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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】草代用物
(51)【国際特許分類】
   E01C 13/08 20060101AFI20240705BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
E01C13/08
G08G1/00 J
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021543278
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 US2020014500
(87)【国際公開番号】W WO2020154339
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】16/256,412
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(73)【特許権者】
【識別番号】521324654
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ インディアナ ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】516046846
【氏名又は名称】オハイオ ステート イノベーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】リニ シェロニー
(72)【発明者】
【氏名】スタンリー ユン-ピン チエン
(72)【発明者】
【氏名】イー チアン
(72)【発明者】
【氏名】リン チュン
(72)【発明者】
【氏名】アビール サハ
(72)【発明者】
【氏名】ヤオビン チェン
(72)【発明者】
【氏名】チ-チー チェン
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0177718(US,A1)
【文献】特開平08-134822(JP,A)
【文献】特許第5334763(JP,B2)
【文献】実開平06-020505(JP,U)
【文献】特開2014-047596(JP,A)
【文献】実開平05-018829(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00-17/00
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉身本体および該葉身本体の少なくとも一部分を覆うコーティングを含む草葉身であって前記葉身本体が合成材料製である複数の草葉身を含む、草代用物であって、
24GHzまたは77GHzレーダに対する天然草の平均レーダ反射断面積(RCS)の±5dBであるレーダ反射断面積(RCS)を示し、これにより、当該草代用物が、車両レーダセンサに対して天然草と実質的に同じレーダ反射断面積(RCS)を示すように構成されている、草代用物。
【請求項2】
基部をさらに含み、前記複数の草葉身は前記基部に対して作動的に連結され、前記複数の草葉身の実質的過半数は前記基部に対して鋭角の角度が付けられている、請求項1に記載の草代用物。
【請求項3】
前記複数の草葉身は、複数の天然の草葉身と実質的に同じサイズまたは形状を有する、請求項1に記載の草代用物。
【請求項4】
前記葉身本体は、ポリエチレン、ゴムまたはナイロン製である、請求項1に記載の草代用物。
【請求項5】
前記コーティングは、塗料と顔料の混合物を含む、請求項1に記載の草代用物。
【請求項6】
前記コーティングは、高光沢アクリル塗料と高反射率顔料の混合物を含む、請求項5に記載の草代用物。
【請求項7】
前記草代用物は、生きた草または生きた草と枯れた草の組合せを模倣する色を有する、請求項1に記載の草代用物。
【請求項8】
前記複数の草葉身は、1平方ヤードあたり約50オンス(1.695kg/m)から1平方ヤードあたり約80オンス(2.712kg/m)の密度を有する、請求項1に記載の草代用物。
【請求項9】
前記複数の草葉身は根を含み、前記コーティングは前記根の少なくとも一部分を覆っている、請求項1に記載の草代用物。
【請求項10】
基部と、
前記基部に対し作動的に連結された複数の草葉身であって、該複数の草葉身の実質的過半数は前記基部に対して鋭角の角度が付けられており、前記草葉身は葉身本体および該葉身本体の少なくとも一部分を覆うコーティングを含み、前記葉身本体は合成材料製であり、前記コーティングは高光沢アクリル塗料と高反射率顔料の混合物を含んでいる、複数の草葉身と、
を含む草代用物であって、
24GHzまたは77GHzレーダに対する天然草の平均レーダ反射断面積(RCS)の±5dBであるレーダ反射断面積(RCS)を示し、これによって、当該草代用物が、車両レーダセンサに対して天然草と実質的に同じレーダ反射断面積(RCS)を示すように構成される、草代用物。
【請求項11】
前記葉身本体は、ポリエチレン、ゴムまたはナイロン製である、請求項10に記載の草代用物。
【請求項12】
前記草代用物は、生きた草または生きた草と枯れた草の組合せを模倣する色を有する、請求項10に記載の草代用物。
【請求項13】
道路と、
前記道路の脇に具備される草代用物であって、複数の草葉身を含み、前記草葉身は葉身本体および前記葉身本体の少なくとも一部分を覆うコーティングを含み、前記葉身本体は合成材料製であり、24GHzまたは77GHzレーダに対する天然草の平均レーダ反射断面積(RCS)の±5dBであるレーダ反射断面積(RCS)を示し、これによって、当該草代用物が、車両レーダセンサに対して天然草と実質的に同じレーダ反射断面積(RCS)を示すように構成されている草代用物と、
を含む、車両試験環境。
【請求項14】
前記草代用物は、基部をさらに含み、前記複数の草葉身は前記基部に対して作動的に連結され、前記複数の草葉身の実質的過半数は前記基部に対して鋭角の角度が付けられている、請求項13に記載の車両試験環境。
【請求項15】
前記草代用物は、前記複数の草葉身が前記道路から離れて傾くように位置付けされている、請求項14に記載の車両試験環境。
【請求項16】
前記草代用物はアスファルト表面上に支持されている、請求項13に記載の車両試験環境。
【請求項17】
前記葉身本体は、ポリエチレン、ゴムまたはナイロン製である、請求項13に記載の車両試験環境。
【請求項18】
前記コーティングは、高光沢アクリル塗料と高反射率顔料の混合物を含む、請求項13に記載の車両試験環境。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に記載の主題は、概して車両に関し、より詳細には車両システムの試験に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が道路から逸脱した場合、状況は直ちに極めて危険なものとなり得る。例えば、車両が衝突し得るさまざまな路側物体が存在し、かつ/または車両は草の上で横転を起こしやすい可能性がある。一部の車両には道路逸脱軽減システム(road departure mitigation system)が備わり、このようなシステムの使用が将来増加することが期待されている。道路逸脱軽減システムは、車両がまさに道路を離れようとするときそれを検出することができる。このような場合、道路逸脱軽減システムはドライバに警告を提供することができかつ/または1つ以上の車両システム(例えばステアリングおよび/またはブレーキ)を自動制御して車両が道路から逸脱するのを防止することができる。
【発明の概要】
【0003】
1つの観点から言うと、本明細書中に記載の主題は、草代用物(grass surrogate)に向けられている。草代用物は複数の草葉身(grass blades)を含むことができる。草葉身は葉身本体とこの葉身本体の少なくとも一部分を覆うコーティングとを含むことができる。葉身本体は合成材料製であり得る。草代用物は、1つ以上の車両センサに対して天然草と実質的に同じ特性を示すように構成され得る。
【0004】
別の視点から言えば、本明細書中に記載の主題は草代用物に向けられている。この草代用物は、基部およびこの基部に対し作動的(operatively)に連結された複数の草葉身を含むことができる。複数の草葉身の実質的過半数が、基部に対して鋭角で配向され得る。草葉身は葉身本体とコーティングを含むことができる。コーティングは、葉身本体の少なくとも一部分を覆うことができる。葉身本体は合成材料製であり得る。コーティングは高光沢アクリル塗料と高反射率顔料の混合物を含むことができる。草代用物は、1つ以上の車両センサに対して天然草と実質的に同じ特性を示すように構成され得る。
【0005】
さらに別の観点から言うと、本明細書中に記載の主題は、テストコースまたは試験施設などの車両試験環境に向けられている。車両試験環境は、道路を含むことができる。車両試験環境は、道路の脇に具備された草代用物を含み得る。草代用物は複数の草葉身を含み得る。草葉身は、葉身本体およびコーティングを含み得る。コーティングは葉身本体の少なくとも一部分を覆うことができる。葉身本体は合成材料製であり得る。草代用物は、1つ以上の車両センサに対して天然草と実質的に同じ特性を示すように構成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】草代用物の例の図である。
図2】1つ以上のセンサによって検知されている草葉身を示す、草代用物の草葉身の一部分の断面図である。
図3】基部に対して一定の角度で配向された複数の草葉身を示す、草代用物の一部分の図である。
図4】車両試験環境の例の図である。
図5】草代用物のコーティングのためのさまざまな塗料の色の表である。
図6】草代用物のコーティングのための塗料と顔料の混合物のさまざまな例を示す表である。
図7A】さまざまな検出角度における草代用物の赤外線反射率要件の例を示す。
図7B】さまざまな検出角度における草代用物の赤外線反射率要件の例を示す。
図7C】さまざまな検出角度における草代用物の赤外線反射率要件の例を示す。
図7D】さまざまな検出角度における草代用物の赤外線反射率要件の例を示す。
図7E】さまざまな検出角度における草代用物の赤外線反射率要件の例を示す。
図7F】さまざまな検出角度における草代用物の赤外線反射率要件の例を示す。
図7G】さまざまな検出角度における草代用物の赤外線反射率要件の例を示す。
図7H】さまざまな検出角度における草代用物の赤外線反射率要件の例を示す。
図8A】さまざまな検出角度における草代用物の赤外線反射率を示す。
図8B】さまざまな検出角度における草代用物の赤外線反射率を示す。
図8C】さまざまな検出角度における草代用物の赤外線反射率を示す。
図8D】さまざまな検出角度における草代用物の赤外線反射率を示す。
図8E】さまざまな検出角度における草代用物の赤外線反射率を示す。
図8F】さまざまな検出角度における草代用物の赤外線反射率を示す。
図8G】さまざまな検出角度における草代用物の赤外線反射率を示す。
図8H】さまざまな検出角度における草代用物の赤外線反射率を示す。
図9A】さまざまな検出角度における77GHzでの提案されたレーダ反射断面積の例を示す。
図9B】さまざまな検出角度における77GHzでの提案されたレーダ反射断面積の例を示す。
図9C】さまざまな検出角度における77GHzでの提案されたレーダ反射断面積の例を示す。
図9D】さまざまな検出角度における77GHzでの提案されたレーダ反射断面積の例を示す。
図9E】さまざまな検出角度における77GHzでの提案されたレーダ反射断面積の例を示す。
図9F】さまざまな検出角度における77GHzでの提案されたレーダ反射断面積の例を示す。
図10A】10度の検出角度での天然草の77GHzレーダ反射断面積を示す。
図10B】10度の検出角度でのアスファルト上の草代用物の77GHzレーダ反射断面積を示す。
図11A】10度の検出角度での天然草の77GHzレーダ反射断面積を示す。
図11B】15度の検出角度でのアスファルト上の草代用物の77GHzレーダ反射断面積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書中の配設(arrangements)によると、草などの1つ以上の路側物体のための代用物が提供される。これらの代用物は、対応する路側物体の全体的な視覚的外観を近似することができ、1つ以上の車両センサ(例えばカメラ、レーダセンサ、ライダ(LIDAR)センサなど)に対してその対応する路側物体と実質的に同じ特性を示すことができる。例えば、代用物は、対応する路側物体と実質的に同じ視覚的外観(例えば、色、サイズおよび形状)を有することができる。この点において代用物は、車両カメラには、実際の対応する路側物体と実質的に同じに見える可能性がある。さらに、代用物は、対応する路側物体と実質的に同じレーダ反射性および/またはレーダ反射断面積を示し得る。したがって代用物は、レーダセンサには、対応する路側物体と実質的に同じに見える可能性がある。さらには、代用物は対応する路側物体と実質的に同じ赤外線反射性を示すことができる。代用物は、ライダセンサには、対応する路側物体と実質的に同じに見える可能性がある。草代用物について、1つ以上の配設において、草代用物のレーダ反射断面積(RCS)は、24GHzおよび77GHzの両方のレーダについての天然草の平均RCSの±5dBであり得る。
【0008】
これらの代用物は、車両、例えば自律車両および/または道路逸脱軽減システムを伴う車両の試験において使用可能である。代用物は、テスト用車両に損傷を与えることなく、テスト用車両により走行されるように構成され得る。代用物は同様に、多くの事例によって代用物を損傷することなく車両により走行されるようにも構成され得る。
【0009】
本明細書においては、詳細な実施形態が開示されている。しかしながら、開示されている実施形態は単に例示的なものとして意図されていることを理解すべきである。したがって、本明細書で開示される具体的な構造的および機能的詳細は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、単にクレームの基礎としてかつ事実上あらゆる適切に詳述された構造内で本明細書中の態様をさまざまな形で利用する目的で当事者に教示するための代表的な基礎として解釈されなければならない。さらに、本明細書中で使用される用語および言い回しは、限定することを意図されているのではなくむしろ本明細書中の実施形態および態様の理解可能な説明を提供するように意図されている。さまざまな配設が図1~11に示されているが、これらは、例示された構造または利用分野に限定されない。
【0010】
例示を単純かつ明確にする目的で、図中で示されている要素は、必ずしも原寸に比例して描かれていない。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確さのため、他の要素に比べて誇張されている場合がある。さらに適切とみなされた場合には、対応する、類似のまたは同様の特徴部を標示するために、各図の間で参照番号が反復される。さらに、本明細書中に記載の実施形態を完全に理解できるようにするために、多くの具体的詳細が明記されている。しかしながら、当事者であれば、本明細書中に記載の実施形態をこれらの具体的詳細無しで実践できるということを理解するものである。
【0011】
本明細書中で使用される「実質的に」および「約」なる用語は、それらが修飾する用語そのものおよびそこからのわずかな変動を含む。したがって、「実質的に垂直に」なる用語は、まさに垂直およびそこからのわずかな変動を意味する。そこからのわずかな変動には、15度/パーセント/単位以下、10度/パーセント/単位以下、9度/パーセント/単位以下、8度/パーセント/単位以下、7度/パーセント/単位以下、6度/パーセント/単位以下、5度/パーセント/単位以下、4度/パーセント/単位以下、3度/パーセント/単位以下、2度/パーセント/単位以下、1度/パーセント/単位以下内で、通常の製造許容誤差内にあることが含まれ得る。
【0012】
本明細書中に記載の配設を使用することのできる路側物体の一例が草である。草は、世界中で道路に沿って見られる。
【0013】
1つ以上の配設において、草のための代用物を提供することができる。草代用物100の例が図1~4に示されている。草代用物100は、現在公知のまたは後日発見または開発されるあらゆるタイプの草であり得る草と実質的に同じサイズ、形状および/または構成を有することができる。草代用物は1つ以上の車両センサ(例えばカメラセンサ、ライダセンサまたはレーダセンサ)に対して天然草と実質的に同じ特性を示すように構成され得る。「天然草」は、現在公知であるかまたは後日発見または開発される任意の生きた草を意味する。
【0014】
図1を参照すると、草代用物100は、例えば、1つ以上の接着剤、1つ以上の形態のボンディング、1つ以上の形態の縫合、1つ以上の形態の製織、および/または1つ以上の形態の機械的係合を含めた任意の好適な方法で基部150に対して作動的に連結された複数の草葉身110を含むことができる。本明細書全体を通して使用されている「作動的に連結された」なる用語は、直接物理的に接触することのない連結を含めた直接的または間接的な連結を含み得る。草葉身110および基部150は、現在公知のまたは後日開発されるあらゆる合成草、人工草、または人工芝の性質を帯びていてよい。草葉身110は、任意の好適な材料で製造され得る。例えば、草葉身110は、ポリエチレン、ゴム、またはナイロン製であり得る。草葉身110は、実質的にまっすぐであり得る。代替的には、草葉身110は、お辞儀した、波打った、あるいは他の形でまっすぐでないものであり得る。
【0015】
複数の草葉身110は、天然草の草葉身と同じサイズおよび形状を有する。草葉身110は、その天然草相対物と整合するようにさまざまなサイズ(例えば長さ、幅、高さなど)で製造され得る。草葉身110は、一定の長さを有し得る。1つ以上の配設において、草葉身110は実質的に2.25インチ(5.715cm)の長さを有することができる。草葉身110は、任意の好適な幅を有することができる。1つ以上の配設において、草葉身110は、実質的に2インチ(5.08cm)の幅を有することができる。草葉身110は、任意の好適な密度で提供され得る。例えば、1つ以上の配設において、複数の草葉身は、1平方ヤードあたり約50オンス(1.695kg/m2)から1平方ヤードあたり約80オンス(2.712kg/m2)の密度を有する。より詳細には、複数の草葉身は、1平方ヤードあたり約65オンス(2.204kg/m2)から1平方ヤードあたり約70オンス(2.373kg/m2)の密度を有する。
【0016】
1つの草葉身110の一部分の断面図の一例が図2に示されている。草葉身110は、葉身本体120を含むことができる。葉身本体120は、コーティング130によって少なくとも部分的に覆われ得る。いくつかの事例において、草葉身110の根140を、コーティング130により少なくとも部分的に覆うことができる。コーティング130は、草代用物100が1つ以上の車両センサ(例えばライダセンサ、レーダセンサ、カメラ)に対して天然草と実質的に同じ特性を示すようにする一助となり得る任意の好適なコーティングであり得る。1つ以上の配設において、コーティング130は、塗料と顔料の混合物を含むことができる。一例として、塗料はアクリル塗料、より詳細には高光沢アクリル塗料であり得る。顔料は高反射率顔料であり得る。コーティング130中の任意の好適な塗料対顔料比が存在し得る。コーティング130のためのさまざまな塗料および顔料混合物の非限定的な例が、図6に示されている。
【0017】
草代用物100は、天然草をシミュレートするために必要とされる任意の色であり得る。例えば草代用物100は、生きた草を模倣する色を有することができる。別の例として、草代用物100は枯れた草を模倣する色を有することができる。さらなる一例として、草代用物100は、生きた草と枯れた草の両方の色であり得る。草代用物100に可能な色のいくつかの例としては、緑色、褐色、黄色、これらの色の組合せ、およびこれらの色の色特性(例えば色調、色合い、濃淡、彩度、輝度、クロマ、強度、輝度など)のありとあらゆる変形形態が含まれ得る。草代用物100の色は、葉身本体120の色および/またはコーティング130の色によって達成され得る。代用草のためのさまざまな塗料の色の非限定的な例が図5に示されている。
【0018】
草葉身110は、基部150に対して任意の好適な配向をすることができる。図3を参照すると、草葉身110と基部150の間に角度aが画定され得る。1つ以上の配設において、草葉身110の過半数に、基部150に対して鋭角の角度を付けることができる。1つ以上の配設において、草葉身110の実質的過半数に、基部150に対して鋭角の角度を付けることができる。1つ以上の配設において、角度aは、約85度以下、約80度以下、約75度以下、約70度以下、約65度以下、約60度以下、約55度以下、約50度以下、約45度以下、約40度以下、約35度以下、約30度以下、約25度以下、約20度以下、約15度以下、または約10度以下であり得る。本明細書中で使用される「過半数」は、50.01パーセント以上を意味する。本明細書中で使用される「実質的過半数」は、70パーセント以上、75パーセント以上、80パーセント以上、85パーセント以上、90パーセント以上、95パーセント以上、96パーセント以上、97パーセント以上、98パーセント以上、または99パーセント以上を意味する。いくつかの事例において、角度aは、少なくとも部分的に、草葉身110にコーティング130を塗布する方法によって達成可能である。1つ以上の配設において、草葉身110の過半数が、基部150または他の何らかの基準点との関係において実質的に同じ方向に延在することができる。1つ以上の配設において、草葉身110の実質的過半数が、基部150または他の何らかの基準点との関係において同じ方向に延在することができる。
【0019】
さまざまな方向角での草代用物100の赤外線反射率要件の例が、図7A-Hに示されている。試験データは、図8A~Hで示されているように、さまざまなサンプル草代用物が、0~70度の検出角度範囲内でこれらの赤外線要件を実質的に満たすことを示した。
【0020】
77GHzおよびさまざまな方向角での草代用物100に対するレーダ反射断面積(RCS)要件の例が、図9A~Fに示されている。試験データは、サンプル草代用物がレーダ反射断面積(RCS)要件(例えば24GHzおよび77GHzの両方のレーダについて天然草の平均RCSの±5dB)を実質的に満たすことを示した。例えば、図10Aは10度の検出角度での天然草の77GHzレーダ反射断面積を示し、図10Bは10度の検出角度でのアスファルト上の草代用物の77GHzレーダ反射断面積を示す。別の例として、図11Aは、10度の検出角度での天然草の77GHzレーダ反射断面積を示し、図11Bは、15度の検出角度でのアスファルト上の草代用物の77GHzレーダ反射断面積を示す。
【0021】
本明細書中に記載の草代用物100は、さまざまな目的のために使用可能である。例えば、車両の試験に関連して草代用物100を使用することができる。車両は1つ以上のセンサ200(図2)を有することができる。「センサ」とは、何かを取得、検出、決定、評価、監視、測定、定量および/または検知することのできるあらゆるデバイス、コンポーネントおよび/またはシステムを意味する。1つ以上のセンサ200は実時間で取得、検出、決定、評価、監視、測定、定量および/または検知することができる。本明細書中で使用される「実時間」なる用語は、特定のプロセスまたは決定が行われるのに充分なほど即時であるものとしてユーザまたはシステムが検知するか、またはプロセッサがいくつかの外部プロセスに遅れを取らないようにすることができる処理反応性レベルを意味する。
【0022】
車両が複数のセンサ200を含む配設において、センサ200は互いに独立して機能することができる。代替的には、センサ200の2つ以上が互いに組合わさって機能することができる。このような場合、2つ以上のセンサ200はセンサネットワークを形成し得る。1つ以上のセンサ200は、プロセッサ、データストア、および/または車両の他の要素またはシステムに対して作動的に連結され得る。
【0023】
1つ以上のセンサ200は、運転環境データを取得、検出、決定、評価、監視、測定、定量および/または検知するように構成された1つ以上の環境センサを含むことができる。「運転環境データ」は、車両が位置設定されている外部環境または外部環境の1つ以上の部分についてのデータまたは情報を含む。例えば、1つ以上の環境センサは、車両の外部環境の少なくとも一部分の中の障害物についてのデータまたは情報を取得することができる。1つ以上の配設において、1つ以上のセンサ200は、1つ以上のレーダセンサ、1つ以上のライダセンサ、および/または1つ以上のカメラを含むことができる。
【0024】
草代用物100は、図4に示されているような車両試験環境400内で使用可能である。車両試験環境400は例えば、テストコースまたは試験施設であり得る。車両試験環境400は、テスト用車両420を自律的に、半自律的におよび/または手動式に走行させることのできる道路410を含み得る。草代用物100は、道路410との関係において適切な位置に据え付け可能である。例えば、草代用物100は、道路410に実質的に隣接し得る。例えば、草代用物100は、道路410の縁部411に設置可能である。このような場合、草代用物100は、その場所において道路410の縁部411の少なくとも一部分を画定し得る。代替的にまた付加的に、道路410の縁部411は、路面標識により画定されてよい。いくつかの事例において、草代用物100は、道路410の縁部411から横方向に離隔され得る。
【0025】
図4は、道路410の片側で使用されているものとして草代用物100を示しているものの、当然のことながら、草代用物100を道路410の片側または両側で使用することが可能である。道路の片側で使用される草代用物100は、道路の他方の側で使用される草代用物100と実質的に同一であり得、あるいはこれらは実質的に互いの鏡像であり得る。
【0026】
いくつかの配設においては、図4で示されているように、1つの連続的草代用物100を道路410の脇で使用することができる。代替的には、道路410の脇に複数の草代用物100が存在し得る。複数の草代用物は互いに実質的に同一であり得る。代替的には、複数の草代用物のうちの1つ以上は、本明細書中に記載のいずれかの点を含めた1つ以上の点において他の草代用物と異なるものであり得る。
【0027】
複数の草代用物は、任意の好意な形で配設可能である。例えば、草代用物は互いに実質的に整列し得る。代替的には、草代用物のうちの1つ以上は他の草代用物からオフセットされ得る。草代用物100は、互いに実質的に隣接するように配設され得、あるいは、これらを互いから離隔させることもできる。いくつか以上の配設において、複数の草代用物は、草代用物が互いに当接するように端から端まで(in an end to end manner)配設され得る。いくつかの事例においては、草代用物100の2つ以上を、例えば1つ以上の接着剤、1つ以上の形態の機械的係合、および/または1つ以上の締結具などを含む任意の好適な形で互いに作動的に連結することができる。
【0028】
草代用物100の草葉身110が基部150に対して鋭角で配向されている配設において、草代用物100は、草葉身110が道路410から離れて傾くように位置付けされ得る。より詳細には、草代用物100は、草葉身110が、走行方向および/または道路410の長手方向軸との関係において実質的に90度である方向に道路410から離れて傾くように位置付けされ得る。他の配設において、草代用物100は、草葉身110が、道路410の走行方向および/または道路410の長手方向軸に対して実質的に平行である方向に傾くように位置付けされ得る。より詳細には、草代用物100は、草葉身110が道路410の走行方向に傾くように位置付けされ得る。したがって、道路410に沿って、ただし道路410上で走行方向に走行する車両の前方に位置設置されている草葉身110は、車両から離れるように傾くことになる。
【0029】
草代用物100は、車両試験環境400内で表面430上に位置付けされ得る。いくつかの事例において、表面のタイプは、テスト用車両420の1つ以上のセンサ200が草代用物100をどのように感知するかに影響を及ぼす可能性がある。したがって、草代用物100が車両センサ要件を確実に満たすように表面430を選択し、構成しかつ/または提供することができる。1つ以上の配設において、表面430はアスファルト表面であり得る。
【0030】
試験中、テスト用車両420は道路410に沿って移動し得る。テスト用車両420の1つ以上のセンサ200は、草代用物100についてのデータを含めた運転環境データを取得することができる。例えば、テスト用車両420は、カメラ、レーダセンサ、および/またはライダセンサを用いて草代用物100についてのデータを取得することができる。草代用物100の構造に起因して、センサ200が取得する草代用物100のデータは、現実世界の運転環境内でセンサ200によって取得されると考えられる天然草のセンサデータを模倣することができる。取得した運転環境データは、適切なアクションを決定するために、1つ以上のプロセッサによって処理および/または分析され得る。
【0031】
テスト用車両420が道路410から外れて草代用物100上に進路変更した場合であっても、テスト用車両420および/または草代用物100に対する損傷を回避および/または最小化することができる。したがって、草代用物100は将来の試験において使用され続けることができる。草代用物100は、特に道路410の車線標識を含まない部分において、道路410の境界を識別する上でテスト用車両420を補助することができる。
【0032】
一例として、本明細書中に記載の代用物は、自律車両のセンサおよび/またはシステムの試験に関連して使用可能である。「自律車両」は、人間のドライバからの入力が無いまたは最小限である状態で走行ルートに沿って車両をナビゲートおよび/または操作するために1つ以上のコンピュータシステムが使用される自律動作モードで動作するように構成された車両を意味する。1つ以上の配設において、自律車両は、高度に自動化されているかまたは完全に自動化されている可能性がある。別の例として、本明細書中に記載の代用物は、非自律車両の道路逸脱軽減システムに対して使用可能である。
【0033】
本明細書中に記載の配設は、本明細書中で言及されているメリットの1つ以上を含めた多くのメリットを提供することができる。例えば、本明細書中に記載の配設は、その相対物である路側物体に視覚的にそっくりであるように見える代用物を提供することができる。本明細書中に記載の配設は、1つ以上のセンサとの関係においてその対応する路側物体を模倣する代用物を提供することができる。本明細書中に記載の配設は、天然草の色、模様、赤外線およびレーダ特性を生み出す草代用物を結果としてもたらすことができる。ここで説明されている配設は、代用物を車両試験、特に道路逸脱システムの試験において使用することを可能にする。本明細書中に記載の配設は、試験中にその上を走行することができ、こうして代用物および/またはテスト用車両に対する損傷が回避される。本明細書中に記載の配設は、内部試験のために、そして道路逸脱システムについての近く発表される欧州新車アセスメントプログラム(EUNCAP)の要件および潜在的な将来の国家道路交通安全局(NHTSA)/米国道路安全保険協会(IIHS)の要件をサポートするために使用可能である。本明細書中に記載の配設に係る草代用物は、天然草の使用に比べ維持(例えば散水、刈り取り、施肥など)の時間および支出を必要としない。テスト用車両がその上を走行した場合に変形/損傷を受ける可能性のある天然草とは異なり、草代用物は、その上を何回も走行された後でもその形状を保つことができる。
【0034】
本明細書中で使用される「a」および「an」なる用語は、1つ以上として定義される。本明細書中で使用される「複数」なる用語は、2つ以上として定義される。本明細書中で使用されている「another(別の)」なる用語は、少なくとも第2以上のものとして定義される。本明細書中で使用される「including(~を含む)」および/または「having(~を有する)」なる用語は、comprising(~を含む)として定義される(すなわちオープンランゲージ)。本明細書中で使用される「at least one of...and...(...および...のうちの少なくとも1つ)」なる言い回しは、結び付けられた列挙項目のうちの1つ以上の考えられるありとあらゆる組合せを意味し、包含する。一例として、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ」なる言い回しには、Aのみ、Bのみ、Cのみまたはそれらの任意の組合せ(例えばAB、AC、BCまたはABC)が含まれる。
【0035】
本明細書中に記載の態様は、その精神または本質的属性から逸脱することなく、地の形態および組合せで具体化可能である。したがって、当然のことながら、実施形態は、単なる一例として示されている本明細書中に記載の具体的詳細に限定されず、さまざまな修正および改変が可能である。
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む。
〔態様1〕
葉身本体および該葉身本体の少なくとも一部分を覆うコーティングを含む草葉身であって前記葉身本体が合成材料製である複数の草葉身を含む、草代用物であって、
1つ以上の車両センサに対して天然草と実質的に同じ特性を示すように構成されている、草代用物。
〔態様2〕
基部をさらに含み、前記複数の草葉身は前記基部に対して作動的に連結され、前記複数の草葉身の実質的過半数は前記基部に対して鋭角の角度が付けられている、態様1に記載の草代用物。
〔態様3〕
前記複数の草葉身は、複数の天然の草葉身と実質的に同じサイズまたは形状を有する、態様1に記載の草代用物。
〔態様4〕
前記1つ以上の車両センサは、カメラセンサ、ライダセンサまたはレーダセンサを含む、態様1に記載の草代用物。
〔態様5〕
前記葉身本体は、ポリエチレン、ゴムまたはナイロン製である、態様1に記載の草代用物。
〔態様6〕
前記コーティングは、塗料と顔料の混合物を含む、態様1に記載の草代用物。
〔態様7〕
前記コーティングは、高光沢アクリル塗料と高反射率顔料の混合物を含む、態様6に記載の草代用物。
〔態様8〕
前記草代用物は、生きた草または生きた草と枯れた草の組合せを模倣する色を有する、態様1に記載の草代用物。
〔態様9〕
前記複数の草葉身は、1平方ヤードあたり約50オンス(1.695kg/m2)から1平方ヤードあたり約80オンス(2.712kg/m2)の密度を有する、態様1に記載の草代用物。
〔態様10〕
前記複数の草葉身は根を含み、前記コーティングは前記根の少なくとも一部分を覆っている、態様1に記載の草代用物。
〔態様11〕
基部と、
前記基部に対し作動的に連結された複数の草葉身であって、該複数の草葉身の実質的過半数は前記基部に対して鋭角の角度が付けられており、前記草葉身は葉身本体および該葉身本体の少なくとも一部分を覆うコーティングを含み、前記葉身本体は合成材料製であり、前記コーティングは高光沢アクリル塗料と高反射率顔料の混合物を含んでいる、複数の草葉身と、
を含む草代用物であって、
1つ以上の車両センサに対して天然草と実質的に同じ特性を示すように構成されている、草代用物。
〔態様12〕
前記1つ以上の車両センサは、カメラセンサ、ライダセンサまたはレーダセンサを含む、態様11に記載の草代用物。
〔態様13〕
前記葉身本体は、ポリエチレン、ゴムまたはナイロン製である、態様11に記載の草代用物。
〔態様14〕
前記草代用物は、生きた草または生きた草と枯れた草の組合せを模倣する色を有する、態様11に記載の草代用物。
〔態様15〕
道路と、
前記道路の脇に具備される草代用物であって、複数の草葉身を含み、前記草葉身は葉身本体および前記葉身本体の少なくとも一部分を覆うコーティングを含み、前記葉身本体は合成材料製である、1つ以上の車両センサに対して天然草と実質的に同じ特性を示すように構成されている草代用物と、
を含む、車両試験環境。
〔態様16〕
前記草代用物は、基部をさらに含み、前記複数の草葉身は前記基部に対して作動的に連結され、前記複数の草葉身の実質的過半数は前記基部に対して鋭角の角度が付けられている、態様15に記載の車両試験環境。
〔態様17〕
前記草代用物は、前記複数の草葉身が前記道路から離れて傾くように位置付けされている、態様16に記載の車両試験環境。
〔態様18〕
前記草代用物はアスファルト表面上に支持されている、態様16に記載の車両試験環境。
〔態様19〕
前記葉身本体は、ポリエチレン、ゴムまたはナイロン製である、態様15に記載の車両試験環境。
〔態様20〕
前記コーティングは、高光沢アクリル塗料と高反射率顔料の混合物を含む、態様15に記載の車両試験環境。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図11A
図11B