IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オートリブ ディベロップメント エービーの特許一覧

<>
  • 特許-エアバッグ装置 図1
  • 特許-エアバッグ装置 図2
  • 特許-エアバッグ装置 図3
  • 特許-エアバッグ装置 図4
  • 特許-エアバッグ装置 図5
  • 特許-エアバッグ装置 図6
  • 特許-エアバッグ装置 図7
  • 特許-エアバッグ装置 図8
  • 特許-エアバッグ装置 図9
  • 特許-エアバッグ装置 図10
  • 特許-エアバッグ装置 図11
  • 特許-エアバッグ装置 図12
  • 特許-エアバッグ装置 図13
  • 特許-エアバッグ装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/239 20060101AFI20240704BHJP
   B60R 21/203 20060101ALI20240704BHJP
   B60R 21/231 20110101ALI20240704BHJP
【FI】
B60R21/239
B60R21/203
B60R21/231
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022566777
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2021038494
(87)【国際公開番号】W WO2022118550
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2020201378
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】森田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】安倍 和宏
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-062469(JP,A)
【文献】特開2011-051424(JP,A)
【文献】国際公開第2020/170864(WO,A1)
【文献】実開平05-082708(JP,U)
【文献】国際公開第2020/184167(WO,A1)
【文献】特開2020-026253(JP,A)
【文献】特開2020-026211(JP,A)
【文献】特開2017-094912(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0121889(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心から左右縁部までの距離に対して上縁部までの距離が短い形状のリムを有する車両のステアリングホイールに搭載されるエアバッグ装置であって、
前記ステアリングホイールに固定され、膨張ガスを発生するガス発生器と;
前記膨張ガスによって乗員側に向かって膨張展開するエアバッグクッションと、を備え、
前記エアバッグクッションは、前記膨張ガスを排気するベントホールを備え、
膨張展開した前記エアバッグクッションに乗員が当接し、当該エアバッグクッションが車両前方に向かって変形し、前記エアバッグクッションの上方領域の一部が前記ステアリングホイールの前記リムよりも前方に進出した時に、自動車内装部品に当接して塞がれる位置に前記ベントホールが設けられ
膨張展開した前記エアバッグクッションは、乗員が当接する前には、前記ステアリングホイールの前記リムよりも車両後方に位置することを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記ベントホールは、前記リムの上端(L1)よりも上方であり、且つ、膨張展開した前記エアバッグクッションを側方から見た時に垂直に延びる中心線(L2)よりも前方に形成されることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記ベントホールは、前記エアバッグクッションの表面上の距離(A+B)として、前記ガス発生器の取り付け位置の中心から150mm~400mmの範囲に、形成されることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記ベントホールは、膨張展開した前記エアバッグクッションを前記ステアリングホイール側又は乗員側から見たときに、前記ガス発生器の取り付け位置の中心から水平方向に仮想的に引いた線に対して、上方に10°~170°の範囲内に形成されることを特徴とする請求項2又は3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグクッションは、前記乗員に面する乗員側パネルと、当該乗員側パネルに対向するステアリングホイール側パネルと、これら乗員側パネルとステアリングホイール側パネルとを連結するサイドパネルを含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記ベントホールは、前記サイドパネルに形成されることを特徴とする請求項5に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記エアバッグクッションは、前記乗員に面する乗員側パネルと、当該乗員側パネルに対向するステアリングホイール側パネルとを備え、
前記ステアリングホイール側パネルと前記乗員側パネルの少なくとも一方は、外周部から中央に向けて徐々に狭まるように形成された切り欠き部を有し、
前記切り欠き部の対向する片同士を接合することで、前記エアバッグクッションの中心側が凸になるように立体的に成形されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項8】
前記ベントホールは、前記ステアリングホイール側パネルに形成されることを特徴とする請求項5又は7に記載のエアバッグ装置。
【請求項9】
膨張展開した前記エアバッグクッションに前記乗員が当接する前の段階において、当該エアバッグクッションを側方から見たときに、前記ステアリングホイールの回転軸と平行な方向における前記エアバッグクッションの上端部の厚さD1が、下端部の厚さD2より大きいことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項10】
膨張展開した前記エアバッグクッションを側方から見た時に、前記ステアリングホイールの回転中心より下側の部分の長さH2が上側の部分の長さH1よりも長くなるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項11】
前記内装部品は、前記ステアリングホイールの一部、又はインストルメントパネルを含むことを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項12】
前記ガス発生器の周辺に、下方向に向かってガスを導く開口部と、側方にガスを排出するベントホールとを備えたディフューザが設けられており、前記エアバッグクッションの展開初期の段階では、前記ディフューザによってガスが下方に導かれ、前記エアバッグクッションの上方領域よりも先に前記エアバッグクッションの下方領域が展開を開始することを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エアバッグ装置に関し、特に、ステアリングホイールに収容されるドライバエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の事故発生時に乗員を保護するために1つまたは複数のエアバッグ装置を車両に設けることは周知である。エアバッグ装置としては、例えば、ステアリングホイールの中心付近から展開して運転者を保護する、いわゆるドライバエアバッグ装置や、窓の内側で下方向に展開して車両横方向の衝撃や横転、転覆事故時に乗員を保護するカーテンエアバッグ装置や、車両横方向の衝撃時に乗員を保護すべく乗員の側部(シートの側部)で展開するサイドエアバッグ装置などの様々な形態がある。
【0003】
ステアリングホイールに収容されたドライバエアバッグ装置においては、エアバッグクッションの速やかな展開によって乗員を確実に拘束することが要求され、その点でエアバッグクッションの展開形状、展開姿勢が安定していることが重要である。ドライバエアバッグ装置においては、エアバッグクッションが展開する際にステアリングホイールのリムが反力面として機能し、エアバッグクッションの展開形状、展開姿勢の安定化に寄与する。
【0004】
ところで、ステアリングホイールの形状としては、一般的な円形の他に、円形の上側(12時側)や下側(6時側)が欠損した、飛行機の操縦桿のような異形のもが知られている。例えば、円形のリムを有する一般的なステアリングホイールに対して上側(12時側)が欠損した異形のステアリングホイールにおいては、乗員の頭部に面するエアバッグクッションの上側部分においてリムによる反力を受けることができず、膨張したエアバッグクッションに乗員の頭部が進入した時にエアバッグクッションが前方に押し倒され又は大きく変形して、拘束性能が損なわれる恐れがある。
【0005】
一方、特許文献1に開示されているように、エアバッグクッションのベントホールがステアリングホイールのリムとスポークとの間に位置する場合には、エアバッグクッションの内部の膨張ガスがベントホールから継続的に排出されるため、乗員から大きな圧力が加わったときに、エアバッグクッションが大きく凹んでしまう。このため、ドライバの体格が大きい場合には、乗員(ドライバ)の頭部がエアバッグクッションを潰してインストルメントパネル等に接触(衝突)する恐れがある。
【0006】
ステアリングホイールの下側に着目すると、ステアリングホイールの中心付近から展開するエアバッグクッションが、速やかにドライバの腹部付近(下方)に向かって展開し、ドライバがステアリングホイールに衝突する事態を回避する必要がある。また、円形のリムを有する一般的なステアリングホイールに対してリムの下側(6時側)が欠損した異形のステアリングホイールにおいては、エアバッグクッションの下部領域を速やかに展開させて、乗員の腹部付近を拘束する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-160528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、所謂異形のステアリングホイールを採用した車両において、膨張展開したエアバッグクッションに対して乗員から大きな圧力が加わったときにも、当該乗員を適切に保護することができるエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的は、所謂異形のステアリングホイールを採用した車両において、エアバッグクッションの展開姿勢を安定させ、乗員の拘束性能の向上に寄与するエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るエアバッグ装置は、回転中心から左右縁部までの距離に対して上縁部までの距離が短い形状のリムを有する車両のステアリングホイールに搭載されるエアバッグ装置であって、前記ステアリングホイールに固定され、膨張ガスを発生するガス発生器と;前記膨張ガスによって乗員側に向かって膨張展開するエアバッグクッションと、を備える。前記エアバッグクッションは、前記膨張ガスを排気するベントホールを備える。そして、膨張展開した前記エアバッグクッションに乗員が当接し、当該エアバッグクッションが車両前方に向かって変形し、前記エアバッグクッションの上方領域の一部が前記ステアリングホイールの前記リムよりも前方に進出した時に、自動車内装部品に当接して塞がれる位置に前記ベントホールが設けられる。
【0011】
ここで、「回転中心から左右縁部までの距離に対して上縁部までの距離が短い形状のリム」とは、通常使用される円形(環状)のリムに対して、リムに平行な面を時計の文字盤として見立てたときに、12時に相当する付近が欠損し、あるいは、当該部分が水平に延び、又は凹状に成形されているような場合を意味する。更に、エアバッグクッションの「下方領域」、「上方領域」とは、例えば、ステアリングホイールのリムの下端よりも下側、上端よりも上側と定めることができる。
【0012】
また、「自動車内装部品」とは、フロントウインドシールドの下で、ステアリングホイールよりも前方にある内装部品全体を意味し、インストルメントパネル、ステアリングホイールの一部を含むものである。「膨張展開した前記エアバッグクッションに前記乗員が当接」との状況は、車両の前方衝突等の事態が発生し、乗員がエアバッグクッションに進入した後、すなわち、乗員の衝突エネルギーがエアバッグクッションによって吸収し始めた後を意味する。また、「前記エアバッグクッションの上方領域の少なくとも一部が、前記リムよりも車両前方に進出した時」とは、エアバッグクッションに対して乗員が衝突した衝撃でエアバッグクッションの上部がステアリングホイールのリムの上端を超えて前方(内装部品側)に移動した時とすることができる。
【0013】
また、ベントホールが「塞がれる」とは、完全に密閉状態で塞がれる場合に限られず、膨張ガスの排出を効果的に抑制でき、膨張展開したエアバッグクッションの形状を維持できる程度に塞がれる状態を含むものである。
【0014】
本発明によれば、乗員の進入によりエアバッグクッションの上方領域がステアリングホイールよりも前方に進出した時に、ベントホールが自動車内装部品に当接して塞がれるように構成されているため、例えば、体格の大きな乗員がエアバッグクッションに進入(当接)したときに、ベントホールから必要以上にガスが排出されることなく、当該エアバッグクッションの展開形状(内圧)を維持することができる。その結果、乗員が潰れたエアバッグクッションを挟んでインストルメントパネル等の自動車内装部品に衝突するような事態を回避し、確実に乗員を保護することが可能となる。なお、「体格の大きな乗員」は、例えば、FMVSS208(米国衝突安全の法規)による衝突安全性能評価基準で規定されるAM50相当、又はそれより大柄な乗員と考えることができる。
【0015】
一方、乗員の体格が比較的小さく、エアバッグクッションの前方への変形が小さい場合には、エアバッグクッションはステアリングホイールからの反力のみで展開姿勢、展開形状を適切に保つことができる。このため、ベントホールは自動車内装部品によって塞がれることなく、エアバッグクッションは通常通り膨張展開し、ベントホールから膨張ガスが排気されることになる。なお、体格の小さな乗員とは、例えば、FMVSS208(米国衝突安全の法規)による衝突安全性能評価基準で規定されるAF05相当、又はそれより小柄な乗員と考えることができる。
【0016】
前記ベントホールは、前記リムの上端(L1)よりも上方であり、且つ、膨張展開した前記エアバッグクッションを側方から見た時に垂直に延びる中心線(L2)よりも前方に形成することが好ましい。ここで、中心線(L2)とは、膨張展開したエアバッグクッションの最大幅W1の中心位置を通る垂直なラインとすることができる。
【0017】
前記ベントホールは、前記エアバッグクッションの表面上の距離(A+B)として、前記ガス発生器の取り付け位置の中心から150mm~400mmの範囲に形成することができる。なお、「ガス発生器の取り付け位置の中心」はステアリングホイールの回転中心と一致する場合がある。
【0018】
前記ベントホールは、膨張展開した前記エアバッグクッションを前記ステアリングホイール側又は乗員側から見たときに、前記ガス発生器の取り付け位置の中心から水平方向に仮想的に引いた線に対して、上方に10°~170°の範囲内に形成することができる。
【0019】
上記のようにベントホールの配置を工夫することにより、エアバッグクッションの上方領域がステアリングホイールのリムよりも前方に進出した時に、当該ベントホールが自動車内装部品によって確実に塞がれることになる。仮に、上記のような配置としない(10°~170°の範囲外の)場合には、ベントホールが自動車内装部品に到達しないか、あるいは、ベントホールが自動車内装部品に対して斜めに接触して、ベントホールが十分に塞がれない恐れがある。
【0020】
前記エアバッグクッションは、前記乗員に面する乗員側パネルと、当該乗員側パネルに対向するステアリングホイール側パネルと、これら乗員側パネルとステアリングホイール側パネルとを連結するサイドパネルを含むことができる。このとき、 前記ベントホールは、前記サイドパネルに形成することができる。
【0021】
また、前記エアバッグクッションは、前記乗員に面する乗員側パネルと、当該乗員側パネルに対向するステアリングホイール側パネルとを備え、前記ステアリングホイール側パネルと前記乗員側パネルの少なくとも一方は、外周部から中央に向けて徐々に狭まるように形成された切り欠き部を有する構造とし、前記切り欠き部の対向する側辺同士を接合することで、前記エアバッグクッションの中心側が凸になるように立体的に成形することができる。このとき、前記ベントホールは、前記ステアリングホイール側パネルに形成することができる。
【0022】
膨張展開した前記エアバッグクッションは、乗員が当接する前には、前記ステアリングホイールの前記リムよりも車両後方に位置するように構成することができる。ここで、「膨張展開した前記エアバッグクッションに前記乗員が当接する前」とは、エアバッグクッションの展開初期の状態を意味する。
【0023】
膨張展開した前記エアバッグクッションに前記乗員が当接する前の段階において、当該エアバッグクッションを側方から見たときに、前記ステアリングホイールの回転軸と平行な方向における前記エアバッグクッションの上端部の厚さD1が、下端部の厚さD2より大きくなるように構成することができる。
【0024】
ここで、エアバッグクッションの上端部及び下端部の厚さD1及びD2は、ステアリングホイールのリムの表面から計測し、ステアリングホイールの回転軸と平行な方向におけるエアバッグクッションの上端部(最高部)の厚さ及び、下端部(最下部)の厚さと規定することができる。
【0025】
上記のように、膨張展開したエアバッグクッションに乗員が当接する前の段階において、当該エアバッグクッションの前後方向の厚さが、下方領域より上方領域の方が大きくなるように構成することにより、膨張展開したエアバッグクッションの上部に乗員の頭部が進入した時に、十分な厚さのエアバッグクッションによって乗員の頭部を適切に保護することが可能となる。また、エアバッグクッションの展開姿勢が安定し、エアバッグクッションのベントホールが自動車内装部品に確実に到達(接触)することになる。
【0026】
膨張展開した前記エアバッグクッションを側方から見た時に、前記ステアリングホイールの回転中心より下側の部分の長さH2が上側の部分の長さH1よりも長くなるように構成することができる。ここで、長さH2,H1は、展開したエアバッグクッションを側方から見たときに、ステアリングホイールの回転軸と直交して、リムの表面に平行に延びる方向における長さと規定することができる。
【0027】
上記のように、展開したエアバッグクッションの下側部分を長くすることにより、乗員の腹部周辺を確実に保護し、腹部周辺がステアリングホイールに衝突する等の好ましくない事態を回避することができる。
【0028】
前記内装部品は、前記ステアリングホイールの一部、又はインストルメントパネルを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明に係るエアバッグ装置が作動してエアバッグクッションが膨張展開した直後の様子を示す側面図である。
図2図2(A)、(B)、(C)は、本発明に適用可能な車両のステアリング形状の例を示す上面図である。
図3図3は、本発明に係るエアバッグ装置が作動して膨張展開したエアバッグクッションに乗員が進入(接触)した様子を示す側面図である。
図4図4は、本発明の第1実施例に係るエアバッグクッションのパネル構成を示す平面図である。
図5図5は、本発明の第1実施例に係るエアバッグ装置のエアバッグクッションのディメンジョンを示す説明図であり、エアバッグクッションが膨張展開した状態を模式的に示す。
図6図6は、本発明に係るエアバッグクッションの展開形状を示す模式図(側面図である)。
図7図7は、本発明の第2実施例に係るエアバッグクッションのパネル構成を示す平面図である。
図8図8は、図7に示すパネル構造のエアバッグクッションが展開した様子を示す側面図である。
図9図9は、本発明の第3実施例に係るエアバッグクッションのパネル構成を示す平面図である。
図10図10は、図9に示すパネル構造のエアバッグクッションが展開した様子を示す側面図である。
図11図11(A),(B)は、本発明の第4実施例に係るエアバッグクッションのパネル構成を示す平面図であり、同図(C)は当該エアバッグクッションが膨張展開した様子を示す斜視図である。
図12図12は、本発明の第5実施例に係るエアバッグクッションの展開状態を示す正面図(A)及び、側面図(B)である。
図13図13は、本発明の第6実施例に係るエアバッグクッションの展開状態を示す側面図であり、(A)が展開初期の状態、(B)がフル展開の状態を示す。
図14図14は、本発明の第7実施例に係るエアバッグ装置が作動した(エアバッグクッションが膨張展開した)状態での車両内部の様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、 本発明に係るエアバッグ装置について、添付図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員が向いている方向を「前方」、その反対方向を「後方」と称し、座標の軸を示すときは「前後方向」と言う。また、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員の右側を「右方向」、乗員の左側を「左方向」と称し、座標の軸を示すときは「左右方向」と言う。更に、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員の頭部方向を「上方」、乗員の腰部方向を「下方」と称し、座標の軸を示すときは「上下方向」と言う。
【0031】
また、12時、3時、6時、9時の方向とは、ステアリングホイールを時計の文字盤に見立てた場合の位置であるが、車両直進時のステアリングの向きが基準であり、ステアリングホイールをドライバ側から見たときに、上又は進行方向を12時とし、この12時の位置を基準にして時計回りに90度回転した位置を3時、180度回転した位置を6時、270度回転した位置を9時とする。
【0032】
図1は、本発明に係るエアバッグ装置が作動した(エアバッグクッションが膨張展開した)状態での車両内部の様子を示す側面図である。図2(A)、(B)、(C)は、本発明に適用可能なステアリングのバリエーションを示す上面図である。図3は、本発明に係るエアバッグ装置が作動して膨張展開したエアバッグクッションに乗員が進入(接触)した様子を示す側面図である。
【0033】
本発明に係るエアバッグ装置は、例えば、図2(A)、(B)、(C)に示すように、回転中心から左右縁部までの距離d1に対して上縁部までの距離d2が短い形状のリム12aを有する異形、すなわち、円形に対して上下方向又は、上方が潰れたような形状のステアリングホイール12に搭載される。
【0034】
図2(A)に示すステアリングホイール12は、通常使用される円形(環状)のリムに対して、12時に相当する付近が欠損した形状となっている。図2(B)に示すステアリングホイール12は、12時に相当する付近が凸湾曲せずに水平に延びた形状となっている。また、図2(C)に示すステアリングホイール12は、12時に相当する付近が凸湾曲せずに凹状に窪んだような形状となっている。本発明が適用可能なステアリングホイールは、上述した3つのパターンに限定されるものではなく、エアバッグクッションの展開時にリムの12時付近において十分な反力を得ることができない形状の種々の形態のステアリングホイールに適用可能である。
【0035】
本発明に係るエアバッグ装置は、図1に示すように、膨張ガスを発生するガス発生器14と;膨張ガスによって乗員(ドライバ)D側に向かって膨張展開するエアバッグクッション16とを備えている。エアバッグクッション16は、膨張ガスを排気する左右一対のベントホール20を備えている。左右一対のベントホール20は、リムの上端(L1)よりも上方であり、且つ、膨張展開した前記エアバッグクッションを側方から見た時に垂直に延びる中心線(L2)よりも前方に形成されている。なお、中心線(L2)とは、膨張展開したエアバッグクッション16の最大幅W1の中心位置を通る垂直なラインである。
【0036】
図3に示すように、膨張展開したエアバッグクッション16に乗員が当接し、当該エアバッグクッション16が車両前方に向かって変形し、エアバッグクッション16の上方領域16Uの一部がステアリングホイール12のリムよりも前方に進出した時に、ベントホール20がインストルメントパネル18等の自動車内装部品に当接し、当該ベントホール20が塞がれるようになっている。
【0037】
エアバッグクッション16の上方領域16Uがステアリングホイール12の前方に位置するインストルメントパネル18と接触するタイミングを上記のように設定することにより、エアバッグクッション16のベントホール20が最適なタイミングでインストルメントパネル18に接触して塞がれることになる。
【0038】
本発明によれば、乗員Dの進入によりエアバッグクッション16の上方領域16Uがステアリングホイール12よりも大きく前方に進出した時に、ベントホール20がインストルメントパネル18に当接して塞がれる構成であるため、例えば、体格の大きな乗員がエアバッグクッション16に進入(当接)したときに、必要以上にガスが排出されることなく、当該エアバッグクッション16の展開形状を維持することができる。その結果、乗員が潰れたエアバッグクッション16を挟んでインストルメントパネル18に衝突するような事態を回避し、確実に乗員を保護することが可能となる。なお、「体格の大きな乗員」とは、例えば、FMVSS208(米国衝突安全の法規)による衝突安全性能評価基準で規定されるAM50相当、又はそれより大柄な乗員と考えることができる。
【0039】
一方、乗員の体格が比較的小さく、エアバッグクッション16の前方への変形が小さい場合には、エアバッグクッション16はステアリングホイール12からの反力のみで展開姿勢、展開形状を適切に保つことができる。このため、ベントホール20はインストルメントパネル18によって塞がれることなく、エアバッグクッション16は通常通り膨張展開し、ベントホール20から膨張ガスが排気されることになる。なお、体格の小さな乗員とは、例えば、FMVSS208(米国衝突安全の法規)による衝突安全性能評価基準で規定されるAF05相当、又はそれより小柄な乗員と考えることができる。
【0040】
図4は、本発明の第1実施例に係るエアバッグクッション16のパネル構成を示す平面図である。図5は、本発明に係るエアバッグ装置のエアバッグクッション16のディメンジョン(寸法等)を示す説明図であり、エアバッグクッションが膨張展開した状態として示す。
【0041】
なお、以下に示す第1乃至第7実施例において、同一又は対応する構成要素については、同一の符号を付し、重複した説明は省略するものとする。
【0042】
図4に示すように、本発明の第1実施例において、エアバッグクッション16は、乗員Dに面する乗員側パネル32と、当該乗員側パネル32に対向するステアリングホイール側パネル34と、これら乗員側パネル32とステアリングホイール側パネル34とを連結する扇状のサイドパネル38とから成形される。ステアリングホイール側パネル34の中央には、ガス発生器14が設置される開口部36が形成されている。サイドパネル38には、2つのベントホール20が左右対称位置に形成されている。
【0043】
乗員側パネル32の縫製ライン32aと、サイドパネル38の縫製ライン38aとが縫い合わされる。また、ステアリングホイール側パネル34の縫製ライン34aと、サイドパネル38の縫製ライン38bとが縫い合わされる。これにより、図5に示すような展開形状のエアバッグクッション16が構成される。本実施例においては、サイドパネル38を、乗員側パネル32とステアリングホイール側パネル34の全周に渡って設けている。
【0044】
図5に示すように、ベントホール20は、エアバッグクッション16の表面上の距離(A+B)として、ガス発生器14の取り付け位置の中心Xから150mm~400mmの範囲に形成される。なお、「ガス発生器の取り付け位置の中心」はステアリングホイール12の回転中心と一致する。
【0045】
また、ベントホール20は、膨張展開したエアバッグクッション16をステアリングホイール12側又は乗員側から見たときに、ガス発生器14の取り付け位置の中心Xから水平方向に仮想的に引いた線L4に対して、上方に10°~170°の範囲内に形成する。
【0046】
図1及び図5に示すように、ベントホール20の配置を工夫することにより、エアバッグクッション16の上方領域16Uがステアリングホイール12のリムよりも前方に進出した時に、当該ベントホール20がインストルメントパネル18によって確実に塞がれることになる。仮に、上記のような配置としない場合には、ベントホール20がインストルメントパネル18に到達しないか、あるいは、ベントホール20がインストルメントパネル18に対して斜めに接触して、ベントホール20が十分に塞がれない恐れがある。
【0047】
図6は、本発明に係るエアバッグクッションの展開形状を示す模式図(側面図である)。図6に示すように、膨張展開したエアバッグクッション16に乗員Dが当接する前の段階において、当該エアバッグクッション16の下方領域16Lの厚さD2が上方領域16Uの厚さD1より小さくなるように構成されている。厚さD1及びD2は、ステアリングホイール12のリムの表面12xから計測され、ステアリングホイール12の回転軸Xと平行な方向におけるエアバッグクッション16の上端部(最高部)100Uの厚さ及び、下端部(最下部)100Lの厚さと規定することができる。ここで、エアバッグクッション16の上端部100U、下端部100Lは、ステアリングホイール12の回転軸に垂直な方向で、当該回転軸から上方、下方の最も遠い地点とすることができる。
【0048】
そして、厚さD1とD2との比率を、1.1:1~2.3:1の範囲とすることが好ましい。例えば、厚さD1を350mm~400mm、好ましくは、355mmとし、厚さD2を250mm~320mm、好ましくは、300mmとすることができる。また、厚さD1とD2との差D3は、約50mmとすることができる。更に、ステアリング制御システム2の回転軸に対応する位置の厚さD0は、D1>D0>D2の関係が成立するような値に設定することが好ましい。
【0049】
本実施例においては、エアバッグクッション16の厚さD1、D2等を上記のように設定しているが、上方領域16Uの厚さD1が下方領域16Lに対して上記範囲よりも大きいと、エアバッグクッション16の容量が大きくなってしまうか、乗員Dの胴体部分の保護が不十分になる恐れがある。他方、エアバッグクッション16の上方領域16Uの厚さD1が下方領域16Lに対して上記範囲よりも小さいと、上方領域16Uの前面側がインストルメントパネル18に接しても十分な反力を得られない恐れがある。すなわち、エアバッグクッション16の前後方向の厚さD1,D2を上記のように設定することにより、乗員Dの拘束性能を適切に保つことが可能となる。
【0050】
また、膨張展開したエアバッグクッション16において、ステアリングホイール12の回転中心Xより下側の部分の長さH2が上側の部分H1よりも長くなるように設定されている。展開したエアバッグクッション16の下側部分16Lの長さH2を長くすることにより、図3に示すように、乗員Dの腹部周辺を確実に保護し、腹部周辺がステアリングホイール12に衝突する等の好ましくない事態を回避することができる。
【0051】
図7は、本発明の第2実施例に係るエアバッグクッション116のパネル構成を示す平面図である。図8は、図7に示すパネル構造のエアバッグクッション116が展開した様子を示す側面図である。
【0052】
本実施例において、エアバッグクッション116は、乗員Dに面する乗員側パネル32と、当該乗員側パネル32に対向するステアリングホイール側パネル34と、これら乗員側パネル32とステアリングホイール側パネル34とを連結するサイドパネル138とから構成される。ステアリングホイール側パネル34の中央には、ガス発生器14が設置される開口部36が形成されている。サイドパネル138には、2つのベントホール120が左右対称位置に形成されている。
【0053】
乗員側パネル32の縫製ライン32aと、サイドパネル138の縫製ライン138aとが縫い合わされる。また、ステアリングホイール側パネル34の縫製ライン34aと、サイドパネル138の縫製ライン138bとが縫い合わされる。これにより、図8に示すような展開形状のエアバッグクッション116が構成される。本実施例においては、サイドパネル138を、乗員側パネル32とステアリングホイール側パネル34の全周に渡って設けられており、膨張展開したエアバッグクッション116上方領域116Uの前後方向の幅が、下方領域116Lに向かって徐々に狭くなるように構成されている。
【0054】
図9は、本発明の第3実施例に係るエアバッグクッション216のパネル構成を示す平面図である。図10は、図9に示すパネル構造のエアバッグクッション216が展開した様子を示す側面図である。
【0055】
本実施例において、エアバッグクッション216は、乗員Dに面する乗員側パネル232と、当該乗員側パネル232に対向するステアリングホイール側パネル234と、これら乗員側パネル232とステアリングホイール側パネル234とを連結するサイドパネル238とから構成される。サイドパネル238は、2つの円弧状の縁部を有する瞳形状となっている。ステアリングホイール側パネル234の中央には、ガス発生器14が設置される開口部236が形成されている。サイドパネル238には、一対のベントホール220が左右対称に形成されている。
【0056】
乗員側パネル232の縫製ライン232aと、サイドパネル238の縫製ライン238aとが縫い合わされる。また、ステアリングホイール側パネル234の縫製ライン234aと、サイドパネル238の縫製ライン238bとが縫い合わされる。これにより、図10に示すような展開形状のエアバッグクッション216が成形される。なお、本実施例においては、乗員側パネル232とステアリングホイール側パネル234の上方部分が、サイドパネル238を介して連結され、乗員側パネル232とステアリングホイール側パネル234の下方部分にはサイドパネル238が存在せず、乗員側パネル232とステアリングホイール側パネル234とを直接縫合する構造となっている。
【0057】
図11(A),(B)は、本発明の第4実施例に係るエアバッグクッション316のパネル構成を示す平面図であり、同図(C)は当該エアバッグクッション316が膨張展開した様子を示す斜視図である。エアバッグクッション316は、乗員対向面を構成する円形の乗員側パネル332と、乗員対向面と反対側のステアリングホイール側パネル334とから構成される。
【0058】
ステアリングホイール側パネル334は、円形のパネルの周縁部の4箇所にV字状の切欠部350を設けた形状となっている。切欠部350は、ステアリングホイール側パネル334の周方向の等分位置に設けられている。
【0059】
ステアリングホイール側パネル334の中央にはインフレータ用開口336が設けられ、インフレータ用開口336の周囲にボルト挿通用の小孔が設けられている。ステアリングホイール側パネル334の周縁から所定距離中央側に2つのベントホール320が設けられている。
【0060】
ステアリングホイール側パネル334は、切欠部350の側辺同士を縫合することにより椀形とされる。椀形となったステアリングホイール側パネル334の外周端の直径は、円形の乗員側パネル332の直径と実質的に同一となっている。椀形のステアリングホイール側パネル334の周縁と乗員側パネル332の周縁とを縫合することによりエアバッグクッション316が形成される。
【0061】
図12は、本発明の第5実施例に係るエアバッグクッション416の展開状態を示す正面図(A)及び、側面図(B)である。本実施例は、第2実施例のエアバッグクッション116をアレンジしたものである。エアバッグクッション416は、第2実施例のエアバッグクッション116に対して、乗員Dに面する乗員側パネル102の下端部分に、例えば摩擦係数μが2.0以上の滑り止め領域414を形成したものである。この滑り止め領域414は、大きな摩擦係数の素材(シリコン等)を塗布し、あるいは、表面の摩擦係数が高いパネル(布)を貼り付けることで成形することができる。エアバッグクッション416が膨張展開した時には、滑り止め領域414は、乗員の腹部付近に位置し、乗員に対してエアバッグクッション416が滑って、上下方向に移動することを防止している。すなわち、エアバッグクッション416と乗員との相対的な位置関係を適切な位置に保持することが可能となる。
【0062】
図13は、本発明の第6実施例に係るエアバッグクッションの展開状態を示す側面図であり、(A)が展開初期の状態、(B)がフル展開の状態を示す。本実施例においては、エアバッグクッション16内のインフレータ(14)の周辺にディフューザ500を設けている。このディフューザ500は、下方向に向かってガスを導くための開口部500aと、側方にガスを排出するベントホール500bとを備えている。
【0063】
そして、エアバッグクッション16の展開初期の段階では、図13(A)に示すように、ディフューザ500によってガスが下方に導かれ、エアバッグクッション16の下方領域16Lが最初に展開を開始する。最初にエアバッグクッション16の下方領域16Lが展開するため、エアバッグクッション16が乗員の腹部付近に達し、ステアリングホイール12との衝突による傷害の発生可能性を低減可能となる。
【0064】
その後、図13(B)に示すように、ガスはエアバッグクッション16の上方領域16Uにも流れ込み、エアバッグクッション16がフル展開する。本実施例においては、他の実施例に比べて、より速やかにエアバッグクッション16を乗員の腹部に展開させる(潜り込ませる)ことができる。なお、本実施例に係るディフューザ500は、他の全ての実施例に適用可能である。
【0065】
図14は、本発明の第7実施例に係るエアバッグ装置が作動した(エアバッグクッションが膨張展開した)状態での車両内部の様子を示す側面図である。本実施例においては、エアバッグクッション616の内部の下方部分にテザー618を連結し、前後方向の幅(厚さ)を規制している。このような構造とすることにより、乗員Dの腹部付近に位置するエアバッグクッション616の領域に対して適切な(過剰でない)量のガスが流れることとなり、エアバッグクッション616全体の展開速度、展開形状、展開挙動を最適化することが可能となる。なお、符号620は第1実施例と同様のベントホールである。
【0066】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲に示された技術的思想の範疇において変更可能なものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14