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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】着色されたコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20240704BHJP
   C09B 1/20 20060101ALI20240704BHJP
   C08F 20/34 20060101ALI20240704BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
G02C7/04
C09B1/20
C08F20/34
C08F2/44 B
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023506499
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 GB2021052297
(87)【国際公開番号】W WO2022053791
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/076,538
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521013611
【氏名又は名称】クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ブロード ロバート アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】リウ ユウェン
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル ウィリアム
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060755(JP,A)
【文献】特開2016-034994(JP,A)
【文献】特開2006-141206(JP,A)
【文献】特開2019-038880(JP,A)
【文献】国際公開第2011/074501(WO,A1)
【文献】国際公開第02/012400(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性組成物を重合させてなるコンタクトレンズであって、前記重合性組成物が、1種以上のモノマーと、415nm~455nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する青色遮断着色剤である第1の着色剤と、470nm~600nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する重合性染料である第2の着色剤とを含み、前記第2の着色剤が、コンタクトレンズが無色、灰色又は青色になるように、前記第1の着色剤の色をバランス調整するものであり、及び前記第2の着色剤が式(2):
(式中、0≦(a+b)≦3を前提として、a及びbは各々、0~3であり得、各Aは、-F、-Cl、-Br、-I、-OR2、-SR2、-R2、-NO2、-CN、-NCO、-NCS、-C(=O)R2、-C(=O)OR2、-NR2 2、-C(=O)NHR2、-C(=O)N(R22から独立的に選択され、式中、各R2は、独立的に、H又はC1-C20ヒドロカルビルであり、c及びdは各々、1≦(c+d)≦3を前提として、0~3であり得、Lは二価連結基であり、Xは重合性基である)による染料である、
コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記第2の着色剤が式(3)又は式(4)による染料である、請求項1に記載のコンタクトレンズ。

【請求項3】
前記第2の着色剤が、500nm~600nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する、請求項1又は2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記第1の着色剤が、乾燥ベースで20ppm~1000ppmの量で存在し、及び/又は前記第2の着色剤が、乾燥ベースで20ppm~1000ppmの量で存在する、請求項1~3のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記重合性組成物が、600nmを超えるが800nm以下の範囲に吸収最大値を有する着色剤である第3の着色剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記第3の着色剤が、乾燥ベースで20ppm~300ppmの量で存在する、請求項5に記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記重合性組成物が、前記重合性組成物中のすべての重合性成分の総質量に基づいて、20質量%~60質量%の総量のシロキサンモノマーを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記重合性組成物が、前記重合性組成物中のすべての重合性成分の総質量に基づいて、20質量%~60質量%の総量の親水性ビニル含有モノマーを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
ヒドロゲルコンタクトレンズである、請求項1~8のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記第1の着色剤及び前記第2の着色剤が前記コンタクトレンズのオートクレーブ処理時に色又は色の強度を変化させないように、前記第1の着色剤及び前記第2の着色剤がオートクレーブ安定性である、請求項1~9のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記第3の着色剤が前記コンタクトレンズのオートクレーブ処理時に色又は色の強度を変化させないように、前記第3の着色剤がオートクレーブ安定性である、請求項5又は6に記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
重合性組成物を鋳型内で重合して、レンズ形状の重合生成物を形成するステップを含む、コンタクトレンズを製造する方法であって、前記重合性組成物が、1種以上のモノマーと、415nm~455nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する青色遮断着色剤である第1の着色剤と、470nm~600nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する重合性染料である第2の着色剤とを含み、前記第2の着色剤が、コンタクトレンズが無色、灰色又は青色になるように、前記第1の着色剤の色をバランス調整するものであり、及び前記第2の着色剤が式(2):
(式中、0≦(a+b)≦3を前提として、a及びbは各々、0~3であり得、各Aは、-F、-Cl、-Br、-I、-OR2、-SR2、-R2、-NO2、-CN、-NCO、-NCS、-C(=O)R2、-C(=O)OR2、-NR2 2、-C(=O)NHR2、-C(=O)N(R22から独立的に選択され、式中、各R2は、独立的に、H又はC1-C20ヒドロカルビルであり、c及びdは各々、1≦(c+d)≦3を前提として、0~3であり得、Lは二価連結基であり、Xは重合性基である)による染料である、方法。
【請求項13】
前記重合性組成物が、600nmを超えるが800nm以下の範囲に吸収最大値を有する着色剤である第3の着色剤をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記レンズ形状の重合生成物を水和してヒドロゲルコンタクトレンズを形成するステップも含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記重合生成物又は前記ヒドロゲルコンタクトレンズを、パッケージング溶液を含有するパッケージに浸漬し、前記パッケージをシールするステップも含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記シールされたパッケージを滅菌するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
パッケージング溶液と請求項1~11のいずれか1項に記載のコンタクトレンズとを含有するシールされたパッケージを含む、パッケージ化されたコンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンタクトレンズ、特にブルーライトを遮断するための着色剤を含むコンタクトレンズに関する。より具体的には、本発明は、ブルーライトを遮断するためのそのような第1の着色剤と第1の着色剤をカラーバランス調整するための別個の第2の着色剤も含むコンタクトレンズ、及びこれを製造する方法に関するが、排他的なものではない。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり、コンタクトレンズの開発によって、屈折矯正のみならず、新たな機能が追加されてきた。望ましい1つの機能は、潜在的に有害なブルーライトを遮断することである。ヒトの目は、可視スペクトル(380~780nm)の光に反応する。しかしながら、より短い波長ほどより大きなエネルギーを含み、ヒトの健康に極めて大きな危険をもたらす。このいわゆる高エネルギー可視光は、380~500nmの波長を有する。しかしながら、ブルーライトは、色の知覚を含む視覚プロセスにとって重要であり、近年、465~495nmのブルーライトが、ヒトの概日リズムにおいて重要な役割を果たしていることが示された。また、415~455nmの波長のブルーライトで最大の光毒性損傷が生じることも示された(Blue Light Hazard: New Knowledge, New Approaches to Maintaining Ocular Health, Report of a Roundtable, March 16, 2013)。結果的に、理想的な例では、コンタクトレンズは、コンタクトレンズを通過する有害な高エネルギーブルーライト(415~455nm)のレベルを低下させ、その一方で、非視覚機能にとって有益なブルーライト(465~495nm)を通過させるであろう。
ブルーライトの遮断は、スペクトルの青色領域で吸収する着色剤、典型的には黄色着色顔料又は染料を添加することによって達成することができる。そのような染料は、例えば、米国特許第5,470,932号で言及されており、理想的には、スペクトルの有害な415~455nm領域内のブルーライトを主に吸収する。そのような黄色着色剤の添加は、ブルーライトの有害な影響を低減するのに効果的であることが見出されているが、得られるコンタクトレンズは、導入された着色剤によって着色され、典型的には、顕著な黄色着色をもたらし、これは、ユーザーの色の知覚に影響を与える可能性があり、一部のユーザーにとっては審美的に満足できるものではない。
【0003】
コンタクトレンズは、識別着色料(handling tints)及びUV遮断剤も含み得る。識別着色料は、ユーザーがコンタクトレンズを見ること及び取り扱うことを容易にする、典型的には青色の淡い着色を提供する着色剤である。識別着色料は、通常、淡い着色のみを生じさせるために比較的低いレベルで配合物に添加されるため、典型的には、青色遮断成分よりも低い濃度で存在する。したがって、青色遮断着色剤を含めることによって、識別着色料の色をマスキングすること、又はそうでなければ変化させることができる。
紫外線遮断剤は、UV光を吸収する化合物であり、目に有害であることも見出されている。
さらに、いくつかのレンズ着色剤は、レンズの製作又は保管中に変色又は浸出することが見出されており、それによって、最終的なレンズの色に望ましくない変化が生じる。不溶性着色剤である顔料は、コンタクトレンズを通して顔料を均一に分散させることが困難であるなどの問題により、染料よりも望ましくないことも見出されている。
本開示は、先に言及されている問題を軽減することに努める。或いは又はさらに、本開示は、改善されたコンタクトレンズを提供することに努める。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、第1の態様によると、1種以上のモノマーと、415nm~455nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する青色遮断着色剤である第1の着色剤と、470nm~600nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する重合性染料である第2の着色剤とを含み、かつ600nm超~800nmの範囲に吸収最大値を有する着色剤である第3の着色剤も含んでいてもよい重合性組成物の重合から形成されたポリマーマトリックスを含む、コンタクトレンズを提供する。
【0005】
第2の着色剤及び存在する場合は第3の着色剤は、コンタクトレンズが無色、灰色又は青色になるように、第1の着色剤の色をバランス調整する。
典型的には、第1の着色剤は黄色であり、第2の着色剤は赤色又は紫色であり、第3の着色剤は青色である。
好ましい態様では、本開示は、1種以上のモノマーと、415nm~455nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する青色遮断黄色着色剤である第1の着色剤と、470nm~600nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する重合性紫色染料又は赤色染料である第2の着色剤とを含み、かつ600nm超~800nmの範囲に吸収最大値を有する青色着色剤である第3の着色剤も含んでいてもよい重合性組成物であって、第2の着色剤及び存在する場合は第3の着色剤が、コンタクトレンズが無色、灰色又は青色になるように、第1の着色剤の黄色をバランス調整する、重合性組成物の重合から形成されたポリマーマトリックスを含む、コンタクトレンズを提供する。
【0006】
青色遮断着色剤よりも長い波長で吸収する第2の着色剤は、その青色遮断着色剤の黄色着色を少なくとも部分的にバランス調整し、したがって、レンズの全体的な色を無色又は灰色にシフトさせる。第2の着色剤は、重合性であり、コンタクトレンズのポリマーマトリックスの一部として存在するため、オートクレーブ処理又は保管中にレンズから浸出し得ない。
本開示のさらなる態様によると、ポリマーマトリックスと、415nm~455nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する青色遮断着色剤である第1の着色剤と、本明細書に記載されているような470nm~600nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する重合性アントラキノン染料である第2の着色剤とを含む、コンタクトレンズも提供される。
【0007】
本開示のさらなる態様によると、1種以上のモノマーと、415nm~455nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する青色遮断着色剤である第1の着色剤と、470nm~600nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する重合性染料である第2の着色剤とを含み、かつ600nm超~800nmの範囲に吸収最大値を有する着色剤である第3の着色剤も含んでいてもよい重合性組成物であって、第2の着色剤及び存在する場合は第3の着色剤が、コンタクトレンズが無色、灰色又は青色になるように、第1の着色剤の色をバランス調整する、重合性組成物を鋳型内で重合して、ポリマーマトリックスを含むレンズ形状の重合生成物を形成するステップを含む、コンタクトレンズを製造する方法も提供される。
好ましい態様によると、本開示は、1種以上のモノマーと、415nm~455nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する青色遮断黄色着色剤である第1の着色剤と、470nm~600nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する重合性紫色染料又は赤色染料である第2の着色剤とを含み、かつ600nm超~800nmの範囲に吸収最大値を有する青色着色剤である第3の着色剤も含んでいてもよい重合性組成物であって、第2の着色剤及び存在する場合は第3の着色剤が、コンタクトレンズが無色、灰色又は青色になるように、第1の着色剤の黄色をバランス調整する、重合性組成物を鋳型内で重合して、ポリマーマトリックスを含むレンズ形状の重合生成物を形成するステップを含む、コンタクトレンズを製造する方法を提供する。
【0008】
本開示のさらなる態様によると、パッケージング溶液と本明細書に記載されているコンタクトレンズ又は本明細書に記載されている方法によって製造されたコンタクトレンズとを含有するシールされたパッケージを含む、パッケージ化されたコンタクトレンズも提供される。
任意ではあるが好ましい特徴は、従属請求項に記載されている。
【0009】
当然のことながら、本開示の一態様に関して記載されている特徴は、本開示の他の態様に組み込むことができると理解されたい。例えば、本開示の方法は、本開示のコンタクトレンズに関して記載されている特徴のうちのいずれかを組み込むことができ、その逆も同様である。
これより、本開示の実施形態を、添付の図面を参照して単に例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】様々なコンタクトレンズのCIELab L***測色結果からのa*及びb*値のプロットである。
図2】RY86-HEMA、RB246、並びに以下の染料合成例で製造された2種の染料である赤色染料(染料1)及び紫色染料(染料2)のUV-vis吸収スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態の以下の詳細な説明を参照すると、本開示がより完全に理解され、さらなる利点が明らかになるであろう。
本開示は、コンタクトレンズ配合物に可溶及び重合性であることからレンズのポリマーマトリックスの一部を形成してオートクレーブ処理及び保管中にレンズ内に保持される、より長い波長で吸収する第2の着色剤、典型的には赤色染料又は紫色染料を含めることによって、青色遮断着色剤を有するレンズの望ましくない黄色着色を効果的にバランス調整することが可能であるという発見に基づく。望ましい色をもたらすのに役立つように、第3の着色剤もコンタクトレンズに含まれていてもよい。
本明細書で使用される場合、「レンズ」という用語は、ヒトの目に配置することができる眼科用レンズを意味する。「コンタクトレンズ」という用語が、そのようなレンズを包含するために当技術分野で一般的に使用されている。そのようなコンタクトレンズは、臨床的に許容可能な眼球上での動きを提供し、ヒトの眼に結合しないと理解されたい。コンタクトレンズは、角膜レンズ(例えば、眼の角膜上にあるレンズ)の形態であり得る。
本明細書で使用される場合、パーセンテージ及びppm値は、質量によるものであると理解されるべきである。コンタクトレンズに関するパーセンテージ及びppm値は、文脈上別の意味が必要でない限り、乾燥ベースであると理解されるべきである。「乾燥ベースで」という用語及び同様の用語は、乾燥したコンタクトレンズの質量を指し、すなわち、存在するあらゆる水又は他の溶媒若しくは希釈剤を除く質量を指すと理解されるべきである。
本明細書で使用される場合、着色剤に関連する「吸収最大値」という用語及び「λmax」は同じ意味を有し、メタノール溶液中でUV-vis吸収分光法によって測定される着色剤の吸光度が最も強い波長を指す。
【0012】
本明細書で使用される場合、「第1の着色剤」、「第2の着色剤」、及び「第3の着色剤」という用語は、指定された範囲に吸収最大値(λmax)を有する着色剤を指す標識であると理解されるべきである。これらは、コンタクトレンズ又は重合性組成物に存在するそのような着色剤の数に対する限定を示唆するものと解釈されるべきではなく、したがって、コンタクトレンズが、1種以上の第1の着色剤、1種以上の第2の着色剤、及び任意に1種以上の第3の着色剤を含むことが本発明の範囲内にある。したがって、例えば、第2の着色剤は、実際には、各々が470nm~600nmの範囲で吸収最大値(λmax)を有する2種以上の重合性染料の混合物であり得る。本明細書での着色剤の濃度への参照は、その種類のすべての着色剤の総濃度であると理解されるべきである。
【0013】
したがって、本発明は、1種以上のモノマーと、各々が415nm~455nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する青色遮断着色剤である1種以上の第1の着色剤と、各々が470nm~600nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する重合性染料である1種以上の第2の着色剤とを含み、かつ各々が600nm超~800nmの範囲に吸収最大値を有する着色剤である1種以上の第3の着色剤も含んでいてもよい重合性組成物であって、第2の着色剤及び存在する場合は第3の着色剤が、コンタクトレンズが無色、灰色又は青色になるように、第1の着色剤の色をバランス調整する、重合性組成物の重合から形成されたポリマーマトリックスを含む、コンタクトレンズを提供すると理解されたい。また、本発明は、1種以上のモノマーと、各々が415nm~455nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する青色遮断着色剤である1種以上の第1の着色剤と、各々が470nm~600nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する重合性染料である1種以上の第2の着色剤とを含み、かつ各々が600nm超~800nmの範囲に吸収最大値を有する着色剤である1種以上の第3の着色剤も含んでいてもよい重合性組成物であって、第2の着色剤及び存在する場合は第3の着色剤が、コンタクトレンズが無色、灰色又は青色になるように、第1の着色剤の色をバランス調整する、重合性組成物を鋳型内で重合して、ポリマーマトリックスを含むレンズ形状の重合生成物を形成するステップを含む、コンタクトレンズを製造する方法も提供すると理解されたい。
単一の第1の着色剤のみ、単一の第2の着色剤のみ、及び第3の着色剤が存在する場合は単一の第3の着色剤のみが存在していてもよい。
【0014】
第1の着色剤
第1の着色剤は、青色遮断顔料又は染料であり、すなわち、これは、コンタクトレンズを通過するブルーライトの少なくとも一部分、特に415~455nmの波長を有するブルーライトを吸収する。第1の着色剤は、好ましくは染料である。第1の着色剤は、典型的には、黄色着色剤、好ましくは黄色染料である。第1の着色剤は、415nm~455nmの範囲、任意に415nm~445nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有するであろう。
【0015】
第1の着色剤は、あらゆる好適な種類のものであり得、例えば、第1の着色剤は、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、メタクリルアミド及びアクリルアミドなどの1種以上の重合性基を含んでいてもよい、アントラキノン又はアゾ染料などの染料であり得る。
当業者は、コンタクトレンズにおける使用のための様々な好適な青色遮断染料を認識している。第1の着色剤は、重合性又は非重合性であり得る。例えば、黄色を有し、アクリレート及びメタクリレートなどの重合性基を含む青色遮断染料が、米国特許第5,470,932号に記載されている。青色遮断染料としての使用に好適なさらなる黄色染料としては、ディスパースオレンジ3メタクリルアミド(2-メチル-N-{4-[(Z)-(4-ニトロフェニル)ジアゼニル]フェニル}プロパ-2-エナミド;CAS登録番号58142-15-7)、並びにリアクティブイエロー15(4-(4,5-ジヒドロ-4-((2-メトキシ-5-メチル-4-((2-(スルホオキシ)エチル)スルホニル)フェニル)アゾ)-3-メチル-5-オキソ-1H-ピラゾール-1-イル)-]-ベンゼンスルホン酸;CAS登録番号60958-41-0)及びリアクティブイエロー86(4-((5-アミノカルボニル-1-エチル-1,6-ジヒドロ-2-ヒドロキシ-4-メチル-6-オキソ-3-ピリジニル)アゾ)-6-(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ)-1,3-ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム塩;CAS登録番号61951-86-8)に基づいたアクリレートが挙げられる。
【0016】
第1の着色剤は、望ましくは、オートクレーブ処理及びパッケージング溶液中でのコンタクトレンズの保管に対して安定であり、それによって、コンタクトレンズの製作及び保管を通してコンタクトレンズの色を変化させずに維持するであろう。
【0017】
第1の着色剤が重合性である場合、これはまた、第1の染料及び第2の染料の両方がポリマーマトリックスに共有結合されるように、かつコンタクトレンズのその後の処理及び保管中に浸出しないように、ポリマーマトリックスに重合されるであろう。第1の着色剤は、好ましくは、重合性組成物に可溶な染料であり、そのため、染料を重合性組成物に溶解させると、重合性組成物全体にわたって染料の均一な分布がもたらされる。好ましくは、重合後に、単位体積当たりのポリマーマトリックス中の第1の着色剤の濃度は、ポリマーマトリックスの体積全体にわたって、平均濃度から±5%超で変動しない。
コンタクトレンズ中の第1の着色剤の濃度は、望ましいレベルのブルーライト遮断に基づいて選択されるであろう。好ましくは、下記のBS EN ISO18369-3-2017の第4.8項によって測定される415nm~455nmの範囲における透過率は、90%未満、好ましくは80%未満である。乾燥ベースでのコンタクトレンズ中の第1の着色剤の濃度は、20ppm~1000ppm、任意に40ppm~1000ppm、任意に100ppm~1000ppm、任意に300ppm~1000ppm、例えば350ppm~900ppmの範囲であってもよい。
【0018】
第2の着色剤
第2の着色剤の目的は、典型的には黄色であり、コンタクトレンズの装用者の視覚に望ましくない影響を与える可能性がある第1の着色剤の色を少なくとも部分的にバランス調整することである。「カラーバランス調整」という用語は、第1の着色剤の黄色に対抗することを意味すると理解されるべきである。カラーバランス調整着色剤(すなわち、第2の着色剤)は、コンタクトレンズの全体的な色を無色、灰色又は青色により近づけるのに適切な濃度で使用される。
【0019】
第2の着色剤は、470nm~600nm、任意に470nm~599nm、任意に500nm~590nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する。典型的には、第2の着色剤は、赤色染料又は紫色染料であり、好ましくは紫色染料である。第2の着色剤は、例えば510nm~540nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する赤色染料であってもよい。第2の着色剤は、例えば550nm~570nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する紫色染料であってもよい。本発明者らは、第2の着色剤が紫色染料である場合、第2の着色剤のみを使用して、すなわち、第3の着色剤を含まずに、第1の着色剤の色をバランス調整することが多くの場合で可能であることを見出した。第2の着色剤は紫色であってもよく、コンタクトレンズは、灰色又は無色であってもよく、本明細書で定義される第3の着色剤を含んでいなくてもよい。しかしながら、第2の着色剤が赤色である場合、これは、必要な程度のカラーバランス調整をもたらすために、第3の着色剤を含める必要があり得る。また、いくつかの場合では、コンタクトレンズに淡い青色着色をもたらすために、識別着色料として、第3の着色剤を含めることが望ましいことがある。第2の着色剤は赤色であってもよく、コンタクトレンズは、灰色、無色又は青色であってもよく、本明細書で定義される第3の着色剤を含んでいなくてもよい。
第2の着色剤は、重合性組成物に可溶であり、そのため、第2の着色剤を重合性組成物に溶解させると、重合性組成物全体にわたって第2の着色剤の均一な分布がもたらされる。好ましくは、重合後に、単位体積当たりのポリマーマトリックス中の第2の着色剤の濃度は、ポリマーマトリックスの体積全体にわたって、平均濃度から±5%超で変動しない。
【0020】
第2の着色剤は、あらゆる好適な種類の染料、例えば、アゾ又はアントラキノン染料であり得る。本発明者らは、アントラキノン染料が、コンタクトレンズの製作中及びコンタクトレンズの保管時により優れた色堅牢度及び安定性を示し、それによって、コンタクトレンズの色を安定に維持することを見出した。好ましくは、第2の着色剤は、アントラキノン染料であり、より好ましくは紫色アントラキノン染料である。
【0021】
好ましくは、第2の着色剤は、発色団及び少なくとも1個の重合性基を含有し、ここで、各重合性基は、二価連結基によって発色団に接続されている。
発色団は、470nm~600nm、任意に500nm~600nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有するあらゆる好適な発色団であり得る。有利には、発色団はアントラキノン発色団である。アントラキノン発色団は、少なくとも1個の電子供与基又は電子求引基によって置換され得る。そのような電子供与基又は電子求引基は、発色団の吸収スペクトルに影響を与え、それによって、望ましい色をもたらす。アントラキノン発色団は、-F、-Cl、-Br、-I、-OR2、-SR2、-R2、-NO2、-CN、-NCO、-NCS、-C(=O)R2、-C(=O)OR2、-NR2 2、-C(=O)NHR2、-C(=O)N(R22から選択される1~3個の置換基を含み、式中、各R2は、独立的に、H又はC1-C20ヒドロカルビル、好ましくは直鎖アルキル又は分岐鎖アルキルであってもよい。
第2の着色剤は、1~3個、より好ましくは1個又は2個、最も好ましくは2個の重合性基を含む染料であってもよい。重合性基は、各々独立的に、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリル、及びビニルから選択されてもよい。好ましくは、重合性基は、アクリレート又はメタクリレートである。
【0022】
重合性基は各々、連結基を介して発色団に接続されている。
各連結基は、C、H、O、Si、N、P、S、F、Cl、Br、及びIから選択される2~50個の原子を含んでいてもよい。連結基は、二価ラジカルである。各連結基は、O、S、N、P、Si、F、Cl、Br、及びIから選択されてもよい1個以上のヘテロ原子によって置換されていても又は置換されていなくてもよい、二価C1-C50、任意にC1-C20二価ヒドロカルビレン基を含み得る。各連結基は、酸素、硫黄、又は窒素原子を介して、好ましくはアントラキノンである発色団に接続されていてもよい(本開示の目的のために、酸素、硫黄、又は窒素原子は、連結基の一部であると考慮される)。
【0023】
発色団がアントラキノンである場合、第2の着色剤は、好ましくは1~3個の重合性基、より好ましくは1個又は2個の重合性基を含む。2個の重合性基が存在する場合、連結基は、好ましくは、1,2位、1,3位、1,4位、1,5位、2,6位、2,7位、1,8位、又は2,8位でアントラキノンに結合しており、より好ましくは、アントラキノンの1,2位、1,3位、1,4位、又は1,5位で結合している。2個の重合性基が存在する場合、連結基は、好ましくは、1,2位、1,3位、1,4位、1,5位、2,6位、2,7位、1,8位、又は2,8位でアントラキノンに結合していてもよく、より好ましくは、アントラキノンの1,2位、1,3位、又は1,5位で結合していてもよい。
第2の着色剤は、好ましくは、式(1)のものである。
Ch-(L-Xmn (1)
(式中、Chは発色団であり、Lは連結基又はヘテロ原子、好ましくは連結基であり、Xは重合性基であり、mは1~3であり、nは1~3である)好ましくは、m=1である。
第2の着色剤は、好ましくは、式(1a)のものである。
Ch-(L-X)n (1a)
(式中、Chは発色団であり、Lは二価連結基又は二価ヘテロ原子であり、Xは重合性基であり、nは1~3である)
【0024】
発色団Chは、-F、-Cl、-Br、-I、-OR2、-SR2、-R2、-NO2、-CN、-NCO、-NCS、-C(=O)R2、-C(=O)OR2、-NH2、-C(=O)NHR2、-C(=O)N(R22から独立的に選択される1~3個の置換基を含むことが好ましいアントラキノン発色団であってもよく、式中、各R2は、独立的に、H又はC1-C20ヒドロカルビルである。
【0025】
Lは、二価連結基であってもよい。連結基Lは、-N(H)-R1-、-SR1、又は-OR1であってもよく、式中、R1は、二価ヒドロカルビレン基、任意にC1-C50、任意にC1-C20二価ヒドロカルビレン基であり、これは、O、S、N、P、Si、F、Cl、Br、及びIから選択されてもよい1個以上のヘテロ原子によって置換されていても又は置換されていなくてもよい。R1は、例えば、F、Cl、Br、I、O、N、P、及びSから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよいアリール基、線状又は分岐状アルキレン基又はアリールアルキレン基を含み得る。R1は、-(1,4-Ph)-(CH2e-であってもよく、式中、e=1~16である。R1=-(1,4-Ph)-CH2-CH2-であってもよい。
【0026】
連結基Lは、C6-C14アリール基、C1-C20アルキル基、又はC7-C20アリールアルキル基を含んでいてもよい。
各重合性基Xは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリル、及びビニルから独立的に選択されてもよい。好ましくは、重合性基Xは各々、アクリレート又はメタクリレートである。
【0027】
この又は各-L-X置換基は、以下の式(1c)又は式(1d)によるものであってもよい。
【化1】
(式中、R3は、-H又は-CH3である)
【化2】
各重合性基Xは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリル、及びビニルから独立的に選択されてもよい。好ましくは、重合性基Xは各々、アクリレート又はメタクリレートである。
【0028】
第2の着色剤は、式(2)によるものであってもよい。
【化3】
(式中、0≦(a+b)≦3を前提として、a及びbは各々、0~3であり得、各Aは、-F、-Cl、-Br、-I、-OR2、-SR2、-R2、-NO2、-CN、-NCO、-NCS、-C(=O)R2、-C(=O)OR2、-NR2 2、-C(=O)NHR2、-C(=O)N(R22から独立的に選択され、式中、各R2は、先に定義した通りであり、c及びdは各々、1≦(c+d)≦3を前提として、0~3であり得、L及びXは、先に定義した通りである)アントラキノンは、1位及び4位の両方に-L-X基を有していなくてもよい。(a+b)=0、(c+d)=2、及びL=-NHRa-であり、式中、-Ra-が、1~12個の炭素原子を有する二価ラジカルである場合、(L-X)基は、1,4位になくてもよい。
【0029】
第2の着色剤は、式(3)又は式(4)によるものであってもよい:
【化4】
【0030】
第2の着色剤は、以下の仮想例に示されている化合物1~7のうちの1つであってもよい。
コンタクトレンズ中の第2の着色剤の濃度は、第1の着色剤の色をバランス調整するために必要な色強度に基づいて選択されるであろう。乾燥ベースでのコンタクトレンズ中の第2の着色剤の濃度は、20ppm~1000ppm、任意に40ppm~1000ppm、任意に100ppm~1000ppm、任意に300ppm~1000ppm、例えば350ppm~900ppmの範囲であってもよい。
【0031】
第3の着色剤
コンタクトレンズは、600nm超~800nm、任意に610nm~780nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する着色剤である第3の着色剤を含んでいてもよい。第3の着色剤の吸収最大値は、第2の着色剤の吸収最大値よりも高い波長にある。第3の着色剤は、顔料又は染料であり得る。典型的には、第3の着色剤は青色である。好ましくは、第3の着色剤は青色染料である。第3の着色剤は識別着色料であり得る。そのような識別着色料は当業者に周知である。第3の着色剤は重合性青色染料であり得る。識別着色料としての使用に好適な重合性染料は、例えば、米国特許第5,055,602号に開示されている。第3の着色剤は、アントラキノン染料、好ましくは、RB246:1,4-ビス(4-(2-メタクリロキシエチル)フェニルアミノ)アントラキノン(CAS番号121888-69-5)などの重合性アントラキノン染料であってもよい。
第3の着色剤は、重合前に重合性組成物に含まれている。第3の着色剤は、好ましくは重合性組成物に可溶であり、重合性組成物及び最終的なコンタクトレンズ全体にわたって均一に分布している。
乾燥ベースでのコンタクトレンズ中の第3の着色剤の濃度は、20ppm~1000ppm、任意に20ppm~800ppm、例えば40ppm~300ppmの範囲であってもよい。
【0032】
UV吸収化合物
コンタクトレンズは、UV光を吸収する少なくとも1種の化合物も含んでいてもよい。そのようなUV吸収化合物は、UV遮断化合物としても公知であり、当業者に周知である。これらは、典型的には、UV光の有害な影響から目を保護するためにコンタクトレンズ配合物に添加される。UV吸収化合物は、典型的には無色であり、したがって、本開示による第1、第2、又は第3の着色剤であるとは考慮されない。
コンタクトレンズ中のUV吸収化合物の濃度は、0.5質量%~2.0質量%、任意に0.7質量%~1.5質量%の範囲であってもよい。
存在する場合、少なくとも1種のUV遮断化合物は、好ましくは、重合前に重合性組成物に含まれている。少なくとも1種のUV遮断化合物は、好ましくは重合性組成物に可溶であり、重合性組成物及び最終的なコンタクトレンズ全体にわたって均一に分布している。
【0033】
ポリマーマトリックス
コンタクトレンズは、典型的には、望ましい特性を有するポリマーマトリックスを製造するための1種以上のモノマーを含む重合性組成物を重合することによって形成される。ポリマーマトリックスは、例えば、重合性組成物を望ましい形状の鋳型に分注し、次いで、これを重合前に閉じる、方法によって形成され得る。重合すると、ポリマーマトリックスは、望ましい形状に形成され、次いで、洗浄、パッケージング、及びオートクレーブ処理などの処理ステップに供される。
第2の着色剤は、重合性染料であり、重合中にポリマーマトリックスの不可欠な部分になるであろう。したがって、ポリマーマトリックスは、第2の着色剤に由来する側鎖を含む。これらの側鎖は、-L-Chの形態のものであり得、式中、Lは、先に定義した通りの連結基であり、Chは、先に定義した通りの発色団である。
【0034】
同様に、第1の着色剤及び/又は第3の着色剤も重合性染料である場合、第1の着色剤及び/又は第3の着色剤もポリマーマトリックスの不可欠な部分になるであろう。したがって、その場合、第1の着色剤及び/又は第3の着色剤はまた、ポリマーマトリックス中に対応する側鎖を生じさせるであろう。
ポリマーマトリックスは、コンタクトレンズの材料を形成する。ポリマーマトリックスは、コンタクトレンズにおける使用に好適なあらゆる種類のものであり得、したがって、重合性組成物は、コンタクトレンズの製造における使用に好適なあらゆるモノマーを含み得る。好ましくは、コンタクトレンズはヒドロゲルコンタクトレンズである。ヒドロゲルは、室温で平衡状態に水を保持することができ、かつ少なくとも10質量%の平衡含水量を有する、ポリマー材料である。ヒドロゲルは、95質量%以下、任意に90質量%以下の平衡含水量を有していてもよい。
【0035】
コンタクトレンズは、従来的なヒドロゲル材料、すなわち、シロキサンを含有しないヒドロゲル材料であってもよい。例えば、コンタクトレンズは、BS EN ISO13369 2017の第1部の第4項で定義した通りの群1、2、3、及び4の従来的なヒドロゲルであり得る。そのように定義された材料としては、イオン性材料及び非イオン性材料の両方、並びに参照されている規格の定義を使用した低含水量材料及び高含水量材料の両方が挙げられる。これらの分類の親水性材料は、典型的には、眼用デバイスを製造するのに好適な少なくとも1種のモノマー、好ましくは、コンタクトレンズの場合、ヒドロキシエチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン、メチルメタクリレートなどのアルキルメタクリレート、メタクリル酸、アリールメタクリレート、グリセリルメタクリレート、フッ素化メタクリレート、アルキル置換アクリレート若しくはメタクリレート、又はそれらの組合せを含む重合性組成物を使用して調製される。当然のことながら、他のレンズ製造モノマー及び添加剤も使用され得る。ヒドロゲルは、25℃で少なくとも10質量%、任意に少なくとも20質量%の平衡含水量を有していてもよい。ヒドロゲルは、25℃で90質量%以下、任意に80質量%以下の平衡含水量を有していてもよい。
【0036】
好適なレンズ材料としては、ブフィルコンA、エタフィルコンA、メタフィルコンA、オクフィルコンC、パーフィルコンA、フェムフィルコンA、及びヴィフィルコンA、メタフィルコンB、オキュフィルコンD、エタフィルコンA、リドフィルコンA又はB、アルファフィルコンA、テトラフィルコンA、サーフィルコンA、ヴァスリルコンA、ヒオキシフィルコンAが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0037】
コンタクトレンズはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであり得る。シリコーンヒドロゲル材料は、典型的には、少なくとも1種のシロキサンモノマー又はマクロマーと少なくとも1種の親水性モノマー又は少なくとも1種の親水性ポリマー又はそれらの組合せとを含む重合性組成物(すなわち、モノマー混合物)を硬化させることによって形成される。本明細書で使用される場合、「モノマー」という用語は、同じ又は異なる他の重合性基含有分子と反応してポリマー又はコポリマーを形成することができる重合性炭素-炭素二重結合を含む分子(すなわち、重合性基)を指す。モノマーという用語は、重合性プレポリマー及びマクロマーを包含し、特に示されていない限り、モノマーのサイズ制約はない。モノマーは、単一の重合性炭素-炭素二重結合又は1個より多くの重合性基を含み得、したがって、架橋官能基を有し得る。「シロキサンモノマー」は、少なくとも1個のSi-O基と少なくとも1個の重合性基とを含有する分子である。コンタクトレンズ組成物に有用なシロキサンモノマーは、当技術分野で周知である(例えば、米国特許第8,658,747号及び米国特許第6,867,245号を参照)。(ここで及び全体で言及されているすべての特許及び公報は、参照によってそれらの全体が組み込まれる)シロキサンマクロマーは、1個以上のポリマーセグメントを含むシロキサンモノマーである。いくつかの例では、重合性組成物は、少なくとも10質量%、20質量%又は30質量%~約40質量%、50質量%、60質量%又は70質量%までの総量のシロキサンモノマーを含む。特に指定されていない限り、本明細書で使用される場合、重合性組成物の成分の所与の質量パーセンテージ(質量%)又はppmは、本開示の目的のために重合性組成物中に任意の相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)ポリマーも含むすべての重合性成分の総質量に対するものである(以下でさらに説明する)。最終的なコンタクトレンズ製品に組み込まれない希釈剤などの成分によって寄与される重合性組成物の質量は、質量%又はppmの計算には含まれない。
【0038】
重合性組成物は親水性ビニルモノマーを含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、「親水性ビニルモノマー」は、その分子構造に存在する重合性ビニル基を有する任意のシロキサン不含(すなわち、Si-O基を含有しない)親水性モノマーである。本明細書で使用される場合、「アクリル基」という用語は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミドなどに存在する重合性基を指す。したがって、炭素-炭素二重結合は、アクリレート及びメタクリレート基に存在するが、本明細書で使用される場合、そのような重合性基は、ビニル基であるとは考慮されない。さらに、本明細書で使用される場合、標準的な振とうフラスコ法を使用して視覚的に決定して少なくとも50グラムのモノマーが20℃で1リットルの水に完全に可溶である(すなわち、水に約5%可溶である)場合、モノマーは「親水性」である。様々な例で、親水性ビニルモノマーは、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(VMA)、又はN-ビニルピロリドン(NVP)、又はそれらの任意の組合せである。一例では、重合性組成物は、少なくとも10質量%、15質量%、20質量%又は25質量%~約45質量%、60質量%又は75質量%までの親水性ビニルモノマーを含む。本明細書で使用される場合、重合性組成物中の特定の分類の成分(例えば、親水性ビニルモノマー、シロキサンモノマーなど)の所与の質量パーセンテージは、この分類に該当する組成物中の各成分の質量%の合計に等しい。したがって、例えば、5質量%のVMAと25質量%のNVPとを含み、他の親水性ビニルモノマーを含まない重合性組成物は、30質量%の親水性ビニルモノマーを含むと言われる。さらなる特定の例では、重合性組成物は、約25質量%~約75質量%までのVMA又はNVP又はそれらの組合せを含む。
【0039】
好適な親水性モノマーのさらなる例は、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、ヒドロキシル置換C1-6アルキルアクリレート及びメタクリレート、例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、(メタ)アクリルアミド、(C1-6アルキル)アクリルアミド及びメタクリルアミド、エトキシル化アクリレート及びメタクリレート、ヒドロキシル置換(C1-6アルキル)アクリルアミド及びメタクリルアミド、ヒドロキシル置換C1-6アルキルビニルエーテル、ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニル含有モノマー、例えば、N-ビニルピロール、2-ビニルオキサゾリン、2-ビニル-4,4’-ジアルキルオキサゾリン-5-オン、2-及び4-ビニルピリジン、合計3~5個の炭素原子を有するビニル性不飽和カルボン酸、例えば、メタクリル酸、アミノ(C1-C6アルキル)-(「アミノ」という用語が第4級アンモニウムも含む場合)、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、モノ(C1-C6アルキルアミノ)(C1-C6アルキル)及びジ(C1-C6アルキルアミノ)(C1-C6アルキル)アクリレート及びメタクリレート、アリルアルコール、並びにスルホベタイン及びカルボキシベタインを含む両性イオンモノマー、並びにそれらの組合せである。
【0040】
重合性組成物は非ケイ素含有疎水性モノマーもさらに含み得る。好適な疎水性コモノマーの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルバレレート、スチレン、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、1-ブテン、ブタジエン、メタクリロニトリル、ビニルトルエン、ビニルエチルエーテル、パーフルオロヘキシルエチルチオカルボニルアミノエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレートが挙げられる。さらに、本明細書で使用される場合、標準的な振とうフラスコ法を使用して視覚的に決定して50グラム未満のモノマーが20℃で1リットルの水に完全に可溶である(すなわち、水に約5%可溶である)場合、モノマーは「疎水性」である。
【0041】
親水性モノマーに加えて、又はその代わりに、重合性組成物は非重合性親水性ポリマーを含み得、それによって、シリコーンヒドロゲルポリマーマトリックスに相互貫入する非重合性親水性ポリマーを有する相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)を含むポリマーレンズ本体が得られる。この例では、非重合性親水性ポリマーはIPNポリマーと呼ばれ、コンタクトレンズの内部湿潤剤として作用する。対照的に、重合性組成物に存在するモノマーの重合によって形成するシリコーンヒドロゲルネットワーク内のポリマー鎖は、IPNポリマーであるとは考慮されない。IPNポリマーは、例えば約50,000~約500,000ダルトンの高分子量親水性ポリマーであり得る。特定の例では、IPNポリマーはポリビニルピロリドン(PVP)である。他の例では、重合性組成物は、ポリビニルピロリドン又は他のIPNポリマーが実質的に不含である。
【0042】
重合性組成物は、少なくとも1種の架橋剤をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、「架橋剤」は、少なくとも2個の重合性基を有する分子である。したがって、架橋剤は、2個以上のポリマー鎖上の官能基と反応して、1個のポリマーを別のポリマーに架橋することができる。架橋剤は、アクリル基若しくはビニル基を含み得るか、又はアクリル基及びビニル基の両方を含み得る。特定の例では、架橋剤は、シロキサン部分が不含であり、すなわち、これは非シロキサン架橋剤である。シリコーンヒドロゲル重合性組成物における使用に好適な様々な架橋剤が当分野で公知である(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第8,231,218号を参照)。好適な架橋剤の例としては、低級アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、トリエチレングリコールジメタクリレート及びジエチレングリコールジメタクリレート;ポリ(低級アルキレン)グリコールジ(メタ)アクリレート;低級アルキレンジ(メタ)アクリレート;アリルメタクリレート、ジビニルエーテル、例えば、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル;ジビニルスルホン;ジ及びトリビニルベンゼン;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;メチレンビス(メタ)アクリルアミド;トリアリルフタレート;1,3-ビス(3-メタクリルオキシプロピル)テトラメチルジシロキサン;ジアリルフタレート;トリアリルイソシアヌレート、並びにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0043】
当業者に理解されるように、重合性組成物は、重合開始剤、脱酸素剤、連鎖移動剤、希釈剤などのうちの1種以上などの、コンタクトレンズ配合物に従来的に使用されているさらなる重合性成分又は非重合性成分を含み得る。いくつかの例では、重合性組成物は、重合性組成物の親水性成分と疎水性成分との間の相分離を防止又は最小化する量の有機希釈剤を含み得、そのため、光学的に透明なレンズが得られる。コンタクトレンズ配合物に一般的に使用される希釈剤としては、ヘキサノール、エタノール、及び/又は他の第1級、第2級若しくは第3級アルコールが挙げられる。他の例では、重合性組成物は、有機希釈剤が不含であるか、又はこれが実質的に不含である(例えば、500ppm未満)。そのような例では、ポリエチレンオキシド基、ペンダントヒドロキシル基、又は他の親水性基などの親水性部分を含有するシロキサンモノマーの使用によって、重合性組成物に希釈剤を含める必要がなくなり得る。重合性組成物に含まれ得るこれらの成分及びさらなる成分の非限定的な例は、米国特許第8,231,218号に記載されている。
【0044】
使用され得るシリコーンヒドロゲルの非限定的な例としては、コンフィルコンA、ファンフィルコンA、ステンフィルコンA、セノフィルコンA、セノフィルコンC、ソモフィルコンA、ナラフィルコンA、デレフィルコンA、ナラフィルコンB、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、バラフィルコンA、サムフィルコンA、ガリフィルコンA、アスモフィルコンA、リオフィルコンA、カリフィルコンA、オリフィルコンA、セノフィルコンB、及びエンフィルコンAが挙げられる。
【0045】
特定の実施形態では、重合性組成物は、25質量%~55質量%の1種以上のシロキサンモノマーと、NVP及びVMA、並びにそれらの組合せから選択される30質量%~55質量%のビニルモノマーと、任意に、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)及びエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、並びにそれらの組合せから選択される約1質量%~約20質量%の親水性モノマーと、任意に、メチルメタクリレート(MMA)、イソボルニルメタクリレート(IBM)及び2-ヒドロキシブチルメタクリレート(HOB)から選択される約1質量%~約20質量%の疎水性モノマーとを含む。重合性組成物のこの特定の実施形態から製造されるシリコーンヒドロゲル材料としては、ステンフィルコンA、コンフィルコンA、ソモフィルコンA、ファンフィルコンA、及びエンフィルコンAが挙げられる。
述べたように、好ましい実施形態では、本発明のコンタクトレンズは、ソフトコンタクトレンズ、特にソフトシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであると考慮され得る。
【0046】
コンタクトレンズは、任意のレンズ装用モダリティ(lens wear modality)のものであり得る。レンズ装用モダリティとは、レンズを外さずに何日続けて装用することができるかを指す。一例では、コンタクトレンズは1日使い捨てレンズである。1日使い捨てレンズは、約12時間又は16時間までの連続装用での1回の使用が指示されており、1回の使用後に廃棄されるべきである。別の例では、コンタクトレンズは日常装用レンズである。日常装用レンズは、起きている時間に、典型的には約12~16時間まで装着され、就寝前に取り外される。日常装用レンズは、典型的には、非使用時にレンズを洗浄及び消毒するためのコンタクトレンズケア溶液を含むコンタクトレンズケースに保管される。日常装用レンズは、典型的には、最大30日間の装用後に廃棄される。さらなる別の例では、コンタクトレンズは長時間装用レンズである。長時間装用レンズは、典型的には、連続的に6日間、14日間、又は30日間続けて装用される。
【0047】
本発明の一部として、コンタクトレンズは、コンタクトレンズパッケージにシールされ得る。コンタクトレンズパッケージ内にシールされるパッケージング溶液は、あらゆる従来的なコンタクトレンズ適合溶液であり得る。一例では、パッケージング溶液は、緩衝剤の水溶液及び/又は等張化剤を含むか、これらからなるか、又は本質的にこれらからなる。別の例では、パッケージング溶液は、1種以上のさらなる抗菌剤、及び/又はコンフォート剤(comfort agent)、及び/又は親水性ポリマー、及び/又は界面活性剤、及び/又は他の有益な薬剤などのさらなる薬剤を含有する。いくつかの例では、パッケージング溶液は、多糖(例えば、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど)又は他の高分子量ポリマー、例えばポリビニルピロリドンを含み得、これらは、一般に、眼科用溶液及びコンタクトレンズパッケージング溶液中のコンフォートポリマー(comfort polymers)又は増粘剤として使用される。他の例では、パッケージング溶液は眼科薬を含み得る。パッケージング溶液は、約6.8又は7.0~約7.8又は8.0までの範囲のpHを有し得る。一例では、パッケージング溶液は、リン酸緩衝剤又はホウ酸緩衝剤を含む。別の例では、パッケージング溶液は、塩化ナトリウム又はソルビトールから選択される等張化剤を、浸透圧を約200~400mOsm/kg、典型的には約270mOsm/kg~約310mOsm/kgまでの範囲に維持する量で含む。
【0048】
コンタクトレンズパッケージに関して、このパッケージは、コンタクトレンズ及びパッケージング溶液を保持するように構成された空洞と空洞の周りに外向きに延在するフランジ領域とを備えるプラスチックベース部材を含み得るか、又はこれを備え得る。シールされたコンタクトレンズパッケージを提供するために、取り外し可能なホイルがフランジ領域に取り付けられる。一般に「ブリスターパック」と呼ばれるそのようなコンタクトレンズパッケージは、当技術分野で周知である(例えば、米国特許第7,426,993号を参照)。パッケージは、互いに結合した2つのホイル部材も備える場合があり、これらのホイル部材は、平らであり得るか、又は一方若しくは両方のホイル部材が、レンズ及びパッケージ溶液を収容する適切な幾何学的形状に形成され得るかのいずれかである。
【0049】
従来的な製作方法を使用して、シールされたコンタクトレンズパッケージを製作することができると理解されたい。コンタクトレンズパッケージを製作する方法において、この方法は、未装用のコンタクトレンズ及びコンタクトレンズパッケージング溶液を容器内に配置し、容器上にカバーを配置し、容器上のカバーをシールするステップを含み得る。通常、容器は、単一のコンタクトレンズと、コンタクトレンズを完全にカバーするのに十分な量、典型的には約0.5~1.5mlのパッケージング溶液とを受けるように構成されている。容器は、ガラス又はプラスチック又はホイルなどのあらゆる好適な材料から製造され得る。一例では、容器は、コンタクトレンズ及びパッケージング溶液を保持するように構成された空洞と空洞の周りに外向きに延在するフランジ領域とを備えるプラスチックベース部材を備え、カバーは、フランジ領域に取り付けられてシールされたコンタクトレンズパッケージを提供する取り外し可能なホイルを備える。取り外し可能なホイルは、ヒートシール又は糊付けなどのあらゆる従来的な手段によってシールされ得る。別の例では、容器は、複数のねじ山を備えるプラスチックベース部材の形態であり、カバーは、ベース部材のねじ山との係合のための適合したねじ山セットを備えることで再シール可能なカバーを提供するプラスチックキャップ部材を備える。再シール可能なパッケージを提供するために、他の種類のパッケージングも使用することができると理解されたい。例えば、コンタクトレンズパッケージは、容器の適合した特徴部と係合して締まりばめを形成する特徴部を備えるプラスチックカバーを備え得る。シールされたコンタクトレンズパッケージを製作する方法は、シールされたコンタクトレンズパッケージをオートクレーブ処理することによって未装用のコンタクトレンズを滅菌することをさらに含み得る。オートクレーブ処理は、通常、シールされたコンタクトレンズパッケージを少なくとも121℃の温度に少なくとも20分間供することを伴う。好ましくは、本発明のコンタクトレンズは、パッケージング溶液を含有するシールされたパッケージにおいて121℃で20分間オートクレーブ処理しても色を著しく変化させない。
【0050】
コンタクトレンズは、未装用(すなわち、患者によって予め使用されてはいない新しいコンタクトレンズ)で提供され、パッケージング溶液に浸漬され、パッケージにシールされ得る。パッケージは、ブリスターパッケージ、ガラスバイアル、ホイル・トゥ・ホイルパッケージ(foil to foil package)、又は他の適切な入れ物であり得る。パッケージは、パッケージング溶液と未装用のコンタクトレンズとを収容するための空洞を有するベース部材を備える。シールされたパッケージは、熱又は蒸気を含む滅菌量の放射線によって、例えば、オートクレーブ処理によって、又はガンマ線放射、電子線放射、紫外線放射などによって滅菌され得る。
特定の例では、パッケージ化されたコンタクトレンズは、オートクレーブ処理によって滅菌される。
【0051】
最終的な製品は、眼科的に適合した無菌のパッケージ化されたコンタクトレンズ(例えば、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ)であり得る。「眼科的に適合した」とは、眼の環境に著しい変化を引き起こすことなく眼の環境と直接接触することができ、毒物学的に不活性であり、かつ接触期間中及び取り外し後の両方でユーザーに不快感を与えることのない材料を指す。この用語は、眼の環境に固有のタンパク質、脂質、又は他の生体分子の沈着が、デバイスの性能が損なわれないようなレベルに制限されており、接触期間後にデバイスが容易に取り外されるような、レンズ材料の特性も指す。
【0052】
コンタクトレンズ
コンタクトレンズは、あらゆる好適なデザイン及び厚さであり得、当業者は、多くのそのようなデザインを認識している。
先に述べたように、コンタクトレンズは、ソフトコンタクトレンズ、任意にヒドロゲルコンタクトレンズ、例えばシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであり得る。
【0053】
コンタクトレンズは、無色、灰色、又は青色である。レンズは、灰色又は青色であってもよい。色を定義するための色空間に基づく様々なシステムが公知であり、特定の表記法を使用して対象の色を定義することができる。例えば、Commission Internationale de l’Eclairage(CIE)は、色を伝達及び表現するために、CIE XYZ、CIE L***、及びCIE L**hを含む色空間を定義した。
【0054】
コンタクトレンズの色を定義する際の使用に好適な1つのそのようなシステムは、CIELab L***色空間である。これは、L*が明暗の座標であり、a*及びb*座標が赤色/緑色及び青色/黄色を定義する、色の3次元表現である。関連するシステムは、色を定義するために、CIELab L***座標を使用して、同じ色空間を使用する。これは、本質的に同じL(明度)軸であるが、C(彩度)及びh(色相)は、a*及びb*とは異なる。C(彩度)は、L軸及びhからの距離であり、色相は、+a*軸から始まる角度として定義され、度で表される(例えば、0°は、+a*又は赤色であり、90°は、+b又は黄色である)。当業者に公知の方法によって、CIELab L**及びb*値をCIELab L**及びh*値に変換することができ、その逆も同様である。
彩度は、着色度の尺度であり、0の彩度は、トーンニュートラル又はモノクロ階調に対応する。コンタクトレンズは灰色であってもよく、灰色は、5.0以下の彩度(C*)値及び166度以下又は275度以上の色相(h*)値を有するものとして定義してもよい。色相(h*)は、緑色、青色など、どの色が存在するかの尺度である。コンタクトレンズは青色であってもよく、青色は、166度超かつ275度未満の色相(h*)値を有するものとして定義してもよい。コンタクトレンズは、灰色又は青色であってもよく、a)5.0以下の彩度(C*)値及びb)166度超かつ275度未満の色相(h*)値のうちの少なくとも1つを有していてもよい。
【0055】
着色剤の濃度は、コンタクトレンズを透過する可視光の割合が、特に低照度条件におけるユーザーの視覚能力を妨げ得る望ましくない程度まで低下しないように選択されるであろう。本明細書での波長範囲にわたる光透過率への参照は、BS EN ISO18369-3-2017の第4.8項によって波長範囲にわたって1nm間隔で測定した透過率を意味するものと理解すべきであり、これらの結果は、平均値を与えるために平均されている。典型的には、コンタクトレンズは、BS EN ISO18369-3-2017の第4.8項によって測定して、380nm~780nmの範囲の可視光範囲で、少なくとも80%、任意に少なくとも90%の透過率を有する。
【0056】
コンタクトレンズを製造する方法
本発明は、1種以上のモノマーと、415nm~455nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する青色遮断黄色着色剤である第1の着色剤と、470nm~600nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する重合性紫色染料又は赤色染料である第2の着色剤とを含み、かつ600nm超~800nmの範囲に吸収最大値を有する青色着色剤である第3の着色剤も含んでいてもよい重合性組成物であって、第2の着色剤及び存在する場合は第3の着色剤が、コンタクトレンズが無色、灰色又は青色になるように、第1の着色剤の黄色をバランス調整する、重合性組成物を鋳型内で重合して、ポリマーマトリックスを含むレンズ形状の重合生成物を形成するステップを含む、コンタクトレンズを製造する方法を提供する。
重合性組成物は、重合性組成物中のすべての重合性成分の総質量に基づいて、20ppm~1000ppm、任意に40ppm~1000ppm、任意に100ppm~1000ppm、任意に300ppm~1000ppm、例えば350ppm~900ppmの第1の着色剤を含んでいてもよい。
第1の着色剤も重合性であってもよい。
【0057】
重合性組成物は、重合性組成物中のすべての重合性成分の総質量に基づいて、20ppm~1000ppm、任意に40ppm~1000ppm、任意に100ppm~1000ppm、任意に300ppm~1000ppm、例えば350ppm~900ppmの範囲の第2の着色剤を含んでいてもよい。
重合性組成物は、重合性組成物中のすべての重合性成分の総質量に基づいて、20ppm~1000ppm、任意に20ppm~800ppm、例えば40ppm~300ppmの範囲の第3の着色剤を含んでいてもよい。
【0058】
第3の着色剤も重合性であってもよい。
重合性組成物は、重合性組成物中のすべての重合性成分の総質量に基づいて、0.5質量%~2.0質量%、任意に0.7質量%~1.5質量%のUV吸収化合物も含んでいてもよい。
【0059】
重合性組成物は、コンタクトレンズの鋳型に分注され、あらゆる好適な硬化法を使用して硬化(すなわち、重合)され得る。典型的には、重合性組成物は、重合量の熱又は紫外光(UV)に曝される。光重合とも呼ばれるUV硬化の場合、重合性組成物は、典型的には、ベンゾインメチルエーテル、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、DAROCUR、又はIRGACUR(Ciba Specialty Chemicalsから入手可能)などの光開始剤を含む。コンタクトレンズのための光重合法は、例えば、米国特許第5,760,100号に記載されている。熱硬化とも呼ばれる加熱硬化の場合、重合性組成物は、典型的には、熱開始剤を含む。当技術分野で十分に理解されている例示的な熱開始剤又は触媒としては、アゾ又は過酸化物含有化合物、例えば、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル)(VAZO-52)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパンニトリル)(VAZO-64)及び1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)(VAZO-88)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(イソブチロニトリル)、レドックス系、例えば過硫酸アンモニウム、並びに、例えばベンゾインメチルエーテル又はホスフィンオキシド、例えばビフェニル(2,4-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドなどを含む、UVスペクトル又は可視光スペクトル又はこれらの組合せのいずれかで効果的な光開始剤が挙げられる。好ましくは、硬化は、150ppm未満の酸素、より好ましくは100ppm未満の酸素を含有する雰囲気で熱によって行われる。より好ましくは、硬化は、50ppm未満の酸素を含有する窒素又は希ガスなどの不活性雰囲気で熱によって行われる。コンタクトレンズのための熱重合法は、例えば、米国特許第8,231,218号及び同第7,854,866号に記載されており、これらは、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0060】
重合後に、得られたレンズ形状の重合生成物を鋳型から取り出し(脱レンズ(delensed)し)、洗浄して、未反応の又は部分的に反応した成分を抽出し、レンズを水和する。洗浄ステップは、ポリマーレンズを1つ以上の体積の1種以上の洗浄液と接触させることを伴う。いくつかの例では、レンズを鋳型から「湿式」脱レンズするために、第1の体積の洗浄液が使用される。他の例では、レンズは、機械的方法を使用して鋳型から「乾式脱レンズ」される。本発明の方法は、好ましくは、レンズ形状の重合生成物を水和してヒドロゲルコンタクトレンズを形成するステップを含む。いくつかの例では、レンズを洗浄及び水和するために使用される洗浄液は、1種以上の揮発性有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、工業用メチル化スピリットなどの低級アルコールの混合物、クロロホルムなど)を含み得る。他の例では、レンズは、脱イオン水などの揮発性有機溶媒不含洗浄液のみを使用して洗浄及び水和される。
【0061】
重合ステップ又は洗浄ステップの後に、ポリマーレンズは、コンタクトレンズの湿潤性を増加させるために、表面改質処理に供され得る。コンタクトレンズ表面の湿潤性を増加させるための様々な表面改質法が当技術分野で公知である。例としては、プラズマ処理、交互積層法などによるポリマーレンズへの親水性ポリマーの結合、及びコンタクトレンズパッケージング溶液への親水性ポリマーの添加が挙げられる。表面改質のこれらの方法及び他の方法は、従来技術において公知である(例えば、米国特許第4,143,949号、同第7,582,327号、同第7,841,716号を参照)。
【0062】
好ましくは、本発明の方法は、重合生成物又はヒドロゲルコンタクトレンズを、パッケージング溶液を含有するパッケージに浸漬し、パッケージをシールし、シールされたパッケージを任意に滅菌するステップも含む。例えば、洗浄及びあらゆる任意のプロセスステップ(例えば、表面改質)の後に、水和されたポリマーレンズは、本明細書でどれも「パッケージ」と呼ばれる、ブリスターパッケージ、ガラスバイアル、又は他の適切な入れ物内に配置される。典型的には、パッケージング溶液も入れ物に添加される。好適なパッケージング溶液は、コンフォート剤、医薬品、レンズがそのパッケージに貼り付くことを防止するための界面活性剤などのあらゆる任意のさらなる成分と一緒に、リン酸緩衝生理食塩水又はホウ酸緩衝生理食塩水を含む。パッケージはシールされ、シールされたポリマーレンズは、放射線、熱又は蒸気(例えば、オートクレーブ処理)、ガンマ線放射、電子線放射などによって滅菌される。いくつかの例では、レンズは、滅菌条件下でパッケージ化され、パッケージング後の滅菌ステップが不要になり得る。いくつかの例では、ポリマーレンズは、乾式脱レンズされ、パッケージング溶液と一緒にその最終的なパッケージ内に直接的に配置され、シールされ、任意に滅菌され得る。したがって、洗浄ステップは、パッケージング及び滅菌ステップと同時であり得る。好ましくは、コンタクトレンズは、オートクレーブ処理によって滅菌される。
【0063】
例の染料の合成
4-ブロモフェニルエチルメタクリレート
【化5】
【0064】
0℃のジクロロメタン(250cm3)中に入った2-(4-ブロモフェニル)エタノール(25g、124mmol)の溶液に、トリエチルアミン(35cm3)をゆっくり添加する。次いで、塩化メタクリロイル(13cm3、131mmol)を滴加して、温度を5℃未満に維持する。添加後に、反応混合物を0~5℃で1時間、次いで23℃で17時間撹拌する。懸濁液を濾過によって収集し、ジクロロメタンで洗浄する。合した濾液を、蒸留水、2Nの塩酸水溶液、及び蒸留水で順に洗浄する。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を真空で除去する。粗生成物をシリカプラグ(ヘプタン:酢酸エチル;9:1)によって精製して、無色油としての4-ブロモフェニルエチルメタクリレート(29.4g、88%)を得る。1H NMR (CDCl3) 7.42 - 7.46 (2H, m), 7.12 (2H, d), 6.07 (1H, s), 5.54 - 5.57 (1H, m), 4.34 (2H, t), 2.95 (2H, t), 1.93 (3H, s).
【0065】
染料1
【化6】
【0066】
N,N-ジメチルホルムアミド(80cm3)、4-ブロモフェニルエチルメタクリレート(16.9g、63mmol)、1,5-ジアミノアントラキノン(5.0g、21mmol)、ヨウ化銅(I)(800mg、4.2mmol)、銅(800mg、12.6mmol)、炭酸カリウム(880mg、6.3mmol)、及び酢酸ナトリウム(5.86g、71.4mmol)の混合物を150℃で45時間加熱する。反応物を約100℃に冷却し、さらに、4-ブロモフェニルエチルメタクリレート(2.3g、8.6mmol)、ヨウ化銅(I)(800mg、4.2mmol)、及び銅(800mg、12.6mmol)を添加する。次いで、反応混合物を150℃でさらに24時間加熱し、次いで、冷却する。混合物を蒸留水(250cm3)に注ぎ、30分間撹拌し、それから濾過する。残留物を、カラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル;1:0~9:1の勾配)を繰り返し、続いて、再結晶(ヘプタン/酢酸エチル)させることによって精製して、暗紫色の固体としての染料1(390mg、<1%)を得る。1H NMR (CDCl3) 11.35 (2H, s), 7.69 - 7.74 (2H, m), 7.42 - 7.53 (4H, m), 7.26 - 7.31 (6H, m), 6.10 - 6.13 (2H, m), 5.56 - 5.60 (2H, m), 4.39 (4H, t), 3.02 (4H, t), 1.96 (6H, s).UV-vis(λmax、ジクロロメタン)537nm。
【0067】
4-ヨードフェニルエチルメタクリレート
【化7】
【0068】
0℃のジクロロメタン(200cm3)中に入った2-(4-ヨードフェニル)エタノール(20g、81mmol)の溶液に、トリエチルアミン(22.5cm3)をゆっくり添加する。次いで、塩化メタクリロイル(8.7cm3、89mmol)を滴加して、温度を5℃未満に維持する。添加後に、反応混合物を0~5℃で1時間、23℃で150分間撹拌する。固体を濾過によって収集し、ジクロロメタンで洗浄する。合した濾液を、蒸留水、2Nの塩酸水溶液、及び蒸留水で洗浄する。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を真空で除去する。残留物をシリカプラグ(ヘプタン:酢酸エチル;95:5)によって精製して、無色油としての4-ヨードフェニルエチルメタクリレート(22.9g、90%)を得る。1H NMR (CDCl3) 7.61 - 7.67 (2H, m), 6.97 - 7.03 (2H, m), 6.07 (1H, s), 5.53 - 5.58 (1H, m), 4.33 (2H, t), 2.93 (2H, t), 1.93 (3H, s).
染料1は、541nmの吸収最大値(λmax)を有していた。
【0069】
染料2
【化8】
【0070】
N,N-ジメチルホルムアミド(28cm3)、4-ヨードフェニルエチルメタクリレート(5.0g、15.8mmol)、1-アミノ-4-メトキシアントラキノン(1.9g、7.9mmol)、ヨウ化銅(I)(150mg、0.79mmol)、銅(150mg、2.4mmol)、炭酸カリウム(160mg、1.2mmol)、及び酢酸ナトリウム(1.10g、13.4mmol)の混合物を150℃で60時間加熱する。冷却した後に、反応混合物を蒸留水(150cm3)に注ぎ、固体を濾過によって収集する。残留物をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:酢酸エチル;9:1)によって精製して、暗青色の固体としての染料2(300mg、9%)を得る。1H NMR (CDCl3) 13.73 (1H, s), 11.79 (1H, s), 8.34 - 8.42 (2H, m), 7.80 - 7.87 (2H, m), 7.54 - 7.60 (1H, m), 7.13 - 7.31 (5H, m), 6.11 (1H, s), 5.58 (1H, s), 4.39 (2H, t), 3.02 (2H, t), 1.96 (3H, s).UV-vis(λmax、エタノール)570nm。
染料2は、585nmの吸収最大値(λmax)を有していた。
【0071】
以下のレンズの製作例では、染料1及び2を使用した。
以下のコンタクトレンズの例で使用した4種の染料である染料1、染料2、RY86-HEMA、及びRB246のUV-vis吸収スペクトルは、Perkin Elmer Lambda 35 UV/Vis分光光度計を使用して測定した。各染料の5ppm溶液をメタノール中で調製した。スペクトルは、1cmのプラスチックキュベット内で実行した。ベースラインは、メタノールを使用してオートゼロ調整した。スキャン範囲は、データ間隔1nm及びスリット幅1nmにて、780~270nmであった。各染料の吸光度最大値を以下の表1に報告し、スペクトルを図2に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
仮想的な染料合成例
中間体1
【化9】
1,2-ジブロモ-9,10-アントラセンジオン(5g)とジメチルスルホキシド(25cm3)との懸濁液に、2-(4-アミノフェニル)エタノール(25g)を添加する。次いで、混合物を、4時間還流で加熱し、23℃に冷却し、撹拌水(200cm3)に注ぐ。固体を濾過によって収集し、続いて、エタノールから再結晶させて、中間体1を得る。
【0074】
中間体2
【化10】
2,6-ジブロモ-9,10-アントラセンジオンを出発材料として使用することを除いて中間体1と同様の手法で、中間体2を調製する。
【0075】
中間体3
【化11】
1-ブロモ-9,10-アントラセンジオンを出発材料として使用することを除いて中間体1と同様の手法で、中間体3を調製する。
【0076】
中間体4
【化12】
1-ブロモ-4-メトキシ-9,10-アントラセンジオンを出発材料として使用することを除いて中間体1と同様の手法で、中間体4を調製する。
【0077】
中間体5
【化13】
1,8-ジブロモ-9,10-アントラセンジオンを出発材料として使用することを除いて中間体1と同様の手法で、中間体5を調製する。
【0078】
中間体6
【化14】
1,3-ジブロモ-9,10-アントラセンジオンを出発材料として使用することを除いて中間体1と同様の手法で、中間体6を調製する。
【0079】
中間体7
【化15】
2,7-ジブロモ-9,10-アントラセンジオンを出発材料として使用することを除いて中間体1と同様の手法で、中間体7を調製する。
【0080】
化合物1
経路A
【化16】
1,2-ジアミノアントラキノンを出発材料として使用することを除いて染料1と同様の手法で、化合物1を調製する。
経路B
【化17】
中間体1(1g)、無水アセトニトリル(15cm3)、及びトリエタノールアミン(2g)の混合物に、塩化メタクリロイル(1cm3)を滴加する。次いで、混合物を23℃で5時間撹拌する。エチレングリコール(20cm3)、続いて水を添加して、沈殿物を得る。粗生成物を、濾過によって収集し、続いて、カラムクロマトグラフィーによって精製して、化合物1を得る。
【0081】
化合物2
経路A
【化18】
2,6-ジアミノアントラキノンを出発材料として使用することを除いて化合物1(経路A)と同様の手法で、化合物2を調製する。
経路B
【化19】
中間体2を出発材料として使用することを除いて化合物1(経路B)と同様の手法で、化合物2を調製する。
【0082】
化合物3
経路A
【化20】
1,8-ジアミノアントラキノンを出発材料として使用することを除いて化合物1(経路A)と同様の手法で、化合物3を調製する。
経路B
【化21】
中間体5を出発材料として使用することを除いて化合物1(経路B)と同様の手法で、化合物3を調製する。
【0083】
化合物4
経路A
【化22】
1,3-ジアミノアントラキノンを出発材料として使用することを除いて化合物1(経路A)と同様の手法で、化合物4を調製する。
経路B
【化23】
中間体6を出発材料として使用することを除いて化合物1(経路B)と同様の手法で、化合物4を調製する。
【0084】
化合物5
経路A
【化24】
2,7-ジアミノアントラキノンを出発材料として使用することを除いて化合物1(経路A)と同様の手法で、化合物5を調製する。
経路B
【化25】
中間体7を出発材料として使用することを除いて化合物1(経路B)と同様の手法で、化合物5を調製する。
【0085】
化合物6
経路A
【化26】
1-アミノアントラキノンを出発物質として使用し、1当量だけの4-ブロモフェニルエチルメタクリレートを使用することを除いて化合物1(経路A)と同様の手法で、化合物6を調製する。
経路B
【化27】
中間体3を出発材料として使用することを除いて化合物1(経路B)と同様の手法で、化合物6を調製する。
【0086】
化合物7
経路B
【化28】
中間体4を出発材料として使用することを除いて化合物1(経路B)と同様の手法で、化合物7を調製する。
【0087】
例-レンズの製作
以下の化学物質は、本明細書で参照されており、それらの略語で参照される場合がある。
RB246:1,4-ビス(4-(2-メタクリロキシエチル)フェニルアミノ)アントラキノン(CAS番号121888-69-5)
RY86-HEMA:2-プロペン酸、2-メチル-、2-[[4-[[5-[2-[5-(アミノカルボニル)-1-エチル-1,6ジヒドロ-2-ヒドロキシ-4-メチル-6-オキソ-3-ピリジニル]-2,4-ジスルホフェニル]アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル]オキシ]エチルエステル、ナトリウム塩(1:2)(CAS番号2254162-81-5);
【0088】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造及び試験手順
例に記載されている化合物を、各例について、記載されている単位部に対応する量で秤量し、合して混合物を形成した。混合物を0.2~5.0μmのシリンジフィルターを通してボトルに濾過した。混合物は、2週間まで保管した。混合物は、重合性シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ前駆体組成物又は本明細書で使用される場合には重合性組成物であると理解される。例では、列挙されている成分量は、質量による重合性組成物の単位部として与えられる。
ある体積の重合性組成物を、組成物を雌鋳型部材のレンズ画定表面と接触させることによって注型成形した。以下のすべての例で、雌鋳型部材の成形表面は、非極性樹脂、具体的にはポリプロピレンで形成したが、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの極性樹脂も使用することが可能であろう。雄鋳型部材を雌鋳型部材と接触させて、重合性組成物を含有するコンタクトレンズ形状の空洞を備えるコンタクトレンズ鋳型アセンブリを形成した。以下の例では、雄鋳型部材の成形表面は、無極性樹脂、具体的にはポリプロピレンで形成した。
【0089】
コンタクトレンズ成形アセンブリを窒素フラッシュオーブン内に配置し、前駆体組成物をレンズ形状の重合生成物へと熱硬化させた。すべての例について、コンタクトレンズ鋳型アセンブリを少なくとも約55℃の温度に約2時間曝した。本明細書に記載されているシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを硬化するために使用することができる硬化プロファイルの例としては、コンタクトレンズ鋳型アセンブリを、40分間65℃、40分間80℃、及び40分間100℃の温度に曝すことが挙げられる。他のコンタクトレンズを同じ硬化プロファイルで製造することができるが、最初の温度は、65℃ではなく、55℃であり得る。
別の方法では、コンタクトレンズ鋳型アセンブリをUVA又はUVA+などのUV光に少なくとも30分間曝して、前駆体組成物をレンズ形状の重合生成物へとUV硬化させることができる。
【0090】
重合性組成物を重合させた後に、コンタクトレンズ鋳型アセンブリを離型して、雄鋳型部材及び雌鋳型部材を分離した。レンズ形状の重合性生成物は、雄鋳型又は雌鋳型に付着したままであった。鋳型アセンブリを液体媒体と接触させない乾式離型プロセスを使用しても、或いは鋳型アセンブリを例えば水又は水溶液などの液体媒体と接触させる湿式離型プロセスを使用してもよい。機械的乾式離型プロセスは、鋳型部材の一方又は両方の一部分に機械的力を加えて鋳型部材を分離することを伴い得る。以下のすべての例で、乾式離型プロセスを使用した。
次いで、重合コンタクトレンズ本体を雄鋳型又は雌鋳型から脱レンズして、脱レンズされた重合コンタクトレンズ本体を生成した。脱レンズ法の一例では、重合コンタクトレンズ本体は、レンズを雄鋳型部材から手動で剥がすこと、又は雄鋳型部材を圧縮し、ガスを雄鋳型部材及び重合コンタクトレンズ本体に向かって送り、乾燥した重合コンタクトレンズ本体を真空デバイスで雄鋳型部材から持ち上げ、これを廃棄することなどによる乾式脱レンズプロセスを使用して、雄鋳型部材から脱レンズすることができる。他の方法では、重合コンタクトレンズ本体は、乾燥した重合コンタクトレンズ本体を水又は水溶液などの液体放出媒体と接触させることによる湿式脱レンズプロセスを使用して脱レンズすることができる。例えば、重合コンタクトレンズ本体が取り付けられた雄鋳型部材は、重合コンタクトレンズ本体が雄鋳型部材から分離するまで、液体を含む容器に漬けることができる。又は、ある体積の液体放出媒体を雌鋳型に添加して、重合コンタクトレンズ本体を液体に浸し、レンズ本体を雌鋳型部材から分離することができる。以下の例では、乾式脱レンズプロセスを使用した。分離に続いて、ピンセットを使用して又は真空デバイスを使用してレンズ本体を手動で鋳型部材から持ち上げ、トレイ上に配置することができる。
【0091】
以下の例では、乾式離型及び乾式脱レンズステップに続いて、乾燥したレンズ形状の重合生成物をトレイの空洞内に配置し、次いで、レンズ形状の重合生成物を洗浄して、抽出可能な物質を重合コンタクトレンズ本体から取り除き、水和した。
抽出プロセス及び水和プロセスで使用した抽出液及び水和液は、変性エタノール、変性エタノールと脱イオン水との50/50混合物、及び脱イオン水からなっていた。具体的には、以下の例では、使用した抽出プロセス及び水和プロセスは、変性エタノール、続いて、エタノールと水との50:50混合物での少なくとも1回の抽出ステップ、続いて、脱イオン水での少なくとも1回の抽出ステップを含み、ここで、各抽出ステップ及び水和ステップは、20~30℃の温度で約15分間~約3時間続いた。
次いで、洗浄、抽出、及び水和したレンズを、リン酸緩衝生理食塩水パッケージング溶液を有するコンタクトレンズブリスターパッケージ内に個別に配置した。ブリスターパッケージをシールし、オートクレーブ処理によって滅菌した。
【0092】
滅菌後に、本明細書に記載されているように、湿潤レンズ直径、ベースカーブ、屈折率、含水量、UV-visスペクトルなどのレンズ特性を決定した。
各レンズの直径及び矢状方向高さはOptimecを使用してリン酸緩衝生理食塩水中で測定し、ベースカーブ半径を計算した。
レンズの湿潤中心厚さ(CT)は、Rehder CTゲージを使用して測定した。コンタクトレンズを水溶液から取り出し、リントフリーティッシュに軽く触れることによって余分な溶液を取り除いた。レンズをボールマウント上で中央に配置し、アンビルピン(anvil pin)をレンズの表面に接触するまで下げた。CTの読み取り値を記録した。
【0093】
以下の例のレンズについて、屈折率(RI)は、CLR-12-70屈折率計を使用して測定した。コンタクトレンズを水溶液から取り出し、振とうすること又はリントフリーティッシュに軽く触れることによって余分な溶液を取り除いた。次いで、コンタクトレンズを湾曲したプレス機上に配置し、蓋を閉じ、安定した時点で取得したRIの読み取り値でラッチを係合した。
【0094】
レンズのUV-visスペクトルは、ISO18369の第3部に記載されている方法に基づいて、Perkin Elmer Lambda 35 UV/Vis分光光度計を使用して測定した。スペクトルは、Vインサート及びホルダを有する平らなキュベットセル内で水溶液中に入ったレンズを用いて実行した。キュベットの開口部によって、レンズは測定中にその自然な形状を維持することができ、すなわち、その光路は、レンズのサグよりも大きく、その高さ及び幅は、レンズの直径よりも大きかった。キュベットホルダは、レンズの光学域の中心への入射光線を可能にする開口部を有する。ベースラインは、脱イオン水を使用してオートゼロ調整した。スキャン範囲は、データ間隔1nm及びスリット幅1nmにて、780~270nmであった。可視光、ブルーライト、UVA、及びUVBレンズの透過率を各レンズについて計算し、各例について5~10個のレンズの平均結果を報告した。
【0095】
可視光の透過率=780nm~380nmの平均%T
ブルーライトの透過率=415~455nmの平均%T
UVA=380nm~315nmの平均%T
UVB=315nm~280nmの平均%T
【0096】
(例1)
ステンフィルコンAの重合性組成物をベース配合物として使用した。このベース配合物に、表1の配合に従って染料を添加し、これらの配合物を使用してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのバッチを調製し、記載されている製作手順及び試験方法に従って、上記の乾式離型プロセス、乾式脱レンズプロセス、並びに抽出及び水和、パッケージング及び滅菌プロセスを使用して試験した。
RY86は、ブルーライト遮断に使用される黄色染料であり、本開示による第1の着色剤である。
赤色染料は、本開示による第2の着色剤であり、先の合成例で製造された染料1に対応する。
紫色染料は、本開示による第2の着色剤であり、先の合成例で製造された染料2に対応する。
【0097】
青色染料は、RB246であり、本開示による第3の着色剤である。
【表2】

【0098】
レンズの光透過率を上記の通りに測定し、結果を表3に示す。
【表3】

【0099】
中心厚さ、直径、ベースカーブ半径、及び屈折率を、例のレンズの各々について測定し、結果を表4に示す。測定を5~10個のレンズのサンプルについて実行し、結果を平均した。
【表4】

【0100】
各レンズの吸収最大値を測定する目的で、表5に示されている個別の染料濃度を有するコンタクトレンズ配合物を調製した。
【表5】

【0101】
表5の赤色染料及び紫色染料のλmax値は、メタノール溶液中で測定した場合の値(表1)とはわずかに異なるが、その違いは、主にこれらのピークの形状が比較的広いためであると考えられる。
【0102】
例のレンズの色は、以下の方法によって測定した。
レンズの色は、Sheen Micromatchモデル181/3比色計を使用して測定した。比色計は、黒色及び白色の較正標準を使用して較正し、較正は、緑色の較正プレートを使用して確認した。以下の設定を測定に使用した:選択した表色系はCIELabであり、インデックス設定はΔE*であり、光源はD65に設定し、観察者は10°に設定した。測定すべきヒドロゲルコンタクトレンズをパッケージング溶液から取り出し、軽くふき取って表面の水分を取り除き、白色のプラスチックボールマウント上に配置して、レンズの下に気泡が捕捉されないようにした。次いで、所定の位置にレンズを有するマウントを比色計のアパーチャに当てて保持し、測定を行った。この手順を10回繰り返し、平均読み取り値を計算した。透明なレンズを対照として使用し、0のa*値及び0のb*値を有するものとしての白色の背景上に透明なレンズを割り当てることによって、測色の読み取り値を正規化した。比較のために、識別着色料を有する標準的な市販のレンズも測定し、使用したレンズタイプは、Biofinity、MyDay、Acuvue Oasys、B+L Ultra、及びAlcon Dailies Total 1であった。CIELab L***値は、測定されたCIELab L**及びb*値から、標準的な変換式であるL8=L*、C*=(a2+b2)1/2、及びh°=arctan(b*/a*)を使用して計算した。
【0103】
レンズA~Lについてのレンズの色の結果は、表6に示されており、図1において、市販のレンズの値及び異なる濃度の赤色染料(染料1)又は紫色染料(染料2)のいずれかを有するレンズの値と一緒に、L***プロットとしてプロットされている。
【表6】

【0104】
図1及び表6から、青色遮断黄色染料RY86(着色剤1)のみを含有する例のレンズAは、図1の左上の領域にあり、強い黄色着色に対応することが分かる。また、図1に示されている2つの矢印から、唯一の着色剤としての赤色染料又は紫色染料のいずれかの量が増加していくレンズは、通常、反対方向、すなわち、色空間の右下の領域にさらに向かう傾向にあることも分かり、これは、適切な量のこれらの赤色染料及び紫色染料を添加することによって、青色遮断染料の黄色をバランス調整することが可能であることを示す。黄色染料RY86(第1の着色剤)と青色染料RB246(第2の着色剤)とを含んでいたレンズLも左上の象限にあり、強い緑色着色に対応する。レンズA~Jは、通常、プロットの中心の原点により近く、これは、色のレベルが比較的低いことを示す。市販のレンズはすべて、色のレベルが非常に低く、原点に近い。
レンズA~Lの視覚的評価は、レンズD、E、F、G、及びHが、灰色又は青色であり、本発明によるものであるのに対し、レンズA、B、C、I、J、K、及びLが、灰色又は青色ではなく、本発明によるものではないことを示した。レンズD、E、F、及びGは、外観がそれぞれ灰色であり、5.0未満の彩度(C*)値及び166度以下又は275度以上の色相(h*)値を有していた。青色であったレンズHは、166度超かつ275度未満の色相(h*)値及び5.0未満の彩度(C*)値を有していた。
【0105】
実施形態:
本発明の様々な実施形態は、以下に示されている通りである:
実施形態1) 1種以上のモノマーと、415nm~455nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する青色遮断着色剤である第1の着色剤と、470nm~600nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する重合性染料である第2の着色剤とを含み、かつ600nm超~800nmの範囲に吸収最大値を有する着色剤である第3の着色剤も含んでいてもよい重合性組成物であって、第2の着色剤及び存在する場合は第3の着色剤が、コンタクトレンズが無色、灰色又は青色になるように、第1の着色剤の色をバランス調整する、重合性組成物の重合から形成されたポリマーマトリックスを含む、コンタクトレンズ。
実施形態2) 第1の着色剤も重合性であり、ポリマーマトリックスが、1種以上のモノマーと、第1の着色剤と、第2の着色剤とを含む重合性組成物の重合から形成される、実施形態1に記載のコンタクトレンズ。
実施形態3) 第1の着色剤が重合性ではない、実施形態1又は2に記載のコンタクトレンズ。
実施形態4) 第2の着色剤がアントラキノン染料である、実施形態1~3のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
【0106】
実施形態5) 第2の着色剤が染料であり、発色団及び少なくとも1個の重合性基を含有し、ここで、各重合性基が、連結基によって発色団に接続されている、実施形態1~4のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
実施形態6) 第2の着色剤が式(1)の染料である、実施形態1~5のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
Ch-(L-Xmn (1)
(式中、Chは発色団であり、Lは連結基又はヘテロ原子であり、Xは重合性基であり、mは1~3であり、nは1~3である)
実施形態7) m=1であり、連結基Lが、-N(H)-R1-、-SR1-、又は-OR1-であり、式中、R1が、1個以上のヘテロ原子によって置換されていても又は置換されていなくてもよい二価ヒドロカルビレン基である、実施形態5又は6に記載のコンタクトレンズ。
実施形態8) 連結基Lが、C6-C14アリール基、C1-C20アルキル基、又はC7-C20アリールアルキル基を含む、実施形態5~7のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
実施形態9) 発色団Chが、-F、-Cl、-Br、-I、-OR2、-SR2、-R2、-NO2、-CN、-NCO、-NCS、-C(=O)R2、-C(=O)OR2、-NH2、-C(=O)NHR2、-C(=O)N(R22から選択される1~3個の置換基を含むことが好ましいアントラキノン発色団であり、式中、各R2が、独立的に、H又はC1-C20ヒドロカルビルである、実施形態1~8のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
【0107】
実施形態10) 第2の着色剤が式(2)による染料である、実施形態1~9のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
【化29】
(式中、0≦(a+b)≦3を前提として、a及びbは各々、0~3であり得、各Aは、-F、-Cl、-Br、-I、-OR2、-SR2、-R2、-NO2、-CN、-NCO、-NCS、-C(=O)R2、-C(=O)OR2、-NR2 2、-C(=O)NHR2、-C(=O)N(R22から独立的に選択され、式中、各R2は、独立的に、H又はC1-C20ヒドロカルビルであり、c及びdは各々、1≦(c+d)≦3を前提として、0~3であり得、Lは二価連結基であり、Xは重合性基である)
実施形態11) 第2の着色剤が式(3)又は式(4)による染料である、実施形態1~10のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
【化30】
実施形態12) 第2の着色剤が、500nm~600nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する、実施形態1~11のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
実施形態13) 第1の着色剤が、乾燥ベースで約20ppm~約1000ppmの量で存在し、及び/又は第2の着色剤が、乾燥ベースで約20ppm~約1000ppmの量で存在する、実施形態1~12のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
実施形態14) 第3の着色剤が、乾燥ベースで約20ppm~約300ppmの量で存在する、実施形態1~13のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
【0108】
実施形態15) 重合性組成物が、重合性組成物中のすべての重合性成分の総質量に基づいて、約20質量%~約60質量%の総量のシロキサンモノマーを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
実施形態16) 重合性組成物が、重合性組成物中のすべての重合性成分の総質量に基づいて、約20質量%~約60質量%の総量の親水性ビニル含有モノマーを含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
実施形態17) 親水性ビニル含有モノマーが、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(VMA)、又はN-ビニルピロリドン(NVP)、又はVMAとNVPとの両方の組合せである、実施形態16に記載のコンタクトレンズ。
実施形態18) 重合性組成物が、重合性組成物中のすべての重合性成分の総質量に基づいて、約20質量%までの量のアクリレート含有親水性モノマーを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
実施形態19) ヒドロゲルコンタクトレンズである、実施形態1~18のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
【0109】
実施形態20) シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである、実施形態1~19のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
実施形態21) 乾燥ベースで0.5質量%~2.0質量%のUV吸収化合物も含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
実施形態22) 第1の着色剤、第2の着色剤、及び存在する場合は第3の着色剤が、重合性組成物に可溶な染料である、実施形態1~21のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
実施形態23) 第1の着色剤、第2の着色剤、及び存在する場合は第3の着色剤が、それらがコンタクトレンズのオートクレーブ処理時に色又は色の強度を変化させないように、オートクレーブ安定性である、実施形態1~22のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
実施形態24) オートクレーブ処理中に色を実質的に変化させない、実施形態1~23のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
【0110】
実施形態25) BS EN ISO18369-3-2017の第4.8項によって測定して、少なくとも80%の可視光透過率を有する、実施形態1~24のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ。
実施形態26) ポリマーマトリックスと、415nm~455nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する青色遮断着色剤である第1の着色剤と、実施形態5~11のいずれか1つに記載の、470nm~600nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する重合性アントラキノン染料である第2の着色剤とを含む、コンタクトレンズ。
実施形態27) 1種以上のモノマーと、415nm~455nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する青色遮断着色剤である第1の着色剤と、470nm~600nmの範囲に吸収最大値(λmax)を有する重合性染料である第2の着色剤とを含み、かつ600nm超~800nmの範囲に吸収最大値を有する着色剤である第3の着色剤も含んでいてもよい重合性組成物であって、第2の着色剤及び存在する場合は第3の着色剤が、コンタクトレンズが無色、灰色又は青色になるように、第1の着色剤の色をバランス調整する、重合性組成物を鋳型内で重合して、ポリマーマトリックスを含むレンズ形状の重合生成物を形成するステップを含む、コンタクトレンズを製造する方法。
実施形態28) レンズ形状の重合生成物を水和してヒドロゲルコンタクトレンズを形成するステップも含む、実施形態27に記載の方法。
実施形態29) ヒドロゲルコンタクトレンズが、BS EN ISO18369-3-2017の第4.8項によって測定して、少なくとも80%の可視光透過率を有する、実施形態28に記載の方法。
【0111】
実施形態30) 重合生成物又はヒドロゲルコンタクトレンズを、パッケージング溶液を含有するパッケージに浸漬し、パッケージをシールし、シールされたパッケージを任意に滅菌するステップも含む、実施形態27~29のいずれか1つに記載の方法。
実施形態31) 重合性組成物が、重合性組成物中のすべての重合性成分の総質量に基づいて20ppm~1000ppmの第1の着色剤及び/又は重合性組成物中のすべての重合性成分の総質量に基づいて20ppm~1000ppmの第2の着色剤を含む、実施形態27~30のいずれか1つに記載の方法。
実施形態32) 第1の着色剤も重合性である、実施形態27~31のいずれか1つに記載の方法。
実施形態33) 重合性組成物が、重合性組成物中のすべての重合性成分の総質量に基づいて、0.5質量%~2.0質量%のUV吸収化合物も含む、実施形態27~32のいずれか1つに記載の方法。
実施形態34) 実施形態1~26のいずれか1つに記載のコンタクトレンズを製造する方法である、実施形態27~33のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
実施形態35) パッケージング溶液と実施形態1~26のいずれか1つに記載のコンタクトレンズ又は実施形態27~33のいずれか1つに記載の方法によって製造されたコンタクトレンズとを含有するシールされたパッケージを含む、パッケージ化されたコンタクトレンズ。
本発明を、多数の任意の特徴及び具体例を参照して先に説明した。先の説明に照らして、多くの変形形態が当業者に自明であろう。そのような明白な変形形態はすべて、完全に意図された特許請求の範囲内にある。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕1種以上のモノマーと、415nm~455nmの範囲に吸収最大値(λ max )を有する青色遮断着色剤である第1の着色剤と、470nm~600nmの範囲に吸収最大値(λ max )を有する重合性染料である第2の着色剤とを含み、かつ600nm超~800nmの範囲に吸収最大値を有する着色剤である第3の着色剤も任意に含んでいてもよい重合性組成物であって、前記第2の着色剤及び存在する場合は前記第3の着色剤が、コンタクトレンズが無色、灰色又は青色になるように、前記第1の着色剤の色をバランス調整する、重合性組成物の重合から形成されたポリマーマトリックスを含む、コンタクトレンズ。
〔2〕前記第2の着色剤がアントラキノン染料である、前記〔1〕に記載のコンタクトレンズ。
〔3〕前記第2の着色剤が染料であり、発色団及び少なくとも1個の重合性基を含有し、ここで、各重合性基が、連結基によって前記発色団に接続されている、前記〔1〕又は前記〔2〕に記載のコンタクトレンズ。
〔4〕前記第2の着色剤が式(1)の染料である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
Ch-(L-X m n (1)
(式中、Chは発色団であり、Lは連結基又はヘテロ原子であり、Xは重合性基であり、mは1~3であり、nは1~3である)
〔5〕m=1であり、前記連結基Lが、-N(H)-R 1 -、-SR 1 -、又は-OR 1 -であり、式中、R 1 が、1個以上のヘテロ原子によって置換されていても又は置換されていなくてもよい二価ヒドロカルビレン基である、前記〔4〕に記載のコンタクトレンズ。
〔6〕前記連結基Lが、C6-C14アリール基、C1-C20アルキル基、又はC7-C20アリールアルキル基を含む、前記〔4〕又は〔5〕に記載のコンタクトレンズ。
〔7〕前記発色団Chが、-F、-Cl、-Br、-I、-OR 2 、-SR 2 、-R 2 、-NO 2 、-CN、-NCO、-NCS、-C(=O)R 2 、-C(=O)OR 2 、-NH 2 、-C(=O)NHR 2 、-C(=O)N(R 2 2 から選択される1~3個の置換基を含むことが好ましいアントラキノン発色団であり、式中、各R 2 が、独立的に、H又はC1-C20ヒドロカルビルである、前記〔4〕~〔6〕いずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
〔8〕前記第2の着色剤が式(2)による染料である、前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
〔化1〕
(式中、0≦(a+b)≦3を前提として、a及びbは各々、0~3であり得、各Aは、-F、-Cl、-Br、-I、-OR 2 、-SR 2 、-R 2 、-NO 2 、-CN、-NCO、-NCS、-C(=O)R 2 、-C(=O)OR 2 、-NR 2 2 、-C(=O)NHR 2 、-C(=O)N(R 2 2 から独立的に選択され、式中、各R 2 は、独立的に、H又はC1-C20ヒドロカルビルであり、c及びdは各々、1≦(c+d)≦3を前提として、0~3であり得、Lは二価連結基であり、Xは重合性基である)
〔9〕前記第2の着色剤が式(3)又は式(4)による染料である、前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
〔化2〕
〔10〕前記第2の着色剤が、500nm~600nmの範囲に吸収最大値(λ max )を有する、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
〔11〕前記第1の着色剤が、乾燥ベースで約20ppm~約1000ppmの量で存在し、及び/又は前記第2の着色剤が、乾燥ベースで約20ppm~約1000ppmの量で存在する、前記〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
〔12〕前記第3の着色剤が、乾燥ベースで約20ppm~約300ppmの量で存在する、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
〔13〕前記重合性組成物が、前記重合性組成物中のすべての重合性成分の総質量に基づいて、約20質量%~約60質量%の総量のシロキサンモノマーを含む、前記〔1〕~〔12〕のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
〔14〕前記重合性組成物が、前記重合性組成物中のすべての重合性成分の総質量に基づいて、約20質量%~約60質量%の総量の親水性ビニル含有モノマーを含む、前記〔1〕~〔13〕のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
〔15〕ヒドロゲルコンタクトレンズである、前記〔1〕~〔14〕のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
〔16〕前記第1の着色剤、前記第2の着色剤、及び存在する場合は前記第3の着色剤が、それらが前記コンタクトレンズのオートクレーブ処理時に色又は色の強度を変化させないように、オートクレーブ安定性である、前記〔1〕~〔15〕のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ。
〔17〕1種以上のモノマーと、415nm~455nmの範囲に吸収最大値(λ max )を有する青色遮断着色剤である第1の着色剤と、470nm~600nmの範囲に吸収最大値(λ max )を有する重合性染料である第2の着色剤とを含み、かつ600nm超~800nmの範囲に吸収最大値を有する着色剤である第3の着色剤も任意に含んでいてもよい重合性組成物であって、前記第2の着色剤及び存在する場合は前記第3の着色剤が、コンタクトレンズが無色、灰色又は青色になるように、前記第1の着色剤の色をバランス調整する、重合性組成物を鋳型内で重合して、ポリマーマトリックスを含むレンズ形状の重合生成物を形成するステップを含む、コンタクトレンズを製造する方法。
〔18〕前記レンズ形状の重合生成物を水和してヒドロゲルコンタクトレンズを形成するステップも含む、前記〔17〕に記載の方法。
〔19〕前記重合生成物又は前記ヒドロゲルコンタクトレンズを、パッケージング溶液を含有するパッケージに浸漬し、前記パッケージをシールし、シールされたパッケージを任意に滅菌するステップも含む、前記〔17〕又は前記〔18〕に記載の方法。
〔20〕パッケージング溶液と前記〔1〕~〔16〕のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ又は前記〔17〕~〔19〕のいずれか1項に記載の方法によって製造されたコンタクトレンズとを含有するシールされたパッケージを含む、パッケージ化されたコンタクトレンズ。
図1
図2