(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】ポリエーテルケトンケトンの製造方法及びそれにより製造されたポリエーテルケトンケトン
(51)【国際特許分類】
C08G 65/40 20060101AFI20240704BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
C08G65/40
C08G61/12
(21)【出願番号】P 2022551323
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 KR2020004810
(87)【国際公開番号】W WO2021206194
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】シム、ユ ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミン ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジェ ホン
(72)【発明者】
【氏名】アン、チョ ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、グァン ソク
(72)【発明者】
【氏名】チョ、サン ヒョン
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0056128(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0040189(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/40
C08G 61/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルケトンケトンの製造方法において、(a)反応器にジフェニルオキシド(Diphenyl oxide、DPO)及び1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン(1,4-bis(4-Phenoxybenzoyl)benzene、EKKE)の中から選択された少なくとも1種以上をテレフタロイルクロリド(Terephthaloyl chloride、TPC)及びイソフタロイルクロリド(Isophthaloyl chloride、IPC)と液相の反応媒介体に入れて同時に溶解させて反応溶液を製造するステップ;(b)前記反応溶液を冷却し触媒を投入するステップ;及び(c)前記触媒投入後、反応溶液内部に不活性気体を直接吹き込み攪拌するステップ;を含み、
前記触媒はアルミニウムクロリド(Aluminum chloride、AlCl
3)、炭酸カリウム(Potassium carbonate、K
2CO
3)及び塩化鉄(Iron(III) chloride、FeCl
3)の中から選択された少なくとも1種以上であり、
前記触媒は1乃至1.5g/minの速度で投入され、
前記(b)ステップで、冷却温度は-10乃至-5℃であり、
前記(c)ステップで、攪拌しながら反応器を80乃至100℃に昇温するステップを含む
ことを特徴とするポリエーテルケトンケトンの製造方法。
【請求項2】
前記不活性気体を反応溶液内部に直接吹き込むノズルが反応器の上部又は下部に形成されて複数の方向に注入される
請求項1に記載のポリエーテルケトンケトンの製造方法。
【請求項3】
前記不活性気体は窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン及びクリプトンの中から選択された少なくとも1種以上である
請求項1に記載のポリエーテルケトンケトンの製造方法。
【請求項4】
上記(c)ステップ後、洗浄し、脱イオン水(DI water)で水洗するステップを含む
請求項1に記載のポリエーテルケトンケトンの製造方法。
【請求項5】
前記水洗するステップ以降、170乃至190℃で真空乾燥するステップをさらに含む
請求項4に記載のポリエーテルケトンケトンの製造方法。
【請求項6】
前記反応溶液はベンゾイルクロリド、ベンゼンスルホニルクロリド、4-クロロビフェニル、4-フェノキシベンゾフェノン、4-(4-フェノキシフェノキシ)ベンゾフェノン及びビフェニル4-ベンゼンスルホニルフェニルフェニルエーテルの中から選択された少なくとも1種以上のキャッピング剤(capping agent)を含む
請求項1に記載のポリエーテルケトンケトンの製造方法。
【請求項7】
前記液相の反応媒介体はオルト-ジクロルベンゼン(O-dichlorobenzene、ODCB)及びジクロロメタン(Dichloromethane)の中から選択された少なくとも1種以上の溶媒である
請求項1に記載のポリエーテルケトンケトンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ポリエーテルケトンケトンの製造方法に関し、さらに詳細にはポリエーテルケトンケトンの製造時、触媒投入速度を調節することによってスケール形成を抑制して収率を向上させることができるポリエーテルケトンケトンの製造方法及びそれにより製造されたポリエーテルケトンケトンに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルケトンは既に公知の産業用樹脂の総称であって、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン及びポリエーテルケトンとポリエーテルケトンケトンの一部が混合された共重合体などがある。
【0003】
下記化学式で表されるポリエーテルケトンケトン(Polyether Ketone Ketone、PEKK)は耐熱性が高く、強度に優れるため、エンジニアリングプラスチックとして多く用いられている。エンジニアリングプラスチックは、自動車、航空機、電気電子機構、機械などの分野で用いられており、その適用領域は次第に拡大しつつあるのが現状である。
【0004】
【0005】
エンジニアリングプラスチックの適用領域が拡大するとともに、その使用環境は次第に過酷なものになってきており、より改善した物性を示すポリエーテルケトン化合物に対する必要性が存在する。また、重合反応時のコスト節減のために、収率を高めた製造工程への要求がある。
【0006】
すなわち、PEKK重合時にスケールが生じやすい操業上の問題によって生産性が減少する問題点がある。これに関連して、実際に高分子樹脂の収率を高めるために触媒の投入速度を調節する従来の技術が公知されている。
【0007】
特許文献1には触媒を所定速度で投入する内容が開示されているが、PAEK(Polyaryl ether ketone)に限定されており、触媒投入速度と収率との関係が明確に開示されていない。
【0008】
特許文献2にはオレフィン重合用触媒投入装置に対する内容が開示されており、高分子重合時、触媒の速度を調節するという点においては類似しているが、高分子がPEKKではなくポリオレフィンに限定されている。
【0009】
特許文献3にはPAEK(Polyaryl ether ketone)の重合後、粉砕過程によって凝集した粒子を粉砕する追加工程によって重合後、製造物を得る方法について開示されているが、スケール形成の抑制によって収率を向上するという点を直接的に言及していない点から限界がある。
【0010】
特許文献4には分散剤を使用して粒子サイズを調節する技術が開示さている。
【0011】
非特許文献であるChemical Engineering Science, (2011) Vol.66 pp.1189~1199には触媒の供給速度が増加するほど重合体の生成速度も増加するという点が開示されているが、上記重合体がPEKKではなくポリプロピレンと開示されている。
【0012】
最後に、非特許文献であるHigh Perform.Polym.(2014) Vol.27, pp.705~713にはPEKK製造時、触媒が使用され、触媒の供給比が固有粘度に影響を与えるという内容が開示されているのみであり、触媒投入速度に関連付けては開示されていない。
【0013】
したがって、PEKK重合時、スケールの発生を抑制して収率を高めるPEKK製造方法の開発が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国公開特許第4,891,167号
【文献】大韓民国登録特許第0314176号
【文献】米国公開特許第4,841,013号
【文献】米国登録特許第9,803,050号
【非特許文献】
【0015】
【文献】Chemical Engineering Science, (2011) Vol.66 pp.1189~1199
【文献】High Perform.Polym.(2014) Vol.27, pp.705~713
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上述の問題点をすべて解決することを目的とする。
【0017】
本発明の目的は、触媒投入速度を調節して収率の向上及び粒子サイズを増加させるポリエーテルケトンケトンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記のような本発明の目的を達成し、後述する本発明の特徴的な効果を実現するための、本発明の特徴的な構成は下記のとおりである。
【0019】
本発明によるポリエーテルケトンケトンの製造方法において、(a)反応器にジフェニルオキシド(Diphenyl oxide、DPO)及び1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン(1,4-bis(4-Phenoxybenzoyl)benzene、EKKE)の中から選択された少なくとも1種以上をテレフタロイルクロリド(Terephthaloyl chloride、TPC)及びイソフタロイルクロリド(Isophthaloyl chloride、IPC)と液相の反応媒介体に入れて同時に溶解させて反応溶液を製造するステップ;(b)上記反応溶液を冷却し触媒を投入するステップ;及び(c)上記触媒投入後、反応溶液内部に不活性気体を直接吹き込み攪拌するステップ;を含むことができる。
【0020】
上記触媒はアルミニウムクロリド(Aluminum chloride、AlCl3)、炭酸カリウム(Potassium carbonate、K2CO3)及び塩化鉄(Iron(III) chloride、FeCl3)の中から選択された少なくとも1種以上であることを特徴とする。
【0021】
上記触媒は1乃至10g/minの速度で投入されることを特徴とする。
【0022】
上記(b)ステップで、冷却温度は-10乃至-5℃であることを特徴とする。
【0023】
上記(c)ステップは、複数個の攪拌羽根が形成された攪拌機(stirrer)が回転して投入された不活性気体を分散させることを特徴とする。
【0024】
上記撹拌機は反応器内に少なくとも2つ以上具備されて少なくとも2つ以上の方向へ回転して渦流現象を発生させることを特徴とする。
【0025】
上記不活性気体を反応溶液内部に直接吹き込むノズルが反応器の上部又は下部に形成されて複数の方向に注入されることを特徴とする。
【0026】
上記不活性気体は窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン及びクリプトンの中から選択された少なくとも1種以上であることを特徴とする。
【0027】
上記(c)ステップで、攪拌しながら反応器を80乃至100℃に昇温するステップを含むことを特徴とする。
【0028】
上記(c)ステップ後、洗浄し、脱イオン水(DI water)で水洗するステップを含むことを特徴とする。
【0029】
上記水洗するステップ以降、170乃至190℃で真空乾燥するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0030】
上記反応溶液はベンゾイルクロリド、ベンゼンスルホニルクロリド、4-クロロビフェニル、4-フェノキシベンゾフェノン、4-(4-フェノキシフェノキシ)ベンゾフェノン及びビフェニル4-ベンゼンスルホニルフェニルフェニルエーテルの中から選択された少なくとも1種以上のキャッピング剤(Capping agent)を含むことを特徴とする。
【0031】
上記液相の反応媒介体はオルト-ジクロルベンゼン(O-dichlorobenzene、ODCB)及びジクロロメタン(Dichloromethane)の中から選択された少なくとも1種以上の溶媒であることを特徴とする。
【0032】
上記製造方法で製造されたポリエーテルケトンケトンであることを特徴とする。
【0033】
上記ポリエーテルケトンケトンは収率が90%以上であることを特徴とする。この場合、上記ポリエーテルケトンケトンの粒子サイズは250乃至2000μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によるポリエーテルケトンケトン製造方法は、触媒投入速度の調節によってスケール形成を抑制することによって、ポリエーテルケトンケトンの収率が増加する効果がある。
【0035】
本発明によるポリエーテルケトンケトン製造方法は、Inherent Viscosity(IV)を維持しつつ収率が90%以上である効果がある。
【0036】
本発明によるポリエーテルケトンケトン製造方法は、触媒投入速度の調節によってスケール形成を抑制して粒子サイズが増加し、これにより粉塵の飛散可能性が減少して作業が容易な効果がある。
【0037】
本発明によるポリエーテルケトンケトン製造方法は、高い収率で得た大きな粒子のPEKKを乾燥後、追加粉砕することによって多様なサイズの粒子を高い収率で得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明によって製造された実施例の粒子形状(粒子サイズ250乃至500μm)を示す写真である。
【
図2】本発明によって製造された実施例の粒子形状(粒子サイズ500乃至1000μm)を示す写真である。
【
図3】比較例の粒子形状(粒子サイズ20乃至100μm)を示す写真である。
【
図4】本発明のポリエーテルケトンケトンの製造方法によって反応溶液内に窒素気体を流すと同時に攪拌できる装置を示す図である。
【
図5】本発明のポリエーテルケトンケトンの製造方法によって反応溶液内に窒素気体を流すと同時に攪拌できる装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
後述する本発明に対する説明は、本発明が実施され得る特定の実施例を例示として図示する添付の図面を参照する。これらの実施例は当業者が本発明を十分に実施できるように詳細に説明される。本発明の多様な実施例は、互いに異なるが相互排他的である必要はないことが理解されるべきである。例えば、ここに記載される特定の形状、構造及び特性は一実施例に関連して本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の実施例として具現され得る。また、各々の開示された実施例内の個別構成要素の位置又は配置は本発明の精神及び範囲から逸脱することなく変更され得ることが理解されるべきである。したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味として取ろうとするものでなく、本発明の範囲は、適切に説明された場合、その請求項らが主張するものと均等な全ての範囲とともに添付された請求項によってのみ限定される。図面において類似した符号は複数の側面にわたって同じ又は類似した機能を示す。
【0040】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるようにするために、本発明の好ましい実施例に関して添付された図面を参照して詳細に説明する。
【0041】
本発明ではポリエーテルケトンケトン(Poly Ether Ketone Ketone、PEKK)重合時、スケールの発生が操業上の問題となり、それによる生産性の減少を解決するために、触媒投入速度を調節して粒子サイズを増加させ、スケール形成を抑制して収率を向上させることができる技術を提示する。
【0042】
従来は、分散剤を使用して粒子サイズを調節したり、重合後、粉砕過程によって凝集した粒子を粉砕する追加工程によって製造物を得なけばれならない問題があった。しかし、本発明では触媒投入速度を調節してレジン粒子の凝集現象(aggregation)を防止してスケール生成を抑制できる触媒投入速度による製造方法を提供する。
【0043】
本発明による高分子量のポリエーテルケトンケトンを高収量で得るポリエーテルケトンケトンの製造方法は、(a)反応器にジフェニルオキシド(Diphenyl oxide、DPO)及び1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン(1,4-bis(4-Phenoxybenzoyl)benzene、EKKE)の中から選択された少なくとも1種以上をテレフタロイルクロリド(Terephthaloyl chloride、TPC)及びイソフタロイルクロリド(Isophthaloyl chloride、IPC)と液相の反応媒介体に入れて同時に溶解させて反応溶液を製造するステップ;(b)上記反応溶液を冷却し触媒を投入するステップ;及び(c)上記触媒投入後、反応溶液内部に不活性気体を直接吹き込み攪拌するステップ;を含む。
【0044】
ポリエーテルケトンケトンは下記化学構造1で表されるTerephthaloylと下記化学構造2で表されるIsophthaloylが連鎖的に重合されて生成される高分子であって、その比率によって特性が決定される。Terephthaloyl moietyは直線型で固い硬性を示し、そこにIsophthaloyl moietyがその曲がった構造により構造的多様性を与えるが、Isophthaloylは高分子鎖の柔軟性、流動性及び結晶化特性に影響を及ぼす。
【0045】
【0046】
【0047】
上記触媒はアルミニウムクロリド(Aluminum chloride、AlCl3)、炭酸カリウム(Potassium carbonate、K2CO3)及び塩化鉄(Iron(III) chloride、FeCl3)の中から選択された少なくとも1種以上であり得るが、これに限定されず、Friedel-Crafts Acylation重合反応の触媒として通常的に用いられるものであれば可能である。
【0048】
ここで、上記触媒は1乃至10g/min以上の速度で投入され得る。好ましくは1乃至3g/minの速度で、さらに好ましくは1乃至1.5g/minの速度で投入される。触媒が1乃至10g/minの速度で投入される場合は製造されるポリエーテルケトンケトンの粒子サイズが増加し得る。また、製造されるポリエーテルケトンケトンの収率が向上し得る。この時、ポリエーテルケトンケトンの収率が90%以上であり得る。
【0049】
なお、ここで、上記ポリエーテルケトンケトンの粒子サイズは250乃至2000μmの大きさを有し得る。
【0050】
粒子サイズの増加により製品の投入過程で粉塵の飛散可能性が減少して作業が容易である。製品の要求条件によって小さい粒子サイズが求められるとき、乾燥後の追加粉砕による粒子サイズの減少も可能である。これにより収率は維持しつつも粒子サイズの調節が可能という長所がある。
【0051】
本発明による製造方法で、触媒投入時、反応溶液を冷却してから投入することになるが、この時、温度は触媒によって異なる場合があるが、-10乃至-5℃であることが好ましい。
【0052】
上記(c)ステップは、複数個の攪拌羽根が形成された攪拌機(stirrer)が回転して投入された不活性気体を分散させることを特徴とし、上記攪拌機(stirrer)は反応器内に2つ以上具備されて少なくとも2つ以上の方向へ回転して渦流現象を発生させることができる。上記攪拌機の回転軸が正方向と逆方向とに交互に所定の角度ずつ回転するように具備され得る。また、上記攪拌羽根が回転軸と所定の角度をなすように形成されて反応器内の組成物の分散力を高めることができる。
【0053】
図4及
図5は、本発明のポリエーテルケトンケトンの製造方法によって反応溶液内に窒素気体を流すと同時に攪拌できる装置を示す図である。
図4及び
図5を参照すると、本発明によるPEKK製造方法は、上記不活性気体を反応溶液内に直接吹き込むノズルが反応器の上部又は下部に形成されて複数の方向に注入され得る。それにより、不活性気体による塩酸の除去をより迅速かつ有効に発生させ得る。
【0054】
この時、上記不活性気体は窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン及びクリプトンの中から選択された少なくとも1種であることを特徴とする。上記不活性気体は重合反応の過程中に単独又は混合して使用できる。
【0055】
上記不活性気体を投入した後、攪拌しながら反応器を80℃乃至100℃に昇温させてPEKKを重合する。本発明による重合反応は多様な反応器で行われ得るが、好ましくは、連続槽型反応器(CSTR)又はループ反応器内で行われ得る。
【0056】
本発明によるPEKK製造方法は、重合されたPEKKを洗浄し、脱イオン水(DI water)で水洗するステップをさらに含む。上記洗浄はメタノール(CH3OH)、塩酸及び水酸化ナトリウム(NaOH)溶液が提供されることができ、好ましくはメタノール3回、塩酸及び水酸化ナトリウムを各々1回洗浄できる。ここで、塩酸及び水酸化ナトリウムの洗浄は省略してもよい。
【0057】
上記洗浄後、水洗するステップで脱イオン水が提供されることができ、この場合、回数は好ましくは3回であり得る。
【0058】
上記水洗するステップ以降、170乃至190℃で真空乾燥してPEKK重合レジンパウダーを得るステップをさらに含むことができる。
【0059】
上記モノマー3種を液相の反応媒介体に入れて溶解させる時、同時にキャッピング剤(capping agent)を入れてともに溶解させることができる。この時、キャッピング剤は重合反応媒質に添加されて重合体鎖の少なくとも1つの末端で重合体をキャッピング化させる役割を担う。それにより、鎖の持続的な延長を終結し、重合された高分子の分子量を調節する。好ましいキャッピング剤として、ベンゾイルクロリド、ベンゼンスルホニルクロリド、4-クロロビフェニル、4-フェノキシベンゾフェノン、4-(4-フェノキシフェノキシ)ベンゾフェノン、ビフェニル4-ベンゼンスルホニルフェニルフェニルエーテルなどが用いられ得る。
【0060】
また、上記液相の反応媒介体はo-Dichlorobenzene(ODCB)及びDichloromethaneの中から選択された少なくとも1種以上の溶媒であり得るが、これに限定されず、Friedel-Crafts Acylation重合反応の触媒として通常的に用いられるものであれば可能である。
【0061】
上記製造方法で製造されたポリエーテルケトンケトンは従来技術によって製造されたポリエーテルケトンケトンに比べて改善された物性を示す。また、本発明によって触媒を1乃至10g/minの速度で投入することによって、レジン粒子間の凝集現象を防止してスケール生成を抑制することによって、高分子量のポリエーテルケトンケトンを高収率で得られることを特徴とする。好ましくは上記ポリエーテルケトンケトンの収率が90%以上であり得る。
【0062】
また、ここで上記ポリエーテルケトンケトンの粒子サイズは250乃至2000μmの大きさを有し得る。
【0063】
本発明のポリエーテルケトンケトン製造方法及びそれにより製造されたポリエーテルケトンケトンは、触媒を1乃至10g/minの速度で投入することによって、レジン粒子間の凝集現象を防止してスケール生成を抑制することによって、粒子サイズが大きい効果を得ることができ、Inherent Viscosity(IV)の値が大きく変わることなく維持しつつ高分子量のポリエーテルケトンケトンを高収率、好ましくは90%以上の値で得られる効果がある。
【0064】
以下、本発明の好ましい実施例によって本発明の構成及び作用をより詳細に説明する。ただし、これは本発明の好ましい例示として提示されたものであって、いかなる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈されることはできない。
【0065】
ここに記載していない内容は当該技術分野における熟練者であれば十分に技術的に類推できるものであるので、その説明を省略する。
【実施例】
【0066】
実施例1
【0067】
反応器にモノマーであるDiphenyl oxide(DPO)及び1,4-bis(4-phenoxybenzoyl)benzene(EKKE)の中から選択された1種であるEKKE26.6gとTerephthaloyl chloride(TPC)4.26g及びIsophthaloyl chloride(IPC)6.75gとCapping AgentであるBenzoyl chloride0.48gを反応溶媒であるo-Dichlorobenzene(oDCB)750gに入れて同時に溶解した後、反応器の温度を-10乃至-5℃に下げる。溶液温度を-10乃至-5℃に一定に維持させながら触媒であるAlCl3 48gを1.1g/minの速度で投入する。触媒投入が終わった後、溶液内にN2を吹き込むと同時に溶液をstirringしながら反応器を90℃に昇温させて30分間維持してPEKKを重合する。重合されたレジンはメタノール3回、1M塩酸と0.5M NaOH溶液で洗浄し、DI waterで3回水洗及び180℃の温度で真空乾燥してPEKK重合レジンを得た。
【0068】
実施例2
【0069】
触媒投入速度を1.2g/minの速度で投入したことを除いては、実施例1と同様にPEKK重合レジンを得た。
【0070】
実施例3
【0071】
触媒投入速度を1.3g/minの速度で投入したことを除いては、実施例1と同様にPEKK重合レジンを得た。
【0072】
比較例1
【0073】
触媒投入速度を0.8g/minの速度で投入したことを除いては、実施例1と同様にPEKK重合レジンを得た。
【0074】
比較例2
【0075】
触媒投入速度を0.7g/minの速度で投入したことを除いては、実施例1と同様にPEKK重合レジンを得た。
【0076】
比較例3
【0077】
触媒投入速度を0.6g/minの速度で投入したことを除いては、実施例1と同様にPEKK重合レジンを得た。
【0078】
<実験例>IV(Inherent Viscosity)及び収率分析
【0079】
本発明によって製造された上記実施例1乃至3と比較例1乃至3のIV及び収率を測定してその結果を下記表1に示した。
【0080】
【0081】
図1乃至3を参照すると、上記表1に記載のように、本発明によって触媒を1乃至10g/minの速度で投入して製造された実施例1乃至3のPEKKは比較例1乃至3に比べて高い収率を示すことを確認した。特に触媒を1.2g/minの速度で投入して製造した実施例2の場合、最も高い収率を示すので1.2g/minの速度が最も好ましい速度であることがわかる。
【0082】
比較例1乃至3の結果からわかるように、触媒を1g/min未満の速度で投入した場合、収率が顕著に低い結果を示した。したがって、本願発明の1乃至10g/minの触媒投入速度範囲が理想的であることがわかり、これにより、触媒を本願発明の1乃至10g/minの速度で投入して製造した場合、スケール形成を抑制して収率が向上されることが確認できた。
【0083】
また、本発明のポリエーテルケトンケトン製造方法及びそれにより製造されたポリエーテルケトンケトンは、触媒を1乃至10g/minの速度で投入することによって、分子量に関連付けられたIV(Inherent Viscosity)の値が大きく変わることなく維持しつつ、高分子量のポリエーテルケトンケトンを高収率、好ましくは90%以上の値で得られる効果があることが確認できた。
【0084】
また、
図1及び2の粒子形状と
図3の粒子形状を比べると、本発明によって製造された実施例1乃至3はPEKKの粒子サイズが増加したことを示した。したがって、本願発明の1乃至10g/minの触媒投入速度範囲が理想的であることがわかり、これにより、触媒を本願発明の1乃至10g/minの速度で投入して製造した場合、粒子サイズが増加する効果があることが確認できた。
【0085】
したがって、本発明のポリエーテルケトンケトン製造方法及びそれにより製造されたポリエーテルケトンケトンは、触媒投入速度の調節によってスケール形成を抑制することによって、ポリエーテルケトンケトンの収率が増加する効果がある。
【0086】
また、本発明のポリエーテルケトンケトン製造方法及びそれにより製造されたポリエーテルケトンケトンは、触媒を1乃至10g/minの速度で投入することによって、Inherent Viscosity(IV)の値が大きく変わることなく維持しつつ、レジン粒子間の凝集現象を防止してスケール生成を抑制することによって、高分子量のポリエーテルケトンケトンを高収率、好ましくは90%以上の値で得られる効果がある。
【0087】
また、本発明のポリエーテルケトンケトン製造方法及びそれにより製造されたポリエーテルケトンケトンは、触媒投入速度の調節によってスケール形成を抑制することによって、粒子サイズが増加し、これにより粉塵の飛散可能性が減少して作業が容易な効果がある。
【0088】
そして、本発明によるポリエーテルケトンケトン製造方法は、高い収率で得た大きな粒子のPEKKを乾燥後、追加粉砕することによって多様なサイズの粒子を高い収率で得られる効果がある。
【0089】
以上、本発明の具体的な構成要素などのような特定の事項と限定された実施例及び図面によって説明されたが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明が上記実施例らに限定されるわけではなく、本発明の属する分野における通常の知識を持つ者であれば、かかる記載から多様な修正及び変形を図ることができる。
【0090】
よって、本発明の思想は上記説明された実施例に限られて定められてはならず、後述する特許請求の範囲のみならず、その特許請求の範囲と均等又は等価的に変形されたあらゆるものは本発明の思想の範疇に属すると言える。