(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】レーザ装置およびレーザ装置の光軸調整方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/024 20060101AFI20240705BHJP
H01S 5/02255 20210101ALI20240705BHJP
H01S 5/02326 20210101ALI20240705BHJP
H01S 5/40 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01S5/024
H01S5/02255
H01S5/02326
H01S5/40
(21)【出願番号】P 2020134747
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 毅
(72)【発明者】
【氏名】井上 和行
(72)【発明者】
【氏名】岡田 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】馬庭 裕二
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-118302(JP,A)
【文献】特開2008-021900(JP,A)
【文献】特開2011-013317(JP,A)
【文献】特開2020-107836(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163793(WO,A1)
【文献】特表2017-527111(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122792(WO,A1)
【文献】特開2007-017925(JP,A)
【文献】特開2011-076781(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0333483(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
G02B 6/30 - 6/34
G02B 6/42 - 6/43
B23K 26/00 - 26/70
G02B 7/00
G02B 7/18 - 7/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレート上に設けられ、前記ベースプレートの表面と平行である第1方向にレーザ光を出力するレーザ装置であって、
前記ベースプレートの表面と平行となるように前記ベースプレートに固定されており、前記第1方向、および前記ベースプレートの表面と平行でかつ前記第1方向と垂直をなす第2方向と、垂直をなす第3方向に光軸を有し、前記ベースプレートと反対側にレーザ光を出射する複数の半導体レーザと、
前記複数の半導体レーザの、前記第3方向における前記ベースプレートと反対側に配置されており、前記複数の半導体レーザから出射されたレーザ光を、前記第2方向にそれぞれ反射させる複数の第1プリズムミラーと、
前記複数の第1プリズムミラーの、前記第2方向におけるレーザ光が反射する側に配置されており、前記複数の第1プリズムミラーによって反射されたレーザ光を、前記第1方向にそれぞれ反射させる複数の第2プリズムミラーと
を備え、
前記複数の第1プリズムミラーは、反射した各レーザ光の前記第3方向における位置が互いに異なるように、前記第3方向において互いに異なる位置に配置されて
おり、
前記複数の半導体レーザには、それぞれ、1つの前記第1プリズムミラーおよび1つの前記第2プリズムミラーが対応して設けられており、
複数の前記半導体レーザが1つのヒートシンクに接合されている
ことを特徴とするレーザ装置。
【請求項2】
請求項1記載のレーザ装置において、
前記複数の半導体レーザは、前記第1方向に並んで配置された半導体レーザの列である第1および第2レーザ列を含み、
前記複数の第1プリズムミラーは、前記第1方向に並んで配置された第1プリズムミラーの列であり、前記第1および第2レーザ列にそれぞれ対応する第1および第2ミラー列を含み、
前記第1および第2ミラー列の間に、前記第1方向に並んで配置された前記第2プリズムミラーの列が配置されている
ことを特徴とするレーザ装置。
【請求項3】
請求項2項記載のレーザ装置において、
前記第1レーザ列は、前記第1方向に並んで配置された半導体レーザの列である第3および第4レーザ列を含み、
前記第2レーザ列は、前記第1方向に並んで配置された半導体レーザの列である第5および第6レーザ列を含み、
前記第1ミラー列は、前記第1方向に並んで配置された第1プリズムミラーの列であり、前記第3および第4レーザ列にそれぞれ対応する第3および第4ミラー列を含み、
前記第2ミラー列は、前記第1方向に並んで配置された第1プリズムミラーの列であり、前記第5および第6レーザ列にそれぞれ対応する第5および第6ミラー列を含み、
前記第3および第
6ミラー列の間、ならびに、前記第
4および第
5ミラー列の間に、それぞれ、前記第1方向に並んで配置された前記第2プリズムミラーの列が配置されており、
前記第2プリズムミラーの列同士は、前記第3方向において重なるように配置されている
ことを特徴とするレーザ装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載のレーザ装置において、
前記複数の半導体レーザは、前記第1方向に並んで配置された半導体レーザの列であるレーザ列を含み、
前記レーザ列において、光路長が最も長い半導体レーザは、前記レーザ列の両端のいずれか一方に配置されている
ことを特徴とするレーザ装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項記載のレーザ装置において、
前記半導体レーザと前記第1プリズムミラーとの間には、コリメートレンズを取り付けるための固定部材が設けられており、
前記コリメートレンズは、レンズホルダに固定されており、当該レンズホルダを介して前記固定部材に取り付けられ、
前記レンズホルダの側面には、ネジ加工がされている
ことを特徴とするレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザを備えたレーザ装置およびレーザ装置の光軸調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の半導体レーザから出力された光線を集光することにより、高出力化が図られたレーザ装置が存在する。特許文献1では、半導体レーザから出力されるレーザ光線を各種のミラーで偏光させることにより、複数の半導体レーザから出力されるレーザ光線を合成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、半導体レーザは、レーザ光を出射する場合、発熱する。この発熱により、半導体レーザの出力が低下したり、寿命が短くなるおそれがある。
【0005】
また、半導体レーザの発熱により、レーザ光線を反射するミラーを固定する固定部材(紫外線硬化樹脂など)が熱膨張を起こすことがある。固定部材の熱膨張により、ミラーの光軸がずれてしまうことで、レーザ装置の出力が低下する。
【0006】
近年実用化が進んでいる短波長の可視光レーザを出射する半導体レーザ(例えば、青色レーザを出射する半導体レーザなど)は、レーザの変換効率が悪いため、従来の半導体レーザよりも発熱量が2.5倍となっている。
【0007】
以上の理由により、半導体レーザを効果的に冷却することが求められている。
【0008】
従来のレーザ装置では、半導体レーザを冷却するための冷却部がベースプレートの下底(裏面)に接合されている。
【0009】
ここで、特許文献1では、半導体レーザから出力されるレーザ光を合成するために、半導体レーザの高さ(Y方向の位置)を変えて配置している(特許文献1の
図22参照)。このため、一部の半導体レーザがベース板(ベースプレート)と離間して配置されることとなる。
【0010】
特に、光路長が最も長い半導体レーザがレーザ光の光軸のずれの影響を最も受けやすい。特許文献1では、光路長が最も長くなる半導体レーザが、ベースプレートと最も離間して配置されている。このため、特許文献1の構成では、レーザ光の光軸のずれの影響を最も受けやすい半導体レーザを効果的に冷却できない。
【0011】
そこで、本発明は、半導体レーザを備えたレーザ装置において、レーザ装置の出力を低下させずに、半導体レーザを効果的に冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の一実施形態に係るレーザ装置は、ベースプレート上に設けられ、前記ベースプレートの表面と平行である第1方向にレーザ光を出力するレーザ装置であって、前記ベースプレートの表面と平行となるように前記ベースプレートに固定されており、前記第1方向、および前記ベースプレートの表面と平行でかつ前記第1方向と垂直をなす第2方向と、垂直をなす第3方向に光軸を有し、前記ベースプレートと反対側にレーザ光を出射する複数の半導体レーザと、前記複数の半導体レーザの、前記第3方向における前記ベースプレートと反対側に配置されており、前記複数の半導体レーザから出射されたレーザ光を、前記第2方向にそれぞれ反射させる複数の第1プリズムミラーと、前記複数の第1プリズムミラーの、前記第2方向におけるレーザ光が反射する側に配置されており、前記複数の第1プリズムミラーによって反射されたレーザ光を、前記第1方向にそれぞれ反射させる複数の第2プリズムミラーとを備え、前記複数の第1プリズムミラーは、反射した各レーザ光の前記第3方向における位置が互いに異なるように、前記第3方向において互いに異なる位置に配置されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、半導体レーザを備えたレーザ装置において、レーザ装置の出力を低下させずに、半導体レーザを効果的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図7】本実施形態に係るレーザ装置の光軸を調整する際のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0016】
(実施形態)
図1は本実施形態に係るレーザ装置の全体斜視図を示し、
図2は本実施形態に係るレーザ装置の平面図を示し、
図3は本実施形態に係るレーザ装置の側面図を示し、
図4は本実施形態に係るレーザ装置の背面図を示す。また、
図5はベースプレート、ヒートシンクおよび半導体レーザの位置関係を示すレーザ装置の平面図であり、
図6は半導体レーザの配置部分における部分断面図である。なお、以下の説明において、Z方向は集光レンズ13の光軸方向(本レーザ装置におけるレーザ光の光軸方向)、Y方向は上下方向、X方向はY方向およびZ方向に垂直をなす方向をそれぞれ示す。また、
図1~
図6では、半導体レーザ3から出射されたレーザ光を破線で示す。
【0017】
図1~
図5に示すように、本レーザ装置は、ベースプレート1と、ヒートシンク2a,2bと、複数の半導体レーザ3と、複数のコリメートレンズ5と、複数の第1プリズムミラー7と、複数の第2プリズムミラー9と、アナモルフィックプリズム11a,11bと、シリンドリカルレンズ12と、集光レンズ13と、ファイバ14とを備える。また、図示は省略するが、ベースプレート1の下底(裏面)には、半導体レーザ3を冷却するための冷却部が接合されている。
【0018】
ベースプレート1およびヒートシンク2a,2bは、それぞれ、略平板状の、高熱伝導金属で構成された部材である。ベースプレート1は、本レーザ装置の基盤となる部材であり、レーザ装置の各部材が取り付けられる。ヒートシンク2a,2bは、所定の固定部材により、ベースプレート1に固定される。
【0019】
複数の半導体レーザ3は、それぞれ、短波長の可視光レーザ光(例えば、青色のレーザ光線)を出射可能な半導体レーザである。
図1および
図3に示すように、各半導体レーザ3は、光軸がY方向上側に向くように配置されている。
【0020】
また、複数の半導体レーザ3は、Z方向に並んで配置されている5つの半導体レーザ3によって構成されるレーザ列3a~3dを含む。
図5に示すように、図面下部のレーザ列3a,3bと図面上部のレーザ列3c,3dとがX方向に所定間隔を空けて配置されている。また、レーザ列3a~3dは、Z方向に並んで配置された半導体レーザ3が、Z方向において同じ位置に配置されている。
【0021】
また、レーザ列3a,3bの半導体レーザ3は、ベースプレート1およびヒートシンク2aに、低温の金属材料により接合されており、レーザ列3c,3dの半導体レーザ3は、ベースプレート1およびヒートシンク2bに、低温の金属材料により接合されている。この金属材料は、例えば、Sn-Bi系の低温はんだペーストなどが用いられる。低温はんだペーストを用いて半導体レーザ3を接合する場合、ヒートシンク2a(2b)に対して半導体レーザ3が傾いたり、浮き上がったりしないように、半導体レーザ3の出射面を押さえる押さえ治具を使って、ヒートシンク2a(2b)と半導体レーザ3とを接合する。押さえ治具は、例えば、ヒートシンク2a(2b)と複数の半導体レーザ3とをプランジャーなどで押さえて同時加圧できるようなものがよい。
【0022】
なお、ヒートシンク2a,2bのY方向の厚みは、ヒートシンク2a,2bと半導体レーザ3の電極とが電気的に干渉しない程度まで薄い方がよい。これは、半導体レーザ3を冷却部に近い位置に配置するためである。
【0023】
図3および
図6に示すように、コリメートレンズ5は、半導体レーザ3から出射されたレーザ光を平行光にするためのレンズである。コリメートレンズ5は、紫外線硬化樹脂などによって、レンズホルダ61に固定されている。このレンズホルダ61の側面にはネジ加工が施されている。
【0024】
また、ヒートシンク2a,2bのY方向上部には、それぞれ、金属ブロック6(固定部材)が取り付けられている。コリメートレンズ5およびレンズホルダ61を所定の治具によって回転させることにより、コリメートレンズ5およびレンズホルダ61は、金属ブロック6に取り付けられる。すなわち、コリメートレンズ5は、レンズホルダ61を介して金属ブロック6に取り付けられる。このとき、所定の治具により、コリメートレンズ5の位置を調整することで、半導体レーザ3から出射されるレーザ光の焦点位置を調整することができる。
【0025】
第1プリズムミラー7は、コリメートレンズ5を介して半導体レーザ3から出射されたレーザ光を、X方向に反射させる偏向部材である。
【0026】
図1~
図4に示すように、複数の第1プリズムミラー7は、Z方向に並んで配置されている5つの第1プリズムミラー7で構成されるミラー列7a~7dを含む。ミラー列7a~7dは、レーザ列3a~3dにそれぞれ対応する。
【0027】
図2に示すように、ミラー列7a
(第1ミラー列、第3ミラー列)およびミラー列7b(第1ミラー列、第4ミラー列)の第1プリズムミラー7は、レーザ列3a,3bの半導体レーザ3から出射されたレーザ光を、図面上側にそれぞれ反射させる。ミラー列7c
(第2ミラー列、第5ミラー列)およびミラー列7d(第2ミラー列、第6ミラー列)の第1プリズムミラー7は、レーザ列3c,3dの半導体レーザ3から出射されたレーザ光を、図面下側にそれぞれ反射させる。
【0028】
また、ミラー列7a~7dは、第1ミラーブロック8a~8dにそれぞれ固定されている。
図3に示すように、第1ミラーブロック8aは、図面左側から図面右側にかけて段が高くなる階段状に形成されている。このため、ミラー列7aの第1プリズムミラー7は、図面左側から図面右側にかけてY方向の高さが徐々に高くなるように配置されている。この配置により、ミラー列7aにおける複数の第1プリズムミラー7は、反射した各レーザ光のY方向の高さが互いに異なっている。
【0029】
第1ミラーブロック8dも第1ミラーブロック8aと同様の形状となるように形成されている。すなわち、ミラー列7a,7dは、Z方向に並んで配置された第1プリズムミラー7が、Y方向およびZ方向に同じ位置に配置されている。
【0030】
また、第1ミラーブロック8b,8cも、第1ミラーブロック8a,8dと同様に、Z方向における一方側から他方側(
図3における図面左側から図面右側)にかけて段が高くなる階段状に形成されている。このため、ミラー列7b,7cの第1プリズムミラー7は、それぞれ、Z方向における一方側から他方側にかけてY方向の高さが徐々に高くなるように配置されている。
【0031】
また、第1ミラーブロック8b,8cは、同じ形状となるように形成されている。すなわち、ミラー列7b,7cは、Z方向に並んで配置された第1プリズムミラー7が、Y方向およびZ方向に同じ位置に配置されている。
【0032】
ここで、第1ミラーブロック8a,8dは、第1ミラーブロック8b,8cよりも、Z方向に同じ位置にある段が高くなるように形成されている。すなわち、ミラー列7a,7b(7c,7d)に配置された第1プリズムミラー7は、Y方向において、異なる高さに配置されている。これにより、レーザ列3a,3b(3c,3d)の半導体レーザ3から出射されたレーザ光が互いに干渉しないようになっている。
【0033】
図1~
図4に示すように、第2プリズムミラー9は、第1プリズムミラー7から入射したレーザ光を、Z方向(
図2の図面左側)に反射させる偏向部材である。この第2プリズムミラー9は、第1プリズムミラー7よりも光軸方向の感度が低くなっている。
【0034】
図1、
図2および
図4に示すように、複数の第2プリズムミラー9は、Z方向に並んで配置されている5つの第2プリズムミラー9で構成されたミラー列9a,9bを含む。ミラー列9a,9bは、ミラー列7a,7dの間およびミラー列7b,7cの間にそれぞれ配置されている。また、ミラー列9a,9bは、Z方向に並んで配置された第2プリズムミラー9が、Y方向において重なるように配置されている。
【0035】
ミラー列9a,9bは、第2ミラーブロック10a,10bにそれぞれ固定されている。第2ミラーブロック10a,10bは、Z方向における一方側から他方側(
図3における図面左側から図面右側)にかけて段が高くなる階段状に形成されている。このため、ミラー列9a,9bの第2プリズムミラー9は、それぞれ、Z方向における一方側から他方側にかけてY方向の高さが徐々に高くなるように配置されている。
【0036】
図4に示すように、第2ミラーブロック10aは、第1ミラーブロック8a,8dと、Z方向に同じ位置にある段が同じ高さとなるように形成されている。また、第2ミラーブロック10bは、第1ミラーブロック8b,8cと、Z方向に同じ位置にある段が同じ高さとなるように形成されている。すなわち、ミラー列9a,9bに配置された第2プリズムミラー9は、Y方向において、異なる高さに配置されている。これにより、ミラー列7a,7b(7c,7d)から入射したレーザ光が互いに干渉しないようになっている。
【0037】
アナモルフィックプリズム11a,11bは、Y方向におけるレーザ光の広がりを圧縮する偏向部材である。
図3に示すように、第2プリズムミラー9から入射したレーザ光は、アナモルフィックプリズム11a,11bによってY方向に圧縮される。
【0038】
シリンドリカルレンズ12は、X方向におけるレーザ光の広がりを圧縮するレンズである。アナモルフィックプリズム11bから入射したレーザ光は、シリンドリカルレンズ12によってX方向に圧縮される。
【0039】
集光レンズ13は、シリンドリカルレンズ12から入射したレーザ光を集光する。集光レンズ13によって集光されたレーザ光は、ファイバ14の入射端面に入射される。
【0040】
ここで、本レーザ装置では、各レンズ(各ミラー)は紫外線硬化樹脂によって各部材に固定される。具体的に、コリメートレンズ5、第1プリズムミラー7および第2プリズムミラー9は、紫外線硬化樹脂によって、レンズホルダ61、第1ミラーブロック8a~8dおよび第2ミラーブロック10a,10bにそれぞれ固定される。
【0041】
半導体レーザ3は、レーザ光を出射する際に発熱するため、この発熱により出力が落ちたり、寿命が短くなったりするおそれがある。また、半導体レーザ3の発熱により、上記各レンズ(ミラー)を固定している紫外線硬化樹脂が熱膨張し、当該レンズ(ミラー)の光軸がずれてしまうおそれがある。
【0042】
そこで、本レーザ装置では、半導体レーザ3を、冷却部に近接しているベースプレート1およびヒートシンク2a,2bに接合することにより、半導体レーザ3を効果的に冷却できるようにしている。
【0043】
また、各レーザ列において、光路長が最も長い半導体レーザ3(以下、半導体レーザ31とする)は、当該レーザ列の両端のいずれか一方に配置されている。半導体レーザ3は、レーザ光の光路長が長くなると、紫外線硬化樹脂の熱膨張によるミラーの光軸のずれの影響を受けやすくなる。例えば、
図3では、半導体レーザ31が、図面右端に配置されている。
図5に示すように、半導体レーザ31は、図面右側および図面下側に、他の半導体レーザ3が配置されていない。このため、レーザ列において、レーザ光の光路長が長い半導体レーザを効果的に冷却することができる。
【0044】
(レーザ装置の光軸調整について)
図7は、本実施形態に係るレーザ装置の光軸を調整する際のフローチャートである。
図7を参照しつつ、本レーザ装置の光軸調整について説明する。
【0045】
ステップS1において、アナモルフィックプリズム11a,11bの光軸を調整する。
【0046】
ステップS2において、本レーザ装置に、半導体レーザ3およびコリメートレンズ5を固定する。具体的に、半導体レーザ3をベースプレート1およびヒートシンク2a(またはヒートシンク2b)に接合する。また、所定の治具により、コリメートレンズ5およびレンズホルダ61を回転させ、コリメートレンズ5およびレンズホルダ61を金属ブロック6に取り付ける。このとき、コリメートレンズ5の位置を調整することにより、半導体レーザ3の焦点位置を調整する。
【0047】
ステップS3において、第2プリズムミラー9を第2ミラーブロック10a,10bに固定する。
【0048】
ステップS4において、第1プリズムミラー7の光軸を調整する。ステップS4の後、第1プリズムミラー7を第1ミラーブロック8a~8dにそれぞれ固定する。
【0049】
ステップS3において、第1プリズムミラー7よりも光軸方向の感度が低い第2プリズムミラー9を先に固定することにより、第1プリズムミラー7の光軸を調整するだけで、第1プリズムミラー7および第2プリズムミラー9の光軸を調整することができる。
【0050】
以上の構成により、本実施形態に係るレーザ装置は、ベースプレート1に設けられ、Z方向にレーザ光を出力するレーザ装置であって、ベースプレート1の表面と平行となるようにベースプレート1に固定されており、Y方向に光軸を有し、ベースプレート1と反対側にレーザ光を出射する複数の半導体レーザ3と、複数の半導体レーザ3の、Y方向におけるベースプレート1と反対側に配置されており、複数の半導体レーザ3から出射されたレーザ光を、X方向にそれぞれ反射させる複数の第1プリズムミラー7と、複数の第1プリズムミラー7の、X方向におけるレーザ光が反射する側に配置されており、複数の第1プリズムミラー7によって反射されたレーザ光を、Z方向にそれぞれ反射させる複数の第2プリズムミラー9とを備える。複数の第1プリズムミラー7は、反射した各レーザ光のY方向の高さが互いに異なるように、Z方向の一方側から他方側にかけて、Y方向の高さが徐々に高くなるように配置されている。
【0051】
すなわち、複数の半導体レーザ3は、ベースプレート1の表面と平行となるようにベースプレート1に固定されるため、ベースプレート1の下底(裏面)に設けられる冷却部に近接して配置される。これにより、半導体レーザを効果的に冷却することができる。
【0052】
また、半導体レーザ3から出射されたレーザ光は、第1プリズムミラー7および第2プリズムミラー9によって、集光レンズの光軸方向(Z方向)に反射される。そして、複数の第1プリズムミラー7は、Z方向の一方側から他方側にかけて、Y方向の高さが徐々に高くなるように配置されている。このため、反射した各レーザ光のY方向の高さが互いに異なっており、半導体レーザ3から出射されたレーザ光が互いに干渉しないようになっている。これにより、特許文献1のレーザ装置の出力を維持することができる。
【0053】
したがって、レーザ装置の出力を低下させずに、半導体レーザ3を効果的に冷却することができる。
【0054】
また、複数の半導体レーザ3は、Z方向に並んで配置された半導体レーザ3の列であるレーザ列3a~3dを含む。複数の第1プリズムミラー7は、Z方向に並んで配置された第1プリズムミラー7の列であるミラー列7a~7dを含む。ミラー列7a~7dは、レーザ列3a~3dにそれぞれ対応するように配置されている。ミラー列7a,7bとミラー列7c,7dとの間に、Z方向に並んで配置された第2プリズムミラー9の列であるミラー列9a,9bが配置されている。すなわち、ミラー列7a,7d(7b,7c)が、ミラー列9a(9b)を挟んで、対向するように配置されるため、1列の第2プリズムミラー9の列に対して、2列の第1プリズムミラー7の列を(2列の半導体レーザの列)配置することができる。これにより、ベースプレートの所定領域内に配置される半導体レーザの数を増加させることができる。
【0055】
また、ミラー列7a,7bは、Y方向において互いに異なる高さに配置されている。ミラー列7c,7dは、Y方向において互いに異なる高さに配置されている。ミラー列7a,7dの間およびミラー列7b,7cの間に、ミラー列9a,9bがそれぞれ配置されている。ミラー列9a,9bは、Y方向に重なるように配置されている。すなわち、第2プリズムミラー9の列をY方向に積層することができるため、第2プリズムミラー9の列のX方向における一側(または他側)に2列以上の第1プリズムミラー7の列(2列以上の半導体レーザの列)を配置することができる。これにより、ベースプレートの所定領域内に配置される半導体レーザの数を増加させることができる。
【0056】
また、レーザ列3aにおいて、光路長が最も長い半導体レーザ31は、レーザ列3aの両端のいずれか一方(
図3では、図面右側)に配置されている。これにより、光路長が最も長い半導体レーザ31の、レーザ列3aのZ方向のいずれか一方側(
図4では図面右側)に半導体レーザ3が配置されていないため、レーザ光の光路長が長い半導体レーザを効果的に冷却することができる。
【0057】
また、レーザ列3aの半導体レーザ3は、ヒートシンク2aに接合されている。レーザ列3bの半導体レーザ3は、ヒートシンク2bに接合されている。これにより、半導体レーザごとにヒートシンクを作成しなくてもよいため、半導体レーザを効果的に冷却しつつ、レーザ装置の部品点数を抑えることができる。
【0058】
また、半導体レーザ3と第1プリズムミラー7との間には、コリメートレンズ5を取り付けるための金属ブロック6(固定部材)が設けられている。コリメートレンズ5は、レンズホルダ61に固定されており、レンズホルダ61を介して金属ブロック6に取り付けられる。レンズホルダ61の側面には、ネジ加工がされている。これにより、コリメートレンズ5およびレンズホルダ61を所定の治具によって回転させることにより、コリメートレンズ5およびレンズホルダ61を金属ブロック6に取り付けることができる。また、この取り付けの際に、コリメートレンズ5の位置を調整することで、半導体レーザ3から出射されるレーザ光の焦点位置を調整することができる。したがって、コリメートレンズ5の取り付け作業を容易にするとともに、レーザ光の焦点位置を調整しやすくなる。
【0059】
また、第2プリズムミラー9は、第1プリズムミラー7よりも光軸方向の感度が低い。これにより、第1プリズムミラー7よりも光軸方向の感度が低い第2プリズムミラー9を先に固定することにより、第1プリズムミラー7の光軸を調整するだけで、第1プリズムミラー7および第2プリズムミラー9の光軸を調整することができる。したがって、第1プリズムミラー7および第2プリズムミラー9の光軸調整の手間を省くことができる。
【0060】
(その他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態について説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。
【0061】
なお、上記実施形態では、レーザ列3a~3dに、それぞれ、5つの半導体レーザ3がZ方向に並んで配置されているが、半導体レーザ3の配置や半導体レーザ3の個数は、これに限られない。この場合、半導体レーザ3の配置に合わせて、第1プリズムミラー7および第2プリズムミラー9の配置を適宜変更してもよい。
【0062】
また、複数の第1プリズムミラー7および複数の第2プリズムミラー9は、各ミラー列において、階段状に配置されているが、これに限られない。例えば、Y方向における高さが互いに異なる高さとなるように、ミラー列7aにおける複数の第1プリズムミラー7の、一部の高さを変更してもよいし、全部または一部の高さをランダムにしてもよい。この場合、ミラー列7dの第1プリズムミラー7、および、ミラー列9aの第2プリズムミラー9のY方向の高さを、対応するミラー列7aの第1プリズムミラー7と同じ高さにすればよい。すなわち、複数の第1プリズムミラー7および複数の第2プリズムミラー9は、各ミラー列において、Y方向に互いに異なる高さに配置されていればよい。
【0063】
また、上記冷却部は、水冷板やペルチェ素子などによって構成される冷却機構を備える。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のレーザ装置は、半導体レーザの発熱による光軸ずれにより、複数のレーザ光の光ファイバ結合効率低下を抑制できるため、半導体レーザを蛍光体に照射して白色光を取り出す高出力照明のレーザプロジェクターなどの用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 ベースプレート
2a,2b ヒートシンク
3,31 半導体レーザ
3a~3d レーザ列
5 コリメートレンズ
61 レンズホルダ
7 第1プリズムミラー
7a ミラー列(第1ミラー列、第3ミラー列)
7b ミラー列(第1ミラー列、第4ミラー列)
7c ミラー列(第2ミラー列、第5ミラー列)
7d ミラー列(第2ミラー列、第6ミラー列)
9 第2プリズムミラー
9a~9d ミラー列