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  • 特許-発光装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/62 20100101AFI20240704BHJP
【FI】
H01L33/62
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024042821
(22)【出願日】2024-03-18
【審査請求日】2024-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2023149306
(32)【優先日】2023-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】大森 祐治
(72)【発明者】
【氏名】竹下 裕士
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 将英
(72)【発明者】
【氏名】竹下 勇輝
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-199547(JP,A)
【文献】特開2017-069458(JP,A)
【文献】国際公開第2017/174779(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンが形成された基板と、
前記基板に実装された発光素子と、
前記発光素子と前記配線パターンとの間を接続するワイヤと、
透光性を有する有機材料を含有し、前記ワイヤの前記基板に対向する面を覆うように配置される第1保護膜と、
透光性を有する金属酸化物により形成され、前記ワイヤの前記基板の反対側の面を覆うように配置される第2保護膜と、
前記発光素子、前記ワイヤ、前記第1保護膜及び前記第2保護膜を封止する封止材と、を有し、
前記第1保護膜の剛性は、前記封止材の剛性より高い、
を有する、ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第1保護膜は、前記ワイヤの断面視において、前記ワイヤの前記基板に対向する面の一部及び前記第2保護膜の下端を覆い、
前記第2保護膜は、前記ワイヤの前記基板の反対側の面の一部を覆う、
請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1保護膜は、前記ワイヤの断面視において、前記ワイヤの全周を覆い、第2保護膜は、ワイヤ16の前記基板の反対側の面の一部を覆う、
請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記ワイヤは銀であり、
前記第1保護膜は、アクリル樹脂、フッ素化合物及びシリコーン樹脂の少なくとも一つを含む合成樹脂で形成される
請求項1~3の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1保護膜は、前記基板を覆うと共に、前記基板と前記ワイヤとの間を接続する、
請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1保護膜は、前記第2保護膜を介して前記基板を覆う、
請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第1保護膜は、前記第2保護膜を介して前記発光素子を覆う、
請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記発光素子を囲うように前記基板上に配置された反射枠を更に有し、
前記第1保護膜は、前記反射枠の一部を覆う、
請求項7に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(Light Emitting Diode、LED)ダイを発光素子として使用する発光装置において、信頼性を向上させる種々の技術が知られている。特許文献1に記載される発光装置は、基板の実装面に実装された発光素子に接続されるワイヤを、シリカにより形成された保護膜によりを覆うことで、ワイヤの腐食を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-126743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される発光装置では、保護膜は、発光素子に接続する前にワイヤの周囲に配置された場合、ワイヤの可とう性が低下するため、発光素子に接続された後にワイヤの周囲に配置される。しかしながら、発光装置の小型化の進展に伴い、基板の実装面とワイヤとの間の離隔距離が減少し、発光素子に接続されたワイヤの実装面に対向する面に保護膜を配置することは容易ではない。
【0005】
本発明の目的は、このような課題を解決するものであり、異なった種類の材料で、上下からワイヤを良好に保護することが可能となる発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置は、配線パターンが形成された基板と、基板に実装された発光素子と、発光素子と配線パターンとの間を接続するワイヤと、透光性を有する有機材料を含有し、ワイヤの基板に対向する面を覆うように配置される第1保護膜と、透光性を有する金属酸化物により形成され、ワイヤの基板の反対側の面を覆うように配置される第2保護膜とを有する。
【0007】
また、本発明に係る発光装置では、第1保護膜は、基板を覆うと共に、基板とワイヤとの間を接続することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る発光装置では、異なった種類の材料で、上下からワイヤを良好に保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は実施形態に係る発光装置の平面図であり、(b)は(a)に示すA-A線に沿う断面図である。
図2】(a)は図1(b)の破線Bで囲まれた部分の部分拡大図であり、(b)は破線Bで囲まれた部分に対応するワイヤが配置されない部分の部分拡大図である。
図3】(a)は図2(a)に示すC-C線に沿う断面図であり、(b)は第1変形例に係るワイヤ保護構造を示す図であり、(c)は第2変形例に係るワイヤ保護構造を示す図であり、(d)は第3変形例に係るワイヤ保護構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る発光装置について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0011】
図1(a)及び1(b)に示すように、発光装置1は、基板10と、一対の配線パターン11及び12と、一対の電極13及び14と、複数のLEDダイ15と、ワイヤ16と、ソルダーレジスト17と、反射枠18と、封止樹脂19等とを有する。発光装置1は、チップオンボード(Chip on Board、COB)型の発光装置である。
【0012】
基板10は、矩形の平面形状を有し、重畳して配置される実装基板20及び回路基板21を有する。実装基板20は、アルミニウム等の熱伝導率が高い金属により形成され、LEDダイ15が実装される実装面20aを有する。回路基板21は、実装基板20の実装面20aに接着され、中心部には円形の開口部21aが形成される。回路基板21の上面には、開口部21aを取り囲む一対の配線パターン11及び12、並びに対向する角の近傍に配置され、配線パターン11及び12に接続される一対の電極13及び14が形成される。外部電源から一対の電極13及び14の間に所定のしきい値電圧が印加されることに応じて、複数のLEDダイ15が発光して発光装置1は光を出射する。
【0013】
LEDダイ15は、発光素子とも称され、開口部21aから露出している実装基板20の実装面20a上に実装される。発光装置1では、40個のLEDダイ15が実装面20a上に実装される。LEDダイ15は、8個ずつ直列接続された5列のLED列が並列接続されるように、配線パターン11及び12を介して電極13と電極14との間に電気的に接続される。LEDダイ15は、LEDダイ15の順方向電圧の8倍の電圧であるしきい値電圧が電極13と電極14との間に印加されることに応じて、青色光を出射する青色LEDダイである。ワイヤ16は、ボンディングワイヤとも称され、導電部材で形成され、隣接するLEDダイ15の間、並びにLEDダイ15と配線パターン11及び12との間を接続する。ワイヤ16は、銀で形成されることが好ましい。ワイヤ16が銀で形成されていると、青色光領域の波長を有する光のワイヤ16での反射率が高く、発光装置1の出射効率が高まる。また、ワイヤ16は、銀又は銅等の金よりも安価な腐食性の導電部材であってもよい。
【0014】
ソルダーレジスト17は、エポキシ樹脂等の耐熱性絶縁樹脂であり、一対の電極13及び14を除く一対の配線パターン11及び12の表面を全面に亘って覆うように配置される。反射枠18は、シリコーン樹脂等の合成樹脂にシリカ等のフィラーが含有された白色樹脂であり、開口部21aの外縁に沿って配置される。封止樹脂19は、透明樹脂に、YAG等の緑色蛍光体粒子及びCASN等の赤色蛍光体粒子が混合される合成樹脂であり、反射枠18の内側に配置され、LEDダイ15及びワイヤ16を封止する。透明樹脂は、耐熱性の高いシリコーン樹脂が好ましい。発光装置1は、LEDダイ15からの青色光と、一部の青色光によって緑色蛍光体及び赤色蛍光体を励起させて得られる緑色光及び赤色光とを混合させることで白色光を出射する。
【0015】
図2(a)、2(b)及び3(a)を参照して発光装置1におけるワイヤ保護構造を説明する。図2(a)、2(b)及び3(a)において、各構成要素の位置関係及び各構成要素の大きさは模式的に示されると共に、反射枠18及び封止樹脂19の記載は省略される。LEDダイ15は、発光層30と、アノード31と、カソード32とを有する。ワイヤ16は、隣接して配置される一対のLEDダイ15のアノード31とカソード32との間を接続すると共に、LEDダイ15のアノード31を配線パターン11に接続し且つLEDダイ15のカソード32を配線パターン12に接続する。
【0016】
発光装置1は、接着材22と、ダイボンド材23と、第1保護膜24と、第2保護膜25とを更に有する。接着材22は、例えばシリコーン樹脂系又はエポキシ樹脂系の接着部材であり、回路基板21を実装基板20に接着する。ダイボンド材23は、例えばシリコーン樹脂系又はポリイミドシリコーン樹脂系等の合成樹脂を含む接着部材であり、LEDダイ15を実装基板20に実装する。
【0017】
第1保護膜24は、透光性を有する有機材料を含有した部材で形成され、ワイヤ16の実装面20aに対向する面、すなわちワイヤの下面を覆うように配置される。また、第1保護膜24は、実装面20a並びにLEDダイ15の上面及び側面の少なくとも一部を、第2保護膜25を介して覆うように配置される。さらに、第1保護膜24は、反射材18の少なくとも一部を覆うように配置される。第1保護膜24は、第1保護膜24の剛性は、封止樹脂19の剛性よりも高くてもよい。第1保護膜24は、アクリル樹脂、フッ素化合物及びシリコーン樹脂の少なくとも1つを含む合成樹脂で形成されることが好ましい。
【0018】
第2保護膜25は、SiO(シリカ)、Al、ZrO、TiO、MgO又はNb等の透光性を有する金属酸化物をスパッタリングすることにより形成され、ワイヤ16の実装面20aの反対側の面、すなわちワイヤの上面を覆うように配置される。第2保護膜25は、第1保護膜24と共にワイヤ16の周囲を覆う。また、第2保護膜25は、実装面20a並びにLEDダイ15の上面及び側面の少なくとも一部を覆うように配置される。第2保護層25は、シリカで形成されることが好ましい。シリカの屈折率は、封止樹脂19を構成する透明樹脂の屈折率と同じ程度であるので、ワイヤ16で反射した光が迷光することを低減できる。
【0019】
発光装置1の製造方法について説明する。まず、集合基板準備工程において、複数の基板10が一体化された集合基板が準備される。次いで、発光素子実装工程において、集合基板に含まれる複数の基板10の実装面20aの所定の位置にダイボンド材23を介して複数のLEDダイ15が実装される。次いで、ワイヤボンディング工程において、複数のLEDダイ15の間、複数のLEDダイ15と配線パターン11の間、及び複数のLEDダイ15と配線パターン12との間がワイヤボンディングされる。次いで、反射枠配置工程において、反射枠18が実装面20aを囲むように配置される。
【0020】
次いで、第2保護膜配置工程において、第2保護膜25が実装面20a、LEDダイ15及びワイヤ16の上面を覆うように配置される。第2保護膜25は、集合基板の実装面20a以外の表面をマスキングした状態で、透光性を有する金属酸化物からなるターゲットをスパッタリングすることにより、平面視において、実装面20aの全面に亘って第2保護膜25が配置される。ターゲットは、透光性を有する金属酸化物であることにより、実装面20aの全面に亘って安定的に強固な第2保護膜25が配置される。第2保護膜配置工程において、スパッタリングされるターゲットは、シリカであることが更に好ましい。
【0021】
次いで、第1保護膜配置工程において、第1保護膜24が実装面20a並びにLEDダイ15の上面及び側面を覆うように配置される。第1保護膜24は、第1保護膜24の原材料を実装面20aに上方から塗布した後に、実装面20aに塗布された原材料を固化することにより配置される。第1保護膜24は、実装面20aを覆うと共に、実装面20aとワイヤ16の下面の少なくとも一部とを面状に接続するように配置される。
【0022】
第1保護膜配置工程において、第1保護膜24の原材料は、透光性を有する有機材料を含有することが好ましい。第1保護膜24の原材料が有機材料を含有すると、無機材料と比較して低い温度で原材料を固化することが可能となり、原材料を固化することが容易となる。また、固化前の第1保護膜24の原材料は、液状であることが好ましい。固化前の第1保護膜24の原材料が液状であると、実装面20aを安定して覆うことができる。さらに、第1保護膜24の原材料は、アクリル樹脂、フッ素化合物及びシリコーン樹脂のうち少なくとも1つを含む合成樹脂で形成された光透過部材であることが更に好ましい。第1保護膜24の原材料が、アクリル樹脂、フッ素化合物及びシリコーン樹脂のうち少なくとも1つを含む合成樹脂で形成された光透過部材であると、実装面20aとワイヤ16の下面とを安定して接続できる。
【0023】
次いで、封止樹脂配置工程において、反射枠18に囲まれた領域に封止樹脂19が配置される。そして、切断工程において、集合基板が切断されることで、複数の発光装置1が製造される。
【0024】
発光装置1は、ワイヤ16の実装面20aに対向する面に合成樹脂等の有機材料で形成される第1保護膜24を配置することで、ワイヤ16の実装面20aに対向する面を保護できる。また、ワイヤ16の実装面20aに対向する面の反対の面にシリカ等の無機材料で形成される第2保護膜25を配置することで、ワイヤ16の実装面20aに対向する面の反対の面を保護できる。さらに、発光装置1は、第1保護膜24は、実装面20aを覆うと共に、実装面20aとワイヤ16との間を接続するので、ワイヤ16を実装面20aと一体的に固定して、ワイヤ16の信頼性を更に向上できる。
【0025】
第1保護膜24が有機材料を含むようにしたので、ワイヤ16の実装基板20に対向する面に良好に第1保護膜24を形成することが可能となった。特に、図3(a)に示すように、第1保護膜24を実装基板20の表面からワイヤ16までの間を膜が形成されるように接続しようとする場合には、有機材料で形成することが好ましい。一方、第2保護膜25を実装基板20の開口部21a内側全体に均一に形成しようとする場合には、金属酸化物により形成することが好ましい。したがって、ワイヤ16の実装基板20aに対向する面を覆うように配置される第1保護膜が透光性を有する有機材料を含み、ワイヤ16の実装基板20aの反対側の面を覆うように配置される第2保護膜が透光性を有する金属酸化物により形成されることで、上下からワイヤ16を良好に保護することが可能となる。
【0026】
図3(b)は第1変形例に係るワイヤ保護構造を示す図であり、図3(c)は第2変形例に係るワイヤ保護構造を示す図であり、図3(d)は第3変形例に係るワイヤ保護構造を示す図である。なお、図3(b)~3(d)は図3(a)の破線Dに対応する部分のみを示した断面図である。図3(b)~3(d)において、符号24b~24dは第1保護膜を示し、符号25b~25dは第2保護膜を示す。
【0027】
図3(b)に示すように、第1保護膜24bは、ワイヤ16の断面視において、ワイヤ16の下面の一部を覆い、第2保護膜25bは、ワイヤ16の上面の一部を覆い、ワイヤ16は、上面及び下面の一部は保護膜に覆われない。
【0028】
図3(c)に示すように、第1保護膜24cは、ワイヤ16の断面視において、ワイヤ16の下面の一部及び第2保護膜25cの下端を覆い、第2保護膜25cは、ワイヤ16の上面の一部を覆うことで、ワイヤ16は、全周に亘って保護膜に覆われる。
【0029】
図3(d)に示すように、第1保護膜24dは、ワイヤ16の断面視において、ワイヤ16の全周を覆い、第2保護膜25dは、ワイヤ16の上面の一部を覆うことで、ワイヤ16は、全周に亘って保護膜に覆われる。
【0030】
第1~第3変形例に係るワイヤ保護構造は、ワイヤ16の一部の場所で構成されていればよい。また、第1~第3変形例に係るワイヤ保護構造は混在しても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 発光装置 16 ワイヤ 24 第1保護膜 25 第2保護膜
【要約】
【課題】ワイヤの実装面に対向する面に保護膜が配置可能な発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置1は、配線パターン11及び12が形成された基板10と、基板10に実装された発光素子15と、発光素子15と配線パターン11及び12との間を接続するワイヤ16と、透光性を有する有機材料を含有し、ワイヤ16の基板10に対向する面を覆うように配置される第1保護膜24と、透光性を有する金属酸化物により形成され、ワイヤ16の基板10の反対側の面を覆うように配置される第2保護膜25とを有する。
【選択図】図2
図1
図2
図3