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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】リスク管理支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/12 20230101AFI20240704BHJP
【FI】
G06Q40/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024068516
(22)【出願日】2024-04-19
【審査請求日】2024-04-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503093062
【氏名又は名称】有限責任あずさ監査法人
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇宿 哲平
【審査官】中野 修平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2024/057589(WO,A1)
【文献】特開2022-020149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検討対象文書の中に会計又は税務に関して専門家に相談すべき論点が含まれていれば検出するリスク管理支援システムであって、
会計又は税務の論点に関する情報が収容されたデータベース部と、
前記検討対象文書を取り込む文書取得部と、
前記検討対象文書に含まれる文言と前記データベース部の情報とを対比することで前記検討対象文書に関係する関連情報を前記データベース部から抽出する関連情報抽出部と、
前記検討対象文書に含まれる文言と抽出された前記関連情報とに基づいて、前記検討対象文書に前記論点があるか否かを判定する論点判定部とを備えていることを特徴とするリスク管理支援システム。
【請求項2】
前記データベース部には、取引に対する会計上又は税務上の検討事項を有する事例が、前記論点及び会計又は税務に関する基準又は法律と関連付けられて収録されていることを特徴とする請求項1に記載のリスク管理支援システム。
【請求項3】
前記論点判定部において前記論点があると判定された場合に、予め設定された通知先に判定結果に基づく通知を行う通知送信部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のリスク管理支援システム。
【請求項4】
前記検討対象文書は、議事録又は稟議書であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリスク管理支援システム。
【請求項5】
前記関連情報抽出部では、キーワード検索又はベクトル検索によって、前記事例、前記論点並びに前記会計又は税務に関する基準又は法律の少なくとも一つを前記関連情報として抽出することを特徴とする請求項2に記載のリスク管理支援システム。
【請求項6】
前記論点判定部では、前記検討対象文書を管理する企業に設定された基準額の情報も使用して前記判定を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のリスク管理支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検討対象文書の中に会計又は税務に関して専門家に相談すべき論点が含まれていれば検出するリスク管理支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に開示されているように、契約書の作成又は作成された契約書を審査する際に、経験や知識が乏しい担当者であっても、効率的かつ正確に契約書を作成又は審査できるようにするシステムが開発されている。
【0003】
例えば特許文献1の文書審査支援装置では、審査の対象である文書と、契約時のリスクに関する確認項目を含むチェックリストとを同一画面上に表示させ、チェックリストに含まれる確認項目に対する確認結果として入力された内容を含む作業記録を作成する。
【0004】
一方、会計又は税務の分野においては、複雑な取引や新たな会計基準・税法等が導入されることにより、企業が会計・税務処理おいて高度な判断を求められる機会が増えている。そして企業は、複雑な会計・税務処理が必要となる場合、会計・税務の専門家に助言を求めることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2023-64113号公報
【文献】特開2023-88560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、企業の担当者が、専門家に相談する必要があるような会計上又は税務上の論点があることを察知できなかった場合は、専門家からの助言を得ないまま誤った会計・税務処理を行ってしまうリスクがある。こうしたリスクの低減は、チェック項目が明確な契約書を対象とする特許文献1,2に開示されているようなシステムの使用では限界がある。
【0007】
そこで本発明は、検討対象文書の中に会計又は税務に関して専門家に相談すべき論点があれば自動的に検出することができるリスク管理支援システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明のリスク管理支援システムは、検討対象文書の中に会計又は税務に関して専門家に相談すべき論点が含まれていれば検出するリスク管理支援システムであって、会計又は税務の論点に関する情報が収容されたデータベース部と、前記検討対象文書を取り込む文書取得部と、前記検討対象文書に含まれる文言と前記データベース部の情報とを対比することで前記検討対象文書に関係する関連情報を前記データベース部から抽出する関連情報抽出部と、前記検討対象文書に含まれる文言と抽出された前記関連情報とに基づいて、前記検討対象文書に前記論点があるか否かを判定する論点判定部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記データベース部には、取引に対する会計上又は税務上の検討事項を有する事例が、前記論点及び会計又は税務に関する基準又は法律と関連付けられて収録されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
このように構成された本発明のリスク管理支援システムは、会計又は税務の論点に関する情報が収容されたデータベース部の情報と、文書取得部によって取り込まれた議事録や稟議書などの検討対象文書とを、関連情報抽出部で対比して関連情報を抽出する。そして、抽出された関連情報と検討対象文書とに基づいて、会計又は税務に関して専門家に相談すべき論点があるか否かを論点判定部で判定する。
【0011】
このため、検討対象文書の中に会計又は税務に関して専門家に相談すべき論点があれば、自動的に検出することができる。また、データベース部に、取引に対する会計上又は税務上の検討事項を有する事例が論点及び基準等と関連付けられて収録されていれば、実務に即した論点を的確に検出することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態のリスク管理支援システムの構成を説明するブロック図である。
図2】データベース部に収容される事例データの説明図である。
図3】データベース部に収容される基準データの説明図である。
図4】データベース部に収容される基準変更点データの説明図である。
図5】関連情報として抽出された事例データの説明図である。
図6】関連情報として抽出された基準データの説明図である。
図7】機械学習に使用するデータセットを例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態のリスク管理支援システム1の構成を説明するブロック図である。
【0014】
本実施の形態のリスク管理支援システム1は、会計又は税務の分野において、複雑な会計処理又は税務処理が必要となる場合に、たとえ企業の担当者が、相談する必要があるような会計上又は税務上の論点があることを察知できなかったとしても、専門家からの助言を求めることができるようにするための装置である。以下では、主に会計の分野を例にして説明する。
【0015】
本実施の形態のリスク管理支援システム1では、図1に示すように、入力装置2や記憶部(4,41)や各種データベース(21,22)などから入力されたデータに基づいて、演算処理部3などで演算処理又は演算処理結果の取得を行い、表示装置5や通知装置51に結果などを出力させる。
【0016】
各種データの入力を行うための入力装置2は、パーソナルコンピュータ(PC)、ノートパソコン、タブレット端末、ウェアラブル端末、スマートフォンなどに接続又は装備されたデータ入力手段である。入力装置2には、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、タッチパッド、スキャナ、音声入力用のマイク、カメラなどが該当する。
【0017】
一方、表示装置5には、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro- Luminescence)ディスプレイ、プリンタなどが使用できる。また、通知装置51には、電子メールを送信するメーラー、各種チャットツール、各種メッセージツールなどの電子的手法が使用できる。
【0018】
演算処理部3は、ハードウェアとしては、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などによって構成され、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリを備えている。
【0019】
演算処理部3は、コンピュータにインストールされたアプリケーションによって各種機能を実行させることができる。また、インターネットなどのネットワークを介して接続されたサーバなどに、演算処理部3の一部又は全部を実行させることもできる。ネットワークは、インターネット、WAN(Wide Area Network)、有線LAN(Local Area Network)、無線LAN(Wi-Fi)、プロバイダ装置、無線基地局、専用回線などの一部又は全部によって構成される。
【0020】
記憶部4は、演算処理部3における処理に使用するデータや、演算処理によって生成されたデータなどを記録させる記憶媒体で、ハードディスク、ソリッドステートドライブ(SSD)、フラッシュメモリ(SDメモリーカードなど)、磁気ディスク、光ディスクなどが該当する。また、ネットワークで接続されるサーバなどの外部のオンラインストレージ(クラウドストレージ)を、記憶部4として使用することもできる。なお、機械学習モデルを記憶させる記憶媒体の領域は、学習モデル記憶部41という符号を付けて区別して説明するが、ハードウェアとしては記憶部4と一体であっても別体であってもよい。
【0021】
リスク管理支援システム1の演算処理部3は、検討対象文書を取り込む文書取得部31と、データベース更新部32と、検討対象文書に関係する関連情報を抽出する関連情報抽出部33と、検討対象文書に論点があるか否かを判定する論点判定部34と、通知送信部35とによって、主に構成される。
【0022】
本実施の形態で説明する検討対象文書は、会計に関して専門家に相談すべき論点が含まれている可能性があるあらゆる書類である。例えば、企業の取引に関して作成される議事録や稟議書などの書類が、検討対象文書に該当する。
【0023】
議事録などの検討対象文書は、日常業務のなかで、管理システムなどによって、随時、文書蓄積部21となるデータベースに蓄積させておくことができる。文書取得部31では、文書蓄積部21に収容された文書を自動的に取り込んで、論点の有無を判定させることもできるし、適宜、選定された文書を文書蓄積部21などから取り込んで、論点の有無を判定させることもできる。
【0024】
データベース部22は、会計の論点に関する情報が収容されたデータベースである。例えば、企業の取引等とそれに対する会計上の検討事項がまとめられた事例、会計に関する基準や法律などを、データベース部22に記録する。会計に関する基準には、会計基準、監査基準、会計基準・監査基準等の変更点の情報などが該当する。
【0025】
図2は、データベース部22に収容される事例データの説明図である。例えば、物品の販売にその物品の保守サービスが付帯する場合、顧客からの代金は一括で支払われていても、保守サービスにかかる売上は、一括では計上せずに保守期間に渡って計上することが求められる場合がある。このような場合において、企業の担当者がそのような会計処理が必要であることを認識しておらず、これまでの物品販売と同様の処理を行うと会計上誤った処理になるため、論点のある事例としてデータベース部22に記録する。
【0026】
図2に示した事例テーブルでは、取引等の内容を記録するとともに、それに関連付けて論点(収益認識に関する会計基準)と、その論点が参照すべき関連会計基準等のタイトルなどを記録する。また、事例にキーワードを関連付けて記録しておくこともできる。
【0027】
図2に示したように、会計上の論点はいくつもあり、論点ごとに参照すべき関連会計基準を選定することができる。また、同じ論点であっても取引内容が異なっていたりすることもあるので、取引内容の異なる多くの事例をデータベース部22に蓄積しておくことが望ましい。事例に関連付けるキーワードについては、例えば取引内容や論点や関連会計基準などに記載された用語などから選定することができる。
【0028】
図3は、データベース部22に収容される基準データの説明図である。基準テーブルでは、会計基準や監査基準などの種別と、基準の内容を示すタイトルと、基準の内容とを関連付けて記録する。
【0029】
例えば会計基準には、図3に例示したように、収益認識に関する会計基準、固定資産の減損に係る会計基準の適用指針、金融商品に関する会計基準など、いくつもの基準や指針がある。また、監査基準にも、会計上の見積りの監査、グループ監査における特別な考慮事項などのいくつもの基準や指針がある。これらの基準データをデータベース部22に蓄積しておくことで、事例に関連付けられた会計基準などの内容を、関連情報として容易に抽出することができるようになる。
【0030】
データベース更新部32では、上述したような論点のある事例が新たに発生した場合や、会計基準・監査基準等に変更があった場合に、データベース部22にそれらの情報を追加する。またデータベース更新部32では、データベース部22に収容しておくのが適切でなくなった事例や基準等の削除を行うこともできる。
【0031】
図4は、データベース部22に収容される基準変更点データの説明図である。基準変更点テーブルでは、基準の種別及びタイトルに関連付けて、変更前の内容と、変更後の内容と、変更のポイントとを、変更日の情報とともに記録する。変更日の情報には、改正日と適用日とがあり、検討対象文書と適用日との関係に基づいて、抽出する関連情報の選択をすることもできるようになる。
【0032】
関連情報抽出部33では、検討対象文書に含まれる文言とデータベース部22の情報とを対比することで、検討対象文書に関係する関連情報をデータベース部22から抽出する。すなわち、議事録等に記載された内容から、それに関連する事例や会計基準等の情報を、関連情報抽出部33によってデータベース部22から取得する。
【0033】
関連情報抽出部33による取得においては、キーワード検索やベクトル検索を使って、関連する事例や関連する会計基準等を取得することができる。また、トピックモデルなどを使うこともできる。
【0034】
キーワード検索は、例えば図2に示したように、データベース部22に収容された事例テーブルにキーワードが紐づけて記録されていれば、議事録等にキーワードが含まれていた場合に、関連事例として抽出することができる。例えば、「保守サービス」というキーワードが含まれる場合は、「収益認識に関する会計基準」が事例に紐づけられているので、図3に示した基準テーブルの「収益認識に関する会計基準」の内容と併せて、関連情報として事例及び関連会計基準を抽出することができるようになる(図5図6参照)。また、基準データ(図3)や基準変更点データ(図4)から、キーワード検索によって、直接、関連会計基準や会計基準・監査基準等の変更点の情報を、関連情報として抽出することもできる。
【0035】
関連情報抽出部33にベクトル検索を行わせる場合は、文章のベクトル化とベクトルの類似度によって対応させる。例えば、予めデータベース部22に収容された事例や会計基準等の情報を、学習モデル記憶部41などに記録された機械学習モデルを利用してベクトル化しておく。そして、文書蓄積部21から文書取得部31によって取得された議事録等のデータをベクトルに変換し、それらのベクトル化されたデータ同士を比較することで、データベース部22に収容された関連事例や関連会計基準などを特定して、関連情報として抽出する。
【0036】
また、関連情報抽出部33による関連情報の抽出に、機械学習モデルを利用することもできる。例えば図7に示すように、過去の稟議書等の情報と対応する事例等の情報を教師データ用のデータセットとして機械学習を行い、それによって生成された機械学習モデルを学習モデル記憶部41に記録しておく。そうすることで、新たに取得された検討対象文書に関連する事例等を、データベース部22から抽出することができるようになる。また、OpenAI社などの外部機関が提供する機械学習モデルを、API(Application Programming Interface)経由で利用してデータベース部22から抽出することもできる。このようにして関連事例、論点、関連会計基準及び基準変更点の情報の少なくとも一つを、関連情報として抽出することができる。
【0037】
また、既存の大規模言語モデル(LLM:Large language Models)をファインチューニングすることにより、議事録等から関連事例等を判断することができる関連情報抽出部33用のモデルを構築してもよい。
【0038】
このように関連情報抽出部33によってデータベース部22から関連情報を抽出する処理を行うのは、会計基準等の更新が頻繁に行われる会計の分野においては、常に最新の会計基準を機械学習させておくことの負担が大きいことにもよる。そこで、関連情報として参考にする情報の絞り込みを行ったうえで、論点判定部34により論点の有無を判定させる。
【0039】
論点判定部34では、検討対象文書に含まれる文言と関連情報抽出部33によって抽出された関連情報とに基づいて、検討対象文書に論点があるか否かを判定する。例えば必須キーワードの設定や大規模言語モデル(LLM)による処理を使って、議事録等に記載されている内容が、会計事務所や監査法人等に相談するべき会計的な論点等を含むものであるか否かを判定する。
【0040】
例えばキーワードを使用して論点判定部34で論点の有無を判定させる場合は、複数のキーワードを設定して、それらをすべて含んでいる検討対象文書についてのみ、論点があると判定させることができる。例えば、「新商品販売」と「保守サービス」という2つのキーワードを指定して、両方のキーワードを含む場合に、議事録等に相談すべき論点があると判定させる。
【0041】
また、論点判定部34では、検討対象文書と関連情報との対比だけでなく、会計監査の対象とする企業の規模等から設定した基準額を設定しておくことで、会計的な論点等を含むかの判断の際に、影響額が基準額を超えるものに絞ることもできるようになる。ここで、影響額の算定においては、為替レートの情報を用いて換算を行うこともできる。
【0042】
一方、議事録等の情報と関連情報とを大規模言語モデルなどの自然言語処理モデルへのインプットとして、議事録等に記載されている内容が論点等を含むものであるか否かを判定させることもできる。
【0043】
例えば大規模言語モデル(LLM)に、以下のようなプロンプトを入力することにより判断する。
「関連する以下の会計基準等を参考に稟議書に会計的な論点を含んでいるかを判断し、含んでいる場合は、Yesとどのような論点があるかを返し、含まれていない場合はNoを返して。金額的にどれくらいの影響があるかわかる場合は、その金額も返し、分からない場合は「不明」と返して」
#### 回答例
## 影響がある場合、
“影響有無”:”Yes”,“論点”:”固定資産の収益性低下に関する稟議であり、固定資産の減損要否を検討する必要がある,“影響額":"100,000,000円”}
## 影響がない場合
{“影響有無”:”No”}
##### 会計基準等(関連情報としてインプットされた会計基準)
収益認識に関する会計基準 用語の定義・・・
##### 稟議文書(検討対象文書)
新商品XXの発売について
XXXX年X月X日より、新商品Aを発売する。
単価は10万円であり、1年間の販売目標を1億円とする。
本商品には、3年間の保守サービスを付帯する。
【0044】
大規模言語モデルの回答としては、以下のような例示ができる。
-{“影響有無”:”Yes”,“論点”:”保守サービスが付帯する新商品の発売に関する稟議であり、保守サービスの収益認識を検討する必要がある,“影響額":"100,000,000円”}
-{“影響有無”:”No”}
【0045】
通知送信部35では、論点判定部34の判定結果(回答)を表示装置5に表示させるとともに、設定に応じて、会計的な論点等を含んでいる場合には、会計事務所や監査法人等の予め設定された通知先に、判定結果に基づく通知を通知装置51によって自動的に行わせることができる。
【0046】
会計事務所等に自動通知を行わない場合は、例えば企業の担当者が、論点判定部34の判定結果(回答)から通知の要否を判断して、通知が必要と判断して通知送信部35に送信指示が与えられた場合にだけ、通知装置51によって会計事務所等に通知を行うという構成にすることもできる。
【0047】
以下、本実施の形態のリスク管理支援システム1の利用方法について説明する。
まず、日常の業務において、会議の議事録や稟議書などの書類が文書蓄積部21に蓄積されていく(図1参照)。その中には、会計に関して専門家に相談すべき論点が含まれている可能性がある書類が含まれている。
【0048】
一方、データベース部22については、企業の取引等とそれに対する会計上の検討事項がある事例が新たに発生したタイミング(図2参照)や、会計基準又は監査基準に変更があったタイミング(図4参照)で、データベース更新部32によってデータの更新が行われる。
【0049】
本実施の形態のリスク管理支援システム1は、企業の会計担当者が、相談する必要があるような会計上の論点があることを察知できなかったとしても、専門家からの助言を求めることができるようにするための装置である。このため、文書取得部31によって、逐次、文書蓄積部21に新たに記録された文書を自動的に取得させて判定をするという利用の仕方がある。また、決算期の前などに、まとめて関係する部署の文書を、会計担当者の操作によって文書取得部31に取得させる利用の仕方であってもよい。
【0050】
文書取得部31でリスク管理支援システム1に取り込まれた文書(検討対象文書)は、関連情報抽出部33によって、データベース部22から関連情報が抽出される。関連情報は、例えば類似度という指標を用いて、類似度が高いものから抽出される。関連情報として抽出する関連事例や関連会計基準などの数(類似度の順位)や類似度の閾値などは、任意に設定することができる。
【0051】
一方、関連情報抽出部33によって関連事例や関連会計基準などの関連情報が抽出された場合は、論点判定部34によって検討対象文書に、会計事務所や監査法人等に相談するべき会計的な論点があるか否かの判定を行わせる。
【0052】
そして、論点判定部34によって、会計事務所等に相談するべき会計的な論点があると判定された場合は、通知送信部35及び通知装置51によって、会計事務所等に検討対象文書が送信される。なお、会計事務所等に送信を行う前に、会計担当者が表示装置5に表示された論点判定部34の判定結果を判断して、最終的な送信の可否を決定するという利用の仕方であってもよい。
【0053】
次に、本実施の形態のリスク管理支援システム1の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態のリスク管理支援システム1は、会計の論点に関する情報が収容されたデータベース部22の情報と、文書取得部31によって取り込まれた議事録や稟議書などの検討対象文書とを、関連情報抽出部33で対比して関連情報を抽出する。そして、抽出された関連情報と検討対象文書とに基づいて、会計に関して専門家に相談すべき論点があるか否かを論点判定部34で判定する。
【0054】
このため、検討対象文書の中に会計に関して専門家に相談すべき論点があれば、自動的に検出することができる。また、データベース部22に、取引に対する会計上の検討事項を有する事例が論点及び基準等と関連付けられて収録されていれば、実務に即した論点を的確に検出することができるようになる。
【0055】
また、論点判定部34において論点があると判定された場合に、予め設定された会計事務所等の通知先に判定結果に基づく通知を行う通知送信部35を備えることによって、迅速かつ効率的に、関係機関がリスク低減のための検討に着手することができるようになる。
【0056】
また、論点判定部34において、検討対象文書を管理する企業に設定された基準額の情報も使用して論点の有無を判定するのであれば、企業の利益規模、資産規模等の規模に応じた適切な論点の検討を行うことができるようになる。
【0057】
さらに、関連情報抽出部33によってデータベース部22から関連情報を抽出してから論点判定部34により論点の有無を判定させるのであれば、最新の会計基準等を逐次、取り込むことが簡単にできるようになり、実務に即したリスク低減を図ることが可能になる。
【0058】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0059】
例えば、前記実施の形態では、主に会計の分野を例にして説明したが、これに限定されるものではなく、税務上の論点の有無を判定させる場合には、データベース部22に税務上の検討事項を有する事例を、論点及び税法や税法の変更点などと関連付けて収容させておけばよい。
【符号の説明】
【0060】
1 :リスク管理支援システム
21 :文書蓄積部
22 :データベース部
31 :文書取得部
33 :関連情報抽出部
34 :論点判定部
35 :通知送信部
【要約】
【課題】検討対象文書の中に会計又は税務に関して専門家に相談すべき論点があれば自動的に検出することができるリスク管理支援システムを提供する。
【解決手段】検討対象文書の中に会計又は税務に関して専門家に相談すべき論点が含まれていれば検出するリスク管理支援システム1である。
そして、会計又は税務の論点に関する情報が収容されたデータベース部22と、検討対象文書を取り込む文書取得部31と、検討対象文書に含まれる文言とデータベース部の情報とを対比することで検討対象文書に関係する関連情報をデータベース部から抽出する関連情報抽出部33と、検討対象文書に含まれる文言と抽出された関連情報とに基づいて、検討対象文書に論点があるか否かを判定する論点判定部34とを備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7