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特許7514946緩衝ストッパ及び緩衝ストッパの成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】緩衝ストッパ及び緩衝ストッパの成形方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/00 20060101AFI20240704BHJP
   F16F 15/127 20060101ALI20240704BHJP
   F16F 15/134 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
F16F7/00 F
F16F15/127 Z
F16F15/134 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022555375
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2021035341
(87)【国際公開番号】W WO2022075106
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2020169029
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】石川 朋昂
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-211669(JP,A)
【文献】実開平05-079061(JP,U)
【文献】国際公開第2021/010177(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/00
F16F 15/08
F16F 15/127
F16F 15/134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム状弾性材料よりも硬質であり、両端に設けられた窪みを貫通孔で連絡する柱形状を有し、前記貫通孔の軸方向と直交する平坦な座面を前記窪みの底面に有する基体と、
前記両端に設けられた窪みにそれぞれ嵌り合って前記座面に支持され、前記基体の両端から先細り形状で突出する一対の端部弾性体を前記貫通孔に嵌り合う中央弾性体で連結した前記ゴム状弾性材料の一体成型品である弾性体と、
を備える緩衝ストッパ。
【請求項2】
前記一対の端部弾性体を支持する前記窪みの底面は、粗面の形態で設けられている、
請求項1に記載の緩衝ストッパ。
【請求項3】
前記座面は、前記基体の表面よりも表面粗さが大きい、
請求項に記載の緩衝ストッパ。
【請求項4】
前記窪みの側壁は、前記貫通孔の軸方向に平行に沿っている、
請求項1ないしのいずれか一に記載の緩衝ストッパ。
【請求項5】
前記弾性体は、前記基体に対して、非接着面によって接触している、
請求項1ないし4のいずれか一に記載の緩衝ストッパ。
【請求項6】
ゴム状弾性材料よりも硬質であり、両端に設けられた窪みを貫通孔で連絡する柱形状を有し、前記貫通孔の軸方向と直交する平坦な座面を前記窪みの底面に有する基体を設け、
前記基体を成形型にインサートし、
前記成形型に前記ゴム状弾性材料を導入し、前記両端に設けられた窪みにそれぞれ嵌り合って前記座面に支持され、前記基体の両端から先細り形状で突出する一対の端部弾性体を前記貫通孔に嵌り合う中央弾性体で連結した弾性体を加硫成形する、
緩衝ストッパの成形方法。
【請求項7】
前記窪みの底面にシボ加工を施し、前記窪みの底面を粗面にする、
請求項に記載の緩衝ストッパの成形方法。
【請求項8】
前記基体を成型する金型のうち前記窪みの底面を成型する部分にシボ加工を施し、前記窪みの底面を粗面にする、
請求項に記載の緩衝ストッパの成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、緩衝ストッパ及び緩衝ストッパの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝ストッパは、例えばトランスミッションに接続されるトランスファーに組み込まれたトルク変動吸収装置の一部品として用いられている。トランスファーはプロペラシャフトを介してエンジンの出力を前後軸に分配する役割を担うという構造上、エンジン側からの入力によってトルクの変動を来す。このような変動トルクを吸収するのがトルク変動吸収装置である。
【0003】
この種のトルク変動吸収装置はダンパ部、ヒステリシス部、及びリミッタ部を備え、エンジンのクランクシャフト側に連結された入力回転部材と被駆動側に連結された出力回転部材との間に配置される。ダンパ部は、入力回転部材と出力回転部材との間に配置されたコイルスプリングのばね力によって変動トルクを吸収する。ヒステリシス部は、ヒステリシストルクによって変動トルクを吸収する。
【0004】
緩衝ストッパは、コイルスプリングの内側に配置されてダンパ部の一部を構成する。より詳しくは、入力回転部材と出力回転側部材とにはそれぞれダンパ部の捩れを所定の角度で規制する一対のストッパ片が設けられている。緩衝ストッパは、これらのストッパ片の間に配置され、ストッパ片同士が衝突するときの衝撃を吸収して緩和する。
【0005】
特許文献1(日本国の特開2012-211669号公報)には、緩衝ストッパの各種の形態が開示されている。開示されているのは、図3図5図6等に『クッション部材』として示されている各種の形態である。
【0006】
特許文献1の図3(A)-(F)に示されているクッション部材(26)は、柱状に形成された弾性体(32)を備え、この弾性体の側面を耐摩耗材(31、33)で覆っている(文献1の段落[0047]参照)。耐摩耗材は弾性体よりも大径に形成され、コイルスプリングがクッション部材に接触した場合であっても、コイルスプリングの摩耗を防止するようにしている(文献1の段落[0041]参照)。
【0007】
特許文献1の図5(A)-(D)、図6(E)-(H)等に示されているクッション部材(26)は、弾性体と耐摩耗材との間に互いに嵌り合う凹凸部を設け、弾性体と耐摩耗材との接続強度を向上させている(文献1の段落[0054]-[0057]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】日本国の特開2012-211669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された各種の形態の緩衝ストッパ(クッション部材(26))では、弾性体の材料、軸方向長さ、及び直径によって緩衝特性が定められる。このため材料が同じであるという条件で緩衝特性を調節しようとすると、弾性体の直径が一定であれば軸方向長さ、軸方向長さが一定であれば直径を変更せざるを得ない。
【0010】
その一方で緩衝ストッパはコイルスプリングの内側に配置するものであること、その軸方向長さは一対のストッパ片の衝突位置を決定づけるものであることを考慮すると、弾性体の直径及び軸方向長さとして許容される寸法は、自ずとある範囲に収束する。
【0011】
より柔軟に緩衝特性を調整し得る緩衝ストッパの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
緩衝ストッパの一態様は、ゴム状弾性材料よりも硬質であり、両端に設けられた窪みを貫通孔で連絡する柱形状を有し、前記貫通孔の軸方向と直交する平坦な座面を前記窪みの底面に有する基体と、前記両端に設けられた窪みにそれぞれ嵌り合って前記座面に支持され、前記基体の両端から先細り形状で突出する一対の端部弾性体を前記貫通孔に嵌り合う中央弾性体で連結した前記ゴム状弾性材料の一体成型品である弾性体と、を備える。
【0014】
緩衝ストッパの成形方法の一態様は、ゴム状弾性材料よりも硬質であり、両端に設けられた窪みを貫通孔で連絡する柱形状を有し、前記貫通孔の軸方向と直交する平坦な座面を前記窪みの底面に有する基体を設ける工程と、前記基体を成形型にインサートする工程と、前記成形型に前記ゴム状弾性材料を導入し、前記両端に設けられた窪みにそれぞれ嵌り合って前記座面に支持され、前記基体の両端から先細り形状で突出する一対の端部弾性体を前記貫通孔に嵌り合う中央弾性体で連結した弾性体を加硫成形する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
より柔軟に緩衝特性を調整し得る緩衝ストッパを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の一形態の緩衝ストッパを示す正面図。
図2】中央部分で断面にした緩衝ストッパを示す斜視図。
図3】中央部分で断面にした基体をしめす斜視図。
図4】緩衝ストッパの縦断正面図。
図5】緩衝ストッパの成形方法の一例として、(A)は型開きをした成形型に基体をセットする過程、(B)は成形型を型締めして基体をインサートする過程、(C)は一対のキャビティにゴム状弾性材料を導入する過程、(D)は成形型を型開きして緩衝ストッパを取り出す過程をそれぞれ示す模式図。
図6】軸方向に圧縮された弾性体に加わる力を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
緩衝ストッパの実施の一形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に示すように、緩衝ストッパ11は、ともに円柱形状を有する基体31と弾性体51とによって形成されている。弾性体51は、基体31の軸方向(図1図2中の上下方向)の両端から同軸上に突出している。弾性体51は基体31よりも小径である。
【0020】
図2及び図3に示すように、基体31は中央部分に貫通孔32を有し、両端にそれぞれ窪み33を有している。窪み33は、弾性体51を嵌め込むための構造で、底面を弾性体51の座面34としている。座面34は、貫通孔32の軸方向と直交する方向に沿う平坦な形状を有している。
【0021】
基体31の両端の外周部分からは、内側壁35を有する縁部が貫通孔32の軸方向に沿って立ち上がっている。説明の便宜上、座面34から立ち上がる縁部をストレート部36と呼ぶ。基体31の両端は、ストレート部36の端面37を含む平面内に位置している。
【0022】
図2に示すように、弾性体51は、それぞれの窪み33に嵌り合って座面34に座する一対の端部弾性体52と、貫通孔32に嵌り合う中央弾性体53とが一体に連結されたゴム状弾性材料による一体成形品である。端部弾性体52の端部には、貫通孔32の軸上に凹部54が設けられている。
【0023】
弾性体51の外周面は、先細り形状を有している。詳しくは、弾性体51のうち、窪み33に嵌り込んでいる部分は、断面円形の直径が軸方向のどの位置でも等しい円柱形状をなし、外部に露出する部分は、先端にいくほど断面円形の直径が小さくなるテーパー形状をなしている。
【0024】
基体31は、ゴム状弾性材料によって形成された弾性体51よりも硬質な材料、例えば金属、樹脂などを材料として形成されている。
【0025】
図3に示すように、基体31の両端に設けられた窪み33の座面34は、粗面34aの形態を有している。窪み33の内部で座面34に座している一対の端部弾性体52は、粗面34aに接触している(図2参照)。粗面34aは、端部弾性体52との間の結合力を増大させる。このような粗面34aは、シボ加工によって形成されている。
【0026】
図4に示すように、緩衝ストッパ11は、長さL1の全長を有している。基体31の全長は長さL2である。長さL3は、ストレート部36の高さである。基体31の両端の座面34の離間距離は長さL4であり、長さL5は、端部弾性体52の軸方向長さである。
【0027】
緩衝ストッパ11は、幅W1の全幅を有している。幅W2は貫通孔32の直径、幅W3は端部弾性体52の最大直径、幅W4は端部弾性体52の最小直径、そして幅W5はストレート部36の肉厚である。
【0028】
以上説明した緩衝ストッパ11は、基体31をインサートしたゴム状弾性材料の加硫成形によって製造される。その製造方法は、次の三つの工程を含む。
(第1の工程)基体31を用意し、座面34を粗面34aの形態で設ける工程
(第2の工程)基体31を成形型101にインサートする工程
(第3の工程)基体31をインサートした成形型101にゴム状弾性材料を導入する工程
【0029】
第1の工程は、座面34を粗面34aの形態で設けるために、一例として、両端に窪み33を有する基体31をあらかじめ用意し、窪み33の座面34にシボ加工を施す。これによって粗面34aの形態の座面34が得られる(図3参照)。
【0030】
シボ加工としては、代表的にはブラスト装置を用いたブラスト処理、つまりスチールショットやサンドなどの投射材を座面34に投射する梨地処理を採用することができる。
【0031】
シボ加工の別の実施の形態としては、座面34をエッチング処理によって粗面34aにするようにしてもよい。
【0032】
シボ加工は、金属製の基体31にも樹脂製の基体31にも施すことが可能である。
【0033】
座面34を粗面34aの形態で設ける別の一例として、金属製であるか樹脂製であるかを問わず、基体31が金型(図示せず)から成型されるものである場合には、金型のうち窪み33の底面を成型する部分にシボ加工を施すようにしてもよい。この場合のシボ加工にも、前述したブラスト処理(梨地処理)やエッチング処理を用いることができる。
【0034】
シボ加工を施した金型を用いて基体31を成型すれば、金型に施されたシボの凹凸が基体31に転写され、窪み33の底面に設けられる座面34は自ずと粗面34aになる。
【0035】
以上説明した第1の工程を実行することで、座面34の表面粗さは、シボ加工を施されていない部分の基体31の表面粗さよりも大きくなる。
【0036】
図5(A)~(D)に示すように、第2の工程で使用する成形型101は、下型101Lと上型101Uとの組み合わせ構造を有しており、一対の端部弾性体52を成形する領域に一対のキャビティ102を設けている。下型101Lにはキャビティ102Lが設けられ、上型101Uにはキャビティ102Uが設けられ、これらのキャビティ102L,102Uが一対のキャビティ102を形成する。ゲート103は、例えば一方のキャビティ102Uにのみ連絡する位置に設けられている。成形型101は、一対のキャビティ102(102L,102U)の中間部分に基体31を保持する領域を保持領域104として備えている。この保持領域104に保持されることで、基体31は成形型101にインサートされる。
【0037】
図5(A)に示すように、第2の工程では、型開きした成形型101の下型101Lに対して、座面34に粗面加工を施された基体31がセットされる。基体31のセット位置は、保持領域104となるべき領域である。このとき基体31は、貫通孔32を鉛直に向けた方向でセットされる。
【0038】
図5(B)に示すように、下型101Lに基体31をセットした後、上型101Uを下降させて型締めする。基体31は、下型101Lと上型101Uとの間に形成される保持領域104に位置決めされて保持され、成形型101にインサートされる。このときインサートされた基体31の下方には、下型101Lがキャビティ102Lを形成し、上型101Uがキャビティ102Uを形成する。一対のキャビティ102L,102Uは、基体31に設けられた貫通孔32を介して連絡した状態になる。
【0039】
図5(C)に示すように、第3の工程では、ゲート103から一方のキャビティ102Uにゴム状弾性材料が導入される。ゴム状弾性材料は基体31に設けられた貫通孔32に流れ込み、さらに反対側のキャビティ102Lに流れ込む。これによって一対の端部弾性体52を中央弾性体53で一体に連結した一体成型品の弾性体51が加硫成形される。
【0040】
図5(D)に示すように、上型101Uを上昇させて型開きをすれば、基体31に弾性体51を加硫成形させた緩衝ストッパ11を取り出すことができる。このとき第3の工程では、基体31に接着剤が塗布されない。したがって弾性体51は、基体31に加硫接着されない。その結果弾性体51は、基体31に対して、非接着面55によって接触する。非接着面55は、基体31に対して接触する弾性体51のあらゆる面を意味する。
【0041】
このような構成において、緩衝ストッパ11は、トランスミッションに接続されるトランスファーに組み込まれたトルク変動吸収装置のダンパ部に組み込まれて使用される。ダンパ部は、入力回転部材と出力回転部材との間に配置されたコイルスプリングのばね力によって変動トルクを吸収する。入力回転部材と出力回転側部材とにはそれぞれダンパ部の捩れを所定の角度で規制する一対のストッパ片が設けられており、緩衝ストッパ11は、これらのストッパ片の間に配置され、ストッパ片同士が衝突するときの衝撃を吸収して緩和する(以上すべて図示せず)。
【0042】
(基体からの弾性体の剥離防止)
前述したとおり、第3の工程において、弾性体51は基体31に加硫接着されない。このため基体31に接着剤を塗布する工程が不要で、その分製造工程の簡略化を図ることができる。
【0043】
その一方で、第3の工程では、成形型101内で完成した緩衝ストッパ11を成形型101から離型する作業が必要になる。このとき弾性体51は、成形型101にくっついた状態になっている。このため離型時には、成形型101と弾性体51との間に離型を妨げようとする抵抗が発生し、この抵抗は、基体31と弾性体51とを剥がそうとする力を生じさせる。
【0044】
本実施の形態の緩衝ストッパ11では、端部弾性体52を支持する座面34が粗面34aの形態で設けられている。粗面34aは、座面34と端部弾性体52との間の結合力を高める。これによって離型時における基体31と弾性体51との剥離を防止することができる。
【0045】
(コイルスプリングとの接触)
ダンパ部の動作時、コイルスプリングは緩衝ストッパ11に接触することがある。このとき緩衝ストッパ11は、最大直径幅W3の端部弾性体52よりも直径幅W1の基体31の方が大きな直径を有しているので、コイルスプリングは弾性体51(端部弾性体52)には接触せず、基体31の外周面に接触する。これによってコイルスプリングの摩耗が抑制される。また弾性体51がコイルスプリングに挟み込まれて破損することも防止することができる。
【0046】
(弾性体の保持の確実性)
緩衝ストッパ11は、貫通孔32の直径幅W2が端部弾性体52の直径幅W3よりも遥かに小径なので、弾性体51を基体31に加硫接着していないにもかかわらず、基体31に対する弾性体51の固定的な保持を確実にしている。
【0047】
このとき端部弾性体52は、ストレート部36の内側壁35によって径方向への移動が抑制され、より安定的に保持される。ストレート部36による端部弾性体52の保持状態は、ストレート部36の高さ(長さL3)によって定められる窪み33の深さによって決定される。
【0048】
(弾性体の圧縮力の向上)
端部弾性体52を窪み33に嵌め込むという構成は、緩衝ストッパ11の圧縮時、端部弾性体52の圧縮力を高めるという役割も担っている。軸方向に圧縮された端部弾性体52は、ストレート部36の内側壁35によってより圧縮力を高められ、その分高い反発力を発揮する。これによって緩衝ストッパ11に過大な衝撃エネルギーが印加された場合、打音などの低減効果をより一層高めることが可能になる。
【0049】
(座屈の防止)
図6に示すように、緩衝ストッパ11は、ストッパ片同士が衝突するときの衝撃を吸収して緩和する際、一対の端部弾性体52には軸方向に圧縮する圧縮力Fが加わる。このとき端部弾性体52が座屈すると、座屈した部分に応力が集中し、端部弾性体52の耐久性が低下したり、端部弾性体52に所望の反力が得られなくなってしまったりする。
【0050】
本実施の形態の緩衝ストッパ11は、一対の端部弾性体52の外周面に、先細り形状、つまり先端にいくほど断面円形の直径が小さくなるテーパー形状を与えている。このようなテーパー形状は、端部弾性体52に圧縮力Fが加えられたとき、端部弾性体52の内部における力の流れる方向を図6中の矢印aの方向に転換し、端部弾性体52を座屈しにくくすることができる。その結果、端部弾性体52の耐久性の低下が防止され、端部弾性体52に所望の反力を得ることができる。
【0051】
(緩衝特性の変更)
本実施の形態の緩衝ストッパ11の長所は、一対の端部弾性体52を中央弾性体53で連結する弾性体51のH形形状である。
【0052】
このような弾性体51の形状は、その軸方向長さ及び直径を変えることなく、緩衝ストッパ11の緩衝特性を変更することができるという利点をもたらす。より詳しくは、基体31の両端に位置する窪み33の座面34を結ぶ長さL4を適宜設定することで、一対の端部弾性体52の軸方向長さL5を変更することができる。端部弾性体52の剛性はその軸方向長さL5に依存するため、長さL5を適宜設定することで、緩衝ストッパ11それ自体の軸方向長さ及び直径を変えることなく、その緩衝特性を自由に変更することができる。
【0053】
こうして緩衝ストッパ11それ自体の軸方向長さ及び直径を変えることなく、その緩衝特性を自由に変更し得ることは、トルク変動吸収装置のダンパ部に組み込まれて使用されるという構成上、大きな意義を有している。緩衝ストッパ11はコイルスプリングの内側に配置するものであること、その軸方向長さは一対のストッパ片の衝突位置を決定づけるものであることを考慮すると、緩衝ストッパ11の直径及び軸方向長さとして許容される寸法は、自ずとある範囲に収束せざるを得ないからである。
【0054】
緩衝ストッパ11それ自体の軸方向長さ及び直径の変更なしに緩衝特性を自由に変更し得ることのもう一つの意義は、成形型101の変更なしに緩衝特性が異なる複数種類の緩衝ストッパ11を製造し得ることである。緩衝ストッパ11の緩衝特性は、前述したとおり端部弾性体52の軸方向長さL5に依存し、この長さL5は、基体31の両端に位置する窪み33の座面34を結ぶ長さL4によって定められる。基体31の全長の長さL2が変動しなければ成形型101の変更が不要であるため、長さL4の変動は成形型101に何ら影響を与えるものではない。よって上記弾性体51のH形形状は、成形型101を変更することなく、緩衝特性が異なる複数種類の緩衝ストッパ11を製造することができるという利点をもたらす。
【0055】
加えて本実施の形態の緩衝ストッパ11は、基体31に対する弾性体51の加硫接着を必要とせず、また弾性体51の加硫成形時に個取り数を増加することができる。このため低コスト化が可能である。
【0056】
実施に際しては、各種の変更や変形が許容される。
【0057】
例えば本実施の形態では円柱形状の基体31を示したが、実施に際しては、基体31は柱形状であればよく、必ずしも断面円形の円柱形状である必要はない。
【0058】
上記実施の形態では、端部弾性体52の外周面をテーパー形状にし、端部弾性体52の座面34を粗面34aとした一例を示したが、実施に際しては、いずれか一方のみを採用した緩衝ストッパ11とするようにしてもよい。
【0059】
上記実施の形態中、端部弾性体52の先細り形状をなす図面中のテーパー角度は一つの例示にすぎず、端部弾性体52のテーパー角度は、様々な角度に設定することが可能である。
【0060】
上記実施の形態で紹介した座面34を粗面34aの形態で設けるための各種の方法は、いくつかの例示にすぎない。粗面34aを形成するために、他のあらゆる方法を用いることが可能である。
【0061】
上記実施の形態では、窪み33の底面のみを粗面34aにした形態を例示したが、実施に際しては、窪み33の底面以外の部分に粗面34aを設けるようにしてもよい。
【0062】
その他のあらゆる変更や変形が許容される。
【符号の説明】
【0063】
11 緩衝ストッパ
31 基体
32 貫通孔
33 窪み
34 座面
34a 粗面
35 内側壁
36 ストレート部
37 端面
51 弾性体
52 端部弾性体
53 中央弾性体
54 凹部
55 非接着面
101 成形型
a 力の流れる方向
F 圧縮力
L1 緩衝ストッパの全長
L2 基体の全長
L3 ストレート部の高さ
L4 座面の離間距離
L5 端部弾性体の軸方向長さ
W1 緩衝ストッパの全幅
W2 貫通孔の直径
W3 端部弾性体の最大直径
W4 端部弾性体の最小直径
W5 ストレート部の肉厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6