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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】試料加工用ホルダ及び試料加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20240704BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20240704BHJP
   H01J 37/31 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
H01J37/20 A
H01J37/20 G
H01J37/317 D
H01J37/31
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022113678
(22)【出願日】2022-07-15
(65)【公開番号】P2024011578
(43)【公開日】2024-01-25
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 義和
(72)【発明者】
【氏名】福田 知久
(72)【発明者】
【氏名】三平 智宏
(72)【発明者】
【氏名】作田 訓将
(72)【発明者】
【氏名】門井 美純
(72)【発明者】
【氏名】木村 達人
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-083179(JP,A)
【文献】特開2015-185457(JP,A)
【文献】特開2015-043343(JP,A)
【文献】特開2006-139917(JP,A)
【文献】国際公開第2012/046775(WO,A1)
【文献】特開2018-200815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダ本体と、
前記ホルダ本体に設けられた第1サブホルダであって、第1イオンビームを部分的に遮蔽して整形後の第1イオンビームを生じさせる遮蔽部材を備え、前記整形後の第1イオンビームにより加工される一次試料を保持する第1サブホルダと、
前記ホルダ本体に設けられ、第2イオンビームを用いた前記一次試料の加工により作製された二次試料を保持する第2サブホルダと、
を含み、
直交関係にあるx方向、y方向及びz方向を有し、
前記z方向は、前記第1イオンビームの中心軸に平行であり、
前記遮蔽部材は、前記y方向及び前記z方向に沿って広がる遮蔽面を有し、
前記第1サブホルダ及び前記第2サブホルダは、前記z方向に並んでいる、
ことを特徴とする試料加工用ホルダ。
【請求項2】
請求項1記載の試料加工用ホルダにおいて、
前記第1サブホルダ及び前記第2サブホルダは、それぞれ、前記x方向及び前記y方向に広がった形態を有する、
ことを特徴とする試料加工用ホルダ。
【請求項3】
請求項記載の試料加工用ホルダにおいて、
前記第2サブホルダは、前記第1イオンビームが進行する向きに従って前記z方向における上流側及び下流側を定義した場合、前記z方向において前記第1サブホルダの下流側に設けられている、
ことを特徴とする試料加工用ホルダ。
【請求項4】
請求項3記載の試料加工用ホルダにおいて、
前記第1サブホルダは、前記一次試料の加工端部を前記遮蔽面よりも突出させつつ前記一次試料を保持し、
前記第2サブホルダは、前記二次試料が取り付けられる支持端部を有する支持部材を直接的又は間接的に保持し、
前記加工端部と前記支持端部との間に汚染防止板が設けられている、
ことを特徴とする試料加工用ホルダ。
【請求項5】
請求項4記載の試料加工用ホルダにおいて、
前記汚染防止板は、前記x方向及び前記y方向に広がっている、
ことを特徴とする試料加工用ホルダ。
【請求項6】
請求項記載の試料加工用ホルダにおいて、
前記ホルダ本体は、
前記x方向を向く上面と、
前記上面に連なる第1開口を有し、前記第1サブホルダを収容する第1井戸と、
前記上面に連なる第2開口を有し、前記第2サブホルダを収容する第2井戸と、
を含み、
前記第1井戸及び前記第2井戸は、前記z方向に並んでいる、
ことを特徴とする試料加工用ホルダ。
【請求項7】
請求項1記載の試料加工用ホルダにおいて、
前記二次試料が取り付けられる支持部材を保持したカートリッジを含み、
前記第2サブホルダは前記カートリッジを保持する、
ことを特徴とする試料加工用ホルダ。
【請求項8】
ホルダ本体と、
前記ホルダ本体に設けられた第1サブホルダであって、第1イオンビームを部分的に遮蔽して整形後の第1イオンビームを生じさせる遮蔽部材を備え、前記整形後の第1イオンビームにより加工される一次試料を保持する第1サブホルダと、
前記ホルダ本体に設けられ、第2イオンビームを用いた前記一次試料の加工により作製された二次試料を保持する第2サブホルダと、
を含み、
更に、前記二次試料が取り付けられる支持部材を保持したカートリッジを含み、
前記第2サブホルダは前記カートリッジを保持し、
前記カートリッジは、
前記支持部材を保持した可動台と、
前記可動台を傾斜運動させる傾斜機構と、
を含み、
前記第2サブホルダは、
前記カートリッジが挿入される収容部と、
前記収容部への前記カートリッジの挿入過程で前記傾斜機構に当接して前記傾斜機構を動作させる部分と、
を含む、
ことを特徴とする試料加工用ホルダ。
【請求項9】
一次試料を保持する第1サブホルダ及び支持部材を保持する第2サブホルダを含む試料加工用ホルダを用意する工程と、
第1試料加工装置の第1試料室内に前記試料加工用ホルダが設置された第1状態において、前記一次試料を加工する工程と、
前記一次試料の加工後に、前記第1試料室内から第2試料加工装置の第2試料室内へ前記試料加工用ホルダを搬送する工程と、
前記第2試料室内に前記試料加工用ホルダが設置された第2状態おいて、加工後の一次試料から二次試料を作製する工程と、
前記第2状態において、前記二次試料を前記支持部材上へ移す工程と、
前記支持部材上の前記二次試料から観察用試料を作製する工程と、
を含むことを特徴とする試料加工方法。
【請求項10】
請求項9記載の試料加工方法において、
前記第2サブホルダは、前記支持部材を含むカートリッジを保持し、
前記観察用試料を作製する工程の後、前記カートリッジが前記第2サブホルダから取り外され、前記取り外されたカートリッジが観察用ホルダに取り付けられる、
ことを特徴とする試料加工方法。
【請求項11】
請求項9記載の試料加工方法において、
前記試料加工用ホルダを搬送する前に、前記試料加工用ホルダに対してキャップが取り付けられ、
前記第2状態において、前記加工後の一次試料から前記二次試料を作製する前に、前記試料加工用ホルダから前記キャップが取り外される、
ことを特徴とする試料加工方法。
【請求項12】
請求項9記載の試料加工方法において、
前記一次試料の加工により生じる汚染物質が、前記一次試料と前記支持部材との間に設けられた汚染防止板により捕獲される、
ことを特徴とする試料加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料加工用ホルダ及び試料加工方法に関し、特に、電子顕微鏡により観察される試料を作製するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
透過電子顕微鏡での試料観察に先立って、元試料から薄膜試料を作製する必要がある。元試料から薄膜試料を作製する様々な試料作製方法が提案されている。その中には、第1試料加工装置としての断面加工装置及び第2試料加工装置としての精密加工装置を段階的に使用する薄膜試料作製方法が含まれる。
【0003】
断面加工装置は、一次試料(元試料)の加工により一次試料における所望の断面を露出させる装置である。断面加工装置は、通常、遮蔽板を有する。遮蔽板によりイオンビームが部分的に遮蔽され、イオンビームが整形される。整形後のイオンビームが一次試料に照射される。これにより一次試料が加工される。断面加工装置は、Cross section Polishing装置(CP装置)とも呼ばれる。
【0004】
精密加工装置は、加工後の一次試料から、透過電子顕微鏡で観察する薄膜試料を作製する装置である。通常、加工後の一次試料からブロック状の二次試料が作製され、ブロック状の二次試料から薄膜試料が作製される。元試料から薄膜試料が直接的に作製されることもある。精密加工装置では、通常、集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)が試料に照射される。精密加工装置は、FIB装置とも呼ばれる。走査電子顕微鏡を備えたFIB装置も知られており、そのような装置は、複合ビーム加工観察装置又はFIB/SEM装置とも呼ばれる。
【0005】
従来、断面加工装置に対しては第1の試料加工用ホルダが設置され、精密加工装置に対しては、第1の試料加工用ホルダとは異なる第2の試料加工用ホルダが設置される。すなわち、断面加工装置から精密加工装置への試料搬送時にホルダ交換が実施される。なお、特許文献1及び特許文献2には試料加工装置が開示されているが、それらの特許文献には複数のサブホルダを有するホルダは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第99/005506号公報
【文献】特開2002-150990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
試料を加工する一連の過程の途中で、ホルダ交換を求める場合、試料汚染、試料落下、試料作製時間の増大、作業者負担の増大、等の様々な問題が生じる。また、試料を大気に晒すことなく試料の加工を行いたい状況下において、ホルダ交換を行うには、特別な試料の取り扱いが必要となる。
【0008】
本発明の目的は、試料加工過程においてホルダ交換を不要にすることにある。あるいは、本発明の目的は、試料加工時間を短縮化し又は試料加工時に作業者の負担を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る試料加工用ホルダは、ホルダ本体と、前記ホルダ本体に設けられた第1サブホルダであって、第1イオンビームを部分的に遮蔽して整形後の第1イオンビームを生じさせる遮蔽部材を備え、前記整形後の第1イオンビームにより加工される一次試料を保持する第1サブホルダと、前記ホルダ本体に設けられ、第2イオンビームを用いた前記一次試料の加工により作製された二次試料を保持する第2サブホルダと、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る試料加工方法は、一次試料を保持する第1サブホルダ及び支持部材を保持する第2サブホルダを含む試料加工用ホルダを用意する工程と、第1試料加工装置の第1試料室内に前記試料加工用ホルダが設置された第1状態において、前記一次試料を加工する工程と、前記一次試料の加工後に、前記第1試料室内から第2試料加工装置の第2試料室内へ前記試料加工用ホルダを搬送する工程と、前記第2試料室内に前記試料加工用ホルダが設置された第2状態おいて、加工後の一次試料から二次試料を作製する工程と、前記第2状態において、前記二次試料を前記支持部材上へ移す工程と、前記支持部材上の前記二次試料から観察用試料を作製する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、試料加工過程においてホルダ交換を不要にできる。あるいは、本発明によれば、試料加工時間を短縮化でき又は試料加工時に作業者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1試料加工装置の模式図である。
図2】第2試料加工装置の模式図である。
図3】第2試料加工装の他の模式図である。
図4】第1実施形態に係る試料加工用ホルダの斜視図である。
図5】第1実施形態に係る試料加工用ホルダの他の斜視図である。
図6】第1実施形態に係る試料加工用ホルダの断面図である。
図7】第1実施形態に係るホルダ本体の上面図である。
図8】第1実施形態に係る第1サブホルダの斜視図である。
図9】第1実施形態に係る第2サブホルダの斜視図である。
図10】第1実施形態に係るカートリッジの斜視図である。
図11】第1実施形態に係るカートリッジの断面図である。
図12】支持部材の平面図である。
図13】汚染防止ユニットの第2例を含む試料加工用ホルダの斜視図である。
図14】汚染防止ユニットの第2例を備えた第2サブホルダの斜視図である。
図15】汚染防止ユニットの第2例を備えた第2サブホルダの他の斜視図である。
図16】汚染防止ユニットの第3例を備えた第2サブホルダの斜視図である。
図17】第2実施形態に係る試料加工用ホルダの斜視図である。
図18】第2実施形態に係る試料加工用ホルダの断面図である。
図19】第2実施形態に係る第2サブホルダの斜視図である。
図20】第2実施形態に係るカートリッジの平面図である。
図21】第3実施形態に係る試料加工用ホルダの斜視図である。
図22】第3実施形態に係る試料加工用ホルダの断面図である。
図23】第3実施形態に係る第2サブホルダの斜視図である。
図24】実施形態に係る試料加工方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る試料加工用ホルダは、ホルダ本体、第1サブホルダ、及び、第2サブホルダを有する。第1サブホルダは、ホルダ本体に設けられ、第1イオンビームを部分的に遮蔽して整形後の第1イオンビームを生じさせる遮蔽部材を備える。第1サブホルダは、整形後の第1イオンビームにより加工される一次試料を保持する。第2サブホルダは、ホルダ本体に設けられ、第2イオンビームを用いた一次試料の加工により作製された二次試料を保持する。
【0015】
上記構成によれば、試料加工用ホルダが第1サブホルダ及び第2サブホルダを有しているので、複数の加工装置により試料を段階的に加工する一連の過程の途中で、試料加工用ホルダを交換する必要がない。よって、試料汚染、試料落下等の問題が生じる可能性を低減でき、また、作製時間削減、作業者負担削減、等の利点を得られる。
【0016】
遮蔽部材は、例えば、遮蔽板である。第1イオンビームは第1加工ビームであり、第2イオンビームは第1イオンビームとは異なる第2加工ビームである。二次試料は、例えば、ブロック状(小塊状)の試料、薄膜試料である。第2サブホルダに保持されたブロック状の試料が第2イオンビームにより加工され、これにより薄膜試料が作製されてもよい。
【0017】
実施形態に係る試料加工用ホルダは、直交関係にあるx方向、y方向及びz方向を有する。z方向は、第1イオンビームの中心軸に平行である。遮蔽部材は、y方向及びz方向に沿って広がる遮蔽面を有する。第1サブホルダ及び第2サブホルダは、z方向に並んでいる。遮蔽部材は、第1イオンビームに対してx方向の整形作用を及ぼす。
【0018】
上記構成によれば、第1サブホルダ及び第2サブホルダを互いに近付けて配置することが可能となる。これにより試料加工用ホルダを小形化できる。一般に、第1サブホルダは、x方向及びy方向に広がった形態を有し、第2ホルダも、x方向及びy方向に広がった形態を有する。そのような2つのサブホルダが並列配置される。
【0019】
実施形態において、第2サブホルダは、第1イオンビームが進行する向きに従ってz方向における上流側及び下流側を定義した場合、z方向において第1サブホルダの下流側に設けられている。この構成によれば、第1イオンビームを用いて一次試料を加工する際に、第2サブホルダが邪魔にならない。
【0020】
実施形態において、第1サブホルダは、一次試料の加工端部を遮蔽面よりも突出させつつ一次試料を保持する。第2サブホルダは、二次試料が取り付けられる支持端部を有する支持部材を直接的又は間接的に保持する。加工端部と支持端部との間に汚染防止板が設けられている。汚染防止板は、x方向及びy方向に広がっている。
【0021】
一次試料の加工時に一次試料の後方へ(下流側へ)汚染物質が飛散する。上記構成によれば、飛散した汚染物質が汚染防止板によって捕獲され、あるいは、汚染物質の更なる飛散が汚染防止板によって防止される。これにより、第2サブホルダの汚染、特に、支持部材の汚染を防止できる。
【0022】
実施形態において、ホルダ本体は、x方向を向く上面と、上面に連なる第1開口を有し、第1サブホルダを収容する第1井戸と、上面に連なる第2開口を有し、第2サブホルダを収容する第2井戸と、を含む。第1井戸及び第2井戸は、z方向に並んでいる。この構成によれば、ホルダ本体に対して第1サブホルダ及び第2サブホルダを取り付けることが容易となる。また、ホルダ本体から第1サブホルダ及び第2サブホルダを取り外すことが容易となる。
【0023】
ホルダ本体の上面に隣接する空間(加工空間)内に、一次試料及び二次試料が位置決められる。一次試料における加工端部のx方向高さと、二次試料における支持端部のx方向の高さを揃えてもよい。すなわち、一次試料における加工端部と支持部材における支持端部を第1イオンビームの中心軸上に配置してもよい。かかる構成を採用すれば、可動ステージ(試料ステージ)の動作の制御が容易となる。
【0024】
実施形態に係る試料加工用ホルダは、二次試料が取り付けられる支持部材を保持したカートリッジを含む。第2サブホルダはカートリッジを保持する。支持部材は、一般に、かなり小さな部材である。支持部材を直接的にハンドリングする場合、支持部材の落下等の問題が生じ易い。これに対して、カートリッジのハンドリングによれば(つまり支持部材を間接的にハンドリングすれば)、支持部材の落下等の問題が生じ難い。上記のカートリッジとして、様々なカートリッジを用い得る。カートリッジはリテーナとも称される。
【0025】
実施形態において、カートリッジは、支持部材を保持した可動台と、可動台を傾斜運動させる傾斜機構と、を含む。第2サブホルダは、カートリッジが挿入される収容部と、収容部へのカートリッジの挿入過程で傾斜機構に当接して傾斜機構を動作させる部分と、を有する。
【0026】
上記構成によれば、カートリッジを第2サブホルダに設置する過程で、支持部材の位置及び姿勢を自然に適正化できる。すなわち、第2イオンビームによる二次試料の加工に適した位置に支持部材を位置決めることができ、また、支持部材の姿勢を第2イオンビームによる二次試料の加工に適したものにすることができる。
【0027】
実施形態に係る試料加工方法は、準備工程、一次試料加工工程、搬送工程、二次試料作製工程、移動工程、及び、薄膜試料作製工程を有する。準備工程では、一次試料を保持する第1サブホルダ及び支持部材を保持する第2サブホルダを含む試料加工用ホルダが用意される。一次試料加工工程では、第1試料加工装置の第1試料室内に試料加工用ホルダが設置された第1状態において、一次試料が加工される。搬送工程では、一次試料の加工後に、第1試料室内から第2試料加工装置の第2試料室内へ試料加工用ホルダが搬送される。二次試料作製工程では、第2試料室内に試料加工用ホルダが設置された第2状態おいて、加工後の一次試料から二次試料が作製される。移動工程では、第2状態において、二次試料が支持部材上へ移される。薄膜試料作製工程では、支持部材上の二次試料から観察用試料が作製される。
【0028】
上記方法によれば、第1試料加工装置及び第2試料加工装置に対して、それらに共通の試料加工用ホルダが順次設置される。よって、一次試料の加工後において、ホルダ交換や試料の移し替えを行わなくてもよくなる。二次試料は、例えば、ブロック状の試料であり、その場合、ブロック状の試料から観察用試料として薄膜試料が作製される。
【0029】
実施形態においては、第2サブホルダは、支持部材を含むカートリッジを保持する。観察用試料つまり薄膜試料を作製する工程の後、カートリッジが第2サブホルダから取り外され、取り外されたカートリッジが観察用ホルダに取り付けられる。
【0030】
実施形態においては、試料加工用ホルダを搬送する前に、試料加工用ホルダに対してキャップが取り付けられる。その後、第2状態において、加工後の一次試料から二次試料を作製する前に、試料加工用ホルダからキャップが取り外される。この構成によれば、一次試料及び二次試料を大気に晒すことなく、それらの搬送及び加工を行うことが可能となる。また、一次試料及び二次試料の温度管理を行うことが容易となる。実施形態においては、二次試料の作製後に試料加工用ホルダにキャップが再び取り付けられる。その後、キャップが取り付けられた試料加工用ホルダが搬送される。
【0031】
実施形態において、一次試料の加工により生じる汚染物質が、一次試料と支持部材との間に設けられた汚染防止板により捕獲される。この構成によれば、2つのサブホルダを近接配置したことに起因して生じる支持部材等の汚染を防止又は軽減できる。
【0032】
(2)実施形態の詳細
図1には、第1試料加工装置10が模式的に示されている。第1試料加工装置10は、断面加工装置であり、つまり一次加工装置である。第1試料加工装置10は、真空室としての第1試料室12を有する。第1試料室12内に可動ステージ(試料ステージ)14が設けられている。可動ステージ14には、第1実施形態に係る試料加工用ホルダ(以下、単にホルダという。)16が取り付けられる。可動ステージ14は、水平移動機構、垂直移動機能等を有している。
【0033】
ホルダ16は、兼用ホルダであり、すなわち、ホルダ16は、第1試料加工装置10及び後述する第2試料加工装置に順次取り付けられる。第1試料加工装置10は、第1イオンビーム20を生成するビーム源18を有する。第1イオンビーム20は、図示の構成例において、アルゴンイオンビームである。ビーム源18は、末広がり形状(円錐形状)を有する第1イオンビーム20を生成する。
【0034】
ホルダ16は、ホルダ本体22、第1サブホルダ24、及び、第2サブホルダ26を有する。第1サブホルダ24は、遮蔽板30を有し、一次試料28を保持している。遮蔽板30は、第1イオンビームの部分的な遮蔽により整形後の第1イオンビームを生じさせるものである。整形後の第1イオンビームが一次試料28へ照射される。具体的には、一次試料28の加工端部に、整形後の第1イオンビームが照射される。一次試料28における所望の断面が露出するまで、第1イオンビーム20による切削加工が続けられる。
【0035】
第2サブホルダ26は、カートリッジ32を保持している。カートリッジ32は、傾斜運動する可動台34及び可動台の傾斜角度を定める傾斜機構を有する。可動台34は支持部材を保持している。後述する第2試料加工装置内において、支持部材が有する支持端部に対して、一次試料の加工により生成された二次試料が取り付けられる。これについては後述する。
【0036】
ホルダ16は、汚染防止板36を有する。汚染防止板36は、一次試料28の加工端部と、カートリッジ32により保持された支持部材の支持端部との間に設けられている。一次試料28の加工時に一次試料28の後方へ削りカス等の汚染物質が飛散する。飛散した汚染物質が汚染防止板36により捕獲される。これにより、支持部材等の汚染が防止される。
【0037】
ホルダ本体22は、上面(図1において右方向を向く面)22aを有する。一次試料28の加工端部は、上面22aに隣接する加工空間内に位置しており、また、支持部材の支持端部も加工空間内に位置している。第1試料加工装置10は、ホルダ16に装着されたキャップを取り外しまたホルダ16に対してキャップを装着する機構を有する。図1においてはその機構の図示が省略されている。
【0038】
図2には、第2試料加工装置37が示されている。具体的には、図2には、第2試料加工装置37における一次試料の加工が示されている。図1に示した第1試料加工装置からホルダ16が取り外され、そのホルダ16が図2に示す第2試料加工装置37の第2試料室38内に配置される。第2試料室38は真空室である。図2及び後述する図3において、X方向は第1水平方向であり、Y方向は第2水平方向であり、Z方向は垂直方向である。図2は、X方向及びZ方向を含む正面図に相当する。
【0039】
第2試料加工装置37は、精密加工装置であり、つまり二次加工装置である。実施形態に係る第2試料加工装置37は、第2イオンビーム46を用いて試料を加工する装置である。第2イオンビーム46は、具体的には、集束イオンビームであるガリウムイオンビームである。第2試料加工装置37は、走査電子顕微鏡を有する。具体的には、第2試料加工装置37は、電子線44を生成するSEM鏡筒40、及び、第2イオンビーム46を生成するFIB鏡筒42、を有する。SEM鏡筒40及びFIB鏡筒42は、図2において、紙面貫通方向つまりY方向に並んでいる。電子線44の中心軸と第2イオンビーム46の中心軸は、コインシデンスポイントにおいて交差している。それらの中心軸の交差角度は所定の角度である。
【0040】
第2試料室38内には可動ステージ(試料ステージ)48が設けられている。可動ステージ48に対して、ホルダ16が取り付けられる。可動ステージ48は、昇降機構50、チルト機構52、第1スライド機構58、第2スライド機構60、及び、回転機構62を有する。第1スライド機構58は、図2に示す原状態において、Y方向へのスライド運動を生じさせる機構である。第2スライド機構60は、図2に示す原状態において、X方向へのスライド運動を生じさせる機構である。回転機構62の上面62aにホルダ16が固定される。符号54はチルト軸を示している。チルト機構52と共に、Z方向の微調整を行う機構を設けてもよい。可動ステージ48により、ホルダ16の位置及び姿勢が調整される。図示された可動ステージ48の構成は例示であり、他の構成が採用されてもよい。
【0041】
ホルダ16は、上記のように、第1サブホルダ24及び第2サブホルダ26を有する。図2において、第2ホルダ26は第1ホルダ24の後側に位置するため、第2ホルダは現れていない。第1サブホルダ24により一次試料が保持され、第2サブホルダ26により支持部材が保持される。支持部材には、一次試料の加工により生じた二次試料が取り付けられる。第2試料加工装置37は、ホルダ16に装着されたキャップを取り外しまたホルダ16に対してキャップを装着する機構を有する。図2においてはその機構の図示が省略されている。
【0042】
図3には、第2試料加工装置37における二次試料の移送及び二次試料の加工が示されている。図3は、Y方向及びZ方向を含む側面図に相当する。図3において、図2に示した構成要素と同じ構成要素には同一の符号が付してある。第2サブホルダ26によってカートリッジ32が保持されており、カートリッジ32が有する可動台34に支持部材が取り付けられている。支持部材は、複数の突起からなる支持端部を有する。
【0043】
一次試料の加工により二次試料が作製される。二次試料は、例えば、ブロック状の試料である。ピックアップ機構(移送機構)63により、二次試料がピックアップされ、それが支持部材における支持端部に取り付けられる(符号64を参照)。その際には、接着用ガスが利用される。その後、支持端部に取り付けられた二次試料が第2イオンビームにより加工される。これにより、加工後の二次試料として薄膜試料が作製される。薄膜試料は透過電子顕微鏡で観察される試料である。なお、一次試料から、薄膜試料が作製されてもよい。その場合、薄膜試料が移送される。
【0044】
薄膜試料の作製後、第2試料加工装置37からホルダ16が取り外される。続いて、ホルダ16から第2サブホルダ26が取り外される。そして、第2サブホルダ26からカートリッジ32が取り外される。取り外されたカートリッジ32が図示されていない観察用ホルダ(TEMホルダ)に取り付けられる。第2試料加工装置37は、ホルダ16からキャップを取り外しまたホルダ16に対してキャップを取り付ける機構を有する。
【0045】
次に、図4図12を用いて、第1実施形態に係るホルダについて詳述する。
【0046】
図4には、第1実施形態に係るホルダ16が示されている。既に説明したように、ホルダ16は、ホルダ本体22、第1サブホルダ24、及び、第2サブホルダ26を有している。ホルダ16は、直交関係を有するx方向、y方向及びz方向を有する。z方向は、第1イオンビームの中心軸66に平行である。ホルダ本体22の上面22aはx方向を向いており、すなわち、上面22aはy方向及びz方向に広がっている。
【0047】
第1サブホルダ24及び第2サブホルダ26の並び方向はz方向である。第1イオンビームが進行する向きに従って、z方向における上流側及び下流側を定めた場合、z方向において、第2サブホルダ26は第1サブホルダ24の下流側に設けられている。
【0048】
第1サブホルダ24は、x方向及びy方向に広がった形態を有し、第2サブホルダ26も、x方向及びy方向に広がった形態を有する。第1サブホルダ24及び第2サブホルダ26は互いに近接しつつ並列配置されている。この構成により、ホルダ16のサイズの増大が回避されている。なお、ホルダ本体22の直径は、例えば、40~60mmの範囲内にある。ホルダ本体の高さ(x方向の幅)は、例えば、25~35mmの範囲内にある。
【0049】
第1サブホルダ24は、第1サブホルダ本体68を有する。第1サブホルダ本体68により、遮蔽板30が保持されており、また、一次試料28が保持されている。一次試料28は板状の形態を有する。第1イオンビームは、末広がり形態を有する。遮蔽板30は、一次イオンビームを部分的に遮蔽し、整形後の第1イオンビームを生じさせる。遮蔽板30は、y方向及びz方向に沿って広がる遮蔽面31を有する。上記のように、z方向は第1イオンビームの中心軸に平行な方向である。具体的には、図示の構成例において、遮蔽面31は、斜面31a及び平面31bにより構成される。斜面31aは、z軸(つまり中心軸66)に対して若干傾斜している。平面31bはz軸に平行である。斜面31aは、第1イオンビームに対してx方向の整形作用を及ぼす。
【0050】
一次試料28の一部分が遮蔽面31よりも突出している。その一部分が加工端部28aである。加工端部28aのx方向厚みつまり一次試料28の突出量は例えば100μmである。加工端部28aに対して、整形後の第1イオンビームが照射される。これにより所望の断面を露出させるための断面加工が実施される。一次試料28は、例えば、半導体デバイスである。
【0051】
第1サブホルダ24と第2サブホルダ26の間には、汚染防止ユニット70が設けられている。実際には、図4に示す構成例では、第1サブホルダに対して汚染防止ユニット70が組付けられている。汚染防止ユニット70は、汚染防止板72及びフレーム74を有する。フレーム74が汚染防止板72を保持している。汚染防止板72は、x方向及びy方向に広がる形態を有し、それは非磁性の軽元素により構成され、それは例えばカーボンにより構成される。加工端部28aから見て、第2サブホルダ26それ全体が汚染防止板72によって覆われるように、汚染防止板72のサイズ及び位置が定められている。
【0052】
一次試料28に対する第1イオンビームの照射により、一次試料28からその後方へ汚染物質(削りカス)が飛散する。飛散した汚染物質が汚染防止板72により捕獲される。加工端部28aから見て、支持部材が汚染防止板72によって覆われているので、二次試料が取り付けられる支持端部の汚染が防止される。
【0053】
図5には、ホルダ16の後側が示されている。ホルダ本体22に対して第1サブホルダ24及び第2サブホルダ26が組付けられている。第2サブホルダ26は、第2サブホルダ本体76を有する。第2サブホルダ本体76に形成された収容部に対し、カートリッジ32が挿入されている。カートリッジ32は、可動台34を有する。可動台34が支持部材78を保持している。カートリッジ32の前側には、汚染防止ユニット70が設けられている。
【0054】
図6には、ホルダ16のxz断面が示されている。ホルダ本体22は、コア部材80及びカバー部材82により構成される。カバー部材82はyz方向に広がるフランジ82aを有する。コア部材80及びカバー部材82の間がOリング88によりシールされる。ホルダ16に対してキャップ94を取り付けた場合、ホルダ16とキャップ94との間がOリング92によりシールされる。
【0055】
コア部材80はベース80aを有する。また、コア部材80は、第1井戸84及び第2井戸86を有する。第1井戸84の開口及び第2井戸86の開口は、上面22aに連なっている。上面22aは、x方向を向く面である。上面22aに隣接する空間が加工空間104である。加工空間104内に、第1サブホルダ24の上部及び第2サブホルダ26の上部が位置している。
【0056】
第1サブホルダ24の下部が第1井戸84の中に挿抜可能に収容されており、第2サブホルダ26の下部が第2井戸86の中に挿抜可能に収容されている。板バネ96は、第1サブホルダ24を固定するためのものである。板バネ98は、一次試料28を固定するためのものである。板バネ102は、第2サブホルダ26を固定するためのものである。
【0057】
第1サブホルダ24の後側には、汚染防止ユニット70が設けられている。第2サブホルダ本体76には、傾斜した空洞としての収容部100が形成されている。収容部100の中にカートリッジ32が挿入されている。
【0058】
図示の構成例において、中心軸66の高さがx1で示されており、その高さx1は一次試料28の加工端部の高さに等しい。支持部材の支持端部の高さがx2で示されている。その高さx2は上記x1よりも低くてもよい。もっとも、それらの高さx1,x2を揃えてもよい。汚染防止ユニットにおける汚染防止板の最上端の高さがx3で示されている。x3はx1よりも大きい。
【0059】
図7には、ホルダ本体22の上面22aが示されている。ホルダ本体22は、第1井戸84及び第2井戸86を有する。第1井戸84の開口84a及び第2井戸86の開口86aが上面22aに連なっている。ホルダ本体22は、良好な熱伝導率を有する金属材料により構成される。
【0060】
図8には、第1サブホルダ24が示されている。第1サブホルダ24は、第1サブホルダ本体68を有する。その下部68aは角柱状の形態を有する。図8に示す構成例では、汚染防止ユニット70が第1サブホルダ本体68に取り付けられている。
【0061】
図9には、第2サブホルダ26が示されている。第2サブホルダ26は、第2サブホルダ本体76を有する。第2サブホルダ本体76の中心軸は、x方向に平行である。第2サブホルダ本体76は、傾斜した収容部100を有する。収容部100の中心軸は、x方向に対して所定角度傾斜している。所定角度は例えば-30度である。
【0062】
収容部100に対してカートリッジ32の後端部が挿入されている。カートリッジ32は、フレーム112、傾斜機構105、可動台34、等を有する。可動台34上に支持部材78が取り付けられている。傾斜機構105は、レバー106を有する。収容部100へのカートリッジ32の挿入過程で、第2サブホルダ本体76の一部分(当接部)108がレバー106に当たり、レバー106に対して押圧力を与える。その押圧力により傾斜機構105が動作し、可動台34の角度を変化させる。具体的には、カートリッジ32の中心軸に対して可動台34の角度を例えば+30度傾斜させる。フレーム112により試料の加工及び観察が妨げられないように、可動台34の傾斜角度が定められる。
【0063】
図示の構成例では、カートリッジ32の設置状態において、収容部100の傾斜角度-30度と可動台34の傾斜角度+30度とが打ち消し合う。これにより、支持部材78の向き(支持端部前面の向き)は正のx方向に固定される。板バネ110は、カートリッジ32を固定する弾性力をカートリッジ32に対して与えるものである。
【0064】
フレーム112は、可動台34を取り囲むアーチ状の部分を有するが、カートリッジ32の設置状態において、フレーム112に対して可動台34を傾斜させれば、支持端部に付着した二次試料に対して、第2イオンビーム及び電子線を照射することが可能となる。
【0065】
図10には、カートリッジ32が拡大図として示されている。なお、図10に示すカートリッジ32の形態は、図9に示したカートリッジの形態と若干相違するが、2つのカートリッジが有する2つの構造は同一である。
【0066】
図10において、フレーム112の中に可動台34が傾斜運動可能に設けられている。可動台34に対して支持部材78が固定されている。符号114は可動台34の回転軸を示している。時計回り方向が正の回転方向であり、反時計回り方向が負の回転方向である。傾斜機構105は、レバー106を有する。符号116は、レバー106の回転軸を示している。ロック機構118は、レバー106の運動を制限する機構である。ロック機構118は、回転板122を有する。符号120は、回転板122の回転軸を示している。
【0067】
傾斜機構105は、後述するトーションバネを有し、トーションバネによって、可動台34に対して、-θ方向への弾性力が及んでいる。回転板122の動作により、レバー106の正の回転運動(図10において手前側への回転運動)が制限され、可動台34の角度が0度に維持される。その状態において、レバー106に対して押圧力が及ぶと、レバー106が負の回転運動を行う。傾斜機構105は、レバー106の負の回転運動を可動台34の正の回転運動に転換する。符号124は、カートリッジ32の中心軸を示している。収容部へのカートリッジ32の差し込み前において、支持部材78の向きが符号126で示されている。収容部へのカートリッジ32の差し込み後において、支持部材78の向きが符号128で示されている。
【0068】
図11には、傾斜機構105の構成及び動作が示されている。レバー106は、アーム106aを有する。アーム106aの端部にピン132が設けられている。可動台に連結されたアーム130には長穴130aが形成されている。長穴130aの中にピン132が挿入されている。トーションバネ134は、アーム130に設けられたピン136に対して弾性力を常時与えている。よって、アーム130には、-θ方向への弾性力が常に及んでいる。一方、レバー106に対して押圧力129が及ぶと、傾斜機構105の作用により、アーム130が+θ方向に回転運動する。正の最大傾斜角度+θaは+30度であり、負の最大傾斜角度-θaは-30度である。
【0069】
図12には、支持部材の一例が示されている。支持部材78は、半円状の本体140を有する。本体140は突起列142を有する。突起列142が支持端部である。突起列142はp方向に並ぶ複数の突起144により構成される。各突起144は前面144a及び2つの側面144bを有する。前面144aの向きが支持部材78の向きである。いずれかの前面144a又は側面144bに対して、二次試料146が取り付けられる。
【0070】
図13には、汚染防止ユニットの第2例を有するホルダが示されている。図13において、第1サブホルダ24と第2サブホルダ26との間に汚染防止ユニット70Aが設けられている。図4等に示した第1例では、汚染防止ユニットが第1サブホルダ24に連結されていたが、図13に示す第2例では、汚染防止ユニットが第2サブホルダ26に連結されている。
【0071】
図14及び図15には、第2サブホルダ26が示されている。第2サブホルダ26には、第2例に係る汚染防止ユニット70Aが連結されている。汚染防止板72Aは背面板150に固定されている。背面板150は、取付部材151を介して、第2サブホルダ本体76に固定されている。
【0072】
図16には、汚染防止ユニットの第3例が示されている。図示された汚染防止ユニット70Bは、汚染防止板72Bの裏側に設けられた背面カバー152を有する。背面カバー152は、平面部分152aとそれに連なる複数の端部152b、152c、152dを有する。複数の端部152b、152c、152dがカートリッジの周囲を包み込んでおり、汚染防止効果が高められている。
【0073】
次に、図17図20を用いて、第2実施形態に係るホルダ16Aを説明する。図17において、ホルダ16Aは、第1サブホルダ24、第2サブホルダ26A及び汚染防止ユニット70Dを有する。第2サブホルダ26Aは、第2サブホルダ本体154を有する。第2サブホルダ本体154は、直立姿勢を有するカートリッジ156を保持している。カートリッジ156は、支持部材78を保持している。汚染防止ユニット70Dは、ユニットベース160及び汚染防止板158により構成される。汚染防止板158は例えばカーボンプレートにより構成される。ユニットベース160が汚染防止板158を保持している。
【0074】
図18には、第2実施形態に係るホルダ16Aの断面が示されている。ホルダ本体22に対して第1サブホルダ24及び第2サブホルダ26Aが組み込まれている。上記のように、汚染防止ユニット70Dは、汚染防止板158を保持するユニットベース160を有する。符号154は、第2サブホルダ26Aにおいてカートリッジを着脱可能に保持する部分を示している。第1イオンビームの中心軸66の高さx1と支持部材における支持端部の高さx2は同じである。ここで、支持端部の高さx2は、例えば、支持端部が有する各突起の前面の高さである。汚染防止板158の高さx3は、高さx1及びx2よりも高い。この第2実施形態においても、一次試料の加工端部から見て、支持部材それ全体が汚染防止板158によって覆われている。
【0075】
図19には、第2実施形態に係る第2サブホルダ26Aが示されている。第2サブホルダ26Aに対して汚染防止ユニット70Dが連結されている。図20には、第2実施形態に係るカートリッジ156が示されている。カートリッジ156は、細長い形態を有し、カートリッジ156により支持部材78が着脱可能に保持されている。カートリッジ156は、傾斜機構を有していない。
【0076】
次に、図21図23を用いて、第3実施形態に係るホルダ16Bを説明する。図21において、ホルダ16Bは、第1サブホルダ24、第2サブホルダ26B及び汚染防止ユニット70を有する。
【0077】
図22には、第3実施形態に係るホルダの断面が示されている。汚染防止ユニット70は、第1サブホルダ24の背面に連結されている。第2サブホルダ26Bは、y方向に並ぶ複数の支持部材からなる支持部材列162を保持するクランプ機構を備えている。クランプ機構は、クランプ片164とクランプ片166とを有する。もちろん、単一の支持部材がクランプ機構により保持されてもよい。
【0078】
図23には、第3実施形態に係る第2サブホルダが示されている。図示の構成例では、第2サブホルダ26Bによって保持された支持部材列162が3つの支持部材78により構成されている。つまみ168の回転操作により、2つのクランプ片164,166の間隔が狭まり又は広がる。
【0079】
図24には、実施形態に係る試料加工方法が示されている。以下の説明は、カートリッジの使用を前提とするものである。カートリッジを使用しない場合でも、以下に説明する各工程を実施し得る。
【0080】
S10では、ホルダの準備が行われる。具体的には、ホルダ本体に対して、一次試料を保持した第1サブホルダが取り付けられる。また、ホルダ本体に対して、支持部材を保持したカートリッジを有する第2サブホルダが取り付けられる。第1サブホルダ又は第2サブホルダのいずれかに汚染防止ユニットが連結されている。
【0081】
S12では、第1試料加工装置の試料室内にホルダが設置される。具体的には、試料室内の可動ステージに対してホルダが固定される。これにより第1状態が形成される。S14では、第1サブホルダにより保持された一次試料に対して第1イオンビームが照射され、一次試料に対する断面加工が実施される。断面加工過程において、加工部位からその後方へ汚染物質が飛散する。飛散した汚染物質は、汚染防止ユニットの汚染防止板により捕獲される。加工断面から支持部材への汚染物質の飛散が汚染防止板により阻止されると理解してもよい。
【0082】
一次試料の加工完了後、S16において、第1試料加工装置の試料室内からホルダが取り出され、取り出されたホルダが第2試料加工装置の試料室内に設置される。具体的には、試料室内の可動ステージに対してホルダが固定される。これにより第2状態が形成される。S20では、第1サブホルダに保持された加工後の一次試料に対する第2イオンビームの照射により、加工後の一次試料が更に加工される。これにより二次試料が作製される。二次試料は、例えば、ブロック状の試料である。この段階で、薄膜状の二次試料が作製されてもよい。
【0083】
S22では、上記の第2状態が維持されたまま、第1サブホルダから第2サブホルダへ二次試料が移送される。その場合には、第2試料加工装置に設けられているピックアップ装置が使用される。二次試料は、具体的には、支持部材におけるいずれかの突起の前面又は側面に取り付けられる。複数の二次試料が取り付けられてもよい。S24では、取り付けられた二次試料に対して第2イオンビームが照射され、これにより、加工後の二次試料である薄膜試料が作製される。一次試料及び二次試料の加工過程では、必要に応じて、走査電子顕微鏡により加工部位が観察される。
【0084】
S26では、第2試料加工装置の試料室内からホルダが取り出される。その後、ホルダから第2サブホルダが取り出され、続いて、第2サブホルダからカートリッジが取り出される。取り出されたカートリッジが観察用ホルダ(TEMホルダ)に取り付けられる。その後、薄膜試料が透過電子顕微鏡により観察される。観察用ホルダ又はカートリッジが薄膜試料の姿勢を変更する機構を備えている場合、当該機構を利用して薄膜試料の姿勢が変更される。
【0085】
上記試料加工方法においては、試料加工途中におけるホルダ交換やカセット着脱の必要がない。よって、試料を保護でき、また、作業負担を軽減できる。また、上記試料加工方法によれば、一次試料の加工時において支持部材の汚染を効果的に防止できる。
【0086】
上記の試料加工方法において、カセットの取り付け及び取り外し、サブホルダの取り付け及び取り外し、ホルダの搬送及び設置、の諸々の作業は、作業者によって行われる。もっとも、それらの作業の一部又は全部が自動化されてもよい。
【0087】
試料を大気に晒すことなく試料の加工を行いたい場合には、上記の試料加工方法が修正される。図24に基づいて、修正された試料加工方法を以下に説明する。
【0088】
S10において、例えば、グローブボックス内においてホルダの準備が行われる。符号170は、グローブボックスを使用した作業が行われる期間を示している。ホルダの準備完了後、S10aにおいて、グローブボックス内においてホルダに対してキャップが装着される。これにより搬送用の容器(トランスファーベッセル)が構成される。容器内には、通常、アルゴン等の不活性ガスが入れられる。また、必要に応じて、試料が冷却され、その冷却状態が維持される。符号172は、キャップが装着されている期間を示している。
【0089】
S12では、第1試料加工装置の試料室内にホルダが設置され、これにより第1状態が形成される。その後、S12aにおいて、ホルダからキャップが取り外される。試料室は真空室であり、一次試料が大気に晒されることはない。符号174は、キャップが取り外されている期間を示している。S14において、第1試料加工装置で一次試料が加工され、加工完了後、S16aにおいて、ホルダに対してキャップが装着される。その後、S16において、第1試料加工装置からホルダが取り出される。符号176は、キャップが装着されている期間を示している。
【0090】
S18において、ホルダが第2試料加工装置の試料室内に設置される。その後、S18aにおいて、ホルダからキャップが取り外される。符号178は、キャップが取り外されている期間を示している。S20からS24を経て、薄膜試料の作製が完了した後、S26aにおいて、ホルダに対してキャップが取り付けられ、容器が構成される。その後、第2試料加工装置の試料室内から容器が取り出される。その後、例えば、グローブボックス内において、ホルダに対する作業が実施される。最終的に、観察用ホルダに対してカートリッジ又は支持部材が取り付けられた状態が形成される。
【0091】
上記の修正された試料加工方法によれば、試料加工過程において試料の保護を図れる。必要に応じて、試料の冷却状態を維持することも可能である。製作された薄膜試料が安定的な状態にある場合、S26aにおいて、ホルダへのキャップの装着を省略してもよい。
【0092】
最後に、以上説明した実施形態の変形例について説明する。汚染防止ユニットに汚染防止板を昇降させる機構を設けてもよい。その場合、2つのサブホルダの位置関係に応じて汚染防止板の高さを調整し得る。あるいは、第1試料加工装置での一次試料の加工時には汚染防止板を上昇状態とし、第2試料加工装置において支持板上に移された二次試料の加工時には汚染防止板を下降状態としてもよい。そのような構成を採用すれば、二次試料の加工時及び観察時において、汚染防止板が邪魔にならなくなる。
【0093】
ホルダ本体に対して2つのサブホルダが固定的に設けられてもよい。もっとも、試料やカートリッジの取扱いを容易にするためには、2つのサブホルダをホルダ本体から取り外せる構成を採用した方がよい。
【0094】
上記の試料加工用ホルダが試料観察装置や試料分析装置に設置されてもよい。試料観察装置は例えば走査電子顕微鏡である。試料分析装置は例えば電子プローブマイクロアナライザである。
【符号の説明】
【0095】
10 第1試料加工装置、16,16A,16B 試料加工用ホルダ、22 ホルダ本体、24 第1サブホルダ、26,26A 第2サブホルダ、28 一次試料、30 遮蔽板、32 カートリッジ、36,158 汚染防止板、70,70A~70D 汚染防止ユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24