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特許7515099積層板の製造方法、及びプリント配線板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】積層板の製造方法、及びプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
H05K3/46 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020051639
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021150609
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 一輝
(72)【発明者】
【氏名】岸野 光寿
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/119608(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0103345(US,A1)
【文献】特開2009-252916(JP,A)
【文献】特開昭59-048997(JP,A)
【文献】特開昭63-111698(JP,A)
【文献】実開昭62-188181(JP,U)
【文献】特開2000-332063(JP,A)
【文献】特開2004-146658(JP,A)
【文献】特開2003-158143(JP,A)
【文献】特開2014-198407(JP,A)
【文献】特開2016-129264(JP,A)
【文献】国際公開第2019/022101(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 1/02
H05K 3/00
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一導体層、第一絶縁層及び第二導体層がこの順に積層したコア材の、前記第一導体層の上に熱硬化性樹脂を含有する樹脂シート及び金属箔をこの順に重ねて積層物を作製する積層工程と、
前記積層物を加熱することで、前記コア材と、前記樹脂シートから作製された第二絶縁層と、前記金属箔から作製された第三導体層とがこの順に積層した積層板を製造する加熱工程とを含み、
前記第一絶縁層よりも前記第二絶縁層の方が樹脂含有率が高く、
前記加熱工程を、前記積層物を、前記金属箔の外面が凸状になるように湾曲させた状態で行う、
積層板の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂シートはプリプレグである、
請求項1に記載の積層板の製造方法。
【請求項3】
前記積層工程が行われる前の前記コア材における前記第一絶縁層は、完全には硬化されていない熱硬化性樹脂を含有する、
請求項1又は2に記載の積層板の製造方法。
【請求項4】
前記積層工程において、前記積層物を、前記第一絶縁層が完全には硬化しない条件で熱プレスする、
請求項3に記載の積層板の製造方法。
【請求項5】
第一導体層、第一絶縁層及び第二導体層がこの順に積層したコア材の、前記第一導体層の上に樹脂シート及び金属箔をこの順に重ねて積層物を作製する積層工程と、
前記積層物を加熱することで、前記コア材と、前記樹脂シートから作製された第二絶縁層と、前記金属箔から作製された第三導体層とがこの順に積層した積層板を製造する加熱工程とを含み、
前記第一絶縁層よりも前記第二絶縁層の方が樹脂含有率が高く、
前記加熱工程を、前記積層物をロール状に巻くことで、前記金属箔の外面が凸状になるように湾曲させた状態で行う、
積層板の製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程において、前記積層物をロール状に巻くことで湾曲させる、
請求項1~のいずれか1項に記載の積層板の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の積層板の製造方法で製造された前記積層板における前記第二導体層と前記第三導体層とのうち少なくとも一方の一部を除去することで導体配線を作製する配線形成工程を含む、
プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層板の製造方法、及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多層積層板の製造方法が開示されている。この製造方法は、第一及び第二金属箔の間に第一プリプレグ層を配置すること、第一プリプレグ層を加圧下で熱硬化させることで第一絶縁層を形成すること、第一金属箔に配線形成処理を施すことで第一導体配線を形成することを含む。上記の製造方法は、第一導体配線上に第二プリプレグ層及び第三金属箔をこの順で積層すること、及び第二プリプレグ層を加圧下で熱硬化させて第二絶縁層を形成することで多層積層板を得ることを更に含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-129264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、第二及び第三金属箔の各々から導体配線を作製すると多層プリント配線板(プリント配線板)を得ることができる。しかし、この場合、プリント配線板に反りが生じやすくなることがある。
【0005】
本開示の課題は、プリント配線板を製造するために使用でき、プリント配線板に反りを生じにくくできる積層板の製造方法、及びこの積層板を利用したプリント配線板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る積層板の製造方法は、第一導体層、第一絶縁層及び第二導体層がこの順に積層したコア材の、前記第一導体層の上に樹脂シート及び金属箔をこの順に重ねて積層物を作製する積層工程と、前記積層物を加熱することで、前記コア材と、前記樹脂シートから作製された第二絶縁層と、前記金属箔から作製された第三導体層とがこの順に積層した積層板を製造する加熱工程とを含む。前記第一絶縁層よりも前記第二絶縁層の方が樹脂含有率が高い。前記加熱工程を、前記積層物を、前記金属箔の外面が凸状になるように湾曲させた状態で行う。
【0007】
本開示の一態様に係るプリント配線板の製造方法は、前記積層板における前記第二導体層と前記第三導体層とのうち少なくとも一方の一部を除去することで、導体配線を作製する配線形成工程を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の上記態様には、プリント配線板を製造するために使用でき、プリント配線板に反りを生じにくくできる積層板の製造方法、及びこの積層板を利用したプリント配線板の製造方法を提供できる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る積層板の断面図である。
図2図2は、上記実施形態において、第一導体層と、第一絶縁層と、第二導体層とを積層する工程の一例の説明図である。
図3図3Aは、上記実施形態に係る第1例のコア材の断面図である。図3Bは、上記実施形態に係る第2例のコア材の断面図である。
図4図4は、上記実施形態において、第一導体層の上に樹脂シート及び金属箔を重ねる工程の一例の説明図である。
図5図5Aは、上記実施形態に係る積層物を巻き取った状態の斜視図である。図5Bは、上記積層物の断面図である。
図6図6は、上記実施形態に係るプリント配線板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本開示の一実施形態の概要を説明する。
【0011】
本実施形態に係る積層板12の製造方法は、第一導体層34、第一絶縁層21及び第二導体層38がこの順に積層したコア材14の、第一導体層34の上に樹脂シート2B及び金属箔33をこの順に重ねて積層物11を作製する積層工程(図2図4参照)を含む。本方法は、積層物11を加熱することで、コア材14と、樹脂シート2Bから作製された第二絶縁層22と、金属箔33から作製された第三導体層39とがこの順に積層した積層板12を製造する加熱工程(図1、及び図5A図5B参照)を更に含む。第一絶縁層34よりも第二絶縁層22の方が樹脂含有率が高い。加熱工程を、積層物11を、金属箔33の外面が凸状になるように湾曲させた状態で行う。
【0012】
積層板12における第二導体層38と第三導体層39との各々の一部を除去することで、第二導体層38及び第三導体層39からそれぞれ第一導体配線35及び第二導体配線36を作製できる。これにより、プリント配線板13を製造できる。
【0013】
本実施形態によると、プリント配線板13に反りを生じにくくできる。その理由は次のとおりであると推察される。
【0014】
積層物11を加熱することで積層板12を作製すると、第二絶縁層22の内部には、第二絶縁層22が縮む方向の応力が生じやすい。これは、第一絶縁層34よりも第二絶縁層22の方が樹脂含有率が高いことで、加熱後に冷却されると第一絶縁層34よりも第二絶縁層22の方が収縮しやすいからであり、また樹脂シート2Bが熱硬化性を有する場合には樹脂シート2Bが硬化することによる硬化収縮によって第二絶縁層22の方がより収縮しやすくなるためである。そのため、積層物11を湾曲させずに加熱工程を行うと、第二導体層38と第三導体層39との各々の一部を除去することで、第二導体層34及び第三導体層39からそれぞれ導体配線を作製したならば、第二絶縁層22にかけられていた拘束が緩むことで第二絶縁層22における応力が解放されて、第二絶縁層22が収縮し、プリント配線板に反りが生じやすい。
【0015】
しかし、本実施形態では、上述のとおり加熱工程では積層物11を金属箔33の外面3Aが凸状になるように湾曲させるため、積層板11は、プリント配線板13の製造時に生じる反りとは逆向きに反りやすい。そのため、この積層板11からプリント配線板13を製造すると、積層物11の製造時に生じた反りの傾向とプリント配線板13の製造時の第二絶縁層22の収縮により生じる反りの傾向とが相殺されて、プリント配線板13に反りが生じにくくなると考えられる。
【0016】
次に、本実施形態を、図1図6を参照して、より詳細に説明する。
【0017】
本実施形態で製造される積層板12は、図1に示すように、第二導体層38と、第一絶縁層21と、第一導体層34と、第二絶縁層22と、第三導体層39とがこの順で積層された構造を有する。積層板12は、第三導体層39の外面が凸状になるように湾曲していてもよい。すなわち積層板12は、第一絶縁層21から第二絶縁層22に向かう方向D1に向けて突出するように湾曲してもよい。
【0018】
第一導体層34は、第一金属箔31(図2参照)から作製された層であり、第一絶縁層21と第二絶縁層22との間に埋め込まれている。図1の例では、第一導体層34は配線37である。なお、第一導体層34は配線37でなく、例えば金属箔でもよい。第一導体層34が配線37である場合、第一導体層34は、例えば第一絶縁層21に積層された第一金属箔31の一部をエッチング処理等で除去することで形成される。
【0019】
第二導体層38は、第二金属箔32から作製された層であり、第一絶縁層21に密着して形成されている。
【0020】
第三導体層39は、金属箔(第三金属箔)33から作製された層であり、第二絶縁層22に密着して形成されている。
【0021】
第一絶縁層21は、電気絶縁性を有する層であり、第一樹脂シート2A(図2参照)が第一導体層34と第二導体層38とに密着することで形成される。第一導体層34が配線37である場合、第一絶縁層21は第二絶縁層22にも密着している。
【0022】
第一樹脂シート2Aとして、例えば、液晶ポリマーフィルム、ポリイミドフィルム、及びプリプレグ等が挙げられる。
【0023】
第一樹脂シート2Aは例えば熱硬化性樹脂を含有する。この場合、第一樹脂シート2Aは、プリプレグであることが好ましい。
【0024】
第一樹脂シート2Aがプリプレグである場合、このプリプレグは、補強材に熱硬化性樹脂組成物(以下、組成物(X)という場合がある)を含浸させてから、必要に応じて組成物(X)を加熱乾燥させることで得られる。
【0025】
組成物(X)は、熱硬化性樹脂を含有する。
【0026】
熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、メラミン樹脂、及びイミド樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含有できる。エポキシ樹脂としては、例えば、多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0027】
組成物(X)はフィラーを更に含有できる。
【0028】
フィラーは、無機充填材であることが好ましい。無機充填材は、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、及びアルミナ等からなる群から選択される少なくとも1種を含有できる。
【0029】
組成物(X)全量に対するフィラーの割合は、30質量%以上80質量%以下であることが好ましい。フィラーの割合が30質量%以上であると、エッチング処理前後の寸法変化と、エッチング処理後からエージング処理後までの寸法変化とをより小さくすることができる。またフィラーの割合が80質量%以下であると、組成物(X)を補強材に含浸させることができる。
【0030】
組成物(X)は、硬化剤及び硬化促進剤を更に含有できる。
【0031】
硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、及びジシアンジアミド硬化剤等が挙げられる。
【0032】
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類、フェノール化合物、アミン類、有機ホスフィン類等が挙げられる。
【0033】
組成物(X)は、溶剤を更に含有できる。この溶剤は、組成物(X)中の成分を希釈するために用いられる。溶剤を含有する組成物(X)は、ワニスとも呼ばれる。溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、スチレン、メトキシプロパノール等が挙げられる。
【0034】
プリプレグは、上記の通り、補強材を含む。補強材としては、例えば、ガラスクロス、ガラスペーパー、ガラスマット等の無機繊維、アラミドクロス等の有機繊維が挙げられる。補強材がガラスクロスである場合、補強材はガラス織布であってもよく、ガラス不織布であってもよい。
【0035】
プリプレグの厚みは、例えば、0.013mm以上0.500mm以下であるが、これに限定されない。
【0036】
第二絶縁層22は、電気絶縁性を有する層であり、樹脂シート(第二樹脂シート)2B(図4参照)が第一導体層34と第三導体層39とに密着することで形成される。このような第二樹脂シート2Bとして、例えば、ポリイミドフィルム、及びプリプレグ等が挙げられる。
【0037】
第二樹脂シート2Bは例えば熱硬化性樹脂を含有する。この場合、第二樹脂シート2Bは、プリプレグであることが好ましい。第二樹脂シート2Bが熱硬化性樹脂を含有する場合、第二樹脂シート2Bが加熱されると硬化収縮が生じるとが、本実施形態では上述のとおり、第二樹脂シート2Bが硬化収縮しても、プリント配線板13には反りが生じにくい。
【0038】
第二樹脂シート2Bがプリプレグである場合、このプリプレグは、第一樹脂シート2Aがプリプレグである場合と同様にして形成される。すなわち、このプリプレグは、補強材と組成物(X)とを含む。
【0039】
組成物(X)が熱硬化性樹脂として多官能エポキシ樹脂を含有すると、組成物(X)の硬化時に架橋構造が形成されるため、第二樹脂シート2Bが硬化して第二絶縁層22が作製される際に、硬化収縮が特に生じやすい。しかし、本実施形態では組成物(X)が多官能エポキシ樹脂を含有しても、上述のとおり加熱工程では積層物11を金属箔33の外面3Aが凸状になるように湾曲させるため、プリント配線板13に第二樹脂シート2Bの硬化収縮に起因する反りを生じにくくできる。
【0040】
上述のとおり、第二絶縁層22の樹脂含有率は、第一絶縁層21の樹脂含有率よりも高い。すなわち、第二樹脂シート2Bは、第二絶縁層22の樹脂含有率が第一絶縁層21の樹脂含有率よりも高くなるように作製される。本実施形態では、このように第二絶縁層22の樹脂含有率が第一絶縁層21の樹脂含有率よりも高くても、プリント配線板13の反りを生じにくくできる。第二絶縁層22の樹脂含有率と第一絶縁層21の樹脂含有率との差は特に制限されないが、例えば、第二絶縁層22の樹脂含有率は66質量%以上74質量%以下であり、第一絶縁層21の樹脂含有率は64質量%以上72質量%以下であり、両者の差は1質量%以上3質量%以下である。
【0041】
第一金属箔31、第二金属箔32及び第三金属箔33の材質は同じであってもよく、異なってもよい。第一金属箔31、第二金属箔32及び第三金属箔33の各々は、例えば、銅箔、アルミニウム箔、又はステンレス箔等である。第一金属箔31、第二金属箔32及び第三金属箔33の各々の厚さは、例えば2μm以上70μm以下であるが、これに限定されない。
【0042】
本実施形態に係る積層板12の製造方法は、積層工程と、加熱工程とを含む。
【0043】
積層工程では、第一導体層、第一絶縁層及び第二導体層がこの順に積層したコア材14の、第一導体層の上に樹脂シート及び金属箔をこの順に重ねて積層物を作製する。
【0044】
積層板12の製造方法は、積層工程の前に、コア材14を作製する工程(以下、コア作製工程という)を更に含んでもよい。コア作製工程では、例えば図3Aに示すように、まず第一金属箔31と、第一樹脂シート2Aと、第二金属箔32とをこの順で積層することで第一積層物1Aを作製する。第一積層物1Aを熱プレスすることで、第一金属箔31と、第一樹脂シート2Aと、第二金属箔32が積層一体化される。これにより、第一金属箔31から作製された第一導体層34と、第一樹脂シート2Aから作製された第一絶縁層21と、第二金属箔32から作製された第二導体層38がこの順に積層したコア材14が得られる。
【0045】
第一積層物1Aを熱プレスするにあたっては、例えば、ダブルベルト方式を採用できる。このダブルベルトプレス方式は、図2のような製造装置で実行することができる。この製造装置は、ダブルベルトプレス装置7を備える。
【0046】
ダブルベルトプレス装置7は、一対のエンドレスベルト4と、ドラム9と、一対の熱圧装置10とを備える。一対のエンドレスベルト4は、その間に第一積層物1Aを挟むようにして上下に配置されている。一対のエンドレスベルト4のうち、一方のエンドレスベルト4は二つのドラム9の間に掛け回されており、他方のエンドレスベルト4は二つのドラム9の間に掛け回されている。一対の熱圧装置10は、その間にエンドレスベルト4、4と第一積層物1Aとを挟むようにして設けられている。そして、熱圧装置10は、エンドレスベルト4を介して第一積層物1Aを熱プレスする。熱圧装置10は、例えば液圧プレートを含む。液圧プレートは、加熱された液体の液圧によってエンドレスベルト4を介して第一積層物1Aを熱プレスするように構成されている。
【0047】
エンドレスベルト4は、限定されないが、例えば金属製である。
【0048】
また、上下に対向する一対のドラム9は、第一積層物1Aから作製されたコア材14を巻取機8Aに向かって送り出すように回転する。この回転に合わせて、一対のエンドレスベルト4は回転する。
【0049】
第一積層物1Aを熱プレスするにあたって、第一金属箔31、第一樹脂シート2A、及び第二金属箔32をダブルベルトプレス装置7へ連続的に供給する。第一金属箔31、第一樹脂シート2A、及び第二金属箔32をこの順で積層させた第一積層物1Aが、ダブルベルトプレス装置7内に供給される直前で形成され、この第一積層物1Aを、ダブルベルトプレス方式で熱プレスする。
【0050】
ダブルベルトプレス方式を採用することで、一対のエンドレスベルト4を介して、第一積層物1Aの加圧面全体に均一な圧力が加えられる。これにより、第一金属箔31と第二金属箔32との間にある第一樹脂シート2Aに加えられる圧力にバラツキが生じにくくなる。
【0051】
第一積層物1Aを熱プレスする際、例えば、ダブルベルトプレス装置7に近づくにつれて第一積層物1Aが加熱される。次に第一積層物1Aは、ドラム9を通過する際に更に加熱され、熱圧装置10を通過しながらエンドレスベルト4を介して熱プレスされる。そして熱プレスされた第一積層物1Aはドラム9を通過して熱圧装置10から離れるに従って、冷却される。そして、作製されたコア材14は、巻取機8Aでロール状に巻き取られ、第一巻体81に形成される。
【0052】
第一積層物1Aを熱プレスするときの条件として、例えば200℃以上320℃以下の加熱温度、1MPa以上5MPa以下の圧力、2分以上5分以下の加熱時間が挙げられる。第一積層物1Aの加熱時間は、第一積層物1Aが熱圧装置10を通過するのに要する時間である。第一積層物1Aを熱プレスするときの条件は、上記に限定されない。
【0053】
第一絶縁フィルム1Bが熱硬化性樹脂を含有する場合、積層工程が行われる前のコア材14における第一絶縁層21は、完全には硬化されていない熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。そのためには、コア作製工程における第一積層物1Aを熱プレスする条件は、第一絶縁フィルム2Bが完全には硬化されない条件とすることが好ましい。この場合、コア材14に第二絶縁フィルム2Bが重ねられた状態で加熱されると、第一絶縁層21の硬化収縮が生じるため、第一絶縁層21と第二絶縁層22との間の寸法変化の相違が緩和されやすくなり、そのためプリント配線板13の反りが特に生じにくくなる。
【0054】
本実施形態では、ダブルベルトプレス装置7から連続的に送り出されたコア材14は、巻取機8Aでロール状に巻き取られ、第一巻体81に形成される。
【0055】
コア作製工程では、第一導体層34を配線37として形成してもよい。この場合、第一導体層34の一部を除去することで、第一導体層34を配線37として形成できる(図3B参照)。配線37を形成するにあたっては、例えばコア材14を第一巻体81から引き出して搬送し、第一導体層34にエッチング処理を施して配線37として形成してから、コア材14を第一巻体81と対向する位置でロール状に巻き取る。エッチング処理として、例えば、サブトラクティブ法を採用できる。
【0056】
本実施形態では、図3Bに示す配線37として形成された第一導体層34を備えるコア材14を、積層工程で用いる。なお、第一導体層34を配線37として形成せずに、図3Aに示すように第一導体層34が一様な金属の層であるままで、コア材14を積層工程で用いてもよい。
【0057】
積層工程は、コア材14の第一導体層34の上に樹脂シート(第二樹脂シート)2Bと金属箔(第三金属箔)33とをこの順で重ねて積層物(第二積層物)11を作製する工程である(図4参照)。
【0058】
積層工程では、第二積層物11を熱プレスすることが好ましい。第二積層物11を熱プレスするにあたり、例えば、ダブルベルト方式を採用できる。このダブルベルトプレス方式は、図4のような製造装置で実行することができる。この製造装置は、ダブルベルトプレス装置7を備える。この製造装置では、ロール状に巻かれたコア材14が繰出機8Bに設置されている。
【0059】
ダブルベルトプレス装置7は、一対のエンドレスベルト4と、ドラム9と、一対の熱圧装置10とを備える。一対のエンドレスベルト4は、その間に第二積層物11を挟むようにして上下に配置されている。一対のエンドレスベルト4のうち、一方のエンドレスベルト4は二つのドラム9の間に掛け回されており、他方のエンドレスベルト4は二つのドラム9の間に掛け回されている。一対の熱圧装置10は、その間にエンドレスベルト4、4と第二積層物11とを挟むようにして設けられている。そして、熱圧装置10は、エンドレスベルト4を介して第二積層物11を熱プレスする。熱圧装置10は、例えば液圧プレートを含む。液圧プレートは、加熱された液体の液圧によってエンドレスベルト4を介して第二積層物11を熱プレスするように構成されている。
【0060】
エンドレスベルト4は、限定されないが、例えば金属製である。
【0061】
また、上下に対向する一対のドラム9は、第二積層物11を巻取機8Cに向かって送り出すように回転する。この回転に合わせて、一対のエンドレスベルト4は回転する。
【0062】
積層工程中、コア材14、第二樹脂シート2B、及び第三金属箔33をダブルベルトプレス装置7へ連続的に供給する。コア材14、第二樹脂シート2B、及び第三金属箔33をこの順で積層させた第二積層物11が、繰出機8Bと、ダブルベルトプレス装置7との間で形成され、この第二積層物11を、ダブルベルトプレス方式で熱プレスする。
【0063】
第二積層工程にダブルベルトプレス方式を採用することで、一対のエンドレスベルト4を介して、第二積層物11の加圧面全体に均一な圧力が加えられる。これにより、第三金属箔33とコア材14との間にある第二樹脂シート2Bに加えられる圧力にバラツキが生じにくくなる。第二積層物11が熱プレスされることで、第二樹脂シート2Bと第三金属箔33とが密着する。
【0064】
第二積層物11を熱プレスする際、例えば、ダブルベルトプレス装置7に近づくにつれて第二積層物11が加熱される。次に第二積層物11は、ドラム9を通過する際に更に加熱され、熱圧装置10を通過しながらエンドレスベルト4を介して熱プレスされる。そして熱プレスされた第二積層物11はドラム9を通過して熱圧装置10から離れるに従って、冷却される。そして、第二積層物11は、巻取機8Cでロール状に巻き取られ、第二巻体82に形成される。
【0065】
第二積層物11を熱プレスするときの条件として、例えば200℃以上320℃以下の加熱温度、1MPa以上5MPa以下の圧力、2分以上5分以下の加熱時間が挙げられる。第二積層物11の加熱時間は、第二積層物11が熱圧装置10を通過するのに要する時間である。第二積層物11を熱プレスするときの条件は、上記に限定されない。
【0066】
本実施形態では、ダブルベルトプレス装置7から連続的に送り出された第二積層物11は、巻取機8Cでロール状に巻き取られ、第二巻体82に形成される(図4及び図5A参照)。このような第二積層物11は、第三金属箔33の外面3Aが凸状になるようにして湾曲されている(図5B参照)。言い換えると、第二積層物11は、第一絶縁層21から第二樹脂シート2Bに向かう方向D1に向けて突出するように湾曲している。第二積層物11の湾曲は、第二巻体82の形成時に第三金属箔33の外面(第二樹脂シート2Bと接していない表面)3Aが外側に向くようして第二積層物11を巻取機8Cで巻き取ることにより実現される。
【0067】
図5Aのような第二巻体82は、内周面83と、外周面84とを有する。内周面83は、第二巻体82から構成される円筒の内周面であり、外周面84は前記の円筒の外周面である。
【0068】
第二樹脂シート2Bが熱硬化性を有する場合、積層工程により得られた第二積層物11において、第二樹脂シート2Bは、完全には硬化していないことが好ましい。具体的には、第二樹脂シート2Bは、完全には硬化していない熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。
【0069】
また、第一樹脂シート1Aが熱硬化性樹脂を含有する場合、第一樹脂シート1Aから作製された第一絶縁層21は、積層工程における熱プレス後の第二積層物11において、完全に硬化していてもよく、完全には硬化していなくてもよい。第一絶縁層21は完全には硬化していないことがより好ましい。具体的には、第二絶縁層22は、完全には硬化していない熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。すなわち、積層工程において、第二積層物11を、第一絶縁層21が完全には硬化しない条件で熱プレスすることが好ましい。
【0070】
第二積層物11における第一絶縁層21が完全には硬化していない場合には、例えば第一絶縁層21が完全に硬化するとそのガラス転移温度が280℃以上320℃以下になる場合に、第二積層物11における第一絶縁層21のガラス転移温度が190℃以上220℃以下であることが好ましい。また、第二樹脂シート2Bが完全には硬化していない場合の第二樹脂シート2Bのガラス転移温度も上記と同様であってもよい。
【0071】
積層工程において、第二積層物11を、第一絶縁層21が完全には硬化しない条件で熱プレスする場合、プリント配線板13に反りを更に生じにくくできる。その理由は次のとおりであると推察される。加熱工程での加熱時に、第二積層物11を第三金属箔33の外面3Aが凸状になるように湾曲させた状態で第一絶縁層21及び第二樹脂シート2Bを完全に硬化させると、第一絶縁層21にも硬化収縮が生じることで、第二樹脂シート2Bの硬化収縮による応力が緩和されやすくなる。そのため、プリント配線板13の製造時の第二絶縁層22の収縮により生じる反りの傾向が小さくなって、プリント配線板13に反りが生じにくくなると考えられる。
【0072】
本実施形態では、積層工程後、加熱工程が実行される。
【0073】
加熱工程は、第二積層物11を、第三導体層39の外面3Aが凸状になるように湾曲させた状態で加熱することで積層板12を製造する工程である。この積層板12では、第二導体層38と、第一絶縁層21と、第一導体層34と、第二樹脂シート2Bから作製された第二絶縁層22と、第三金属箔33から作製された第三導体層39とがこの順に積層されている。
【0074】
加熱工程の際、第二積層物11中の熱硬化性樹脂を硬化させることができる。このため、本実施形態における加熱工程はアフターキュア工程でもある。
【0075】
加熱工程における湾曲された第二積層物11の曲率半径は、2.5mm以上500mm以下であることが好ましい。第二積層物11の曲率半径は、第二積層物11の厚み方向の断面における第三金属箔33の外面3Aの曲率半径である。この曲率半径は、加熱工程で第二積層物11を加熱する際の第二積層物11の湾曲の程度の好ましい条件である。第二積層物11の曲率半径が上記の範囲であると、第三導体層39の外面3Aが凸状になるように湾曲した形状の積層板12を容易に得ることができ、この積層板12を用いて作製されたプリント配線板13において反りが生じにくくなる。
【0076】
加熱工程において、第二巻体82の状態のまま第二積層物11を加熱することが好ましい。すなわち、第二積層物11を、金属箔33の外面3Aが凸状になるように湾曲させた状態で加熱するに当たり、第二積層物11をロール状に巻くことで湾曲させることが好ましい。この場合、第二巻体82を一度に加熱でき、かつプリント配線板13の製造時に生じる反りのとは逆向きに積層板12が反る曲げ癖を積層板12に容易に付けることができる。第二巻体82の加熱は、炉内温度が第二積層物11の硬化に適した所定の温度に設定された加熱炉内で行うことができる。
【0077】
第二巻体82の状態のまま第二積層物11を加熱する場合、第二巻体82の外周面84の曲率半径は、2.5mm以上500mm以下であることが好ましく、内周面83の曲率半径は、2.5mm以上500mm以下であることが好ましい。
【0078】
上記の「第二巻体82の状態」とは、第二積層物11を加熱するにあたり、第二積層物11をロール状に巻いて湾曲させることを意味する。ただし、第二積層物11は、第三金属箔33の外面3Aが凸状になるように湾曲させた状態で加熱されるのであれば、第二巻体82の状態以外の状態で加熱されてもよい。
【0079】
加熱工程により第二積層物11中の熱硬化性樹脂が完全硬化することが好ましい。具体的には、第一絶縁層21と第二樹脂シート2Bとが加熱工程により完全硬化することが好ましい。なお、上述のとおり、加熱工程によって、第二樹脂シート2Bから第二絶縁層22が作製され、第三金属箔33から第三導体層39が作製される。加熱工程の加熱時間は、例えば、0.5時間以上5.0時間以下であるが、これに限定されない。また、加熱工程の加熱温度は、例えば200℃以上300℃以下であるが、これに限定されない。
【0080】
第一絶縁層21の厚みは、例えば、15μm以上50μm以下であるが、これに限定されない。また、第二絶縁層22の厚みは、例えば、15μm以上50μm以下であるが、これに限定されない。
【0081】
本実施形態のプリント配線板13は、積層板12における第二導体層38と第三導体層39とのうち少なくとも一方の一部を除去することで導体配線を作製することを含む。
【0082】
配線形成工程では、例えば積層板12における第二導体層38と第三導体層39との各々の一部を除去することで、第二導体層38及び第三導体層39からそれぞれ第一導体配線35及び第二導体配線36を作製する。配線形成工程では、第一導体配線35及び第二導体配線36を作製するために、エッチング処理を採用できる。
【0083】
配線形成工程により第二導体層38と第三導体層39との各々の一部を除去することで、プリント配線板13が製造される。このプリント配線板13には、上述のとおり反りが生じにくくなる。
【0084】
本実施形態では、加熱工程の後に切断工程が実行される。この切断工程は、加熱工程と、配線形成工程との間で実行されてもよく、配線形成工程の後に実行されてもよい。加熱工程と配線形成工程との間で切断工程が実行される場合、積層板12をプリント配線板13の製造に適した大きさに切断する。また配線形成工程の後に切断工程が実行される場合、配線形成工程の産物をプリント配線板13に適した大きさに切断する。このプリント配線板13では反りが生じにくくなっているため、プリント配線板13が、マガジンラックに一旦保管されても、このマガジンラックから落下しにくくなる。このため、プリント配線板13をマガジンラック内に保管した状態で搬送することが容易になる。
【0085】
プリント配線板13は、図6のように、第一導体配線35、第一絶縁層21、第一導体層34、第二絶縁層22、及び第二導体配線36がこの順で積層された構造を有する。第一導体層34は第一絶縁層21と第二絶縁層22との間に埋め込まれている。第一導体配線35は第一絶縁層21の表面に密着している。第二導体配線36は第二絶縁層22の表面に密着している。
【0086】
第一導体層34が配線37である場合、第一絶縁層21と第二絶縁層22とは、配線37以外の部分で密着している。
【0087】
上記実施形態では、積層工程において第二積層体11を作製するためにダブルベルト方式を採用しているが、ダブルベルト方式の代わりに、真空プレス方式、線圧ロール方式、又は真空ラミネータ方式を採用してもよい。
【0088】
上記実施形態では、加熱工程において第二積層体11を第二巻体82のままで加熱したが、第二積層体11は、例えば、湾曲面をそれぞれ有する二つの熱盤を用意し、二つの熱盤の湾曲面の間に第二積層体11を挟んで加熱してもよい。この場合、湾曲面によって第二積層体11を湾曲させながら第二積層体11を加熱することができる。
【実施例
【0089】
以下、本開示を実施例により具体的に説明する。
【0090】
<実施例、及び比較例>
各実施例及び比較例は、次の材料を用いて行われた。
熱硬化性樹脂(多官能エポキシ樹脂):日本化薬株式会社製、EPPN-502H。
硬化剤(フェノール系硬化剤):DIC株式会社製、TD-209060M。
シリカ:株式会社アドマテックス製、SC-2050MTX。
タルク:日本タルク株式会社製、D-800。
水酸化アルミニウム:住友化学株式会社製、CL-303。
補強材:旭化成株式会社製、1017クロス。
第一金属箔:三井金属鉱業株式会社製、3EC-M3-VLP(銅箔;厚み9μm、線膨張係数16ppm/K)。
第二金属箔:三井金属鉱業株式会社製、MT18Ex(銅箔;厚み3μm、線膨張係数16ppm/K)。
第三金属箔:三井金属鉱業株式会社製、MT18Ex(銅箔;厚み3μm、線膨張係数16ppm/K)。
【0091】
[実施例1]
(1)コア作製工程
表1の「第一樹脂組成物」の欄に示す成分を容器内に配合し、これらを混合することでワニスである第一樹脂組成物を調製した。
【0092】
次に、補強材に第一樹脂組成物を、硬化後の樹脂含有率(レジンコンテント)が68質量%となるように含浸させてから乾燥することで、第一樹脂シートであるプリプレグを作製した。このプリプレグを第一金属箔及び第二金属箔の間に挟んで第一積層物を作製した。そして、この第一積層物をダブルベルト方式で熱プレスした。このダブルベルト方式を、図2に示す製造装置で実行した。第一積層物を熱プレスする際、圧力は4.0MPaであり、最高加熱温度は300℃であり、加熱時間は4分であった。ここで、最高加熱温度は、熱圧装置の設定温度であり、加熱時間は第一積層物が熱圧装置を通過する時間である。これにより、第一金属箔から作製された第一導体層、第一樹脂シート(プリプレグ)から作製された第一絶縁層、及び第二金属箔から作製された第二導体を備える、コア材を得た。
【0093】
次に、コア材をロール状に巻き取って第一巻体を形成した後、このコア材のうち、第一導体層だけに、塩化第二銅等を主成分とするエッチング液を用いてエッチング処理を施すことで、第一導体層を配線として形成した。そして、このコア材をロール状に巻き取った。
【0094】
(2)積層工程
表1の「第二樹脂組成物」の欄に示す成分を容器内に配合し、これらを混合することでワニスである第二樹脂組成物を調製した。
【0095】
次に、補強材に第二樹脂組成物を、硬化後の樹脂含有率(レジンコンテント)が70質量%となるように含浸させてから乾燥することで、第二樹脂シートであるプリプレグを作製した。
【0096】
次に、コア材の配線の上に、第二樹脂シートと、第三金属箔とをこの順で積層することで第二積層物を作製し、図4に示す製造装置を用いて、第二積層物をダブルベルト方式で熱プレスした。第二積層物を熱プレスする際、圧力は4.5MPaであり、最高加熱温度は300℃であり、加熱時間は3分であった。この熱プレスの条件は、第二樹脂シート(プリプレグ)から作製された第二絶縁層が完全には硬化しないように設定した。ここで、最高加熱温度は、熱圧装置の設定温度であり、加熱時間は第二積層物が熱圧装置を通過する時間である。
【0097】
(3)加熱工程
次に、熱プレスされた第二積層物をロール状に巻き取って第二巻体を作製した。そして、炉内温度が200℃に設定された加熱炉内で第二巻体を2時間加熱することで、第二積層物を金属箔(第三金属箔)の外面が凸状になるように湾曲させた状態で加熱した。この熱プレスの条件は、第二樹脂シートから作製された第二絶縁層が完全に硬化するように設定した。
【0098】
これにより、第二導体層と、第一絶縁層と、第一導体層である配線と、第二樹脂シートから作製された第二絶縁層と、第三金属箔から作製された第三導体層とがこの順で積層された構造を有する積層板を作製した。
【0099】
(4)配線形成工程
次に、積層板における第二導体層と第三導体層とに、塩化第二銅等を主成分とするエッチング液を用いてエッチング処理を施すことで、第一導体配線及び第二導体配線を形成した。これにより、この第一導体配線及び第二導体配線を有するプリント配線板を得た。このプリント配線板において、第一樹脂シートの硬化物である第一絶縁層の厚みが23μmであり、第二樹脂シートの硬化物である第二絶縁層の厚みは25μmであった。また、第一絶縁層の線膨張係数は15ppm/Kであり、第二絶縁層の線膨張係数は15ppm/Kであった。
【0100】
[実施例2]
コア材作製工程での熱プレス時の最高加熱温度を270℃にし、加熱時間を3分にした。この熱プレスの条件は、第一樹脂シート(プリプレグ)から作製される第一絶縁層が、完全には硬化しないように設定された。それ以外は、実施例1と同様にして積層板及びプリント配線板を得た。
【0101】
[比較例1]
加熱工程において、第二積層物を、ロール状に巻き取らず、平板状にした状態で加熱した。それ以外は、実施例1と同様にして積層板及びプリント配線板を得た。
【0102】
[比較例2]
加熱工程において、第二積層物を、ロール状に巻き取らず、平板状にした状態で加熱した。それ以外は実施例2と同様にして積層板及びプリント配線板を得た。
【0103】
<評価>
〔第二積層物における第一絶縁層のガラス転移温度〕
各実施例及び比較例において、積層工程における熱プレス後の第二積層物における第一絶縁層のガラス転移温度(Tg)を、動的粘弾性測定により測定した。このガラス転移温度(Tg)を測定する際、セイコーインスツルメンツ株式会社製の粘弾性スペクトロメータ「DMS100」を用いた。この測定において、曲げモジュールで、周波数10Hz、昇温速度5℃/分、温度範囲室温~340℃の条件でtanδを測定し、tanδが極大を示す温度をガラス転移温度(Tg)とした。その結果を表1に示す。
【0104】
この結果によると、積層工程における熱プレス後の第二積層物、すなわち加熱工程が行われる前の第二積層物におケル第一絶縁層は、実施例1及び比較例1では完全に硬化しており、実施例2及び比較例2では第二積層物では完全には硬化していないと、判断できる。
【0105】
〔プリント配線板の反り量評価〕
各実施例及び比較例において、加熱工程で得られた積層板から、平面視寸法24cm×8cmのサンプルを切り出した。このサンプルの第二導体層及び第三導体層を、上記のエッチング液を用いたエッチング処理により全て除去してから、このこのサンプルを200℃で1時間加熱した。
【0106】
次に、第一絶縁層の上方に第二絶縁層が位置するようにしてサンプルを測定台に配置した。この状態で、サンプルの反り量を測定した。反り量は、測定台とサンプルにおける測定台と対向する面との間の上下寸法の最大値であり、サンプルに上方に凸状に反りが生じている場合にはプラスの値で規定し、下方に凸状に反りが生じている場合にはマイナスの値で規定した。その結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
上記の結果によると、第一絶縁層よりも第二絶縁層の方が樹脂含有率が高くなるようにし、加熱工程においては、第二積層物を第三金属箔の外面が凸状になるように湾曲させることで第一絶縁層よりも第二樹脂シートをより大きく引き伸ばした状態とし、その状態で加熱することで、サンプルから第二導体層及び第三導体層を除去した場合にサンプルに反りを生じにくくできることが、確認できた。これに対して、比較例のように第二積層物を平板状にした状態で加熱工程を行った場合には、反りが大きくなった。これにより、サンプルから第二導体層及び第三導体層を除去した場合に、第一絶縁層よりも第二絶縁層の方が収縮が大きく、この収縮の差により生じる反りを、実施例1、2では加熱工程で第二積層物を湾曲した状態で加熱することで緩和できたものと判断できる。また、実施例2のように第二積層物における第一絶縁層が完全には硬化していない状態で加熱工程を行った場合、実施例1よりも反りが抑制された。そのため、積層工程で得られた第二積層物中で第二絶縁シートだけでなく、第一絶縁層も、完全には硬化されていない熱硬化性樹脂を含有すると、反り抑制の効果が高いことが確認できた。
【符号の説明】
【0109】
11 積層物
12 積層板
14 コア材
2B 樹脂シート
21 第一絶縁層
22 第二絶縁層
2B 樹脂シート
33 金属箔
34 第一導体層
38 第二導体層
39 第三導体層
3A 外面
図1
図2
図3
図4
図5
図6