(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/231 20110101AFI20240704BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20240704BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
B60R21/231
B60R21/207
B60N2/42
(21)【出願番号】P 2022534982
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2021022671
(87)【国際公開番号】W WO2022009622
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2020116911
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】中島 豊
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭希
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/174785(WO,A1)
【文献】特開2017-185978(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0121839(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0015642(US,A1)
【文献】米国特許第03953049(US,A)
【文献】特開2007-230396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 - 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートに着座した乗員の頭部
並びに前記乗員の前方及び側方部を一体的に覆うように膨張展開するエアバッグと、当該エアバッグにガスを供給するインフレータと、を備えたエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、前記車両用シートの左右方向中心側に位置して
膨張展開初期時には前記乗員の頭部の上方を通過し、膨張展開完了時には前記乗員の前方に展開する結合部によって結合された一対のチャンバを有し、
前記一対のチャンバは、膨張展開時、前記車両用シートの左右両側からそれぞれ前方に向かって膨張展開し、少なくとも乗員の側方部を覆う一対の側部保護チャンバを有し、
当該側部保護チャンバは前記結合部で結合され、少なくとも膨張展開初期時には、当該結合部が前記側部保護チャンバよりも薄い厚みとなるように構成され、
前記結合部は、前記側部保護チャンバと繋がるインナーベントを介して供給されるガスにより、前記側部保護チャンバよりも時間的に遅れて膨張展開が完了するディレーチャンバ部を有し、
前記ディレーチャンバ部は左右一対の膨張部を含み、前記側部保護チャンバにおける前記車両用シートの左右方向中心側に設けられた前記インナーベントから前記膨張部に前記ガスが供給される、エアバッグ装置。
【請求項2】
車両用シートに着座した乗員の頭部
並びに前記乗員の前方及び側方部を一体的に覆うように膨張展開するエアバッグと、当該エアバッグにガスを供給するインフレータと、を備えたエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、前記車両用シートの左右方向中心側に位置して
膨張展開初期時には前記乗員の頭部の上方を通過し、膨張展開完了時には前記乗員の前方に展開する結合部によって結合された一対のチャンバを有し、
前記一対のチャンバは、膨張展開時、前記車両用シートの左右両側からそれぞれ前方に向かって膨張展開し、少なくとも乗員の側方部を覆う一対の側部保護チャンバを有し、
当該側部保護チャンバは前記結合部で結合され、少なくとも膨張展開初期時には、当該結合部が前記側部保護チャンバよりも薄い厚みとなるように構成され、
前記結合部は、
前記車両用シートの左右方向中心側に位置する非膨張部と、前記側部保護チャンバと繋がるインナーベントを介して供給されるガスにより、前記側部保護チャンバよりも時間的に遅れて膨張展開が完了するディレーチャンバ部とを共に有し、
前記ディレーチャンバ部は
前記非膨張部の左右
両側に一対の膨張部を含み、前記側部保護チャンバにおける前記車両用シートの左右方向中心側に設けられた前記インナーベントから前記膨張部に前記ガスが供給される、エアバッグ装置。
【請求項3】
車両用シートに着座した乗員の頭部
並びに前記乗員の前方及び側方部を一体的に覆うように膨張展開するエアバッグと、当該エアバッグにガスを供給するインフレータと、を備えたエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、前記車両用シートの左右方向中心側に位置して
膨張展開初期時には前記乗員の頭部の上方を通過し、膨張展開完了時には前記乗員の前方に展開する結合部によって結合された一対のチャンバを有し、
前記一対のチャンバは、膨張展開時、前記車両用シートの左右両側からそれぞれ前方に向かって膨張展開し、少なくとも乗員の側方部を覆う一対の側部保護チャンバを有し、
当該側部保護チャンバは前記結合部で結合され、少なくとも膨張展開初期時には、当該結合部が前記側部保護チャンバよりも薄い厚みとなるように構成され、
前記結合部は、前記側部保護チャンバと繋がるインナーベントを介して供給されるガスにより、前記側部保護チャンバよりも時間的に遅れて膨張展開が完了するディレーチャンバ部を有し、
前記エアバッグは、少なくとも2枚の基布で構成され、前記それぞれの側部保護チャンバと前記ディレーチャンバ部との境界には、外周シームとは
一方の側でしか連結しない独立シームが形成され、これら独立シームと前記外周シームの間の隙間がインナーベントとなる、エアバッグ装置。
【請求項4】
車両用シートに着座した乗員の頭部
並びに前記乗員の前方及び側方部を一体的に覆うように膨張展開するエアバッグと、当該エアバッグにガスを供給するインフレータと、を備えたエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、前記車両用シートの左右方向中心側に位置して
膨張展開初期時には前記乗員の頭部の上方を通過し、膨張展開完了時には前記乗員の前方に展開する結合部によって結合された一対のチャンバを有し、
前記一対のチャンバは、膨張展開時、前記車両用シートの左右両側からそれぞれ前方に向かって膨張展開し、少なくとも乗員の側方部を覆う一対の側部保護チャンバを有し、
当該側部保護チャンバは前記結合部で結合され、少なくとも膨張展開初期時には、当該結合部が前記側部保護チャンバよりも薄い厚みとなるように構成され、
前記結合部は、非膨張部と、前記側部保護チャンバと繋がるインナーベントを介して供給されるガスにより、前記側部保護チャンバよりも時間的に遅れて膨張展開が完了するディレーチャンバ部とを共に有し、
前記エアバッグは、少なくとも2枚の基布で構成され、前記それぞれの側部保護チャンバと前記ディレーチャンバ部との境界に形成された、外周シームとは
一方の側でしか連結しない独立シームと前記外周シームの間の隙間をインナーベントとなす一方、
前記独立シームの左右方向中心側に、外周シームと連結するシームを形成することで前記非膨張部が形成されている、エアバッグ装置。
【請求項5】
車両用シートに着座した乗員の頭部
並びに前記乗員の前方及び側方部を一体的に覆うように膨張展開するエアバッグと、当該エアバッグにガスを供給するインフレータと、を備えたエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、前記車両用シートの左右方向中心側に位置して
膨張展開初期時には前記乗員の頭部の上方を通過し、膨張展開完了時には前記乗員の前方に展開する結合部によって結合された一対のチャンバを有し、
前記一対のチャンバは、膨張展開時、前記車両用シートの左右両側からそれぞれ前方に向かって膨張展開し、少なくとも乗員の側方部を覆う一対の側部保護チャンバを有し、
当該側部保護チャンバは前記結合部で結合され、少なくとも膨張展開初期時には、当該結合部が前記側部保護チャンバよりも薄い厚みとなるように構成され、
前記結合部は、前記側部保護チャンバと繋がるインナーベントを介して供給されるガスにより、前記側部保護チャンバよりも時間的に遅れて膨張展開が完了するディレーチャンバ部を有し、
前記エアバッグは、少なくとも2枚の基布で構成され、前記それぞれの側部保護チャンバと前記ディレーチャンバ部との境界には、外周シームと連結する独立シームが形成され、当該独立シームにインナーベントとなる隙間を形成した、エアバッグ装置。
【請求項6】
車両用シートに着座した乗員の頭部
並びに前記乗員の前方及び側方部を一体的に覆うように膨張展開するエアバッグと、当該エアバッグにガスを供給するインフレータと、を備えたエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、前記車両用シートの左右方向中心側に位置して
膨張展開初期時には前記乗員の頭部の上方を通過し、膨張展開完了時には前記乗員の前方に展開する結合部によって結合された一対のチャンバを有し、
前記一対のチャンバは、膨張展開時、前記車両用シートの左右両側からそれぞれ前方に向かって膨張展開し、少なくとも乗員の側方部を覆う一対の側部保護チャンバを有し、
当該側部保護チャンバは前記結合部で結合され、少なくとも膨張展開初期時には、当該結合部が前記側部保護チャンバよりも薄い厚みとなるように構成され、
前記結合部は、非膨張部と、前記側部保護チャンバと繋がるインナーベントを介して供給されるガスにより、前記側部保護チャンバよりも時間的に遅れて膨張展開が完了するディレーチャンバ部とを共に有し、
前記エアバッグは、少なくとも2枚の基布で構成され、前記それぞれの側部保護チャンバと前記ディレーチャンバ部との境界に形成された、外周シームと連結する独立シームにインナーベントとなる隙間を形成する一方、
前記独立シームの左右方向中心側に、外周シームと連結するシームを形成することで前記非膨張部が形成されている、エアバッグ装置。
【請求項7】
車両用シートに着座した乗員の頭部
並びに前記乗員の前方及び側方部を一体的に覆うように膨張展開するエアバッグと、当該エアバッグにガスを供給するインフレータと、を備えたエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、前記車両用シートの左右方向中心側に位置して
膨張展開初期時には前記乗員の頭部の上方を通過し、膨張展開完了時には前記乗員の前方に展開する結合部によって結合された一対のチャンバを有し、
前記一対のチャンバは、膨張展開時、前記車両用シートの左右両側からそれぞれ前方に向かって膨張展開し、少なくとも乗員の側方部を覆う一対の側部保護チャンバを有し、
当該側部保護チャンバは前記結合部で結合され、少なくとも膨張展開初期時には、当該結合部が前記側部保護チャンバよりも薄い厚みとなるように構成され、
前記結合部は、前記側部保護チャンバと繋がるインナーベントを介して供給されるガスにより、前記側部保護チャンバよりも時間的に遅れて膨張展開が完了するディレーチャンバ部を有し、
前記エアバッグは、前記側部保護チャンバを形成する2枚の基布と、これら2枚の基布のうち、膨張展開時に乗員側又は反乗員側となる一方の基布とで前記ディレーチャンバ部を形成する追加基布と、を有し、
前記インナーベントは、前記一方の基布の、前記追加基布で覆う部分に設けられている、エアバッグ装置。
【請求項8】
車両用シートに着座した乗員の頭部
並びに前記乗員の前方及び側方部を一体的に覆うように膨張展開するエアバッグと、当該エアバッグにガスを供給するインフレータと、を備えたエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、前記車両用シートの左右方向中心側に位置して
膨張展開初期時には前記乗員の頭部の上方を通過し、膨張展開完了時には前記乗員の前方に展開する結合部によって結合された一対のチャンバを有し、
前記一対のチャンバは、膨張展開時、前記車両用シートの左右両側からそれぞれ前方に向かって膨張展開し、少なくとも乗員の側方部を覆う一対の側部保護チャンバを有し、
当該側部保護チャンバは前記結合部で結合され、少なくとも膨張展開初期時には、当該結合部が前記側部保護チャンバよりも薄い厚みとなるように構成され、
前記結合部は、
前記車両用シートの左右方向中心側に位置する非膨張部と、前記側部保護チャンバと繋がるインナーベントを介して供給されるガスにより、前記側部保護チャンバよりも時間的に遅れて膨張展開が完了するディレーチャンバ部とを共に有し、
前記ディレーチャンバ部は前記非膨張部の左右両側に一対設けられており、
前記エアバッグは、前記側部保護チャンバを形成する2枚の基布と、これら2枚の基布のうち、膨張展開時に乗員側又は反乗員側となる一方の基布とで前記ディレーチャンバ部を形成する追加基布と、を有し、
前記インナーベントは、前記一方の基布の、前記追加基布で覆う部分に設けられ、
前記非膨張部は
、2枚の前記基布及び前記追加基布で形成されている、エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両の衝突時に、乗員の頭部と、乗員の肩部・上腕部・胸部の側方部とを一体的に保護すると共に、必要な場合はこれらの部位に加え、腹部と腰部の側方部までを保護することも可能なエアバッグ装置に関するものである。
【0002】
以下、本願において「上」「上方」とは正規の状態で車両用シートに着座した乗員の頭部方向を、「下」「下方」とは同じ状態の乗員の足元方向を意味する。また、「前」「前方」とは正規の状態で車両用シートに着座した乗員の正面方向を、「後」「後方」とは同じ状態の乗員の背面方向を意味する。また、「左」「左側」とは正規の状態で車両用シートに着座した乗員の左手方向を、「右」「右側」とは同じ状態の乗員の右手方向を意味する。なお、上記説明中の「正規の状態」とは、シートを構成するシートクッションの幅方向の中心位置で、乗員の背中全体がシートの背もたれ部に接した状態をいう。
【背景技術】
【0003】
近年、例えば車両の衝突時に、車両用シートの収納部から膨張展開するフード型(シェル状)のエアバッグにより、乗員の頭部と、乗員の肩部・上腕部・胸部の側方部を一体的に覆って乗員を保護するエアバッグ装置が提案されている(例えば特許文献1,2)。
【0004】
前記特許文献1,2で提案されたエアバッグは、乗員が正規の状態で車両用シートに着座している場合には当該特許文献1,2に記載された作用効果を奏する。
【0005】
しかしながら、乗員は常に正規の状態で車両用シートに着座しているとは限らず、正規の状態から左右方向に片寄った位置に着座している場合もある。また、車両用シートに着座した乗員の上半身が前方に傾いている場合もある。このような場合、エアバッグの膨張展開時に乗員(特に頭部)とチャンバが干渉すると、当該干渉の程度によっては所期の展開性能を得ることができなくなる。
【0006】
ところで、この種のエアバッグ1は、
図9に示すように、車両用シート2の背もたれ部2aを支持するフレーム2bの一方側部から上部を経由して他方側部に亘って、例えばロール状に巻いた状態で収納される。具体的には、前記エアバッグ1に形成されたチャンバ1aを構成する頭部保護チャンバ1aaは前記背もたれ部2aの上部に収納され、前記チャンバ1aを構成する側部保護チャンバ1abは前記背もたれ部2aの左右両側部の互いに離間した対向位置に収納される。なお、背もたれ部2aの上部とは、
図9(b)に示したような、ヘッドレスト2cを一体的に形成している車両用シート2の場合は、ヘッドレスト2cの上部を意味する。
【0007】
前記エアバッグ1は、例えば、
図10Aに示すように、未膨張のエアバッグ1を広げて平坦面に平置きにした状態では上下方向よりも左右方向が長い形状であり、同一形状の2枚の基布1b,1cを重ね合わせた状態で、外周部と左右方向の中心を縫製4,5することで、縫製5の左右に同一形状の膨張可能な前記チャンバ1aを形成している。
【0008】
当該エアバッグ1は、左右の前記チャンバ1aのそれぞれの外側下部にインフレータ6の挿入部1eを形成し、左右の前記チャンバ1aに別々のインフレータ6からガスを供給する構成であり、左右の前記チャンバ1aは流体的に独立している。
【0009】
また、左右の前記チャンバ1aは、左右方向の中間部分に適数個の非膨張部1dを設けることにより、エアバッグ1の左右それぞれの両端側に位置する側部保護チャンバ1abと、エアバッグ1の左右方向の中央部に位置する頭部保護チャンバ1aaとに区画している。
【0010】
従って、インフレータ6から供給されたガスは、側部保護チャンバ1abを膨張させると共に、前記非膨張部1d同士の間及び前記非膨張部1dと外周部の縫製4の間を通って頭部保護チャンバ1aaにも供給され、頭部保護チャンバ1aaを膨張させる。なお、
図10A中、1fは前記側部保護チャンバ1abに設けられた非膨張部を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2019-14477号公報
【文献】特開2018-83554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
例えば、
図10Aに示すエアバッグ1を、ロール状に巻いた状態で
図9に示すように収納した場合、当該エアバッグ1の膨張展開完了時には、
図10Bに示すような状態に、チャンバ1aが膨らむことになる。そのため、乗員3が正規の状態で車両用シート2に着座していない場合は、膨張展開の初期時に乗員3の頭部3aと、当該頭部3aを覆う頭部保護チャンバ1aaが強干渉し(
図10C(a)を参照)、膨張展開完了時には乗員3の前方へのエアバッグ1の展開が不十分になり、乗員3を適正に保護することができない(
図10C(b)を参照)。
【0013】
本発明が解決しようとする問題点は、例えば、乗員の着座位置が左右方向に片寄っている場合、エアバッグの膨張展開時に乗員とチャンバが干渉すると、当該干渉の程度によっては所期の展開性能を得ることができなくなるという点である。
【0014】
本発明は、前記課題を解決するものである。具体的には、乗員の着座位置が左右方向に片寄っている場合などのように、正規の状態で車両用シートに着座していない場合でも、膨張展開時に、エアバッグが乗員の特に頭部と強干渉せず、所期の展開性能が得られるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明は、車両用シートに着座した乗員の頭部と側方部を一体的に覆うように膨張展開するエアバッグと、当該エアバッグにガスを供給するインフレータと、を備えたエアバッグ装置である。
【0016】
前記エアバッグは、前記車両用シートの左右方向中心側に位置して膨張展開完了時には前記乗員の前方に展開する結合部によって物理的に結合された一対のチャンバを有している。そして、前記一対のチャンバは、膨張展開時、それぞれ独立して前記車両用シートの左右両側から前方に向かって膨張展開し、少なくとも乗員の側方部を覆う側部保護チャンバを有している。
【0017】
本発明では、前記側部保護チャンバは前記結合部で結合され、少なくとも膨張展開初期時には、当該結合部が前記側部保護チャンバよりも薄い厚みとなるように構成されていることが特徴である。
【0018】
本発明において、「膨張展開初期時」とは、エアバッグが膨張展開を開始してから、車両用シートの左右方向中心側に位置しており、膨張展開完了時には乗員の前方に展開する結合部が乗員の頭頂部の上方を通過するまでをいう。
【0019】
前記本発明では、側部保護チャンバを車両用シートの左右方向中心側で結合する結合部が、少なくとも膨張展開初期時においては前記側部保護チャンバよりも薄い厚みとなるように構成している。従って、例えば、乗員の着座位置が左右方向に片寄っている場合であっても、エアバッグの膨張展開初期時に前記結合部が乗員の頭部と強干渉することを抑制できるので、所期の展開性能を得ることができる。
【0020】
本発明において、「結合部が側部保護チャンバよりも薄い厚みとなる」構成には、例えば、前記結合部を非膨張部とする構成のほか、インナーベントを介して側部保護チャンバと繋がるディレーチャンバ部とする構成がある。また、非膨張部と、前記ディレーチャンバ部を共に有する構成もある。これらの構成とした場合には、エアバッグの膨張展開初期時に当該結合部が乗員の特に頭部と強干渉しない可能性が大きくなる。
【0021】
前記結合部をディレーチャンバ部とした場合、側部保護チャンバを介してディレーチャンバ部にガスが供給されるので、ディレーチャンバ部の膨張展開は側部保護チャンバの膨張展開よりも時間的に遅れることになる。このディレーチャンバ部の前記時間的な遅れの長さは、例えばインナーベントのサイズを変更することによって制御することができる。
【0022】
本発明において、前記ディレーチャンバ部は、例えば、左右一対の膨張部を含み、前記側部保護チャンバにおける前記車両用シートの左右方向中心側に設けられた前記インナーベントから前記膨張部にガスが供給されるようにしてもよい。
【0023】
具体的には、エアバッグは、少なくとも2枚の基布で構成され、それぞれの側部保護チャンバとディレーチャンバ部との境界には、外周シームとは連結しない或いは外周シームと連結する独立シームを形成する。そして、外周シームとは連結しない独立シームの場合は、当該独立シームと外周シームの間の隙間がインナーベントとなる。一方、外周シームと連結する独立シームの場合は、当該独立シームにインナーベントとなる隙間を形成する。これらの場合、前記独立シームの左右方向中心側に、外周シームと連結するシームを更に形成することで非膨張部を形成したものでもよい。
【0024】
或いは、エアバッグは、側部保護チャンバを形成する2枚の基布と、これら2枚の基布のうち、膨張展開時に乗員側又は反乗員側となる基布とでディレーチャンバ部を形成する追加基布とを有する構成とする。そして、インナーベントは、膨張展開時に乗員側又は反乗員側となる基布の、追加基布で覆う部分に設ける。この場合、前記側部保護チャンバを形成する2枚の前記基布で非膨張部を形成したものでもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、少なくとも膨張展開初期時は、乗員の側方部を覆う側部保護チャンバを結合する、車両用シートの左右方向中心側に位置する結合部が、側部保護チャンバよりも薄い厚みとなるように構成している。従って、乗員の着座位置が左右方向に片寄っている場合や、着座している乗員の上半身が前方に傾いている場合であっても、膨張展開初期時、前記結合部が乗員と強干渉することを抑制できるので、所期の展開性能を得ることができ、乗員を適正に保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】
図1Aは、本発明のエアバッグ装置を構成するエアバッグの第1実施例を平坦面に平置きにして広げた展開状態(折り畳む前の状態)を示した図である。
【
図1B】
図1Bは、
図1Aに示したエアバッグの膨張展開初期時の図で、(a)は車両の前方から見た図、(b)は乗員の頭部上方に位置する部分を断面して示した図である。
【
図1C】
図1Cは、
図1Aに示したエアバッグの膨張展開完了時の図で、(a)は車両の前方から見た図、(b)は乗員の頭部を保護する部分を一部省略して示した図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明のエアバッグ装置を構成するエアバッグの第2実施例を平坦面に平置きにして広げた展開状態(折り畳む前の状態)を示した図で、(a)は独立シームと外周シーム間に隙間を形成したもの、(b)は独立シームに隙間を形成したものである。
【
図2B】
図2Bは、
図2A(b)に示したエアバッグの膨張展開初期の図で、車両の前方から見た乗員の頭部上方に位置する部分を断面して示したものである。
【
図2C】
図2Cは、
図2A(b)に示したエアバッグの膨張展開完了時の斜視図で、乗員の頭部を保護する部分を一部省略して示したものである。
【
図3A】
図3Aは、本発明のエアバッグ装置を構成するエアバッグの第3実施例の基布を平坦面に平置きにして広げた展開状態(折り畳む前の状態)を示した図で、(a)は乗員側の基布、(b)は反乗員側の基布、(c)は追加基布を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、
図3Aに示したエアバッグの膨張展開初期の図で、車両の前方から見た乗員の頭部上方に位置する部分を断面して示したものである。
【
図3C】
図3Cは、
図3Aに示したエアバッグの膨張展開完了時の斜視図で、乗員の頭部を保護する部分を一部省略して示したものである。
【
図4A】
図4Aは、本発明のエアバッグ装置を構成するエアバッグの第4実施例を
図3Aと同様の状態で示した図である。
【
図5】
図5は、本発明のエアバッグ装置を構成するエアバッグの第2実施例の変形例1を平坦面に平置きにして広げた展開状態(折り畳む前の状態)を示した図で、(a)は独立シームと外周シーム間に隙間を形成したもの、(b)は独立シームに隙間を形成したものである。
【
図6】
図6は、本発明のエアバッグ装置を構成するエアバッグの第2実施例の変形例2を
図5と同様の状態で示した図である。
【
図7】
図7は、本発明のエアバッグ装置を構成するエアバッグの第3実施例の変形例の基布を平坦面に平置きにして広げた展開状態(折り畳む前の状態)を示した図で、(a)は乗員側の基布、(b)は反乗員側の基布、(c)は追加基布を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明のエアバッグ装置を構成するエアバッグの第4実施例の変形例を
図7と同様の状態で示した図である。
【
図9】
図9は、エアバッグを取付けた車両用シートを車両の後方から見た図で、(a)はヘッドレストが車両用シートの背もたれ部に別途取り付けられているもの、(b)はヘッドレストが前記背もたれ部と一体に形成されているものを示す。
【
図10A】
図10Aは、本発明のエアバッグ装置を構成するエアバッグの第1実施例のベースとなるエアバッグを平坦面に平置きにして広げた展開状態(折り畳む前の状態)を示した図である。
【
図10B】
図10Bは、
図10Aに示したエアバッグの膨張展開完了時の斜視図で、乗員の頭部を保護する部分を一部省略して示したものである。
【
図10C】
図10Cは、
図10Aに示したエアバッグの膨張展開状態を車両の前方から見た図で、(a)は膨張展開初期時、(b)は膨張展開完了時を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
例えば、乗員の着座位置が左右方向に片寄っている場合、エアバッグの膨張展開初期時に乗員の特に頭部とチャンバが干渉すると、当該干渉の程度によっては所期の展開性能を得ることができなくなる。
【0028】
本発明は、少なくとも膨張展開初期時は、車両用シートの左右方向中心側に位置し、膨張展開完了時に乗員の前方に展開する結合部が、少なくとも乗員の側方部を覆う側部保護チャンバよりも薄い厚みとなるように構成することで、前記課題を解決するものである。
【0029】
以下、本発明の実施例を、
図1A~
図4Cを用いて説明する。
(第1実施例:
図1A~
図1C)
本発明のエアバッグ装置11は、車両の衝突時に、車両用シート2に着座した乗員3の頭部3aと、例えば乗員3の肩部・上腕部・胸部の側方部3bを覆うように膨張展開するエアバッグ12と、車両に対する衝撃を検出したセンサーからの信号により当該エアバッグ12の内部にガスを噴出するインフレータ6を備えている。
【0030】
車両用シート2は、シートクッションと、背もたれ部2aを備えており、背もたれ部2aは、その上部にヘッドレスト2cが一体で形成されるか、或いは別途取り付けられている。前記シートクッション及び前記背もたれ部2aは、フレーム2b(
図9を参照)によって支持されている。エアバッグ12は、
図1Aに示す平置き状態において、前側から後ろ側に向かってロール状に巻くことにより、前後方向の寸法が短くなり、背もたれ部2aに収納される時の収納状態となる。エアバッグ12は、
図9で示したように、車両用シート2の背もたれ部2aを支持するフレーム2bの一方側部から上部を経由して他方側部に亘ってロール状に巻いた状態で収納される。
【0031】
エアバッグ12は、車両用シート2の左右方向中心側に位置して膨張展開完了時には乗員3の前方に展開する結合部12aによって結合された一対のチャンバ1aを有し、一対のチャンバ1aは、膨張展開時、車両用シート2の左右両側から前方に向かって膨張展開し、少なくとも乗員3の側方部を覆う一対の側部保護チャンバ1abを有している。前記エアバッグ12は、例えば
図1Aに示すように、先に
図10Aで説明したエアバッグ1の、側部保護チャンバ1abと頭部保護チャンバ1aaを、外周の縫製4と連結する例えば縫製13により区画し、左右方向中心の縫製5を無くした構成である。
【0032】
つまり、
図1Aに示したエアバッグ12では、
図10Aの頭部保護チャンバ1aaに相当する部分が結合部12aとなり、当該結合部12aによって左右の側部保護チャンバ1abが物理的に結合されることになる。この場合、前記結合部12aはガスが供給されない非膨張部12aaとなるので、エアバッグ12の膨張展開完了時にも、
図1C(b)に示すように、結合部12aは膨張しない。なお、チャンバ1a、側部保護チャンバ1ab、及び後記するディレーチャンバ部12abについて、「チャンバ」とは、内部空間だけでなく、その内部空間を形成する基布を含む袋体を意味する。
【0033】
従って、エアバッグ12が膨張展開を開始してから、結合部12a(非膨張部12aa)が乗員3の頭部3aの上方を通過するまでの膨張展開初期時には、前記結合部12a(非膨張部12aa)は乗員3の頭部3aと干渉しない(
図1Bを参照)。結合部12a全体が非膨張部12aaで構成されており、側部保護チャンバ1abよりも厚みが薄いからである。そして、エアバッグ12の膨張展開が完了したときには、エアバッグ12(結合部12a)が乗員3の前方に確実に展開して頭部3aを覆うので、所期の展開性能を得ることができる(
図1Cを参照)。
【0034】
(第2実施例:
図2A~
図2C)
本発明の第2実施例は、前記第1実施例を構成するエアバッグ12の、左右方向中心に前記縫製5を設けると共に、前記縫製13の例えば上端部を外周の縫製4と連結させずに隙間14を設けたものである(
図2A(a)を参照)。或いは、前記第1実施例を構成するエアバッグ12の、左右方向中心に前記縫製5を設けると共に、前記縫製13の例えば上部側に隙間15を形成したものである(
図2A(b)を参照)。
【0035】
これら第2実施例の場合、前記結合部12aは、インナーベントとなる前記隙間14或いは15を介して側部保護チャンバ1abから空気が供給されるディレーチャンバ部12abとなる。縫製4は「外周シーム」、
図2A(a)の縫製13は「外周シームとは
一方の側でしか連結しない独立シーム」、
図2A(b)の縫製13は「外周シームと連結する独立シーム」の一例である。
【0036】
従って、結合部12aは側部保護チャンバ1abよりも時間的に遅れて膨張展開が完了することになって、膨張展開初期時は側部保護チャンバ1abよりも薄い厚みであり(
図2Bを参照)、結合部12aと乗員3の頭部3aとの強干渉が抑制される。そして、膨張展開完了時には、
図2Cに示すように、エアバッグ12(結合部12a)が乗員3の前方に確実に展開して頭部3aを含む上体部分を覆う状態となる。側部保護チャンバ1abよりも遅れて膨張展開が完了したディレーチャンバ部12abは、乗員3の頭部3a及び胸部の正面側を保護する。前記結合部12a(ディレーチャンバ部12ab)の膨張展開の前記時間的な遅れの長さは、例えばインナーベントとなる前記隙間14或いは15のサイズを変更することによって制御することができる。
【0037】
(第3及び第4実施例:
図3A~
図3C及び
図4A~
図4C)
本発明の第3実施例及び第4実施例は、エアバッグ12を構成する2枚の基布1b,1cの、第1実施例又は第2実施例の前記結合部12aを形成する部分に、追加基布16を例えば前記縫製4及び13により取付けたものである。
【0038】
その際、第3実施例は、膨張展開時に乗員側となる基布1bの外側(乗員側)に前記追加基布16を取付ける。また、第4実施例は、膨張展開時に反乗員側となる基布1cの外側(反乗員側)に前記追加基布16を取付ける。
【0039】
そして、第3実施例においては、前記基布1bは、
図3A(a)に示す前記縫製13の左右方向中心側でも
図3A(b)に示すように前記基布1cと縫製17し、これら縫製17と連結する外周の縫製4で区画される両基布1b,1cの間の左右方向中心部を膨張しない非膨張部12aaとしている。また、第4実施例においては、前記基布1cは、
図4A(b)に示す前記縫製13の左右方向中心側でも
図4A(a)に示すように前記基布1bと縫製17し、これら縫製17と連結する外周の縫製4で区画される両基布1b,1cの間の左右方向中心部を膨張しない非膨張部12aaとしている。
【0040】
加えて、第3実施例では、膨張展開時に乗員側となる前記基布1bの、前記非膨張部12aaの左右方向両外側の部分に一対のインナーベント12bを設けている。また、第4実施例では、膨張展開時に反乗員側となる前記基布1cの、前記非膨張部12aaの左右方向両外側の部分に一対のインナーベント12bを設けている。
図3A(a)及び
図4A(b)に示すように、インナーベント12bは、基布1b,1cの追加基布16で覆う部分に設ける。
【0041】
つまり、第3実施例及び第4実施例は、膨張展開時に乗員側となる基布1bと、膨張展開時に反乗員側となる基布1cと、追加基布16とで、結合部12aを形成したものである。
【0042】
そして、これら結合部12aは、両基布1b,1cの左右方向中心部に位置する非膨張部12aaと、前記一方の基布1b又は1cと追加基布16とで形成するディレーチャンバ部12abとで構成されている。
【0043】
これら第3実施例及び第4実施例の場合、エアバッグ12の膨張展開時には、インナーベント12bを介して側部保護チャンバ1abからディレーチャンバ部12abにのみ空気が供給される。
【0044】
従って、ディレーチャンバ部12abは側部保護チャンバ1abよりも時間的に遅れて膨張展開し、膨張展開初期時には、側部保護チャンバ1abよりも薄い厚みであり(
図3B、
図4Bを参照)、結合部12aと乗員3の頭部3aとの強干渉が抑制される。そして、膨張展開完了時には、
図3C、
図4Cに示すように、エアバッグ12(結合部12a)が乗員3の前方に確実に展開して頭部3aを含む上体部分を覆う状態となる。なお、非膨張部12aaには空気は供給されないが、縫製4と縫製13で形成された基布1b又は1cと追加基布16の間には空気が供給されるので、これら第3実施例及び第4実施例の結合部12aは、実質的にディレーチャンバ部12abを構成しており、膨張展開完了時に乗員3の頭部3a及び胸部の正面側を保護する(
図3B、
図3C及び
図4B、
図4Cを参照)。
【0045】
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更してもよいことは言うまでもない。
【0046】
すなわち、以上で述べたエアバッグ装置は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定する主旨の記載がない限り、本発明は添付図面に示した部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は説明を目的としたもので、特に限定される主旨のない限り、それに限定されるものではない。
【0047】
例えば、
図2A(a)の第2実施例では、側部保護チャンバ1abと結合部12aを区画する縫製13の上端部を外周の縫製4と連結させないものを示したが、縫製13の下端部を外周の縫製4と連結させないものでもよい。また、縫製13の上端部及び下端部を外周の縫製4と連結させないものでもよい。
【0048】
また、
図2A(b)に示した第2実施例では、側部保護チャンバ1abと結合部12aを区画する縫製13の上部側に1個の隙間15を設けたものを示したが、当該隙間15は1個に限らず、また、設ける位置も上部側に限らず、中央部や下部側でもよい。
【0049】
また、
図2A(a)(b)に示した第2実施例では、左右方向中心に縫製5を設けたものを示しているが、
図5(a)(b)に示すように、左右方向中心の縫製5を無くし、左右方向の中心部に1つのディレーチャンバ部12abを形成したものでもよい。また、
図6(a)(b)に示すように、左右方向中心の縫製5を無くし、左右方向中心部に適宜の間隔を存して2本の縫製18を設け、これら縫製18の間を非膨張部12aaとしてもよい。
図6(a)(b)に示した変形例における縫製18は「外周シームと連結するシーム」の一例である。
【0050】
また、
図3Aに示した第3実施例及び
図4Aに示した第4実施例では、結合部12aに、両基布1b,1cで形成した非膨張部12aaと、どちらか一方の基布1b又は1cと追加基布16で形成したディレーチャンバ部12abを有している。
【0051】
しかしながら、基布1bと基布1cに加えて追加基布16も同時に縫製17して非膨張部12aaを形成してもよい(
図7及び
図8を参照)。
【0052】
また、本発明のエアバッグ装置11は、エアバッグ12をロール状に巻いた状態で車両用シート2の背もたれ部2aに収納するものに限らず、蛇腹状に折り畳んだ状態で前記背もたれ部2aに収納するものでもよい。
【0053】
また、本発明のエアバッグ装置11は、エアバッグ12を車両用シート2の背もたれ部2aに収納する際、
図9に示すような、側部保護チャンバ1abをフレーム2bの左右方向外側に取付けるものに限らず、フレーム2bの左右方向内側に取付けてもよい。また、インフレータ6も、フレーム2bの左右方向内側又は外側のどちらに取付けてもよい。
【0054】
また、前記の第1実施例~第4実施例では、乗員3の頭部3aと、乗員3の肩部・上腕部・胸部の側方部3bを保護するエアバッグ装置11について説明している。しかしながら、乗員3の頭部3aと、乗員3の肩部・上腕部・胸部に加えて、乗員3の腹部と腰部の側方部までを保護するエアバッグ装置に本発明を適用してもよい。
【0055】
また、前記の第1実施例~第4実施例では、左右に設けたインフレータ6で左右のチャンバ1aを膨張展開させているが、左右のチャンバ1aが独立して膨張展開するのであれば、1つのインフレータ6で左右のチャンバ1aにガスを供給するものでもよい。
【0056】
また、前記の第1実施例~第4実施例で説明したエアバッグ12は、2枚の基布1b,1c、又は2枚の基布1b,1cと追加基布16を縫製して形成している。しかしながら、2枚の基布1b,1c、又は2枚の基布1b,1cと追加基布16を強固に接合できるものであれば、接着や溶着などでもよい。また、いわゆる「ワンピースウィービング(one-piece weaving)」技術を用いて形成したものでもよい。
【0057】
上述の実施例では、着座した乗員が車両前方を向く車両用シート2にエアバッグ装置11を取り付けているが、着座した乗員が車両後方を向くことも可能な車両用シート2にエアバッグ装置11を取り付けてもよい。このような車両用シート2は自動運転の車両などに設けることができる。
【符号の説明】
【0058】
1a チャンバ
1ab 側部保護チャンバ
1b,1c 基布
2 車両用シート
3 乗員
3a 頭部
3b 側方部
4 縫製
6 インフレータ
11 エアバッグ装置
12 エアバッグ
12a 結合部
12aa 非膨張部
12ab ディレーチャンバ部
12b インナーベント
13 縫製
14 隙間
15 隙間
16 追加基布
17 縫製
18 縫製