体が明示的に組み入れられる。
【0242】
いくつかの態様では、アウリスタチンはMMAEである(ここで、波線は抗体薬物コンジュゲートのリンカーへの共有結合を示す)。
【0243】
いくつかの態様では、MMAEおよびリンカー成分(本明細書でさらに説明される)を含む例示的な態様は、以下の構造を有する(ここで、Lは抗体を表し、pは1~12の範囲である)。
【0244】
典型的には、ペプチドベースの薬物単位は、2つまたはそれ以上のアミノ酸および/またはペプチド断片の間にペプチド結合を形成することによって調製することができる。そのようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野で周知の液相合成法(E.Schroder and K.Lubke,"The Peptides",volume 1,pp 76-136,1965,Academic Pressを参照)に従って調製することができる。アウリスタチン/ドラスタチン薬物単位は、米国特許第5635483号;米国特許第5780588号;Pettit et al(1989)J.Am.Chem.Soc.111:5463-5465;Pettit et al(1998)Anti-Cancer Drug Design 13:243-277;Pettit,G.R.,et al.Synthesis,1996,719-725;Pettit et al(1996)J.Chem.Soc.Perkin Trans.1 5:859-863;およびDoronina(2003)Nat Biotechnol 21(7):778-784の方法に従って調製し得る。
【0245】
5.3.3 リンカー
典型的には、抗体薬物コンジュゲートは、薬物単位(例えば、MMAE)と抗体単位(例えば、抗191P4D12抗体またはその抗原結合断片)との間にリンカー単位を含む。いくつかの態様では、リンカーは、リンカーの切断が細胞内環境で抗体から薬物単位を放出するように、細胞内条件下で切断可能である。さらに他の態様では、リンカー単位は切断可能ではなく、薬物は、例えば抗体分解によって放出される。
【0246】
いくつかの態様では、リンカーは、細胞内環境(例えば、リソソームまたはエンドソームまたはカベオラ内)に存在する切断剤によって切断可能である。リンカーは、例えば、リソソームまたはエンドソームプロテアーゼを含むがこれらに限定されるわけではない細胞内ペプチダーゼまたはプロテアーゼ酵素によって切断されるペプチジルリンカーであり得る。いくつかの態様では、ペプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸長または少なくとも3アミノ酸長である。切断剤には、カセプシンBおよびDならびにプラスミンが含まれ得、これらはすべて、ジペプチド薬物誘導体を加水分解して標的細胞内で活性薬物を放出させることが公知である(例えば、Dubowchik and Walker,1999,Pharm.Therapeutics 83:67-123を参照)。最も典型的なのは、191P4D12発現細胞に存在する酵素によって切断可能なペプチジルリンカーである。例えば、癌性組織で高度に発現されるチオール依存性プロテアーゼであるカテプシンBによって切断可能なペプチジルリンカーを使用することができる(例えば、Phe-LeuまたはGly-Phe-Leu-Glyリンカー(SEQ ID NO:15))。そのようなリンカーの他の例は、例えば、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,214,345号に記載されている。具体的な態様では、細胞内プロテアーゼによって切断可能なペプチジルリンカーは、Val-CitリンカーまたはPhe-Lysリンカーである(例えば、Val-Citリンカーを用いたドキソルビシンの合成を記載する、米国特許第6,214,345号を参照)。治療薬の細胞内タンパク質分解放出を使用することの1つの利点は、剤がコンジュゲートされると典型的には減弱され、コンジュゲートの血清安定性が典型的には高いことである。
【0247】
他の態様では、切断可能なリンカーはpH感受性であり、すなわち、特定のpH値で加水分解に感受性である。典型的には、pH感受性リンカーは酸性条件下で加水分解可能である。例えば、リソソーム中で加水分解可能な酸不安定性リンカー(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、シスアコニットアミド、オルトエステル、アセタール、ケタールなど)を使用することができる(例えば、米国特許第5,122,368号;同第5,824,805号;同第5,622,929号;Dubowchik and Walker,1999,Pharm.Therapeutics 83:67-123;Neville et al.,1989,Biol.Chem.264:14653-14661を参照)。そのようなリンカーは、血液中のような中性pH条件下では比較的安定であるが、リソソームのおおよそのpHであるpH5.5未満またはpH5.0未満では不安定である。特定の態様では、加水分解性リンカーは、チオエーテルリンカー(例えば、アシルヒドラゾン結合を介して治療薬に結合されたチオエーテルなど)である(例えば、米国特許第5,622,929号を参照)。
【0248】
さらに他の態様では、リンカーは還元条件下で切断可能である(例えば、ジスルフィドリンカー)。例えば、SATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート)、SPDP(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート)およびSMPT(N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-アルファ-メチル-アルファ-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン)、SPDBおよびSMPTを使用して形成することができるものを含む、様々なジスルフィドリンカーが当技術分野で公知である(例えば、Thorpe et al.,1987,Cancer Res.47:5924-5931;Wawrzynczak et al.,In Immunoconjugates:Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer(C.W.Vogel ed.,Oxford U.Press,1987を参照。米国特許第4,880,935号も参照のこと)。
【0249】
さらに他の具体的な態様では、リンカーは、マロネートリンカー(Johnson et al.,1995,Anticancer Res.15:1387-93)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lau et al.,1995,Bioorg-Med-Chem.3(10):1299-1304)、または3'-N-アミド類似体(Lau et al.,1995,Bioorg-Med-Chem.3(10):1305-12)である。
【0250】
さらに他の態様では、リンカー単位は切断可能ではなく、薬物は抗体分解によって放出される(その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2005/0238649号を参照)。
【0251】
典型的には、リンカーは細胞外環境に対して実質的に感受性ではない。本明細書で使用される場合、リンカーの文脈において「細胞外環境に対して実質的に感受性ではない」とは、抗体薬物コンジュゲートが細胞外環境(例えば、血漿中)に存在するときに、抗体薬物コンジュゲートの試料中のリンカーの約20%以下、典型的には約15%以下、より典型的には約10%以下、さらにより典型的には約5%以下、約3%以下、または約1%以下が切断されることを意味する。リンカーが細胞外環境に対して実質的に感受性でないかどうかは、例えば、抗体-薬物コンジュゲート化合物を血漿と共に所定の時間(例えば、2時間、4時間、8時間、16時間、または24時間)インキュベートし、次いで、血漿中に存在する遊離薬物の量を定量することによって決定することができる。
【0252】
他の相互に排他的でない態様では、リンカーは細胞の内在化を促進する。特定の態様では、リンカーは、治療薬にコンジュゲートされた場合(すなわち、本明細書に記載される抗体-薬物コンジュゲート化合物のリンカー-治療薬部分の環境において)、細胞の内在化を促進する。さらに他の態様では、リンカーは、アウリスタチン化合物および抗191P4D12抗体またはその抗原結合断片の両方にコンジュゲートされた場合、細胞の内在化を促進する。
【0253】
本発明の組成物および方法と共に使用することができる様々な例示的なリンカーは、国際公開公報第2004-010957号、米国特許出願公開第2006/0074008号、米国特許出願公開第20050238649号、および米国特許出願公開第2006/0024317号に記載されている(それぞれ、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる)。
【0254】
「リンカー単位」(LU)は、薬物単位と抗体単位とを連結して抗体薬物コンジュゲートを形成するために使用することができる二官能性化合物である。いくつかの態様では、リンカー単位は、式:
-Aa-Ww-Yy-
を有し、
式中、-A-は伸長単位であり、
aは0または1であり、
各-W-は独立してアミノ酸単位であり、
wは0~12の範囲の整数であり、
-Y-は自己犠牲スペーサ単位であり、
yは0、1または2である。
【0255】
いくつかの態様では、aは0または1であり、wは0または1であり、yは0、1または2である。いくつかの態様では、aは0または1であり、wは0または1であり、yは0または1である。いくつかの態様では、wが1~12である場合、yは1または2である。いくつかの態様では、wは2~12であり、yは1または2である。いくつかの態様では、aは1であり、wおよびyは0である。
【0256】
5.3.3.1 伸長単位
伸長単位(A)は、存在する場合、抗体単位を、アミノ酸単位(-W-)が存在する場合はアミノ酸単位(-W-)に、スペーサ単位(-Y-)が存在する場合はスペーサ単位(-Y-)に、または薬物単位(-D)に連結することができる。天然にまたは化学的操作を介して、抗191P4D12抗体またはその抗原結合断片(例えば、Ha22-2(2,4)6.1)上に存在することができる有用な官能基には、スルフヒドリル、アミノ、ヒドロキシル、炭水化物のアノマーヒドロキシル基、およびカルボキシルが含まれるが、これらに限定されるわけではない。適切な官能基は、スルフヒドリルおよびアミノである。一例では、スルフヒドリル基は、抗191P4D12抗体またはその抗原結合断片の分子内ジスルフィド結合の還元によって生成することができる。別の態様では、スルフヒドリル基は、抗191P4D12抗体または抗原結合断片のリジン部分のアミノ基と、2-イミノチオラン(トラウト試薬)または他のスルフヒドリル生成試薬との反応によって生成することができる。特定の態様では、抗191P4D12抗体またはその抗原結合断片は組換え抗体であり、1つまたは複数のリジンを担持するように操作される。特定の他の態様では、組換え抗191P4D12抗体は、さらなるスルフヒドリル基、例えばさらなるシステインを担持するように操作される。
【0257】
一態様では、伸長単位は、抗体単位の硫黄原子と結合を形成する。硫黄原子は、抗体のスルフヒドリル基に由来し得る。この態様の代表的な伸長単位は、以下の式IIIaおよびIIIbの角括弧内に示されており、式中、L-、-W-、-Y-、-D、wおよびyは上記で定義された通りであり、R17は、-C1~C10アルキレン-、-C1~C10アルケニレン-、-C1~C10アルキニレン-、カルボシクロ-、-O-(C1~C8アルキレン)-、O-(C1~C8アルケニレン)-、-O-(C1~C8アルキニレン)-、-アリーレン-、-C1~C10アルキレン-アリーレン-、-C2~C10アルケニレン-アリーレン、-C2~C10アルキニレン-アリーレン、-アリーレン-C1~C10アルキレン-、-アリーレン-C2~C10アルケニレン-、-アリーレン-C2~C10アルキニレン-、-C1~C10アルキレン-(カルボシクロ)-、-C2~C10アルケニレン-(カルボシクロ)-、-C2~C10アルキニレン-(カルボシクロ)-、-(カルボシクロ)-C1~C10アルキレン-、-(カルボシクロ)-C2~C10アルケニレン-、-(カルボシクロ)-C2~C10アルキニレン、-ヘテロシクロ-、-C1~C10アルキレン-(ヘテロシクロ)-、-C2~C10アルケニレン-(ヘテロシクロ)-、-C2~C10アルキニレン-(ヘテロシクロ)-、-(ヘテロシクロ)-C1~C10アルキレン-、-(ヘテロシクロ)-C2~C10アルケニレン-、-(ヘテロシクロ)-C1~C10アルキニレン-、-(CH2CH2O)r-、または-(CH2CH2O)r-CH2-であり、rは1~10の範囲の整数であり、ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、アルキニクレン、アリール、炭素環、カルボシクロ、ヘテロシクロ、およびアリーレンラジカルは、単独でまたは別の基の一部としてのいずれでも、置換されていてもよい。いくつかの態様では、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリール、炭素環、カルボシクロ、ヘテロシクロおよびアリーレンラジカルは、単独でまたは別の基の一部としてのいずれでも、非置換である。
【0258】
いくつかの態様では、R17は、-C1~C10アルキレン-、-カルボシクロ-、-O-(C1~C8アルキレン)-、-アリーレン-、-C1~C10アルキレン-アリーレン-、-アリーレン-C1~C10アルキレン-、-C1~C10アルキレン-(カルボシクロ)-、-(カルボシクロ)-C1~C10アルキレン-、-C3~C8ヘテロシクロ-、-C1~C10アルキレン-(ヘテロシクロ)-、-(ヘテロシクロ)-C1~C10アルキレン-、-(CH2CH2O)r-、および-(CH2CH2O)r-CH2-から選択され、rは1~10の範囲の整数であり、ここで、前記アルキレン基は非置換であり、残りの基は置換されていてもよい。
【0259】
すべての例示的な態様から、明示的に示されていない場合でも、1個~20個の薬物単位(p=1~20)が抗体単位に連結され得ることが理解されるべきである。
【0260】
例示的な伸長単位は、R17が-(CH25-である式IIIaの伸長単位である。
【0261】
別の例示的な伸長単位は、R17が-(CH2CH2O)r-CH2-であり、rが2である式IIIaの伸長単位である。
【0262】
例示的な伸長単位は、R17がアリーレン-またはアリーレン-C1~C10アルキレン-である式IIIaの伸長単位である。いくつかの態様では、アリール基は非置換フェニル基である。
【0263】
さらに別の例示的な伸長単位は、R17が-(CH25-である式IIIbの伸長単位である。
【0264】
特定の態様では、伸長単位は、抗体単位の硫黄原子と伸長単位の硫黄原子との間のジスルフィド結合を介して抗体単位に連結される。この態様の代表的な伸長単位は式IVの角括弧内に描かれており、式中、R17、L-、-W-、-Y-、-D、wおよびyは上記で定義された通りである。
【0265】
本出願を通して、以下の式中のS部分は、文脈上特に指示されない限り、抗体単位の硫黄原子を指すことに留意すべきである。
【0266】
本明細書における硫黄結合ADCの特定の構造的説明では、抗体は「L」として表される。「Ab-S」と表示することもできる。「S」を含むことは、単に硫黄結合の特徴を示しており、特定の硫黄原子が複数のリンカー-薬物部分を有することを示すわけではない。「Ab-S」の表示を使用する構造の左括弧はまた、AbとSとの間の硫黄原子の左側に配置されてもよく、これは本明細書全体を通して記載される本発明のADCの等価表記である。
【0267】
さらに他の態様では、伸長部は、抗体単位の第一級または第二級アミノ基と結合を形成することができる反応部位を含む。これらの反応部位の例としては、活性化エステル、例えばスクシンイミドエステル、4-ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、無水物、酸塩化物、塩化スルホニル、イソシアネートおよびイソチオシアネートが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。この態様の代表的な伸長単位は、式VaおよびVbの角括弧内に描かれており、式中、-R17-、L-、-W-、-Y-、-D、wおよびyは上記で定義された通りである。
【0268】
いくつかの態様では、伸長部は、抗体単位上に存在し得る修飾炭水化物(-CHO)基に対して反応性である反応部位を含む。例えば、炭水化物は、過ヨウ素酸ナトリウムなどの試薬を使用して穏やかに酸化することができ、酸化された炭水化物の得られた(-CHO)単位は、ヒドラジド、オキシム、第一級または第二級アミン、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、およびKaneko et al.,1991,Bioconjugate Chem.2:133-41に記載されているようなアリールヒドラジドなどの官能基を含む伸長部と縮合させることができる。この態様の代表的な伸長単位は、式VIa、VIb、およびVIcの角括弧内に描かれており、式中、-R17-、L-、-W-、-Y-、-D、wおよびyは上記で定義された通りである。
【0269】
5.3.3.2 アミノ酸単位
アミノ酸単位(-W-)は、存在する場合、スペーサ単位が存在する場合は伸長単位をスペーサ単位に連結し、スペーサ単位が存在しない場合は伸長単位を薬物単位に連結し、伸長単位およびスペーサ単位が存在しない場合は抗体単位を薬物単位に連結する。
【0270】
Ww-は、例えば、モノペプチド、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、オクタペプチド、ノナペプチド、デカペプチド、ウンデカペプチドまたはドデカペプチド単位であり得る。各-W-単位は、独立して、角括弧内に以下に示す式を有し、wは0~12の範囲の整数であり:
式中、R19は、水素、メチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、ベンジル、p-ヒドロキシベンジル、-CH2OH、-CH(OH)CH3、-CH2CH2SCH3、-CH2CONH2、-CH2COOH、-CH2CH2CONH2、-CH2CH2COOH、-(CH23NHC(=NH)NH2、-(CH23NH2、-(CH23NHCOCH3、-(CH23NHCHO、-(CH24NHC(=NH)NH2、-(CH24NH2、-(CH24NHCOCH3、-(CH24NHCHO、-(CH23NHCONH2、-(CH24NHCONH2、-CH2CH2CH(OH)CH2NH2、2-ピリジルメチル-、3-ピリジルメチル-、4-ピリジルメチル-、フェニル、シクロヘキシル、
である。
【0271】
いくつかの態様では、アミノ酸単位は、癌または腫瘍関連プロテアーゼを含む1つまたは複数の酵素によって酵素的に切断されて薬物単位(-D)を遊離させることができ、一態様では、薬物単位(-D)は、放出されるとインビボでプロトン化されて薬物(D)を提供する。
【0272】
特定の態様では、アミノ酸単位は天然アミノ酸を含む。他の態様では、アミノ酸単位は非天然アミノ酸を含む。例示的なWw単位は、以下の式VII~IXによって表される:
式中、R20およびR21は以下の通りである:
式中、R20、R21およびR22は以下の通りである:
式中、R20、R21、R22およびR23は以下の通りである:
【0273】
例示的なアミノ酸単位には、R20がベンジルであり、R21が-(CH24NH2である;R20がイソプロピルであり、R21が-(CH24NH2であるか;または、R20がイソプロピルであり、R21が-(CH23NHCONH2である、上記の式VIIの単位が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0274】
別の例示的なアミノ酸単位は、R20がベンジルであり、R21がベンジルであり、R22が-(CH24NH2である式VIIIの単位である。
【0275】
特定の酵素、例えば腫瘍関連プロテアーゼによる酵素的切断のために、有用な-Ww-単位を設計し、それらの選択性を最適化することができる。一態様では、-Ww-単位は、その切断がカテプシンB、CおよびD、またはプラスミンプロテアーゼによって触媒されるものである。
【0276】
一態様では、-Ww-は、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチドまたはペンタペプチドである。R19、R20、R21、R22またはR23が水素以外である場合、R19、R20、R21、R22またはR23が結合している炭素原子はキラルである。
【0277】
R19、R20、R21、R22またはR23が結合している各炭素原子は、独立して、(S)または(R)配置である。
【0278】
1つの具体的な態様では、アミノ酸単位はバリン-シトルリン(vcまたはVal-Cit)である。別の具体的な態様では、アミノ酸単位はフェニルアラニン-リジン(すなわち、fk)である。さらに別の具体的な態様では、アミノ酸単位はN-メチルバリン-シトルリンである。さらに別の具体的な態様では、アミノ酸単位は、5-アミノ吉草酸、ホモフェニルアラニンリジン、テトライソキノリンカルボキシレートリジン、シクロヘキシルアラニンリジン、イソニペコチン酸リジン、β-アラニンリジン、グリシンセリンバリングルタミンおよびイソネペコチン酸である。
【0279】
5.3.3.3 スペーサ単位
スペーサ単位(-Y-)は、存在する場合、アミノ酸単位が存在する場合はアミノ酸単位を薬物単位に連結する。あるいは、スペーサ単位は、アミノ酸単位が存在しない場合は伸長単位を薬物単位に連結する。スペーサ単位はまた、アミノ酸単位および伸長単位の両方が存在しない場合は、薬物単位を抗体単位に連結する。
【0280】
スペーサ単位は、2つの一般的なタイプ:非自己犠牲型または自己犠牲型である。非自己犠牲スペーサ単位は、抗体薬物コンジュゲートからのアミノ酸単位の切断、特に酵素的切断後に、スペーサ単位の一部または全部が薬物単位に結合したままであるものである。非自己犠牲スペーサ単位の例としては、(グリシン-グリシン)スペーサ単位およびグリシンスペーサ単位(両方ともスキーム1に描かれている)(下記)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。グリシン-グリシンスペーサ単位またはグリシンスペーサ単位を含むコンジュゲートが酵素(例えば、腫瘍細胞関連プロテアーゼ、癌細胞関連プロテアーゼまたはリンパ球関連プロテアーゼ)による酵素的切断を受けると、グリシン-グリシン-薬物単位またはグリシン-薬物単位はL-Aa-Ww-から切断される。一態様では、標的細胞内で独立した加水分解反応が起こり、グリシン-薬物単位結合を切断し、薬物を遊離させる。
スキーム1
【0281】
いくつかの態様では、非自己犠牲スペーサ単位(-Y-)は-Gly-である。いくつかの態様では、非自己犠牲スペーサ単位(-Y-)は-Gly-Gly-である。
【0282】
一態様では、スペーサ単位は存在しない(y=0である-Yy-)。
【0283】
あるいは、自己犠牲スペーサ単位を含む抗体薬物コンジュゲートは、-Dを放出することができる。本明細書で使用される場合、「自己犠牲スペーサ」という用語は、2つの間隔のあいた化学部分を一緒に共有結合的に連結して安定な三部分分子にすることができる二官能性化学部分を指す。これは、第1の部分への結合が切断されると、第2の化学的部分から自然に分離する。
【0284】
いくつかの態様では、-Yy-は、フェニレン部分がQmで置換されているp-アミノベンジルアルコール(PAB)単位(スキーム2および3を参照)であり、ここで、Qは、-C1~C8アルキル、-C1~C8アルケニル、-C1~C8アルキニル、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C1~C8アルケニル)、-O-(C1~C8アルキニル)、-ハロゲン、-ニトロまたは-シアノであり、mは0~4の範囲の整数である。アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、単独でまたは別の基の一部としてのいずれでも、置換されていてもよい。
【0285】
いくつかの態様では、-Y-は、PAB基のアミノ窒素原子を介して-Ww-に連結され、カーボネート、カルバメートまたはエーテル基を介して-Dに直接結合されているPAB基である。特定の理論または機構に拘束されるものではないが、スキーム2は、Toki et al.,2002,J.Org.Chem.67:1866-1872によって記載されているように、カルバメートまたはカーボネート基を介して-Dに直接結合しているPAB基の可能性のある薬物放出機構を表示する。
スキーム2
【0286】
スキーム2において、Qは、-C1~C8アルキル、-C1~C8アルケニル、-C1~C8アルキニル、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C1~C8アルケニル)、-O-(C1~C8アルキニル)、-ハロゲン、-ニトロまたは-シアノであり、mは0~4の範囲の整数であり、pは1~約20の範囲である。アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、単独でまたは別の基の一部としてのいずれでも、置換されていてもよい。
【0287】
特定の理論または機構に拘束されるものではないが、スキーム3は、エーテルまたはアミン結合を介して-Dに直接結合しているPAB基の可能性のある薬物放出機構を表示しており、Dは薬物単位の一部である酸素または窒素基を含む。
スキーム3
【0288】
スキーム3において、Qは、-C1~C8アルキル、-C1~C8アルケニル、-C1~C8アルキニル、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C1~C8アルケニル)、-O-(C1~C8アルキニル)、-ハロゲン、-ニトロまたは-シアノであり、mは0~4の範囲の整数であり、pは1~約20の範囲である。アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、単独でまたは別の基の一部としてのいずれでも、置換されていてもよい。
【0289】
自己犠牲スペーサの他の例としては、2-アミノイミダゾール-5-メタノール誘導体(Hay et al.,1999,Bioorg.Med.Chem.Lett.9:2237)およびオルトまたはパラ-アミノベンジルアセタールなどの、PAB基と電子的に類似する芳香族化合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。置換および非置換4-アミノ酪酸アミド(Rodrigues et al.,1995,Chemistry Biology 2:223)、適切に置換されたビシクロ[2.2.1]およびビシクロ[2.2.2]環系(Storm et al.,1972,J.Amer.Chem.Soc.94:5815)、ならびに2-アミノフェニルプロピオン酸アミド(Amsberry et al.,1990,J.Org.Chem.55:5867)などの、アミド結合の加水分解時に環化を受けるスペーサを使用することができる。グリシンのα位で置換されたアミン含有薬物の脱離(Kingsbury et al.,1984,J.Med.Chem.27:1447)も、自己犠牲スペーサの例である。
【0290】
一態様では、スペーサ単位は、スキーム4に表示されるような分岐ビス(ヒドロキシメチル)-スチレン(BHMS)単位であり、これは、複数の薬物を組み込み、放出するために使用することができる。
スキーム4
【0291】
スキーム4において、Qは、-C1~C8アルキル、-C1~C8アルケニル、-C1~C8アルキニル、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C1~C8アルケニル)、-O-(C1~C8アルキニル)、-ハロゲン、-ニトロまたは-シアノであり、mは0~4の範囲の整数であり、nは0または1であり、pは1~約20の範囲である。アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、単独でまたは別の基の一部としてのいずれでも、置換されていてもよい。
【0292】
いくつかの態様では、-D単位は同じである。さらに別の態様では、-D部分は異なる。
【0293】
一局面では、スペーサ単位(-Yy-)は、式X~XIIによって表される:
式中、Qは、-C1~C8アルキル、-C1~C8アルケニル、-C1~C8アルキニル、-O-(C1~C8アルキル)、-O-(C1~C8アルケニル)、-O-(C1~C8アルキニル)、-ハロゲン、-ニトロまたは-シアノであり、mは0~4の範囲の整数である。アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、単独でまたは別の基の一部としてのいずれでも、置換されていてもよい。
および
【0294】
抗体-薬物コンジュゲート化合物を含む式IおよびIIの態様は、以下を含むことができる:
式中、wおよびyはそれぞれ0、1または2である、
式中、wおよびyはそれぞれ0である、
【0295】
5.3.3.4 薬物負荷
薬物負荷はpによって表され、分子中の抗体当たりの薬物単位の平均数である。薬物負荷は、抗体当たり1~20薬物単位(D)の範囲であり得る。本明細書で提供されるADCは、例えば1~20の範囲の薬物単位とコンジュゲートした抗体または抗原結合断片の集合を含む。コンジュゲーション反応からのADCの調製物中の抗体当たりの薬物単位の平均数は、質量分析およびELISAアッセイなどの従来の手段によって特徴付けることができる。pに関するADCの定量的分布も決定し得る。場合によっては、他の薬物負荷を有するADCからの、pが特定の値である均一なADCの分離、精製および特徴付けは、電気泳動などの手段によって達成し得る。
【0296】
特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~20の範囲である。特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~18の範囲である。特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~15の範囲である。特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~12の範囲である。特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~10の範囲である。特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~9の範囲である。特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~8の範囲である。特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~7の範囲である。特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~6の範囲である。特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~5の範囲である。特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~4の範囲である。特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~3の範囲である。特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、2~12の範囲である。特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、2~10の範囲である。特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、2~9の範囲である。特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、2~8の範囲である。特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、2~7の範囲である。特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、2~6の範囲である。特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、2~5の範囲である。
【0297】
特定の態様では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~約8、約2~約6、約3~約5、約3~約4、約3.1~約3.9、約3.2~約3.8、約3.2~約3.7、約3.2~約3.6、約3.3~約3.8、または約3.3~約3.7の範囲である。
【0298】
特定の態様では、コンジュゲーション反応中に、理論上の最大値よりも少ない薬物単位が抗体にコンジュゲートされる。抗体は、例えば、薬物-リンカー中間体ともリンカー試薬とも反応しないリジン残基を含み得る。一般に、抗体は、薬物単位に連結され得る多くの遊離および反応性システインチオール基を含まない;実際に、抗体中のほとんどのシステインチオール残基はジスルフィド架橋として存在する。特定の態様では、抗体は、部分的または完全な還元条件下で、ジチオスレイトール(DTT)またはトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)などの還元剤で還元されて、反応性システインチオール基を生成し得る。特定の態様では、抗体を変性条件に供して、リジンまたはシステインなどの反応性求核基を露出させる。いくつかの態様では、リンカー単位または薬物単位は、抗体単位上のリジン残基を介してコンジュゲートされる。いくつかの態様では、リンカー単位または薬物単位は、抗体単位上のシステイン残基を介してコンジュゲートされる。
【0299】
いくつかの態様では、リンカー単位または薬物単位に結合するアミノ酸は、抗体またはその抗原結合断片の重鎖にある。いくつかの態様では、リンカー単位または薬物単位に結合するアミノ酸は、抗体またはその抗原結合断片の軽鎖にある。いくつかの態様では、リンカー単位または薬物単位に結合するアミノ酸は、抗体またはその抗原結合断片のヒンジ領域にある。いくつかの態様では、リンカー単位または薬物単位に結合するアミノ酸は、抗体またはその抗原結合断片のFc領域にある。他の態様では、リンカー単位または薬物単位に結合するアミノ酸は、抗体またはその抗原結合断片の定常領域(例えば、重鎖のCH1、CH2もしくはCH3、または軽鎖のCH1)にある。さらに他の態様では、リンカー単位または薬物単位に結合するアミノ酸は、抗体またはその抗原結合断片のVHフレームワーク領域にある。さらに他の態様では、リンカー単位または薬物単位に結合するアミノ酸は、抗体またはその抗原結合断片のVLフレームワーク領域にある。
【0300】
ADCの負荷(薬物/抗体比)は、様々な方法で、例えば、(i)抗体に対する薬物-リンカー中間体またはリンカー試薬のモル過剰を制限すること、(ii)コンジュゲーションの反応時間または温度を制限すること、(iii)システインチオール修飾のための部分的または制限的な還元条件、(iv)システイン残基の数および位置がリンカー-薬物結合の数および/または位置の制御のために改変されるように、抗体のアミノ酸配列を組換え技術によって操作すること(本明細書および国際公開公報第2006/034488号(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に開示されるように調製されたチオMabまたはチオFabなど)によって、制御され得る。
【0301】
複数の求核基が薬物-リンカー中間体またはリンカー試薬と反応し、続いて薬物単位試薬と反応する場合、得られる生成物は、抗体単位に結合した1つまたは複数の薬物単位が分布しているADC化合物の混合物であることが理解されるべきである。抗体当たりの薬物の平均数は、抗体に特異的でかつ薬物に特異的な二重ELISA抗体アッセイによって混合物から計算され得る。個々のADC分子は、質量分析によって混合物中で同定され、HPLC、例えば疎水性相互作用クロマトグラフィによって分離され得る(例えば、Hamblett,K.J.,et al."Effect of drug loading on the pharmacology,pharmacokinetics,and toxicity of an anti-CD30 antibody-drug conjugate," Abstract No.624,American Association for Cancer Research,2004 Annual Meeting,March 27-31,2004,Proceedings of the AACR,Volume 45,March 2004;Alley,S.C.,et al."Controlling the location of drug attachment in antibody-drug conjugates," Abstract No.627,American Association for Cancer Research,2004 Annual Meeting,March 27-31,2004,Proceedings of the AACR,Volume 45,March 2004)。特定の態様では、単一の負荷値を有する均一なADCは、電気泳動またはクロマトグラフィによってコンジュゲーション混合物から単離され得る。
【0302】
5.3.3 抗体薬物コンジュゲートの調製
本明細書で提供される抗体薬物コンジュゲートの生成は、当業者に公知の任意の技術によって達成することができる。簡単に説明すると、抗体薬物コンジュゲートは、抗体単位としての抗191P4D12抗体またはその抗原結合断片、薬物、および任意で薬物と結合剤とを結合するリンカーを含む。いくつかの態様では、抗体は、上記のHa22-2(2,4)6.1と称される抗体のCDR領域を含む抗191P4D12抗体である。具体的な態様では、抗体は、上記のHa22-2(2,4)6.1と称される抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗191P4D12抗体である。具体的な態様では、抗体は、上記のHa22-2(2,4)6.1と称される抗体の重鎖および軽鎖を含む抗191P4D12抗体である。
【0303】
薬物および/またはリンカーを結合剤に共有結合させるために、いくつかの異なる反応が利用可能である。これは、多くの場合、リジンのアミン基、グルタミン酸およびアスパラギン酸の遊離カルボン酸基、システインのスルフヒドリル基、ならびに芳香族アミノ酸の様々な部分を含む、結合剤、例えば抗体分子のアミノ酸残基の反応によって達成される。共有結合の最も一般的に使用される非特異的な方法の1つは、化合物のカルボキシ(またはアミノ)基を抗体のアミノ(またはカルボキシ)基に連結するカルボジイミド反応である。さらに、ジアルデヒドまたはイミドエステルなどの二官能性剤が、化合物のアミノ基を抗体分子のアミノ基に連結するために使用されている。シッフ塩基反応も、結合剤への薬物の結合のために利用可能である。この方法は、グリコールまたはヒドロキシ基を含む薬物の過ヨウ素酸酸化を含み、したがってアルデヒドを形成し、次いで、これを結合剤と反応させる。結合は、結合剤のアミノ基とのシッフ塩基の形成を介して起こる。イソチオシアネートも、薬物を結合剤に共有結合させるためのカップリング剤として使用することができる。他の技術は当業者に公知であり、本発明の範囲内である。
【0304】
特定の態様では、リンカーの前駆体である中間体を適切な条件下で薬物と反応させる。特定の態様では、薬物および/または中間体上で反応基を使用する。薬物と中間体との間の反応の生成物、または誘導体化薬物を、その後、適切な条件下で抗191P4D12抗体と反応させる。
【0305】
抗体薬物コンジュゲートの特定の単位のそれぞれは、本明細書でより詳細に説明される。例示的なリンカー単位、伸長単位、アミノ酸単位、自己犠牲スペーサ単位、および薬物単位の合成および構造は、米国特許出願公開第2003-0083263号、同第2005-0238649号および同第2005-0009751号にも記載されており、これらのそれぞれは、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0306】
本明細書で提供される抗体薬物コンジュゲートを生成するための例示的な方法を以下で簡単に説明する。
【0307】
Ha22-2(2,4)6.1抗体を、本明細書に記載のvc(Val-Cit)リンカーを使用してアウリスタチン誘導体MMAEにコンジュゲートして、以下のプロトコルを使用して抗体薬物コンジュゲート(ADC)(AGS-22M6Eと称する)を作製する。vc(Val-Cit)リンカーのMMAE(Seattle Genetics,Inc.,Seattle,WA)へのコンジュゲーションを、以下のスキーム5に示す一般的な方法を使用して完了して、細胞傷害性vcMMAEを作製した(米国特許第7,659,241号を参照)。
スキーム5 vcMMAEの一般的な合成方法
ここで、AA1=アミノ酸1
AA2=アミノ酸2
AA5=アミノ酸5
DIL=ドライソロイン
DAP=ドラプロイン
リンカー=Val-Cit(vc)
【0308】
次に、以下のプロトコルを使用して抗体薬物コンジュゲートAGS-22M6Eを作製した。
【0309】
簡単に説明すると、pH5.0の10mM酢酸塩、1%ソルビトール、3%L-アルギニン中のHa22-2(2,4)6.1抗体の15mg/mL溶液に、pH8.4の20%容量の0.1M TrisCl、25mM EDTAおよび750mM NaClを添加して、溶液のpHを7.5、5mM EDTAおよび150mM塩化ナトリウムに調整する。次いで、2.3モル当量のTCEP(MAbのモルに対して)を添加することによって抗体を部分的に還元し、次いで、37℃で2時間撹拌する。次に、部分的に還元された抗体溶液を5℃に冷却し、4.4モル当量のvcMMAE(抗体のモルに対して)をDMSOの6%(v/v)溶液として添加する。混合物を5℃で60分間撹拌し、次いで、vcMMAEに対して1モル当量のN-アセチルシステインを添加した後、さらに15分間撹拌する。過剰なクエンチされたvcMMAEおよび他の反応成分を、10倍量の20mMヒスチジン、pH6.0を用いた抗体薬物コンジュゲート(ADC)の限外濾過/ダイアフィルトレーションによって除去する。
【0310】
得られた抗体薬物コンジュゲートAGS-22M6Eは、以下の式を有する:
式中、LはHa22-2(2,4)6.1であり、pは1~20である。
【0311】
5.4 薬学的組成物を使用する方法
一局面では、本明細書で提供される薬学的組成物の有効量を対象に投与する工程を含む、対象の疾患または障害を予防または治療する方法が本明細書で提供される。いくつかの態様では、対象はヒト対象である。
【0312】
いくつかの態様では、疾患または障害は癌である。いくつかの態様では、癌は、191P4D12を発現する腫瘍細胞を有する。いくつかの態様では、癌は固形腫瘍である。いくつかの態様では、癌は、結腸癌、膵臓癌、卵巣癌、肺癌、膀胱癌、乳癌、食道癌、頭部癌、または頸部癌である。いくつかの態様では、癌は結腸癌である。いくつかの態様では、癌は膵臓癌である。いくつかの態様では、癌は卵巣癌である。いくつかの態様では、癌は肺癌である。いくつかの態様では、肺癌は非小細胞肺癌である。いくつかの態様では、癌は膀胱癌である。いくつかの態様では、癌は進行性膀胱癌である。いくつかの態様では、癌は転移性膀胱癌である。いくつかの態様では、癌は尿路上皮癌である。いくつかの態様では、癌は進行性尿路上皮癌である。いくつかの態様では、癌は乳癌である。いくつかの態様では、癌は食道癌である。いくつかの態様では、癌は頭部癌である。いくつかの態様では、癌は頸部癌である。いくつかの態様では、癌は進行性または転移性癌である。
【0313】
いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物による治療は、1回または複数回の化学療法を受けたことがある対象に適応される。あるいは、本明細書で提供される薬学的組成物は、化学療法治療を受けたことがない対象のための化学療法または放射線レジメンと組み合わされる。さらに、いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物の使用は、特に化学療法剤の毒性に十分に耐えられない対象に対して、併用化学療法の投与量を減らして使用することを可能にし得る。いくつかの態様では、本明細書で開示される薬学的組成物は、免疫チェックポイント阻害剤による治療中または治療後に疾患の進行または再発を示した転移性尿路上皮癌の患者に投与される。
【0314】
本明細書で提供される薬学的組成物を投与する方法には、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内および皮下)、硬膜外、ならびに粘膜(例えば、鼻腔内および経口経路)投与が含まれるが、これらに限定されるわけではない。具体的な態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、鼻腔内、筋肉内、静脈内、または皮下に投与される。本明細書で提供される薬学的組成物は、任意の好都合な経路によって、例えば注入またはボーラス注射によって、上皮または粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、鼻腔内粘膜、直腸および腸粘膜など)を介した吸収によって投与され得、他の生物学的に活性な剤と一緒に投与され得る。投与は、全身的または局所的であり得る。さらに、例えば、吸入器またはネブライザ、およびエアロゾル化剤を含む製剤の使用によって、肺投与も使用することができる。例えば、それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,019,968号、同第5,985,320号、同第5,985,309号、同第5,934,272号、同第5,874,064号、同第5,855,913号、同第5,290,540号、および同第4,880,078号;ならびに国際公開公報第92/19244号、同第97/32572号、同第97/44013号、同第98/31346号、および同第99/66903号を参照。
【0315】
具体的な態様では、本明細書で提供される薬学的組成物を、治療を必要とする領域に局所的に投与することが望ましい場合がある。これは、例えば、限定されることなく、局所注入、局所投与によって(例えば、鼻腔内スプレーによって)、注射によって、またはインプラントを用いて達成され得、前記インプラントは、サイラスティック膜などの膜、または繊維を含む多孔性、非多孔性、またはゼラチン状の材料である。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物を投与する場合、本明細書で提供される抗体薬物コンジュゲートが吸収されない材料を使用するように注意しなければならない。
【0316】
別の態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、小胞、特にリポソーム中で送達することができる(Langer,1990,Science 249:1527-1533;Treat et al.,in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez-Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353-365(1989);Lopez-Berestein,ibid.,pp.317-327を参照;一般的に同書を参照)。
【0317】
別の態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、制御放出または徐放システムで送達することができる。一態様では、ポンプを使用して制御放出または徐放を達成し得る(Langer,前出;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:20;Buchwald et al.,1980,Surgery 88:507;Saudek et al.,1989,N.Engl.J.Med.321:574を参照)。別の態様では、ポリマー材料を使用して、予防薬もしくは治療薬(例えば、本明細書で提供される抗体薬物コンジュゲート)または本明細書で提供される薬学的組成物の制御放出または徐放を達成することができる(例えば、Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984);Ranger and Peppas,1983,J.,Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61を参照;Levy et al.,1985,Science 228:190;During et al.,1989,Ann.Neurol.25:351;Howard et al.,1989,J.Neurosurg.7 1:105も参照のこと);米国特許第5,679,377号;同第5,916,597号;同第5,912,015号;同第5,989,463号;同第5,128,326号;PCT国際公開公報第99/15154号;およびPCT国際公開公報第99/20253号。徐放性製剤に使用されるポリマーの例としては、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン-コ-ビニルアセテート)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、およびポリオルトエステルが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。一態様では、徐放性製剤に使用されるポリマーは、不活性であり、浸出性不純物を含まず、保存時に安定であり、無菌で、生分解性である。さらに別の態様では、制御放出または徐放システムを治療標的、すなわち鼻腔または肺の近くに配置することができ、したがって、全身用量のほんの一部しか必要としない(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release、前出、vol.2,pp.115-138(1984)を参照)。制御放出システムは、Langerによる総説(1990,Science 249:1527-1533)で論じられている。当業者に公知の任意の技術を使用して、本明細書で提供される抗体薬物コンジュゲートまたは薬学的組成物を含む徐放性製剤を生成することができる。例えば、それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,526,938号、PCT国際公開公報第91/05548号、同第96/20698号、Ning et al.,1996,"Intratumoral Radioimmunotherapy of a Human Colon Cancer Xenograft Using a Sustained-Release Gel,"Radiotherapy&Oncology 39:179-189,Song et al.,1995,"Antibody Mediated Lung Targeting of Long-Circulating Emulsions,"PDA Journal of Pharmaceutical Science&Technology 50:372-397,Cleek et al.,1997,"Biodegradable Polymeric Carriers for a bFGF Antibody for Cardiovascular Application,"Pro.Int'l.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.24:853-854、およびLam et al.,1997,"Microencapsulation of Recombinant Humanized Monoclonal Antibody for Local Delivery,"Proc.Int'l.Symp.Control Rel.Bioact.Mater.24:759-760を参照。
【0318】
癌の予防および/または治療に有効な本明細書で提供される薬学的組成物の量は、標準的な臨床技術によって決定することができる。さらに、インビトロアッセイは、任意で、最適な投与量範囲を特定するのを助けるために使用され得る。使用される正確な用量は、投与経路、および疾患または障害の重症度にも依存し、診療医の判断および各対象の状況に従って決定されるべきである。有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験系から得られた用量反応曲線から外挿され得る。
【0319】
特定の態様では、本明細書で提供される治療方法は、単一のADC、ならびに異なる抗191P4D12抗体または異なる薬物単位を含む異なるADCの組合せまたはカクテルの投与を企図する。いくつかの態様では、そのような方法は、例えば、それらが異なるエピトープを標的とする、異なるエフェクタ機構を利用する、または細胞傷害性抗体を免疫エフェクタ機能に依存する抗体と直接組み合わせるADCを含むので、特定の利点を有する。そのような方法は、相乗的な治療効果を示すことができる。さらに、本明細書で提供される薬学的組成物は、様々な化学療法剤および生物学的剤、アンドロゲン遮断薬、免疫調節剤(例えば、IL-2、GM-CSF)、手術または放射線を含むがこれらに限定されるわけではない他の治療法と同時に投与することができる。
【0320】
一態様では、ヒト腫瘍を含む腫瘍が、化学療法剤または放射線またはそれらの組合せと共に本明細書で提供される薬学的組成物で治療される場合、相乗効果がある。
【0321】
本明細書で提供される薬学的組成物および化学療法または放射線またはその両方の組合せを使用して腫瘍細胞の増殖を阻害する方法は、化学療法または放射線療法の開始前、開始中、または開始後に、ならびにそれらの任意の組合せ(すなわち、化学療法および/または放射線療法の開始前と開始中、開始前と開始後、開始中と開始後、または開始前、開始中および開始後)に本薬学的組成物を投与する工程を含む。治療プロトコルおよび特定の患者の必要性に応じて、この方法は、最も有効な治療を提供し、最終的に患者の寿命を延ばすように実施される。
【0322】
化学療法剤の投与は、非経口および経腸経路による全身投与を含む様々な方法で達成することができる。一態様では、化学療法剤は別々に投与される。化学療法剤または化学療法の特定の例としては、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、ダカルバジン、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、インターフェロンα、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、ゲムシタビン、クロラムブシル、タキソールおよびそれらの組合せが挙げられる。
【0323】
本明細書で提供される薬学的組成物と組み合わせて使用される放射線源は、治療される患者の外部または内部のいずれかであり得る。線源が患者の体外にある場合、治療は体外照射療法(EBRT)として公知である。放射線源が患者の体内にある場合、治療は近接照射療法(BT)と呼ばれる。
【0324】
上記の治療レジメンを、さらなる癌治療薬および/またはレジメン、例えばさらなる化学療法、癌ワクチン、シグナル伝達阻害剤、異常な細胞増殖または癌を治療するのに有用な剤、IGF-1Rに結合することによって腫瘍成長を阻害する抗体(例えば、国際公開公報第2005/092380号(Pfizer)に記載されている抗CTLA-4抗体)または他のリガンド、およびサイトカインとさらに組み合わせ得る。
【0325】
哺乳動物がさらなる化学療法を受ける場合、上記の化学療法剤が使用され得る。さらに、成長因子阻害剤、生物学的応答調節剤、抗ホルモン療法、選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)、血管新生阻害剤、および抗アンドロゲン剤を使用し得る。例えば、抗ホルモン剤、例えば、Nolvadex(タモキシフェン)などの抗エストロゲン剤、またはCasodex(4'-シアノ-3-(4-フルオロフェニルスルホニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3'-(トリフルオロメチル)プロピオンアニリド)などの抗アンドロゲン剤を使用し得る。
【0326】
いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、例えば癌を治療するために、第2の治療薬と組み合わせて使用される。
【0327】
いくつかの態様では、第2の治療薬は免疫チェックポイント阻害剤である。本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント阻害剤」または「チェックポイント阻害剤」という用語は、1つまたは複数のチェックポイントタンパク質を全体的または部分的に減少させる、阻害する、妨げるまたは調節する分子を指す。特定の理論に限定されることなく、チェックポイントタンパク質は、T細胞の活性化または機能を調節する。CTLA-4とそのリガンドであるCD80およびCD86;ならびにPD-1とそのリガンドであるPD-LlおよびPD-L2などの多数のチェックポイントタンパク質が公知である(Pardoll,Nature Reviews Cancer,2012,12,252-264)。これらのタンパク質は、T細胞応答の共刺激相互作用または阻害性相互作用に関与するようである。免疫チェックポイントタンパク質は、自己寛容ならびに生理学的免疫応答の持続期間および大きさを調節し、維持するようである。免疫チェックポイント阻害剤は、抗体を含むか、または抗体に由来する。
【0328】
一態様では、チェックポイント阻害剤はCTLA-4阻害剤である。一態様では、CTLA-4阻害剤は抗CTLA-4抗体である。抗CTLA-4抗体の例としては、米国特許第5,811,097号;同第5,811,097号;同第5,855,887号;同第6,051,227号;同第6,207,157号;同第6,682,736号;同第6,984,720号;および同第7,605,238号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されるわけではなく、これらはすべて、その全体が本明細書に組み入れられる。一態様では、抗CTLA-4抗体はトレメリムマブ(チシリムマブまたはCP-675,206としても公知)である。別の態様では、抗CTLA-4抗体はイピリムマブ(MDX-010またはMDX-101としても公知)である。イピリムマブは、CTLA-4に結合する完全ヒトモノクローナルIgG抗体である。イピリムマブは、Yervoy(商標)の商品名で市販されている。
【0329】
一態様では、チェックポイント阻害剤はPD-1/PD-L1阻害剤である。PD-l/PD-L1阻害剤の例としては、米国特許第7,488,802号;同第7,943,743号;同第8,008,449号;同第8,168,757号;同第8,217,149、ならびにPCT国際公開公報第2003042402号、同第2008156712号、同第2010089411号、同第2010036959号、同第2011066342号、同第2011159877号、同第2011082400号、および同第2011161699号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されるわけではなく、これらはすべて、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0330】
一態様では、チェックポイント阻害剤はPD-1阻害剤である。一態様では、PD-1阻害剤は抗PD-1抗体である。一態様では、抗PD-1抗体は、BGB-A317、ニボルマブ(ONO-4538、BMS-936558、もしくはMDX1106としても公知)またはペムブロリズマブ(MK-3475、SCH 900475、もしくはラムブロリズマブとしても公知)である。一態様では、抗PD-1抗体はニボルマブである。ニボルマブは、ヒトIgG4抗PD-1モノクローナル抗体であり、Opdivo(商標)の商品名で市販されている。別の態様では、抗PD-1抗体はペムブロリズマブである。ペムブロリズマブは、ヒト化モノクローナルIgG4抗体であり、Keytruda(商標)の商品名で市販されている。さらに別の態様では、抗PD-1抗体は、ヒト化抗体であるCT-011である。単独で投与されたCT-011は、再発時の急性骨髄性白血病(AML)の治療において応答を示すことができなかった。さらに別の態様では、抗PD-1抗体は、融合タンパク質であるAMP-224である。別の態様では、PD-1抗体はBGB-A317である。BGB-A317は、Fcγ受容体Iに結合する能力が特異的に操作されており、PD-1に対する高い親和性と優れた標的特異性を備えた独特の結合シグネチャを有するモノクローナル抗体である。
【0331】
一態様では、チェックポイント阻害剤はPD-L1阻害剤である。一態様では、PD-L1阻害剤は抗PD-L1抗体である。一態様では、抗PD-L1抗体はMEDI4736(デュルバルマブ)である。別の態様では、抗PD-L1抗体はBMS-936559(MDX-1105-01としても公知)である。さらに別の態様では、PD-L1阻害剤はアテゾリズマブ(MPDL3280A、およびTecentriq(登録商標)としても公知)である。
【0332】
一態様では、チェックポイント阻害剤はPD-L2阻害剤である。一態様では、PD-L2阻害剤は抗PD-L2抗体である。一態様では、抗PD-L2抗体はrHIgM12B7Aである。
【0333】
一態様では、チェックポイント阻害剤は、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)阻害剤である。一態様では、LAG-3阻害剤は、可溶性Ig融合タンパク質であるIMP321である(Brignone et al.,J.Immunol.,2007,179,4202-4211)。別の態様では、LAG-3阻害剤はBMS-986016である。
【0334】
一態様では、チェックポイント阻害剤はB7阻害剤である。一態様では、B7阻害剤は、B7-H3阻害剤またはB7-H4阻害剤である。一態様では、B7-H3阻害剤は、抗B7-H3抗体であるMGA271である(Loo et al.,Clin.Cancer Res.,2012,3834)。
【0335】
一態様では、チェックポイント阻害剤は、TIM3(T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3)阻害剤である(Fourcade et al.,J.Exp.Med.,2010,207,2175-86;Sakuishi et al.,J.Exp.Med.,2010,207,2187-94)。
【0336】
一態様では、チェックポイント阻害剤はOX40(CD134)アゴニストである。一態様では、チェックポイント阻害剤は抗OX40抗体である。一態様では、抗OX40抗体は抗OX-40である。別の態様では、抗OX40抗体はMEDI6469である。
【0337】
一態様では、チェックポイント阻害剤はGITRアゴニストである。一態様では、チェックポイント阻害剤は抗GITR抗体である。一態様では、抗GITR抗体はTRX518である。
【0338】
一態様では、チェックポイント阻害剤はCD137アゴニストである。一態様では、チェックポイント阻害剤は抗CD137抗体である。一態様では、抗CD137抗体はウレルマブである。別の態様では、抗CD137抗体はPF-05082566である。
【0339】
一態様では、チェックポイント阻害剤はCD40アゴニストである。一態様では、チェックポイント阻害剤は抗CD40抗体である。一態様では、抗CD40抗体はCF-870,893である。
【0340】
一態様では、チェックポイント阻害剤は、組換えヒトインターロイキン-15(rhIL-15)である。
【0341】
一態様では、チェックポイント阻害剤はIDO阻害剤である。一態様では、IDO阻害剤はINCB024360である。別の態様では、IDO阻害剤はインドキシモドである。
【0342】
特定の態様では、本明細書で提供される併用療法は、本明細書に記載のチェックポイント阻害剤の2つまたはそれ以上(同じまたは異なるクラスのチェックポイント阻害剤を含む)を含む。さらに、本明細書に記載の併用療法は、本明細書に記載され、当技術分野で理解されている疾患を治療するために適切である場合、本明細書に記載の1つまたは複数の第2の活性剤と組み合わせて使用することができる。
【0343】
いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤は、本薬学的組成物の投与前に投与される。他の態様では、チェックポイント阻害剤は、本明細書で提供される薬学的組成物と同時に(例えば、同じ投与期間に)投与される。さらに他の態様では、チェックポイント阻害剤は、本明細書で提供される薬学的組成物の投与後に投与される。
【0344】
いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤の量は、標準的な臨床技術によって決定することができる。
【0345】
チェックポイント阻害剤の投与量は、約0.1μg/ml~約450μg/mlの血清力価をもたらし、いくつかの態様では、少なくとも0.1μg/ml、少なくとも0.2μg/ml、少なくとも0.4μg/ml、少なくとも0.5μg/ml、少なくとも0.6μg/ml、少なくとも0.8μg/ml、少なくとも1μg/ml、少なくとも1.5μg/ml、例えば少なくとも2μg/ml、少なくとも5μg/ml、少なくとも10μg/ml、少なくとも15μg/ml、少なくとも20μg/ml、少なくとも25μg/ml、少なくとも30μg/ml、少なくとも35μg/ml、少なくとも40μg/ml、少なくとも50μg/ml、少なくとも75μg/ml、少なくとも100μg/ml、少なくとも125μg/ml、少なくとも150μg/ml、少なくとも200μg/ml、少なくとも250μg/ml、少なくとも300μg/ml、少なくとも350μg/ml、少なくとも400μg/ml、または少なくとも450μg/mlを、癌の予防および/または治療のためにヒトに投与することができる。使用されるチェックポイント阻害剤の正確な用量は、投与経路、および対象における癌の重症度にも依存し、診療医の判断および各患者の状況に従って決定されるべきであることが理解されるべきである。
【0346】
いくつかの態様では、患者に投与されるチェックポイント阻害剤(例えば、PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤)の投与量は、典型的には0.1mg/kg対象体重~100mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約1mg/kg対象体重~約75mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、1mg/kg対象体重~20mg/kg対象体重、例えば1mg/kg対象体重~5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約1mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約1.5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約2mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約2.5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約3mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約3.5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約4mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約4.5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約5.5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約6mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約6.5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約7mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約7.5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約8mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約8.5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約9.0mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約10.0mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約15.0mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約20.0mg/kg対象体重である。
【0347】
いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物は、密閉容器中の乾燥滅菌凍結乾燥粉末または水不含濃縮物として供給され、例えば、水または生理食塩水を用いて対象への投与のために適切な濃度に再構成することができる。特定の態様では、抗体薬物コンジュゲートは、少なくとも0.1mg、少なくとも0.5mg、少なくとも1mg、少なくとも2mg、または少なくとも3mg、例えば少なくとも5mg、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも30mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも60mg、少なくとも75mg、少なくとも80mg、少なくとも85mg、少なくとも90mg、少なくとも95mg、または少なくとも100mgの単位投与量で、密閉容器中の乾燥滅菌凍結乾燥粉末として供給される。凍結乾燥抗体薬物コンジュゲートは、その元の容器中で2~8℃で保存することができ、抗体薬物コンジュゲートは、再構成後12時間以内、例えば6時間以内、5時間以内、3時間以内、または1時間以内に投与することができる。代替的な態様では、本明細書で提供される抗体薬物コンジュゲートを含む薬学的組成物は、抗体薬物コンジュゲートの量および濃度を示す密閉容器中の液体形態で供給される。特定の態様では、液体形態の抗体薬物コンジュゲートは、密封容器中で、少なくとも0.1mg/ml、少なくとも0.5mg/ml、または少なくとも1mg/ml、例えば少なくとも5mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/ml、少なくとも25mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも40mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも60mg/ml、少なくとも70mg/ml、少なくとも80mg/ml、少なくとも90mg/ml、または少なくとも100mg/mlで供給される。
【0348】
いくつかの態様では、癌の予防および/または治療に有効な本明細書で提供される予防薬もしくは治療薬(例えば、本明細書で提供される抗体薬物コンジュゲート)、または薬学的組成物の量は、標準的な臨床技術によって決定することができる。
【0349】
したがって、約0.1μg/ml~約450μg/ml、いくつかの態様では、少なくとも0.1μg/ml、少なくとも0.2μg/ml、少なくとも0.4μg/ml、少なくとも0.5μg/ml、少なくとも0.6μg/ml、少なくとも0.8μg/ml、少なくとも1μg/ml、少なくとも1.5μg/ml、例えば少なくとも2μg/ml、少なくとも5μg/ml、少なくとも10μg/ml、少なくとも15μg/ml、少なくとも20μg/ml、少なくとも25μg/ml、少なくとも30μg/ml、少なくとも35μg/ml、少なくとも40μg/ml、少なくとも50μg/ml、少なくとも75μg/ml、少なくとも100μg/ml、少なくとも125μg/ml、少なくとも150μg/ml、少なくとも200μg/ml、少なくとも250μg/ml、少なくとも300μg/ml、少なくとも350μg/ml、少なくとも400μg/ml、または少なくとも450μg/mlの血清力価をもたらす薬学的組成物中の抗体薬物コンジュゲートの投与量を、癌の予防および/または治療のためにヒトに投与することができる。製剤に使用される正確な用量は、投与経路、および対象における癌の重症度にも依存し、診療医の判断および各患者の状況に従って決定されるべきであることが理解されるべきである。
【0350】
有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験系から得られた用量反応曲線から外挿され得る。
【0351】
本明細書で提供される抗体薬物コンジュゲートを含む薬学的組成物の場合、患者に投与される抗体薬物コンジュゲートの投与量は、典型的には、0.1mg/kg対象体重~100mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約1mg/kg対象体重~約75mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、1mg/kg対象体重~20mg/kg対象体重、例えば1mg/kg対象体重~5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約1mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約1.25mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約1.5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約2mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約2.5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約3mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約3.5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約4mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約4.5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約5.5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約6mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約6.5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約7mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約7.5mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約8mg/kg対象体重である。いくつかの態様では、患者に投与される投与量は、約8.5mg/kg対象体重である。
【0352】
いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートは、ベースラインでの患者の実際の体重に基づいて投与され、患者の体重が前のサイクルのベースラインから≧10%変化するか、または用量調整基準が満たされない限り、用量は変化しない。いくつかの態様では、体重が100kgを超える患者を除いて、実際の体重が使用され、そのような場合、用量は100kgの体重に基づいて計算される。いくつかの態様では、最大用量は、1.00mg/kgの用量レベルを受ける患者については100mgであり、1.25mg/kgの用量レベルを受ける患者については125mgである。
【0353】
一態様では、癌を治療するために、約100mg/kgもしくは約100mg/kg以下、約75mg/kgもしくは約75mg/kg以下、約50mg/kgもしくは約50mg/kg以下、約25mg/kgもしくは約25mg/kg以下、約10mg/kgもしくは約10mg/kg以下、約5mg/kgもしくは約5mg/kg以下、約1mg/kgもしくは約1mg/kg以下、約0.5mg/kgもしくは約0.5mg/kg以下、または約0.1mg/kgもしくは約0.1mg/kg以下の本薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートを、5回、4回、3回、2回、または1回投与する。いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体薬物コンジュゲートを含む薬学的組成物は、約1~12回投与され、用量は、医師によって決定されるように、必要に応じて、例えば、週に1回、2週間に1回、月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回などで投与され得る。いくつかの態様では、より低い用量(例えば、0.1mg/kg~15mg/kg)をより頻繁に(例えば、3回~6回)投与することができる。他の態様では、より高い用量(例えば、25mg/kg~100mg/kg)をより低い頻度(例えば、1回~3回)で投与することができる。
【0354】
いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートの単回用量は、癌を予防および/または治療するために、一定期間(例えば、1年)にわたって2週間(例えば、約14日)に1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回、20回、21回、22回、23回、24回、25回、または26回のサイクルで患者に投与され、用量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約1.25mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、またはそれらの組合せ(すなわち、各投与の毎月の用量は同一であっても同一でなくてもよい)からなる群より選択される。
【0355】
いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートの単回用量は、癌を予防および/または治療するために、一定期間(例えば、1年)にわたって3週間(例えば、約21日)に1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回、20回、21回、22回、23回、24回、25回、または26回のサイクルで患者に投与され、用量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約1.25mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、またはそれらの組合せ(すなわち、各投与の毎月の用量は同一であっても同一でなくてもよい)からなる群より選択される。
【0356】
いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートの単回用量は、癌を予防および/または治療するために、一定期間(例えば、1年)にわたって4週間(例えば、約28日)に1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回、20回、21回、22回、23回、24回、25回、または26回のサイクルで患者に投与され、用量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約1.25mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、またはそれらの組合せ(すなわち、各投与の毎月の用量は同一であっても同一でなくてもよい)からなる群より選択される。
【0357】
別の態様では、本明細書で提供される薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートの単回用量は、癌を予防および/または治療するために、一定期間(例えば、1年)にわたっておよそ月に1回(例えば、約30日)の間隔で1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、または12回、患者に投与され、用量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約1.25mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、またはそれらの組合せ(すなわち、各投与の毎月の用量は同一であっても同一でなくてもよい)からなる群より選択される。
【0358】
別の態様では、本明細書で提供される薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートの単回用量は、癌を予防および/または治療するために、一定期間(例えば、1年)にわたっておよそ2ヶ月に1回(例えば、約60日)の間隔で1回、2回、3回、4回、5回、または6回、患者に投与され、用量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約1.25mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、またはそれらの組合せ(すなわち、各投与の毎月の用量は同一であっても同一でなくてもよい)からなる群より選択される。
【0359】
さらに別の態様では、本明細書で提供される薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートの単回用量は、癌を予防および/または治療するために、一定期間(例えば、1年)にわたっておよそ3ヶ月に1回(例えば、約120日)の間隔で1回、2回、3回、または4回、患者に投与され、用量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約1.25mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、約100mg/kg、またはそれらの組合せ(すなわち、各投与の毎月の用量は同一であっても同一でなくてもよい)からなる群より選択される。
【0360】
特定の態様では、本明細書で提供される薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートの用量の患者への投与経路は、鼻腔内、筋肉内、静脈内、またはそれらの組合せであるが、本明細書に記載の他の経路も許容される。各用量は、同一の投与経路によって投与されてもよく、同一の投与経路によって投与されなくてもよい。いくつかの態様では、本明細書で提供される薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートは、複数の投与経路を介して、1つまたは複数のさらなる治療薬の他の用量と同時にまたはそれに続いて投与され得る。
【0361】
いくつかのより具体的な態様では、本明細書で提供される薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートは、静脈内(IV)注射または注入によって、約1mg/kg対象体重、約1.25mg/kg対象体重、または約1.5mg/kg対象体重の用量で投与される。
【0362】
いくつかのより具体的な態様では、本明細書で提供される薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートは、約1mg/kg対象体重、約1.25mg/kg対象体重、または約1.5mg/kg対象体重の用量で、3週間に2回のサイクルで、約30分かけて静脈内(IV)注射または注入によって投与される。いくつかの態様では、薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートは、3週間のサイクルごとの第1日および第8日に約30分かけて静脈内(IV)注射または注入によって投与される。いくつかの態様では、この方法は、各3週間に1回または複数回のサイクルで、静脈内(IV)注射または注入によって免疫チェックポイント阻害剤を投与する工程をさらに含む。いくつかの態様では、この方法は、3週間のサイクルごとの第1日に静脈内(IV)注射または注入によって免疫チェックポイント阻害剤を投与する工程をさらに含む。いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブであり、ペムブロリズマブは、約30分かけて約200mgの量で投与される。他の態様では、免疫チェックポイント阻害剤はアテゾリズマブであり、アテゾリズマブは、約60分または約30分かけて約1200mgの量で投与される。いくつかの態様では、抗体薬物コンジュゲートは、免疫チェックポイント阻害剤による治療中または治療後に疾患の進行または再発を示した尿路上皮癌の患者に投与される。いくつかの態様では、抗体薬物コンジュゲートは、免疫チェックポイント阻害剤による治療中または治療後に疾患の進行または再発を示した転移性尿路上皮癌の患者に投与される。
【0363】
他のより具体的な態様では、本明細書で提供される薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートは、約1mg/kg対象体重、約1.25mg/kg対象体重、または約1.5mg/kg対象体重の用量で、4週間に3回のサイクルで、約30分かけて静脈内(IV)注射または注入によって投与される。いくつかの態様では、薬学的組成物へと製剤化された抗体薬物コンジュゲートは、4週間のサイクルごとの第1日、第8日および第15日に約30分かけて静脈内(IV)注射または注入によって投与される。いくつかの態様では、この方法は、各4週間に1回または複数回のサイクルで、静脈内(IV)注射または注入によって免疫チェックポイント阻害剤を投与する工程をさらに含む。いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤はペムブロリズマブである。他の態様では、免疫チェックポイント阻害剤はアテゾリズマブである。いくつかの態様では、抗体薬物コンジュゲートは、免疫チェックポイント阻害剤による治療中または治療後に疾患の進行または再発を示した尿路上皮癌の患者に投与される。いくつかの態様では、抗体薬物コンジュゲートは、免疫チェックポイント阻害剤による治療中または治療後に疾患の進行または再発を示した転移性尿路上皮癌の患者に投与される。
【0364】
簡潔にするために、本明細書では特定の略語を使用する。一例は、アミノ酸残基を表す1文字略語である。アミノ酸ならびにそれらの対応する3文字略語および1文字略語は以下の通りである。
【0365】
本発明は、一般に、多数の態様を説明するために断定的な文言を使用して本明細書に開示される。本発明はまた、具体的には、物質または材料、方法工程および条件、プロトコル、手順、アッセイまたは分析などの特定の主題が完全にまたは部分的に除外される態様を含む。したがって、本発明は、一般に、本発明が含まないものに関して本明細書では表現されていないが、それにもかかわらず、本発明に明示的に含まれない局面が本明細書に開示される。
【0366】
本発明を実施するための本発明者らに公知の最良の形態を含む、本発明の特定の態様を本明細書に記載する。前述の説明を読むと、開示された態様の変形が当業者に明らかになる可能性があり、当業者はそのような変形を適切に使用し得ると予想される。したがって、本発明は、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施されること、本発明は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲に列挙される主題のすべての修正および等価物を含むことが意図されている。さらに、本明細書で特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、そのすべての可能な変形における上述の要素の任意の組合せが本発明に包含される。
【0367】
本明細書で引用されるすべての刊行物、特許出願、アクセッション番号、および他の参考文献は、あたかも各個々の刊行物または特許出願が参照により組み入れられることが具体的かつ個別に示されているかのごとくに、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。本明細書で論じられる刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示のためにのみ提供される。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明によってそのような刊行物に先行する権利がないことの承認と解釈されるべきではない。さらに、提供される公開日は、独立して確認する必要があり得る実際の公開日とは異なる場合がある。
【0368】
本発明のいくつかの態様を説明してきた。それにもかかわらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正を行い得ることが理解されるであろう。したがって、実験のセクションにおける説明は、特許請求の範囲に記載される発明の範囲を例示することを意図しているが、限定することを意図していない。
【実施例
【0369】
6. 実施例
以下は、試験で使用された様々な方法および材料の説明であり、当業者に本発明を作成および使用する方法の完全な開示および説明を提供するために提示されており、本発明者らが自らの発明と見なすものの範囲を限定することを意図するものではなく、以下の実験が実施されたこと、および実施され得るすべての実験であることを表すことを意図するものでもない。現在形で書かれた例示的な説明は必ずしも実施されたわけではなく、むしろ、本発明の教示に関連するデータなどを生成するために説明が実施され得ることが理解されるべきである。使用される数(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するように努めてきたが、いくらかの実験誤差および偏差が考慮されるべきである。
【0370】
6.1 実施例1-pHおよび緩衝液のスクリーニング
AGS-22M6Eを14の候補緩衝液(すべて20mM;以下の表1に詳述されている)中10mg/mLで製剤化した。クエン酸でpH5.2およびpH5.7に滴定した20mMクエン酸ナトリウム緩衝液、ならびにHClでpH5.5、pH6.0およびpH6.5に滴定した20mMヒスチジン緩衝液を使用した製剤を評価した。さらに、3つの異なるアニオン、すなわち塩化物、リン酸塩およびコハク酸塩をヒスチジン緩衝系で評価した。液体製剤を、40℃の保存温度条件に2週間、室温(RT)で24時間の撹拌、ならびに凍結融解サイクル(-70℃で凍結および20℃~25℃で解凍を1、3および10サイクル)に供した。
【0371】
(表1)
注:5%スクロース(分子量342)=146mM;5.5%トレハロース二水和物(分子量378)=146mM。
【0372】
製剤の調製および試験デザインを以下でより詳細に説明する。
【0373】
製剤試験に使用されるタンパク質生成物
それぞれ約50mlのAGS-22M6E(ロット番号AGS22M6-VCE-02)を含む4本のチューブ、合計約2.5グラムを凍結状態で受領した。AGS-22M6Eは、5%スクロースおよび0.02%ポリソルベート20を含む20mMヒスチジンpH6.0緩衝液中12.5mg/mLであった。材料は、使用するまで-70℃で保存した。
【0374】
製剤緩衝液の調製
クエン酸(0.1M)、クエン酸ナトリウム(0.1M)およびL-ヒスチジン(0.2M)、コハク酸(0.25M)、トレハロース二水和物(40%)、スクロース(40%)、塩酸(2M)およびリン酸(2M)を含む原液を以下の表2に従って調製した。
【0375】
(表2)
【0376】
試薬を上記の表に従って秤量した。適量のMilli-Q水を添加して試薬を溶解した。溶液を0.22μmフィルタで濾過した。
【0377】
透析用製剤緩衝液の調製
1.0Lの各製剤を、以下の表3に従って透析およびプラセボバイアル充填のために調製した。
【0378】
(表3)
【0379】
pHを適切な酸で目標pH±0.1に調整した。緩衝液は、使用するまで4℃で保存した。
【0380】
製剤の調製
それぞれ50mlのAGS-22M6E(ロット番号AGS22M6-VCE-02)を含む4本のチューブを室温の水浴中で解凍し、次いで250mlボトル中で合わせた。11mlを各製剤に割り当て、透析カセットに添加した。カセットを、約40倍過剰の製剤緩衝液を含むビーカーに入れ、2℃~8℃で一晩撹拌した。緩衝液を廃棄し、新鮮な緩衝液を添加し、2℃~8℃で一晩撹拌した。材料をカセットから取り出し、50mlチューブに移し、濃度を決定し、最終濃度が10mg/mlになるように対応する製剤緩衝液で容量を調整した。プラセボは、生成物を製剤化するために使用された対応する緩衝液であった。
【0381】
製剤のバイアル充填および栓締め
滅菌濾過および充填をBaker SG600層流フード内で行った。製剤およびプラセボを、無菌技術(Millipore Millex-GV 0.22μm PVDFシリンジフィルタ、No.SLGV033RS)を使用して滅菌濾過した。滅菌栓付きバイアル(Hollister-Stier 2ml滅菌栓付きバイアル、No.7505ZA)をフード内でデクリンプ(decrimp)し、無菌技術を用いて栓を取り外した。1.0mlの製剤化された生成物またはプラセボをバイアルに充填し、次いで再び栓をした。
【0382】
材料要件および試料マップ
材料要件および試料マップは以下の通りである。
【0383】
(表4)
【0384】
時点およびアッセイ
時点およびアッセイは以下の表5の通りである。
【0385】
(表5)
【0386】
液体製剤の40℃での安定性試験デザイン
製剤およびプラセボバイアルを40℃に設定したインキュベータ内に直立させた。各時点で、各製剤について1つの活性バイアルおよび1つのプラセボバイアルを試料マップに従って保存条件から取り出した。試料を-70℃で凍結させ、試験の最後にバッチ分析した。分析の前に、試料を室温で解凍した。各試料の3つのアリコートのセット(各試料について70μLのアリコート)を、0.22μmフィルタで濾過した後、-70℃で凍結させた。分析試験後、再試験が必要な場合に備えて、残りの材料を2℃~8℃で一晩保存した。すべてのアッセイが完了した後、残りの材料を-70℃で保存した。2つの凍結アリコートをcIEFおよび効力アッセイに使用した。
【0387】
凍結融解(-70℃)の安定性試験デザイン
各製剤の1つのバイアル(1.0mL充填)を-70℃の冷凍庫に直立させて少なくとも4時間置き、凍結させた。解凍のために、各バイアルを保存場所から取り出し、氷が観察されなくなるまで室温で解凍し、次いでバイアルを穏やかに旋回させた。これは、1回の完全な凍結融解サイクルを構成した。各試験製剤試料バイアルについて、1回、3回および10回の凍結融解サイクルを完了した。最終凍結融解サイクルの後、すべての試料を分析試験によって評価した。各試料の3つのアリコートのセット(各試料について70μLのアリコート)を直ちに-70℃で凍結させた。分析試験後、再試験が必要な場合に備えて、残りの材料を2℃~8℃で一晩保存した。すべてのアッセイが完了した後、残りの材料を-70℃で保存した。2つの凍結アリコートをcIEFおよび効力アッセイに使用した。
【0388】
撹拌試験デザイン
各製剤について1つのバイアルを標準的な冷凍ボックス内で直立に固定した。次いで、ボックスを、500rpmに設定したIKA-VIBRAMAX-VXRオービタルシェーカに室温で24時間取り付けた。次いで、試料を取り出し、分析まで-70℃で保存した。
【0389】
製剤標準
1.2mLのAGS-22M6E(ロット番号AGS22M6-VCE-02)出発物質(5%スクロースおよび0.02%ポリソルベート20を含む20mMヒスチジンpH6.0緩衝液中12.5mg/mL)を取り、200μl/バイアルでアリコートに分け、次いで、この試験の製剤標準として-70℃で保存した。
【0390】
外観、A280(タンパク質濃度および薬物負荷)、A330(濁度)、SE-HPLC、非還元および還元SDS-PAGE、RP-HPLC-NPI.iCIEFおよび効力を使用して、AGS-22M6Eの安定性を評価した。
【0391】
外観:すべての試料は、試験経過にわたって色、曇りおよび微粒子を示さなかった。振とうしても微粒子は見られなかった。
【0392】
A280(タンパク質濃度)分析:A280分析の結果を以下の表6に示す。
【0393】
(表6)
【0394】
示されているように、タンパク質濃度の変化は観察されなかった。
【0395】
A330(濁度)分析:A330分析の結果を以下の表7に示す。
【0396】
(表7)
【0397】
示されているように、製剤F1およびF6は、経時的に濁度の最も有意な増加を示した。T=0では、他の製剤では観察されなかったより高い濁度が製剤F6について認められた。
【0398】
SDS-PAGE分析:SDS-PAGE分析の結果を図1A図1B図1C、および図1Dに示す。小さな低分子量(LMW)バンド(約35kD)が、14日後のF1およびF6で還元SDS-PAGEによって観察された。非還元SDS-PAGE分析では、F1、F2、F6およびF7も、T=0で以前には存在しなかった小さな高分子量(HMW)バンド(約200kD)を示した。
【0399】
RP-HPLC分析:表8および図1Eは、RP-HPLC分析の結果を示す。いずれの製剤についても、遊離SGD1010(薬物MMAEの微量切断)はt=0でRP-HPLCによって検出されなかったが、40℃で14日後、SGD1010(0.17μM~1.59μMの範囲)が認められ、クエン酸塩製剤よりもヒスチジンについてより高いpHでわずかに速く、ヒスチジン/コハク酸はヒスチジン/リン酸およびヒスチジン/HClよりもわずかに良好に機能した。
【0400】
(表8)
【0401】
SE-HPLC分析:以下の表9ならびに図1F図1Gおよび図1Hに示すように、pH5.2~pH5.7のすべての製剤についてHMW凝集体のレベルの増加はSE-HPLCによって明らかであり、クエン酸塩製剤は、対応するpHでヒスチジンよりも多くの凝集体を示した。同様のpHで、クエン酸塩はヒスチジンよりも多くの凝集体を示した。pH6.0のヒスチジン製剤は、pH5.5およびpH6.5のものよりも良好な安定性を示した。トレハロースとスクロースとの間に差は観察されなかった。
【0402】
(表9)
【0403】
A330、SDS-PAGEおよびSE-HPLCによって実証されたように、室温で24時間振とうした後、または1回、3回および10回の凍結融解サイクル後に、いずれの製剤間でも有意な変化は観察されなかった(データはここには示していない)。これにより、製剤試験試料を異なる時点で引き出し、-70℃で保存できるという保証が得られた。
【0404】
この試験から得られた結果に基づいて、試験した14の製剤の中で製剤F4、F9およびF14を最適として選択し、したがって、その後の試験でさらに評価される3つの製剤として選択した。
【0405】
6.2 実施例2-バルク原薬(BDS)の凍結融解および振とう試験
製剤F4、F9およびF14を上記のセクション6.1に記載されているように調製した。製剤F4、F9およびF14のそれぞれを、-20℃および-70℃の両方で1、3および10サイクルの凍結に供し、続いて20℃~25℃で解凍した。サンプルを目視検査、濃度(A280)測定、濁度(A330)測定、SE-HPLC、SDS-PAGE(R&NR)によって分析した。10サイクルの凍結融解試験については、試料をRP-HPLC NPIでも分析した。
【0406】
材料要件および試料マップを以下の表10に示す。
【0407】
(表10)
注:
・バイアル:5mLの滅菌スクリューキャップポリカーボネートボトル(Nalgene 5ml、No.3500-05)
・BDS凍結/融解:5mLポリカーボネートボトルに1mLを充填。
・BDS振とう:5mLポリカーボネートボトルに3.5mLを充填。
【0408】
以下の表11は、アッセイおよび時点を列挙する。
【0409】
(表11)
【0410】
室温で24時間の撹拌試験も各製剤で実施し、すべての試験試料を外観、濃度(A280)、濁度(A330)、SE-HPLCおよびHIACについて分析した。上記の試験から選択した試料をiCIEFおよび効力試験にも使用した。
【0411】
製剤のバイアル充填および栓締め、撹拌試験デザイン、凍結融解試験デザイン、および製剤標準は以下に記載されている通りである。
【0412】
製剤のバイアル充填および栓締め
滅菌濾過および充填をBaker SG600層流フード内で行った。製剤およびプラセボを、無菌技術(Millipore Millex-GV 0.22μm PVDFシリンジフィルタ、No.SLGV033RS)を使用して滅菌濾過した。滅菌チップ付きの5mL電子ピペットを使用して、濾過したAGS-22M6Eおよび濾過した製剤緩衝液(プラセボ)を滅菌スクリューキャップポリカーボネートボトル(Nalgene 5ml、No.3500-05)に移した。
【0413】
撹拌試験デザイン
製剤ごとに1つのバイアルを標準的な冷凍ボックス内で直立に固定した。次いで、ボックスを、500rpmに設定したIKA-VIBRAMAX-VXRオービタルシェーカに室温で24時間取り付けた。次いで、試料を取り出し、分析まで70℃で保存した。各試料の3つのアリコートのセット(各試料について70μLのアリコート)を、0.22μmフィルタで濾過した後、-70℃で凍結させた。分析試験後、再試験が必要な場合に備えて、残りの材料を2℃~8℃で一晩保存した。すべてのアッセイが完了した後、残りの材料を-70℃で保存した。2つの凍結アリコートをcIEFおよび効力アッセイに使用した。
【0414】
凍結融解(-70℃および-20℃)の安定性試験デザイン
製剤ごとに1バイアル(5mLのポリカーボネートボトルに1mlを充填)を-70℃および-20℃の冷凍庫に直立させて少なくとも4時間置き、凍結させた。解凍のために、各バイアルを保存場所から取り出し、氷が観察されなくなるまで室温(20~25℃)で解凍し、次いでバイアルを穏やかに旋回させた。これは、1回の完全な凍結融解サイクルを構成した。各試験製剤試料バイアルについて10回の凍結融解サイクルを完了した。最終凍結融解サイクルの後、すべての試料を分析試験によって評価した。試料を以下の方法によって分析した:外観、A280/A248、濁度(A330)、SE-HPLC、RP-HPLC-NPIおよびSDS-PAGE(R&NR)。各試料の3つのアリコートのセット(各試料について70μLのアリコート)を、0.22μmフィルタで濾過した後、-70℃で凍結させた。分析試験後、再試験が必要な場合に備えて、残りの材料を2℃~8℃で一晩保存した。すべてのアッセイが完了した後、残りの材料を-70℃で保存した。2つの凍結アリコートをcIEFおよび効力アッセイに使用した。
【0415】
製剤標準
5.0%スクロース、0.02%Tween 20、pH6.0中12.8mg/mLのAGS-22M6E出発物質15mLを取り、500μl/バイアルでアリコートに分け、次いで、この試験の製剤標準として-70℃で保存した。
【0416】
結果
外観:すべての試料の外観をこの試験で分析し、振とうしても微粒子は見られなかった。
【0417】
A280およびA330分析:この試験で異なる条件に供した製剤のA280およびA330データを以下の表12に要約する。示されているように、振とうまたは凍結融解のいずれの条件でもタンパク質濃度に変化はなかった。さらに、凍結解凍時または振とう時に濁度の上昇はなかった。
【0418】
(表12)
【0419】
SDS-PAGE分析:SDS-PAGE分析の結果を図2Aおよび2Bに示す。示されているように、振とう試験試料および凍結融解試料について、SDS-PAGEでは変化は見られない。還元ゲルと非還元ゲルの両方が製剤標準に匹敵する。
【0420】
RP-HPLC分析:10サイクルの凍結融解試料について、RP-HPLC分析を実施した。RP-HPLCによって分析した場合、いずれの製剤においてもSGD1010ピークの証拠は見られなかった(データはここには示していない)。
【0421】
SE-HPLC分析:SE-HPLC分析の結果を以下の表13に要約する。示されているように、3つの製剤(F4、F9、および14)またはプラセボのいずれについても、T0と振とう試料または凍結融解試料との間に差は観察されなかった。
【0422】
(表13)
【0423】
各試験条件で、BDS製剤のそれぞれについて得られたSECプロフィールを分析した(データはここには示していない)。T=0でのBDSと比較して、いずれの条件でもいずれの製剤についても差は認められなかった。
【0424】
以下の表14は、試験した3つの製剤のそれぞれについてのBDS試料のHIACデータを要約している。室温で24時間振とうする前と後の試料の結果を比較すると、100個未満の粒子が10μ~25μmの範囲にあり、すべての製剤について2個未満の粒子が25μmの範囲にあることが明らかになる。
【0425】
(表14)
【0426】
製剤F9およびF14は、撹拌後に累積数のわずかな上昇を示し、F4は、図2Cにグラフで示されるように、撹拌前と撹拌後の同等性を示した(10μmおよび25μmのすべての計数がUSP限界未満である)。
【0427】
全体として、結果は、試験した3つのBDS製剤すべてが、凍結融解サイクルおよび撹拌の処理下で優れた安定性を示し、いずれの分析方法によっても、T=0と比較していずれの試料にも変化が見られなかったことを実証した。
【0428】
6.3 実施例3-同時BDSおよび医薬品(DP)製剤試験
この試験は、上記のセクション6.2に記載されている試験と併せて実施された。この試験に使用された製剤組成物および材料は、セクション6.2に記載されているものと同じである。
【0429】
材料要件および試料マップを以下の表に示す。
【0430】
(表15)
【0431】
時点およびアッセイは、以下の表に記載されている通りである。
【0432】
(表16)
注:試験の液体アームの試料は、凍結乾燥アームからの試料が調製されるまで-70℃で凍結された。次いで、試験の液体アームと凍結乾燥アームの両方についてt=0が同一になるように、凍結乾燥試料を条件に置くのと同時に凍結液体試料を条件に置いた。
【0433】
具体的な凍結乾燥サイクルパラメータを以下の表に概説する。凍結乾燥が完了した後、50mTの減圧下でバイアルに栓をした。
【0434】
(表17)
【0435】
液体製剤の2℃~8℃および-70℃での安定性試験デザイン
製剤およびプラセボバイアルを、-70℃に設定した冷凍庫および2~8℃に設定したインキュベータ内に直立させた。各時点で、各製剤について1つの活性バイアルおよび1つのプラセボバイアルを、分析試験のための試料マップに従って保存条件から取り出した。分析試験後、再試験が必要な場合に備えて、残りの材料を2℃~8℃で保存した。アリコートを-70℃で保存し、cIEFおよび活性試験に使用した。
【0436】
凍結乾燥製剤の2℃~8℃、25℃および40℃での安定性試験デザイン
製剤およびプラセボバイアルを、2℃~8℃に設定したインキュベータ、25℃/60%RHに設定したインキュベータ、および40℃/75%RHに設定したインキュベータ内に直立させた。各時点で、各製剤について1つの活性バイアルおよび1つのプラセボバイアルを、分析試験のための試料マップに従って保存条件から取り出した。分析試験後、再試験が必要な場合に備えて、残りの材料を2℃~8℃で保存した。アリコートを-70℃で保存し、cIEFおよび活性試験に使用した。
【0437】
この試験で使用した製剤標準は、上記のセクション6.2の製剤標準と同じである。
【0438】
凍結乾燥サイクル分析:典型的な凍結乾燥サイクルは、凍結、一次乾燥および二次乾燥工程を含む。凍結および乾燥工程中、氷の昇華の後に、プラセボ試料バイアルに配置された熱電対プローブの読み取り値、キャパシタンスマノメータ真空計とピラニ真空計の圧力読み取り値の差およびその後の一致、ならびにチャンバヘッドスペース内の相対湿度の変化を追跡する「露点」測定値などのいくつかの別個の指標を参照することができる。
【0439】
平均積熱電対温度、キャパシタンスマノメータ/ピラニ真空計の読み取り値の差、および露点プロフィールを比較することによって、それぞれが他と良好に相関することを実証することができる。
【0440】
BDS製剤の安定性:2℃~8℃および-70℃の保存条件ならびに2℃~8℃、25℃および40℃の保存条件でのBDS製剤の安定性を、T=0週、2週、4週、8週および12週の時点で評価した。液体および再構成した凍結乾燥試料を、各時点で濃度(A280)、濁度(A330)、SE-HPLC、SDS-PAGE(RおよびNR)、ならびにRP-HPLC NPIによって分析した。凍結乾燥医薬品(DP)については、重量オスモル濃度を凍結乾燥前および再構成後にt=0でのみ測定し、ケーク外観および再構成時間を各時点で測定し、カールフィッシャー(残留水分)をT=0週およびT=12週でのみ測定した。
【0441】
外観および再構成時間:3つの製剤すべてのケーク形成は同等であった。3つの製剤すべての活性物質とプラセボの両方が、光沢のある表面を有する白色のわずかにひび割れたケークを形成した。すべてが無傷の構造を維持していた。活性物質とプラセボとの間に差はなかった。これらの製剤間に差はなかった。異なる条件で2週間、4週間、8週間および12週間保存したすべての製剤について、ケークの外観は、以下の表に示すようにT=0と同様であった。
【0442】
(表18)
【0443】
水分分析:凍結乾燥が完了した後、各製剤からの1つの活性バイアルおよび1つのプラセボバイアルを残留水分試験に割り当てた。以下の表および図3Aに示すように、F4およびF14の活性物質およびプラセボの残留水分は非常に近く、0.24%~0.70%の範囲であった。F9は、F4およびF14よりも各時点で高い残留水分を有していた。
【0444】
(表19)
結果は、1つのバイアルでの3回の測定の平均を表す。
【0445】
試料を異なる条件で12週間インキュベートした後、各製剤の残留水分を活性物質およびプラセボの両方について再び試験した。2℃~8℃で12週間保存した3つの製剤すべての残留水分は、t=0と同様であった。F4およびF14は、25℃および40℃で12週間保存した後、t=0と比較して水分が増加していた。
【0446】
試験したすべての時点で、4.7mLのWFIで再構成した後、再構成した製剤およびプラセボはすべて無色透明であった。目に見える粒子は観察されなかった。すべての時点ですべての条件で保存したBDS試料も、透明で無色であった。目に見える粒子は観察されなかった。
【0447】
A280および重量オスモル濃度分析:充填および凍結乾燥の前に、製剤のタンパク質濃度を二重に確認し、10mg/mLの目標濃度の±1mg/mL以内であることがわかった。4.7mLのWFIで再構成した後、製剤のタンパク質濃度は、凍結乾燥前のBDSの±1mg/mL以内であった(以下の表20、BDS、t=0を参照)。製剤化された試料および緩衝液の重量オスモル濃度も、充填前および再構成後に二重に試験した。凍結乾燥前および再構成後の重量オスモル濃度は、187mOsm/kg~194mOsm/kgであった。
【0448】
異なる条件で保存したBDSおよびDP試料のタンパク質濃度の結果を以下の表20および図3Bに示す。ほとんどの条件下でタンパク質濃度に変化はなかった。しかし、2℃~8℃で保存したBDS試料は、タンパク質濃度の予想外の増加を示した。2つの考えられる理由があった:1)バイアル内に存在した凝縮が、反転後に完全には組み込まれない可能性がある。ボトルの側面からすべての凝縮物を捕捉するように努めたが、一部の凝縮物がボトルのキャップに閉じ込められている可能性がある;2)ボトルのねじ山に欠陥がある場合、試料の多少の蒸発が起こり得るが、この問題は、4mLの原薬をこれらのボトルに充填し、2℃~8℃で12週間保存した以前の試験では見られなかった。
【0449】
(表20)12週間の同時BDSおよびDP製剤試験のA280および濃度データ
【0450】
(表21)12週間の同時BDSおよびDP製剤試験の重量オスモル濃度データ
【0451】
A330分析:BDSおよびDPの再構成された活性バイアルおよびプラセボバイアルの両方のA330測定値を以下の表22および図3Cに示す。活性バイアルのA330値はプラセボよりもわずかに高く、AGS-22M6Eタンパク質が製剤の濁度に寄与することを示した。すべての条件で、活性試料とプラセボ試料の両方の保存について濁度の有意な増加はなかった。
【0452】
(表22)
【0453】
SDS-PAGE分析:図3Dおよび図3Eは、2℃~8℃および-70℃の保存条件でのT=0(凍結乾燥前)およびT=12週のBDSの試料のSDS-PAGE分析を示す。図3F、3G、3Hは、2℃~8℃、25℃および40℃の保存条件でのT=0週およびT=12週のDPの試料のSDS-PAGE分析を示した。すべての条件で12週間保存した後、すべての製剤について明らかな変化は見られなかった。
【0454】
RP-HPLC分析:この試験のすべてのBDSおよびDP試料をRP-HPLC NPI法によっても試験した。いずれの条件でいずれの製剤においてもSGD1010ピークは観察されなかった(データはここには示していない)。各時点で実施したすべての対照について、製剤標準におけるSGD1010のスパイク回収率は約100%であった。T=4週、8週および12週の時点で、新たに調製した希釈剤を用いて10mM SGD1010ストックからの新たな希釈物を使用したが、SGD1010ピークは分裂し、製剤標準にスパイクしたSGD1010は分裂しなかった(データはここには示していない)。これはシーケンス全体を通して一貫していた(データはここには示していない)。計算された回収率は、分裂ピークの合計面積を使用した。
【0455】
SE-HPLC分析:以下の表23は、この試験の各時点で実施された製剤標準のSE-HPLCデータを要約している。データは、同じ試料についての異なる実施にわたる主ピークおよびポストピークのパーセンテージの変動レベルを示す。
【0456】
(表23)
【0457】
以下の表24は、2℃~8℃および-70℃の条件で12週間保存したBDS試料のHMWピーク、主ピークおよびLMWピークのパーセンテージをまとめたSE-HPLCデータを概説している(データはここには示していない)。異なる時点での主ピークおよびポストピークのパーセンテージの変動は、製剤標準で見られる変動と非常に類似していた(データはここには示していない)。したがって、大きな変化は起こらず、3つの製剤はすべて、液体形態で2℃~8℃および-70℃での12週間後に安定であったと結論付けることができる。製剤間で大きな差は観察されなかった。
【0458】
(表24)
【0459】
以下の表25は、2℃~8℃、25℃/60%RHおよび40℃/75%RHの条件で12週間保存した凍結乾燥AGS-22M6EのHMWピーク、主ピークおよびLMWピークのパーセンテージをまとめたSE-HPLCデータを概説している。図3Iは、異なる条件で保存したAGS-22M6E BDSおよびDPのグラフのSE-HPLCデータを示す。異なる時点での主ピークおよびポストピークのパーセンテージの変動は、製剤標準で見られる変動と非常に類似しており、製剤試料に大きな変化が生じなかったことを示した。異なる条件で保存した異なるDP製剤のSE-HPLCオーバーレイも分析した(データはここには示していない)。凍結乾燥の前後で差は観察されなかった。3つの製剤はすべて、凍結乾燥形態で2~8℃、25℃および40℃での12週間後に安定であった。すべての製剤は同様に挙動し、T=0ならびに振とうおよび凍結融解試験後の両方で、それぞれの場合に対応するBDSで見られた許容される安定性プロフィールに加えて、凍結乾燥後に高品質の生成物を提供した。
【0460】
(表25)
【0461】
6.4 実施例4-凍結乾燥サイクルの開発
上記のセクションで説明した製剤F4を、このさらなる凍結乾燥サイクル開発試験のために選択した。凍結乾燥サイクルのパラメータを以下の表に示す。凍結乾燥が完了した後、50mTの減圧下でバイアルに栓をした。バイアルのトレイを凍結乾燥機から取り出し、バイアルをアルミニウムシールで個別に圧着した。
【0462】
(表26)
【0463】
凍結乾燥製剤試験デザイン
各充填容量構成について、5つのプラセボバイアルに加えて5つの生成物バイアルを充填した。活性生成物およびプラセボのそれぞれからの2つのバイアルを、T=0で各充填容量について試験した(1つのバイアルは残留水分について試験し、1つのバイアルは再構成して、試験概要に記載されたアッセイを使用して試験した)。さらに、凍結乾燥工程中の温度監視のために、活性物質およびプラセボのそれぞれからの2つのバイアルを調べた。
【0464】
この試験に使用した製剤標準は、5.0%スクロース、0.02%Tween 20、pH6.0中12.8mg/mLのAGS-22M6E出発物質であった。
【0465】
結果
凍結乾燥サイクル分析:総保存サイクル時間は2.6日間であり、これは5mLの充填容量について確立された4.7日間のサイクル時間よりも有意に短い(上記のセクション6.3を参照)。しかしながら、本試験の2.6日間のサイクル時間は、いずれかの充填容量についての最適化されたサイクル時間を表すものではない。サイクルに関連する個々の読み取り値を注意深く評価すると、いずれかの充填容量についての最適化されたサイクル時間の推定を行うことができる。露点モニタは両方の充填容量から発生する水分に応答するため、この試験では、3.0mLまたは1.5mLの充填容量のより最適な乾燥時間を推定するために使用しなかった。同様に、ピラニ真空計は、通常、一次乾燥時間の終点の優れた指標であるが、この場合は、棚のすべてのバイアルからの氷の昇華にも応答するので、指針を提供するだけである。代わりに、この試験の目的のために、生成物温度を監視することは、個々の充填容量ごとの乾燥時間を推定するための最も信頼できるツールを提供する。この試験では、熱電対プローブを活性バイアルとプラセボバイアルの両方に配置し、活性物質とプラセボの生成物温度プロフィール間の密接な一致が両方の充填容量で観察された。
【0466】
生成物温度が乾燥時間の正確な測定値を与えるというこの保証により、2つの充填容量のデータの比較(データはここには示されていない)は、1.5mLの充填容量が約1.3日間で乾燥することを示し、これは、約1.8日間で乾燥する3.0mLの充填容量よりもかなり速い。
【0467】
ケークの外観:すべてのケークは完全なケークであり、非常にわずかに収縮しており、光沢のある表面を有していた。それらはすべて無傷の構造を維持していた。ほとんどのバイアルで、ケークに亀裂はなかった。バイアルを反転させたとき、ケークはバイアルに接着したままではなく、バイアル内で無傷で転倒した。いくつかのバイアルでは、ケークがバイアルに付着したメニスカス円の縁の周りに微細な亀裂が観察された。両方の充填容量について、活性物質とプラセボのケーク形成に差はなかった。ケークの外観も、セクション6.3の試験で5mL充填容量の凍結乾燥生成物について記録されたケークの外観と同等であった。
【0468】
A280分析:充填および凍結乾燥の前に、製剤のタンパク質濃度を二重に確認し、10mg/mLの目標濃度に近いことがわかった。それぞれ2.8mLおよび1.4mLのWFIで再構成した後、3.0mLおよび1.5mL充填製剤のタンパク質濃度も凍結乾燥前のものに近かった(以下の表を参照)。
【0469】
(表27)
【0470】
残留水分、再構成時間、A330、重量オスモル濃度および外観:凍結乾燥が完了した後、活性バイアルおよびプラセボバイアルからの各充填容量の1つのバイアルを残留水分試験に割り当てた。以下の表28に示すように、活性物質の残留水分は、3.0mL充填の0.18%から1.5mL充填の0.29%の範囲であった。残留水分は、プラセボについてわずかにより高く、両方の充填容量で0.34%であると決定された。再構成時間は、試験したすべてのバイアルで1分未満であり、1.5mL充填容量の試料(平均20秒)と比較して、3.0mLの充填容量(平均36秒)ではわずかに長い時間が記録された。活性バイアルとプラセボバイアルとの間で再構成時間に明らかな差は観察されなかった。同様に、すべての再構成された試料の外観は、活性物質とプラセボの両方で、無色透明で微粒子がないと報告された。
【0471】
(表28)
【0472】
活性バイアルおよびプラセボバイアルの濁度(A330)測定も上記の表に示されている。示されているように、凍結乾燥前と凍結乾燥後の両方の試料について、活性バイアルのA330値はプラセボよりもわずかに高く、AGS-22M6Eが製剤の濁度に寄与することが示されたセクション6.3で論じた先の結果を確認した。
【0473】
製剤化された試料および緩衝液の重量オスモル濃度を、充填前および再構成後に二重に試験した。上記の表28はこのデータを要約しており、凍結乾燥前または再構成後に重量オスモル濃度に明らかな差がなかったことを示している。それらはまた、セクション6.3の5.0mL充填構成試料について決定された重量オスモル濃度と同等であった。
【0474】
図4は、製剤標準と比較して、還元および非還元の両方の各充填容量についてのSDS-PAGE分析を示す。結果は、充填容量の変更がSDS-PAGEプロフィールに影響を及ぼさなかったことを実証する。
【0475】
以下の表29は、各充填容量で凍結乾燥された試料のHMWピーク、主ピークおよびLMWピークのパーセンテージを含むSEC-HPLCデータを要約している。評価した充填容量にかかわりなく、凍結乾燥試料は同様に挙動し、凍結乾燥の前と後に測定された主ピーク面積に差はなかった。いずれの充填容量についても変化は観察されず、プロフィールは、セクション6.3に記載されている試験で凍結乾燥された5mLの充填容量に匹敵した。
【0476】
(表29)
【0477】
以上から、例示の目的で具体的な態様を本明細書で説明したが、本明細書で提供されるものの精神および範囲から逸脱することなく様々な修正を行い得ることが理解されるであろう。上記で言及されたすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0478】
7. 配列表
本明細書は、配列表のコンピュータ可読形式(CRF)コピーと共に提出されている。2019年10月11日に作成された39,693バイトのサイズの「14369-244-228_SEQ_LISTING.txt」と題するCRFは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4
図5A-1】
図5A-2】
図5B
図5C
【配列表】
0007514834000001.app