(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】二重標的化化合物及びその調製方法と応用
(51)【国際特許分類】
C07K 7/64 20060101AFI20240704BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240704BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240704BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240704BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20240704BHJP
A61K 51/08 20060101ALI20240704BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
C07K7/64
A61P29/00
A61P9/10 101
A61P17/02
A61K38/12
A61K51/08 200
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2023536546
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 CN2022137823
(87)【国際公開番号】W WO2023098920
(87)【国際公開日】2023-06-08
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】202211201081.2
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523192875
【氏名又は名称】烟台藍納成生物技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】YANTAI LANNACHENG BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 101, Building 52, No. 500 Binhai East Road, Muping District Yantai, Shandong 264199, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 小元
(72)【発明者】
【氏名】徐 鵬飛
(72)【発明者】
【氏名】呉 暁明
(72)【発明者】
【氏名】郭 志徳
(72)【発明者】
【氏名】楊 清宝
(72)【発明者】
【氏名】文 雪君
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】The Journal of Nuclear Medicine,2017年,Vol.58, No.4,p.590-597
【文献】Frontiers in Endocrinology,2022年07月12日,Vol.13,924841,doi: 10.3389/fendo.2022.924841
【文献】Mol. Imaging Biol.,2021年,Vol.23,p.686-696
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/64
A61P 35/00
A61P 29/00
A61P 9/10
A61P 17/02
A61K 38/12
A61K 51/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重標的化化合物であって、その構造が同時にFAPとインテグリンα
vβ
3の特異的結合リガンド構造を含み、前記化合物の構造が以下の式(I)に示すとおりである、ことを特徴とする二重標的化化合物。
【請求項2】
放射性核種で標識できる二重標的化化合物であって、その構造が同時にFAPとインテグリンα
vβ
3の特異的結合リガンド及び核種キレート構造を含み、前記化合物の構造が以下の式(I-1)又は式(I-2)に示すとおりである、ことを特徴とする放射性核種で標識できる二重標的化化合物。
【請求項3】
請求項2に記載の放射性核種で標識できる二重標的化化合物の調製方法であって、まず6-ヒドロキシキノリン-4-カルボン酸のカルボキシル基をグリシンtert-ブチルエステルのアミノ基とアミド縮合反応させるステップと、アミド縮合生成物のヒドロキシル基の位置でアルキル鎖を介してBocで保護されたピペラジニル基を連結するステップと、酸性条件下でBoc保護基及びtert-ブチル保護基を除去し、縮合生成物のピペラジン環にBoc保護基を導入するステップと、(S)-ピロリジン-2-カルボニトリル塩酸塩とアミド縮合反応させるステップと、Boc保護基を除去し、N-Boc-3-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]プロピオン酸と縮合反応させるステップと、Boc保護基を除去し、Fmoc-O-tert-ブチル-L-グルタミン酸と反応させるステップと、tert-ブチルエステルを除去し、活性化エステルを調製し、アミノ-ジポリエチレングリコールを含むc(RGDfK)と反応させて、二重標的化化合物を得るステップと、Fmoc保護を除去し、核種キレート剤(核種キレート剤は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N,N’-四酢酸又は1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸である)と反応させるステップと、キレート基のtert-ブチルエステル保護を除去して、放射性核種で標識できる二重標的化化合物を得るステップとを含む、ことを特徴とする調製方法。
【請求項4】
放射性核種標識二重標的化化合物であって、請求項2に記載の放射性核種で標識できる二重標的化化合物のいずれかを放射性核種で標識することによって得られるものであり、前記放射性核種は、α線放出同位体、β線放出同位体、γ線放出同位体、オージェ電子放出同位体又はX線放出同位体から選択される、ことを特徴とする放射性核種標識二重標的化化合物。
【請求項5】
前記放射性核種は、
18F、
51Cr、
64Cu、
67Cu、
67Ga、
68Ga、
89Zr、
111In、
99mTc、
186Re、
188Re、
139La、
140La、
175Yb、
153Sm、
166Ho、
86Y、
90Y、
149Pm、
165Dy、
169Er、
177Lu、
47Sc、
142Pr、
159Gd、
212Bi、
213Bi、
72As、
72Se、
97Ru、
109Pd、
105Rh、
101mRh、
119Sb、
128Ba、
123I、
124I、
131I、
197Hg、
211At、
151Eu、
153Eu、
169Eu、
201Tl、
203Pb、
212Pb、
198Au、
225Ac、
227Th又は
199Agのいずれかから選択される、ことを特徴とする請求項4に記載の放射性核種標識二重標的化化合物。
【請求項6】
前記放射性核種は、
18F、
64Cu、
68Ga、
89Zr、
90Y、
111In、
99mTc、
177Lu、
188Re又は
225Acから選択される、ことを特徴とする請求項4に記載の放射性核種標識二重標的化化合物。
【請求項7】
請求項4に記載の放射性核種標識二重標的化化合物の調製方法であって、湿式標識法又は凍結乾燥標識法に従って請求項2に記載の放射性核種で標識できる二重標的化化合物を放射性核種を含む化合物と反応させて、前記放射性核種標識二重標的化化合物を得るステップを含む、ことを特徴とする調製方法。
【請求項8】
請求項1に記載の二重標的化化合物、請求項2に記載の放射性核種で標識できる二重標的化化合物、請求項4に記載の放射性核種標識二重標的化化合物、又はそれらの薬学的に許容される水和物、溶媒和物若しくは塩を含む、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項9】
動物又はヒト対象におけるFAP及び/又はインテグリンα
vβ
3の過剰発現を特徴とする疾患を診断又は治療するための薬物の調製における、請求項1に記載の二重標的化化合物、請求項2に記載の放射性核種で標識できる二重標的化化合物、請求項4に記載の放射性核種標識二重標的化化合物、それらの薬学的に許容される水和物、溶媒和物若しくは塩、又は請求項8に記載の医薬組成物のいずれかの
使用方法。
【請求項10】
前記FAP及び/又はインテグリンα
vβ
3の過剰発現を特徴とする疾患は、癌、慢性炎症、アテローム性動脈硬化症又は瘢痕疾患を含む、ことを特徴とする請求項9に記載の
使用方法。
【請求項11】
前記癌は、乳癌、膵臓癌、小腸癌、結腸癌、直腸癌、肺癌、頭頸部癌、卵巣癌、肝細胞癌、食道癌、下咽頭癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、骨髄腫細胞、膀胱癌、胆管癌、淡明細胞型腎細胞癌、神経内分泌腫瘍、発癌性骨軟化症、肉腫、原発不明癌、胸腺癌、神経膠腫、神経膠腫、星状細胞腫、子宮頸癌、又は前立腺癌から選択される、ことを特徴とする請求項10に記載の
使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核医学及び分子イメージングの分野に関し、具体的には、線維芽細胞活性化タンパク質FAP及びインテグリンαvβ3を標的とする放射性核種標識二重標的化化合物及びその調製方法、並びにFAP及び/又はインテグリンαvβ3の過剰発現を特徴とする疾患の診断又は治療における上記化合物の応用に関する。
【背景技術】
【0002】
線維芽細胞活性化タンパク質(Fibroblast activation protein、FAP)は、腫瘍間質の活性化線維芽細胞の表面に発現する膜セリンペプチダーゼであり、腫瘍の発生と進行に重要な役割を果たす。以前の研究では、FAPは通常、正常なヒト組織では発現しないが、乳癌、卵巣癌、肺癌、結腸直腸癌、胃癌、及び膵臓癌などを含む上皮性悪性腫瘍の90%以上で間質線維芽細胞の表面に選択的に高度に発現することが示されている。インテグリンαvβ3(integrin αvβ3)は、細胞表面に位置するヘテロ二量体受容体であり、正常な血管内皮及び上皮細胞ではほとんど発現しないが、肺癌、骨肉腫、神経芽細胞腫、乳癌、前立腺癌、膀胱癌、膠芽細胞腫及び浸潤性黒色腫などの種々の固形腫瘍の細胞表面で高度に発現しており、また、すべての腫瘍組織の新生血管の内皮細胞膜でも高発現しており、これは、インテグリンαvβ3が腫瘍の増殖、浸潤及び転移において重要な役割を果たすことを示唆している。アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)配列を含むポリペプチドは、インテグリンαvβ3に特異的に結合することができる。腫瘍におけるFAP及びインテグリンαvβ3の広範な発現及び重要な役割を考慮して、FAP及びインテグリンαvβ3は腫瘍イメージング及び治療における重要な標的となっている。
【0003】
腫瘍の診断及び治療効率を更に向上させるために、従来技術では、2つの標的に対して同時に親和性を有する二重標的化プローブが開発されている。例えば、Anna Orlovaらは、前立腺特異的膜抗原(PSMA)とガストリン放出ペプチド受容体(GRPR)に対して同時に親和性を有する二重標的化プローブを報告している。PSMAとGRPRは前立腺で同時に高度に発現するため、この二重標的化プローブの欠点は、前立腺癌の放射線診断と治療にのみ適用され、他の腫瘍には適用できないことである。
【発明の概要】
【0004】
FAP及びインテグリンαvβ3は、主に腫瘍間質細胞及び新生血管に分布するため、複数種類の腫瘍で同時に高度に発現し、「汎腫瘍」二重標的化プローブを開発するための理想的な標的である。腫瘍の不均一性を考慮すると、腫瘍の診断及び治療効率を更に向上させるためには、FAP及びインテグリンαvβ3の両方の標的に対して標的化の役割を果たすことができる標的化化合物を開発する必要がある。この二重標的化化合物は、腫瘍内のFAP標的及びインテグリンαvβ3標的を相乗的に標的とすることを達成するために、2つの標的に対して同時に高い親和性を有する必要があり、また、腫瘍での取り込み及び保持時間を増加させるために、体内で優れた薬物動態特性を有する必要がある。この二重標的化化合物に基づく放射性核種標識二重標的化化合物は、FAP標的及びインテグリンαvβ3標的を同時に利用して、腫瘍内の有効な受容体の数及び利用効率を向上させることができ、それによって陽性腫瘍の検出効率及び/又は治療効率を改善するという課題を達成する。
【0005】
上記の問題を解決するために、本発明の主な目的は、腫瘍内のFAP標的及びインテグリンαvβ3標的を相乗的に標的とし、腫瘍内での薬物の取り込み及び保持時間を増加させることができる新規な化合物構造を開発することである。
【0006】
本発明の別の目的は、上記の新規な化合物の調製方法を提供し、便利で入手しやすい合成経路を介して腫瘍内のFAP標的及びインテグリンαvβ3標的を相乗的に標的とすることができる化合物を合成することである。
【0007】
本発明の更に別の目的は、FAP及び/又はインテグリンαvβ3の過剰発現を特徴とする疾患の診断又は治療における上記化合物の応用を提供することである。
【0008】
本発明の上記目的は、以下の技術的解決策によって達成される。
【0009】
第1の態様では、本発明は、FAP及びインテグリンα
vβ
3を標的とすることができる二重標的化化合物を提供し、その構造は同時にFAPとインテグリンα
vβ
3の特異的結合リガンド構造を含み、上記化合物の構造は以下の式(I)に示すとおりである。
【化1】
【0010】
第2の態様では、本発明は、FAP及びインテグリンα
vβ
3を標的とする放射性核種で標識できる二重標的化化合物を提供し、その構造は同時にFAPとインテグリンα
vβ
3の特異的結合リガンド及び核種キレート構造を含み、本発明では、この構造をFAPI-RGD構造として表記し、上記化合物の構造は以下の式(I-1)又は式(I-2)に示すとおりである。
【化2】
【0011】
第3の態様では、FAP及びインテグリンαvβ3を標的とすることができる放射性核種標識二重標的化化合物を提供し、これは、本発明の第2の態様に記載の化合物を放射性核種で標識することによって得られる。
【0012】
本発明の解決策では、上記放射性核種は、α線放出同位体、β線放出同位体、γ線放出同位体、オージェ電子放出同位体又はX線放出同位体などから選択することができ、例えば、18F、51Cr、67Ga、68Ga、111In、99mTc、186Re、188Re、139La、140La、175Yb、153Sm、166Ho、86Y、90Y、149Pm、165Dy、169Er、177Lu、47Sc、142Pr、159Gd、212Bi、213Bi、72As、72Se、97Ru、109Pd、105Rh、101mRh、119Sb、128Ba、123I、124I、131I、197Hg、211At、151Eu、153Eu、169Eu、201Tl、203Pb、212Pb、64Cu、67Cu、198Au、225Ac、227Th、89Zr又は199Agのいずれかであり、より好ましい放射性核種は、18F、64Cu、68Ga、89Zr、90Y、111In、99mTc、177Lu、188Re又は225Acである。
【0013】
第4の態様では、本発明は、第2の態様に記載の二重標的化化合物及びその放射性核種標識化合物(即ち、本発明の第3の態様に記載の二重標的化化合物)の調製方法を提供し、本発明が提供する調製方法は以下を含む。
【0014】
(1)まず6-ヒドロキシキノリン-4-カルボン酸のカルボキシル基をグリシンtert-ブチルエステルのアミノ基とアミド縮合反応させる。アミド縮合生成物のヒドロキシル基の位置でアルキル鎖を介してBocで保護されたピペラジニル基を連結する。酸性条件下でBoc保護基及びtert-ブチル保護基を除去し、縮合生成物のピペラジン環にBoc保護基を導入する。(S)-ピロリジン-2-カルボニトリル塩酸塩とアミド縮合反応させる。Boc保護基を除去し、N-Boc-3-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]プロピオン酸と縮合反応させる。Boc保護基を除去し、Fmoc-O-tert-ブチル-L-グルタミン酸と反応させる。tert-ブチルエステルを除去し、活性化エステルを調製し、アミノ-ジポリエチレングリコールを含むc(RGDfK)と反応させて、二重標的化化合物を得る。Fmoc保護を除去し、核種キレート剤(核種キレート剤は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N,N’-四酢酸又は1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸である)と反応させる。キレート基のtert-ブチルエステル保護を除去して、放射性核種で標識できる二重標的化化合物、即ち、本発明の第2の態様に記載の二重標的化化合物を得る。
【0015】
(2)従来の湿式標識法又は凍結乾燥標識法に従って、(1)で得られた放射性核種で標識できる二重標的化化合物を放射性核種を含む化合物と反応させて、本発明の第3の態様に記載のFAP及びインテグリンαvβ3を標的とすることができる放射性核種標識二重標的化化合物を得る。
【0016】
第5の態様では、本発明は医薬組成物を提供し、この医薬組成物は、本発明の第1の態様に記載のFAP及びインテグリンαvβ3を標的とすることができる二重標的化化合物、本発明の第2の態様に記載のFAP及びインテグリンαvβ3を標的とする放射性核種で標識できる二重標的化化合物、第3の態様に記載のFAP及びインテグリンαvβ3を標的とすることができる放射性核種標識二重標的化化合物、又はそれらの薬学的に許容される任意の互変異性体、ラセミ体、水和物、溶媒和物若しくは塩を含む。
【0017】
第6の態様では、本発明はまた、動物又はヒト対象におけるFAP及び/又はインテグリンαvβ3の過剰発現を特徴とする疾患を診断又は治療するための薬物の調製における、本発明の第1の態様に記載のFAP及びインテグリンαvβ3を標的とすることができる二重標的化化合物、第2の態様に記載のFAP及びインテグリンαvβ3を標的とする放射性核種で標識できる二重標的化化合物、第3の態様に記載のFAP及びインテグリンαvβ3を標的とすることができる放射性核種標識二重標的化化合物、又は第5の態様に記載の医薬組成物の応用を提供する。
【0018】
本発明の応用において、FAP及び/又はインテグリンαvβ3の過剰発現を特徴とする疾患は、癌、慢性炎症、アテローム性動脈硬化症、線維症、組織リモデリング及び瘢痕疾患を含むが、これらに限定されず、好ましくは、上記癌は更に、乳癌、膵臓癌、小腸癌、結腸癌、直腸癌、肺癌、頭頸部癌、卵巣癌、肝細胞癌、食道癌、下咽頭癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、骨髄腫細胞、膀胱癌、胆管癌、淡明細胞型腎細胞癌、神経内分泌腫瘍、発癌性骨軟化症、肉腫、CUP(原発不明癌)、胸腺癌、神経膠腫、神経膠腫、星状細胞腫、子宮頸癌、又は前立腺癌から選択される。
【0019】
本発明が提供するFAPI-RGD化合物構造は、FAP標的及びインテグリンαvβ3標的の両方に対して高い親和性を有し、腫瘍内のFAP標的及びインテグリンαvβ3標的を相乗的に標的とすることができ、腫瘍での高い取り込み及び長い保持時間を示し、FAP及び/又はインテグリンαvβ3の過剰発現を特徴とする疾患の診断又は治療への応用が期待される。
【0020】
更に、本発明が提供するFAPI-RGD化合物の調製方法は、反応経路が単純で、操作が簡単であり、製造原料が安価で入手しやすく、生産コストが低く、工業生産に適している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】化合物7の水素核磁気共鳴スペクトルである。
【
図2】化合物7の炭素核磁気共鳴スペクトルである。
【
図10】本発明による
68Ga標識FAPI-RGD(式I-1)複合体の生理食塩水中での安定性実験の結果を示す図である。
【
図11】本発明による
68Ga標識FAPI-RGD(式I-1)複合体の細胞取り込み及び細胞結合実験の結果を示す図である。
【
図12】HT1080-FAP担癌マウスにおける、本発明による
68Ga標識FAPI-RGD(式I-1)複合体及びモノマー
68Ga-FAPI-02と
68Ga-C(RGDfK)のMicroPETイメージング結果を示す図である。
【
図13】本発明による
68Ga標識FAPI-RGD(式I-1)複合体及びC(RGDfK)及び/又はFAPI-02を同時注射してから30分後のMicroPETイメージング結果及び腫瘍と重要臓器の取り込み結果の統計グラフである。
【
図14】HT1080-FAP担癌マウスにおける、本発明の実施例4で調製した
177Lu-FAPI-RGD複合体のSPECTイメージング結果を示す図である。
【
図15】
68Gaで標識された対照化合物FAPI-RGDの複合体の分子構造、HT1080-FAP担癌マウスに該対照化合物を注射してから30分及び2時間後のMicroPETイメージング結果、及び腫瘍と重要臓器の取り込み結果の統計グラフである。
【
図16】膵臓癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌及び鼻咽頭癌の患者に本発明による
68Ga標識FAPI-RGD(式I-1)複合体、
18F-FDG及び
68Ga-FAPI46を注射してから3時間後のPET/CTイメージング結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面と併せて具体的な実施形態を通じて本発明の技術的解決策を更に例示及び説明する。
【0023】
実施例1:化合物I-1の調製
【0024】
化合物2の合成:
100mLフラスコ中のN,N-ジメチルホルムアミド30mLに、化合物1(6-ヒドロキシキノリン-4-カルボン酸、1.89g、10.0mmol)、グリシンtert-ブチルエステル(1.89g、10.0mmol)、HATU(3.8g、10.0mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.6g、20.0mmol)をそれぞれ順に加えた。反応混合物を一晩撹拌し、溶媒を減圧蒸留により除去して粗生成物を得た。シリカゲルカラム(ジクロロメタン/メタノール=30:1)で精製して、化合物2を白色固体として87%の収率で得た。
【0025】
化合物3の合成:
100mLフラスコ中のN,N-ジメチルホルムアミド50mLに、化合物2(1.51g、5.0mmol)、1-ブロモ-3-クロロプロパン(1.55g、10.0mmol)、及び炭酸カリウム(1.38g、10.0mmol)をそれぞれ順に加えた。系の温度を60℃に上げ、60℃に維持して一晩撹拌し、溶媒を減圧蒸留により除去して粗生成物を得た。シリカゲルカラム(ジクロロメタン/メタノール=50:1)で精製して、化合物3を白色固体として63%の収率で得た。
【0026】
化合物4の合成:
100mLフラスコ中のアセトニトリル30mLに、化合物3(0.76g、2.0mmol)、1-tert-ブトキシカルボニルピペラジン(0.55g、3.0mmol)、及びヨウ化カリウム(0.49g、3.0mmol)をそれぞれ順に加えた。系の温度を60℃に上げ、60℃に維持して一晩撹拌し、溶媒を減圧蒸留により除去して粗生成物を得た。シリカゲルカラム(ジクロロメタン/メタノール=30:1)で精製して、化合物4を白色固体として58%の収率で得た。
【0027】
化合物5の合成:
氷浴条件下で化合物4(0.52g、1.0mmol)をジクロロメタンとトリフルオロ酢酸の混合溶液10mL(体積比9:1)に溶解し、系の温度を室温に上げて2時間反応させ、反応終了後、溶媒を減圧蒸留により除去し、N,N-ジメチルホルムアミド10mLに溶解して化合物5を得て次の反応に備えた。
【0028】
化合物6の合成:
化合物5のN,N-ジメチルホルムアミド溶液に、二炭酸ジ-tert-ブチル(0.22g、1.0mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.39g、3.0mmol)をそれぞれ加え、室温で一晩撹拌し、溶媒を減圧蒸留により除去して粗生成物を得た。シリカゲルカラム(ジクロロメタン/メタノール=10:1)で精製して、化合物6を白色固体として72%の収率で得た。
【0029】
化合物7の合成:
100mLフラスコ中のN,N-ジメチルホルムアミド10mLに、化合物6(0.47g、1.0mmol)、(S)-ピロリジン-2-カルボニトリル塩酸塩(0.13g、1.0mmol)、HATU(0.38g、1.0mmol)、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.26g、2.0mmol)をそれぞれ順に加えた。反応混合物を室温で反応終了まで撹拌し、溶媒を減圧蒸留により除去して粗生成物を得た。シリカゲルカラム(ジクロロメタン/メタノール=50:1)で精製して、化合物7を白色固体として85%の収率で得た。
図1は化合物7の水素核磁気共鳴スペクトルであり、
図2は化合物7の炭素核磁気共鳴スペクトルであり、
図3は化合物7のマススペクトルである。
【0030】
化合物8の合成:
化合物7(2.50g、4.5mmol)、p-トルエンスルホン酸一水和物(2.58g、13.6mmol)、及びアセトニトリル25mLを反応フラスコに加え、65℃で1時間反応させ、TLCで化合物7の反応の完了をモニタリングし(メタノール:ジクロロメタン=5:1)、減圧下、40℃で蒸発乾固した。DMF14mL及びDIPEA(3.05g、23.6mmol)を加え、25℃で撹拌した。この反応を番号(1)とする。即ち、化合物7のピペラジン脱保護により中間体を得た。別の反応フラスコにN-tert-ブトキシカルボニル-ジエチレングリコール-カルボン酸(1.62g、4.8mmol)、HATU(2.60g、6.8mmol)、及びDMF10mLを加え、25℃で30分間反応させた。この反応を番号(2)とする。反応(2)の反応溶液系を反応(1)系に滴下し、1時間反応させた。減圧下、40℃で蒸発乾固し、精製水50mLを加え、DCMで2回、各回50mLで抽出し、DCMを合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、蒸発乾固して粗生成物を得て、粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、目的物1.68gを得た。理論分子量は709.3799、測定分子量は709.38801であり、マススペクトル結果は目的物と一致した。
図4は化合物8のマススペクトルである。
【0031】
化合物9の合成:
化合物8、p-トルエンスルホン酸一水和物(1.61g、8.5mmol)、及びアセトニトリル20mLを反応フラスコに加え、65℃で1時間反応させ、減圧下、40℃で蒸発乾固した。DMF20mL及びDIPEA(1.83g、14.2mmol)を加え、25℃で撹拌した。この反応を番号(1)とする。別の反応フラスコにFmoc-O-tert-ブチル-L-グルタミン酸(1.43g、3.4mmol)、HATU(1.29g、3.4mmol)、及びDMF20mLを加え、25℃で30分間反応させた。この反応を番号(2)とする。反応(2)の反応溶液系を反応(1)系に滴下し、1時間反応させた。減圧下、40℃で蒸発乾固して粗生成物を得て、粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、目的物1.19gを得た。理論分子量は1016.5008、測定分子量は1016.51094であり、マススペクトル結果は目的物と一致した。
図5は化合物9のマススペクトルである。
【0032】
化合物12の合成:
c(RGDfK)(1.00g、1.7mmol)、アミノtert-ブチルエステル-ジポリエチレングリコール-スクシンイミドエステル(0.74g、1.9mmol)、DIPEA(0.44g、3.4mmol)、及びDMF20mLを反応フラスコに加え、30℃で20時間反応させた。減圧下、40℃で蒸発乾固し、メタノール10mLを加え、MTBE60mLを滴加し、固体を沈殿させて中間体11を得て、この中間体を吸引濾過し、40℃で真空下で2時間乾燥した。固体の中間体11を反応フラスコに加え、TFA30mL及び精製水1.5mLを加え、30℃で1時間反応させ、0~5℃に冷却し、MTBE200mLを滴下し、0~5℃で30分間撹拌し、吸引濾過し、MTBEですすぎ、40℃で真空下で乾燥して生成物を得た。理論分子量は762.4024、測定分子量は762.40768であり、マススペクトル結果は目的物と一致した。
図6は化合物12のマススペクトルである。
【0033】
化合物13の合成:
化合物9、p-トルエンスルホン酸一水和物(0.34g、1.8mmol)、及びアセトニトリル20mLを反応フラスコに加え、65℃で4時間反応させ、減圧下、40℃で蒸発乾固した。DMF20mL、DIPEA(0.36g、2.8mmol)、DCC(0.14g、0.7mmol)、及びNHS(0.08g、0.7mmol)を加え、35℃で15~20時間反応させて中間体10を得た。次に、25℃に冷却し、化合物12を加え、1時間反応させ、減圧下、40℃で蒸発乾固して粗生成物を得て、粗生成物を分取液体クロマトグラフィーで精製して目的物66.5mgを得た。理論分子量は1704.8300、測定分子量は1704.84518であり、マススペクトル結果は目的物と一致した。
図7は化合物13のマススペクトルである。
【0034】
化合物14の合成:
化合物13、ピペリジン0.5mL、及びDMF2mLを反応フラスコに加え、25℃で1時間反応させ、酢酸エチル10mLを滴下して結晶化させ、30分間撹拌し、吸引濾過した。固体を40℃で真空下で2時間乾燥し、生成物50.8mgを得た。Fmoc保護が除去された化合物13をDMF2mLに溶解し、NOTA-2 tert-ブチルエステル-NHS活性化エステル及びDIPEA(0.010g、0.08mmol)を加え、25℃で1時間反応させ、減圧下、40℃で蒸発乾固し、酢酸エチル2mLとMTBE2mLを加えて結晶化させ、20分間撹拌し、吸引濾過した。固体を40℃で真空下で乾燥し、生成物43.2mgを得た。理論分子量は1880.0196、測定分子量は1880.0369であり、マススペクトル結果は目的物と一致した。
図8は化合物14のマススペクトルである。
【0035】
化合物15の合成:
化合物14及びトリフルオロ酢酸2mLを反応フラスコに加え、25℃で1時間反応させ、減圧下、40℃で蒸発乾固して粗生成物を得て、粗生成物を分取液体クロマトグラフィーで精製し、凍結乾燥して、生成化合物15を42%の収率で得た。理論分子量は1767.8944、測定分子量は1767.91036であり、マススペクトル結果は目的物と一致した。
図9は化合物15のマススペクトルである。
【0036】
上記ステップの合成経路は以下のとおりである。
【化3】
【0037】
実施例2
実施例2の調製方法については、実施例1を参照し、上記の実施例におけるNOTA-2 tert-ブチルエステル-NHS活性化エステルをDOTA-3 tert-ブチルエステル-NHS活性化エステルに置き換えて、以下の構造を得た。
【化4】
【0038】
実施例3:放射性Ga-68標識FAPI-RGD式(I-1)複合体(68Ga-FAPI-RGD)の調製
【0039】
湿式法:実施例1で調製した式(I-1)の構造を有する化合物の酢酸-酢酸塩溶液(1.0g/L)0.5mLの入った遠心管に、約18.5~1850メガベクレル(MBq)の68GaCl3塩酸溶液(ゲルマニウムガリウム発生器から溶出)を加え、37℃で20分間反応させた。C18分離カートリッジを取り出し、まず無水エタノール10mLでゆっくりとすすぎ、次に水10mLですすいだ。標識溶液を水10mLで希釈した後、分離カラムにロードし、まず水10mLで標識されていない68Gaイオンを除去し、次に、10mM HClエタノール溶液0.3mLですすいで68Ga標識FAPI-RGD複合体を得た。溶出液を生理食塩水で希釈し、無菌濾過して68Ga標識FAPI-RGD複合体の注射液を得た。
【0040】
凍結乾燥法:式(I-1)の化合物を含む凍結乾燥キットに、約18.5~1850メガベクレル(MBq)の68GaCl3塩酸溶液(ゲルマニウムガリウム発生装置から溶出)を加え、均一に混合し、37℃で20分間反応させた。C18分離カートリッジを取り、まず無水エタノール10mLでゆっくりとすすぎ、次に水10mLですすいだ。標識溶液を水10mLで希釈した後、分離カラムにロードし、まず水10mLで標識されていない68Gaイオンを除去し、次に、10mM HClエタノール溶液0.3mLですすいで複合体溶出液を得た。溶出液を生理食塩水で希釈し、無菌濾過して68Ga標識FAPI-RGD複合体の注射液を得た。
【0041】
実施例4:放射性Lu-177標識FAPI-RGD式(I-2)複合体(177Lu-FAPI-RGD)の調製
【0042】
pH=5.5の緩衝液の調製:酢酸57.6mg、ゲンチシン酸189mg、及び酢酸ナトリウム三水和物525mgを秤量し、純水48mlに溶解し、水酸化ナトリウム溶液でpH5.5に調整した。実施例2で調製した式(I-2)の構造を有する化合物200μgを緩衝液(pH=5.5)200μLで完全に溶解し、次に緩衝液(pH=5.5)5mL及び約150mCiの177LuCl3塩酸溶液を加えた。混合物を均一に振とうし、80℃で加熱して20分間反応させた。反応終了後、室温まで冷却した。反応液を生理食塩水で希釈し、無菌濾過して10mCi/mLの177Lu標識FAPI-RGD複合体の注射液を得た。
【0043】
実施例:分析及び適用効果
【0044】
1、68Ga標識式(I-1)FAPI-RGD複合体の安定性分析
【0045】
実施例3で調製した
68Ga-FAPI-RGD(3.7MBq活量/20μL)の溶液20μLを生理食塩水又はPBS(pH=7.4)100μLを含む遠心管にピペットで移し、37℃で0.5時間、1時間、及び4時間共インキュベートして共インキュベーション溶液を得た。共インキュベーション溶液20μLを0.22μmニードルフィルタ膜で濾過し、HPLCにより放射化学的純度を分析した。試験結果を
図10に示す。
68Ga-FAPI-RGDを生理食塩水中でインキュベートした後、明らかな分解は見られず、放射化学的純度は99%を超えた。これは、本発明によって調製された
68Ga-FAPI-RGDが安定性に優れていることを示している。
【0046】
2、68Ga標識式(I-1)FAPI-RGD複合体の細胞実験分析
【0047】
HT1080-FAP腫瘍細胞で
68Ga-FAPI-RGDの細胞取り込み実験を行った。試験結果を
図11の部分Aに示す。
68Ga-FAPI-RGDは、急速に細胞に取り込まれ、30分間のインキュベーションで取り込みは最大に達し、同様の取り込みレベルを最大2時間維持した。更に、遮断実験により、
68Ga-FAPI-RGDの細胞取り込みがC(RGDfK)又はFAPI-02によって部分的に阻害される可能性があり、FAPI-RGDによって完全に遮断される可能性があることが確認された(
図11の部分Aを参照)HT1080-FAP及びU87MG腫瘍細胞で細胞結合実験を行った。その試験結果を
図11のB及びCにそれぞれ示す。HT1080-FAP細胞実験では、
68Ga-FAPI-RGDと
68Ga-FAPI-02のIC
50はそれぞれ11.17nMと4.14nMであった。HT1080-FAP細胞実験では、
68Ga-FAPI-RGDと
68Ga-C(RGDfK)のIC
50はそれぞれ18.93nMと11.49nMであった。実験結果は、FAPI-RGDが、対応するモノマーと比較して、その対応する受容体FAP及びインテグリンα
vβ
3に対して類似の親和性を有することを示している。
【0048】
3、担癌マウスにおける68Ga標識式(I)FAPI-RGD複合体のMicroPETイメージング
【0049】
実施例3の方法に従って
68Ga-FAPI-RGDを調製し、HT1080-FAP担癌マウスにおいて、無作為にグループ化されたマウスに7.4MBqの
68Ga-FAPI-RGD、
68Ga-FAPI-02、及び
68Ga-C(RGDfK)をそれぞれ尾静脈から注射し、次に、イソフルラン麻酔下で、
68Ga-FAPI-RGD群では投与から0~240分後にMicroPETイメージングを行い、他の群では投与から0~120分後にそれぞれMicroPETイメージングを行った。結果を
図12に示す。
図12中のA、C及びEはそれぞれ、上記の3群のマウスの静脈内注射後の異なる時間におけるHT1080-FAP担癌マウス(n=3)のMicroPET最大密度投影画像を示し、B、D及びFはそれぞれ、上記の3群のマウスの注射後の異なる時点における各臓器又は組織(血液、肝臓、腎臓、腫瘍、及び筋肉)の取り込みを示し、各群の3つの取り込みは、左から右にそれぞれ注射後0.5時間、1時間、2時間に対応する。
図12は、画像が取得された時点で、腫瘍がはっきりと見え、
68Ga-FAPI-RGDがモノマー
68Ga-FAPI-02及び
68Ga-C(RGDfK)よりも腫瘍での取り込みが高かったことを示す。
68Ga-FAPI-RGDが体内でインテグリンα
vβ
3及びFAPに特異的に結合する能力は、遮断実験によって確認された。上記の
68Ga-FAPI-RGDをC(RGDfK)又はFAPI-02とともにHT1080-FAP担癌マウスに同時注射し、そのMicroPETイメージング結果及び臓器取り込み結果を
図13に示す。
図13では、Aの左から右への4つの画像はそれぞれ、
68Ga-FAPI-RGD単一注射、
68Ga-FAPI-RGDとC(RGDfK)の同時注射、
68Ga-FAPI-RGDとFAPI-02の同時注射、及び
68Ga-FAPI-RGDとC(RGDfK)とFAPI-02の同時注射によって得られた画像であり、B及びCはそれぞれ、上記の4つの異なる注射方法による注射後のマウスの各臓器又は組織(血液、肝臓、腎臓、腫瘍、及び筋肉)の
68Ga-FAPI-RGD取り込み及び標的/非標的比を示し、B及びCにおける各臓器又は組織の4つの棒グラフはそれぞれ、左から右にAの4つの注射方法に対応する。
図13からわかるように、
68Ga-FAPI-RGDとRGD又はFAPI-02の同時注射はいずれも、腫瘍の
68Ga-FAPI-RGD取り込みを減少させることができ、
68Ga-FAPI-RGDとC(RGDfK)+FAPI-02の同時注射は、腫瘍の
68Ga-FAPI-RGD取り込みを更に減少させ、遮断実験により、
68Ga-FAPI-RGDが体内でインテグリンα
vβ
3及びFAPに結合することによって腫瘍特異的標的化を達成できることが確認された。
【0050】
4、担癌マウスにおける177Lu標識式(II)FAPI-RGD複合体のSEPCTイメージング
【0051】
実施例4の方法に従って
177Lu-FAPI-RGDを調製し、HT1080-FAP担癌マウスに、37MBqの
177Lu-FAPI-RGDをそれぞれ尾静脈から注射し、次に、イソフルラン麻酔下で投与から4時間後にSPECTイメージングを行った。結果を
図14に示す。投与から4時間後に腫瘍がはっきりと見えたことがわかる。
【0052】
5、担癌マウスにおける68Ga標識FAPI-RGD(対照化合物)複合体のMicroPETイメージング
【0053】
対照として、マレイミド-チオールによって形成されたスルホスクシンイミド結合を連結構造として、
図15Bの化合物を調製し、そして実施例3の方法に従って
68Gaで標識し、HT1080-FAP担癌マウスでMicroPETイメージングを行った。その結果を
図15に示す。
図15Aは、画像が取得された時点で、主な放射性シグナルが肝臓と腎臓に集中し、腫瘍での取り込みが少なかったことを示す。
図15Cも肝臓及び腎臓での高い取り込み及び腫瘍での低い取り込みを示す。したがって、連結構造としてのスルホスクシンイミド結合は、標的化基と標的化受容体との親和性を低下させる可能性があり、その結果、標的臓器での取り込みが減少し、一方、非標的組織での取り込みが高すぎて、標的/非標的比が低下し、副作用が起こりやすくなる。本発明における特定の連結構造は、受容体との高い親和性を確保するだけでなく、適切な薬物動態特性も提供することができ、それによって、腫瘍での高い絶対取り込み及び標的/非標的比を確保する。
【0054】
6、腫瘍患者における68Ga標識式(I-1)FAPI-RGD複合体のPET/CTイメージング
【0055】
厦門大学附属第一病院の臨床研究倫理委員会の承認を得て
68Ga-FAPI-RGDの臨床試験を実施した。膵臓癌患者1人、非小細胞肺癌患者1人、小細胞肺癌患者1人、及び鼻咽頭癌患者1人を含むすべての被験者は書面によるインフォームドコンセントに署名した。被験者の体重に応じて
68Ga-FAPI-RGDの静脈内投与量(1.8~2.2MBq[0.05~0.06mCi]/kg)を算出した。静脈内注射から3時間後、ハイブリッドPET/CTスキャナー(Discovery MI、GE Healthcare、Milwaukee、WI、USA)を使用してデータを取得し、イメージング結果を
図16に示す。アキシャル画像上に描かれた関心領域(ROI)を用いて最大標準取り込み値(SUV
max)を自動的に計算した。異なる種類の腫瘍における二重標的化
68Ga-FAPI-RGDのSUV
maxはいずれも、FAPタンパク質単一標的化
68Ga-FAPI-46よりも高く、SUV
maxは約30~50%増加し、これは、二重標的化設計が、腫瘍内の有効な受容体の数及び利用効率を向上させ、それによって腫瘍での取り込みを増加させることができることを証明した。
【0056】
要約すると、本発明はFAPI-RGD構造を開発し、これは、FAP標的及びインテグリンαvβ3標的の両方に対して高い親和性を有し、腫瘍内のFAP標的及びインテグリンαvβ3標的を相乗的に標的とすることができ、優れた代謝動態、腫瘍での高い取り込み及び長い保持時間を示し、FAP及び/又はインテグリンαvβ3の過剰発現を特徴とする疾患の診断又は治療への応用が期待される。
【0057】
以上、本発明を一般的な説明、具体的な実施形態及び試験により詳細に説明したが、本発明に基づいていくつかの変更又は改善を行うことができることは当業者には明らかである。したがって、本発明の精神から逸脱しない範囲で行われたこれらの変更又は改善は、すべて本発明の保護範囲に属する。