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特許7514840カベオリン-1ペプチドの乾燥粉末製剤およびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】カベオリン-1ペプチドの乾燥粉末製剤およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/08 20190101AFI20240704BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240704BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240704BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240704BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240704BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240704BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240704BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240704BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240704BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240704BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240704BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240704BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240704BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240704BHJP
   C07K 7/06 20060101ALN20240704BHJP
【FI】
A61K38/08 ZNA
A61K9/14
A61K9/72
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/12
A61K9/48
A61K45/00
A61P11/00
A61P29/00
A61P37/06
A61P31/00
A61P11/06
A61P43/00 121
C07K7/06
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2021538171
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 US2019050349
(87)【国際公開番号】W WO2020055824
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】62/729,010
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】521097699
【氏名又は名称】ラング セラピューティクス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ, ロバート オー. ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】ワッツ, アラン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ヤジエ
(72)【発明者】
【氏名】サハキジピジャルン, サウィトリー
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン, デール
(72)【発明者】
【氏名】コレング, ジョン ジェイ.
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-503321(JP,A)
【文献】特表2018-507867(JP,A)
【文献】Cell. Mol. Neurobiol.,2011年,vol.31, issue 7,p.991-997
【文献】Caveolin-1 scaffolding domain peptide,Enzo,2018年08月28日,https://web.archive.org/web/20180828064451/https://www.enzolifesciences.com/ALX-153-064/caveolin-1-scaffolding-domain-peptide/
【文献】Drug Delivery System,2006年,vol.21, no.4,p.417-425
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/08
A61K 9/14
A61K 9/72
C07K 7/06
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドを含む乾燥粉末医薬組成物であって、前記ペプチドは、
FTTFTVT(配列番号2)のアミノ酸配列またはの薬学的に許容される
らなり、
前記医薬組成物が、乾燥粉末吸入器で使用するために製剤化される、乾燥粉末医薬組成物。
【請求項2】
前記薬学的に許容される塩がアンモニウム塩である、請求項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項3】
前記薬学的に許容される塩が酢酸塩である、請求項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項4】
前記組成物が、ロイシン、トレハロース、クエン酸ナトリウムまたはこれらの組み合わせを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項5】
前記組成物がロイシンを含む、請求項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項6】
前記組成物が滑沢剤を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項7】
前記乾燥粉末がカプセル内に封入される、請求項1~のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物がシェルカプセル内に封入される、請求項1~のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項9】
前記ペプチドが少なくとも約95%(w/v)純粋である、請求項1~のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項10】
前記ペプチドが少なくとも約99%(w/v)純粋である、請求項1~のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項11】
前記組成物が、5μm未満の粒子サイズを有する粒子を含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物が、約1μm~約5μmの間の粒子サイズを有する粒子を含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物が、約2μm、約2.5μm、または約3μmの粒子サイズを有する粒子を含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物が粒子を含み、前記粒子の少なくとも70%が約1μm~約5μmの粒子サイズを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物が粒子を含み、前記粒子の75%~95%が5μm未満の粒子サイズを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項16】
前記粒子の粒子サイズが、空気動力学的中央粒子径(MMAD)である、請求項11~15のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項17】
前記組成物が、少なくとも1か月、少なくとも3か月、または少なくとも6か月の間安定である、請求項1~1のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項18】
前記組成物が、少なくとも6か月の間安定である、請求項1~1のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項19】
前記組成物が、10(重量)%未満の水を含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項20】
前記組成物が、1(重量)%未満の水を含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項21】
その必要のある対象を治療するための、請求項1~2のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項22】
前記対象が、炎症性障害を有する、請求項2に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項23】
前記対象が、線維性状態を有する、請求項2に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項24】
前記対象が、肺炎症、慢性閉塞性肺障害(COPD)、急性肺傷害、肺感染症、化学物質誘発性肺傷害、鋳型気管支炎、喘息、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、吸入煙誘発性急性肺傷害(ISALI)、細気管支炎、閉塞性細気管支炎、肺の線維性状態、間質性肺疾患、特発性肺線維症(IPF)、または肺瘢痕化を有する、請求項2に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項25】
前記対象が、間質性肺疾患を有する、請求項2に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項26】
前記対象が、特発性肺線維症を有する、請求項2に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項27】
乾燥粉末吸入により前記対象に投与される、請求項2~2のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項28】
少なくとも1つの追加の治療薬と共に前記対象に投与される、請求項2~2のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項29】
前記少なくとも1つの追加の治療薬が、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ステロイド、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、免疫抑制剤、生物学的応答モジュレーター、または気管支拡張剤である、請求項2に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【請求項30】
前記対象が、ヒトである、請求項229のいずれか一項に記載の乾燥粉末医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年9月10日に出願された米国仮特許出願第62/729,010号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、本発明がなされた時点で有効であった共同研究契約の範囲内で行われた活動の結果としてなされた。上記の共同研究契約の当事者は、テキサスシステム大学および肺処置学の理事会(The Board of Regents of the University of Texas System and Lung Therapeutic)である。
【0003】
本発明は、一般に、分子生物学、薬剤学、および医学の分野に関する。より具体的には、本発明は、呼吸器系への送達などによる対象への乾燥粉末治療用ポリペプチド組成物の送達のための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
肺損傷中に、p53発現は増加し、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤-1(PAI-1)を誘発する一方、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)およびその受容体(uPAR)の発現を阻害し、肺上皮細胞(LEC)のアポトーシスをもたらす。損傷のメカニズムは、uPA、uPAR、カベオリン-1(「Cav-1」)、およびβ1-インテグリンの間の細胞表面シグナル伝達相互作用を含む(Shetty et al.,2005)。これらの相互作用を調節する組成物は、損傷した、罹患した、または傷害を受けた組織のアポトーシスを阻害するための方法で使用することができる。例えば、炎症または肺線維症などの線維性状態を処置するため。したがって、肺の損傷および疾患を予防または処置するために使用することができるポリペプチド、ならびに特に、かかるポリペプチドの治療用送達のための安定した製剤および簡単な方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示によれば、配列番号2のアミノ酸配列を含むペプチドの乾燥粉末組成物が提供される。
【0006】
第1の実施形態では、ペプチドの乾燥粉末を含む医薬組成物が提供され、前記ペプチドは、配列番号2~20のうちのいずれか1つの配列を含む。いくつかの態様では、ペプチドは、7~20のアミノ酸長である。特定の態様では、ペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。さらなる態様では、ペプチドは、配列番号2のペプチドのN末端に付加された少なくとも1つのアミノ酸を含む。別の態様では、ペプチドは、配列番号2のペプチドのC末端に付加された少なくとも1つのアミノ酸を含む。別の態様では、ペプチドは、配列番号2のペプチドのN末端およびC末端に付加された少なくとも1つのアミノ酸を含む。特定の態様では、ペプチドは、L-アミノ酸もしくはD-アミノ酸、またはL-およびD-アミノ酸の両方を含み得る。追加の態様では、ペプチドは、少なくとも1つの非標準アミノ酸を含み得る。いくつかの態様では、ペプチドは、2つの非標準アミノ酸を含む。特定の態様では、非標準アミノ酸は、オルニチンである。
【0007】
さらなる態様では、ペプチドは、N末端修飾もしくはC末端修飾、またはN末端およびC末端修飾の両方を含み得る。特定の態様では、N末端修飾は、アシル化である。別の態様では、C末端修飾は、アミド化である。
【0008】
いくつかの態様では、ペプチドは、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号9、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号10、配列番号20を含み得る。いくつかの態様では、ペプチドは、配列番号2~20のうちのいずれか1つの配列の少なくとも2つの反復を含む。特定の態様では、少なくとも2つのリピートは、同一のアミノ酸配列を有する。他の態様では、少なくとも2つの反復は、異なるアミノ酸配列を有する。さらに別の態様では、医薬組成物は、細胞透過性ペプチド(CPP)をさらに含む。特定の態様では、CPPは、GRKKRRQRRRPPQ(配列番号:23)、RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号24)、およびGIGAVLKVLTTGLPALISWIKRKRQQ(配列番号25)を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0009】
追加の態様では、乾燥粉末は、粉砕プロセスによって製造される。いくつかの態様では、乾燥粉末は、噴霧乾燥プロセスによって製造される。別の態様では、乾燥粉末は、エアジェット粉砕、ボール粉砕、または湿式粉砕によって製造される。いくつかの態様では、乾燥粉末は、10(重量)%未満の水を含む。別の態様では、乾燥粉末は、1(重量)%未満の水を含む。特定の態様では、医薬組成物は、本質的に賦形剤を含まない。特定の態様では、医薬組成物は、賦形剤を含まない。特定の態様では、医薬組成物は、肺送達のために製剤化される。さらなる態様では、医薬組成物は、乾燥粉末吸入のために製剤化される。他の態様では、医薬組成物は、吸入加圧定量吸入用に製剤化される。いくつかの態様では、医薬組成物は、経口投与用、局所投与用、または注射用に製剤化される。
【0010】
特定の態様では、実施形態の乾燥粉末製剤は、約10%、9%、8%、7%、6%、または5%未満の水分含有量を含む。さらなる態様では、組成物は、約0.01%~約10%、0.1%~約10%、1.0%~約8%、または1%~約5%の水分含有量を含む。さらなる態様では、実施形態の乾燥粉末製剤は、10μm未満の平均粒子サイズを含む。特定の態様では、平均粒子サイズは、約0.01pm~約10μm、約0.1μm~約8μm、約0.5μm~約7μm、または約1μm~約5μmである。いくつかの態様では、実施形態の乾燥粉末組成物の少なくとも約50%、55%、60%、65%、または70%は、約1μm~約5μmの粒子サイズを含む。特定の態様では、実施形態のペプチドの乾燥粉末製剤(例えば、CSP7)は、約1μm~約5μmのサイズを有する少なくとも70%(例えば、70%~80%)の粒子から構成される。好ましい態様では、乾燥粉末製剤中の粒子の少なくとも約70%、75%、80%、または85%(例えば、75%~95%)は、5μm未満のサイズである。
【0011】
本発明のさらなる実施形態は、実施形態および上記の態様の医薬組成物を含むネブライザー装置を提供する。
【0012】
さらに別の実施形態では、対象に、有効量の、実施形態および上記の態様の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象を処置する方法が提供される。特定の態様では、対象は、炎症性障害を有する。他の態様では、対象は、線維性状態を有する。いくつかの態様では、対象は、肺炎症、急性肺損傷、肺感染症、または肺を有する。別の態様では、対象は、肺炎症を有する。特定の態様では、対象は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を患っている。さらなる態様では、対象は、急性肺損傷または感染症、肺感染症、化学物質誘発性肺損傷、鋳型気管支炎、喘息、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、吸入煙誘発性急性肺損傷(ISALI)、細気管支炎、または閉塞性細気管支炎を有し得る。特定の態様では、肺疾患は、肺線維性状態、間質性肺疾患、または特発性肺線維症(IPF)もしくは肺瘢痕化である。追加の態様では、投与は、乾燥粉末吸入を含む。他の態様では、投与は、変異体ポリペプチドを含む溶液を霧化することを含む。
【0013】
さらなる態様では、方法は、少なくとも1つの追加の抗線維化治療剤を投与することをさらに含む。いくつかの態様では、少なくとも1つの追加の抗線維化剤は、NSAID、ステロイド、DMARD、免疫抑制剤、生体応答モジュレーター、または気管支拡張剤である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態は、呼吸可能な粒子サイズを有する粉砕された乾燥粉末を製剤化された配列番号2~20のペプチドを含む、医薬組成物を提供する。例えば、特定の態様では、粉砕された乾燥粉末は、約10ミクロン未満の空気動力学的中央粒子径(MMAD)を含む。MMADを決定するための方法は、例えば、Carvalho et al.,2011に提供されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
さらに別の実施形態では、有効量の実施形態の組成物を吸入によって対象に投与することを含む、対象を処置する方法が提供される。
【0016】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。しかしながら、本発明の精神と範囲の中にある種々の変更および改変がこの詳細な記載から当業者に明らかになるので、詳細な記載および具体的な実施例は、本発明の好まれる実施形態を示しながら、説明目的のみで提供されることが理解されるべきである。
【0017】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに示すために含まれている。本発明は、本明細書に提示す具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これら1つ以上の図面を参照することによって、よりよく理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】CSP7バルク粉末の走査型電子顕微鏡画像。粉末試料を試料トレイ上にスパッタリングし、圧縮窒素を吹き付けて広げた。Hitachi S5500 SEM/STEM走査型電子顕微鏡を使用して、試料を観察した。スケールバーは、画像右下に描かれている。
図2】CSP7バルク粉末の光学顕微鏡画像。粉末試料をスライドガラス上にスパッタし、Leica光学顕微鏡(Leica CTR6500)を使用して観察した。スケールバーは、各画像の左下隅に示されている。矢印は、ニートなCSP7粉末の凝集粒子を指している。
図3】CSP7バルク粉末粒子のX線粉末回折。結晶化度を決定するためにX線粉末回折を使用して、CSP7バルク粉末粒子を評価した。粉末は、0.025 2θ°のステップサイズおよび2°/分の速度を使用して、2~40 2θ°で測定される。
図4】CSP7バルク粉末の偏光顕微鏡。結晶化度を偏光顕微鏡によって評価した。写真は代表的な画像である。白い矢印は、結晶領域を指す。
図5】CSP7バルク粉末の示差走査熱量測定。バルクCSP7粉末を、TA機器Q20示差走査熱量測定装置を使用して示差走査熱量測定によって分析した。写真は、周波数1℃/60秒、および速度2℃/分を用いて、25~300℃まで上昇させた、変調DSCからの曲線である。
図6】CSP7バルク粉末の熱重量分析。Mettler熱重量分析装置であるモデルTGA/DSCを使用して、熱重量分析を行った。写真はTGA曲線である。加熱速度を10℃/分に設定し、25~500℃まで上昇させた。
図7】CSP7バルク粉末の動的蒸気吸着。バルクCSP7粉末を、Surface Measurement Systems DVS機器で、25℃で、10%刻みで相対湿度0%~90%の十分な吸着/脱着サイクルで実行した。湿度0%での水分脱着および湿度90%での質量変化が示されている。
図8】噴霧乾燥されたCSP7の粒子サイズ分布。CSP7をロイシン、トレハロース、クエン酸ナトリウム、またはロイシンのいずれか、およびトレハロースと混合し、噴霧乾燥した。Malvern Mastersizer 2000(レーザー光回折、フラウンホーファー近似、分散空気圧:3.0Bar)によって、粒子サイズを評価した。写真は、各噴霧乾燥混合物の曲線である。
図9】均質化されたCSP7懸濁液の目視観察。A.最高出力のローターステーターで1分間処理されたエタノール;B.未処理のCSP7-エタノール懸濁液、赤い矢印は大きな粒子/凝集物を示す;C.最高出力のCSP7-ローターステーターで1分間処理されたエタノール懸濁液、懸濁液は濃い灰色に変わる;D.最低出力のCSP7-ローターステーターで1分間処理されたエタノール懸濁液、懸濁液は薄い灰色に変わる。
図10】エアジェット粉砕されたCSP7粉末の光学顕微鏡。エアジェット粉砕機の示された位置から収集された粉末試料を光学顕微鏡によって画像化した。写真は代表的な画像である。
図11】エアジェット粉砕されたCSP7粉末の走査型電子顕微鏡。粉砕されたCSP7粉末(バッチ171027)を、バルクCSP7粉末と同じ条件下で、走査型電子顕微鏡(SEM)によって画像化した。写真は、粉砕されたCSP7粉末の代表的なSEM画像である。
図12】薄膜凍結後のCSP7の光学顕微鏡。粉末試料をスライドガラス上にスパッタし、Leica光学顕微鏡(Leica CTR6500)を使用して観察した。スケールバーは、各画像の左下隅に示されている。
図13】噴霧乾燥されたCSP7の走査型電子顕微鏡。噴霧乾燥されたCSP7混合物(A=100%LTI、B=ロイシン、C=トレハロース、d=クエン酸ナトリウム、e=ロイシンおよびトレハロース)の粒子形態を、SEMを使用して調べた。代表的な画像が描かれている。
図14】エアジェット粉砕されたCSP7粉末のX線粉末回折。粉砕された(バッチ171027)および未処理のバルクCSP7粉末のX線粉末回折プロファイルが示されている。回折曲線は、粉砕されたCSP7の結晶化度の低下を示している。
図15】噴霧乾燥されたCSP7の物理的状態。噴霧乾燥されたCSP7混合物をX線回折によって調べた。CSP7の各噴霧乾燥混合物の結晶化度またはその欠如を示す曲線が示されている。
図16】噴霧乾燥されたCSP7のHPLC分析。噴霧乾燥されたCSP7混合物の純度を、HPLCを使用してその化学的効力をアッセイすることによって調べた。
図17】エアジェット粉砕されたCSP7安定性のHPLC分析。未処理のバルクCSP7粉末およびエアジェット粉砕されたCSP7(バッチ171027)の両方の安定性を、HPLCを使用してそれらの化学的効力を分析することによって調べた。各試料を、蓋を開いた/閉じたバイアルを用いて3つの異なる条件(4℃、25℃/60RH、40℃/75RH)で保存した後、5、15、および32日間の保存で化学的効力を分析した。
図18】エアロゾル化されたCSP7粒子の堆積。次世代インパクター(NGI)を使用してエアロゾル化した後、すべての収集表面を既知量の20mM Tris緩衝液(pH10.3)ですすいだ。スロート、プレセパレーター、およびステージ1~MOCに堆積した粉末を別々に抽出し、測定した。特定の位置に堆積した未処理またはエアジェット粉砕(バッチ171013)CSP7粉末(収集容器から収集)の割合が示されている。
図19】エアジェット粉砕されたCSP7の空気力学的粒子サイズ分布。次世代インパクター(NGI)を使用してエアロゾル化した後、すべての収集表面を既知量の20mM Tris緩衝液(pH10.3)ですすいだ。カプセル、装置、アダプター、スロート、プレセパレーター、およびステージ1~MOCに堆積した粉末を別々に抽出し、測定した。未処理またはエアジェット粉砕(バッチ171027)CSP7粉末(粉砕された粉末のすべての画分から収集される)のいずれかが測定された粉砕機内の位置。各位置に存在する粉砕粉末の割合が示されている。
図20】噴霧乾燥されたCSP7混合物のエアロゾル性能。NGIによるエアロゾル化後、すべての収集表面を既知量の20mM Tris緩衝液(pH10.3)ですすいだ。カプセル、装置、アダプター、スロート、プレセパレーター、およびステージ1~MOCに堆積した粉末を別々に抽出し、測定した。特定の位置に堆積した粉末の割合が示されている。
図21】エアジェット粉砕されたCSP7粉末の動的蒸気吸着。粉砕されたCSP7粉末(バッチ171027)を、Surface Measurement Systems DVS機器で、25℃で、10%刻みで相対湿度0%~90%までの完全な吸着/脱着サイクルで実行した。湿度0%での水分脱着および湿度90%での質量変化が示されている。
図22】エアジェット粉砕されたCSP7粉末の熱分析。示差走査熱量測定(DSC)を、上記の熱量計を使用して粉砕されたCSP7(バッチ171027)について行った。周波数1℃/60秒および速度2℃/分を用い、25~300℃まで上昇させたDSCの曲線が描かれている。
図23】噴霧乾燥された100%CSP7の熱特性。賦形剤を含まない噴霧乾燥CSP7を、変調示差走査熱量測定によって分析した。写真はmDSC曲線である。
図24】ロイシンを含む噴霧乾燥CSP7の熱特性。25%ロイシンを含む噴霧乾燥CSP7混合物を、変調示差走査熱量測定によって分析した。写真はmDSC曲線である。
図25】トレハロースを含む噴霧乾燥CSP7の熱特性。25%トレハロースを含む噴霧乾燥CSP7混合物を、変調示差走査熱量測定によって分析した。写真はmDSC曲線である。
図26】クエン酸ナトリウムを用いた噴霧乾燥CSP7の熱特性。25%クエン酸ナトリウムを含む噴霧乾燥CSP7混合物を、変調示差走査熱量測定によって分析した。写真はmDSC曲線である。
図27】ロイシンおよびトレハロースを含む噴霧乾燥CSP7の熱特性。15%のロイシンおよび10%のトレハロースを含む噴霧乾燥されたCSP7混合物を、変調示差走査熱量測定によって分析した。写真はmDSC曲線である。
図28】すべての噴霧乾燥CSP7混合物の熱特性。製造された噴霧乾燥CSP7混合物の各々をmDSCによって分析した。これらの粉末についてのすべてのmDSC曲線が描かれている。
図29】マウスの解剖肺組織の湿重量。安楽死させたマウスを解剖し、肺を摘出し、体重を測定した。マウスを、生理食塩水で処理するかまたはブレオマイシンで処理して肺線維症を誘発するか、あるいはブレオマイシンで処理し、CSP7ペプチドで12または60分間処理した。
図30】マウス肺組織のコラーゲン含有量。未処理、ブレオマイシン処理、またはブレオマイシンおよびCSP7処理肺組織を均質化し、Quickzymeコラーゲンアッセイを使用してコラーゲン含有量を分析した。グラフは、肺の総コラーゲン含有量を示している。
図31】マウス肺組織のアシュクロフトスコア。未処理の、ブレオマイシン処理した、またはブレオマイシンおよびCSP7処理した肺組織を均質化し、Quickzymeコラーゲンアッセイを使用してコラーゲン含有量を分析した。アシュクロフトスコアを、参照により本明細書に組み込まれるHubner et al.2008に記載されるように決定した。グラフは、肺の総コラーゲン含有量を示している。
図32】マウス肺組織のコラーゲン含有量。未処理の、ブレオマイシン処理した、またはブレオマイシンおよびCSP7処理した肺組織を均質化し、Quickzymeコラーゲンアッセイを使用してコラーゲン含有量を分析した。グラフは、肺の総コラーゲン含有量を示している。
図33】最大5回の凍結融解サイクル後のCSP7(アンモニウム対イオン)の安定性。
図34】粉砕されたおよびニートのCSP7(アンモニウム対イオン)粉末の比表面積。
図35】粉砕されたおよびニートのCSP7(アンモニウム対イオン)粉末の熱重量分析。
図36】粉砕されたおよびニートのCSP7(アンモニウム対イオン)粉末のSEM画像。
図37】安定性研究における粉砕されたCSP7(アンモニウム対イオン)粉末の外観。
図38】安定性研究における粉砕されたCSP7(アンモニウム対イオン)の結晶化度。
【発明を実施するための形態】
【0019】
I.定義
本明細書で使用される場合、特定の構成要素に関して「本質的に含まない」とは、特定の構成要素が、組成物に意図的に配合され、および/または汚染物質としてのみもしくは微量で存在することを意味するために本明細書で使用される。したがって、組成物の任意の意図しない汚染に起因する特定の成分の総量は、0.01%をはるかに下回る。最も好ましいのは、具体的な構成成分の量が標準的な分析方法を用いて分析できない組成物である。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「1つの(a)」または「1つの(an)」は1以上を意味してもよい。特許請求の範囲で使用される場合、「~を含む」との用語と組み合わせて使用される場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」といった用語は、1つ、または1つより多くを意味していてもよい。
【0021】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、本開示が代替のみおよび「および/または」を指す定義を支持するけれども、代替のみを指すまたは代替が相互に排他的であることを指すように明白に指示されない限り、「および/または」を意味するように使用される。本明細書で使用されるとき、「別の」は少なくとも第2以上を意味してもよい。
【0022】
本出願の全体を通して、「約」という用語は、値が、値を決定するのに採用される装置、方法に関する誤差の固有の変動、または試験対象間に存在する変動を含むことを示すのに使用される。「約」とは、特に注記しない限り、+/-10%を意味する。
【0023】
本明細書で使用される「ペプチド」という用語は、典型的には、ペプチド結合によって結合されたアミノ酸の一本鎖から構成されるアミノ酸の配列を指す。一般に、ペプチドは少なくとも2つのアミノ酸残基を含み、特に明記しない限り、長さは約50アミノ酸未満である。いくつかの態様では、ペプチドは、対イオンと共に提供され得る。同様に、いくつかの場合、ペプチドは、分解を低減したブロッキング修飾などのNおよび/またはC末端修飾を含み得る。
【0024】
「生物学的に活性な」カベオリン-1(Cav-1)ペプチドは、p53タンパク質レベルを増加させ、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター(uPA)およびuPA受容体(uPAR)を減少させ、ならびに/または線維性肺線維芽細胞などの細胞中でのプラスミノーゲンアクチベーター阻害剤-1(PAI-1)の発現を増加させるペプチドを指す。いくつかの態様では、生物学的に活性なペプチドは、配列番号1の天然Cav-1ポリペプチドの生物学的または生化学的活性の少なくとも20%を有する(例えば、インビトロまたはインビボアッセイによって測定した場合)。いくつかの態様では、生物学的活性ペプチドは、天然Cav-1ポリペプチドと比較して、同じ生物学的または生化学的活性を有するか、またはそれを増加させる。
【0025】
「同一性」または「相同性」という用語は、必要に応じて全配列の最大パーセント同一性を達成し、かつ、配列同一性の一部として保存的置換を考慮せずに、配列をアラインしてギャップを導入した後、それが比較される対応する配列の残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合を意味すると解釈されるべきである。N末端またはC末端の伸長も挿入も、同一性または相同性を低下させると解釈されるべきではない。アラインメントのための方法およびコンピュータプログラムは、当該技術分野で周知である。配列同一性は、配列分析ソフトウェアを使用して測定し得る。
【0026】
「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、その最も広い意味で、2つ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体、またはペプチド模倣物の化合物を指すために使用される。サブユニットは、アミド結合によって結合され得る。別の実施形態では、サブユニットは、他の結合、例えばエステル、エーテルなどによって結合され得る。本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、グリシンおよびDまたはL光学異性体の両方、ならびにアミノ酸類似体およびペプチド模倣物を含む、天然および/または非天然または合成アミノ酸のいずれかを指す。「ペプチド模倣物(peptidomimetic)」または「ペプチド模倣物(peptide mimic)」という用語は、本発明によるペプチドが、例えば、尿素結合、カルバメート結合、スルホンアミド結合、ヒドラジン結合、または他の共有結合などの少なくとも1つの非ペプチド結合を含むように修飾されることを意味する。ペプチド鎖が短い場合、3つ以上のアミノ酸のペプチドが一般にオリゴペプチドと称される。ペプチド鎖が長い場合(例えば、50アミノ酸より長い場合)、ペプチドは一般にポリペプチドまたはタンパク質と称される。
【0027】
「対象」および「個体」および「患者」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、本明細書に開示される医薬組成物による予防的処置を含む処置が提供される動物、例えば、ヒトまたは非ヒト動物(例えば、哺乳動物)を指す。本明細書で使用される「対象」という用語は、ヒトおよびヒト以外の動物を指す。「非ヒト動物」という用語には、すべての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、げっ歯類(例えば、マウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシ、および非哺乳動物、例えば、ニワトリ、両生類、爬虫類などが含まれる。一実施形態では、対象はヒトである。別の実施形態では、対象は、疾患モデルとしての実験動物または動物代替物である。非ヒト哺乳動物には、非ヒト霊長類(特に、高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、げっ歯類(例えば、マウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、およびウシなどの哺乳動物が含まれる。いくつかの態様では、非ヒト動物は、イヌまたはネコなどのコンパニオンアニマルである。
【0028】
対象における疾患もしくは状態を「処置する」、または疾患もしくは状態を有する患者を「処置する」とは、個体を例えば薬物の投与などの薬物処置に供し、その結果、疾患または状態の少なくとも1つの症状が軽減または安定することを指す。典型的には、ペプチドが処置として治療的に投与される場合、該ペプチドは、肺損傷または肺線維症のうちの1つ以上の症状を呈する対象に投与される。
【0029】
「単離された」とは、ポリペプチドが、体液、例えば、血液などの任意の天然の環境から分離され、ポリペプチドに天然で付随する成分から分離されていることを意味する。
【0030】
単離されたおよび「実質的に純粋な」とは、ポリペプチドに天然で付随する成分から少なくともある程度分離および精製されたポリペプチドを意味する。典型的には、ポリペプチドは、それが天然で関連しているタンパク質および天然に存在する有機分子を少なくとも約60重量%、または少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、またはさらに少なくとも約99重量%含まない場合、実質的に純粋である。例えば、実質的に純粋なポリペプチドは、天然の供給源からの抽出によって、通常はそのタンパク質を発現しない細胞における組換え核酸の発現によって、または化学合成によって得ることができる。
【0031】
明細書で使用される「変異体」という用語は、1つ以上のアミノ酸の欠失、付加、置換、または側鎖修飾によってポリペプチドとは異なるが、天然に存在する分子の1つ以上の特定の機能または生物学的活性を未だ保持するポリペプチドを指す。アミノ酸置換には、アミノ酸が異なる天然に存在するまたは非従来型のアミノ酸残基で置換される変更が含まれる。かかる置換は「保存的」として分類され得、その場合、ポリペプチドに含まれるアミノ酸残基は、極性、側鎖官能基、またはサイズのいずれかに関して同様の特徴の別の天然に存在するアミノ酸で置き換えられる。かかる保守的な置換は、当該技術分野で周知である。本発明に包含される置換はまた、「非保存的」であり得、この場合、ペプチド中に存在するアミノ酸残基が、異なる特性を有するアミノ酸、例えば、異なる群由来の天然に存在するアミノ酸で置換される(例えば、荷電したまたは疎水性アミノ酸をアラニンで置換する)か、あるいは、天然に存在するアミノ酸が非従来型アミノ酸で置換される。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は保存的である。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに関して使用される場合、変異体という用語には、それぞれ、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドと比較して(例えば、野生型ポリヌクレオチドまたはポリペプチドと比較して)、一次、二次、または三次構造が変化し得るポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指すこともまた包含され得る。
【0032】
「挿入」または「欠失」という用語は、典型的には、約1~5個のアミノ酸の範囲にある。許容される変異は、組換えDNA技術を使用して配列中のヌクレオチドの挿入、欠失、または置換を体系的に行いながら、ペプチドを合成的に製造することによって実験的に決定することができる。
【0033】
ペプチドを指す場合の「置換」という用語は、異なる実体、例えば、別のアミノ酸またはアミノ酸部分でのアミノ酸の変化を指す。置換は、保存的または非保存的置換であり得る。
【0034】
ペプチドなどの分子の「類似体」は、分子全体またはその断片のいずれかに機能的に類似した分子を指す。「類似体」という用語はまた、対立遺伝子種および誘導された変異体を含むことを意図している。類似体は、典型的には、しばしば保存的置換によって、1つまたはいくつかの位置で天然に存在するペプチドとは異なる。類似体は、典型的には、天然ペプチドと少なくとも80または90%の配列同一性を示す。いくつかの類似体には、非天然アミノ酸またはNもしくはC末端アミノ酸の修飾も含まれる。非天然アミノ酸の例は、例えば、二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸、4-ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、ε-N、N、N-トリメチルリジン、ε-N-アセチルリジン、O-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、σ-N-メチルアルギニンが含まれるが、これらに限定されない。断片および類似体は、以下に記載されるように、トランスジェニック動物モデルにおける予防的または治療的有効性についてスクリーニングすることができる。
【0035】
「共有結合」とは、共有化学結合によって直接的または間接的に(例えば、リンカーを介して)結合されることを意味する。本発明のすべての実施形態のいくつかの態様では、融合ペプチドは共有結合している。
【0036】
本明細書で使用される「融合タンパク質」という用語は、2つ以上のタンパク質の組換えタンパク質を指す。融合タンパク質は、目的のタンパク質すべてを含む単一のポリペプチドに細胞中で翻訳され得る単一のオープンリーディングフレームを構成するように、例えば、あるタンパク質をコードする核酸配列が別のタンパク質をコードする核酸に結合されることによって生成され得る。タンパク質の配置の順序は変動し得る。融合タンパク質には、エピトープタグまたは半減期延長因子が含まれ得る。エピトープタグには、ビオチン、FLAGタグ、c-myc、ヘマグルチニン、His6、ジゴキシゲニン、FITC、Cy3、Cy5、緑色蛍光タンパク質、V5エピトープタグ、GST、β-ガラクトシダーゼ、AU1、AU5、およびアビジンが含まれる。半減期延長因子には、Fcドメインおよび血清アルブミンが含まれる。
【0037】
「気道」という用語は、本明細書では、上気道、呼吸気道、および肺を含む、呼吸道の任意の部分を指す。上気道には、鼻および鼻腔、口、ならびに喉が含まれる。呼吸気道には、喉頭、気管、気管支、細気管支が含まれる。肺には、呼吸細気管支、肺胞管、肺胞嚢、および肺胞が含まれる。
【0038】
「吸入煙誘発性急性肺損傷」およびISALI」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、煙吸入によって生じる急性肺損傷(ALI)の形態を指す。ALIは「軽度の急性呼吸窮迫症候群;ARDS」とも称する。ARDSは、対象における以下の状態の1つ以上を見つけることによって定義することができる:1)胸部X線での両側肺浸潤、2)臨床的に示されるように右心カテーテル検査で測定した場合での、肺毛細血管楔入圧<18mmHg(2.4kPa)、および3)PaO/FiO<300mmHg(40kPa)。いくつかの実施形態では、ISALIの処置には、以下の状態のうちの1つ以上の処置が含まれる:酸素供給の減少、気道閉塞(重度の気道閉塞を含む)、線維性気道鋳型(fibrinous airway cast)または破片、および肺胞フィブリン沈着。
【0039】
「エアジェット粉砕」という用語は、圧縮ガスのジェットを使用して粒子を互いに衝突させ、それにより、粒子を粉砕することによって粒子サイズを低下させるための装置または方法を指す。エアジェット粉砕は、ペプチド粒子のサイズを低下させるために使用することができる。同じ機能を行う他の機械的粉砕装置も、エアジェット粉砕機と交換可能に使用することができる。エアジェット粉砕は、温度、圧力、相対/赦免湿度、酸素含有量などの様々な環境パラメータの下で生じさせることができる。
【0040】
「ボール粉砕」という用語は、目的の粒子および粉砕(grinding)媒体をシリンダーの内部に添加し、シリンダーを回転させることによって粒子サイズを低下させるための装置または方法を指す。目的の粒子は、粉砕媒体が回転するときにシリンダーの外側に沿って上下するときに分解される。ボール粉砕は、ペプチド粒子のサイズを低下させるために使用することができる。同じ機能を行う他の機械的粉砕装置も、エアジェット粉砕と交換可能に使用することができる。
【0041】
「湿式粉砕」または「媒体粉砕」という用語は、液体および粉砕媒体を含む媒体を含む、攪拌機を備えた装置に目的の粒子を加えることによって粒子サイズを低下させるための装置または方法を指す。目的の粒子を添加し、攪拌機が回転すると、攪拌機が分散するエネルギーにより、粉砕媒体と目的の粒子とが接触し、目的の粒子が分解される。同じ機能を行う他の機械的粉砕装置も、エアジェット粉砕と交換可能に使用することができる。
【0042】
「高圧均質化」という用語は、圧力および機械力の両方を組み合わせて目的の粒子を分解する装置に目的の粒子を加えることによって粒子サイズを低下させる方法を指す。高圧均質化で使用される機械力には、特に、衝撃、せん断、およびキャビテーションが含まれ得る。同じ機能を行う他の機械的粉砕装置も、エアジェット粉砕と交換可能に使用することができる。
【0043】
「極低温粉砕」という用語は、最初に、目的の粒子をドライアイス、液体窒素、または他の極低温液体で冷却し、続いて、目的の粒子を粉砕してサイズを低下させることによって粒子サイズを低下させるための装置または方法を指す。同じ機能を行う他の機械的粉砕装置も、エアジェット粉砕と交換可能に使用することができる。
【0044】
「有効量」または「治療上有効な」という句は、所望の治療結果を生じさせるのに十分な薬物または薬剤の投与量を意味する。所望の治療結果は、投与のレシピエントにおける主観的または客観的な改善、感染症の軽減、炎症の軽減、肺成長の増加、肺修復の増加、組織浮腫の軽減、DNA修復の増加、アポトーシスの減少、腫瘍サイズの低下、癌細胞の増殖速度の低下、転移の減少、または上記の任意の組み合わせであり得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「賦形剤」は、対象への活性医薬成分(API)の投与または送達を容易にするために使用されるか、または対象の作用部位への送達のために医薬的に使用される薬物製剤への、APIの処理を容易にするために使用される比較的不活性な物質である薬学的に許容される担体を指す。賦形剤または薬学的に許容される担体には、活性成分を除く、剤形のすべての不活性成分が含まれる。賦形剤の非限定的な例には、担体剤、増量剤、安定化剤、界面活性剤、表面修飾剤、溶解性増強剤、緩衝剤、封入剤、抗酸化剤、防腐剤、非イオン性湿潤剤または清澄剤、増粘剤、および吸収促進剤が含まれる。「賦形剤を含まない」とは、任意の賦形剤を含まない製剤中の目的の医薬組成物を指す。
【0046】
「医薬的または薬理学的に許容される」との句は、必要に応じて、動物(例えばヒト)に投与したときに、有害な反応、アレルギー反応、または他の不利な反応を生じない分子部分および組成物を指す。CSP7などのCav-1ペプチドまたは追加の活性成分を含む医薬組成物の調製は、本開示に照らして当業者に既知であろう。さらに、動物(例えば、ヒト)投与の場合、製剤は、FDAまたは他の認められた規制当局によって要求されるバイオバーデン、無菌性、発熱性、一般的な安全性、および/または純度基準を満たす必要があることが理解される。
【0047】
本明細書で使用される場合、「医薬的に許容される担体」は、当業者に既知であるような、任意および全ての水性溶媒(例えば、水、アルコール/水溶液、生理食塩水溶液、非経口ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム、Ringerデキストロースなど)、非水性溶媒(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、および注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチル)、分散媒体、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗細菌剤または抗真菌剤、酸化防止剤、キレート化剤、および不活性気体)、等張剤、吸収遅延剤、塩、薬物、薬物安定剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、香味調整剤(例えば、甘味剤、香味剤)、そのような材料およびそれらの組み合わせが含まれる。医薬組成物中のpHおよび種々の構成要素の実際の濃度は、周知であるパラメータにしたがって調節される。いくつかの態様では、担体は、治療剤をカプセル化し得るが、それ自体は、対象に消費または投与されない(例えば、乾燥粉末吸入器で使用するなどのために、乾燥粉末組成物を封入するシェルカプセル)。
【0048】
II.カベオリン-1ペプチド
本開示の実施形態は、カベオリン-1(Cav-1)ペプチドの乾燥粉末製剤を提供する。カベオリン-1(Cav-1)足場ドメインまたはペプチドは、SrcキナーゼとのCav-1相互作用を妨げ、uPAおよび抗β1-インテグリン抗体の組み合わせ効果を模倣する。天然ヒトCav-1は、178アミノ酸の長さ、および22kDaの分子量を有する。Cav-1のアミノ酸配列(配列番号1)を以下に示す:
【化1】
【0049】
いくつかの態様では、ペプチドは、配列番号2、FTTFTVTと少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、85%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む足場ドメインペプチドである。ペプチドは、配列番号1の配列と比較して、1、2、3、4個またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失、または挿入を含み得、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19残基のポリペプチドを誘導する。特定の態様では、ペプチドは、天然Cav-1ポリペプチドの切断型、例えば、表1に示される例示的なペプチドである。
【表1】
【0050】
本開示で提供されるペプチドは、結合または生物学的活性のiインビトロまたはインビボアッセイにおいて天然Cav-1ポリペプチドの活性を有する生物学的に活性な誘導体である。特定の態様では、ペプチドは、天然Cav-1ポリペプチドの活性の少なくとも約20%、または少なくとも約30%、40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、約95%、97%、99%、およびそれらから導くことが可能な任意の範囲、例えば、約70%~約80%、より好ましくは約81%~約90%。またはさらにより好ましくは、約91%~約99%の活性で、インビトロまたはインビボでブレオマイシンによって誘発される肺上皮細胞(LEC)のアポトーシスを阻害または防止する。ペプチドは、天然CAV-1ポリペプチドよりも100%以上の活性を有し得る。生物学的活性、例えば、抗線維化活性、uPA、uPAR、およびPAI-1 mRNAの発現に影響を与える能力、または肺線維芽細胞の増殖を阻害する能力を試験するためのアッセイは、当該技術分野で周知である。
【0051】
本開示のペプチドは、天然Cav-1ポリペプチドまたはその改変型である。ペプチドは、当該技術分野で周知の方法を使用して単離または生成された、合成、組換え、または化学的に修飾されたペプチドであり得る。N末端、C末端、または内部のアミノ酸に改変を加えることができる。N末端修飾は、例えば、アシル化、アセチル化、またはC末端アミド化であり得るが、これらに限定されない。ペプチドは、以下に記載されるように、保存的または非保存的アミノ酸変化を含み得る。ポリヌクレオチドの変化は、参照配列によってコードされるポリペプチドのアミノ酸の置換、付加、欠失、融合、および切断をもたらし得る。ペプチドはまた、例えば、限定するものではないが、挿入アミノ酸、または通常はヒトのタンパク質には存在しない非標準アミノ酸、例えば、オルニチンを含む、ペプチドの基礎であるアミノ酸配列において通常は存在しないアミノ酸(および他の分子)の挿入および置換を含む、アミノ酸の挿入、欠失、または置換を含み得る。保存的置換という用語は、ペプチドを説明する場合、ペプチドの活性を実質的に変化させないペプチドのアミノ酸組成の変化を指す。例えば、保存的置換とは、同様の化学的特性を有する異なるアミノ酸残基をアミノ酸残基で置換することを指す。保存的アミノ酸置換には、ロイシンのイソロイシンまたはバリンでの置換、アスパラギン酸のグルタメートでの置換、またはスレオニンのセリンでの置換が含まれる。
【0052】
保存的アミノ酸置換は、ロイシンをイソロイシンまたはバリンで置換し、アスパラギン酸をグルタメートで置換し、またはスレオニンをセリンで置換するなど、あるアミノ酸を同様の構造的および/または化学的特性を有する別のアミノ酸で置換することから生じる。したがって、特定のアミノ酸配列の保存的置換とは、重要なアミノ酸の置換でさえペプチドの活性を低下させないように、ポリペプチド活性に重要ではないアミノ酸の置換、または同様の特性(例えば、酸性、塩基性、正または負に帯電した、極性または非極性など)を有する他のアミノ酸によるアミノ酸の置換を指す。機能的に同様であるアミノ酸を提供する保存的置換表は、当該技術分野で周知である。例えば、以下6つの群は、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、4)アルギニン(R)、リジン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。(Creighton,Proteins,W.H.Freeman and Company(1984)も参照のこと、これは参照によりその全体が組み込まれる。)いくつかの実施形態では、変化によってペプチドの活性が低下しない場合、単一のアミノ酸または少ない割合のアミノ酸を変更、付加、または削除する個々の置換、欠失、または付加も、保存的置換とみなすこともすることができる。挿入または欠失は、典型的には、約1~5個のアミノ酸の範囲である。保存的アミノ酸の選択は、例えば、アミノ酸がペプチドの外側にあり、かつ溶媒に曝露される場合、または内側にあり、かつ溶媒に曝露されない場合、ペプチド中で置換されるアミノ酸の位置に基づいて選択し得る。
【0053】
代替の実施形態では、既存のアミノ酸の位置、すなわち、溶媒への曝露に基づいて(すなわち、溶媒に曝露されていない内部に局在するアミノ酸と比較して、アミノ酸が溶媒に曝露されるか、またはペプチドもしくはポリペプチドの外面に存在する場合)、既存のアミノ酸を置換するアミノ酸を選択することができる。かかる保存的アミノ酸置換の選択は、例えば、Dordo et al,J.Mol Biol,1999,217,721-739 およびTaylor et al,J.Theor.Biol.119(1986);205-218、ならびにS.French and B.Robson,J.Mol.Evol.19(1983)171に開示されている。したがって、タンパク質またはペプチドの外側のアミノ酸(すなわち溶媒に曝露されているアミノ酸)に好適な保存的アミノ酸置換を選択することができ、例えば、以下の置換を使用することができるが、これらに限定されない:YのFでの置換、TのSまたはKでの置換、PのAでの置換、EのDまたはQでの置換、NのDまたはGでの置換、RのKでの置換、GのNまたはAでの置換、TのSまたはKでの置換、DのNまたはEでの置換、IのLまたはVでの置換、FのYでの置換、SのTまたはAでの置換、RのKでの置換、GのNまたはAでの置換、KのRでの置換、AのSでの置換、KまたはPでの置換。
【0054】
代替の実施形態では、タンパク質またはペプチドの内部のアミノ酸に好適に包含される保存的アミノ酸置換を選択することもでき、例えば、タンパク質またはペプチドの内部にあるアミノ酸(すなわちアミノ酸が溶媒に曝露されていない)に好適な保存的置換を使用することができ、例えば、以下の保存的置換を使用することができるが、これらに限定されない:YがFで置換され、TがAまたはSで置換され、IがLまたはVで置換され、WがYで置換され、MがLで置換され、NがDで置換され、GがAで置換され、TがAまたはSで置換され、DがNで置換され、IがLまたはVで置換され、FがYまたはLで置換され、SがAまたはTで置換され、AがS、G、T、またはVで置換される。いくつかの実施形態では、非保存的アミノ酸置換も、変異体の用語内に包含される。
【0055】
いくつかの態様では、ポリペプチドは、天然Cav-1ポリペプチドの誘導体である。本明細書で使用される「誘導体」という用語は、例えば、限定するものではないが、アセチル化、ユビキチン化、標識化、ペグ化(ポリエチレングリコールによる誘導体化)、脂質化、グリコシル化、アミド化、または他の分子の付加によるなどの技術によって化学的に修飾されたペプチドを指す。分子は、通常は該分子の一部ではない追加の化学部分を含む場合、別の分子の「誘導体」でもある。かかる部分は、pHを変更し、または分子の安定性、溶解性、吸収性、生物学的半減期などを改善することができる。あるいは、該部分は、分子の毒性を低下させ、分子の望ましくない任意の副作用などを排除または軽減することができる。かかる効果を媒介することが可能な部分は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版、A.R.Gennaro,Ed.,MackPubl.,Easton,PA(1990)に開示されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0056】
「誘導体」または「変異体」と組み合わせて使用される場合の「機能的」という用語は、機能的誘導体または機能的変異体である実体または分子の生物学的活性と実質的に同様の生物学的活性(機能的または構造的のいずれか)を有する本発明のポリペプチドを指す。機能的誘導体という用語は、分子の断片、類似体、または化学的誘導体を含むことを意図している。
【0057】
いくつかの態様では、アミノ酸置換は、置換が同様の親水性を有するアミノ酸のためのものである1つ以上の位置でポリペプチド中でなされ得る。タンパク質に相互作用的な生物学的機能を付与する際のハイドロパシーアミノ酸インデックス(hydropathic amino acid index)の重要性は、当該技術分野で一般的に理解されている(Kyte and Doolittle,1982)。アミノ酸の相対的な親水性特性が、得られるタンパク質の二次構造に寄与し、次いで該二次構造が、タンパク質と他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を規定していることが受け入れられている。したがって、かかる保存的置換は、ポリペプチド中で行うことができ、それらの活性にわずかな影響しか及ぼさない可能性が高い。米国特許第4,554,101号に詳述されているように、以下の親水性値がアミノ酸残基に与えられている:アルギニン(+3.0)、リシン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、スレオニン(-0.4)、プロリン(-0.5±1)、アラニン(0.5)、ヒスチジン(-0.5)、システイン(-1.0)、メチオニン(-1.3)、バリン(-1.5)、ロイシン(-1.8)、イソロイシン(-1.8)、チロシン(-2.3)、フェニルアラニン(-2.5)、トリプトファン(-3.4)。これらの値は指針として使用することができ、したがって、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるものが特に好ましく、±0.5以内のものがさらに特に好ましい。したがって、異なるが相同である、同様の親水性値を有するアミノ酸をアミノ酸で置換することによって、本明細書に記載のポリペプチドのいずれも修飾され得る。±/-1.0または±/-0.5ポイント以内の親水性を有するアミノ酸は相同とみなされる。
【0058】
Cav-1ペプチドは、かかる修飾が単離されたペプチドの抗炎症特性または血糖制御を改善する能力に影響を及ぼさない程度で、同時翻訳および翻訳後(C末端ペプチド切断)修飾、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、タンパク質分解切断(例えば、フューリンまたはメタロプロテアーゼによる切断)などを含み得る。
【0059】
いくつかの態様では、Cav-1ペプチドは、天然に存在しないアミノ酸を含む。ペプチドは、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸の組み合わせを含むことができ、または天然に存在しないアミノ酸のみを含み得る。天然に存在しないアミノ酸は、合成非天然アミノ酸、置換アミノ酸を含むことができ、またはペプチド(またはプロテアーゼ認識配列を除く、組成物の他の成分)への1つ以上のD-アミノ酸が特定の状況において望ましい。D-アミノ酸含有ペプチドは、L-アミノ酸含有形態と比較して、インビトロまたはインビボで増加した安定性を示す。したがって、D-アミノ酸を組み込んだペプチドの構築は、より高いインビボまたは細胞内安定性が所望されるかまたは必要とされる場合、特に有用であり得る。より具体的には、D-ペプチドは、内因性ペプチダーゼおよびプロテアーゼに抵抗性であり、それにより、結合された薬物およびコンジュゲートのより良い経口経上皮送達および経皮送達、膜永久複合体(membrane-permanent complexes)のバイオアベイラビリティの改善(さらなる詳細については以下を参照)、ならびにかかる特性が望ましい場合の血管内および間質の寿命の延長を提供する。D-異性体ペプチドの使用はまた、結合された薬物および他のカーゴ(cargo)分子の経皮および経口経上皮送達を促進することができる。さらに、D-ペプチドは、Tヘルパー細胞への主要組織適合遺伝子複合体クラスIl制限提示について効率的に処理することができず、したがって、生物全体における体液性免疫応答を誘発する可能性が低くなる。したがって、ペプチドコンジュゲートは、例えば、細胞透過性ペプチド配列のD異性体形態、切断部位のL異性体形態、および治療用ペプチドのD異性体形態を使用して構築することができる。
【0060】
20個の「標準的な」L-アミノ酸に加えて、当該技術分野で明確に定義されるD-アミノ酸または非標準の修飾または異常アミノ酸も、本開示での使用のために企図される。リン酸化アミノ酸(Ser、Thr、Tyr)、グリコシル化アミノ酸(Ser、Thr、Asn)、β-アミノ酸、GABA、ω-アミノ酸は、本開示での使用のためにさらに企図される。これらには、例えば、β-アラニン(β-Ala)、および他のω-アミノ酸、例えば、3-アミノプロピオン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dpr)、4-アミノ酪酸など;α-アミノイソ酪酸(Aib);ε-アミノヘキサン酸(Aha);δ-アミノ吉草酸(Ava);N-メチルグリシンまたはサルコシン(MeGly);オルニチン(Orn);シトルリン(Cit);t-ブチルアラニン(t-BuA);t-ブチルグリシン(t-BuG);N-メチルイソロイシン(メレ);フェニルグリシン(Phg);ノルロイシン(Nle);4-クロロフェニルアラニン(Phe(4-Cl));2-フルオロフェニルアラニン(Phe(2-F));3-フルオロフェニルアラニン(Phe(3-F));4-フルオロフェニルアラニン(Phe(4-F));ペニシラミン(Pen);1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(Tic);ホモアルギニン(hArg);N-アセチルリジン(AcLys);2,4-ジアミノ酪酸(Dbu);2,4-ジアミノ酪酸(Dab);p-アミノフェニルアラニン(Phe(pNH2));N-メチルバリン(MeVal);ホモシステイン(hCys)、ホモフェニルアラニン(hPhe)およびホモセリン(hSer);ヒドロキシプロリン(Hyp)、ホモプロリン(hPro)、N-メチル化アミノ酸、およびペプトイド(N置換グリシン)が含まれる。
【0061】
カルボン酸末端修飾には、カルボン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、脂肪酸(ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸)、コハク酸、安息香酸、カルボベンゾキシ(Cbz)によるアシル化、アセチル化、およびビオチン化が含まれる。アミノ末端修飾には、(i)カルボン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、脂肪酸(ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸など)、コハク酸、安息香酸、カルボベンゾキシ(Cbz)によるアシル化、(ii)ビオチン化、(iii)アミド化、(iv)フルオレセイン(FITC、FAMなど)、7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン-3-酢酸、7-ヒドロキシクマリン-3-酢酸、7-メトキシクマリン-3-酢酸、および他のクマリンなどの色素の付加;ローダミン(5-カルボキシローダミン110または6G、5(6)-TAMRA、ROX);N-[4-(4-ジメチルアミノ)フェニルアゾ]安息香酸(Dabcyl)、2,4-ジニトロベンゼン(Dnp)、5-ジメチルアミノナフタレン-1-スルホン酸(Dansyl)、および他の色素、ならびに(v)ポリエチレングリコールが含まれる。
【0062】
ポリペプチドは、そのN末端およびC末端においてそれぞれアシル(「Ac」と略す)基およびアミド(略称「Am」と略す)基でキャッピングされ得、例えば、N末端においてアセチル(CHCO-)でキャップされ、C末端においてアミド(-NH)でキャップされ得る。好ましくは末端アミノ基への結合での、広範囲のN末端キャッピング機能が企図され、例えば、ホルミル;
1~10個の炭素原子を有するアルカノイル、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル;
1~10個の炭素原子を有するアルケノイル、例えば、ヘキサ-3-エノイル;
1~10個の炭素原子を有するアルキノイル、例えば、ヘキサ-5-イノイル;
アロイル、例えば、ベンゾイルまたは1-ナフトイル;
ヘテロアロイル、例えば、3-ピロイルまたは4-キノロイル;
アルキルスルホニル、例えば、メタンスルホニル;
アリールスルホニル、例えば、ベンゼンスルホニルまたはスルファニリル;
ヘテロアリールスルホニル、例えば、ピリジン-4-スルホニル;
1~10個の炭素原子を有する置換アルカノイル、例えば、4-アミノブチリル;
1~10個の炭素原子を有する置換アルケノイル、例えば、6-ヒドロキシ-ヘキサ-3-エノイル;
1~10個の炭素原子を有する置換アルキノイル、例えば、3-ヒドロキシ-ヘキサ-5-イノイル;
置換アロイル、例えば、4-クロロベンゾイルまたは8-ヒドロキシ-ナフト-2-オイル;
置換ヘテロアロイル、例えば、2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-3-メチル-キナゾリン-6-オイル;
置換アルキルスルホニル、例えば、2-アミノエタンスルホニル;
置換アリールスルホニル、例えば、5-ジメチルアミノ-1-ナフタレンスルホニル;
置換ヘテロアリールスルホニル、例えば、1-メトキシ-6-イソキノリンスルホニル;
カルバモイルまたはチオカルバモイル;
置換カルバモイル(R’-NH-CO)または置換チオカルバモイル(R’-NH-CS)(式中、R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル、置換アリール、または置換ヘテロアリールである);
置換カルバモイル(R’-NH-CO)および置換チオカルバモイル(R’-NH-CS)(式中、R’は、アルカノイル、アルケノイル、アルキノイル、アロイル、ヘテロアロイル、置換アルカノイル、置換アルケノイル、置換アルキノイル、置換アロイル、または置換ヘテロアロイルである)であり、すべて上記で定義されている通りである。
【0063】
C末端キャッピング機能は、末端カルボキシルとのアミド結合またはエステル結合のいずれかであり得る。アミド結合を提供するキャッピング機能は、NRとして規定され、RおよびRは、以下の群から独立して引用され得る:
【0064】
1~10個の炭素原子を好ましくは有するアルキル、例えば、メチル、エチル、イソプロピル;
1~10個の炭素原子を好ましくは有するアルケニル、例えば、プロプ-2-エニル;
1~10個の炭素原子を好ましくは有するアルキニル、例えば、プロプ-2-イニル;
1~10個の炭素原子を有する置換アルキル、例えば、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、メルカプトアルキル、アルキルチオアルキル、ハロゲノアルキル、シアノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アルカノイルアルキル、カルボキシアルキル、カルバモイルアルキル;
1~10個の炭素原子を有する置換アルケニル、例えば、ヒドロキシアルケニル、アルコキシアルケニル、メルカプトアルケニル、アルキルチオアルケニル、ハロゲノアルケニル、シアノアルケニル、アミノアルケニル、アルキルアミノアルケニル、ジアルキルアミノアルケニル、アルカノイルアルケニル、カルボキシアルケニル、カルバモイルアルケニル;
1~10個の炭素原子を有する置換アルキニル、例えば、ヒドロキシアルキニル、アルコキシアルキニル、メルカプトアルキニル、アルキルチオアルキニル、ハロゲノアルキニル、シアノアルキニル、アミノアルキニル、アルキルアミノアルキニル、ジアルキルアミノアルキニル、アルカノイルアルキニル、カルボキシアルキニル、カルバモイルアルキニル;
最大10個の炭素原子を有するアロイルアルキル、例えば、フェナシルまたは2-ベンゾイルエチル;
アリール、例えば、フェニルまたは1-ナフチル;
ヘテロアリール、例えば、4-キノリル;
1~10個の炭素原子を有するアルカノイル、例えば、アセチルまたはブチリル;
アロイル、例えば、ベンゾイル;
ヘテロアロイル、例えば、3-キノロイル;
OR’またはNR’R’’、ここで、R’およびR’’は、独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、アロイル、スルホニル、スルフミル、またはSO2-R’’’’もしくはSO-R’’’’であり、R’’’は、置換または非置換のアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、またはアルキニルである。
【0065】
エステル結合を提供するキャッピング機能は、ORとして示され、ここで、Rは、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルキルオキシ、置換アルコキシ、置換アリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、置換アラルキルオキシ、または置換ヘテロアラルキルオキシであり得る。
【0066】
N末端またはC末端キャッピング機能のいずれかまたはその両方は、キャップされた分子が、活性薬物を放出するために身体内で自発的または酵素的変換を受け、かつ、親薬物分子よりも送達特性が改善されている、プロドラッグ(親薬物分子の薬理学的に不活性な誘導体)として機能するような構造のものであり得る(Bundgaard H,Ed:Design of Prodrugs,Elsevier,Amsterdam,1985)。
【0067】
キャッピング基の賢明な選択により、ペプチドに対する他の活性の付加が可能となる。例えば、N末端またはC末端キャップに結合したスルフヒドリル基の存在により、誘導体化ペプチドを他の分子にコンジュゲートすることができる。
【0068】
さらに別の態様では、ペプチドまたはその断片もしくは誘導体は、「レトロインベルソペプチド」であり得る。「レトロインベルソペプチド」は、少なくとも1つの位置でのペプチド結合の方向の反転、すなわち、アミノ酸の側鎖に関してアミノ末端およびカルボキシ末端の反転を有するペプチドを指す。したがって、レトロインベルソ類似体は、天然ペプチド配列のように側鎖のトポロジーをほぼ維持しながら、末端を逆にし、ペプチド結合の方向を逆にしている。レトロインベルソペプチドは、L-アミノ酸もしくはD-アミノ酸、または最大でもすべてのアミノ酸がD-異性体である、L-アミノ酸およびD-アミノ酸の混合物を含むことができる。部分的なレトロインベルソペプチド類似体は、配列の一部のみが逆であり、エナンチオマーアミノ酸残基で置き換えられているポリペプチドである。かかる類似体の逆反転(retro-inverted)部分はアミノ末端とカルボキシル末端とが逆になっているため、逆反転部分に隣接するアミノ酸残基は、側鎖が類似するa-置換ジェミナル-ジアミノメタンおよびマロン酸にそれぞれ置き換えられる。細胞透過性ペプチドのレトロインベルソ形態は、天然形態と同じように膜を通過して移動する際に効率的に機能することが見出されている。レトロインベルソペプチド類似体の合成は、Bonelli,F.et al.,Int J Pept Protein Res.24(6):553-6(1984);Verdini,A and Viscomi,G.C,J.Chem.Soc.Perkin Trans.1 :697-701(1985)、および米国特許第6,261,569号に記載されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。部分的なレトロインベルソペプチド類似体の固相合成のためのプロセスが記載されており(EP97994-B)、これも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0069】
ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドまたはポリペプチド領域)は、別の配列手段に対する特定の割合(例えば、80%、85%、90%、または95%)の「配列同一性」または「相同性」を有し、これらは、アラインしたときに、2つの配列の比較において塩基(またはアミノ酸)の割合が同じであることを意味する。このアラインメント、および相同性または配列同一性の割合は、当該技術分野で既知のソフトウェアプログラム、例えば、分子生物学における現在のプロトコル(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987)Supplement 30,section 7.7.18,Table 7.7.1に記載されているものを使用して決定することができる。好ましくは、デフォルトパラメータがアラインメントに使用される。好ましいアライメントプログラムは、デフォルトパラメータを使用するBLASTである。特に、好ましいプログラムは、以下のデフォルトパラメータを使用するBLASTNおよびBLASTPである。遺伝子コード=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待=10;マトリックス=BLOSUM62;説明=50配列;選別=高スコア;データベース=非冗長性、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBankCDS translations+SwissProtein+SPupdate+PIR。
【0070】
B.多量体ポリペプチド
本開示の実施形態はまた、Cav-1ペプチドの繰り返し単位から構築されたより長いポリペプチドを含む。ポリペプチド多量体は、ポリペプチドの異なる組み合わせを含み得る。かかる多量体ポリペプチドは、本明細書で論じられる化学合成または組換えDNA技術によって作製することができる。化学合成によって生成される場合、オリゴマーは、コアポリペプチド配列の2~5回の繰り返しを有することが好ましく、多量体中のアミノ酸の総数は、約160残基を超えてはならず、好ましくは100残基(またはリンカーまたはスペーサーを含む場合、その同等物)を超えてはならない。
【0071】
C.ペプチド模倣物
Cav-1ペプチドは、天然Cav-1ポリペプチドの生物学的効果を模倣するペプチド模倣化合物であり得る。ペプチド模倣剤は、天然Cav-1ポリペプチドの結合活性および生物学的活性を有するように天然Cav-1ポリペプチドの結合要素の立体空間特性を再現する、非天然ペプチドまたは非ペプチド剤であり得る。天然Cav-1ポリペプチドまたはポリペプチド多量体と同様に、ペプチド模倣物は、結合面(天然Cav-1が結合する任意のリガンドと相互作用する)および非結合面を有する。
【0072】
いくつかの態様では、本開示はまた、部分的なペプチド特性を保持する化合物を含む。例えば、本発明のペプチド内の任意のタンパク質分解に不安定な結合は、分子の残部がそのペプチド特性を保持しながら、非ペプチド要素、例えば等価体(N-メチル化;D-アミノ酸)または減少したペプチド結合によって選択的に置き換えることができる。
【0073】
アゴニスト、基質、または阻害剤のいずれかであるペプチド模倣化合物が、オピオイドペプチド、VIP、トロンビン、HIVプロテアーゼなどの多くの生物活性ペプチド/ポリペプチドについて説明されている。ペプチド模倣化合物を設計および調製する方法は、当該技術分野で既知である(Hruby,VJ,Biopolymers 33:1073-1082(1993);Wiley,RA et al.,Med.Res.Rev.13:327-384(1993);Moore et al.,Adv.in Pharmacol 33:91-141(1995);Giannis et al.,Adv.in Drug Res.29:1-78(1997)。二次構造を模倣する特定の模倣物は、Johnson et al.,In:Biotechnology and Pharmacy,Pezzuto et al.,Chapman and Hall(Eds.),NY,1993に記載されている。これらの方法は、少なくとも、天然Cav-1ポリペプチドの結合能力および特異性を有し、好ましくは生物学的活性も有する、ペプチド模倣物を作製するために使用される。当該技術分野で利用可能なペプチド化学および一般的な有機化学の知識は、本開示を考慮に入れて、かかる化合物を設計および合成するのに十分である。
【0074】
例えば、かかるペプチド模倣物は、遊離であるか、またはリガンド(例えば、可溶性uPARまたはその断片)と複合体中で結合した、本発明のポリペプチドの三次元構造の検査によって同定され得る。あるいは、リガンドに結合した本発明のポリペプチドの構造は、核磁気共鳴分光法の技術によって得ることができる。ペプチドとそのリガンドまたは受容体との相互作用の立体化学についてのより沢山の知識は、かかるペプチド模倣剤の合理的な設計を可能にするであろう。リガンドの非存在下での本発明のペプチドまたはポリペプチドの構造はまた、模倣分子の設計のための足場を提供し得る。
【0075】
D.PEG化
Cav-1ペプチドは、ポリエチレングリコールなどの異種ポリペプチドセグメントまたはポリマーとコンジュゲートし得る。ポリペプチドは、酵素の流体力学的半径を増加させ、したがって、血清持続性を増加させるために、PEGに連結され得る。ポリペプチドは、外部受容体に特異的かつ安定的に結合する能力を有するリガンドなどの任意の標的化剤にコンジュゲートすることができる(米国特許公開20090304666)。
【0076】
特定の態様では、実施形態の方法および組成物は、開示されたポリペプチドのペグ化に関連している。PEG化は、ポリ(エチレングリコール)ポリマー鎖の、別の分子(通常、薬剤または治療用タンパク質)への共有結合プロセスである。PEG化は、標的巨大分子によるPEGの反応性誘導体のインキュベーションによりルーチン的に達成される。PEGを薬剤または治療用タンパク質に共有結合することにより、宿主免疫系(免疫原性および抗原性が低下)から作用物質を「マスク」することができるか、または作用物質流体力学的サイズ(溶液中でのサイズ)を増加させることができ、これにより、腎クリアランスを低下させることにより循環時間を延ばす。PEG化はまた、疎水性薬剤およびタンパク質に水溶性を付与することもすることができる。
【0077】
PEG化の第1工程は、PEGポリマーの一端または両端を好適に官能基化することである。各末端が同じ反応性部位で活性化されたPEGは「ホモ二官能性」として知られる一方、存在する官能基が異なる場合、PEG誘導体は「ヘテロ二官能性」または「ヘテロ官能性」と称する。PEGポリマーの化学的に活性な、または活性化された誘導体は、PEGに所望の分子を付加して調製される。
【0078】
PEG誘導体での好適な官能基の選択は、PEGに結合する分子において利用可能な反応性基の種類に基づく。タンパク質に関して、典型的な反応性アミノ酸としては、リジン、システイン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、およびチロシンが含まれる。N末端アミノ基およびC末端カルボン酸もまた使用可能である。
【0079】
第1世代のPEG誘導体の形成に使用する技術は通常、PEGポリマーをヒドロキシル基、通常は無水物、酸塩化物、クロロホルメート、および炭酸塩と反応する基と反応させることである。第2世代のPEG化化学では、より効率的な官能基、例えば、アルデヒド、エステル、アミドなどがコンジュゲーションに利用可能である。
【0080】
PEG化の用途はより一層発達し洗練されているため、コンジュゲーションのためのヘテロ二官能性PEGの必要性が増加している。親水性で柔軟、かつ生体適合性のスペーサーが必要とされる場合において、これらのヘテロ二官能性PEGは2つの構成要素を結合するのに非常に有用である。ヘテロ二官能性PEGに対する好ましい末端基は、マレイミド、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、アミン、カルボン酸、およびNHSエステルである。
【0081】
最も一般的な修飾剤、即ちリンカーは、メトキシPEG(mPEG)分子をベースにする。これらの活性は、アルコール末端へのタンパク質修飾基の付加に依存する。いくつかの場合、ポリエチレングリコール(PEGジオール)を前駆体分子として使用する。ジオールはその後、ヘテロまたはホモ二量体PEG結合分子を作製するために、両端が修飾される。
【0082】
タンパク質は通常、求核性部位、例えば非プロトン化チオール(システイニル残基)またはアミノ基にてPEG化される。システイニル特異的修飾剤の例としては、PEGマレイミド、PEGヨードアセテート、PEGチオール、およびPEGビニルスルホンが含まれる。これら4つ全ては、穏やかな条件下にて非常にシステイニル特異的であり、中性からわずかにアルカリ性のpHであるが、それぞれ、いくつかの欠点を有する。マレイミドを用いて形成されるチオエーテルは、アルカリ性条件下で幾分不安定となり得、これにより、このリンカーを用いる製剤化オプションには若干の制限が存在し得る。ヨードPEGを用いて形成したカルバモチオエート結合はより安定しているが、遊離ヨウ素がいくつかの条件下でチロシン残基を修飾する可能性がある。PEGチオールはタンパク質チオールとジスルフィド結合を形成するが、この結合もまた、アルカリ性条件下にて不安定となり得る。PEG-ビニルスルホン反応性は、マレイミドおよびヨードPEGと比較して遅いが、形成されるチオエーテル結合は極めて安定している。この、より遅い反応速度によってもまた、PEG-ビニルスルホン反応の制御を一層容易にすることができる。
【0083】
天然システイニル残基における部位特異的PEG化は、これらの残基が通常、ジスルフィド結合の形態をとっているか、または生物活性のために必要とされるため、滅多に行われない。他方では、部位特異的突然変異誘発を使用して、チオール特異的リンカーのためにシステイニルPEG化部位を組み込むことができる。システイン変異は、PEG化試薬が到達可能であり、かつPEG化後も依然として生物学的に活性であるように設計されなければならない。
【0084】
アミン特異的修飾試薬としては、PEG NHSエステル、PEGトレシレート、PEGアルデヒド、PEGイソチオシアネート、およびいくつかの他の試薬が含まれる。これらは全て、穏やかな条件下で反応し、アミノ基に対して非常に特異的である。PEG NHSエステルはおそらく、より反応性の高い薬剤の1つであるが、その高反応性により、大規模ではPEG化反応の制御が困難となり得る。PEGアルデヒドはアミノ基と共にイミンを形成し、これが次いで、シアノ水素化ホウ素ナトリウムにより二級アミンに還元される。ホウ化水素ナトリウムとは異なり、シアノ水素化ホウ素ナトリウムはジスルフィド結合を還元しない。しかし、この化学物質は非常に毒性があり、特に揮発性となる低pHにおいては、注意深く取り扱われなければならない。
【0085】
大部分のタンパク質に存在する複数のリジン残基により、部位特異的PEG化は困難であり得る。幸運なことに、これらの試薬は、非プロトン化アミノ基と反応するため、低いpHにて反応を実施することにより、PEG化を低pKアミノ基に向けることが可能である。一般的に、αアミノ基のpKは、リジン残基のεアミノ基よりも1~2pH単位低い。pH7以下で分子をPEG化することにより、N末端に対する高選択性を頻繁に得ることができる。しかし、このことは、タンパク質のN末端部分が生物活性のために必要とされない場合にのみ実行可能である。依然として、PEG化による薬物動態上の利点は頻繁に、インビトロ生物活性の著しい損失よりも優り、PEG化化学反応に関係なく、はるかに大きいインビボ生物活性を有する製造物をもたらす。
【0086】
PEG化手順を開発する際には、考えるべきいくつかのパラメータが存在する。幸運なことに、鍵となるパラメータは通常、4個または5個以下である。PEG化条件の最適化のための「実験の設計」アプローチは、非常に有用であることができる。チオール特異的なペグ化反応については、考慮するパラメータには、タンパク質濃度、PEG対タンパク質の比(モル基準で)、温度、pH、反応時間、いくつかの場合では酸素の排除が含まれる。(酸素は、タンパク質による分子間ジスルフィド形成に寄与することができ、これにより、PEG化製造物の収率が低下する。)pHが、特にN末端アミノ基を標的化する場合にはさらに一層重要となり得ることを除いて、アミン特異的改変についても同じ因子(酸素は除外)が考慮されなければならない。
【0087】
アミン特異的およびチオール特異的修飾の両方に関して、反応条件はタンパク質の安定性に影響を及ぼし得る。これは温度、タンパク質濃度、およびpHを制限し得る。加えて、PEGリンカーの反応性は、PEG化反応を開始する前に知られていなければならない。例えば、PEG化剤が70%しか活性でない場合、使用するPEGの量は、活性PEG分子のみが、タンパク質-PEG反応化学量論で確実に数えられなければならない。
【0088】
E.融合タンパク質
本発明の特定の実施形態は、融Cav-1ペプチドに関する。これらの分子は、N末端またはC末端で異種ドメインに結合された実施形態のポリペプチドを有し得る。例えば、融合には他の種からのリーダー配列もまた用いて、異種宿主におけるタンパク質の組み換え発現を可能にすることができる。融合タンパク質は、半減期延長因子(half-life extender)を含むことができる。別の有用な融合としては、タンパク質親和性タグ(例えば血清アルブミン親和性タグ若しくは6個のヒスチジン残基)、または、好ましくは切断可能であり、融合タンパク質の精製を促進する免疫活性ドメイン(例えば抗体エピトープ)の付加が含まれる。非限定的な親和性タグとしては、ポリヒスチジン、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、およびグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)が含まれる。
【0089】
特定の実施形態では、実施形態のペプチドは、XTENポリペプチド(Schellenberger et al.,2009)、IgG Fcドメイン、アルブミン、またはアルブミン結合ペプチドなどの、インビボ半減期を増加させるペプチドに結合され得る。
【0090】
融合タンパク質を製造する方法は、当業者には周知である。かかるタンパク質は、例えば、完全な融合タンパク質の新規合成、または、異種ドメインをコードするDNA配列の結合、そしてそれに続く、インタクトな融合タンパク質の発現により、作製することができる。
【0091】
親タンパク質の機能活性を回復させる融合タンパク質の作製は、一列に接続したポリペプチドの間でスプライシングされたペプチドリンカーをコードする架橋DNAセグメントに遺伝子を接続することにより促進され得る。リンカーは、得られる融合タンパク質の適切な折り畳みを可能にするのに十分な長さである。
【0092】
2.リンカー
特定の実施形態では、実施形態のポリペプチドは、二官能性架橋試薬を使用して化学的にコンジュゲートされ得るか、またはタンパク質レベルでペプチドリンカーと融合され得る。
【0093】
二官能性架橋試薬は、親和性マトリクスの調製、多様な構造の修飾と安定化、リガンドおよび受容体結合部位の特定、および構造的研究を含む種々の目的で広範に使用されている。Gly-Serリンカーなどの好適なペプチドリンカーを使用して、実施形態のポリペプチドを結合し得る。
【0094】
2つの同一の官能基を持つホモ二官能性試薬は、同一のおよび異なる高分子または高分子のサブユニットの間で架橋を誘導すること、およびポリペプチドリガンドをその特異的な結合部位に連結することにおいて効率が高いことが判明した。ヘテロ二官能性試薬は、2つの異なる官能基を含有する。2つの異なる官能基の異なる反応性を利用して、選択的におよび順次の双方で架橋を制御することができる。二官能性架橋試薬は、官能基、例えば、アミノ、スルフヒドリル、グアニジン、インドール、カルボキシルに特異的な基の特異性に従って分けることができる。これらのうちで、遊離のアミノ酸に向けられた試薬は、その市販性、合成の容易さ、およびそれを適用することができる反応条件の穏やかさのために特に評判が良くなっている。
【0095】
ヘテロ二官能性架橋試薬の大半は、1級アミン反応性基とチオール反応性基を含有する。別の例では、ヘテロ二官能性架橋試薬および架橋試薬を使用する方法が記載されている(米国特許第5,889,155号、その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる)。架橋試薬は、求核性ヒドラジド残基を求電子性マレイミド残基と組み合わせて、一例では、アルデヒドの遊離チオールへの結合を可能にする。架橋試薬を修飾して種々の官能基を架橋することができる。
【0096】
さらに、当業者に既知の任意の他の結合(linking)/結合(coupling)剤および/またはメカニズム、例えば、抗体抗原相互作用、アビジンビオチン結合、アミド結合、エステル結合、チオエステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ホスホエステル結合、ホスホルアミド結合、無水結合、ジスルフィド結合、イオン相互作用および疎水性相互作用、二重特異性抗体および抗体断片、またはそれらの組み合わせなどを、実施形態のポリペプチドを合わせるのに使用し得る。
【0097】
血中で理に適った安定性を有する架橋剤を採用することが好まれる。標的化剤と治療剤/予防剤をコンジュゲートするのに上手く採用することができる多数の種類のジスルフィド結合を含有するリンカーが既知である。立体的に妨害されるジスルフィド結合を含有するリンカーは生体内でさらに大きな安定性を与えることが判明し得る。従って、これらのリンカーは連結剤の一群である。
【0098】
妨害される架橋剤に加えて、妨害されない架橋剤も本明細書に従って採用することができる。保護されたジスルフィドを含有するまたは製造するとはみなされない他の有用な架橋剤には、SATA、SPDP、および2-イミノチオラン(WawrzynczakおよびThorpe,1987)が含まれる。かかる架橋剤の使用は当該技術でよく理解されている。別の実施形態には柔軟性リンカーの使用が関与する。
【0099】
いったん化学的にコンジュゲートされると、ペプチドが一般に精製されてコンジュゲートされていない作用剤および他の混入物からコンジュゲートを分離する。臨床的に有用にするのに十分な程度の純度のコンジュゲートを提供して使用するために多数の精製法が利用可能である。
【0100】
例えば、ゲル濾過、ゲル透過または高速液体クロマトグラフィのようなサイズの分離に基づく精製法が一般に最もよく使用される。例えば、Blue-Sepharose分離のような他のクロマトグラフィ法も使用してもよい。例えば、N-ラウロイルサルコシンナトリウム(SLS)のような弱い界面活性剤を用いた、封入体から融合タンパク質を精製する従来の方法が有用であってもよい。
【0101】
3.細胞透過性および膜移行ペプチド
さらに、特定の態様では、Cav-1ペプチドは、細胞結合ドメインまたは細胞透過性ペプチド(CPP)をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、「細胞透過性ペプチド」および「膜移行ドメイン」という用語は、交換可能に使用され、ポリペプチドが細胞膜(例えば、真核細胞の場合は原形質膜)を通過することを可能にするポリペプチド配列のセグメントを指す。CPPセグメントの例には、HIV Tatに由来するセグメント(例えば、GRKKRRQRRRPPQ(配列番号23))、ヘルペスウイルスVP22、Drosophila Antennapedia ホメオボックス遺伝子産物、プロテグリンI、ペネトラチン(RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号24))、またはメリチン(GIGAVLKVLTTGLPALISWIKRKRQQ(配列番号25)が含まれるが、これらに限定されない。特定の態様では、CPPは、T1(TKIESLKEHG(配列番号26))、T2(TQIENLKEKG(配列番号27))、26(AALEALAEALEALAEALEALAEAAAA(配列番号28))、またはINF7(GLFEAIEGFIENGWEGMIEGWYGCG(配列番号29))CPP配列を含む。
【0102】
III.使用方法
本発明の一態様は、本明細書に記載のペプチド、およびその突然変異体、変異体、類似体、または誘導体の使用に関する。具体的には、これらの方法は、本明細書に記載のペプチドのうちのいずれか1つまたはその薬学的に許容される修飾を乾燥粉末として対象に投与すること、肺の疾患、損傷、または感染症(例えば、肺の線維性状態)を処置または予防することの処置に使用するための組成物に関し、該組成物は、薬学的に許容される担体中に実施形態のポリペプチドを含む。
【0103】
A.医薬組成物
本明細書で提供されるCav-1ペプチドは、細胞アポトーシスを阻害するため、ならびに肺組織の損傷の処置および予防のために、全身的または局所的に投与することができる。それらは、静脈内、皮下、筋肉内、髄腔内、および/または腹腔内に投与することができる。例えば、乾燥粉末製剤は、点滴注入(例えば、皮下点滴注入)によって対象に投与することができ、または注射前に液体で再構成し得る。特定の態様では、ペプチドは、乾燥粉末吸入器を使用して乾燥粉末製剤を投与するなど、気道に局所的に送達される。それらは、単独で、または抗線維化合物と組み合わせて投与することができる。
【0104】
Cav-1ペプチド乾燥粉末は、少なくとも1つの追加の治療剤(例えば、肺線維症の処置のための治療剤)と組み合わせて、同時にまたは連続して投与し得る。追加の治療剤は、NSAID、ステロイド、DMARD、免疫抑制剤、生体応答モジュレーター、気管支拡張剤、または抗線維化剤、例えば、ピルフェネドン、抗線維化メカニズムは完全には理解されていないがTGF-ベータの遮断を伴い得る薬剤、ニンテダニブ、広範なチロシンキナーゼ遮断剤、または任意の他の抗線維化剤であり得る。好適なNSAIDSは、非選択的COX阻害剤であるアセチルサリチル酸、メサラジン、イブプロフェン、ナプロキセン、フルビプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、チアプロフェン酸、フルプロフェン、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ゾメピラク、ナブメトン、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、アルクロフェナク、ブロムフェナク、イブフェナク、アセクロフェナク、アセメタシン、フェンティアザック、クリダナック、エトドラク、オキシナク、メフェナミン酸、メクロフェナミック酸、フルフェナミン酸、ニフルミン酸、トルフェナミン酸、ジフルニサル、フルフェニサル、ピロキシカム、テノキシカム、ロルノキシカム、およびニメスリド、ならびにおよびそれらの薬学的に許容される塩、選択的COX2阻害剤であるメロキシカム、セレコキシブ、およびロフェコキシブ、ならびにそれらの薬学的に許容される塩から選択される。好適なステロイドは、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ブデノシド、フルオコルトロン、およびトリアムシノロンである。好適なDMARDは、スルファサラジン、オルサラジン、クロロキン、金誘導体(Auranofin)、D-ペニシラミン、ならびにメトトレキサートおよびシクロホスファミドなどの細胞増殖抑制剤である。好適な免疫抑制剤は、シクロスポリンAおよびその誘導体、ミコフェノラートモフェチル、FK506、OKT-3、ATG、15-デソキシスペルグアリン、ミゾリビン、ミソプロストール、ラパマイシン、レフルノミド、ならびにアザチオプリンである。好適な生体応答調節剤は、インターフェロンβ、抗TNF-α(エタネルセプト)、IL-10、抗CD3、または抗CD25である。好適な気管支拡張剤は、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、臭化チオトロピウム、塩酸エピネフリン、サルブタモール、硫酸テルブタモール、フェノテロール臭化水素酸塩、サルメテロール、およびホルモテロールである。かかる組み合わせで、各有効成分は、その通常の投与量範囲またはその通常の投与量範囲未満の用量のいずれかに従って(例えば、経口または吸入によって)投与することができる。NSAID、ステロイド、DMARD、免疫抑制剤、および生体応答調節剤を組み合わせた投与量は、通常推奨される最低用量の1/50~通常推奨される投与量の1/1まで、好ましくは1/20~1/2、より好ましくは1/10から1/5である。併用薬剤の通常推奨される用量は、例えば、RoteListe(登録商標)2002,Editio Cantor Verlag Aulendorf,Germany、またはPhysician’s DeskReferenceに開示されている用量であると理解されるべきである。
【0105】
臨床用途を企図する場合、目的の用途に好適な形態でタンパク質、抗体、および薬剤を含む医薬組成物を調製することが必要であり得る。一般に、医薬組成物は、有効量の実施形態のポリペプチドのうちの1つ以上、または医薬的に許容される担体中に溶解もしくは分散された追加の薬剤を含み得る。語句「薬学上または薬理学上許容される」とは、動物、例えばヒトに適切に投与された場合に、副反応、アレルギー反応、または他の副作用を生み出さない、分子要素および組成物を意味する。本明細書に開示された方法によって単離した少なくとも1つの実施形態のポリペプチド、または追加の活性成分を含有する医薬組成物の調製は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,1990(参照により本明細書に組み込まれる)に例示されているように、本開示に照らして当業者に既知である。さらに、動物(例えば、ヒト)投与の場合、製剤は、FDA生物学的基準局または他の適切な規制当局によって要求されるバイオバーデン、無菌性、発熱性、一般的な安全性、および/または純度基準を満たす必要があることが理解される。
【0106】
本発明の特定の実施形態は、固体、液体、またはエアゾール形態のどれで投与されるのか、そして、注射などの投与経路に対して滅菌する必要があるのか否かに応じて、異なる種類の担体を含み得る。組成物は、静脈内、髄腔内、皮内、経皮、髄腔内、動脈内、腹腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、筋肉内、皮下、粘膜、経口、局所(topically)、局所(locally)、吸入(例えば、噴霧製剤の吸入)、注射、注入、連続注入、標的細胞を直接浴液させる局所灌流、カテーテルを介して、洗浄を介して、脂質組成物中(例えば、リポソーム)中で、または当業者に既知である(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,1990を参照のおと)他の方法もしくは任意の組み合わせによって投与することができる。注射量および針サイズの選択は、注射部位、注射可能性(syringeability)および注射可能性(injectability)に基づいて当業者によって選択されてもよく、注射される溶液または懸濁液の粘度、ならびに薬物濃度、pH、および浸透圧を考慮することを含む。いくつかの場合、投与時に(例えば、皮下注射によって)所望の溶解速度を提供するように、活性剤の粒子サイズを選択することができる。
【0107】
本明細書に提示されるペプチドは、遊離塩基、中性、双性イオン、または塩の形態で組成物中に製剤化することができる。薬学的に許容される塩には、酸付加塩、例えば、タンパク様組成物の遊離アミノ基と形成したもの、または、無機酸、例えば、塩酸若しくはリン酸、若しくは、有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸、若しくはマンデル酸)と形成したものが含まれる。遊離カルボキシル基と形成した塩もまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、若しくは水酸化第二鉄などの無機塩基、または、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、若しくはプロカインなどの有機塩基に由来することができる。製剤化の際、溶液は、投与製剤と適合性のある方法で、治療有効量で投与される。製剤は、様々な投薬形態で容易に投与される、例えば、非経口的投与用に、例えば、注射可能な溶液、若しくは肺送達用のエアゾールに製剤化される、または、消化管投与用に、例えば薬物放出カプセルなどに製剤化される。
【0108】
本発明の特定の態様にさらに従うと、投与に好適な組成物は、不活性希釈剤と共に、または不活性希釈剤無しで、薬学的に許容される担体中に提供されてよい。担体は、いくつかの態様では、エアロゾル、ガス、液体、半固体、すなわち、ペースト、または固体担体を含むことができる。任意の従来の培地、作用物質、希釈剤、または担体がレシピエント、または中に含有される組成物の治療効果に対して有害である場合を除いて、本方法の実践に使用するために、投与可能な組成物を使用することは適切である。担体または希釈剤の例としては、脂肪、油類、水、食塩水、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、フィラーなど、またはこれらの組み合わせが含まれる。組成物は、1種以上の構成成分の酸化を遅延させるための、様々な酸化防止剤もまた含むことができる。さらに、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、またはこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、様々な抗菌および抗カビ剤などの防腐剤により、微生物の作用の防止をもたらすことができる。
【0109】
本発明の特定の態様によれば、組成物は、任意の好都合かつ実用的な様式で、すなわち、溶液、懸濁液、乳化、混合、カプセル化、および吸着などによって担体と合わせられる。かかる手順は、当業者には日常的なものである。
【0110】
本発明の特定の実施形態では、組成物を、半固体または固体担体と、完全に組み合わせる、または混合する。任意の従来の方法、例えば粉砕により、混合を実施することができる。安定化剤も、治療活性の喪失、すなわち、胃での変性から組成物を保護するために混合プロセスで添加することができる。組成物中に使用するための安定剤の例としては、緩衝剤、アミノ酸、例えば、グリシンおよびリジン、炭水化物または凍結防止剤、例えば、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなどが含まれる。
【0111】
いくつかの態様では、医薬製剤は、1つ以上の界面活性剤を含む。開示された方法に従って使用される界面活性剤としては、イオン性および非イオン性界面活性剤が含まれる。代表的な非イオン性界面活性剤には、ポリソルベート、例えば、TWEEN(登録商標)-20およびTWEEN(登録商標)-80界面活性剤(ニュージャージー州ブリッジウォーターのICI Americas Inc.);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);TRITON(登録商標)界面活性剤(ミズーリ州セントルイスのSigma);ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);オクチルグリコシドナトリウム;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、またはステアリル-スルホベタイン;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、またはステアリル-サルコシン;リノレイル-、ミリスチル-、または、セチル-ベタイン;ラウロアミドプロピル-、コカミドプロピル-、リノールアミドプロピル-、ミリスタミドプロピル-、パルニドプロピル-、または(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン;ナトリウムメチルココイル-、または二ナトリウムメチルオレイル-タウレート;MONAQUAT(商標)界面活性剤(ニュージャージー州パターソンのMonaIndustries Inc.);ポリエチルグリコール;ポリプロピレングリコール;エチレンとプロピレングリコールとのブロック共重合体、例えば、PLURONIC(登録商標)界面活性剤(ニュージャージー州マウントオリーブのBASF)など;オリゴ(エチレンオキシド)アルキルエーテル;アルキル(チオ)グルコシド、アルキルマルトシド;およびリン脂質が含まれる。例えば、界面活性剤は、約0.01%~約5%(製剤の他の固体成分の総重量に対する界面活性剤の重量;「w/w」)、約0.03%~約5%、約0.5%(w/w)、約0.05%~約0.5%(w/w)、または約0.1%~約0.5%(w/w)の量で製剤中に存在することができる。しかしながら、さらなる態様では、実施形態の医薬製剤は、本質的に非イオン性界面活性剤を含まないか、または本質的にすべての界面活性剤を含まない。
【0112】
本発明の治療方法に関して、本明細書に開示される1つ以上のペプチドまたはその突然変異体、変異体、類似体、または誘導体の投与は、特定の投与様式、投与量、または投与の頻度に限定されることを意図するものではなく、本発明は、筋肉内、静脈内、腹腔内、小胞内、関節内、病変内、皮下、または炎症関連障害を処置するのに十分な用量を提供するのに十分な任意の他の経路を含む、すべての投与様式を企図する。治療剤は、単回投与または複数回投与で患者に投与することができる。複数の用量が投与される場合、用量は、例えば、1時間、3時間、6時間、8時間、1日、2日、1週間、2週間、または1ヶ月によって互いに分離され得る。例えば、治療剤は、例えば、2、3、4、5、6、7、8、10、15、20週またはそれ以上、投与され得る。特定の対象について、特定の投与レジメンは、個々の必要性および組成物の投与を投与または監督する人の専門的判断に従って、経時的に調整される必要があることを理解されたい。例えば、より低い用量が十分な治療活性を提供しない場合、治療剤の投与量を増やすことができる。
【0113】
受持医が最終的に適切な量および投与レジメンを決定しながら、本明細書に開示される1つ以上のポリペプチドまたはその突然変異体、変異体、類似体、または誘導体の治療有効量は、0.0001、0.01、0.01 0.1、1、5、10、25、50、100、500、または1,000mg/kgもしくはg/kgの用量で提供され得る。有効量は、インビトロもしくは動物モデル試験のバイオアッセイまたはシステムから得られた用量反応曲線から外挿され得る。
【0114】
特定の患者または対象の投与量は、従来の考慮事項を使用して(例えば、適切な従来の薬理学的プロトコルによって)、当業者によって決定することができる。医師は、例えば、最初は比較的低用量を処方し、その後、適切な応答が得られるまで用量を増加させてもよい。患者に投与される用量は、用途に応じて、患者での有益な治療応答に対して経時的に影響を与えるのに十分であるか、または、例えば、用途に依存して、症状もしくは他の適切な活性を低減するのに十分である。用量は、特定の製剤の効力、ならびに本明細書に開示される1つ以上のポリペプチドまたはその突然変異体、変異体、類似体、もしくは誘導体の活性、安定性、または血清半減期、および患者の状態、ならびに処置される患者の体重または表面積によって決定される。
【0115】
いくつかの態様では、対象は、対象、好ましくは哺乳動物、より好ましくは、それに起因する肺線維症に罹患しているかまたはそれに感受性であるヒトを処置するために1日1回与えられる単回投与を与えられ、例えば、点滴注入を介して(吸入により)、約0.2mg/kg~約250mg/kg、例えば、約10mg/kg~約50mg/kgである。かかる用量は、約3日~1週間以上のいずれにもわたって毎日投与することができる。
【0116】
当該技術分野でよく理解されているように、用量を少なく調整する必要があり得るが、長期投与も可能である。しかしながら、個々の処置レジームにおける変数の数が多く、これらの好ましい値からのかなりの逸脱が予想されるので、前述の範囲は示唆的である。
【0117】
連続投与の場合、例えば、以下に記載される実験のいくつかで使用された浸透圧ポンプなどのポンプシステムにより、約1~2週間の時間経過の総投与量は、好ましくは1mg/kg~1g/kg、好ましくは20~300mg/kg、より好ましくは50~200mg/kgの範囲である。かかる連続投与レジメンの後、活性化合物の総濃度は、好ましくは約0.5~約50μM、好ましくは約1~約10μMの範囲である。
【0118】
インビトロでアポトーシスを阻害または防止するための活性化合物の有効濃度は、約0.5nM~約100nM、より好ましくは約2nM~約20nMの範囲である。有効用量および最適用量範囲は、本明細書に記載の方法を使用してインビトロで決定することができる。
【0119】
B.乾燥粉末粒子サイズの低下および乾燥粉末吸入装置。
製剤の粒子サイズは、粉砕(milling)、粉砕(grinding)、薄膜凍結、噴霧乾燥、または破砕を含むがこれらに限定されない任意の好適な方法によって低下させることができる。粉砕は、エアジェット粉砕、ボール粉砕、湿式粉砕、媒体粉砕、高圧均質化、または低温粉砕など当該技術分野で既知である任意の方法によって行うことができる。
【0120】
粒子サイズ低下後のペプチド安定性は、サイズ排除クロマトグラフィ、電気泳動技術、HPLC、質量分析、UV分光法および円偏光二色性分光法などの分光技術、および活性(インビトロまたはインビボで測定される)を含む、当該技術分野で既知である技術を使用して評価することができる。タンパク質の安定性のインビトロアッセイを行うために、エアロゾル組成物を収集し、次いで、蒸留するか、またはフィルターに吸着させることができる。インビボアッセイを行うために、または組成物の対象への肺投与のために、乾燥粉末分散のための装置を対象による吸入用に適合させる。例えば、タンパク質の安定性は、タンパク質凝集レベルを決定することによって評価することができる。好ましくは、本発明の乾燥粉末組成物は、タンパク質凝集物を実質的に含まない。可溶性凝集物の存在は、動的光散乱(DLS)(DynaPro-80lTC、バージニア州シャーロッツビルのProtein Solutions Inc.)を使用して、および/または紫外分光光度法によって定性的に決定することができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、粉砕されたCSP7による患者の処置は、調節された薬物放出を含み得る。いくつかの実施形態では、粉砕されたCS7は、徐放または遅延放出のために製剤化され得る。いくつかの実施形態では、粉砕されたCSP7は、即時放出のために製剤化され得る。さらなる実施形態では、粉砕されたCSP7は、徐放および即時放出(すなわち、二重放出プロファイル)の両方のために製剤化され得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で提供される吸入可能なCSP7組成物の投与のための方法を提供する。投与は、吸入器を使用した粉砕されたCSP7の吸入であり得るが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、吸入器は、Plastiape RSOl単回投与DPIなどの受動乾燥粉末吸入器(DPI)である。乾燥粉末吸入器では、乾燥粉末はリザーバーに保存され、噴射剤を使用せずに吸入によって肺に送られる。
【0123】
いくつかの実施形態では、吸入器は、DoseOne(商標)、Spinhaler、Rotohaler(登録商標)、Aerolizer(登録商標)、またはHandihalerなどの単回投与DPIである。いくつかの実施形態では、吸入器は、Plastiape RS02、Turbuhaler(登録商標)、Twisthaler(商標)、Diskhaler(登録商標)、Diskus(登録商標)、またはEllipta(商標)などの複数回投与DPIである。いくつかの実施形態では、吸入器は、Plastiape RS04複数種単回投与(plurimonodose)DPIなどの複数の薬剤の単回投与の同時送達のための複数種単回投与DPIである。典型的には、乾燥粉末吸入器は、内部リザーバーに保存された薬剤を有し、薬剤は、噴射剤を使用してまたは使用せずに吸入によって送達される。他の種類の乾燥粉末吸入器は、カプセル(例えば、セルロースまたはゼラチンベース)またはフォイルポーチに保存された事前に分割された用量の薬剤を有し、それらの各々は、装置によって穿刺されて、患者に用量を放出する。乾燥粉末吸入器は、効果的な送達のために、30L/分超、例えば約30~120L/分の吸気流量を必要とし得る。いくつかの実施形態では、粉砕されたCSP7の効率的なエアロゾル化は、吸気力とは無関係である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末吸入器は、0.01kPa0.5分/L~0.05kPa0.5分/L、例えば、0.02kPa0.5分/L~0.04kPa0.5分/Lの流動抵抗性を有する。乾燥粉末吸入器(例えば、高抵抗性、低抵抗性、受動型、能動型)は、患者集団およびその吸気能力に基づいて選択される。
【0124】
いくつかの実施形態では、吸入器は、定量吸入器であり得る。定量吸入器は、噴射剤の使用によって支援されるエアロゾル化された薬の短いバーストで、定義された量の薬を肺に送達する。定量吸入器は、キャニスター、計量バルブ、およびアクチュエーターの3つの主要部分を含み、放出された粒子を減速し、患者によるエアロゾル化雲(aerosolized cloud)の吸入を容易にするために、スペーサー装置を利用し得る。噴射剤および任意の必要な賦形剤を含む医薬製剤は、キャニスターに保存される。計量バルブにより、規定の量の製剤を分注することができる。定量吸入器のアクチュエーターまたはマウスピースには、篏合する吐出ノズルが含まれ、典型的には、汚染を防ぐためのダストキャップが含まれている。定量吸入器の使用に必要である必要な吸気流量は、90L/分未満、例えば、約15~90L/分、好ましくは約30L/分であり得る。いくつかの実施形態では、粉砕されたCSP7の効率的なエアロゾル化は、吸気力とは無関係である。
【0125】
いくつかの実施形態では、吸入器はネブライザーである。ネブライザーは、肺に吸入されるエアロゾル化されたミストの形態で薬剤を送達するために使用される。製剤は、圧縮ガスまたは超音波によってエアロゾル化される。ジェットネブライザーは、コンプレッサーに接続されている。コンプレッサーは、液体医薬製剤を通って圧縮ガスを高速で放出し、医薬製剤をエアロゾル化する。その後、エアロゾル化された薬剤が患者に吸入される。超音波ネブライザーは、高周波超音波を発生させ、医薬製剤の液体リザーバーと接触する内部要素の振動を引き起こし、これにより、医薬製剤がエアロゾル化する。次いで、エアロゾル化された薬剤が患者によって吸入される。ネブライザーは、約3~12L/分、例えば約6L/分の流量を利用し得る。いくつかの例では、粉砕された活性物質(例えば、CSP7)は、薬学的に許容される液体担体ビヒクルに懸濁され、霧化(例えば、エアジェット霧化)によって投与することができる。さらなる態様では、実施形態の組成物は、電子タバコ装置などによる気化方法(例えば、急速気化)によって投与することができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、組成物は、通常のスケジュールで投与され得る。本明細書で使用される場合、通常のスケジュールは、所定の指定された期間を指す。通常のスケジュールは、スケジュールが所定である限り、同一または異なる長さの期間を包含することができる。例えば、通常のスケジュールは、1日2回、毎日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、毎週、毎月、またはその間の日もしくは週の任意の設定数の投与を含み得る。あるいは、所定の通常のスケジュールは、最初の週に1日2回、続いて数ヶ月間毎日投与することなどを含み得る。いくつかの実施形態では、ペプチド(例えば、CSP7)は、1日1回投与される。好ましい実施形態では、ペプチドは、1日1回未満で、例えば、1日おき、3日おき、または週に1回投与される。いくつかの実施形態では、実施形態のペプチド(例えば、CSP7)の完全な用量は、1~100mg、例えば、20~100、50~100、10~20、20~40、50~70、または80~90mgである。
【0127】
いくつかの実施形態では、実施形態のペプチド(例えば、CSP7)は、カプセル、ブリスター、またはカートリッジなどの単位剤形(例えば、事前に分割された用量)で提供され得、単位用量は、用量あたり、少なくとも1mgのペプチド、例えば、少なくとも5mg、10mg、15mg、または20mgの実施形態のペプチド(例えば、CSP7)のペプチドを含む。いくつかの態様では、単位用量は、1~10mg(例えば、約5mg)のペプチドである。特定の態様では、単位剤形は、任意の賦形剤の投与または添加を含まず、吸入用の粉末を保持するために単に使用される(すなわち、カプセル、ブリスター、またはカートリッジは投与されない)。いくつかの態様では、2つ以上の単位剤形が対象に投与される。例えば、乾燥粉末吸入器の場合、実施形態のペプチドが単位用量カプセルで提供され得、2つ以上の単位用量カプセル(例えば、3~4)が吸入によって対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、CSP7などのペプチドは、少なくとも10mg、好ましくは少なくとも15mg、さらにより好ましくは20mgなどの高放出用量で投与され得る。いくつかの実施形態では、実施形態の粉砕されたペプチド(例えば、CSP7)の投与は、5mg超などの肺深部への微粒子用量をもたらす。好ましくは、肺深部への微粒子用量は、少なくとも10mg、さらにより好ましくは少なくとも15mgである。いくつかの態様では、粒子用量は、実施形態(例えば、CSP7)のペプチドの用量を含む1、2、3、4または5つ以上のカプセルから製造される。いくつかの態様では、微粒子用量は、放出される用量の少なくとも50%、例えば、少なくとも60、65、70、75、または80%である。
【0128】
いくつかの実施形態では、吸入圧力低下の変化は、放出される用量の変化をもたらす。いくつかの実施形態では、3kPaの吸入圧力の変化、例えば4kPaから1kPaへの変化は、25%未満、例えば、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、またはそれ以下の放出される用量の減少をもたらす。
【0129】
いくつかの実施形態では、吸入圧力の変化は、微粒子用量の変化をもたらす。いくつかの実施形態では、3kPaの吸入圧力の変化、例えば4kPaから1kPaへの変化は、15%未満、例えば、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、またはそれ以下の微粒子用量の減少をもたらす。
【0130】
IV.処置のための肺の状態
本発明のペプチドは、様々な肺の状態を処置するために使用することができる。処置のための肺の状態は、急性または慢性であり得る。急性の肺状態は、急性肺損傷、感染症、または化学物質誘発性であり得る。慢性の肺疾患は、損傷、感染症、または疾患の結果であり得る。
【0131】
A.肺損傷
いくつかの態様では、対象は、急性肺損傷(ALI)もしくは感染症、または化学物質誘発性肺損傷を有する。特定の態様では、対象は、鋳型気管支炎、喘息、慢性閉塞性気道/肺(COPD)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、吸入煙誘発性急性肺損傷(ISALI)、気管支拡張症、吸入毒素誘発性気道疾患(例えば、塩素または他の誘発性気道疾患)、マスタードガスへの曝露、粒子状物質(例えば、シリカダスト)への曝露、閉塞性細気管支炎、器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎、コラーゲン血管肺疾患(例えば、ループス、強皮症、または混合結合組織疾患から)、間質性肺疾患(例えば、特発性肺線維症またはサルコイドーシス)、薬物誘発性肺疾患、および加速性肺線維症(例、ARDSを含む急性肺損傷後に発生する)を有する。慢性閉塞性肺疾患、喘息、感染症、ならびに線維症をもたらす急性および慢性肺損傷を含む肺疾患は、世界で3番目に多い死因を構成している(Murray et al.,1997;Rabe et al.,2007;Tsushima et al.,2009)。急性肺損傷(ALI)は、米軍人の間で深刻な医学的問題である。戦闘中のALIは、非常に幅広い病因から生じ得る。
【0132】
吸入損傷からのALIは、吸入される抗凝固剤、ステロイド、ベータアゴニスト、高頻度換気、および体外式膜型人工肺で処置されており、結果は変動し、一般に最適ではない。呼吸マスクによる障壁以外に有効な予防策はない。ARDSの管理は大幅に進歩したが、大部分が対症的なままであり、内因性治癒メカニズムが効果を発揮するのを注意深く待つこととなる。院内死亡率は40%を超えたままである(Matthay et al.,2012)。ALIの生存者は、生活の質が低下する慢性呼吸器疾患にしばしば罹患する。回復を早め、および/または慢性呼吸不全および肺線維症などの後期合併症を防ぐことができる任意のモダリティが非常に望ましい。ALIの早期診断、さらに重要なことに、予防および処置を改善することが切実に必要とされている。直接吸入肺損傷からのALIまたは全身性疾患に起因するARDSの病態生理学は、非常に複雑で不均一であり、全身性および局所性の心肺因子、例えば、膜透過性の増加、炎症性サイトカインの流入、酸化的細胞損傷、コンパートメントへの体液移動、イオンチャネルの障害、および他の多くのものを包含する(Matthay et al.,2012)。明らかに、ALIなどの肺障害を処置および予防するには、新しい処置法が必要である。
【0133】
いくつかの実施形態では、対象における急性肺損傷、肺感染症、または肺疾患を処置または予防する方法であって、FTTFTVT(配列番号2)のアミノ酸配列またはその変異体を含む有効量のペプチドを対象に投与することを含み、ペプチドはカベオリン-1(Cav-1)の生物学的活性を維持している、方法が提供される。いくつかの態様では、ペプチドの医薬製剤を投与する方法は、乾燥粉末吸入を含む。特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0134】
B.肺疾患
肺疾患には、肺線維症、肺炎症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、細気管支炎、閉塞性細気管支炎、喘息、および肺感染症、ならびに線維症をもたらす急性および慢性肺損傷(Murray et al.,1997;Rabe et al.,2007;Tsushima et al.,2009)が含まれる。これらの疾患は、世界で3番目に多い死因となっている。
【0135】
嚢胞性線維症は、主に消化器系および呼吸器系に影響を与える外分泌腺および外分泌汗腺の遺伝性疾患である。この疾患は、通常、慢性呼吸器感染症、膵臓機能不全、異常に粘液性の粘液分泌物、および早死を特徴とする。嚢胞性線維症(CF)は、進行性の気流閉塞を特徴とする。CFを有する患者のサブセットは、吸入コリン作動薬に対する気道過敏性(Weinberger,2002およびMitchell et al.,1978)および気管支拡張剤に応答した気流制限の可逆性(van Haren et al.,1991 およびvan Haren et al.,1992)も発症する。気道過敏性および気道閉塞の存在は、CFと、気道平滑筋機能不全が疾患プロセスに寄与すると考えられている喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの気道狭窄の他の疾患と、の間の疾患の共通の病因の可能性を示唆している。
【0136】
肺感染症は、細菌感染症であり得る。感染性細菌は、Pseudomonas aeruginosa、Bacillus anthracis、Listeria monocytogenes、Staphylococcus aureus、Salmenellosis、Yersina pestis、Mycobacterium leprae、M.africanum、M.asiaticum、M.aviuin-intracellulaire、M.chelonei abscessus、M.fallax、M.fortuitum、M.kansasii、M.leprae、M.malmoense、M.shimoidei、M.simiae、M.szulgai、M.xenopi、M.tuberculosis、Brucella melitensis、Brucella suis、Brucella abortus、Brucella canis、Legionella pneumonophilia、Francisella tularensis、Pneumocystis carinii、mycoplasma、またはBurkholderia cepaciaであり得る。細菌感染症は、肺炎をもたらし得る。
【0137】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、2つの主要な気流閉塞障害である慢性気管支炎および肺気腫を分類するために使用される用語である。約1600万人の米国人がCOPDを患っており、その80~90%は生涯の多くを通して喫煙者であった。COPDは、米国の主要な死因であり、2003年では122,283人の死亡数である。COPDの米国の費用は、2003年の直接医療費では約209億ドルであった。慢性気管支炎は、気管支気道の炎症である。気管支気道は気管と肺とを接げている。炎症を起こした場合、気管支が粘液を分泌し、慢性の咳を引き起こす。
【0138】
肺気腫では、肺のエラスチン骨格への損傷の結果として、肺胞嚢が過剰に膨張している。気腫性肺における炎症細胞はエラスターゼ酵素を放出し、これが肺マトリックス内のエラスチン線維を分解するかまたは損傷させる。肺気腫には、喫煙、環境汚染物質への曝露、アルファ1アンチトリプシン欠乏症、および老化を含む多くの原因がある。
【0139】
細気管支炎は、ウイルス性下気道感染症によって最も一般的に引き起こされ、急性炎症、浮腫、小気道の内壁を形成している上皮細胞の壊死、および粘液産生の増加を主に特徴とする(Ralston et al.,2014)。兆候および症状は、典型的には、鼻炎および咳から始まり、頻呼吸、喘鳴、ラ音、副筋の使用、および/または鼻翼呼吸(nasal flaring)に進行し得る。
【0140】
閉塞性細気管支炎は、肺における小気道の異常なリモデリングの結果としての進行性の気流の減少である(Meyer et al.,2014)。閉塞性細気管支炎症候群は、肺移植の主な合併症であり、他の既知の原因によって引き起こされない努力呼気肺活量および努力呼気肺活力の持続的低下をもたらす、同種移植片機能不全の遅延を説明するためにしばしば使用される(Meyer et al.,2014)。
【0141】
「喘息」という用語は、急性喘息、慢性喘息、間欠性喘息、軽度持続性喘息、中等度持続性喘息、重度持続性喘息、慢性持続性喘息、軽度から中等度の喘息、軽度から中等度の持続性喘息、軽度から中等度の慢性持続性喘息、アレルギー性(外因性)喘息、非アレルギー性(内因性)喘息、夜間性喘息、気管支喘息、運動誘発性喘息、職業性喘息、季節性喘息、無症候性喘息、胃食道性喘息、特発性喘息、および咳喘息を指し得る。喘息の間、気道は持続的に炎症を起こし、時折けいれんを起こし得る。
【0142】
いくつかの実施形態では、対象における肺感染症または肺疾患を処置または予防する方法であって、対象に、FTTFTVTのアミノ酸配列(アミノ酸配列2、本明細書ではCSP7と称される)を含む、有効量の乾燥粉末ペプチドを対象に投与することを含み、乾燥粉末ペプチドは、カベオリン-1(Cav-1)の生物学的活性を維持する、方法が提供される。いくつかの態様では、実施形態の医薬製剤を投与する方法は、ペプチドの乾燥粉末吸入を含む。特定の態様では、対象はヒトである。
【実施例
【0143】
V.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれる。後に続く実施例で開示した技術は、発明者により発見された技術が、本発明の実施に際して十分機能することを示し、それ故、その実施のための好ましい方式を構成すると考えることができるということが、当業者により理解されなければならない。しかし、当業者は、本開示の観点で、開示される具体的な実施形態では、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、同じまたは同様の結果が依然として得られる多くの変更をなし得ることを理解するべきである。
【0144】
実施例1-方法および材料
乾燥粉末ペプチドの調製。CSP7ペプチド(配列番号2)、ロット番号:AHF66//470103は、Polypeptide Laboratories(サンディエゴ,米国)によって合成された。
【0145】
CSP7混合物の製造および噴霧乾燥。CSP7のみ(CSP7)、またはCSP7/ロイシン、CSP7/トレハロース、もしくはCSP7/クエン酸ナトリウムの75%/25%混合物、またはCSP7/ロイシン/トレハロースの75%/15%/10%混合物のいずれかを含む、CSP7製剤をpH10の水(NHOHで調整)中で調製し、2’’サイクロンを備えたBLD-35を使用して噴霧乾燥した。
【0146】
薄膜凍結(TFF)による乾燥粉末CSP7粒子サイズの低下。0.3mg/mlのCSP7バルク粉末および0.9mg/mlのマンニトール(質量比1:3)を10mM Tris緩衝液に溶解し、pHを8.05に調整した。次いで、溶液を0.45μmの膜で濾過し、液体窒素が充填されたローリング(rolling)チャンバーに滴下した。計測された凍結温度は-55~-65℃であって。次いで、凍結した薄片をVirTis Advantage Freeze Dryer(VirTis Company Inc.,米国ニューヨーク州)で凍結乾燥した。凍結乾燥条件は以下の通りである:平衡化:-55℃で保持する、100mTorrで30分間;一次乾燥:-30℃までの温度を上昇する、100mTorrで250分;-30℃で保持する、100mTorrで660分間;二次乾燥:30℃まで上昇させる、100mTorrで720分間;および30℃で保持する、100mTorrで240分間。TFFで処理された試料をバッチ171014と称する。
【0147】
極低温粉砕による乾燥粉末CSP7の粒子サイズの低下。1グラムのCSP7バルク粉末を小さなクリオミル(cryomill)チューブに添加し、6870Freeze/Mill(SPEX Certiprep(商標),米国ニュージャージー州)に充填する。粉砕は、5サイクル、10分の予冷で行われ、各サイクルは、10CPSで5分の実施時間を有し、続いて2分冷却する。粉砕された試料を回収、計量し、収率は、充填重量に対する回収重量に基づき、73.5%と計算された。
【0148】
ボール粉砕(BM)によるCSP7粉末の粒子サイズの低下。CSP7バルク粉末を、その貧溶媒であるエタノール(無水)に懸濁して、1mg/mlの濃度とした。ジルコニウムボールの溶媒量の約半分(2mm)を懸濁液に添加した。次いで、懸濁液を8000M Mixer/Mill(SPEX SamplePrep,米国ニュージャージー州)に充填し、粉砕した。試料を粉砕プロセスから収集し、それぞれ5分、10分、および30分で試験した。
【0149】
ローターステーター(Rotor-stator)を使用したCSP7粉末の粒子サイズの低下。CSP7バルク粉末をエタノールに分散させて、1mg/mlの濃度とした。ローターステーターの先端(5mm×75mm平底)を懸濁液に沈め、均質化を行って粒子サイズを低下させた。
【0150】
高速液体クロマトグラフィ分析試料を20mM Tris緩衝液(pH10.3)に溶解し、5μmの粒子サイズおよび100ÅのポアサイズのPhenomenex Luna(登録商標)Cl8(2)液体クロマトグラフィカラムで分析した。Phenomenex Security Guard Guardカートリッジキットをガードカラムとして使用した。移動相Aは、HO+0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)であり、移動相Bは、80%アセトニトリル+20% HO+0.09%(v/v)TFAであった。試料を20μLの量で注入した。試料をそれぞれ25分間実行し、カラムを1ml/分の流速で、25℃で保持した。試料を220nmの波長で検出した。緩衝液勾配は、表2に特定された条件に設定した。
【表2】
【0151】
粉砕されたCSP7バルク粉末の空気力学的粒子サイズ分布の決定。約3.5mgの粉砕されたCSP7粉末を、サイズ3のHPMCカプセル(Capsugel,Peapack,NJ)中に手動で充填した。次いで、CSP7カプセルをRS01単回投与乾燥粉末吸入器(高耐性)を使用してエアロゾル化し、空気力学的粒子サイズ分布をNext Generation Impactor(NGI,MSP Corp.,Shoreview,MN)で測定した。エアロゾルを吸入器用に60L/分の空気流量で4秒間にわたって生成し、装置全体で4Lの吸入体積および4kPaの圧力低下を達成した。各実行の前に、NGI収集表面をメタノール中の5%(v/v)ポリソルベート20でコーティングした。実行ごとに1カプセルを撮影し、各試料を3回繰り返しで実行した(3カプセル)。エアロゾル化後、すべての収集表面を特定の量の20mM Tris緩衝液(pH10.3)ですすぎ、薬物を収集した。カプセル、装置、アダプター、スロート、プレセパレーター、およびステージ1~MOCに堆積した粉末をそれぞれ抽出した。
【0152】
各試験について、送達された用量は、NGIに入ったCSP7の質量として定義される。幾何標準偏差(GSD)、空気動力学的中央粒子径(MMAD)、および微粒子率%(FPF%)は、Copley Inhaler Testing Data Analysis Software(CITDAS,Copley Scientific,英国ノッティンガム)を使用し、NGIのステージ1~MOCに蓄積された用量に基づいて計算された。FPFは、送達用量を用いて5.0μm未満の粒子の質量分率として定義される。
【0153】
肺組織の調製および溶解。6~8週齢の雌マウスは、Jackson Laboratories,保管:000664 C57BL/6Jから注文し、IACUCガイドラインに従ってケアされ、飼育される。翌週、マウスの体重を測定し、80mg/kgのケタミンおよび6mg/kgのキシラジン(約115ul/マウス)のIP注射で麻酔をかけ、ブレオマイシンの気管内点滴注入を1回享受させる。簡単に説明すると、26Gプラスチックカテーテルを気管に挿入し、マウスは、ピペットを介して、0.8U/kgのブレオマイシン(Biotang、カタログ番号RB003)の2x20ulの点滴注入(気道からの除去を可能にするために30秒間隔とする)を受ける。対象は、同じ体積の生理食塩水のみを受ける。体重を追跡し(損傷した動物では約10%の体重低下が起こる)、動物に、1週間毎日、乾燥粉末吸入プロトコル(CH technologies)を享受させた。乾燥粉末投与は、0.7mcg/動物の肺送達用量であると推定された以前の霧化製剤の最小有効用量(Tepper et al.,2016、これは参照により本明細書に組み込まれる)に基づいた。要約すると、12分/日の曝露時間は、「1X」用量と一致し、「5X」用量は、3.5mcg/動物に等しい60分/日の処置を指定するものであった。動物を7日間連続して曝露し(14~20日目、ブレオマイシン損傷線維化期間中)、最終致死用量のヘパリン化ケタミン/キシアリジンカクテル(25%ヘパリン)の24時間後に犠牲死させた。肺全体のサブセットを組織学のために採取した。簡単に説明すると、10mlの生理食塩水による経心腔的灌流により、肺から血液を除去する。次いで、解剖ステージの20cm上で、肺を生理食塩水で1分間膨らませ、続いて4%PFAで1分間膨らませた。気管をひもで縛り、肺を切除し、固定し、包埋し、4ミクロンに切片化して最大表面積の可視化を達成し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。AperioAT2高容量デジタル全スライドスキャナーで、画像をキャプチャし、修正されたアシュクロフトスコアリングプロトコル(Huebner et al.,2008、参照により本明細書に組み込まれる)に従って線維性損傷について、肺をスコアリングした。分子分析では、肺全体を、RIPA緩衝液およびプロテアーゼ阻害剤(Santa Cruz)、ならびに1%DTT(RNAsesを阻害するため)中で均質化し、4℃で並行して均質化し(Precellys Evolution、Bertin Instruments)、下流のアッセイのために処理した。肺ホモジネートのコラーゲン含有量は、Total Collagen Assay(Quickzyme)を使用し、製造元から提供されたコラーゲン標準を使用して、製造元の説明書に従ってアッセイした。比色分析は、マイクロプレートリーダー(FilterMax F5、Molecular Devices、580nm)で読み取った。さらに、RNAをホモジネートから抽出し(Zymogen Research)、cDNAに逆転写した(Qiagen、QuantiNova逆転写205413)。これらの研究の結果は、図29~32に示されている。
【0154】
28個の試料のための均質化緩衝液を、224μLのカクテル阻害剤、224μLのNaOV4、224μLのPMSF、および0.22gのDTTを22.4mLのRIPA緩衝液に添加することによって調製した。試料あたり800μLの均質化緩衝液を添加した。CK28ビーズを備えるPrecellys Evolutionを使用して、試料を均質化した。使用した均質化プロトコルは、硬組織用であり、各試料に対して4℃で2回行った。次いで、均質化した試料を等分化し、400μLをBCA濃度決定およびタンパク質アッセイ用に保存し、200μLをRNA分離用に保存し、200μLをコラーゲンアッセイ用に保存した。
【0155】
コラーゲンアッセイ。コラーゲン標準は、125μLのQuickzymeコラーゲン標準を125μLの12M HCLに添加し、200μLの各試料を200μLの12MHClに添加することにより使用のために調製した。試料および標準液を95℃で20時間インキュベートし、20分後に短時間ボルテックスした。インキュベーション後、試料を13,000xgで10分間遠心分離した。標準は、製造元の説明書(Quickzyme)に従って作成された。次いで、100μLの各試料を50μLの水に希釈した。次いで、10μLの各希釈試料を100μLの4M HClでさらに希釈した。標準の複製と各試料をピペットでプレートに入れた。75μLのアッセイ緩衝液を各ウェルに添加し、プレートにカバーをかけた後、20分間振とうした。1ウェルあたり75μLの検出試薬混合物を添加し、プレートを混合した後、60℃で1時間インキュベートした。次いで、プレートを上記のように読み取った。
【0156】
RNA単離。QiagenRNeasyキットを使用し、製造業者の指示書に従って、RNA単離を行った。簡単に説明すると、25μLのRLT緩衝液および75μLの70%エタノールをRIP A緩衝液中の50μLの試料に添加し、合計150μLの出発物質を得た。次いで、50μLの各試料の出発物質をRNaseフリー水50μLに添加した。次いで、350μLの緩衝液RLTを添加し、試料を十分に混合した。次いで、250μLの95~100%エタノールをそれぞれに添加し、試料を再度混合した。次いで、700μLの各試料をそれぞれのスパインカラムに添加し、8000xgで遠心分離し、通過画分を廃棄した。500μLのRPEを各カラムに添加し、カラムを再度遠心分離した。500μLのRPEを再度添加し、今回は試料を8000xgで2分間遠心分離した。試料を新しいマイクロ遠心チューブに移し、8000xgで1分間遠心分離することにより、RNAを40μLのRNaseフリー水で溶出した。試料をナノドロップ(nanodrop)によって定量化し、上記のように分析した。
【0157】
実施例2-CSP7バルク粉末の特性評価
走査型電子顕微鏡法。CSP7のバルク粉末試料を試料トレイにスパッタリングし、圧縮窒素を吹き付けて広げた。走査型電子顕微鏡法により、試料を画像化した(図1)。SEMは、大きな粒子(>5μm)の存在を示している。さらに、ほとんどの粒子は大きい(>5μm)ようであり、したがって呼吸可能な範囲外であるようであった。
【0158】
CSP7粒子サイズ評価。粒子サイズを、固体または湿式分散アタッチメントが装備されたSpray tecレーザー回折およびSympatecレーザー回折装置HELOS-Rシステムを使用して調べ、バルク粉末が呼吸可能な範囲内にあるかどうかが決定した。乾式分散法を使用して、CSP7バルク粉末粒子のサイズは、呼吸可能な粒子サイズよりも大きいと決定された。表3は、分布内でDv10、Dv50(中央値)、およびDv90であると評価された粒子の粒子サイズを示している。表3に示されるように、分析されたすべてのCSP7粒子の50%超が、呼吸可能な範囲よりも大きい5.3μm以上の粒子サイズを有していた。
【表3】
【0159】
次いで、湿式分散法によるSympatecレーザー回折により、粒子サイズを決定した。CSP7を分散媒体としてエタノール+0.05%Tween(登録商標) 80に溶解し、10分間超音波処理した。湿式分散を使用したCSP7粒子のサイズ測定結果を表4に示す。表4に示すように、湿式分散粒子の平均粒子サイズ(Dv50)は、29.0±0.8であり、呼吸可能範囲を大きく超えていた。
【表4】
【0160】
平均粒子サイズを、再び乾式分散法を使用し、Spraytecレーザー回折装置を使用してさらに評価した。CSP7バルク粉末は40PSIで分散され、平均粒子サイズ(8.6±1.5μm)は呼吸可能な範囲を上回っていた(表5)。
【表5】
【0161】
5μmより小さいことが見出された乾燥粉末粒子の割合は、わずか34.5±4.1%であることが見出された。それぞれのレーザー回折法により、バルク粉末の大部分が呼吸可能な範囲外の粒子サイズを有することが見出されたことを考慮すると、処置に使用される乾燥粉末は、粒子サイズを低下させるために何らかの方法で処理する必要がある。
【0162】
バルクCSP7粉末の形態。バルク粉末CSP7試料をスライドガラス上にスパッタリングし、光学顕微鏡で観察した(図2)。光学顕微鏡によりSEMが確認され、大きな粒子(>5μm)の存在が示された。光学顕微鏡法はまた、図2の矢印に見られる粒子凝集物の存在を示している。
【0163】
CSP7バルク粉末粒子の結晶化度の決定。CSP7バルク粉末粒子をX線粉末回折を使用して評価した(図3)。ニートのCSP7は、X線粉末回折により、いくらかの結晶性を示すことが見出された(図3)。X線回折の結果を確認するために、偏光顕微鏡法によって結晶化度を評価した(図4)。図4に見られるように、バルクCSP7粉末中に結晶性CSP7が存在し、特定の典型的な結晶形態が画像中の白い矢印で示されている。
【0164】
CSP7バルク粉末の熱分析。示差走査熱量測定を使用して、ニートのCSP7の融点を決定した(図5)。DSCによって決定されるように、CSP7の融点は211.03℃であると決定された(図5)。熱重量分析(TGA)を使用して分析を続けた(図6)。TGAは、ニートのCSP7の重量が216℃超で劇的に減少し始めることを示している。
【0165】
CSP7バルク粉末の水分含有量。バルク粉末CSP7の水分含有量をMettler Toledo Karl Fischer Titratorを使用してKarl Fischer-Volumetric(KF-V)滴定によって評価し、3つ組で実施した。表6は、各試験の水分含有量と3つの試験の平均水分含有量を示している。
【表6】
【0166】
次いで、CSP7バルク粉末の水分吸着を、動的蒸気吸着DVSを使用して分析した(図7)。CSP7試料を十分な吸着/脱着サイクルで実行し、試料は、相対湿度ゼロにおいて6.32%の水分脱着を有することが見出された。相対湿度が90%のときの質量変化は10.54%であることが見出された(図7
【0167】
実施例3-粒子サイズ低下後のCSP7粉末の特性評価
CSP7粉末の粒子サイズ低下。粉末を肺に効果的に吸入して沈着させるために、粒子サイズは、一般に、約5μm未満の空気動力学的中央粒子径を有する必要がある。ニートの材料の粒子サイズを小さくするために、エアジェット粉砕(AJM)、ボール粉砕(BM)、極低温粉砕(CM)、薄膜凍結(TFF)、および噴霧乾燥など、様々な技術を実施した。最初に、CSP7バルク粉末の粒子サイズを小さくするためにAJMを実施し、粉砕されたCSP7を粉砕機内のいくつかの位置から収集した。示された位置から収集された粉砕粉末の最初のバッチ(バッチ171013)の収率および粒子サイズ分布を表5および6に示す。粒子サイズ分布を、Sympatecレーザー回折乾式分散(表8)またはSympatecレーザー回折湿式分散(表9)によって上記のようにして決定した。
【表8】
【表9-1】
【0168】
上記と同じ条件を使用して、CSP7の第2のバッチ(バッチ171027)を10グラムのニートのバルク粉末から粉砕した。再度、粉末サイズの分布および収率を同じ位置から評価し、表10に列挙する。
【表10】
【0169】
CSP7乾燥粉末の第3のバッチを薄膜凍結(TFF)(バッチ171014)に供し、Sympatecレーザー回折乾式分散(表11)および湿式分散(表12)の両方を使用して、上記のように分析した。
【表11-1】
【表12】
【0170】
CSP7乾燥粉末の別のバッチを、粒子サイズを低下させるために極低温粉砕(CM)に供した。CM CSP7の粒子サイズを、乾式分散(表13)および湿式分散(表14)を使用したレーザー回折によって上記のようにして評価した。
【表13】
【表14】
【0171】
CSP7バルク粉末の別のバッチを、粒子サイズを低下させるためにボール粉砕(BM)に供した。粉砕プロセス中のいくつかの時点から得られたBMCSP7粉末の粒子サイズ分布を表15に示す。
【表15】
【0172】
CSP7(指定の開発頭字語により、CSP7とも称する)およびロイシン、トレハロース、クエン酸ナトリウム、またはロイシンおよびトレハロースの混合物を用いてさらなるバッチを作成し、粒子サイズを低下させるために噴霧乾燥に供した。噴霧乾燥粒子のサイズを乾式分散レーザー回折によって調べた(図8、表16)。再度、バルクCSP7と比較して、噴霧乾燥により、CSP7粒子のサイズが大幅に低下した。
【表16】
【0173】
CSP7粒子サイズは、固体分散および湿式分散によって測定された場合に両方とも、粒子サイズを低下させるための各方法(エアジェット粉砕、薄膜凍結、極低温粉砕、ボール粉砕、および噴霧乾燥)の後に劇的に低下した(表1および2表5、6、10、13、14、16、17、18、および19と比較する)。エアジェット粉砕後、CSP7粒子の大部分は呼吸可能な範囲内にあるが、薄膜凍結、極低温粉砕、およびボール粉砕はそれほど効果的ではなく、固体分散または液体分散を使用してレーザー回折で測定した場合、呼吸可能な範囲内にある粉砕された粉末の割合はより少なかった。
【0174】
粒子サイズはまた、ローターステーターハンドヘルド(rotor-stator handheld)ホモジナイザーを使用して低下させた(図9)。CSP7は、均質化の持続時間および力に応じて、均質化後、エタノールの色を明るい灰色または濃い灰色のいずれかに変え(図9)、観察された色の変化ゆえに、この方法はさらに追求されなかったが、均質化が粒子サイズを低下させたことは明らかである。
【0175】
粉砕されたCSP7粉末の形態。光学顕微鏡法または走査型電子顕微鏡法を使用して、粉砕された各試料の形態を調べた。エアジェット粉砕からの粉末試料を上記のように調べ、光学顕微鏡により、粒子サイズが1μm>粒子サイズ>5μmのサイズに低下し、均一であることが示された(図10)。さらに、粉砕されたCSP7粒子は、凝集物を含まなかった(図10)。SEMは、エアジェット粉砕された粒子の均質化および低下した粒子サイズが1~5μmの間であることを示した(図11)。TFF後に得られた粉末試料も調べ、粒子サイズはより大きかったが、試料には凝集物がないことが見出された(図12)。さらなる分析は、走査型電子顕微鏡による噴霧乾燥製剤の粒子形態の評価を含んだ。製剤の代表的なSEM画像を図13に示す。
【0176】
AJMCSP7の結晶化度。粉砕されたCSP7粉末(バッチ171027)をX線回折によって評価し、結晶化度は、回折図(図14)に示されている。噴霧乾燥されたCSP7の結晶化度もX線回折によって調べ、曲線は図15に描かれている。CSP7単独またはトレハロースもしくはクエン酸ナトリウムと結合したCSP7の製剤は、アモルファスであるが、ロイシンまたはロイシンおよびトレハロースと結合したCSP7は、図15の鋭いピークによって示されるように、結晶性ロイシン特性を含むようである。
【0177】
粉砕または噴霧乾燥されたCSP7粉末のHPLC評価。CSP7バルク粉末の粉砕が化学的効力に影響を与えるかどうかを判断するために、粉砕されたCSP7粉末の試料を粉砕機の様々な部分から収集し、表2に列挙した条件下で行ったHPLCを使用して評価した。次式を使用して、効力を評価した。
【数1】
【0178】
表26から明らかなように、粉砕は、収集された試料の効力に対して悪影響を及ぼさなかった。同様に、バッチ171027を試験したとき、化学的効力は100.14%であると決定された。
【表26-1】
【0179】
純度を調べるために、噴霧乾燥されたCSP7混合物をRP-HPLCによって調べた(表17、図16)。エアジェット粉砕されたCSP7粉末と同様に、噴霧乾燥されたCSP7は約100%の純度を保持する。
【表17】
【0180】
CSP7の安定性。未処理のバルクCSP7粉末およびエアジェット粉砕されたCSP7(バッチ171027)の両方の安定性を、HPLCを使用してそれらの化学的効力を分析することによって調べた。各試料は、3つの異なる条件で保存された後、保存の5日、15日、および32日の化学的効力をアッセイした(図17)。噴霧乾燥されたCSP7の24時間にわたる安定性もまた、その短期間の安定性を理解するためにHPLC(仕様で前述した方法)によって調べた。各製剤は安定していることが見出され、2時間または24時間後に不純物が増加していなかった(表31)。
【表31-1】
【0181】
粉砕されたCSP7の空気力学的粒子サイズ分布。粉砕されたCSP7の空気力学的粒子サイズ分布を決定するために、NGI収集機の様々な位置に堆積した粉末の量を別々に抽出した。送達された用量をエアロゾル化後にNGI収集機に入ったCSP7の質量として測定し、個々の表面に堆積したCSP7の量を抽出し、別々に測定した。カプセル内に残された、または装置、アダプター、スロート、プレセパレーター、およびステージ1~MOC内に堆積された、未処理またはエアジェット粉砕(バッチ171013)のいずれかのCSP7の量が、送達されたCSP7の総量の割合として図18に示されている。粉砕および未処理(例えば、未粉砕または未処理)の両方のCSP7の微粒子の割合(FPF%)、質量平均空気力学的直径(MMAD)、および幾何標準偏差(GSD)を表9に示す。
【表9-2】
【0182】
第2の粉砕されたCSP7バッチ(171027)の空気力学的粒子サイズ分布は、サイズ3のHPMCカプセルあたり約4.25mgの粉末を使用することを除いて、上記のように決定された。GSD、FPF%、およびMMADが表11に示され、各位置に堆積されたCSP7の割合が、ここでも送達されたCSP7の総量の割合として、図19に示されている。
【表11-2】
【0183】
噴霧乾燥製剤のエアロゾル化も同様に調べた(図20)。各製剤は、60%超の微粉末画分を示し、各製剤は、2.5μm~3μmのMMADを有していた(表25)。水分含有量を含む噴霧乾燥製剤の分析結果の要約を表25に示す。
【表25-1】
【0184】
粉砕されたCSP7の水分含有量の決定。バルクCSP7を分析するために使用されたのと同じ条件下で、エアジェット粉砕されたCSP7粉末(バッチ171027)を動的蒸気吸着を使用して分析した(図21)。ニートのバルク粉末と同様に、粉砕されたCSP7は、0%の相対湿度で4.61%の水分脱着を有していた(図21)。KF-V分析により、4.9%の水分含有量が見出されたが(表7)、相対湿度が90%の場合、質量変化は13.59%に増加した(図21)。
【表7】
【0185】
低下した粒子サイズのCSP7粉末の熱重量分析。バルクCSP7と同じ方法で、粉砕されたCSP7(バッチ171027)について熱重量分析を行い、粉砕されたCSP7は未処理のCSP7と非常に類似した特性を有することが見出された(図22)。噴霧乾燥製剤の熱特性も評価し、表24および図23~27(図28に要約)に示されている。特に、混合製剤の中間点Tgは、噴霧乾燥されたCSP7単独よりも有意に低かった(表24における001C-Fと001Bとを比較)。
【表24】
【0186】
本明細書に提示された結果は、CSP7粉末の粒子サイズを低下させるために様々な方法が効果的であり、得られた粉末が非常に類似した特性を示すことを示している。
【0187】
実施例4-CSP7乾燥粉末の吸入によるブレオマイシン誘発性肺線維症の処置
マウスにおける線維症の誘発およびCSP7処置。ブレオマイシンによる処置により、肺線維症をマウスで誘発した。マウスに0.8U/kgのブレオマイシンを鼻腔内投与し、14日間待って、処置前に疾患を発症させた。次いで、マウスを未処理のままにするか、CSP7の乾燥粉末吸入で12分間処理するか、またはCSP7の乾燥粉末吸入で60分間処理した。処置の最終日にマウスを安楽死させ、肺を取り出し、急速冷凍し、-80℃で保存した。さらなる分析の前に、瞬間冷凍された肺の重さを測った(図29)。
【0188】
肺組織を均質化し、コラーゲン含有量をQuickzymeコラーゲンアッセイを使用して分析した(図30)。ブレオマイシンによる線維症の誘発は、生理食塩水処置と比較して、肺におけるコラーゲンの有意な増加をもたらした(P=0.0062)(図30)。マウスの肺線維症の尺度であるアシュクロフトスコアは、ブレオマイシンによる肺線維症の誘発後、CSP7で処置されたマウスでは低かった(図31)。
【0189】
RNAを均質化された肺組織からも調製し、上記のように使用した。
【0190】
実施例5-筋肉内/皮下注射用の製剤懸濁液
【表25-2】
【0191】
調製について:
1.1.20mM Tris緩衝液を調製する(pH約10.3である必要がある)
2.2.1.5%(w/w)CMCを20mM Tris緩衝液に溶解し、0.2%(w/w)ポロキサマー188を添加する。約600rpmで一晩攪拌する。
3.3.0.7%(w/w)NaClをCMC溶液に添加する。
4.4.約28.5μL/mlの1N HClを添加することにより、溶液のpHを7に調整する。
5.5.特定の量のエアジェット粉砕されたCSP7粉末(小さな粒子サイズの画分を得るために収集バッグから収集されれる)を清浄なバイアル中で計量および添加する。
6.6.清浄なロッドを使用して最初に粉末を粉砕し、目視可能な凝集粒子がないことを確認する。
7.7.ロッドを用いた粉砕(milling)/粉砕(grinding)により、調製した溶液をバイアルに徐々に添加する。
8.8.粉末が完全に湿り、目視可能な凝集粒子が見出される場合、適量添加して標的体積にする。
結果
【表26-2】
【0192】
実施例6-筋肉内/皮下注射用の製剤溶液
調製について:
1.1.20mM Tris緩衝液を調製する(pH約10.3である必要がある)
2.2.1.5%(w/w)CMCを20mM Tris緩衝液に溶解し、0.2%(w/w)ポロキサマー188を添加する。約600rpmで一晩攪拌する。
3.3.0.7%(w/w)NaClをCMC溶液に添加する。
4.4.1.2~1.4mg/ml CSP7(未処理の粉末)を溶液に添加し、ボルテックスして溶解する。pHは約9である必要があり、次いで、-50μL1N HClを添加してpHを8.2~8.5に調整する。
【表27】
結果
【表28】
【0193】
実施例7-ポリペプチド変異体の事前製剤化(pre-formulation)研究
変異体粉末を5mg/mlの濃度で溶媒に添加し、次いで3分間ボルテックスすることにより、変異体の溶解度研究を行った。5分で溶液の外観を観察する。さらに粉末を添加し(毎回約5mg/ml)、ボルテックスを繰り返し、沈殿またはゲル化が発生するまで観察する。
結果:
【表29】
【表30】
【表31-2】
【表32】
【表33】
【0194】
実施例8-CSP7(アンモニウム対イオン)形態の事前製剤化前研究
ニートの(すなわち、粉砕されていない)CSP7アンモニウム対イオン形態(表35)の溶解は、過剰量のペプチド粉末を3mLの異なるpH緩衝液に添加し(表36)、オービタルシェーカー上で、100rpmで24分間混合することによって行った。
【0195】
凍結融解安定性研究のために(図33)のために、リン酸緩衝系(PBS、pH7.4)中の0.1mg/mL CSP7(アンモニウム対イオン)ペプチドを、それぞれ、急速および低速凍結のために15mL/バイアルに等分化した。高速および低速凍結のために、試料を液体窒素に少なくとも5分間浸漬するか、または-20℃の冷凍庫に少なくとも1.5時間入れて、バイアル中の等分量を完全に凍結した後、室温に解凍するようにした。各試料は5回の凍結融解サイクルを受けた。回収率%は、元の(未処理の)濃度と比較した各試料濃度の割合を表す。
【0196】
溶解度および凍結融解試料を0.45μmの膜を通して濾過した後に、高速液体クロマトグラフィ(HPLC,Thermo Fisher Scientific,Fair Lawn,NJ)を行うことによってアッセイした。簡単に説明すると、Waters(登録商標)逆相C18カラム2.5μm、150mmx4.60mmを備えたDionex3000HPLCシステムを使用して試料を分析した。試験のためにHPLCカラムを60℃に加熱し、ペプチドを215nmの波長と1mL/分の流速で検出した。2つの移動相は、A(水中0.1%酢酸)およびB(アセトニトリル中0.1%酢酸)とした。注入体積は20μLであり、標準曲線を0.01~1mg/mlからプロットした。
【表34】
【表35】
【表36】
【0197】
実施例9:ロット番号UTA181028としての粉砕されたCSP7(アンモニウム対イオン)粉末の特性評価および安定性研究
モデル00Jet-O-Mizer(商標)(Aljet millとしても既知,Fluid Energy,ペンシルベニア州テルフォード)を使用して、CSP7ペプチドを粉砕した。供給速度、押し出し圧力、および粉砕圧力は、それぞれ1g/分、60psi、70psiである(表37)。バッチサイズは20gであり、粉砕された粉末は、粉砕チャンバー後のチューブ(bfC)、サイクロン(C)、収集容器アダプター(D)、収集バッグアダプター(E)、収集バッグ(H)、および収集容器(G)を含む、ジェット粉砕の様々な区域から収集される。Turbulaミキサー(Glen Mills Inc.,Clifton,米国ニュージャージー州)を使用して、収集した粉末を10分間混合した。
【表37】
【0198】
粉砕されたおよびCSP7アンモニウム対イオンニート粉末の比表面積。粉砕および未処理のCSP7粉末の比表面積は、Monosorb急速表面積分析装置モデルMS-21(Quantachrome Instruments,フロリダ州ボイントンビーチ)とシングルポイントBET法を使用して分析される(図34)。試料を25℃で20psiの窒素ガスを使用して20~24時間ガス放出し、表面上の水および他の不純物分子を除去する。窒素/ヘリウムの混合物(50:50v/v)を吸着物として使用し、設備を試験前に窒素で校正する。
【0199】
粉砕されたおよびCSP7アンモニウム対イオンニート粉末の熱重量分析。開始温度を25℃ではなく35℃としたことを除いて、段落[0021]に記載された方法を使用する。結果を図35に示す。
【0200】
粉砕されたおよびニートのCSP7(アンモニウム対イオン)粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)画像。CSP7の形態(図36)を、Zeiss Supra 40VP SEM(Carl Zeiss Microscopy GmbH、ドイツ・イエナ)で分析する。試料は、炭素導電性テープによってアルミニウムSEMスタブに取り付けられ、Cressingtonスパッタコーター208HR(Cressington Scientific Instruments Ltd.,英国ワトフォード)を使用して12nmの白金/パラジウム(Pt/Pd)でコーティングされる。画像は、ニートの(すなわち、未処理の)CSP7試料および粉砕後のCSP7試料に対して撮影される。
【0201】
ロット番号UTA181028からの粉砕されたCSP7(アンモニウム対イオン)の安定性研究。粉砕されたCSP7粉末の安定性を、最大6ヶ月間の様々な保存条件下で調査した。粉砕されたCSP7ペプチドは、バルク粉砕粉末およびカプセル化粉砕粉末の2つの形態でパッケージ化されている。バルク粉砕粉末として保存する場合、0.21~0.24gのペプチドを20mLのシンチレーションバイアル(Kimble(登録商標)、DWK Life Sciences,米国ニュージャージー州ミルビル)に充填し、各ポーチ中に1gのシリカゲル乾燥剤(Tyvek(登録商標)およびSorbco Packaging LLC,米国ニュージャージー州ベレン)の2つのバッグを含む、熱密封されたフォイルポーチ(Impak Corp,米国カリフォルニア州ロサンゼルス)内に保存する。粉砕されたペプチド粉末をまた、サイズ3のHPMCカプセル(Capsugel,米国ニュージャージー州モリスタウン)に約11±5%mgの重量でカプセル化し、次いで、22~26個のカプセルがHDPEボトル(Drug Plastic,米国ペンシルベニア州ボイヤータウン)、続いてHDPEボトルをフォイルポーチ(乾燥剤なし)内に密封する。パッケージを、以下の保存条件:-20℃、25℃/60%RH、および40℃/75%RHで安定チャンバーに保する。試料を試験のために1、3、および6ヶ月で取り出す(表38)。空気力学的粒子サイズ分布以外の試験では、カプセル化粉末をカプセルから取り出し、バイアルを回転させることによってガラスバイアル中で混合した。
【表38】
【0202】
粉砕された粉末の外観。粉砕された粉末の外観は、通常のカメラで写真を撮ることによって記録された(図30)。
【0203】
粉砕されたペプチドの化学的安定性。実施例8に記載のHPLC法を使用して、粉末をアッセイした。結果を以下の表39に示す。パーセンテージは、物質収支と比較したアッセイ量を表す。アッセイを水分含有量について調整した。
【表39】
【0204】
CSP粉末の水分含有量。Coulometric Karl Fischer(Mettler Toledo C20 Leicester,米国オハイオ州)を使用して、ペプチド粉末中の水分含有量を測定する(表40)。機器の信頼性をカールフィッシャーの水分含有量標準(Hydranal(商標)水標準品,Honeywell,米国ノースカロライナ州シャーロット)で試験する。既知量の粉末を無水メタノール(Sigma,ミズーリ州セントルイス)に懸濁し、懸濁液を陽極液(Hydranal(商標)-Coulomat AG,H Honeywell、米国ノースカロライナ州シャーロット)に注入して、陰極液(Hydranal(商標)-Coulomat CG、H Honeywell,米国ノースカロライナ州シャーロット)の存在下で滴定を生じさせる。ブランクの無水メタノール溶液を差し引いた試料中の水分含有量の差として、結果を記録する。
【表40】
【0205】
幾何学的粒子サイズ分布。RODOS分散を備えたSympatecHELOSレーザー回折機器(Sympatec GmbH,ドイツ)を使用して、粉砕の前後にCSP7粉末のGPSDを分析した。測定は、3バールでの粉末分散後に10ミリ秒ごとに行われる。粒子サイズ分布を決定するために、5~25%の光学密度の測定値を平均した。体積による粒子サイズは、それぞれ10、50、および90のパーセンタイル(例えば、Dv10、Dv50、およびDv90)、ならびに1~5μmのサイズ範囲に入る粒子の割合で報告される。結果を41に示す。
【表41】
【0206】
空気力学的粒子サイズ分布分析試験されたカプセル中の粉末重量が11±5%mgであり、プレセパレーターを安定性研究でのNGIの組み立てで取り除いたことを除いて、段落[00215]に記載されるNGIを実施することにより、空気力学的粒子サイズ分布を評価した。結果を表42に示す。
【表42】
【0207】
CSP7粉末の結晶化度。粉末の結晶化度は、段落[0018]に記載された方法によって評価され、その結果は図38に示されている。
【0208】
本明細書に開示され、特許請求される全ての方法は、本開示の観点で過度な実験を行うことなく、なされ、実行されてもよい。本発明の組成物および方法は、好ましい実施形態の観点で記載されてきたが、本発明の概念、精神および範囲を逸脱することなく、本明細書に記載の方法、工程または工程の順序に変化が加えられてもよいことは当業者には明らかであろう。より具体的には、化学的および生理学的に関連する特定の作用物質を、同じ結果または同様の結果が達成されつつ、本明細書に記載される作用物質に交換されてもよいことは明らかであろう。当業者に明らかな全てのかかる同様の代替物および改変は、添付の特許請求の範囲に定義されるような本発明の精神、範囲および概念の範囲内であると考えられる。

参考文献
【0209】
以下の参考文献は、本明細書に示されるものに対して補助的に例示的な手順または他の詳細を与える程度まで、本明細書に参照により組み込まれる。

Carvalho et al.,“Influence of particle size on regional lung deposition - What evidence is there?”Int.J.Pharma.406:1-10,2011.

Huebner,R.-H.;Gitter,W.;El Mokhtari,N.E.;Mathiak,M.;Both,M.;Bolte,EL;Freitag-Wolf,S.;Bewig,B.Standardized quantification of pulmonary fibrosis in histological samples.Biotechniques,44,507-11,514-7,2008.

Surasarang et al.,“Optimization of Formulation for a Novel Inhaled Candidate Therapeutic for Idiopathic Fibrosis,”Drug Development and Industrial Pharmacy,44(2):184-198,2017.

Tepper,J.S.;Kuehl,P.J.;Cracknell,S.;Nikula,K.J.;Pei,L.;Blanchard,J.D.Symposium Summary:“breathe In,Breathe Out,Its Easy:What You Need to Know about Developing Inhaled Drugs.”Int.J.Toxicol.35,376-392,2016.
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
ペプチドの乾燥粉末を含む医薬組成物であって、前記ペプチドは、配列番号2~20のうちのいずれか1つの配列を含む、医薬組成物。
(項目2)
前記ペプチドが、7~20のアミノ酸長である、項目1に記載の医薬組成物。
(項目3)
前記ペプチドが、配列番号2のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目4)
前記ペプチドが、配列番号2のペプチドのN末端に付加された少なくとも1つのアミノ酸を含む、項目3に記載の医薬組成物。
(項目5)
前記ペプチドが、配列番号2のペプチドのC末端に付加された少なくとも1つのアミノ酸を含む、項目3に記載の医薬組成物。
(項目6)
前記ペプチドが、配列番号2のペプチドのN末端およびC末端に付加された少なくとも1つのアミノ酸を含む、項目3に記載の医薬組成物。
(項目7)
前記ペプチドが、L-アミノ酸を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目8)
前記ペプチドが、D-アミノ酸を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目9)
前記ペプチドが、L-アミノ酸およびD-アミノ酸の両方を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目10)
前記ペプチドが、少なくとも1つの重水素化残基を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目11)
前記ペプチドが、少なくとも1つの非標準アミノ酸を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目12)
前記ペプチドが、2つの非標準アミノ酸を含む、項目11に記載の医薬組成物。
(項目13)
前記非標準アミノ酸が、オルニチンである、項目11に記載の医薬組成物。
(項目14)
前記ペプチドが、N末端修飾を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目15)
前記ペプチドが、C末端修飾を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目16)
前記ペプチドが、N末端修飾およびC末端修飾を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目17)
前記N末端修飾が、アシル化である、項目14に記載の医薬組成物。
(項目18)
前記C末端修飾が、アミド化である、項目15に記載の医薬組成物。
(項目19)
前記ペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目20)
前記ペプチドが、配列番号4のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目21)
前記ペプチドが、配列番号6のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目22)
前記ペプチドが、配列番号9のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目23)
前記ペプチドが、配列番号5のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目24)
前記ペプチドが、配列番号7のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目25)
前記ペプチドが、配列番号8のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目26)
前記ペプチドが、配列番号11のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目27)
前記ペプチドが、配列番号12のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目28)
前記ペプチドが、配列番号13のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目29)
前記ペプチドが、配列番号14のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目30)
前記ペプチドが、配列番号15のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目31)
前記ペプチドが、配列番号16のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目32)
前記ペプチドが、配列番号17のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目33)
前記ペプチドが、配列番号18のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目34)
前記ペプチドが、配列番号19のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目35)
前記ペプチドが、配列番号10のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目36)
前記ペプチドが、配列番号20のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目37)
細胞透過性ペプチド(CPP)をさらに含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目38)
前記CPPが、GRKKRRQRRRPPQ(配列番号23)、RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号24)、およびGIGAVLKVLTTGLPALISWIKRKRQQ(配列番号25)を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む、項目37に記載の医薬組成物。
(項目39)
前記ペプチドが、配列番号2~20のうちのいずれか1つの配列の少なくとも2つの反復を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目40)
前記少なくとも2つの反復が、同一のアミノ酸配列を有する、項目39に記載の医薬組成物。
(項目41)
前記少なくとも2つの反復が、異なるアミノ酸配列を有する、項目39に記載の医薬組成物。
(項目42)
前記乾燥粉末が、粉砕プロセスによって製造される、項目1に記載の医薬組成物。
(項目43)
前記乾燥粉末が、噴霧乾燥プロセスによって製造される、項目1に記載の医薬組成物。
(項目44)
前記乾燥粉末が、エアジェット粉砕によって製造される、項目1に記載の医薬組成物。
(項目45)
前記乾燥粉末が、ボール粉砕によって製造される、項目1に記載の医薬組成物。
(項目46)
前記乾燥粉末が、湿式粉砕によって製造される、項目1に記載の医薬組成物。
(項目47)
前記乾燥粉末が、10(重量)%未満の水を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目48)
前記乾燥粉末が、1(重量)%未満の水を含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目49)
前記医薬組成物が、本質的に賦形剤を含まない、項目1に記載の医薬組成物。
(項目50)
前記医薬組成物が、賦形剤を含まない、項目49に記載の医薬組成物。
(項目51)
前記医薬組成物が、肺送達用に製剤化されている、項目1に記載の医薬組成物。
(項目52)
前記医薬組成物が、乾燥粉末吸入用に製剤化されている、項目51に記載の医薬組成物。
(項目53)
前記医薬組成物が、吸入加圧式定量吸入用に製剤化されている、項目51に記載の医薬組成物。
(項目54)
前記医薬組成物が、経口投与用、局所投与用、または注射用に製剤化されている、項目1に記載の医薬組成物。
(項目55)
項目1~51に記載の医薬組成物を含む、ネブライザーデバイス。
(項目56)
対象を治療する方法であって、前記対象に有効量の項目1~51に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目57)
前記対象が、炎症性障害を有する、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記対象が、線維性状態を有する、項目56に記載の方法。
(項目59)
前記対象が、肺炎症、急性肺傷害、肺感染症、または肺を有する、項目56に記載の方法。
(項目60)
前記対象が、肺炎症を有する、項目59に記載の方法。
(項目61)
前記対象が、慢性閉塞性肺障害(COPD)を有する、項目56に記載の方法。
(項目62)
前記対象が、急性肺傷害または感染症を有する、項目56に記載の方法。
(項目63)
前記対象が、肺感染症を有する、項目56に記載の方法。
(項目64)
前記対象が、化学物質誘発性肺傷害を有する、項目56に記載の方法。
(項目65)
前記対象が、鋳型気管支炎を有する、項目56に記載の方法。
(項目66)
前記対象が、喘息を有する、項目56に記載の方法。
(項目67)
前記対象が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を有する、項目56に記載の方法。
(項目68)
前記対象が、吸入煙誘発性急性肺傷害(ISALI)を有する、項目56に記載の方法。
(項目69)
前記対象が、細気管支炎を有する、項目56に記載の方法。
(項目70)
前記対象が、閉塞性細気管支炎を有する、項目56に記載の方法。
(項目71)
前記肺疾患が、肺の線維性状態である、項目56に記載の方法。
(項目72)
前記肺疾患が、間質性肺疾患である、項目56に記載の方法。
(項目73)
前記肺疾患が、特発性肺線維症(IPF)または肺瘢痕化である、項目56に記載の方法。
(項目74)
前記投与が、乾燥粉末吸入を含む、項目56に記載の方法。
(項目75)
前記投与が、変異体ポリペプチドを含む溶液を霧化することを含む、項目56に記載の方法。
(項目76)
少なくとも1つの追加の抗線維化治療薬を投与することをさらに含む、項目56に記載の方法。
(項目77)
前記少なくとも1つの追加の抗線維症薬が、NSAID、ステロイド、DMARD、免疫抑制剤、生物学的応答モジュレーター、または気管支拡張剤である、項目76に記載の方法。
(項目78)
前記対象が、ヒトである、項目56に記載の方法。
(項目79)
呼吸可能な粒子サイズを有する、粉砕された乾燥粉末として製剤化された、配列番号2~20のペプチドを含む、医薬組成物。
(項目80)
対象を治療する方法であって、有効量の項目79に記載の組成物を吸入により前記対象に投与することを含む、方法。
図1
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【配列表】
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