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特許7514839脂質材料を含むフィードストックを加熱処理するための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】脂質材料を含むフィードストックを加熱処理するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 3/00 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
B01D3/00 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021536229
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2019085641
(87)【国際公開番号】W WO2020136043
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】20186139
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クイツネン、スサンナ
(72)【発明者】
【氏名】ハルッツネン、ヤルモ
(72)【発明者】
【氏名】リンドクビスト、ペトリ
(72)【発明者】
【氏名】トッピネン、サミ
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03871969(US,A)
【文献】特開2009-178684(JP,A)
【文献】特開平09-029090(JP,A)
【文献】特開平09-173805(JP,A)
【文献】特開2007-224204(JP,A)
【文献】特表2000-511112(JP,A)
【文献】実開昭54-095551(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01B 1/00- 1/08
B01D 1/00- 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)1または複数の混合セクターであって、全体としての装置の頂部に配置され、および、5°~20°の角度に傾斜されている少なくとも4つまたはそれ以上のプレートまたはウェヤーを備える混合セクターと、
ii)1または複数の液体分配セクターであって、前記1または複数の混合セクターと1または複数の液体保持セクターとのあいだに配置されている液体分配セクターと、
iii)前記1または複数の液体保持セクターであって、前記装置の底部に配置され、および、互いに流体接続されているサブセクターにさらに分割され、前記サブセクターが、チャンバーおよび/またはパイプであり、前記液体保持セクターが垂直パイプをさらに備える液体保持セクターである、液体保持セクター
とを備える装置であって、
前記液体分配セクターが、少なくとも3つまたはそれ以上のトレイまたはプレート、または、少なくとも4つまたはそれ以上のトレイまたはプレートを備え、ここで、1つのトレイまたはプレートは、前記液体分配セクターの下部に配置されおよび水平姿勢で備えられおよび液体分配器とみなされ得、ならびに、前記液体分配セクターが、前記液体分配器と前記トレイまたはプレートとのあいだに配置される第2の追加のプレートまたはトレイであって、第3のプレートまたはトレイと称され得るプレートまたはトレイを備え、および、前記第3のプレートまたはトレイが、下部および上部プレートまたはトレイのあいだに配置され、および、5°~20°の角度に傾斜され、および、前記液体分配セクターが、前記液体分配器の上に配置されているプレートまたはトレイを備え、ここで、前記液体分配器の上に配置されているプレートまたはトレイが水平であることを特徴とし、ならびにさらに、前記液体保持セクターが、少なくとも前記液体分配セクターと流体接続されており、および、前記液体分配セクターおよび前記混合セクターの両方の下流に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記1または複数の混合セクターが、混合プレートまたはウェヤー、少なくとも5つまたはそれ以上のプレートまたはウェヤー、少なくとも6つまたはそれ以上のプレートまたはウェヤー、少なくとも7つまたはそれ以上のプレートまたはウェヤー、少なくとも8つまたはそれ以上のプレートまたはウェヤー、少なくとも9つまたはそれ以上のプレートまたはウェヤー、少なくとも10またはそれ以上のプレートまたはウェヤー、少なくとも15またはそれ以上のプレートまたはウェヤー、または、少なくとも20またはそれ以上のプレートまたはウェヤーを備える請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記混合プレートまたはウェヤーが、水平面に対して、5°~15°の角度に、または、5°、10°15°、もしくは20°の角度に傾斜される請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記混合セクターが、前記装置に導入されるフィードストックの均等な分配を確実なものとするための手段を、プレートまたはウェヤーをシャワーデッキプレートの上部に組み入れることによって備えており、かつ、1または複数の衝突プレートを備えている請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
少なくとも1つの前記衝突プレートが垂直である請求項4記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つの前記衝突プレートが、5°~20°の任意の角度で傾斜されている請求項4または5記載の装置。
【請求項7】
前記1または複数の混合セクターが、前記液体分配セクターおよび前記液体保持セクターと流体接続されている請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記液体分配セクターが、前記混合セクターと前記液体保持セクターとのあいだに配置され、および、前記混合セクターと前記液体保持セクターとに流体接続されている請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの前記サブセクターが、前記混合セクターに流体接続されている請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記装置が、前記液体保持セクター内に3つのサブセクター1~3を備える請求項1または9記載の装置。
【請求項11】
前記サブセクター1が、前記サブセクター2および3と流体接続されている請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記サブセクター1が、適切にはプロセスが完了されたおよび完全にプロセスされた生成物を含む生成物フローである1つの出口を用いて流体接続されている請求項10または11記載の装置。
【請求項13】
前記垂直パイプが、前記サブセクター2および3を互いに接続している請求項10、11または12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記サブセクター3が、材料を前記混合セクターに戻して循環させる、適切には循環フロー出口である出口を用いて流体接続されている請求項10、11、12または13のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質材料を含むフィードストックを加熱処理するための装置および脂質材料を含むフィードストックを加熱処理するための方法におけるその使用に関する。装置は、高レベルのリンおよび金属を含む低品質な脂質を含むフィードストック材料を含むフィードストックを精製するための方法の使用を可能にし、および容認する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ジメチルホルムアミドがフィードストックから結晶化および蒸留によって回収される方法に関する。
【0003】
特許文献2は、食用オイルおよびその誘導体の分離および精製のための方法であって、内部撹拌機の使用が避けられている方法に関する。
【0004】
特許文献3は、トリグリセリドオイルおよび脂肪の物理的精製に関し、食用オイルおよび脂肪の向上された収率を提供している。プロセスは、リン含有量が10ppm未満であるように前もって脱ガム化された食用オイルの使用を含む。
【0005】
特許文献4は、食用オイルおよび脂肪の乾式分別のための連続プロセスであって、1または複数の晶析装置を使用するプロセスに関する。
【0006】
特許文献5は、流体抵抗を低減することを目的とした、充填層カラムを製造するための方法に関する。
【0007】
上述の背景技術は、様々な出発材料を精製することを目的としている。しかしながら、本発明は、低品質なフィードストックが使用され得るという点で、従来技術と比較してより効率的なかつ改良された方法を可能にする。さらに、本発明の発明者らは、本明細書において説明される方法の効率的な実行のための新規な装置を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第3,713,991号明細書
【文献】米国特許第8,133,519号明細書
【文献】米国特許第8,951,592号明細書
【文献】米国特許第9,051,533号明細書
【文献】国際公開第2006/207302号
【発明の概要】
【0009】
本発明は、任意のオイルまたは石油精製プロセスにおける使用のための装置を提供する。該プロセスは、さらなる下流のプロセスで使用されるフィードストックの前処理プロセスであってもよい。該装置は、例えば蒸留装置または蒸留塔などの一部であってもよい。本発明による装置は、例えば様々な起源をもつ低品質な脂肪およびオイルまたはそれらの任意の混合物などであり得る例えば脂質材料などの低品質なフィードストックの効率的な精製方法の使用を可能にする。
【0010】
本発明のある様態の目的は、リンおよび/または金属化合物を含む脂質材料を処理するまたは前処理するための方法であって、
脂質材料を提供することと、
前加熱された脂質材料を得るために、脂質材料を前加熱することと、
加熱処理された脂質材料を得るために、加熱処理工程において前処理された脂質材料を加熱処理することと、
任意には、後処理工程において、加熱処理された脂質材料を後処理すること
とを含む方法を可能にすることである。
【0011】
一態様において、前加熱工程b)は、約90℃~約160℃の温度で行われる。
【0012】
好ましい態様において、加熱処理工程c)は、約220℃~約300℃、好ましくは約220℃~約280℃、より好ましくは約260℃~280℃の温度で行われる。
【0013】
別の好ましい態様において、加熱処理工程c)は、約0bar(g)~約20bar(g)、好ましくは約1bar(g)~約10bar(g)、より好ましくは約1bar(g)~約3bar(g)の圧力で行われる。
【0014】
さらなる様態において、加熱処理工程c)は、約5~約300分、好ましくは約10~約180分、さらにより好ましくは約15~約90分、さらにより好ましくは約30~約60分の時間のあいだ行われる。
【0015】
一態様において、加熱処理のあいだの脂質材料の水分含有量は、約200~約2500mg/kg、好ましくは約200~約1500mg/kg、より好ましくは約200~1000mg/kgである。
【0016】
本発明のさらなる態様において、脂質材料は、再生可能な脂質材料である。
【0017】
好ましい態様において、脂質材料は、植物ベース、微生物ベース、または動物ベースの脂質材料、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0018】
本発明の一態様において、前加熱工程b)は、空気除去工程をさらに含む。
【0019】
好ましくは、リン化合物は、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジン酸を含む群より選択されるリン脂質である。
【0020】
一態様において、後処理工程d)は、脂質材料への水分の添加を含む。
【0021】
さらなる態様において、加熱処理工程c)は、少なくとも1つのリアクター内で行われる。
【0022】
好ましい態様において、該少なくとも1つのリアクターは、管型反応器(tube reactor)および/または撹拌槽反応器(stirred tank reactor)から選択される。
【0023】
本発明の一態様において、加熱処理工程c)に付された脂質材料の一部が抜き出され、約300℃~約350℃の温度に加熱され、そして、脂質材料が加熱処理工程c)に付される工程c)へと再導入される。
【0024】
別の態様において、後処理工程d)は、冷却、沈降、ろ過、遠心分離、および/または、漂白を含む。
【0025】
好ましい態様において、後処理工程d)は、漂白である。
【0026】
さらなる態様において、工程a)において提供される脂質材料は、約30~約200mg/kgのリン、好ましくは約30~約1000mg/kgのリン、より好ましくは約50~600mg/kgのリンを含む。
【0027】
一態様において、該方法は、水素化処理された脂質材料を得るために、水素化処理触媒の存在下での脂質材料の水素化処理を含む。
【0028】
好ましい態様において、水素化処理は、水素化脱酸素化(HDO)、水素化脱流(HDS)、水素化脱メタル(HDM)、水素化脱窒素(HDN)、水素脱芳香族化(HDA)から選択され得る。
【0029】
本発明の一態様において、該方法は、加熱処理工程c)の後に第2の加熱処理をさらに含む。
【0030】
本発明のさらなる目的は、炭化水素を製造する方法であって、
x)上記で特定される方法を用いて、脂質材料中のリンおよび/または金属化合物の量を減少させることと、
y)工程x)からの脂質材料を、オイル精製変換プロセスに付すこと
とを含む方法を提供することである。
【0031】
一態様において、オイル精製変換プロセスは、少なくとも1つの炭化水素を得るために、脂質材料の分子量を変えること、脂質材料からのヘテロ原子の除去、脂質材料の飽和度を変えること、脂質材料の分子構造を再編成すること、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0032】
さらなる態様において、工程y)は、水素化分解を含む。
【0033】
別の態様において、工程y)は、水蒸気分解を含む。
【0034】
さらなる態様によれば、工程y)は、異性化を含む。
【0035】
一態様において、工程y)は、熱触媒分解を含む。
【0036】
別の態様において、工程y)は、流動床式接触分解を含む。
【0037】
上記で言及した方法は、さらに、フィンランド国特許発明第20186137号明細書に詳細に記載されており、その全てが引用によって本明細書に組み入れられる。
【0038】
フィードストック
本発明において、(本明細書中で使用される、および互いに交換可能に明細書を通じて使用される)用語「脂質材料(lipid material)」または脂肪またはフィードストックは、任意の脂質材料、例えば動物ベースのオイルまたは脂肪など、例えば魚ベースのオイルまたは脂肪など、スエット、獣脂、脂肪(blubber)、リサイクルされた食事性脂肪(alimentary fats)などを含む任意のフィードストックを意味するものとして理解されるべきものである。該用語は、任意の上記の例の混合物を含んでいてもよいことが理解されるべきである。しかしながら、他の態様において、用語「フィードストック」は、任意の種類の脂質または脂肪を含み得る。例えば、該用語は、植物、海藻および/または動物起源の脂質材料/オイルを含み得る。非限定的な例としては例えば、1または複数のトール油またはトール油蒸留プロセスからの残渣塔底留分、例えばスラッジパーム油もしくは使用済み料理油などの植物(vegetable)または植物(plant)ベースオイル、微生物または海藻オイル、遊離脂肪酸、またはリンおよび/または金属を含む任意の脂質、酵母またはカビ産生物を起源とするオイル、バイオマスを起源とするオイル、菜種油、カノーラ油、コルザ油、ヒマワリ油、大豆油、麻油、オリーブ油、亜麻仁油、綿実油、マスタード油、パーム油、アラキス油、ヒマシ油、ココナッツ油、遺伝子工学によって製造された出発物質、および例えば海藻およびバクテリアなどの微生物によって産生された生物学的出発物質、または、上記の脂質材料の任意の混合物などが挙げられる。
【0039】
特には、不純物は、それらが任意の精製産業において通常使用されるプロセスにおいて有害であり得るようなものである。例えば、このような不純物は、本発明のプロセスの後に続く脂質材料の任意のさらなる処理において使用される触媒の働きを弱めるまたは不活性化し得る。不純物は、金属またはポリマー起源のものであり得、例えば金属単体などまたは例えばリン化合物などであり得る。低品質なフィードストックを使用することから起こり得るさらなる問題は、精製プロセスのあいだに不純物がフィルターを詰まらせる、または、配管中もしくは機械の他の部分例えばミキシングパドル、加熱エレメントなどにデポジットを形成するかもしれないことであり、これは、任意のこのようなプロセスにおいて使用される機械の動きを妨げ、またはそれを無用のものとしてしまい得る。したがって、本発明は、精製プロセスの低下された能力を通常必然的に伴い、および/または、本明細書において記載されるような業界基準/必要条件を満たさない精製フィードストックを結果としてもたらしてしまう低品質のフィードストックを使用する際によくみられる困難を克服する。
【0040】
結果的に、本発明はまた、本発明の方法によって得られ得る精製フィードストックの、燃料、例えばポリマー、溶媒、潤滑油などのバルク化学品、または例えば化粧品、医薬品などの特別な化学品の原料としての使用にも関する。
【0041】
したがって、本発明の方法は、そのような化学品のために必要とされる純度の要件が満たされているようなバルク化学品または特別な化学品のための必要条件を満たす、前処理されたまたは精製されたフィードストックを提供する。
【0042】
一様態において、本発明は、したがって、例えば燃料などのさらなる使用のために低品質のフィードストックを使用する際に遭遇する問題を解決する。このような燃料としては、例えば、ディーゼル燃料またはジェット燃料などであってもよく、本発明は、例えば化学品としてまたは任意の適切な化学品の調製のための出発物質としてのさらなる使用などの任意の適切な使用のための処理された低品質なフィードの使用を可能にする。
【0043】
特には、本発明は、少なくとも1または複数の以下の効果を結果としてもたらす。
【0044】
1)装置の任意の場所またはその内部構造に関する沈殿物または結晶性材料またはコーキングの蓄積の除去または減少。
【0045】
2)操作コストの最小化。
【0046】
3)フィードストック中の任意の残渣の除去または減少、これによる触媒の不活性化および/またはプラッギングの防止。
【0047】
4)フィードストック中に存在する、例えば溶媒、例えば有機酸もしくは無機酸などの短鎖の酸、臭気成分などの任意の揮発性成分の部分的または完全な除去、これによる大気中への排気および廃水の汚染の最小化。
【0048】
5)さらなる使用には不適切である、またはさらなる精製に対して非経済的であると一般的に考えられている低品質フィードストックの使用を可能にせしめること。
【0049】
したがって、本明細書に記載の装置の使用によって、フィードストックの大規模プロセスを可能にし、確固とした、かつ費用効果に優れた方法が提供され、および、本明細書において、類似のプロセスにおいて通常遭遇するいくつかの技術的課題が克服される。
【0050】
本発明は、例えばスティールなどの任意の適切な材料のボディーを備え得る。
【0051】
特には、本発明は、低品質のフィードバックからの例えばディーゼル燃料またはジェット燃料などの大規模製造に関する問題を解決する。加熱処理リアクター機器とみなされるかもしれない本発明の装置は、例えば動物性脂肪などから加熱処理によって燃料を製造するために使用される。本発明の装置は、反応が進行するために十分な保持時間を提供する。さらに、フィードバック中または任意の中間プロセス中の固体粒子を沈降させることができる可能性がある。沈降は、循環フロー中の熱交換機の汚損を低減させ得、そして、結果的に、維持コストを減少させる。
【0052】
ボディーは、少なくとも1つの入り口および少なくとも1つの出口を備え得る。
【0053】
装置はさらに、以下の要素のうちの少なくとも1つを備えていてもよい。
i)1または複数の混合セクター、
ii)1または複数の液体分配セクター、
iii)1または複数の液体保持セクター。
【0054】
混合セクター
1または複数の混合セクターは、含有される成分の混合および/またはプロセスに含まれるいくつかまたは全ての成分間の気体-液体接触を提供する、または可能にするエレメントから構成される。一様態において、混合エレメントは、例えばシャワーデッキプレートまたはトレイなどであり得る。このセクションは、全体としての装置の頂部に配置され得る。プロセスのあいだ、脂肪は、下方に向かって流れ、カーテンを作り出し、そして、上方に向かう水蒸気が、カーテンを通りぬけていく。頂部において、新鮮なフィードが装置内に流入し、および、装置内の既にプロセスに付された材料からの循環フローが混合される。エレメント上、または、上述のシャワーデッキプレート上で、これら2つのフローは混合される。追加で、蒸気相からの水が、フィードストックとして使用される脂肪(原料)中に、全体的または部分的に溶解される。仮説に縛られることを意図する訳ではないが、液相中で起こる加熱処理反応は、幾分かの水を必要とすると考えられている。
【0055】
混合セクターは、液体分配セクターおよび液体保持セクターと流体接続されている。
【0056】
混合セクターは、任意の適切な寸法を有し得る。しかしながら、装置は、工業プラントでの製造を目的とするものであり、および結果的に、大きな規模に適切であるべきである。混合セクターは、円筒形の形状であってもよく、および、1または複数の入り口を備える上部を備えていてもよい。適切であるこれら入口としては、フィード入口および再循環入口である。
【0057】
液体分配セクター
本セクターにおいて、液体は、全体の脂肪フローに対する等しい反応時間を確実なものとする液体分配器を用いて、サブセクター1(保持セクターC、図1)へと均等に分配される。したがって、このセクターは、混合セクターと液体保持セクターとのあいだに適切に配置され、そして、混合セクターと液体保持セクターとに流体接続されている。このセクターは、蒸気がそれより下に蓄積しないような様式で構成されている。このセクターは、液体分配エレメントと称され得る、プロセスを補助するための、1または複数のエレメントを備えていてもよく、これらは例えば、プレート、デッキ、ウェヤーなどであってもよい。特定の一態様において、セクターは、2つのプレートを備える。1つのプレートまたはトレイは、セクターの下部に配置され、および、水平姿勢で備えられる。第2のプレートまたはトレイは、水平またはわずかに傾いていてもよい。この第2の上部プレートは、以下で直ちに説明される、中段の傾斜トレイと共に、サイホン効果の防止のために提供される。さらなる様態において、セクションは、さらなる傾斜プレートまたはトレイを、下部および上部プレートまたはトレイのあいだに備えていてもよい。このプレートまたはトレイは、(水平面に対して)約5°~約20°の角度に、好ましくは約5°~15°、または約5°、例えば約10°、例えば約15°、例えば約20°の角度に傾斜される。角度は、例えばトレイ上の機械的負荷を減少させるまたは無くすために、および、プロセスに付されるフィード中の全ての成分間での効果的な混合接触を確実なものとするためにも、トレイ上に過剰の、または少なすぎる量の液体が存在しないように選択される。上部プレートまたはトレイは、また、傾斜トレイまたはプレートに対して平行であってもよく、およびそれゆえ、中断の傾斜トレイと同一の傾き(incline)を有していてもよい。これはまた、装置のこの部分での成分の分配を含んでいてもよい。さらなる様態は、それによって例えば汚損を防止するために、トレイ上の十分な流速を維持することである。
【0058】
液体保持セクター
本セクターは、所望の加熱処理リアクターのための十分な時間を提供する。本セクターは、装置の底部に適切に配置され、およびしたがって、液体分配セクターと流体接続されている。本セクターはさらに、それぞれが互いに流体接続され得る1または複数のサブセクションまたはチャンバーに分割されていてもよい。例えば1以上のサブセクター、例えば2以上のサブセクター、例えば3以上のサブセクター、例えば4以上のサブセクター、例えば5以上のサブセクター、例えば6以上のサブセクター、例えば7以上のサブセクター、例えば8以上のサブセクター、などが存在していてもよい。一様態において、液体保持セクターは、3つのサブセクター(1~3)を備えていてもよい。サブセクターは、チャンバーであってもよく、または、例えばパイプなどであってもよい。セクターBからの液体はサブセクター1へと入る。サブセクター1において、水蒸気が、混合および水分制御を提供するために、塔底から分離される。サブセクター1を流れ通った後、液体の一部は、生成物出口へと流れ、そして、リアクターから出る。残りの液体は、サブセクター2および3を流れ通り、反応のためのさらなる保持時間を提供する。追加で、最も大きくおよび最も重質な固体粒子がサブセクター2に沈降し得るという可能性がある。これは、循環フローを加熱するために使用される加熱交換機器の汚損を防止すると考えられる。セクターCのさらなる特徴は、バルブを備えた、サブセクター2および3に接続されている、種々の高さ(level)の垂直パイプである。これらのパイプの目的は、リアクター中での保持時間を制御することである。任意の高さにあるバルブが開かれた時、液体の高さはパイプの高さに決定される。パイプは、液体高さが、サブセクター2および3において同じであるように形成される。
【0059】
結果的に、液体保持セクターは、少なくとも1つの出口、および好ましくは、2つまたはそれ以上の出口を備える。一様態において、1つの出口は、前処理されたプロセスの生成物を収集するためのものである。第2の出口は、標準以下の材料をプロセスへ戻すように再循環させ、そして結果的に、セクターAおよび液体分配セクターへと再注入されるであろう。
【0060】
装置は、フィードストックが、例えば金属およびリン化合物などの不純物の幾分か、または全てが、例えば漂白プロセスなどのその後のプロセスにおいてより容易に除去され易いような形状へと転換されるように、前処理される方法の使用を可能にする。
【0061】
新鮮なフィードが、適切に提供され、そして、液体分配セクターの頂部へと導かれる。これはしたがって、液体保持セクターからの再循環材料と合わせられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1図1は、本発明の装置の模式的なレイアウトを示す図である。
図2図2は、上面から見た、本発明の混合セクターの頂部を示す図である。
図3図3は、側面から見た、本発明の混合セクターの頂部を示す図である。
図4図4は、混合セクターを示す図である。
図5図5は、液体分配セクターを示す図である。
図6図6は、サブセクター1~3を備える液体保持セクターを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明は、任意のオイルまたは石油の精製(refining)プロセスまたは精製(purification)プロセスにおいて適切に使用され得る装置に関する。
【0064】
本発明の装置は、例えば蒸留ユニットまたは蒸留塔など、より大きな装置またはプラントシステムの一部であってもよい。
【0065】
特には、本発明の装置は、例えば略球形または略円筒形などの本質的に任意の適切な形のボディーを備える。ボディーはまた、例えば略円筒形の形状またはボリュームおよび/または略球形の形状またはボリュームおよび/または部分的に円錐の形状またはボリュームおよび/または部分的に楕円の形状またはボリュームなどの組み合わせなどの、適切な幾何的形状またはボリュームの組み合わせであってもよい。ボディーは、円筒の底面が円形または楕円であってもよい円筒形の表面を備えていてもよいことがまた理解されるべきである。円筒は、直円柱であってもよく、または斜円柱であってもよい。一様態において、装置のボディーは、直円柱の形状を備え、および、底面は、略円形である。
【0066】
本発明の別の様態において、装置のボディーは、円形の円筒の形状またはボリュームと組み合わされた、および、部分的に楕円の形状またはボリュームと組み合わされた部分的に円錐の形状またはボリュームの組み合わせである。
【0067】
少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を備えることに加えて、本発明の装置は、装置からの蒸気または液体によって与えられる熱がユニットの任意の位置へと戻されるように循環され得るように、第3の出口を備えていてもよい(すなわち、加熱循環出口)。一例として、装置のボディーからの蒸気および/または流体が加熱循環出口から運ばれて、装置のボディーが全体のユニットの一部であるユニットの別の場所へと戻される。循環熱は、したがって、装置のボディーが接続されている蒸留または分留ユニットへと戻され得る。
【0068】
一様態において、装置は、新鮮なフィードの供給のための1つの入口、および、部分的にまたは全体的にプロセスに付されていた任意の再循環材料のための別の入口を備え得る。これらの入口は、セクターA(混合セクター)との流体接続に適切である。
【0069】
装置のボディーは、昇温および/または腐食性物質および/または溶剤に、その完全性を失うことなく耐えることのできる任意の適切な材料で作成され得る。非限定的な例としては、例えば約0℃~約500℃の範囲の温度、および/または、例えば任意の種類の酸または延期などの腐食性材料、および/または、任意の種類の有機および無機の溶媒にたえることのできる任意の材料などが挙げられる。このような材料としては、例えば、スティール、および特には、ステンレススチールなどが挙げられる。装置のボディーはまた、上述されるように昇温および/または腐食性物質および/または溶剤に、その完全性を失うことなく耐えることのできる内部ライニングを備えていてもよい。
【0070】
装置のボディーは、本質的に、少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を備える閉鎖系のボディーまたはボリュームである。一様態において、入口および/または出口は、例えば蒸留塔などのより大きなユニットの一部であってもよい。一様態において、少なくとも1つの入口は、さらなるユニット、例えば蒸留塔および/または分留ユニットなどに接続されている。
【0071】
一様態において、装置のボディーは、装置のボディーの入口としてみなされ得る例えば蒸留または分留ユニットなどと接続されている、円錐形部分であってもよくまたは半球の形状であってもよい、頂部を備えている。さらなる様態において、装置のボディーは、部分的に球形または楕円形のボリュームまたは形状であってもよく、ここで、その底部は少なくとも1つの出口、例えば、精製された(purified)または精製された(refined)材料またはプロセスに付された材料の収集のための少なくとも二つの出口を備えている。
【0072】
装置のボディーは、さらなるプレートまたはウェヤーエレメントを備える。一様態において、本発明は、少なくとも四つの内部パートを備えるボディーに関する。内部パートは、プレートまたはウェヤーであり得る。
【0073】
用語「プレート(plates)」、「トレイ(trays)」、「ウェヤー(weirs)」などは、明細書を通して、互いに交換可能に用いられることが留意されるべきである。これらの用語は、一般的な用語「エレメント(elements)」の範疇に入るものであり得る。
【0074】
一様態において、本発明の装置は、これに限定される訳ではないが、図1に示される。
【0075】
混合セクター
1または複数の混合セクターは、含有される成分の混合および/またはプロセスに含まれるいくつかまたは全ての成分間の気体-液体接触を提供する、または可能にする混合エレメントから構成される。一様態において、エレメントは、例えばシャワーデッキプレートまたはトレイなどであり得る。このセクションは、全体としての装置の頂部に配置され得る。プロセスのあいだ、脂肪は、下方に向かって流れ、カーテンを作り出し、そして、上方に向かう水蒸気が、カーテンを通りぬけていく。頂部において、新鮮なフィードが装置内に流入し、および、装置内の既にプロセスに付されていた材料からの循環フローが混合される。エレメント上、または、上述のシャワーデッキプレート上で、これら2つのフローは混合される。追加で、蒸気相からの水が、フィードストックとして使用される脂肪(原料)中に、全体的または部分的に溶解される。仮説に縛られることを意図する訳ではないが、液相中で起こる加熱処理反応は、幾分かの水を必要とすると考えられている。
【0076】
混合セクターは、液体分配セクターおよび液体保持セクターと流体接続されている。
【0077】
混合セクターは、任意の適切な寸法を有し得る。しかしながら、装置は、工業プラントでの製造を目的とするものであり、および結果的に、大規模生産に適切であるべきである。混合セクターは、円筒形の形状であってもよく、および、1または複数の入り口を備える上部を備えていてもよい。適切には、これら入口としては、フィード入口および再循環入口である。
【0078】
本発明の一様態において、混合セクターの内部パートは、いくつかのプレートまたはウェヤー、例えば少なくとも4つまたはそれ以上のプレートまたはウェヤー、例えば少なくとも5つまたはそれ以上のプレートまたはウェヤー、少なくとも6つまたはそれ以上のプレートまたはウェヤー、少なくとも7つまたはそれ以上のプレートまたはウェヤー、少なくとも8つまたはそれ以上のプレートまたはウェヤー、少なくとも9つまたはそれ以上のプレートまたはウェヤー、少なくとも10またはそれ以上のプレートまたはウェヤー、少なくとも15またはそれ以上のプレートまたはウェヤー、少なくとも20またはそれ以上のプレートまたはウェヤーなどを備え得る。これらのプレートは、0~20°のあいだの任意の角度に適切に傾斜されていてもよい。プレートは、(水平面に対して)約5°~約20°の角度に、好ましくは約5°~15°、または約5°、例えば約10°、例えば約15°、例えば約20°の角度に傾斜される。一様態において、プレート、エレメント、トレイまたはウェヤーは、蒸気が通り抜けるためのカーテンを作り出すように働く。混合セクターは、これに限定される訳ではないが、図4に示されており、ここで、シャワーデッキまたはトレイは、エレメント1~8として示されている。したがって、一様態において、本発明の混合セクターは、図4によるものである。
【0079】
混合セクターはまた、頂部(図2(上面図)および図3(側面図)に示されている)を備え得る。頂部は、提供される原料の未処理フィードストックの均等な分配を確実なものとする。したがって、非限定な例において、本セクションは、装置に入るおよび例えばスプレーまたはポンプなどによって装置に導入されるフィードストックの均等な分配を提供する。この部分は、本セクターの全ての他のエレメント(例えば図4に示されるプレート、トレイ、またはウェヤーなど)よりも上に配置される。この部分は、1または複数の、例えば、2またはそれ以上、例えば3またはそれ以上、例えば4またはそれ以上などの衝突プレートを備えていてもよい。第1の衝突プレートが垂直であり、一方、第2の衝突プレートは、約0°~約20°、例えば5°~20°などのあいだの任意の角度であるわずかな傾斜を有していてもよい。本発明の一様態において、衝突プレートは、図2および3のように示されるが、これらに限定される訳ではない。したがって、図2および3の装置の図示されている特徴は、フィードストックの均等な分配を確実なものとするための単なる1つの非限定的な例である。
【0080】
液体分配セクター
本明細書中に記載されるように、本セクターにおいて、液体は、全体の脂肪フローに対する等しい反応時間を確実なものとする液体分配器を用いて、サブセクター1(保持セクターC、図1)へと均等に分配される。したがって、このセクターは、混合セクターと液体保持セクターとのあいだに適切に配置され、そして、混合セクターと液体保持セクターとに流体接続されている。このセクターは、蒸気がそれより下に蓄積しないような様式および効果で構成されている。このセクターは、プロセスを補助するための、1または複数のプレートまたはエレメントを備えていてもよい。特定の一態様において、セクターは、2つまたはそれ以上のプレート、例えば3つまたはそれ以上のプレート、4つまたはそれ以上のプレートなどを備える。一様態において、本セクターは、図5のように示され得るが、これに限定される訳ではない。このセクターの1つのエレメントは、液体分配器であり得、これは、これに限定される訳ではないが、図5に示されている下部のエレメントであり、ここで、2つの水平なラインおよび2つのより短い垂直なラインとして図示されている。1つのプレートまたはトレイは、液体分配器の上に配置され得る。このプレートは、適宜水平とされる。第2のプレートまたはトレイは、わずかに傾いていてもよい。さらに、第2のプレートまたはトレイは、液体分配器と第1のプレートまたはトレイとのあいだに配置され得る。さらなる様態において、セクションは、傾斜プレートまたはトレイを、下部および上部プレートまたはトレイのあいだに備えていてもよい。この様態は、図5に示されているが、これに限定される訳ではない。この第2のトレイまたはプレートは、(水平面に対して)約5°~約20°の角度に、好ましくは約5°~15°、または約5°、例えば約10°、例えば約15°、例えば約20°の角度に傾斜される。角度は、例えばトレイ上の機械的負荷を減少させるまたは無くすために、および、プロセスに付されるフィード中の全ての成分間での効果的な混合接触を確実なものとするためにも、トレイ上に過剰の、または少なすぎる量の液体が存在しないように選択される。これはまた、装置のこの部分での成分の分配を含んでいてもよい。さらなる様態は、それによって例えば汚損を防止するために、トレイ上の十分な流速を維持することである。
【0081】
一様態において、装置のセクターは、任意の適切な形状、例えば円筒形または部分的に円錐形またはそれらの任意の組み合わせなどを有し得る。一様態において、形状は、これに限定される訳ではないが、図5に示されている部分的な円錐形であってもよい。
【0082】
一様態において、液体分配器の種類は、重力液体分配器(gravity liquid distributor)であり得る。フィードストック中の固体が考慮される必要があり、それは、プラッギングを避けるための分配器が選択される。非限定な例としては、Sulzer社によって提供される、スプラッシュ板分配器(splash-plate distributor) VEP、横菅を備えたチャネルタイプ分配器(channel-type distributor) VKRなどが挙げられる。Koch-Glitschin社によって提供される例としては、ノッチ付トラフ(notched trough)が挙げられる。
【0083】
液体保持セクター
本明細書中に記載されるように、本セクターは、所望の加熱処理リアクターのための十分な時間を提供する。本セクターは、装置の底部に適切に配置され、およびしたがって、液体分配セクターと流体接続されている。本セクターはさらに、それぞれが互いに流体接続され得る1または複数のサブセクションまたはチャンバーに分割されていてもよい。例えば1以上のサブセクター、例えば2以上のサブセクター、例えば3以上のサブセクター、例えば4以上のサブセクター、例えば5以上のサブセクター、例えば6以上のサブセクター、例えば7以上のサブセクター、例えば8以上のサブセクター、例えば10以上のサブセクター、例えば20以上のサブセクターなどが存在していてもよい。一様態において、液体保持セクターは、3つのサブセクター(1~3)を備えていてもよい。この様態が、これに限定される訳ではないが、図6に示されている。サブセクターは、チャンバーであってもよく、または、例えばパイプなどであってもよい。セクターBからの液体はサブセクター1へと入る。サブセクター1において、水蒸気が、混合および水分制御を提供するために、塔底から分離される。サブセクター1を流れ通った後、液体の一部は、生成物出口へと流れ、そして、リアクターから出る。残りの液体は、サブセクター2および3を流れ通り、反応のためのさらなる保持時間を提供する。追加で、最も大きくおよび最も重質な固体粒子がサブセクター2に沈降し得るという可能性がある。これは、循環フローを加熱するために使用される加熱交換機器の汚損を防止すると考えられる。
【0084】
セクターCのさらなる特徴は、バルブを備えた、サブセクター2および3に接続されている、種々の高さ(level)の垂直パイプである。これらのパイプの目的は、リアクター中での保持時間を制御することである。任意の高さにあるバルブが開かれた時、液体の高さはパイプの高さに決定される。パイプは、液体高さが、サブセクター2および3において同じであるように形成される。
【0085】
サブセクター2において、液体の線速度は、2cm/sより小さく、これは沈降を可能にする。
【0086】
液体保持セクターに関して、および上述されるように、このセクターは、1または複数のサブセクターを備えていてもよい。一様態において、少なくとも1つのサブセクターが、混合セクターに流体接続されている。さらなる様態において、サブセクター3のみが、混合セクターに流体接続されている。
【0087】
一様態において、液体保持セクターは、前処理されたフィードストックを収集することを可能にするための1または複数の出口を備えている。さらなる様態において、液体保持セクターは、上述の1または複数のサブセクターを介して、もしくは、直接的のどちらかで混合セクターと、または、直接的および1または複数のサブセクターを介して混合セクターと、流体接続されている。
【0088】
さらに、液体保持セクターは、前処置されたフィードストックの収集のための1つの出口を備えており、および/または、直接的または上述の1または複数のサブセクターを介するかのどちらかでプロセス中に前処理されたフィードストックを戻して再循環させるための再循環出口もまた備える。
【0089】
本発明において使用されるフィードストックは、任意の種類の燃料のための原料として、または、例えば特別な化学品などの化学品の原料として働き得る材料へと精製するための例えば脂質材料(脂肪またはオイルまたはそれらの任意の混合物)である。大事な要素は、精製された脂質材料は、燃料としてそれが機能することができるような、または、例えばエンジンの完全な機能性を危険にさらし得るレベルもしくは精製されたフィードストックが付され得るさらなる任意のプロセスの触媒を害するか害さなければその働きを弱めるレベルの不純物を含まずに例えば接触分解などのさらなるプロセスにおいて使用され得るような品質のものである必要があることである。そのようなさらなるプロセスとしては、例えば、接触分解、熱接触分解、接触水素化、接触水素化脱酸素化、流動床式接触分解、接触ケトン化、接触エステル化、または、接触脱水などが挙げられる。精製されたフィードストックはまた、例えばバルク化学品(例えばポリマー、溶媒、溶媒成分および潤滑油など)または特別な化学品(例えば化粧品および医薬品など)などの様々な化学品へ、さらなるプロセスに付されてもよい。
【0090】
従来技術には、本明細書中に記載された目的のための、フィードストックの精製のための様々な方法がある。しかしながら、高レベルの不純物を含むフィードストックは、当該技術分野における周知の技術によって、精製された脂質材料が低レベルの不純物しか含まず、それが燃料の原料として使用され得ることを可能となるように精製するには適していない、またはそのように精製することができない。本発明は、本明細書中に記載の方法によってこの課題を解決し、したがって、精製には非経済的または不適切であると通常みなされるであろう脂質材料の使用を可能にする。本発明にしたがい用いられ得る低品質のフィードストックは、少なくとも約2000ppm、例えば少なくとも1500ppm、例えば少なくとも1000ppm、例えば少なくとも500ppm、例えば少なくとも約400ppm、例えば少なくとも約300ppm、例えば少なくとも約200ppm、例えば少なくとも約100ppm、例えば少なくとも約50ppm、例えば少なくとも約30ppm、例えば少なくとも約20ppm、例えば少なくとも約15ppm、例えば少なくとも約10ppm、例えば少なくとも約5ppm、例えば少なくとも約1ppmなどのリン含有量を有する。同量の金属不純物がフィードストック中には含まれ得る。
【0091】
本明細書中に記載されるように、例示的なフィードストックとしては例えば、任意の脂質を含み得、例えば、これらの限定される訳ではないが、触媒水素化処理プロセスには受け入れられ得ない(非常に高い含流量の窒素または窒素含有化合物、ポリエチレン、金属、リン含有量など)低品質動物性脂肪(AF)が挙げられる。
【0092】
このような脂質材料は、例えば、触媒毒として作用するか、そうでなければ材料を最終的な用途のためには役に立たないものとしてしまうことが知られているエレメントのレベルを低下させるために、精製される必要がある。
【0093】
前処理される脂質は、リン脂質、石鹸または塩の形状である、金属およびリンを含む不純物を含み得る。
【0094】
不純物中に存在しており、本発明の方法によって減少されるまたは除去される他の不純物は、例えば、様々な窒素含有化合物、有機または無期の塩素化合物、ステロール、ポリマー、オリゴマーなどである。
【0095】
脂質材料中に存在し得る金属不純物は、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えばナトリウムもしくはカリウム塩、またはマグネシウムもしくはカルシウム塩、またはそれら金属の任意の化合物などであり得る。不純物はまた、リン酸塩または硫酸塩、鉄塩または有機塩、石鹸、または例えばリン脂質などの形であり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6