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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】眼科用微小手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
A61F9/007 130E
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023179781
(22)【出願日】2023-10-18
(62)【分割の表示】P 2020542704の分割
【原出願日】2018-10-18
(65)【公開番号】P2024016057
(43)【公開日】2024-02-06
【審査請求日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】62/574,136
(32)【優先日】2017-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/892,833
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/145,119
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】321000901
【氏名又は名称】ノヴァ アイ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モレノ ジェスズ
(72)【発明者】
【氏名】プロッサー フィリップ
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-531298(JP,A)
【文献】特表2005-521435(JP,A)
【文献】米国特許第5647840(US,A)
【文献】特表2013-519492(JP,A)
【文献】特開平01-293312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端と遠位端を有する剛直シャフトを備えたトロカールであって、前記剛直シャフトには、前記近位端から前記遠位端まで延びる管腔が形成され、前記遠位端は組織穿通用に成形された、トロカールと、
前記トロカールの前記管腔にスライド可能に係合する複合マイクロカニューレと、
を備える装置であって、
前記複合マイクロカニューレは、
前記トロカールの前記管腔の内径よりも小さい外径を有する柔軟中空チューブと、
前記柔軟中空チューブ内に配置された第1の光ガイドであって、前記複合マイクロカニューレと前記第1の光ガイドとは、前記トロカールの前記管腔内から前記組織穿通用に成形された前記遠位端を経て外側に延在可能に構成された、第1の光ガイドと、
前記トロカールの前記管腔内に配置される第2の光ガイドであって、当該第2の光ガイドの遠位端は前記組織穿通用に成形された前記遠位端と係合していない、第2の光ガイドと、
前記複合マイクロカニューレを保持するように構成されたポジショナと、
前記ポジショナに取り付けられた中空スリーブであって、前記複合マイクロカニューレが前記中空スリーブ内を通過するように構成された、中空スリーブと、
を備える、複合マイクロカニューレ
を備える、装置。
【請求項2】
前記ポジショナが、前記複合マイクロカニューレを前記トロカールに対して変位させるように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ポジショナが、前記複合マイクロカニューレを前記トロカールに対して静止状態に保持するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記中空スリーブの長さは、前記トロカールに対する前記複合マイクロカニューレの移動に応じて変化する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記複合マイクロカニューレが前記ポジショナに固定されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記複合マイクロカニューレが、前記ポジショナの端部とスライド可能に係合する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の光ガイドの遠位端を照明するために、前記第1の光ガイド内に光を導くように配置された光源をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記トロカールの前記管腔に滑らかにされた遠位端をさらに備え、前記滑らかにされた遠位端は、前記トロカールの前記管腔の遠位端の全周にわたって丸みが付けられてなる、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記複合マイクロカニューレの近位端が、前記複合マイクロカニューレの遠位端と流体連通している、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記柔軟中空チューブと流体連通するリザーバをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記柔軟中空チューブと流体連通する注入器をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記複合マイクロカニューレが、固体送達物を前記柔軟中空チューブ内に送達できるように構成された、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
各実施形態は、緑内障などの眼疾患の治療のための外科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願)
本願は、2018年2月9日に出願された同時係属中の米国特許出願第15/892,833号の一部継続出願であり、本願において、上記米国特許出願の全体を引用して援用する。上記米国特許出願は、2017年10月18日に出願された米国仮特許出願第62/574,136号に基づく優先権を主張するものであり、本願において、上記米国仮特許出願の全体を引用して援用する。
【0003】
房水は、眼内で産生される透明の水様流体であって、眼の前房および後房を満たし、眼の組織に必要な物質を運搬し、流体圧によって眼の球状形の維持に寄与する。房水は、集合管および静脈に連結する周方向に沿った多孔質の流体路である線維柱帯およびシュレム管を含む流体排出系を通じて、眼の外へ流れ出る。眼の排出系の各部分の閉塞または狭窄は、眼内圧の上昇を引き起こす可能性があり、それは、視力低下や緑内障などの眼疾患と関連し得る状態である。
【0004】
房水の流れを改善することで眼内圧を低下させるために、外科治療を用いる場合がある。いくつかの外科治療法では、眼の白い頑丈な外被である強膜を比較的大きく切開し、組織の一部分を折り返して、線維柱帯または房水の流路の他の部分を露出させる。その後、組織の除去または新規の排出管の成形を実施することによって、排出系の露出部分を修復することができる。強膜の切開は、眼内の流体圧の損失および1つ以上の眼房の陥没を引き起こす可能性がある。眼房の1つに粘弾性流体を注入することで眼の自然な形を支えることが、必要になる場合がある。粘弾性流体は、動的フロー条件下と静的フロー条件下とで変化する粘性を有し、剪断応力を受けると比較的低い粘性で流れ、静的条件下ではゲル状の高粘性を帯びる。
【0005】
眼の切開を伴う外科治療は、感染症および瘢痕組織の形成などの術後合併症のリスクを増大させる可能性がある。眼にとってより低侵襲な他の治療法が開発されている。たとえば、眼の排出系の部分にマイクロカニューレを通して、閉塞の除去または狭窄した流体路の開通を実現することで、房水の流れを改善できる。さらに、薬剤、薬剤溶出デバイス、または薬剤溶出物質を、組織構造体に送達することが有利である場合がある。特に、シュレム管はヒトの眼の本体内に存在する免疫特権部位の外にあるため、薬剤または薬剤溶出デバイスをシュレム管に送達することは、有益である可能性がある。マイクロカニューレは、柔軟中空チューブを含む場合があり、その柔軟中空チューブは、シュレム管または眼の排出系の他の部分へマイクロカニューレを挿入できるように十分に小さい外径を有する。マイクロカニューレは、たとえば、上述のように外科的に形成された組織の折り返し部分、または強膜の穿刺孔などを通じて、眼の外から押し入れられる際に、シュレム管または排出系の他の部分の湾曲に沿うように、十分に柔軟である場合がある。マイクロカニューレは、眼内の排出管における選択された部分を機械的に拡張させるために使用されるこ
とが可能であり、あるいは、眼の排出系の部分を通る流れを改善するために流体圧を印加するように、物質、物体、流体、薬剤、または粘弾性体を注入するために使用されることも可能である。もしくは、微小手術用の切断器具、穿通器具、または把持器具をマイクロカニューレ内に通して、外科的に修復すべき眼の部分に当該器具を誘導することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
いくつかの微小手術器具は、中空かつ柔軟な外側シースがスライド可能に係合されたマイクロカニューレを備える。柔軟な外側シースは、眼の内部への進入点にマイクロカニューレを位置決めするために使用できる。その際に、マイクロカニューレは柔軟な外側シースの管腔内に通され、外側シースは眼に対して静止状態に保持される。マイクロカニューレの端部を、シースの端部から伸び出させて、眼の選択された部分に進入させることができる。しかし、外側シースが柔軟であることは、マイクロカニューレが排出構造体または眼内の他の治療部位に進入可能になるようにシースで強膜または他の組織を貫通することを、困難にし得る。マイクロカニューレの配置および誘導のために柔軟なシースを正確に位置決めできるように、別の器具を用いて切開または穿刺することが必要になる場合がある。あるいは、組織の穿通用に成形された先端部をマイクロカニューレに設けることもできるが、眼の内部に送達物を送達する用途におけるマイクロカニューレの使用が限定される可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
装置の実施形態の一例は、トロカールと複合マイクロカニューレとを備える。トロカールの一例は、近位端および遠位端を有する剛直シャフトを含む。剛直シャフトには、近位端から遠位端に伸びる管腔が形成されることがある。トロカールの剛直シャフトの遠位端は、組織の穿通用に成形される場合がある。
【0008】
複合マイクロカニューレは、トロカールの管腔内に配置され得る。複合マイクロカニューレの一例は、トロカールの管腔の内径より小さい外径を有する柔軟中空チューブを備える場合がある。複合マイクロカニューレの一例はさらに、光ガイドを備える場合がある。
【0009】
装置の実施形態の別の一例は、眼科手術のためのトロカールを含む。トロカールの一例は、組織の穿通用に成形された遠位端を有する剛直な中空シャフトを備える。中空シャフトには、中空シャフトの遠位端から中空シャフトの近位端に伸びる管腔が形成されている。トロカールの一例はさらに、中空シャフトの近位端に取り付けられた遷移構造体を備える。遷移構造体には、管腔内に複合マイクロカニューレを受け入れるための開口が形成され得る。トロカールの一例はさらに、剛直な中空シャフトの遠位端を照明するように設けられた光源を備えることができる。中空シャフトの管腔の遠位縁部は、管腔を通ってトロカールから出される固体物体の摩滅および/または切断を抑制するために、滑らかにされている場合がある。トロカールの一例はさらに、遷移構造体から外側に延在する摘み部を備えることがある。
【0010】
方法の実施形態の一例は、複合マイクロカニューレの遠位端をトロカールの管腔内に配置することと、複合マイクロカニューレの遠位端を照明することでトロカールの遠位端を照明することと、眼においてトロカール進入点を選択し、選択した進入点にトロカールを位置決めすることと、トロカールの照明された遠位端が眼内の選択された構造体に進入したことが観察されるまで、選択した進入点にてトロカールを前進させることと、トロカールの遠位端から眼内のターゲット部位に向けて複合マイクロカニューレを伸ばすことにより、トロカールの遠位端を照明する状態からトロカールの外側の組織を照明する状態に移行することと、を含む。
【0011】
装置の別の一例は、ハンドピースと、ハンドピースにスライド可能に連結されたアクチュエータと、ハンドピースにスライド可能に連結された挿入体と、アクチュエータに取り付けられた中空チューブと、中空チューブ内に通されたワイヤとを備え、ワイヤの第1の端部がハンドピースに取り付けられ、ワイヤの第2の端部が挿入体に取り付けられる。
【0012】
眼科手術用トロカールの別の一例は、シャフト(具体的には剛直な中空シャフト)を備え、シャフトは、カニューレ(具体的には複合マイクロカニューレ)を収容する管腔を有し、シャフトは、組織の穿通用に成形された遠位端を有する。
【0013】
シャフトの遠位端は、斜角がつけられているか、テーパ形になっていることが可能である。その代わりまたは追加的に、シャフトの遠位端は、組織の穿通の際に単一の穿刺孔をもたらすように形成されている。
【0014】
シャフトの遠位端の内面は、シャフトの他の部分の内面の少なくとも一部分に比べてより滑らかであることが可能である。さらに、シャフトの遠位縁部は、シャフトの他の部分の内面の少なくとも一部分に比べてより滑らかであることが可能である。シャフトの外面は、潤滑コーティングを備えることができる。
【0015】
トロカールは、シャフトの遠位端を照明できるように設けられた光ガイドおよび/または光源を備える場合がある。具体的には、光ガイドの端部を用いることで、シャフトの遠位端および/または組織を照明することができる。光ガイドの当該端部が光ガイドの他の部分の少なくとも一部分に比べてより大きな断面を有すること、あるいは、光ガイドの他方の端部が可視光および不可視光を発する光源に接続可能であること、あるいは、その両方が可能である。
【0016】
光ガイドは、シャフトに取り付けられるか、あるいは、シャフトの一体的な構成部分であることが可能である。
【0017】
装置の別の一例は、上述のトロカールとカニューレとを備えることがある。カニューレは、複合マイクロカニューレであること、あるいは、トロカールの管腔内に配置されること、あるいは、その両方が可能である。
【0018】
カニューレの剛性は、シャフトの剛性に比べて小さいことが可能である。カニューレの直径は、100ミクロン~250ミクロンの範囲内であることが可能である。
【0019】
カニューレは、カニューレの両端の間に延在する管腔を有する場合がある。カニューレが中空シャフトの遠位端から伸び出ている時に、カニューレ(具体的にはカニューレの管腔)を通じて、送達物を組織内に導入することができる。組織内への送達物の導入の間に、シャフトは同じ位置に維持される。
【0020】
装置は、遷移構造体(具体的にはトロカールコネクタ)を備える場合がある。トロカール(具体的にはシャフトの近位端)を、遷移構造体に接続することが可能である。さらに、カニューレは、遷移構造体内を通って延在できる。
【0021】
上記光ガイドまたは別の光ガイドが、カニューレに連結されている場合がある。具体的には、上記光ガイドまたは別の光ガイドが、カニューレに取り付けられるか、あるいは、カニューレの一体的な構成部分であることが可能である。もしくは、光ガイドは、カニューレの有無または配置に関係なく、シャフトの端部が照明されるように配置されることが可能である。
【0022】
上記光ガイドおよび/または別の光ガイドは、光源に接続されることが可能である。装置は、光源からの光をシャフトの近位端に向けるように設置されたミラーを備えることができる。
【0023】
カニューレの管腔は、物質(具体的には粘弾性物質)のインジェクタに、流体的に接続されていることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】剛直な中空シャフトを含むトロカールと、柔軟な複合マイクロカニューレとを備えた、微小手術器具の実施形態の一例を示す斜視図である。
図2】実施形態に沿ったトロカールの一例を示す上面図である。
図3図2のトロカールの例を示す側面図である。
図4図1図3のトロカールの例を示す断面図A-Aである。図3においてA-Aが付された切断線は、図4の断面図についての位置および観察方向を示す。
図5図1図4の剛直な中空シャフトの拡大部分断面図Bであり、組織の穿通用に成形された遠位端の一例を示し、さらに、トロカールの管腔における滑らかにされた遠位縁部の一例を示す。図5の図示Bの位置は、図4において破線で示す。
図6】微小手術器具の実施形態に沿った複合マイクロカニューレの一例を示す部分上面図である。
図7図6の複合マイクロカニューレの例を示す断面図C-Cである。図7の断面図C-Cについての位置および観察方向は、図6における長手方向の切断線C-Cで示す。
図8図6の複合マイクロカニューレの例を示す断面図D-Dである。図8の断面図D-Dについての位置および観察方向は、図6における横断方向の切断線D-Dで示す。
図9】微小手術器具の実施形態に沿った複合マイクロカニューレの別の一例を示す代替断面図D-Dである。図9の代替断面図D-Dについての位置および観察方向は、図6における横断方向の切断線D-Dで示す。
図10】微小手術器具の実施形態に沿った複合マイクロカニューレの別の一例を示す代替断面図D-Dである。図10の代替断面図D-Dについての位置および観察方向は、図6における横断方向の切断線D-Dで示す。
図11】微小手術器具の実施形態に沿った複合マイクロカニューレの別の一例を示す代替断面図D-Dである。図11の代替断面図D-Dについての位置および観察方向は、図6における横断方向の切断線D-Dで示す。
図12】トロカールの別の一例を示す代替断面図A-Aであり、さらに、トロカールの遠位端から近位方向にずらして配置された複合マイクロカニューレの一例を表し、また、トロカールの照明された遠位端の一例を表す。
図13図12の例を継続して示す図であり、トロカールの管腔の遠位端から伸び出た複合マイクロカニューレの照明された遠位端の一例を表す。
図14】複合マイクロカニューレの別の一例を示す代替断面図D-Dであり、当該複合マイクロカニューレの柔軟中空チューブの内部の長手方向空洞内に、2つの光ガイドが設けられている。
図15】2つの光ガイドを備えた複合マイクロカニューレの別の一例を示す代替断面図D-Dであり、一方の光ガイドは、複合マイクロカニューレの柔軟中空チューブの内部に設けられ、他方の光ガイドは、柔軟中空チューブの外面に接している。
図16】2つの光ガイドを備えた複合マイクロカニューレの別の一例を示す代替断面図D-Dであり、一方の光ガイドは、複合マイクロカニューレの柔軟中空チューブの内部に設けられ、他方の光ガイドは、中空チューブと外側スリーブとの間に設けられている。
図17】2つの光ガイドを備えた複合マイクロカニューレの別の一例を示す代替断面図D-Dであり、第1の光ガイドは、複合マイクロカニューレの柔軟中空チューブの内部に設けられ、第2の光ガイドは、第2の光ガイドおよび柔軟中空チューブに塗布された外側コーティングによって中空チューブに当接して保持されている。
図18】装置の別の実施形態を示すブロック図であり、当該実施形態は、複合マイクロカニューレをトロカールに対して変位させるポジショナを備え、複合マイクロカニューレに流体を導入する流体インジェクタをオプションとして備える。
図19】ポジショナおよびトロカールを備えた微小手術器具の実施形態の一例を示す上面図である。
図20図19のポジショナの例を示す断面図E-Eである。図20の断面図E-Eについての位置および観察方向は、図19における長手方向の切断線E-Eで示す。
図21】ポジショナを備えた微小手術器具の実施形態の一例を示す斜視図であり、トロカールの遠位先端が眼の強膜を通過してシュレム管に進入した状態を表し、トロカールの位置を正確に示すためにトロカールの照明された遠位端から放出された光の一例を表す。
図22】シュレム管との相対位置が図21と同様である微小手術器具およびトロカールの例を示す斜視図であり、さらに、シュレム管の周方向経路に沿ってトロカールから伸び出た複合マイクロカニューレの照明された遠位先端の一例を表す。
図23図1のトロカール例を示す別の代替断面図A-Aであり、光ガイドを有しトロカールの管腔内に通されている複合マイクロカニューレの一例を表し、さらに、複合マイクロカニューレ内の光ガイドとは別の、オプションの第2の光ガイドが、管腔内に配置されている様子を表す。
図24図23の例と同様に複合マイクロカニューレおよび第2の光ガイドを伴ったトロカール例を示す部分斜視図であり、シュレム管の周方向経路に沿って互いに離隔された、トロカールおよび複合マイクロカニューレのそれぞれの照明された遠位端の一例を表す。
図25】オプションの流体送達物の一例およびオプションの固体送達物の一例を柔軟中空チューブ内に携える、複合マイクロカニューレの実施形態の一例を示す代替断面図D-Dである。
図26】トロカール進入点マーキング器具の一例を示す斜視図である。
図27図26のトロカール進入点マーキング器具における、マーキングパッドのマーキング面の一例を示す図である。
図28図26図27のトロカール進入点マーキング器具の例を示す側面図である。
図29】ヒトの眼の強膜および虹彩の一例を示す図であり、図26図28のトロカール進入点マーキング器具によって形成された接線パターンの一例を表す。
図30】眼の強膜を貫通してトロカールを挿入し、トロカールからシュレム管などの構造体内へ複合マイクロカニューレを前進させる方法に含まれるステップの一例を示す。
図31】微小手術器具の実施形態に沿った複合マイクロカニューレの別の一例を示す部分上面図である。
図32図31の複合マイクロカニューレの例を示す断面図F-Fである。図32の断面図F-Fについての位置および観察方向は、図31における長手方向の切断線F-Fで示す。
図33図30図31の複合マイクロカニューレの例を示す断面図G-Gである。図33の断面図G-Gについての位置および観察方向は、図31における横断方向の切断線G-Gで示す。
図34】ポジショナおよびトロカールを備えた微小手術器具の実施形態の一例を示す上面図である。
図35図34の微小手術器具の例を2つ示す側面図であり、上側のデバイスでは複合マイクロカニューレが後退位置の一例に配置され、下側のデバイスでは複合マイクロカニューレが伸長位置の一例に配置されている。
図36図34図35の例を継続して示す図であり、複合マイクロカニューレの後退位置についての断面図H-Hと、複合マイクロカニューレの伸長位置についての断面図K-Kとにおいて、微小手術器具の例を表す。断面図H-HおよびK-Kの位置は、図35における切断線H-HおよびK-Kで示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に従った実施形態の各例について説明する。組織の穿通用に成形された遠位端を有する剛直中空シャフトを備えたトロカールは、たとえば眼の強膜などの生物組織を穿刺することで、トロカールの管腔内に通された複合マイクロカニューレ用に、組織内への非常に小さな進入点を形成するように構成されている。本明細書中では複合マイクロカテーテルとも称され得る複合マイクロカニューレは、マイクロカニューレの遠位端を照明するための光ガイドを備える。複合マイクロカニューレおよび/またはトロカールに光源を連結し、光ガイドを介してトロカールの管腔内に光を向けることで、剛直中空シャフトの遠位端を照明することができ、それにより、トロカールの遠位端の位置の正確な検出と、眼内の構造体へのトロカールの進入状態の視覚表示と、治療すべきターゲット部位に向けて複合マイクロカニューレの遠位端を前進させる際の当該遠位端の位置の視覚表示とが可能になる。マイクロカニューレが、たとえばシュレム管内の好適な経路を外れて集合管や眼の排出系の他の部分などの別の小室または管に進入するなどして、好適な経路から逸れた場合を検出する目的で、複合マイクロカニューレの照明された遠位端を使用することができる。
【0026】
各実施形態は、トロカールから放出された光が組織を透過して観察されることにより、トロカールの遠位端の位置の視覚表示を提供することにおいて、効果的である。その組織とは、強膜、線維柱帯、または他の組織を含む場合があり、他の組織には、眼に関連しないものも含まれる。強膜または他の組織を透過したトロカールからの光は、さらに、トロカールの移動方向を示す。また、複合マイクロカニューレの位置および移動方向も、マイクロカニューレの先端から放出された光の視覚的観察によって正確に検出できる。本実施形態は、線維柱帯、シュレム管、および集合管など(であるがそれらに限定されない)の組織および/または組織空間内へ正確に誘導されることが可能である。逆に言えば、本実施形態は、選択された組織または組織空間への進入を特に回避するように、正確に誘導されることが可能である。眼内の組織、ならびに、本実施形態の位置および移動方向は、直接観察、カメラ、ゴニオプリズム、他の視覚補助具、またはこれらの装置および方法のいずれかの組み合わせによって観察できる。
【0027】
いくつかの実施形態では、第2の光ガイドによって、トロカールおよび複合マイクロカニューレのそれぞれの遠位端を、独立的に、且つ、任意で同時に、照明することが可能になっている。他の実施形態では、複合マイクロカニューレを通じて、流体および/または固体の物体から成る送達物を、眼内のターゲット部位へ送達することができる。流体送達物の例としては、遺伝子治療薬、幹細胞薬、および他の流体ベースの薬剤などの薬剤、粘弾性流体、水、ならびに食塩水が挙げられるが、それらに限定されない。固体送達物の例としては、デバイス、粒子、ナノ粒子、薬剤溶出用の固体送達物例を含む小型装置、鉗子などの微小手術器具、組織の穿通および/または切開用の器具、ステント、光ガイド、ならびにワイヤが挙げられるが、それらに限定されない。本明細書では、光ガイドとは、入力面で受けた電磁エネルギーを、介在する光学的媒体を介して出力面へ伝達することが可能な光学的要素を意味する。光ガイドの例としては、光源からの光ビームを目的地へ向けるように配置された1つ以上のミラー、柔軟な光ファイバ、光ファイバ束、および剛直なライトパイプが挙げられるが、それらに限定されない。
【0028】
いくつかの実施形態は、複合マイクロカニューレをトロカールの遠位端に対して変位させるポジショナを備える。ポジショナは、複合マイクロカニューレを伸長させ、且つ、オプションで後退もさせるように構成されたマイクロカニューレ変位機構を、オプションとして備えることができる。ポジショナはさらに、流体リザーバからの流体を複合マイクロカニューレ内へ移動させ、且つ、場合によっては眼内の選択されたターゲット部位内へも移動させるように構成された流体インジェクタを、オプションとして備えることがある。
ポジショナのいくつかの実施形態は光源を備え、その光源は、複合マイクロカニューレの光ガイド内へ光を発し、且つ、第2の光ガイドが設けられている場合にトロカールに連結された第2の光ガイド内へもオプションで光を発するように配置される。ポジショナは、マイクロカニューレの眼内への進入点を乱すことなく、複合マイクロカニューレの正確な前進および/または後退を実現させることができ、場合によっては、治療処置の完了までに必要な時間が短縮され、眼の組織の損傷のリスクが低減する。
【0029】
眼科用微小手術器具の各実施形態は、トロカールの遠位端を照明する状態からトロカールの外側の組織を照明する状態へ、スムーズ且つ連続的に移行するように構成されることができ、それにより、眼内の構造体に対するトロカールおよび複合マイクロカニューレの位置の非常に精密な検出が可能になる。トロカールによって強膜または眼の他の部分に形成される非常に小さな穿刺孔は、眼の内部の構造体へのアクセスのために組織の折り返し部分を強膜から持ち上げる従来の手術法で必要とされる比較的に大きな切開部とは、対照的である。小さな穿刺孔によって、患者の不快感や、瘢痕化および感染症などの術後合併症のリスクが低減される。強膜の切開を用いる方法に比べて、手術部位の準備、モニタリング、および閉鎖がより迅速であり且つより複雑でなく、場合よっては、外科処置のための手術室で実践されているであろう無菌性および患者モニタリングのレベルに比べて緩和されたレベルにて各実施形態を用いることが可能であり、場合よっては、外科処置後の患者の回復および治癒の迅速化が可能になる。
【0030】
図1に、微小手術器具の実施形態の一例を示す。例示の実施形態100は、複合マイクロカニューレ300を収容するように構成されたトロカール200を備える。複合マイクロカニューレ300は、トロカール200にスライド可能に係合することができ、トロカールの近位端204に位置するトロカールコネクタ222内を通り、遷移構造体214内を通過し、遷移構造体214から伸び出てトロカール200の遠位端210に至る剛直中空シャフト206内に形成された管腔208の中を通る。剛直中空シャフト206には、組織の穿通用に成形された遠位端210が形成されていることが好ましい。オプションの1つ以上の摘み部216が、トロカールコネクタ222および/または遷移構造体214に取り付けられているか、あるいは、その一体的部分として形成されている場合がある。
【0031】
図1の例では、複合マイクロカニューレ300は、いくつかの屈曲部および湾曲部を含んで図示されており、複合マイクロカニューレの長手部分の大半を構成する中空チューブ302の柔軟性を表している。複合マイクロカニューレの柔軟性により、マイクロカニューレが、シュレム管などの眼内の構造体の壁を穿刺または損傷することなく、当該構造体の湾曲した壁に沿うことが可能になっている。複合マイクロカニューレ300の一実施形態は、3.0×10-11kN-m2~2.9×10-10kN-m2の範囲内の曲げ剛性を有するマイクロカニューレのセグメントで構成される場合がある。複合マイクロカニューレにおける遠位端および/または近位端に近い部分は、オプションとして、複合マイクロカニューレの他の部分に比べてより剛直であることが可能である。トロカール200の剛直中空シャフト206は、複合マイクロカニューレに比べて実質的により硬く、強膜または眼内の他の組織を容易に穿通するのに十分な剛性である、少なくとも1.5×10-8kN-m2の曲げ剛性を有するように構成されることが好ましい。曲げ剛性が好適な最小値より大きいトロカールにより、眼の外面を貫通する穿刺孔を形成する際に別個の外科器具が不要になる場合がある。
【0032】
複合マイクロカニューレ300は、柔軟中空チューブ302の近位端310に、オプションのマイクロカニューレコネクタ314を備える場合がある。マイクロカニューレコネクタは、送達物を複合マイクロカニューレ内に導入するための接続部、および、光源からの光を複合マイクロカニューレに結合させるための接続部を含むことができる。近位端310に導入された液体、固体、または気体の送達物は、中空チューブ302を通って複合
マイクロカニューレの遠位端308へ搬送され、眼内のターゲット部位に送達されることが可能である。近位端310に入射した光は、遠位端308まで進み、複合マイクロカニューレの照明された遠位端326を構成する。オプションの光ディフューザ311が遠位端308に設けられる場合があり、それによって光を多方向に拡散させることで、複合マイクロカニューレの遠位端が眼内の管および小室を通って移動するにつれて、当該遠位端の正確な位置が示される。光は、柔軟中空チューブ302の壁から、中空チューブ302内に導入された液体を通じて、または、複合マイクロカニューレのいくつかの実施形態に含まれる1つ以上の光ガイドを介して、内部反射によって複合マイクロカニューレの近位端から遠位端まで進むことができる。
【0033】
トロカール200の実施形態の一例を、図2の上面図および図3の側面図に示す。図3の例では、図2に表れているオプションの掴み部216は省略されている。トロカール200の近位端204に位置するトロカールコネクタ222は、たとえば滑合式またはツイストロック式のルアーコネクタなどのルアーコネクタである場合がある。漏れ防止シールを形成可能な他のコネクタを、代わりに使用することもできる。トロカール200の剛直中空シャフト206は、遷移構造体214に取り付けられている。剛直中空シャフト206の管腔208が、遷移構造体内およびトロカールコネクタ内の空洞に流体連通していることにより、流体を管腔208内に導入可能になっている。トロカール200の管腔208は、組織の穿通用に成形された遠位端210を貫通して延在する。
【0034】
図4の断面図A-Aおよび図5の部分拡大図は、実施形態に沿ったトロカール200の例の内部のいくつかの詳細を表す。剛直中空シャフト206は、トロカールコネクタ222に取り付けられた遷移構造体214によって堅く保持されている。剛直中空シャフト206内の管腔208は、トロカールコネクタ222内の空洞224と流体連通している。空洞224には、中空シャフト206の近位端の近くに位置する円錐形のマイクロカニューレ案内面221が形成されている場合がある。円錐面221は、複合マイクロカニューレを偏向させて、空洞224の遠位端の近くに位置する遷移構造体214に形成された開口223を通って管腔208に向かわせることができる。
【0035】
管腔208の遠位縁部212は、たとえば管腔の遠位端の全周にわたって縁部212に丸みが付けられることによって、鋭利な個所をなくして滑らかにされていることが好ましい。滑らかにされた遠位縁部212は、マイクロカニューレがトロカールの管腔の遠位縁部を越えてスライドする際に、複合マイクロカニューレの材料が摩滅または切断されることを抑制する。滑らかにされていない場合、トロカールの管腔の遠位縁部は、複合マイクロカニューレからその材料を除去してしまうほどに鋭いことがある。複合マイクロカニューレから切断または摩滅される材料の量を減少させることにより、眼内へそのような材料が沈着してしまう望ましくない状態を減らす。
【0036】
図5の図示Bはさらに、剛直中空シャフト206の外径219と、剛直中空シャフト206内の管腔208の内径218との例を示す。外径219は、約200ミクロン~約700ミクロンの範囲内であることが可能である。たとえば、トロカールのいくつかの実施形態は、外径219が450ミクロンである剛直中空シャフトを備える。トロカールの他の実施形態では、剛直中空シャフトの外径219が250ミクロンである。内径218は、管腔内をスライドして通過するように構成された複合マイクロカニューレの最大横断寸法306より大きいことが好ましい。その最大横断寸法306とはたとえば、柔軟中空チューブ302の外径306、チューブ302および当該チューブに塗布された外側コーティング321を横切る最大横断寸法306、中空チューブ302および当該チューブに接する外部光ガイド304を横切る最大横断寸法306、または、チューブ302を囲むスリーブ320の外径306などである。
【0037】
複合マイクロカニューレ300の実施形態の一例を、図6の上面図、図7の長手方向断面図C-C、および、選択肢である図8図11の横断方向断面図D-Dに示す。図6図7、および図8に示唆されるように、光ガイド304は、柔軟中空チューブ302の近位端310から遠位端308に延びる長手方向空洞303内に配置され得る。複合マイクロカニューレ300内の長手方向空洞303を、複合マイクロカニューレの管腔303と呼ぶ場合もある。空洞303は、柔軟中空チューブ302に導入された流体のための流体路324として機能することがある。複合マイクロカニューレに導入された送達物は、近位端310から遠位端308へ移動する際に、流体路324をたどることができる。
【0038】
光ガイド304は、前述の例において示唆されるように、柔軟中空チューブとは別個に形成される場合がある。あるいは、図31図32、および図33の例に示すように、光ガイドは柔軟中空チューブ302の内部層として形成される場合がある。光ガイド304を、複合マイクロカニューレ300内の空洞303に隣接する同心層として設けることができる。光ガイド304の材料の屈折率は、柔軟中空チューブ302の材料の屈折率とは十分に異なることが好ましく、それにより、光源からの光が、光ガイド内を介した内部反射によって遠位端308に効率的に結合することが可能になる。光ガイド304を構成する材料層は、モールディングまたは化学的堆積によって形成でき、あるいは、中空チューブを柔軟中空チューブ302内に機械的に挿入することによっても形成できる。図には単一の材料層から成る光ガイドの例が示されるが、代替案として、光ガイドは、それぞれが選択された屈折率値を有するいくつかの材料層で構成される場合があり、あるいは、光ガイドの縁からの距離に応じて屈折率が変化するように構成される場合もある。
【0039】
図31図32、および図33はさらに、図6および図7の例の光ディフューザ311の外径より小さい外径312を有する光ディフューザ311の例を示す。光ディフューザ311は、代替案では、柔軟中空チューブ302の丸みを帯びた端部として形成されることができ、当該ディフューザは、柔軟中空チューブの直径313の半分に等しい半径を有する。
【0040】
第2の光ガイド、および/または、他の液体もしくは固体の送達物を、光ガイド304に囲まれた空洞303内に通すことが可能である。いくつかの実施形態では、光ガイド304は、柔軟中空チューブ302内の空洞303を完全に囲む。あるいは、光ガイド304は、空洞を完全には囲まない場合があり、たとえば、光ガイドが中空チューブ全体の半分、1/4、または他の割合の長手方向に延びる分画断片の中空チューブとして形成され得る。
【0041】
複合マイクロカニューレ300の外径306は、たとえば図6の直径312などの、複合マイクロカニューレにおける最大直径である場合がある。外径306は、たとえば遠位端308に位置するオプションの光ディフューザ311の外径312および中空チューブ302の外径313のうちのより大きい方であり、好ましくは、トロカール200内の管腔208の内径218に比べて小さい。
【0042】
複合マイクロカニューレの遠位端308は、光ガイド304の近位端310に入射した光が遠位端308から放出された際には、照明された端部326に相当する。図6および図7において示唆されるように、複合マイクロカニューレの遠位端308は丸みを帯びている場合があり、それにより、組織の外傷が減少するとともに、光ディフューザ311からの光が多方向に拡散されて、照明された端部326の視認性が向上する。光ディフューザの外径312は、中空チューブ302の外径313より大きい場合がある。あるいは、両直径(312,313)がほぼ等しい場合もある。
【0043】
いくつかの実施形態では、複合マイクロカニューレ300の柔軟セグメント322の長
さは、シュレム管の周方向長さに比べて数ミリ長い場合がある。ヒトの眼内のシュレム管の周方向長さは、約36mmである。複合マイクロカニューレ300のいくつかの実施形態では、柔軟セグメント322の長さは、40mm(1.6インチ)より長い場合がある。たとえば、複合マイクロカニューレを光源または流体注入装置と接続可能にするため、または、複合マイクロカニューレを鉗子または指で把持できるようにトロカールの近位端の外側に好都合な長さを設けるために、柔軟セグメント322の長さを、任意で、シュレム管の周方向長さに比べて実質的に長くすることが可能である。
【0044】
あるいは、複合マイクロカニューレ300の柔軟セグメント322の長さは、シュレム管のカテーテル処置を2回の挿入で実施できるように、約20mmである場合がある。1回目の挿入で、時計回りに、シュレム管の長さの約半分に進入することできる。2回目の挿入で、反時計回りに、シュレム管の他方の半分部分に進入することができる。
【0045】
図8の複合マイクロカニューレ300の例では、光ガイド304は、長手方向空洞303内に配置されている。光ガイドの直径は、柔軟中空チューブ302の内径307に比べて小さい。複合マイクロカニューレ300の外径306は、中空チューブ302の外径であり得る。
【0046】
図9の複合マイクロカニューレ300の例では、光ガイド304は、柔軟チューブ302の外面に配置されており、送達物を複合マイクロカニューレ内に通して搬送するために利用可能な空間が、柔軟チューブ302の内部に残されている。図9の例では、複合マイクロカニューレの外径306は、柔軟チューブ302および光ガイド304の寸法を含む。
【0047】
図10および図11は、微小手術器具の実施形態100に沿った複合マイクロカニューレ300のさらなる例を示す。図10に例示の複合マイクロカニューレ300では、光ガイド304は、柔軟中空チューブ302内の空洞303の外に配置されている。外側スリーブ320が、光ガイド304および柔軟チューブ302を囲んでいる。複合マイクロカニューレの外径306は、図10のスリーブ320の外径に相当する場合がある。図11では、コーティング321の一例が、光ガイド304および柔軟中空チューブ302に塗布されている。複合マイクロカニューレの柔軟セグメントに沿う部分の外径306には、中空チューブ302、光ガイド304、および外側コーティング321の寸法が含まれる。図10および図11に例示の両実施形態ともにおいて、中空チューブ302の内径307全体が、長手方向空洞303内での送達物の搬送のために利用可能になっている。
【0048】
複合マイクロカニューレは、トロカールが眼内に挿入されている間に、トロカールの管腔内に配置されてトロカールの遠位端を照明することが可能である。図12および図13は、遷移構造体214の別の構成例と、複合マイクロカニューレの位置例とを示す。図12では、複合マイクロカニューレは、トロカールの剛直中空シャフト206の遠位端202を照明するように配置されている。図12図13の例ではマイクロカニューレの照明された端部326でもある、複合マイクロカニューレの遠位端308は、トロカールの遠位端202から好適なオフセット距離626だけ離隔してトロカールの管腔内に設置され得る。複合マイクロカニューレの遠位端から放出された光614は、トロカールの管腔内での内部反射によって、広い角度範囲にわたって拡散された光612として、トロカールの遠位端から出現し、それにより、トロカールの先端が多くの異なる観察方向から視認可能になる。トロカールの照明された遠位端220は、眼の組織内にあるトロカールの先端の正確な位置を特定するのに利用できる。たとえば、放出光612において容易に知覚される輝度の変化(その輝度の変化は、隅角鏡検査法によって線維柱帯を透過して観察され得るものである)は、トロカールの遠位端がいつ強膜を通過してシュレム管に進入したかを示す。
【0049】
複合マイクロカニューレの照明された遠位端326をトロカールの管腔から出るように前進させることで、トロカールの先端を照明する状態からトロカールの外側の組織を照明する状態へのスムーズな移行が実施される。図13の例では、複合マイクロカニューレの照明された遠位端326から放出された光614は、広い角度範囲にわたって拡散されることができ、それにより、眼内に位置する複合マイクロカニューレの先端の位置が正確に示される。
【0050】
複合マイクロカニューレのいくつかの代替実施形態は、図14図17に示すように、2つの光ガイドを備える。図14の複合マイクロカニューレ300の例では、第1の光ガイド304および第2の光ガイド412が、中空チューブ302の管腔303内に配置されている。図15の例によれば、第1の光ガイド304が中空チューブ302の管腔303の外に位置し、且つ、第2の光ガイド412が中に位置する場合がある。図16の例によれば、両光ガイドが図15と同様に配置され、且つ、外側スリーブ320が柔軟中空チューブ302および第1の光ガイド304を囲む場合がある。図17の例によれば、またしても両光ガイドが図15と同様に配置され得るが、外側コーティング321が第1の光ガイド304および柔軟中空チューブ302に塗布される。
【0051】
微小手術器具のいくつかの実施形態は、複合マイクロカニューレをトロカールに対して変位させるポジショナを備える。ポジショナを含む微小手術器具100の代替実施形態のブロック図を、図18の例に示す。ポジショナ400は、トロカール200から複合マイクロカニューレ300を伸長させ、且つ、オプションで後退させるように構成されたマイクロカニューレ変位機構425が設けられたハンドピース420を備える場合がある。トロカール200は、たとえばトロカールのルアーフィッティングのための受け具である、トロカール受け具422に取り付けられる場合がある。複合マイクロカニューレは、トロカール受け具422とマイクロカニューレ変位機構425との間に設けられた中空スリーブ433内に通されることがある。中空スリーブ433は、マイクロカニューレ変位機構が動作された際に、ポジショナ400内に位置する複合マイクロカニューレの柔軟部分の座屈または捻転を抑制することにより、複合マイクロカニューレの伸長および後退をよりスムーズにできる。マイクロカニューレ変位機構425に機械的に連結されたアクチュエータ424は、トロカールの遠位端から伸び出る複合マイクロカニューレの長さの手動調節を可能にする。
【0052】
オプションの光源328を、ポジショナ400の内部に設ける場合がある。光源328から出力された光は、複合マイクロカニューレ300に取り付けられたマイクロカニューレコネクタ314に結合されることができる。マイクロカニューレコネクタ314は、オプションとして、外部光源330から光を受けるように構成され得る。いくつかの実施形態では、光源328は、第2の光ガイド412を通じて、且つ、場合によっては介在するトロカール受け具422を通して、光をトロカール200の管腔内に伝達するように配置されることがある。
【0053】
マイクロカニューレコネクタ314は、オプションとして、ハンドピース420内の流体リザーバ442からの流体を複合マイクロカニューレ300に移転するように設けられた流体インジェクタ446に流体接続している場合がある。あるいは、マイクロカニューレコネクタ314は、外部の流体リザーバ444からの流体を複合マイクロカニューレ300内に移動するように構成された外部の流体インジェクタ448に接続している場合がある。
【0054】
図19および図20は、ポジショナ400を含む微小手術器具の実施形態100のいくつかの詳細を示す。トロカール200の近位端に位置するトロカールコネクタ222は、
ポジショナ400の遠位端418に位置するトロカール受け具422に接続する。トロカール受け具422は、ハンドピース420の一体的部分として形成される場合があり、あるいは、別個に形成されてハンドピースに堅く取り付けられる場合もある。アクチュエータ424は、アクチュエータ用開口部428に沿ってハンドピース420に係合してスライドでき、複合マイクロカニューレをトロカールから伸び出させる。アクチュエータは、ハンドピース420内のガイドリッジ430に沿って進むように構成されたガイドブロック426に取り付けられるか、または、当該ガイドブロック426の一体的部分として形成されることが可能である。
【0055】
中空スリーブ433は、その近位端がガイドブロック426に接続され、その遠位端がトロカール200に接続される場合がある。複合マイクロカニューレ(図19図20には表れず)は、中空スリーブ433内に配置され得る。中空スリーブは、トロカール200に取り付けられるか又はそれの一体的部分として形成される固定セグメント436と、アクチュエータブロック426に連結される可動セグメント434とを含むことがあり、その場合、中空スリーブ433の長さ438には、固定セグメントおよび可動セグメントの両方が含まれる。あるいは、中空スリーブ433の固定および可動の両セグメントは、両側が蛇腹状の、中空で折り畳みおよび伸長可能なベローズスリーブとして構成されることができる。中空スリーブ433の長さ438は、トロカール200に対する複合マイクロカニューレ300の移動に伴って変化することが可能である。
【0056】
エンドキャップ440が、ポジショナ400の近位端416を閉鎖している場合がある。エンドキャップ440は、キャップ開口部482を備えて形成されることができ、それにより、複合マイクロカニューレは近位端416から伸び出ることが可能になる。
【0057】
図21および図22は、眼におけるトロカール進入点の位置と、シュレム管の周方向経路に沿った複合マイクロカニューレの延伸状態との例を示す。図21および図22の両図は、眼1000に対して同じ位置および向きにあるポジショナ400の斜視図を示す。図中に簡略化した形態で表される略球形の眼1000の他の部分としては、強膜1002、虹彩1006、瞳孔1016、および、眼の縁郭の近くに位置するシュレム管1010の周方向経路が含まれる。シュレム管1010は、虹彩の外縁の近くに位置する線維柱帯を通って流れる房水を受ける、多孔性で略円形の排出管を備える。図中、シュレム管は隠線で示され、強膜1002の外面の後側における当該管のおおよその位置を表している。図面から観察者に向かって外側へ伸びて虹彩1006の上方に延在する角膜は、図21および図22において存在すると考えることができるが、透明であり記載されていない。瞳孔1016の中心1018は、虹彩1006の略中心をも表す。
【0058】
図21および図22の例では、トロカール200の遠位端202が、好適なトロカール進入点606から強膜1002内へ挿入されており、剛直中空シャフト206の外径とほぼ同じ直径を有する小さな孔をもって強膜が穿刺されている。トロカールを、シュレム管1010に対する接線604に沿う方向610に前進させることが可能である。図21の例では、トロカール200の遠位端202は、シュレム管1010の内部に進入した直後の状態に配置されている。トロカールの遠位端の位置は、トロカールの管腔から放射される光612によって視認可能になっている。いくつかの実施形態100では、光612は、光ガイドの遠位端から放出されたものであり、光ガイドの当該端部は、トロカールの管腔208(図12を参照のこと)から選択された距離626だけずらして配置されている。シュレム管の内部から強膜を透過して放射される光612は、眼の外から観察された場合に、眼の外側部分における輝点としての外観を有することができ、シュレム管の内部から線維柱帯を通って放射されるこの光は、眼の前房を越えて視認可能であって輪郭がはっきりした輝点としての外観を有することが可能である。輝点は、トロカール200の遠位端202の正確な位置の視覚表示である。図中、トロカールの端部から放出された光61
2と、複合マイクロカニューレの端部から放出された光614とは、短い波線で示されている。トロカールおよび複合マイクロカニューレの位置を示す輝点を観察するために、ゴニオプリズムを用いることができる。
【0059】
トロカール200が強膜を通過する好適な進入点606の一例が、図21において、シュレム管に対する接線604上に示されている。強膜1002内へのトロカール200の進入点606は、接線604上において、縁郭から所定距離だけ離隔していることが可能である。このオフセット距離としては、トロカールのシャフト206が接線に対して平行な状態でトロカールを好適な進入点606から挿入した時に、トロカールがシュレム管の内部へ進入するような距離を選択することができる。以下で図26図29に関連してより詳しく説明するとおり、好適な進入点606と、接線604に沿うトロカールの前進方向とを眼の表面上に印すために、トロカール進入点マーキング器具を用いる場合がある。
【0060】
例示のポジショナ400に設けられたアクチュエータ424は、図21において、アクチュエータの移動範囲の近位端に示されている。アクチュエータが図21の位置から図22に示す位置まで遠位方向に移動されるにつれて、図20のポジショナの実施形態400に例示のアクチュエータブロック426および中空スリーブ433を備える場合があるマイクロカニューレ変位機構425は、複合マイクロカニューレをトロカールの遠位端から伸び出させる。図22における変位距離630は、アクチュエータ424の移動によってトロカールの遠位端から伸び出た複合マイクロカニューレの部分の長さに相当する。
【0061】
図22の例では、トロカール200の遠位端202から伸び出た複合マイクロカニューレのセグメントは、トロカール進入点606から、シュレム管1010の周方向経路を反時計回り方向611にたどる。複合マイクロカニューレ300の遠位端から放出された光614は、強膜を透過して小さな光点として視認可能である場合があり、その光点は、複合マイクロカニューレの遠位端の位置を正確に示す。あるいは、ポジショナ400の向きを変えることで、複合マイクロカニューレがシュレム管を時計回りにたどるようにすることもできる。複合マイクロカニューレが、たとえばシュレム管を外れて集合管に進入するなどして、好適な経路から逸れてしまった場合は、マイクロカニューレの照明された遠位先端により、その経路変更が直ちに明らかになる。
【0062】
複合マイクロカニューレがシュレム管または眼の他の部分内を移動する間に、ポジショナ400は、眼1000に対して静止状態に維持されることが可能である。ポジショナ400は、たとえば複合マイクロカニューレを通じて送達物が眼内のターゲット部位に送達される間に、複合マイクロカニューレを眼に対して静止状態に保持することができる。図19図22のトロカール例は摘み部を含まないが、これらの例は、摘み部を有するトロカールにも適用される。ポジショナを固定するために摘み部を用いることができ、それはたとえば、接着テープまたは一時的な縫合によって摘み部を患者の皮膚に留めることによって実施される。
【0063】
トロカールのいくつかの実施形態は、2つの光ガイドを収容するように構成される。光ガイドのうちの1つは、前述のとおり、複合マイクロカニューレ内に設置されることができる。第2の光ガイドは、別の複合マイクロカニューレ内に、または、複合マイクロカニューレとは関係なく、設けられる場合がある。2つの光ガイドに適したトロカール例を、図23および図24に示す。図23の例では、複合マイクロカニューレ300は、その遠位端308がトロカール200の遠位端202から伸び出て、光614が複合マイクロカニューレ内の光ガイドから放出されている状態で示されている。さらに、オプションの第2の光ガイド412がトロカール200の管腔内に配置され、第2の光ガイド412の遠位端413はトロカール内にとどまっており、トロカールの遠位端から光612が放射されている。図24において示唆されるように、2つの光ガイドは、任意で選択的に、トロ
カール200の遠位端202のみ、複合マイクロカニューレの遠位端326のみ、または両方を、順次または同時に照明することが可能である。放出光(612,614)は、オプションとして、ヒトの肉眼による視覚では不可視な波長および/または強度を有することができる。
【0064】
トロカールおよび/またはマイクロカニューレから放出され眼の組織を透過する光(612,614)を撮像するために、オプションのカメラ616を設ける場合がある。複合マイクロカニューレおよびトロカールの位置は、コンピュータのモニタ、スマートフォンの画面、および/または機器の画面上に表示されたカメラ616からの画像において見ることができる。いくつかの微小手術器具の実施形態100では、複合マイクロカニューレ300および第2の光ガイド412は、両方とも同じ光源から光を受けることがある。複合マイクロカニューレを、ターゲット部位1014に到達するまで前進させる場合があり、ターゲット部位1014はたとえば、閉塞または狭窄を除去すべき領域であり、あるいは、複合マイクロカニューレを通じて送達される送達物を受け取る領域である。
【0065】
図25は、複合マイクロカニューレ300の柔軟中空チューブ302内の空洞303内で搬送される送達物620の例を示す。送達物は、複合マイクロカニューレ内の流体経路324をたどることができる。したがって、眼のターゲット部位内に送達物を正確に配置するために、複合マイクロカニューレを用いることが可能である。送達物620は、固体物体624、気体および/または液体から成る流体などの流体622、あるいは、固体物体および流体の両方である場合がある。オプションとして、固体物体624を搬送するために流体を用いることができる。あるいは、長い固体送達物が複合マイクロカニューレの遠位端から伸び出るまで、当該送達物を複合マイクロカニューレの近位端から押し入れることができる。図25の複合マイクロカニューレ300の例では、光ガイド304が柔軟中空チューブ内に設けられている。送達物620の搬送には、本明細書で開示される複合マイクロカニューレ300の他の実施形態を用いることもできる。
【0066】
図26図27、および図28は、マーキングジグ800とも呼ばれる、トロカール進入点マーキング器具800の例を示す。マーキング器具は、眼の強膜上に接線のパターンを形成するために使用されることが可能である。線のパターンは、強膜を通過してシュレム管内の内部流体経路にトロカール200を誘導するための、少なくとも1つの(任意で1つより多い)好適なトロカール進入点および好適なトロカール挿入方向を示す。マーキング器具800は、少なくとも1対のマーキングパッド810,812を備える。各マーキングパッド810,812は、ハブ806を貫通する照準孔の縁808が眼の瞳孔と同心である時に、シュレム管に対して接線を形成するように配置されていることが好ましい。各マーキングパッド810,812の接触面814が眼の表面に接触した際に、当該接触面に塗布された染料が、互いに交差する線分として強膜1002に転写されることができる。
【0067】
眼に印された2本の線分の交点が好適なトロカール進入点606の位置を表すように、各対における2つのマーキングパッド810,812は、互いに角度をつけて配置される。2本の線分の交点は、瞳孔の中心1018を起点とする径方向に沿って測定される所定の離隔距離826だけ、縁郭1008から離れていることが好ましい。シュレム管への進入のためのトロカールの遠位端の挿入位置および方向を、2つのパッド810,812で印すマーキングによって正確に表す目的において、縁郭1008は、下層のシュレム管1010の位置を十分な精度で示す。所定の離隔距離は、眼に印される各線分の選択された長さと、眼に印される個々のトロカール進入点606の数とに基づいて決定され得る。
【0068】
対のパッド810,812は、中央ハブ806に連結している場合がある。中央ハブ806には、ハンドル802を取り付けることができる。パッド810,812は、ハブに
直接に連結するか、あるいは、介在する径方向アーム804によってハブに連結されることがある。図26のトロカール進入点マーキング器具800の例は、7本の径方向アーム804を有するハブ806を備える。第1のマーキングパッド810と、第1のマーキングパッドに対して角度をつけて配置されている第2のマーキングパッド812とが、各径方向アーム804に連結されている。マーキングジグ800の別の実施形態は、図示したものとは異なる数の径方向アームおよびマーキングパッドを備えることがある。
【0069】
図29は、図26図28のマーキング器具800によって眼の外面上に印されたトロカール進入点マーキングの例を示す。図29の例では、虹彩1006は、瞳孔1016の縁と縁郭1008との間の陰影領域として表れており、シュレム管1010は縁郭の近くに位置している。図29において、縁郭1008、シュレム管1010、および瞳孔1016の縁を、器具800で形成されたマーキングから区別するために、破線で表している。強膜1002は、図29では、縁郭1008の外周の外の領域として表れている。
【0070】
各対のマーキングパッド810,812は、シュレム管1010に対して接線を成す、対応の対の線分818,820をプリントする。各対の線分818,820は、強膜上のトロカール進入点606に相当する交点822にて交差する。眼内のターゲット部位に到達するためのトロカール進入点の選択肢を提供するために、1つ以上の進入点606を印すことができる。各交点822は、縁郭1008から半径方向に所定の離隔距離826だけ離れている。トロカール進入点606の位置の視認性を向上させるために、各交点822にドットまたは他の印を付けることがある。
【0071】
トロカール進入点マーキング器具800を用いて図29の例の交差線分パターンを眼の表面に転写した後、交点822のうちの1つを、強膜内へのトロカールの挿入のために選択することができる。トロカール200の遠位端210を、強膜上の交点822に直接に接触させることが好ましい。トロカールのシャフト206を、線分818,820のうちの1本に対して平行に配置することが好ましく、トロカールを、当該線分に平行に交点822から縁郭1008の方向へ前進させ、トロカールの照明された遠位端220がシュレム管1010に進入したことが観察されるまで、その前進動作を継続する。トロカールがシュレム管に進入した後、図21および図22の例に関連して説明したように、複合マイクロカニューレ300をトロカールの端部から伸び出させることができる。
【0072】
図30は、方法の実施形態に含まれるステップの例を示す。実施形態700に沿った方法は、以下のステップのうちの1つまたは複数を、いずれの組み合わせで含むこともできる。
【0073】
ステップ702では、複合マイクロカニューレの遠位端をトロカールの管腔内に配置する。
【0074】
ステップ704では、トロカールを受け入れる眼内の構造体を選択する。シュレム管、集合管、および血管などが、選択可能な構造体例であるが、微小手術器具100の実施形態は、眼または他の器官における他の小室、脈管、または管内に複合マイクロカニューレを導入するためにも使用可能であると理解される。
【0075】
方法の実施形態の例は、さらに以下を含む場合がある。
【0076】
ステップ706では、眼においてトロカール進入点を選択する。
【0077】
任意のステップ708では、たとえば図26の例におけるトロカール進入点マーキング器具800などのマーキングジグを用いて、トロカール進入点を印す。
【0078】
ステップ710では、複合マイクロカニューレの遠位端を照明し、それによりトロカールの遠位端を照明する。
【0079】
ステップ712では、選択したトロカール進入点にトロカールを位置決めする。
【0080】
ステップ714では、トロカールの照明された遠位端が眼内の選択された構造体に進入したことが観察されるまで、選択したトロカール進入点からトロカールを前進させる。
【0081】
ステップ716では、トロカールの遠位端から眼内のターゲット部位に向けて複合マイクロカニューレを伸ばすことにより、トロカールの遠位端を照明する状態からトロカールの外側の組織を照明する状態に移行する。ターゲット部位の例としては、閉塞物質によって閉塞された小室、脈管、管、または導管、および、拡張または開通すべき狭窄または収縮した空間が挙げられるが、それらに限定されない。
【0082】
例示の方法の実施形態は、任意で以下の1つまたはそれ以上を含む場合がある。
【0083】
・複合マイクロカニューレの遠位端を、トロカールに対して静止状態に保持すること。
【0084】
・トロカールの照明された遠位端が進入する構造体として、シュレム管を選択すること。
【0085】
・選択したトロカール進入点から、シュレム管に対する接線に沿ってトロカールを前進させること。
【0086】
・それぞれがシュレム管に対する接線である2本の線の交点に、トロカール進入点を印すこと。
【0087】
・上記2本の接線を、眼の縁郭から好適な距離だけ離隔して交差するように配置すること。
【0088】
・眼の瞳孔の上方でマーキング器具を中心合わせし、マーキング器具を眼に押し当てることで、眼の表面上に上記2本の接線を印すこと。
【0089】
・マーキング器具を眼に押し当てるたびに、1つより多いトロカール進入点を印すこと。
【0090】
・別の光ガイドを用いて、トロカールの遠位端を照明すること。
【0091】
・複合マイクロカニューレ内に送達物を挿入し、送達物をターゲット部位に送達すること。
【0092】
・ヒトの肉眼による視覚では不可視な波長を有する電磁放射でトロカールの遠位端を照らし、当該電磁放射に対して感度を有するカメラを用いてトロカールの遠位端を観察すること。
【0093】
・トロカールをトロカール進入点に維持したまま、複合マイクロカニューレをトロカール内から引き出すこと。
【0094】
・複合マイクロカニューレ内に送達物を挿入すること。
【0095】
・送達物を移動させ、複合マイクロカニューレ内を通ってターゲット部位に至らせること。
【0096】
・送達物をターゲット部位に残したまま、複合マイクロカニューレを後退させること。
【0097】
・トロカールの遠位端が眼内の選択された構造体に進入した後に、トロカールを眼に対して静止状態に維持すること。
【0098】
図34図35、および図36は、複合マイクロカニューレをトロカールの管腔内で伸長および後退させるように構成されたポジショナを備える、微小手術器具の別例を示す。ポジショナ400は、ハンドピース420の遠位端418にトロカール200が取り付けられるように構成されている。複合マイクロカニューレ300は、トロカール200の管腔内と、ハンドピース420内とに通されているとともに、ハンドピース420にスライド可能に係合する挿入体488に連結されている。以下でより詳細に説明するように、ハンドピース420に設けられたスロット428内で、選択された距離484だけアクチュエータ424をスライドさせることによって、それに対応する変位量である、アクチュエータの変位距離484の2倍に等しい距離486だけ、複合マイクロカニューレがトロカールの剛直中空シャフト206の端部に対して変位される。トロカール200および複合マイクロカニューレ300は、ポジショナ400とは別個に設けられることができ、トロカールまたはマイクロカニューレが損傷、汚染、または他の理由により特定の処置に使用できなくなった場合に、交換のために取り外し可能である場合がある。
【0099】
図34に例示のポジショナ400のいくつかの内部特徴を、図36の2つの断面図に示す。図36の断面H-Hは、アクチュエータ424が、ハンドピース420の近位端416側に後退した状態を示す。断面J-Jは、アクチュエータが、ハンドピース420の遠位端418側に前進した状態を示す。両断面図間で内部構成要素の位置を正確に比較できるように、図36において、ハンドピース420のこれらの2つの図は、互いへの参照を含む。
【0100】
挿入体488は、ハンドピース420の内部に形成された空洞の内部表面にスライド可能に係合している。アクチュエータ424は、1つ以上のガイドリッジ430に沿って移動する。アクチュエータ424に取り付けられたU字形中空チューブ492は、アクチュエータと共に移動する。挿入体変位ワイヤ490が、U字形中空チューブ492の管腔内をスライド可能に通されている。挿入体変位ワイヤ490の1つの端部は、挿入体488に固定されている。挿入体変位ワイヤ490の反対側の端部は、ハンドピース420に堅く取り付けられているか又はハンドピース420の一体的部分として形成されているアンカーポスト494に固定されている。挿入体変位ワイヤ490は、U字形中空チューブ492の屈曲部分内を容易にスライドするのに十分な柔軟性を有すると同時に、アクチュエータが遠位方向に移動される際に挿入体488を遠位方向に(すなわち、トロカール200から離れる方向に)押すのに十分な剛性を有することが好ましい。
【0101】
挿入体変位ワイヤ490の1つの端部がアンカーポスト494にてハンドピース420に固定され、且つ、当該ワイヤの他方の端部が挿入体488に固定されているため、アクチュエータ424がハンドピースに沿って距離「d」484だけスライド移動することによって、U字形中空チューブ492が同じ距離「d」だけ変位されるとともに、挿入体488がその2倍(2×d)変位される。この2倍の変位は、図中、断面H-Hと断面K-Kとの間における挿入体の相対変位486として表れている。アクチュエータがハンドピ
ースに対して移動される際に複合マイクロカニューレを挿入体に対して静止状態に維持する目的において、複合マイクロカニューレ300は挿入体488に十分に強く連結されている。挿入体がアクチュエータの変位距離484の2倍移動するので、複合マイクロカニューレもアクチュエータの変位距離484の2倍移動する。アクチュエータを距離「d」484だけ近位方向に移動することにより、複合マイクロカニューレがトロカールから距離「2×d」だけ伸び出る。アクチュエータを距離「d」484だけ遠位方向に移動することにより、複合マイクロカニューレが距離「2×d」だけ後退する。
【0102】
複合マイクロカニューレ300は、トロカール200の剛直中空シャフト206に取り付けられているか又は当該シャフト206の一体的部分として形成されている固定セグメント436を有する中空スリーブ内に通されている場合がある。中空スリーブの可動セグメント434は、一方の端部が固定セグメント436にスライド可能に係合し、他方の端部が挿入体488に取り付けられている。中空スリーブは、アクチュエータの前進時および後退時に複合マイクロカニューレが横断方向に撓むことを制限し、複合マイクロカニューレがハンドピース内で捩じれたり著しく曲がったりせずに伸長および後退するようにさせる。
【0103】
図36で示唆されるように、複合マイクロカニューレ300は、ポジショナ400の近位端416および挿入体488から伸び出ている場合がある。複合マイクロカニューレの近位方向への延伸部分は、前述したような固体および/または液体の送達物、外科器具、ならびに1つ以上の光ファイバを収容するように構成され得る。
【0104】
本明細書で特に明示的に述べていない限り、一般用語は、それぞれが現れる文脈においてそれらの一般的な意味を有し、当業界における一般用語は、それらの通常の意味を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
図13
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図26
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図36