(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】土壌改質材及びそれを含む土壌
(51)【国際特許分類】
E01C 13/00 20060101AFI20240704BHJP
C09K 17/00 20060101ALI20240704BHJP
C09K 17/14 20060101ALI20240704BHJP
C09K 17/18 20060101ALI20240704BHJP
C09K 17/40 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
E01C13/00 A
C09K17/00 P
C09K17/14 P
C09K17/18 P
C09K17/40 P
(21)【出願番号】P 2024083163
(22)【出願日】2024-05-22
(62)【分割の表示】P 2023162854の分割
【原出願日】2023-09-26
【審査請求日】2024-05-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】110003890
【氏名又は名称】弁理士法人SIPPs
(72)【発明者】
【氏名】前田 勇大
(72)【発明者】
【氏名】渡貫 辰彦
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 賢智
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-088871(JP,A)
【文献】特開2003-253135(JP,A)
【文献】特開2008-56742(JP,A)
【文献】特開2018-9376(JP,A)
【文献】特開2009-79120(JP,A)
【文献】特開2006-328404(JP,A)
【文献】特開2009-67841(JP,A)
【文献】特開2020-90623(JP,A)
【文献】特開2005-154466(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1581238(KR,B1)
【文献】国際公開第2022/165493(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 13/00
C09K 17/00
C09K 17/14
C09K 17/18
C09K 17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌用母材及び土壌改質材を含む、土壌であって、
前記土壌改質材が、骨材、アスファルト、及び可塑剤を含み、前記可塑剤が、
脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、又はこれらの混合物を含み、
前記土壌用母材の含有量が、50~90体積%であり、前記土壌改質材の含有量が、10~50体積%である、土壌。
【請求項2】
前記土壌改質材の、前記骨材の含有量が、90~99質量%であり、前記アスファルト及び前記可塑剤の合計の含有量が、1~10質量%であり、前記可塑剤の含有量が、前記アスファルト100質量部に対して5~50質量部である、請求項1に記載の土壌。
【請求項3】
前記土壌用母材が、赤土及び山砂を含む、請求項1に記載の土壌。
【請求項4】
請求項1に記載の土壌を表層に含む、屋外運動場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌改質材及びそれを含む土壌に関する。
【背景技術】
【0002】
野球場、校庭、公園等の各種の屋外運動場においては、表層に土壌が用いられている。表層の土壌は、風による影響、運動者の靴による衝撃等によって、表面に土埃が発生することがある。
【0003】
そこで、これらの土壌には、防塵剤が使われる場合がある。例えば、特許文献1は、ポリブテンエマルションを含む、屋外運動場用の防塵剤が開示されている。
【0004】
また、特許文献2は、骨材、アスファルト、及びポリブテンを含む、屋外運動場用の土壌改質材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-67841号公報
【文献】特開2021-88871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
屋外運動場の土壌は、特に寒冷地において、冬期になると凍結して霜柱が発生する。霜柱が発生するとその後に土壌を締め固めても、表面が緩んだ状態になる。そして、春先になると表面が緩んだことによって、粉塵が立ちやすくなる。
【0007】
そこで、本発明は、屋外運動場の凍結及び粉塵の発生を減らすことができる、土壌改質材及びそれを含む土壌を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下の態様を有する土壌改質材及びそれを含む土壌であれば、屋外運動場の凍結及びそれによる粉塵の発生を減らすことができることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を有する:
《態様1》
骨材、アスファルト、及び可塑剤を含む、土壌改質材であって、前記可塑剤が、脂肪酸系化合物を含む、土壌改質材。
《態様2》
前記脂肪酸系化合物が、脂肪酸アルキルエステル化合物である、態様1に記載の土壌改質材。
《態様3》
前記脂肪酸アルキルエステル化合物が、以下の式(1)で表される化合物である、態様2に記載の土壌改質材:
R1-CO-(AO)m-OR2・・・一般式(1)
(式中、R1は、炭素数15~19の直鎖又は分岐の炭化水素基を表し;R2は、水素、又は、炭素数1~18の直鎖又は分岐の炭化水素基のいずれかを表し;AOは、炭素数2~4の直鎖若しくは分岐のアルキレンオキシド単位を表し;mは平均付加モル数を表し、0~30の数である)。
《態様4》
前記骨材の含有量が、90~99質量%であり、前記アスファルト及び前記可塑剤の合計の含有量が、1~10質量%であり、前記可塑剤の含有量が、前記アスファルト100質量部に対して5~50質量部である、態様1に記載の土壌改質材。
《態様5》
土壌用母材及び態様1~4のいずれか一項に記載の土壌改質材を含む、土壌。
《態様6》
前記土壌用母材が、赤土及び山砂を含む、態様5に記載の土壌。
《態様7》
前記土壌用母材の含有量が、50~90体積%であり、前記土壌改質材の含有量が、10~50体積%である、態様5に記載の土壌。
《態様8》
態様5に記載の土壌を表層に含む、屋外運動場。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、屋外運動場の凍結及びそれによる粉塵の発生を減らすことができる、土壌改質材及びそれを含む土壌を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実験2の凍結融解試験の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《土壌改質材》
本発明の土壌改質材は、骨材、アスファルト、及び可塑剤を含み、前記可塑剤が、脂肪酸系化合物を含む。本発明者らは、脂肪酸系化合物を土壌改質材のアスファルト用の可塑剤として用いた場合に、屋外運動場の凍結及び粉塵の発生を減らすことができることを見出した。これは、可塑剤がアスファルトを効果的に可塑化して、骨材にアスファルトをしっかりと付着させることで、水分が骨材間に浸透しにくくなったことが凍結を抑制したと考えられる。また、アスファルトが土粒子同士を結合させたため、粉塵の発生を抑制したということが考えられる。
【0013】
〈骨材〉
骨材としては、その種類は特に限定されないが、屋外運動場で通常用いられるような粒度範囲の骨材を用いることができる。そのような骨材としては、細骨材を挙げることができる。
【0014】
細骨材としては、例えば、その70質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上が、2.36mm以下の粒径を有する細骨材を挙げることができる。細骨材としては、例えば、川砂、丘砂、山砂、海砂、砕砂、細砂、スクリーニングス、砕石ダスト、シリカサンド、人工砂、ガラスカレット、鋳物砂等が挙げられる。また、骨材として、粒径2.36mm以上の粗骨材、例えば粒径範囲2.36mm以上4.75mm未満の7号砕石を、細骨材に混合して用いることもできる。ここで、本明細書において粒径は、JIS A1102:2014に準拠して測定される値をいう。
【0015】
土壌改質材中の骨材の含有量は、乾燥させた質量で、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、92質量%以上、94質量%以上、又は96質量%以上であってもよく、99質量%以下、97質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、又は90質量%以下であってもよい。土壌改質材中の骨材の含有量は、例えば、90質量%以上99質量%以下、又は94質量%以上97質量%以下とすることができる。
【0016】
〈アスファルト〉
土壌改質材は、アスファルトを含む。これによって骨材に粘着性を付与して粉塵の発生を防止することができる。アスファルトとしては、その種類は特に限定されないが、通常の石油アスファルトを用いることができる。アスファルトとしては、例えば舗装用石油アスファルトであるストレートアスファルトの他、改質アスファルトが挙げられる。改質アスファルトとしては、ブローンアスファルト;熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂等の高分子材料で改質したアスファルト等が挙げられる。
【0017】
土壌改質材中のアスファルト及び可塑剤の合計の含有量は、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってもよく、10.0質量%以下、8.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、又は4.0質量%以下であってもよい。土壌改質材中のアスファルト及び可塑剤の合計の含有量は、例えば、1.0質量%以上10.0質量%以下、又は3.0質量%以上6.0質量%以下とすることができる。
【0018】
〈可塑剤〉
土壌改質材は、可塑剤として脂肪酸系化合物を含有することができる。これにより、土壌改質材は、屋外運動場の凍結及びそれによる粉塵の発生を減らすことができる。
【0019】
脂肪酸系化合物としては、例えばヨウ素価が50~110の脂肪酸系化合物を用いることができる。可塑剤は、複数の脂肪酸系化合物を組み合わせであってもよく、この場合、上記のヨウ素価については、複数の化合物が組み合わせられた脂肪酸系化合物の値をいう。なお、脂肪酸系化合物のヨウ素価は、JIS K0070-1992に準拠して測定したヨウ素価である。
【0020】
脂肪酸系化合物としては、脂肪酸及び脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルを挙げることができ、これらを単独で、あるいはこれらから選ばれる2種以上を混合して使用することができる。
【0021】
具体的には、脂肪酸系化合物は、以下の一般式(1)に示される化合物であることができる:
R1-CO-(AO)m-OR2・・・一般式(1)
(式中、R1は、炭素数15~19の直鎖又は分岐の炭化水素基を表し;R2は、水素、又は、炭素数1~18の直鎖又は分岐の炭化水素基のいずれかを表し;AOは、炭素数2~4の直鎖若しくは分岐のアルキレンオキシド単位を表し;mは平均付加モル数を表し;0~30の数である)。
【0022】
脂肪酸系化合物の分子量(g/mol)は、例えば100以上、150以上、200以上、250以上、270以上、又は280以上であってもよく、500以下、450以下、400以下、350以下、330以下、又は320以下であってもよい。脂肪酸系化合物が、複数の化合物の組み合わせで用いられる場合、これらの分子量は、重量平均分子量とすることができる。
【0023】
ここで、R1は炭素数15~17の直鎖または分岐のアルキル基及び炭素数15~17の直鎖または分岐のアルケニル基であることができる。R2は水素、又は、メチル基であることができる。AOはエチレンオキサイド単位であることができる。mは0~15であることができる。脂肪酸系化合物のヨウ素価は60~100(g/100mg)であることができ、70~85(g/100mg)であることができる。なお、本発明において「アルケニル基」とは、二重結合を1~3個含む炭化水素基を示す。
【0024】
一般式(1)で表される(b)脂肪酸系化合物としては、脂肪酸:R1COOH、脂肪酸メチルエステル:R1COOCH3、脂肪酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル:R1COO(CH2CH2O)mCH3、(ポリ)オキシエチレン脂肪酸エステル:R1COO(CH2CH2O)mH等があり、具体的な例としては、パルミチン酸、パルミチン酸メチルエステル、パルミチン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンパルミチン酸エステル(平均付加モル数:1~15)、ステアリン酸、ステアリン酸メチルエステル、ステアリン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンステアリン酸エステル(平均付加モル数:1~15)、オレイン酸、オレイン酸メチルエステル、オレイン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンオレイン酸エステル(平均付加モル数:1~15)、リノール酸、リノール酸メチルエステル、リノール酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンリノール酸エステル(平均付加モル数:1~15)、リノレン酸、リノレン酸メチルエステル、リノレン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンリノレン酸エステル(平均付加モル数:1~15)等が挙げられる。
【0025】
これらのうち、オレイン酸メチルエステルを75~95質量%含有し、かつ、ヨウ素価が50~110(g/100mg)である脂肪酸メチルエステル混合物や、炭素数16~18のポリオキシエチレン脂肪酸エステル(平均付加モル数:3~15)を用いることができる。
【0026】
土壌改質材中の可塑剤の含有量は、アスファルト100質量部に対して、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、25質量部以上、又は30質量部以上であってもよく、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、35質量部以下、30質量部以下、又は25質量部以下であってもよい。例えば、土壌改質材中の可塑剤の含有量は、アスファルト100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下、又10質量部以上30質量部以下とすることができる。範囲であれば、土壌用母材に土壌改質材を混合した場合でも、本発明の有利な効果が得られ、またベトつき等の発生も少ない。
【0027】
土壌改質材中の可塑剤の含有量は、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、又は1.5質量%以上であってもよく、5.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、1.5質量%以下、1.0質量%以下、又は0.8質量%以下であってもよい。例えば、土壌改質材中の可塑剤の含有量は、0.1質量%以上5.0質量%以下、又は0.5質量%以上1.5質量%以下とすることができる。
【0028】
〈その他〉
土壌改質材は、骨材、アスファルト、及び可塑剤以外のその他の成分を含まなくてもよい。例えば、土壌改質材は、その他の成分が、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下、又は0.1質量%以下とすることができる。
【0029】
《土壌》
本発明の土壌は、土壌用母材及び上記のような土壌改質材を含む。この土壌は、屋外運動場の表層用として用いることができる。
【0030】
〈土壌用母材〉
土壌用母材としては、特に限定されないが、例えば上記のような骨材、山砂、赤土、アンツーカー等を用いることができる。
【0031】
土壌用母材としては、例えば0.075mm以下の粒径の土の粒子を、5~45質量%、10~40質量%又は15~35質量%で含有し、0.075mm超2.0mm以下の粒径の土の粒子を、50~95質量%、55~90質量%、又は60~85質量%で含有し、2.0mm超4.75mm以下の粒径の土の粒子を、0~30質量%、0~20質量%、又は5~15質量%で含有することができる。
【0032】
土壌における土壌用母材の含有量は、10体積%以上、20体積%以上、30体積%以上、40体積%以上、50体積%以上、又は60体積%以上であってもよく、90体積%以下、85体積%以下、80体積%以下、75体積%以下、又は70体積%以下であってもよい。土壌における土壌用母材の含有量は、例えば、10体積%以上90体積%以下、又は40体積%以上80体積%以下とすることができる。
【0033】
土壌における土壌改質材の含有量は、10体積%以上、20体積%以上、30体積%以上、40体積%以上、又は50体積%以上であってもよく、80体積%以下、70体積%以下、60体積%以下、50体積%以下、又は40体積%以下であってもよい。土壌における土壌改質材の含有量は、例えば、10体積%以上80体積%以下、又は20体積%以上60体積%以下とすることができる。
【0034】
土壌は、土壌用母材と土壌改質材以外のその他の成分を含まなくてもよい。例えば、土壌は、その他の成分が、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下、又は0.1質量%以下とすることができる。
【0035】
《土壌改質材及び土壌の製造方法》
土壌改質材の製造方法は、アスファルト、骨材、及び可塑剤を混合することを含む。ここで、土壌改質材の製造方法の各構成については、本発明の土壌改質材に関して説明した各構成を参照することができる。すなわち、アスファルト、骨材、可塑剤等の種類及び配合量については、上記の種類及び含有量を参照することができる。
【0036】
土壌改質材の製造方法は、アスファルトと骨材とを混合して第1の混合物を得る工程、及び第1の混合物に可塑剤を添加及び混合して土壌改質材を得る工程を含むことができる。ここで、骨材は、混合前に例えば180℃付近にまで加熱されて乾燥することができ、各混合時には、150℃~170℃程度まで加熱して混合することができる。
【0037】
このようにして得られた土壌改質材を養生して温度が低下してから、土壌用母材と混合することができる。土壌用母材が、水を多く含んでいる場合は、曝気させる等によって水分量を減らしてから、土壌用母材と土壌改質材と混合することができる。
【0038】
本発明を以下の実施例でさらに具体的に説明をするが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
実験1:土壌改質材と土壌用母材との混合比についての実験
《製造例》
可塑剤として、以下の7種類の可塑剤を準備した。
【表1】
【0040】
骨材の細砂を185℃に加熱して、160℃に加熱したアスファルト(ストレートアスファルト60/80)と混合した。細砂とアスファルトとを混合してから20秒後に、可塑剤1を投入して混合し、土壌改質材を得た。この際に、細砂とアスファルトとを、94:6の質量比で混合し、可塑剤は、アスファルト100質量部に対して22質量部混合した。すなわち、この土壌改質材は、92.8質量%の細砂、5.9%のアスファルト、1.3%の可塑剤を含んでいた。この土壌改質材を一晩養生して、60℃程度まで温度が下がった段階でショベルでほぐした。
【0041】
その後、寒冷地にある試験場まで土壌改質材を搬出し、土壌用母材の赤土及び山砂と土壌改質材とをバックホウによって1時間程度混合した。実施例1の土壌においては、赤土、山砂、土壌改質材を、それぞれ40体積%、30体積%、30体積%で混合し、実施例2の土壌では、それらをそれぞれ40体積%、10体積%、50体積%で混合した。また、比較例1の土壌として、赤土と山砂をそれぞれ40体積%及び60体積%で混合した。そして、屋外運動場の3つの隣接した施工エリアに、これらの土壌を表層としてそれぞれ敷き均しして転圧した。
【0042】
なお、用いた土壌改質材、赤土及び山砂の粒度分布、単位容積質量、及び含水比は、以下の表のとおりであった。
【表2】
【0043】
得られた各例の土壌の粒度分布等は、以下のとおりとなった。
【表3】
【0044】
《試験方法》
〈透水試験〉
運動場の土壌の水はけを評価するために透水性試験を行った。試験は、「舗装調査・試験法便覧」のF010に記載の方法に準拠して行った。
【0045】
〈プロクターニードル貫入試験〉
運動場の土壌のクッション性を評価するためにプロクターニードル貫入試験を行った。試験は、「屋外体育施設の建設指針」に記載の方法に準拠して行った。
【0046】
〈凍結融解試験〉
運動場の土壌の凍結による影響を評価するために、凍結融解試験を行った。試験は、「建設汚泥再生利用マニュアル」の乾湿繰返し試験方法に記載の方法に準拠して行った。ここで、試験体は、「舗装調査・試験法便覧」のF007‐A法に記載の方法で作製した。この試験体を、-10℃の冷凍室で1日置いて、その後、凍結した試験体を20℃で1日水浸させるというサイクルを、3サイクル実施して、試験前と試験後の乾燥質量を測定し、残存率を確認した。
【0047】
〈発塵試験〉
越冬し春先となった上記の運動場において、発塵試験を行った。発塵試験は、下面を土壌として半球状の容器で取り囲んだ上で、エアーを容器の内部で上部から吹き込んで、発生した粉塵を、デジタル粉塵計で容器内を測定することで行った。
【0048】
【0049】
実施例1及び2の土壌の透水性は、比較例1の土壌と比較して低下していたが、運動場として十分な透水性があった。また、プロクターニードル貫入試験によって、実施例1及び2の土壌のクッション性が高くなり、適度な硬さを持つことが分かった。さらに、比較例1の土壌では、凍結後に融解すると、凍結前の形状が完全に崩れてしまうのに対して、実施例1及び2の土壌では、凍結による影響が非常に小さくなることがわかった。そして、越冬後において、実施例1及び2の土壌では、比較例1の土壌よりも粉塵の発生が大きく低下することがわかった。
【0050】
なお、実施例2の土壌は、実施例1の土壌と比較して、アスファルトモルタルのダマが多少確認された。また、実施例1について、可塑剤1を、可塑剤2~7にそれぞれ変更をして試験をした結果、概ね、同様の結果が得られた。
【0051】
実験2:土壌改質材中の可塑剤量についての実験
アスファルト100質量部に対する可塑剤の量を、10質量部、20質量部、及び30質量部に変更をしたこと以外は実験1と同様にして、実施例3~5の土壌改質材を製造した。これらの土壌改質材30体積%と、同一の土壌用母材70体積%とを混合して、各土壌を得た。また、実施例4の土壌改質材を使って、土壌用母材の量を、0体積%~100体積%に変量した試験体も作製した。
【0052】
各土壌について、実験1と同様にして凍結融解試験を実施した。その結果を、
図1に示す。
【0053】
実施例3と実施例4とを比較すると、可塑剤の量を減らすと凍結融解性が悪化することがわかる。一方で、実施例4と実施例5とを比較すると、可塑剤の量を増やしても、凍結融解性が多少悪化するという結果となった。なお、実施例5の土壌については、手で触れたときに多少のベタつきが感じられた。
【要約】
【課題】 本発明は、屋外運動場の凍結及び粉塵の発生を減らすことができる、土壌改質材及びそれを含む土壌を提供する。
【解決手段】 本発明の土壌改質材は、骨材、アスファルト、及び可塑剤を含む、土壌改質材であって、前記可塑剤が、脂肪酸系化合物を含む。また、本発明の土壌は、土壌用母材及び上記の土壌改質材を含む。
【選択図】 なし