(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】空気清浄機を有するヘッドギア
(51)【国際特許分類】
A62B 18/02 20060101AFI20240704BHJP
F24F 8/10 20210101ALI20240704BHJP
G01P 13/02 20060101ALI20240704BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240704BHJP
G10K 11/178 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
A62B18/02 Z
F24F8/10
G01P13/02 A
H04R3/00 320
G10K11/178 100
G10K11/178 120
(21)【出願番号】P 2022572672
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(86)【国際出願番号】 GB2021051085
(87)【国際公開番号】W WO2021240128
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-01-24
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500024469
【氏名又は名称】ダイソン・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ スティーヴン ダーリン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ラルフ メンジーズ-ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ベンジャミン コートニー
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-504159(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0204532(US,A1)
【文献】国際公開第2020/021230(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3220657(JP,U)
【文献】中国実用新案第203775388(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0296864(US,A1)
【文献】特開2017-041752(JP,A)
【文献】特開平08-110788(JP,A)
【文献】特表2019-537398(JP,A)
【文献】特表2016-524187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 7/00-33/00
F24F 8/10
G01P 13/02
H04R 3/00
G10K 11/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気清浄機と、第1のマイクロフォンと、第2のマイクロフォンと、制御ユニットとを備えるヘッドギアであって、
前記制御ユニットが、前記第1のマイクロフォンによって出力された第1の信号及び前記第2のマイクロフォンによって出力された第2の信号を分析して、風の方向を判定し、判定された前記風の方向に応じて前記空気清浄機の流量を制御
し、
前記ヘッドギアはさらなる空気清浄機を備え、
前記制御ユニットが、判定された前記風の方向に応じて前記空気清浄機及び前記さらなる空気清浄機の相対流量を制御し、
前記空気清浄機が、当該ヘッドギアの第1の側に配置され、前記さらなる空気清浄機が、当該ヘッドギアの反対側の第2の側に配置され、前記風の方向が当該ヘッドギアの側方からであると判定したことに応答して、前記制御ユニットが、当該ヘッドギアの反対側の下流側に配置された前記空気清浄機の相対流量を上昇させる、
ヘッドギア。
【請求項2】
請求項
1に記載のヘッドギアであって、
前記空気清浄機が、清浄化された空気の第1の流れを発生させ、前記さらなる空気清浄機が、清浄化された空気の第2の流れを発生させ、前記第1の流れ及び前記第2の流れが複合して、清浄化された空気の複合流を発生させ、前記複合流の方向が、前記空気清浄機及び前記さらなる空気清浄機の前記相対流量によって規定される、
ヘッドギア。
【請求項3】
請求項
2に記載のヘッドギアであって、
ノズルを備え、当該ノズルが、前記空気清浄機から前記第1の流れを受け入れるための第1の入口と、前記さらなる空気清浄機から第2の流れを受け入れるための第2の入口と、前記複合流を排出するための出口とを有する、
ヘッドギア。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載のヘッドギアであって、
前記制御ユニットが、前記第1の信号と前記第2の信号との差分に基づいて前記風の方向を判定する、
ヘッドギア。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載のヘッドギアであって、
前記制御ユニットが、前記第1の信号の時間サンプルを1つ以上の第1の周波数サンプルに変換し、前記第2の信号の時間サンプルを1つ以上の第2の周波数サンプルに変換し、前記第1の周波数サンプルのエネルギー及び前記第2の周波数サンプルのエネルギーに基づいて前記風の方向を判定する、
ヘッドギア。
【請求項6】
請求項
5に記載のヘッドギアであって、
前記制御ユニットが、前記第1の周波数サンプルの前記エネルギーと、前記第2の周波数サンプルの前記エネルギーとの差分に基づいて前記風の方向を判定する、
ヘッドギア。
【請求項7】
請求項
6に記載のヘッドギアであって、
前記制御ユニットが、時間経過に伴った前記差分の変化に基づいて前記風の方向を判定する、
ヘッドギア。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載のヘッドギアであって、
前記制御ユニットが、前記第1の信号と前記第2の信号とのコヒーレンスを判定し、前記コヒーレンスに基づいて前記風の方向を判定する、
ヘッドギア。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載のヘッドギアであって、
前記制御ユニットが、前記第1の信号の時間サンプルを1つ以上の第1の周波数サンプルに変換し、前記第2の信号の時間サンプルを1つ以上の第2の周波数サンプルに変換し、前記風の方向を、
前記第1の周波数サンプルの
エネルギー及び/又は前記第2の周波数サンプルの
エネルギー、
時間経過に伴った前記第1の周波数サンプルの前記エネルギー及び/又は前記第2の周波数サンプルの前記エネルギーの変化、
前記第1の周波数サンプルの前記エネルギーと、前記第2の周波数サンプルの前記エネルギーとの差分、並びに、
前記第1の周波数サンプルの前記エネルギーと、前記第2の周波数サンプルの前記エネルギーとの差分の変化
のうちの少なくとも2つに基づいて判定する、
ヘッドギア。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか一項に記載のヘッドギアであって、
前記制御ユニットが、前記第1の信号及び前記第2の信号を分析して、風の風力を判定し、前記制御ユニットが、判定された前記風の風力及び判定された前記風の方向に応じて前記空気清浄機の前記流量を制御する、
ヘッドギア。
【請求項11】
請求項
10に記載のヘッドギアであって、
前記制御ユニットが、前記第1の信号の時間サンプルを1つ以上の第1の周波数サンプルに変換し、前記第2の信号の時間サンプルを1つ以上の第2の周波数サンプルに変換し、前記第1の周波数サンプルのエネルギー及び前記第2の周波数サンプルのエネルギーに基づいて前記風の風力及び前記風の方向を判定する、
ヘッドギア。
【請求項12】
請求項
10又は
11に記載のヘッドギアであって、
さらなる空気清浄機を備え、前記制御ユニットが、判定された前記風の風力及び判定された前記風の方向に応じて前記空気清浄機及び前記さらなる空気清浄機の相対流量を制御する、
ヘッドギア。
【請求項13】
請求項
12に記載のヘッドギアであって、
前記空気清浄機が、当該ヘッドギアの第1の側に配置され、前記さらなる空気清浄機が、当該ヘッドギアの反対側の第2の側に配置され、前記風の方向が当該ヘッドギアの側方からであると判定したことに応じて、前記制御ユニットが、当該ヘッドギアの反対側の下流側に配置された前記空気清浄機の相対流量を、前記風の風力によって規定された量だけ上昇させる、
ヘッドギア。
【請求項14】
請求項1から
13のいずれか一項に記載のヘッドギアであって、
当該ヘッドギアが、左イヤーカップ及び右イヤーカップを備え、前記左イヤーカップが、前記第1のマイクロフォンを備え、前記右イヤーカップが、前記第2のマイクロフォンを備える、
ヘッドギア。
【請求項15】
請求項
14に記載のヘッドギアであって、
前記左イヤーカップ及び前記右イヤーカップのそれぞれが、スピーカー及びアクティブノイズキャンセリングユニットを備え、前記左イヤーカップの前記アクティブノイズキャンセリングユニットが、前記第1のマイクロフォンを備え、前記右イヤーカップの前記アクティブノイズキャンセリングが、前記第2のマイクロフォンを備える、
ヘッドギア。
【請求項16】
請求項1から
15のいずれか一項に記載のヘッドギアであって、
当該ヘッドギアが、第3のマイクロフォン及び第4のマイクロフォンを備え、前記制御ユニットが、前記4つのマイクロフォンによって出力された信号を分析して、前記風の方向を判定し、前記第1及び第2のマイクロフォンが、フィードフォワードマイクロフォンであり、前記第3及び第4のマイクロフォンが、フィードバックマイクロフォンである、
ヘッドギア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄機を有するヘッドギアに関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の汚染物質は、人間の健康に害を及ぼす可能性がある。大気から汚染物質を除去し、着用者の口及び鼻に向かって清浄化された空気の流れを誘導する、空気清浄化装置が公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなデバイスの潜在的な課題は、屋外での着用中、風が着用者の口及び鼻から清浄化された空気の流れを押しのけ得るという点である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、空気清浄機と、第1のマイクロフォンと、第2のマイクロフォンと、制御ユニットとを備えるヘッドギアであって、制御ユニットが、第1のマイクロフォンによって出力された第1の信号及び第2のマイクロフォンによって出力された第2の信号を分析して、風の方向を判定し、判定された風の方向に応じて空気清浄機の流量を制御する、ヘッドギアを提供する。
【0005】
本発明のヘッドギアにおいて、空気清浄機の流量は、風の方向に応じて制御される。例えば、横風に応じて、より高い流量を用いることもできるし、向かい風及び/又は追い風に応じて、より低い流量を用いることもできる。横風は、着用者の口及び鼻から清浄化された空気を押しのけ得る。横風に応じて流量を上昇させることにより、より強い清浄化された空気の流れを発生させることができるので、清浄化された空気の流れの方向の偏りを低減することができる。
【0006】
制御ユニットは、マイクロフォンによって出力された信号に基づいて風の方向を判定する。マイクロフォンは一般的に、数百μPa~数十Paの範囲の空気の乱れを感知する。しかしながら、比較的弱い風であっても、前述の範囲より100倍高い圧力を発生させることができる。したがって、ヘッドギアは、これらの特徴を活用して、風の方向を検知するための比較的費用対効果が高い解決法を提供する。
【0007】
ヘッドギアは、さらなる空気清浄機を備えることもでき、制御ユニットは、判定された風の方向に応じて空気清浄機及びさらなる空気清浄機の相対流量を制御することができる。2つの空気清浄機の相対流量を制御することにより、着用者へ誘導される清浄化された空気の方向の制御を向上することができる。例えば、左側からの横風に応じて、空気清浄機のうちの一方の相対流量を上昇させることもできるし、右側からの横風に応じて、空気清浄機のうちの他方の相対流量を上昇させることもできる。
【0008】
空気清浄機は、ヘッドギアの第1の側に配置されていてもよく、さらなる空気清浄機は、ヘッドギアの反対側の第2の側に配置されていてもよい。風の方向がヘッドギアの側方からであると判定したことに応答して、制御ユニットは、ヘッドギアの反対側の下流側に配置された空気清浄機の相対流量を上昇させることができる。結果として、より強い清浄化された空気の流れを、風に対して反対の方向に発生させることができるので、清浄化された空気の合成流は、着用者の口及び鼻をよりうまく狙うことができる。
【0009】
空気清浄機は、清浄化された空気の第1の流れを発生させることができ、さらなる空気清浄機は、清浄化された空気の第2の流れを発生させることができる。さらに、第1の流れ及び第2の流れが複合して、清浄化された空気の複合流を発生させることも可能であり、清浄化された空気の複合流の方向は、空気清浄機及びさらなる空気清浄機の相対流量によって規定される。したがって、制御ユニットは、清浄化された空気の複合流の方向を制御するために、空気清浄機の相対流量を制御することが可能である。したがって、横風に応じて、制御ユニットは、横風にかかわらず空気の複合流が着用者の口及び鼻に向かって誘導されるように、相対流量を制御することができる。
【0010】
制御ユニットは、第1の信号と第2の信号との差分に基づいて風の方向を判定することができる。風のエネルギーの大部分が含まれる比較的低い周波数では、実生活のノイズは、2つのマイクロフォンの信号において、類似したパターンを発生させる可能性が高い。しかしながら、風に含まれる粒子が2つのマイクロフォンのダイアフラムに衝突するとき、風に含まれる粒子は、各マイクロフォンに特有のランダムな態様でし得る。結果として、風は、2つの信号において、様々なパターンとして現れる可能性が高い。したがって、2つの信号の差分を分析することにより、風の方向を判定することができる。
【0011】
制御ユニットは、第1の信号の時間サンプルを1つ以上の第1の周波数サンプルに変換し、第2の信号の時間サンプルを1つ以上の第2の周波数サンプルに変換し、第1の周波数サンプルのエネルギー及び第2の周波数サンプルのエネルギーに基づいて風の方向を判定することができる。空気中粒子がマイクロフォンのダイアフラムにぶつかるとき、空気中粒子は、予測不能な態様でぶつかる。しかしながら、風は、周波数領域では見分けることが可能な形状を有する。したがって、2つの信号のサンプルを時間領域から周波数領域に変換し、次いで、周波数サンプルのエネルギーを分析することにより、風の方向を判定することができる。
【0012】
制御ユニットは、第1の周波数サンプルのエネルギーと、第2の周波数サンプルのエネルギーとの差分に基づいて風の方向を判定することができる。すでに述べたように、比較的低い周波数では、実生活のノイズは、2つのマイクロフォンの信号において、類似したエネルギーを有する可能性が高い。対照的に、風は、2つの信号において、様々なエネルギーとして現れる可能性が高い。したがって、2つの信号の周波数サンプルのエネルギーの差分を分析することにより、風の方向を判定することができる。
【0013】
制御ユニットは、時間経過に伴った前述の差分の変化に基づいて風の方向を判定することができる。一部の実生活のノイズは、より低い周波数のエネルギーを有することもあるので、風と誤認される場合がある。風に伴うエネルギーは、時間経過に伴って著しく変化し得る。対照的に、実生活のノイズに伴うエネルギーは、同じ期間の間、比較的変化しにくいものであり得る。したがって、風の風力は、周波数サンプルのエネルギーの経時的変化の分析によって判定することができる。
【0014】
制御ユニットは、第1の信号と第2の信号とのコヒーレンスを判定し、コヒーレンスに基づいて風の方向を判定することができる。コヒーレンスは、2つのマイクロフォン信号の関係の指標であり、したがって、類似性の評価のために使用することができる。上記のように、風のエネルギーの大部分が含まれる比較的低い周波数では、実生活のノイズは、マイクロフォン信号のそれぞれにおいて、(振幅が異なる可能性はあるが)類似したエネルギー的特性を有する可能性が高い。対照的に、風は、2つの信号において、異なるエネルギー的特性を有する可能性が高い。したがって、2つの信号のコヒーレンスは、風の存在及び方向の比較的良好な指標を提供することができる。
【0015】
制御ユニットは、第1の信号の時間サンプルを1つ以上の第1の周波数サンプルに変換し、第2の信号の時間サンプルを1つ以上の第2の周波数サンプルに変換し、風の方向を、第1の周波数サンプルのエネルギー及び/又は第2の周波数サンプルのエネルギー、時間経過に伴った第1の周波数サンプルのエネルギー及び/又は第2の周波数サンプルのエネルギーの変化、第1の周波数サンプルのエネルギーと、第2の周波数サンプルのエネルギーとの差分、並びに、第1の周波数サンプルのエネルギーと、第2の周波数サンプルのエネルギーとの差分の変化のうちの少なくとも2つに基づいて判定することができる。少なくとも2種の異なる指標を使用することにより、より信頼性が高い風の方向の判定を行うこともできる。
【0016】
制御ユニットは、第1の信号及び第2の信号を分析して、風の風力を判定することができる。次いで、制御ユニットは、判定された風の風力及び判定された風の方向に応じて空気清浄機の流量を制御することができる。風の方向と風の風力との両方に応じて空気清浄機の流量を制御することにより、着用者に誘導される清浄化された空気の方向の制御を向上することができる。
【0017】
制御ユニットは、第1の信号の時間サンプルを1つ以上の第1の周波数サンプルに変換し、第2の信号の時間サンプルを1つ以上の第2の周波数サンプルに変換し、第1の周波数サンプルのエネルギー及び第2の周波数サンプルのエネルギーに基づいて風の風力及び風の方向を判定することができる。すでに述べたように、風は、周波数領域では見分けることが可能な形状を有する。したがって、2つの信号のサンプルを時間領域から周波数領域に変換し、次いで、周波数サンプルのエネルギーを分析することにより、風の風力と風の方向との両方を判定することができる。
【0018】
ヘッドギアは、さらなる空気清浄機を備えることもでき、制御ユニットは、判定された風の風力及び判定された風の方向に応じて空気清浄機及びさらなる空気清浄機の相対流量を制御することができる。2つの空気清浄機の相対流量を制御することにより、風の方向と風の風力との両方に応じて、着用者に誘導される清浄化された空気の方向の制御を向上することができる。例えば、左側からの横風に応じて、空気清浄機のうちの一方の相対流量を上昇させることもできるし、右側からの横風に応じて、空気清浄機のうちの他方の相対流量を上昇させることもできる。さらに、相対流量を上昇させる量は、風の風力に左右され得る。結果として、清浄化された空気は、多種多様な風の状況下でも着用者をよりうまく狙うことができる。
【0019】
空気清浄機は、ヘッドギアの第1の側に配置されていてもよく、さらなる空気清浄機は、ヘッドギアの反対側の第2の側に配置されていてもよい。風の方向がヘッドギアの側方からであると判定したことに応答して、制御ユニットは、ヘッドギアの反対側の下流側に配置された空気清浄機の相対流量を、風の風力によって規定された量だけ上昇させることができる。結果として、清浄化された空気の流れを、風に対して反対の方向に発生させることができる。さらに、風がより強いと(すなわち、風の風力がより大きいと)、清浄化された空気の強さを強めることができる。結果として、清浄化された空気の合成流は、着用者の口及び鼻をよりうまく狙うことができる。
【0020】
ヘッドギアは、左イヤーカップ及び右イヤーカップを備えることができ、左イヤーカップは、第1のマイクロフォンを備えることができ、右イヤーカップは、第2のマイクロフォンを備えることができる。対向するイヤーカップ内にマイクロフォンを配置することにより、2つのマイクロフォンの信号の差分を用いて、風の方向を判定することができる。
【0021】
左イヤーカップ及び右イヤーカップのそれぞれは、スピーカー及びアクティブノイズキャンセリングユニットを備えることができる。左イヤーカップのアクティブノイズキャンセリングユニットは、第1のマイクロフォンを備えることができ、右イヤーカップのアクティブノイズキャンセリングは、第2のマイクロフォンを備えることができる。結果として、風の方向に応じて空気清浄機の流量を制御するための費用対効果が高い解決法が提供される。特に、これらのマイクロフォンは、大きく異なる2つの目的のために使用される可能性がある。
【0022】
ヘッドギアは、第3のマイクロフォン及び第4のマイクロフォンを備えることができ、制御ユニットは、4つのマイクロフォンによって出力された信号を分析して、風の方向を判定することができる。第1及び第2のマイクロフォンは、フィードフォワードマイクロフォンであってもよく、第3及び第4のマイクロフォンは、フィードバックマイクロフォンであってもよい。結果として、風に応じて空気清浄機の流量を制御するための費用対効果が高い解決法が提供される。この配置態様には、フィードバックマイクロフォンが風から隔離又は遮へいされるというさらなる利点がある。結果として、風を原因とするフィードフォワードマイクロフォン及びフィードバックマイクロフォンの信号間のインコヒーレンス又は他の差分が増幅されるので、より信頼性が高い風の方向の判定を行うことができる。
【0023】
次に、添付の図面を参照しながら、例示用の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】一実施形態によるヘッドギアを示す図である。
【
図7】ヘッドギアの風検知モジュールのブロック図である。
【
図8】5つのマイクロフォンの、そのうちの(矢印によって示された)1つのみが風にさらされた場合の周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1~
図6のヘッドギア1は、ヘッドバンド2、左イヤーカップ3、右イヤーカップ4及びノズル5を備える。
【0026】
ヘッドバンド2は、一方の端部で左イヤーカップ3に取り付けられており、反対側端部で右イヤーカップ4に取り付けられる。ヘッドバンド2は、イヤーカップ3、4の電気部品に電力供給するための1つ以上のバッテリー6を収容する。
【0027】
各イヤーカップ3、4は、ハウジング10、スピーカー組立体11、空気清浄機12及びイヤーパッド13を備える。さらに、イヤーカップ3、4のうちの一方は、制御ユニット14を備える。
【0028】
ハウジング10は、スピーカー組立体11、空気清浄機12及び(イヤーカップのうちの1つのための)制御ユニット14を収容し、空気入口20及び空気出口21を備える。空気入口20は、ハウジング10の壁にある複数の開口部を含む。空気出口21は、ハウジング10の出口ダクト22の端部に設けられる。
【0029】
スピーカー組立体11は、スピーカー25及びアクティブノイズキャンセリング(ANC)ユニット26を備える。ANCユニット26は、フィードフォワードマイクロフォン27、フィードバックマイクロフォン28及びANC回路29を備える。ANC回路29は、フィードフォワードマイクロフォン27及びフィードバックマイクロフォン28と、スピーカー25とに連結される。フィードフォワードマイクロフォン27及びフィードバックマイクロフォン28から受信した信号に応答して、ANC回路29は、スピーカー25を駆動するための出力信号を生成する。
【0030】
空気清浄機12は、電気モータ30、インペラ31及びフィルター32を備える。インペラ31は、電気モータ30によって駆動され、駆動されるときには、ハウジング10の空気入口20を通して空気を吸い込む。空気は、インペラ31の上流側に配置されたフィルター32を通して抜き出される。空気は、フィルター32によって清浄化され、清浄化された空気は、ハウジング10の空気出口21を介して排出される。
【0031】
制御ユニット14は、風検知モジュール35及びモータ制御モジュール36を備える。
【0032】
風検知モジュール35は、イヤーカップ3とイヤーカップ4との両方のフィードフォワードマイクロフォン27及びフィードバックマイクロフォン28に連結される。風検知モジュール35は、マイクロフォン27、28によって出力された信号を分析して、風の風力及び/又は風の方向を判定する。
【0033】
モータ制御モジュール36は、各イヤーカップ3、4の電気モータ30を制御する。より具体的には、モータ制御モジュール36は、電気モータ30の速度を制御し、結果として、空気清浄機12の流量を制御するための駆動信号(例えば、PWM信号)を生成する。モータ制御モジュール36は、風検知モジュール35に連結される。風検知モジュール35によって判定された風の風力及び/又は風の方向に応じて、モータ制御モジュール36は、空気清浄機12の流量を制御する。
【0034】
ノズル5は、左イヤーカップ3及び右イヤーカップ4に取り外し可能な方式で取り付けられる。より具体的には、ノズル5は、左イヤーカップ3及び右イヤーカップ4の出口ダクト22に取り外し可能な方式で取り付けられる。ノズル5は曲がったダクト40を備え、曲がったダクト40は、ダクト40の一方の端部に配置された第1の入口41と、ダクト40の反対側端部に配置された第2の入口42と、ダクト40の長さに沿って中間地点に配置された出口43とを有する。出口43は、ダクト40のメッシュで覆われた開口部を構成する。イヤーカップ3、4に取り付けられる場合、ノズル5の第1の入口41は、左イヤーカップ3の空気清浄機12から第1の空気流を受け入れ、第2の入口42は、右イヤーカップ4の空気清浄機12から第2の空気流を受け入れる。2つの空気流は、ダクト40内を進行し、出口43で複合する。次いで、複合空気流は、出口43を介してノズル5から排出される。
【0035】
ヘッドギア1が着用者によって着用されるとき、2つの空気清浄機12の複合空気流は、清浄化された空気の流れとして、着用者の口及び鼻に向かって排出される。ヘッドギア1が屋外で着用されるとき、風は、着用者の口及び鼻から清浄化された空気の流れを押しのけ得る。これを補償するために、制御ユニット14は、風の変化に応じて空気清浄機12の流量を制御する。
【0036】
風検知モジュール35は、ヘッドギア1のマイクロフォン27、28によって出力された信号を分析し、それに応じて、風の風力及び/又は風の方向を判定する。風検知モジュール35によって実施される分析については、後でより詳細に記述する。判定された風の風力及び/又は風の方向に応じて、モータ制御ユニット36は、空気清浄機12の流量を制御する。
【0037】
第1の例において、風検知モジュール36は、風の風力を判定することができる。より具体的には、風検知モジュール35は、風の風力が小さいのか大きいのかを判定することができる。風の風力が小さい場合、モータ制御ユニット36は、各空気清浄機12が第1の流量で清浄化された空気を発生させるように、第1の速度で空気清浄機12の電気モータ30を駆動させる。2つの空気清浄機12の空気流は、ノズル5の出口43で複合して、第1の速度で着用者の口及び鼻に向かって誘導される清浄化された空気の流れを発生させる。風検知モジュール35が風の風力が大きいと判定した場合、モータ制御ユニット36は、各空気清浄機12がより高い第2の流量で清浄化された空気を発生させるように、より高い第2の速度で空気清浄機12の電気モータ30を駆動させる。結果として、清浄化された空気の流れは、より高い第2の速度で着用者の口及び鼻に向かって誘導される。結果として、風の風力の増大に応じて、清浄化された空気の流れの速度も上昇する。結果として、風を原因とする流れの方向のずれが低減されるので、清浄化された空気が着用者の口及び鼻のところに維持され続ける。
【0038】
第2の例において、風検知モジュール35は、風の方向を判定することができる。より具体的には、風検知モジュール35は、風の方向がヘッドギア1に対して左側からか、右側からか、又は前/後側からかを判定することができる。
【0039】
風の方向が左側からの場合、モータ制御ユニット36は、左イヤーカップ3の速度より高い速度で右イヤーカップ4の空気清浄機12の電気モータ30を駆動させる。これは、右イヤーカップ4の電気モータ30の速度の上昇及び/又は左イヤーカップ3の電気モータ30の速度の低下によって達成することができる。速度が異なる結果として、右イヤーカップ4の空気清浄機12は、左イヤーカップ3の空気清浄機12の流量より高い流量で清浄化された空気を発生させる。2つの空気流は、ノズル5の出口43で複合し続ける。しかしながら、2つの空気流の流量が異なるので、出口43から排出された清浄化された空気の流れは、もはや、直進するように誘導されず、一方の側に偏る。この具体例においては、右イヤーカップ4の空気清浄機12は、より高い流量を発生させる。結果として、清浄化された空気の流れは、左側に偏る。したがって、清浄化された空気の流れは、風に対して反対の方向に偏る。清浄化された空気の合成流(すなわち、ノズルから排出された清浄化された空気の流れと風との合成物)が着用者の口及び鼻に到着する。
【0040】
風の方向が右側からの場合、モータ制御ユニット36は、より高い相対速度で左イヤーカップ3の電気モータ30を駆動させる。結果として、左イヤーカップ3の空気清浄機12は、より高い流量を発生させるので、清浄化された空気の流れが右側に偏る。風の方向が前側又は後側からの場合、モータ制御ユニット36は、両方の空気清浄機12の電気モータ30を同じ速度で駆動させる。結果として、空気清浄機12は、同じ流量で清浄化された空気を発生させるので、清浄化された空気の流れは、直進するように誘導される。
【0041】
したがって、制御ユニット14は、判定された風の方向に応じて空気清浄機12の相対流量を制御する。より具体的には、風の方向がヘッドギア1の側方からであると判定したことに応答して、制御ユニット14は、ヘッドギア1の下流側に配置された空気清浄機12の相対流量を上昇させる。結果として、清浄化された空気の流れは、ノズル5から風に対して反対の方向に排出されるので、清浄化された空気の合成流が着用者の口及び鼻に到着する。
【0042】
上記第1の例において、風検知モジュール35は、風の風力が小さいのか大きいのかを判定する。風検知モジュール35が、風の風力を判定するときに他の尺度を使用することもできることは、理解されよう。例えば、風検知モジュール35は、風の風力の値が0~10であることを判定することが可能であり、ここで、0は無風であり、10は強風である。同様に、第2の例において、風検知モジュール35は、風の風力が左側からか、右側からか、前/後側からかを判定する。やはり、風検知モジュール35は、風の方向を判定するときに他の尺度を使用することもできる。例えば、風検知モジュール35は、風の方向の値が-10~+10であることを判定することが可能であり、ここで、-10は、左側から直接来る横風であり、+10は、右側から直接来る横風であり、0は、向かい風又は追い風である。
【0043】
風検知モジュール35は、風の風力と風の方向との両方を判定することもできる。この場合、モータ制御ユニット36は、風の風力と風の方向との両方に応じて空気清浄機12の相対流量を制御する。
【0044】
ここで
図7を参照すると、風検知モジュール35は、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)ユニット37、スペクトル分析装置38及び風判定部ユニット39を備える。ADC37ユニットは、4つのマイクロフォン27、28からの信号をアナログからデジタルに変換する。スペクトル分析装置38は、デジタルマイクロフォン信号のそれぞれを時間領域から周波数領域に変換する。スペクトル分析装置38は、マイクロフォン信号の時間領域サンプルを周波数領域サンプル(時に、ビンと呼ばれることもある)に変換するために、高速フーリエ変換(FFT)又は他の離散フーリエ変換を用いる。各周波数サンプルは、特定の周波数でマイクロフォン信号が有するエネルギーの量を表す。風判定部ユニット39は、周波数サンプルのエネルギーを分析し、それに応じて、風の風力及び/又は風の方向を判定する。
【0045】
ヘッドギア1のマイクロフォン27、28は、数百μPa~数十Paの範囲で空気の乱れを感知するように設計される。しかしながら、弱い風(例えば、ビューフォート風の風力階級で1)であっても、前述の範囲より100倍高い圧力を発生させることができる。したがって、風検知モジュール35は、風の風力及び/又は風の方向を感知するための感度の高い圧力センサーとして、マイクロフォン27、28を使用する。
【0046】
空気中粒子がマイクロフォンのダイアフラムにぶつかるとき、空気中粒子は、予測不能な態様でぶつかる。しかしながら、風は、周波数領域では見分けることが可能な形状を有する。
図8は、5つのマイクロフォンの、そのうちの(矢印によって示された)1つのみが風にさらされた場合の周波数特性を時間平均したプロットである。マイクロフォン信号のエネルギーの形状は周波数によって変化し、とりわけ、マイクロフォンの位置、イヤーカップのハウジング及び周辺構造、並びに、風の風力及び風の方向に依存する。しかしながら、風を原因とする信号の形状の変化は、主に低い周波数で起き、通常、エネルギーの大部分は、約500Hz未満の周波数に含まれる。風検知モジュール35は、風の風力及び/又は風の方向を判定するために、この振る舞いを活用する。
【0047】
後述のように、風の風力及び/又は風の方向を判定するために風検知モジュール35が採用することができる方法には、様々なものがある。ヘッドギア1は4つのマイクロフォン(イヤーカップ3、4のそれぞれにある2つのマイクロフォン27、28)を備えるが、風検知モジュール35によって利用される方法のうちのいくつかは、より少ない数のマイクロフォンを使用して実装することもできる。実際、風検知モジュール35によって利用される方法のうちのいくつかは、1つのマイクロフォンのみを使用して実装することもできる。
【0048】
後述する方法のそれぞれにおいて、風検知モジュール35は、マイクロフォン信号を分析し、あらかじめ規定された周波数範囲にわたって信号のエネルギーに基づいて風の風力及び/又は風の方向を判定する。上記のように、風のエネルギーの大部分は、約500Hz未満の周波数に含まれる。数多くの実生活のノイズは、これらの周波数でエネルギーを有することができる。しかしながら、実生活のノイズの中で、約50Hz未満の周波数で著しいエネルギーを有するものはほとんどない。したがって、風検知モジュール35によって利用されるあらかじめ規定された周波数範囲は、例えば、0~50Hzであってよい。結果として、風の風力及び/又は風の方向を、誤作動を少なくしながらより高い信頼性で判定することができる。
【0049】
スペクトル分析装置38は、あらかじめ規定された周波数範囲にわたって存在する単一の周波数サンプルを発生させるように、サンプリング周波数を使用することができる。代替的には、スペクトル分析装置38は、あらかじめ規定された周波数範囲にわたって存在する複数の周波数サンプルを発生させるように、サンプリング周波数を使用することもできる。したがって、スペクトル分析装置38は、あらかじめ規定された周波数範囲にわたって存在する1つ以上の周波数サンプルを発生させると言うこともできる。
【0050】
第1の方法において、風検知モジュール35は、フィードフォワードマイクロフォン27のうちの1つのみを使用して風の風力を判定する。
【0051】
風判定部ユニット39は、1つ以上の周波数サンプルの合計エネルギーに基づいて風の風力を判定する。より具体的には、風判定部ユニット39は、1つ以上のしきい値に対してサンプルの合計エネルギーの比較をし、この比較に基づいて風の風力を判定する。例えば、風判定部ユニット39は、単一のしきい値に対してサンプルの合計エネルギーの比較をすることもできる。次いで、風判定部ユニット39は、合計エネルギーがしきい値より低い場合には、風の風力が小さいと判定し、合計エネルギーがしきい値より高い場合には、風の風力が大きいと判定する。
【0052】
風判定部は、様々なしきい値に対して様々な周波数サンプルの合計エネルギーの比較をすることができる。例えば、風判定部ユニット39は、第1のサンプルの合計エネルギーが第1のしきい値より高く、第2のサンプルの合計エネルギーが異なる第2のしきい値より高い場合にのみ、風の風力が大きいと判定することができる。
【0053】
風のエネルギー的特性又は風のエネルギーの形状は、時間経過に伴って著しく変化し得る。したがって、スペクトル分析装置38の時間分解能は、これらの短期的な変化を平準化するように規定することができる。代替的には、風判定部ユニット39は、様々な時間間隔の周波数サンプルの合計エネルギーに基づいて風の風力を判定することができる。例えば、スペクトル分析装置38は、時間T1で第1の組の周波数サンプルを発生させ、時間T2で第2の組の周波数サンプルを発生させることができる。次いで、風判定部ユニット39は、合計エネルギーを導出するために、両方の組のサンプルを合計又は平均する。
【0054】
第1の方法の潜在的な課題は、一部の実生活のノイズ(例えば、雷、打ち寄せる波、頭上のヘリコプター)が、あらかじめ規定された周波数範囲内に含まれるエネルギーを有するので、風と誤認される場合があるという点である。
【0055】
第2の方法において、風検知モジュール35はやはり、フィードフォワードマイクロフォン27のうちの1つのみを使用して風の風力を判定する。しかしながら、風判定部ユニット39は、周波数サンプルの合計エネルギーに基づいて風の風力を判定するのではなく、時間経過に伴った合計エネルギーの変化に基づいて風の風力を判定する。
【0056】
すでに述べたように、風のエネルギー的特性は、時間経過に伴って著しく変化し得る。対照的に、(これらの低い周波数の)実生活のノイズのエネルギー的特性は、同じ時間尺度の間、比較的変化しにくいものであり得る。したがって、風判定部ユニット39は、周波数サンプルの合計エネルギーの経時的変化に基づいて風の風力を判定する。
【0057】
風判定部ユニット39は、様々な時間間隔のサンプルの合計エネルギーの差分を導出する。例えば、スペクトル分析装置38は、時間T1で第1の組のサンプルを発生させ、時間T2で第2の組のサンプルを発生させることができる。次いで、風判定部ユニット39は、第1及び第2の組のサンプルのエネルギーの差分を導出し、これらの差分に基づいて風の風力を判定する。
【0058】
風判定部ユニット39は、サンプルの合計エネルギーの時間的な分散を表す指標を判定することができる。例えば、風判定部ユニット39は、差分の二乗和又は差分の絶対値和を導出することができる。次いで、風判定部ユニット39は、風の風力を判定するために、1つ以上のしきい値に対して前述の指標(例えば、二乗和)の比較をする。例えば、風判定部ユニット39は、指標がしきい値より低い場合に、風の風力が小さいと判定することができ、指標がしきい値より高い場合に、風の風力が大きいと判定することができる。
【0059】
風検知モジュール35は、より高い信頼性で風の風力を判定するために、第1の方法と第2の方法との両方を採用することもできる。この場合、風判定部ユニット39は、サンプルの合計エネルギーと、合計エネルギーの経時的変化との両方に基づいて風の風力を判定する。したがって、例えば、風判定部ユニット39は、サンプルの合計エネルギーが第1のしきい値より高く、合計エネルギーの差分の二乗和は、第2のしきい値より高い場合にのみ、風が大きいと判定することができる。
【0060】
第1の方法と第2の方法との両方を採用したとき、風検知モジュール35は、より信頼性が高い風の風力の判定を提供する。しかしながら、あらかじめ規定された周波数範囲内のエネルギーを有する実生活のノイズは寿命が短いので、風と誤認される場合がある。
【0061】
第3の方法において、風検知モジュール35は、イヤーカップ3とイヤーカップ4との両方のフィードフォワードマイクロフォン27を使用して風の風力を判定する。
【0062】
風のエネルギーの大部分が含まれる比較的低い周波数では、実生活のノイズは、比較的長い波長を有するので、ヘッドギア1又は人体によって著しく改変されることがない。したがって、あらかじめ規定された周波数範囲(例えば、50Hz未満)にわたって、2つのフィードフォワードマイクロフォン27は、類似したエネルギー及び位相の実生活のノイズを検知する。しかしながら、風に含まれる粒子が2つのマイクロフォン27のダイアフラムに衝突するとき、風に含まれる粒子は、各マイクロフォンに特有のランダムな態様で衝突し得る。結果として、風は、2つのマイクロフォン27の信号において、異なるエネルギーとして現れる。したがって、風検知モジュール35は、風の風力を判定するために、この振る舞いを活用する。
【0063】
風検知モジュール35は、2つのマイクロフォン信号の比較に基づいて風の風力を判定する。より具体的には、風判定部ユニット39は、2つのマイクロフォン信号のエネルギーの差分に基づいて風の風力を判定する。
【0064】
風判定部ユニット39は、2つの信号の周波数サンプルの合計エネルギーの差分に基づいて風の風力を判定することができる。例えば、風判定部ユニット39は、差分の指標(例えば、差分の二乗和又は絶対値和)がしきい値より低い場合に、風の風力が小さいと判定することができ、差分の指標がしきい値より高い場合に、風の風力が大きいと判定することができる。代替的には又はさらには、風判定部ユニット39は、2つの信号のエネルギーの差分の経時的変化に基づいて風の風力を判定することもできる。例えば、スペクトル分析装置38は、時間T1で第1の組のサンプル(両方のマイクロフォンについてのもの)を発生させ、時間T2で第2の組のサンプル(やはり、両方のマイクロフォンについてのもの)を発生させることができる。次いで、風判定部ユニット39は、第1の組のサンプルのエネルギーの差分に基づいて第1の差分値(例えば、二乗和又は絶対値和)を判定し、第2の組のサンプルのエネルギーの差分に基づいて第2の差分値を判定することができる。次いで、風判定部ユニット39は、第1の差分値と第2の差分値との両方がしきい値より高い場合にのみ、風の風力が大きいと判定することができる。
【0065】
風検知モジュール35は、第3の方法と、第1の方法及び第2の方法の片方又は両方とを併用することもできる。例えば、風判定部ユニット39は、(i) マイクロフォン信号のうちの1つのサンプルの合計エネルギーがしきい値より大きく(第1の方法)、(ii) 2つのマイクロフォン信号の合計エネルギーの差分がさらなるしきい値より大きい場合(第3の方法)にのみ、風の風力が大きいと判定することができる。このようにして、風判定部ユニット39は、(i) マイクロフォン信号のうちの少なくとも1つの低周波数エネルギーが高く、(ii) 2つのマイクロフォン信号の低周波数エネルギーが十分に異なる場合にのみ、風の風力が大きいと判定する。さらなる一例として、風判定部ユニット39は、(i) 所与の期間のマイクロフォン信号のうちの1つの合計エネルギーの差分がしきい値より大きく(第2の方法)、(ii) 同じ期間の2つのマイクロフォン信号の合計エネルギーの差分がさらなるしきい値より大きい場合(第3の方法)にのみ、風の風力が大きいと判定することができる。このようにして、風判定部ユニット39は、(i) マイクロフォン信号のうちの少なくとも1つの低周波数エネルギーが時間経過に伴って変化し、(ii) 2つのマイクロフォン信号の低周波数エネルギーが異なる時間において十分に異なる場合にのみ、風の風力が大きいと判定する。
【0066】
第4の方法において、風検知モジュール35は、2つのマイクロフォンを使用して風の風力を判定する。第1のマイクロフォンは、イヤーカップのうちの1つのフィードフォワードマイクロフォン27であり、第2のマイクロフォンは、同じイヤーカップのフィードバックマイクロフォン28又は反対側のイヤーカップのフィードフォワードマイクロフォン27である。
【0067】
風判定部ユニット39は、2つのマイクロフォン信号のコヒーレンスに基づいて風の風力を判定する。コヒーレンスは、2つのマイクロフォン信号の関係の指標であり、したがって、類似性の評価のために使用することができる。マイクロフォン信号のうちの一方には何らかのノイズがあるが、マイクロフォン信号のうちの他方にはノイズがない場合、コヒーレンス値は低くなる。2つのマイクロフォンが相対的にすぐ近くに配置される場合、実生活のノイズは、少なくとも前述の低い周波数では、マイクロフォン信号のそれぞれにおいて、(振幅が異なる可能性はあるが)類似したエネルギー的特性を有する。対照的に、風は、2つのマイクロフォン信号において、大きく異なるエネルギーを有する。したがって、2つの信号のコヒーレンスを使用して、風の風力を判定することができる。例えば、風判定部ユニット39は、コヒーレンスがしきい値より高い(すなわち、2つの信号が類似する)場合に、風の風力が小さいと判定することができ、コヒーレンスがしきい値より低い(すなわち、2つの信号が類似していない)場合に、風の風力が大きいと判定することができる。
【0068】
やはり、風検知モジュール35は、第4の方法と、他の方法のうちの1つ以上とを併用することもできる。例えば、風判定部ユニット39は、(i) マイクロフォン信号のうちの少なくとも1つの合計エネルギーがしきい値より高く(第1の方法)、(ii) 2つのマイクロフォン信号のコヒーレンスがさらなるしきい値より低い場合(第4の方法)にのみ、風が大きいと判定することができる。
【0069】
第1のマイクロフォンは、フィードフォワードマイクロフォン27であってもよいし、第2のマイクロフォンは、フィードバックマイクロフォン28であってもよい。この配置態様には、2つのマイクロフォン27、28がすぐ近くに配置されるので、低い周波数では、実生活のノイズが、両方のマイクロフォンのエネルギー的特性が実質的に同じになるという利点がある。さらに、フィードバックマイクロフォン28は、風から隔離又は遮へいされる。結果として、風を原因とする2つの信号のインコヒーレンスが著しく増大する。しかしながら、この配置態様の潜在的な欠点は、イヤーカップ3、4のスピーカー25が、あらかじめ規定された周波数範囲内のエネルギーを有する音(例えば、サブバス音)を発生させる可能性があるという点である。結果として、2つの信号のインコヒーレンスが増大する。
【0070】
第1のマイクロフォンは、一方のイヤーカップ3のフィードフォワードマイクロフォン27であってもよく、第2のマイクロフォンは、反対側のイヤーカップ4のフィードフォワードマイクロフォン27であってもよい。このとき、この配置態様には、両方のマイクロフォン27が風にさらされるという利点がある。しかしながら、マイクロフォン27はさらに離れた位置にあり、結果として、実生活のノイズを原因とする2つの信号の差分が増大する。さらに、もしも着用者がイヤーカップのうちの1つを掴んで操作したのであれば、発生したノイズは、2つの信号のインコヒーレンスを増大させるので、風と解釈される場合がある。さらに、左イヤーカップ3の空気清浄機12によって発生した音は右イヤーカップ4の空気清浄機12によって発生した音と異なる場合もあり、やはり結果として、2つの信号のインコヒーレンスが増大する。
【0071】
ここまでは、風の風力を判定することについて言及してきた。しかしながら、風検知モジュール35は、風の方向をさらに又は代替的に判定することができる。
【0072】
第5の方法において、風検知モジュールは、2つのフィードフォワードマイクロフォン27を使用して風の方向を判定する。
【0073】
第5の方法は、本質的には、第1の方法の発展形である。風判定部ユニット29は、第1のマイクロフォン(例えば、左イヤーカップ)の合計エネルギー及び第2のマイクロフォン(例えば、第2のイヤーカップ)の合計エネルギーを導出する。次いで、風判定部ユニット39は、2つのエネルギーの比較に基づいて風の方向を判定する。例えば、風判定部ユニット39は、第1のマイクロフォンの合計エネルギーの方が高い場合には、風が左側から来ると判定することができ、第2のマイクロフォンの合計エネルギーの方が高い場合には、風が右側から来ると判定することができる。次いで、風判定部ユニット39は、2つのマイクロフォンの合計エネルギーが同じ又は類似する場合、風が前側又は後側から来ると判定する。さらなる一例において、風判定部ユニット39は、2つの信号の合計エネルギーの差分がしきい値より高い場合に、風が横風であると判定することができ、しきい値より低い場合に、風が向かい風又は追い風であると判定することができる。
【0074】
風検知モジュール35は、風の方向をよりうまく判定するために、第5の方法と、先述の方法のうちの1つ以上とを組み合わせることもできる。例えば、第1のマイクロフォンの合計エネルギーは、第2のマイクロフォンの合計エネルギーより高いこともあり得るが、これは、風が左側から来ることを示唆する。しかしながら、第1のマイクロフォンのエネルギーは、時間が経過しても比較的一定なもの(実生活のノイズを示すもの)であり得るが、第2のマイクロフォンのエネルギーは一定しないもの(風を示すもの)であり得る。したがって、風判定部ユニット39は、(i) 2つのマイクロフォン信号の合計エネルギー(第5の方法)及び(ii) 2つのマイクロフォン信号のエネルギーの経時的変化(第3の方法)に基づいて風の方向を判定することができる。結果として、風検知モジュール35は、より信頼性が高い風の方向の判定を行うことができる。
【0075】
第6の方法において、風検知モジュール35は、イヤーカップ3とイヤーカップ4との両方のフィードフォワードマイクロフォン27及びフィードバックマイクロフォン28を使用して風の方向を判定する。
【0076】
風判定部ユニット39は、各イヤーカップ3、4のフィードフォワードマイクロフォン及びフィードバックマイクロフォンの信号のコヒーレンスに基づいて各イヤーカップ3、4での風の風力を判定する。風判定部ユニット39は、上述した他の方法のうちの1つ以上をさらに使用して、各イヤーカップ3、4での風の風力を判定することもできる。次いで、風判定部ユニット39は、風の風力の比較に基づいて風の方向を判定する。したがって、例えば、風判定部ユニット39は、左イヤーカップ3での風の風力の方が大きい場合に、風が左側から来ると判定することができ、右イヤーカップ4での風の風力の方が大きい場合に、風が右側から来ると判定することができ、2つのイヤーカップ3、4の風の風力が同じ又は類似する場合に、風が前側又は後側から来ると判定することができる。
【0077】
風の風力及び/又は風の方向を判定するために、風検知モジュール35が、様々な方法及び/又は方法の順列を採用することができることは、上記から明らかであろう。上記の例示的な方法において、風検知モジュール35は、風の風力が小さいのか大きいのかを判定し、及び/又は、風の方向が左側からであるか、右側からであるか、前/後側からであるかを判定する。しかしながら、すでに述べたように、風検知モジュール35は、風の風力及び/又は風の方向を判定するときに他の尺度を使用することもできる。これは、例えば、複数のしきい値の使用によって達成することができる。
【0078】
ヘッドギア1は、4つのマイクロフォン27、28を有する。しかしながら、上記のように、風検知モジュール35は、より少ない数のマイクロフォンを使用して風の風力及び/又は風の方向を判定することができる。特に、風検知モジュール35は、1つのマイクロフォンのみを使用して風の風力を判定し、2つのマイクロフォンのみを使用して風の方向を判定することもできる。
【0079】
風検知モジュール35は、ヘッドギア1のANCマイクロフォン27、28を利用する。そしてこれにより、風の変化に応じて空気清浄機12の流量を制御するための、費用対効果が高い解決法が提供される。しかしながら、ヘッドギア1は、さらなる又は代替的なマイクロフォンを備えることも可能であり、風検知モジュール35は、このさらなる又は代替的なマイクロフォンを使用して、風の風力及び/又は風の方向を判定することができる。例えば、ヘッドギア1は、1つ以上の電話機用マイクロフォンを備えることができる。特に、ヘッドギア1は、イヤーカップ3、4の片方又は両方に1対の電話機用マイクロフォンを備えることができる。ビームフォーミングを提供するために、複数組の電話機用マイクロフォンが互いのすぐ近くに配置されていてもよい。結果として、マイクロフォンは両方ともが風にさらされ、風の検知によく適する。
【0080】
ヘッドギア1は、1対の空気清浄機12を備える。この配置態様には、単一の空気清浄機を上回るいくつかの利点がある。例えば、ヘッドギア1の重量は、2つのイヤーカップ3、4間でよりよく分散される。さらに、清浄化された空気の流れは、より低い速度で電気モータ30を駆動させることによって所与の流量で発生させることが可能であり、これにより、ノイズが低減される。しかしながら、これらの利点にもかかわらず、ヘッドギア1は、想定として、単一の空気清浄機を備えることもあり得る。モータ制御ユニット36は、風の風力の変化に応じて空気清浄機の流量を制御し続ける。モータ制御ユニット36もまた、風の方向の変化に応じて空気清浄機の流量を制御することができる。例えば、横風に応じて、モータ制御ユニット26は、より強い清浄化された空気の流れが着用者に誘導されるように、空気清浄機の流量を上昇させることができる。代替的には、ヘッドギア1は、ノズル5の出口43に配置されて清浄化された空気の流れの排出方向を変更するために動かされるバタフライバルブ又は他の手段を備えることも可能である。
【0081】
ここまでに特定の実施形態を記述してきたが、特許請求の範囲によって規定された本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更形態がなされ得ることは理解されよう。