IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本碍子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-半導体製造装置用部材 図1
  • 特許-半導体製造装置用部材 図2
  • 特許-半導体製造装置用部材 図3
  • 特許-半導体製造装置用部材 図4
  • 特許-半導体製造装置用部材 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240704BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/302 101G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023523240
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2022041481
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 征樹
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 太朗
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-34412(JP,A)
【文献】特開2017-126641(JP,A)
【文献】特開2019-197830(JP,A)
【文献】特表2017-538278(JP,A)
【文献】特開2013-214606(JP,A)
【文献】特開2008-103713(JP,A)
【文献】国際公開第2018/038044(WO,A1)
【文献】特表2013-529390(JP,A)
【文献】特開2011-159678(JP,A)
【文献】特開2010-186765(JP,A)
【文献】特開2021-197406(JP,A)
【文献】特開2004-6813(JP,A)
【文献】特開2002-9064(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0411354(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック材料で形成され、上面にウエハ載置部を有するセラミックプレートと、
複合材料で形成され、前記セラミックプレートの下面に接合されたコンポジットプレートと、
金属材料で形成され、前記コンポジットプレートの下面に設けられ、冷媒流路を備えた冷却プレートと、
前記コンポジットプレートと前記冷却プレートとを締結する第1締結具と、
絶縁材料で形成され、前記冷却プレートの下面を支持する支持プレートと、
前記冷却プレートと前記支持プレートとを締結する第2締結具と、
を備え、
前記セラミックプレートが常温から高温になったとき、前記セラミックプレートと前記コンポジットプレートとの積層体は中央が凸になるように変形し、前記第1締結具を介して締結された前記冷却プレートと前記支持プレートとの積層体も中央が凸になるように変形する、
半導体製造装置用部材。
【請求項2】
前記コンポジットプレートの熱膨張係数は、前記セラミックプレートの熱膨張係数と実質同じであり、
前記冷却プレートの熱膨張係数は、前記支持プレートの熱膨張係数よりも小さい、
請求項1に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項3】
前記コンポジットプレートの熱膨張係数と前記セラミックプレートの熱膨張係数との差の絶対値は、1×10-6/K以下であり、
前記冷却プレートの熱膨張係数は、前記支持プレートの熱膨張係数に比べて1×10-6/K以上3×10-6/K以下の範囲で小さい、
請求項2に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項4】
前記第2締結具は、径の異なる2以上の同心円のそれぞれに沿って複数設けられている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項5】
前記セラミック材料は、アルミナであり、
前記複合材料は、SiSiCTiであり、
前記金属材料は、モリブデンであり、
前記絶縁材料は、アルミナである、
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項6】
前記第1締結具は、チタン製である、
請求項5に記載の半導体製造装置用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電チャックアセンブリが知られている。例えば、特許文献1には、上部パックプレートと下部パックプレートとが結合されたパックと、下部パックプレートの下面に設けられた冷却プレートと、下部パックプレートと冷却プレートとを締結する締結具とを備えた静電チャックアセンブリが記載されている。静電チャックアセンブリは、取付プレートの上に取り付けられている。上部パックプレートとしては、セラミックプレートが例示され、下部パックプレートとしては、導電性金属マトリクス複合材料(MMC)のプレートつまりコンポジットプレートが例示され、冷却プレートとしては、金属プレートが例示されている。また、下部パックプレート用のMMC材料は、動作温度範囲にわたって、上部パックプレートの熱膨張係数(CTE)と実質的に一致するように選択されることが記載されている。更に、冷却プレートのCTEをパックのCTEと一致させることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-119820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、上部パックプレートが常温から高温(例えば、180~220℃)になったとき、上部パックプレートと下部パックプレートとの積層体であるパックは中央が凸になるように変形するのに対し、取付プレートに取り付けられている冷却プレートは中央が凹むことがあった。その場合、下部パックプレートが締結具によって下方に引っ張られて下部パックプレートが破損するおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、コンポジットプレートが破損するのを防止することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の半導体製造装置用部材は、
セラミック材料で形成され、上面にウエハ載置部を有するセラミックプレートと、
複合材料で形成され、前記セラミックプレートの下面に接合されたコンポジットプレートと、
金属材料で形成され、前記コンポジットプレートの下面に設けられ、冷媒流路を備えた冷却プレートと、
前記コンポジットプレートと前記冷却プレートとを締結する第1締結具と、
絶縁材料で形成され、前記冷却プレートの下面を支持する支持プレートと、
前記冷却プレートと前記支持プレートとを締結する第2締結具と、
を備え、
前記セラミックプレートが常温から高温になったとき、前記セラミックプレートと前記コンポジットプレートとの積層体は中央が凸になるように変形し、前記第1締結具を介して締結された前記冷却プレートと前記支持プレートとの積層体も中央が凸になるように変形する、
ものである。
【0007】
この半導体製造装置用部材では、セラミックプレートが常温から高温になったとき、セラミックプレートとコンポジットプレートとの積層体は中央が凸になるように(つまり中央が盛り上がるように)変形する。また、第1締結具を介して締結された冷却プレートと支持プレートとの積層体も中央が凸になるように変形する。そのため、コンポジットプレートが締結具によって下方に引っ張られるのを抑制することができ、コンポジットプレートが破損するのを防止することができる。
【0008】
なお、本明細書では、上下、左右、前後などを用いて本発明を説明することがあるが、上下、左右、前後は、相対的な位置関係に過ぎない。そのため、半導体製造装置用部材の向きを変えた場合には上下が左右になったり左右が上下になったりすることがあるが、そうした場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0009】
[2]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記コンポジットプレートの熱膨張係数(CTE)は、前記セラミックプレートのCTEと実質同じであってもよく、前記冷却プレートのCTEは、前記支持プレートのCTEより小さくてもよい。こうすれば、セラミックプレートが常温から高温になったとき、セラミックプレートとコンポジットプレートとの積層体は中央が凸になるように変形し、第1締結具を介して締結された冷却プレートと支持プレートとの積層体も中央が凸になるように変形する。なお、本明細書では、CTEは20~200℃の値とする。
【0010】
[3]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]又は[2]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記コンポジットプレートのCTEと前記セラミックプレートのCTEとの差の絶対値は、1×10-6/K以下であってもよく、前記冷却プレートのCTEは、前記支持プレートのCTEに比べて1×10-6/K以上3×10-6/K以下の範囲で小さくてもよい。
【0011】
[4]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]~[3]のいずれかに記載の半導体製造装置用部材)において、前記第2締結具は、径の異なる2以上の同心円のそれぞれに沿って複数設けられていてもよい。この場合、冷却プレートの下面が支持プレートに強く拘束されるため、支持プレート及び冷却プレートの一方の変形が他方に大きな影響を与える。
【0012】
[5]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]~[4]のいずれかに記載の半導体製造装置用部材)において、前記セラミック材料は、アルミナであってもよく、前記複合材料は、SiSiCTiであってもよく、前記金属材料は、モリブデンであってもよく、前記絶縁材料は、アルミナであってもよい。このような材料の組合せを選択すれば、本発明の効果を得やすくなる。
【0013】
[6]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]~[5]のいずれかに記載の半導体製造装置用部材)において、前記第1締結具は、チタン製であってもよい。こうすれば、コンポジットプレートのうち第1締結具で締結されている箇所に発生する応力をより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】半導体製造装置用部材10の縦断面図。
図2】半導体製造装置用部材10の平面図。
図3】半導体製造装置用部材10の底面図。
図4】セラミックプレート20が常温から高温になったときの半導体製造装置用部材10の様子を示す模式図。
図5】セラミックプレート20が常温から高温になったときの半導体製造装置用部材110の様子を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。図1は半導体製造装置用部材10の縦断面図(セラミックプレート20の中心軸を含む面で半導体製造装置用部材10を切断したときの断面図)、図2は半導体製造装置用部材10の平面図、図3は半導体製造装置用部材10の底面図である。
【0016】
半導体製造装置用部材10は、ウエハWにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うために用いられるものである。半導体製造装置用部材10は、セラミックプレート20と、コンポジットプレート30と、冷却プレート50と、第1締結具60と、支持プレート70と、第2締結具80とを備えている。
【0017】
セラミックプレート20は、アルミナ、窒化アルミニウムなどに代表されるセラミック材料で形成された円板部材であり、上面にウエハ載置部22を有する。ウエハ載置部22には、ウエハWが載置される。ウエハ載置部22には、図2に示すように、外縁に沿ってシールバンド22aが形成され、シールバンド22aに囲まれた領域の全面に複数の円形小突起22bが形成されている。シールバンド22a及び円形小突起22bは同じ高さであり、その高さは例えば数μm~数10μmである。なお、ウエハ載置部22のうちシールバンド22aや円形小突起22bの設けられていない部分を、基準面22cと称する。
【0018】
静電電極23は、セラミックプレート20の上面のほぼ全体に対応する領域に埋設された平面状のメッシュ電極であり、直流電圧を印加可能となっている。静電電極23に直流電圧が印加されると、ウエハWは静電吸着力によりウエハ載置部22(具体的にはシールバンド22aの上面及び円形小突起22bの上面)に吸着固定され、直流電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置部22への吸着固定が解除される。ヒータ電極24は、セラミックプレート20の上面のほぼ全体に対応する領域に、一端から他端まで一筆書きの要領で形成されたヒータ線(抵抗発熱体)である。ヒータ電極24のヒータ線に電流を流すとヒータ線が発熱してウエハWが加熱される。静電電極23やヒータ電極24を形成する材料としては、例えば、タングステン、モリブデン、炭化タングステン、炭化モリブデン及びそれらとセラミック粉末との混合物などが挙げられる。
【0019】
コンポジットプレート30は、金属とセラミックとの複合材料で形成された円板部材であり、セラミックプレート20の下面に金属接合層40を介して接合されている。コンポジットプレート30のCTEは、セラミックプレート20のCTEと実質同じである。例えば、両者のCTEの差の絶対値は1×10-6/K以下が好ましく、0.5×10-6/K以下がより好ましい。金属とセラミックとの複合材料としては、金属マトリックス複合材料(MMC)やセラミックマトリックス複合材料(CMC)などが挙げられる。こうした複合材料の具体例としては、Si,SiC及びTiを含む材料、SiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料、Al23とTiCとの複合材料などが挙げられる。Si,SiC及びTiを含む材料をSiSiCTiといい、SiC多孔質体にAlを含浸させた材料をAlSiCといい、SiC多孔質体にSiを含浸させた材料をSiSiCという。
【0020】
コンポジットプレート30に用いる複合材料としては、CTEがセラミックプレート20のCTEに近いものが好ましい。セラミックプレート20がアルミナ製の場合、コンポジットプレート30はSiSiCTi製であることが好ましい。SiSiCTiのCTEは、アルミナのCTEと概ね同じにすることができるからである。SiSiCTi製の円板部材は、例えば以下のように作製することができる。まず、炭化珪素と金属Siと金属Tiとを混合して粉体混合物を作製する。次に、得られた粉体混合物を一軸加圧成形により円板状の成形体を作製し、その成形体を不活性雰囲気下でホットプレス焼結させることにより、SiSiCTi製の円板部材を得る。
【0021】
金属接合層40は、セラミックプレート20の下面とコンポジットプレート30の上面とを接合する。金属接合層40は、例えば、はんだや金属ロウ材で形成された層であってもよい。金属接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。
【0022】
セラミックプレート20とコンポジットプレート30とを金属接合層40を介して接合した積層体を、第1積層体L1と称する。
【0023】
冷却プレート50は、金属材料で形成された円板部材であり、コンポジットプレート30の下面に放熱シート12を介して取り付けられている。冷却プレート50は、冷媒が循環可能な冷媒流路52を備えている。冷媒流路52は、図2に示すように、平面視で一端(入口)から他端(出口)まで一筆書きの要領でセラミックプレート20の全面にわたるように設けられている。冷媒流路52は、本実施形態では平面視で渦巻き状に形成されている。冷媒は、図示しない冷媒循環装置から冷媒流路52の一端(入口)に供給され、冷媒流路52を通過したあと冷媒流路52の他端(出口)から排出されて冷媒循環装置に戻る。冷媒循環装置は冷媒を所望の温度に調節することができる。冷媒は、液体が好ましく、電気絶縁性であることが好ましい。電気絶縁性の液体としては、例えばフッ素系不活性液体などが挙げられる。
【0024】
放熱シート12は、コンポジットプレート30と冷却プレート50との間に挟まれて上下方向に圧縮されている。放熱シート12は、具体的には、カーボン及び樹脂を含むシートであることが好ましい。カーボンとしては、グラファイトやカーボンファイバー、カーボンナノチューブなどが挙げられ、樹脂としては、シリコーン樹脂などが挙げられる。カーボンがグラファイトの場合、グラファイトを構成するグラフェンの面方向が上下方向に沿うように配置するのが好ましく、カーボンファイバーやカーボンナノチューブの場合、軸方向が上下方向に沿うように配置するのが好ましい。放熱シート12の材料としては、例えばサーマル・インタフェース・マテリアル(TIM)を用いることができる。放熱シート12の具体例としては、EX20000C9シリーズやEX20000C4Sシリーズ(いずれもデクセリアルズ社製)、GraphitePADやGraphiteTIM(登録商標)(いずれもパナソニック社製)などが挙げられる。なお、放熱シート12の外周にシールリング(Oリング)を配置してもよい。
【0025】
第1締結具60は、雄ネジ62と雌ネジ64で構成されている。雄ネジ62は、ネジ足部62aと、ネジ足部62aよりも径の大きなネジ頭部62bとを有する。ネジ足部62aは、冷却プレート50の下面から冷却プレート50を上下方向に貫通する貫通穴54及び放熱シート12の丸穴14を通ってコンポジットプレート30の下面に設けられた雌ネジ64に螺合されている。雌ネジ64は、コンポジットプレート30に直接設けられていてもよいし、コンポジットプレート30に嵌め込んだネジ付きインサートであってもよい。ネジ頭部62bは、冷却プレート50の下面に設けられた凹部54aに収納されている。凹部54aは、貫通穴54のうち冷却プレート50の下面に開口する大径の開口部である。貫通穴54は、冷却プレート50の冷媒流路52を避けるように設けられている。第1締結具60は、互いに径の異なる2以上の同心円のそれぞれに沿って複数設けられている。ここでは、図3に示すように、第1締結具60は、冷却プレート50と同心円で互いに径の異なる2つの円のうち、大円C1に沿って等間隔に複数(8個とか12個)設けられると共に、小円C2に沿って等間隔に複数(6個とか8個)設けられている。雄ネジ62は、ステンレス鋼やチタンなどの金属で形成されていてもよく、チタンで形成されていることが好ましい。
【0026】
支持プレート70は、絶縁材料で形成された円環部材であり、冷却プレート50の下面を支持する。支持プレート70は、半導体プロセス用のチャンバを構成する部材である。支持プレート70の中央の円形穴72は、静電電極23やヒータ電極24に給電する部材等を挿通するのに用いられる。絶縁材料としては、例えばアルミナ、窒化アルミニウムなどのセラミック材料を用いることができる。
【0027】
冷却プレート50のCTEは、支持プレート70のCTEよりも小さい。冷却プレート50のCTEは、支持プレート70のCTEよりも1×10-6/K以上3×10-6/K以下小さいことが好ましい。例えば、支持プレート70がアルミナ製の場合、冷却プレート50はモリブデン製であることが好ましい。また、冷却プレート50のCTEは、セラミックプレート20やコンポジットプレート30のCTEと近いこと(たとえばCTE差が3×10-6/K以下であること)が好ましい。
【0028】
第2締結具80は、雄ネジ82と雌ネジ84で構成されている。雄ネジ82は、ネジ足部82aと、ネジ足部82aよりも径の大きなネジ頭部82bとを有する。ネジ足部82aは、支持プレート70の下面から支持プレート70を上下方向に貫通する貫通穴74を通って冷却プレート50の下面に設けられた雌ネジ84に螺合されている。雌ネジ84は、冷却プレート50に直接設けられていてもよいし、冷却プレート50に嵌め込んだネジ付きインサートであってもよい。ネジ頭部82bは、支持プレート70の下面(貫通穴74の開口縁)に接している。第2締結具80は、互いに径の異なる2以上の同心円のそれぞれに沿って複数設けられている。ここでは、図3に示すように、第2締結具80は、支持プレート70と同心円で互いに径の異なる2つの円のうち、大円C3に沿って等間隔に複数(8個とか12個)設けられると共に、小円C4に沿って等間隔に複数(6個とか8個)設けられている。雄ネジ82は、ステンレス鋼やチタンなどの金属で形成することができる。
【0029】
冷却プレート50と支持プレート70とを第2締結具80を介して締結した積層体を、第2積層体L2と称する。
【0030】
各部材の材料の組合せとしては、セラミックプレート20の材料をアルミナ(CTEは6~7×10-6/K)、コンポジットプレート30の材料をSiSiCTi(CTEは7×10-6/K)、冷却プレート50の材料をモリブデン(CTEは5×10-6/K)、支持プレート70の材料をアルミナ(CTEは6~7×10-6/K)、第1締結具60の材料をチタン(CTEは8.8×10-6/K)とするのが好ましい。
【0031】
次に、半導体製造装置用部材10の使用例について説明する。半導体製造装置用部材10は、半導体プロセス用のチャンバ(図示せず)の内部に配置される。支持プレート70は、チャンバを構成する部材である。ウエハ載置部22には、ウエハWが載置される。この状態で、静電電極23に直流電圧を印加してウエハWをウエハ載置部22に吸着させる。それと共に、ヒータ電極24に電流を流してウエハWを所定温度(例えば100℃)まで昇温する。そして、チャンバの内部を所定の真空雰囲気(又は減圧雰囲気)になるように設定し、チャンバの天井部に設けられたシャワーヘッド(図示せず)からプロセスガスを供給しながら、冷却プレート50にRF電圧を印加する。すると、ウエハWとシャワーヘッドとの間でプラズマが発生する。そして、そのプラズマを利用してウエハWにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。ウエハWにはプラズマからの入熱があるため、冷媒流路52に低温(例えば-30℃)の冷媒を流しつつ、必要に応じてヒータ電極24への電力を調整して、ウエハWの温度が所定温度になるように制御する。
【0032】
半導体製造装置用部材10は、常温(室温)で第1積層体L1と第2積層体L2とを第1締結具60を介して締結した後、常温で冷却プレート50と支持プレート70とを第2締結具80を介して締結することにより、完成させたものである。そのため、常温では、第1積層体L1も第2積層体L2もフラットになっている。
【0033】
ウエハ載置部22に載置されたウエハW及びセラミックプレート20が常温から所定温度(例えば100℃)に昇温されると共に、冷媒流路52に低温(例えば-30℃)の冷媒が流されると、第1積層体L1のうちセラミックプレート20は高温になり、コンポジットプレート30は低温になる。セラミックプレート20のCTEとコンポジットプレート30のCTEは実質同じであるが、両者は温度が異なるため、セラミックプレート20の方がコンポジットプレート30に比べて大きく膨張する。その結果、第1積層体L1は中央が凸になるように変形する。一方、第2積層体L2は全体に低温になる。冷却プレート50のCTEは支持プレート70のCTEよりも小さいため、支持プレート70の方が冷却プレート50に比べて大きく収縮する。その結果、第2積層体L2も中央が凸になるように変形する。このときの様子を図4に示す。ウエハWを所定温度から降温するときも、第1積層体L1及び第2積層体L2はいずれも中央が凸になるように変形する。このように第1積層体L1及び第2積層体L2はいずれも中央が凸になるように変形するため、第1締結具60の雄ネジ62がコンポジットプレート30の雌ネジ64を下方に強く引っ張ることはない。
【0034】
図5に示す半導体製造装置用部材110は、冷却プレート50の代わりに、CTEが支持プレート70のCTEよりも大きい冷却プレート150を用いた例(例えば支持プレート70がアルミナ製で冷却プレート150がアルミニウム合金(A6061)製)である。この例では、ウエハ載置部22に載置されたウエハW及びセラミックプレート20が常温から所定温度に昇温されると共に、冷媒流路52に低温の冷媒が流されると、第1積層体L1は中央が凸になるように変形する。一方、第2積層体L3(第2締結具80を介して締結された冷却プレート150と支持プレート70との積層体)は全体に低温になる。このとき、冷却プレート50のCTEは支持プレート70のCTEよりも大きいため、冷却プレート150の方が支持プレート70に比べて大きく収縮する。その結果、第2積層体L3は中央が凹むように変形する。このときの様子を図5に示す。この場合、第1締結具60の雄ネジ62がコンポジットプレート30の雌ネジ64を下方に強く引っ張ることになる。そのため、コンポジットプレート30は破損するおそれがある。
【0035】
また、冷却プレート50のCTEが支持プレート70のCTEと等しい場合、第1積層体L1は中央が凸になるように変形するのに対して、第2積層体L2はフラットになる。この場合も、第1締結具60の雄ネジ62がコンポジットプレート30の雌ネジ64を下方に強く引っ張ることになり、コンポジットプレート30は破損するおそれがある。
【0036】
以上説明した半導体製造装置用部材10では、セラミックプレート20が常温から高温(例えば、180~220℃)になったとき、セラミックプレート20とコンポジットプレート30との積層体(第1積層体L1)は中央が凸になるように変形する。また、第1締結具60を介して締結された冷却プレート50と支持プレート70との積層体(第2積層体L2)も中央が凸になるように変形する。そのため、コンポジットプレート30が第1締結具60によって下方に引っ張られるのを抑制することができ、コンポジットプレート30が破損するのを防止することができる。
【0037】
また、コンポジットプレート30のCTEは、セラミックプレート20のCTEと実質同じであり、冷却プレート50のCTEは、支持プレート70のCTEよりも小さい。そのため、セラミックプレート20が常温から高温になったとき、第1積層体L1及び第2積層体L2はいずれも中央が凸になるように変形する。
【0038】
更に、第2締結具80は、互いに径の異なる2以上の同心円のそれぞれに沿って複数設けられている。これにより、冷却プレート50の下面が支持プレート70に強く拘束されるため、支持プレート70及び冷却プレート50の一方の変形が他方に大きな影響を与える。
【0039】
更にまた、セラミックプレート20の材料をアルミナ、コンポジットプレート30の材料をSiSiCTi、冷却プレート50の材料をモリブデン、支持プレート70の材料をアルミナとするのが好ましい。こうすれば、本発明の効果を得やすくなる。また、第1締結具60の材料をチタンとするのが好ましい。こうすれば、コンポジットプレート30の雌ネジ64に発生する応力をより小さくすることができる。
【0040】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0041】
上述した実施形態では、支持プレート70として円環部材を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、支持プレート70として中央に穴を有さない円形部材を用いてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、セラミックプレート20に静電電極23及びヒータ電極24を埋設したが、特にこれに限定されない。例えば、セラミックプレート20に静電電極23、ヒータ電極24及びプラズマ発生用のRF電極の1つ以上を埋設してもよい。
【0043】
上述した実施形態において、半導体製造装置用部材10に、冷却プレート50の下面からウエハ載置部22に載置されたウエハWの下面にガス(例えばHeなどの熱伝導ガス)を供給するガス通路を設けてもよい。また、ウエハ載置部22に載置されたウエハWを持ち上げるリフトピンを挿通するためのリフトピン穴を、冷却プレート50の下面からウエハ載置部22まで貫通するように設けてもよい。
【0044】
上述した実施形態において、セラミックプレート20は、中央に円形のウエハ載置部22を有し、ウエハ載置部22の外周に円環状のフォーカスリング載置部を有するようにしてもよい。フォーカスリング載置部に載置されるフォーカスリングは、ウエハWの外周縁までプラズマを安定に発生させる役割やセラミックプレート20を保護する役割を有する。
【0045】
上述した実施形態では、冷媒流路52を平面視で渦巻き状に形成したが、特にこれに限定されない。例えば、冷媒流路52を平面視でジグザグ状に形成してもよい。
【0046】
上述した実施形態では、セラミックプレート20とコンポジットプレート30とを金属接合層40で接合したが、金属接合層40の代わりに樹脂接着層を用いてもよい。
【0047】
上述した実施形態では、コンポジットプレート30と冷却プレート50との間に放熱シート12を介在させたが、放熱シート12の代わりに外径がこれらのプレート30,50と同等のシールリング(Oリング)を介在させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えばウエハをプラズマ処理する装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 半導体製造装置用部材、12 放熱シート、14 丸穴、20 セラミックプレート、22 ウエハ載置部、22a シールバンド、22b 円形小突起、22c 基準面、23 静電電極、24 ヒータ電極、30 コンポジットプレート、40 金属接合層、50 冷却プレート、52 冷媒流路、54 貫通穴、54a 凹部、60 第1締結具、62 雄ネジ、62a ネジ足部、62b ネジ頭部、64 雌ネジ、70 支持プレート、72 円形穴、74 貫通穴、80 第2締結具、82 雄ネジ、82a ネジ足部、82b ネジ頭部、84 雌ねじ、110 半導体製造装置用部材、150 冷却プレート、C1,C3 大円、C2,C4 小円、L1 第1積層体、L2,L3 第2積層体、W ウエハ。
【要約】
半導体製造装置用部材10は、セラミックプレート20と、セラミックプレート20の下面に接合されたコンポジットプレート30と、コンポジットプレート30の下面に設けられた冷却プレート50と、コンポジットプレート30と冷却プレート50とを締結する第1締結具60と、冷却プレート50の下面を支持する支持プレート70と、冷却プレート50と支持プレート70とを締結する第2締結具80とを備える。半導体製造装置用部材10は、セラミックプレート20が常温から高温になったとき、セラミックプレート20とコンポジットプレートとの積層体(第1積層体L1)は中央が凸になるように変形し、第1締結具60を介して締結された冷却プレート50と支持プレート70との積層体(第2積層体L2)も中央が凸になるように変形する。
図1
図2
図3
図4
図5