(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】排気ガイド及び排気方法
(51)【国際特許分類】
B02C 23/30 20060101AFI20240704BHJP
B02C 15/04 20060101ALN20240704BHJP
【FI】
B02C23/30
B02C15/04
(21)【出願番号】P 2022566948
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2021043995
(87)【国際公開番号】W WO2022118863
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2020199602
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】安藤 文典
(72)【発明者】
【氏名】堀田 滋
(72)【発明者】
【氏名】笠井 大輔
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-131909(JP,A)
【文献】特開2016-203076(JP,A)
【文献】特開昭57-075156(JP,A)
【文献】実開平03-086043(JP,U)
【文献】特開昭58-180242(JP,A)
【文献】実開昭57-181380(JP,U)
【文献】米国特許第04192469(US,A)
【文献】米国特許第04235385(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 45/12-16
B02C 23/18-40
B02C 15/00-16
B07B 7/08-10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータによって粉末を分級するセパレータを備える竪型ミルに用いられ、粉末混じりのガスを排気する排気ガイドであって、
内部にガス流路が形成されたケースと、
前記ケースの内部に配置された芯部と、
を備え、
前記ケースには、前記ケースの内部へ下方からガスを導入するための開口が形成され、
前記ケースの外周部は、
曲線部分と、
前記曲線部分に接線方向で接続する直線部分と、
を有し、
前記直線部分に相当するガス流路の中心線は、平面視で、前記芯部の中心に対してオフセットしており、
前記直線部分に相当するガス流路の終端に、ガスを排気するための排気口が形成されることを特徴とする排気ガイド。
【請求項2】
請求項1に記載の排気ガイドであって、
前記曲線部分は、周方向で前記直線部分に近づくにつれて前記芯部の中心からの距離が増加する渦巻状部分であることを特徴とする排気ガイド。
【請求項3】
請求項2に記載の排気ガイドであって、
前記ケースの外周部における前記渦巻状部分と、前記開口の縁部と、の間で、前記ケースの下側を閉じる閉鎖板を備えることを特徴とする排気ガイド。
【請求項4】
請求項3に記載の排気ガイドであって、
前記閉鎖板が傾斜していることを特徴とする排気ガイド。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の排気ガイドであって、
螺旋状のガイド部を備え、
前記ガイド部は、前記開口から前記排気口に至る旋回状の前記ガス流路の少なくとも一部の上側に配置されることを特徴とする排気ガイド。
【請求項6】
ロータによって粉末を分級するセパレータを備える竪型ミルにおいて、粉末混じりのガスを排気する排気方法であって、
前記竪型ミルは、
内部にガス流路が形成されたケースと、
前記ケースの内部に配置された芯部と、
を備え、
前記ケースには、前記ケースの内部へ下方からガスを導入するための開口が形成され、
前記ケースの外周部は、
曲線部分と、
前記曲線部分に接線方向で接続する直線部分と、
を有し、
前記直線部分に相当するガス流路の中心線は、平面視で、前記芯部の中心に対してオフセットしており、
前記排気方法は、
ガスを前記開口から前記ケースの内部に導入する第1工程と、
前記ケースの内部のガスを、前記曲線部分、前記直線部分の順に沿うように流す第2工程と、
前記直線部分に沿って流れたガスを、排気口から排出する第3工程と、
を含むことを特徴とする排気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、竪型ミルにおけるガスの排出に関する。
【背景技術】
【0002】
原料を粉砕する竪型ミルにおいて、ガス導入口と、ガス排出口と、が形成された構成が知られている。特許文献1は、この種の竪型ミルを開示する。
【0003】
特許文献1において、ガス導入口は竪型ミルの下部に設けられ、製品取出口は竪型ミルの上方ケースに設けられる。粉砕ローラで粉砕された原料は、ガス導入口から導入したガスによって吹き上げられる。吹き上げられた原料は、回転部を有するセパレータによって分級される。分級された粉末状の原料は、製品取出口からガスとともに取り出される。
【0004】
セパレータは、上部ケーシングに収容される。上方ケースは、セパレータの上方を覆う。上方ケースは、中心点を有する基部を備える。特許文献1において、基部の中心点は、セパレータの回転中心軸に対して偏心配置されている。
【0005】
特許文献1は、この偏心配置によって、セパレータの円周方向における理論分級点の偏りをなくすことができるので、製品の粒度分布の粒度幅を縮小して製品の品質を向上させることができるとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のような竪型ミルにおいて、ロータの回転に発生する旋回ガス流は、その上部に配置されている上方ケースを通過する際に圧力損失を引き起こす。この圧力損失は、送風ファン等の消費電力が増大する原因となる。
【0008】
特許文献1では上方ケースの基部が偏心配置されているが、これは分級の粒度幅を縮小させるためで、圧力損失に配慮したものではない。従って、より省エネルギー性に配慮した構成が求められていた。
【0009】
本開示は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、竪型ミルの排気ガイドにおいて、ガス流の圧力損失を低減して省エネルギー性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本開示の第1の観点によれば、以下の構成の排気ガイドが提供される。即ち、この排気ガイドは、ロータによって粉末を分級するセパレータを備える竪型ミルに用いられ、粉末混じりのガスを排気する。排気ガイドは、ケースと、芯部と、を備える。前記ケースの内部には、ガス流路が形成される。前記芯部は、前記ケースの内部に配置される。前記ケースには、前記ケースの内部へ下方からガスを導入するための開口が形成される。前記ケースの外周部は、曲線部分と、直線部分と、を有する。前記直線部分は、前記曲線部分に接線方向で接続する。前記直線部分に相当するガス流路の中心線は、平面視で、前記芯部の中心に対してオフセットしている。前記直線部分に相当するガス流路の終端に、ガスを排気するための排気口が形成される。
【0012】
本開示の第2の観点によれば、ロータによって粉末を分級するセパレータを備える竪型ミルにおいて粉末混じりのガスを排気するために、以下の排気方法が提供される。前記竪型ミルは、ケースと、芯部と、を備える。前記ケースの内部には、ガス流路が形成される。前記芯部は、前記ケースの内部に配置される。前記ケースには、前記ケースの内部へ下方からガスを導入するための開口が形成される。前記ケースの外周部は、曲線部分と、直線部分と、を有する。前記直線部分は、前記曲線部分に接線方向で接続する。前記直線部分に相当するガス流路の中心線は、平面視で、前記芯部の中心に対してオフセットしている。前記排気方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、を含む。前記第1工程では、ガスを前記開口から前記ケースの内部に導入する。前記第2工程では、前記ケースの内部のガスを、前記曲線部分、前記直線部分の順に沿うように流す。前記第3工程では、前記直線部分に沿って流れたガスを、排気口から排出する。
【0013】
これにより、導入されるガスが旋回しながら上昇し、その旋回を阻害しないように排気口から排出されるため、特に排気口付近におけるガス流の速度の偏りを抑制することができる。この結果、排気ガイドにおける圧力損失を効果的に低減でき、省エネルギーを実現することができる。また、排気ガイドの内部でガス流の乱れを少なくできるので、内壁の摩耗を抑制でき、耐久性が良好である。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、竪型ミルの排気ガイドにおいて、ガス流の圧力損失を低減して省エネルギー性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一実施形態に係る竪型ミルの全体的な構成を示す斜視図。
【
図5】比較例の排気ガイドにおいて、排気口におけるガス流の流速分布を説明する図。
【
図6】本実施形態の排気ガイドにおいて、排気口におけるガス流の流速分布を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照して、開示される実施の形態を説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る竪型ミル1の全体的な構成を示す斜視図である。
図2は、排気ガイド16を上方から見た斜視図である。
図3は、排気ガイド16の平面図である。
図4は、排気ガイド16を下方から見た斜視図である。
【0017】
図1に示す竪型ミル1は、投入された対象物を粉砕することができる。粉砕対象物としては、例えばセメント、スラグ、石炭等を挙げることができるが、これに限定されない。
【0018】
竪型ミル1は、減速機2と、下ケーシング3と、上ケーシング4と、回転テーブル5と、粉砕ローラ6と、油圧シリンダ9と、粗粉戻しガイド11と、投入シュート12と、セパレータ15と、排気ガイド16と、を備える。竪型ミル1の内部の構成等を分かり易く示すために、
図1では、一部の構成を鎖線で透視的に示している。
【0019】
減速機2の上部には、回転テーブル5が取り付けられている。回転テーブル5は、上下方向の回転軸を中心として回転可能に支持されている。
【0020】
減速機2の近傍には、駆動源としての電動モータ60が配置されている。電動モータ60の出力軸の回転は、伝動軸61を介して減速機2に伝達される。減速機2は、電動モータ60から入力された回転を減速して、回転テーブル5に伝達する。
【0021】
回転テーブル5は平面視で円形に形成されている。回転テーブル5は、竪型ミル1に投入された粉砕対象物を上面で受けることができる。回転テーブル5の上面の周縁部に載るようにして、複数の粉砕ローラ6が配置されている。粉砕ローラ6の数は任意である。回転テーブル5及びその上方空間の周囲を覆うように、下ケーシング3が設けられている。複数の粉砕ローラ6は、下ケーシング3の内部空間に位置する。
【0022】
それぞれの粉砕ローラ6に位置を対応させるように、減速機2の周囲(下ケーシング3の外側)にスタンド7が設けられている。スタンド7には、粉砕ローラ6を回転テーブル5に向けて加圧するための加圧アーム8が、回転可能に支持されている。
【0023】
加圧アーム8は、上下方向に細長く形成されている。加圧アーム8の長手方向中途部が、スタンド7に対して、水平な軸を中心として回転可能に支持されている。加圧アーム8の下端部は、油圧シリンダ9に連結される。加圧アーム8の上端部は、後述のサポート部材10に連結されている。
【0024】
サポート部材10は、筒状の部材であり、その軸が平面視で回転テーブル5の径方向に沿うように配置されている。サポート部材10は、スタンド7に対して回転可能に支持されている。サポート部材10の先端部は、下ケーシング3の内部に差し込まれている。サポート部材10の先端部に、粉砕ローラ6が片持ち状に支持されている。
【0025】
油圧シリンダ9の一端が地面に連結され、他端が加圧アーム8に連結されている。油圧シリンダ9を縮める方向に駆動すると、加圧アーム8及びサポート部材10を介して、粉砕ローラ6を回転テーブル5へ近づける方向の力を作用させることができる。
【0026】
回転テーブル5の上方には、漏斗状の粗粉戻しガイド11が配置されている。粗粉戻しガイド11の下部は小径の円筒状に形成されている。粗粉戻しガイド11の下端部には下向きの開口が形成され、この開口は、回転テーブル5の上面中心部と対面している。
【0027】
粗粉戻しガイド11の下部の途中には、筒状の投入シュート12が連結されている。投入シュート12は、上ケーシング4を貫通するように斜めに配置されている。上ケーシング4の外側において、投入シュート12の端部には、投入口13が形成されている。
【0028】
粗粉戻しガイド11の上部は、上方となるに従って大径となる中空テーパ状に形成されている。粗粉戻しガイド11の上端は上向きに開口している。
【0029】
竪型ミル1の上部には、セパレータ15が配置されている。セパレータ15は、固定ベーン14と、ロータ31と、を備える。
【0030】
固定ベーン14は、粗粉戻しガイド11の上端に形成される開口のうち外周部分の上方に複数設けられている。複数の固定ベーン14は、粗粉戻しガイド11の開口の外周に概ね沿うように、適宜の間隔をあけて周方向に並べて配置されている。それぞれの固定ベーン14は、上下方向に細長く形成されている。
【0031】
ロータ31は、上ケーシング4の内部であって粗粉戻しガイド11の上方に配置され、吊下げ支持されている。ロータ31は、上下方向の回転軸を中心として回転可能である。ロータ31は、複数の回転ベーン33を備える。複数の回転ベーン33は、適宜の間隔をあけて周方向に並べて配置されている。それぞれの回転ベーン33は、上下方向に細長く形成されている。回転ベーン33は、固定ベーン14のすぐ内周側に位置している。
【0032】
ロータ31の中心軸34は、ロータ31に回転力を伝達するための伝達軸35に固定されている。伝達軸35は、図示しない適宜の駆動源と連結されている。これにより、ロータ31を
図1の太線矢印方向に回転させることができる。
【0033】
中心軸34の上部の外周側には、リングフレーム36が配置される。リングフレーム36は、複数の棒状部材37によって中心軸34に固定される。それぞれの棒状部材37は、径方向に細長く形成される。複数の棒状部材37は、適宜の間隔をあけて周方向に並べて配置されている。それぞれの回転ベーン33の上端は、リングフレーム36に固定される。
【0034】
中心軸34の下部には、底プレート38が固定されている。底プレート38は、下方となるに従って大径となるテーパ状に形成されている。それぞれの回転ベーン33の下端は、底プレート38の外周部分に固定される。
【0035】
中心軸34と回転ベーン33の間の空間の上方は開放され、下方は底プレート38によって閉鎖されている。ロータ31の内部空間は、ロータ31の上方に配置された排気ガイド16の内部空間と接続されている。
【0036】
上ケーシング4の上方には、中空の排気ガイド16が固定されている。排気ガイド16の内部空間は、下方を開放させている。この開放部分が、上ケーシング4の内部と接続されている。排気ガイド16には、斜め上向きの排気口41が形成されている。排気ガイド16の構成の詳細については後述する。
【0037】
下ケーシング3の下部には、ガス(熱風)を下ケーシング3の内部に導入するための導入口71が形成されている。
【0038】
以下、本実施形態の竪型ミル1を例えばセメント製造プラントの仕上粉砕工程に適用する場合を例として、その動作について説明する。
【0039】
竪型ミル1の運転が開始すると、回転テーブル5及びロータ31が回転する。この状態で、セメントの中間製品であるクリンカと、石膏等の副原料と、を混ぜたものが、竪型ミル1の投入口13に投入される。
【0040】
投入されたクリンカと副原料は、投入シュート12及び粗粉戻しガイド11を介して、粗粉戻しガイド11の下端から回転テーブル5の中央部に落下する。クリンカと副原料は、回転テーブル5とともに回転するのに従って、遠心力で外周側へ移動する。この結果、クリンカと副原料は、回転テーブル5の外周側に位置する粉砕ローラ6によって粉砕される。
【0041】
粉砕されて細かくなったクリンカと副原料の粉末(以下、単に粉末という。)は、導入口71から供給されるガスによって吹き上げられる。粉末は、粗粉戻しガイド11の上部のテーパ状部分によって固定ベーン14の外周側へ導かれた後、固定ベーン14の間を、ガスとともに外周から内周へ通過する。粉末が細かければ、回転する回転ベーン33を通過することができる。回転ベーン33の隙間を通過した粉末は、回転ベーン33の内周側の空間から上方に抜け、排気ガイド16の内部に供給される。排気ガイド16に供給された粉末混じりのガスは、排気口41から排出される。
【0042】
粉末が粗いために回転ベーン33の隙間を通過できなかった場合、その粉末は、粗粉戻しガイド11に形成されている上向きの開口に自重で落下する。粗い粉末は、粗粉戻しガイド11の下端から再び回転テーブル5の上面中心部に落下し、再び粉砕ローラ6によって粉砕される。
【0043】
排気口41には、図示しないバグフィルタ及び吸引ファンが連結されている。クリンカと副原料の粉末はバグフィルタによって捕集され、完成品のセメントとして出荷される。吸引ファンに代えて、押込ファンが導入口71の上流に設けられても良い。
【0044】
複数の固定ベーン14は何れも、周方向に対して傾斜するように向けられている。また、ロータ31の回転に伴い、回転ベーン33は固定ベーン14の直ぐ内周側で円状の軌跡に沿って移動する。これにより、固定ベーン14、回転ベーン33の順に通過したガスには、
図1の太線矢印方向の向きに旋回する旋回流成分が与えられる。従って、粉末混じりのガスは、ロータ31の内部から排気ガイド16の内部へ向かって、螺旋状に流れることになる。
【0045】
排気ガイド16は、このように旋回成分を有するガスを排気口41から円滑に排出するため、特徴的な形状を有している。以下、
図2から
図4までを主に参照して、排気ガイド16について詳細に説明する。
【0046】
排気ガイド16は、中空のケース42を備える。ケース42の下方にはリング状の開口43が形成されている。この開口43を通じて、下側のセパレータ15からケース42の内部へ粉末混じりのガスが流れ込む。
【0047】
ケース42の実質的な中央部には、円筒部(芯部)44が固定されている。円筒部44は、ケース42における旋回状のガス流路の内周側を規定している。
【0048】
円筒部44は、その軸線を上下方向に向けて配置されている。円筒部44の中心は、リング状の開口43の中心と一致する。円筒部44の上側と下側は開放されている。
図2以降では伝達軸35を省略しているが、円筒部44の内部を、上述の伝達軸35が通過している。円筒部44の中心軸は、セパレータ15におけるロータ31の回転軸と一致している。
【0049】
図2に示すように、平面視におけるケース42の外周は、径が一定の第1部分45aと、周方向で排気口41に近づくにつれて大径となる第2部分(曲線部分)45bと、第2部分45bの終端に接続する直線状の第3部分(直線部分)45cと、を有する。
【0050】
第1部分45aは、排気ガイド16におけるガス流路の上流部分に相当する。第1部分45aではケース42の径が一定であるので、円筒部44と、ケース42の外周部の側壁と、の間の距離は実質的に一定である。第1部分45aでは、平面視における開口43の外周部分の輪郭と、ケース42の外周部分の輪郭と、が実質的に一致する。
【0051】
第1部分45aに相当する領域では、円筒部44とケース42の間に螺旋ガイド(ガイド部)46が固定されている。螺旋ガイド46は、排気ガイド16におけるガス流路の下流側に近づくように位相が変化するのに従って上方となるように、螺旋状に形成されている。螺旋ガイド46の上端は、ケース42の上壁の下面に接続している。螺旋ガイド46により、排気ガイド16におけるガス流路の上流端付近に開口43から入ってきたガスが、ケース42内で円滑に旋回しながら流れるように案内することができる。
【0052】
第2部分45bは、排気ガイド16におけるガス流路の中間部分に相当する。第2部分45bでは、周方向一側(流路の下流側)に近づくのに従ってケース42の径が滑らかに増大している。従って、第2部分45bは平面視で渦巻状となっている。
【0053】
第2部分45bでは、円筒部44と、ケース42の外周部と、の間の距離は、下流となるに従って徐々に増大する。この結果、下流となるに従って流路断面積が増大する。また、平面視での流路中心線は、下流となるに従って、円筒部44の中心から離れるように変化する渦巻状となる。
【0054】
ケース42における第2部分45bの下端部と、開口43の縁部と、の間は、閉鎖板47によって閉じられている。リング状の開口43の中心は、円筒部44の中心と一致する。ケース42(第2部分45b)において外周側へ張り出す部分と、開口43の縁部と、の間を閉鎖板47で塞ぐことで、ケース42の下部からのガスの漏れを防ぐことができる。
【0055】
第3部分45cは、排気ガイド16におけるガス流路の下流部分に相当する。第3部分45cは、曲線状(円弧状)の第2部分45bの端部に対して接線方向で接続する。
【0056】
第3部分45cに相当する直線状の流路は、長手方向途中で斜め上向きとなるように曲げられている。下流部分の終端部に、前述の排気口41が形成されている。
【0057】
第3部分45cに相当する直線状の流路は、断面が矩形となるように形成されている。
図3に示すように、この流路の中心線48は、平面視で、円筒部44の中心に対して一側にオフセットしている。第3部分45cの部分の流路は、断面が円形となるように形成されても良い。
【0058】
以上の構成で、ガスは、開口43からケース42の内部に導入される(第1工程)。具体的に説明すると、ガスは開口43を通過して、第1部分45a又は第2部分45bに相当する空間に螺旋状に流れる。ガスは、第2部分45bに沿って、即ち、下流となるにつれてケース42の外周部の径が増加する渦巻状の部分に沿って流れる。径が増加する分だけ流路断面積が増加し、かつ、旋回を妨げないので、ガス流の速度の偏りが起きにくくなる。ガスは、第2部分45bと第3部分45cの順に沿うように流れる(第2工程)。第2部分45bの範囲の径は、下流に行くにつれて下方からのガスが合流してきても流速が上昇しないように設定されている。第2部分45bと第3部分45cは接線方向で接続しているので、接続部分でのガス流の乱れが殆ど生じない。その後、ガスは排気口41から斜め上向きに排出される(第3工程)。
【0059】
このような構成の排気ガイド16を用いることで、ガス流が通過する場合の圧力損失を効果的に抑制できる。従って、例えば、排気ガイド16の下流側に設置される前述の送風ファンの省エネルギーを実現できる。また、ガス流の速度の偏り(言い換えれば、ガス流の乱れ)が抑制されるので、粉末がケース42の内壁に強い勢いでぶつかることを防止できる。この結果、ケース42の内部の摩耗を軽減することができる。
【0060】
図5及び
図6には、比較例の排気ガイド16zと、本実施形態の排気ガイド16と、のそれぞれについて、数値流体力学によるシミュレーション解析によって排気口41,41zにおける流速の分布を求めた結果が示されている。
【0061】
比較例の排気ガイド16zについて簡単に説明する。比較例の排気ガイド16zでは、排気口41zに向かう直線状の流路の中心線が、ケース42zの内部に配置された円筒部44zの中心に対してオフセットしないように配置されている。ケース42zは、上述の実施形態に示すような渦巻状の第2部分45bを有していない。排気口41zに向かう直線状の流路は、ケース42zの外周に対して接線状に接続せず、ケース42zに対して径方向に接続している。
【0062】
それぞれの排気口41,41zにおいて、所定値よりも流速が大きくなっている部分が、ハッチングで示されている。比較例の排気ガイド16zでは、排気口41zにおいて、流速が大きくなっている箇所が広範囲にわたって分布しており、ガスの旋回方向外周側に近い部分(A-B側)が特に流速が大きくなっていることがわかる。一方、本実施形態の排気ガイド16では、排気口41において流速増大部分の発生が効果的に抑制されていることがわかる。
【0063】
以上に説明したように、本実施形態の排気ガイド16は、ロータ31によって粉末を分級するセパレータ15を備える竪型ミル1に用いられ、粉末混じりのガスを排気する。排気ガイド16は、ケース42と、円筒部44と、を備える。ケース42の内部には、ガス流路が形成される。円筒部44は、ケース42の内部に配置される。ケース42には、ケース42の内部へ下方からガスを導入するための開口43が形成される。ケース42の外周部は、曲線状の第2部分45bと、直線状の第3部分45cと、を有する。第3部分45cは、第2部分45bに接線方向で接続する。第3部分45cに相当するガス流路の中心線48は、平面視で、円筒部44の中心に対してオフセットしている。第3部分45cに相当するガス流路の終端に、ガスを排気するための排気口41が形成される。
【0064】
これにより、導入されるガスが旋回しながら上昇し、その旋回を阻害しないように排気口41から排出されるため、特に排気口41付近におけるガス流の速度の偏りを抑制することができる。この結果、排気ガイド16における圧力損失を効果的に低減でき、省エネルギーを実現することができる。また、排気ガイド16の内壁の偏摩耗を抑制できるので、耐久性が良好である。
【0065】
また、本実施形態の排気ガイド16において、第2部分45bは、周方向で第3部分45cに近づくにつれて円筒部44の中心からの距離が増加するように、渦巻状に形成される。
【0066】
これにより、ケース42の内部で旋回流が円滑に流れるので、圧力損失を更に低減できる。
【0067】
また、本実施形態の排気ガイド16は、ケース42の外周部における第2部分45bと、開口43の縁部と、の間で、ケース42の下側を閉じる閉鎖板47を備える。
【0068】
これにより、第2部分45bの渦巻状部分において、ケース42の下部からガス流が漏れるのを防止できる。
【0069】
また、本実施形態の排気ガイド16は、螺旋ガイド46を備える。螺旋ガイド46は、開口43から排気口41に至る旋回状のガス流路の少なくとも一部の上側に配置される。
【0070】
これにより、開口43を通じてケース42の内部に導入された直後のガスを、旋回状のガス流路に沿って円滑に流すように案内することができる。
【0071】
本実施形態の竪型ミル1は、排気ガイド16と、セパレータ15と、を備える。セパレータ15は、ロータ31によって粉末を分級する。
【0072】
これにより、分級後の粉末が混じったガスを、排気口41から円滑に排出させることができる。
【0073】
以上に本開示の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0074】
閉鎖板47が傾斜状に構成されていても良い。傾斜の向きは任意であるが、例えば、開口43に近づくにつれて下方となるように閉鎖板47を傾斜させることができる。閉鎖板47が傾斜することにより、閉鎖板47の上面に粉末が堆積しにくくなるので、メンテナンス性が向上する。
【0075】
第2部分45bを渦巻状とせず、第1部分45aと同様に径が一定となるように形成することができる。
【0076】
第1部分45aを径が一定となるように形成せず、第2部分45bと同様に渦巻状に形成することもできる。
【0077】
円筒部44に代えて、例えば棒状の柱部がケース42の内部に配置されても良い。
【0078】
螺旋ガイド46を省略することができる。ケース42の上壁を螺旋状に形成してガイド部とすることで、同様の効果を発揮させることもできる。
【0079】
投入シュート12の下端が粗粉戻しガイド11の中途部に連結されなくても良い。この場合、投入口13に投入されたクリンカ及び副原料は、投入シュート12の下端から回転テーブル5へ直接落下する。
【0080】
上記の実施形態では、竪型ミル1は、ロータ31の回転方向が
図1の太線矢印方向となるように構成されている。しかし、ロータ31の回転方向が上記と反対となるように竪型ミル1を構成することもできる。