(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】4-アルキル-5-ヘテロアリール-3H-1,2-ジチオール-3-チオンの回転異性体
(51)【国際特許分類】
C07D 409/04 20060101AFI20240704BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20240704BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240704BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240704BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240704BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240704BHJP
C07B 57/00 20060101ALN20240704BHJP
【FI】
C07D409/04
A61K31/497
A61P29/00
A61P1/02
A61P1/00
A61P17/00
C07B57/00 380
(21)【出願番号】P 2021538939
(86)(22)【出願日】2019-09-17
(86)【国際出願番号】 IB2019001138
(87)【国際公開番号】W WO2020058767
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-14
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519085682
【氏名又は名称】エスティー アイピー ホールディング エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ボミ フラムローズ
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/110585(WO,A2)
【文献】国際公開第2018/047013(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/047002(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105327337(CN,A)
【文献】Wei, Chin Hsuan,Structure of 4-methyl-5-(2-pyrazinyl)-3H-1,2-dithiole-3-thione (oltipraz), C8H6N2S3: a new antischistosomal drug,Acta Crystallographica, Section C: Crystal Structure Communications,1983年,C39(8),,1079-1082
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転異性体過剰の4-メチル-5-(ピラジン-2-イル)-3H-1,2-ジチオール-3-チオン(オルチプラズ)の(+)回転異性体を含む組成物。
【請求項2】
回転異性体過剰の前記(+)回転異性体を有する1種または複数のオルチプラズ複合
体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1種または複数のオルチプラズ複合体が、N置換ピラジニウムイオン及び会合アニオンを生成する、オルチプラズのピラジニル環のアルファ窒素への基の付加から生じる塩を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記1種または複数のオルチプラズ複合体が、オルチプラズと、アルキルハロゲン化物、アルケニルハロゲン化物、アルキニルハロゲン化物、アシルハロゲン化物、ベンゾイルハロゲン化物、及びその組合せからなる群から選択される1種または複数の反応物との反応から形成される少なくとも1種のオルチプラズ複合体を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記(+)回転異性体の回転異性体過剰が、30~40%の過剰、40~50%の過剰、50~60%の過剰
、60~70%の過剰、70~80%の過剰、及び80%超の過剰からなる群から選択される範囲である、請求項1~4のいずれか
1項に記載の組成物。
【請求項6】
オルチプラズ複合体を含む組成物であって、前記オルチプラズ複合体が、過剰の4-メチル-5-(ピラジン-2-イル)-3H-1,2-ジチオール-3-チオン(オルチプラズ)の(-)回転異性体を有する前記組成物。
【請求項7】
回転異性体過剰の前記(-)回転異性体を有する1種または複数のオルチプラズ複合体を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記1種または複数のオルチプラズ複合体の少なくとも1種が、ピラジニル環のアルファ窒素と電気陰性原子との間の直接結合を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記電気陰性原子が、酸素、硫黄、及びリンからなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記1種または複数のオルチプラズ複合体が、ヒドロキシマレアートオルチプラズ複合体を含む、請求項6~9のいずれか
1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記1種または複数のオルチプラズ複合体が、オルチプラズを
:カルボン酸またはその塩
;リン酸またはその塩
;アルキルホスファート、アリールホスファート
;アルキルスルホン酸またはその塩
;アリールスルホン酸またはその塩
;置換及び
/もしくは非置換チオカルボン酸またはその塩
;ならびに前記の1種または複数の組合
せからなる群から選択される1種または複数の反応物と反応させることにより形成される1種または複数の複合体を含む、請求項6~9のいずれか
1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記1種または複数のオルチプラズ複合体が、オルチプラズを、乳酸、タルトロン酸、イソチオン酸、イソセリン、2-メルカプトエタンスルホン酸、タウリン、プロピルホスホン酸、2-アミノエチルホスホン酸、ジチオリン酸ジエチル、チオリン酸ジエチル、リン酸ジメチル、及びそれらの組合せからなる群から選択される1種または複数の反応物と反応させることにより形成される1種または複数の複合体を含む、請求項6~9のいずれか
1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記(-)回転異性体の回転異性体過剰が、30~40%の過剰、40~50%の過剰、50~60%の過剰、60~65%の過剰、60~70%の過剰、70~80%の過剰、80~90%の過剰、及び90~100%の過剰からなる群から選択される範囲である、請求項6~12のいずれか
1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記(-)回転異性体の回転異性体過剰が、少なくとも80%である、請求項6~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
ヒトへの投与に適している、請求項1~
14のいずれか
1項に記載の少なくとも1つの組成物を含む医薬組成物。
【請求項16】
局所投与
、直腸投与、皮下注射、筋肉内注射、胸骨内注射、静脈内注射、または吸入による投与に適した形態である、請求項
15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
経口投与に適した形態である、請求項
15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
散剤、丸剤、
もしくは錠剤の形態であるか、またはカプセル剤の中に含まれている、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
液体形態である、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
ヒトにおいて粘膜炎を予防する、処置する、寛解させる、その重症度を軽減する、及び/またはその持続期間を短縮する
ための、請求項
15~19のいずれか
1項に記載の医薬組成
物。
【請求項21】
経口投与のためのものである、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記粘膜炎が口腔粘膜炎である、請求項
20または21に記載の
医薬組成物。
【請求項23】
前記粘膜炎が消化管
、結腸、直腸、及び/または皮膚の粘膜炎である、請求項
20または21に記載の
医薬組成物。
【請求項24】
皮膚炎を予防する、処置する、寛解させる、その重症度を軽減する、及び/またはその持続期間を短縮する
ための、請求項16に記載の局所医薬組成物。
【請求項25】
4-メチル-5-(ピラジン-2-イル)-3H-1,2-ジチオール-3-チオンの(-)回転異性体を含む、請求項15~24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
4-メチル-5-(ピラジン-2-イル)-3H-1,2-ジチオール-3-チオンの前記(-)回転異性体が、ヒドロキシマレイン酸無水物(-)回転異性体を含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記ヒドロキシマレイン酸無水物(-)回転異性体が、80%超の回転異性体過剰で存在する、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記
粘膜炎が放射線療法
に起因する、請求項
20~27のいずれか
1項に記載の
医薬組成物。
【請求項29】
粘膜炎または皮膚炎の治療における使用のための、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
粘膜炎の治療のための医薬の製造における、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項31】
オルチプラズのヒドロキシマレイン酸無水物(-)回転異性体を作製するプロセスであって、
(
i)無水極性溶媒の存在下でオルチプラズを(+)-ジアセチル-L-酒石酸無水物と反応させて、反応混合物を形成するステップと;
(
ii)酢酸を前記反応混合物に添加するステップと
を含む前記プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月18日出願の米国特許仮出願第62/732,867号の利益を請求し、その実体は、その明細書、特許請求の範囲及び図面を含めて、参照により本明細書に明らかに援用される。
分野
本開示は特に、4-アルキル-5-ヘテロアリール-3H-1,2-ジチオール-3-チオンの回転異性体(rotomeric isomer)、個々の回転異性型が安定化により得られているそのような異性体の複合体、及び安定化された複合体として個々の回転異性体(回転異性体過剰)を過剰に含む組成物に関する。本開示はまた、そのような回転異性体;個々の回転異性体が安定化により得られていて、かつ回転異性体過剰で存在する複合体;上記回転異性体またはその複合体を含む組成物(回転異性体医薬組成物を含む)を作製及び使用する方法;そのような回転異性体またはその複合体を使用することによりヒト酸化防御遺伝子の機能を制御する方法;ならびにそのような回転異性体またはその複合体を用いてヒトまたは動物患者を処置する方法(例えば、粘膜炎などの様々な障害の症状を予防する、処置する、または減少させる、及び/または医学的目的で様々な器官及び組織において酸化的損傷に対する防御を与えるために)に関する。
【発明の概要】
【0002】
本明細書での開示は、複合体で安定化されていてよい個々の回転異性体で富化された4-メチル-5-(ピラジン-2-イル)-3H-1,2-ジチオール-3-チオン(オルチプラズとしても公知)回転異性体の集団を含む、新たな医薬製剤、組成物及び治療に関する。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】オルチプラズ(4-アルキル-5--(ピラジン-2-イル)-3H-1,2-ジチオール-3-チオン)。
【0004】
【
図2】2つの環が相互にほぼ直交している立体配置で示されるオルチプラズが図示されている。
【0005】
【
図3】アルファジチオール硫黄原子が炭素原子で置換されているオルチプラズ類似体が図示されている。
【0006】
【
図4A】オルチプラズのプラス(+)回転異性体が図示されている。
【0007】
【
図4B】オルチプラズのマイナス(-)回転異性体が図示されている。
【0008】
【
図5】オルチプラズのヒドロキシマレイン酸無水物複合体が図示されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図2~5において原子は円(球)として示されており、水素では「H」と、硫黄では「S」と、窒素では「N」と、または酸素では「O」とマークされている。炭素原子は、マークされていない円(球)として示されている。
【0010】
オルチプラズとしても公知の4-メチル-5-(ピラジン-2-イル)-3H-1,2-ジチオール-3-チオンは、結晶形及び非晶形の両方で開示されている。オルチプラズは、様々な特性を有する、例えば、住血吸虫症を制御する抗微生物化合物として、抗腫瘍薬として、化学防御物質として、かつ化学放射線誘導性粘膜炎の制御に役立つ化合物として記載されている。
【0011】
化学防御及び粘膜炎制御効果の作用機序は、転写因子、核因子赤血球2-関連因子2(Nrf2)防御遺伝子の上方制御を介すると記載されている。活性酸素種(ROS)により活性化されるNrf2は、酸化ストレス遺伝子制御における重要な制御物質であると考えられる。Nrf2は、bZIPタンパク質のCap’n’Collarファミリーのメンバーである。通常の条件下では、Nrf2は、その阻害物質であり、そのプロテアソーム分解を促進することによりNrf2を抑制する細胞骨格関連タンパク質Keap1に結合する。抗酸化物質により処理すると、Nrf2はKeap1から解放されて、2000超の抗酸化遺伝子の上方制御を開始する。
【0012】
オルチプラズは、貯留されたヒト歯肉上皮細胞を使用するin vitro遺伝子発現アッセイにおいて、一連の酸化防御遺伝子を活性化させることが示されている。遺伝子発現も、COPD(慢性閉塞性肺障害)を有する対象において、健康な喫煙者と比較した場合に200の示差的に発現される酸化遺伝子を示すために使用されており、in vivoで観察されたオキシダント応答遺伝子の有意な変化が、同じドナーに由来する初代気管支上皮細胞を使用してin vitroで再生された[Pierrou,S.,Broberg,P.,O’Donnell,R.A.,Pawlowski,K.,Virtala,R.,Lindqvist,E.(2007)Expression of Genes Involved in Oxidative Stress Responses in Airway Epithelial Cells of Smokers with Chronic Obstructive Pulmonary Disease.Am.J.of Respiratory and Critical Care Medicine,175(6),577-587]。
【0013】
in vitro遺伝子発現は、核の酸化DNA損傷が加齢に伴って増大するかどうかを決定するために、ヒト角膜内皮細胞(HCEC)でも研究されている。HCECは、それらの酸化ストレス及びDNA損傷シグナル伝達遺伝子84のうちの4つを年齢依存的に上方制御することにより、この損傷に応答する[Joyce,N.C.,Harris,D.L.,Zhu,C.C.Age-Related Gene Response of Human Corneal Endothelium to Oxidative Stress and DNA Damage(2011)Cornea,52(3),1641-1649]。
【0014】
したがって、in vitro細胞アッセイにおいて観察された遺伝子発現の変化が、特異的な器官及び組織に付与された生理学的酸化防御を代表し得ると示されていることは広く認められている。
【0015】
定量的構造活性相関(QSAR)研究により、住血吸虫症制御のためにオルチプラズの化学構造が最適化された。オルチプラズは近年、Nrf2上方制御活性を示しているが、Nrf2上方制御のために最適な構造または最適な立体配置であるかどうかは未知である。
【0016】
下に論述するとおり、オルチプラズの2種の異なる回転異性体を含む安定な組成物を調製することができることが発見された。上記組成物は、オルチプラズ複合体の形態で安定化されていてよい2種の回転異性体のうちの一方を最高約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の回転異性体過剰で含み得る。高い回転異性体過剰パーセンテージ、例えば、90%超(すなわち、一方の回転異性体95%及び他方5%)を含む組成物は、回転に対する相対的に低いバリアにより、高温での安定性が低いことがある。本明細書で使用する場合、「オルチプラズ複合体」は、分子または原子と解離可能に(共有結合性または非共有結合性に)会合したオルチプラズを意味する。回転異性体過剰の個々の回転異性体のいずれかを含むそのような組成物は、転写因子Nrf2効果の上方制御を特異的に増大させることができ、したがって、口腔を含む胃腸系において化学放射線及び免疫療法誘導性粘膜炎からの酸化防御をもたらす。
【0017】
オルチプラズ(4-アルキル-5--(ピラジン-2-イル)-3H-1,2-ジチオール-3-チオン)は、炭素-炭素単結合により結合した2つの環、ピラジニル環及びジチオールチオン環からなる(
図1)。
【0018】
通常、そのような炭素-炭素(C-C)結合のまわりで自由回転が可能であり、そのため、上記2つの環が特定の方向でロックされることはなく、上記2つの環は、上で
図1において示されているとおり、X線構造の公表において、各環における不飽和結合間の共役が最も低いエネルギー安定状態を可能にするねじれた平面的立体配置にあると記載されている。Wei,C.H.,Structure of 4-Methyl-5-(2-pyrazinyl)-3H-1,2-dithiole-3-thione(Oltipraz),A New Antischistosomal Drug.Acta Cryst.(1983).C39,1079-1082)を参照されたい。
【0019】
エネルギー最小化コンピューターシミュレーションを、Tinker(R)ツール及び共通パラメーターセット、例えば、Amber及びMMFFを適用して使用すると、オルチプラズの分子は、例えば、
図2に示されているとおり、上記2つの環が相互にほぼ直交している安定な立体配置でも見い出され得ることが発見された。
【0020】
さらに、類似体構造でのコンピューター解析は、この好ましい直交立体配置がおそらく硫黄超共役によることを示した。超共役に参加し得ない炭素原子でのアルファジチオール硫黄原子の置換は、
図3に示されているとおり、C-C単結合の結合のまわりでの自由回転を伴う最小エネルギー立体配置としての平面的構造をもたらした。
【0021】
シミュレーションはまた、14.1kJ/molの予測されなかった異常に高いエネルギー障壁が、2つの直交した環の一方向とその鏡像との間に存在することを示した。これは、上記2つの環の間の結合に沿った回転を可能にするためには破壊される必要がある硫黄超共役作用に帰せられ得る。したがって、上記回転異性体は、オルチプラズの2つの環の間の結合のまわりでの障害回転により、アトロプ異性体の対である。
【0022】
回転異性体組成物
したがって、オルチプラズでは2つの別個の回転異性体が可能である。2つの回転異性体はそれぞれ、相互に直交している2つの環として定義することができる;(+)-回転異性体は、頂部にチオン及びメチル基を、かつ右側にピリミジン環のアルファ窒素を配向することにより定義される一方で、(-)-回転異性体は、左側にピリミジン環のアルファ窒素を有する(
図4A及び4Bを参照されたい)。
【0023】
下記するとおりのいくつかの塩の形態でオルチプラズ複合体を調製することで、(+)-回転異性体(
図4A)が回転異性体過剰(例えば、最高約80%)で存在し得る組成物が得られることが見い出されている。本明細書で使用する場合、「回転異性体過剰」という用語は、「鏡像異性体過剰率」という用語に一般に適用されるとおり、一方の回転異性体が他方よりも過剰であることを意味する。したがって、本明細書の「回転異性体過剰」は、全体としてオルチプラズ回転異性体の集団の純度の測定値として記載される。これは、あるサンプルが一方の回転異性体を他方よりも多量に含有する程度を反映する。メソ混合物は0%の回転異性体過剰を有する一方で、単一の完全に純粋な回転異性体は100%の回転異性体過剰を有する。したがって、例えば、一方の回転異性体70%及び他方30%を含むサンプルは、40%の回転異性体過剰(70%-30%)を有する。
【0024】
他方の異性体に対する一方の異性体の相対パーセントは、FTIR解析において約1200及び約440cm-1にあるチオンピークの相対強度を使用して指定することができる。(+)回転異性体は、420~424及び1210~1215の間にFTIRチオンピークを示すが、(-)回転異性体は、432~436及び1200~1205の間にFTIRチオンピークを示す。
【0025】
(+)-回転異性体についての回転異性体優先性(下の実施例1及び3~6を参照されたい)を示し得るオルチプラズの複合体の例には、N置換ピラジニウムイオン(ピラジニル基のアルファ窒素におそらく集中する正電荷を有する)及び会合アニオンをもたらす、オルチプラズのピラジニル環(例えば、アルファ窒素のところで)への基の付加または会合(例えば、HCl、アルキルハロゲン化物またはアシルハロゲン化物の可逆的付加)から生じる塩が含まれる。塩形成の結果としてピラジン環の上に存在し得る一部の置換基には、これに限定されないが、水素、アルキル、アルケン、アルキニル、アシル、フェナシルまたはベンゾイルが含まれ、これらは、非置換であってもよいし、またはこれに限定されないが、ハロゲン化物(例えば、ClまたはF)、アルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル)、アルコキシ(-OCH3または-OCH2CH3)、アリールオキシ(例えば、-O-フェニル)などを含む他の官能基で置換されていてもよい。例えば、そのような塩は、オルチプラズをHClと反応させることにより形成することができる。別の例では、そのような塩は、オルチプラズをアルキル、アルケン、またはアルキニルハロゲン化物、例えば、塩化メチル、ヨウ化メチルなどと反応させることにより形成することができる。別の例では、そのような塩を、アシル、フェナシルまたはベンゾイルハロゲン化物(例えば、塩化物)、例えば、塩化アセチル、塩化n-ブチル、塩化ベンゾイルなどとの反応により形成することができる。
【0026】
実質的回転異性体過剰(例えば、30~40%過剰、40~50%過剰、50~60%過剰、及び60~65%、60~70%及び70~80%過剰を含めて、最高約90%以上)で存在し得る(-)回転異性体(下の実施例2及び7~11を参照されたい)を調製することができることも見い出されている。
【0027】
例えば、実施例2及び7~11に記載のとおり、オルチプラズを様々なカルボン酸またはリン酸及びそれらの塩、アルキル及びアリールホスファート、アルキル及びアリールスルホン酸ならびにそれらの塩、置換及び非置換チオカルボン酸ならびにそれらの塩と反応させることにより、(-)回転異性体オルチプラズ複合体を調製することができる。例えば、ヒドロキシマレアートオルチプラズ複合体の場合には、オルチプラズを、(+)-ジアセチル-L-酒石酸無水物と無水極性溶媒、例えば、超脱水アセトン5ml中で反応させ、続いて、氷酢酸を添加する。この反応は、ピラジニル環のアルファ窒素とマレアートの酸素原子との間の結合を、酒石酸ジアセチルの環化転位と実質的に同時に形成して、マレアート無水物環をもたらす。
【0028】
(-)回転異性体について回転異性体優先性を示し得るオルチプラズの他の複合体には、ピラジニル環のアルファ窒素と、分子内の超共役を破壊するのに十分な電気陰性原子、例えば、酸素、硫黄、またはリンとの間に直接結合が形成されているものが含まれる。そのようなオルチプラズ複合体は、上記超共役の破壊及び/または立体歪の増大を介して(-)回転異性体立体配置を安定化し得る場合には、(-)回転異性体の最高100%の回転異性体過剰をもたらし得る。例えば、そのようなオルチプラズ複合体は、回転異性体過剰の(-)回転異性体を少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%からなる群から選択される量でもたらし得る。したがって回転異性体過剰の(-)回転異性体は、例えば、30~40%過剰、40~50%過剰、50~60%過剰、60~65%過剰、60~70%過剰、70~80%過剰、80~90%過剰、及び90~100%過剰からなる群から選択される量であり得る。そのようなオルチプラズ複合体には、オルチプラズを、様々なカルボン酸またはリン酸及びそれらの塩、アルキル及びアリールホスファート、アルキル及びアリールスルホン酸ならびにそれらの塩、例えば、置換及び非置換チオカルボン酸ならびにそれらの塩、例えば、乳酸、タルトロン酸、イソチオン酸、イソセリン、2-メルカプトエタンスルホン酸、タウリン、プロピルホスホン酸、2-アミノエチルホスホン酸、ジチオリン酸ジエチル、チオリン酸ジエチル、リン酸ジメチルと反応させることにより形成されるものが含まれる。5-(ピラジン-2-イル)-3H-1,2-ジチオール-3-チオンを、ジチオールチオン環の4位上の置換基(オルチプラズではメチル基である)のサイズを変更することにより、オルチプラズの(-)回転異性体のもののような立体配置に誘導することは不可能であると考えられることに留意すべきである。
【0029】
ピラジニル環のアルファ窒素を必要とする超共役に加えて、またはその代わりに、超共役は、ピラジニル環のメタ窒素でのオルチプラズ複合体の形成によっても影響を受け得る。そのような(-)回転異性体複合体は、上記メタ窒素原子と炭素、酸素、硫黄またはリン原子との間の結合を介して形成することができる。この結合を、単一で、またはピラジニル環上のアルファ(オルト)窒素原子を必要とする錯化と一緒に生じるように作製することができる。
【0030】
オルチプラズ配座異性体は、ボルツマン分布においてそれらの相対エネルギーの関数として分布すると理解されるので、任意の所与の条件セット(例えば、具体的な溶媒)下で最も安定である個々のオルチプラズ回転異性体(またはオルチプラズ複合体の個々の回転異性体)をより高い回転異性体過剰で得る手段の1つは、所望のオルチプラズ組成物の溶液を(例えば、-78℃以下などの室温未満に)冷却することと、回転異性体が実質的に平衡化するのに十分な時間を与えることとを含む。そのような条件下では、多くの分子が、室温においてよりも安定した(より低いエネルギーの)立体配座(複数可)になるであろう。次いで、冷却した組成物を蒸発及び/または凍結乾燥により、好ましくは加温せずに乾燥させる。さらに、(-)-回転異性体または(+)-回転異性体のいずれかが回転異性体過剰で存在するオルチプラズ複合体(例えば、塩)を、例えば、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、95%超、96%超、97%超、98%超、及び99%超の純度まで実質的に精製することができることが見い出されている。精製プロセス及び条件は、組成物の所望の回転異性体過剰の変化を最小化するように選択すべきである。例えば、精製中に40℃超の温度を使用すること、またはDMSOなどの非常に極性の溶媒を使用することは、平衡化をもたらし、かつ回転異性体過剰をゼロ近くに、またはゼロに等しいほどに実質的に失わせるが、キラルクロマトグラフィーの使用は、回転異性体過剰収率の改善をもたらすと考えられる。したがって、一方の回転異性型が、別の回転異性型よりも強力に媒体と会合する条件下でオルチプラズ複合体をキラル媒体に暴露すること、複合体が平衡化する時間を許すこと、かつ回転異性体の平衡化に不利な条件(例えば、低温)下で複合体を溶離することが、所望の立体配置のオルチプラズ複合体を富化する手段である。
【0031】
さらに、上記(+)-回転異性体及び上記(-)-回転異性体配向は、それらの複合体(例えば、塩)が室温、例えば、15℃~30℃及び相対湿度40%~80%、例えば、20℃~25℃及び相対湿度50%で貯蔵される場合、遷移状態ではなく、むしろ、実質的に安定な立体配置であることが見い出されている。この文脈では、「実質的に安定」は、最終精製から30分以内にFTIRにより測定した場合(下で論述するとおり)の組成物中の上記(+)-回転異性体及び上記(-)-回転異性体の濃度が、最終精製から4週間後に同じFTIR分析を使用して測定した場合に10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%及び1%からなる群から選択される量よりも大きく変わらないであろうことを意味する。
【0032】
回転異性体組成物を含む医薬組成物
上記回転異性体組成物は、医薬組成物として、(i)回転異性体過剰の(+)-回転異性体を含む1種または複数のオルチプラズ複合体(例えば、塩)、(ii)回転異性体過剰の(-)-回転異性体を含む1種または複数のオルチプラズ複合体(例えば、実施例2及び7~11の複合体)、または(iii)(i)及び(ii)の混合物のいずれかとして調製することができる。上の医薬組成物(i)~(iii)は本明細書において、「回転異性体医薬組成物」と称される。そのような回転異性体医薬組成物を、乾燥または液体組成物で投与することができる。経口投与用の上記回転異性体医薬組成物の製剤を口内洗浄薬、または炭酸液、または口腔スプレーもしくはエアロゾル、または口腔軟膏剤、ゲル、またはクリームとして提示することもできる。
【0033】
ある特定の態様では、経口投与、例えば、頬側投与のために回転異性体医薬組成物を製剤化するために適した液体には、水性及び非水性担体、例えば、水;生理食塩水;バッファー液;有機溶媒、例えば、アルコール(例えば、エタノール)、グリコール、脂肪族アルコール;水及び有機溶媒の混合物、ならびに有機溶媒の混合物(任意選択で、水も含む);脂質ベースの物質、多糖ベースの物質、ならびに口腔への投与に適した他のビヒクル及びビヒクル構成成分、さらには、上で同定したとおりか、または別段に当技術分野で公知の頬側ビヒクル構成成分の混合物が含まれ得る。
【0034】
経口投与に有用な液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン剤、懸濁剤、シロップ剤及びエリキシル剤が含まれる。活性成分に加えて、液体剤形は、当技術分野で一般に使用される不活性な希釈剤を含有してもよい。不活性な希釈剤の他に、口腔組成物は、補助剤、例えば、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤(乳剤及び懸濁剤のために)、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤及び防腐剤を含むこともできる。
【0035】
回転異性体医薬組成物の経口投与に適した回転異性体医薬組成物の代替の態様には、それぞれ活性成分として本明細書に記載のとおりの回転異性体医薬組成物の量を含む所定量の組成物を含有する、カプセル剤(スプリンクルカプセル剤及びゼラチンカプセル剤を含む)、サシェ剤、スティックパック剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤、凍結乾燥剤、散剤、顆粒剤、埋め込み注射用組成物の形態での、または例えば、注射もしくは注入に適した組成物を含む水性もしくは非水性液体中の液剤もしくは懸濁剤としての、または水中油型もしくは油中水型液体乳剤としての、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤としての、または香錠及び/または口内洗浄剤などとしての組成物が含まれる。組成物または化合物を、ボーラス剤、舐剤またはペースト剤として投与してもよい。
【0036】
経口投与用の固体剤形(カプセル剤(スプリンクルカプセル剤及びゼラチンカプセル剤を含む)、錠剤、丸剤、糖剤、散剤、顆粒剤など)を調製するために、上記回転異性体医薬組成物の量を含む組成物を、1種または複数の薬学的に許容される担体、及び/または充填剤または増量剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、溶解遅延剤、吸収促進剤、湿潤剤、吸収剤、滑沢剤、錯生成剤、及び着色剤のいずれかと混合することができる。上記回転異性体医薬組成物はさらに、上記製剤の安定性または有効性を改善するために適用される構成成分を含んでもよい。カプセル剤(スプリンクルカプセル剤及びゼラチンカプセル剤を含む)、錠剤及び丸剤の場合には、上記回転異性体医薬組成物は、緩衝剤も含んでよい。同様の種類の固体組成物は、公知の添加剤を使用して、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル剤における充填剤として使用することもできる。
【0037】
上記回転異性体医薬組成物の錠剤、及び他の固体剤形に任意選択で割線を入れる、またはそれらを、コーティング及びシェル、例えば、腸溶コーティング及び当技術分野で周知の他のコーティングを用いて調製することができる。それらをまた、所望の放出プロファイルを得るために、その中の活性成分の遅延または制御放出が得られるように製剤化することもできる。これらの組成物は任意選択で、不透明化剤を含有してもよく、かつ消化管のある特定の部分でのみ、または優先的に、任意選択で遅延して活性成分(複数可)を放出する組成物であってよい。活性成分はまた、適切ならば上記添加剤のうちの1種または複数と共にマイクロ封入された形態であってもよい。
【0038】
局所投与のための回転異性体医薬組成物
一部の態様では、上記回転異性体医薬組成物を局所投与に適し得る製剤に組み込むことができ、かつこれは、局所投与用の保湿剤、湿潤剤、及び他の既知の添加剤を含んでよい。上記局所組成物はまた、皮膚上に施与される貼付剤を介して経皮送達され得、そのような貼付剤は当技術分野で周知である。当業者は、使用することができる他の局所送達組成物及びビヒクルが分かるであろう。
【0039】
直腸/結腸送達のための回転異性体医薬組成物
ある特定の態様では、上記回転異性体医薬組成物を、公知の方法及び組成物を使用して直腸投与のために製剤化して、結腸特異的送達を得ることができる。一般的に述べて、直腸投与経路を介した回転異性体医薬組成物の送達は、坐剤、浣腸剤、軟膏剤、クリーム剤またはフォーム剤を使用することにより達成することができる。坐剤は最も一般的な直腸剤形のものであり、基材は一般に、本質的に脂肪質であるが、水溶性または水混和性基材も利用することができる。望ましい生物学的利用能を達成するために、活性成分は、直腸または結腸粘膜と接触すべきである。
【0040】
直腸投与に適した組成物を調製するために公知である適切な添加剤には、これに限定されないが、ビヒクル、防腐剤、界面活性剤、乳化剤、鉱油、噴射剤、増粘剤、滑沢剤、防腐剤、pH調節剤、キレート化剤、皮膚軟化剤及び/または湿潤剤、透過促進剤、懸濁形成剤または粘膜付着剤またはそれらの組合せが含まれる。ビヒクルには、直腸及び結腸粘膜と適合性であることが公知の水性、非水性またはヒドロアルコール構成成分が含まれ得る。
【0041】
別法では、結腸で活性なオルチプラズを放出するように設計されている回転異性体医薬組成物の経口投与を介して、結腸吸収を達成することができる。そのような組成物は、剤形が結腸内に至るまでの遅延放出をもたらす経口剤形、例えば、丸剤、カプセル剤または液剤であり得る。
【0042】
吸入投与のための回転異性体医薬組成物及びデバイス
他の態様では、上記回転異性体医薬組成物を、吸入可能な形態で、例えば、吸入デバイスで、乾燥粉末形態または液体担体中のいずれかで上記組成物を提供することにより、気道を介して送達することができる。例えば、吸入可能な組成物は、乾燥粉末吸入器に供給される乾燥粉末組成物中に活性な回転異性体医薬組成物を含むことができる。例えば、WO2014177519及びUS20140065219を参照されたい。別法では、吸入可能な組成物は、エタノールなどの液体担体中に活性成分を含み得る。例えば、EP2536412A2を参照されたい。
【0043】
したがって、本開示は(i)上記のとおりの回転異性体医薬組成物、及び(ii)吸入によりそのような組成物を投与するためのデバイスを含むキットも提供する。上記キットは任意選択でさらに、取扱説明書を含む。
【0044】
経口投与のためのデバイス
ある特定の態様では、経口投与用の上記回転異性体医薬組成物の液体製剤を、回転異性体医薬組成物の単回用量の投与を容易にするデバイスを用いて調製及び投与することができる。当技術分野で公知のそのようなデバイスはキャビティーまたはレザバーを含み得て、そこで、乾燥組成物及び液体、例えば、水及び/または非水性溶媒を混合し、次いで、そのデバイスの開口部を介して患者に投与することができる。典型的には、そのようなデバイスは、キャビティーと、キャビティーから区分されているコンパートメントとを含み、そのコンパートメント内に、乾燥粉末が存在し得る。投与時に、上記粉末をコンパートメントからキャビティーまたはまたはレザバーへと放出する。一部のデバイスでは、これは、コンパートメントをキャビティーまたはレザバーから区分するバリアーの破壊によって達成される。その後、粉末を、典型的には振盪により、前もって添加されていたか、またはその時に添加されてよいキャビティー内の液体と混合することができる。キャビティーは、乾燥回転異性体医薬組成物と、乾燥回転異性体医薬組成物を混合して液体組成物を形成することを可能にするのに十分な量の水及び/または非水性溶媒を含む液体量との両方を保持するために十分なサイズのものである。上記液体をパッケージング時に容器に添加して、投与時に一緒に混合することができる乾燥組成物及び液体の両方を含む自給型製品を作製することができる。別法では、上記容器は乾燥回転異性体医薬組成物のみを含有することができ、その後、上記液体を投与前に添加する。上記液体は、下で論述するとおりの香味添加剤を含有してもよい。別法では、乾燥及び液体成分を分離する他の種類のパッケージングを使用することもできる。例えば、上記粉末及び上記液体を、並んでいるか、または重なっていて、破断可能なシールにより分離されている2つのフォームフィルシールパウチ内に密閉することができる。その後、薬物の投与者は、シールを破断し、溶解または懸濁するまで、内容物を2つのコンパートメント間で相互に混合することとなる。
【0045】
上記組成物が実質的に均一になったら(例えば、振盪により)、次いで、これを、作製されたデバイスの開口部を介して、例えば、デバイスの一部を分離して、液体混合物を含有するキャビティーを露出させることにより、患者に投与する。例えば、上記デバイスの一部、例えば、頂部を、ねじ込み部分を容器の別のねじ込み部分からねじ戻すことにより除去し、液体混合物を含有するキャビティーを露出させることができ、次いでこれを患者に投与するか、または患者が投与することができる。そのようなデバイスの例は、米国特許第6,148,996号、米国特許出願公開第20080202949号、及び米国特許第3,156,369号に示されている。そのような単回使用用デバイスを、本明細書に記載の経口投与用液体組成物のために、特に、下記のとおりの口腔粘膜炎またはその症状を予防または処置するために使用することができる。
【0046】
したがって本開示は、(i)上記のとおりの回転異性体医薬組成物、(ii)そのような組成物を経口投与するためのデバイスも提供する。上記キットは任意選択で、取扱説明書をさらに含む。
【0047】
そのようなデバイスでは、上記回転異性体医薬組成物は乾燥形態であってよい。そのような場合、例えば、上記のとおりのコンパートメント内に一緒に存在してもよい乾燥組成物を、上で論述したとおり投与前に、水及び/または他の液体溶媒と混合する(例えば、乾燥組成物を液体に暴露し、振盪することにより)。
【0048】
処置方法
ある特定の態様では、上記回転異性体医薬組成物及びデバイスを、それを必要とするヒトまたは非ヒト動物患者を処置するために使用することができる。上記患者は典型的には、ヒト患者であるが、本開示の回転異性体医薬組成物を、非ヒト動物を処置するために、例えば、獣医学用途で使用することができる。本開示の組成物を、オルチプラズでの処置が公知である疾患及び状態を含む広範囲の様々な疾患及び状態を予防または処置するために使用することができる。そのような疾患及び状態の例には、粘膜炎、HIV、がん、肝炎(HBV及びHCVを含む)、皮膚水疱形成及び単純型表皮水疱症及び関連疾患を含むケラチンベースの皮膚疾患、皮膚炎、炎症性障害または疾患(内皮機能障害及び心臓血管疾患を含む)、悪液質、体重減少、敗血症、造影誘導性腎障害、糖尿病、肥満、PCOS、脂肪症、高脂血症、及び高血圧、慢性腎疾患、肺線維症、低酸素状態、化学物質誘導性肺損傷、呼吸困難障害、アニオンギャップアシドーシス、腎炎、狼瘡、間質性肺疾患、移植片機能障害、肝炎、急性腎損傷、騒音性聴力障害、毒物摂取、網膜障害、神経毒性、がん誘導性損傷、例えば、耳毒性、呼吸器感染症、自閉症、血管痙攣を伴う状態、ならびにn-アセチルシステイン、注射用還元型グルタチオン、または既知の細胞内グルタチオン増強薬の提供により処置可能と考えられている状態が含まれる。
【0049】
典型的には、上記回転異性体医薬組成物を患者に有効量で与える。「有効量」という用語は本明細書では、有意な生物学的応答(例えば、炎症の有意な減少)を生じさせるために十分な量の回転異性体医薬組成物を指すために用いられる。特定の対象及び/または用途で所望の治療応答を達成するために有効である量を投与するように、上記回転異性体医薬組成物の実際の投薬レベルを変動させることができる。もちろん、任意の特定の場合における有効量は、製剤、投与経路、他の薬物または処置との組合せ、処置される状態の重症度、ならびに処置される対象の身体状態及び先行の病歴を含む様々な因子に依存することとなる。
【0050】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語には、ヒト及び動物対象の両方が含まれ、したがって、獣医学での治療的使用が本開示に従って提供される。「処置」または「処置すること」という用語は、これに限定されないが、予防的処置及び治療的処置を含む目的の状態(例えば、粘膜炎、炎症性障害またはがん)の任意の処置に関する。したがって、「処置」または「処置すること」という用語には、これに限定されないが:目的の状態または目的の状態の発生を予防すること;目的の状態の進行を阻害すること;目的の状態のさらなる進展を停止または予防すること;目的の状態の重症度を軽減すること;目的の状態と関連する症状を改善または緩和すること;及び目的の状態または目的の状態と関連する症状の1つもしくは複数を部分的に、実質的に完全に、または完全に退縮させることが含まれる。
【0051】
上記の回転異性体医薬組成物及びデバイスは、粘膜炎に罹患しているか、または例えば、口腔(oral cavity)(口腔(buccal cavity)を含む)内、消化管内、結腸及び/または直腸内、及び/または皮膚上に粘膜炎をもたらし得る放射線処置または化学療法などの処置を受けることになっている患者を処置するために適している。粘膜炎が口腔粘膜炎である場合、口腔送達のために上記した組成物及びデバイスが好ましくあり得る。そのような患者は例えば、化学療法及び/または放射線療法、例えば、頭頚部領域で、または身体の別の領域に放射線処置を受けていてもよいし、または受けようとしていてよい。
【0052】
上記回転異性体医薬組成物及びデバイスは、ヒトまたは非ヒト動物患者において次の有益効果、すなわち、(i)口腔粘膜炎を含む粘膜炎(例えば、粘膜の炎症)の発症を予防的に妨げる、または遅延させる、(ii)口腔粘膜炎を含む既存の粘膜炎を処置する、(iii)口腔粘膜炎を含む粘膜炎と関連する症状を緩和する、(iv)口腔粘膜炎を含む既存の粘膜炎の重症度を軽減する、または下げる、(v)口腔粘膜炎を含む粘膜炎の治癒または修復を促進する、(vi)口腔粘膜炎、例えば、軽度、中等度及び重度口腔粘膜炎を含む粘膜炎の発生率及び/または持続期間を減少させる、(vii)口腔粘膜炎を有する患者による体重減少または悪液質の発症を予防的に妨げる、または遅延させる、(viii)口腔粘膜炎を有する患者が経験する体重減少または悪液質の量を減少させる、及び/または(ix)口腔粘膜炎を有する患者の、口から食物を摂取する能力を上昇させる効果のうちの1つ、1つより多く、またはすべてを達成するために使用することができる。そのような組成物はまた、嚥下障害(嚥下困難)を患者、例えば、がん患者で予防及び/または処置するために、または嚥下障害の発症を遅延させるために、または例えば、がん患者において嚥下障害の重症度を軽減するために使用することができる。そのような組成物はまた、患者において口内乾燥(口腔乾燥の主観的感覚)を予防及び/または処置するために、または口内乾燥の発症を遅延させるために、口内乾燥の重症度を軽減するために、及び/または中等度から重度の口内乾燥の発生率を低下させるために使用することができる。ある特定の態様では、上記単回使用デバイスを液体組成物の投与のために使用して、口腔粘膜炎、嚥下障害及び口内乾燥に関連する上記のうちの1つ、1つより多く、またはすべてを達成することができる。有利には、製剤はまた、非刺激性で、良好に忍容性で、味がよく(経口投与の場合)、非細胞傷害性で、弱感作性または非感作性で、非感作性である。
【0053】
本明細書のある特定の態様は、粘膜炎を処置するための方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の本明細書に記載のとおりの回転異性体医薬組成物を投与することを含む上記方法を提供する。本開示はまた、粘膜炎の処置において使用するための、本明細書に記載のとおりの回転異性体医薬組成物を提供する。本開示はまた、粘膜炎を処置するための医薬品の製造における、本明細書に記載のとおりの回転異性体医薬組成物の使用を提供する。患者への上記製剤の投与は、頬側投与を含む経口投与であってよい。本明細書に記載の投与方法は、所定の期間、例えば、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月以上の処置レジメンであってよい。本開示による回転異性体医薬組成物を1日1回、1日2回、1日3回、または必要に応じて施与または投与することができる。患者が化学療法及びまたは放射線療法を受ける状況では、投薬量を、処置前に、例えば、処置前1時間以内、3時間以内、6時間以内、12時間以内、24時間以内に、または24時間より前に投与することができる。例えば、投与を、化学療法、放射線療法及び/または化学放射線療法を受ける数日前に開始することができる。例えば、患者は、治療開始の3日前に開始して1日1回、または1日1回より多くの処置を受け始めることができ、次いで、治療が投与されない日を含めて、処置経過中毎日投与を受ける。処置を受けることになっている日には、例えば、投与は、治療前に、例えば、治療が投与される前1時間以内に与えられる。治療を受けない日には、投与をその日のうちの任意の時間に、例えば、午前中に与えることができる。加えて、または別法では、投薬を、処置後に、例えば、処置後1時間以内、3時間以内、6時間以内、12時間以内、24時間以内、または処置の24時間超後に投与することができる。
【0054】
したがって、本開示は、粘膜炎を処置する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の上記の回転異性体医薬組成物を投与することを含む上記方法を提供する。本開示はまた、粘膜炎の処置において使用するための、上記のとおりの回転異性体医薬組成物を提供する。本開示はまた、粘膜炎を処置するための医薬品の製造における、本明細書に記載のとおりの回転異性体医薬組成物の使用を提供する。患者への回転異性体医薬組成物の投与は、頬側投与を含む経口投与であってよい。
【0055】
液体組成物を投与する場合、上記組成物を経口または非経口で、例えば、皮下、筋肉内、胸骨内、または静脈内注射により投与することができる。経口投与を用いる場合、上記液体組成物は単純に嚥下され得るか、またはこれを「すすいで飲み込む(swish and swallow)」レジメンもしくは「すすいで吐きだす(swish and spit)」レジメンにより投与することができる。上記組成物を液体形態で、口腔粘膜炎を有するか、または口腔粘膜炎を発症するリスクのある(例えば、化学療法、放射線療法及び/または化学放射線療法を受けているか、または受けようとしている)患者に経口投与することにより、上記組成物は、上記のとおりの粘膜炎に関して治療効果を与えることができる、すなわち、粘膜炎の発症を予防的に妨げるか、または遅延させる、既存の粘膜炎を処置する、粘膜炎と関連する症状(例えば、炎症及び粘膜出血)を緩和または減少させる、既存の粘膜炎の重症度を軽減する、または下げる、粘膜炎の持続期間を減少させる、及び/または粘膜炎の治癒または修復を促進することができる。そのような場合、負電荷を有する成分、例えば、陽イオン性界面活性剤またはポリマー、例えば、Eudragit RLを含む液体組成物は、正電荷を有する傾向のある口腔との接着または会合を与えることにより、さらなる利点をもたらし得る。本明細書に記載の組成物の態様の物理的及び化学的特性は、上記製剤に、安定性、粘膜への活性薬剤の送達、及び投与の容易さなどの特徴を付与し得る。
【0056】
上述のとおり、本明細書に記載のとおりの回転異性体医薬組成物を他の治療薬と共に一緒に、または別々に、治療レジメンの一部として同時投与することができる。そのような薬剤には、Nアセチルシステイン及び/または他の抗酸化剤、パントテン酸(ビタミンB5)またはグルタチオン合成を増強する他の薬剤、グルタチオン(例えば、局所投与で)、Medihoney(局所投与で)、クルクミン(局所投与で)または他のNF-カッパB阻害薬、メサラミン及び/または他の抗炎症薬(例えば、経口または直腸投与組成物で)、及びスーパーオキシドジスムターゼまたは反応性O2
-(超酸化物)による損傷を阻止する他の化合物が含まれる。
【実施例】
【0057】
本開示のある特定の態様を、次の実施例によりさらに例示するが、これらは、添付の特許請求の範囲を何らかの形で限定するものと解釈されるべきではない。
【0058】
実施例1:オルチプラズ:(+)回転異性体の塩酸塩を作製する方法
合成オルチプラズ粉末20mg(ST-617-API、下に論述)を、アセトニトリル:水を使用して再結晶化させ、ゴム隔膜を備えた5mlガラスバイアルに添加する。バイアルに、無水クロロホルム1mlを室温で添加し、溶液が透明になるまで、バイアルを振動台の上に置く。ガスシリンジを用いて、無水塩酸ガス5mlを5分かけて、バイアルを間欠的に振盪しながら溶液にゆっくり吹き込む。すべてのHClガスを添加したら、バイアルを5分間にわたって振盪し、隔膜を取り外し、窒素ガスのゆっくりとした定常流下で溶媒を穏やかに蒸発させて、オルチプラズの塩酸塩複合体をオレンジ/赤色の固体として得る。FTIR:C=Sピーク1203/1211(相対強度3:7)及び433/421(相対強度2:8)。
実施例2:オルチプラズ:(-)-回転異性体のヒドロキシマレイン酸無水物複合体を作製する方法
合成オルチプラズ粉末20mgを、アセトニトリル:水を使用して再結晶化させ、ゴム隔膜を備えた10mlガラスバイアルに添加する。すべての水分を、ガスシリンジを使用して窒素ガスによりバイアルから除去する。バイアルを氷浴に入れ、これに、予め冷却(10℃)しておいた超脱水アセトン5ml中の(+)-ジアセチル-L-酒石酸無水物22mgの溶液を添加し、振動テーブル上で5分間にわたって振盪し、5分後に、氷酢酸0.5mlを30秒かけて、シリンジを使用して添加する。間欠的に振盪しながら0~10℃での4時間後に、バイアルを室温にする。隔膜を取り外し、窒素ガスのゆっくりとした定常流下で溶媒を穏やかに蒸発させて、オルチプラズのヒドロキシマレイン酸無水物複合体(
図5を参照されたい)をオレンジ色の固体として得る。上記複合体をエチルエーテルで3回洗浄して、痕跡量の酢酸を除去する。FTIR:C=Sピーク1201/1214(相対強度8:2)及び434/423(相対強度8:2)。上記オルチプラズ複合体のサンプル2mgをKBRと共に摩砕し、Perkin Elmer1600シリーズのFTIRでのFTIR分析のための標準的なペレットに作製する。
【0059】
実施例3:オルチプラズ:(+)回転異性体の塩化アセチル複合体を作製する方法
合成オルチプラズ粉末20mgを、アセトニトリル:水を使用して再結晶化させ、ゴム隔膜を備えたガラスバイアルに添加する。バイアルに、無水クロロホルム10mlを室温で添加し、溶液が透明になるまで、バイアルを振動台の上に置いた。シリンジを用いて、無水塩化アセチル5mlを、バイアルを間欠的に振盪しながら溶液にゆっくり添加する。すべての塩化アセチルを添加したら、バイアルを15分間にわたって振盪し、隔膜を取り外し、窒素ガスのゆっくりとした定常流下で溶媒及び過剰の試薬を穏やかに蒸発させて、オルチプラズの塩化アセチル複合体をオレンジ色の固体として得る。FTIR:C=Sピーク1202/1212(相対強度3:7)及び432/422(相対強度2:8)。
【0060】
実施例4:オルチプラズ:(+)回転異性体の塩化n-ブチル複合体を作製する方法
合成オルチプラズ粉末20mgを、アセトン:水を使用して再結晶化させ、ゴム隔膜を備えたガラスバイアルに添加する。バイアルに、無水クロロホルム10mlを室温で添加し、得られる溶液が透明になるまで、バイアルを振動台の上に置いた。シリンジを用いて、塩化n-ブチル5mlを、バイアルを間欠的に振盪しながら溶液にゆっくり添加する。すべての塩化n-ブチルを添加したら、バイアルを65℃に加温し、30分間にわたって振盪し、隔膜を取り外し、窒素ガスのゆっくりとした定常流下で溶媒及び過剰の試薬を穏やかに蒸発させて、オルチプラズの塩化n-ブチル複合体を赤色の固体として得る。FTIR:C=Sピーク1201/1213(相対強度2:8)及び433/421(相対強度2:8)。
【0061】
実施例5:オルチプラズ:(+)回転異性体のヨウ化メチル複合体を作製する方法
合成オルチプラズ粉末50mgを、アセトン:水を使用して再結晶化させ、スクリューシールを備えた圧力定格ガラスボトルに添加する。バイアルに、無水クロロホルム20mlを室温で添加し、得られる溶液が透明になるまで、バイアルを振動台の上に置いた。シリンジを用いて、ヨウ化メチル10mlを、バイアルを間欠的に振盪しながら溶液にゆっくり添加する。すべてのヨウ化メチルを添加したら、バイアルを密閉し、圧力下で120℃に加熱し、3時間(「hrs」)にわたって振盪し、バイアルを冷却し、開放し、窒素ガスのゆっくりとした定常流下で溶媒及び過剰の試薬を穏やかに蒸発させて、オルチプラズのヨウ化メチル複合体を赤/茶色の固体として得る。FTIR:C=Sピーク1197/1214(相対強度2:8)及び431/419(相対強度2:8)。
【0062】
実施例6:オルチプラズ:(+)回転異性体の塩化ベンゾイル複合体を作製する方法
粗製のオルチプラズ粉末20mgを、ゴム隔膜を備えたガラスバイアルに添加する。バイアルに、無水クロロホルム10mlを室温で添加し、得られる溶液が透明になるまで、バイアルを振動台の上に置いた。シリンジを用いて、無水塩化ベンゾイル1mlを、バイアルを間欠的に振盪しながら溶液にゆっくり添加する。すべての塩化ベンゾイルを添加したら、バイアルを15分間にわたって振盪し、隔膜を取り外し、10mmHg真空下で溶媒及び過剰の試薬を穏やかに蒸発させて、オルチプラズの塩化ベンゾイル複合体を赤色の固体として得る。FTIR:C=Sピーク1200/1213(相対強度3:7)及び431/419(相対強度3:7)。
【0063】
実施例7:オルチプラズ:(-)回転異性体のジチオリン酸ジエチル複合体を作製する方法
合成オルチプラズ粉末22mgを、アセトン:水を用いて再結晶化させ、電磁式撹拌機及び冷水凝縮器を備えたガラス丸底フラスコに添加する。フラスコにアセトン10mlを室温で添加し、撹拌を継続しながら、ジチオリン酸ジエチルアンモニウム塩20mgを溶液にゆっくり添加する。すべてのジチオリン酸ジエチルを添加したら、温度を上昇させ、3時間にわたって還流する。放出されたアンモニアを凝縮器の頂部から、希塩酸トラップに捕捉する。3時間後に、溶媒を除去して、オルチプラズのジチオリン酸ジエチル複合体をオレンジ/赤色の固体として得る。FTIR:C=Sピーク1201/1220(相対強度9:1)及び472/444(相対強度8:2)。
【0064】
実施例8:オルチプラズ:(-)回転異性体のチオリン酸ジエチル複合体を作製する方法
合成オルチプラズ粉末22mgを、アセトン:水を用いて再結晶化させ、電磁式撹拌機及び冷水凝縮器を備えたガラス丸底フラスコに添加する。フラスコにアセトン10mlを室温で添加し、撹拌を継続しながら、チオリン酸ジエチルアンモニウム塩19mgを溶液にゆっくり添加する。すべてのチオリン酸ジエチルを添加したら、温度を上昇させ、3時間にわたって還流する。放出されたアンモニアを凝縮器の頂部から、希塩酸トラップに捕捉する。3時間後に、溶媒を除去して、オルチプラズのジチオリン酸ジエチル複合体をオレンジ/赤色の固体として得る。FTIR:C=Sピーク1208/1221(相対強度9:1)及び479/442(相対強度9:1)。
【0065】
実施例9:オルチプラズ:(-)回転異性体のリン酸ジメチル複合体を作製する方法
リン酸トリメチル175mgを粗製オルチプラズ100mg(純度95%)と共に、凝縮器及び撹拌機を備えた丸底フラスコに装入し、72時間にわたって80℃で加熱した。72時間後に、混合物を室温に冷却し、トルエン50mlで5回洗浄する。オレンジ/赤色のN-メチルオルチプラズのリン酸ジメチル複合体255gを下の層から収集し、真空下で60℃で乾燥させる。FTIR:C=Sピーク1210/1227(相対強度9:1)及び489/453(相対強度9:1)。
【0066】
実施例10:オルチプラズ:(-)回転異性体のイセチオン酸複合体を作製する方法
粗製オルチプラズ粉末22mgを、電磁式撹拌機及び冷水凝縮器を備えたガラス丸底フラスコに添加する。フラスコにアセトン10mlを室温で添加し、撹拌を継続しながら、イセチオン酸アンモニウム塩30mgを溶液にゆっくり添加する。すべてのイセチオン酸アンモニウム塩を添加したら、温度を上昇させ、6時間にわたって還流する。放出されたアンモニアを凝縮器の頂部から、希塩酸トラップに捕捉する。6時間後に、反応物を、最小量の濃塩酸でpH6.8にし、得られた混合物を真空下で蒸発乾固させて、オルチプラズのイセチオン酸複合体を赤/茶色の固体として得る。FTIR:C=Sピーク1216/1228(相対強度9:1)及び464/435(相対強度9:1)。
【0067】
実施例11:オルチプラズ:(-)回転異性体のチオ安息香酸複合体を作製する方法
粗製オルチプラズ粉末20mgを、ゴム隔膜を備えたガラスバイアルに添加する。バイアルに、無水クロロホルム10mlを室温で添加し、得られる溶液が透明になるまで、バイアルを振動台の上に置く。シリンジを用いて、チオ安息香酸アンモニウム塩1mlを、バイアルを間欠的に振盪しながら溶液にゆっくり添加する。すべてのチオ安息香酸アンモニウム塩を添加したら、温度を上昇させ、1時間にわたって還流する。放出されたアンモニアを凝縮器の頂部から、希塩酸トラップに捕捉する。1時間後に、内容物を真空下で除去して、オルチプラズのチオ安息香酸複合体をオレンジ色の固体として得る。FTIR:C=Sピーク1210/1223(相対強度9:1)及び474/438(相対強度9:1)
【0068】
実施例12:H2O2誘導性酸化ストレスを受けたHGEPp細胞におけるROS産生に対する、(+)及び(-)回転異性体の効果
活性酸素種(ROS)の形成は酸化ストレスを示す。酸化ストレスの増大と一体となったROSの蓄積は、多くの疾患の病因に関係しており、その1つが粘膜炎である。Sonis,A biological approach to mucositis,J Support Oncol 2004;2:21-36;Halliwell & Whiteman,Measuring reactive species and oxidative damage in vivo and in cell culture: how should you do it and what do the results mean?,British J.Pharmacology,Volume 142,Issue 2,May 2004,231-255;及びIglesias-Bartolome et al.,mTOR Inhibition Prevents Epithelial Stem Cell Senescence and Protects from Radiation-Induced Mucositis,Cell Stem Cell 11,401-414,September 7,2012)を参照されたい。遊離ラジカル及び他の反応種がin vivoで絶えず生成されており、複数の抗酸化物質及び修復システムにより阻止されるプロセスである生体分子に対する酸化的損傷をもたらす。
【0069】
HGEPp細胞を使用して細胞内ROSに対するオルチプラズ及び製剤化オルチプラズ結晶の効果を決定するアッセイは、PCT/IB2017/001312(出願人ST IP Holding AGに付与されたWO2018/047013として公開)の実施例7に記載されている。製剤化オルチプラズ結晶を、PCT/IB2017/001312の実施例1に記載のプロセスにおおむね従って調製した(約350nm未満のMHD)。その同じアッセイを、上の実施例1~11で調製した回転異性体組成物で実施して、過酸化水素(H
2O
2)により誘導される酸化的損傷から初代ヒト歯肉上皮細胞(HGEPp)細胞を防御することに対するそれらの効果を決定した。
条件:
【表1】
【0070】
結果:
ST-617-DPI及び実施例1~11の回転異性体複合体での上記アッセイの結果を下の表1に示す。下の表1に報告されているST-617-API(WO2016207914に開示のプロセスに従って調製した再結晶化オルチプラズ)での結果は、PCT/IB2017/001312の
図9(100μg/mLで前処理)から得ている。
表1
【表2】
【0071】
対照(139%)と比較した場合の、アッセイにおいて100μg/mLのST-617-DPIで処理された細胞群でのROSレベルの低下(122%)は、100μg/mLでのPCT/IB2017/001312で報告された結果(123%)、及びこのアッセイでST-617-DPIで得られた他の結果と一致した。(+)回転異性体複合体は、ROSの中程度の減少をもたらしたが、(-)回転異性体複合体は、かなりの減少をもたらした。(-)回転異性体でのアッセイ結果は、90%信頼水準で統計学的に有意であった。
【0072】
実施例13:ST-617-DPI、ST-617-API及び実施例1~11の回転異性体複合体で処理した後のHGEPp細胞における酸化ストレス関連遺伝子の示差的制御
Nrf2システム(上で論述)は、phase II解毒酵素及び抗酸化酵素をコードする遺伝子を活性化することによる、酸化的損傷に対する主な細胞防御機構であると考えられている。そのような酸化的損傷の1つが、化学療法処置中及びその後に、特に頭頚部癌処置において生じる口腔粘膜炎である。ヒト酸化ストレスPCRアレイを使用して、HGEPp細胞内で100ug/mlの、PCT/IB2017/001312の実施例1に記載のプロセスにおおむね従って調製した製剤化オルチプラズ組成物(約350nm未満のMHD)、上の実施例1~11に記載の回転異性体複合体、及び陰性対照(オルチプラズを含まない製剤化オルチプラズ組成物)で前処理した後の84のストレス遺伝子の相対発現を評価した。
【0073】
材料
HGEPp細胞は、CellnTec Advanced Cell Systems AGから購入した。RNEasy Plus Micro Kitは、Qiagen N.V.、USAから購入した。RNase-free DNase SetはQiagen N.V.、USAから購入した。RT2 Easy First Strand Kit(DNA generator)及びRT2 SYBR(登録商標)Green fluor qPCR mastermixは、Qiagen N.V.、USAから購入した。Oxidative Stress RT2 profiler PCRアレイ(84の防御遺伝子)はQiagen N.V.、USAから購入した。Bio-Rad Inc.、USAからのiCycler PCRシステムをRT-PCRのために使用した。
【0074】
方法
細胞培養:
貯留した初代HGEPp細胞を、CellnTecが提供するCnT-Prime上皮培養培地中で、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中で希釈した30mg/mlのI型ラット尾コラーゲン(BD Biosciences)でコーティングした100mmペトリ皿上で成長させた。HGEPp細胞を12×60mm Nunc(商標)Cell Cultureディッシュ中で、2.5×104細胞/cm2密度濃度で成長させた。
【0075】
投与溶液の調製:
製剤化オルチプラズ結晶(ST-617-DPI)を、PCT/IB2017/001312の実施例1に記載のプロセスにおおむね従って調製した。再結晶化オルチプラズを、WO2016207914 ST-617-APIに開示のプロセスに従って調製した。ST-617-DPI、ST-617-API及び実施例1~11の回転異性体複合体をDMSOに溶解させて、100μg/mlの最終濃度を達成した。すべての投与溶液は、HGEPp細胞では0.8%の最大許容DMSOパーセントよりも十分に低いDMSO0.3%を含有した。
ST-617-DPI及び回転異性体複合体溶液でのHGEPp細胞の前処理:
1. 対照曲線の直線部内のOD吸光度を得るために、ディッシュ細胞濃度を、2.5×105/mlであるように選択した。
2. ディッシュ上でHGEPp細胞を培養し、用意ができたら(コンフルエンスに達したら)、培地を除去し、廃棄した。細胞をDPBSで2~3回穏やかに洗浄し、最後の洗浄液を除去し、廃棄した。
3. 次いで、HGEPp細胞培養皿を24時間にわたって、100μg/mL濃度のST-617-API、ST-617-DPI及び回転異性体複合体で(2連で)、37℃で前処理した。
HGEPp細胞からのmRNAの調製:
RNeasy UCP Micro Kitを使用して、HGEPp細胞からmRNAを精製した。
1. 処理剤を廃棄及び洗浄した後に、細胞を遠心管内で1000RPMで5分間にわたって遠心することによりペレット化した。すべての上清を吸引により慎重に除去して、すべての細胞培地が完全に除去されていることを確実にした。
2. 細胞をバッファーRULT350μlを添加することにより破壊して、細胞ペレットを管から注意して離し、ボルテックス処理して十分に混合し、溶解産物をRNアーゼ非含有シリンジに装着した20ゲージ針に5回通過させることにより混合物を均質化した。
3. 70%エタノール350μlを溶解産物に添加し、再びピペット処理により混合した(一部の沈澱物が見えるが、アッセイには問題ない)。
4. 形成されていてもよい何らかの沈澱物を含むサンプルを、2ml捕集管内に設置されたRNeasy UCP MinEluteスピンカラムに移し、10,000rpmで15秒間にわたって遠心した。通過画分を廃棄した。
5. バッファーRUWT350μlをスピンカラムに添加し、10,000rpmで15秒間にわたって遠心して、膜を洗浄した。通過画分を廃棄した。
6. DNase Iストック溶液10μlをバッファーRDD70μlに添加した。穏やかに混合し、DNアーゼIミックス80ulを直接、スピンカラム膜に添加し、15分間にわたってボルテックス処理した。
7. バッファーRUWT350μlをスピンカラムに添加し、10,000rpmで15秒間にわたって遠心して、これを洗浄し、通過画分を廃棄した。
8. スピンカラムを新たな2ml捕集管に設置し、バッファーRUPE500μlを添加し、10,000rpmで15秒間にわたって遠心した。通過画分を廃棄した。
9. スピンカラムを再び80%エタノール500μlで洗浄し、これを新たな2ml捕集管内に設置し、蓋をあけたままで全速で5分間にわたって遠心して、すべてのエタノールを確実に除去する。
10. スピンカラムを新たな1.5ml捕集管に設置し、超純水14μlを直接、スピンカラム膜の中心に添加し、蓋を閉め、全速で1分間にわたって遠心して、RNAを溶離した。スピンカラムの死容積は4μlである。超純水16μlで溶離して、RNA溶離液20μl(4μg)を得た。
RT-PCRのためのcDNAの調製:
1. 上の処理のそれぞれからのRNAサンプルをバッファーGE2(gDNA除去バッファー)40μl及びRNアーゼ非含有H2Oに添加して、60μlの最終体積にした。
2. 37℃で5分間にわたってインキュベートし、直ちに、2分間にわたって氷上に置いた。
3. BC5 Reverse Transcriptase Mix62μlを各RNAサンプル60μlに、102μlの最終体積で添加した。
4. 42℃で正確に15分間にわたってインキュベートし、次いで直ちに、95℃で5分間にわたって加熱することにより反応を停止させた(必要ならば、qPCRまで氷上で保持)。
【0076】
ヒト酸化ストレスRT2 profiler PCRアレイ:
RT-PCRは、遺伝子発現分析のための高感度かつ信頼可能な方法である。上記アッセイは、24時間にわたって100μg/mlのST-617-API、ST-617-DPI及び回転異性体複合体で前処理されたHGEPp細胞において、酸化ストレスに関連する84の遺伝子の発現レベルを分析するために、信頼して使用することができた。上記からのcDNAをRT2 SYBR Green fluor Mastermixと混合し、RT2 profiler PCRアレイのウェルにアリコットした。RT-PCRをiCyclerで行った。遺伝子発現を、Ct値を使用して比較し、結果を、ΔΔCt法を使用して計算し、5つの共通遺伝子(ACTB、B2M、GAPDH、HPRT、及びRPL13A)の平均発現レベルに対して正規化した。
【0077】
結果:
ST-617-DPI及び実施例1~11の回転異性体複合体でのアッセイの結果を下の表2に示す。下の表2に報告されているST-617-API(WO2016207914に開示のプロセスに従って調製された再結晶化オルチプラズ)での結果は、上記のとおりに行われた先行アッセイからの結果である。
表2
【表3】
【0078】
陰性対照は、いずれの遺伝子制御においても変化を示さなかった。すべての回転異性体が、(+)回転異性体よりも(-)回転異性体について高い遺伝性制御応答を示した。2種の回転異性体の間での最高の倍数変化は、SOD1、GCLC、GCLM及びUCP2についてであった。グルタチオン(GSH)生合成遺伝子であるGCLC及びGCLM遺伝子が(+)と(-)の回転異性体の間で有意に一貫した差異を示したことは注目すべきである。これらの結果は、ST-617-DPIを投与されて、頭頚部癌のための放射線療法を受けている間に軽い口腔粘膜炎の発生を経験した治験中の患者で観察された血清中GSHの上昇と相関する。(-)回転異性体は、ALOX12、SOD1、NQO1、GCLC及びGSTP1について、ST-617-APIと比較して高い遺伝子上方制御応答を示した。(-)回転異性体は、SOD1、NQO1、GCLC、GSTP1及びGCLMについて、ST-617-DPIと比較して高い遺伝子上方制御応答を示した。(-)回転異性体のうち、リン酸ジメチル及びイセチオン酸複合体(それぞれ実施例9及び10)は、SOD1、NQO1、GCLC、GSTP1及びGCLMについて、ST-617-DPI及びST-617-DPIと比較して有意に高い上方制御を示した。(-)回転異性体はまた、ST-617-DPI及びST-617-APIと比較して、UCP2(ミトコンドリア由来ROSの制御に関係するミトコンドリア脱共役タンパク質2)の示差的下方制御を示した。
【0079】
したがって、本開示の回転異性体医薬組成物及びその回転異性体医薬組成物を投与する方法は、細胞内活性酸素種(ROS)を減少させる、及び/または酸化ストレスを減少させるために、化学療法または放射線療法などの酸化ストレスを与える処置を受ける患者を含む任意のヒトまたは非ヒト動物患者を処置するために使用することができる。
【0080】
本開示の回転異性体医薬組成物及びその回転異性体医薬組成物を投与する方法は、抗酸化作用を得るために、化学療法または放射線療法などの酸化ストレスを与える処置を受ける患者を含む任意のヒトまたは非ヒト動物患者を処置するために使用することができる。本開示の回転異性体医薬組成物及びその回転異性体医薬組成物を投与する方法はまた、化学療法または放射線療法などの酸化的損傷を与える処置を受ける患者を含む患者において、酸化的損傷(例えば、口腔粘膜炎を含む粘膜炎)の発症を遅延させる、及び/または重症度を軽減する、及び/または持続期間を減少させるために使用することができる。
【0081】
上の結果に基づきさらに、(+)回転異性体が回転異性体過剰で存在する組成物を含めて、(+)回転異性体は、Nrf2経路と関連する遺伝子を上方制御し得ると考えられる。上の結果に基づきさらに、(-)回転異性体が回転異性体過剰で存在する組成物を含めて、(-)回転異性体は、Nrf2経路と関連する遺伝子を上方制御し得ると考えられる。
態様の列挙
1. 回転異性体過剰の4-メチル-5-(ピラジン-2-イル)-3H-1,2-ジチオール-3-チオンの(+)回転異性体(オルチプラズ、
図4Aを参照されたい)を含む組成物。
2. 回転異性体過剰の上記(+)回転異性体を有する1種または複数のオルチプラズ複合体(例えば、オルチプラズの1種または複数の塩)を含む、態様1に記載の組成物。
3. 上記1種または複数のオルチプラズ複合体が、N置換ピラジニウムイオン及び会合アニオンを生成する、オルチプラズのピラジニル環のアルファ窒素への基の付加(例えば、HCl、アルキルハロゲン化物またはアシルハロゲン化物の可逆的付加)から生じる、N置換ピラジニウムイオン及び会合アニオンを生成する、オルチプラズのピラジニル環のアルファ窒素への基の付加から生じる塩を含む、態様2に記載の組成物。
4. 上記1種または複数のオルチプラズ複合体が、アルキルハロゲン化物、アルケニルハロゲン化物、アルキニルハロゲン化物、アシルハロゲン化物、ベンゾイルハロゲン化物、及びその組合せからなる群から選択される1種または複数の反応物(例えば、HCl、塩化メチル、置換または非置換メチル、置換または非置換ホルミル、置換または非置換アセチル、置換または非置換ベンゾイル、置換及び非置換ブチルからなる群から選択される1種または複数の反応物)のオルチプラズのピラジニル環のアルファ窒素への付加により形成される少なくとも1種のオルチプラズ複合体を含む、態様3に記載の組成物。そのようなオルチプラズ複合体は、オルチプラズを例えば、それぞれ塩化ホルミル、塩化アセチル、塩化ベンゾイル、及びヨウ化n-ブチル、ヨウ化メチル、及びそれらの組合せと反応させることにより形成することができる。そのような態様では、上記ホルミル、アセチル、ベンゾイル及びブチル基は、ピラジン環の2または4位の窒素原子と会合してよく、例えば、ハロゲン(例えば、FまたはCl)及び/または低級アルキル(C1~C6アルキル)から選択される1個または複数の置換基を有してよい。
5. 上記(+)回転異性体の回転異性体過剰が、30~40%の過剰、40~50%の過剰、50~60%の過剰、及び60~70%の過剰、70~80%の過剰、及び80%超の過剰からなる群から選択される範囲である、態様1~4のいずれかに記載の組成物。
6. オルチプラズ複合体を含む組成物であって、上記オルチプラズ複合体が、過剰の4-メチル-5-(ピラジン-2-イル)-3H-1,2-ジチオール-3-チオン(オルチプラズ)の(-)回転異性体を有する前記組成物。
7. 回転異性体過剰の上記(-)回転異性体を有する1種または複数のオルチプラズ複合体を含む、態様6に記載の組成物。
8. 上記1種または複数のオルチプラズ複合体の少なくとも1種が、ピラジニル環のアルファ窒素と電気陰性原子との間の直接結合を含む、態様7に記載の組成物。
9. 上記電気陰性原子が、酸素、硫黄、及びリンからなる群から選択される、態様8に記載の組成物。
10. 上記1種または複数のオルチプラズ複合体が、ヒドロキシマレアートオルチプラズ複合体を含む、実施形態6~9のいずれかに記載の組成物。
11. 上記1種または複数のオルチプラズ複合体が、オルチプラズを、カルボン酸またはその塩、リン酸またはその塩、アルキルホスファート、アリールホスファート、アルキルスルホン酸またはその塩、アリールスルホン酸またはその塩、置換及び非置換チオカルボン酸またはその塩、ならびに上述の1種または複数の組合せ、例えば、乳酸、タルトロン酸、イソチオン酸、イソセリン、2-メルカプトエタンスルホン酸、タウリン、プロピルホスホン酸、2-アミノエチルホスホン酸、ジチオリン酸ジエチル、チオリン酸ジエチル、リン酸ジメチルからなる群から選択される1種または複数の反応物と反応させることにより形成される1種または複数の複合体を含む、態様6~9のいずれかに記載の組成物。
12. 上記1種または複数のオルチプラズ複合体が、オルチプラズを、乳酸、タルトロン酸、イソチオン酸、イソセリン、2-メルカプトエタンスルホン酸、タウリン、プロピルホスホン酸、2-アミノエチルホスホン酸、ジチオリン酸ジエチル、チオリン酸ジエチル、リン酸ジメチル、及びそれらの組合せからなる群から選択される1種または複数の反応物と反応させることにより形成される1種または複数の複合体を含む、態様6~9のいずれかに記載の組成物。
13. 上記(-)回転異性体の回転異性体過剰が、30~40%の過剰、40~50%の過剰、50~60%の過剰、60~65%の過剰、60~70%の過剰、70~80%の過剰、80~90%の過剰、及び90~100%の過剰からなる群から選択される範囲である、態様6~12のいずれかに記載の組成物。
14. ヒトへの投与に適している、態様1~13のいずれかに記載の少なくとも1つの組成物を含む医薬組成物。
15. 局所投与に適した形態である、態様14に記載の医薬組成物。
16. 直腸投与または吸入による投与に適した形態である、態様15に記載の医薬組成物。
17. 皮下、筋肉内、胸骨内、または静脈内注射に適した形態である、態様14に記載の医薬組成物。
18. 経口投与に適した形態である、態様14に記載の医薬組成物。
19. 散剤、丸剤、錠剤の形態であるか、またはカプセル剤の中に含まれている、態様18に記載の医薬組成物。
20. 液体形態である、態様18に記載の医薬組成物。
21. 処置を必要とするヒトまたは非ヒト動物患者を処置するためのプロセスであって、上記患者に、態様13~20のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む上記プロセス。
22. 前記投与が経口投与を含む、態様21に記載のプロセス。
23. 前記投与が頬側投与を含む、態様21に記載のプロセス。
24. 粘膜炎を予防する、処置する、寛解させる、その重症度を軽減する、及び/またはその持続期間を短縮することを、それを必要とするヒトまたは非ヒト動物患者について行うプロセスであって、態様18~20のいずれかに記載の医薬組成物を経口投与することを含む上記プロセス。
25. 粘膜炎を予防する、処置する、寛解させる、その重症度を軽減する、及び/またはその持続期間を短縮することを、それを必要とするヒトまたは非ヒト動物患者について行うプロセスであって、態様18~20のいずれかに従って調製された医薬組成物を経口投与することを含む上記プロセス。
26. 粘膜炎を予防する、処置する、寛解させる、その重症度を軽減する、及び/またはその持続期間を短縮することを、それを必要とするヒトまたは非ヒト動物患者について行うプロセスであって、上記患者に、態様18~20のいずれかに記載の医薬組成物を経口投与することを含む上記プロセス。
27. 上記粘膜炎が口腔粘膜炎である、態様24~26のいずれかに記載のプロセス。
28. 上記粘膜炎が消化管の粘膜炎である、態様24~26のいずれかに記載のプロセス。
29. 粘膜炎または皮膚炎を予防する、処置する、寛解させる、その重症度を軽減する、及び/またはその持続期間を短縮することを、それを必要とするヒトまたは非ヒト動物患者について行うプロセスであって、態様15に記載の組成物を局所投与することを含む上記プロセス。
30. 粘膜炎を予防する、処置する、寛解させる、その重症度を軽減する、及び/またはその持続期間を短縮することを、それを必要とするヒトまたは非ヒト動物患者について行うプロセスであって、態様16に記載の組成物を直腸投与することを含む上記プロセス。
31. 粘膜炎を予防する、処置する、寛解させる、その重症度を軽減する、及び/またはその持続期間を短縮することを、それを必要とするヒトまたは非ヒト動物患者について行うプロセスであって、態様16に記載の組成物を吸入により投与することを含む上記プロセス。
32. 上記患者が放射線療法を受けている、態様21~31のいずれかに記載のプロセス。
33. オルチプラズのヒドロキシマレイン酸無水物(-)回転異性体を作製するプロセスであって、
(i)無水極性溶媒の存在下でオルチプラズを(+)-ジアセチル-L-酒石酸無水物と反応させて、反応混合物を形成するステップと;
(ii)酢酸を上記反応混合物に添加するステップと
を含む上記プロセス。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
回転異性体過剰の4-メチル-5-(ピラジン-2-イル)-3H-1,2-ジチオール-3-チオン(オルチプラズ)の(+)回転異性体を含む組成物。
(態様2)
回転異性体過剰の前記(+)回転異性体を有する1種または複数のオルチプラズ複合体(例えば、オルチプラズの1種または複数の塩)を含む、態様1に記載の組成物。
(態様3)
前記1種または複数のオルチプラズ複合体が、N置換ピラジニウムイオン及び会合アニオンを生成する、オルチプラズのピラジニル環のアルファ窒素への基の付加から生じる塩を含む、態様2に記載の組成物。
(態様4)
前記1種または複数のオルチプラズ複合体が、オルチプラズと、アルキルハロゲン化物、アルケニルハロゲン化物、アルキニルハロゲン化物、アシルハロゲン化物、ベンゾイルハロゲン化物、及びその組合せからなる群から選択される1種または複数の反応物との反応から形成される少なくとも1種のオルチプラズ複合体を含む、態様3に記載の組成物。
(態様5)
前記(+)回転異性体の回転異性体過剰が、30~40%の過剰、40~50%の過剰、50~60%の過剰、及び60~70%の過剰、70~80%の過剰、及び80%超の過剰からなる群から選択される範囲である、態様1~4のいずれかに記載の組成物。
(態様6)
オルチプラズ複合体を含む組成物であって、前記オルチプラズ複合体が、過剰の4-メチル-5-(ピラジン-2-イル)-3H-1,2-ジチオール-3-チオン(オルチプラズ)の(-)回転異性体を有する前記組成物。
(態様7)
回転異性体過剰の前記(-)回転異性体を有する1種または複数のオルチプラズ複合体を含む、態様6に記載の組成物。
(態様8)
前記1種または複数のオルチプラズ複合体の少なくとも1種が、ピラジニル環のアルファ窒素と電気陰性原子との間の直接結合を含む、態様7に記載の組成物。
(態様9)
前記電気陰性原子が、酸素、硫黄、及びリンからなる群から選択される、態様8に記載の組成物。
(態様10)
前記1種または複数のオルチプラズ複合体が、ヒドロキシマレアートオルチプラズ複合体を含む、態様6~9のいずれかに記載の組成物。
(態様11)
前記1種または複数のオルチプラズ複合体が、オルチプラズを、カルボン酸またはその塩、リン酸またはその塩、アルキルホスファート、アリールホスファート、アルキルスルホン酸またはその塩、アリールスルホン酸またはその塩、置換及び非置換チオカルボン酸またはその塩、ならびに前記の1種または複数の組合せ、例えば、乳酸、タルトロン酸、イソチオン酸、イソセリン、2-メルカプトエタンスルホン酸、タウリン、プロピルホスホン酸、2-アミノエチルホスホン酸、ジチオリン酸ジエチル、チオリン酸ジエチル、リン酸ジメチルからなる群から選択される1種または複数の反応物と反応させることにより形成される1種または複数の複合体を含む、態様6~9のいずれかに記載の組成物。
(態様12)
前記1種または複数のオルチプラズ複合体が、オルチプラズを、乳酸、タルトロン酸、イソチオン酸、イソセリン、2-メルカプトエタンスルホン酸、タウリン、プロピルホスホン酸、2-アミノエチルホスホン酸、ジチオリン酸ジエチル、チオリン酸ジエチル、リン酸ジメチル、及びそれらの組合せからなる群から選択される1種または複数の反応物と反応させることにより形成される1種または複数の複合体を含む、態様6~9のいずれかに記載の組成物。
(態様13)
前記(-)回転異性体の回転異性体過剰が、30~40%の過剰、40~50%の過剰、50~60%の過剰、60~65%の過剰、60~70%の過剰、70~80%の過剰、80~90%の過剰、及び90~100%の過剰からなる群から選択される範囲である、態様6~12のいずれかに記載の組成物。
(態様14)
ヒトへの投与に適している、態様1~13のいずれかに記載の少なくとも1つの組成物を含む医薬組成物。
(態様15)
局所投与に適した形態である、態様14に記載の医薬組成物。
(態様16)
直腸投与または吸入による投与に適した形態である、態様14に記載の医薬組成物。
(態様17)
皮下、筋肉内、胸骨内、または静脈内注射に適した形態である、態様14に記載の医薬組成物。
(態様18)
経口投与に適した形態である、態様14に記載の医薬組成物。
(態様19)
散剤、丸剤、錠剤の形態であるか、またはカプセル剤の中に含まれている、態様18に記載の医薬組成物。
(態様20)
液体形態である、態様18に記載の医薬組成物。
(態様21)
処置を必要とするヒトまたは非ヒト動物患者を処置するためのプロセスであって、前記患者に、態様14~20のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む前記プロセス。
(態様22)
前記投与が経口投与を含む、態様21に記載のプロセス。
(態様23)
前記投与が頬側投与を含む、態様22に記載のプロセス。
(態様24)
粘膜炎を予防する、処置する、寛解させる、その重症度を軽減する、及び/またはその持続期間を短縮することを、それを必要とするヒトまたは非ヒト動物患者について行うプロセスであって、態様18~20のいずれかに記載の医薬組成物を経口投与することを含む前記プロセス。
(態様25)
粘膜炎を予防する、処置する、寛解させる、その重症度を軽減する、及び/またはその持続期間を短縮することを、それを必要とするヒトまたは非ヒト動物患者について行うプロセスであって、態様18~20のいずれかに従って調製された医薬組成物を経口投与することを含む前記プロセス。
(態様26)
粘膜炎を予防する、処置する、寛解させる、その重症度を軽減する、及び/またはその持続期間を短縮することを、それを必要とするヒトまたは非ヒト動物患者について行うプロセスであって、前記患者に、態様18~20のいずれかに記載の医薬組成物を経口投与することを含む前記プロセス。
(態様27)
前記粘膜炎が口腔粘膜炎である、態様24~26のいずれかに記載のプロセス。
(態様28)
前記粘膜炎が消化管の粘膜炎である、態様24~26のいずれかに記載のプロセス。
(態様29)
粘膜炎または皮膚炎を予防する、処置する、寛解させる、その重症度を軽減する、及び/またはその持続期間を短縮することを、それを必要とするヒトまたは非ヒト動物患者について行うプロセスであって、態様15に記載の組成物を局所投与することを含む前記プロセス。
(態様30)
粘膜炎を予防する、処置する、寛解させる、その重症度を軽減する、及び/またはその持続期間を短縮することを、それを必要とするヒトまたは非ヒト動物患者について行うプロセスであって、態様16に記載の組成物を直腸投与することを含む前記プロセス。
(態様31)
粘膜炎を予防する、処置する、寛解させる、その重症度を軽減する、及び/またはその持続期間を短縮することを、それを必要とするヒトまたは非ヒト動物患者について行うプロセスであって、態様16に記載の組成物を吸入により投与することを含む前記プロセス。
(態様32)
前記患者が放射線療法を受けている、態様21~31のいずれかに記載のプロセス。
(態様33)
オルチプラズのヒドロキシマレイン酸無水物(-)回転異性体を作製するプロセスであって、
(iii)無水極性溶媒の存在下でオルチプラズを(+)-ジアセチル-L-酒石酸無水物と反応させて、反応混合物を形成するステップと;
(iv)酢酸を前記反応混合物に添加するステップと
を含む前記プロセス。