(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】単回用量包装クロトリマゾール液体組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4174 20060101AFI20240704BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240704BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240704BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240704BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20240704BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240704BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240704BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240704BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
A61K31/4174
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/06
A61K47/44
A61P31/10
A61P43/00 111
A61J1/05 313
A61J1/05 311
(21)【出願番号】P 2021541048
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2020054250
(87)【国際公開番号】W WO2020169611
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-01-23
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501048446
【氏名又は名称】ラボラトリオス・サルバト・ソシエダッド・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】LABORATORIOS SALVAT, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テラーズ メンドーサ,マリア マール
(72)【発明者】
【氏名】サンアグスティン アキルエ,ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】テジェス モリーナ,アドルフォ
(72)【発明者】
【氏名】デルガド ガニャン,マリア イサベル
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-522998(JP,A)
【文献】特表2007-534384(JP,A)
【文献】特表2010-515509(JP,A)
【文献】特開昭55-098112(JP,A)
【文献】特開平05-306223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61J 1/05
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液である無菌の医薬液体組成物又は獣医学的液体組成物を備えるブロー・フィル・シール(BFS:blow-fill-seal)容器である、単回用量包装ユニットであって、
(a)前記組成物は、治療有効量のクロトリマゾール又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩を、1種以上の薬学的又は獣医学的に許容される賦形剤又は担体
、及び可溶化剤と一緒に含み、
前記可溶化剤が、ポリエチレングリコールであり、並びに、
(b)前記容器は、0.05~8mLの容積であり、
前記組成物の含水量が該組成物の総重量に対して4重量%以下である、単回用量包装ユニット。
【請求項2】
前記クロトリマゾールの治療有効量が、前記組成物の総体積に対して0.1~5重量%である、請求項1に記載の単回用量包装ユニット。
【請求項3】
前記ポリエチレングリコールが、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項
1又は2に記載の単回用量包装ユニット。
【請求項4】
前記ブロー・フィル・シール(BFS)容器が、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、及びこれらの混合物からなる群から選択される熱可塑性ポリマーから作製される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の単回用量包装ユニット。
【請求項5】
無菌である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の単回用量包装ユニット。
【請求項6】
前記組成物の含水量が、前記組成物の総重量に対して3重量%以下である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の単回用量包装ユニット。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の1つ以上の単回用量包装ユニットを備える、二次包装。
【請求項8】
前記二次包装内の酸素含量が、ガスの総体積に対して10体積%以下である、請求項
7に記載の二次包装。
【請求項9】
前記二次包装内の酸素含量が、ガスの総体積に対して5体積%以下又は2体積%以下である、請求項
7に記載の二次包装。
【請求項10】
アルミニウム箔複合オーバーラップパウチである、請求項
7~
9のいずれか一項に記載の二次包装。
【請求項11】
不活性ガスを含む、請求項
7~
10のいずれか一項に記載の二次包装。
【請求項12】
前記二次包装内のガス
が存在しない、請求項
7~
10のいずれか一項に記載の二次包装。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月19日に出願された欧州特許出願第19382120.4号の利益を主張する。
【0002】
本発明は医薬品及び医薬品包装産業の分野に属する。特に、本発明は、クロトリマゾール又はその塩を含む単回用量包装した液体医薬組成物又は獣医用組成物に関する。より詳細には、これは、単回用量ブロー・フィル・シール(BFS:blow-fill-seal)容器に入れられるクロトリマゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
クロトリマゾールとは、化学化合物1-[(2-クロロフェニル)ジフェニルメチル]イミダゾールの国際一般名称(INN:International Nonproprietary Name)である。クロトリマゾールのCAS登録番号は23593-75-1であり、その化学構造を以下の通りである。
【0004】
【0005】
クロトリマゾールは広域スペクトルの抗真菌活性を示す。その作用機序は、細胞膜産生に必要なステロール類、特にエルゴステロールの生合成の阻害に基づいており、したがって真菌細胞壁の透過性を変化させ、最終的に細胞溶解を引き起こす。
【0006】
クロトリマゾールは皮膚科学及び婦人科で使用される確立された薬物である。これは、クリーム剤(例えば、油及び水エマルジョン)、錠剤、カプセル剤、ペッサリー、噴霧剤、及び溶液を含む、様々な製剤下で入手可能である。
【0007】
承認された液体製剤の中でも、例えば、皮膚糸状菌、酵母菌、カビ及び他の真菌による全ての皮膚真菌感染症の治療に承認されており、かつ有毛皮膚並びに外耳(外耳炎)及び中耳(耳真菌症(otomycoses))の真菌感染症における使用に特に好適である、マクロゴール400中の1.0w/v%クロトリマゾール溶液を挙げることができる。このクロトリマゾール溶液は、点耳器インサート及びねじ込み式キャップを有する高密度ポリエチレン(HDPE:high density polyethylene)ボトルで作られた、20mLの多用量容器に収容される。しかしながら、この溶液は無菌ではない。
【0008】
外耳炎は鼓膜穿孔をもたらし得ることが知られている。したがって、安全上の理由から、米国食品医薬品局(FDA:US Food and Drug Administration)は、無傷でない鼓膜に適用される耳薬は滅菌しなければならないと要求している。
【0009】
上記のような多用量容器の場合、容器開封後の組成物の汚染を防ぐための一選択肢は、製剤中に防腐剤を含めることである。しかしながら、敏感な皮膚領域又は粘膜に製剤が適用される場合は特に、防腐剤が患者に刺激性であり、及び/又は充分に許容されない可能性があることは周知である。
【0010】
多用量容器とは異なり、単回用量容器は、単回用量投与を意図した量の薬物組成物を保持する。単回用量容器が一度開封されれば、再密封することはできない。更に、容器開封後、迅速に薬物が使用されることにより、使用までの製剤の無菌性が保証される。したがって、無菌クロトリマゾール耳用溶液を含有する単回用量容器は、FDA要件を考慮して開発される興味深い選択肢である。しかしながら、単回使用のための使い捨て包装に含まれるクロトリマゾール溶液ベースの承認済み製品は、現在のところ存在しない。
【0011】
いくつかの滅菌法が当技術分野で公知である。例えば、滅菌は、滅菌される製剤を、高温(乾熱滅菌)、電離放射線(放射線滅菌)、液体薬品若しくはガス(液体若しくはガス滅菌)に曝露することによって、又は組成物を濾過することによって(濾過滅菌)、達成することができる。伝統的な無菌処理は、容器、材料、及び装置を工程内で個別に滅菌することによって最終的な滅菌薬物製品の達成を可能にし、その結果、統一された滅菌製品が得られる。従来の無菌処理では、容器は、浄化及び滅菌されて充填ラインに供給されるか、又は無菌充填ライン内で浄化及び滅菌されるかのいずれかである。プラスチック容器は、通常、充填前に洗浄、乾燥、滅菌、及び冷却される。無菌処理で使用される滅菌方法は、溶液を注射用水(WFI:Water For Injection)などの溶媒中に溶解することによってその溶液を濾過することを含む。ここで、溶液は、滅菌フィルタ又は膜を通過する。フィルタ滅菌は、構成要素が可溶性であり、かつ熱によって悪影響を受けやすい場合に使用される。乾熱滅菌は、熱安定性かつ不溶性の構成要素を滅菌するための別の有効な方法である。放射線照射を使用していくつかの構成要素を滅菌することもできる。開放されたガラスボトル又はバイアルを充填することを含む従来の無菌処理は、重要な処理領域で製造者が常に無菌状態を維持することが必要とされる。残念なことに、過去数十年にわたる液体薬物製品の汚染の大部分は、従来の無菌処理施設で製造された製品から生じている。エンドトキシンは潜在的な発熱性汚染物質であり、本質的に患者において重篤な反応をもたらし得る死細菌細胞物質(dead bacterial cellular matter)に関連し、無菌薬物製品の製造において深刻に考慮されるべき安全上の懸念である。
【0012】
一方で、ブロー・フィル・シール(BFS)技術は、現在、FDAを含む様々な医薬品規制当局による薬物組成物の無菌処理の好ましい形態であると広く考えられている。BFS法とは、装置内の無菌密閉領域内における人間の介入を伴わない連続プロセスであり、無菌薬物組成物を収容しなければならない容器を「形成する」工程(例えば、モールドへ吹き込むことによる)と、それを薬物組成物で「充填する」工程と、それを「密封する」工程と、を含む。したがって、この技術は、滅菌医薬液体製剤を無菌的に製造するために使用することができる。
【0013】
特許文献1は、1回のみの投与のために、一次包装手段、特にチューブに等分された液体ベース中に抗感染症剤を含有する医薬組成物、特に懸濁液を開示している。しかしながら、この文書は、ブロー・フィル・シール(BFS)容器に包装された単回用量組成物を教示していない。この文書に開示される組成物は、クロトリマゾールなどの抗真菌剤を更に含有してもよく、これは、典型的には0.01~10重量%の割合で製剤中に使用される。水を補助物質として使用してもよい。特に、特許文献1は、水、グリセロール、プロピレングリコール、又はポリエチレングリコールを水性基材として使用することができることを開示している。あるいは、天然である動物又は植物の合成及び半合成の油又は脂肪を油性基剤として使用することができる。更に、懸濁液は概して防腐剤及び/又は抗酸化剤を含有し、滅菌されていない。その上、この文書は、単回用量容器に含まれる組成物のいかなる安定性データも開示していない。
【0014】
特許文献2は、クロトリマゾールなどの抗菌剤及び抗真菌剤を含む、無菌耳用製剤を開示している。この文書に開示される製剤は、ワックスなどの増粘剤を含有する担体、例えば鉱油を含む。また、クロトリマゾールをワックスと鉱油との混合物中において121℃まで1.5時間乾熱滅菌し、製剤の構成要素を滅菌したら、それらを混合し、均質化し、無菌条件下でシリンジに添加することも開示されている。特許文献2の発明者らによれば、連続する真菌及び細菌感染症、並びに同時に起こる炎症の根絶には、濃厚な懸濁液の単回投与だけが必要である。
【0015】
しかしながら、この文書は、単回用量包装組成物、及びブロー・フィル・シール(BFS)容器に包装された更に少ない単回用量組成物を教示していない。
【0016】
その上、特許文献2に記載されている半固体製剤は、いくつかの欠点を有する。第一に、その特許出願の発明者らによって認められるように、患者の聴力は懸濁液の投与に影響され、正常な聴力が回復するのは治療後5~7日以内である。実際、製剤は外耳道内に数日間留まるので、疼痛、かゆみ、及び眩暈などの望ましくない副作用を引き起こす可能性がある。加えて、特許文献2の発明者らによって認められているように、懸濁液は患者自身が投与することはできず、医師の介入を必要とする。
【0017】
最後に、特許文献2の発明者らは、クロトリマゾールはいかなる有意な分解も示さなかったと結論付けている。しかしながら、乾熱滅菌処理は、活性成分の安定性だけでなく、賦形剤の安定性にも影響を及ぼし得る。これに関して、例えば、特許文献2で言及されている組成物に含まれるパラフィンなどの増粘剤は、密閉された容器内において40℃を超えない温度で貯蔵しなければならず、乾熱又は放射線プロセスによる滅菌中に不安定となり得る他の多くの賦形剤もまた同様であることが知られている。したがって、これらのタイプの賦形剤は、乾熱又は放射線滅菌処理を行うのに適していない。
【0018】
特許文献2では、室温における相の層別化又は分離が製剤中で観察されたことが開示されている。これは、滅菌プロセスが賦形剤に適していなかったこと、又はシステム自体が室温において安定でなかったことを示唆している可能性がある。いずれの場合でも、20℃未満でしか安定化しない製品は、製品を販売する際に明らかな欠点を有することは明白である。相が分離されると有効成分はその均一性を失い、外耳道に適用されると、いくつかの領域に蓄積される可能性があるか又は他の領域に存在せず、不均一に分布する。更に、特許文献2の発明者らは、最上層及び最下層の分析により、活性成分の含有量は均一ではなく、いくつかの例では活性成分が容器の底部に沈降しているように見えることが示されていると認めている。活性剤の一部が固体形態でシリンジ内に保持され、それによって有効性の喪失が起こり得るので、相分離によるこれらの懸濁液の言及された安定性欠如は、耳腔中への懸濁液の投与中に問題となり得る。
したがって、先行技術の問題を克服する、無菌単回用量包装クロトリマゾール液体製剤を開発する必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】米国特許出願公開第20090011045号明細書
【文献】米国特許出願公開第20150297588号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述のように、特にブロー・フィル・シール(BFS)技術によって調製された無菌単回用量包装クロトリマゾール液体組成物の開発は、鼓膜への潜在的影響を伴う感染症を治療するための耳用製品の無菌性の規制要件を考慮すると、特に興味深い。
【0021】
ブロー・フィル・シール法の重要な特徴は、製品を直ちに無菌充填した状態で、水冷ブローモールド中において押出されたプラスチック又は樹脂から直接ボトル又はアンプルを無菌かつパイロジェン・フリーに成形し、続いて、同一装置内において、一工程かつ無菌条件下で容器を気密封止することである。これにより、プロセスの高い信頼性及び製品の安全が保証される。この技術は、粒子状物質の生成が非常に少なく、充填製品に対して中立性であることが知られている。BFS技術の重要な態様は、容器及びアンプルのパイロジェン・フリー成形である。高レベルの胞子及びエンドトキシン汚染ポリマー顆粒を用いて、BFS押出プロセスの有効性を確認する広範な実験を行った。典型的なBFS押出機はエンドトキシンについて0.000001%及び0.00001%の胞子汚染率を示しており、現在、無菌溶液を製造するための最良の技術的アプローチである。
【0022】
典型的には、標準的なBFSプロセスは、容器又は一次包装を形成するポリマー又はポリマー混合物を押し出す工程、成形する工程、充填する工程、密封する工程、及び脱型する工程を含む。BFSプロセスでは、製品接触経路を加圧スチームで滅菌して汚染の可能性を低減し、次いで自動プログラムによって無菌濾過空気で乾燥させる。空気及び水蒸気(湿度80%)の存在下における二酸化窒素ガスでの滅菌といった、BFSシステムを滅菌するための他の滅菌方法が記載されている。しかしながら、この方法は、それに由来する副生成物のために工業的にほとんど使用されていない。
【0023】
上述の標準的なプロセス条件下において単回用量包装BFS組成物を調製しようとする場合、本発明者らは、驚くべきことに、クロトリマゾール関連不純物であるイミダゾール及び(2-クロロフェニル)-ジフェニルメタノールの有意な増加を観測した。クロトリマゾールのこの分解は、同じポリマー材料で作られ、全く同じ賦形剤を有するクロトリマゾール液体組成物を含有する多用量容器について、安定性の問題に遭遇しなかったので、本発明者らには全く予想外であった(以下の比較例2を参照のこと)。
【0024】
理論に束縛されるものではないが、多用量容器の同一組成物を単回用量容器に入れる場合、製品の安定性を予想外に変化させる特定の条件が現れるようである。
【0025】
これらの単回用量BFS容器における上記の安定性問題を解決することを目的とした開発プログラムを実施した後、本発明者らは、単回用量包装組成物を不活性様条件下に、特に単回用量包装内部の組成物の含水量を一定レベル以下に制御することによって配置した場合、組成物は貯蔵中安定することを見出した。この解決策は本発明者らにとって驚くべきものであった。実際、米国特許出願公開第20090011045号又は同第20150297588号に記載されているクロトリマゾール組成物は大量の水を含み得るため、及び市場には安定である水性エマルジョンをベースとするクロトリマゾール製品が存在するため、当業者は水の存在を制限として見ていなかったであろう。
【0026】
したがって、本発明は、望ましくない副作用を引き起こす可能性がある防腐剤の存在なしに、無菌、均一、かつ安定である安全な単回用量包装クロトリマゾール液体組成物を提供する。本発明の単回用量包装組成物は、より正確な用量の投与を可能にする。これには、投薬ミスを低減し、患者のコンプライアンスを改善することができるという利点がある。加えて、衛生的な投与が可能であり、医療従事者による投与を必要としない。
【課題を解決するための手段】
【0027】
したがって、本発明の態様は、医薬液体組成物又は獣医学的液体組成物を備えるブロー・フィル・シール(BFS)容器である、単回用量包装ユニットに関し、ここで、組成物は、治療有効量のクロトリマゾール又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩を、1種以上の薬学的又は獣医学的に許容される賦形剤又は担体と一緒に含み、組成物の含水量が組成物の総重量に対して4重量%以下であることを特徴とする。特に、液体組成物は無菌であり、及び/又は溶液であり、及び/又は容器は0.05~8mLの容積である。
【0028】
本発明のBFS単回用量包装ユニットの1つ以上は二次包装で包装されてもよい。本発明者らは、滅菌クロトリマゾール液体組成物を含む単回用量BFS容器を二次包装に入れ、この二次包装内の酸素含量を制御した場合、組成物の安定性が更に改善されることを見出した。したがって、本発明はまた、先に定義されたような1つ以上の単回用量包装ユニットを含む二次包装、より具体的には、二次包装内の酸素含量が総ガス体積に対して10体積%以下である、二次包装に関する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本出願において本明細書で使用される全ての用語は、特に明記しない限り、当技術分野で知られている通常の意味で理解されるものとする。本出願で使用される特定の用語の他のより具体的な定義は、以下に示される通りであり、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって適用されることが意図される。
【0030】
用語「約」又は「およそ」とは、本明細書で使用される場合、特定の値の±10%の範囲の値を指す。例えば、「約10」又は「およそ10」という表現は、10の±10%、すなわち9~11を含む。
【0031】
特に明記しない限り、含水量に関して本明細書で言及される全ての百分率は、組成物の総重量に対する重量で表される。組成物の構成要素に関して本明細書で言及される百分率は、組成物の総体積又は総重量のいずれかに対する重量で表されるが、ただし、構成要素の量の合計が100%含有量と等しいことを条件とする。酸素含量に関して、大気中のこのガスの体積分率は、20.946%又は209.46ppmvである。酸素含量に関して本明細書で言及される全ての百分率は、同様に、二次包装に含まれる空気又はガス含有量の総体積に関する酸素の体積分率を指す。
【0032】
上述のように、本発明は、ブロー・フィル・シール(BFS)容器であり、液体クロトリマゾール組成物を含む、単回用量包装ユニットに関する。
【0033】
本発明の目的のため、「単回用量包装組成物」及び「組成物を含む単回用量包装ユニット」という表現は、組成物が単回用量包装ユニット又は容器に入れられ、単回使用が意図されているという事実を指す。単回用量容器は開封後に再密封することができない。したがって、これらは使い捨てであり、再使用することはできない。単回用量包装という用語はまた、一用量(monodose)包装と称することもできる。「単回用量包装」は、一次包装とも呼ばれ得る。
【0034】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、上で定義された単回用量包装ユニットは、使い捨てである。
【0035】
用語「一次包装」とは、本明細書で使用される場合、クロトリマゾール液体組成物と直接接触する包装を指す。対照的に、用語「二次包装」とは、クロトリマゾール製剤と直接接触していないが、一次包装を含有する包装を指す。
【0036】
用語「ブロー・フィル・シール(BFS)容器」とは、BFS技術によって調製された容器を指す。用語「BFS」とは、溶融ポリマー又は樹脂のポリマー顆粒の押出から始まる、いかなる外部介入も必要としないプロセスを指す。そして、容器は、例えば滅菌圧縮空気を用いることによる、真空による、又はその両方によるなどの、ポリマー顆粒をブロー成形することによって、ポリマー顆粒から形成される。その後、まだ溶融状態にあり、上部が開いている形成された容器は、例えば容器の上部から進入する充填ノズルによって、クロトリマゾール組成物で充填される。最後に、容器の上部を密封し、冷却して、気密封止された容器が得られる。本発明のBFS容器はポリマー又はポリマー混合物から作製される。
【0037】
本発明のBFS容器は概して小型容器であり、典型的には、0.05~8mLの容積である。BFS容器は異なる形状であってもよい。BFS容器の非限定的な例としては、バイアル及びアンプルが挙げられる。
【0038】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、BFS容器は、0.05~8mL、より詳細には0.05~5mL、更により詳細には0.10~3mL、更により詳細には0.15~0.9mLの容積である。
【0039】
本発明の単回用量包装ユニットは、治療有効量のクロトリマゾール又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩を含む、液体組成物を備える。
【0040】
本発明の目的のため、用語「液体組成物」とは、固体形態ではなく、5分間の回転後に10rpmのスピンドル速度で25℃にてRVDV-III Ultra Brookfield rheometerを用いて測定したその粘度が、2000mPa・s以下、より詳細には10mPa・s~1000mPa・sである、任意のクロトリマゾール組成物を指す。本発明の液体組成物は、溶液であってもよい。
【0041】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、液体組成物は、溶液であり、その全ての構成要素は完全に可溶化されて、均一な溶液を形成する。この剤形は、他の不均一な液体組成物と比較して、改善された生物学的利用能を有利に提供する。概して、懸濁液の形態で投与される製品の生物学的利用能は、可溶化製品の生物学的利用能よりも低い。実際に、不溶性活性成分薬物の可溶化は、特に活性成分の放出及び吸収を促進する消化プロセスがない局所システムにおいて、その生物学的利用能を改善するための調合剤の課題の1つであることが広く認識されている。
【0042】
表現「治療有効量」とは、本明細書で使用される場合、投与された際に、対処される疾患の症状の1つ以上の発症を予防するか、又はある程度緩和するのに充分なクロトリマゾールの量を指す。治療上の利益を得るためのクロトリマゾールの具体的な用量は、とりわけ、患者の身長、体重、年齢及び性別、疾患の性質及び病期、疾患の侵攻性、並びに投与経路を含む、個々の患者の特定の状況に応じて異なり得る。
【0043】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、クロトリマゾールの治療有効量は、組成物の総体積に対して、0.1~5重量%、より詳細には0.5~2.5重量%、更により詳細には約1重量%である。
【0044】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、クロトリマゾールは、本発明の組成物の単一の活性成分である。
【0045】
使用され得るクロトリマゾール塩の種類に制限はないが、ただし、治療目的で使用される場合、その塩は薬学的又は獣医学的に許容される。用語「薬学的又は獣医学的に許容される塩」とは、一般的に使用される塩を包含する。クロトリマゾールの薬学的に許容される塩の調製は当技術分野で公知の方法によって行うことができる。クロトリマゾール及びその塩はいくつかの物理的特性が異なり得るが、本発明の目的のためには同等である。クロトリマゾールの薬学的又は獣医学的に許容される塩の非限定的な例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、コハク酸、シュウ酸、リンゴ酸、アジピン酸、ジヒドロキシ安息香酸(例えば、2,5-ジヒドロキシ安息香酸)、トリヒドロキシ安息香酸(例えば、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸)、クマル酸(例えば、p-クマル酸)、コーヒー酸、マレイン酸、及びスベリン酸などの有機又は無機酸の塩が挙げられる。
【0046】
クロトリマゾールの結晶形態もまた、本発明の製剤に包含される。クロトリマゾールの結晶形態は、遊離溶媒和形態又は溶媒和物(例えば、水和物)のいずれかとして存在する可能性があり、両方の形態が本発明の範囲内であることが意図される。溶媒和の方法は当技術分野において一般に公知である。概して、水及びエタノールなどの薬学的又は獣医学的に許容される溶媒との溶媒和形態は、本発明の目的のための非溶媒和形態と同等である。クロトリマゾールと薬学的又は獣医学的に許容されるコフォーマ(coformer)との共結晶もまた、本発明の製剤に包含され、本発明の目的のためのクロトリマゾール(clotrimazol)又はその塩と等価である。共結晶の非限定的な例には、カルボン酸配座異性体、例えばクロトリマゾール-アジピン酸共結晶(1:0.5)及びクロトリマゾール-スベリン酸共結晶(1:0.5)などとの共結晶が含まれる。
【0047】
本発明の液体組成物は、滅菌されていてもよい。滅菌は、薬物組成物中に存在する全形態の生命体及び他の生物学的薬剤の除去又は不活性化のプロセスである。用語「滅菌又は滅菌された」組成物とは、本明細書では互換的に使用され、特にUSP41<71>の無菌試験法に準拠するために、微生物及び/又は真菌汚染を示さない組成物を指す(微生物増殖の証拠なし)。本発明の目的のため、無菌性とは、10-6以下の無菌性保証水準(SAL:sterility assurance level)によって定義されるように、生存可能な微生物が存在しないことを意味する。所与の滅菌プロセスの無菌性保証水準SALは、プロセスへの曝露後に、製品種目中で微生物(細菌、酵母菌、及びカビ)が生存する確率として表される。例えば、10-6のSALは、最終製品の1×106個の滅菌された物品中における1個以下の非滅菌物品の確率を示す。
【0048】
異なる滅菌方法を使用してもよいが、濾過滅菌方法は、クロトリマゾール並びに賦形剤及び/又は担体を含有する組成物が乾熱又は放射線照射されず、したがって高温又は放射線照射に関連するいかなる可能性のある分解も制限されるという利点を有する。注目すべき乾熱法又は放射線法は微生物を破壊するが、破壊された破片は最終製品の内部に残る。濾過滅菌は、溶液から微生物及び他の外来生物学的副生成物を除去する。そのようなプロセスでは、滅菌される組成物は、例えば、0.1~0.22μmの範囲の孔径を有する混合されたセルロースエステル、ポリフッ化ビニリデン、又はポリレトラフルオロエチレン(polyletrafluoroethylene)などの均一なポリマーで作られたメンブランフィルタを通して濾過される。濾過による滅菌は、本質的に死細菌細胞物質に由来する潜在的な発熱性汚染物質であるエンドトキシンの除去に関する、最も信頼できる方法と考えられている。更に、広範な実験により、胞子及びエンドトキシン汚染の排除においてさえ滅菌プロセスによる滅菌の有効性が確認されており、これは他の古い従来の滅菌プロセスを超える明らかな利点である。
【0049】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、液体組成物は、滅菌組成物、より詳細には濾過によって滅菌された組成物である。より詳細には、本発明の滅菌組成物は、組成物を濾過する滅菌工程、より詳細には1つ以上の滅菌フィルタを用いる工程、更により詳細には約0.22μmの孔径のポリビニリデンジフルオリド(PVDF)メンブランフィルタを用いる工程を含む方法によって、得ることができる。
【0050】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、本発明は、溶液である無菌の医薬液体組成物又は獣医学的液体組成物を備えるブロー・フィル・シール(BFS)容器である、単回用量包装ユニットに関し、ここで、
(a)組成物は、治療有効量のクロトリマゾール又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩を、1種以上の薬学的又は獣医学的に許容される賦形剤又は担体と一緒に含み、そして、
(b)容器は、0.05~8mLの容積であり、
組成物の含水量が組成物の総重量に対して4重量%以下であることを条件とする。
【0051】
本発明の単回用量包装組成物は、クロトリマゾール又はその塩を、1種以上の薬学的又は獣医学的に許容される賦形剤又は担体と一緒に含む。
【0052】
表現「薬学的又は獣医学的に許容される賦形剤又は担体」とは、薬学的又は獣医学的に許容される材料、組成物、又はビヒクルを指す。各構成要素は、医薬組成物又は獣医学組成物の他の成分と適合性であるという意味で、医薬的又は獣医学的に許容されなければならない。これはまた、合理的な利益/リスク比に見合った過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、又は他の問題若しくは合併症なしに、ヒト及び動物の組織又は器官と接触して使用するのに適していなければならない。
【0053】
適切な賦形剤及び/又は担体、並びにそれらの量は、調製される製剤の種類に従って当業者が容易に決定することができる。
【0054】
本発明の組成物は、耳用投与に適している。したがって、一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、液体組成物は、外耳道、特に外耳及び/又は中耳に投与される耳用製剤である。本発明の単回用量包装液体組成物には、聴能に影響を及ぼさないという利点がある。
【0055】
本発明の単回用量包装組成物は、皮膚糸状菌、酵母菌、カビ、及び他の真菌による全ての皮膚真菌感染症の治療に有用であり、外耳(外耳炎)及び中耳(耳真菌症(otomycoses)の真菌感染症における使用に特に適している。
【0056】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、液体組成物は、可溶化剤を含む。
【0057】
本発明の目的のため、用語「可溶化剤」とは、クロトリマゾール又はその塩を可溶化し、それによって均一な溶液を形成することができる薬剤又は薬剤の組合せを指す。可溶化剤の例としては、油、(C4~C28)脂肪酸の(C1~C18)アルキルエステル、グリセリド、及び多価アルコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
用語「油」とは、本明細書で使用される場合、動物、鉱物、植物、又は合成起源であり得る、典型的には室温(20~25℃)で油質、粘性、及び液体の広範な種類の物質に関する。油の例としては、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、アルガン油、トウモロコシ油、パーム油、ヤシ油、綿実油、ピーナッツ油、ナタネ油、ヒマワリ油、ゴマ油、ダイズ油、ベニバナ油、アーモンド油、ヒマシ油、及びオリーブ油が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
用語「(C4~C28)脂肪酸」とは、本明細書で使用される場合、直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和のいずれかであり、4~28個の炭素原子を含む長脂肪族鎖を有する、カルボン酸を指す。脂肪酸の例としては、ステアリン酸、セロチン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、アラキジン酸、モンタン酸、カプリン酸、カプリル酸、及びラウリン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
用語「アルキル」とは、本明細書で使用される場合、本明細書で指定される数の炭素原子を含む、飽和、分岐鎖、又は直鎖アルキル鎖を指す。
【0061】
(C4~C28)脂肪酸の(C1~C18)アルキルエステルの例としては、オレイン酸エチル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソステアリル、及び乳酸ミリスチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
用語「グリセリド」とは、本明細書で使用される場合、グリセロール及び(C4~C28)脂肪酸から形成されるエステルを指す。エステル化されるグリセロールのヒドロキシル官能基の数に応じて、グリセリドは、1-モノアシルグリセロール及び2-モノアシルグリセロールを含むモノグリセリド;1,2-ジアシルグリセロール及び1,3-ジアシルグリセロールを含むジグリセリド;並びに、中鎖トリグリセリドを含むトリグリセリドとして分類される。用語「中鎖トリグリセリド」とは、本明細書で使用される場合、グリセロール及び(C6~C12)脂肪酸のトリエステルを指し、ここで、3つの脂肪酸残基の各々は、同じであっても異なっていてもよい。
【0063】
中鎖脂肪酸の例としては、トリカプリルグリセリル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリカプロン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリ(ラウリン酸/カプリル/カプリン酸)グリセリルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
用語「多価アルコール」とは、本明細書で使用される場合、2~6個のヒドロキシル基を含有するアルコールを指す。多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール、ジグリセロール、及びポリグリセロールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
用語「ポリエチレングリコール(PEG)」とは、本明細書で使用される場合、マクロゴールとも呼ばれ、一般式HO-(CH2-CH2-O)n-Hであり、式中、nは4~25である。PEGはまた、PEGの平均分子量を示す数値サフィックスと組み合わせて指定され得る。本発明で使用されるPEGは、150~1050ダルトン、より詳細には150~550ダルトンの平均分子量を有する。PEGの例としては、PEG200、PEG300、PEG400及びPEG600、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、可溶化剤は、油、(C4~C28)脂肪酸の(C1~C18)アルキルエステル、グリセリド、多価アルコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される。より詳細には、可溶化剤は、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、アルガン油、トウモロコシ油、パーム油、ヤシ油、綿実油、ピーナッツ油、ナタネ油、ヒマワリ油、ゴマ油、ダイズ油、ベニバナ油、アーモンド油、ヒマシ油、オリーブ油、オレイン酸エチル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソステアリル、乳酸ミリスチル、トリカプリルグリセリル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリカプロン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリ(ラウリン酸/カプリル/カプリン酸)グリセリル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、及びこれらの混合物からなる群から選択される。更により詳細には、可溶化剤は、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ヒマシ油、又はポリエチレングリコールからなる群から選択され、更により詳細には、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、及びこれらの混合物などのポリエチレングリコールからなる群から選択される。
【0067】
別の実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、本発明の液体組成物は、クロトリマゾール(clotrimazol)又はその塩、及び上で定義される可溶化剤からなる。
【0068】
あるいは、本発明の液体組成物は、界面活性剤、乳化剤、増粘剤、着色剤、香味剤等の更なる賦形剤を含んでもよい。
【0069】
前述のように、本発明のBFS容器は、ポリマー又はブロー成形可能な樹脂で作製される。一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、ブロー・フィル・シール(BFS)容器は、ポリマー、より詳細には熱可塑性ポリマー、熱可塑性ポリマーの混合物で作製される。
【0070】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、単回用量包装ユニットは、ポリマー又はポリマー混合物、特に熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーの混合物をブロー成形して容器を形成することと、組成物を4重量%以下の含水量で充填することと、組成物を密封することと、を含む方法によって得ることができる。ここで、方法の全ての工程は、単一の装置(BFS装置)で実行される。
【0071】
本発明の目的のため、用語「熱可塑性ポリマー」とは、加熱されると液体に変わるか、又はより液状になるか、又は粘性が低くなり、例えば熱及び圧力を加えることによって特定の形状に成形することができるポリマーを指す。熱可塑性ポリマーの例としては、ポリエチレン(PE:polyethylene)、ポリプロピレン(PP:polypropylene)、ポリブチレン、ポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)、ポリスチレン(PS:polystyrene)、ポリメチルメタクリレート(PMMA:polymethylmethacrylate)、これらの物質の組合せ及びコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。低密度ポリエチレン(LDPE)(密度:0.910~0.940g/cm3)及び高密度ポリエチレン(HDPE)(密度:0.930~0.970g/cm3)を含む、異なる種類のポリエチレンを使用してもよい。
【0072】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、これらの物質の組合せ及びコポリマーからなる群から選択され、より具体的には、ポリエチレン(PE)、LDPE、HDPE、ポリプロピレン(PP)、並びにこれらのコポリマー及び混合物からなる群から選択され;更により詳細には、ポリエチレン(PE)、LDPE、HDPE、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0073】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、単回用量包装ユニットは、気密封止される。
【0074】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、単回用量包装ユニットは、容器(すなわち、製品接触経路)にスチーム、特に加圧スチームを充填するために使用される経路の滅菌工程を含む方法によって得ることができる。
【0075】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、上で定義された単回用量包装ユニットは、以下の工程を含む方法によって得ることができる:
i)特に溶液の形態の、クロトリマゾール医薬液体組成物又は獣医学的液体組成物をレシピエントに提供する工程、
ii)組成物が循環されなければならないBFS装置の経路をスチームで滅菌する工程、
iii)ポリマー又はポリマー混合物、特に熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーの混合物をブロー成形して、特に0.05~8mLの容積である容器を形成工程、
iv)工程(ii)に由来する水のその含有量が、組成物の総重量に対して4重量%以下、特に0.001~4重量%であるように、工程(i)の組成物を選択する工程、
v)工程(iii)で形成された容器に、工程(ii)の滅菌経路を通じて工程(iv)の組成物を充填する工程、及び
vi)容器を密封する工程、
ここで、プロセス工程(ii)~(vi)は、単一の装置(BFS装置)で実行される。
【0076】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、工程(i)の組成物を、濾過によって、より詳細には1つ以上の滅菌フィルタを用いることによって、更により詳細には約0.22μmの孔径である1つ以上のポリビニリデンジフルオリド(PVDF:polyvinylidene difluoride)メンブランフィルタを用いることによって、滅菌する。
【0077】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、工程(iv)は、工程(ii)の滅菌経路を通じて工程(i)の液体組成物を循環させ、その含水量が組成物の総重量に対して4%重量以下、特に0.001~4重量%になるまで組成物を廃棄することによって、実施される。廃棄される組成物の量は、所与のバッチ中の組成物の体積に依存する。当業者は、初回体積を廃棄し、カールフィッシャー法によって容器内の得られた組成物の含水量を測定し、そして、含水量が4%より高い場合、所望の含水量が達成されるまでより多くの組成物を廃棄することによって、そのような体積を容易に決定することができる。
【0078】
上述のように、所望の貯蔵安定性を達成するために、単回用量包装内の組成物の含水量は、組成物の総重量に対して4重量%以下になるように制御されなくてはならない。
【0079】
「安定した」組成物という表現は、組成物が経時的に有意な分解生成物を示さないという事実を指す。より詳細には、クロトリマゾール、特にイミダゾール及び(2-クロロフェニル)-ジフェニルメタノールの分解不純物の含有量が、クロトリマゾール重量の標識量に対して0.5重量%以下であり、そして組成物を少なくとも1ヶ月間、好ましくは2ヶ月間にわたり、加速貯蔵条件(40℃、相対湿度(RH:relative humidity)25%未満)下に置いた場合、分解生成物の全体の含有量が、クロトリマゾール重量の標識量に対して2.0重量%を超えないことを意味する。クロトリマゾールの標識量は、組成物の総重量に対するクロトリマゾール(clotrimazol)の重量である。本発明の組成物はまた、室温(20~25℃)で長期間保存した場合に安定である。安定性は、USP41(モノグラフ「Clotrimazole Topical Solution」)に記載されている分析方法論に基づいて、紫外線検出による高速液体クロマトグラフィ(HPLC-UV:high performance liquid chromatography with ultraviolet detection)を用いることで測定することができる。
【0080】
特に、このモノグラフによれば、試料溶液の一部におけるクロトリマゾールの標識量の百分率は、次の式によって算出することができる。
結果=(ru/rs)×(Cs/Cu)×100
式中:
ru=試料溶液からのクロトリマゾールのピーク応答
rs=標準溶液からのクロトリマゾールのピーク応答
Cs=標準溶液中のクロトリマゾールの濃度(mg/mL)
Cu=試料溶液中のクロトリマゾールのノミナル濃度(mg/mL)
【0081】
上の式において、標準溶液及び試料溶液は、アセトニトリル:水50:50中クロトリマゾール0.2mg/mLで調製される。
【0082】
試料溶液の一部におけるイミダゾール及び(2-クロロフェニル)ジフェニルメタノール(クロトリマゾール関連化合物A)の標識量の百分率は、次の式によって算出することができる。
結果=(ru/rs)×(Cs/Cu)×100
式中:
ru=試料溶液からのクロトリマゾール関連化合物A又はイミダゾールのピーク応答
rs=標準溶液からのクロトリマゾール関連化合物A又はイミダゾールのピーク応答
Cs=標準溶液中のクロトリマゾール関連化合物A又はイミダゾールの濃度(mg/mL)
Cu=試料溶液中のクロトリマゾールのノミナル濃度(mg/mL)
【0083】
上の式において、標準溶液は、アセトニトリル:水50:50中、0.2mg/mLのクロトリマゾール、各0.001mg/mLのイミダゾール及びクロトリマゾール関連化合物Aを含有する溶液に相当する。
【0084】
試料溶液の一部における任意の特定されていない不純物の百分率は、次の式によって算出することができる。
結果=(ru/rs)×(Cs/Cu)×100
式中:
ru=試料溶液からの任意の特定されていない不純物のピーク応答
rs=標準溶液からのクロトリマゾールのピーク応答
Cs=標準溶液中のクロトリマゾールの濃度(mg/mL)
Cu=試料溶液中のクロトリマゾールのノミナル濃度(mg/mL)
上の式において、標準溶液は、アセトニトリル:水 50:50中、0.2mg/mLのクロトリマゾール、各0.001mg/mLのイミダゾール及びクロトリマゾール関連化合物Aを含有する溶液に相当する。
【0085】
総不純物は、個々の不純物の合計として算出される。
【0086】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、組成物中のイミダゾールの含有量は、クロトリマゾールの標識量に対して0.5重量%以下である。より詳細には、組成物中のイミダゾールの含有量は、組成物を40℃、25%未満のRHで2ヶ月間にわたって、又は室温で30ヶ月間にわたって貯蔵した後のクロトリマゾールの標識量に対して、0.5重量%以下である。
【0087】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、組成物中の(2-クロロフェニル)-ジフェニルメタノールの含有量は、クロトリマゾールの標識量に対して0.5重量%以下である。より詳細には、組成物中の(2-クロロフェニル)-ジフェニルメタノールの含有量は、組成物を40℃、25%未満のRHで2ヶ月間にわたって、又は室温で30ヶ月間にわたって貯蔵した後のクロトリマゾールの標識量に対して、0.5重量%以下である。
【0088】
一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、組成物の含水量は、組成物の総重量に対して、3.5重量%以下、3重量%以下、2.5重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.01重量%以下、0.005%以下、又は0.001重量%以下である。別の実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、水が組成物中に存在し、その含有量は、組成物の総重量に対して、3.5重量%以下、3重量%以下、2.5重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.01重量%以下、0.005%以下、又は0.001重量%以下である。別の実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、組成物の含水量は、組成物の総重量に対して、0.001~4重量%、0.001~3.5重量%、0.001~3重量%、0.001~2.5重量%、0.001~2重量%、0.001~1.5重量%、0.001~1重量%、0.001~0.5重量%、0.001~0.2重量%、0.001~0.1重量%、0.001~0.005重量%、0.01~4重量%、0.01~3.5重量%、0.01~3重量%、0.01~2.5重量%、0.01~2重量%、0.01~1.5重量%、0.01~1重量%、0.01~0.5重量%、0.01~0.2重量%、0.01~0.1%、又は0.01~0.05重量%である。
【0089】
組成物(すなわち、単回用量包装の内側)の含水量は、カールフィッシャー法によって、特にUSP41<921>の水分測定法(方法I)によって測定することができる。例えば、Karl Fischer Titrators V20/V30(Mettler Toledo)を使用することができる。
【0090】
水の滴定分析は、以下の反応に従って水素イオンと反応する緩衝液の存在下における、水と二酸化硫黄及びヨウ素の無水溶液との定量的反応に基づく。
H2O+I2+SO2+CH3OH+3RN→[RNH]SO4CH3+2[RNH]I
【0091】
カールフィッシャー(KF:Karl Fischer)滴定では、水が完全に置換され、タイトレーション溶液中で遊離ヨウ素を検出できるまで、ヨウ素を含有する滴定剤を水含有試料中へ徐々に添加する。タイトレーションの終点はバイボルタメトリック指標(bivoltametric indication)を用いて記録する。
【0092】
これはまた、医薬液体組成物又は獣医学的液体組成物を備えるブロー・フィル・シール(BFS)容器中に包装された単回用量の薬学的又は獣医学的液体組成物である、本発明の一部も形成し、ここで、組成物は、治療有効量のクロトリマゾール又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩を、1種以上の薬学的又は獣医学的に許容される賦形剤又は担体と一緒に含み、組成物の含水量が組成物の総重量に対して4重量%以下であることを特徴とする。
【0093】
単回用量包装組成物について上述した全ての実施形態はまた、単回用量包装ユニットにも適用され、逆もまた同様である。
【0094】
本発明はまた、先に定義された1つ以上の単回用量包装ユニットを含む、二次包装に関する。
【0095】
典型的には、二次包装は、1~30個の単回用量包装ユニット(BFS容器)を含み得る。したがって、一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、本発明の二次包装は、1~30個の単回用量包装ユニット(BFS容器)を含む。
【0096】
上述のように、二次包装内の酸素含量を制御すると、液体組成物の安定性が更に改善する。したがって、一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、二次包装内の酸素含量は、ガス含有量の総体積に対して、10体積%以下である。
【0097】
別の実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、二次包装内の酸素含量は、ガス含有量の総体積に対して、9体積%以下、8体積%以下、7体積%以下、6体積%以下、5体積%以下、4体積%以下、3体積%以下、2体積%以下、1体積%以下、0.5体積%以下、0.1体積%であるか、又は0.0体積%と等しい。
【0098】
別の実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、二次包装内の酸素含量は、ガス含有量の総体積に対して、0.0~10体積%、0.0~9体積%、0.0~8体積%、0.0~7体積%、0.0~6体積%、0.0~5体積%、0.0~4体積%、0.0~3体積%、0.0~2体積%、0.0~1体積%、0.0~0.5体積%、又は0.0~0.1体積%である。
【0099】
二次包装内の酸素含量は、電流を生成するための電解物との酸素の電気化学反応に基づくガルバニ電池センサ(電気化学セル)及びポーラログラフセンサ、並びに分光法を介して酸素を測定するために光ファイバ及び蛍光法を使用する光学センサを含む、異なる方法を用いることで測定することができる。例えば、二次包装内の酸素含量は、食品及び医薬品包装用中の修飾雰囲気の分析用の手持ち式ヘッドスペース・ガス・アナライザである、OXYBABY(登録商標)などの電気化学セルによって測定することができる。
【0100】
表現「ガスの総体積」とは、本明細書で使用される場合、二次包装内のガスの総体積を指す。
【0101】
二次包装は、アルミニウム箔及び/又はプラスチックフィルム(ポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラートグリコール(PETG:polyethylene terephthalate glycol)、非結晶性ポリエチレンテレフタラート(APET:Amorphous Polyethylene Terephthalate)、ポリ塩化ビニル(PVC))、並びに/又は紙、及び/若しくは接着箔(adhesive foil)、及び/若しくは樹脂の複合体で作製することができる。二次包装の非限定的な例としては、PET/接着剤/アルミニウム/接着剤/PE、紙/接着剤/アルミニウム、アルミニウム/接着剤、紙/接着剤/アルミニウム/PE、及び紙/接着剤/PE/接着剤/アルミニウムなどの材料が挙げられる。
【0102】
したがって、一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、二次包装は、アルミニウム箔複合オーバーラップパウチである。
【0103】
単回用量包装の内部の酸素含量を制御する一選択肢は、不活性ガスで充填することである。本発明の目的のために使用され得る不活性ガスの非限定的な例としては、窒素、アルゴン、ヘリウム、及び二酸化炭素が挙げられる。したがって、別の実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、BFS容器を含有する二次包装は、不活性ガスを含み、より詳細には不活性ガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム、及び二酸化炭素、並びにこれらの組合せからなる群から選択される。
【0104】
あるいは、酸素含量は、真空又は他の薬学的手順を二次包装に適用することによって除去することができる。したがって、一実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、二次包装の内部の酸素は、存在しない。別の実施形態では、場合により上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、二次包装の内部のガスは、存在しない。
【0105】
用語「得られる」とは、本明細書では、その調製プロセスによって容器を画定するために使用される。本発明の目的のため、表現「得ることができる」、「得られた」及び類似する同等表現は互換的に使用され、いずれの場合も、「得ることができる」という表現は「得られた」という表現を包含する。
【0106】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、単語「備える」及びこの単語の変形は、他の技術的特徴、添加物、構成要素、又は工程を排除することを意図しない。更に、単語「含む(comprise)」とは、「からなる(consisting of)」の場合を包含する。本発明の更なる目的、利点、及び特徴は、本明細書を検討することで当業者に明らかになるか、又は本発明の実施によって習得され得る。以下の実施例は説明のために提示され、これらは本発明を限定することを意図するものではない。更に、本発明は、本明細書に記載の特定の好ましい実施形態の全ての可能な組合せを網羅する。
【実施例】
【0107】
実施例1-PEG中の単回用量包装クロトリマゾール溶液(含水量1.2%)
【数1】
【0108】
製造プロセス:
この実施例の単回用量包装クロトリマゾール溶液を、BFS機器であるRommelag bp321Mで得た。まず、40±15℃のPEG400中における活性成分の溶液を調製した。溶液を滅菌するために、2つの滅菌フィルタ(ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)メンブランフィルタ、孔径0.22μm)を使用した。これらのフィルタが完全であることを使用前に確認し、フィルタを70℃で少なくとも5時間乾燥させた。一方で、保持タンクを蒸気で滅菌し、滅菌後に残留水を除去した。クロトリマゾールPEG溶液を、第1の乾燥フィルタで濾過した。フィルタから生じ得る溶液中の水の存在を最小限に抑えるために、濾過した溶液の最初数リットルを廃棄した後、濾過した溶液を第1の保持タンク中に導入した。BFSプロセスを開始する前に、室内空気中の微生物数を確認した。プロセス全体にわたり無菌BFSキャビネット領域でもカウントを監視した。LDPE(Lyondellbasell Purell PE 1840 H)のペレットをBFSホッパに装填した。第2の滅菌フィルタをBFS機器に装填した。BFS機器を水蒸気で滅菌した。次いで、滅菌後の製品パイプライン経路を乾燥させるために、滅菌した空気をBFS機器に通した。生成物を濾過し、BFS機器の緩衝剤タンクに移した。再び、残留水を含み得る濾過溶液の最初の数リットルを廃棄した(1~10L)。USP41<921>(方法I、器具はVolumetric Karl Fischer Titrator Mettler Toledo V20S)のカールフィッシャー法によって測定した生成物の含水量は、組成物の総重量に対して、1.2重量%であった。BFS充填プロセスは、0.2mLの溶液を、0.7mLの総容積容量を有するLDPEの熱成形バイアルに投入することによって行った。包装工程は二次包装(オーバーラップアルミニウム箔複合パウチ、Constantia Flexible)で完了した。二次包装内の酸素含量は制御されなかった。
【0109】
実施例2-PEG中の単回用量包装クロトリマゾール溶液(含水量0.8%、酸素含量10%未満)
【数2】
【0110】
製造プロセス:
実施例2の単回用量包装クロトリマゾール溶液は、二次包装(オーバーラップアルミニウム箔複合パウチ)の密封中に窒素流を使用したという事実を除いて、実施例1に記載されるように調製した。USP41<921>(方法I、器具はVolumetric Karl Fischer Titrator Mettler Toledo V20S)のカールフィッシャー法によって測定された生成物の含水量は、組成物の総重量に対して0.8重量%であり、ヘッドスペース・ガス・アナライザであるOXYBABY(登録商標)によって測定された二次包装内部の酸素含量は、二次包装内部のガス含有量の総体積に対して10体積%より低かった。
【0111】
比較例1-PEG(含水量5.2%(F1バッチSVT12)及び5.6%(F1バッチSVT13)中の単回用量包装クロトリマゾール溶液
【数3】
【0112】
製造プロセス:
溶液をフィルタで濾過した後、濾過した溶液を廃棄しなかったという事実を除いて、実施例1に記載したように2つのバッチを調製した。生成物の含水量(USP41<921>(方法I、器具はVolumetric Karl Fischer Titrator Mettler Toledo V20S)のカールフィッシャー法によって測定)は、組成物の総重量に対して、5.2重量%(F1バッチSVT12)及び5.6重量%(F1バッチSVT13)であった。
【0113】
比較例2-PEG中の多用量包装クロトリマゾール溶液
【数4】
【0114】
製造プロセス:
活性成分を、透明な溶液が得られるまで40℃±15℃で撹拌しながらPEG400中に溶解した。10mLの総容積容量を有するLDPEのボトルに、従来の薬学的プロセスに従ってクロトリマゾール溶液を充填した。
【0115】
安定性アッセイ
上記のクロトリマゾール組成物の安定性を、40℃/RH25%未満の貯蔵条件で2ヶ月間試験した(試料は0、1、及び2ヶ月目に分析した)。化学安定性は、Agilent 1100シリーズの器具にてUSP41(モノグラフ「Clotrimazole Topical Solution」)に記載されているHPLC法によって測定した。室温で30ヶ月間貯蔵した後、比較例1のクロトリマゾール組成物を更に分析した。得られた結果を以下の表に示す。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
見て分かるように、単一包装組成物中の含水量が制御されなかった場合、有意な分解が許容レベルを超えて観察された(表3及び4を参照のこと)。対照的に、含水量を制御した場合(表1及び2参照)、安定性は、多用量容器に入れた組成物の場合のように判定基準に応じた(表5参照)。更に、二次包装の内部の酸素含量を10%未満に制御した場合、安定性挙動が更により改善された(表2)。
【0122】
引用文献
- US20090011045
- US20150297588
- United States Pharmacopeia USP 41 <71> Sterility Test (pages 5984-5991)
- United States Pharmacopeia USP 41 (monograph ‘Clotrimazole Topical Solution’) (pages 1044-1045)
- United States Pharmacopeia USP 41 <921> Water determination (pages 6687-6692)
【0123】
完全を期すために、本願発明の種々の面を以下の番号の項に提示する。
【0124】
第1項.ブロー・フィル・シール(BFS:blow-fill-seal)容器に包装された、単回用量の医薬液体組成物又は獣医学的液体組成物であって、前記組成物は、治療有効量のクロトリマゾール又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩を、1種以上の薬学的又は獣医学的に許容される賦形剤又は担体と一緒に含み、及び前記容器は、0.05~8mLの容積であり、前記組成物の含水量が該組成物の総重量に対して4重量%以下である、単回用量の医薬液体組成物又は獣医学的液体組成物。
第2項.前記クロトリマゾールの治療有効量が、前記組成物の総体積に対して0.1~5重量%である、第1項に記載の単回用量組成物。
第3項.前記組成物が、油、(C4~C28)脂肪酸の(C1~C18)アルキルエステル、グリセリド、多価アルコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される可溶化剤を備える、第1~2項のいずれか一項に記載の単回用量組成物。
第4項.前記可溶化剤が、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、アルガン油、トウモロコシ油、パーム油、ヤシ油、綿実油、ピーナッツ油、ナタネ油、ヒマワリ油、ゴマ油、ダイズ油、ベニバナ油、アーモンド油、ヒマシ油、オリーブ油、オレイン酸エチル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソステアリル、乳酸ミリスチル、トリカプリルグリセリル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリカプロン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリ(ラウリン酸/カプリル/カプリン酸)グリセリル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、第3項に記載の単回用量組成物。
第5項.前記可溶化剤が、ポリエチレングリコールである、第4項に記載の単回用量組成物。
第6項.前記ポリエチレングリコールが、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、及びこれらの混合物からなる群から選択される、第5項に記載の単回用量組成物。
第7項.前記ブロー・フィル・シール(BFS)容器が、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、及びこれらの混合物からなる群から選択される熱可塑性ポリマーから作製される、第1~6項のいずれか一項に記載の単回用量組成物。
第8項.無菌である、第1~7項のいずれか一項に記載の単回用量組成物。
第9項.前記組成物の含水量が、前記組成物の総重量に対して3重量%以下である、第1~8項のいずれか一項に記載の単回用量組成物。
第10項.第1~9項のいずれか一項に記載の1つ以上の単回用量包装ユニットを備える、二次包装。
第11項.前記二次包装内の酸素含量が、ガスの総体積に対して10体積%以下である、第10項に記載の二次包装。
第12項.前記二次包装内の酸素含量が、ガスの総体積に対して5体積%以下又は2体積%以下である、第10項に記載の二次包装。
第13項.アルミニウム箔複合オーバーラップパウチである、第10~12項のいずれか一項に記載の二次包装。
第14項.不活性ガスを含む、第10~13項のいずれか一項に記載の二次包装。
第15項.前記二次包装内のガスが、存在しない、第10~13項のいずれか一項に記載の二次包装。