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特許7514863ガス再循環システムにおける煙除去システムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】ガス再循環システムにおける煙除去システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20240704BHJP
   A61M 13/00 20060101ALI20240704BHJP
   A61B 17/34 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
A61B17/00
A61M13/00
A61B17/34
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021569986
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 US2020034288
(87)【国際公開番号】W WO2020237175
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】62/851,950
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597172982
【氏名又は名称】ノースゲート テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】ハーバー ブラッド エイ
(72)【発明者】
【氏名】グンドラパリ ラマラオ
(72)【発明者】
【氏名】バンプス ジェイコブ エム
(72)【発明者】
【氏名】プッシュ ジェイソン ティー
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/057030(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0112246(US,A1)
【文献】特開平11-309156(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0261967(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0000959(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
A61M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡外科的処置においてガスの流れを管理する際に用いられるガス再循環システムであって、前記システムは、
ガス入力連結部と流体連通状態にある第1の管を含み、前記第1の管は、腹膜腔中に挿入可能な外科的器械に連結可能であるよう構成され、
ガス出力連結部と流体連通状態にある第2の管を含み、前記第2の管は、腹膜腔中に挿入可能な外科的器械に連結可能であるよう構成され、
モータを備えたポンプを含み、前記ポンプは、ガスを腹膜腔から前記第1の管中に通して前記ガス入力連結部中に引き込むとともにガスを前記第2の管に通して前記ガス出力連結部から排出して腹膜腔中に送り込むよう構成され、
前記第1の管、前記ポンプおよび前記第2の管によって構成されたガス流路に沿う場所に位置決めされかつ前記ガス中に存在する煙の量を測定するよう構成された煙検出センサを含み、
コントローラを含み、前記コントローラは、
煙の検出量を表す出力信号を前記煙検出センサから受け取り、そして
前記煙の検出量に応答して前記ポンプの前記モータの速度を調節するよう構成されており、
前記煙検出センサは、光センサを含み、
前記光センサは、光源および前記光源から放出された光を受け取るよう位置決めされた光受容器を有し、
前記光受容器は、前記光受容器が前記ガス中の煙から反射された前記光源からの光だけを受け取ることができるよう前記光源に対して角度をなして位置決めされている、ガス再循環システム。
【請求項2】
前記煙検出センサは、前記第1の管に沿って位置決めされている、請求項1記載のガス再循環システム。
【請求項3】
前記煙検出センサは、前記第2の管に沿って位置決めされている、請求項1記載のガス再循環システム。
【請求項4】
前記煙検出センサは、前記ポンプ内に位置決めされている、請求項1記載のガス再循環システム。
【請求項5】
前記煙検出センサは、イオン化煙検出器回路を有する、請求項1記載のガス再循環システム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記煙の検出量の増加に応答して前記ポンプの前記モータの前記速度を増大させるよう構成されている、請求項1記載のガス再循環システム。
【請求項7】
前記煙検出センサは、前記出力信号を前記コントローラにワイヤレスで送信するよう構成されている、請求項1記載のガス再循環システム。
【請求項8】
前記光源は、赤外光源である、請求項記載のガス再循環システム。
【請求項9】
前記第2の管に沿って位置決めされたフィルタをさらに含み、前記フィルタは、煙を前記ガスの流れから前記第2の管に通して除去するよう構成される、請求項1記載のガス再循環システム。
【請求項10】
前記煙検出センサと前記ポンプとの間で前記第1の管に沿って位置決めされた弁をさらに含み、前記弁は、前記ポンプをバイパスして前記ガスの流れを前記第1の管から吸引排気管に差し向けるよう前記コントローラにより調節可能であり、
前記コントローラは、排気しきい値を超える煙の量を指示する前記出力信号に応答して前記ガスの流れを前記吸引排気管に差し向けるよう前記弁を調節するよう構成されている、請求項記載のガス再循環システム。
【請求項11】
内視鏡外科的処置で用いられるガス再循環システムであって、前記システムは、
ガス入力連結部と流体連通状態にある第1の管を含み、前記第1の管は、腹膜腔中に挿入可能な外科的器械に連結可能であるよう構成され、
ガス出力連結部と流体連通状態にある第2の管を含み、前記第2の管は、腹膜腔中に挿入可能な外科的器械に連結可能であるよう構成され、
モータを備えたポンプを含み、前記ポンプは、ガスを腹膜腔から前記第1の管中に通して前記ガス入力連結部中に引き込むとともにガスを前記第2の管に通して前記ガス出力連結部から排出して腹膜腔中に送り込むよう構成され、
前記第1の管、前記ポンプおよび前記第2の管によって構成されたガス流路に沿う場所に位置決めされかつ前記ガス中に存在する煙の量を測定するよう構成された煙検出センサを含み、
コントローラを含み、前記コントローラは、
煙の検出量を表す出力信号を前記煙検出センサから受け取り、そして
煙の検出量が排気しきい値を超えたことの確認に応答して、ガスを前記第1の管から吸引源に差し向けるよう構成されており、
前記煙検出センサは、光センサを含み、
前記光センサは、光源および前記光源から放出された光を受け取るよう位置決めされた光受容器を有し、
前記光受容器は、前記光受容器が前記ガス中の煙から反射された前記光源からの光だけを受け取ることができるよう前記光源に対して角度をなして位置決めされている、ガス再循環システム。
【請求項12】
前記煙検出センサは、前記第1の管または前記第2の管に沿って位置決めされている、請求項11記載のガス再循環システム。
【請求項13】
前記煙検出センサは、前記ポンプ内に位置決めされている、請求項11記載のガス再循環システム。
【請求項14】
前記煙検出センサは、光電子センサを含む、請求項11記載のガス再循環システム。
【請求項15】
前記コントローラは、前記煙の検出量の増加に応答して前記ポンプの前記モータの前記速度を増大させるよう構成されている、請求項11記載のガス再循環システム。
【請求項16】
前記ガス流路に沿って位置決めされたフィルタをさらに含み、前記フィルタは、煙を前記ガスの流れから前記ガス流路に通して除去するよう構成されている、請求項11記載のガス再循環システム。
【請求項17】
内視鏡外科的処置においてガスの流れを管理する際に用いられるガス再循環システムであって、前記システムは、
ガス入力連結部と流体連通状態にある第1の管を含み、前記第1の管は、腹膜腔中に挿入可能な外科的器械に連結可能であるよう構成され、
ガス出力連結部と流体連通状態にある第2の管を含み、前記第2の管は、腹膜腔中に挿入可能な外科的器械に連結可能であるよう構成され、
ポンプを含み、前記ポンプは、
モータと、
前記モータに結合されたポンプカートリッジとを有し、
前記ポンプカートリッジは、前記モータから取り外し可能であり、前記ガス入力連結部のところで前記第1の管と結合するとともに前記ガス出力連結部のところで前記第2の管と結合し、
前記ポンプカートリッジは、前記ポンプカートリッジ内のガスが前記モータに接触することができないよう封止され、
前記ポンプは、ガスを腹膜腔から前記第1の管中に通して前記ガス入力連結部中に引き込むとともにガスを前記第2の管に通して前記ガス出力連結部から排出して腹膜腔中に送り込むよう構成され、
前記ポンプカートリッジのところに位置決めされるとともに前記ガス中に存在する煙の量を測定するよう構成された煙検出センサを含み、
コントローラを含み、前記コントローラは、
煙の検出量を表す出力信号を前記煙検出センサから受け取り、そして
前記煙検出センサよって検出された煙の量に応答して前記ポンプの前記モータの速度を調節するよう構成されており、
前記煙検出センサは、光センサを含み、
前記光センサは、光源および前記光源から放出された光を受け取るよう位置決めされた光受容器を有し、
前記光受容器は、前記光受容器が前記ガス中の煙から反射された前記光源からの光だけを受け取ることができるよう前記光源に対して角度をなして位置決めされている、ガス再循環システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容(本発明)は、低侵襲外科的処置で使用されるガス再循環システムに関する。
【0002】
〔関連出願の参照〕
本願は、2019年5月23日に出願された米国特許仮出願第62/851,950号の権益主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、この記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
内視鏡外科的処置、例えば腹腔鏡外科的処置、関節鏡外科的処置、子宮鏡外科的処置、胸腔鏡外科的処置を含む低侵襲外科的処置は、短めの回復時間、短めの手術持続時間、および低いコストに起因して手術環境においてますます一般的になってきている。低侵襲外科的処置は、典型的には、器械を患者の体に人工的に作られた小さな開口部または門部に通して挿入した状態で実施される。
【0004】
腹腔鏡外科的処置では、ベレス針によって腹部に作られた人工的な開口部を通して腹膜腔中にガスが注入される。典型的には、注入されるガスの種類は、CO2ガスであるが、外科的処置に応じて2種類以上のガスの混合物または異なるガスもまた適している場合がある。腹腔鏡手技では、CO2ガスは、気腹を膨らませるために使用され、それにより外科医が臓器を可視化するとともに外科用器械および内視鏡を操作するための空隙を作る。CO2ガスは、吹送器具によって加圧下で腹膜腔中に注入される。この用途に適する吹送器具の例は、米国特許第6,299,592号明細書および米国特許出願第62/037,893号明細書に記載されており、これら特許文献を参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0005】
最初に気腹を膨らませた後、カメラ(モニタに連結されている)付きの内視鏡を腹腔中に挿入して腹腔の内部、特に手術空間の内部を可視化する。内視鏡は、典型的には、外科的処置の持続時間にわたって挿入されたままである。他の開口部もまた、腹腔内の他の外科用器械への接近を可能にするために作られる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6,299,592号明細書
【文献】米国特許出願第62/037,893号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
低侵襲外科的処置、例えば腹腔鏡手技の際に腹部内の組織を切断し、焼灼し、切除し、または蒸発させるのに器械を用いると、その結果として、手術煙が生じ、かかる手術煙は、患者に対して健康上のリスクをもたらす場合があり、また、もし手術煙のうちの幾分かまたは全てが手術室に逃げると、外科医および他の個人個人に対して健康上のリスクをもたらす場合がある。本明細書において用いられる用語である「手術煙」としては、毒素、粒状物質、刺激物、生細胞やウイルス、水蒸気、および他の汚染物質を含有する場合のあるガスまたはエーロゾルが挙げられるが、これらには限定されない。手術煙はまた、内視鏡内のカメラによる外科医の可視化を阻害する。可視化に対する阻害はまた、体温よりも低い温度で腹腔に入るCO2ガスに起因するカメラレンズ上の結露または凝縮によってさらに際立つ恐れがある。可視化の阻害は、外科的処置を妨げ、その結果として、患者の健康に対するリスクが生じる恐れがある。さらに、可視化阻害により、手術の遅延、特に遠隔的に実施されるロボット支援外科的処置を伴う手術の遅延もまたが生じる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一観点では、内視鏡外科的処置に用いられるガス再循環システムと、ガス入力連結部と流体連通状態にある第1の管を含み、第1の管は、腹膜腔中に挿入可能な外科的器械に連結可能であるよう構成されている。第2の管がガス出力連結部と流体連通状態にあり、第2の管は、腹膜腔中に挿入可能な外科的器械に連結可能であるよう構成されている。本システムは、ガスを腹膜腔から第1の管中に通してガス入力連結部中に引き込むとともにガスを第2の管に通してガス出力連結部から排出して腹膜腔中に送り込むよう構成されたモータ付きのポンプを含む。煙検出センサが第1の管、ポンプおよび第2の管によって構成されたガス流路に沿う場所に位置決めされ、この煙検出センサは、ガス中に存在する煙の量を測定するよう構成されている。本システムはさらに、コントローラを含み、コントローラは、煙の検出量を表す出力信号を煙検出センサから受け取るよう構成されている。コントローラはさらに、煙検出量に応答してポンプのモータの速度を調節するよう構成されている。煙を腹膜腔から迅速に除き、そしてガスをガス再循環システム中の1つ以上のフィルタ機構体に通して迅速に濾過除去するためにモータ速度を増大させるのが良い。
【0009】
他の観点では、ガス再循環システムは、煙の量が再循環システム中のフィルタによって管理可能なしきい値を超えて増えると、前記再循環システムをバイパスして煙を迅速に除去するガス排出経路をさらに含むのが良い。煙検出センサは、第1の管、第2の管またはポンプ内にまたはこれに沿って配置されるのが良い。ポンプが取り外し可能なポンプカートリッジを有する用途では、センサは、取り外し可能なポンプカートリッジ上にまたはこの内側に配置されるのが良い。種々のセンサ技術、例えば電気化学センサ、光センサおよび光電子センサを煙検出センサとして具体化できる。煙検出センサは、ワイヤード接続方式によりまたはワイヤレスでガス再循環システムのコントローラまたはポンプと通信可能である。
【0010】
他のシステム、他の方法、他の特徴および他の利点は、以下の図および詳細な説明を吟味すると当業者には明らかになろう。かかる全ての追加のシステム、方法、特徴および利点は、本明細書の開示の範囲内に含まれ、本発明の範囲内に含まれ、そして以下の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ガス再循環システムの実施形態の例示的実施例の図である。
図2】ガス再循環システムの実施形態の概略的実施例の図である。
図3】ガス再循環ポンプカートリッジの実施形態の例示的断面図である。
図4】ガス再循環ポンプカートリッジの実施形態の別の例示的断面図である。
図5A-5D】図5A図5Dは、ガス再循環ポンプカートリッジの実施形態の実施例の図である。
図6A-6D】図6A図6Dは、ガス再循環ポンプカートリッジの実施形態の別の実施例の図である。
図7A-7H】図7A図7Hは、ガス再循環ポンプカートリッジの一部分の実施形態の実施例の図である。
図8A-8E】図8A図8Eは、ガス再循環ポンプの実施形態の実施例の図である。
図9】ガス再循環システムのブロック図である。
図10A-10B】図10A及び図10Bは、ガス再循環ポンプカートリッジとモータとの結合方法の実施形態の実施例の図である。
図11A-11F】図11A図11Fは、ガス再循環システムに使用される連結要素の実施形態の実施例の図である。
図12】ガス再循環システムに使用される連結要素の実施形態の断面図である。
図13】ガス再循環システムに使用される連結要素の別の実施形態の断面図である。
図14】ガス再循環システムに使用されるバイパス弁の実施形態の実施例の図である。
図15A-15B】図15A及び図15Bは、ガス再循環システムに使用される水分トラップの実施形態の実施例の図である。
図16A-16B】図16A及び図16Bは、ガス再循環システムに使用される水分トラップの別の実施形態の実施例の図である。
図17A-17C】図17A図17Cは、ガス再循環システムのためのエンクロージャの実施形態の実施例の図である。
図18A-18B】図18A及び図18Bは、ガス再循環システムのためのエンクロージャの別の実施形態の実施例の図である。
図19A-19B】図19A及び図19Bは、ガス再循環システムのためのエンクロージャの別の実施形態の実施例の図である。
図20A-20F】図20A図20Fは、ガス再循環システムのためのエンクロージャの別の実施形態の実施例の図である。
図21A-21H】図21A図21Hは、ガス再循環ポンプカートリッジの実施形態の別の実施例の図である。
図22A-22B】図22A及び、図22Bは、ガス再循環ポンプカートリッジとモータの間の結合方法の別の実施形態の実施例の図である。
図23A-23F】図23A図23Fは、ガス再循環ポンプカートリッジとモータの間の結合方法の別の実施形態の実施例の図である。
図24A-24B】図24A及び図24Bは、ガス再循環システムに使用される三方弁の実施形態の実施例の図である。
図25A-25B】図25A及び図25Bは、ガス再循環システムに使用される三方弁の別の実施形態の実施例の図である。
図26】煙検出方式および通気機能を備えたガス再循環システムの一実施形態の例示の略図である。
図27図26のシステムに用いられる煙検出センサを示す図である。
図28図27の煙検出センサの変形実施形態を示す図である。
図29図26のガス再循環システムの変形実施形態の略図である。
図30図29のガス再循環システムで使用できる光電子煙センサを備えたガスポンプカートリッジの実施形態を示す図である。
図31図30のガスポンプカートリッジの煙センサに使用できるアレイ状の光電子検出器を示す図である。
図32】ガス再循環システムに用いられる電気化学煙検出器を示す図である。
図33図29のガス再循環システムで使用できる電気化学煙センサを備えたガスポンプカートリッジの一実施形態を示す図である。
図34図33の取り外し可能なポンプカートリッジに連結できるモータエンクロージャを示す図である。
図35図34のモータエンクロージャに利用でき、そして図33のガスポンプカートリッジを受け入れるよう電気コネクタを装備するよう改造された図22Aの組立体の変形実施形態を示す図である。
図36図33のガスポンプカートリッジの変形実施形態を示す図である。
図37】ガス再循環ポンプチュービングセットの入力雄型ルアー弁内に位置決めされた煙センサを示す図である。
図38】ガス再循環システムチュービングセットの出力雄型ルアー弁内に位置決めされた煙センサを示す図である。
図39図26または図29のシステム内の煙除去量を変化させるよう煙検出基準に基づいてポンプの速度を調節する方法を示す図である。
図40図26のガス再循環経路と吸引排気経路を切り換えるための弁を示す図である。
図41】ガス中の煙検出量に基づいて図26のシステムにおいてガス再循環速度を調節しまたはガスをガス再循環システムから抜き出す方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、外科的処置の際に腹膜腔中に注入されるガスを再循環させるシステムに関する。このシステムは、外科的処置中に腹膜腔内で生じた煙を除去するためにガスを除去したりガスを腹膜腔中に注入したりするための容積形ポンプを含む。
【0013】
外科的処置中に煙を腹膜から濾過除去するあるいは他の仕方で除去するという難題に取り組むために、煙の量を検出し、濾過除去プロセスを自動的に調節し、そして煙の検出量に基づいてガスを再循環させるシステムおよび方法を本明細書において説明する。説明するシステムおよび方法は、腹膜内で生じた煙の除去の取り扱いに対して迅速な応答を提供することができ、かかる取り扱いは、手動調節を必要とせずしかも術式とは無関係である。種々の具体化例において、本発明のガス再循環システムは、気腹内の煙の密度および量を検知し、そしてその情報を腹膜腔内の視認性に相関させる。多くの型式の煙検出センサ、例えば光検知技術を使用するセンサが煙の量を算定するために使用できる。また、センサは、気腹内に配置できまたはCO2(または他種類のガス)排気もしくは循環を可能にするために用いられるチュービングセットとインライン関係をなして配置できる。次に、このシステムは、煙の算定済み密度を用いて腹膜腔内におけるCO2の移動量を増大させまたは減少させて煙を迅速に除去することができる。
【0014】
本発明は、滅菌せずに再使用できるコンポーネントを含む安全で費用効果の良いガス再循環システムを提供する。費用効果の良いシステムは、ポンプ作動をモニタして故障を検出するのにセンサではなくコントローラを利用する。システムは、高い除去流量および注入流量、例えば、毎分4~10リットルを達成することができ、これは、どのような手術煙であってもこれが外科医の視野から迅速かつ有効に除去されるようにすると同時に腹膜腔内のいかなる圧力変化も最小限に抑えるようにする。
【0015】
図1を参照すると、ガス再循環システム100の実施形態が示されている。ガス再循環システム100は、再循環ポンプ105と、一次流入トロカール110と、二次出力トロカール115と、入力チュービング120と、出力チュービング125とを含むのが良い。出力チュービング125は、フィルタおよび/または水分トラップ130を含むのが良い。入力チュービング120および出力チュービング125は、ノースゲート・テクノロジーズ(Northgate Technologies)社によって製造されている吹送チュービングセットと類似しているのが良い。
【0016】
ガス再循環システム100は、例えば米国特許第6,299,592号明細書および米国特許出願第62/037,893号明細書に記載されている吹送システムと関連して使用でき、これら特許文献を参照により引用し,これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。吹送システムは、吹送器127と、吹送トロカール128と、吹送器127を吹送トロカール128に連結する吹送チュービング129と、ガス再循環システム100と吹送器127の間の電子通信線129とを含むのが良い。ガス再循環システム100は、通信線129により吹送器127と通信するためのコントローラを含むのが良い。開始、停止、流量増加、流量減少、またはガス再循環コントローラの他の機能のような情報または指令は、吹送器127に存在させてガス再循環コントローラに通信することができると考えられる。追加的にまたは代替的に、ガス再循環コントローラは、吹送器127中に組み込まれてこれと共用可能である。ガス再循環システム100と吹送器127は、幾つかの例を挙げると、電源、プロセッサ、グラフィックユーザインターフェース、加熱機能、湿度機能を共有することができる。
【0017】
再循環ポンプ105は、ガスを患者から二次出力トロカール115、出力チュービング125、およびフィルタ/水分トラップ130に通して除去する。弁135が二次出力トロカール115を出力チュービング125に連結するのが良い。出力チュービング125が弁135を通して二次出力トロカール115に連結されている場合、弁135の弁軸を開放位置に偏向させることができる。弁135が二次出力トロカール115から切り離されると、弁135の弁ステムは、その元来の閉鎖位置に戻ることができる。弁135は、出力チュービング125が二次出力トロカール115に連結されているときにガスが弁を通って流れることを可能にすることができる。弁135は、出力チュービング125が二次出力トロカール115から切り離されているときにガスが出力チュービング125に流入するのを阻止することができる。弁135は、出力チュービング125が二次出力トロカール115から切り離されたときに自動的に閉じることができる。弁135は、ルアー弁、例えば閉鎖された雄型ルアーのTexium(登録商標)またはHalkey/Roberts(登録商標)ブランドであるのが良い。
【0018】
再循環ポンプ105はまた、ガスを一次流入トロカール110および入力チュービング120に通して患者体内に注入する。弁135と類似の弁を一次流入トロカール110および入力チュービング120に連結することができ、この弁は、入力チュービング120が一次流入トロカール110から切り離されたときに閉じることができる。
【0019】
再循環ポンプ105は、ガスを腹膜腔からフィルタ/水分トラップ130を通して腹膜腔内に戻るように再循環させる。患者から出力チュービング125を通して除去されるガスの流量は、入力チュービング120を通して患者内に注入して戻されるガスの流量と同一または実質的に同一である。フィルタ/水分トラップ130は、ガスから液体を除去することができ、かつガスから手術煙粒子のような粒状物質を除去することができる。フィルタ/水分トラップ130は、媒質を含むのが良く、これは、液体、好ましくは15~20mLの液体を容易に吸収し、かつ媒質の上または中を流れるガス内に水分を容易に放出する。使用に適する媒質は、Crystar(登録商標)ブランドの材料を含む。媒質のサイズは、好ましくは、長さ1~2.5インチ(2.54~6.35cm)、直径0.5~2.0インチ(1.27~5.08cm)であり、最も好ましくは、長さ1.5~2.0インチおよび直径1~1.5インチ(2.54~3.81cm)である。一実施形態では、媒質は、鋸歯状外面および中心開口部を有する場合がある。フィルタハウジング内に納められると、鋸歯状外面は、ガスが流れることができる複数のチャネル開口部を定め、中心開口部には木炭(チャコール)から成るロッドを充填するのが良い。木炭は、ガスが中心開口部を通過するときにガス内の粒状物質を捕集することができ、それと同時にガスから望ましくない臭気を除去する上で有効であると言って良い。追加的にまたは代替的に、臭気除去は、他の物質、例えば酵素物質材料、酢、および水入りのカートリッジを用いて達成でき、または臭気は、芳香剤を用いて隠すことが可能である。フィルタ/水分トラップ130は、再循環させるガスが水分を50~70%の相対湿度範囲に保持することを可能にすることができる。好ましくは、ガス再循環システム100は、ガスが60°F(15.6℃)~75°F(23.9℃)の通常手術室温度にある状態で患者の内外へのガスの再循環を可能にすることになり、最低でも70%の相対湿度になるガスの湿度レベルを受動的に維持することになる。ガス再循環システム100を利用することにより、吹送器127が腹膜腔内に追加CO2ガスを注入する必要性を減少させまたはなくすことができ、さらにまた、最初にガス加温加湿器(追加コスト)を通さない限り一般的に0%の相対湿度で非常に乾燥することになる追加CO2ガスとは対照的に腹膜腔内で適切な水分レベルを維持するのが良い。ガスの再循環は、0%相対湿度のガスの流入を低減することになるだけではなく、腹膜腔内の圧力を維持しようと試みる吹送器127によって引き起こされる呼吸効果を阻止し、手術室内へのCO2ガスの大量の放出を阻止することができる。例えば、毎分6リットルの漏れ率の実現を可能にする受動的煙除去システムは、通常45分間の胆嚢処置中に270リットルまでのCO2ガスを手術室内に放出する場合がある。従って、ガス再循環システム100は、腹膜腔内のガスの十分な湿度を維持するための費用効果の良い方法である。
【0020】
図2を参照すると、ガス再循環システム200の実施形態が示されている。ガス再循環システム200は、ガス再循環システム100と同じコンポーネントおよび作動特性の一部を含むのが良い。ガス再循環システム200は、再循環ポンプ205と、入力トロカール210と、出力トロカール215と、入力チュービング220と、出力チュービング225とを含むのが良い。出力チュービング225は、フィルタおよび/または流体トラップ230を含むのが良い。入力チュービング220は、フィルタ232を含むのが良い。弁235は、出力トロカール215を出力チュービング225に連結するのが良い。弁236は、入力トロカール210を入力チュービング220に連結するのが良い。弁235,236は、切断されたときに自動的に閉じることのような同じ特性を用いてかつ弁135と同じ方式で作動させるのが良い。
【0021】
再循環ポンプ205は、カートリッジ206とモータ207とを含むダイヤフラムポンプまたはあらゆる他の適当な容積形ポンプであるのが良い。カートリッジ206は、モータ207から分離可能にするのが良い。モータ207は、あらゆるタイプのモータであって良い。モータ207は、好ましくは、直流(「DC」)モータであるのが良いが、これには限定されない。カートリッジ206は、入力チュービング220および出力チュービング225への連結部を除いてガスがカートリッジ206を逃げ出すのを阻止するために封止可能である。カートリッジ206は、超音波溶接、接着剤、レーザ溶接、ガスケット用いたまたは用いない機械的スナップ式連結、または合わせ面を互いに組み合わせて封止するあらゆる他の公知の方法等によって互いに取り付けられる複数のコンポーネントで構成されるのが良い。カートリッジ206は、これが入力チュービング20および出力チュービング225への開口部としか流体連通状態にないように封止可能である。したがって、カートリッジ206内のガスは、モータ207または再循環ポンプ205の他の部分と接触することができない。ガス再循環システムは、モータ207が腹膜腔からのガスとの接触によって汚染されることがなく、それにより滅菌を必要とすることなく再使用可能なので患者の腹膜腔から手術煙を除去するための安価な手法であると言って良い。腹膜腔からのガスとの接触によって汚染される可能性がある再循環ポンプ205のカートリッジ206のような部分は、使い捨て可能であるのが良い。
【0022】
ガス再循環システム200は、作動時に手術煙を含むガスを腹膜腔から好ましくは毎分4~10リットルの流量、最も好ましくは毎分6~8リットルの流量で除去し、濾過除去後にこのガスを腹膜腔内に好ましくは毎分4~10リットルの流量、最も好ましくは毎分6~8リットルの流量で注入して戻すことができる。腹膜腔からのガスは、最初に出力トロカール215を通り、さらに弁235を通って出力チュービング225内に入る。木炭ロッド(上述した)または別個または一体の活性炭フィルタが使用される場合に、ガスは、その温度変化(すなわち、体温から室温への)に起因して形成される凝縮物/液体を除去することができる流体トラップ230を通って移動することができる。次いで、ガスは、再循環ポンプ205のカートリッジ206を通って移動する。ガスは、再循環ポンプ205の前または後に位置付けられたフィルタ230または232のようなフィルタを通って移動することができる。フィルタは、ガスから粒状物質および他の汚染物質を除去することができる。フィルタは、好ましくは20リットル毎分の流量で12.3mmHGを超えない圧力降下を与える材料で製造される。ガスを入力チュービング220、弁236、および入力トロカール210に通して腹膜腔中に注入することができる。
【0023】
再循環システム200は、モータ207の作動を制御するためのコントローラ240を含むのが良い。コントローラ240は、再循環システム200に連結された吹送器と組み合わせるかまたはこれと関連して使用可能である。コントローラ240は、Tiva(登録商標)(テキサス・インストラメンツ(Texas Instruments)社製)ブランドのコントローラであるのが良い。コントローラ240は、モータ207の作動および/または故障条件、および/またはガス再循環システム200内の安全問題を検出するために使用されるのが良い。コントローラ240は、モータ207に対する電圧を測定することなどによってモータ207によって消費される電力量を検出することができる。コントローラ240は、ガス再循環システム200内で故障または安全問題が発生したことをモータ207によって消費される電力量に基づいて検出または判定することができる。例えば、コントローラ240は、モータ207が、所定の量よりも高い電圧または電流の増大によって測定されるような予想よりも多い電力を消費している場合、故障条件または安全問題が発生したと判定することができる。コントローラ240は、故障条件または安全問題が発生した場合にモータ207の停止をトリガすることができる。ガス再循環システム200内の故障条件または安全問題を検出するためにコントローラ240を使用するのは、センサを使用するのよりも費用効果が良いと言って良い。
【0024】
弁235および236は、それぞれ出力トロカール215および入力トロカール210から切り離されたときに閉じるように構成することができる。出力トロカール215から切り離されたときに弁235を閉じることにより、ガス再循環システム200の吸引側への外気の混入を制限することができる。ガス再循環システム200内に混入したあらゆる外気は、再循環ポンプ205によって腹膜腔内に注入されることになる。入力トロカール210から切り離されたときに弁236を閉じることにより、腹膜腔からのガスが周囲環境内に放出されるのを阻止することができる。
【0025】
弁235または236を閉じることにより、ガス再循環システム200のガス回路内に圧力差が発生する場合がある。圧力差は、モータ207によって消費される電圧または電流の増大によって測定されるモータ207に対する負荷を増大する場合がある。電圧または電流の増大が所定の閾値を超えた場合に、コントローラ240は、ガス再循環システム200内の故障条件または安全問題を検出することができる。コントローラ240は、ガス再循環システム200内の故障条件または安全問題の検出時にモータ207の停止をトリガすることができる。例えば、弁235および出力チュービング225が出力トロカール215から切り離された場合に、弁235は閉じることになる。弁235を閉じることにより、再循環ポンプ205は、閉じた管に対して吸引力を掛けることになり、それにより再循環ポンプ205はより激しく作動することが強いられ、モータ207はその適正速度を維持するためにより多くの電力を消費することが強いられる。モータ207によって消費される電力の増加は、電圧または電流の増大が所定の値を超えた場合に故障条件をもたらす場合がある。弁235を出力トロカール215から切り離すことによって引き起こされる故障条件の検出時に、コントローラ240は、再循環ポンプ205が停止することをトリガすることができる。同様に、弁236および入力チュービング220が入力トロカール210から切り離されたときに弁236は閉じることになる。弁236を閉じることにより、再循環ポンプ205は、閉じた管または「デッドヘッド」に対してポンピングすることになり、それにより再循環ポンプ205はより激しく作動することが強いられ、モータ207はその適正速度を維持するためにより多くの電力を消費することが強いられる。モータ207によって消費される電力の増加は、電圧または電流が所定の値を超えた場合に故障条件をもたらす場合がある。弁236を入力トロカール210から切り離すことによって引き起こされる故障条件の検出時に、コントローラ240は、再循環ポンプ205が停止することをトリガすることができる。従って、再循環システム200は、コントローラ240を用いてモータ207をモニタすることにより、出力チュービング225および入力チュービング220の状態をモニタすることができる。
【0026】
ガス再循環システム200は、同様な仕方で入力トロカール210および出力トロカール215と腹膜腔との連結状態をモニタすることができる。入力トロカール210または出力トロカール215を腹膜腔から取り出すことによって再循環ポンプの吸引源または放出源の圧力が変化することで、再循環ポンプ205およびモータ207の作動が影響を受けることになる。コントローラ240は、モータ207の作動の変化を検出し、入力トロカール210または出力トロカール215が腹膜腔から取り出されたことを確認することができる。例えば、入力トロカール210を腹膜腔から取り出すことによって再循環ポンプ205は腹膜腔内圧に打ち勝つためのポンピングをもはや行わなくなるので、モータ207が同じ速度を維持するのに必要とされる電力が減少することになる。コントローラ240は、モータ207によって消費される電力の減少を検出し、入力トロカール210が腹膜腔から切り離されたことを確認することができる。次いで、コントローラ240は、再循環ポンプ205をトリガして停止させ、それによりガスが腹膜腔から周囲環境に流入することを阻止することができる。
【0027】
ガス再循環システム200は、オペレータがガス再循環システム200の状態を判定または確認できるようにするためのユーザインターフェース245、例えばコンピュータを含むのが良い。例えば、弁235が出力トロカール215から切り離されたことに起因してコントローラ240が再循環ポンプ205を停止した場合、ユーザインターフェース245は、再循環ポンプ205が停止されたこと、および出力チュービング225が出力トロカール215から切り離されていることが有力な原因となっていることを表示することができる。オペレータは、出力チュービング225が出力トロカール215から切り離されたことを確認し、再循環ポンプ205を再開するために出力チュービング225を再連結することができる。同様に、オペレータは、他の故障条件、例えば、ガス経路内の閉塞、過度の限流、またはガス経路内の漏れ、例えば、チュービングの切離しまたは損傷が発生したかどうかを判定することができる。
【0028】
図3および図4を参照すると、再循環ポンプに使用されるカートリッジ306の実施形態が示されている。カートリッジ306は、図2を参照して説明した再循環ポンプ205のような再循環ポンプに使用されるのが良い。図3および図4は、カートリッジ306の部分断面図である。カートリッジ306の作動をより明確に説明するためにガス流路を示す矢印が記載されている。カートリッジ306は、出力チュービング、例えば図2の出力チュービング225を有し、この出力チュービングは、腹膜腔に連結されるのが良い。カートリッジ306は、入力チュービングへの連結部352、例えば図2の入力チュービング220を有し、この入力チュービングは、腹膜腔に連結されるのが良い。
【0029】
腹膜腔からのガスは、図3に矢印で示すように連結部350を通ってカートリッジ306に流入する。カートリッジ306は、弁354および360を含むのが良い。ガスは、カートリッジ306内に進入し、図3に矢印で示すように弁354を通ってダイヤフラムチャンバ356内に入る。ガスは、図4に矢印で示すようにダイヤフラムチャンバ356から弁360を通ってカートリッジ306を出る(これについては後述する)。弁354および360は、傘型弁であるのが良い。弁354および360を貫通するガス開口部362の直径は、0.05インチ(1.27mm)~0.15インチ(3.81mm)であるのが良く、好ましくは0.085インチ(2.159mm)であるのが良い。ガス開口部362は、2つ以上の同心開口部を含むのが良く、その結果、ガス開口部362の合計面積は、種々の流量の実現を可能にするよう設定できるようになっている。例えば、これら開口部は、毎分4リットルから毎分10リットルまでの範囲および毎分7リットルから毎分8リットルまでの第1の好ましい範囲内にある流量を可能にするよう設定されるのが良い。毎分4~10リットルの流量は、無難な流量範囲であるが、これよりも多いまたはこれよりも少ない流量を達成するには、カートリッジのサイズを拡大または縮小し、モータストローク長を増大させまたは減少させてダイヤフラム空洞内に得られる容積を変化させ、あるいはモータの速度を高めるのが良い。例えば、別の実施形態では、毎分10~12リットルという第2の好ましい流量範囲がガス開口部サイズ、カートリッジサイズ、モータストローク長またはモータ速度のうちの1つ以上の調節により実現できる。毎分10~12リットルの高めの流量範囲は、以下において説明する煙検出および濾過/排気技術を具体化する場合に好ましいと言える。
【0030】
カートリッジ306は、ダイヤフラムチャンバ356内にダイヤフラム358を有するのが良い。弁354から遠ざかるダイヤフラム358の運動により弁354が開き、ガスが図3に矢印で示すように弁354を通ってダイヤフラムチャンバ356中に引き込まれる。ダイヤフラム358が弁354,360から遠ざかるときに弁354が引き開けることができ、それにより図3に矢印で示すようにガスを腹膜腔から出力チュービングに通してダイヤフラムチャンバ356内に引き込むことができる。ダイヤフラム358が弁354,360から遠ざかるときに弁360を引き閉じることができ、それによりガスが弁360を通ってダイヤフラムチャンバ356内から流出またはダイヤフラムチャンバ356内に流入することを阻止することができる。
【0031】
弁354,360に向うダイヤフラム358の運動により弁360が開き、図4に矢印で示すようにガスがダイヤフラムチャンバ356から弁360を通り、さらに連結部352を通ってカートリッジ306から押し出される。弁354,360に向うダイヤフラム358の移動は弁354を閉じ、それによりガスをダイヤフラムチャンバ356から連結部350を通して押し出すのを阻止することができる。弁354,360に向かい、かつこれらから遠ざかるダイヤフラム358の往復動により、ガスが腹膜腔からいずれかのフィルタまたは液体トラップをとおって引き出され、入力チュービングを通って腹膜腔内に押し込まれて戻る。
【0032】
図5A図5D図6A図6D、および図7A図7Hは、図2を参照して説明した再循環ポンプ205のようなガス再循環ポンプにおける使用のためのカートリッジの他の例示的実施形態を示している。図5A図5D図6A図6D、および図7A~~図7Hに示されているカートリッジのコンポーネントおよび作動特性は、上述したカートリッジ306と同様であるのが良い。
【0033】
図5Aは、カートリッジ506の分解組立図である。カートリッジ506は、連結部550,552と、弁554,560と、ダイヤフラム558と、プランジャ564とを含む。弁554,560は、傘型弁であるのが良い。連結部550は、カートリッジ506内へのガス入口であるのが良い。連結部552は、カートリッジ506からのガス出口であるのが良い。プランジャ564は、図3および図4を参照して上述したように腹膜腔を通してガスを再循環させるためにダイヤフラム558を弁554,560に向けて移動することができる。
【0034】
図5Bは、カートリッジ506の非分解組立斜視図である。図5Cは、カートリッジ506の正面図である。図5Dは、カートリッジ506の側面図である。
【0035】
図6Aは、カートリッジ606の分解組立図である。カートリッジ606は、連結部650,652と、弁654,660と、ダイヤフラム658と、プランジャ664とを含む。弁654,660は、傘型弁であるのが良い。連結部650は、カートリッジ606内へのガス入口であるのが良い。連結部652は、カートリッジ606からのガス出口であるのが良い。プランジャ664は、図3および図4を参照して上述したように腹膜腔を通してガスを再循環させるためにダイヤフラム658を弁654,660の方へ動かすのが良い。
【0036】
図6Bは、カートリッジ606の非分解組立斜視図である。図6Cは、例示的寸法を有するカートリッジ606の正面図である。図6Dは、例示的寸法を有するカートリッジ606の側面図である。カートリッジ606の寸法および向きは、動作上の要件に応じて様々であって良い。
【0037】
図7A図7Hは、カートリッジ706のガス入口/出口区分の複数の図を示している。図7Aは、カートリッジ706のガス入口/出口区分の斜視図を示している。図7Bは、カートリッジ706のガス入口/出口区分の正面図を示している。図7Cは、例示的寸法を有するカートリッジ706のガス入口/出口区分の底面図を示している。図7Dは、カートリッジ706のガス入口/出口区分の側面図を示している。図7Eは、例示的寸法を有するカートリッジ706のガス入口/出口区分の背面図を示している。図7Fは、例示的寸法を有するカートリッジ706のガス入口/出口区分の側面断面図を示している。図7Gは、例示的寸法を有するカートリッジ706のガス入口/出口区分の別の側面断面図を示している。図7Hは、カートリッジ706のガス入口/出口区分の底断面図を示している。カートリッジ706の寸法および向きは、動作上の要件に応じて様々であって良い。
【0038】
図8A図8Eを参照すると、再循環ポンプ805の実施形態が示されている。再循環ポンプ805は、カートリッジ806と、モータ807と、クランクアセンブリ866と、ロックアーム868と、カートリッジホルダ870とを含むのが良い。再循環ポンプ805のコンポーネントおよび作動特性は、上述した再循環ポンプ305と同様であるのが良い。モータ807は、機械的結合によってクランクアセンブリ866に連結されるのが良い。モータ807は、回転運動をクランクアセンブリ866に与えることができる。クランクアセンブリ866は、回転運動を往復運動に変換することができる。クランクアセンブリ866の往復運動は、図3を参照して上述したようにカートリッジ806内でダイヤフラムを移動することができる。図8Aは、再循環ポンプ805から切り離されたカートリッジ806を示している。カートリッジ806を再循環ポンプ805から切り離すことができ、その目的は、カートリッジ806を滅菌または処分することにある。カートリッジ806は、再循環ポンプ805のうちで患者の腹膜腔からのガスと接触する唯一のコンポーネントであると言えるので、再循環ポンプ805の残りのコンポーネントは、患者の安全を脅かすことなく別の患者に再使用することができる。カートリッジ806は、患者への使用後に滅菌または処分するのが良く、新しいカートリッジ806を次の患者のために再循環ポンプ805内に挿入するのが良い。
【0039】
図8Bは、再循環ポンプ805のカートリッジホルダ870内に挿入されたカートリッジ806を示している。カートリッジ806は、再循環ポンプ805内にロックアーム868を用いて固定することができる。ロックアーム868は、カートリッジ806に位置付けられた凹部874内に嵌合するように設計された突起872を含むのが良い。突起872は、図8Dにおいて最も明瞭に見ることができる。凹部874は、図8Cにおいて最も明瞭に見ることができる。カートリッジ806は、図8Fに示すように突起872が凹部874に置かれたときにカートリッジホルダ870内に固定することができる。カートリッジ806は、ロックアーム868の端部を押し下げ、次いでカートリッジ806をカートリッジホルダ870から持ち上げることによってカートリッジホルダ870から解除することができる。カートリッジ806を再循環ポンプ805に固定し、かつそこから解除する方法は、動作上の要件に応じて様々であって良い。
【0040】
図9を参照すると、ガス再循環システム900の実施形態が示されている。ガス再循環システム900は、図1図8に記載したガス再循環システムと同様なコンポーネントおよび作動特性を含むのが良い。ガス再循環システム900は、再循環ポンプ905と、ポンプカートリッジ906と、モータ907と、入力トロカール910と、出力トロカール915と、弁935,936と、流体トラップ930と、フィルタ932と、コントローラ940と、ユーザインターフェース945と、電源976とを含むのが良い。コントローラ940は、DCモータ制御回路978とプロセッサ回路980を含むのが良い。ユーザインターフェース945は、ガス再循環システム900の一部または全てのコンポーネントを制御するためのソフトウェア、例えばLabView(登録商標)を有するコンピュータを含むのが良い。
【0041】
ガス再循環システム900は、それに関連付けられた故障または安全上の問題を検出するために、モータ907に対して課せられる負荷をモニタすることができる。モータ907に対する負荷は、電流を測定するために抵抗器をADコンバータに接続することなどによってモータ907の電力経路に位置付けられた抵抗器の両端での電流変化を測定することによってモニタ可能である。電流は、モータ907に対する負荷が変化するにつれて変化する。電流測定値は、リアルタイム測定することができ、または遅延を含む場合がある。所定の値よりも大きいかまたは小さい電流変化は、ガス再循環システム900が故障または安全上の問題を有することを示すことができ、再循環ポンプ905の停止を開始することができる。電流変化を感知してモータ907の停止を開始するためのソフトウェアを例えばコントローラ940内に組み込むのが良い。
【0042】
故障または安全上の問題が発生した時点を規定する電流の所定の値は、ガス再循環システム900が正常作動している時の平均電流に基づくのが良い。平均値よりも大きい電流測定値は、切断された弁935または936、または再循環ポンプ905を患者の腹膜腔に連結するチュービング内の閉塞のような故障または安全条件を示すことができる。例えば、正常作動中にモータ907がカートリッジ906内でダイヤフラムを駆動していた間に測定された平均電流が0.3Aであった場合に、0.4Aの測定電流は、再循環ポンプ905を患者の腹膜腔に連結するチュービング内の閉塞を示すことができ、0.5Aの測定電流は、弁935または936の一方が切断されたことを示すことができる。故障または安全条件が発生する場合を定義するために、測定電流の分散を使用することまたは格納された時間テンプレートまたは周波数テンプレートに対する比較を使用することのような他の方法または統計学が使用されることになる。追加的にまたは代替的に、コントローラ940内のコンピュータは、電流測定信号の周波数成分を解析するために高速フーリエ変換を可能にすることができる。
【0043】
ポンプカートリッジ906とモータ907の間のインターフェースM1は、機械的インターフェースであるのが良い。インターフェースM1は、外科的処置中にガス再循環システムが使用される時間長よりも長い連続期間にわたって適度に作動するように設計することができる。例えば、外科的処置に対する最大時間長が4時間である場合に、インターフェースM1は、8時間にわたって誤作動なく連続作動するように設計することができる。
【0044】
モータ907の速度は、CO2ガスの送出を毎分7リットルの割合で可能にするように指定することができる。モータ907に適するモータは、Moog(登録商標)ブランドの高速モータを含むことができる。モータ907に関する重要な作動パラメータとしては、トルク、速度、および故障条件が挙げられる。モータ907の作動電流は、正常作動電流、故障電流、インフレート電流、およびデフレート電流のような幾つかの方法で指定することができる。これらの電流値は、故障または安全条件に起因してモータ907が停止される場合を定めるために使用されるのが良い。
【0045】
インターフェースE1は、モータ907とDCモータ制御回路978の間に位置する。インターフェースE1中に8本の線が存在するのが良い。これら8本の線は、モータ907の3つの駆動フェーズの各々に対する線と、各々が3つのホールセンサピックアップに関する線と、ホールセンサに給電するための線と、接地のための線とを含むことができる。これら8本の線は、複数のモータ製造業者に共通である場合がある。
【0046】
インターフェースE3は、DCモータ制御回路978とプロセッサ回路980の間に位置する。このインターフェース内には、速度制御およびフィードバックの方法に依存して複数の線が存在するのが良い。
【0047】
モータ907の速度は、モータの電圧制御およびデジタル制御という2つの方法を用いて制御することができる。電圧制御を使用する第1の方法は、電位差計またはパルス幅変調信号を通じて制御回路978に電圧を送るプロセッサ回路980をもたらすと考えられる。例えば、本方法では、プロセッサ回路980に3.25Vの電圧をモータ制御回路に供給させることによってモータ907の最高速度に達することができる。第2の方法は、プロセッサ回路980内でデジタル信号をモータ制御回路978に送ることに関わると考えられる。
【0048】
ガス再循環システム900は、インフレート故障状態およびデフレート故障状態のような復旧可能である2つの故障状態を検出することができる。モータ907に関連付けられた問題のような復旧不能な他の故障状態が発生する場合がある。インフレート故障状態は、ガス回路がガス再循環ポンプ905の吸引側で壊れ、それにより例えば弁935が出力トロカール915から切り離された場合に外気がガス再循環システム900内に引き込まれる時である場合がある。再循環ポンプ905が停止されていない場合は再循環ポンプ905が患者の腹膜腔を外気で膨らませる場合があるので、かかる状態は、「インフレート」と呼ばれる。インフレート故障状態が発生した場合に再循環ポンプ905を停止することに対する代替策としては、腹膜腔内に送り込まれる外気の量を最底限に抑制するために再循環ポンプ905を通るガス流れを少量に低減することが挙げられる。デフレート故障状態は、ガス回路がガス再循環ポンプ905の放出側で壊れ、それにより例えば弁936が入力トロカール910から切り離された場合に腹膜腔からのガスが周囲環境内に送り込まれる時である場合がある。ガス再循環システム900からのガスの損失に起因して腹膜腔がしぼみ始める場合があるので、かかる状態は、「デフレート」と呼ばれる。デフレート故障状態は、腹膜腔内で望ましいインフレートレベルまたは圧力を維持するために腹膜腔に連結された吹送器の作動を引き起こす場合がある。
【0049】
ガス再循環システム900は、ユーザインターフェース945によって制御することができる。ユーザインターフェース945は、ガス再循環システム900内および/またはガス再循環システム900に接続されたコンピュータ内に位置付けることができる。ユーザインターフェースは、LabView (登録商標)のようなソフトウェアが制御することができるマルチモードインターフェースであるのが良い。第1のモードを「出力」とすることができ、第2のモードを「制御」とすることができる。「出力」モードにおいて、コントローラ940内のプロセッサは、モータ907をモニタすることに関する情報を出力することができる。かかる情報としては、モータ速度(RPM)、電流(mA)、電圧(V)、およびモータ状態が挙げられる。
【0050】
図10Aおよび図10Bを参照すると、ガス再循環システム1000の実施形態が示されている。ガス再循環システム1000は、図1図9に記載したガス再循環システムと同様なコンポーネントおよび作動特性を含むのが良い。ガス再循環システム1000は、ポンプカートリッジ1006が定位置に挿入されたときにダイヤフラムアクチュエータ1081上の磁石がモータ結合アーム1082上の磁石に引き寄せられるような磁気結合をダイヤフラムアクチュエータ1081とモータ結合アーム1082の間に含むのが良い。磁石が互いに引き寄せられた状態で、ダイヤフラムアクチュエータ1081は、モータ結合アーム1082が上下に移動するときにモータ結合アーム1082に上下に追従することになり、ポンプカートリッジ1006内でポンピングアクションを引き起こす。磁気結合は、ポンプカートリッジ1006の取り外し等に向けてダイヤフラムアクチュエータ1081とモータ結合アーム1082の間の結合を生成かつ解除するためにオンとオフで循環する電磁石であるのが良い。変形例として、磁気結合は、非電磁石であっても良い。図10Aは、モータ結合アーム1082に挿入されて結合される前のダイヤフラムアクチュエータ1081上に磁石を有するポンプカートリッジ1006を示している。図10Bは、ポンプカートリッジ1006が挿入され、ダイヤフラムアクチュエータ1081がモータ結合アーム1082に磁気結合された後のポンプカートリッジ1006を示している。
【0051】
変形例として、ダイヤフラムアクチュエータ1081を上下に動かすためにクランクアームを備えたモータを使用するのではなく、ダイヤフラムアクチュエータ1081を上下に動かしてポンプカートリッジ1006内にポンピングアクションを生じさせるためにダイヤフラムアクチュエータ1081に取り付けられたまたはその中に埋め込まれた磁石を動かすための振動磁場を使用するのが良い。追加的にまたは代替的に、クランクアームを有するモータが下向き運動を与える一方、ポンプカートリッジ1006内に位置付けられたばねがダイヤフラムの上方運動を与えることができる。かかる配置は、ダイヤフラムをモータクランクアームと結合する必要性を排除することができる。
【0052】
図11A図11Fは、入力チュービングおよび出力チュービングをトロカールに連結する弁の実施形態、例えば弁135,235,236,935,936を開示している。図11Aの弁1135は、可動区分を備えた回転可能なカラーを有するのが良く、その結果、弁1135がしっかりと連結された場合に弁1135が開いてガスが流れ、連結解除されたときにはガスの流れを阻止するようになっている。図11Aは、雌型ルアー付属品(図示せず)と接合し、ガス流れを可能にするために回転する雄型ルアーロック付属品1137を含むのが良い弁1135の分解組立図である。弁1135は、入力チュービングまたは出力チュービングに結合するためのスリーブおよびチュービング連結部1138と、漏れを阻止するためのOリングと、残りのコンポーネントを定位置に保持するための部品とをさらに含むのが良い。図11Bは、弁1135の端面図であり、図11Cは、弁1135の側面図である。図11D図11E、および図11Fは、弁1135の断面図である。図11Fは、弁1135の雄型ルアーロック1137付属品部分の過回転を阻止するタブ1139を示している。
【0053】
図12は、開流形態の弁1135の断面図を示している。図12の矢印は、雄型ルアーロック付属品1137を回転させてガスの流れを可能にしたときに弁1135を通るガスの流路を開示している。弁1135がトロカールに連結されると、雄型ルアーロック付属品1137は、静止スリーブ1138の内側で回転し、雄型ルアーロック付属品1137内の開口部とスリーブ1138内の開口部とを位置合わせしてガスが通過するのを可能にする。弁1135が切断されると、開口部は、位置合わせ不良になり、ガスの流れを遮断する。
【0054】
図13は、閉流形態の弁1135の断面図を開示している。図13の矢印は、雄型ルアーロック付属品1137を回転させて流体の流れを阻止したときに弁1135内で停止するガスの流路を開示している。
【0055】
図14は、ガス再循環システム1400の実施形態を示している。ガス再循環システム1400は、図1図13に記載したガス再循環システムと同様なコンポーネントおよび作動特性を含むのが良い。ガス再循環システム1400は、出力チュービング1425と入力チュービング1420の間に位置付けられたバイパス弁1483を含むのが良い。図14に示す矢印は、ガス流路を示している場合がある。バイパス弁は、通常は出力チュービング1425と入力チュービング1420の間にガス流路が存在しないように閉じることができる。バイパス弁1483が開かれると、それにより図14に矢印で示すように入力チュービング1420から出力チュービング1425へのガス流路を生じさせることができる。入力チュービング1420から出力チュービング1425へのガス流路は、ポンピングサイクル中に発生する可能性がある下流圧力を制限することができる循環ガスループをポンプカートリッジ1406の周りに生じさせることができる。例えば、バイパス弁1483を開けることにより、ガス流れの一部分をポンプカートリッジ1406から出力チュービング1425内に経路変更することができ、それによりバイパス弁1483の下流における圧力増大を阻止することができる。バイパス弁1483は、Minivalve 弁またはHalkey/Roberts(登録商標)弁のような一方向圧力逃し弁、例えば、ダックビル弁またはばね押し弁であるのが良い。バイパス弁1483は、その流入側またはポンプカートリッジ1406の下流の別の場所に存在する圧力に基づいて自動的に開くように選択することができる。例えば、バイパス弁1483は、用途に依存して0.1psi程度の低い圧力から10psi超までの圧力で開くように選択することができる。圧力が約0.15psiから0.55psiの範囲にあるときにバイパス弁1483が開くことが好適である場合がある。
【0056】
図15Aおよび図15Bは、水分トラップの実施形態、例えば水分トラップ130,230,930を開示している。図15Aおよび図15Bの水分トラップ1530を図15Bに矢印で示すようにガスが患者から再循環ポンプ(図示せず)に流れる場所である出力チュービング(図示せず)に配置するのが良い。図15Bは、水分トラップ1530内を延びる管1584を含む水分トラップ1530の断面図である。管1584は、水分トラップ1530のガス流入側で始まり、そして水分トラップ1530の出口に向かって延びるのが良いが、水分トラップ1530の出口に接触しないのが良く、その結果、管1584の端部と水分トラップ1530の出口の間には隙間が存在するようになっている。隙間は、ガスが水分トラップ1530の出口に達する前にガス内に存在する液体が滴下流出することを可能にすることができる。ガスから除去された液体を水分トラップ1530内に収集することができる。管1584の端部と水分トラップ1530の出口の間の隙間のサイズは、用途に応じて様々であって良い。例えば、ガス速度が高めである用途では、ガス中の液体が滴下流出できるよう広めの隙間が必要となる場合があり、それに対してガス速度が比較的低めである用途では、ガス中の液体が滴下流出できるよう狭い隙間が必要となる場合がある。水分トラップ1530は、水分トラップ1530内に液体を収集するための吸収体媒質を含まなくてもよい。水分トラップ1530およびそのコンポーネントは、液体と接触状態にあるようにするのに任意適当な材料、例えば、プラスチックまたは金属で構成されるのが良い。
【0057】
図16Aおよび図16Bは、水分トラップの別の実施形態、例えば水分トラップ130,230,930,1530を開示している。図16Aおよび図16Bの水分トラップ1630を図16Bに矢印で示すようにガスが再循環ポンプ(図示せず)から患者に流れる場所である入力チュービング(図示せず)に配置するのが良い。図16Bは、両方共に水分トラップ1630内を延びる入力管1685と出力管1685とを含む水分トラップ1630の断面図を示している。入力管1684は、水分トラップ1630のガス流入側で始まり、そして水分トラップ1630の出口に向かって延びるのが良い。出力管1685は、水分トラップ1630のガス流出側で始まって水分トラップ1630の入口に向けて延びるのが良い。入力管1685と出力管1685は、水分トラップ1630内で互いに通り越して延びて図16Bに示すようにオーバーラップを生じさせるのが良く、その結果、入力管1684から水分トラップ1630に入ったガスは、出力管1685中に直接流入することはできず、必ず最初に水分トラップ1630の内部を通って流れるようになる。図16Bの示すところによれば、入力管1684と出力管1685は、これら管のところどころの部分がオーバーラップする一方で入力管1684の入口と出力管1685の出口が軸方向に整列状態のままであるよう曲がり部を有するのが良い。ガス中の液体は、水分トラップ1630の内部を通って流れている間に滴下流出することができ、その後、ガスが出力管1685を通って水分トラップ1630から流れ出る。ガスから除去された液体は、水分トラップ1630内に集まることができる。水分トラップ1630は、水分トラップ1630内に液体を収集するための吸収体媒質を含まなくてもよい。水分トラップ1630およびそのコンポーネントは、液体と接触状態にあるようにするのに任意適当な材料、例えば、プラスチックまたは金属で構成されるのが良い。
【0058】
図17A図17Cは、ガス再循環システム1700の実施形態を示している。ガス再循環システム1700は、図1図16Bに記載したガス再循環システムと同様のコンポーネントおよび作動特性を含むのが良い。ガス再循環システム1700は、再循環ポンプ1705、ポンプカートリッジ1706、モータ1707、コントローラ1740、ユーザインターフェース1745、電源1776、DCモータ制御回路1778、およびプロセッサ回路1780のようなガス再循環システム1700のコンポーネントのうちの一部を含む再循環ポンプエンクロージャ1786を含むのが良い。
【0059】
図17Aは、カートリッジドアが開いてエンクロージャ1786内に設置されたポンプカートリッジ1706を示すガス再循環システム1700を示している。図17Cは、ポンプカートリッジロック機構1787を示すガス再循環システム1700の詳細断面図である。ポンプカートリッジロック機構1787は、ばね1788を含むのが良く、ボール1789がばね1788の一端のところに配置されている。ばね1788は、ボール1789を介してポンプカートリッジ1706に力を及ぼすことができ、それによりポンプカートリッジ1706をエンクロージャ1786内にロックすることができる。変形例として、ばね1788は、ボール1789なしで力をポンプカートリッジ1706に直接及ぼしても良い。
【0060】
図18Aは、ポンプカートリッジ1706が挿入前の位置にあるガス再循環システム1700の斜視図である。図18Bは、ポンプカートリッジ1706がエンクロージャ1786内に設置されたガス再循環システム1700の斜視図である。
【0061】
図19Aは、カートリッジドアが閉められたガス再循環システム1700の斜視図である。図19Bは、カートリッジドアが開き、ポンプカートリッジ1706が設けられていないガス再循環システム1700の斜視図である。
【0062】
図20A図20Fは、カートリッジドアが閉められたガス再循環システム1700の図である。図20A図20Fに示す寸法は、例示であり、ガス再循環システム1700の用途に基づいて変更可能である。
【0063】
図21A図21Hは、ガス再循環システム2100の実施形態を示している。ガス再循環システム2100は、図1図20に記載したガス再循環システムと同様のコンポーネントおよび作動特性を含むのが良い。ガス再循環システム2100は、コード化コネクタ2190を有するポンプカートリッジ2106を含むのが良い。コネクタ2190は、米国特許第9,283,334号明細書に記載されたものであるのが良く、この米国特許を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。コネクタ2190は、適正なポンプカートリッジ2106が再循環ポンプ2105に連結されているか、ポンプカートリッジ2106が過去に使用されたものであるかを識別すること、または特別な設定、例えば、流量に従って作動するようにガス再循環システム2100を選択して設定することができる。図21A図21Hは、コネクタ2190を有するポンプカートリッジ2106の斜視図を示している。
【0064】
図22Aおよび図22Bは、ガス再循環システム2200の実施形態を示している。ガス再循環システム2200は、図1図21に記載したガス再循環システムと同様なコンポーネントおよび作動特性を含むのが良い。ガス再循環システム2200は、ポンプカートリッジ2206(図示せず)を「ブラインド(目隠し)」方式でモータ結合アーム2282に結合することができるコンポーネントを含むのが良く、その結果、ユーザは、モータ結合アーム2282の正確な存在場所を知らず、しかも前かがみになってガス再循環システムエンクロージャ2286(図示せず)内部を見てモータ結合アーム2282の存在場所を確認するようなことはしないで、ポンプカートリッジ2206をガス再循環システムエンクロージャ2286(図示せず)中に挿入することができるようになっている。図22Aは、モータ結合アーム2282の前面から延びる結合シャフト2291を示している。結合シャフト2291は、ダイヤフラムアクチュエータ2281(図22には示しておらず、図5図6図8、および図21に示されている)内の対応の開口部内への結合シャフト2291の挿入を助けるためにテーパ付き端部分を有するのが良い。ダイヤフラムアクチュエータ2281は、対応のテーパ付き開口部を有するのが良い(図21に示すように)。モータ結合アーム2282の背面から位置決めピン2292が延びるのが良い。位置決めピン2292は、位置決めスロット2293内に嵌まり込むことができる。図22Bは、結合シャフト2291およびモータ結合アーム2282から延びる位置決めピン2292の詳細図である。位置決めスロット2292は、モータ2207またはエンクロージャ2286の他の静止部分に対するマウント内に見受けられる。位置決めピン2292は、モータ2207がモータ結合アーム2282を上下に動かしているときに位置決めスロット2293内で上下に動くことができる。位置決めスロット2293は、位置決めピン2292の横方向運動を制限することになる。位置決めピン2292は、モータ結合アーム2282に連結されているので、位置決めピン2292の横方向運動の制限により、モータ結合アーム2282および結合シャフト2291は、モータ2207が停止したときにモータ結合アーム2282がどこに配置されているかとは無関係にほぼ同一の垂直平面内に位置したままになる。したがって、ユーザは、ポンプカートリッジ2206をエンクロージャ2286内に容易に挿入し、ダイヤフラムアクチュエータ2281をモータ結合アーム2282と容易に結合することができる。
【0065】
図23A図23Fは、ガス再循環システム2200のところどころの部分の図を示している。図22Aは、モータ2207と結合シャフト2291付きモータ結合アーム2282のためのマウントの正面図を示している。図23Bは、モータ2207、結合シャフト2291、および位置決めピン2292と一緒にモータ2207のためのマウントの側面断面図を示している。図23Cは、モータ結合アーム2282の前面上および背面上それぞれに見られる結合シャフト2291および位置決めピン2292の詳細図を示している。図23Dは、モータ2207および位置決めピン2292が位置決めスロット2293を通って延びている状態の位置決めピン2292と一緒にモータ2207のためのマウントの側面図を示している。図23Eは、モータ2207および位置決めピン2292が位置決めスロット2293を通って延びている状態の位置決めピン2292と一緒にモータ2207のためのマウントの背面図を示している。図23Fは、位置決めピン2292が位置決めスロット2293を通って延びている状態の位置決めピン2292の詳細背面図を示している。
【0066】
図24Aおよび図24Bは、ガス再循環システム2400の実施形態を示している。ガス再循環システム2400は、図1図23に記載したガス再循環システムと同様なコンポーネントおよび作動特性を含むのが良い。ガス再循環システム2400は、腹腔鏡手術が完了した後に患者の腹膜腔からCO2ガスを排気するためのコンポーネントを含むのが良い。代表的には、腹腔鏡手術が完了すると、患者内に挿入されていたトロカールに設けられたルアー連結部が開かれ、それによりCO2ガスが患者の腹膜腔内から手術室中に逃げ出すことができる。望ましくないことには、逃げ出しているCO2ガスは、濾過されることはなく、したがって、外科的処置から残ったままの煙霧状態の化学物質、粒子、細菌などを含有する場合がある。
【0067】
ガス再循環システム2400は、入力チュービング2420内に配置された三方弁2494を含むのが良い。入力チュービング2420は、患者への流れを提供する。図24Aの示すところによれば、三方弁2494は、フィルタ2432の下流側に配置されるのが良く、その結果、三方弁2494を流通しているいかなるガスも、不純物がすでに濾過除去されたものであるようになっている。図24Bは、ガス再循環システム2400の詳細図であり、三方弁2494、入力チュービング2420、出力チュービング2425、およびフィルタ2432を示している。外科的処置の終了時、再循環チュービング2420,2425が取り出される前であって再循環ポンプ2405が依然として作動している間に、三方弁2494は、患者へのガスの流れを阻止し、手術室へのガス流れを可能にするように構成されるのが良い。このように、再循環ポンプ2405は、フィルタ2432がどんな汚染物も患者から出ることがないようにした状態で、CO2ガスを患者の腹膜腔内からポンプで送り出すことになる。入力チュービング2420を単に患者から切り離すのではなく、三方弁2494を利用して手術室へのガスの流れを可能にすることにより、手術室に入った患者からのガスだけがフィルタ2432に通されて濾過されるようにし、その手段として、最初に、外科的処置の際に存在した、患者とのガス連結部を全て維持する。三方弁2494を利用してCO2ガスを患者から除去することにより、逃げ出ているCO2ガスの清浄さを保証するための追加手段を必要としないで、手術室内スタッフへのリスクを軽減することができる。
【0068】
図25Aおよび図25Bは、入力チュービング2420から隔離された三方弁2494を示している。三方弁2494は、入力チュービング2420に結合するための2つのインライン型の刺付き継手2495を有するのが良い。三方弁2494は、2つのインライン型の刺付き継手2495に垂直に差し向けられた雌型ルアー連結部2496をさらに有するのが良い。雌型ルアー連結部2496は、例えばCO2ガスを手術室中に放出するために、圧力逃がし目的で使用されるのが良い。三方弁2494は、三方弁2494の開いた流路を調節するよう回転する活栓2497をさらに有するのが良い。図25に示されているように、三方弁2494を通る閉鎖流路は、活栓2497の「オフ」部分によって指示されている。図25Aは、2つのインライン型の刺付き継手2495を通るガス流を可能にするよう構成された三方弁2494を示しており、2つのインライン型の刺付き継手2495は、患者に至る入力チュービング2420に連結されるのが良い。図25Aの構成は、再循環機能の実行中に使用される構成であるのが良い。図25Aの三方弁2494の構成は、ガスが手術室内に放出されるのを阻止することができる。図25Bは、雌型ルアー連結部2496を通って出て手術室中に入るガスの流れを可能にするよう構成された三方弁2494を示している。図25Bは、ガスが患者から排出されているときの外科的処置の終了時に使用される構成であるのが良い。図25Bの三方弁2494の構成は、ガスが患者に流れるのを阻止することができる。
【0069】
今、検出煙含有量の変化に対する自動応答性を備えかつ上記図1図25のガス再循環システムの特徴のうちの任意の1つ以上を含むことができる別の形態のガス再循環システムについて説明する。煙検出方式を備えた図26の例示のガス再循環システム2600は、ガス再循環システム200に関する図2に記載されたのと同一の特徴およびコンポーネントのうちの多くのものを含む。図26では、図2のコンポーネントと同一のコンポーネントは、図2に示されている同一の識別番号でラベル表示されている。しかしながら、ガス再循環システム200とは異なり、ガス再循環システム2600は、コントローラ240と連絡状態にある煙検出センサ2602をさらに含む。また、図26に記載されているように、腹膜腔を出たチュービングからのガスを再循環ポンプ205に送るか、吸引源2608からの吸引力を受け取ってガスおよび煙を閉鎖系の外側の行き先まで抜き出す吸引排気管2606に送るようコントローラ240によって制御可能である弁2604が設けられている。以下の互いに異なる具体化例で説明するように、弁2604、吸引排気管2606および吸引源2608は、幾つかの実施形態では省かれても良い。
【0070】
ガス再循環システム2600は、手技によって生じた煙の濾過を自動的に開始させたり停止させたりし、あるいは自動的にその量を調節したりする煙検出機構体を含むのが良い。ガス再循環装置と腹膜との間のガス通路に沿って(図示のように)ガスポンプ205内にまたはそれどころか腹膜それ自体の中に位置決めできる煙検出センサ2602は、コントローラ240と連絡状態にある。煙の測定のための整備された環境を提供するため、煙検出センサ2602は、腹膜内あるいはSRSそれ自体の中ではなく、腹膜を出たガスチュービングの経路に沿って位置するスタンドアロン形センサとして具体化されるのが良いが、これらの他の配置場所もまた想定される。コントローラ240は、センサ2602によって検出された煙の量、または量と持続時間に関する情報を用いて、検出された煙の算定量および/または持続時間に基づいて、ポンプ205内のガス再循環モータのうちのモータ207の速度を自動的に調節することができる。ガス再循環システム2600は、オプションとして弁2604をさらに含むのが良く、弁2604は、ガスを入力および出力チュービング220,225ならびにこれらの中に設けられたガス除去フィルタ230,232から成る閉鎖系内で循環させる作動状態か、煙密度が所定の最大値を超えて増大した場合に吸引源2608に結合している吸引排気管2606がガスと煙を迅速に除去することになる作動状態かを選ぶようコントローラ240によって選択的に制御可能である。スタンドアロン形ポンプまたは医療施設に設けられた内蔵式壁取り付け形吸引ポートを含む多くの既知の吸引源のうちの任意のものを吸引源2608として使用することができる。
【0071】
吸引源2608は、所定の流量に固定されるのが良くまたは多数の流量のうちの任意のものに調節可能であるのが良い。一具体化例では、毎分10リットルから12リットルまでの範囲にある流量が吸引源2608にとって許容可能であると言えるが、吸引源2608は、毎分12リットル(lpm)の最小流量を提供することができると想定される。幾つかの具体化例では、吸引源について15lpmの最小流量が、ポンプがそれ自体で取り扱うための煙蓄積が速すぎる場合、モータによって支援される流れよりも速い流れを提供することが計画される。吸引源が固定流量源である具体化例では、吸引源は、常時オンであっても良く、あるいはコントローラ240によってオン状態かまたはオフ状態かのいずれかの状態であるよう制御されても良い。弁2604は、吸引源2608が常時オンであるかオン状態とオフ状態との間で制御可能であるに過ぎないかのいずれかである具体化例では、除去中の再循環ガスに適用される吸引流量を調節するようコントローラ240によって調節可能である。他の具体化例では、吸引源2608は、コントローラ240によって調節可能な可変流量吸引源であるのが良い。
【0072】
種々の形式の煙検出器技術が煙検出センサ2602について想定される。これら互いに異なる技術のうちの実施例としては、電気化学センサ、クロマトグラフィセンサ、光センサ、光電子センサ、音声センサまたは電気的ペアリングが挙げられる。適当な電気化学センサとしては、イオン化煙検出器回路、例えばガスをイオン化して隣り合う電極に電流を生じさせるアメリシウム(Americium)241を使用する検出器が挙げられる。多くの他の電気化学ガスセンサのうちの任意のもの、例えばイリノイ州アーリントン・ハイツ所在のフィガロ・ユーエスエー・インコーポレイテッド(Figaro USA Inc.)から入手できるFigaro TGS5342またはTGS5141-P00 電気化学センサもまた利用できる。光源、例えば発光ダイオード(LED)からの直接または反射光を検出するクロマトグラフィセンサまたは光電子センサまたは光電子煙検出器を種々の実施形態において具体化できる。音声検出器は、本明細書において説明する煙排出機能をトリガするために動作中、煙発生器具(例えば、焼灼器具)の音を検出するよう具体化できる。また、煙発生器具と煙排出機器との直接電気的ペアリングを用いることができ、その結果、煙発生器具の作動により信号を煙排出システムに送って外科医による焼灼または煙発生器具の使用と協調して煙排出システムを停止させたり開始させたりするようになっている。一実施形態では、煙センサとしてセンサ技術を1つだけ具体化しても良い。他の実施形態では、センサ技術のうちの2つ以上の組み合わせを具体化することができる。
【0073】
光電子センサ構成を用いた光検出センサの一例が図27に示されている。図27の実施形態では、センサ2702は、ガス流路に沿って、例えば腹膜からのガスを運ぶチュービング2703に隣接してまたはこのチュービング上にもしくはこのチュービング内にインライン状態で位置決めされる。センサは、ガス流路を横切って光を放出する光源2706、例えば赤外レーザまたは輝度の高いLEDを収容したハウジング2704を有する。光源2706に密接してハウジング内に位置決めされた光受容器2708が散乱検出形態をなして配置されるのが良く、その結果、光源2706からの直接経路内に存在する光受容器2708に到達する光は生じないようになっている。それどころか、光受容器2708は、光源を出た後にガスから反射された光源2706からの光だけを受け取ることができる角度をなして位置決めされている。かくして、煙がガス流路に入ると、光源2706からの光は、煙中の粒状物によって反射されて光受容器2708に至り、それにより光受容器は、コントローラ240に伝送される出力信号を生じさせる。光検出センサは、この出力信号をワイヤードまたはワイヤレス接続手段2710によりコントローラ240に送信することができる。種々の実施形態では、出力信号は、光のうちの分散光のうちの多くを捕捉するよう煙検出センサ2702内に2つ以上の光受容器2708を用いることによって一段と改善可能である。
【0074】
変形具体化例では、赤外光源2706および光受容器2708は、互いに直接向かい合うよう方向づけられるのが良く、その結果、光源からの赤外光の直接ビームが光受容器に到達するようになっている。この直接ビーム構成例では、ガス流中に煙があればその煙は、光のうちの何割かまたは全てを反射し、その結果、光受容器2708に到達する光が少なくなる。出力信号大きさは、ガス中に存在する煙の量を求めるためにコントローラ240によって使用されるのが良い。幾つかの具体化例では、センサ2702中の回路計は、煙密度が増大するにつれて出力信号の大きさが増大するよう構成されているのが良い。変形例として、既知の初期出力信号レベルの大きさの減少量がガス流中に存在する煙の量を指示しても良い。
【0075】
図28に示されているようなクロマトグラフィ/光電子センサ構成のさらに別の実施形態では、煙検出センサ2802は、非分散赤外(NDIR)原理に基づく二重波長/二重検出センサであるのが良い。この変形型のセンサ2802もまた、ガス流路に沿って配置されるのが適しているのが良く、しかもCO2検出に必要な波長を生じさせる強力なブロードバンド光源2806の直接経路中に2つの光受容器2808,2809を備えたハウジング2804を有し、この強力なブロードバンド光源2806を本明細書ではエミッタと称する場合がある。例えば、CO2ガスを再循環させるシステムでは、一方の、すなわち第1の光受容器2808は、CO2ガスにより吸収される4.2μm波長を検出するよう設定されているのが良く、第2の光受容器2809は、どのようなガスによっても影響を受けず、どのような煙であってもその煙中の粒状物によって影響を受ける3.9μm波長を検出するよう設定されているのが良い。この場合、光受容器の出力の組み合わせにより、コントローラ240は、CO2ガスの品質を100万当たりの部(PPM)で判定することができる。一変形具体化例では、光受容器2808,2809は各々、異なる薄膜フィルタ(TFF)を有するのが良く、かかるTFFは、煙中の成分ガスまたは粒子のうちのそれぞれの異なるもの、例えば一酸化炭素を検出するようチューニングされた波長帯域通過プロフィールを有する。
【0076】
図29を参照すると、煙センサ2902は、入力または出力チュービング内またはこれに隣接するのではなく、ポンプ205内にまたはこれに隣接して位置決めされるのが良い。煙検出センサ技術として1つ以上の光電子エミッタおよび1つ以上の光電子検出器を利用する幾つかの実施形態では、センサ2902は、ポンプ内に、例えばポンプ205の取り外し可能なカートリッジ2606内に配置されるのが良い。図30に示されているように、1つ以上の光電子エミッタ3006および多数の検出器3008がカートリッジ506に隣接して位置決めされるのが良く、その結果、循環流がエミッタ3006と検出器3008との間で光路3009を通過するようになっている。エミッタ3006および検出器3008は、再循環中のガスと流体接触関係にはなく、これとは異なり、カートリッジ材料によって隔離され、カートリッジ材料は、少なくとも、光電子エミッタ3006および検出器3008に隣接した領域では、光電子エミッタによって送られる波長に対して透明である。かくして、ガスからのセンサの物理的隔離により、システムの生体不適合性の恐れと流体接触センサとの関係を改善することができる。加うるに、この隔離方式は、センサを手術の際の煙の水凝縮および他の化学成分と関連した腐食および汚染による性能の劣化から保護することによってシステムロバストネスを向上させることができる。図5のカートリッジ506の改造形態が図30に示されているが、先に図示したポンプカートリッジのうちの任意のものは、本明細書において開示するセンサを有するよう改造されるのが良い。
【0077】
電力をセンサのエミッタ3006および検出器3008に供給する電気接点は、カートリッジが再循環装置中に挿入される箇所に作られるのが良い。検出器3008を再循環ポンプの近位側に配置することにより、信号伝送距離および電磁信号干渉度が減少する。また、検出器3008をポンプの近位側に配置することによって、チュービングセット内に通された場合に流れまたは生体適合性を損なう恐れのあるワイヤの必要性を最小限に抑えることができる。加うるに、センサをカートリッジのところに配置することにより、手術室が散らかった状態になるのを回避するとともにチュービングに沿ってポンプから見て遠くに配置されたセンサからチュービングセットの外部に通された長い配線類がもたらす絡み合い/つまずきの危険を回避するのが可能になると言える。
【0078】
図31を参照すると、煙センサ2902のアレイをなした例示の検出器3008が示されている。センサの検出器は各々、薄膜フィルタ(TFF)3001を備えるのが良く、これらTFFの各々は、例えば上述した煙中の成分ガスまたは粒子のうちの異なるものを検出するようチューニングされた波長帯域通過プロフィールを有する。これら検出器からのそれぞれの信号レベルは、再循環ポンプコントローラによって同期され、それにより種々のガス成分シグネチャ(signature )および濃度を検出することができる。センサ2902に電力を供給するための電力は、ワイヤード接続部によって、例えばポンプ205のハウジングに設けられた電気接点と嵌合する取り外し可能なカートリッジ506に設けられている電気接点によって得られる。検出器3008からのデータ信号は、ワイヤによりまたはワイヤレスでコントローラ240に送信されるのが良い。例えば、データを煙除去システムのコントローラまたは他の部分に伝送するためのワイヤに代えて、集積回路を含むのが良いプリント回路基板組立体(PCBA)3003が各検出器3008に電気的に接続されており、あるいは、各々が検出器3008の対応の各々に専用である一連の集積回路であっても良い。このPCBAは、信号をワイヤレスで再循環ポンプおよび/またはポンプコントローラに送信して戻し、それにより光電子センサの局所的に検出された出力を伝送するよう構成されているのが良い。
【0079】
他の実施形態では、センサ2602,2902は、図32に示されているように電気化学センサ3200であるのが良い。光電子センサ形態の場合と同様、電気化学センサ3200は、チュービング(出力または入力)に沿ってもしくはこの中に、またはポンプのところに配置されるのが良い。電気化学センサ3200は、作用電極3201および電気化学センサ回路計3203と電気的電力状態にある1つ以上の対電極3202を有するのが良い。電気化学センサ3200またはこの電気化学センサの少なくとも電極3201,3202が入力チュービング内に配置されている実施形態では、電気化学センサの作用電極3201は、再循環中のガスと流体接触状態にあり、ワイヤがコントローラ240および煙再循環装置の残部への電気的接続を行うよう使用されるのが良い。変形実施形態では、電気化学センサのワイヤレス構成は、ワイヤード形態に代えて具体化できる。例えば、データを煙除去システムのコントローラまたは他の部分に伝送するためのワイヤに代えて、ワイヤレス通信回路が電気化学センサと一体であるのが良い。上述の光電子センサ形態と同様、電気化学センサ形態のためのワイヤレス通信回路は、集積回路またはプリント回路基板組立体に設けられたディスクリート回路であって良く、埋め込み状態のワイヤレス送信機が電気化学センサに電気的に接続されている。ワイヤレス送信機は、信号をワイヤレスで再循環ポンプおよび/またはポンプコントローラに設けられている受信機に送信して戻し、それにより電気化学センサ3200の局所的に検出された出力を伝送するよう構成されているのが良い。電気化学センサ実施形態のワイヤード形態またはワイヤレス形態は、種々の実施形態において、入力チュービングまたは出力チュービングに沿ってもしくはこの中に、またはポンプのポンプカートリッジに沿ってもしくはこの中に配置されるのが良い。例えば、電気化学センサ3200は、ポンプカートリッジの壁、例えばカートリッジ506の壁(図5B)内に配置されるのが良く、この場合、作用電極3201は、チュービングセットの近位の部分のところで再循環中のガスと流体接触関係をなす。この場合、電気化学センサ3200は、挿入場所のところでガス再循環装置のポンプまたは他の部分と電気的接触関係をなすのが良い。
【0080】
図33図35に示されているように、電気化学センサ3200は、ガス再循環ポンプカートリッジ3306の底壁3305内に配置されるのが良い。電気化学センサ3200は、作用電極3201がカートリッジ3306の内側のガス接触部分の方へ向いた状態で差し向けられるのが良く、その結果、電気化学センサは、ガス流の近くに位置するようになる(矢印3307で示されている)。作用電極3201は、チュービングセットの近位部分およびポンプ中へのポンプカートリッジ3306の挿入時に電気接続がポンプ内の対応の嵌合パッドと行われるよう露出されたセンサの対電極3202(センサの2本の電気リード)のところで再循環のガスと流体接触状態になるのが良い。
【0081】
図34は、ガス再循環システムのポンプモータの改造型モータ組立体3500を備えたモータエンクロージャ3400を示し、図35は、モータエンクロージャ3400から取り外されたガス再循環システムの改造型モータ組立体3500を示している。図34および図35のモータエンクロージャ3400および改造型モータ組立体3500は、ポンプカートリッジ3306と結合しているが、ポンプカートリッジ3306の底壁に設けられた電極3201,3202に対応する導電性の嵌合パッド3401,3402の配置場所を良好に示すためにポンプカートリッジ3306が省かれた状態で示されている。この場合、ポンプカートリッジ3306は、取り外し可能であり、カートリッジ1706が上記のように図18Aにおいて挿入されたように示されたのと同様な仕方でモータエンクロージャおよびモータ組立体中に挿入可能である。改造型ポンプエンクロージャ3400および改造型モータ組立体3500は、上記図19Bおよび図22Aに示されたポンプおよびモータシステムの改造形態として示されているが、取り外し可能ポンプカートリッジと協働することができる多数の互いに異なるポンプハウジングおよび再循環システム形態のうちの任意のものが想定される。また、図36の実施例で理解されるように、カートリッジ3606に、例えば図33に示されているように底部にではなくカートリッジ3606の側壁に設けられた電気化学センサ3200の他の配置場所が想定される。モータエンクロージャおよび/またはモータ組立体内の相補形嵌合パッドは、この場合、かかるコンポーネントの対応の側壁に再配置される。
【0082】
さらに別の具体化例では、図37および図38に示されているように、煙検出センサ、例えば電気化学センサ3200がガス再循環ポンプチュービングセットの入力雄型ルアー弁3701内に配置されるのが良い。このように、作用電極は、チュービングセットの近位部分のところで再循環中のガスと流体接触状態にあるのが良い。電気化学センサ3200から再循環ポンプまで延びるワイヤ3700を用いると、センサ3200からの信号をポンプに電気的に送信することができる。図37は、患者からのガスを受け取る入力ルアー弁3701中のセンサ3200を示し、図38は、患者へのガスラインのための出力ルアー弁3801中のセンサ3200を示している。一方のまたは両方のルアー弁は、互いに異なる実施形態では、電気化学センサ3200または他形式の煙検出センサを収容するのが良い。また、センサ3200からポンプまで管内を延びるワイヤ3600とは異なり、ワイヤ3600は、ルアー弁のところにまたはその近くに配置された管を出てポンプ、ポンプコントローラまたは他の行き先まで管の外側に延びても良い。センサをルアー連結部内に配置することにより、煙除去システム内の他の配置場所と比較してある特定の利点が得られ、かかる利点としては、焼灼場所に密接していることにより応答時間の短縮および/または感度の増大が挙げられる。加うるに、ポンプ内の配置に対して、この配置状態は、センサの寿命を延ばすことができ、しかもセンサをポンプの機械的振動から物理的に隔離することによって摩耗の恐れを減少させることができる。
【0083】
図26図38のガス再循環システムを利用して、以下において、ガス再循環システム2600,2900の作動方法について説明する。第1の具体化例では、図39に示されているように、ガス再循環システムのコントローラ240は、煙検出センサ2602,2902の出力信号をモニタして出力管225内のガスの煙密度を検出することができる(ステップ3902において)。検出ガス密度が所定のしきい値よりも大きい場合(ステップ3904において)コントローラ240は、ポンプ205のモータ207と通信してガスの循環速度を増大させ、かくして煙をガスから濾過除去する速度を増大させることができる(ステップ3906において)。一実施形態では、煙検出センサが光を利用したセンサ(例えば、光源、例えばLEDまたは源からの光を検出するための)である場合、所定のしきい値は、実際には、各々がガス中の煙に起因した光減衰量または反射量に基づいて異なるモータ速度変化と関連した複数のしきい値であるのが良い。例えば、ポンプ205のモータ207は、検出された光減衰/反射に基づいて、すでに増大されている場合、デフォルト速度に向かって増大しまたは減少して戻るデフォルト速度に設定されるのが良い。
【0084】
ガス循環速度を増大させた後、コントローラ240は、煙密度が同一(または異なる)しきい値密度を下回って減少したかどうかを確かめるためにセンサ2602,2902をチェックするのが良い(ステップ3908で)。コントローラは、引き続き煙密度の低下があるかどうかをチェックするのが良く、ついには、煙密度は、所定のしきい値を下回って低下し、次にコントローラは、モータ速度を減少させる(ステップ3910で)。このプロセスは繰り返し可能である。コントローラ240がセンサ2602,2902をチェックして検出された密度を適当なしきい値と比較するタイミングは、連続であっても良く、あるいは所定の一定時間間隔を置いていても良い。また、一実施形態では、ポンプを検出煙密度に応答してターンオンしまたはターンオフすることができる。変形例として、ポンプ205は、連続作動を可能に構成されても良く、コントローラは、モータ速度をデフォルト速度からこれよりも高い速度に増大させ、次にその高い速度からデフォルト速度に減少して戻す。変形実施形態では、モータ207は、オン設定値もしくはオフ設定値を超えてまたは初期非ゼロ速度とこれよりも高い速度設定値の間で可変速度調整を行うことができる。この変形実施形態では、コントローラは、モータ207の速度調整精度によってのみ限定される段階をなして最小速度と最大速度の間における煙検出密度(例えば、センサ2602,2902から受け取った出力信号の大きさ)に正比例してモータの速度を変化させるよう構成されている。モータは、連続可変速度モータであっても良くまたはコントローラがアクセスできる多種多様な速度を有しても良い。
【0085】
一具体化例では、ポンプモータの増大と再循環中のガス中の検出された煙との関係は、センサ2702,2802で検出された光減衰量に基づいているのが良い。例えば、デフォルトポンプモータ速度から始まって、コントローラは、ガス中に投射された光の検出減衰度が1%以下である場合、モータ速度に何ら変更を加えないのが良い。ポンプモータ速度を検出減衰度が1%超かつ3%以下である場合に10%だけ増大させるのが良く、検出減衰度が3%超かつ10%以下である場合には25%だけ増大させるのが良い。最後に、この具体化例では、モータ速度を光の減衰度が10%超で検出された場合には40%だけ増大させるのが良い。利用できる(検出された光減衰度が1%以下の場合)1デフォルト流量は、ガス再循環システムについて毎分12リットル(lpm)であるのが良く、検出された煙に基づく増大したポンプモータ速度は、流量をデフォルト流量から増大させる。ポンプモータ速度の増大と流量との増大の関係は、線形ではないが、コントローラ240は、所望の百分率だけモータ速度を増大させるよう設定されているのが良くまたは他の具体化例では所望の流量の増大を達成するためにモータ速度を調整するよう補償が行われることが良いことが見込まれる。別の具体化例では、デフォルトモータ速度または流量は、ユーザにより調節されるのが良く、モータ速度または流量の増大範囲は、コントローラを介してユーザにより定められるのが良い。
【0086】
上述したような瞬時煙密度の検出基準を超えるより複雑精巧な煙検出基準は、種々の実施形態においてコントローラ240によって具体化できる。例えば、コントローラ240によって実行される図39のオン/オフまたは低速/高速決定を持続時間要因、例えば経過時間または検出煙密度が関連の所定しきい値を上回りまたは下回る場合に行われる連続的に実施される別々の測定の数と組み合わせることができる。かくして、図29の方法は、検出された煙(ステップ3904の場合)がモータ速度の増大をトリガする前に所定の時間にわたって所定のレベルを上回っていることを必要とするようステップ3904およびステップ3908において改造されるのが良い。同様に、ステップ3908に関し、コントローラは、煙密度と持続時間の組み合わせが所定の低いしきい値を満足させた場合にのみモータ速度を減少させるよう構成されているのが良い。また、2つの要因から密度と時間分析により種々の組み合わせの範囲を互いに異なる組み合わせの範囲が得られ、―例えば、短い持続時間に関して極めて高い煙密度か長い持続時間にわたる僅かにこれよりも低い煙密度のいずれかの結果として、コントローラがモータの速度を増大させることになる場合がある。コントローラは、ポンプ205のモータ速度を増大させまたは減少させるための所定のしきい値要件を満足させたかどうかを判定するために内部クロック信号またはカウンタで煙検出センサからのセンサ出力を処理するようこのメモリまたは別個のメモリ内に記憶されたコードを実行するようプログラムされているのが良い。同様に、図39の煙密度だけの実施形態に関して説明したように、モータは、煙密度の積分データおよびその煙密度の持続時間を使用できる連続可変速度調整(またはちょうど3回以上の速度調整)機能を備えるのが良い。このように、コントローラ240は、ポンプモータ207の連続可変速度調整を行うよう密度および持続時間のアルゴリズムまたはルックアップテーブルを実行するのが良い。かくして、外科的処置中、煙検出センサは、腹腔内のガス中の煙を検出することができ、コントローラ240は、検出煙量を相関させて循環速度を制御して気腹内の煙を濾過除去することができ、その目的は、常時理想的な手術野を得ることにある。煙密度(例えば、光減衰度)およびポンプモータ速度または流量の所定のまたはユーザにより選択可能な範囲は、コントローラ240内の揮発性または不揮発性メモリ内に記憶されているのが良くまたはコントローラ240に対して接近可能であるのが良い。
【0087】
ポンプと速度を調節して煙が特定のしきい値を超えて検出されたときにガスを迅速に循環させる実施形態は、十分に迅速な煙除去機能を常時提供できるわけではない。再び図26を参照すると、システム2600は、オプションとして、ガス流路出力部225に設けられていて煙を濾過除去する閉鎖再循環系から煙で満ちたガスを高い煙除去量が得られるよう吸引排気管2606に迅速にそらすことができる排気モードに切り換える弁2604を含むのが良い。
【0088】
図40に示されているように、弁2604は、弁ドア4002をガスが全て閉鎖システム再循環経路のチュービングを通して送られる位置から、これとは異なりガスが吸引排気管2606にそらされる第2の位置(点線)までスイングさせるようコントローラ240によって制御可能であるのが良い。吸引排気管は、上述したように吸引源2608に出る排気/除去経路を定める。変形例として、弁2604は、変形実施形態では、煙検出センサ2602から作動信号を直接受け取ることができ、この実施形態では、センサ2602から直接受け取る十分に高い出力信号により、弁は、吸引排気経路を開く。図40の実施例は、煙センサが管内に配置された図26の実施形態に焦点を当てているが、煙検出センサ2902がポンプまたはポンプハウジング内に位置する図29の実施形態はまた、図26に示されている実施形態と同様に、ガス入力管かガス出力管かのいずれかの中に吸引排気管、弁および吸引源を有するよう改造されているのが良く、この実施形態は、図40に記載されたように作動する。
【0089】
図41に示されているように、ガス検出方式のガス再循環システム2600の幾つかの具体化例では、吸引排気管2606および弁2604は、煙除去フィルタによる再循環ポンプ速度の増大形態で利用できる速度よりも速い煙除去オプションを提供するよう種々の煙検出レベルで用いられるのが良い。図41は、閉鎖ガス再利用モードでの調節可能なガス再循環速度と閉鎖再循環システムの外側に煙で満ちたガスを追い出すための選択可能な吸引排気部の両方を含むシステム2600において煙を除去する仕方を示している。このプロセスにおける第1ステップでは、ガスセンサ2602を用いてガス中の煙を検出する(ステップ4102において)。次に、ポンプのモータの速度を促進させ(上述したようにオン/オフ実施形態において)または増大させる(ポンプが常時オンである実施形態において、限定された速度の段階を有するにせよ連続可変であるにせよいずれにせよ)のに十分な煙が存在しているかどうかを判定する(ステップ4104において)。煙の量がポンプ速度を促進させまたは増大させるのに十分多いが、吸引排気経路の使用を必要とする高い方のしきい値を超えていない場合(ステップ4106において)、コントローラ240は、ポンプモータ速度を適時促進させまたは増大させるのが良い(ステップ4108において)。煙検出量が高い方のしきい値吸引経路をトリガするのに十分な場合(ステップ4106において)、コントローラ240は、これとは異なり、弁2604を作動させてガスおよび煙を吸引源2608中に抜き出し、そしてシステム2600の閉鎖再循環経路をバイパスさせる(ステップ4114において)。コントローラは、その後における煙センサ2602による測定を用いて(ステップ4104,4110において)、煙の量が減少した場合にはポンプモータ2007を減速させまたはターンオフする(ステップ4112において)。
【0090】
先の煙検出実施形態において注目したように、互いに異なる煙測定基準を使用することができる。一具体化例では、煙の量は、単一の瞬時測定値であるのが良い。変形例として、煙測定値は、ある期間にわたって測定された煙の量の組み合わせであっても良く、この場合、所与の時間にわたる平均的な量が用いられる。加うるに、互いに異なる煙密度とかかる煙密度の関連持続時間の組み合わせは、ポンプモータ速度の増大または減少をトリガするのが良くまたは吸引排気経路のコントローラによって使用をトリガするためのしきい値を満足させるのが良い。
【0091】
上記光減衰およびポンプモータ速度(または流量)実施例を参照すると、弁2604を開いてガスを吸引源中に抜き出すためのしきい値は、最も高いモータ速度設定値について設定された量(例えば、先の実施例では最も高いモータ速度を実現するための10%減衰量と比較して弁が吸引源に排気するための20%光減衰度)よりも多い光減衰量であるのが良い。変形例としてまたは組み合わせ例として、弁を作動してガスを吸引源中に排気するためのしきい値は、検出された百分率表示の光減衰度のしきい値持続時間を含むのが良い。例えば、ガス中の煙に起因した所定の検出済み光減衰の持続時間が特定の時間限度を超えている場合、コントローラ240は、弁2604をトリガして吸引源2608に結合させ、そしてポンプをバイパスして煙に満ちたガスを吸引源経由で排気することができる。
【0092】
さらに、腹膜からのガスに関する他の検出基準をガス密度および/または持続時間測定値と組み合わせてまたはこれらとは別個に使用できることが想定できる。例えば、システム2600,2900は、起伏内にまたは吸引/濾過チュービングの経路に沿って配置されていて起伏の温度のリアルタイム算定を可能にする温度センサを含むのが良い。次に、この温度測定により、コントローラは、必要に応じてガスの動きを起こしてガスを冷却することができる。温度センサは、ポンプ205中に一体化されても良く、腹腔鏡手技で用いられている別の器械に取り付けられた煙検出センサ2602,2902に付設されても良く、あるいは再循環システムのチュービング内に配置されたスタンドアロン形センサであっても良い。温度センサは、煙の存在量に関連したガス中の熱移動速度の差を検出すよう使用できる。例えば、煙で満ちた二酸化炭素ガスの熱移動速度は、煙のない二酸化炭素と比較して異なる熱流束特性を有する場合がある。より特定の実施例として、二酸化炭素は、窒素に対して0.658のKファクタを有し、一酸化炭素は、窒素に対して1.00のKファクタを有する(この場合、K=1/((ガス密度)×(比熱係数))。かくして、流量を一定に保つが一酸化炭素の濃度を増大させることにより、熱流束が減少する。
【0093】
本明細書において説明した他のセンサおよび単独でまたは組み合わせ状態で使用されることが想定されている他のセンサ技術としては、手術の際に出る煙の予想化学成分(例えば、一酸化炭素)の検出ための化学的検出、音響もしくは超音波センサ、磁気センサ、クロマトグラフィセンサ、および焼灼器具使用信号および活動度センサ(例えば、作動中、焼灼器具が放出することが知られており、独特の音声シグネチャマイクロホン形センサで検出でき、そしてガス再循環システム中のポンプ速度の増大をトリガするために使用できる特有の音声シグネチャに合わせてチューニングされたセンサ)が挙げられる。例えば、音響センサに関し、電気メスが能動的に焼灼を行っている場合に連続した3kHz音声トーンを鳴らし(生じさせ)、この音声トーンは、同一周波数に合わせてチューニングされた帯域通過濾波を利用した音声受信器回路によって検出可能である。このトーンの持続時間は、焼灼の持続時間を算定するよう測定可能である。別法として、電気メスは焼灼が始まったときに3kHzのこの3パルストーンを出し、これを停止させたときに別のトーンを同様に検出することができ、2つの3パルストーンシーケンス相互間の時間は、焼灼の持続時間を求めるために計算可能である。焼灼持続時間の結果としての算定を用いると、上述の煙センサ実施形態において煙密度をどのように使用することができるかということと同様に、モータ速度を調節することができまたはモータ速度の調節とそれぞれの互いに異なるしきい値での煙排出バイパスのトリガの両方を行うことができる。
【0094】
煙除去システムにおける1つまたは複数の煙検出センサの種々の配置場所、例えば、チュービング内もしくはこれに沿う場所、ポンプまたはポンプカートリッジ内もしくはこれに沿う場所、またはコネクタ内の場所は全て、互いに対して異なる潜在的利点を奏する。ルアーコネクタのうちの1つ内への配置に対するチュービング内またはこれに沿う配置の場合、利点としては、ユーザが手動でルアーを操作している(切り離している/連結している)間にセンサの損傷の恐れが減少すること、および使い勝手や人間工学的操作性の向上のために手術部位のところでの機器の量が減少することが挙げられる。また、ポンプ内の配置に対するチュービング内またはこれに沿う配置は、ルアー内の配置に関する利点と同様な利点、例えば応答時間の短縮および/または焼灼場所に対する密接性に起因した感度の向上をもたらすことができ、しかもセンサをポンプの機械的振動から物理的に隔離することによってセンサの摩耗の恐れを潜在的に減少させることができる。
【0095】
本発明の種々の実施形態を説明したが、当業者には明らかなように、多くのこれ以上の実施形態および具体化例が本発明の範囲内で可能である。開示した種々の実施形態の構成要素は、かかる実施形態の作用特性および利点のうちの幾つかまたは全てを備えたシステムを作るよう組み合わせるとともに構成することができる。かかる全ての組み合わせは、本願において本明細書に開示されている。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A-7H】
図8A-8E】
図9
図10A
図10B
図11A-11F】
図12
図13
図14
図15A-15B】
図16A-16B】
図17A-17C】
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A-20F】
図21A
図21B
図21C
図21D
図21E
図21F
図21G
図21H
図22A
図22B
図23A-23F】
図24A-24B】
図25A-25B】
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41