(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】ウエハ載置台
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240704BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240704BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240704BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/31 C
H01L21/302 101G
H01L21/302 101R
C23C16/458
(21)【出願番号】P 2023523102
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2022038367
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 征樹
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊奈 友也
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-147549(JP,A)
【文献】特開2007-012795(JP,A)
【文献】特開2009-158829(JP,A)
【文献】特開2022-033183(JP,A)
【文献】特開2021-048243(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216797(WO,A1)
【文献】特開2012-134375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/31
H01L 21/3065
C23C 16/458
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に少なくともウエハ載置部を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの下面に接合され、冷媒流路を有する冷却プレートと、
を備えたウエハ載置台であって、
前記ウエハ載置台の内部のうち前記冷媒流路よりも上方に設けられたガス共通経路と、
前記冷却プレートの下面から前記ガス共通経路に至るガス導入経路と、
1つの前記ガス共通経路に対して複数設けられ、前記ガス共通経路から前記セラミックプレートの上面に至るガス分配経路と、
を備え、
前記ガス分配経路のうち前記セラミックプレートの最外周に配置されている最外周ガス分配経路は、平面視で前記冷媒流路と重ならない位置に設けられ
、
前記ガス共通経路は、同心円となるように複数設けられ、
前記最外周ガス分配経路は、複数の前記ガス共通経路のうち最外周に位置する前記ガス共通経路と接続されている、
ウエハ載置台。
【請求項2】
前記ガス分配経路は、ガス分岐部を介して前記ガス共通経路に接続されている、
請求項1に記載のウエハ載置台。
【請求項3】
前記ガス分配経路のうち少なくとも前記ガス共通経路と接続している部分は、前記ガス共通経路よりも幅が広い、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項4】
前記冷却プレートは、金属とセラミックとの複合材料で形成されている、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項5】
前記セラミックプレートの上面には、円形のウエハ載置部と、前記ウエハ載置部を取り囲む環状のフォーカスリング載置部とが設けられ、
前記最外周ガス分配経路は、前記ガス共通経路から前記フォーカスリング載置部に至る経路である、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項6】
前記セラミックプレートの上面には、円形のウエハ載置部が設けられ、
前記最外周ガス分配経路は、前記ガス共通経路から前記ウエハ載置部に至る経路である、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上面にウエハ載置部を有するセラミックプレートと、セラミックプレートの下面に接合された冷却プレートと、冷却プレートに設けられた冷媒流路とを備えたウエハ載置台が知られている。例えば、特許文献1のウエハ載置台では、冷却プレートの下面から導入されたガスは、冷媒流路の上方に設けられた平面視でC字状のガス共通経路から、このガス共通経路から半径外方向に延びる複数のガス分岐部を介して、セラミックプレートを上下方向に貫通するガス分配経路を通過してセラミックプレートの上面に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ウエハ載置台の使用時、ウエハ載置台の最外周に位置するガス分配経路に大きな応力が発生することがあるが、特許文献1ではこの点を考慮していないため、ウエハ載置台にクラックが発生するおそれがあった。特に、ハイパワープラズマを用いてウエハを処理する場合には、このようなクラックが発生しやすい。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ウエハ載置台にクラックが発生するのを防止することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明のウエハ載置台は、
上面に少なくともウエハ載置部を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの下面に接合され、冷媒流路を有する冷却プレートと、
を備えたウエハ載置台であって、
前記ウエハ載置台の内部のうち前記冷媒流路よりも上方に設けられたガス共通経路と、
前記冷却プレートの下面から前記ガス共通経路に至るガス導入経路と、
1つの前記ガス共通経路に対して複数設けられ、前記ガス共通経路から前記セラミックプレートの上面に至るガス分配経路と、
を備え、
前記ガス分配経路のうち前記セラミックプレートの最外周に配置されている最外周ガス分配経路は、平面視で前記冷媒流路と重ならない位置に設けられている、
ものである。
【0007】
このウエハ載置台では、ガス分配経路のうちセラミックプレートの最外周に配置されている最外周ガス分配経路は、平面視で冷媒流路と重ならない位置に設けられている。ウエハ載置台の使用時、ウエハ載置台の最外周では大きな応力が発生しやすい。最外周ガス分配経路が平面視で冷媒流路と重なっている場合には、冷媒流路の直上は厚みが薄くて変形しやすいため、最外周ガス分配経路付近でクラックが生じやすい。しかし、ここでは、最外周ガス分配経路が平面視で冷媒流路と重ならない位置に設けられているため、最外周ガス分配経路付近での応力が小さくなり、クラックの発生を防止することができる。
【0008】
なお、本明細書では、上下、左右、前後などを用いて本発明を説明することがあるが、上下、左右、前後は、相対的な位置関係に過ぎない。そのため、ウエハ載置台の向きを変えた場合には上下が左右になったり左右が上下になったりすることがあるが、そうした場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0009】
[2]上述したウエハ載置台(前記[1]に記載のウエハ載置台)において、前記ガス分配経路は、ガス分岐部を介して前記ガス共通経路に接続されていてもよい。こうすれば、例えば、平面視でガス共通経路からガス分岐部が冷媒流路を横切って冷媒流路と重ならない位置に至るようにすれば、ガス分配経路を比較的容易に冷媒流路と重ならない位置に設けることができる。
【0010】
[3]上述したウエハ載置台(前記[1]又は[2]に記載のウエハ載置台)において、前記ガス共通経路は、同心円となるように複数設けられていてもよく、前記最外周ガス分配経路は、複数の前記ガス共通経路のうち最外周に位置する前記ガス共通経路と接続されていてもよい。こうすれば、セラミックプレートの上面に開口するガス分配経路の数を増やすことができる。また、最外周に位置するガス共通経路と接続されているガス分配経路は大きな応力が発生しやすいため、本発明を適用する意義が高い。
【0011】
[4]上述したウエハ載置台(前記[1]~[3]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記ガス分配経路のうち少なくとも前記ガス共通経路と接続している部分は、前記ガス共通経路よりも幅が広くてもよい。この場合、ガス分配経路のうちガス共通経路と接続している幅の広い部分には比較的大きな応力が発生しやすいため、本発明を適用する意義が高い。
【0012】
[5]上述したウエハ載置台(前記[1]~[4]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記冷却プレートは、金属とセラミックとの複合材料で形成されていてもよい。こうした複合材料は比較的脆弱でありクラックが発生しやすい材料であるため、本発明を適用する意義が高い。
【0013】
[6]上述したウエハ載置台(前記[1]~[5]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記セラミックプレートの上面には、円形のウエハ載置部と、前記ウエハ載置部を取り囲む環状のフォーカスリング載置部とが設けられていてもよく、前記最外周ガス分配経路は、前記ガス共通経路から前記フォーカスリング載置部に至る経路であってもよい。
【0014】
[7]上述したウエハ載置台(前記[1]~[5]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記セラミックプレートの上面には、円形のウエハ載置部が設けられていてもよく、前記最外周ガス分配経路は、前記ガス共通経路から前記ウエハ載置部に至る経路であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図5】冷却プレート30のガス中継溝53d付近の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。
図1はウエハ載置台10の縦断面図(ウエハ載置台10の中心軸を含む面でウエハ載置台10を切断したときの断面図)、
図2は
図1のA-A断面図、
図3はウエハ載置台10の平面図、
図4は
図3の部分拡大図、
図5は冷却プレート30のガス中継溝53d付近の斜視図である。なお、
図2には、冷媒流路32以外の構成要素の図示を省略した。
【0017】
ウエハ載置台10は、ウエハWにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うために用いられるものである。ウエハ載置台10は、セラミックプレート20と、冷却プレート30と、金属接合層40とを備えている。
【0018】
セラミックプレート20は、アルミナ、窒化アルミニウムなどに代表されるセラミック材料で形成され、上面に円形のウエハ載置部22を有する。ウエハ載置部22には、ウエハWが載置される。ウエハ載置部22には、外縁に沿ってシールバンド22aが形成され、全面に複数の円形小突起22bが形成されている。シールバンド22a及び円形小突起22bは同じ高さであり、その高さは例えば数μm~数10μmである。電極23は、静電電極として用いられる平面状のメッシュ電極であり、直流電圧を印加可能となっている。この電極23に直流電圧が印加されるとウエハWは静電吸着力によりウエハ載置部22(具体的にはシールバンド22aの上面及び円形小突起22bの上面)に吸着固定され、直流電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置部22への吸着固定が解除される。なお、ウエハ載置部22のうちシールバンド22aや円形小突起22bの設けられていない部分を、基準面22cと称する。
図3には、ウエハ載置部22のうち1点鎖線で囲まれた領域に設けられた円形小突起22bを示したが、実際には円形小突起22bはウエハ載置部22のうちシールバンド22aで囲まれた領域の全面に設けられている。
【0019】
セラミックプレート20の上面には、ウエハ載置部22のほかに、ウエハ載置部22の周りに環状のフォーカスリング載置部24が設けられている。以下、フォーカスリングは「FR」と略すことがある。FR載置部24は、ウエハ載置部22よりも一段低くなっている。FR載置部24には、円環状のフォーカスリング60が載置される。フォーカスリング60の内側面の上方には、ウエハWと接触しないように円周溝60aが設けられている。FR載置部24は、環状の凹溝24aと、凹溝24aの内周側及び外周側に設けられたFR支持面24bとを有する。凹溝24aの深さは例えば数μm~数10μmである。FR支持面24bは、環状に形成された面であり、フォーカスリング60と直接接触してフォーカスリング60を支持する。
【0020】
冷却プレート30は、脆性な導電材料製の円板部材である。冷却プレート30は、内部に冷媒が循環可能な冷媒流路32を備えている。冷媒流路32は、
図2に示すように、平面視で一端(入口)から他端(出口)まで一筆書きの要領でセラミックプレート20の全面にわたるように設けられている。冷媒流路32は、本実施形態では平面視で渦巻き状に形成されている。こうした冷却プレート30は、例えば特許第5666748号公報を参考にして作製することができる。冷媒は、図示しない冷媒循環装置から冷媒流路32の一端(入口)に供給され、冷媒流路32を通過したあと冷媒流路32の他端(出口)から排出されて冷媒循環装置に戻る。冷媒循環装置は冷媒を所望の温度に調節することができる。冷媒は、液体が好ましく、電気絶縁性であることが好ましい。電気絶縁性の液体としては、例えばフッ素系不活性液体などが挙げられる。
【0021】
脆性な導電材料としては、金属とセラミックとの複合材料などが挙げられる。金属とセラミックとの複合材料としては、金属マトリックス複合材料(MMC)やセラミックマトリックス複合材料(CMC)などが挙げられる。こうした複合材料の具体例としては、Si,SiC及びTiを含む材料、SiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料、Al2O3とTiCとの複合材料などが挙げられる。Si,SiC及びTiを含む材料をSiSiCTiといい、SiC多孔質体にAlを含浸させた材料をAlSiCといい、SiC多孔質体にSiを含浸させた材料をSiSiCという。
【0022】
冷却プレート30に用いる導電材料としては、熱膨張係数がセラミックプレート20に近いものが好ましい。セラミックプレート20がアルミナ製の場合、冷却プレート30はSiSiCTi製かAlSiC製であることが好ましい。SiSiCTiやAlSiCの熱膨張係数は、アルミナの熱膨張係数と概ね同じにすることができるからである。SiSiCTi製の円板部材は、例えば以下のように作製することができる。まず、炭化珪素と金属Siと金属Tiとを混合して粉体混合物を作製する。次に、得られた粉体混合物を一軸加圧成形により円板状の成形体を作製し、その成形体を不活性雰囲気下でホットプレス焼結させることにより、SiSiCTi製の円板部材を得る。
【0023】
金属接合層40は、セラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面とを接合する。金属接合層40は、例えば、はんだや金属ロウ材で形成された層であってもよい。金属接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。
【0024】
ウエハ載置台10は、ガス供給経路51,52,53を有する。このうち、ガス供給経路51,52は、ウエハWとシールバンド22aと円形小突起22bと基準面22cとで囲まれた空間にガスを供給するための経路である。ガス供給経路53は、フォーカスリング60と凹溝24aとで囲まれた空間にガスを供給するための経路である。ガス供給経路51は、ガス導入経路51a、ガス共通経路51b、ガス分岐部51c、ガス中継溝51d及びガス分配経路51eで構成されている。ガス供給経路52は、ガス導入経路52a、ガス共通経路52b、ガス分岐部52c、ガス中継溝52d及びガス分配経路52eで構成されている。ガス供給経路53は、ガス導入経路53a、ガス共通経路53b、ガス分岐部53c、ガス中継溝53d及びガス分配経路53eで構成されている。
【0025】
ガス共通経路51b,52b,53bは、平面視で径の異なる同心円の円環状経路であり、ウエハ載置台10の内部のうち冷媒流路32よりも上方、本実施形態では、冷却プレート30と金属接合層40との界面、具体的には冷却プレート30の上面に形成されている。ガス共通経路51bが最内周に設けられ、ガス共通経路53bが最外周に設けられている。ガス導入経路51a,52a,53aは、冷却プレート30の下面から、冷媒流路32と交差しないようにガス共通経路51b,52b,53bのそれぞれに至るように設けられている。
【0026】
最外周のガス共通経路53bは、半径外方向に延び出した複数のガス分岐部53cを有する。それぞれのガス分岐部53cには、セラミックプレート20を上下方向に貫通するガス分配経路53eが接続されている。ガス分岐部53cとガス分配経路53eとの接続部分は、丸溝からなるガス中継溝53dとなっている。ガス中継溝53dの直径(幅)は、ガス分配経路53eの幅やガス共通経路53bの幅よりも大きく、例えばそれらの1.5~2.5倍である。最内周のガス共通経路51bも、ガス共通経路53bと同様、ガス分岐部51c及びガス中継溝51dを介して、ガス分配経路51eに接続されている。ガス共通経路52bも、ガス共通経路53bと同様、ガス分岐部52c及びガス中継溝52dを介して、ガス分配経路52eに接続されている。
【0027】
複数のガス分配経路51e,52e,53eのうちセラミックプレート20の最外周に配置されているガス分配経路53e(最外周ガス分配経路)は、
図3及び
図4に示すように、平面視で冷媒流路32と重ならない位置に設けられている。ガス中継溝53dも平面視で冷媒流路32と重ならない位置に設けられている。平面視で冷媒流路32と重ならない位置は、冷却プレート30の厚みが厚い。そのため、その位置に径の大きなガス中継溝53dが設けられていても、ガス中継溝53dに生じる応力を小さく抑えることができる。これに対して、平面視で冷媒流路32と重なる位置は、冷却プレート30の厚みが薄い。そのため、その位置にガス中継溝53dを設けたとすると、ガス中継溝53dに大きな応力が発生する。
【0028】
ガス中継溝51d,52dに生じる応力は、最外周に設けられたガス中継溝53dに比べると小さい。そのため、ガス中継溝51d,52dやガス分配経路51e,52eは、平面視で冷媒流路32と重なる位置に設けても構わないが、冷媒流路32と重ならない位置に設けることが好ましい。また、ガス共通経路51b,52b,53bは、幅が狭いため、平面視で冷媒流路32と重なる位置に設けても構わないが、冷媒流路32と重ならない位置に設けることが好ましい。
【0029】
次に、ウエハ載置台10の使用例について説明する。半導体プロセス用のチャンバ(図示せず)の内部に、ウエハ載置台10を固定する。FR載置部24には、フォーカスリング60が載置され、ウエハ載置部22には、ウエハWが載置される。この状態で、電極23に直流電圧を印加してウエハWをウエハ載置部22に吸着させる。それと共に、ガス供給経路51,52,53にガス(ここではHeなどの熱伝導ガス)を供給する。これにより、ウエハWとセラミックプレート20の上面との熱伝導やフォーカスリング60とセラミックプレート20の上面との熱伝導が良好になる。そして、チャンバの内部を所定の真空雰囲気(又は減圧雰囲気)になるように設定し、チャンバの天井部に設けられたシャワーヘッドからプロセスガスを供給しながら、冷却プレート30にRF電圧を印加する。すると、ウエハWとシャワーヘッドとの間でプラズマが発生する。そして、そのプラズマを利用してウエハWにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。なお、ウエハWがプラズマ処理されるのに伴ってフォーカスリング60も消耗するが、フォーカスリング60はウエハWに比べて厚いため、フォーカスリング60の交換は複数枚のウエハWを処理したあとに行われる。
【0030】
ハイパワープラズマでウエハWを処理する場合には、ウエハWを効率的に冷却する必要がある。ウエハ載置台10では、セラミックプレート20と冷却プレート30との接合層として、熱伝導率の低い樹脂層ではなく、熱伝導率の高い金属接合層40を用いている。そのため、ウエハWから熱を引く能力(抜熱能力)が高い。また、セラミックプレート20と冷却プレート30との熱膨張差は小さいため、金属接合層40の応力緩和性が低くても、支障が生じにくい。更に、セラミックプレート20の上面が高温、下面が冷却されて低温になるため、セラミックプレート20の上面の方が延びやすく、ウエハ載置台10が上に向かって凸になりやすい。そのため、ウエハ載置台10の最外周では変形が大きくなり、応力が発生しやすい。本実施形態では、最外周のガス分配経路53eが平面視で冷媒流路32と重ならない位置(冷却プレート30の厚みの厚い位置)に設けられているため、このガス分配経路53e付近での応力が小さくなる。
【0031】
以上説明したウエハ載置台10では、セラミックプレート20の最外周に配置されているガス分配経路53eは、平面視で冷媒流路32と重ならない位置に設けられている。ウエハ載置台10の使用時、ウエハ載置台10の最外周では大きな応力が発生しやすい。最外周のガス分配経路53eが平面視で冷媒流路32と重なっている場合には、冷媒流路32の直上は冷却プレート30の厚みが薄くて変形しやすいため、ガス分配経路53e付近でクラックが生じやすい。しかし、本実施形態では、ガス分配経路53eが平面視で冷媒流路32と重ならない位置(冷却プレート30の厚みが厚い位置)に設けられているため、ガス分配経路53e付近での応力が小さくなり、クラックの発生を防止することができる。
【0032】
また、最外周のガス分配経路53eのうちガス共通経路53bのガス分岐部53cと接続しているガス中継溝53dの直径(幅)は、ガス共通経路53bの幅やガス分岐部53cの幅よりも大きい。そのため、ガス中継溝53dには比較的大きな応力が発生しやすいが、本発明を適用することにより応力を小さく抑えることができる。
【0033】
更に、最外周のガス分配経路53eは、半径方向に延びるガス分岐部53cを介してガス共通経路53bに接続されている。そのため、ガス共通経路53bの近くに冷媒流路32が設けられている場合であっても、平面視でガス分岐部53cが冷媒流路32を横切って冷媒流路32と重ならない位置に至ることで、ガス分配経路53e及びガス中継溝53dを比較的容易に冷媒流路32と重ならない位置に設けることができる。
【0034】
更にまた、ガス共通経路51b、52b、53bは同心円となるように設けられており、それぞれ複数のガス分配経路51e,52e,53eに接続されているため、セラミックプレート20の上面の多くの位置からガスを供給することができる。また、最外周に位置するガス共通経路53bと接続されているガス分配経路53eは大きな応力が発生しやすいため、本発明を適用する意義が高い。
【0035】
そしてまた、冷却プレート30は、金属とセラミックとの複合材料で形成されている。こうした複合材料は比較的脆弱でありクラックが発生しやすい材料であるため、本発明を適用する意義が高い。
【0036】
そして更に、セラミックプレート20の上面には、円形のウエハ載置部22と、ウエハ載置部22を取り囲む環状のFR載置部24とが設けられており、最外周のガス分配経路53eは、ガス共通経路53bからFR載置部24に至る経路である。このようなFR載置部24を備えたセラミックプレート20では、FR載置部24にガスを供給する経路が最外周になる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0038】
上述した実施形態では、ガス共通経路53bから半径外方向に延びるガス分岐部53cを介してガス共通経路53bとガス分配経路53e(ガス中継溝53d)とを接続したが、特にこれに限定されない。例えば、
図6に示すように、円環状のガス共通経路53bから半径内方向に延びるガス分岐部53cを介して、ガス共通経路53bとガス分配経路53e(ガス中継溝53d)とを接続してもよい。この場合も、ガス分配経路53e(ガス中継溝53d)は平面視で冷媒流路32と重ならない位置に設けられている。あるいは、
図7に示すように、平面視で円環状のガス共通経路53bの少なくとも一部を冷媒流路32と重ならない位置に設け、そこにガス中継溝53d及びガス分配経路53eを直接接続してもよい。
図6及び
図7では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。
【0039】
上述した実施形態では、セラミックプレート20の上面は、ウエハ載置部22とFR載置部24とを有するものを例示したが、特にこれに限定されない。例えば、
図8に示すウエハ載置台110のように、セラミックプレート20の上面は、ウエハ載置部22を有するがFR載置部を有さないものとしてもよい。ウエハ載置台110は2つのガス供給経路51,52を有する。ガス供給経路51は、上述した実施形態と同様、ガス導入経路51a、ガス共通経路51b、ガス分岐部51c、ガス中継溝51d及びガス分配経路51eで構成されている。ガス供給経路52も、上述した実施形態と同様、ガス導入経路52a、ガス共通経路52b、ガス分岐部52c、ガス中継溝52d及びガス分配経路52eで構成されている。但し、ここではガス分配経路52eが最外周ガス分配経路となるため、ガス分配経路52e及びガス中継溝52dが平面視で冷媒流路32と重ならない位置に設けられている。こうすることにより、ウエハ載置台110にクラックが発生するのを防止することができる。
図8では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。
【0040】
上述した実施形態では、ガス共通経路51b,52b,53b、ガス分岐部51c,52c,53c及びガス中継溝51d,52d,53dを、冷却プレート30と金属接合層40との界面(具体的には冷却プレート30の上面)に設けたが、特にこれに限定されない。例えば、ガス共通経路51b,52b,53b、ガス分岐部51c,52c,53c及びガス中継溝51d,52d,53dを、金属接合層40に設けてもよいし、セラミックプレート20と金属接合層40との界面(具体的にはセラミックプレート20の下面)に設けてもよい。
【0041】
上述した実施形態では、ガス共通経路51b,52b,53bの形状を平面視で円環状としたが、特にこれに限定されない。例えば、これらのガス共通経路51b,52b,53bの形状を平面視で円弧状(例えばC字状)としてもよいし、直線状としてもよいし、折れ線状(例えば多角形の辺に沿った形状)としてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、ガス共通経路51b,52b,53bのそれぞれにガス導入経路51a,52a,53aを1本ずつ接続したが、特にこれに限定されない。例えば、ガス共通経路51b,52b,53bのそれぞれにガス導入経路51a,52a,53aを複数本ずつ接続してもよい。但し、その本数は、1つのガス共通経路に接続されるガス分配経路の数よりも少ない方が好ましい。
【0043】
上述した実施形態では、冷媒流路32を平面視で渦巻き状に形成したが、特にこれに限定されない。例えば、冷媒流路32を平面視でジグザグ状に形成してもよい。
【0044】
上述した実施形態では、冷却プレート30を金属とセラミックとの複合材料で作製したが、それ以外の材料(例えばアルミやアルミ合金など)で作製してもよい。
【0045】
上述した実施形態において、セラミックプレート20に内蔵される電極23として、静電電極を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、電極23に代えて又は加えて、セラミックプレート20にヒータ電極(抵抗発熱体)を内蔵してもよいし、RF電極を内蔵してもよい。
【0046】
上述した実施形態では、セラミックプレート20と冷却プレート30とを金属接合層40で接合したが、金属接合層40の代わりに樹脂接着層を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えばウエハをプラズマ処理する装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
10,110 ウエハ載置台、20 セラミックプレート、22 ウエハ載置部、22a シールバンド、22b 円形小突起、22c 基準面、23 電極、24 FR載置部、24a 凹溝、24b フォーカスリング支持面、30 冷却プレート、32 冷媒流路、40 金属接合層、51,52,53 ガス供給経路、51a,52a,53a ガス導入経路、51b,52b,53b ガス共通経路、51c,52c,53c ガス分岐部、51d,52d,53d ガス中継溝、51e,52e,53e ガス分配経路、60 フォーカスリング、60a 円周溝、W ウエハ。
【要約】
ウエハ載置台10は、上面に少なくともウエハ載置部22を有するセラミックプレート20と、セラミックプレート20の下面に接合され、冷媒流路32を有する冷却プレート30と、冷媒流路32よりも上方に設けられたガス共通経路51b,52b,53bと、冷却プレート30の下面からガス共通経路51b,52b,53bのそれぞれに至るガス導入経路51a,52a,53aと、ガス共通経路51b,52b,53bのぞれぞれに対して複数設けられたガス分配経路51e,52e,53eとを備えている。セラミックプレート20の最外周に配置されているガス分配経路53eは、平面視で冷媒流路32と重ならない位置に設けられている。