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特許7514904餅様食品、その製造方法、食品組成物および餅様食品添加用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】餅様食品、その製造方法、食品組成物および餅様食品添加用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20240704BHJP
   A23L 29/206 20160101ALI20240704BHJP
   A23L 29/281 20160101ALI20240704BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20240704BHJP
【FI】
A23L7/10 102
A23L29/206
A23L29/281
A23L29/238
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022191897
(22)【出願日】2022-11-30
(65)【公開番号】P2024079144
(43)【公開日】2024-06-11
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000190943
【氏名又は名称】新田ゼラチン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 知美
(72)【発明者】
【氏名】間宮 寛之
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-36773(JP,A)
【文献】特開2017-123828(JP,A)
【文献】特開2020-115857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米成分と、
ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方である加工澱粉と、
サイリウムシードガムと、
ゼラチンとを含む餅様食品であって、
糖質量は、前記餅様食品100g当たり35g以下であり、
前記米成分の含有量は、3質量%以上10質量%以下であり、
前記ゼラチンの含有量は、0.4質量%以上1質量%以下であり、
前記加工澱粉の含有量は、7質量%以上17質量%以下であり、
前記サイリウムシードガムの含有量は、2質量%以上4質量%以下であり、
前記米成分は、もち米粉、うるち米粉、だんご粉および白玉粉からなる群より選ばれる1種以上の米粉であるか、または前記米粉を主成分とし、前記米粉に馬鈴薯、小麦、オーツ麦、わらび、葛、小豆およびインゲンからなる群より選ばれる1種以上の澱粉質の粉末を含む成分である、餅様食品。
【請求項2】
前記米成分の含有量は、3.0質量%以上10質量%以下であり、
前記ゼラチンの含有量は、0.4質量%以上0.9質量%以下であり、
前記加工澱粉の含有量は、7.0質量%以上16.7質量%以下であり、
前記サイリウムシードガムの含有量は、2.5質量%以上3.8質量%以下である、請求項1に記載の餅様食品。
【請求項3】
前記餅様食品は、水溶性食物繊維をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の餅様食品。
【請求項4】
熱量は、前記餅様食品100g当たり156Kcal以下である、請求項1または請求項2に記載の餅様食品。
【請求項5】
米成分と、ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方である加工澱粉と、サイリウムシードガムと、ゼラチンとを準備する工程と、
前記米成分、前記加工澱粉、前記サイリウムシードガムおよび前記ゼラチンを混合することにより、混合物を得る工程と、
前記混合物に対し、レトルト殺菌処理またはそれと同等以上の加圧加熱処理を実行することにより、餅様食品を得る工程とを含み、
前記餅様食品において
前記米成分の含有量は、3質量%以上10質量%以下であり、
前記ゼラチンの含有量は、0.4質量%以上1質量%以下であり、
前記加工澱粉の含有量は、7質量%以上17質量%以下であり、
前記サイリウムシードガムの含有量は、2質量%以上4質量%以下であり、
前記米成分は、もち米粉、うるち米粉、だんご粉および白玉粉からなる群より選ばれる1種以上の米粉であるか、または前記米粉を主成分とし、前記米粉に馬鈴薯、小麦、オーツ麦、わらび、葛、小豆およびインゲンからなる群より選ばれる1種以上の澱粉質の粉末を含む成分である、餅様食品の製造方法。
【請求項6】
前記米成分の含有量は、3.0質量%以上10質量%以下であり、
前記ゼラチンの含有量は、0.4質量%以上0.9質量%以下であり、
前記加工澱粉の含有量は、7.0質量%以上16.7質量%以下であり、
前記サイリウムシードガムの含有量は、2.5質量%以上3.8質量%以下である、請求項5に記載の餅様食品の製造方法。
【請求項7】
米成分と、ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方である加工澱粉と、サイリウムシードガムと、ゼラチンとを準備する工程と、
前記米成分、前記加工澱粉、前記サイリウムシードガムおよび前記ゼラチンを混合することにより、混合物を得る工程と、
前記混合物を100℃で25~40分蒸すことにより餅様食品を得る工程と、
前記餅様食品を0~10℃で冷蔵保存または-40~-10℃で冷凍保存する工程とを含み、
前記餅様食品において、
前記米成分の含有量は、3.0質量%以上4.6質量%以下であり、
前記ゼラチンの含有量は、0.4質量%以上0.9質量%以下であり、
前記加工澱粉の含有量は、11.0質量%以上16.7質量%以下であり、
前記サイリウムシードガムの含有量は、2.5質量%以上3.8質量%以下であり、
前記米成分は、もち米粉、うるち米粉、だんご粉および白玉粉からなる群より選ばれる1種以上の米粉であるか、または前記米粉を主成分とし、前記米粉に馬鈴薯、小麦、オーツ麦、わらび、葛、小豆およびインゲンからなる群より選ばれる1種以上の澱粉質の粉末を含む成分である、餅様食品の製造方法。
【請求項8】
米成分と、
ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方である加工澱粉と、
サイリウムシードガムと、
ゼラチンとを含み、
餅様食品の製造に用いられ、
前記餅様食品において、
前記米成分の含有量は、3質量%以上10質量%以下であり、
前記ゼラチンの含有量は、0.4質量%以上1質量%以下であり、
前記加工澱粉の含有量は、7質量%以上17質量%以下であり、
前記サイリウムシードガムの含有量は、2質量%以上4質量%以下であり、
前記米成分は、もち米粉、うるち米粉、だんご粉および白玉粉からなる群より選ばれる1種以上の米粉であるか、または前記米粉を主成分とし、前記米粉に馬鈴薯、小麦、オーツ麦、わらび、葛、小豆およびインゲンからなる群より選ばれる1種以上の澱粉質の粉末を含む成分である、食品組成物。
【請求項9】
前記米成分の含有量は、3.0質量%以上10質量%以下であり、
前記ゼラチンの含有量は、0.4質量%以上0.9質量%以下であり、
前記加工澱粉の含有量は、7.0質量%以上16.7質量%以下であり、
前記サイリウムシードガムの含有量は、2.5質量%以上3.8質量%以下である、請求項8に記載の食品組成物。
【請求項10】
ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方である加工澱粉と、
サイリウムシードガムと、
ゼラチンとを含み、
餅様食品の製造に用いられ、
前記餅様食品において、
前記ゼラチンの含有量は、0.4質量%以上1質量%以下であり、
前記加工澱粉の含有量は、7質量%以上17質量%以下であり、
前記サイリウムシードガムの含有量は、2質量%以上4質量%以下である、
餅様食品添加用組成物。
【請求項11】
前記ゼラチンの含有量は、0.4質量%以上0.9質量%以下であり、
前記加工澱粉の含有量は、7.0質量%以上16.7質量%以下であり、
前記サイリウムシードガムの含有量は、2.5質量%以上3.8質量%以下である、請求項10に記載の餅様食品添加用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、餅様食品、その製造方法、食品組成物および食品添加用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2021-036773号公報(特許文献1)は、米および/または米粉、難消化性澱粉、水溶性食物繊維、ならびに増粘多糖類を含むことにより、食感および風味が良好な低糖質化した餅又は餅様食品を開示している。特開2000-197457号公報(特許文献2)および特開2009-261298号公報(特許文献3)は、即食可能な餅加工食品または即食餅を開示している。特開2014-117206号公報(特許文献4)は、サイリウムシードガム等の多糖類を配合することにより、もちもち感、弾力感、ねばり感などの粘弾力のある食感を食品に付与できる食品改良剤を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-036773号公報
【文献】特開2000-197457号公報
【文献】特開2009-261298号公報
【文献】特開2014-117206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダイエット意識等の高まりにより、一日に摂取する糖質量を制限する所謂糖質コントロールが注目されている。このような背景の下、本来的に糖質を多く含む食品を低糖質化する加工技術の開発が進められているが、糖質を多く含む食品の典型例である餅に対しては、餅本来の食感および風味を維持しながら低糖質化することが難しいと考えられる。なぜなら上記特許文献1に開示される餅又は餅様食品は、低糖質化が図られているものの、難消化性澱粉を多く含むことによって異味が発生する可能性がある。一方、この可能性を低減するために米および/または米粉を添加すれば、低糖質化が妨げられる。特許文献2および3に開示された餅加工食品または即食餅は、低糖質化が図れていない。特許文献4の食品改質剤は、食品にもちもち感、弾力感、ねばり感などの粘弾力のある食感を与えるが、穀粒、穀粉または澱粉等を主成分として含む食品に適用することを前提としているため、低糖質化を図ることが困難である。したがって、餅本来の食感および風味を維持し、かつ低糖質化を果たすことのできる餅様食品は未だ実現しておらず、その開発が切望されている。
【0005】
上記実情に鑑み、本発明は、餅本来の食感および風味を維持し、かつ低糖質化を果たすことができる餅様食品、その製造方法、食品組成物および食品添加用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ね、本発明を完成させた。具体的には、米成分、加工澱粉、サイリウムシードガムおよびゼラチンを組合せることにより構成した餅様食品は、糖質量が上記餅様食品100gあたり35g以下となって低糖質化を果たすことができることを想到した。この場合、餅様食品は餅本来の食感および風味を維持することができることも知見し、本発明に到達した。さらに上記餅様食品は、レトルト殺菌処理(以下、単に「レトルト殺菌」とも記す)の手法を用いることにより、入手後、直ちに喫食でき、かつ常温での長期保存を実現することができた。すなわち、本発明は次のような構成を有する。
【0007】
本発明に係る餅様食品は、米成分と、ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方である加工澱粉と、サイリウムシードガムと、ゼラチンとを含む餅様食品であって、糖質量は、上記餅様食品100g当たり35g以下である。
【0008】
上記餅様食品は、水溶性食物繊維をさらに含むことが好ましい。
上記米成分の含有量は、3質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0009】
上記ゼラチンの含有量は、0.4質量%以上1質量%以下であることが好ましい。
上記加工澱粉の含有量は、7質量%以上17質量%以下であることが好ましい。
【0010】
上記サイリウムシードガムの含有量は、2質量%以上4質量%以下であることが好ましい。熱量は、上記餅様食品100g当たり156Kcal以下であることが好ましい。
【0011】
本発明に係る餅様食品の製造方法は、米成分と、ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方である加工澱粉と、サイリウムシードガムと、ゼラチンとを準備する工程と、上記米成分、上記加工澱粉、上記サイリウムシードガムおよび上記ゼラチンを混合することにより、混合物を得る工程と、上記混合物に対し、レトルト殺菌処理またはそれと同等以上の加圧加熱処理を実行することにより、餅様食品を得る工程とを含む。
【0012】
本発明に係る食品組成物は、米成分と、ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方である加工澱粉と、サイリウムシードガムと、ゼラチンとを含む。
【0013】
本発明に係る食品添加用組成物は、ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方である加工澱粉と、サイリウムシードガムと、ゼラチンとを含む。
【発明の効果】
【0014】
上記によれば、餅本来の食感および風味を維持し、かつ低糖質化を果たすことができる餅様食品、その製造方法、食品組成物および食品添加用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態(以下、「本実施形態」とも記す)について、さらに詳細に説明する。ここで本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。本明細書において「低糖質化を果たすことができる」とは、上記餅様食品100g当たりの糖質量が、35g以下であることを意味する。これにより上記餅様食品が「低糖質化を果たすことができる」場合、日本食品標準成分表2020年版(八訂)に掲載される「もち」(もち100g当たりの糖質量50g)に比べ、糖質量を30%以上減らすことが可能となる。本明細書において「糖質」とは、ヒトのエネルギー源となる栄養素の一つである炭水化物を意味し、より具体的には、上記炭水化物からヒトのエネルギー源とならない食物繊維を除いたものをいう。さらに「糖質量」とは、上記糖質の質量を意味する。
【0016】
本明細書において「米成分」とは、もち米粉、うるち米粉(「上新粉」とも呼ばれる)、だんご粉および白玉粉からなる群より選ばれる1種以上の米粉をいう。上記米成分は、上記米粉を主成分とする限り、上記米粉に馬鈴薯、小麦、オーツ麦、わらび、葛、小豆およびインゲンからなる群より選ばれる1以上の澱粉質の粉末を含んでいてもよい。ここで「米成分は、米粉を主成分とする」とは、米成分における米粉の含有量が50質量%を超えることを意味する。
【0017】
〔餅様食品〕
本実施形態に係る餅様食品は、米成分と、ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方である加工澱粉と、サイリウムシードガムと、ゼラチンとを含む餅様食品である。上記餅様食品において糖質量は、餅様食品100g当たり35g以下である。このような特徴を備える餅様食品は、餅本来の食感および風味を維持しつつ低糖質化を果たすことができる。ここで本明細書において「餅本来の食感」とは、餅特有のもっちり感、弾力感、ねばり感などの粘弾力がある食感をいうものとし、わらびもちのようなゲル片を感じる食感とは異なる。
【0018】
本発明者らは、餅様食品が上記のような特徴を備える場合、餅本来の食感および風味を維持し、かつ低糖質化を果たすことができる理由を、次のように捉えている。すなわち本発明者らは、餅の糖質量が高い原因である米成分を、糖質量の低い他の食品素材と代替することによって、低糖質化した餅様食品を得ることを目的に開発を進めた。この開発過程においては、所定の容器に上記食品素材を加熱あるいは非加熱で充填することにより餅様食品を調製した場合であっても、餅本来の風味および食感が維持されることを念頭に、糖質量の低い他の食品素材を探索した。具体的には、まず米成分を代替する食品素材として、耐老化性を有する加工澱粉であるヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方、増粘多糖類の1種であるサイリウムシードガム、およびゼラチンを見出した。続けて、米成分と、上記のヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方である加工澱粉、サイリウムシードガム、およびゼラチンとを含み、糖質量を100g当たり35g以下とした餅様食品を得た。その場合、当該餅様食品は低糖質化を果たし、かつ餅本来の風味および食感を維持することを知見した。上記餅様食品においては、ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉はいずれも、もっちり感、弾力感、ねばり感などの餅本来の食感のベースとなる食感を、減量した米成分の代わりに付与することができると考えられる。サイリウムシードガムは、餅様食品全体に弾力感および強度を付与することができると考えられる。さらにゼラチンによって上記餅様食品は、ねばり感および弾力感が補強されると考えられる。以上により、本実施形態に係る餅様食品は、餅本来の食感および風味を維持し、かつ低糖質化を果たすことができると考えられる。
【0019】
上記餅様食品において糖質量は、餅様食品100g当たり25g以下であることが好ましく、餅様食品100g当たり20g以下であることがより好ましい。とりわけ上記餅様食品の糖質量が100g当たり20g以下である場合、50gの餅様食品1個を間食として喫食するとき、一般社団法人食・楽・健康協会がロカボ(登録商標)であるとして推奨する間食1食当たりの糖質量10gを達成することができる。したがって本明細書において「低糖質化を果たすことができる」とは、上記餅様食品100g当たりの糖質量が、20g以下であることを意味することがより好ましい。
【0020】
さらに上記餅様食品において熱量は、餅様食品100g当たり156Kcal以下であることが好ましい。これにより上記餅様食品は、日本食品標準成分表(八訂)に掲載される「もち」(もち100g当たりの熱量223Kcal)に比べ熱量を30%以上減らすことが可能となり、もって低糖質かつ低カロリーの餅様食品として提供することができる。上記餅様食品において熱量は、上記餅様食品100g当たり89Kcal以下であることがより好ましい。以下、本実施形態に係る餅様食品を構成する各種の食品素材について説明する。以下の説明において食品素材の各含有量は、特記する場合を除き、流通時における含有量を意味するものとする。
【0021】
<米成分>
本実施形態に係る餅様食品は、米成分を含む。上述のように本明細書において「米成分」とは、もち米粉、うるち米粉、だんご粉および白玉粉からなる群より選ばれる1種以上の米粉をいう。さらに米成分は、上記米粉に加え、馬鈴薯、小麦、オーツ麦、わらび、葛、小豆およびインゲンからなる群より選ばれる1種以上の澱粉質の粉末を含んでいてもよい。上記米成分は、それ自身が炭水化物であって低糖質化に寄与する成分ではないものの、上記餅様食品においては、後述の加工澱粉とともに餅本来の食感を付与することができる。上記米成分は、従来の餅にも用いられている素材であってもよい。上記米成分は、上記群より選ばれる1種の米粉を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。とりわけ上記米成分は、もち米粉を含むことが好ましい。これにより餅様食品に対し、容易に餅本来の食感を付与することができる。
【0022】
上記餅様食品において、米成分の含有量は、3質量%以上10質量%以下であることが好ましい。上記米成分の含有量が3質量%未満となる場合、餅本来の食感を付与することが難しくなる恐れがある。上記米成分の含有量が10質量%を超える場合、後述する加工澱粉等と合計した糖質量が、餅様食品100g当たり35gを上回る可能性がある。上記餅様食品において、米成分の含有量は、3質量%以上4.6質量%以下であることが好ましい。上記餅様食品において米成分が含まれることは、顕微鏡等を用いて米デンプン特有の微細なデンプン粒を観察することにより確認することができる。
【0023】
<加工澱粉>
本実施形態に係る餅様食品は、ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方である加工澱粉を含む。上記餅様食品は、ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉のいずれか一方を含んでいてもよく、その両者を含んでいてもよい。上記加工澱粉は、それ自身が炭水化物であって低糖質化に寄与する成分ではないものの、上記餅様食品においては、上述のようにもっちり感、弾力感、ねばり感などの餅本来の食感のベースとなる食感を付与することができる。
【0024】
上記餅様食品において、上記加工澱粉の含有量は、7質量%以上17質量%以下であることが好ましい。上記加工澱粉の含有量が7質量%未満となる場合、餅本来の食感を付与することが難しくなる恐れがある。上記加工澱粉の含有量が17質量%を超える場合、上述した米成分等と合計した糖質量が、餅様食品100g当たり35gを上回る可能性がある。上記餅様食品において、加工澱粉の含有量は、11質量%以上16.7質量%以下であることが好ましい。上記餅様食品において上記の加工澱粉が含まれること等は、たとえば顕微鏡観察等の従来公知の適宜の方法により確認することができる。
【0025】
(ヒドロキシプロピル澱粉)
上記餅様食品において加工澱粉としては、ヒドロキシプロピル澱粉(以下、「HPS」とも記す)を含むことができる。とりわけHPSを含むことにより、上記餅様食品はもっちり感が得られるとともに、べたつき感が抑えられる。
【0026】
上記HPSとは、澱粉を酸化プロピレンでエーテル化することにより得られる加工澱粉である。上記HPSとしては、第9版食品添加物公定書に記載されているヒドロキシプロピル澱粉の規格を満たすものである限り、制限することなく上記餅様食品に適用することができる。上記HPSを得るための起源原料としては、馬鈴薯、タピオカ、コーン、ワキシーコーン、小麦、米、甘藷(サツマイモ)、サゴなどの従来公知の原料(澱粉)を特に制限することなく用いることができる。とりわけ粘度が100mPa・s以上であるHPSを、上記餅様食品に適用することが好ましい。またHPSの粘度は、HPS5質量%および砂糖10質量%を水で分散することにより分散液を得、当該分散液を80℃で10分間、加熱撹拌することにより溶解して試料を得た後、当該試料を80℃、60rpmで30秒間撹拌しながら、B型粘度計を用いることにより求めることができる。
【0027】
(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉)
上記餅様食品において加工澱粉としては、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(以下、「HPDP」とも記す)を含むことができる。とりわけHPDPを含むことにより、上記餅様食品はより優れたもっちり感が得られる。
【0028】
上記HPDPとは、澱粉をトリメタリン酸ナトリウムまたはオキシ塩化リンでエステル化し、かつ酸化プロピレンでエーテル化することにより得られる加工澱粉である。HPDPとしては、第9版食品添加物公定書に記載されているヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の規格を満たすものである限り、制限することなく上記餅様食品に適用することができる。上記HPDPを得るための起源原料としては、馬鈴薯、タピオカ、コーン、ワキシーコーン、小麦、米、甘藷(サツマイモ)、サゴなどの従来公知の原料(澱粉)を特に制限することなく用いることができる。この中でHPDPを得るための起源原料としては、より優れたもっちり感を得る観点から、タピオカ由来の原料(澱粉)が好ましい。上記餅様食品に用いられるHPDPの粘度については、100mPa・s以上であることが好ましい。HPDPの粘度については、上述したHPSの粘度測定方法と同じ要領により求めることができる。
【0029】
<サイリウムシードガム>
本実施形態に係る餅様食品は、サイリウムシードガムを含む。上記サイリウムシードガムは、オオバコ科ブロンドサイリウム(Plantago ovata Forskal)または同種植物の種子外皮に含まれる中性多糖類である。サイリウムシードガムは食物繊維に分類されるため、糖質量としては換算されない。サイリウムシードガムは上記餅様食品に対し、ゲル片を感じるような食感を付与することなく、全体として弾力感および強度を付与することができる。
【0030】
サイリウムシードガムは、上記種子外皮の粉砕物を温水または熱水にて抽出することにより得られる。さらに上記抽出によって得られたサイリウムシードガムは、濾過等によって精製される場合がある。上記餅様食品においてサイリウムシードガムは、精製の有無に関わらず用いることが可能であるが、精製度が低い方がもっちり感等の粘弾力を形成しやすいので好ましい。また未精製または精製度の低いサイリウムシードガムを用いた場合、餅様食品に含まれる不溶性固形分の沈殿抑制効果も得られるので好ましい。そのような好ましいサイリウムシードガムとしては、抽出工程を経ず、原料となる種皮を粉砕して殺菌しただけの製品、種皮を加熱や酸、酵素を使用することにより粘度を僅かに低減させた製品などを例示することができる。
【0031】
上記餅様食品において、上記サイリウムシードガムの含有量は、2質量%以上4質量%以下であることが好ましい。上記サイリウムシードガムの含有量が2質量%未満となる場合、餅様食品全体に対して弾力感および強度を付与することが難しくなる恐れがある。本発明者らは、上記サイリウムシードガムの含有量を1.5質量%として餅様食品を調製したところ、餅様食品に対して望ましい弾力感および強度を付与することができず、餅本来の食感を得ることが難しくなる恐れがあることを確認している。上記サイリウムシードガムの含有量が4質量%を超える場合、原料由来の異味が発生する恐れがあり、ゲル片を感じる食感を付与する恐れもある。上記餅様食品においてサイリウムシードガムの含有量は、2.5質量%以上3.8質量%以下であることが好ましい。上記餅様食品において上記のサイリウムシードガムが含まれること等は、従来公知の方法により確認することができる。
【0032】
<ゼラチン>
本実施形態に係る餅様食品は、ゼラチンを含む。本明細書において「ゼラチン」とは、コラーゲンの三重らせん構造が熱変性、酸変性等によってほどけたポリペプチドを意味する。具体的には、以下の第1群~第6群からなる群より選ばれる少なくとも1種を由来とするコラーゲンを、脱脂処理、脱灰処理、塩酸、硫酸などの無機酸を用いた酸処理もしくは石灰などの無機塩基を用いたアルカリ処理、または熱水抽出処理等の従来公知の処理を施すことにより得ることができる。一般に、無機酸を用いて処理することにより得たゼラチンを酸処理ゼラチンと称し、無機塩基を用いて処理することにより得たゼラチンをアルカリ処理ゼラチンと称する。酸処理ゼラチンは、pH8~9が等イオン点であり、上記等イオン点が示すpH領域はブロードとなる。これに対し、アルカリ処理ゼラチンは、ほぼpH5が等イオン点であり、上記等イオン点が示すpH領域は非常にシャープとなる。上記餅様食品に含まれるゼラチンとしては、上記アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチンのどちらも用いることができる。
【0033】
ゼラチンは、微生物を用いた発酵法により得たポリペプチド、化学合成または遺伝子組換え操作により得たリコンビナントポリペプチドまたは合成されたポリペプチドであってもよい。また「コラーゲン」とは、以下の第1群~第6群に分類される脊椎動物の皮膚などにおける細胞外基質を由来とするタンパク質をいう。コラーゲンは、3本のペプチド鎖からなる右巻きのらせん構造を有し、そのペプチド鎖を構成するアミノ酸残基は、グリシン残基が3残基ごとに繰り返される一次構造(所謂コラーゲン様配列)を有している。
第1群:牛の皮、皮膚、骨、軟骨および腱からなる群
第2群:豚の皮、皮膚、骨、軟骨および腱からなる群
第3群:羊の皮、皮膚、骨、軟骨および腱からなる群
第4群:鶏の皮、皮膚、骨、軟骨および腱からなる群
第5群:ダチョウの皮、皮膚、骨、軟骨および腱からなる群
第6群:魚の骨、皮および鱗からなる群。
【0034】
上記ゼラチンのゼリー強度(JIS K 6503:2001(にかわ及びゼラチン)に規定)は、特に限定されない。ただし、より良いもっちり感等の粘弾力感を付与する観点から、ゼリー強度が100~300gであるゼラチンを用いることが好ましく、ゼリー強度が150~250gであるゼラチンを用いることがより好ましい。ゼラチンはアミノ酸からなるため、糖質量としては換算されない。ゼラチンは上記餅様食品に対し、加工澱粉によって付与されたもっちり感、ねばり感等の餅本来の食感、およびサイリウムシードガムによって付与された弾力感および強度をそれぞれ補強することができる。
【0035】
上記餅様食品において、上記ゼラチンの含有量は、0.4質量%以上1質量%以下であることが好ましい。上記ゼラチンの含有量が0.4質量%未満となる場合、もっちり感、弾力感および強度等の補強が難しくなる恐れがある。本発明者らは、上記ゼラチンの含有量を0.1質量%として餅様食品を調製したところ、餅様食品に対して望ましいもっちり感、弾力感および強度を付与することができず、餅本来の食感を得ることが難しくなる恐れがあることを確認している。上記ゼラチンの含有量が1質量%を超える場合、硬さを感じる食感を付与する恐れがある。さらに熱量が大きくなる可能性もある。上記餅様食品においてゼラチンの含有量は、0.4質量%以上0.7質量%以下であることが好ましい。上記餅様食品においてゼラチンが含まれることおよびその含有量は、ハイドロキシプロリン定量等の公知の方法により測定することができる。
【0036】
<その他の成分>
(水溶性食物繊維)
上記餅様食品は、水溶性食物繊維をさらに含むことが好ましい。水溶性食物繊維を含むことにより、上記餅様食品は、餅本来の食感および風味を損なうことなく、上記米成分、加工澱粉、サイリウムシードガムおよびゼラチンの混合時の分散性を向上させることができる。これにより、これらの成分を均一に混合することを可能として餅様食品を容易に調製することができる。すなわち水溶性食物繊維は、上記餅様食品において分散剤として機能することができる。水溶性食物繊維は、食物繊維に分類されるため、糖質量としては換算されない。
【0037】
本明細書において「食物繊維」とは、ヒトの消化酵素によって消化されにくい食物中の難消化性成分の総称をいう。とりわけ「水溶性食物繊維」とは、上記食物繊維のうち水溶性のものをいい、水溶化した場合に液体に粘性を与える性質を有する。上記水溶性食物繊維に分類される成分としては、たとえば植物、藻類および菌類中のペクチン、アルギン酸、フコイダン等、植物中の多糖類として分類されるグルコマンナン、イヌリン等、難消化性デキストリンおよびポリデキストロース等を挙げることができる。上記餅様食品は、水溶性食物繊維として上述した成分をいずれも用いることができ、かつ上記成分を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記水溶性食物繊維の含有量は、上述した作用を奏する観点から、0質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0038】
(さらしあん)
上記餅様食品は、さらしあんをさらに含むことが好ましい。さらしあんを含むことにより、上記餅様食品は、餅本来の食感および風味を適切に維持することができる。さらしあんは、後述するように原料が小豆等の豆類であるため、小豆等に含まれる食物繊維を除いた炭水化物に係る成分については、糖質量として換算される。このため上記さらしあんの含有量は、上述した作用を奏し、かつ低糖質化を果たす観点から、0質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上6質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
さらしあんとは、乾燥した粉末状のあん(餡)をいう。さらしあんは、小豆などの原料豆を水で煮崩れるまで煮た後、蒸らし、すりつぶし、木綿袋等で水切りすることにより生餡を得、引き続き上記生餡を乾燥し、粉末とすることによって得ることができる。さらに市場より入手することもできる。
【0040】
(増粘多糖類)
上記餅様食品は、増粘多糖類をさらに含むことが好ましい。増粘多糖類を含むことにより、上記餅様食品は、餅本来の食感および風味を適切に維持することができる。具体的には上記増粘多糖類としては、上述した作用を奏する観点から、ペクチン、CMC(カルボキシメチルセルロース)、アルギン酸エステル、キサンタンガム、アラビアガムおよびラムダカラギーナン、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、ローカストビーンガム、タラガム、グァーガム、ジェランガム、グルコマンナン、タマリンドシードガム、寒天、アルギン酸ナトリウム、アグロバクテリウムスクシノグリカン等を例示することができる。上記餅様食品は、増粘多糖類として上述した成分をいずれも用いることができ、かつ上記成分を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。とりわけ上記餅様食品は、増粘多糖類としてキサンタンガムを含むことにより、餅特有の粘りを増強することができるので、より好ましい。増粘多糖類は食物繊維に分類されるため、糖質量としては換算されない。上記増粘多糖類の含有量は、上述した作用を奏する観点から、0質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0041】
ここで上記増粘多糖類は、その種類によっては上述した水溶性食物繊維としても作用する場合がある。このような場合であっても増粘多糖類の含有量は、作用の如何に関わらず、水溶性食物繊維との合計で0質量%以上30質量%以下とすることができ、5質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。
【0042】
(その他の添加物)
上記餅様食品は、本発明の課題およびその効果に悪影響を及ぼさない範囲で、その他の添加物を含むことができる。その他の添加物としては、クエン酸などのpH調整剤、香料、着色料、粉糖などの甘味料、保存料、増粘剤、酸味料、調味料、乳化剤、栄養強化剤などを挙げることができる。
【0043】
<食品>
上記餅様食品は、各種の食品の素材として用いることが可能である。すなわち本実施形態として、上記餅様食品が食品素材として含まれる食品を提供することができる。たとえば上記餅様食品に醤油、海苔等を付して喫食する態様とした食品、上記餅様食品を食品素材として小豆汁とともに喫食するぜんざいまたはしるこのような態様とした食品を例示することができる。上記餅様食品は、汁物、和菓子、洋菓子、デザートなどの各種料理の食品素材として用いることができる。本実施形態に係る食品に含まれる餅様食品の比率としては、特に限定されることないが、たとえば1~100質量%とすることが好ましい。
【0044】
〔餅様食品の製造方法〕
本実施形態に係る餅様食品は、上述した米成分と、ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方である加工澱粉と、サイリウムシードガムと、ゼラチンと用い、従来公知の混合方法等を適切に用いることにより製造することができる場合がある。しかしながら製造後あるいは入手後において直ちに喫食でき、かつ常温での長期保存を実現することができる餅様食品については、たとえば次の製造方法を用いることによって得ることが好ましい。
【0045】
すなわち本実施形態に係る餅様食品の製造方法は、米成分と、ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方である加工澱粉と、サイリウムシードガムと、ゼラチンとを準備する工程(第1工程)と、上記米成分、上記加工澱粉、上記サイリウムシードガムおよび上記ゼラチンを混合することにより、混合物を得る工程(第2工程)と、上記混合物に対し、レトルト殺菌処理またはそれと同等以上の加圧加熱処理を実行することにより、餅様食品を得る工程(第3工程)とを含むことが好ましい。以下、各工程について説明する。
【0046】
<第1工程>
第1工程は、米成分と、ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方である加工澱粉と、サイリウムシードガムと、ゼラチンとを準備する工程である。第1工程は、餅様食品を製造するのに必要な各種の材料を準備することを目的とする。第1工程においては、米成分、ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方である加工澱粉およびサイリウムシードガムは、それぞれ市場より入手することによって準備することができる。さらにゼラチンについては、上述のように牛、豚などの哺乳動物の骨または皮部分、サメ、ティラピアなどの魚類の骨、皮または鱗部分などのコラーゲンを含有する材料を、塩酸、硫酸などの無機酸もしくは石灰などの無機塩基を用いて処理することにより準備することができる。このようなゼラチンとして、たとえば牛の骨部分から無機塩基を用いて処理することにより得た市販のアルカリ処理ゼラチン(商品名:「SRC」、新田ゼラチン株式会社製)を用いることができる。
【0047】
第1工程においては、上記米成分、上記加工澱粉、上記サイリウムシードガムおよび上記ゼラチンととともに、水溶性食物繊維、さらしあん、増粘多糖類などの餅本来のより好ましい食感等を餅様食品において得るための成分も併せて準備することが好ましい。水溶性食物繊維、さらしあん、増粘多糖類などの成分についても市場より入手することにより準備することができる。
【0048】
<第2工程>
第2工程は、上記米成分、上記加工澱粉、上記サイリウムシードガムおよび上記ゼラチンを混合することにより、混合物を得る工程である。第2工程は、後述する第3工程にて加圧加熱処理を実行する対象物を得ることを目的とする。換言すれば、第2工程は、後述する加圧加熱処理を実行する対象物となる混合物を、餅様食品の前駆体として得る工程である。第2工程においては、具体的には所定量の上記米成分、上記加工澱粉、上記サイリウムシードガムおよび上記ゼラチンをそれぞれ、たとえば水に加え、従来公知の方法にて混合することにより、これらの材料を水に均一に溶解または分散する。さらに上記材料とともに、必要に応じて水溶性食物繊維、さらしあん、増粘多糖類など好ましい餅様食品を得るための成分も併せて水に均一に溶解または分散することが好ましい。その際、熱を加えることなく室温付近の温度(たとえば15~25℃、つまり非加熱)にて、これらの材料を水に均一に溶解または分散してもよく、水に均一に溶解または分散した後に熱を加えてもよく、熱を加えた温水または沸騰水に、これらの材料を水に均一に溶解または分散してもよい。これにより上記餅様食品の前駆体としての混合物を得ることができる。
【0049】
上記混合物を得るために水に加える上記米成分、上記加工澱粉、上記サイリウムシードガムおよび上記ゼラチンの配合量については、上記餅様食品100g当たりの糖質量が35g以下となるように、それぞれの成分を適宜調整することができる。たとえば上記混合物中の上記米成分の含有量は、3質量%以上10質量%以下であることが好ましい。上記混合物中の上記ゼラチンの含有量は、0.4質量%以上1質量%以下であることが好ましい。上記混合物中の上記加工澱粉の含有量は、7質量%以上17質量%以下であることが好ましい。さらに上記サイリウムシードガムの含有量は、2質量%以上4質量%以下であることが好ましい。
【0050】
<第3工程>
第3工程は、上記混合物に対し、レトルト殺菌処理またはそれと同等以上の加圧加熱処理を実行することにより、餅様食品を得る工程である。第3工程は、上述した加圧加熱処理を用いることによって、上記混合物から餅本来の食感および風味を備えた餅様食品を調製することを目的とする。本明細書において「レトルト殺菌処理」とは、食品衛生法(昭和22年法律第233号)で定められた「容器包装詰加圧加熱殺菌食品」を得るために実行される加圧加熱殺菌処理をいう。具体的には、pHが4.6を超え、水分活性が0.94を超える食品に対して微生物を死滅させるために実行される「中心部の温度を120℃として4分間加熱する方法、またはこれと同等以上の効力を有する方法」を意味する。
【0051】
第3工程では、具体的には上記混合物を所定の耐熱耐圧容器に充填し、さらに上記耐熱耐圧容器を密封した後、当該耐熱耐圧容器をレトルト殺菌機(商品名:「小型高温高圧調理殺菌装置 40R-II型」、日本バイオコン株式会社)用いてたとえば0.18MPaおよび120℃の条件下で20分間の加圧加熱処理を実行する。あるいは上記加圧加熱処理は、0.15MPaおよび120℃の条件下で25分間の加圧加熱処理等であっても好ましい。これにより、上記耐熱耐圧容器内にて餅本来の食感および風味を備えた餅様食品を得ることができる。上記耐熱耐圧容器の密封を解いた後、上記餅様食品を直ちに喫食することが可能である。上記餅様食品は、上記耐熱耐圧容器内にて密封して保存する限り、常温下であっても腐敗の進行が防止される。
【0052】
以上より、本実施形態に係る餅様食品を得ることができる。上記餅様食品は、餅本来の食感および風味を備えている。さらに上記餅様食品は、レトルト殺菌処理の手法を用いて製造されているため、入手後、直ちに喫食でき、かつ常温での長期保存を実現することができる。
【0053】
ここで本実施形態に係る餅様食品は、上記第3工程にて実行される加圧加熱処理を経ることなく得ることも可能である。たとえば、上記第1工程および第2工程を経ることにより上記混合物を得た後、当該混合物を100℃で25~40分蒸すことにより餅様食品を得ることができる。その後、上記餅様食品をたとえば0~10℃で冷蔵保存することができる。さらに上記混合物を100℃で25~40分蒸すことにより得た餅様食品を、たとえば-40~-10℃で冷凍保存することもできる。
【0054】
〔食品組成物〕
本実施形態に係る食品組成物は、米成分と、ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方である加工澱粉と、サイリウムシードガムと、ゼラチンとを含む。このような特徴を備える食品組成物は、餅本来の食感および風味を維持しつつ低糖質化を果たすことができる餅様食品を製造するのに用いることができる。とりわけ上記食品組成物に含まれる上記米成分、上記加工澱粉、上記サイリウムシードガムおよび上記ゼラチンの量を適宜調整することにより、上記食品組成物を用いて100g当たりの糖質量を35g以下とした餅様食品を製造することができる。上記食品組成物は、上記米成分、上記加工澱粉、上記サイリウムシードガムおよび上記ゼラチンの各成分ととともに、餅本来のより好ましい食感等を付与することができる水溶性食物繊維、さらしあん、増粘多糖類などの成分を含むことが好ましい。
【0055】
上記食品組成物に含まれる上記米成分、上記加工澱粉、上記サイリウムシードガムおよび上記ゼラチン、ならびに上記水溶性食物繊維、上記さらしあん、上記増粘多糖類の各成分の内容については、〔餅様食品〕の項目で説明した各成分のそれらに対応するので、重複する説明は、繰り返さない。
【0056】
〔食品添加用組成物〕
本実施形態に係る食品添加用組成物は、ヒドロキシプロピル澱粉およびヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の両方またはいずれか一方である加工澱粉と、サイリウムシードガムと、ゼラチンとを含む。このような特徴を備える食品添加用組成物は、これと米成分とにより、餅本来の食感および風味を維持しつつ低糖質化を果たすことができる餅様食品を製造するのに用いることができる。とりわけ上記食品添加用組成物に含まれる上記加工澱粉、上記サイリウムシードガムおよび上記ゼラチンの量、ならびに上記米成分の量を適宜調整することにより、上記食品添加用組成物を用いて100g当たりの糖質量を35g以下とした餅様食品を製造することができる。上記食品添加用組成物は、上記加工澱粉、上記サイリウムシードガムおよび上記ゼラチンの各成分ととともに、餅本来のより好ましい食感等を付与することができる水溶性食物繊維、さらしあん、増粘多糖類などの成分を含むことが好ましい。
【0057】
上記食品添加用組成物に含まれる上記加工澱粉、上記サイリウムシードガムおよび上記ゼラチン、ならびに上記水溶性食物繊維、上記さらしあん、上記増粘多糖類の各成分の内容については、上記の〔餅様食品〕の項目で説明した各成分のそれらに対応するので、重複する説明は、繰り返さない。餅様食品を製造するために、上記食品添加用組成物とともに用いる米成分の内容についても、上記の〔餅様食品〕の項目で説明した米成分のそれに対応するので、重複する説明は、繰り返さない。
【実施例
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下に説明する試料Aおよび試料Bは、従来から知られる一般な餅の組成を有する参考例である。試料1~試料9、試料22~試料26および試料32~試料36は、本発明の範囲に属する餅様食品の組成を有する実施例であり、試料101~試料109は比較例である。
【0059】
〔餅様食品を構成する各種の材料の説明〕
以下に説明する各試料に必要に応じ配合される米成分は、市販のもち粉(商品名:「玉川 季節を手づくり もち粉」、川光物産株式会社製)である。
【0060】
以下に説明する各試料に必要に応じ配合されるゼラチンは、次のとおりである。すなわち本実施例では、ゼラチンとして必要に応じ、以下のいずれかを用いることにより各試料を調製した。
ゼラチンA:商品名「SRC」、新田ゼラチン株式会社製、ゼリー強度250、アルカリ処理
ゼラチンB:商品名「APH-250」、新田ゼラチン株式会社製、ゼリー強度250、酸処理
ゼラチンC:商品名「NC」、新田ゼラチン株式会社製、ゼリー強度150、アルカリ処理。
【0061】
以下に説明する各試料に必要に応じ配合される加工澱粉(HPDP、HPS、リン酸架橋澱粉および難消化性澱粉は、いずれも市販品である。なお各加工澱粉が有する粘度は、次のとおりである。本実施例においては、加工澱粉として必要に応じ、以下のいずれかを用いることにより各試料を調製した。
HPDP:粘度1512mPa・s
HPS:粘度489mPa・s
リン酸架橋澱粉:粘度289mPa・s
難消化性澱粉:粘度8.9mPa・s。
【0062】
以下に説明する各試料に必要に応じ配合されるサイリウムシードガムは、市販品である。
【0063】
<第1試験:レトルト殺菌することにより得た餅様食品>
(試料Aの調製)
市販の餅(商品名:「サトウの切り餅」、サトウ食品株式会社製)を市場から入手することにより試料Aの餅様食品を得た。試料Aの糖質量および熱量は、表1に示したとおりである。なお表1に示した糖質量および熱量は、小数点以下について四捨五入をすることにより整数で表記した。
【0064】
(試料Bの調製)
市販の米粉(商品名「玉川 季節を手づくり もち粉」、川光物産株式会社製)と、20℃の水とを表1に示す質量比率で混合することにより、分散液を得た。さらに上記分散液を所定の耐熱耐圧容器(直径72mm×高さ26mmのポリプロピレン製円筒形容器)に充填し、これを密封した後、当該耐熱耐圧容器をレトルト殺菌機(商品名:「小型高温高圧調理殺菌装置 40R-II型」、日本バイオコン株式会社)を用いて0.18MPaおよび120℃の条件下で20分間の加圧加熱処理を実行した。その後、20℃にて一晩以上保管した。これにより試料Bの餅様食品を得た。試料Bの糖質量および熱量は、表1に示したとおりである。
【0065】
(試料1の調製)
表1に示す量(質量%)のもち粉、HPDP、ゼラチンAおよびサイリウムシードガムを準備した(第1工程)。さらに表1に示す質量比率で上記もち粉、HPDP、ゼラチンAおよびサイリウムシードガムと、20℃の水とで100質量%となるように、かつ加熱することなく室温(25℃)にて混合することにより、混合物を得た(第2工程)。さらに上記混合物を試料Bの調製にて用いた耐熱耐圧容器、およびレトルト殺菌機を用いて0.18MPaおよび120℃の条件下で20分間の加圧加熱処理を実行した(第3工程)。その後、20℃にて一晩以上保管した。これにより試料1の餅様食品を得た。試料1の糖質量および熱量は、表1に示したとおりである。
【0066】
(試料2、試料4、試料5および試料9の調製)
第1工程において表1に示す量(質量%)のもち粉、HPDP、ゼラチンAおよびサイリウムシードガムに加え、水溶性食物繊維として市販されている難消化性デキストリンを表1に示す量(質量%)準備したこと以外、試料1の調製方法と同じ要領によって試料2、試料4、試料5および試料9の餅様食品を得た。試料2、試料4、試料5および試料9の糖質量および熱量は、表1に示したとおりである。
【0067】
(試料3の調製)
第1工程において表1に示す量(質量%)のもち粉、HPS、ゼラチンAおよびサイリウムシードガムに加え、水溶性食物繊維として市販されている難消化性デキストリンを表1に示す量(質量%)準備したこと以外、試料1の調製方法と同じ要領によって試料3の餅様食品を得た。試料3の糖質量および熱量は、表1に示したとおりである。
【0068】
(試料6の調製)
第1工程において表1に示す量(質量%)のもち粉、HPDP、ゼラチンA、サイリウムシードガムおよび水溶性食物繊維に加え、さらしあん(商品名:「細川 上白こしあん」、川光商事株式会社)、市販されているキサンタンガムおよび粉糖を表1に示す量(質量%)準備したこと以外、試料1の調製方法と同じ要領によって試料6の餅様食品を得た。試料6の糖質量および熱量は、表1に示したとおりである。
【0069】
(試料7および試料8の調製)
第1工程においてゼラチンAに代えてゼラチンBまたはゼラチンCを準備したこと以外、試料2の調製方法と同じ要領によって試料7および試料8の餅様食品を得た。試料7および試料8の糖質量および熱量は、表1に示したとおりである。
【0070】
(試料101~試料109の調製)
第1工程において表2に示す量(質量%)のもち粉、HPDP、ゼラチンA、サイリウムシードガムおよび水溶性食物繊維に加え、必要に応じて試料6の調製に用いたさらしあんおよび粉糖、ならびにκカラギーナン(市販品)、ιカラギーナン(市販品)、ローカストビーンガム(市販品)、塩化カリウム(市販品)、リン酸架橋澱粉(市販品)、難消化性澱粉(市販品)、タマリンドシードガム(市販品)、寒天(市販品)および大豆蛋白(市販品)を表2に示す量(質量%)準備したこと以外、試料1の調製方法と同じ要領によって試料101~試料109の餅様食品を得た。試料101~試料109の糖質量および熱量は、表1に示したとおりである。
【0071】
ここで試料101~試料109の餅様食品において必要に応じて配合されたκカラギーナン、ιカラギーナン、ローカストビーンガムおよびタマリンドシードガムは、増粘多糖類であって、餅様食品にサイリウムシードガムを配合することによる作用効果を評価する目的があった。試料101~試料109の餅様食品において必要に応じて配合されたリン酸架橋澱粉および難消化性澱粉は、加工澱粉であって、餅様食品にHPDPおよびHPSの両方またはいずれか一方を配合することによる作用効果を評価する目的があった。試料101~試料109の餅様食品において必要に応じて配合された寒天および大豆蛋白は、餅様食品にゼラチンを配合することによる作用効果を評価する目的があった。
【0072】
<第1試験:官能評価等>
上記試料A~試料B、試料1~試料9および試料101~試料109の餅様食品について、20~50代の男女5名からなるパネラーが喫食することにより、「非加熱時食感」、「異味異臭がないこと」および「餅本来の風味」の項目に関して官能評価を行った。各項目における評価基準は以下のとおりである。さらに各成分の製造後(レトルト殺菌後)の均一分散性を目視にて評価した。結果を表1~表2に示す。
【0073】
(非加熱時食感)
餅様食品の製造後(レトルト殺菌後)、20℃にて一晩以上保管した各試料に対して加熱調理等をすることなく、そのまま喫食した。その場合において「餅らしい食感を有する」と評価したパネラーの人数が、4名以上であるときに「VG(ベリーグッド)」と評価し、3名であるときに「G(グッド)」と評価し、2名以下であるときに「NG(ノットグッド)」と評価した。
【0074】
(異味異臭がないこと)
餅様食品の製造後(レトルト殺菌後)、20℃にて一晩以上保管した各試料に対して加熱調理等をすることなく、そのまま喫食した。その場合において「異味異臭がない」と評価したパネラーの人数が、4名以上であるときに「VG(ベリーグッド)」と評価し、3名であるときに「G(グッド)」と評価し、2名以下であるときに「NG(ノットグッド)」と評価した。
【0075】
(餅本来の風味)
餅様食品の製造後(レトルト殺菌後)、20℃にて一晩以上保管した各試料に対して加熱調理等をすることなく、そのまま喫食した。その場合において「餅らしい風味を有する」と評価したパネラーの人数が、4名以上であるときに「VG(ベリーグッド)」と評価し、3名であるときに「G(グッド)」と評価し、2名以下であるときに「NG(ノットグッド)」と評価した。
【0076】
(レトルト殺菌後の均一分散性)
餅様食品の製造後(レトルト殺菌後)、20℃にて一晩以上保管した各試料に対し、添加した材料が均一に分散されているかどうかを目視評価した。その場合において「良好に分散されている」と評価したパネラーの人数が、過半数を超えたときに「Y(肯定的)」と評価し、2名以下であるときに「N(否定的)」と評価した。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
<第1試験:考察>
表1~表2によれば、試料1~試料9の餅様食品は、米成分、所定の加工澱粉、ゼラチンおよびサイリウムシードガムを含むことにより、餅本来の食感および風味を維持し、かつ低糖質化を果たすことができると理解される。一方、試料101~試料109の餅様食品は、米成分、所定の加工澱粉、ゼラチンおよびサイリウムシードガムの少なくともいずれかを含まないことにより、仮に低糖質化を果たすことができたとしても、餅本来の食感および風味を維持することが困難となることが理解される。
【0080】
<第2試験:蒸し調理後に冷蔵保存した餅様食品>
(試料22の調製)
第1試験における試料2の餅様食品を調製するに際して第3工程に代えて、第2工程にて得た上記混合物を第1試験で用いた耐熱耐圧容器に満たし、100℃で25分間蒸すことにより餅様食品を調製した。その後、5℃にて一晩以上冷蔵保管することにより、試料22の餅様食品を得た。
【0081】
(試料23~試料26の調製)
試料22の餅様食品の調製と同じ要領で、第1試験における試料3、試料4、試料5および試料6の餅様食品を調製するに際して第3工程に代えて、第2工程にて得た各試料の上記混合物を100℃で25分間蒸すことにより餅様食品を調製した。その後、5℃にて一晩以上冷蔵保管することにより、試料23、試料24、試料25および試料26の餅様食品を得た。
【0082】
<第2試験:官能評価等>
試料22~試料26の餅様食品について、第1試験と同じ要領および同じ評価基準により、「非加熱時食感」、「異味異臭がないこと」および「餅本来の風味」の項目に関して官能評価を行った。さらに各成分の製造後(蒸し調理後)の均一分散性を目視にて評価した。この目視評価の評価基準も第1試験の「レトルト殺菌後の均一分散性」と同じとした。結果を表3に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
<第2試験:考察>
表3によれば、試料22~試料26の餅様食品は、蒸し調理後に冷蔵保存した場合であっても餅本来の食感および風味を維持し、かつ低糖質化を果たすことができると理解される。
【0085】
<第3試験:蒸し調理後に冷凍保存した餅様食品>
(試料32の調製)
第1試験における試料2の餅様食品を調製するに際して第3工程に代えて、第2工程にて得た上記混合物を第1試験で用いた耐熱耐圧容器に満たし、100℃で25分間蒸すことにより餅様食品を調製した。その後、5℃にて冷却して固化した後、-20℃にて一晩以上冷凍保管することにより、試料32の餅様食品を得た。
【0086】
(試料33~試料36の調製)
試料32の餅様食品の調製と同じ要領で、第1試験における試料3、試料4、試料5および試料6の餅様食品を調製するに際して第3工程に代えて、第2工程にて得た各試料の上記混合物を100℃で25分間蒸すことにより餅様食品を調製した。その後、5℃にて冷却して固化した後、-20℃にて一晩以上冷凍保管することにより、試料33、試料34、試料35および試料36の餅様食品を得た。
【0087】
<第3試験:官能評価等>
試料32~試料36の餅様食品について、第1試験と同じ要領および同じ評価基準により、「非加熱時食感」、「異味異臭がないこと」および「餅本来の風味」の項目に関して官能評価を行った。さらに各成分の製造後(蒸し調理後)の均一分散性を目視にて評価した。この目視評価の評価基準も第1試験の「レトルト殺菌後の均一分散性」と同じとした。結果を表4に示す。
【0088】
【表4】
【0089】
<第3試験:考察>
表4によれば、試料32~試料36の餅様食品は、蒸し調理後に冷凍保存した場合であっても餅本来の食感および風味を維持し、かつ低糖質化を果たすことができると理解される。
【0090】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0091】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。