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特許7514861コーティング方法及び対応するコーティング設備
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】コーティング方法及び対応するコーティング設備
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20240704BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20240704BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240704BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
B05D1/36 Z
B05D7/14 L
B05C5/00 101
B05C11/10
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021566256
(86)(22)【出願日】2020-05-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2020062240
(87)【国際公開番号】W WO2020225174
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】102019112113.2
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504389784
【氏名又は名称】デュール システムズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Durr Systems AG
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ、ハンス-ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーア、ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ラヴァリー、ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】ブベック、モーリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ベイル、ティモ
(72)【発明者】
【氏名】タンドラー、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ベルント、トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルレ、フランク
(72)【発明者】
【氏名】ゾツニー、シュテッフェン
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-506210(JP,A)
【文献】国際公開第2018/108570(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
B05C1/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング剤で部品をコーティングするための、特に、自動車車体部品を塗装するための、コーティング方法であって、
a)コーティング対象の部品表面上のパターン(3)であって、輪郭線(2、5、6)が境界となる表面領域であるパターン(3)を設定する工程と、
b)前記輪郭線(2、5、6)内で前記コーティング剤で前記部品表面の面コーティングを行う工程と
c)前記パターン(3)の前記輪郭線(2、5、6)の少なくとも一部に沿って前記コーティング剤で前記部品表面のコーティングを行う工程と、
を備
d)前記コーティングはコーティングのために個別に活性化又は不活性化できる複数のノズルを有するアプリケーター(13)により実行され、
e)前記輪郭線(2、5、6)内での前記面コーティングでは、前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記縁コーティングの場合よりも多数のノズルがコーティングのために活性化されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記輪郭線(2、5、6)内での前記面コーティングは前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記コーティングよりも大きな面コーティング性能で行われる、
請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項3】
記輪郭線(2、5、6)に沿った前記コーティングでは、好ましくは、前記アプリケーター(13)の、20、10、若しくは5未満のノズルが、又は、単一のノズルのみがコーティングのために活性化される、
請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項4】
a)前記パターン(3)の前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記コーティングは、マニピュレーター(12)により、特に、直列ロボット運動学を有する多軸コーティングロボット(12)により前記輪郭線(2、5、6)に沿って移動させられるアプリケーター(13)によって実行され、及び、
b)前記アプリケーター(13)は前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記コーティングの最中に特定の流量で前記コーティング剤を塗布し、及び、
c)前記マニピュレーター(12)は前記コーティングの最中に前記部品表面の上方で特定の走行速度で前記輪郭線(2、5、6)に沿って前記アプリケーター(13)を移動させ且つその際に前記輪郭線(2、5、6)を走行し、及び、
d)前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記コーティングの最中に、
d1)前記コーティング剤の流量は、前記部品表面上の一定のコーティング厚さを実現するように走行速度に応じて調節され、又は、
d2)前記コーティング剤の流量は、一定のままである、
請求項1から3のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項5】
a)前記パターン(3)の前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記コーティングは、マニピュレーター(12)により、特に、直列ロボット運動学を有する多軸コーティングロボット(12)により前記輪郭線(2、5、6)に沿って移動させられるアプリケーター(13)によって実行され、及び、
b)前記マニピュレーター(12)は前記コーティングの最中に前記部品表面の上方で特定の走行速度で前記輪郭線(2、5、6)に沿って前記アプリケーター(13)を移動させ且つその際に前記輪郭線(2、5、6)を走行し、及び、
c)前記マニピュレーター(12)は、連続して前記輪郭線(2、5、6)を走行するのではなく、幾つかの経路セクション(BA1-BA4)で前記輪郭線(2、5、6)を走行し、及び、
d)前記アプリケーター(13)は前記輪郭線(2、5、6)の直接に連続する経路セクション(BA1-BA4)のコーティングの間に前記コーティング剤の送達を中断する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項6】
a)前記直接に連続する経路セクション(BA1-BA4)は、前記輪郭線(2、5、6)の折れ曲がり点で、互いに隣接し、前記折れ曲がり点(7-10)は、前記マニピュレーター(12)が、急下降を伴うのみで、特に、50%、70%、80%、又は90%を超える下降を伴い、中断なく前記折れ曲がり点(7-10)を前記走行速度で通過することを特徴とし、及び/又は、
b)前記直接に連続する経路セクションで再開するために前記マニピュレーター(12)は前記直接に連続する経路セクション(BA1-BA4)のコーティングの間に前記折れ曲がり点(7-10)で折れ曲がりなしの開始移動を実行する、
請求項5に記載のコーティング方法。
【請求項7】
a)前記輪郭線(2、5、6)の前記コーティングはジェットの長手方向に連続するコーティング剤ジェットで実行される、又は、
b)前記輪郭線(2、5、6)の前記コーティングは、まず、ジェットの長手方向に連続するコーティング剤ジェットで、その後、ジェットの長手方向に連続しない無数の液滴からなる液滴ジェットで、実行される、
請求項1から6のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項8】
前記パターン(3)の前記面コーティング及び前記輪郭線(2、5、6)の前記コーティングは、ジェットの長手方向に連続するコーティング剤ジェットで及びジェットの長手方向に連続しない無数の液滴からなる液滴ジェットで交互に実行され、しかも、
a)時間的に交互である、又は、
b)前記パターン(3)と前記輪郭線(2、5、6)との間で交互である、
請求項1から7のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項9】
a)まず、前記パターン(3)がコーティングされ、その後にのみ、前記輪郭線(2、5、6)がコーティングされる工程、又は、
b)まず、前記輪郭線(2、5、6)がコーティングされ、その後に、前記パターン(3)がコーティングされる工程、
を含む、
請求項1から8のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項10】
a)まず、前記パターン(3)がコーティングされ、その後にのみ、前記輪郭線(2、5、6)がコーティングされる工程、及び、
b)前記パターン(3)の前記面コーティング後の前記輪郭線(2、5、6)を決定するために、前記部品表面に塗布された前記パターン(3)が、その空間的位置及び範囲について、測定系(11)により、特に、光学測定系(11)により検出される工程、
を含む、
請求項1から9のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項11】
a)まず、前記輪郭線(2、5、6)がコーティングされ、その後に、前記パターン(3)がコーティングされる工程、及び、
b)前記パターン(3)の面範囲を決定するために、前記部品表面に塗布された前記輪郭線(2、5、6)が、測定系(11)により、特に、光学測定系(11)により検出される工程、
を含む、
請求項1から9のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項12】
a)前記測定系(11)は、マニピュレーター(12)に取り付けられ、前記マニピュレーター(12)により移動させられる、又は、
b)前記測定系(11)は、前記マニピュレーター(12)とは別個に固定式に配置される、
請求項10又は11に記載のコーティング方法。
【請求項13】
a)前記輪郭線(2、5、6)内での前記面コーティングは、前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記コーティングとは異なるコーティング剤で、特に、異なる色のコーティング剤で実行され、及び/又は、
b)異なるパターン(3)の前記面コーティングが、異なるコーティング剤で、特に、異なった色のコーティング剤で実行され、及び/又は、
c)異なる輪郭線(2、5、6)のコーティングが、異なるコーティング剤で、特に、異なった色のコーティング剤で実行される、
請求項1から12のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項14】
a)前記部品表面上に2次元連続コーティングを形成するために、前記コーティング剤は、前記部品表面への塗布後に、特定の集合時間内にのみ集合することができ、及び、
b)前記輪郭線(2、5、6)及び前記部品表面の前記コーティング剤が集合するように、前記パターン(3)の前記面コーティング及び隣接する前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記コーティングは前記集合時間よりも短い時間間隔で行われる、
請求項1から13のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項15】
a)前記輪郭線(2、5、6)内での前記面コーティングは、前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記コーティングとは異なるコーティング剤、特に、異なる色のコーティング剤で、実行され、及び、
b)前記部品表面上に2次元連続コーティングを形成するために、前記コーティング剤は、前記部品表面への塗布後に、特定の集合時間内にのみ集合することができ、及び、
c)前記輪郭線(2、5、6)及び前記部品表面の前記異なるコーティング剤が集合しないように、前記パターン(3)の前記面コーティング及び隣接する前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記コーティングは前記集合時間よりも長い時間間隔で行われる、
請求項1から13のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項16】
a)前記コーティング剤はスプレージェットではなく狭く限られたコーティング剤ジェットを放出するアプリケーター(13)により塗布され、及び/又は、
b)前記コーティング剤ジェットは、
b1)ジェットの長手方向において相互に分離されているコーティング剤液滴からなり、又は、
b2)ジェットの長手方向に連続しており、及び/又は、
c)前記アプリケーター(13)は、マニピュレーター(12)により、特に、直列ロボット運動学を有する多軸コーティングロボット(12)により、前記部品表面の上方で移動させられ、及び/又は、
d)前記マニピュレーター(12)は、5mm、2mm、又は0.5mmよりも正確な空間的位置決め精度及び/又は再現精度を有し、及び/又は、
e)前記コーティング剤は、塗料、特に、一成分塗料又は二成分塗料、水性塗料又は溶剤系塗料、又は、接着剤、接着促進剤、プライマー、ペースト状材料、封止剤、絶縁材(Daemmstoff)であり、及び/又は、
f)前記コーティング剤は前記アプリケーター(13)と前記部品表面との間の特定の塗布距離で塗布され、前記塗布距離は1mm-80mm、5mm-50mm、又は10mm-25mmである、
請求項1から15のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項17】
a)アプリケーターをガイドするためのマニピュレーターの種類を設定する工程、
b)前記マニピュレーターの性質を表すマニピュレーター特異的パラメーターセットをメモリーから読み出す工程、
c)前記アプリケーターの種類を設定する工程、
d)前記アプリケーターの性質を表すアプリケーター特異的パラメーターセットをメモリーから読み出す工程、
e)経路プログラム特異的パラメーターセットを設定する工程であって、経路プログラム特異的パラメーターセットが、ロボット経路の性質、特に、
e1)コーティング経路幅、
e2)ロボット経路の曲線半径、
e3)コーティング体積流量、
e4)最大経路速度、
を定義する、工程、
f)前記パターンをメモリーから読み出す工程、
g)前記輪郭線を決定するために読み出された前記パターンを分析する工程、
h)経路プログラムを計算する、特に、
h1)進入経路、
h2)離脱経路、
h3)スイッチオン点、及び/又は、
h4)スイッチオフ点、
を有する経路プログラムを計算する工程、
i)前記経路プログラムを可視化する工程、
のうち少なくとも1つを含む、
請求項1から16のいずれか1項に記載のコーティング方法。
【請求項18】
コーティング剤で部品をコーティングするための、特に、自動車車体部品を塗装するための、コーティング設備であって、
a)前記コーティング剤を塗布するためのアプリケーター(13)、
b)特に直列ロボット運動学を有する多軸コーティングロボット(12)の形態である、部表表面の上方で前記アプリケーター(13)を移動させるためのマニピュレーター(12)、及び、
c)前記マニピュレーター(12)及び前記アプリケーター(13)を制御するための制御系(14)、
を有し、
d)前記制御系(14)が請求項1から17のいずれか1項に記載のコーティング方法を実行することを特徴とする、コーティング設備。
【請求項19】
前記パターン(3)及び/又は前記輪郭線(2、5、6)の空間位置及び範囲を検出するための測定系(11)を含み、前記測定系(11)は前記制御系(14)と信号接続されている、
請求項18に記載のコーティング設備。
【請求項20】
コンピュータープログラムが保存されているコンピューター読み取り可能媒体、特に、コンピューターメモリーであって、塗布設備の制御系で実行された場合に前記塗布設備に請求項1から17のいずれか1項に記載のコーティング方法を実行させる、コンピューター読み取り可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング剤(例えば、塗料)で部品(例えば、自動車車体部品)をコーティングするためのコーティング方法に関する。さらに、本発明は、対応するコーティング設備に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体部品を塗装するための現代のコーティング設備では、塗布装置として、通常、塗布対象の塗料の空間的に広がったスプレージェットを送達する回転噴霧器が用いられる。
【0003】
一方で、より最近の開発の前線では、塗布装置としてノズルアプリケーターがもたらされており、これは、プリントヘッドとも呼ばれる、例えば、特許文献1に記載されている。既知の回転噴霧器と対照的に、こうしたノズルアプリケーターは、塗料の空間的に広がったスプレージェットではなく、空間的に狭く限られたコーティング剤ジェットを放出する。これは、塗布された塗料がほとんど完璧にコーティング対象の部品の上にのり、オーバースプレーが僅かか又は存在しないという利点を有する。前述の既知のノズルアプリケーターの別の利点として、グラフィクス又はレタリングなどのパターンを部品表面に塗布できる点が挙げられる。しかし、ここでパターンの輪郭線が鮮明な縁取りにならないという問題がある。
【0004】
液滴ジェットが塗布されるとき、コーティング剤液滴は最初は部品表面上に複数の円形コーティングを形成し、その後にこれは塗布された塗料の凝集力によりまとまって連続したコーティングフィルムになる。しかし、液滴構造がパターンの外部輪郭線上でいまだ目に見え、煩わしい。
【0005】
液滴ジェットの代わりにジェット方向に連続するコーティング剤ジェットが塗布される場合にも同じ問題が同様の形態で生じる。この場合、コーティング剤ジェットは部品表面上に複数の連続コーティング剤経路を形成し、これは通常は互いに隣接し、その後に塗布された塗料の凝集力により集合する。しかし、経路の末端で構造が見て取れるので、表面又はパターンの全ての辺で輪郭線が鮮明な縁取りとはいえない。
【0006】
本発明の技術背景について、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、非特許文献1、特許文献8、及び特許文献9も参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第102013002412号明細書
【文献】独国特許出願公開第19854760号明細書
【文献】独国特許出願公開第102010019612号明細書
【文献】独国特許出願公開第102013006868号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0282599号明細書
【文献】独国特許出願公開第19936790号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2770322号明細書
【文献】独国特許出願公開第102016014944号明細書
【文献】独国特許出願公開第10150826号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】FAVRE-BULLE,B.著、『Automatisierung komplexer Industrieprozesse - Systeme, Verfahren und Informationsmanagement』、Springer-Verlag GmbH、2004年、ISBN 978-3-7091-0562-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上を鑑み、本発明は応分に改善されたコーティング方法及び対応するコーティング設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明に係るコーティング方法又は本発明に係る対応するコーティング設備により解決される。
【0011】
本発明に係るコーティング方法は、まず、コーティング対象の部品の部品表面上に製造されるパターンが設定され、このパターンは輪郭線を境界とする表面領域である。本発明の文脈において用いられるパターンの概念は、一般的な意味で理解されるべきであり、例えば、グラフィクス、レタリング、写真、文字、数字、及び他の可能な意匠、並びに、コーティング対象(例えば、自動車車体部品のルーフレール、フェンダーなど)の部分表面を含む。
【0012】
パターンは、適切なやり方で、操作者により、及び、半自動又は全自動で、ソフトウェアなどの補助により、輪郭線部分及び面部分に分割される。さらなる工程では、経路プログラムが、こうして決定された情報(部分表面)から、手動、半自動、又は全自動で作られる。
【0013】
さらに、本発明に係るコーティング方法は、既知のコーティング方法にならって、部品表面が、好ましくは技術水準について既に上述したようにノズルアプリケーター(例えば、プリントヘッド)を用いて、所望パターンのプログラムされた輪郭線内で面コーティングされる。
【0014】
本発明に係るコーティング方法は、ここで、パターンの輪郭線の少なくとも一部に沿ったコーティング剤での部品表面の鮮明な縁取りでのコーティングを特徴とする。したがって、本発明の文脈では、パターンは輪郭線内で面的に充填され、一方、パターンの輪郭線又は輪郭線の部分(例えば、先端縁)が鮮明な縁取りでトレースされる。
【0015】
ここで、本発明の範囲内でこれら2つのコーティング工程の様々な順番が可能であることを注記すべきだろう。本発明の一変形例では、輪郭線内での部品表面の面コーティングが先ず行われ、パターンの輪郭線に沿った鮮明な縁取りでのコーティングが続くことが考えられる。また、代替的に、パターンの輪郭線が先ず描かれ、輪郭線内での面コーティングが続くことも可能である。
【0016】
さらに、所定のパターンの輪郭線内での面コーティングが輪郭線に沿った鮮明な縁取りでのコーティングよりも大きな面コーティング性能で行われることが好ましいことを注記すべきだろう。本発明の文脈では、面コーティング性能という用語は、特定の時間単位内に部品上にコーティングされる面の広さ、すなわち、コーティングされる面と必要とされるコーティング時間の割合で定義される。
【0017】
塗布装置としてノズルアプリケーターを用いる場合、面コーティング性能のこの変形例は、例えば、ノズルアプリケーターの幾つかのノズルを活性化又は不活性化することにより、実現できる。したがって、輪郭線内での面コーティングは多数の活性化されたノズルで行うことができ、一方、パターンの輪郭線に沿った鮮明な縁取りでのコーティングは少数の活性化されたノズルで行うことができる。例えば、パターンの輪郭線に沿った鮮明な縁取りでのコーティングは、ノズルアプリケーターの、20、10、若しくは5未満の、又は、ちょうど単一のノズルで行うことができる。
【0018】
また、一方での面コーティング及び他方での鮮明な縁取りでのコーティングについての面コーティング性能の変形例は他のやり方でも実行できる。例えば、塗布されるコーティング剤の流量が変更されてもよく、この目的で塗布圧力が変更されてもよい。
【0019】
さらに、本発明に係るコーティング方法ではアプリケーター(例えば、ノズルアプリケーター)がマニピュレーターにより部品表面の上方で移動させられることが好ましいことを注記すべきだろう。マニピュレーターは直列ロボット運動学を有する多軸コーティングロボットであることが好ましい。マニピュレーターの別の可能性がx-y又はx-y-z直線軸システムであり、このシステムでは、アプリケーターが軸の一つに取り付けられており、アプリケーターがコーティング対象の表面の任意の位置に移動させられるように軸は互いに取り付けられ関連している。
【0020】
パターンの輪郭線に沿った前述の鮮明な縁取りでのコーティングでは、アプリケーターがコーティング剤の特定の流量を塗布しつつ、マニピュレーターが特定の走行速度でパターンの輪郭線に沿ってアプリケーターを移動させる。しかし、パターンの形状及び輪郭線の形状によっては、アプリケーターが一定の走行速度で部品表面の上方で移動することは通常は不可能である。例えば、アプリケーターは、頂点で、広くは、不連続な方向進行を伴う輪郭線の点、転換点、又は折れ曲がり点で、減速及び再加速される必要がある。塗布されるコーティング剤の一定の流量と合わさって、このことは走行速度におけるばらつきのために部品表面上のコーティング厚さにおける対応するばらつきをまねくと考えられる。部品表面上のコーティング厚さの望ましくないばらつきは走行速度に応じてコーティング剤の流量を調節することにより防ぐことができる。そして、それ故、走行速度の減少はコーティング剤の流量の対応する減少をもたらし、一方、走行速度の上昇はコーティング剤の流量の対応する増加をもたらす。
【0021】
しかし、上述した走行速度に応じてのコーティング剤の流量の調節は、部品表面上での一定のコーティング厚さを実現するのに常に十分というわけではなく、又は、常に技術的に実現可能というわけでもない。例えば、直列ロボット運動学を有するコーティングロボットがロボット経路で直角な折れ曲がり点を実現することは困難である。そのため、輪郭線を連続的に走行するのではなく、マニピュレーターにより簡単に走行できる幾つかの経路セクションで走行するのが、当該経路セクションは、角も、折れ曲がり点も、転換点も有しないので、有利であり得る。そして、連続する経路セクションの間で、アプリケーターは、コーティング剤の送達を中断し、また、このコーティングの休止の最中に次の経路を開始する。
【0022】
走行されるパターンの輪郭線の幾つかの連続する経路セクションへのこの分割は、特に、輪郭線内の、折れ曲がり点などの、問題点で役立つ。本発明の文脈では、『問題点』という用語は、好ましくは、用いられたマニピュレーターが、走行速度の急下降を伴うのみで、例えば、50%、70%、80%、又は90%を超える下降を伴い、中断なしで、各問題点を通過できることを指す。
【0023】
マニピュレーターの種類、マニピュレーターの剛性及び/若しくはマニピュレーターと走行軸と基材とからなる全体のシステムの剛性、並びに/又は、アプリケーターの能力に応じて、可能半径及び/又は加速距離は異なり得る。
【0024】
マニピュレーターの動作経路プログラムが自動的に生成される場合、上述のパラメーターはこのために必要とされるソフトウェアに保存されている又は入力される。
【0025】
さらに、マニピュレーターが直後に続く経路セクションに再び接触するために直接に連続する経路セクションのコーティングの間に問題点で折れ曲がりなしの開始移動を実行することが好ましいことを注記すべきだろう。
【0026】
本発明の一変形例では、輪郭線の鮮明な縁取りでのコーティングは、ジェットの長手方向に連続するコーティング剤ジェットで、好ましくは、全輪郭線に沿って、実行される。
【0027】
また、本発明の他変形例では、輪郭線の鮮明な縁取りでのコーティングは、まず、ジェットの長手方向に連続するコーティング剤ジェットで、その後、ジェットの長手方向に連続しない無数の液滴からなる液滴ジェットで、実行される。
【0028】
本発明の範囲内で、パターンの面コーティング及び/又は輪郭線の鮮明な縁取りでのコーティングは、ジェットの長手方向に連続するコーティング剤ジェットで及びジェットの長手方向に連続しない無数の液滴からなる液滴ジェットで交互に実行できる。異なるジェット形態(液滴ジェット又は連続ジェット)の間での交替は、時間的なものでもよいし、輪郭線内のパターンと輪郭線自体との間で交替するものでもよい。
【0029】
既に上で簡単に触れたように、本発明の範囲内で、まず、輪郭線内のパターンが表面にわたり塗布され、その後にのみ、輪郭線が追従される可能性がある。本発明の範囲内で、パターンが表面に塗布された後に、輪郭線がその後に正確な一致で追従され得るように、まず、測定系(例えば、光学測定系)が最初は未だ不鮮明な輪郭線の空間的向き及び位置を決定するために使用される可能性がある。
【0030】
また、この代わりに、まず、輪郭線が予め描かれ、その後に、輪郭線内のパターンが全表面にわたってコーティングされてもよい。この場合、輪郭線が予め描かれた後に、パターンがその後に正確な一致で予め描かれた輪郭線内に面コーティングされ得るように、まず、輪郭線の空間的位置及び向きが測定系により決定されることが可能である。
【0031】
上述の測定系は、マニピュレーターに取り付けられ、そして、マニピュレーターにより移動させられてもよい。また、この代わりに、測定系がマニピュレーターとは別個に固定式に配置されることも可能である。
【0032】
好ましくは、測定系は、光学式に動作し、このために少なくとも1つのカメラと1つの画像評価ユニットを有する。
【0033】
本発明の一変形例では、輪郭線内での面コーティングは輪郭線に沿った鮮明な縁取りでのコーティングと同じコーティング剤で実行される。
【0034】
また、本発明の他変形例では、異なるコーティング剤、特に、異なる色のコーティング剤がこのために用いられる。
【0035】
さらに、本発明の範囲内で、面コーティングが異なるパターンについて異なるコーティング剤で実行されることが可能である。さらに、鮮明な縁取りでのコーティングが異なる輪郭線について異なるコーティング剤で実行されることも可能である。
【0036】
既に上で簡単に触れたように、部品に塗布されるコーティング剤液滴又はコーティング剤経路はコーティング剤の凝集力により塗布後に集合して連続するコーティング剤フィルムとなり、これは原則的に望ましい。しかし、この集合はコーティング剤の塗布後に特定の集合時間内にのみ可能である。輪郭線及び面コーティングについて同じコーティング剤が用いられる場合、輪郭線と内部表面とが集合することが基本的に望ましい。この場合、輪郭線及び表面についてのコーティング剤が集合するように、パターンの面コーティング及び輪郭線に沿った鮮明な縁取りでのコーティングは集合時間よりも短い時間間隔で実行されることが好ましい。
【0037】
また、輪郭線及び内部表面についての異なるコーティング剤の場合、特に、輪郭線及び内部表面についての異なる色のコーティング剤の場合、コーティング剤の集合は必ずしも望ましくない。この場合、輪郭線及び内部表面についての異なるコーティング剤が集合しないように、パターンの面コーティング及び輪郭線に沿った鮮明な縁取りでのコーティングは集合時間よりも長い時間間隔で実行されることが好ましい。
【0038】
通常、スプレージェットを放出せず狭く限られたコーティング剤ジェットを放出するアプリケーターによりコーティング剤が塗布されることが好ましいことも注記すべきだろう。そのために、先行技術から原則的に知られるように、アプリケーターはプリントヘッドであってもよい。
【0039】
コーティング剤ジェットは、例えば、ジェットの長手方向において相互に分離されているコーティング剤液滴からなってもよい。また、この代わりに、コーティング剤ジェットがジェットの長手方向に連続することも可能である。
【0040】
既に上で簡単に触れたように、マニピュレーターにより、好ましくは、直列ロボット運動学を有する多軸コーティングロボット又は直線軸システムにより、アプリケーターが部品表面の上方で移動させられることが好ましい。
【0041】
ここで、これはマニピュレーターが高い空間位置決め精度及び/又は再現性を有する場合に有利であり、これらは、好ましくは、5mm、2mmよりも、また、さらには、0.5mmよりも正確である。このことは輪郭線及びパターンの内部表面が互いに正確に一致するように塗布できることに役に立つ。
【0042】
塗布されるコーティング剤の種類について、本発明は、一成分塗料、二成分塗料、水性塗料、又は溶剤系塗料などの塗料に限られない。むしろ、コーティング剤は、接着剤、接着促進剤、プライマー、ペースト状材料、封止剤、又は絶縁材であってもよい。
【0043】
さらに、コーティング剤がアプリケーターと部品表面との間の特定の塗布距離で塗布されることが好ましく、塗布距離が、好ましくは、1mm-80mm、5mm-50mm、又は10mm-50mmであることは注記すべきだろう。
【0044】
さらに、本発明は上述の本発明に係るコーティング方法についての権利保護を請求するのみではない。むしろ、本発明は本発明に係るコーティング方法を実行する対応したコーティング設備についての権利保護も請求する。
【0045】
そこで、本発明に係るコーティング設備は、まず、コーティング剤を塗布するためのアプリケーターを含み、アプリケーターは好ましくはノズルアプリケーター又はプリントヘッドである。
【0046】
さらに、本発明に係るコーティング設備は、部品表面の上方でアプリケーターを移動させるためのマニピュレーター、好ましくは、直列ロボット運動学を有する多軸コーティングロボット又は直線軸ユニットを含む。
【0047】
さらに、本発明に係るコーティング設備はマニピュレーター及びアプリケーターを制御するための制御系を備え、ここで、制御系は、ハードウェアコンポーネント及びソフトウェアコンポーネントを含んでもよく、また、異なるパーツ及び部品に分散されてもよい。制御系は、コーティング設備が本発明に記載の上述のコーティング方法を実行するように設計される。
【0048】
このために、本発明に係るコーティング設備は既に上述した測定系を含んでもよい。
【0049】
最後に、本発明は、制御系上で実行された場合に塗布設備に本発明に係るコーティング方法を実行させる対応した制御プログラムについての権利保護も請求する。制御プログラムはコンピューター読み取り可能媒体(例えば、コンピューターメモリ、USBスティック、CDROM、DVD、メモリカードなど)に保存されてもよいので、制御プログラムが保存されているコンピューター読み取り可能媒体も権利保護される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本発明の更なる他の有利な実施形態は、従属請求項に示され、また、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施形態の記載とともに以下でより詳細に説明される。
【0051】
図1A】ジェットの長手方向に連続するコーティング剤ジェットを放出するノズルアプリケーターによるパターンの従来の塗布の模式図。
図1B】コーティング剤経路が部品表面上で集合した後の図1Aに記載のパターン。
図2A】液滴ジェットを放出するノズルアプリケーターについての図1Aの修正例。
図2B】液滴ジェットを放出するノズルアプリケーターについての図1Bの修正例。
図3A】ジェットの長手方向に連続するコーティング剤ジェットを放出するノズルアプリケーターによる本発明に係るパターンの塗布の様々な模式図。
図3B】ジェットの長手方向に連続するコーティング剤ジェットを放出するノズルアプリケーターによる本発明に係るパターンの塗布の様々な模式図。
図3C】ジェットの長手方向に連続するコーティング剤ジェットを放出するノズルアプリケーターによる本発明に係るパターンの塗布の様々な模式図。
図3D】ジェットの長手方向に連続するコーティング剤ジェットを放出するノズルアプリケーターによる本発明に係るパターンの塗布の様々な模式図。
図4A】液滴ジェットを放出するノズルアプリケーターについての図3Aの修正例。
図4B】液滴ジェットを放出するノズルアプリケーターについての図3Bの修正例。
図4C】液滴ジェットを放出するノズルアプリケーターについての図3Cの修正例。
図4D】液滴ジェットを放出するノズルアプリケーターについての図3Dの修正例。
図5】本発明に係るコーティング方法を例示するフローチャート。
図6】本発明に係るコーティング設備の高度に簡略化した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1A及び1Bは、自動車車体部品などの部品の部品表面へのDという文字の形態のパターンの従来の塗布の模式図を示す。この場合、最初は細長い(輪郭線2が境界となる)コーティング剤経路1が部品表面上に形成されるように、ノズルアプリケーターはジェットの長手方向に連続するコーティング剤ジェットを部品表面に塗布する。そして、部品表面への衝突後、コーティング剤経路1は、塗布されたコーティングの凝集力により集合し、その後、連続するパターン3を形成する。この既知の種類のパターン塗布では、コーティング剤経路1の輪郭は輪郭線2に沿ってまだ認識可能である。そのため、輪郭線2は特段鮮明な縁取りとはいえず、望ましくない。
【0053】
図2A及び2Bは、液滴ジェット、すなわち、ジェットの長手方向に連続しないコーティング剤液滴からなるコーティング剤ジェットを放出するノズルアプリケーターでのパターン塗布についての対応する図を示す。
【0054】
コーティング剤経路1の代わりに、コーティング剤液滴4が部品表面上に形成され、これはその後に集合して塗布されたコーティング剤の凝集力により連続するパターン3を形成する。ここでも、パターン3の輪郭線2も特段鮮明な縁取りとはいえない。
【0055】
図3A-3Dは、本発明に係るパターン塗布の図を示し、これらの図は、基本的に図1A及び1Bに対応しており、すなわち、ここでも、コーティング剤経路1が部品表面上に形成されるように、パターン3はジェットの長手方向に連続するコーティング剤ジェットを放出するノズルアプリケーターにより塗布される。ここで、図3Aの符号3が、所望のパターン、すなわち、全行程で用いられる事前設定を示すことは注記すべきだろう。
【0056】
ここで、パターン3は内部輪郭線5及び外部輪郭線6を有し、これらは鮮明な縁取りで塗装されパターン3の所望の縁取りの鮮明さをもたらす。このために、ノズルアプリケーターは、内部輪郭線5及び外部輪郭線6に沿ってガイドされ、そして、内部輪郭線5又は外部輪郭線を縁取りも鮮明にコーティングし、ここで、所望の縁取りの鮮明さを達成するためにノズルアプリケーターの単一のノズルのみ又は数個のノズルのみが用いられる。
【0057】
そして、輪郭線2内でのパターン3の面コーティングは、例えば、より高い面コーティング性能で、個別の処理工程で実行される。
【0058】
ここで、ノズルアプリケーターが直列ロボット運動学を有する多軸コーティングロボットにより部品表面の上方でガイドされることは注記すべきだろう。こうしたコーティングロボットはノズルアプリケーターの高精度な位置決めを可能とするが、ロボット経路の、(限界角を超える)角度、特に、直角な角度を有する折れ曲がり点が問題となる。したがって、外部輪郭線6は、外部輪郭線6が直角の折れ曲がり点を示す2箇所の問題点7、8を有する。同様に、内部輪郭線5も、内部輪郭線5が直角の折れ曲がり点を示す2箇所の問題点9、10を有する。そのため、直列ロボット運動学を有するコーティングロボットがノズルアプリケーターを問題点7-10の上方でガイドすることは、そのために走行速度を大きく(限界値ゼロまで)減ぜねばならないかもしれないので困難である。
【0059】
そのため、本発明に係るコーティング方法は、内部輪郭線5が2つの経路セクションBA2、BA3に分割されるのと同様に、外部輪郭線6が2つの経路セクションBA1、BA4に分割されることを提供する。外部輪郭線6の鮮明な縁取りでのコーティングの最中に、開始点P1Aから始めて離脱点P1Eで終わるように、経路セクションBA1が先ずコーティングされる。経路セクションBA1では大きな角度(鋭い折れ曲がり)が生じないので、コーティングロボットが殆ど一定の走行速度で経路セクションBA1に沿ってノズルアプリケーターをガイドできる。
【0060】
内部輪郭線5の経路セクションBA2も、開始点B2Aから始めて離脱点P2Eで終わるように、同様にコーティングされる。ここでも、経路セクションBA2上に折れ曲がり点が存在しないので、これにより経路セクションBA2内で殆ど一定の走行速度が可能となる。
【0061】
経路セクションBA3は、開始点P3Aから始まり離脱点P3Eで終わり、完全に直線状であり、これも経路セクションBA3上で一定の走行速度を可能とする。
【0062】
最後に、経路セクションBA4は、開始点P4Aから始まり離脱点P4Eで終わる。経路セクションBA4も完全に直線状であり、これにより一定の走行速度を可能とする。
【0063】
図4A-4Dは、液滴ジェットを放出するノズルアプリケーターについての図3A-3Dの修正例を示す。繰り返しを避けるために、図3A-3Dの記載を参照されたい。
【0064】
図5は、本発明に係るコーティング方法を例示するフローチャートを示す。
【0065】
プログラム開始後に、まず、マニピュレーターの種類、すなわち、用いられた多軸コーティングロボットの種類、又は、例えば、直線軸システムの種類が、工程S1で設定される。そして、マニピュレーターの種類に応じて、対応するマニピュレーターの性質を反映する関連するパラメーターセットがロードされる。
【0066】
工程S2では、アプリケーターの種類が設定され、対応するアプリケーターの種類の性質を反映する対応するパラメーターセット、並びに、ノズルの間隔、ノズルの直径、及びノズルの数などの選択的パラメーターがロードされる。
【0067】
そして、工程S3では、最大及び/又は最小コーティング経路幅、最小可能曲線半径、最小及び/又は最大コーティング体積流量、並びに、最大経路速度などの、経路プログラムアルゴリズムについてのパラメーターが設定される。
【0068】
そして、工程S4では、パターンとして塗布される予定のグラフィックが読み取られる。
【0069】
そして、工程S5では、例えば、内部表面、輪郭線、割り振られた色について、及び、利用可能な色とのマッチングについて、グラフィックが分析される。
【0070】
そして、工程S6では、進入経路及び離脱経路並びにスイッチオン点及びスイッチオフ点を定義する経路プログラムが計算される。
【0071】
そして、工程S7では、経路プログラムが可視化され、経路プログラムのシミュレーションが実行される。そして、プログラムの操作者は結果を評価できる。経路プログラムが許容できない場合、工程S3の対応する調節に続く。そうでない場合は、経路プログラムが制御のために開放される。
【0072】
図6は、測定系11、マニピュレーター12、アプリケーター13、及び制御システム14を有する本発明に係るコーティング設備の高度に簡略化した模式図を示す。制御システム14は、ハードウェアコンポーネント及びソフトウェアコンポーネントを含んでもよく、また、様々なパーツ及び部品にわたり分散されてもよい。
【0073】
制御システム14は、本発明に係るモニター方法が実行されるように上記のやり方で、マニピュレーター12及びアプリケーター13を制御する。
【0074】
ここで、輪郭線及び内部表面が互いに正確に一致して塗布され得るように、測定系11はパターンの内部表面及び輪郭線の空間的位置及び向きをもとめることができる。
【0075】
本発明は上述の好ましい実施形態に限られるものではない。むしろ、本発明の思想を利用し、それ故に、権利保護範囲に属する多数の変形例及び修正例が可能である。特に、本発明は、従属請求項の主題と特徴について、それぞれが引用する請求項とは独立して、かつ、特に、主請求項の特徴なしで、権利保護を請求する。したがって、本発明は、互いに独立した権利保護を享受する本発明の異なる態様を含む。
【0076】
[付記]
[付記1]
コーティング剤で部品をコーティングするための、特に、自動車車体部品を塗装するための、コーティング方法であって、
a)コーティング対象の部品表面上のパターン(3)であって、輪郭線(2、5、6)が境界となる表面領域であるパターン(3)を設定する工程と、
b)前記輪郭線(2、5、6)内で前記コーティング剤で前記部品表面の面コーティングを行う工程と、
を備え、
c)前記パターン(3)の前記輪郭線(2、5、6)の少なくとも一部に沿って前記コーティング剤で前記部品表面の鮮明な縁取りでのコーティングを行う工程をさらに備えることを特徴とする、方法。
【0077】
[付記2]
前記輪郭線(2、5、6)内での前記面コーティングは前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記鮮明な縁取りでのコーティングよりも大きな面コーティング性能で行われる、
付記1に記載のコーティング方法。
【0078】
[付記3]
a)前記コーティングはコーティングのためにグループ毎に又は個別に活性化又は不活性化できる複数のノズルを有するアプリケーター(13)により実行され、
b)前記輪郭線(2、5、6)内での前記面コーティングでは、前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記鮮明な縁取りでのコーティングの場合よりも多数のノズルがコーティングのために活性化され、
c)前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記鮮明な縁取りでのコーティングでは、好ましくは、前記アプリケーター(13)の、20、10、若しくは5未満のノズルが、又は、単一のノズルのみがコーティングのために活性化される、
付記1に記載のコーティング方法。
【0079】
[付記4]
a)前記パターン(3)の前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記鮮明な縁取りでのコーティングは、マニピュレーター(12)により、特に、直列ロボット運動学を有する多軸コーティングロボット(12)により前記輪郭線(2、5、6)に沿って移動させられるアプリケーター(13)によって実行され、及び、
b)前記アプリケーター(13)は前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記鮮明な縁取りでのコーティングの最中に特定の流量で前記コーティング剤を塗布し、及び、
c)前記マニピュレーター(12)は前記鮮明な縁取りでのコーティングの最中に前記部品表面の上方で特定の走行速度で前記輪郭線(2、5、6)に沿って前記アプリケーター(13)を移動させ且つその際に前記輪郭線(2、5、6)を走行し、及び、
d)前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記鮮明な縁取りでのコーティングの最中に、
d1)前記コーティング剤の流量は、可能な限り一定の前記部品表面上のコーティング厚さを実現するように走行速度に応じて調節され、又は、
d2)前記コーティング剤の流量は、一定のままである、
付記1から3のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0080】
[付記5]
a)前記パターン(3)の前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記鮮明な縁取りでのコーティングは、マニピュレーター(12)により、特に、直列ロボット運動学を有する多軸コーティングロボット(12)により前記輪郭線(2、5、6)に沿って移動させられるアプリケーター(13)によって実行され、及び、
b)前記マニピュレーター(12)は前記鮮明な縁取りでのコーティングの最中に前記部品表面の上方で特定の走行速度で前記輪郭線(2、5、6)に沿って前記アプリケーター(13)を移動させ且つその際に前記輪郭線(2、5、6)を走行し、及び、
c)前記マニピュレーター(12)は、連続して前記輪郭線(2、5、6)を走行するのではなく、幾つかの経路セクション(BA1-BA4)で前記輪郭線(2、5、6)を走行し、及び、
d)前記アプリケーター(13)は前記輪郭線(2、5、6)の直接に連続する経路セクション(BA1-BA4)のコーティングの間に前記コーティング剤の送達を中断する、
付記1から4のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0081】
[付記6]
a)前記直接に連続する経路セクション(BA1-BA4)は、前記輪郭線(2、5、6)の問題点(7-10)で、特に、前記輪郭線(2、5、6)の折れ曲がり点で、互いに隣接し、前記問題点(7-10)は、前記マニピュレーター(12)が、急下降を伴うのみで、特に、50%、70%、80%、又は90%を超える下降を伴い、中断なく前記問題点(7-10)を前記走行速度で通過することを特徴とし、及び/又は、
b)前記直接に連続する経路セクションで再開するために前記マニピュレーター(12)は前記直接に連続する経路セクション(BA1-BA4)のコーティングの間に前記問題点(7-10)で折れ曲がりなしの開始移動を実行する、
付記5に記載のコーティング方法。
【0082】
[付記7]
a)前記輪郭線(2、5、6)の前記鮮明な縁取りでのコーティングはジェットの長手方向に連続するコーティング剤ジェットで実行される、又は、
b)前記輪郭線(2、5、6)の前記鮮明な縁取りでのコーティングは、まず、ジェットの長手方向に連続するコーティング剤ジェットで、その後、ジェットの長手方向に連続しない無数の液滴からなる液滴ジェットで、実行される、
付記1から6のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0083】
[付記8]
前記パターン(3)の前記面コーティング及び前記輪郭線(2、5、6)の前記鮮明な縁取りでのコーティングは、ジェットの長手方向に連続するコーティング剤ジェットで及びジェットの長手方向に連続しない無数の液滴からなる液滴ジェットで交互に実行され、しかも、
a)時間的に交互である、又は、
b)前記パターン(3)と前記輪郭線(2、5、6)との間で交互である、
付記1から7のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0084】
[付記9]
a)まず、前記パターン(3)がコーティングされ、その後にのみ、前記輪郭線(2、5、6)がコーティングされる工程、又は、
b)まず、前記輪郭線(2、5、6)がコーティングされ、その後に、前記パターン(3)がコーティングされる工程、
を含む、
付記1から8のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0085】
[付記10]
a)まず、前記パターン(3)がコーティングされ、その後にのみ、前記輪郭線(2、5、6)がコーティングされる工程、及び、
b)前記パターン(3)の前記面コーティング後の前記輪郭線(2、5、6)を決定するために、前記部品表面に塗布された前記パターン(3)が、その空間的位置及び範囲について、測定系(11)により、特に、光学測定系(11)により検出される工程、
を含む、
付記1から9のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0086】
[付記11]
a)まず、前記輪郭線(2、5、6)がコーティングされ、その後に、前記パターン(3)がコーティングされる工程、及び、
b)前記パターン(3)の面範囲を決定するために、前記部品表面に塗布された前記輪郭線(2、5、6)が、測定系(11)により、特に、光学測定系(11)により検出される工程、
を含む、
付記1から9のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0087】
[付記12]
a)前記測定系(11)は、前記マニピュレーター(12)に取り付けられ、前記マニピュレーター(12)により移動させられる、又は、
b)前記測定系(11)は、前記マニピュレーター(12)とは別個に固定式に配置される、
付記10又は11に記載のコーティング方法。
【0088】
[付記13]
a)前記輪郭線(2、5、6)内での前記面コーティングは、前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記鮮明な縁取りでのコーティングとは異なるコーティング剤で、特に、異なる色のコーティング剤で実行され、及び/又は、
b)異なるパターン(3)の前記面コーティングが、異なるコーティング剤で、特に、異なった色のコーティング剤で実行され、及び/又は、
c)異なる輪郭線(2、5、6)の鮮明な縁取りでのコーティングが、異なるコーティング剤で、特に、異なった色のコーティング剤で実行される、
付記1から12のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0089】
[付記14]
a)前記部品表面上に2次元連続コーティングを形成するために、前記コーティング剤は、前記部品表面への塗布後に、特定の集合時間内にのみ集合することができ、及び、
b)前記輪郭線(2、5、6)及び前記部品表面の前記コーティング剤が集合するように、前記パターン(3)の前記面コーティング及び隣接する前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記鮮明な縁取りでのコーティングは前記集合時間よりも短い時間間隔で行われる、
付記1から13のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0090】
[付記15]
a)前記輪郭線(2、5、6)内での前記面コーティングは、前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記鮮明な縁取りでのコーティングとは異なるコーティング剤、特に、異なる色のコーティング剤で、実行され、及び、
b)前記部品表面上に2次元連続コーティングを形成するために、前記コーティング剤は、前記部品表面への塗布後に、特定の集合時間内にのみ集合することができ、及び、
c)前記輪郭線(2、5、6)及び前記部品表面の前記異なるコーティング剤が集合しないように、前記パターン(3)の前記面コーティング及び隣接する前記輪郭線(2、5、6)に沿った前記鮮明な縁取りでのコーティングは前記集合時間よりも長い時間間隔で行われる、
付記1から13のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0091】
[付記16]
a)前記コーティング剤はスプレージェットではなく狭く限られたコーティング剤ジェットを放出するアプリケーター(13)により塗布され、及び/又は、
b)前記コーティング剤ジェットは、
b1)ジェットの長手方向において相互に分離されているコーティング剤液滴からなり、又は、
b2)ジェットの長手方向に連続しており、及び/又は、
c)前記アプリケーター(13)は、マニピュレーター(12)により、特に、直列ロボット運動学を有する多軸コーティングロボット(12)により、前記部品表面の上方で移動させられ、及び/又は、
d)前記マニピュレーター(12)は、5mm、2mm、又は0.5mmよりも正確な空間的位置決め精度及び/又は再現精度を有し、及び/又は、
e)前記コーティング剤は、塗料、特に、一成分塗料又は二成分塗料、水性塗料又は溶剤系塗料、又は、接着剤、接着促進剤、プライマー、ペースト状材料、封止剤、絶縁材(Daemmstoff)であり、及び/又は、
f)前記コーティング剤は前記アプリケーター(13)と前記部品表面との間の特定の塗布距離で塗布され、前記塗布距離は1mm-80mm、5mm-50mm、又は10mm-25mmである、
付記1から15のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0092】
[付記17]
a)アプリケーターをガイドするためのマニピュレーターの種類を設定する工程、
b)前記マニピュレーターの性質を表すマニピュレーター特異的パラメーターセットをメモリーから読み出す工程、
c)前記アプリケーターの種類を設定する工程、
d)前記アプリケーターの性質を表すアプリケーター特異的パラメーターセットをメモリーから読み出す工程、
e)経路プログラム特異的パラメーターセットを設定する工程であって、経路プログラム特異的パラメーターセットが、ロボット経路の性質、特に、
e1)コーティング経路幅、
e2)ロボット経路の曲線半径、
e3)コーティング体積流量、
e4)最大経路速度、
を定義する、工程、
f)前記パターンをメモリーから読み出す工程、
g)前記輪郭線を決定するために読み出された前記パターンを分析する工程、
h)経路プログラムを計算する、特に、
h1)進入経路、
h2)離脱経路、
h3)スイッチオン点、及び/又は、
h4)スイッチオフ点、
を有する経路プログラムを計算する工程、
i)前記経路プログラムを可視化する工程、
のうち少なくとも1つを含む、
付記1から16のいずれか1つに記載のコーティング方法。
【0093】
[付記18]
コーティング剤で部品をコーティングするための、特に、自動車車体部品を塗装するための、コーティング設備であって、
a)前記コーティング剤を塗布するためのアプリケーター(13)、
b)特に直列ロボット運動学を有する多軸コーティングロボット(12)の形態である、部表表面の上方で前記アプリケーター(13)を移動させるためのマニピュレーター(12)、及び、
c)前記マニピュレーター(12)及び前記アプリケーター(13)を制御するための制御系(14)、
を有し、
d)前記制御系(14)が付記1から17のいずれか1つに記載のコーティング方法を実行することを特徴とする、コーティング設備。
【0094】
[付記19]
前記パターン(3)及び/又は前記輪郭線(2、5、6)の空間位置及び範囲を検出するための測定系(11)を含み、前記測定系(11)は前記制御系(14)と信号接続されている、
付記18に記載のコーティング設備。
【0095】
[付記20]
コンピュータープログラムが保存されているコンピューター読み取り可能媒体、特に、コンピューターメモリーであって、塗布設備の制御系で実行された場合に前記塗布設備に付記1から17のいずれか1つに記載のコーティング方法を実行させる、コンピューター読み取り可能媒体。
【符号の説明】
【0096】
1 コーティング剤経路
2 輪郭線
3 パターン
4 コーティング剤液滴
5 内部輪郭線
6 外部輪郭線
7、8 外部輪郭線6の問題点
9、10 内部輪郭線5の問題点
11 測定系
12 マニピュレーター
13 アプリケーター
14 制御システム
BA1-BA4 経路セクション
P1A-P4A 開始点
P1E-P4E 離脱点
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6