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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】共振型電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20240704BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M3/155 Q
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022560419
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(86)【国際出願番号】 IB2020000926
(87)【国際公開番号】W WO2022096907
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】下村 卓
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】大久保 明範
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-056737(JP,A)
【文献】特開2001-286134(JP,A)
【文献】特開2017-046413(JP,A)
【文献】米国特許第04720668(US,A)
【文献】特開2015-012624(JP,A)
【文献】特開2009-254062(JP,A)
【文献】特開2009-017749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H02M 3/00 - 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電位端子、低電位端子及び制御端子を有するスイッチング素子と、前記高電位端子又は低電位端子に直列又は並列に接続されたコンデンサ及びインダクタとを備え、入力される電力を変換して出力する主回路と、
前記制御端子に制御信号を出力して、前記スイッチング素子を駆動する駆動回路と、を有し、
前記スイッチング素子は、
前記制御端子に入力される前記制御信号の信号値に応じてオフ状態又はオン状態となり、
前記駆動回路は、
前記スイッチング素子がオフ状態となる前記制御信号の信号値として、2種類以上の信号値を有し、
前記2種類以上の信号値のそれぞれは、
前記主回路で発生すべき共振周波数に従って設定される
共振型電力変換装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、
前記2種類以上の信号値を用いて、前記スイッチング素子がオフ状態となる前記制御信号の信号値を変更する
請求項1記載の共振型電力変換装置。
【請求項4】
前記駆動回路は、
前記スイッチング素子を第1オフ期間の後にオン期間を経て第2オフ期間へと変化させる場合に、前記第2オフ期間における前記制御信号の信号値を、前記第1オフ期間における前記制御信号の信号値から変更する
請求項3記載の共振型電力変換装置。
【請求項5】
前記駆動回路は、
前記主回路の入力及び出力、並びに、前記スイッチング素子、前記コンデンサ及び前記インダクタの電圧、電流及び温度のうち1つ以上の値に基づいて、前記第2オフ期間における前記制御信号の信号値を、前記第1オフ期間における前記制御信号の信号値から変更する
請求項4記載の共振型電力変換装置。
【請求項6】
前記駆動回路は、
前記主回路の出力が増加する場合、前記第2オフ期間における前記制御信号の信号値を、前記第1オフ期間における前記制御信号の信号値よりも高くする
請求項5記載の共振型電力変換装置。
【請求項7】
前記駆動回路は、
1つのオフ期間の中で前記制御信号の信号値を1回以上変更し、前記オフ期間の中に、前記制御信号の信号値が低い第1期間と前記制御信号の信号値が前記第1期間よりも高い第2期間とを設定する
請求項3記載の共振型電力変換装置。
【請求項8】
前記駆動回路は、
前記主回路の入力及び出力、並びに、前記スイッチング素子、前記コンデンサ及び前記インダクタの電圧、電流及び温度のうち1つ以上の値に基づいて、前記オフ期間における前記第1期間と前記第2期間との割合、及び、前記第1期間における前記制御信号の信号値と前記第2期間における前記制御信号の信号値との比率の一方又は両方を変更する
請求項7記載の共振型電力変換装置。
【請求項9】
前記駆動回路は、
前記第1期間、前記第2期間の順番で、前記オフ期間の中に前記第1期間と前記第2期間とを設定する
請求項7又は8記載の共振型電力変換装置。
【請求項10】
前記駆動回路は、
1つのオフ期間の中で、前記制御信号の信号値を時間の推移に合わせて連続的に変更する
請求項3記載の共振型電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振型電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、動作周波数付近に共振点をもつ共振用コイルと共振用コンデンサとからなる直列回路を含んだE級増幅回路が開示されている。このE級増幅回路には、共振用コンデンサと並列に、コンデンサとスイッチング素子との直列回路が接続されている。スイッチング素子の開放と短絡とを切り替えることで、共振用コンデンサと並列の合成容量を変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-243985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された手法は、コンデンサ及びスイッチング素子などの回路部品を主回路に追加する必要があり、回路構成が複雑になるという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な回路構成でありながら、スイッチング損失の低減を図ることができる共振型電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る共振型電力変換装置は、スイッチング素子と、スイッチングに直列又は並列に接続されたコンデンサ及びインダクタとを備える主回路と、スイッチング素子を駆動する駆動回路とを有している。駆動回路は、スイッチング素子がオフ状態となる制御信号の信号値として、2種類以上の信号値を有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡素な回路構成でありながら、スイッチング損失の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る共振型電力変換装置を示す構成図である。
図2図2は、半導体スイッチの制御タイミングを示すタイミングチャートである。
図3図3は、第1の実施形態に係る半導体スイッチの制御タイミングを示すタイミングチャートである。
図4図4は、制御電圧と半導体スイッチの出力容量との関係を示す図である。
図5図5は、第2の実施形態に係る半導体スイッチの制御タイミングを示すタイミングチャートである。
図6図6は、第2の実施形態に係る半導体スイッチの制御タイミングを示すタイミングチャートである。
図7図7は、共振型電力変換装置の変形例を示す図である。
図8図8は、共振型電力変換装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1を参照して、本実施形態に係る共振型電力変換装置の構成を説明する。本実施形態に係る共振型電力変換装置は、入力される電力を変換して出力する主回路10と、主回路10を駆動する駆動回路20とを備えている。主回路10には、電源1と負荷2とが接続されている。電源1は、例えば直流電源である。
【0011】
主回路10は、コンデンサ3、インダクタ4、及び半導体スイッチ5を備えている。主回路10は、半導体スイッチ5がオフ状態の期間において電圧が共振している電圧型共振回路となる。
【0012】
コンデンサ3及びインダクタ4は、電源1から負荷2までの間に、コンデンサ3及びインダクタ4の順番で直列に接続されている。
【0013】
半導体スイッチ5は、高電位端子と低電位端子と制御端子を有するスイッチング素子である。半導体スイッチ5は、例えばMOSFETであり、ドレイン端子D、ソース端子S及びゲート端子Gが、それぞれ高電位端子、低電位端子及び制御端子に相当する。
【0014】
半導体スイッチ5のドレイン端子Dは、コンデンサ3とインダクタ4との接続点に接続されている。半導体スイッチ5のソース端子Sは、電源1に接続されている。
【0015】
駆動回路20は、ゲート端子Gに制御信号を出力して、半導体スイッチ5を駆動する。半導体スイッチ5は、ゲート端子Gに入力される制御信号の信号値、具体的には、ゲート端子Gに印加される電圧(以下「制御電圧」という)に応じてオフ状態又はオン状態となる。
【0016】
半導体スイッチ5は、制御電圧がしきい値を超えたときに、オン状態、すなわち、ドレイン端子Dとソース端子Sとの間がオンする。また、半導体スイッチ5は、制御電圧がしきい値以下のときに、オフ状態、すなわち、ドレイン端子Dとソース端子Sとの間がオフする。以下、半導体スイッチ5がオン状態となる制御電圧を「オン制御電圧」、半導体スイッチ5がオフ状態となる制御電圧を「オフ制御電圧」という。
【0017】
本実施形態において、駆動回路20は、2種類以上のオフ制御電圧、すなわち、それぞれしきい値以下の電圧となる2種類以上の制御電圧を有している。そして、駆動回路20は、2種類以上のオフ制御電圧を用いて、オフ制御電圧を変更することができる。後述するように、2種類以上のオフ制御電圧のそれぞれは、主回路10で発生すべき共振周波数に従って設定される。
【0018】
以下、図2から図4を参照し、駆動回路20による半導体スイッチ5の制御方法を説明する。図2及び図3は、ゲート端子Gに印加される制御電圧Vgsに対する、ドレイン-ソース電圧ΔVdsの電圧変化量を示す。図4は、制御電圧Vgsに対する、半導体スイッチ5の出力容量Cossの変化を示す。
【0019】
まず、一般的なソフトスイッチングの概念を説明する。図2に示すように、駆動回路20は、半導体スイッチ5をオン状態とオフ状態とで交互に切り替える。電圧型共振回路である主回路10では、半導体スイッチ5がオフ状態のときにドレイン-ソース電圧ΔVdsが振動し、ドレイン-ソース電圧ΔVdsの電圧変化量には共振波形が発生する。
【0020】
共振波形は、コンデンサ3と、インダクタ4と、半導体スイッチ5の出力容量Cossとにより発生し、その周期は、コンデンサ3と、インダクタ4と、半導体スイッチ5の出力容量Cossとに依存する主回路10の共振周波数に関係する。コンデンサ3と、インダクタ4と、半導体スイッチ5の出力容量Cossが同一の条件であれば、共振周波数も一定であるため、ドレイン-ソース電圧ΔVdsの電圧変化量も一定の周期Taの共振波形となる。
【0021】
そこで、駆動回路20は、主回路10の共振周波数に合わせたスイッチング周波数でオン制御電圧又はオフ制御電圧をゲート端子Gに印加する。これにより、ソフトスイッチング又は低損失なスイッチングが可能となる。図2は、半波共振を例示しているが、全波共振であってもよい。
【0022】
ところで、主回路10の出力などの変更に応じてスイッチングタイミングを変化させる場合には、スイッチング周波数と共振周波数との間にずれが発生する。そのため、ソフトスイッチング又は低損失なスイッチングができなくなる虞がある。本実施形態では、必要なスイッチング周波数に合わせて、主回路10の共振周波数を変更することで、ソフトスイッチング又は低損失なスイッチングを実現することとしている。
【0023】
駆動回路20が3種類のオフ制御電圧を有するものとし、図3には、3種類のオフ制御電圧V0、V1、V2が示されている。オフ制御電圧V0、V1、V2は、それぞれ半導体スイッチ5のしきい値以下の電圧値であり、V1の方がV0よりも電圧が低く、V2の方がV1よりも電圧が低くなっている。オフ制御電圧V0は、図3に示す1番目のオフ期間に印加され、オフ制御電圧V1は、1番目のオフ期間の後、オン期間を経て到来する2番目のオフ期間に印加される。同様に、オフ制御電圧V2は、2番目のオフ期間の後、オン期間を経て到来する3番目のオフ期間に印加される。
【0024】
ここで、図4に示すように、制御電圧Vgsと出力容量Cossとの間には、制御電圧Vgsが下がると出力容量Cossが小さくなるという関係がある。よって、駆動回路20からゲート端子Gに印加するオフ制御電圧を下げることにより、出力容量Cossが減少する。
【0025】
そのため、図3に示すように、オフ制御電圧V0、V1、V2を下げることにより、共振波形の周期Ta、Tb、Tcが短くなる、すなわち、主回路10に発生する共振周波数が高くなるのである。このような関係を踏まえ、駆動回路20が有するオフ制御電圧V0、V1、V2は、主回路10に発生すべき共振周波数に基づいて設定される。
【0026】
そして、オフ制御電圧V0、V1、V2に対応する共振波形の周期Ta、Tb、Tcに合わせてスイッチング周期を変更することで、ソフトスイッチング又は低損失なスイッチングを実現することができる。例えば、主回路10の出力が増加するような状況であれば、先行するオフ期間に対して次に到来するオフ期間では、スイッチング周期を長くする必要がある。よって、先行するオフ期間のオフ制御電圧に比べ、次に到来するオフ期間のオフ制御電圧を高くする。これにより、主回路10の出力変更に応じてスイッチング周期を変更しつつ、ソフトスイッチング又は低損失なスイッチングを実現することができるのである。
【0027】
このように本実施形態によれば、駆動回路20は、2種類以上のオフ制御電圧を有している。オフ制御電圧がゲート端子Gに印加されている場合、その電圧値(オフ制御電圧の種類)によって半導体スイッチ5の出力容量Cossが相違する。したがって、駆動回路20が出力するオフ制御電圧の種類に応じて、半導体スイッチ5の出力容量Cossが可変容量のように振る舞うこととなる。これにより、主回路10に発生する共振周波数を自在に制御することができる。そして、主回路10に発生する共振周波数と、スイッチング周波数とを調和させることで、スイッチング損失の低減を図ることができる。また、2種類以上のオフ制御電圧を利用するだけでよいので、主回路10に回路部品を追加する必要がない。これにより、簡素な構成でありながら、スイッチング損失の低減を図ることができる。
【0028】
また、駆動回路20が有する2種類以上のオフ制御電圧のそれぞれは、主回路10で発生すべき共振周波数に従って設定される。この構成によれば、2種類以上のオフ制御電圧に応じて、主回路10に発生する共振周波数を任意に制御することができる。そして、主回路10に発生する共振周波数と、スイッチング周波数とを調和させることで、ソフトスイッチングを行うことができる状況が増えるので、スイッチング損失の低減を図ることができる。
【0029】
また、駆動回路20は、2種類以上のオフ制御電圧を用いて、オフ制御電圧を変更することができる。この構成によれば、駆動回路20がオフ制御電圧を変更することで、半導体スイッチ5の出力容量Cossが可変容量のように振る舞うこととなるので、主回路10で発生する共振周波数を制御することができる。そして、主回路10に発生する共振周波数と、スイッチング周波数とを調和させることで、ソフトスイッチングを行うことができる状況が増えるので、スイッチング損失の低減を図ることができる。
【0030】
また、駆動回路20は、先行するオフ期間の後、オン期間を経て次のオフ期間へと変更する場合、次のオフ期間におけるオフ制御電圧を、先行するオフ期間のオフ制御電圧から変更することができる。この構成によれば、オフ期間毎に、ゲート端子Gに印加されるオフ制御電圧を変更することができるので、共振周波数を最適化する回数を増やすことができる。これにより、スイッチング損失の低減を図ることができる。
【0031】
この場合、駆動回路20は、主回路10の出力に基づいて、次のオフ期間におけるオフ制御電圧を変更することができる。主回路10に発生する共振周波数と、主回路10の出力に対応するスイッチング周波数とを調和させることができる。これにより、ソフトスイッチングを行うことができる状況が増えるので、スイッチング損失の低減を図ることができる。
【0032】
具体的には、駆動回路20は、主回路10の出力が増加する場合、次に到来するオフ期間のオフ制御電圧を、先行するオフ期間のオフ制御電圧よりも高くしている。この構成によれば、主回路10の出力増加に応じたスイッチング周波数の変更と、主回路10の共振周波数の変更とを対応させせることができる。これにより、スイッチング損失の低減を図ることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、駆動回路20が、主回路10の出力に基づいて、オフ制御電圧を変更する内容を説明した。しかしながら、駆動回路20は、主回路10の入力に基づいて、オフ制御電圧を変更してもよい。また、半導体スイッチ5、コンデンサ3及びインダクタ4の電圧、電流及び温度の変化によって主回路10の共振周波数が変更する。そこで、駆動回路20は、半導体スイッチ5、コンデンサ3及びインダクタ4の電圧、電流及び温度に基づいて、オフ制御電圧を変更してもよい。これにより、主回路10の入出力変動、或いは、環境変動に係わらず、スイッチング損失の低減を図ることができる。
【0034】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態に係る共振型電力変換装置について説明する。第2の実施形態に係る共振型電力変換装置が、第1の実施形態に係る共振型電力変換装置と相違する点は、オフ制御電圧の制御方法である。第1の実施形態と共通する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0035】
上述した第1の実施形態の駆動回路20は、1つのオフ期間内であれば、時間の推移に関わらずオフ制御電圧を一定に制御している。一方、図5に示すように、本実施形態の駆動回路20は、1つのオフ期間内で、2種類のオフ制御電圧V0、V1を切り替えている。具体的には、駆動回路20は、オフ期間が始まるタイミングT0からタイミングT1までの第1期間ではオフ制御電圧V1を出力し、タイミングT1からオフ期間が終わるタイミングT2までの第2期間ではオフ制御電圧V0を出力している。
【0036】
この場合、ドレイン-ソース電圧ΔVdsの共振波形は、タイミングT0からタイミングT1までの第1期間においてオフ制御電圧V1に対応した応答を示し、タイミングT1からタイミングT2までの第2期間においてオフ制御電圧V0に対応した応答を示す。オフ制御電圧V1に対応した第1期間では、周期の短い共振波形が生じるので、オフ期間の全部でオフ制御電圧V0を一律に印加した場合と比べ、共振波形の周期が短くなる。
【0037】
このように、1つのオフ期間の中に、オフ制御電圧V1の第1期間と、オフ制御電圧V1よりも高いオフ制御電圧V0の第2期間とを設定することで、主回路10に発生する共振周波数を高くすることができる。
【0038】
また、第1期間と第2期間との割合を変更することで、共振波形の周期が相違する。具体的には、第1期間の割合を増やせば、共振波形の周期が相対的に短くなる。これにより、主回路10に発生する共振周波数を高くすることができる。
【0039】
また、第1期間に印加するオフ制御電圧は、オフ制御電圧V1に限らず、オフ制御電圧V0よりも低い電圧値であればよい。このとき、第1期間に印加するオフ制御電圧が第2期間に印加するオフ制御電圧よりも低い程、共振波形の周期が相対的に短くなる。これにより、主回路10に発生する共振周波数を高くすることができる。
【0040】
このように本実施形態によれば、駆動回路20は、1つのオフ期間内で、オフ制御電圧を変更することができるので、主回路10で発生する共振周波数を任意に制御することができる。これにより、主回路10に発生する共振周波数と、スイッチング周波数とを調和させることができる。その結果、ソフトスイッチングを行うことができる状況が増えるので、スイッチング損失の低減を図ることができる。
【0041】
また、駆動回路20は、第1期間と第2期間との割合を変更したり、第1期間に印加するオフ制御電圧と第2期間に印加するオフ制御電圧との電圧比率を変更したりすることができる。これにより、主回路10で発生する共振周波数を柔軟に制御することができる。
【0042】
このとき、駆動回路20は、第1の実施形態と同様、主回路10の入力及び出力、並びに、半導体スイッチ5、コンデンサ3及びインダクタ4の電圧、電流及び温度のうち1つ以上の値に基づいて、第1期間と第2期間との割合、或いは、電圧比率を変更することができる。これにより、主回路10の入出力変動、或いは環境変動に係わらず、スイッチング損失の低減を図ることができる。
【0043】
なお、駆動回路20は、2種類のオフ制御電圧を用いて、1つのオフ期間の中で切り替えを行っている。しかしながら、駆動回路20は、3種類以上のオフ制御電圧を用いて切り替えを行ってもよい。
【0044】
また、本実施形態では、駆動回路20は、第1期間から第2期間への切り替える際に、低いオフ制御電圧から高いオフ制御電圧へと切り替えている。これにより、オフ期間の終わりの電圧は、高いオフ制御電圧となる。したがって、オン制御電圧との乖離が少ないので、オン期間へとスムーズに移行することができる。ただし、駆動回路20は、第1期間から第2期間への切り替える際に、高いオフ制御電圧から低いオフ制御電圧へと切り替えてもよい。
【0045】
また、上述した実施形態において、駆動回路20は、オフ制御電圧をステップ的に変更している。しかしながら、1つのオフ期間の中でオフ制御電圧の切り替え方法は、これに限定されない。
【0046】
図6に示すように、駆動回路20は、1つのオフ期間の中で、オフ制御電圧を時間の推移に合わせて連続的に変更してもよい。同図に示す例では、オフ制御電圧は、オフ期間の始まりでV1となり、時間の推移に合わせて連続的に上昇し、オフ期間の始まりでV0となる。この構成によれば、オフ期間の全部でオフ制御電圧V0を一律に印加した場合と比べ、共振波形の周期が相対的に短くなる。これにより、主回路10で発生する共振周波数を適切に制御することができる。
【0047】
この場合、駆動回路20は、オフ期間の始まりのオフ制御電圧、及び、オフ期間の終わりのオフ制御電圧の一方又は両方を変更することで、オフ制御電圧の傾きを変更することができる。これにより、主回路10で発生する共振周波数を適切に制御することができる。
【0048】
図6に示す例では、駆動回路20は、オフ期間の始まりから終わりまで、オフ制御電圧を線形的に変更しているが、これに限らない。駆動回路20は、オフ制御電圧を非線形的に変更してもよい。
【0049】
なお、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態では、主回路10として、図1に示す構成を示した。しかしながら、主回路10は、電圧型共振回路に限らず、半導体スイッチ5がオン状態の期間において電流が共振している電流型共振回路であってもよい。
【0050】
例えば、図7に示すように、主回路10は、電源1に対してコンデンサ3を並列接続して共振回路を構成してもよい。例えば、図8に示すように、主回路10は、コンデンサ7と、インダクタ8とをさらに有し、E級増幅回路として機能する。この主回路10において、インダクタ8は、電流を一定にする作用を持ち、コンデンサ7は、半導体スイッチ5がオフ状態となる時間領域で負荷2に電流が流れるようにするために設けられている。
【0051】
また、本実施形態では、半導体スイッチ5の一例としてMOSFETを示した。しかしながら、主回路10のスイッチング素子は、ユニポーラ型、バイポーラ型、素子材料のバンドギャップなどに限らず使用可能である。
【0052】
例えば、半導体スイッチは、制御端子に入力される制御信号の信号値、具体的には、制御端子に供給される電流(以下「制御電流」という)に応じてオフ状態又はオン状態となってもよい。従って、半導体スイッチは、制御電流がしきい値を超えたときに、オン状態となる。また、半導体スイッチは、制御電流がしきい値以下のときに、オフ状態となる。以下、半導体スイッチ5がオン状態となる制御電流を「オン制御電流」、半導体スイッチ5がオフ状態となる制御電流を「オフ制御電流」という。
【0053】
この場合、駆動回路20は、2種類以上のオフ制御電流、すなわち、それぞれしきい値以下の電流となる2種類以上の制御電流を有している。この場合、駆動回路20は、2種類以上のオフ制御電流を任意に変更することができ、上述した実施形態と同様、2種類以上のオフ制御電流のそれぞれは、主回路10で発生すべき共振周波数に基づいて設定されている。
【0054】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0055】
1 電源
2 負荷
10 主回路
3 コンデンサ
4 インダクタ
5 半導体スイッチ
20 駆動回路
G ゲート端子(制御端子)
D ドレイン端子(高電位端子)
S ソース端子(低電位端子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8