(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】救命採暖具及び救命用具
(51)【国際特許分類】
B63C 9/08 20060101AFI20240704BHJP
A61F 7/03 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
B63C9/08 Z
A61F7/08 334S
(21)【出願番号】P 2023124025
(22)【出願日】2023-07-31
(62)【分割の表示】P 2021208927の分割
【原出願日】2021-12-23
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】592170411
【氏名又は名称】船山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092691
【氏名又は名称】黒田 勇治
(74)【代理人】
【識別番号】100199543
【氏名又は名称】黒田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】岡村 敏和
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0144122(US,A1)
【文献】登録実用新案第3128765(JP,U)
【文献】特開2007-143570(JP,A)
【文献】特開2016-033054(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1982248(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0088131(KR,A)
【文献】特開2012-090873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 9/08
A61F 7/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
救命胴衣、腰巻きタイプ、肩掛タイプの救命具に収納され、水との接触により発熱反応する発熱剤と、該発熱剤を包み込むための吸水シートと、該発熱剤を包み込んだ該吸水シートを封入するための封入袋体とからなり、上記封入袋体に、不測の海難事故や水難事故に遭遇したとき、直ちに該封入袋体内に海水や淡水の水を侵入させるための
表面から裏面に至る通し穴状の通水口部が配設され、上記吸水シートは、
高分子吸水材を含有する綿状のパルプ、該パルプを挟んで包む吸水紙、及び該吸水紙を包む不織布からなる吸水性の高いシート材で構成され、発熱の維持時間、効率的な発熱作用及び適度な発熱温度の維持により、長時間にわたる漂流を可能とすることを特徴とする救命採暖具。
【請求項2】
上記発熱剤は、透水性袋内に生石灰(酸化カルシウム)粉末及びアルミニウム粉末の混合粉末を充填してなることを特徴とする請求項1記載の救命採暖具。
【請求項3】
上記封入袋体は、外面がポリエチレンテレフタレート(PET)、中間にアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(VM-PET)及び内面にポリエチレン(PE)の3層構造のアルミニウム袋からなることを特徴とする請求項1記載の救命採暖具。
【請求項4】
上記請求項1~3のいずれか1項に記載の救命採暖具及び非常食を包装袋体に収納してなることを特徴とする救命用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、乗船、磯釣りにおいて、不測の海難事故や水難事故に遭遇した際の緊急用備品として用いられる救命採暖具及び救命用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の救命用具として、衣服に、電池の通電による発熱体を取り付けた構造、あるいは、生石灰と水分との反応による発熱体を取り付けた構造であって、これら発熱体から放射される赤外線を赤外線映像カメラにより捕捉し、遭難者の捜索及び採暖に利用するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来構造の場合、前者の場合、通電による発熱体にあっては、電池と発熱体との遭難者による通電操作が必要であり、この通電操作により海難事故発生時等の緊急性を有する場合には不向きであり、又、後者の場合、生石灰と水分との反応による発熱体にあっては、衣服の両腕部分に接着剤によって生石灰を収容した合成樹脂フィルム袋を1個又は複数個接着し、合成樹脂フィルム袋の内部に水分を少しずつにじみ込ませるための繊維束を袋内部から袋外部に放出させ、繊維束による毛細管現象を用いた水分導入手段も必要となり、それだけ、発熱体の構造が複雑化し易く、合成樹脂フィルム袋は透湿性及び透光性が高く、袋内の生石灰の経年劣化が生じ易く、それだけ、使用の耐久性が低くなると共に緊急時には不向きなことがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明は、救命胴衣、腰巻きタイプ、肩掛タイプの救命具に収納され、水との接触により発熱反応する発熱剤と、該発熱剤を包み込むための吸水シートと、該発熱剤を包み込んだ該吸水シートを封入するための封入袋体とからなり、上記封入袋体に、不測の海難事故や水難事故に遭遇したとき、直ちに該封入袋体内に海水や淡水の水を侵入させるための表面から裏面に至る通し穴状の通水口部が配設され、上記吸水シートは、高分子吸水材を含有する綿状のパルプ、該パルプを挟んで包む吸水紙、及び該吸水紙を包む不織布からなる吸水性の高いシート材で構成され、発熱の維持時間、効率的な発熱作用及び適度な発熱温度の維持により、長時間にわたる漂流を可能とすることを特徴とする救命採暖具にある。
【0006】
又、請求項2記載の発明は、上記発熱剤は、透水性袋内に生石灰(酸化カルシウム)粉末及びアルミニウム粉末の混合粉末を充填してなることを特徴とするものであり、又、請求項3記載の発明は、上記封入袋体は、外面がポリエチレンテレフタレート(PET)、中間にアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(VM-PET)及び内面にポリエチレン(PE)の3層構造のアルミニウム袋からなることを特徴とするものである。
【0007】
又、請求項4記載の発明は、上記請求項1~3のいずれか1項に記載の救命採暖具及び非常食を包装袋体に収納してなることを特徴とする救命用具にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上述の如く、請求項1記載の発明にあっては、救命採暖具を救命胴衣、腰巻きタイプ、肩掛タイプの救命具に収納し、乗船、磯釣り時等の海難事故や水難事故に備えることになり、この際、例えば、装着者が不測の海難事故や水難事故に遭遇し、装着者が海中や水中に投げ出されたとき、救命胴衣、腰巻きタイプ、肩掛タイプの救命具に収納された上記救命採暖具は海水や淡水の水に接触し、表面から裏面に至る通し穴状の通水口部から直ちに封入袋体内に海水や淡水の水が侵入し、海水や淡水の水は吸水シートに吸水され、水は吸水シートに包み込まれた発熱剤の内部に侵入し、発熱剤と水との接触により発熱反応が生じ、発熱反応により生じた熱は吸水シート及び封入袋体を介して遭難者に伝導され、吸水シートに吸水された水は発熱反応による熱によって蒸発して水蒸気が発生し、水蒸気は救命胴衣の内部空間に籠もり、水蒸気の対流により遭難者に熱が伝わり、しかして、発熱反応により生じた熱は封入袋体内の熱伝導を経た後、封入袋体からの熱伝達、水蒸気による対流及び熱放射により遭難者に伝わり、遭難者は熱伝達、対流及び熱放射により暖を採ることができ、救命採暖具により遭難者は身体の心臓部、手足部、頭部などを暖めることができ、さらに、発熱剤を包み込む吸水シートの高吸水性により発熱の維持時間及び効率的な発熱作用を長く得ることができ、吸水シートの存在により遭難者に対する熱傷も防ぐことができ、長時間にわたる漂流も可能となって海難事故や水難事故に対する有効な対策とすることができ、さらに、上記吸水シートは、高分子吸水材を含有する綿状のパルプ、パルプを挟んで包む吸水紙、及び吸水紙を包む不織布からなる吸水性の高いシート材で構成されているから、加水により膨張する高分子吸収材の採用により発熱開始時より過度な発熱が抑えられ、適度な発熱温度の維持を図ることができる。
【0009】
又、請求項2記載の発明にあっては、上記発熱剤は、透水性袋内に生石灰(酸化カルシウム)粉末及びアルミニウム粉末の混合粉末を充填してなるから、海水等の水と生石灰との反応、水と生石灰との反応によって生成される水酸化カルシウムとアルミニウムとの反応により発熱反応までの立ち上がり時間の短縮及び発熱量の増大、発熱温度、発熱時間の維持を図ることができ、発熱開始時より過度な発熱が抑えられ適度な発熱温度の維持を図ることができ、さらには、発熱剤の軽量化を図ることができ、使用の利便性を高めることができ、又、請求項3記載の発明にあっては、上記封入袋体は、外面がポリエチレンテレフタレート(PET)、中間にアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(VM-PET)及び内面にポリエチレン(PE)の3層構造のアルミニウム袋から構成されているから、アルミニウム袋のアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートにより非透湿性(ガスバリアー性)、高遮光性及び高熱伝導率を得ることができ、発熱剤の生石灰の経年劣化を防いで使用の耐久性を向上することができ、緊急時に対応することができる。
【0010】
又、請求項4記載の発明にあっては、救命採暖具を救命胴衣、腰巻きタイプ、肩掛タイプの救命具に収納し、乗船、磯釣り時等の海難事故や水難事故に備えることになり、この際、例えば、装着者が不測の海難事故や水難事故に遭遇し、装着者が海中や水中に投げ出されたとき、包装袋体を開封すると、救命胴衣、腰巻きタイプ、肩掛タイプの救命具に収納された上記救命採暖具は海水や淡水の水に接触し、表面から裏面に至る通し穴状の通水口部から直ちに封入袋体内に海水や淡水の水が侵入し、海水や淡水の水は吸水シートに吸水され、水は吸水シートに包み込まれた発熱剤の内部に侵入し、発熱剤と水との接触により発熱反応が生じ、発熱反応により生じた熱は吸水シート及び封入袋体を介して遭難者に伝導され、吸水シートに吸水された水は発熱反応による熱によって蒸発して水蒸気が発生し、水蒸気は救命胴衣の内部空間に籠もり、水蒸気の対流により遭難者に熱が伝わり、しかして、発熱反応により生じた熱は封入袋体内の熱伝導を経た後、封入袋体からの熱伝達、水蒸気による対流及び熱放射により遭難者に伝わり、遭難者は熱伝達、対流及び熱放射により暖を採ることができ、救命採暖具により遭難者は身体の心臓部、手足部、頭部などを暖めることができ、さらに、発熱剤を包み込む吸水シートの高吸水性により発熱の維持時間及び効率的な発熱作用を長く得ることができ、吸水シートの存在により遭難者に対する熱傷も防ぐことができ、長時間にわたる漂流も可能となって海難事故や水難事故に対する有効な対策とすることができ、さらに、上記吸水シートは、高分子吸水材を含有する綿状のパルプ、パルプを挟んで包む吸水紙、及び吸水紙を包む不織布からなる吸水性の高いシート材で構成されているから、加水により膨張する高分子吸収材の採用により発熱開始時より過度な発熱が抑えられ、適度な発熱温度の維持を図ることができ、さらに、上記包装袋体に上記救命採暖具と一緒に非常食を収納してなるから、包装袋体内に収納した非常食の存在により、一層、長時間にわたる漂流に備えることができ、海難事故や水難事故に対する有効な対策とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の第一形態例の全体斜視図である。
【
図2】本発明の実施の第一形態例の全体分離斜視図である。
【
図3】本発明の実施の第一形態例の全体断面図である。
【
図4】本発明の実施の第一形態例の吸水シートの折り畳み説明図である。
【
図5】本発明の実施の第一形態例の発熱剤の断面図である。
【
図6】本発明の実施の第一形態例の吸水シートの断面図である。
【
図7】本発明の実施の第一形態例の使用状態の説明図である。
【
図8】本発明の実施の第二形態例の全体斜視図である。
【
図9】本発明の実施の第三形態例の全体斜視図である。
【
図10】本発明の実施の第四形態例の全体斜視図である。
【
図11】本発明の実施の第五形態例の吸水シートの折り畳み説明図である。
【
図12】本発明の実施の第六形態例の全体斜視図である。
【
図13】本発明の実施の第六形態例の一部切欠正面図である。
【
図14】本発明の実施の第六形態例の全体分離斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
【0013】
この場合、本発明の実施の形態例の救命採暖具Rは、
図7の如く、救命胴衣W、腰巻きタイプ、肩掛タイプ等の各種の救命具に収納され、大別して、海水、淡水等の水との接触により発熱反応する発熱剤Hと、発熱剤Hを包み込むための吸水シートSと、発熱剤Hを包み込んだ吸水シートSを封入するための封入袋体Fとからなり、上記封入袋体Fに通水口部Tが配設されている。
【0014】
図1乃至
図7の第一形態例において、Hは発熱剤であって、この場合、
図2、
図5の如く、透水性袋H
1内に生石灰(酸化カルシウム・CaO)粉末及びアルミニウム(AL)粉末の混合粉末H
3を充填し、ヒートシール部H
2・H
2・H
2で三方シールされてなり、透水性袋H
1は、ポリプロピレン繊維及びレーヨン繊維の多層構造の不織布が用いられ、生石灰粉末の純度、粒度、及びアルミニウム粉末の粒度、生石灰粉末とアルミニウム粉末との混合割合は、発熱剤Hと水との接触により生ずる発熱反応の立ち上がり時間及び立ち上がり温度、救助に至るまでに必要な温度の持続時間等を考慮して定めることになる。
【0015】
又、上記吸水シートSは、この場合、
図2、
図6の如く、高分子吸水材S
1(高吸水性高分子・高吸水性ポリマー)を含有する綿状のパルプS
2、パルプS
2を包む吸水紙S
3・S
3、この場合、二枚の吸水紙S
3・S
3で挟んでパルプS
2を包み、及び、吸水紙S
3・S
3を包む不織布S
4・S
4からなるゴム系のホットメルト接着剤S
7による3層構造の吸水性の高いシート材で構成され、吸水シートSの二枚の不織布S
4・S
4でパルプS
2を包む吸水紙S
3・S
3を挟み、二枚の不織布S
4・S
4の外周部4カ所をヒートシール部S
5・S
5・・によ
り熱圧着固定して形成されている。
【0016】
又、上記封入袋体Fは、
図1、
図2の如く、外面がポリエチレンテレフタレート(PET)、中間にアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(VM-PET)及び内面にポリエチレン(PE)の3層構造にしてガスバリアー性(非透湿性)及び遮光性の高いアルミニウム袋F
1から構成され、アルミニウム袋F
1の3カ所を開口部F
3を残してヒートシール部F
2・F
2・F
2により熱圧着固定し、この三方袋タイプのアルミニウム袋F
1内に発熱剤Hを包み込んだ吸水シートSを封入した後、開口部F
3をヒートシール部F
2で熱圧着固定することになる。
【0017】
この場合、
図1、
図3の如く、上記通水口部Tとして、上記封入袋体Fの左右対向位置に直径6mm程度の丸穴が4個宛、計8個、表面から裏面に至る通し穴状に形成され、封入袋体Fは横130mm×縦180mm程度の大きさに形成されている。
【0018】
この実施の第一形態例は上記構成であるから、
図1、
図2の如く、上記吸水シートSの三本の仮想折線S
6により形成される6区画のうちの1区画に上記発熱剤Hを載置し、
図4(a)、(b)、(c)の手順で三本の仮想折線S
6の位置で吸水シートSを折り畳み、同図(c)の如く、吸水シートSにより発熱剤Hを包み込み、
図4の如く、折り畳み状態において、発熱剤Hを吸水シートSの中央位置に包み込み、
図1、
図3の如く、発熱剤Hを包み込んだ吸水シートSを封入袋体F内に封入し、開口部F
3をヒートシール部F
2で熱圧着固定し、救命採暖具Rを製作することになる。
【0019】
そして、
図7の如く、この救命採暖具Rを救命胴衣W等の救命具に収納し、例えば、装着者の心臓の近傍に対向する位置に形成されたポケット内に救命採暖具Rを配置して乗船、磯釣り時等の海難事故等に備えることになる。
【0020】
この際、例えば、装着者が不測の海難事故や水難事故に遭遇し、装着者が海中や水中に投げ出されたとき、救命胴衣W等の救命具に収納された上記救命採暖具Rは海水や淡水の水に接触し、通水口部Tから直ちに封入袋体F内に海水等の水が侵入し、海水等の水は吸水シートSに吸水され、水は吸水シートSに包み込まれた発熱剤Hの透水性袋H1を通過して発熱剤Hの内部に侵入し、発熱剤Hと水との接触により発熱反応が生じ、発熱反応により生じた熱は吸水シートS及び封入袋体Fを介して遭難者に伝導され、吸水シートSに吸水された水は発熱反応による熱によって蒸発して水蒸気が発生し、水蒸気は救命胴衣Wの内部空間に籠もり、水蒸気の対流により遭難者に熱が伝わり、しかして、発熱反応により生じた熱は封入袋体F内の熱伝導を経た後、封入袋体Fからの熱伝達、水蒸気による対流及び熱放射により遭難者に伝わり、遭難者は熱伝達、対流及び熱放射により暖を採ることができ、救命採暖具Rにより遭難者は身体の心臓部、手足部、頭部などを暖めることができ、さらに、発熱剤Hを包み込む吸水シートSの高吸水性により発熱の維持時間及び効率的な発熱作用を長く得ることができ、吸水シートSの存在により遭難者に対する熱傷も防ぐことができ、長時間にわたる漂流も可能となって海難事故等に対する有効な対策とすることができる。
【0021】
この場合、
図5の如く、上記発熱剤Hは、透水性袋H
1内に生石灰(酸化カルシウム)粉末及びアルミニウム粉末の混合粉末H
3を充填してなるから、海水等の水と生石灰との反応、水と生石灰との反応によって生成される水酸化カルシウムとアルミニウムとの反応により発熱反応までの立ち上がり時間の短縮及び発熱量の増大、発熱温度、発熱時間の維持を図ることができ、発熱開始時より過度な発熱が抑えられ適度な発熱温度の維持を図ることができ、さらには、発熱剤Hの軽量化を図ることができ、使用の利便性を高めることができる。
【0022】
又、この場合、
図6の如く、上記吸水シートSは、高分子吸水材S
1(高吸水性高分子・高吸水性ポリマー)を含有する綿状のパルプS
2、パルプS
2を包む吸水紙S
3・S
3、この場合、二枚の吸水紙S
3・S
3
で挟んでパルプS
2を包み、及び、吸水紙S
3・S
3を包む不織布S
4・S
4からなるホットメルト接着剤S
7による3層構造の吸水性の高いシート材で構成されているから、発熱剤Hを包み込む吸水シートSの高吸水性により発熱の維持時間及び効率的な発熱作用を長く得ることができ、加水により膨張する高分子吸収材S
1の採用により発熱開始時よ
り過度な発熱が抑えられ、適度な発熱温度の維持を図ることができ、吸水シートSの存在により遭難者に対する熱傷も防ぐことができ、長時間にわたる漂流も可能となって海難事故等に対する有効な対策とすることができる。
【0023】
又、この場合、
図1、
図2の如く、上記封入袋体Fは、外面がポリエチレンテレフタレート(PET)、中間にアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(VM-PET)及び内面にポリエチレン(PE)の3層構造のアルミニウム袋F
1から構成されているから、アルミニウム袋F
1のアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートにより非透湿性(ガスバリアー性)、高遮光性及び高熱伝導率を得ることができ、発熱剤Hの生石灰の経年劣化を防いで使用の耐久性を向上することができ、緊急時に対応することができる。
【0024】
図8の第二形態例は封入袋体Fの別例構造を示し、この場合、上記通水口部Tとして、上記第一形態例に比べ、上記封入袋体Fの上下対向位置に直径6mm程度の丸穴が4個宛、計8個、表面から裏面に至る通し穴状に形成され、封入袋体Fは横130mm×縦180mm程度の大きさに形成している。
【0025】
図9の第三形態例も封入袋体Fの別例構造を示し、この場合、上記通水口部Tとして、上記第一形態例に比べ、上記封入袋体Fの片面に横30mm×縦40mm程度の四角穴状に形成され、封入袋体Fは横130mm×縦180mm程度の大きさに形成している。
【0026】
図10の第四形態例も封入袋体Fの別例構造を示し、上記第一形態例にあっては、三方袋タイプとなっているが、この場合、合掌タイプ(背貼りタイプ)のアルミニウム袋F
1とされ、この合掌タイプのアルミニウム袋F
1内に発熱剤Hを包み込んだ吸水シートSを封入した後、ヒートシール部F
2・F
2・F
2の三位置で熱圧着固定し、上記通水口部Tとして、上記第一形態例に比べ、上記封入袋体Fの上下対向位置に直径6mm程度の丸穴が4個宛、計8個、表面から裏面に至る通し穴状に形成され、封入袋体Fは横130mm×縦180mm程度の大きさに形成している。
【0027】
図11の第五形態例は吸水シートSの別例構造を示し、この場合、上記吸水シートSの二本の仮想折線S
6により形成される3区画のうちの1区画に上記発熱剤Hを載置し、
図11(a)、(b)、(c)の手順で二本の仮想折線S
6の位置で吸水シートSを折り畳み、同図(c)の如く、吸水シートSにより発熱剤Hを包み込み、発熱剤Hを包み込んだ吸水シートSを封入袋体F内に封入する構
造としている。
【0028】
これら第二形態例、第三形態例、第四形態例及び第五形態例にあっても、上記、第一形態例と同様な作用効果を得ることができる。
【0029】
図12乃至
図14の第六形態例は別例構造を示し、この場合、上記救命採暖具R及び非常食Eを包装可能な包装袋体Bを形成し、この場合、包装袋体Bは合成樹脂、例えば、ポリプロピレンフィルム(PP)、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(VM-PET)等により製作され、この包装袋体Bに上記救命採暖具R及び、飲料水袋、栄養食品、レトルト食品、インスタント食品などの非常食Eを封入袋体Fと一緒に収納し、包装袋体Bに開裂用ノッチN・Nを形成して構成している。
【0030】
この第六形態例にあっては、上記第一形態例の
図7と同様に、救命採暖具R及び非常食Eを収納した包装袋体Bを救命胴衣W等の救命具に収納して乗船、磯釣り時等の海難事故等に備えることになり、海難事故等に遭遇したとき、包装袋体Bを開裂用ノッチNを用いて開封すると上記救命採暖具Rの通水口部Tから封入袋体F内に海水等の水が侵入して発熱剤Hと水との接触により発熱反応が生じ、上記第一形態例と同様な作用効果を得ることができ、さらに、包装袋体Bに収納した非常食Eにより、一層、長時間にわたる漂流に備えることができ、海難事故等に対する有効な対策とすることができる。
【0031】
尚、本発明は上記実施の形態例のものに限られるものではなく、例えば、上記通水口部Tの形状や配置位置等、発熱剤Hの種類や組成等、吸水シートSの材質や積層構造等、封入袋体Fの材質や積層構造等、包装袋体Bの材質や積層構造等、救命採暖具R、救命胴衣W、透水性袋H1、混合粉末H3、高分子吸水材S1、パルプS2、吸水紙S3、不織布S4、アルミニウム袋F1、非常食Eの形状、材質、組成や構造等は適宜変更して設計されることになる。
【0032】
以上の如く、所期の目的を充分達成することができる。
【符号の説明】
【0033】
R 救命採暖具
W 救命胴衣
H 発熱剤
H1 透水性袋
H3 混合粉末
S 吸水シート
S
1
高分子吸収材
S2 パルプ
S3 吸水紙
S4 不織布
F 封入袋体
F1 アルミニウム袋
T 通水口部
E 非常食
B 包装袋体