(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】エアロゾル形成基材とその製造方法、設置治具
(51)【国際特許分類】
A24C 5/01 20200101AFI20240704BHJP
A24F 40/465 20200101ALI20240704BHJP
A24F 40/70 20200101ALI20240704BHJP
A24D 1/20 20200101ALI20240704BHJP
【FI】
A24C5/01
A24F40/465
A24F40/70
A24D1/20
(21)【出願番号】P 2022146008
(22)【出願日】2022-09-14
【審査請求日】2023-11-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】721008039
【氏名又は名称】Future Technology株式会社
(72)【発明者】
【氏名】劉 凱鵬
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-523706(JP,A)
【文献】特表2021-524237(JP,A)
【文献】国際公開第2021/144424(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24C 5/01
A24D 1/20
A24F 40/00~47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル吸引カートリッジに使用されるエアロゾル形成基材の製造方法であって、
円筒形の包装部材の
開口内部に充填物を充填する充填工程と、
円柱形状の設置治具
の底面の中央付近に取付けられた誘導加熱部材を、前記包装部材の円筒の高さ方向に沿って前記充填物に挿入する挿入工程と、を含み、
前記充填工程において、前記充填物は完全に前記開口内部に満たさずに、前記設置治具の厚さ相当の空間を残しておき、
前記設置治具の底面の直径は、前記包装部材の開口に挿入可能であり、なおかつ挿入後に遊びがない大きさである、
ことを特徴とする、エアロゾル形成基材の製造方法。
【請求項2】
前記設置治具が、加熱することでエアロゾルを発生する素材を含む材料から形成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のエアロゾル形成基材の製造方法。
【請求項3】
前記充填工程と前記挿入工程の間または前記挿入工程の後に充填物を所定の温度と時間で乾燥させる乾燥工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載のエアロゾル形成基材の製造方法。
【請求項4】
エアロゾル吸引カートリッジに使用されるエアロゾル形成基材であって、
円筒形の包装部材と、
前記包装部材の円筒の内部に、円柱形状に収納された充填物と、
前記充填物の内部に、前記包装部材の円筒の高さ方向に沿って配置された誘導加熱部材と、
前記包装部材の開口の一端
に取付けられた円柱形状の設置治具と、を備え、
前記充填物は粉末状、顆粒状、またはペースト状であり、
前記設置治具は、
円柱形状の底面の中央付近に形成された非貫通孔に前記誘導加熱部材が取り付けられ
ており、
前記設置治具の底面の直径は、前記包装部材の開口に挿入可能であり、なおかつ挿入後に遊びがない大きさである、
ことを特徴とする、エアロゾル形成基材。
【請求項5】
前記誘導加熱部材の長さは、前記エアロゾル形成基材の高さ方向の長さから、前記設置治具の厚さを減じた長さより1~3mm短い、
ことを特徴とする、請求項4に記載のエアロゾル形成基材。
【請求項6】
前記誘導加熱部材は、平板形状、
正面断面視V字形状または
正面断面視U字形状である、
ことを特徴とする、請求項4または5の何れか一項に記載のエアロゾル形成基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱式向けのエアロゾル吸引カートリッジに使用されるエアロゾル形成基材とその製造方法、設置治具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火炎を用いることなく、タバコの成分を含むタバコカートリッジを加熱して、気化したタバコ成分を吸引する方式のタバコ製品が広く知られている。また、嗜好の多様化から、タバコ成分を含まない植物の芳香や味わいを、タバコ同様に火炎を用いずに楽しむためのカートリッジ製品を使用したエアロゾル吸引カートリッジも知られ始めている。
【0003】
このようなエアロゾル吸引カートリッジは、充填物が集積されたエアロゾル形成基材を加熱することで、エアロゾルを発生させる。エアロゾル形成基材の加熱方法として、(1)加熱装置内部に設置された加熱ブレードに、エアロゾル吸引カートリッジを挿入して、加熱ブレードを電気的に加熱することで充填物を加熱する方式(加熱式)と(例えば特許文献1参照)の他に、(2)エアロゾル形成基材の内部に予め強磁性体を主成分とした部品である誘導加熱部材を設け、誘導加熱装置で発生させた交番磁界により、誘導加熱部材内部にヒステリシス損及びジュール熱を発生させて加熱(誘導加熱)することで、充填物を加熱する方式(誘導加熱式)が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
図12は、従来のエアロゾル形成基材101を使用した誘導加熱式向けのエアロゾル吸引カートリッジ100の概略の側面断面図である。エアロゾル吸引カートリッジ100は、円筒形の包装部材103に、加熱することでエアロゾルを発生させる充填剤104が収納されたエアロゾル形成基材101と、支持部材105と、フィルタ106から構成されている。
【0005】
エアロゾル吸引カートリッジ100は、全体として細長い円柱形状をしており、加熱することでエアロゾルを発生する充填物104が充填された円柱形状の充填物104の集積体であるエアロゾル形成基材101と、エアロゾル形成基材101が動くことを防止するための支持部材105と、エアロゾル形成基材101からの気流を通すことのできるフィルタ106と、フィルタ106の反対側の端に配置され、充填物104の漏洩防止のために設置されるシール部材108とが、長手方向に沿って配列されており、シート状の外装部材107で略円柱形状に巻かれることで一体的に形成されている。ここで、外装部材107は、紙等の柔軟な素材で形成されており、シール部材108や支持部材105は、紙、プラスチックまたはシリコーン等の素材から形成されている。
【0006】
エアロゾル形成基材101は、中央に開口が形成されている円筒形状の包装部材103の内部に、円柱形状の充填物104が収納されており、さらに充填物104には、誘導加熱に供する誘導加熱部材102が挿入されている。ここで、誘導加熱部材102の長さは、包装部材103の高さ方向の長さ、すなわちエアロゾル形成基材101の長さと略同じであり、支持部材105やシール部材108と熱的・物理的に接触している構造となっている。
【0007】
ここで誘導加熱においては、交番磁界と誘導加熱部材102の位置関係が発熱の効率に大きく影響する。すなわち、誘導加熱部材102に対して交番磁界が幾何学的に均等に作用する位置関係が好適とされる。
【0008】
しかしながら、従来のエアロゾル形成基材101のような構造の場合、誘導加熱部材102で発生した熱がシール部材108や支持部材105を加熱して焼損する恐れがあり、エアロゾル吸引カートリッジ100の品質を損なっていた。
【0009】
また、シール部材108が占有する空間は、エアロゾルの発生源とならず、エアロゾル形成基材101の長さを制限するものであるため、使用者の使用感を低下させる要因となっていた。
【0010】
さらに、従来は専ら製造時に製造作業者の感覚で誘導加熱部材102を充填物104に挿入しており、誘導加熱部材102を充填物104の適正な位置に挿入することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特表2015-519915号公報
【文献】特開2021-175399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑み、誘導加熱部材が包装部材の円筒中の充填物の適正な位置に挿入されており、これにより誘導加熱部材が安定的に高い効率で発熱をすることができるエアロゾル形成基材とその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、従来よりも使用者の使用感が良好なエアロゾル形成基材とその製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
さらに、シール部材や支持部材など、エアロゾル形成基材に隣接する要素を熱焼損させる危険性が低く、高品質なエアロゾル吸引カートリッジの品質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、エアロゾル吸引カートリッジに使用されるエアロゾル形成基材の製造方法であって、円筒形の包装部材の内部に充填物を充填する充填工程と、円柱形状の設置治具に取付けられた誘導加熱部材を、前記包装部材の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ径方向の中心軸に対して対称に、前記充填物に挿入する挿入工程と、を含む、ことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のエアロゾル形成基材の製造方法であって、前記設置治具が、加熱することでエアロゾルを発生する素材を含む材料から形成される、ことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、エアロゾル吸引カートリッジに使用されるエアロゾル形成基材の製造方法であって、円筒形の包装部材の内部に充填物を充填する充填工程と、前記充填物に誘導加熱部材設置用の型を形成する型成型工程と、誘導加熱部材を、前記包装部材の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ径方向の中心軸に対して対称に、前記充填物に挿入する挿入工程と、を含むことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のエアロゾル形成基材の製造方法であって、前記充填工程と前記挿入工程の間または前記挿入工程の後に充填物を所定の温度と時間で乾燥させる乾燥工程と、を含むことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、エアロゾル吸引カートリッジに使用されるエアロゾル形成基材の製造方法であって、誘導加熱部材を、二つの半円柱形状の固形充填物部材で挟み込み一体化することで、前記誘導加熱部材を内包した充填物を形成する形成工程と、前記充填物を円筒形の包装部材に挿入する挿入工程と、を含み、前記誘導加熱部材は、前記包装部材の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ径方向の中心軸に対して対称に配置されている、ことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、エアロゾル吸引カートリッジに使用されるエアロゾル形成基材であって、円筒形の包装部材と、前記包装部材の円筒の内部に、円柱形状に収納された充填物と、前記充填物の内部に、前記包装部材の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ径方向の中心軸に対して対称に配置された誘導加熱部材と、を備え、前記充填物は、二つ以上の固形充填物部材を接合してなり、前記誘導加熱部材は、前記充填物から露出していない、
ことを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、エアロゾル吸引カートリッジに使用されるエアロゾル形成基材であって、円筒形の包装部材と、前記包装部材の円筒の内部に、円柱形状に収納された充填物と、前記充填物の内部に、前記包装部材の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ径方向の中心軸に対して対称に配置された誘導加熱部材と、前記包装部材の開口の一端取付けられた円柱形状のシール部材と、を備え、前記シール部材の素材は、加熱することでエアロゾルを発生する素材を含み、前記誘導加熱部材は、前記充填物から露出していない、
ことを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、エアロゾル形成基材の製造に使用される設置治具であって、前記設置治具は円柱形状をしており、その素材は、加熱することでエアロゾルを発生する素材を含み、円状の面に誘導加熱部材を取付けて使用する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、2、4、6及び8に記載の発明によれば、設置治具を使用することで、誘導加熱部材を充填物の内部に、包装部材の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ径方向の中心軸に対して対称に配置することができるので、誘導加熱部材に対して交番磁界が幾何学的に均等に作用する位置関係となり、誘導加熱部材に対する交番磁界の作用がより効率的に行われるようになり、誘導加熱部材による誘導加熱の安定性と効率を向上させることが可能となる。特に充填物がペースト状や粉状の場合のように、充填物が非定型で、誘導加熱部材を挿入しやすい場合に効果的である。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、設置治具が、加熱することでエアロゾルを発生する素材、例えば充填物と同種の素材を固形化したもので形成されているので、全体としてのエアロゾル発生源が増えるので、使用者の使用感を向上させることが可能となる。
【0018】
請求項3、4に記載の発明によれば、誘導加熱部材設置用の型を形成することで、誘導加熱部材を充填物の内部に、包装部材の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ径方向の中心軸に対して対称に配置することができるので、誘導加熱部材に対する交番磁界の作用がより効率的に行われるようになり、誘導加熱部材による誘導加熱の安定性と効率を向上させることが可能となる。特に充填物がペースト状や粉状の場合のように、充填物が非定型で、型を形成しやすい場合に効果的である。
【0019】
請求項5、6及び7に記載の発明によれば、誘導加熱部材が充填物から露出していないので、シール部材や支持部材など、エアロゾル形成基材に隣接する要素を熱焼損させる危険性が低くなるので、エアロゾル吸引カートリッジの品質を向上させることが可能となる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、シール部材が、加熱することでエアロゾルを発生する素材、例えば充填物と同種の素材を固形化したもので形成されているので、全体としてのエアロゾル発生源が増えるので、使用者の使用感を向上させることが可能となる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、予め固形化させた充填物で誘導加熱部材を挟み込むので、誘導加熱部材を充填物の内部に、包装部材の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ径方向の中心軸に対して対称に配置しやすいので、誘導加熱部材に対する交番磁界の作用がより効率的に行われるようになるので、誘導加熱部材による誘導加熱の安定性と効率を向上させることが可能となる。特に充填物がペースト状の場合のように、充填物を所望の形状に固形化することができる場合に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る設置治具の概略の正面図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る設置治具に誘導加熱部材を取付けた状態を示す概略の正面図(a)と側面図(b)である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る包装部材の概略の斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係るエアロゾル形成基材の製造方法を示す概略の工程フロー図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係るエアロゾル形成基材を使用したエアロゾル吸引カートリッジの概略の側面断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態2に係る型成型治具の概略の斜視図である。
【
図7】本発明の実施の形態2に係るエアロゾル形成基材の製造方法を示す概略の工程フロー図である。
【
図8】本発明の実施の形態2に係るエアロゾル形成基材を使用したエアロゾル吸引カートリッジの概略の側面断面図である。
【
図9】本発明の実施の形態3に係る固形充填物部材の概略の斜視図である。
【
図10】本発明の実施の形態3に係るエアロゾル形成基材の製造方法を示す概略の工程フロー図である。
【
図11】本発明の実施の形態3に係るエアロゾル形成基材を使用したエアロゾル吸引カートリッジの概略の側面断面図である。
【
図12】従来のエアロゾル形成基材を使用したエアロゾル吸引カートリッジの概略の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、図面において、図面中の各部の構成の大きさ、間隔、数、その他詳細は、視認と理解の助けのために 、実際の物に比べて大幅に簡略化して表現している。
【0024】
実施の形態1
図5は、本発明の実施の形態1に係るエアロゾル形成基材1を使用したエアロゾル吸引カートリッジ10の概略の側面断面図である。エアロゾル吸引カートリッジ10は、エアロゾル形成基材1と、支持部材15と、フィルタ16が直線的に配列され、外装部材17で巻かれて円柱形状に形成されている。
【0025】
エアロゾル吸引カートリッジ10は、全体として細長い円柱形状をしており、加熱することでエアロゾルを発生する充填物14の集積体である細長い円柱形状のエアロゾル形成基材1と、エアロゾル形成基材1が動くことを防止するための支持部材15と、エアロゾル形成基材1からの気流を通すことのできるフィルタ16とが、長手方向に沿って配列されており、シート状の外装部材17で円柱形状に巻かれることで一体的に形成されている。ここで、外装部材17は、紙等の柔軟な素材で形成されている。ここで、「細長い」とは、立体形状において、一方向が他の方向より長いことを意味する。本実施の形態1において、「細長い円柱形状(円筒形状)」とは、円柱(円筒)の底面である円の直径より、円柱(円筒)の高さ(すなわち底面に垂直な成分)の方が長いことを意味する。以降の実施の形態においても同様である。
【0026】
本実施の形態1におけるエアロゾル吸引カートリッジ10は、径が4.0mm~7.5mm、より好ましくは5.0mm~7.0mm、長さが40mm~80mmに形成される。エアロゾル吸引カートリッジ10の外径を6.5~7.5mmの範囲に設定すれば、誘導加熱装置に設けられたエアロゾル吸引カートリッジ10を差し込む挿入部と適度な力で嵌合するため、エアロゾル吸引カートリッジ1を誘導加熱装置に好適に保持させることを可能にしつつ、エアロゾル吸引カートリッジ10の着脱を容易にすることができる。エアロゾル吸引カートリッジ10の長さを40mm以上に設定すれば、誘導加熱装置に設けられたエアロゾル吸引カートリッジ10を受け入れる挿入部の長さよりも長くなるので、エアロゾル吸引カートリッジ10を誘導加熱装置に差し込んでも、吸口を誘導加熱装置から露出させることができ、使用者がエアロゾルを吸引するのに必要な長さを確保可能となる。
【0027】
エアロゾル形成基材1は、
図1から4に示すように、中央に開口が形成されている細長い円筒形状の包装部材13の内部に、円柱形状の充填物14が収納されており、さらに充填物14には、包装部材13の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ一点鎖線X-Xで表した、底面の径方向の中心軸に対して対称に配置された誘導加熱部材12が挿入され、包装部材13の開口の一端には、設置治具11が取り付けられている。長さは10~25mmである。ここで、エアロゾル吸引カートリッジ10の構造において、設置治具11は、フィルタ16の反対側の端に位置するようにエアロゾル形成基材1に取り付けられている。
【0028】
エアロゾル形成基材1の外径は、フィルタ16の外径と略等しく、また、中心軸に沿って概ね一定の値となっている。この外径の大きさは、例えば4.0mm~7.5mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは5.0mm~7.0mmの範囲である。
【0029】
包装部材13は紙などの柔軟かつ燃焼可能な素材でできた、円筒形状の部材であり、円筒の外径が4.0mm~7.5mm、より好ましくは5.0mm~7.0mm、長さが10mm~25mmに設定されている。
【0030】
設置治具11は、円柱形状の部材であり、包装部材13の開口内部に挿入可能な大きさと形状に形成されている。また、面内の中央付近には、誘導加熱部材12を取付けるための非貫通孔が形成されている。また、素材は、本実施形態1では、加熱したときにエアロゾルを発生させる素材、すなわち充填物14と同種の素材を固形状に成形したものが使用されている。ここで、設置治具11の径は、誘導加熱部材12の位置精度を確保するために、包装部材13を挿入することが可能であり、なおかつ挿入したときに遊びが少ない大きさであることが好ましい。本実施の形態1では、包装部材13の直径より0.5~1.5mm小さく設定した。また、通気性を確保するために、一部切り欠きを設け、包装部材13の内壁との間に隙間ができるように形成されているとより好ましい。さらに厚さは、同様に誘導加熱部材12の位置精度を確保しつつ、エアロゾル形成基材1の長さを確保する観点から、3~5mm程度が好ましい。
【0031】
<充填物14について>
充填物14は、乾燥・粉砕されたタバコ植物または非タバコ植物に、エアロゾルを発生させるエアロゾルフォーマや、微結晶セルロース、風味を追加する添加剤、保存料、粘着剤または増粘剤等を混合し、シート状に成形した上で、所定の幅及び長さを有するように切断されることで形成される。なお、充填物14は多様な形状を有してもよい。例えば、長尺状やペースト状に形成されてもよいし、顆粒状に形成されてもよい。
【0032】
なお、充填物14を長尺状で構成した場合、中心軸に直交する断面は略長方形状であり、その断面の長辺と短辺の比は、例えば、1:1~30:1の範囲であることが好ましい。長辺の長さは、0.1mm~7.5mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは、0.1mm~3.0mmの範囲である。短辺の長さは、0.1mm~1.0mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1mm~0.5mmの範囲である。また、充填物14の長さはエアロゾル吸引カートリッジ10の長さと略同一であるのが好ましい。充填物14の長さは10mm~25mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは10mm~20mmの範囲である。このような充填物14の寸法の一例を挙げると、長辺が1.5mm、短辺が0.3mm、長さが12mmである。
【0033】
次に、充填物14として用いられる原料の具体例について説明する。充填物14は、以下に示す原料のうち任意の1つまたは複数の組み合わせで構成される。
【0034】
充填物14は、タバコ植物または非タバコ植物を原料とする。タバコ植物としては、タバコ葉、タバコ茎、膨張タバコ、均質化タバコ等が挙げられる。非タバコ植物としては、タバコ植物以外の植物が挙げられる。非タバコ植物の好ましい部位としては、葉、果肉、種子、根(鱗根、塊根等)、茎、塊茎、皮(茎皮、樹皮等)、花(花弁、雄蕊、雌蕊等)、幹、枝等が挙げられる。
【0035】
なお、本明細書でいう「植物」とは動物に対する一群を意味し、草および木等のように、根があって場所が固定されて生きているような生物以外に、微細藻類および海藻等のような藻類、キノコ等の菌類等をも含む。
【0036】
充填物14は、例えば、乾燥・粉砕された非タバコ植物に、エアロゾルを発生させるエアロゾルフォーマ、微結晶セルロース、風味を追加する風味添加剤、保存料、結着剤または増粘剤等を適宜混合し、粉砕若しくは分級して粉末状または粒状にしたり、ペースト状に成形される。また、充填物14は、シート状に成形した上で、所定の幅および長さを有するように切断して短冊状または棒状とされる。
【0037】
例えば、非タバコ植物が原材料である場合は、茶葉を使用できる。茶葉は茶になる植物が異なるだけでなく、同じ植物であっても加工法によって異なる茶葉になる。具体的には、たとえば、日本茶、紅茶、ウーロン茶等が挙げられる。
【0038】
エアロゾルフォーマは、例えばグリセリン、プロピレングリコール等が好ましく使用される。
【0039】
次に、微結晶セルロースとは、例えば、繊維性植物のパルプから得られたα-セルロースを酸で部分的に解重合したものとして得られるものであり、セルロースから可溶性部分を取り除き、適宜、不溶性部分を結晶化したものである。
【0040】
微結晶セルロースは、粉体のままでも良いし、水などの溶媒に分散させて懸燭液でも良い。この場合、溶媒ヘの分散は、高速攪拌機や高圧ホモジナイザーなどが使用できる。
【0041】
さらに、必要に応じ充填物14の原料として風味を追加する風味添加剤も用いられる。風味添加剤としては、はっか、ココア、コーヒー、紅茶のエキス、茶抽出物のカテキンの粉末等が挙げられる。保存料としては食品に使用されるものが好ましく、例えば、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0042】
結着剤または増粘剤としては、グアーガム等のゴム、ヒドロキシプロピルセルレロースなどのセルロース結合剤、デンプンなどの有機酸の共役塩基塩などの多糖類、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0043】
<誘導加熱部材12について>
誘導加熱部材12は、
図2のように平板状の素材を加工したものである。この平板は、厚さが0.05~0.5mm、好ましくは厚さが0.1~0.3mmである。長さはエアロゾル形成基材1の高さ方向の長さから、設置治具11の厚さを減じた長さより短く設定されている。ここで、誘導加熱部材12が長すぎると、加熱されるエリアが広くなり、加熱過剰により誘導加熱装置の動作に支障をきたしたり、熱くなり過ぎて使用者が触れなくなったりする危険性があり、一方で短すぎると加熱が十分に行われない恐れがあるので、エアロゾルの形成を阻害しない程度、例えばエアロゾル形成基材1の高さ方向の長さから、設置治具11の厚さを減じた長さより1~3mm程度短いことが好ましい。
【0044】
誘導加熱部材12の素材は、強磁性体を含む金属材料で形成される。強磁性体は、外部磁界を加えると外部磁界と同じ方向の磁性を強く帯び、特に磁石に吸着する性質を持つ素材であり、例えば、強磁性体の材料である鉄、フェライト鉄、フェライト粉末、フェライト粒子、フェライト系ステンレス(例えばSUS430)、ニッケル、ニッケル鉄合金(例えば42アロイ、36インバー)、あるいはコバルト等が挙げられる。強磁性体の比透磁率は、1よりも極めて大きく、例えば、鉄であれば5000程度であり、ニッケルであれば600程度であり、コバルトであれば250程度であり、フェライト系ステンレスであれば1000~1800程度である。
【0045】
磁性体のうち常磁性体は、外部磁界を加えると外部磁界と同じ方向の磁気を弱く帯び、外部磁界をゼロにすると磁気を帯びなくなる材料であり、例えば、アルミニウム、白金およびマンガン等が挙げられる。常磁性体の比透磁率は1よりもわずかに大きく、例えば、アルミニウムであれば1.000021程度であり、白金であれば1.000265程度であり、マンガンであれば1.000830程度である。
【0046】
また、磁性体のうち反磁性体は、外部磁界を加えると外部磁界と反対方向の磁気を帯び、外部磁界をゼロにすると磁気を帯びなくなる材料であり、例えば銅、グラファイト、ビスマス等が挙げられる。反磁性体の比透磁率は、1よりもわずかに小さく、例えば、銅であれば0.999990程度であり、グラファイトであれば0.99980程度であり、ビスマスであれば0.999834程度である。
【0047】
強磁性体は、向きや大きさが時間と共に変化する磁界(交番磁界)内部に置いたとき、電磁誘導により流れる渦電流によるジュール熱が発生するだけでなく、強磁性体内部の磁化の向きが変化するときに発生するエネルギー損失(ヒステリシス損)に起因する熱が発生するため、常磁性体や反磁性体に比べて容易に誘導加熱ができ、エアロゾル吸引カートリッジ10を十分に加熱できる。
【0048】
また、強磁性体がその磁気秩序を失い、常磁性体に転移する温度であるキュリー温度は、例えば、ニッケルであれば358℃程度である。そのため、エアロゾル吸引カートリッジを例えば200℃の高温で加熱する際にも、加熱温度がキュリー温度に達することはなく、強磁性体としての性質を維持でき、エアロゾル吸引カートリッジ10を安定して加熱できる。
【0049】
誘導加熱部材12の素材は、強磁性体の材料である、鉄、フェライト鉄、フェライト粉末、フェライト粒子、フェライト系ステンレス、強磁性鋼、ステンレス鋼、ニッケル、コバルト、またはこれらを組み合わせた金属材料を採用してもよい。例えば、フェライト系ステンレスとニッケルを組み合わせたもの等が挙げられ、より好ましくは、鉄、クロム、アルミを組合せた合金(鉄クロムアルミ合金)である。
【0050】
ここで、鉄及びクロムの温度と磁性の関係性について説明する。鉄は、キュリー温度が約770℃、クロムは、反強磁性体から常磁性体に変わる温度であるネール温度が約35℃である。
【0051】
また、誘導加熱部材12は、強磁性体を主成分として含む金属材料によって構成されてもよく、例えば強磁性体を、好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上含む合金である強磁性合金を採用してもよい。例えば、ニッケル合金あるいはニッケル鉄合金等が挙げられる。この場合でも、強磁性体が誘導加熱されることで、エアロゾル吸引カートリッジ10を十分に加熱できる。なお、強磁性体の代わりに、常磁性体および反磁性体を含む金属材料を用いてもよい。この場合でも誘導加熱自体は可能である。ただし、加熱時間の短縮化や消費電力の低減の観点から強磁性体を含む金属材料を用いる方が好ましい。
【0052】
支持部材15は、エアロゾル形成基材1の支持部材15側への移動を抑制するとともに、エアロゾル形成基材1で発生したエアロゾルを含む気流をフィルタ16側に流通させる。支持部材15は、例えば円筒状かつ中実状に設けられ、その軸方向が中心軸に沿うようにエアロゾル形成基材1とフィルタ16との間に配置される。支持部材15は、例えば、外径が4.0mm~7.5mm、中心軸に沿った長さが50mm以下に形成される。なお、支持部材15は、適宜機能および構成に応じて上記とは異なる寸法を有していてもよい。本実施の形態1では、樹脂材で形成された支持部材本体に、空気の流路となる挿通孔が形成された形態である。支持部材15を形成する素材としては、例えば、ポリプロピレン、ポリ乳酸、シリコーンのようなものが挙げられる。
【0053】
フィルタ16は、円柱形状に形成されており、中心軸に沿った長さは、10~50mmに設定されている。フィルタ16の素材は、例えば紙等を用いて形成される。また、例えば紙からなるシート状の部材を巻いて円柱形状に設けられてもよいし、微粒子を取り除くセルロースアセテートフィルタ等を含んでいてもよい。また、シリコーンを含む多孔質材料で形成されてもよい。フィルタ16は、エアロゾル吸引カートリッジ10で生成された水蒸気やエアロゾル中の微粒子の一部を濾過する機能を有する白色のフィルタである。なお、充填物14が非タバコ植物を原料としている場合、フィルタ16は必ずしも必要ではない。
【0054】
次に、充填物14の製造工程について説明をする。
【0055】
充填物14の製造工程は、さらに内部工程として、その主原料となるタバコ植物または非タバコ植物を乾燥・粉砕し、秤量等を行う乾燥・粉砕工程と、その他の原料の前処理、秤量等を行う準備工程と、原料を混合して組成物とする混合工程と、組成物を成形する充填物成形工程と、を有する。
【0056】
乾燥・粉砕工程では、主原料となるタバコ植物または非タバコ植物の使用部位(例えば、葉、種子、乾燥果実、茎、樹皮、根など)を組成物とするため、所定の粉砕物に加工する。その際、後に添加するエアロゾルフォーマ、水その他の成分を吸収あるいは担持するのに都合の良い水分量に調整することが好ましい。乾燥において、温度は60℃以上80℃以下が好ましい。この範囲とすることで、必要とする香味成分の散逸を避けながら、所望の水分量に到達させやすい。さらに、乾燥・粉砕工程には、粉砕物を篩分けする篩工程を設けることもでき、所望の粒度に調整して混合工程に投入することができる。
【0057】
準備工程においては、充填物14を作製するにあたり必要な原料を準備することができる。前述の微結晶セルロースは、準備工程において秤量され、混合工程に投入される。
【0058】
混合工程においては、通常の混合機を使用することができる。例えば、混合槽中の原料を撹拌羽根にて、剪断力を加えつつ混合するような形態が好ましく用いられる。
【0059】
充填物成形工程では、短冊状または棒状とする場合には、各種原料が混合された組成物を複数本のロールミルで薄いシート状に成形してから、切断することで充填物14が成形される。複数本のロールミルを用いると、狭いロール間に押し込まれることによる圧縮と、ロール速度差による剪断により、混練、分散などを行いながら、ドクターブレードにより所望の厚さのシートとすることが可能であり、好ましい。また、プレスローラあるいはプレス機を用いて作製することもできる。
【0060】
この場合、シートの厚さは、0.1mm~1.0mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1mm~0.5mmの範囲である。得られたシートは、カッター、回転刃方式のロータリーカッター等により、所定の幅に切断される。
【0061】
また、粉末状または粒状の充填物14とする場合には、上記組成物について、適宜粉砕若しくは分級を行うことが好ましい。粉末状または粒状の充填物14における平均粒子径は、例えば0.1~3.0mmであることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。当該平均粒子径は、例えばJIS K 0069:1992に記載された篩分け法によって求められる。つまり、この平均粒子径は、複数の篩による試験結果について、目開きの大きいほうからの質量の積算を行い、その質量50%に相当する径をいう。また、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を平均粒子径としても良い。また、粉末状または粒状の組成物に増粘剤や水などを適量添加して混錬することで、充填物14を、流動性を有するペースト状に形成してもよい。
【0062】
充填物成形工程では、組成物を加圧によりオリフィスを通過させて成形するなど、他の手段を用いても良い。また、充填物成形工程では、必要に応じて、非タバコ植物、エアロゾルフォーマ、結着剤または増粘剤等、風味添加剤、保存料をさらに添加しても良いし、水などを添加しても良い。
【0063】
ここで、充填物14の表面に粘着性を付与する場合は、粘着性を付与できる手段であれば特に限定されないが、既述の結着剤を少なくとも一部に付着させれば良い。粘着性を付与することで、短冊状または棒状の充填物14と粉末状、粒状またはペースト状の充填物14と組み合わせる場合に、短冊状または棒状の充填物14の表面に粉末状、粒状またはペースト状の充填物14を安定して保持することができる。
【0064】
<エアロゾル形成基材1の製造工程>
次に、
図4に基づいて、エアロゾル形成基材1の製造工程について説明をする。先ず、包装部材13を準備する(a)。次に、包装部材13の開口に、充填物14を充填する(充填工程)。ここで、本実施の形態1において、充填物14はペースト状のものを主成分として用いた。このとき、充填物14は完全に開口内部に満たさずに、設置治具11がの厚さ相当の空間を残しておく(b)。次に、設置治具11に取付けられた誘導加熱部材12を、包装部材13の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ底面の径方向の中心軸(一点鎖線X-X)に対して対称に、充填物14に挿入する(挿入工程)(c)。挿入工程では、設置治具が、充填工程で形成された空間内に設置され、誘導加熱部材12が完全に充填物14の内部に埋没するまで挿入を行う。このとき、円柱形状の設置治具11の径が、包装部材13の開口の径より妥当な範囲で小さく設計されており、さらに適度な厚さを有していることから、誘導加熱部材12は、包装部材13の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ底面の径方向の中心軸に対して対称に挿入される。
【0065】
また、充填物14がペースト状の素材を含む場合には、充填工程と挿入工程の間または挿入工程の後に、充填物14を所定の温度と時間で乾燥させる工程(乾燥工程)をとることで、充填物14を固化させる。この温度と時間は、本実施の形態では温度は60~80℃、時間は3~15分としたが、充填剤14の素材や成分により最適なものに設定する。
【0066】
エアロゾル形成基材1が完成した状態では、誘導加熱部材12は、包装部材13の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ底面の径方向の中心軸に対して対称に配置されている(d)。また、設置治具11が充填物14と同様に、加熱することでエアロゾルを発生する素材からなることから、エアロゾル発生源は二つの固形の充填物14からなる部材(固形充填物部材)を接合している。また、誘導加熱部材12は、充填物14から露出していない状態となっている。
【0067】
<組立工程>
次に、組立工程について説明をする。組立工程は、エアロゾル形成基材1と、支持部材15と、フィルタ16を、この順番で一列に配列し、外装部材17で包むことで、エアロゾル吸引カートリッジ10が完成する。ここで、完成段階においても、誘導加熱部材12は、エアロゾル吸引カートリッジ10の円柱の高さ方向に沿い、なおかつ径方向の中心軸に対して対称に配置されていることが好ましい。
【0068】
この発明によれば、設置治具11を使用することで、誘導加熱部材12を包装部材13の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ径方向の中心軸に対して対称に配置することができるので、誘導加熱部材12に対して交番磁界が幾何学的に均等に作用する位置関係となり、誘導加熱部材12に対する交番磁界の作用がより効率的に行われるようになり、誘導加熱部材12による誘導加熱の安定性と効率を向上させることが可能となる。特に充填物14がペースト状や粉状の場合のように、充填物14が非定型で、誘導加熱部材12を挿入しやすい場合に効果的である。
【0069】
また、設置治具11が加熱することでエアロゾルを発生する素材、例えば充填物14と同種の素材を固形化したもので形成されているので、全体としてのエアロゾル発生源が増えるので、使用者の使用感を向上させることが可能となる。
【0070】
また、誘導加熱部材12が充填物14から露出していないので、支持部材15など、エアロゾル形成基材1に隣接する要素を熱焼損させる危険性が低くなるので、エアロゾル吸引カートリッジ10の品質を向上させることが可能となる。
【0071】
実施の形態2
図6から8に基づいて、本実施の形態2に係るエアロゾル形成基材2の製造方法について説明をする。ここで、実施の形態1と共通の工程や構成については、図示や説明を適宜省略する。
【0072】
エアロゾル形成基材2は、
図6から8に示すように、中央に開口が形成されている細長い円筒形状の包装部材23の内部に、円柱形状の充填物24が収納されており、さらに充填物24には、包装部材23の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ底面の径方向の中心軸に対して対称に配置された誘導加熱部材22が挿入され、包装部材23の開口の一端には、充填物24の漏洩防止のために設置されたシール部材25が取り付けられている。
【0073】
図6は、エアロゾル形成基材2の製造方法に用いる型成型治具21の概略の斜視図である。これは、誘導加熱部材22を適正に充填物24内に入れるために、製造工程においてあらかじめ充填物24に型を成型するための治具であり、一端が閉塞された円筒形状のガイド部211と、ガイド部211の閉塞面に垂直に、なおかつ閉塞面の底面の径方向の中心軸に対して対称に、平板状の型板212から構成されている。
【0074】
ガイド部211は、前述のとおり、円筒の一端側が閉塞され、反対の一端側に開口が形成されている、いわゆるキャップ状の形状をしている。円筒の径は、包装部材23を挿入することが可能であり、なおかつ挿入したときに遊びが少ない大きさであることが好ましい。本実施の形態2では、包装部材23の直径より0.5~1.5mm大きく設定した。また、閉塞面と円筒の側壁は、閉塞面に垂直に接しており、その高さは包装部材13の長さより短く設定されている。ここで、短すぎると、型成型の精度に支障をきたし、長すぎると作業性を低下させるので、エアロゾル形成基材2の長さの3分の1~2分の1の長さが好ましい。
【0075】
型板212は、充填物24において、誘導加熱部材22を入れるための型を成型するための部品であるから、誘導加熱部材と略同じ形状と大きさで設定されているが、誘導加熱部材22をスムーズに入れることが可能であり、なおかつ入れたときに遊びが少ない大きさであることが好ましい。本実施の形態2では、誘導加熱部材22と比較して、厚さが同じで、幅が0.5~1.5mm大きく設定した。また、長さは、誘導加熱部材22の全体を充填物24内に収めることが可能な大きさに設定されている。本実施の形態2では、包装部材23の長さより1~3mm短く設定した。
【0076】
型成型治具21の素材はプラスチック、金属のように、外力に対する耐久性のある素材が使われるが、加工性、コスト、重量などの事情を考慮すると、プラスチックが好ましい。ここで、プラスチックの種類は例えばABS、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレン、PTFE、PET、塩化ビニル、ポリカーボネートなど、殆どの種類のものが使用できる。本実施の形態2では、ポリアセタールを使用した。
【0077】
次に、シール部材25は、充填物24がエアロゾル形成基材2からこぼれることを防止するためのものであり、円柱形状に形成されている。シール部材25の素材は、本実施の形態2では加熱したときにエアロゾルを発生させる素材、すなわち充填物24と同種の素材を固形状に成形したものが使用されているが、フィルタ16と同種の素材、例えば紙からなるシート状の部材を巻いて円柱形状に設けられてもよい。また、シール部材25は、カートリッジの外部からエアロゾル吸引カートリッジ20に向かって空気を通過させる機能を有する。また、シール部材25は、エアロゾル吸引カートリッジ20で生成された水蒸気やエアロゾルのうち、エアロゾル吸引カートリッジ20に留まって液化した残留液を吸収することができる。このシール部材25は、フィルタ16とは異なる色(例えば黒)にすることで、エアロゾル吸引カートリッジ20の上流側と下流側を簡単に判断可能にすることができる。
【0078】
シール部材25は、包装部材23の開口の一端に対して取り付け可能な大きさと形状に形成されている。
【0079】
<エアロゾル形成基材2の製造工程>
次に、
図7に基づいて、エアロゾル形成基材2の製造工程について説明をする。実施の形態1と同様に、包装部材23を準備する(a)。次に、包装部材23の開口に、充填物24を充填する(充填工程)。ここで、本実施の形態2において、充填物24は粉末状のものを主成分として用いた。また、このとき、充填物24は完全に開口内部に満たさずに、シール部材25が収まる程度の空間を残しておく(b)。次に、型成型治具21を、型板212が包装部材23の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ底面の径方向の中心軸に対して対称に、充填物24に挿入し、誘導加熱部材22が挿入される型Cを成型する(型成型工程)(c、d)。このとき、ガイド部211の円筒の側壁と閉塞面が、包装部材に接するまで挿入する。次に、この型Cに誘導加熱部材22を挿入する(挿入工程)(e)。ここで挿入された誘導加熱部材22は、型板212と同様に、包装部材23の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ底面の径方向の中心軸に対して対称に、充填物24に挿入されている。また、挿入工程では、誘導加熱部材22が完全に充填物24の内部に埋没させ、充填物24から露出しないようになるまで挿入を行う。次に、シール部材25を、包装部材23の上部の空間に取付ける。
【0080】
図8は、本発明の実施の形態2に係るエアロゾル形成基材2を使用したエアロゾル吸引カートリッジ20の概略の側面断面図である。ここでは、エアロゾル形成基材2が異なること以外の構成は、実施の形態1と同様である。ここで、完成段階においても、誘導加熱部材22は、エアロゾル吸引カートリッジ20の円柱の高さ方向に沿い、なおかつ径方向の中心軸に対して対称に配置されていることが好ましい。
【0081】
この発明によれば、型成型治具21を使用することで、特に充填物24が粉末状の場合に、誘導加熱部材22を充填物24の内部に、包装部材23の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ径方向の中心軸に対して対称に配置することができるので、誘導加熱部材22に対して交番磁界が幾何学的に均等に作用する位置関係となり、誘導加熱部材22に対する交番磁界の作用がより効率的に行われるようになり、誘導加熱部材22による誘導加熱の安定性と効率を向上させることが可能となる。特に充填物24がペースト状や粉状の場合のように、充填物24が非定型で、型を形成しやすい場合に効果的である。
【0082】
また、誘導加熱部材22が充填物24から露出していないので、支持部材15など、エアロゾル形成基材に隣接する要素を熱焼損させる危険性が低くなるので、エアロゾル吸引カートリッジ20の品質を向上させることが可能となる。
【0083】
また、シール部材25が、加熱することでエアロゾルを発生する素材、例えば充填物24と同種の素材を固形化したもので形成されているので、全体としてのエアロゾル発生源が増えるので、使用者の使用感を向上させることが可能となる。
【0084】
実施の形態3
図9から11に基づいて、本実施の形態3に係るエアロゾル形成基材3の製造方法について説明をする。ここで、実施の形態1と共通の工程や構成については、図示と説明を適宜省略する。
【0085】
エアロゾル形成基材3は、
図9から11に示すように、中央に開口が形成されている細長い円筒形状の包装部材33の内部に、円柱形状の固形充填物部材(充填物)34が収納されており、さらに固形充填物部材には、包装部材33の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ底面の径方向の中心軸に対して対称に配置された誘導加熱部材32が挿入されている。
【0086】
図9は、エアロゾル形成基材3に用いる固形充填物部材34の概略の斜視図である。固形充填物部材34は充填物を固形化した素材で形成されており、本実施の形態3では、ペースト状の充填物の材料を固形化したものを使用している。形状は、円柱を縦に割った、いわゆる半円柱形状をしており、上面底面が半円状、側面が平面的な矩形状と湾曲した矩形状から構成されている。大きさは、2つの固形充填物部材34の平面的な矩形状面を対向・接触させたとき、包装部材33の貫通孔にちょうど収まる程度の寸法に設定されている。
【0087】
<エアロゾル形成基材3の製造工程>
次に、
図10に基づいて、エアロゾル形成基材3の製造工程について説明をする。先ず、固形充填物部材34を2個準備する(a)。次に、誘導加熱部材32を、二つの半円柱形状の固形充填物部材34の平面的な矩形状面で、誘導加熱部材34を挟み込み一体化することで、誘導加熱部材32を内包した充填物を形成する(形成工程)(b)。次に、充填物を包装部材に挿入する(挿入工程)。このとき、誘導加熱部材32は、包装部材33の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ底面の径方向の中心軸に対して対称に配置されている。また、誘導加熱部材32は完全に充填物の内部に埋没しており、充填物から露出しないようになっており、その長さは、エアロゾル形成基材3の高さ方向の長さより1~3mm程度短く設定されている。
【0088】
図11は、本発明の実施の形態3に係るエアロゾル形成基材3を使用したエアロゾル吸引カートリッジ30の概略の側面断面図である。ここでは、エアロゾル形成基材3が異なること以外の構成は、実施の形態1と同様である。ここで、完成段階においても、誘導加熱部材32は、エアロゾル吸引カートリッジ30の円柱の高さ方向に沿い、なおかつ径方向の中心軸に対して対称に配置されていることが好ましい。
【0089】
この発明によれば、誘導加熱部材32が固形充填物部材34から露出していないので、支持部材15など、エアロゾル形成基材3に隣接する要素を熱焼損させる危険性が低くなるので、エアロゾル吸引カートリッジ30の品質を向上させることが可能となる。
【0090】
また、充填物材料を予め固形化させた固形充填物部材34で誘導加熱部材32を挟み込むので、誘導加熱部材32を充填物34の内部に、包装部材33の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ径方向の中心軸に対して対称に配置しやすいので、誘導加熱部材34に対して交番磁界が幾何学的に均等に作用する位置関係となり、誘導加熱部材32に対する交番磁界の作用がより効率的に行われるようになるので、誘導加熱部材32による誘導加熱の安定性と効率を向上させることが可能となる。特に充填物34がペースト状の場合のように、充填物34を所望の形状に固形化することができる場合に効果的である。
【0091】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本願発明の範囲は以上の実施の形態に限られるものではなく、これと同視しうる他の形態に対しても及ぶ。
【0092】
例えば、充填物14(24,34)の形態は、各実施の形態に対して特に効果的であるものを例として示したが、シート状、長尺状、粉末状または粒状に成形されたものや、ペースト状のものに成形されたものいずれでもよいし、これらを混在させたものでもよい。
【0093】
また、実施の形態3において、固形充填物部材34同士の接合や、包装部材33への固定に、ペースト状の充填物材料を接着剤として塗布して使用することで、固形充填物部材34がずれたり、包装部材33から脱落したりすることを防止して、よりエアロゾル形成基材3の形状を安定させて品質を向上させることが可能となる。また、塗布後にペースト状の充填物材料所定の温度と時間で固化させれば、さらに効果的である。
【0094】
また、実施の形態2において、シール部材25の素材は、充填物24と同種の素材を固形状に成形したものが使用したが、製造工程の都合上これを使用できない場合には、これに限られず、他の素材、例えばシリコーンやプラスチックなどを使用することも可能である。実施の形態1における設置治具11についても同様であり、この場合、設置治具11は誘導加熱部材12を設置した後に取り外して再利用することが可能であり、コスト削減に効果がある。
【0095】
また、支持部材15は、エアロゾル形成基材1(2、3)が支持部材15側へ移動することが無い場合には、必ずしも設置する必要はない。例えば、フィルタ16をエアロゾル形成基材1(2、3)と隣接させたり、支持部材15のあった場所を空間とし(すなわち、エアロゾル形成基材1(2、3)とフィルタ16の間が全て空洞となっている)たりしてもよい。これにより、部品点数の削減ができるので、コスト削減に有効である。特に空間を設ける場合は、通気性の向上に有効である。
【0096】
さらに、包装部材13(23、33)と別構成で外装部材17を使う必要は必ずしもなく、包装部材13(23、33)を、エアロゾル吸引カートリッジ10(20、30)と同程度に長く形成して、包装部材13(23、33)の円筒の内部に支持部材15やフィルタ16を収納する、すなわち包装部材12(23、33)が外装部材17を兼ねることでも、エアロゾル形成基材1(2、3)とエアロゾル吸引カートリッジ10(20、30)を一体的に形成することが可能であり、これによりさらなる製造工程の簡略化と製造コストの低減を図ることが可能である。なおこの場合、支持部材15やフィルタ16を包装部材13(23、33)に入れてから充填物14(24、34)を充填してもよいし、充填物14(24、34)を充填後に支持部材15やフィルタ16を入れても良い。
【0097】
さらに、実施の形態1、3においては、結果として2個の固形化した充填物14や固形充填物部材34を接合させた形態になっているが、これに限られず、3個以上の固形化した充填物14や固形充填物部材34を用いても良い。
【0098】
また、実施の形態1から3において、誘導加熱部材12(22、32)は、必ずしも厳密に包装部材13(23、33)の円筒の高さ方向に沿い、なおかつ径方向の中心軸に対して対称に配置されている必要はなく、誘導加熱部材12(22、32)による誘導加熱の安定性と効率を大きく低下させない程度の範囲で誤差を有することは許容され得る。例えば、中心軸に対して、角度として±10度、距離にして±1mm程度の誤差は許容され得る。
【0099】
また、誘導加熱部材12(22、32)は、必ずしも平板形状ではなく、例えば円筒形状、円柱形状、角柱形状、角筒形状など、様々な形状が採りうる。さらに、断面形状がV字形状・U字形状、H字形状なども可能である。
【0100】
また、実施の形態3において、固形充填物部材34の、誘導加熱部材32を設置する部分に目印を形成することで、より適正な位置に誘導加熱部材32を設置することが可能となる。ここで、目印は、面状、線状いずれでも採りうる。また、誘導加熱部材32を設置する位置に凹形状の収納部を形成し、そこに収納してもよい。
【0101】
なお、充填物14(24、34)の原材料である茶葉は、実施の形態に挙げたもの以外に、一般に使用されている全ての茶葉を使用できる。また、これら茶葉については飲用後の茶殻を使用しても良い。茶殻などを使用すれば高価な茶葉などを再利用して有効活用できる。
【0102】
また、上記に例示した非タバコ植物の抽出物、所謂エキスや加工品も使用することができる。抽出物の形態としては、液体、水あめ状、粉末、顆粒、溶液等が挙げられる。
【0103】
また、充填物14(24、34)の原料としてのエアロゾルフォーマは、実施の形態に挙げたもの以外に、ソルビトール、トリエチレングリコール、乳酸、ジアセチン(グリセリンジアセタート)、トリアセチン(グリセリントリアセタート)、トリエチレングリコールジアセタート、クエン酸トリエチル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸メチル、ドデカンジオン酸ジメチル、テトラデカンサンジオン酸ジメチルなども使用できる。
【0104】
また、風味添加剤として、メントールおよび非水溶性架橋ポリマー(好ましくはポリビニルポリピロリドン)を含有させても良い。メントールに非水溶性架橋ポリマーを組み合わせることで、メントールの昇華を効果的に抑制でき、メントールの風味を長期間保つことができる。ここで、メントールとは、天然物から得られたものに限られず、合成物でも良い。また、はっか、ミント、ハッカ油、その他のメントールを含むものを使用しても良い。
【0105】
また、風味添加剤は、例えば、フィルタ16の壁部に含浸させることによってフィルタ16に設けられている。風味添加剤がフィルタ16に設けられている態様は、このような態様に限られず、例えば、当該風味添加剤が封入されているカプセルをフィルタ16の壁部に埋設することによって、フィルタ16に風味添加剤が設けられているようにしても良い。または、フィルタ16とエアロゾル吸引カートリッジ10(20、30)との間に風味添加剤が封入されたカプセルが配置されるようにしても良い。風味添加剤がカプセルに封入されている場合、使用者は、カプセルを指で押圧することにより、カプセルを破壊することができ、所望のタイミングで風味添加剤の芳香成分を揮発させることが可能となる。
【0106】
また、風味添加剤は、例えば、マイクロカプセルに封入されている場合、封入されているマイクロカプセルをエアロゾル吸引カートリッジ10(20、30)に設けても良い。勿論、当該マイクロカプセルを支持部材15に設けても良い。
【0107】
また、充填物14(24、34)の原料としての結着剤または増粘剤としては、実施の形態に挙げたものの他、キサンタンガム、アラビアゴムおよびローカストビーンガムなどのゴム、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースおよびエチルセルロースなどのセルロース結合剤、または、アルギン酸などの有機酸、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラナギン、寒天およびペクチンなどの有機酸の共役塩基塩などの多糖類、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【符号の説明】
【0108】
1、2、3 エアロゾル形成基材
10、20、30 エアロゾル吸引カートリッジ
11 設置治具
12、22、32 誘導加熱部材
13、23、33 包装部材
14、24、34 充填物(固形充填物部材)
15 支持部材
16 フィルタ
17 外装部材
21 型成型治具
25 シール部材
C 型