(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】拡声装置
(51)【国際特許分類】
H04R 27/00 20060101AFI20240704BHJP
H03F 1/02 20060101ALI20240704BHJP
H03F 3/20 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
H04R27/00 Z
H03F1/02 111
H03F3/20
(21)【出願番号】P 2022532901
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2020025737
(87)【国際公開番号】W WO2022003844
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000223182
【氏名又は名称】TOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004196
【氏名又は名称】弁理士法人ナビジョン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅田 和磨
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 亮介
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0160282(US,A1)
【文献】国際公開第2020/021591(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 27/00
H03F 1/02
H03F 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電装置から入力される直流電源の電圧変換を行う電圧変換部と、
電圧変換後の直流電源を用いて音声信号を増幅し、電気音響変換器を駆動する駆動信号を生成するパワーアンプと、
前記給電装置からの入力電力を検出する電力検出部と、
前記給電装置の供給上限電力に対応する電力判定閾値を保持する閾値保持部と、
前記入力電力及び前記電力判定閾値に基づいて、前記電圧変換部の出力電圧を制御する電圧制御部と、
前記電圧変換部及び前記パワーアンプの間に接続され、前記電圧変換部の出力電圧の低下時に前記パワーアンプに電源を供給する電荷蓄積部とを備え
、
前記電圧制御部は、前記入力電力が前記電力判定閾値を超える場合に、前記出力電圧が第1電圧となるように制御し、前記入力電力が前記電力判定閾値以下の場合に、前記出力電圧が第1電圧よりも高い第2電圧となるように制御することを特徴とする拡声装置。
【請求項2】
前記電力検出部は、前記電圧変換部の出力電流を検出する電流検出部を備え、前記電圧変換部の出力電圧及び出力電流に基づいて前記入力電力を求めることを特徴とする請求項1に記載の拡声装置。
【請求項3】
前記供給上限電力は、前記給電装置からの電源供給の開始前に、予め定められたプロトコルに基づいて、前記給電装置との間で行われるネゴシエーションにおいて決定されることを特徴とする請求項1に記載の拡声装置。
【請求項4】
前記
給電装置は、複数の電力クラスを有するIEEE802.3規格に準拠して給電を行うものであり、
IEEE802.3規格に準拠して、前記給電装置からの電源供給の開始前に前記給電装置との間で行われるネゴシエーションを通じて、前記複数の電力クラスからいずれかの電力クラスを決定するPoEインターフェース部を備え、
前記供給上限電力は、前記PoEインターフェース部により決定された電力クラスに対応する、IEEE802.3規格で定められた供給上限電力であることを特徴とする請求項1に記載の拡声装置。
【請求項5】
前記第1電圧は、前記駆動信号が最大電力である場合に、前記入力電力が前記供給上限電力を超えない値であることを特徴とする請求項1に記載の拡声装置。
【請求項6】
前記電荷蓄積部の端子電圧及び予め定められた電圧判定閾値の比較結果に基づいて、前記音声信号の振幅制限を行う振幅制限部を備え、
前記電圧判定閾値が、前記第1電圧及び前記第2電圧の間の値であることを特徴とする請求項1に記載の拡声装置。
【請求項7】
前記振幅制限部は、予め定められた振幅制限期間の経過後に終了することを特徴とする請求項6に記載の拡声装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡声装置に係り、さらに詳しくは、給電装置からの電源供給を受けて動作する拡声装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内又は屋外の放送エリア内の滞在者に対し、音声により情報を伝達する拡声放送システムが知られている。拡声放送システムは、1又は2以上の拡声装置を備える。各拡声装置は、音声信号を増幅してスピーカ駆動信号を生成するパワーアンプと、スピーカ駆動信号を音波に変換するスピーカとを備え、音声信号に応じた音声を出力する。また、拡声装置における消費電力は、その大部分がパワーアンプの消費電力である。このため、拡声装置の消費電力は、音声信号に応じて変動する。従って、外部の給電装置から電源供給を受けている場合、拡声装置への入力電力は大きく変動する。
【0003】
給電装置の電源容量に十分な余裕がある場合には、拡声装置の入力電力の変動は問題とならない。しかし、給電装置の電源容量が十分ではなく、拡声装置に供給可能な供給上限電力が拡声装置の最大消費電力よりも小さい場合がある。このような場合には、供給上限電力を超えないように、拡声装置の消費電力を抑制する必要がある。
【0004】
例えば、パワーアンプの電源電圧を低下させることにより、パワーアンプにおける消費電力を抑制することができる。しかし、電源電圧が低下すれば、スピーカ出力が低下し、放送エリア内の聴者が音声を聴別し、理解することが難しくなるという問題があった。
【0005】
しかも、電源電圧が同一であっても、正弦波の電力は、歪みのないときの「無歪最大電力」が方形波の電力の約50%であることから、電源電圧は、音声信号が方形波であっても供給上限電力を超えない値に決定しなければならない。このため、音声信号が正弦波の場合には、供給上限電力の50%しか使用することができず、給電装置の電源容量が十分でない場合、必要なスピーカ出力を確保することが難しいという問題があった。
【0006】
さらに、IEEE802.3af規格で定められるPoE(Power over Ethernet)や、その上位規格IEEE802.3atで定められるPoE+に準拠した給電装置の場合、受電装置としての拡声装置が、供給上限電力を超える電力を消費した場合、直ちに電源供給を停止し、電源供給を再開するには、拡声装置をリセットする必要がある。このため、PoEに準拠した給電装置から電源供給を受ける場合、十分なスピーカ出力を確保することが難しいという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、入力電力が給電装置の供給上限電力を超えないように電力制御を行いつつ、音声の聴別を容易にする拡声装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による第1の実施態様による拡声装置は、給電装置から入力される直流電源の電圧変換を行う電圧変換部と、電圧変換後の直流電源を用いて音声信号を増幅し、電気音響変換器を駆動する駆動信号を生成するパワーアンプと、前記給電装置からの入力電力を検出する電力検出部と、前記給電装置の供給上限電力に対応する電力判定閾値を保持する閾値保持部と、前記入力電力及び前記電力判定閾値に基づいて、前記電圧変換部の出力電圧を制御する電圧制御部と、前記電圧変換部及び前記パワーアンプの間に接続され、前記電圧変換部の出力電圧の低下時に前記パワーアンプに電源を供給する電荷蓄積部とを備える。
【0009】
このような構成を採用することにより、給電装置から入力される直流電源が、電圧変換部を介してパワーアンプに供給され、給電装置からの入力電力に基づいて、電圧変換部の出力電圧を制御することができる。このため、供給上限電力を超えないように入力電力を制御することができる。
【0010】
また、電圧変換部の出力が低下した直後には、パワーアンプに対し電荷蓄積部から電源を供給することができる。このため、給電装置からの入力電力を制限しつつ、入力電力よりも大きな電力をパワーアンプに供給することができる。
【0011】
また、連続音出力期間の少なくとも冒頭部分について、入力電力の制限を受けることなく、音声を出力することができる。このため、放送エリア内の聴者は、拡声装置から出力される音声を聴別することが容易になる。
【0012】
本発明による第2の実施態様による拡声装置は、上記構成に加えて、前記電力検出部が、前記電圧変換部の出力電流を検出する電流検出部を備え、前記電圧変換部の出力電圧及び出力電流に基づいて前記入力電力を求めるように構成される。
【0013】
本発明による第3の実施態様による拡声装置は、上記構成に加えて、前記供給上限電力が、前記給電装置からの電源供給の開始前に、予め定められたプロトコルに基づいて、前記給電装置との間で行われるネゴシエーションにおいて決定されるように構成される。
【0014】
本発明による第4の実施態様による拡声装置は、上記構成に加えて、前記供給装置が、複数の電力クラスを有するIEEE802.3規格に準拠して給電を行うものであり、IEEE802.3規格に準拠して、前記給電装置からの電源供給の開始前に前記給電装置との間で行われるネゴシエーションを通じて、前記複数の電力クラスからいずれかの電力クラスを決定するPoEインターフェース部を備え、前記供給上限電力が、前記PoEインターフェース部により決定された電力クラスに対応する、IEEE802.3規格で定められた供給上限電力であるように構成される。
【0015】
本発明による第5の実施態様による拡声装置は、上記構成に加えて、前記電圧制御部が、前記入力電力が前記電力判定閾値を超える場合に、前記出力電圧が第1電圧となるように制御し、前記入力電力が前記電力判定閾値以下の場合に、前記出力電圧が第1電圧よりも高い第2電圧となるように制御し、第1電圧が、前記駆動信号が最大電力である場合に、前記入力電力が前記供給上限電力を超えない値であるように構成される。
【0016】
本発明による第6の実施態様による拡声装置は、上記構成に加えて、前記電荷蓄積部の端子電圧及び予め定められた電圧判定閾値の比較結果に基づいて、前記音声信号の振幅制限を行う振幅制限部を備え、前記電圧判定閾値が、前記第1電圧及び前記第2電圧の間の値であるように構成される。
【0017】
本発明による第7の実施態様による拡声装置は、上記構成に加えて、前記電荷蓄積部の前記振幅制限部は、予め定められた振幅制限期間の経過後に終了するように構成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、入力電力が給電装置の供給上限電力を超えないように電力制御を行いつつ、音声の聴別を容易にする拡声装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態1による拡声装置2を含む拡声放送システム100の一構成例を示した図である。
【
図2】
図1の拡声装置2の一構成例を示したブロック図である。
【
図3】IEEE802.3af、IEEE802.3at及びIEEE802.3bt規格で定められた電力クラスと供給上限電力Pmaxとを示す図である。
【
図4】
図2の拡声装置2の動作の一例を示したタイミングチャートである。
【
図5】本発明と比較すべき比較例を示した図であり、電力制限を行わない場合のスピーカ出力が示されている。
【
図6】本発明と比較すべき比較例を示した図であり、電圧制限を行う場合のスピーカ出力が示されている。
【
図7】本発明の実施の形態2による拡声装置2の一構成例を示した図である。
【
図8】
図7の拡声装置2の動作の一例を示したタイミングチャートである。
【
図9】
図7の拡声装置2の動作の他の例を示したタイミングチャートである。
【
図10】
図7の拡声装置2の動作のさらに他の例を示したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による拡声装置2を含む拡声放送システム100の一構成例を示した図である。拡声放送システム100は、音声データを生成する音源装置1と、音声を再生する拡声装置2と、音源装置1及び拡声装置2間において音声データを中継するスイッチングハブ3とを備える。
【0021】
拡声放送システム100は、予め定められた屋内又は屋外の放送エリア内の滞在者に対し、音声により情報を伝達するシステムであり、例えば、オフィスビル、ショッピングセンター、駅、空港、学校、コンサートホール、グランドなどに設置されるPAシステム(public address system)である。情報伝達に使用される音声は、発話音、音楽、災害警報のような警報音、チャイムのような効果音などにより構成される。
【0022】
音源装置1は、音声データ又は制御データを含むパケットデータを生成する装置であり、例えば、インターネットプロトコル通信が可能なIPパケットが生成される。音声データには、マイクなどから入力される入力音声、記憶媒体に予め保持されている録音音声、電子音源が生成する合成音声などの音声情報が含まれる。制御データは、拡声装置2に対する制御データであり、例えば、拡声装置2内に保持している録音音声等の音声データ(内蔵音声データ)を指定するデータである。生成されたパケットデータは、音源装置1から拡声装置2へ送信される。パケットデータは、宛先を指定して送出され、1つの音源装置1に2以上の拡声装置2が接続されている場合、各拡声装置2に対し、同一のパケットデータ又は異なるパケットデータを送出することができる。
【0023】
拡声装置2は、音声を再生する音声再生装置であり、再生された音声を放送エリアに放出する。拡声装置2は、音源装置1からパケットデータを受信し、当該パケットデータから音声データ及び制御データを抽出することにより音声を再生する。拡声装置2は、例えば、業務放送や非常放送等の拡声放送(パブリックアドレス)の用途に用いられる。
【0024】
スイッチングハブ3は、音源装置1からパケットデータを受信し、その宛先に応じた拡声装置2へ送信する中継装置である。音源装置1は、有線又は無線によりスイッチングハブ3に接続され、拡声装置2は、ケーブル4を用いてスイッチングハブ3に接続される。2以上のスイッチングハブ3を介在させて、音源装置1及び拡声装置2を接続することもできる。また、スイッチングハブ3を介在させることなく、ケーブル4を用いて、音源装置1及び拡声装置2を直接的に接続することもできる。
【0025】
拡声装置2は、ケーブル4を介して、パケットデータを受信するとともに、電源の供給を受ける。拡声装置2及びスイッチングハブ3間の給電は、例えば、IEEE802.3af規格で定められるPoE(Power over Ethernet)及びIEEE802.3at規格で定められているPoE+に準拠しており、スイッチングハブ3が給電装置(PSE:Power Source Device)、拡声装置2が受電装置(PD:Powered Device)として用いられる。なお、スイッチングハブ3を介在させることなく、音源装置1及び拡声装置2をケーブル4で接続する場合には、音源装置1が給電装置として用いられる。
【0026】
ケーブル4は、それぞれ2本の導線を撚り合わせて構成される4対のツイストペアを内蔵し、これらのツイストペアが、データ通信用又は電源供給用に割り当てられる。また、1つのツイストペアをデータ通信用及び電源供給用の両方に用いることもできる。このため、単一のケーブル4を用いて接続するだけで、拡声装置2及びスイッチングハブ3間において、電源供給及びデータ通信を同時に行うことができる。
【0027】
ケーブル4を用いることにより、拡声装置2の設置時に電源ラインを敷設する必要がなくなり、拡声装置2の設置作業を容易化することができる。例えば、天井のように設置作業が困難な場所に拡声装置2を設置する場合、電源ラインの敷設を省略することができるので、設置コストを抑制することができるとともに、拡声装置2の設置場所の自由度を向上させることができる。
【0028】
図2は、
図1の拡声装置2の一構成例を示したブロック図である。拡声装置2は、インターフェース部200、音声処理部201、パワーアンプ202、スピーカ203、電圧変換部204、電力検出部205、電圧制御部206、閾値保持部207、電荷蓄積部208及び音声入力端子209を備える。また、拡声装置2は、ケーブル4を介して、音源装置1、スイッチングハブ3などの給電装置10が接続されている。
【0029】
インターフェース部200は、給電装置10との双方向通信を行うとともに、給電装置10から直流電源が供給される。また、インターフェース部200は、音声処理部201へ音声データ又は制御データを出力し、閾値保持部207へ電力クラスを出力し、さらに、拡声装置2内の各ブロックに直流電源を供給する。
【0030】
給電装置10から供給された直流電源は、電圧変換部204に入力されるとともに、音声処理部201、電圧制御部206、閾値保持部207などにも駆動電源として供給される。
【0031】
インターフェース部200は、給電装置10との間でネゴシエーションを行って電力クラスを決定し、決定した電力クラスに応じた閾値電力Pthを閾値保持部207へ出力する。給電装置10とのネゴシエーションは、拡声装置2が給電装置10に接続され、給電装置10からの電源供給が開始される際、予め定められたプロトコルに従って行われる。例えば、IEEE802.3af規格又はIEEE802.3at規格で定められた給電装置及び受電装置間でのネゴシエーションが行われる。
【0032】
電力クラスは、供給上限電力Pmaxに対応づけられており、電力クラスを決定すれば、給電装置10から拡声装置2へ供給可能な最大電力が決まる。このため、電力クラスの決定後に、拡声装置2における消費電力が当該電力クラスに相当する供給上限電力Pmaxを超えると、給電装置10からの電力供給は直ちに停止される。すなわち、給電装置10は、拡声装置2における消費電力を所定の周期で検知し、検知した消費電力が電力クラスに応じた供給上限電力Pmaxを超えると電力供給を停止するよう構成されている。
【0033】
閾値電力Pthは、供給上限電力Pmaxに基づき決定される。電力判定閾値Pthは、拡声装置2の入力電力が供給上限電力Pmaxを超えないように、電圧変換部204の電圧制御を行うための閾値である。例えば、電力クラスに対応する供給上限電力Pmaxと同一の値、又は、所定のマージンを考慮した値を電力判定閾値Pthとすることができる。
【0034】
図3は、3つの上記規格PoE、PoE+及びPoE++にまたがって設定されている電力クラスと、電力クラスごとに定められている供給上限電力Pmaxとについて、一例を示した図である。ネゴシエーションにより電力クラスが決定されると、当該電力クラスに対応する供給上限電力Pmaxが分かる。例えば、ネゴシエーションの結果、電力クラス4が決定された場合、供給上限電力Pmaxは25.5Wであることが分かり、25.5W又はこれを若干下回る値を閾値電力Pthとして決定する。インターフェース部200は、
図3に示すような、ネゴシエーションによって特定されうる複数の電力クラスと、電力クラスごとの供給上限電力Pmaxとが対応付けられた表を保持し、この表を参照して、ネゴシエーションにより特定された電力クラスに対応する閾値電力Pthを決定する。あるいは、各電力クラスに対応する供給上限電力Pmaxに基づき予め閾値電力Pthを決定しておき、各電力クラスと閾値電力Pthとを対応づけた表を保持し、この表を参照して、ネゴシエーションにより特定された電力クラスに対応する閾値電力Pthを決定することもできる。
【0035】
また、インターフェース部200は、給電装置10からパケットデータを受信すれば、当該パケットデータから音声データ又は制御データを抽出し、音声処理部201へ出力する。
【0036】
音声処理部201は、インターフェース部200から入力される音声データ又は制御データに基づいて、アナログ信号又はデジタル信号としての音声信号を生成する。音声信号は、給電装置10から受信した音声データに基づいて生成することができる。また、音声処理部201が予め保持している2以上の音声データ(内蔵音声データ)のうち、制御データが指定する音声データに基づいて音声信号を生成することもできる。また、給電装置10からの受信パケットデータに音声データ及び制御データの両方が含まれる場合、音声処理部201は、音声データに基づく音声信号と、制御データが指定する内蔵音声データに基づく音声信号とをミキシングした音声信号を生成することもできる。
【0037】
音声入力端子209は、マイクロホン等の外部音源と接続され、外部音源から音声信号の入力を受け付ける端子である。音声入力端子209は、音声処理部201とパワーアンプ202との間に接続され、音声入力端子209を介して入力された音声信号はパワーアンプ202に供給される。
【0038】
パワーアンプ202は、音声信号の電力増幅を行って、スピーカ203を駆動するためのスピーカ駆動信号を生成する増幅回路であり、電圧変換部204を介して駆動電源が供給される。パワーアンプ202は、音声処理部201から入力される音声信号、音声入力端子209から入力される音声信号、又は、これらがミキシングされた音声信号を増幅する。スピーカ203は、パワーアンプ202からのスピーカ駆動信号を音波に変換し、放送エリアに出力する手段である。
【0039】
スピーカ203の出力電力(以下、スピーカ出力という。)は、パワーアンプ202の消費電力であるとみなすことができる。パワーアンプ202の消費電力は、音声信号に応じて変化し、また、パワーアンプ202に供給される電源電圧に応じて変化する。このため、例えば、音声信号の振幅が増大すれば、スピーカ出力も増大し、振幅が減少すればスピーカ出力も減少する。また、パワーアンプ202の駆動電源の電圧が増加すれば、スピーカ203の最大出力電力が増大し、低下すればスピーカ203の最大出力電力も減少する。
【0040】
電圧変換部204は、直流電源の電圧変換を行うDC-DCコンバータであり、インターフェース部200からの入力電源の電圧を異なる電圧に変換する。電圧変換部204の出力電圧は、電圧制御部206の電圧制御信号S1に基づいて制御され、高電圧V2又は低電圧V1のいずれかを出力する。例えば、入力電圧が44~57Vの場合に、出力電圧は、高電圧V2を17V、低電圧V1を12Vにすることができる。
【0041】
電力検出部205は、給電装置10からの入力電力Piを検出する手段である。電力検出部205は、電圧変換部204の出力電流iDを検出する電流検出部205eを備え、検出された電流値に基づいて、給電装置10からの入力電力Piを求める。電圧変換部204の出力電流iDは、例えば、電圧変換部204の出力端子に小抵抗を直列接続し、当該抵抗の端子間電圧を計測することにより検出される。電圧変換部204及び電荷蓄積部208の間に電流検出部205eを設けることにより、電荷蓄積部208の放電による影響を受けることなく、電圧変換部204の出力電流iDを計測することができる。
【0042】
給電装置10からの入力電力は、その大部分が電圧変換部204において電圧変換され、パワーアンプ202又は電荷蓄積部208に供給され、最終的にはスピーカ出力となる。このため、電圧変換部204の出力電力を給電装置10からの入力電力とみなすことができる。電圧変換部204の出力電力は、電圧変換部204の出力電圧及び出力電流iDから求めることができ、電圧変換部204の出力電圧は、電圧制御部206によって制御される既知の値である。このため、電流検出部205eの検出電流に基づいて、給電装置10からの入力電力を求めることができる。
【0043】
電圧制御部206は、給電装置10からの入力電力に応じて、電圧変換部204の出力電圧を制御する手段であり、入力電力が供給上限電力Pmaxを超えることがないように制御を行っている。電圧制御部206は、電力検出部205が求めた入力電力に基づいて電圧制御信号S1を生成し、電圧変換部204の出力電圧を制御する。
【0044】
電圧制御信号S1は、給電装置10からの入力電力と、閾値保持部207が保持する電力判定閾値Pthとを比較することにより生成される。例えば、入力電力が電力判定閾値Pth以下であれば、高電圧V2(第2電圧)を指示する電圧制御信号S1が生成され、電力判定閾値Pthを超えていれば、低電圧V1(第1電圧)を指示する電圧制御信号S1が出力される。低電圧V1は、スピーカ出力が最大になる音声信号が音声処理部201から出力された場合であっても、スピーカ出力が供給上限電力Pmaxを超えないパワーアンプ202の電源電圧として予め決定される。
【0045】
閾値保持部207は、電力判定閾値Pthを保持する手段である。電力判定閾値Pthは、インターフェース部200が決定した電力クラスに基づいて定められる。例えば、電力クラスに対応する供給上限電力Pmaxに所定のマージンを考慮した値を電力判定閾値Pthとすることができるが、本実施の形態では、便宜上、電力判定閾値Pthが供給上限電力Pmaxと一致している場合の例について説明する。
【0046】
電荷蓄積部208は、パワーアンプ202及び電力検出部205間に接続された容量素子であり、電荷蓄積部208の端子電圧が、パワーアンプ202の電源電圧となる。電荷蓄積部208は、電圧変換部204が高電圧V2を出力しているときに充電される。また、電荷蓄積部208は、電圧変換部204が低電圧V1を出力しているときに放電し、蓄積電荷をパワーアンプ202に供給する。つまり、スピーカ出力は、電圧変換部204及び電荷蓄積部208によって供給される。
【0047】
図4は、
図2の拡声装置2の動作の一例を示したタイミングチャートであり、例えば、1秒未満の短い音を大音量で出力する音声信号が与えられた場合の様子が示されている。図中の(a)には、スピーカ203の出力電力、(b)には、給電装置10から供給される入力電力Pi、(c)には、電圧制御部206が生成する電圧制御信号S1、(d)には、電荷蓄積部208の端子電圧がそれぞれ示されている。
【0048】
図中の(a)に実線で示した特性L1は、
図2の拡声装置2におけるスピーカ出力の変化を示しており、破線で示した特性L2は、音声信号の通りにスピーカ203を駆動することができたと仮定した場合におけるスピーカ出力の変化を示している。図中の(b)に示した実線の特性L1及び破線の特性L2も、入力電力Piについて同様に示したものである。
【0049】
音声信号は、スピーカ出力を低出力から高出力に増大させた後、再び低出力に戻すように変化し、高出力時におけるスピーカ出力は供給上限電力Pmaxを超えている。図中のP1は、低出力時におけるスピーカ203の出力電力であり、電力判定閾値Pthよりも小さな値である。図中のP2は、高出力時におけるスピーカ203の出力電力であり、電力判定閾値Pthよりも大きな値である。音声信号は、時刻t1に電力判定閾値Pthを跨いで、スピーカ出力を低電力P1から高電力P2へ変化させた後、時刻t3に再び電力判定閾値Pthを跨いで、スピーカ出力を高電力P2から低電力P1に変化させる。
【0050】
図中のTsは、音声信号の通りにスピーカを駆動して音声出力を行った場合に、連続音が出力される連続音出力期間Tsである。本明細書における連続音とは、スピーカ出力が供給上限電力Pmaxを上回る状態が続く一連の音を指すものとする。連続音出力期間Tsは、このような連続音の出力期間であり、スピーカ出力が供給上限電力Pmax以下になる休止期間によって区切られた期間である。
【0051】
入力電力Piが電力判定閾値Pthよりも小さい低電力P1であれば、電圧制御部206は高電圧V2を指示する電圧制御信号S1を生成し、電圧変換部204は高電圧V2を出力する。
図4では、最初、このような状態が継続し、電荷蓄積部208は、高電圧V2に充電された状態になっている。
【0052】
その後、スピーカ出力が増大し、電力判定閾値Pthに到達する(時刻t1)。その後は、電圧変換部204の出力電圧が、低電圧V1及び高電圧V2の間を往復するように振動することにより、入力電力が抑制される。
【0053】
電圧変換部204が高電圧V2を出力している状態において、スピーカ出力が電力判定閾値Pthに到達すれば、入力電力Piも電力判定閾値Pthに到達する。このため、電圧制御部206が低電圧V1を指示する電圧制御信号S1を生成し、電圧変換部204の出力電圧は、低電圧V1に切り替わる。しかし、電圧変換部204の出力電圧が低電圧V1に切り替わると、当該出力電圧は、電荷蓄積部208の端子電圧よりも低くなる。このため、パワーアンプ202への電源供給は、電荷蓄積部208によって行われ、出力電流iDはゼロ、入力電力Piもほぼゼロになる。その結果、電圧制御部206は高電圧V2を指示する電圧制御信号S1を生成し、電圧変換部204の出力電圧は、再び高電圧V2に切り替わる。
【0054】
つまり、時刻t1以降、電圧制御信号S1は、高電圧V2及び低電圧V1の間で交互に切り替わり、電圧変換部204の出力電圧は、高電圧V2及び低電圧V1の間を往復するように振動する。例えば、20μ秒の周期で振動する。この周期は、供給装置10が拡声装置2の消費電力を検知する周期、例えば、数m秒~数10m秒よりも十分早い周期となるよう設定されている。このようにして出力電圧を振動させることにより、入力電力Piが電力判定閾値Pthを超えないように電力制限を行うことができる。
【0055】
また、時刻t1以降、電荷蓄積部208は放電し、電荷蓄積部208の端子電圧は、高電圧V2から次第に低下し、時刻t2において低電圧V1に到達する。つまり、時刻t1~t2までの間、パワーアンプ202への電源供給は、主として電荷蓄積部208によって行われている。このため、電力判定閾値Pthを超えないように入力電力を抑制しつつ、電力判定閾値Pthを超えるスピーカ出力を実現することができる。
【0056】
時刻t2以降は、振動中の電圧変換部204によりパワーアンプ202への電源供給が行われる。このとき、電荷蓄積部208の端子電圧は、低電圧V1を維持している。
【0057】
その後、音声信号に従ってスピーカ出力が低下し、時刻t3に電力判定閾値Pthに到達する。さらにスピーカ出力が低下し、電力判定閾値Pthを下回る。このとき、電荷蓄積部208の充電が開始されるため、入力電力には、電荷蓄積部208の充電に用いられる電力が新たに加わる。このため、スピーカ出力が電力判定閾値Pth以下になっても、入力電力は電力判定閾値Pth以下にならず、電圧変換部204の出力電圧は振動を継続する。
【0058】
ここで、電圧変換部204の出力電圧が高電圧V2から低電圧V1へ低下する変化は迅速に行われる一方、低電圧V1から高電圧V2へ増大する変化は所定の時定数に従って緩やかに行われる。このため、電圧変換部204の出力電圧が振動中であっても、スピーカ出力が電力判定閾値Pth未満であれば、電荷蓄積部208の充電を行うことができる。
【0059】
その後、スピーカ出力が更に低下し、それに応じて電荷蓄積部208の充電電流が増大する(時刻t3~t4)。しかし、電荷蓄積部208の端子電圧は、電荷の蓄積によって次第に上昇し、充電電流は減少に転じる。その結果、入力電力が電力判定閾値Pthを下回るようになれば、電圧変換部204の出力電圧は、高電圧V2になり、振動を停止する(時刻t5)。電荷蓄積部208の充電は、その後も継続され、端子電圧が高電圧V2に達すれば充電を終了する(時刻t6)。
【0060】
図5及び
図6は、本発明の実施の形態による拡声装置2と比較すべき比較例を示した図である。いずれも従来の拡声装置におけるスピーカ出力の変化を示した図である。
【0061】
図5には、電力制限を行わない場合のスピーカ出力が示されている。図中に示した実線の特性L1及び破線の特性L2は、
図4の(a)の場合と同様である。電力制限を行っていないため、スピーカ出力が供給上限電力Pmaxに到達した時点で、給電装置10からの電源供給が停止する。このため、その後、拡声装置2をリセットし、給電装置10との間で電力クラスのネゴシエーションを開始しなければ、動作を再開することができない。
【0062】
図6には、電圧制限を行う場合のスピーカ出力が示されている。図中に示した実線の特性L1及び破線の特性L2は、
図4の(a)の場合と同様である。上述した通り、低電圧V1は、音声信号にかかわらず、スピーカ出力が供給上限電力Pmaxを超えないパワーアンプ202の電源電圧である。このため、電圧変換部204の出力電圧を低電圧V1に固定することにより、入力電圧が供給上限電力Pmaxを超えるのを防止することができる。この場合、スピーカ出力が単純に減少し、供給上限電力Pmaxを超えることがないため、音声が聞き取りにくくなる。
【0063】
本実施の形態による拡声装置2は、電圧変換部204を介して、パワーアンプ202に電源を供給するとともに、給電装置10からの入力電力に基づいて電圧変換部204の出力電圧を制御し、入力電力の電力制限を行っている。例えば、入力電力が電力判定閾値Pth以上であれば、電圧変換部204の出力電圧を高電圧V2から低電圧V1に低下させる。このため、供給上限電力Pmaxを超えないように入力電力を抑制することができる。
【0064】
また、電圧変換部204及びパワーアンプ202の間に電荷蓄積部208を設けることにより、電圧変換部204の出力電圧を低下させた直後は、パワーアンプ202に対し電荷蓄積部208から電源を供給することができる。このため、給電装置10からの入力電力を制限しつつ、入力電力よりも大きなスピーカ出力を実現することができる。つまり、供給上限電力Pmaxを超えないように入力電力を抑制しつつ、供給上限電力Pmaxを超えるスピーカ出力を行うことができる。
【0065】
特に、電荷蓄積部208を用いることにより、連続音出力期間Tsの少なくとも冒頭部分について、供給上限電力Pmaxの制限を受けることなく、音声を出力することができる。一般に、連続音を聴別する場合、その冒頭部分を明瞭に聞き取ることが重要であると言われている。このため、冒頭部分について供給上限電力Pmaxの制限を受けないことにより、放送エリア内の聴者は、拡声装置2から出力される音声を聴別し、理解することが容易になる。
【0066】
また、電圧変換部204及び電荷蓄積部208の間に電流検出部205eを設け、電圧変換部204の出力電流iDを検出し、出力電流iDに基づいて、給電装置10からの入力電力を求めている。このため、電荷蓄積部208の放電による影響をうけることなく、入力電力を迅速に検出することができる。
【0067】
また、入力電力を電力判定閾値Pthと比較した結果に基づいて、電圧変換部204の出力電圧を制御し、電力判定閾値Pthは、給電装置10とのネゴシエーションにおいて決定した電力クラスに基づいて定められる。このため、電力クラスに応じた電力制限を行うことができる。
【0068】
実施の形態2.
実施の形態1では、入力電力の電力制限を行う拡声装置2の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、電力制限中にさらに音声信号の振幅制限を行うことにより、電荷蓄積部208の充電を促進する場合の例について説明する。
【0069】
図7は、本発明の実施の形態2による拡声装置2の一構成例を示した図である。この拡声装置2は、
図2の拡声装置2(実施の形態1)と比較すれば、電圧検出部210及び振幅制限部211を備えている点で相違する。なお、
図2に示した構成と対応する構成については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0070】
電圧検出部210は、パワーアンプ202に供給される電源電圧を検出する手段であり、電荷蓄積部208及びパワーアンプ202の間に接続される。検出電圧Vaは、振幅制限部211へ出力される。
【0071】
振幅制限部211は、検出電圧Vaに基づいて、音声信号の振幅制限を行う手段である。振幅制限は、音声信号の振幅を予め定められた値でクリップする処理である。つまり、音声信号の振幅のうち、所定のクリップ値を超える振幅をクリップ値に置き換え、超過部分を削除する処理である。振幅制限を行うことにより、再生音声に大きな歪みが生じるが、スピーカ電力を抑制することができる。例えば、音声信号の最大振幅の1/3をクリップ値として定めることができる。
【0072】
振幅制限部211は、検出電圧Vaを予め定められた電圧判定閾値Vthと比較し、その比較結果に基づいて音声信号の振幅を制限し、振幅制限された音声信号をパワーアンプ202へ出力する。電圧判定閾値Vthは、高電圧V2よりも低く、低電圧V1より高い値として予め定められる。例えば、高電圧V2が17V、低電圧V1が12Vの場合、電圧閾値を14Vにすることができる。
【0073】
検出電圧Vaが電圧判定閾値Vthを超えていれば、振幅制限部211は、振幅制限を行うことなく、入力された音声信号がそのままパワーアンプ202へ出力する。一方、検出電圧Vaが電圧判定閾値Vth以下であれば、振幅制限された音声信号をパワーアンプ202へ出力する。この振幅制限は、検出電圧Vaが電圧判定閾値Vthを超えてから振幅制限時間Tdが経過するまで継続される。振幅制限時間Tdは、例えば、予め定められた一定時間である。
【0074】
図8は、
図7の拡声装置2の動作の一例を示したタイミングチャートであり、例えば、約1秒未満の短い音を大音量で出力するための音声信号が与えられたときの様子が示されている。図中の(a)には、スピーカ203の出力電力、(b)には、給電装置10から供給される入力電力Pi、(c)には、電圧制御部206が生成する電圧制御信号S1、(d)には振幅制限部211における振幅制限処理、(e)には、電荷蓄積部208の端子電圧がそれぞれ示されている。なお、図中の(a)及び(b)に示した実線の特性L1及び破線の特性L2の違いは、
図4の場合と同様である。
【0075】
時刻t12までの動作は、
図4の時刻t2までの動作と同一である。最初、スピーカ電力及び入力電力はともに電力判定閾値Pthよりも小さい低電力P1であり、電圧変換部204は高電圧V2を出力し、電荷蓄積部208は、高電圧V2に充電された状態になっている。その後、スピーカ出力が増大し、時刻t11に入力電力が電力判定閾値Pthに到達すると、電圧変換部204の出力電圧が高電圧V2及び低電圧V1の間を往復するように振動し、入力電力が電力判定閾値Pthを超えないように抑制される。
【0076】
このとき、パワーアンプ202への電源供給は、主として電荷蓄積部208によって行われている。このため、電荷蓄積部208の端子電圧は次第に低下し、電圧判定閾値Vthに到達する(時刻t12)。このとき、振幅制限部211による音声信号の振幅制限が開始される。その結果、スピーカ出力は大幅に低下し、電力判定閾値Pthを下回る値になるが、スピーカ出力の低下に伴って、電荷蓄積部208の充電が開始される。その結果、入力電力には、電荷蓄積部208の充電に用いられる電力が新たに加わるため、電圧変換部204の出力電圧は振動を継続する。
【0077】
その後、電荷蓄積部208の端子電圧は、電荷の蓄積によって次第に上昇し、充電電流が次第に減少する。充電電流が所定値まで減少すれば、入力電力が電力判定閾値Pth以下になり、電力制限が解除される(時刻t13)。つまり、電圧変換部204の出力電圧は、振動を止めて高電圧V2になる。
【0078】
その後も、電荷蓄積部208の充電は継続しているが、充電電流は次第に減少し、それに応じて入力電力も次第に減少する。そして、電荷蓄積部208の端子電圧が高電圧V2になれば、充電が完了する(時刻t14)。従って、その後は、入力電力はスピーカ出力と一致するようになる。
【0079】
振幅制限は、振幅制限時間Tdが経過した後に解除される。
図8では、短い音を出力する音声信号であるため、スピーカ出力は、時刻t15に電力判定閾値Pthに到達しているが、振幅制限が解除されるのは、それよりも後の時刻t16になる。
【0080】
このような振幅制限を行うことにより、連続音出力期間Tsの終了前に電荷蓄積部208の充電を開始することができ、電荷蓄積部208の充電を早期に終了することができる。
【0081】
本実施の形態による拡声装置2は、実施の形態1の拡声装置2(
図2)と同様、電力制限を行うことにより入力電力を抑制しつつ、電荷蓄積部208を用いることにより、十分なスピーカ出力を確保している。しかし、十分なスピーカ出力を確保できる期間は、電荷蓄積部208の容量に依存し、連続音出力期間Ts中の冒頭部分のみに限定される。このため、電荷蓄積部208の端子電圧が電圧判定閾値Vthまで低下すれば、振幅制限を行ってスピーカ出力を低下させ、電荷蓄積部208の充電を開始する。従って、連続音出力期間Tsの終了(時刻t15)を待つことなく、電荷蓄積部208の充電が開始され(時刻t12)、電荷蓄積部208の充電を早期に終了することができる(時刻t14)。このため、短い休止期間を挟んで、複数の連続音が順次に出力される場合に、各連続音出力期間Tsの冒頭部分について、十分なスピーカ出力を確保することが可能になる。
【0082】
図9は、
図7の拡声装置2の動作の他の例を示したタイミングチャートであり、
図8の場合よりもやや長い音を大音量で出力するための音声信号が与えられたときの様子が示されている。
【0083】
時刻t24までの動作は、
図8の時刻t14までの動作と同一である。
図9では、
図8よりもやや長い音を出力する音声信号であるため、時刻t25に振幅制限が解除されるが、スピーカ出力が減少して電力判定閾値Pthに到達するのは、その後の時刻t26である。
【0084】
特性L2が電力判定閾値Pthを上回っている連続音出力期間Ts中に振幅制限が解除されると、スピーカ出力が電力判定閾値Pthを超えることになるため、再び電力制限が開始される(時刻t25)。つまり、電圧変換部204の出力電圧が振動し、入力電力が電力判定閾値Pthを超えないように抑制する。このとき、パワーアンプ202への電源供給は、主として電荷蓄積部208の放電によって行われ、電荷蓄積部208の端子電圧は次第に低下していく。
【0085】
その後、電荷蓄積部208の端子電圧が電圧判定閾値Vthまで低下する前に、スピーカ出力が低下して電力判定閾値Pthを下回るため、電荷蓄積部208の充電が開始される(時刻t26)。その後、電荷蓄積部208の端子電圧は、充電により次第に上昇し、充電電流は次第に減少する。そして、充電電流が所定値まで減少すれば、入力電力が電力判定閾値Pth以下になり、電力制限が解除される(時刻t27)。電荷蓄積部208は、その後も継続して充電され、時刻t28に充電が終了する。
【0086】
つまり、連続音出力期間Ts中において、1回目の電力制限及び振幅制限が解除された後、さらに2回目の電力制限が開始されるが、そのすぐ後に連続音出力期間Tsが終了する。このため、2回目の振幅制限は開始されないが、電荷蓄積部208の端子電圧は大きく低下していないため、振幅制限を行わなくても、比較的短時間の充電で高電圧V2に戻ることができる。
【0087】
図10は、
図7の拡声装置2の動作のさらに他の例を示したタイミングチャートであり、
図9の場合よりもさらに長い音を大音量で出力するための音声信号が与えられたときの様子が示されている。
【0088】
時刻t35まで動作は、
図9の時刻t25までの動作と同一である。また、その後の時刻t39まで動作は、時刻t35までの動作の繰り返しである。つまり、連続音出力期間Tsが長くなれば、周期的に同じ動作が繰り返される。そして、時刻t39に振幅制限を解除した後、時刻t40に連続音出力期間Tsが終了するため、時刻t39~t42の動作は、
図9のt25~28と同一である。
【0089】
つまり、連続音出力期間Tsの終了時には、電荷蓄積部208の充電を早期に終了しつつ、連続音出力期間Tsが長い場合には、電力判定閾値Pthを超えるスピーカ出力が周期的に繰り返される。このため、放送エリア内の聴者は音声を聴別し、理解することが容易になる。
【0090】
上記実施の形態では、IEEE802.3規格で定められるPoE、PoE+及びPoE++に準拠する拡声装置2について説明したが、本発明が適用可能な装置は、上記規格に準拠する装置には限定されない。例えば、供給上限電力が定められる外部の給電装置からパワーアンプの駆動電源が供給される様々な拡声装置に適用することができる。供給上限電力が定められた給電規格の別例として、USB(Universal Serial Bus)パワーデリバリー規格がある。
【0091】
また、上記実施の形態では、PAシステムの例について説明したが、本発明の適用対象は、このようなシステムを構成する拡声装置のみに限定されない。本発明は、パワーアンプを含み、入力された音声を増幅する様々な拡声装置に適用することができる。例えば、本発明は、スピーカ、ヘッドホン、イヤホン等の電気音響変換器が接続される拡声装置であって、音声信号を増幅して駆動信号を生成し、これらの電気音響変換器に対し駆動信号を出力するものに適用することができる。また、本発明は、ハンズフリー通話機能を有する電話機(スピーカーフォン)、インターホン、インターカムのような通話装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0092】
1 音源装置
2 拡声装置
3 スイッチングハブ
4 ケーブル
10 給電装置
100 拡声放送システム
200 インターフェース部
201 音声処理部
202 パワーアンプ
203 スピーカ
204 電圧変換部
205 電力検出部
205e 電流検出部
206 電圧制御部
207 閾値保持部
208 電荷蓄積部
210 電圧検出部
211 振幅制限部
P1 低電力
P2 高電力
Pmax 供給上限電力
Pth 電力判定閾値
S1 電圧制御信号
Td 振幅制限時間
Ts 連続音出力期間
V1 低電圧
V2 高電圧
Va 検出電圧
Vth 電圧判定閾値
iD 出力電流