(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】ガスバリアフィルム及びガスバリアフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20240704BHJP
B32B 7/02 20190101ALI20240704BHJP
C08J 7/048 20200101ALI20240704BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B7/02
C08J7/048
(21)【出願番号】P 2023545983
(86)(22)【出願日】2023-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2023009751
(87)【国際公開番号】W WO2023189516
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2022053925
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 奈菜
(72)【発明者】
【氏名】永縄 智史
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-043094(JP,A)
【文献】国際公開第2014/007277(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/098671(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/035432(WO,A1)
【文献】特開2019-010733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08J7/04- 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に、ケイ素及び酸素を
主成分として含むガスバリア層を有し、
前記ガスバリア層の厚さ方向に、ケイ素、酸素、及び窒素を含み、かつ、窒素の元素比率が5at%以上である高窒素含有領域と、窒素の元素比率が5at%未満の低窒素含有領域を有し、当該高窒素含有領域の厚さd
Mが38nm以上存在し、前記ガスバリア層の表面から、前記高窒素含有領域、前記低窒素含有領域、及び前記基材フィルムの順に積層されている、ガスバリアフィルム。
【請求項2】
前記ガスバリア層の厚さ方向における、ケイ素、酸素、及び窒素中の各元素の元素比率の変化において、窒素の元素比率が極大値を示す点、ケイ素の元素比率が極大値を示す点、及び、酸素の元素比率が極小値を示す点が存在
し、前記窒素の極大値が、前記酸素の極小値及びケイ素の極大値より小さい、請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【請求項3】
40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が、6.0×10
-3g/m
2/day未満である、請求項1又は2に記載のガスバリアフィルム。
【請求項4】
前記ガスバリア層の厚さd
Gと、前記窒素の元素比率が5at%以上である高窒素含有領域の厚さd
Mが、1>d
M/d
G≧0.01の関係を満たす、請求項1又は2に記載のガスバリアフィルム。
【請求項5】
前記ガスバリアフィルムの表面弾性率が24.5GPa以上である、請求項1又は2に記載のガスバリアフィルム。
【請求項6】
請求項1又は
2に記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、
ケイ素含有高分子化合物を含む組成物を用いて基材フィルム上にガスバリア前駆層を形成し、
前記ガスバリア前駆層の表面部にプラズマ照射して、前記ガスバリア前駆層を改質することにより、前記ガスバリア層を形成する、ガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項7】
ケイ素及び酸素を
主成分として含むガスバリア層を有し、前記ガスバリア層の厚さ方向に、ケイ素、酸素、及び窒素を含み、かつ、窒素の元素比率が5at%以上である領域を有し、当該領域の厚さd
Mが30nm以上存在する、ガスバリアフィルムの製造方法であって、
ケイ素含有高分子化合物を含む組成物を用いて基材フィルム上にガスバリア前駆層を形成し、
前記ガスバリア前駆層の表面部に、ヘリウムガスの存在下で300秒より長い時間プラズマ照射して、前記ガスバリア前駆層を改質することにより、前記ガスバリア層を形成する、ガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項8】
ケイ素及び酸素を含むガスバリア層を有するガスバリアフィルムであって、前記ガスバリアフィルムを任意に50.5mm×50.5mmの面積の四角形状に切り出し、前記切り出された四角形状のガスバリアフィルムを同じ形状の四角形状に64区画化する場合、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が1.0×10
-3g/m
2/day未満の区画数が全区画数に対して95%以上である、ガスバリアフィルムの製造方法であって、
ケイ素含有高分子化合物を含む組成物を用いて基材フィルム上にガスバリア前駆層を形成し、
前記ガスバリア前駆層の表面部に、ヘリウムガスの存在下で300秒より長い時間プラズマ照射して、前記ガスバリア前駆層を改質することにより、前記ガスバリア層を形成する、ガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記ガスバリア前駆層を電極上に設置し、前記電極に直流電力と交流電力とを重畳して印加しながら、前記ガスバリア前駆層にプラズマ照射を行う、請求項
7又は
8に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項10】
ケイ素及び酸素を
主成分として含むガスバリア層を有し、前記ガスバリア層の厚さ方向に、ケイ素、酸素、及び窒素を含み、かつ、窒素の元素比率が5at%以上である領域を有し、当該領域の厚さd
Mが30nm以上存在する、ガスバリアフィルムの製造方法であって、
ケイ素含有高分子化合物を含む組成物を用いて基材フィルム上にガスバリア前駆層を形成し、
前記ガスバリア前駆層の表面部に、ヘリウムガスの存在下で700秒以上プラズマ照射して、前記ガスバリア前駆層を改質することにより、前記ガスバリア層を形成する、ガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項11】
ケイ素及び酸素を含むガスバリア層を有するガスバリアフィルムであって、前記ガスバリアフィルムを任意に50.5mm×50.5mmの面積の四角形状に切り出し、前記切り出された四角形状のガスバリアフィルムを同じ形状の四角形状に64区画化する場合、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が1.0×10
-3g/m
2/day未満の区画数が全区画数に対して95%以上である、ガスバリアフィルムの製造方法であって、
ケイ素含有高分子化合物を含む組成物を用いて基材フィルム上にガスバリア前駆層を形成し、
前記ガスバリア前駆層の表面部に、ヘリウムガスの存在下で700秒以上プラズマ照射して、前記ガスバリア前駆層を改質することにより、前記ガスバリア層を形成する、ガスバリアフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリアフィルム及びガスバリアフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガスバリアフィルムは、基板材料や封止材料として広く用いられている。ガスバリアフィルムには、水蒸気や酸素等の透過を抑制できる高いガスバリア性が求められることに加えて、例えば、ガスバリアフィルムが貼付される電子デバイス等の貼付対象物の視認性を損なわないように透光性を高くしたり、貼付対象物の軽量性が損なわれないようにしたりすることが求められる。
上記観点から、支持体上に直接無機膜等からなるガスバリア層を形成したり、硬化性化合物を含む硬化性組成物を支持体上に塗布し、得られた塗布層に含まれる硬化性化合物を硬化して薄い樹脂層を形成し、この樹脂層上に直接又は他の層を介して無機膜等からなるガスバリア層を形成したりすることが知られている。
以下、水蒸気や酸素の透過を抑制する特性を「ガスバリア性」、ガスバリア性を有するフィルムを「ガスバリアフィルム」という。
【0003】
ガスバリア性を高めるための手法として、プラズマ照射によって特定のイオンをガスバリア層に注入して改質を行うことが提案されている。
例えば、特許文献1には、ケイ素と、窒素及び酸素から選ばれる1種以上の元素を主成分として含む一次膜が形成された積層体を、特定位置に配された複数の電極間に電力を印加して低圧プラズマ処理・変性することが記載されている。そして、その実施例において、PETフィルム上にポリシラザン膜を塗工し、ヘリウム(He)ガスを用いてプラズマ処理を行ったことが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ポリシラザン化合物を含む層に対して、プラズマイオンビームを用いた改質処理を行うことが記載されている。そして、改質処理を行う際に用いるイオン種として、水素、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノンおよびクリプトンが挙げられており、実施例では主にアルゴンが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-116804号公報
【文献】特許第4956692号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ガスバリアフィルムに対して性能をより向上させることが求められており、高いガスバリア性能を発現すること、膜強度を高めて、外部からの応力負荷への耐性を向上させること、更に、湿熱耐久性を向上させ、ガスバリア性の低下を抑制させること等が求められている。例えば、ガスバリアフィルムは、工業的には、長尺なものとして製造された後ロール状に巻かれて巻回体とされ、上述した電子デバイス等の最終製品に組み込まれる前の中間製品として、保管、輸送されることが多い。このため、ガスバリアフィルムには外部から加えられる応力への耐性や、湿熱環境での性能低下の抑制が求められる。
【0007】
上記特許文献1、2で具体的に作製されたガスバリア層は、改質のための条件を考慮すると、改質領域の厚さが30nm未満と考えられる。このため、ガスバリア層への応力負荷(ロールツーロールでの搬送やラミネート等の後加工)によりガスバリア性が低下したり、また、湿熱耐久性試験時の基材フィルムとの熱、吸湿挙動の差によって生じる応力負荷(膨張・収縮)によりガスバリア性能の低下を招いたりする恐れがある。
【0008】
また、ガスバリアフィルム全体にわたって高いガスバリア性を確保することが要請されるようになっている。特に、ガスバリアフィルムが貼付される対象物のサイズが大きく、それに対応してガスバリアフィルムの面積も大きくする必要がある場合に、このような要請はより強いものとなる。
【0009】
本発明は、上記問題を鑑み、高いガスバリア性及び高い表面弾性率を有し、かつ優れた湿熱耐久性を有する、ガスバリアフィルム及びその製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、表面全体にわたって高いガスバリア性を有するガスバリアフィルム、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ガスバリア層を、ケイ素、酸素、及び窒素を含み、かつ、窒素の元素比率が5at%以上である領域を有するものとし、当該領域を特定の厚さとすることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。また、所定条件で改質処理を行うことにより、上記課題を解決しうることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[12]を提供するものである。
【0011】
[1]ケイ素及び酸素を含むガスバリア層を有し、
前記ガスバリア層の厚さ方向に、ケイ素、酸素、及び窒素を含み、かつ、窒素の元素比率が5at%以上である領域を有し、当該領域の厚さdMが30nm以上存在する、ガスバリアフィルム。
[2]前記ガスバリア層の厚さ方向における、ケイ素、酸素、及び窒素中の各元素の元素比率の変化において、窒素の元素比率が極大値を示す点、ケイ素の元素比率が極大値を示す点、及び、酸素の元素比率が極小値を示す点が存在する、上記[1]に記載のガスバリアフィルム。
[3]40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が、6.0×10-3g/m2/day未満である、上記[1]又は[2]に記載のガスバリアフィルム。
[4]前記ガスバリア層の厚さdGと、前記窒素の元素比率が5at%以上である領域の厚さdMが、1>dM/dG≧0.01の関係を満たす、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のガスバリアフィルム。
[5]前記ガスバリアフィルムの表面弾性率が24.5GPa以上である、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のガスバリアフィルム。
[6]ケイ素及び酸素を含むガスバリア層を有するガスバリアフィルムであって、
前記ガスバリアフィルムを任意に50.5mm×50.5mmの面積の四角形状に切り出し、前記切り出された四角形状のガスバリアフィルムを同じ形状の四角形状に64区画化する場合、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が1.0×10-3g/m2/day未満の区画数が全区画数に対して95%以上である、ガスバリアフィルム。
[7]前記水蒸気透過率が1.0×10-3g/m2/day未満1.0×10-7g/m2/day以上の区画数が全区画数に対して85%以上である、上記[6]に記載のガスバリアフィルム。
[8]40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が、1.0×10-3g/m2/day未満である、上記[6]又は[7]に記載のガスバリアフィルム。
[9]上記[1]~[8]のいずれか一つに記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、
ケイ素含有高分子化合物を含む組成物を用いて基材フィルム上にガスバリア前駆層を形成し、
前記ガスバリア前駆層の表面部にプラズマ照射して、前記ガスバリア前駆層を改質することにより、前記ガスバリア層を形成する、ガスバリアフィルムの製造方法。
[10]前記ガスバリア前駆層の表面部に、ヘリウムガスの存在下で300秒より長い時間プラズマ照射して、前記ガスバリア前駆層を改質することにより、前記ガスバリア層を形成する、上記[9]に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
[11]前記ガスバリア前駆層を電極上に設置し、前記電極に直流電力と交流電力とを重畳して印加しながら、前記ガスバリア前駆層にプラズマ照射を行う、上記[10]に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
[12]前記ガスバリア前駆層の表面部に、ヘリウムガスの存在下で700秒以上プラズマ照射して、前記ガスバリア前駆層を改質することにより、前記ガスバリア層を形成する、上記[9]~[11]のいずれか一つに記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高いガスバリア性及び高い表面弾性率を有し、かつ優れた湿熱耐久性を有する、ガスバリアフィルムを及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、表面全体にわたって高いガスバリア性を有するガスバリアフィルム、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ガスバリアフィルムの一例を示す断面模式図である。
【
図2】ガスバリアフィルムの他の例を示す断面模式図である。
【
図3】ガスバリア層の深さ方向における元素比率の一例を示すグラフである。
【
図4】ガスバリアフィルムの製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るガスバリアフィルムについて説明する。
なお、本明細書において、好ましいとする規定は任意に選択でき、好ましいとする規定同士の組み合わせはより好ましいといえる。
また、本明細書において、「XX~YY」との記載は、「XX以上YY以下」を意味する。
更に、本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
【0015】
1.ガスバリアフィルム
本発明の第1の実施形態に係るガスバリアフィルム(以下、「第1のガスバリアフィルム」ともいう)は、ケイ素及び酸素を含むガスバリア層を有し、上記ガスバリア層の厚さ方向に、ケイ素、酸素、及び窒素を含み、かつ、窒素の元素比率が5at%以上である領域を有し、当該領域の厚さdMが30nm以上存在する、ガスバリアフィルムである。
上記第1のガスバリアフィルムにおいては、ガスバリア層の厚さ方向に、ケイ素、酸素、及び窒素を含み、かつ、窒素の元素比率が5at%以上である領域が存在する。これは、ケイ素と窒素とが結合した硬質な構造を反映したものと考えられ、結果的に高いガスバリア性能や高い表面弾性率を発現するのに有利である。
また、上記領域の厚さが30nm以上であることにより、高ガスバリア性の領域が十分確保されるため、ガスバリア性能がより向上し、また、表面弾性率が増大してガスバリア層の膜強度を高め、外部からの応力負荷への耐性が向上する。
更に、湿熱環境におけるガスバリアフィルムのガスバリア性が低下しにくくなり、湿熱耐久性が向上する。
【0016】
上記厚さdMは、ガスバリア性を高める観点、及び製造容易性の観点から、好ましくは32~500nm、より好ましくは38~300nm、ガスバリア層の強度をより高いものにする観点を加味すると、更に好ましくは48~150nmである。
なお、ケイ素、酸素、及び窒素を含み、かつ、窒素の元素比率が5at%以上である領域の厚さは、ガスバリア層の断面TEM像、及び、XPS測定分析装置を用いた元素分析により測定することができ、具体的には実施例に記載された方法で測定される。
【0017】
本発明の第2の実施形態に係るガスバリアフィルム(以下、「第2のガスバリアフィルム」ともいう)は、ケイ素及び酸素を含むガスバリア層を有するガスバリアフィルムであって、上記ガスバリアフィルムを任意に50.5mm×50.5mmの面積の四角形状に切り出し、上記切り出された四角形状のガスバリアフィルムを、同じ四角形状に64区画化する場合、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が1.0×10-3g/m2/day未満の区画数が全区画数に対して95%以上であり、好ましくは96~100%であり、より好ましくは97~100%である。
上記第2のガスバリアフィルムにおいては、ピンホール等の欠陥に起因する、水蒸気透過性に劣る部位が、ガスバリア層全体にわたって少ないため、ガスバリア層全体が高い水蒸気透過性を有する。
上記第2のガスバリアフィルムは、後述するように、ケイ素含有高分子化合物を含む組成物を用いて形成されたガスバリア前駆層に改質処理を施して作製されるため、ガスバリア層を異種材料からなる複数の層で構成する必要がない。このため、隣り合う異種材料層の接合部の不均一性に起因する欠陥等が生じにくく、ピンホールのない均質なガスバリア層を形成しやすい。
【0018】
1-1.ガスバリアフィルムの構成例
本発明の第1の実施形態に係るガスバリアフィルムの具体的な構成の一例を
図1に示す。
図1(a)の断面模式図に示されるガスバリアフィルム100は、ガスバリア性を有するガスバリア層20からなる。ガスバリア層20は、窒素の元素比率が5at%未満の領域21と、それ以外の領域、つまり、窒素の元素比率が5%以上の領域22とを含む。
以下において、ケイ素、酸素、及び窒素を含み、かつ、窒素の元素比率が5at%以上である領域を「高窒素含有領域」と称し、ケイ素、酸素、及び窒素を含み、かつ、窒素の元素比率が5at%未満である領域を「低窒素含有領域」と称することがある。なお、「高窒素含有領域」は、時間経過と共に厚さが減少しない、経時的に安定した状態における領域をいう。
【0019】
図1(b)の断面模式図に示されるガスバリアフィルム101のように、基材フィルム10と、ガスバリア層20とをこの順に有していてもよい。
この場合、基材フィルム10とガスバリア層20は直接接していてもよいし、基材フィルム10とガスバリア層20との間に他の層が介在していてもよい。
基材フィルム10とガスバリア層20が直接接していれば、ガスバリアフィルム100を薄くしやすくなる。
【0020】
第1のガスバリアフィルムの2つの主面のうち、少なくとも一方の面に剥離シートや保護フィルムが設けられていてもよい。つまり、上記ガスバリアフィルム100であれば、高窒素含有領域22側の表面及び低窒素含有領域21側の表面のうち少なくとも一方に、また、上記ガスバリアフィルム101であれば、基材フィルム10のガスバリア層20とは反対側の面、及び、ガスバリア層20の基材フィルム10とは反対側の面のうち少なくとも一方に、剥離シートや保護フィルムが設けられていてもよい。
剥離シートや保護フィルムを設けることにより、ガスバリアフィルムが、最終製品に用いられる前の中間製品の状態で保管されたり搬送されたりする際に、ガスバリア層20や基材フィルム10を保護することができる。
【0021】
第1のガスバリアフィルムにおいて、上記ガスバリア層は、窒素原子の元素比率が5at%以上の領域(高窒素含有領域)22を含む。ここで、「at%」は原子数比を表す。
図1(a)、(b)に示すガスバリアフィルム100、101のガスバリア層20においては、ガスバリア層20の表層側(ガスバリアフィルム101においては、基材フィルム10とは反対側)に、窒素原子の元素比率が5at%以上の領域(高窒素含有領域)22が存在し、それ以外は、窒素原子の元素比率が5at%未満の領域(低窒素含有領域)21となっている。
【0022】
上記高窒素含有領域は、ガスバリア層の最表面に位置していてもよいし、ガスバリア層の内部に位置していてもよい。良好なガスバリア性と表面弾性を発揮する観点、及び製造容易性の観点からは、ガスバリア層の最表面に位置していることが好ましい。
【0023】
上記第1のガスバリアフィルムにおいて、高窒素含有領域が、深さ方向に複数存在していてもよい。
図2に、第1のガスバリアフィルムの他の例を示す。
図2の断面模式図に示されるガスバリアフィルム102においては、複数のガスバリア層20A、20Bをこの順に備えている。そして、ガスバリア層20Aが、高窒素含有領域22Aと、低窒素含有領域21Aとを含み、ガスバリア層20Bが、高窒素含有領域22Bと、低窒素含有領域21Bとを含む。換言すれば、ガスバリア層の深さ方向に複数の高窒素含有領域が存在する。
このように、複数の高窒素含有領域を含む場合、それらの合計厚さが30nm以上であり、
図2に示すガスバリアフィルム102の場合、高窒素含有領域22Aの厚さd
MAと高窒素含有領域22Bの厚さd
MBとの合計が30nm以上である。
端部からの水蒸気透過を防止する観点から、複数の高窒素含有領域のうち一つが、ガスバリアフィルムの最表面に位置していることが好ましい。
なお、ガスバリアフィルム102のように、高窒素含有領域が深さ方向に複数存在するガスバリア層は、例えば、ガスバリア層を形成するためのガスバリア前駆層の形成と後述する改質処理とを繰り返すことにより得ることができる。
【0024】
上記第1のガスバリアフィルムにおいては、そのガスバリア層の深さ方向において、窒素原子の元素比率は、後述するように、改質処理により高窒素含有領域を形成することによって、最表面から漸次連続的に変化するものとすることができる。
そして、通常、ガスバリア層の厚さ方向における、ケイ素、酸素、及び窒素中の各元素の元素比率の変化において、窒素の元素比率が極大値を示す点、ケイ素の元素比率が極大値を示す点、及び、酸素の元素比率が極小値を示す点が存在する。
【0025】
図3は、ガスバリア層の深さ方向における元素比率の一例を示すグラフである。
図3に示す例では、表面からの深さが20~40nmの領域に、窒素及びケイ素の元素比率が極大値を示す点がそれぞれ存在し、酸素の元素比率が極小値を示す点が存在することが判る。
後述するようなイオン注入によって改質処理が施された領域は、改質によりポリシラザンのSi-H結合及びN-H結合の水素結合が切断される脱プロトン反応により新たにSi-N結合が形成され、緻密な膜構造に変化するものと推定される。このため、改質処理が施された領域においては、窒素の元素比率が高くなり、これに伴って、酸素及びケイ素の元素比率が低下するものと考えられる。
【0026】
上記第1のガスバリアフィルムの厚さは、目的とする電子デバイスの用途等によって適宜決定することができる。上記ガスバリアフィルムの実質的な厚さは、取り扱い性の観点から、好ましくは1~1,000μm、より好ましくは5~200μm、より好ましくは15~100μmである。
なお、「実質的な厚さ」とは、使用状態における厚さをいう。すなわち、上記ガスバリアフィルムは、剥離シートや保護フィルムを有している場合、使用時に除去されるこれらの剥離シートや保護フィルムの厚さは「実質的な厚さ」には含まれない。
【0027】
上記第1のガスバリアフィルムの、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率は、高いガスバリア性を確保する観点から、好ましくは6.0×10-3g/m2/day以下、より好ましくは5.4×10-3g/m2/day以下、更に好ましくは5.0×10-3g×10-3g/m2/day以下、より更に好ましくは4.5×10-3g×10-3g/m2/day以下、より更に好ましくは4.0×10-3g×10-3g/m2/day以下である。
上記水蒸気透過率は、公知の方法によって測定される。
【0028】
上記第1のガスバリアフィルムのガスバリア性能は、高湿度・高熱環境下においても低下しにくいことが望ましい。例えば、ガスバリアフィルムを85℃、85%RHの雰囲気下で500時間静置した後の、ガスバリアフィルムの上記水蒸気透過率の変化率(=(湿熱試験後の値/初期値)×100)が、200%以下であることが好ましく、150%以下であることがより好ましく、120%以下であることが特に好ましい。
【0029】
上記第1のガスバリアフィルムにおいては、ガスバリア性及び表面弾性の向上と、製造容易性の観点から、ガスバリア層の厚さdGと、前記窒素の元素比率が5at%以上である領域(高窒素含有領域)の厚さdMが、1>dM/dG≧0.01の関係を満たすことが好ましく、0.70≧dM/dG≧0.05の関係を満たすことがより好ましく、0.50≧dM/dG≧0.10の関係を満たすことが更に好ましく、0.40≧dM/dG≧0.12の関係を満たすことがより更に好ましく、0.35≧dM/dG≧0.16の関係を満たすことが特に好ましい。
【0030】
ガスバリア層の厚さdGは、ガスバリア性及び表面弾性の向上と、製造容易性の観点から、好ましくは30~1,500nm、より好ましくは50~1,000nm、更に好ましくは60~600nm、より更に好ましくは100~300nmである。
ガスバリア層の厚さdGがナノオーダーであっても、高窒素含有領域を設けることで、充分なガスバリア性能を有するガスバリアフィルムを得ることができる。
【0031】
上記第1のガスバリアフィルムの表面弾性率は、外部負荷への耐性を高める観点、及び製造容易性の観点から、好ましくは24.5~100GPa、より好ましくは25~50GPa、更に好ましくは28~35GPaである。上限に特に制限はないが、製造容易性の観点から、100GPa以下であることが好ましく、50GPa以下であることがより好ましく、35GPa以下であることが特に好ましい。
本明細書において、上記表面弾性率は、表面硬度測定装置を用いて測定される23℃における値であり、具体的には実施例に記載した手順で測定される。
【0032】
上記第2のガスバリアフィルムの基本構成は、上述した
図1及び
図2に示す第1のガスバリアフィルムと同様のものとすることができる。そして、第2のガスバリアフィルムは、当該ガスバリアフィルムを任意に50.5mm×50.5mmの面積の四角形状に切り出し、この切り出された四角形状のガスバリアフィルムを、同じ四角形状に64区画化する場合、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が1.0×10
-3g/m
2/day未満の区画数が全区画数に対して95%以上である。
蒸気透過率が1.0×10
-3g/m
2/day未満の区画数の割合は、具体的には実施例に記載の方法で測定される。
【0033】
第2のガスバリアフィルムは、後述するように、ケイ素含有高分子化合物を含む組成物を用いて作製したガスバリア前駆層に改質処理を施すことによって作製される。この方法で作製されたガスバリアフィルムのガスバリア層はケイ素、酸素、及び窒素を含み、第1のガスバリアフィルムと同様に、ガスバリア層の表面側(基材フィルムとは反対側)に窒素原子の比率が高い領域が形成され、ガスバリア層の裏面側(基材フィルム側)に窒素原子の比率が低い領域が形成される。そして、窒素原子の比率が高い領域において、窒素及びケイ素の元素比率が極大値を示す点がそれぞれ存在し、酸素の元素比率が極小値を示す点が存在するものとなる。
【0034】
第2のガスバリアフィルムにおける窒素原子の比率が高い領域は、例えば、上述した第1のガスバリアフィルムにおける高窒素含有領域と同様の、ケイ素、酸素、及び窒素を含み、かつ、窒素の元素比率が5at%以上の領域である。また、第2のガスバリアフィルムにおける窒素原子の比率が低い領域は、例えば、上述した第1のガスバリアフィルムにおける低窒素含有領域と同様の、ケイ素、酸素、及び窒素を含み、かつ、窒素の元素比率が5at%未満の領域である。以下、第1のガスバリアフィルムに準じて、第2のガスバリアフィルムにおける窒素原子の比率が高い領域を高窒素含有領域と称し、第2のガスバリアフィルムにおける窒素原子の比率が低い領域を低窒素含有領域と称する。また、第2のガスバリアフィルムの高窒素含有領域の厚さをdM’、第2のガスバリア層の厚さをdG’で表す。
【0035】
第2のガスバリアフィルムにおける高窒素含有領域の厚さdM’は、ガスバリア層の表面全体にわたって高いガスバリア性を確保しやすくする観点、及び製造容易性の観点から、好ましくは38~500nm、より好ましくは40~300nm、更に好ましくは48~150nm、より更に好ましくは50~150nmである。
なお、上記厚さdM’は、ヘリウムガスを用いたプラズマイオン照射による改質処理を十分な時間実行することにより、上記範囲に調整することができる。
【0036】
第2のガスバリアフィルムにおけるガスバリア層の厚さdG’は、高いガスバリア性と製造容易性の観点から、好ましくは30~1,500nm、より好ましくは50~1,000nm、更に好ましくは60~600nm、より更に好ましくは100~300nmである。
【0037】
第2のガスバリアフィルムにおいては、ガスバリア層の表面全体にわたって高いガスバリア性を確保しやすくする観点、及び製造容易性の観点から、ガスバリア層の厚さdG’と、高窒素含有領域の厚さdM’が、1>dM’/dG’≧0.01の関係を満たすことが好ましく、0.70≧dM’/dG’≧0.10の関係を満たすことがより好ましく、0.60≧dM’/dG’≧0.15の関係を満たすことが更に好ましく、0.50≧dM’/dG’≧0.20の関係を満たすことがより更に好ましく、0.40≧dM’/dG’≧0.25の関係を満たすことが特に好ましい。
【0038】
上記第2のガスバリアフィルムにおいて、上記水蒸気透過率が1.0×10-3g/m2/day未満1.0×10-7g/m2/day以上の区画数は、ガスバリア層の表面全体にわたるガスバリア性と製造容易性とを両立しやすくする観点から、全区画数に対して、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90~100%、更に好ましくは96~100%以上である。
【0039】
上記第2のガスバリアフィルムの、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率は、好ましくは1.0×10-3g/m2/day未満、より好ましくは8.0×10-4g/m2/day以下、より好ましくは1.0×10-4g/m2/day以下である。第2のガスバリアフィルムの上記水蒸気透過率が上記範囲にあれば、より高いガスバリア性を確保しやすくなる。
【0040】
上記第2のガスバリアフィルムの厚さ、第2のガスバリアフィルムを85℃、85%RHの雰囲気下で500時間静置した後の、第2のガスバリアフィルムの上記水蒸気透過率の変化率、及び、第2のガスバリアフィルムの表面弾性率は、第1のガスバリアフィルムと同様である。
【0041】
1-2.基材フィルム
上記基材フィルムとしては、各種の樹脂製フィルムを用いることができ、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリ乳酸(PLA)フィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィン系フィルム、セルロース系フィルム等が用いられる。
これらの基材フィルムは、それ自身はガスバリア性を実質的に有しておらず(換言すれば、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が10g/m2/day以上であり)、安価で光透過性も良好なものを容易に入手できる。基材フィルムは、表面に、易接着層、プライマー層、オリゴマー析出防止層、易滑層、帯電防止層、ハードコート層など種々の層を有するものであってもよい。コロナ処理、火炎処理等により易接着処理が施されたものであってもよい。
基材フィルムは、アニール処理等の耐熱化処理がされていないものであってもよいし、耐熱化処理が施されたものであってもよい。
【0042】
上記基材フィルムは、延伸ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂等の、それ自身がガスバリア性を有する(換言すれば、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が10g/m2/day未満の)ものであってもよい。なお、ガスバリア性を有する基材フィルムの場合、基材フィルムが外部からの酸素の進入を遮断するため、改質処理後もガスバリア層の元素比率に経時的な変化はほぼ生じない可能性がある。これに対して、実質的にガスバリア性を有していない基材フィルムを用いる場合、改質処理後に基材フィルムを介して酸素が進入する結果、ガスバリア層における非改質領域の組成はSiO2に近くなる。
【0043】
1-3.ガスバリア層及び高窒素含有領域
上記第1及び第2のガスバリアフィルムはケイ素及び酸素を含むガスバリア層を有している。
上記ガスバリア層は、例えば、ケイ素含有高分子化合物を含む組成物の塗膜から形成される。そして、第1のガスバリアフィルムにおいては、ガスバリア層の厚さ方向に、ケイ素、酸素、及び窒素を含み、かつ、窒素の元素比率が5at%以上である領域(高窒素含有領域)が存在し、当該領域の厚さdMが30nm以上存在する。上記厚さが30nm以上であると、ガスバリア性、表面弾性、及び湿熱耐久性に十分に優れたものとなる。また、第2のガスバリアフィルムにおいては、ガスバリア層の厚さ方向に上記高窒素含有領域が存在し、当該領域の厚さdM’が好ましくは38nm以上存在する。
【0044】
上記第1及び第2のガスバリアフィルムの好ましい態様において、高窒素含有領域は、ガスバリア層の最表面に形成され、ガスバリアフィルムが基材フィルムを有する場合は、ガスバリア層の基材フィルムとは反対側に形成されており、第1及び第2のガスバリアフィルムの最外層でもある。このため、このような態様においては、高窒素含有領域が外方へ露出しており、ロールツーロールでガスバリアフィルムを製造する場合、製造工程中にガイドロール等に接触しやすい状態にある。しかし、第1のガスバリアフィルムでは、高窒素含有領域の厚さが30nm以上であり、高いガスバリア性と表面弾性率を有している。このため、製造や搬送時に外部からの負荷を受けても、ダメージを受けにくく、搬送時や保管時の環境変化に対してガスバリア性が変化しにくいものとすることができる。第2のガスバリアフィルムについても同様である。
【0045】
上記ガスバリア層は、ガスバリア前駆層から形成され、好ましくは、上記ガスバリア前駆層としての、ケイ素含有高分子化合物を含む組成物の塗膜を乾燥・硬化して得られた層から形成される層である。そして、上記高窒素含有領域は、後述する改質処理によって形成することができる。
ケイ素含有高分子化合物を含む組成物の塗膜を乾燥・硬化して得られた層に後述する改質処理を施して得られる高窒素含有領域は、ガスバリア性に優れるガスバリア層を効率よく形成することができる。特に、ヘリウムガスの存在下でプラズマ照射を行うことにより、十分な厚さの高窒素含有領域を形成させやすくなる。
【0046】
ケイ素含有高分子化合物を含む層(以下、「ケイ素含有高分子層」ということがある)に改質処理を施して得られるガスバリア層において、用いるケイ素含有高分子化合物は1種単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
【0047】
ケイ素含有高分子化合物としては、ポリシラザン系化合物(特公昭63-16325号公報、特開昭62-195024号公報、特開昭63-81122号公報、特開平1-138108号公報、特開平2-84437号公報、特開平2-175726号公報、特開平4-63833号公報、特開平5-238827号公報、特開平5-345826号公報、特開2005-36089号公報、特開平6-122852号公報、特開平6-299118号公報、特開平6-306329号公報、特開平9-31333号公報、特開平10-245436号公報、特表2003-514822号公報、国際公開WO2011/107018号等参照)、及びポリカルボシラン系化合物(Journal of Materials Science,2569-2576,Vol.13,1978、Organometallics,1336-1344,Vol.10,1991、Journal of Organometallic Chemistry,1-10,Vol.521,1996、特開昭51-126300号公報、特開2001-328991号公報、特開2006-117917号公報、特開2009-286891号公報、特開2010-106100号公報等参照)、ポリシラン系化合物(R.D.Miller、J.Michl;Chemical Review、第89巻、1359頁(1989)、N.Matsumoto;Japanese Journal of Physics、第37巻、5425頁(1998)、特開2008-63586号公報、特開2009-235358号公報等参照)等が挙げられる。
【0048】
これらの中でも、優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成できる観点から、ポリシラザン系化合物が好ましい。ポリシラザン系化合物としては、無機ポリシラザンや有機ポリシラザンが挙げられる。無機ポリシラザンとしてはペルヒドロポリシラザン等が挙げられ、有機ポリシラザンとしてはペルヒドロポリシラザンの水素の一部又は全部がアルキル基等の有機基で置換された化合物等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性、及び優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成できる観点から、無機ポリシラザンがより好ましい。
また、ポリシラザン系化合物は、ガラスコーティング材等として市販されている市販品をそのまま使用することもできる。
ポリシラザン系化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
ケイ素含有高分子層は、上述したケイ素含有高分子化合物の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、硬化剤、他の高分子、老化防止剤、光安定剤、難燃剤等が挙げられる。
【0050】
ケイ素含有高分子層中の、ケイ素含有高分子化合物の含有量は、優れたガスバリア性を発現する高窒素含有領域を形成する観点から、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0051】
ケイ素含有高分子層を形成する方法としては、例えば、ケイ素含有高分子化合物の少なくとも1種、所望により他の成分、及び溶剤等を含有する組成物であるガスバリア層形成用溶液を、公知の方法によって基材フィルム上に塗布し、得られた塗膜を適度に乾燥して形成する方法が挙げられる。
【0052】
上記高窒素含有領域を形成する際に、例えば、上述したようなポリシラザン系化合物を用いる場合は、塗工後の加熱によってポリシラザンの転化反応が生じ、ガスバリア性を有する塗膜となる。
【0053】
ケイ素含有高分子層の厚さは、好ましくは30~1,500nm、より好ましくは40~1,000nm、更に好ましくは60~600nm、より更に好ましくは100~300nmである。
ケイ素含有高分子層の厚さがナノオーダーであっても、後に改質処理を施すことで、充分なガスバリア性能を有するガスバリアフィルムを得ることができる。
【0054】
改質処理の前に、ケイ素含有高分子化合物の転化反応を進行させるための処理を行ってもよい。このような処理の例としては、(a)紫外線照射処理、(b)ケイ素含有高分子化合物を含む組成物の塗膜に、水蒸気を噴霧するスチーム処理、(c)30~60℃程度の環境に180時間以上の長期間保管する方法等が挙げられる。処理の簡便さや短時間で実行できること等の観点から、紫外線照射により転化反応を進行させることが好ましい。
【0055】
上記紫外線照射処理には、真空紫外光とは異なる、波長200nm超の紫外線を用いる。
上記紫外線は、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、キセノンランプ等を用いて照射することができる。
紫外線の波長は、200~400nmが好ましい。すなわち、紫外線の強度の最大値が、波長200~400nmの範囲の領域にあることが好ましい。照射量は、通常、照度50~1,000mW/cm2、光量50~5,000mJ/cm2の範囲である。照射時間は、通常、0.1~1,000秒である。光照射工程の熱負荷を考慮して前述の光量を満たすために、複数回照射しても構わない。
【0056】
上記改質処理は、上記紫外線照射とは異なる処理であり、例えば、イオン注入、真空紫外光照射(エキシマレーザー等の照射)等が改質処理として挙げられる。これらの中でも、高いガスバリア性能が得られる点から、イオン注入が好ましい。イオン注入において、高分子層に注入されるイオンの注入量は、形成するガスバリアフィルムの使用目的(必要なガスバリア性、透明性等)等に合わせて適宜決定すればよい。
【0057】
注入されるイオンとしては、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも1種のイオンが好ましい。
本発明者らの検討によれば、ヘリウムは、アルゴンに比べてガスバリア層の奥深くまで進入しやすく、アルゴンでは達成できない厚さの高窒素含有領域を形成できることが判明している。したがって、高窒素含有領域を厚く形成させやすいという観点から、ヘリウムガスのイオンが特に好ましい。
なお、本発明の効果が損なわれない範囲で、ヘリウムガスのイオンと他のイオンとを併用して注入するようにしてもよい。
【0058】
イオンを注入する方法としては、特に限定されないが、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオンを注入する方法等が挙げられる。中でも、簡便にガスバリア性のフィルムが得られることから、後者のプラズマイオンを注入する方法が好ましい。
【0059】
プラズマイオン注入法としては、(I)外部電界を用いて発生させたプラズマ中に存在するイオンを、ケイ素含有高分子層に注入する方法、又は(II)外部電界を用いることなく、前記層に印加する負の高電圧パルスによる電界のみで発生させたプラズマ中に存在するイオンを、ケイ素含有高分子層に注入する方法が好ましい。
【0060】
前記(I)の方法においては、イオン注入する際の圧力(プラズマイオン注入時の圧力)を0.01~1Paとすることが好ましい。プラズマイオン注入時の圧力がこのような範囲にあるときに、簡便にかつ効率よく均一にイオンを注入することができ、目的のガスバリア層を効率よく形成することができる。
【0061】
前記(II)の方法は、減圧度を高くする必要がなく、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮することができる。また、前記層全体にわたって均一に処理することができ、負の高電圧パルス印加時にプラズマ中のイオンを高エネルギーでケイ素含有高分子層に連続的に注入することができる。更に、radio frequency(高周波、以下、「RF」と略す。)や、マイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、層に負の高電圧パルスを印加するだけで、ケイ素含有高分子層に良質のイオンを均一に注入することができる。
【0062】
前記(I)及び(II)のいずれの方法においても、負の高電圧パルスを印加するとき、すなわちイオン注入するときのパルス幅は、1~15μsecであるのが好ましい。パルス幅がこのような範囲にあるときに、より簡便にかつ効率よく、均一にイオンを注入することができる。
【0063】
また、プラズマを発生させるときの印加電圧は、好ましくは-1~-50kV、より好ましくは-1~-30kV、特に好ましくは-5~-20kVである。印加電圧が-1kVより大きい値でイオン注入を行うと、イオン注入量(ドーズ量)が不十分となり、所望の性能が得られない。一方、-50kVより小さい値でイオン注入を行うと、イオン注入時にフィルムが帯電し、またフィルムへの着色等の不具合が生じ、好ましくない。
【0064】
プラズマイオン注入するイオン種としては、前記注入されるイオンとして例示したのと同様のものが挙げられる。
【0065】
ケイ素含有高分子層にプラズマ中のイオンを注入する際には、プラズマイオン注入装置を用いる。
プラズマイオン注入装置としては、具体的には、(i)マイクロ波等の高周波電力源等の外部電界を用いてプラズマを発生させ、高電圧パルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させるプラズマイオン注入装置、(ii)外部電界を用いることなく高電圧パルスの印加により発生する電界のみで発生するプラズマ中のイオンを注入するプラズマイオン注入装置等が挙げられる。
【0066】
前記(i)及び(ii)のプラズマイオン注入装置を用いる方法については、国際公開WO2010/021326号公報に記載のものが挙げられる。
【0067】
前記(i)及び(ii)のプラズマイオン注入装置では、プラズマを発生させるプラズマ発生手段を高電圧パルス電源によって兼用しているため、RFやマイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、負の高電圧パルスを印加するだけで、プラズマを発生させ、ケイ素含有高分子層に連続的にプラズマ中のイオンを注入し、表面部にイオン注入により改質された部分を有するケイ素含有高分子層、すなわちガスバリア層が形成されたガスバリアフィルムを量産することができる。
【0068】
改質処理の面内均一性、及び改質効率の観点からは、上記ガスバリア前駆層を電極上に設置し、上記電極に直流電力と交流電力とを重畳して印加しながら、上記ガスバリア前駆層にプラズマ照射を行うプラズマイオン注入装置を用いることが好ましい。
【0069】
イオンが注入されたことは、例えば、X線光電子分光分析(XPS)を用いてケイ素含有高分子層の表面からの元素分析測定を行うことによって確認することができる。
【0070】
1-4.剥離シート及び保護フィルム
剥離シートは、ガスバリアフィルムを保存、運搬等する際に、基材フィルムを保護する役割を有し、所定の工程において剥離されるものである。
【0071】
剥離シートは、シート状又はフィルム状のものが好ましい。シート状又はフィルム状とは、長尺のものに限らず、短尺の平板状のものも含まれる。
【0072】
剥離シートとしては、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材;これらの紙基材にポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙;上記紙基材に、セルロース、デンプン、ポリビニルアルコール、アクリル-スチレン樹脂等で目止め処理を行ったもの;あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムやポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム等のプラスチックフィルム;ガラス等が挙げられる。
【0073】
また、剥離シートとしては、取り扱い易さの点から、紙基材や、プラスチックフィルム上に剥離剤層を設けたものであってもよい。剥離剤層を設ける場合には、剥離層は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキッド系剥離剤、オレフィン系剥離剤等、従来公知の剥離剤を用いて形成することができる。
【0074】
保護フィルムは、ガスバリアフィルムを保存、運搬等する際に、ガスバリア層を保護する役割を有し、所定の工程において剥離されるものである。
保護フィルムは、シート状またはフィルム状のものが好ましい。シート状またはフィルム状とは、長尺のものに限らず、短尺の平板状のものも含まれる。
保護フィルムは、通常、ガスバリア層が形成された後に、ガスバリア層の表面に貼付されるので、ガスバリア層から保護フィルムが意図せず脱落したりしないようにする観点から、基材上に粘着剤層を設けた構成であることが好ましい。この場合、保護フィルムのガスバリア層側の表面に粘着剤層を設ける。保護フィルムが粘着剤層を有するものであることによって、保護フィルムがガスバリア層に対して剥離可能に付着することになる。保護フィルムの基材としては、剥離シートと同じ材質・厚さのものを用いることができる。
【0075】
粘着剤層を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリオレフィン系重合体を含む粘着剤、ポリオレフィン系共重合体を含む粘着剤を含む粘着剤等が挙げられる。粘着剤層が、ポリオレフィン系重合体及びポリオレフィン系共重合体の少なくとも一方を含むことがより好ましい。ポリオレフィン系重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、ポリオレフィン系共重合体としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
また、保護フィルム(β)として利用可能な、市販のポリオレフィン系粘着剤を含む保護フィルムとしては、株式会社サンエー化研製サニテクトPAC-3-50THK、サニテクトPAC-2-70等が挙げられる。
【0076】
1-5.ガスバリアフィルムの他の構成例
本発明の第1及び第2の実施形態に係るガスバリアフィルムは、
図1や
図2に示すものに限定されず、本発明の目的を損ねない範囲で、基材フィルム又は基材フィルムとガスバリア層との間、又はガスバリア層上等に、他の層が1層又は2層以上含まれるものであってもよい。
上記他の層としては、例えば、他のガスバリア層、保護層などが挙げられる。また、他の層の配置位置は上記のものに限定されない。
【0077】
また、ガスバリアフィルムは長尺のものであってもよい。この場合、ガスバリアフィルムは、芯材に巻き取られたロール状のものであってもよい。
【0078】
2.ガスバリアフィルムの製造方法
上記第1及び第2のガスバリアフィルムを製造するための、本発明の実施形態に係るガスバリアフィルムの製造方法は、以下の各工程を有する。
・ケイ素含有高分子化合物を含む組成物を用いて基材フィルム上にガスバリア前駆層を形成するガスバリア前駆層形成工程
・前記ガスバリア前駆層に改質処理を施す改質工程
そして、上記ガスバリア前駆層形成工程は、好ましくは以下の各工程を有する。
・ケイ素含有高分子化合物を含む組成物を、基材フィルム上に塗布して塗膜を形成する塗布工程
・前記塗膜を乾燥する工程
この場合、上記改質工程は前記乾燥工程の後に行われる。
【0079】
上記ガスバリアフィルムの製造方法は、より好ましくは以下の各工程を有する。
・ケイ素含有高分子化合物を含む組成物を用いて基材フィルム上にガスバリア前駆層を形成する工程、及び、
・上記改質工程として、上記ガスバリア前駆層の表面部にプラズマ照射して、上記ガスバリア前駆層を改質することにより、上記ガスバリア層を形成する工程
【0080】
そして、上記ガスバリアフィルムの製造方法の第1の態様(以下、ガスバリアフィルムの製造方法(1)ともいう)においては、上記改質工程として、上記ガスバリア層を形成するためのガスバリア前駆層の表面部に、ヘリウムガスの存在下で300秒より長い時間プラズマ照射して、前記ガスバリア前駆層を改質することにより、上記ガスバリア層を形成する工程を有する。ガスバリアフィルムの製造方法(1)は、上述した第1のガスバリアフィルムを得るのに好適な製造方法である。
【0081】
上記ガスバリアフィルムの製造方法(1)においては、上記改質処理によって高窒素含有領域を形成する際に、上記高窒素含有領域形成用の塗膜の加熱開始後、改質工程に先立って紫外線照射工程を行うようにしてもよい。これにより、ガスバリアフィルムにおけるケイ素含有高分子化合物の転化反応を適度に進めることができ、硬質で創痕の生じにくいガスバリアフィルムを得やすくなる。
【0082】
また、上記ガスバリアフィルムの製造方法の第2の態様(以下、「ガスバリアフィルムの製造方法(2)ともいう)は、上記改質工程において、上記ガスバリア前駆層の表面部に、ヘリウムガスの存在下で700秒以上プラズマ照射して、上記ガスバリア前駆層を改質することにより、上記ガスバリア層を形成する。
改質処理を、ヘリウムガスの存在下における700秒以上のプラズマ照射とすることにより、ガスバリア層の平面方向の全域にわたって十分な厚さの改質領域が形成しやすくなる。これにより、ガスバリア性を低下させるピンホールの発生が抑制され、ガスバリア層の全域にわたって高いガスバリア性が確保される。ガスバリアフィルムの製造方法(2)は、上述した第2のガスバリアフィルムを得るのに好適な製造方法である。
【0083】
また、ガスバリアフィルムの製造方法(2)の上記塗布工程においては、ダイコーターを用いて上記ケイ素含有高分子化合物を含む組成物を基材フィルム上に塗布し、得られた塗布層を加熱してガスバリア前駆層を形成するようにしてもよい。
ダイコーターを用いて上記組成物を基材フィルムに塗布することにより、均一な厚さの塗布層を大面積で効率よく形成することができ、結果的に、改質処理において均質な改質領域を形成しやすくなり、ピンホールの発生を低減しやすくなる。
【0084】
ガスバリアフィルムの製造方法(2)の乾燥工程は、ガスバリアフィルムの製造方法(1)の乾燥工程と同様である。
【0085】
図4に、ガスバリアフィルムの製造方法(1)及び(2)の製造工程の一例を示す。
図4(a)~
図4(c)は、基材フィルム上にガスバリア前駆層を形成する工程を示す。
図4(d)が上記改質工程に対応する。以下、図面を適宜参照しながら、ケイ素含有高分子化合物を含む層であるガスバリア前駆層に改質処理を施して得られるガスバリア層を形成する場合を例として、各工程について説明する。
【0086】
2-1.基材フィルムの準備
基材フィルムを準備する(
図4(a)の符号10)。
【0087】
2-2.ガスバリア層の形成
(塗布工程)
上記基材フィルム上に上述したケイ素含有高分子化合物を含む組成物である溶液(以下、「ガスバリア層形成用溶液」ともいう)等を用いて塗膜(
図4(b)の符号21a)を形成する(塗布工程)。
ガスバリア層形成用溶液を塗布する際、上記ガスバリアフィルムの製造方法(1)においては、スピンコーター、ナイフコーター、グラビアコーター等の公知の装置を使用することができる。上記ガスバリアフィルムの製造方法(2)においては、上述したようにダイコーターを用いることが好ましい。
【0088】
(乾燥工程)
次に、この組成物の塗膜を加熱することによって乾燥させる。このようにして、ガスバリア前駆層(
図4(c)の符号21b)を形成する(乾燥工程)。
乾燥方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が採用できる。加熱温度は、通常、80~110℃であり、好ましくは90~105℃である。加熱時間は、通常、数十秒から数十分であり、好ましくは60秒~5分であり、より好ましくは90秒~3分である。
【0089】
(改質工程)
次に、ケイ素含有高分子化合物を含む層を乾燥させて得られたガスバリア前駆層に対して、改質処理を施すことにより、ガスバリア前駆層の表面に高窒素含有領域(
図4(d)の符号22)を形成する(改質工程)。なお、高窒素含有領域以外の領域が低窒素含有領域(
図4(d)の符号21)となる。
改質処理の詳細は上述したとおりである。
【0090】
改質工程における上記プラズマ照射時間は、上記第1のガスバリアフィルムの製造に適したガスバリアフィルムの製造方法(1)においては、少なくとも300秒より長い時間であり、高窒素含有領域の厚さを十分確保する観点、及び製造時のタクトタイムを短縮する観点から、より好ましくは350~10,000秒、更に好ましくは400~5,000秒、より更に好ましくは500~1,000秒である。
また、上記第2のガスバリアフィルムの製造に適したガスバリアフィルムの製造方法(2)においては、改質工程における上記プラズマ照射時間は、少なくとも700秒以上であり、高窒素含有領域の厚さを更に十分確保する観点、及び製造時のタクトタイムを短縮する観点から、より好ましくは750~10,000秒、更に好ましくは800~6,000秒、より更に好ましくは1,000~3,000秒である。
【0091】
(紫外線照射工程)
上述したように、必要に応じて、高窒素含有領域形成用の塗膜の加熱開始後、改質工程に先立って紫外線照射を行う(紫外線照射工程)。
紫外線照射工程の終了から改質工程開始までの時間は、ケイ素含有高分子化合物の転化反応を適度に進める観点から、好ましくは6~144時間、より好ましくは12~120時間、更に好ましくは15~108時間とすることができる。
【0092】
2-3.他の工程
この後、必要に応じて、ガスバリア層上や基材フィルムのガスバリア層とは反対側の面に保護フィルムを設ける。この工程は、例えば、保護フィルムの粘着剤層の形成面を貼付対象面に向けて配置し、気泡を取り込まないように順次押圧することで行われる。
【実施例】
【0093】
次に、本発明の具体的な実施例を説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
後述する実施例及び比較例で作製したガスバリアフィルムのガスバリア層の高窒素含有領域の厚さdM、ガスバリア層の深さ方向における元素比率、ガスバリア層の表面弾性率、ガスバリアフィルムの水蒸気透過率とその耐久性試験は、以下の手順で測定・算出、及び評価した。
【0094】
[表面弾性率]
表面硬度測定装置(MTS社製、ナノインデンター)を用いて、三角錐形の圧子により、圧子の最大押込み深さ100nm、歪速度0.05sec-1、変位振幅2nm、振動周波数45Hzの条件で、実施例1~3及び比較例1~7の、改質処理を経て得られたガスバリア層の23℃における表面弾性率を測定した。
【0095】
[ガスバリア層の高窒素含有領域の厚さd
M、及び深さ方向における元素比率]
実施例及び比較例のガスバリアフィルムについて、高分解能分析電子顕微鏡(FEI社製、TITAN80-300)を用いて、加速電圧200kVの条件で断面TEM観察を行い、得られたHAADF-STEM像からガスバリア層全体の厚さd
G、及び窒素の元素比率が5at%以上である領域(高窒素含有領域)の厚さd
Mを特定した。
また、実施例及び比較例のガスバリアフィルムについて、XPS測定分析装置(アルバックファイ社製、Quantum2000)を用いて、ガスバリア層の表面から深さ方向における各含有原子の元素比率(at%)を測定した。なお、元素比率の測定に当たっては、上記断面TEMの測定結果に基づいて、XPS測定におけるスパッタリング時間を深さに換算することにより、測定の深さ位置とした。
なお、実施例3のガスバリアフィルムについて、ガスバリア層の深さ方向における元素比率を示したグラフを
図3に示す。
【0096】
[水蒸気透過率(WVTR)]
実施例1~3及び比較例1~7にて作製したガスバリアフィルムを50cm2の面積の円形状の試験片に裁断し、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、装置名:AQUATRAN(登録商標)-2)を用い、40℃、相対湿度90%雰囲気下にてガス流量20sccmで水蒸気透過率(g/m2/day)を測定した。なお、測定装置の検出下限は0.05mg/m2/dayである。
【0097】
[平面上の水蒸気透過率(WVTR)の分布]
実施例4、5及び比較例8、9のガスバリアフィルムについて、金属カルシウムを蒸着装置(ALS社製、E-200)にて80nm/minの蒸着レートで20分積層させたガラス基板の金属カルシウム膜上へ、後述する接着シートAの接着剤層を介してガスバリア層の表面を貼合することによりサンプルを作製した。得られたサンプルを40℃、相対湿度90%雰囲気下にて500時間保管した後、上記ガラス基材の裏面側(ガスバリア層とは反対側)から、カルシウム膜を12,000画素のデジタルカメラで撮影した。撮影画像のうち任意に50.5mm×50.5mmの面積の四角形状に切り出し、これを同じ四角形状に64区画に分割し、各区画の水蒸気透過率を以下の計算式(式(1))から算出した。
得られたデジタル画像を、解析ソフトColorCountv1.3を用いて、濃淡を示すスコア100以下を腐食部、スコア101以上を未腐食部とし、腐食部のビット数を全ビット数で除して腐食部の面積の割合をδ/Aの値として算出し、当該値からδ及びAをそれぞれ得た。
水蒸気透過度[g/m2/day]=X×18×2×(104/A)×(24/T)・・・式(1)
・X(40℃、90%RHの条件下で500時間保管後の水酸化カルシウムのモル量)=(δ×t×α×d2)/M2
・T(恒温恒湿処理時間)=500[時間]
・A:腐食性金属(Ca)の面積[cm2]
・δ:腐食された金属(Ca(OH)2)の面積[cm2]
・t(腐食性金属(Ca)の厚さ)=0.000015[cm](=150[nm])
・α(腐食性金属の腐食後の厚さ補正係数)=(M2/d2)/(M1/d1)
・M1(腐食性金属(Ca)の分子量)=40.08
・M2(腐食後の金属水酸化物(Ca(OH)2)の分子量)=74.09
・d1(腐食性金属(Ca)の密度)=1.550[g/cm3]
・d2(腐食後の金属水酸化物(Ca(OH)2)の密度)=2.211[g/cm3]
なお、上記計算式は、特開2005-283561号公報に記載の水蒸気透過度測定に準拠したものである。
【0098】
そして、水蒸気透過率を下記A~Gの7つに区分し、各区分に該当する区画の数を算出し、全区画数中の各区分に該当する区画の存在比率を求め、平面上の水蒸気透過率の分布を調べた。
・A:WVTRが1.0g/m2/day未満1.0×10-1g/m2/day以上の区画
・B:WVTRが1.0×10-1g/m2/day未満1.0×10-2g/m2/day以上の区画
・C:WVTRが1.0×10-2g/m2/day未満1.0×10-3g/m2/day以上の区画
・D:WVTRが1.0×10-3g/m2/day未満1.0×10-4g/m2/day以上の区画
・E:WVTRが1.0×10-4g/m2/day未満1.0×10-5g/m2/day以上の区画
・F:WVTRが1.0×10-5g/m2/day未満1.0×10-6g/m2/day以上の区画
・G:WVTRが1.0×10-6g/m2/day未満1.0×10-7g/m2/day以上の区画
【0099】
<接着シートAの作製>
イソブチレン-イソプレン共重合体(日本ブチル株式会社製、製品名「Exxon Butyl 268」)100質量部に対して、カルボン酸系官能基含有ポリイソプレン系ゴム(株式会社クラレ製、製品名「LIR410」)5質量部、及び、エポキシ系架橋剤(三菱ケミカル株式会社製、製品名「TC-5」)2質量部を加え、トルエンで希釈して、固形分濃度25質量%の接着剤組成物の溶液を調製した。
そして、剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP-PET38T103-1」、厚さ38μm)の剥離処理面上に、上記の接着剤組成物の溶液を塗布し塗膜を形成し、当該塗膜を110℃で1分間乾燥して、厚さ20μmの接着剤層を形成し、接着シートAを得た。
【0100】
[段差ラミネート試験]
実施例1~3及び比較例1~7にて作製したガスバリアフィルムについて、金属カルシウムの退色により水分侵入を評価する方法を用いて、実際の電子デバイスを想定した段差形状を有する被着体へのラミネート試験(段差ラミネート試験)を実施した。
具体的には、まず、中央部に15×15mmの大きさの高さ100μmの四角形状の凸部が形成された、50×50mmのサイズのガラス基板上に、上記凸部を覆うように金属カルシウムを蒸着したものを準備した。次に、各実施例及び比較例で得られたガスバリアフィルムのガスバリア層の表面に封止材(ゴム系粘着剤、商品名「TN-286」、松村石油化学株式会社製)を厚さ20μmとなるように製膜した。そして、上記ガラス基板の凸部を覆うように、上記封止材付きのガスバリアフィルムを貼合し、23℃、50%RHの雰囲気下で100時間静置した後、上記貼合体を観察することにより、以下の基準で評価を行った。
・A:金属カルシウムの退色がない。
・B:金属カルシウムの退色が若干生じている。
・C:金属カルシウムの退色が生じており、実用に適さないレベルである。
【0101】
[湿熱耐久性試験]
実施例1~3及び比較例1~7のガスバリアフィルムを、85℃、85%RHの雰囲気下で500時間静置した後、その水蒸気透過率を上述した手順で測定し、下記の式(2)に基づいて水蒸気透過率の変化率を算出した。
水蒸気透過率の変化率[%]=(湿熱試験後の値/初期値)×100・・・式(2)
そして、以下の基準で湿熱耐久性を評価した。
・A:初期値からの変化率が150%以下
・B:初期値からの変化率が150%超、200%以下
・C:初期値からの変化率が200%超
【0102】
[全光線透過率測定]
実施例1~3及び比較例1~7のガスバリアフィルムについて、JIS K7361-1:1997に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製,製品名「NDH-5000」)を用いて全光線透過率(%)を測定した。全光線透過率が85%以上であれば、光学的に優れているといえる。
【0103】
[実施例1]
厚さが50μmの片面易接着処理がされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製「A-4160」)の非処理面(PET面)に、ペルヒドロポリシラザン(DNF社製、重量平均分子量10,000g/mоl)を塗工し、これを120℃で2分間加熱硬化させることで、ポリシラザン層を形成した。ポリシラザン層の厚さは200nmとした。
次いで、プラズマイオン注入装置を用いて、上記ポリシラザン層に下記条件にてプラズマイオン注入を行うことにより、ポリシラザン層の表面に改質処理を施した。こうして、ガスバリアフィルムを得た。
上記改質処理に用いたプラズマイオン注入装置、及び上記改質処理のプラズマイオン注入条件は以下のとおりである。
<プラズマイオン注入装置>
・RF電源:型番号「RF」56000、日本電子株式会社製
・高電圧パルス電源:「PV-3-HSHV-0835」、株式会社栗田製作所製
<プラズマイオン注入条件>
・プラズマ生成ガス:ヘリウム(He)
・ガス流量:100sccm
・Duty比:0.5%
・繰り返し周波数:1,000Hz
・印加電圧:-8kV
・RF電源:周波数13.56MHz、印加電力1,000W
・チャンバー内圧:0.2Pa
・パルス幅:5μsec
・処理時間(イオン注入時間):400秒
【0104】
[実施例2]
改質処理の処理時間を600秒とした以外は実施例1と同様にガスバリアフィルムを得た。
【0105】
[実施例3]
改質処理の処理時間を800秒とした以外は実施例1と同様にガスバリアフィルムを得た。
【0106】
[比較例1]
改質処理のプラズマ生成ガスをアルゴン(Ar)とし、改質処理の処理時間を200秒とした以外は実施例1と同様にガスバリアフィルムを得た。
【0107】
[比較例2]
改質処理のプラズマ生成ガスをArとし、改質処理の処理時間を300秒とした以外は実施例1と同様にガスバリアフィルムを得た。
【0108】
[比較例3]
改質処理のプラズマ生成ガスをArとした以外は実施例1と同様にガスバリアフィルムを得た。
【0109】
[比較例4]
改質処理のプラズマ生成ガスをArとした以外は実施例2と同様にガスバリアフィルムを得た。
【0110】
[比較例5]
改質処理のプラズマ生成ガスをArとした以外は実施例3と同様にガスバリアフィルムを得た。
【0111】
[比較例6]
改質処理の処理時間を200秒とした以外は実施例1と同様にガスバリアフィルムを得た。
【0112】
[比較例7]
改質処理の処理時間を300秒とした以外は実施例1と同様にガスバリアフィルムを得た。
【0113】
各実施例及び比較例のガスバリアフィルムの測定及び評価の結果を表1に示す。
【0114】
【0115】
表1の結果から明らかなように、実施例1~3のガスバリアフィルムは、いずれもケイ素、酸素、及び窒素を含み、かつ、窒素の元素比率が5at%以上である領域を有し、当該領域の厚さdMが30nm以上存在するものである。そして、ガスバリア性が良好であり、湿熱耐久性試験を経てもガスバリア性の変化が小さい。また、適度な表面弾性率を有しており、段差ラミネート試験の評価も良好である。更に、全光線透過率も非常に高い値を示している。
特に、実施例2、3のガスバリアフィルムは、厚さdMが40nm以上存在しており、これらの特性向上がより顕著であることが判る。
【0116】
なお、
図3のグラフに示すように、実施例3のガスバリアフィルムにおいては、ガスバリア層の深さ方向において、ケイ素、酸素、及び窒素中の各元素の元素比率の変化において、窒素の元素比率が極大値を示す点、ケイ素の元素比率が極大値を示す点、及び、酸素の元素比率が極小値を示す点が、深さ20~40nmの領域に存在することが理解できる。他の実施例のガスバリアフィルムについても同様に、窒素及びケイ素の元素比率の極大値を示す点と、酸素の元素比率の極小値を示す点が存在することが確認できた。
【0117】
これに対して、比較例1~5のガスバリアフィルムは、プラズマ照射に用いるガスをアルゴンに変更したことにより、処理時間を長くしても高窒素含有領域を十分な厚さに形成することができず、厚さdMが30nm未満となっている。このため、ガスバリア性、ガスバリア性能の変化率、表面弾性率、及び段差ラミネート試験の評価がいずれも実施例のガスバリアフィルムより劣っていることが判る。
また、比較例6、7のガスバリアフィルムは、処理時間が実施例1~3よりも短いことにより、高窒素含有領域を十分な厚さに形成することができず、厚さdMが30nm未満となっている。このため、ガスバリア性、ガスバリア性能の変化率、表面弾性率、及び段差ラミネート試験の評価がいずれも実施例のガスバリアフィルムより劣っていることが判る。
【0118】
[実施例4]
厚さが50μmの片面易接着処理がされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製、A-4160」)の非処理面(PET面)に、ペルヒドロポリシラザン(DNF社製、重量平均分子量10,000g/mоl)を、塗工機を用いてロールツーロール方式でダイコート法にて塗工し、これを100℃で2分間加熱硬化させることで、ポリシラザン層を形成した。ポリシラザン層の膜厚は200nmとした。
次いで、プラズマイオン注入装置を用いて、上記ポリシラザン層に下記条件にてプラズマイオン注入を行うことにより、ポリシラザン層の表面に改質処理を施した。こうして、ガスバリアフィルムを得た。
上記改質処理に用いたプラズマイオン注入装置、及び上記改質処理のプラズマイオン注入条件は以下のとおりである。
<プラズマイオン注入装置>
・RF電源:型番号「RF」56000、日本電子株式会社製
・高電圧パルス電源:「PV-3-HSHV-0835」、株式会社栗田製作所製
<プラズマイオン注入条件>
・プラズマ生成ガス:ヘリウム(He)
・ガス流量:100sccm
・Duty比:0.5%
・繰り返し周波数:1000Hz
・印加電圧:-8kV
・RF電源:周波数13.56MHz、印加電力1,000W
・チャンバー内圧:0.2Pa
・パルス幅:5μsec
・処理時間(イオン注入時間):800秒
【0119】
[実施例5]
改質処理の処理時間を1,600秒とした以外は実施例4と同様にガスバリアフィルムを得た。
【0120】
[比較例8]
改質処理のプラズマ生成ガスをアルゴン(Ar)とし、改質処理の処理時間を200秒とした以外は実施例4と同様にガスバリアフィルムを得た。
【0121】
[比較例9]
改質処理の処理時間を200秒とした以外は実施例4と同様にガスバリアフィルムを得た。
【0122】
実施例4、5及び比較例8、9のガスバリアフィルムの測定及び評価の結果を表2に示す。
【0123】
【0124】
表2の結果から明らかなように、実施例4、5のガスバリアフィルムは、水蒸気透過率が1.0×10-3g/m2/day未満の区画である「D」~「G」の区画の合計数が全区画数に対して98%以上であった。また、ガスバリアフィルム全体の水蒸気透過率が低いものであった(2.4×10-4g/m2/day以下)。このため、実施例4、5のガスバリアフィルムは、ガスバリア層全体にわたって、ピンホールの存在が少なく、良好なガスバリア性を有していることが判る。
【0125】
一方、比較例8、9のガスバリアフィルムは、水蒸気透過率が1.0×10-1g/m2/day未満1.0×10-3g/m2/day以上の区画である「B」及び「C」の区画の合計数が実施例4、5のガスバリアフィルムに比べて著しく多く、水蒸気透過率が1.0×10-3g/m2/day未満の区画である「D」~「G」の区画の合計数が全区画数に対して74%以下であった。比較例8、9のガスバリアフィルムは、ガスバリア層全体にわたって、ピンホールの存在が多く、実施例4、5のガスバリアフィルムに比べて、ガスバリア性が低いことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明に係る第1のガスバリアフィルムは、高いガスバリア性及び高い表面弾性率を有し、かつ優れた湿熱耐久性を有する。このため、電子機器、電子部材及び光学部材等の幅広い分野で好適に使用でき、例えば、有機EL素子、有機ELディスプレイ素子、無機EL素子、無機ELディスプレイ素子、電子ペーパー素子、液晶ディスプレイ素子、及び太陽電池素子等に使用することができる。また、外部からの応力に対する耐性を備え、湿熱環境においても性能低下を抑制することができるため、上記の各製品に組み込まれる前の中間製品としても、保管、輸送時に問題を生じにくい。
また、本発明に係る第2のガスバリアフィルムは、フィルム全体にわたって高いガスバリアを有するため、上記第1のガスバリアフィルムと同様に、電子機器、電子部材及び光学部材等の幅広い分野で好適に使用できる。特に、表示素子や太陽電池素子等のサイズが大きい最終製品や中間製品において、画面や受光面等の平面部全体にわたって高いガスバリア性を確保することができる。
なお、本出願は、2022年3月29日付けで出願された日本特許出願(特願2022-053925)に基づいており、その全体が引用により援用される。
【符号の説明】
【0127】
10:基材フィルム
20:ガスバリア層
21:窒素の元素比率が5at%未満の領域(低窒素含有領域)
21a:ケイ素含有高分子化合物を含む組成物の塗膜
21b:塗膜を乾燥・硬化した層(ガスバリア前駆層)
22:窒素の元素比率が5%以上の領域(高窒素含有領域)
100、101、102:ガスバリアフィルム
dG:ガスバリア層の厚さ
dM:窒素の元素比率が5%以上の領域(高窒素含有領域)の厚さ