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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ファンモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/14 20060101AFI20240705BHJP
   F04D 29/28 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H02K7/14 A
F04D29/28 J
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020117368
(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公開番号】P2022014812
(43)【公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】落合 公大
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-106079(JP,A)
【文献】特開2019-068488(JP,A)
【文献】特開平11-215758(JP,A)
【文献】特開2020-040500(JP,A)
【文献】実開昭58-176570(JP,U)
【文献】特開2016-039640(JP,A)
【文献】特開平03-052541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/14
F04D 29/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心方向に延伸する回転軸と磁石とを有するロータ及び前記ロータの外側に配置されたステータを有するモータと、
前記回転軸に取り付けられたファンと、を備え、
前記ステータは、ステータコアと、前記ステータコアに巻かれた巻線とを有し、
前記ステータコア及び前記巻線は、モールド樹脂で覆われており、
前記モールド樹脂は、前記ファンに向かって突出する1つ以上の第1突出部を有し、
前記ファンは、前記モールド樹脂に向かって突出する1つ以上の第2突出部を有し、
前記第1突出部及び前記第2突出部の各々は、前記軸心方向において前記ファンが取り付けられた側から見ると、前記回転軸を中心とする円環状に設けられており、
前記第1突出部と前記第2突出部とは、前記回転軸と直交する径方向から見た場合、少なくとも一部が重なっており、
前記ロータ及び前記磁石は、前記軸心方向において前記第1突出部及び前記第2突出部で覆われていない、
ファンモータ。
【請求項2】
前記第1突出部及び前記第2突出部の一方は、同心円状に形成された複数の突出部であり、
前記第1突出部及び前記第2突出部の他方は、前記軸心方向において前記ファンが取り付けられた側から見ると、前記複数の突出部の間に位置している、
請求項1に記載のファンモータ。
【請求項3】
前記第1突出部の数と前記第2突出部の数との差は、2つ以上である、
請求項2に記載のファンモータ。
【請求項4】
前記第1突出部及び前記第2突出部の一方である前記複数の突出部のうち前記径方向の最も外側に位置する突出部とその突出部の1つ内側に位置する突出部とをそれぞれ1番目突出部及び2番目突出部とすると、
前記軸心方向において前記ファンが取り付けられた側から見ると、前記1番目突出部と前記2番目突出部との間には、前記第1突出部及び前記第2突出部の他方が存在しておらず、
前記1番目突出部の高さは、前記2番目突出部の高さよりも低い、
請求項3に記載のファンモータ。
【請求項5】
前記1番目突出部の内径側の側面に、テーパ面が形成されている、
請求項4に記載のファンモータ。
【請求項6】
軸心方向に延伸する回転軸を有するロータ及び前記ロータの外側に配置されたステータを有するモータと、
前記回転軸に取り付けられたファンと、を備え、
前記ステータは、ステータコアと、前記ステータコアに巻かれた巻線とを有し、
前記ステータコア及び前記巻線は、モールド樹脂で覆われており、
前記モールド樹脂は、前記ファンに向かって突出する1つ以上の第1突出部を有し、
前記ファンは、前記モールド樹脂に向かって突出する1つ以上の第2突出部を有し、
前記第1突出部及び前記第2突出部の各々は、前記軸心方向において前記ファンが取り付けられた側から見ると、前記回転軸を中心とする円環状に設けられており、
前記第1突出部と前記第2突出部とは、前記回転軸と直交する径方向から見た場合、少なくとも一部が重なっており、
前記第1突出部及び前記第2突出部の一方は、同心円状に形成された複数の突出部であり、
前記第1突出部及び前記第2突出部の他方は、前記軸心方向において前記ファンが取り付けられた側から見ると、前記複数の突出部の間に位置し、
前記第1突出部の数と前記第2突出部の数との差は、2つ以上であり、
前記第1突出部及び前記第2突出部の一方である前記複数の突出部のうち前記径方向の最も外側に位置する突出部とその突出部の1つ内側に位置する突出部とをそれぞれ1番目突出部及び2番目突出部とすると、
前記軸心方向において前記ファンが取り付けられた側から見ると、前記1番目突出部と前記2番目突出部との間には、前記第1突出部及び前記第2突出部の他方が存在しておらず、
前記1番目突出部の高さは、前記2番目突出部の高さよりも低く、
前記1番目突出部の表面粗さは、前記2番目突出部の表面粗さよりも大きい、
ァンモータ。
【請求項7】
前記1番目突出部は、当該1番目突出部を周方向に分断する1つ以上の分断部を有する、
請求項4~6のいずれか1項に記載のファンモータ。
【請求項8】
前記第1突出部の数は、前記第2突出部の数よりも多い、
請求項2~7のいずれか1項に記載のファンモータ。
【請求項9】
前記第1突出部と前記第2突出部とは、前記第1突出部及び前記第2突出部の各々の数の分だけ前記径方向に1つずつ交互に設けられている、
請求項1~8のいずれか1項に記載のファンモータ。
【請求項10】
さらに、前記巻線と電気的に接続された回路基板と、前記回路基板と電気的に接続された導電線を含む配線部材をと、を備え、
前記配線部材の少なくとも一部は、前記モールド樹脂に覆われている、
請求項1~9のいずれか1項に記載のファンモータ。
【請求項11】
前記モータの駆動停止時には、前記ロータを回転させないロック電流が前記巻線に供給される、
請求項1~10のいずれか1項に記載のファンモータ。
【請求項12】
前記モールド樹脂の側面には、周方向に延在する凸部が形成されている、
請求項1~11のいずれか1項に記載のファンモータ。
【請求項13】
前記磁石は、前記ステータコアに対向する、
請求項1~5、7~12のいずれか1項に記載のファンモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ファンモータに関し、特に冷蔵庫等の湿気のある場所に設置されるファンモータに関する。
【背景技術】
【0002】
ファンモータは、モータによってファンを回転させることで送風を行うものであり、家電製品をはじめとして種々の製品に用いられている。例えば、ファンモータは、製品の内部で発生する熱を外部に排出したり、製品内で生成した冷気や暖気を送風したりするために用いられる。この種のファンモータは、例えば、ステータ及びロータを有するモータと、モータの回転軸に取り付けられたファンとを備える。
【0003】
ファンモータは、湿気の高い場所や温度変化によって結露が生じる場所に設置されることがある。例えば、冷蔵庫内で冷気を送風するためにファンモータが用いられるが、この場合、ファンモータは、湿気が高くて温度が低くいために結露が生じやすい場所に設置されることになる。このようにファンモータが高湿度及び低温度の環境下に置かれると、結露により生じた水(水滴)がファンモータにおける回転部と固定部との間に浸入して凍結し、モータロックに至ってファンが回転しなくなることがある。
【0004】
このように、ファンモータでは、水に起因して様々な故障が生じるので、水に起因する故障を防止するために様々な技術が検討されている。例えば、この種のファンモータとして、特許文献1には、アウターロータ型のモータとファン(インペラ)とを収納するハウジングの内壁面に付着する水を効率良く排出する構造を有する軸流ファンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-76845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された軸流ファンによれば、ハウジングの内壁面に付着する水を排出できるので、ハウジングの内壁面で水が凍結することを抑制できる。これにより、ファンモータの回転部の一つであるファンとファンモータの固定部の一つであるハウジングとの間で水が凍結してモータロックに至ることを抑制することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された軸流ファンでは、ファンモータの回転部の他の一つであるロータとファンモータの固定部の他の一つであるステータとの間で水が凍結することを防止することができない。
【0008】
このように、従来のファンモータでは、高湿度及び低温度の環境下に置かれると、ステータとロータとの間に水が浸入して、ファンモータが故障するおそれがある。例えば、ステータとロータとの間に水が浸入してその水がステータとロータとの間で凍結すると、モータロックに至ってしまう。
【0009】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、高湿度及び低温度の環境下に置かれても、ステータとロータとの間に水が浸入することを抑制できるファンモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示に係るファンモータの一態様は、軸心方向に延伸する回転軸を有するロータ及び前記ロータの外側に配置されたステータを有するモータと、前記回転軸に取り付けられたファンと、を備え、前記ステータは、ステータコアと、前記ステータコアに巻かれた巻線とを有し、前記ステータコア及び前記巻線は、モールド樹脂で覆われており、前記モールド樹脂は、前記ファンに向かって突出する1つ以上の第1突出部を有し、前記ファンは、前記モールド樹脂に向かって突出する1つ以上の第2突出部を有し、前記第1突出部及び前記第2突出部の各々は、前記軸心方向において前記ファンが取り付けられた側から見ると、前記回転軸を中心とする円環状に設けられており、前記第1突出部と前記第2突出部とは、前記回転軸と直交する径方向から見た場合、少なくとも一部が重なっている。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、高湿度及び低温度の環境下に置かれても、ステータとロータとの間に水が浸入することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係るファンモータの斜視図である。
図2】実施の形態1に係るファンモータの側面図である。
図3】実施の形態1に係るファンモータの断面図である。
図4】実施の形態1に係るファンモータを斜め上方から見たときの分解斜視図である。
図5】実施の形態1に係るファンモータを斜め下方から見たときの分解斜視図である。
図6】実施の形態2に係るファンモータの断面図である。
図7】実施の形態2に係るファンモータの斜視図である。
図8】実施の形態2の変形例に係るファンモータにおけるモータの上面図である。
図9】変形例に係るファンモータにおけるモータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0014】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0015】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1に係るファンモータ1の構成について、図1図5を用いて説明する。図1は、実施の形態1に係るファンモータ1の斜視図であり、図2は、同ファンモータ1の側面図であり、図3は、同ファンモータ1の断面図である。図4及び図5は、同ファンモータ1の分解斜視図である。図4は、同ファンモータ1を斜め上方から見たときの状態を示しており、図5は、同ファンモータ1を斜め下方から見たときの状態を示している。
【0016】
なお、本明細書及び図面において、X軸、Y軸及びZ軸は、三次元直交座標系の三軸を表している。X軸及びY軸は、互いに直交し、かつ、いずれもZ軸に直交する軸である。
【0017】
また、本実施の形態において、Z軸方向は、ファンモータ1が有する回転軸21が延在する方向である。つまり、Z軸方向は、回転軸21が延在する方向(回転軸21の長手方向)であって、図3に示される回転軸21の軸心Cが延伸する方向である。また、Z軸に直交する面において、回転軸21の軸心Cを中心として軸心Cから広がる方向が径方向であり、回転軸21の軸心Cを中心として軸心Cを周回する方向が周方向である。つまり、径方向は、回転軸21の軸心Cが延伸する方向と直交する方向であり、周方向は、回転軸21の回転方向である。また、「上面視」とは、回転軸21の軸心Cの方向(Z軸方向、以下同じ)において、ファン3からモータ2に向かう方向で見たときのことである。なお、本明細書において、回転軸21の軸心Cの方向において、ファン3側を上側とし、モータ2の底部を下側としている。また、本明細書において、「上」及び「下」という用語は、必ずしも、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではない。
【0018】
図1図5に示すように、ファンモータ1は、モータ2と、モータ2が有する回転軸21に取り付けられたファン3とを備える。
【0019】
図3に示すように、モータ2は、ステータ10と、ロータ20と、モールド樹脂30と、回路基板40と、配線部材50とを有する。本実施の形態において、モータ2は、ブラシを用いないブラシレスモータである。また、モータ2は、ロータ20がステータ10の内側に配置されたインナーロータ型のモータである。つまり、ステータ10は、上面視においてロータ20を囲むようにロータ20の外側に配置されている。
【0020】
ステータ10(固定子)は、ロータ20との間に微小なエアギャップを介して配置されている。ステータ10は、ロータ20に作用する磁力を発生させる。具体的には、ステータ10は、ロータ20とのエアギャップ面に磁束を生成する構成になっている。
【0021】
本実施の形態において、ステータ10は、ステータコア(固定子鉄心)11と、巻線12と、インシュレータ13とを有する。
【0022】
ステータコア11は、巻線12に通電することによりロータ20を回転させるための磁力を発生させる鉄心である。ステータコア11は、上面視において、ロータ20を囲むように環状に形成されている。ステータコア11は、例えば、複数の打ち抜き電磁鋼板が回転軸21の軸心Cの方向(Z軸方向)に沿って積層された積層体である。なお、ステータコア11は、積層体に限らず、磁性材料によって構成されたバルク体であってもよい。
【0023】
ステータコア11には、ロータ20に向かって突出する複数のティース11aが設けられている。具体的には、複数のティース11aは、回転軸21の軸心Cと直交する方向(径方向)に放射状に延在している。複数のティース11aは、隣り合う2つのティース11aの間にスロットを形成しながら周方向に等間隔に設けられている。ステータコア11のロータ20と対向する面がステータ10のロータ20に対するエアギャップ面になっている。具体的には、ステータ10のロータ20に対するエアギャップ面は、ステータコア11におけるティース11aのロータ20と対向する面(径方向の内側面)である。
【0024】
巻線12は、ステータ10の電機子巻線である。巻線12は、ステータコア11に巻かれている。具体的には、巻線12は、ステータコア11の複数のティース11aの各々にコイル状に巻き回された巻線コイルである。本実施の形態において、巻線12は、インシュレータ13を介して各ティース11aに巻き回されている。一例として、巻線12は、各ティース11aに巻回された集中巻コイルであり、ステータコア11のスロットに収納されている。
【0025】
本実施の形態において、ファンモータ1は、モータ2が直流電圧で駆動するDCファンモータである。したがって、巻線12は、例えば3相同期モータとしてロータ20を回転できるように3相巻線になっている。具体的には、ステータコア11が有する複数のティース11aの各々に巻回された巻線12は、互いに電気的に120度位相が異なるU相、V相及びW相の3相それぞれの単位コイルによって構成されている。つまり、各ティース11aに巻き回された巻線12は、U相、V相及びW相の相単位でそれぞれに通電される3相の交流電力によって通電駆動される。これにより、ステータコア11が有する各ティース11aにステータ10の主磁束が生成される。つまり、各ティース11aは、磁極ティースであり、巻線12に通電されることで磁力を発生させる電磁石である。
【0026】
また、各相の巻線12の末端は、回路基板40が有する巻線結線部で結線されている。具体的には、回路基板40には、U相、V相、W相の相ごとに巻線12と電気的に接続されるパターン配線が形成されており、各相の巻線12の末端は、はんだ等によって回路基板40のパターン配線に接合されている。
【0027】
インシュレータ13は、コイルボビンであり、巻線12が巻回される枠状の枠体部を有する。具体的には、インシュレータ13の枠体部は、ステータコア11が有する各ティース11aを覆うように形成されている。インシュレータ13は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の絶縁樹脂材料によって構成された樹脂成形品である。
【0028】
ロータ20(回転子)は、ステータ10と向かい合って配置されている。具体的には、ロータ20は、上記のように、ステータ10とエアギャップを介して配置されており、ロータ20の表面とステータ10の表面との間には微小なエアギャップが存在する。ロータ20は、ステータ10に生じる磁力によって回転する。ロータ20は、回転軸21を有しており、回転軸21の軸心Cを回転中心として回転する。つまり、回転軸21は、ロータ20が回転する際の中心となる。
【0029】
ロータ20は、周方向に亘って磁束を生成するN極とS極とが交互に繰り返して存在する構成になっている。これにより、ロータ20は、ステータ10に作用する磁力を発生する。本実施の形態において、ロータ20が発生する磁束の向きは、回転軸21の軸心Cの方向(軸心方向)と直交する方向である。つまり、ロータ20が発生する磁束の向きは、径方向(ラジアル方向)である。
【0030】
本実施の形態において、ロータ20は、回転軸21と、ロータヨーク22と、磁石23とを有する。
【0031】
回転軸21は、長尺状のシャフトであり、例えば金属棒である。回転軸21は、ロータヨーク22に固定されている。具体的には、回転軸21は、軸心Cが延伸する方向においてロータヨーク22の両側に延在するように、ロータヨーク22の中心に設けられた貫通孔に挿入されてロータヨーク22に固定されている。回転軸21は、例えばロータヨーク22の貫通孔に圧入したり焼き嵌めしたりすることでロータヨーク22に固定されている。なお、回転軸21は、ベアリング等の軸受によって回転可能に支持されている。
【0032】
ロータヨーク22は、磁性材料によって構成されたカップ状の磁性部材である。具体的には、ロータヨーク22は、有底円筒状に形成されており、底部がファン3側に位置するように配置されている。つまり、ロータヨーク22は、底部が上方に位置する姿勢で配置されている。ロータヨーク22の底部の中心には、回転軸21が挿通される貫通孔が設けられている。
【0033】
磁石23は、ロータヨーク22に保持されている。本実施の形態では、複数の磁石23がロータヨーク22に保持されている。複数の磁石23の各々は、永久磁石である。磁石23は、例えば、焼結マグネットからなる永久磁石である。
【0034】
複数の磁石23は、ステータ10が有するステータコア11に対向している。本実施の形態において、ロータ20は、表面磁石型(SPM;Surface Permanent Magnetic)である。したがって、複数の磁石23の各々は、エアギャップを介してステータ10が有するステータコア11に直接対向している。このため、複数の磁石23の外面は、露出面であり、ロータ20の外面になっている。このように、磁石23のステータ10と対向する面(径方向の外側面)は、ロータ20におけるステータ10に対するエアギャップ面になっている。具体的には、複数の磁石23の径方向の外側面とステータコア11におけるティース11aの径方向の内側面との間にエアギャップが存在している。
【0035】
複数の磁石23は、周方向に沿ってN極とS極とが交互に繰り返して存在するようにロータヨーク22に固定されている。本実施の形態において、複数の磁石23は、磁極の方向が回転軸21の軸心Cの方向(Z軸方向)と直交する方向(径方向)となるように配置されている。つまり、複数の磁石23は、磁極の方向が径方向となるように着磁されている。また、隣り合う2つの磁石23は、S極及びN極の磁極の向きが逆向きになっている。なお、周方向に沿ってN極とS極とが交互に繰り返して存在するように構成されていれば、磁石23は、複数でなくてもよい。
【0036】
ステータ10は、モールド樹脂30で覆われている。具体的には、ステータコア11、巻線12及びインシュレータ13は、モールド樹脂で覆われている。本実施の形態において、図2図5に示すように、モールド樹脂30は、ステータ10の周方向の全周に亘ってステータ10の外側部分を覆っている。具体的には、モールド樹脂30は、ステータコア11、巻線12及びインシュレータ13が見えなくなるように、ステータコア11、巻線12及びインシュレータ13を覆っている。
【0037】
なお、モールド樹脂30は、上述した構成を全て覆う必要はない。例えば、ステータコア11のうちロータ20と向かい合う面は、モールド樹脂30に覆われていない方が、磁力の損失が低減される。
【0038】
モールド樹脂30は、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂等の熱伝導性に優れた絶縁性樹脂材料によって構成されている。また、モールド樹脂30は、熱硬化性樹脂によって構成されている。例えば、モールド樹脂30の樹脂材料として、熱硬化性樹脂である不飽和ポリエステルを用いることができる。
【0039】
また、図2図5に示すように、モールド樹脂30は、ファンモータ1の外郭を構成している。つまり、ステータ10を覆うモールド樹脂30は、ロータ20を内包するハウジングである。具体的には、モールド樹脂30は、周方向の全体に亘ってロータ20を囲み且つステータ10を覆う円筒状の本体部を有する。モールド樹脂30の本体部は、モータ2の胴体部になっている。本実施の形態において、モールド樹脂30は、円筒状の本体部の開口に蓋をする底部を有する。モールド樹脂30の底部は、モータ2の底部を構成している。これにより、モータ2の底部からモータ2の内部に水が浸入することを抑制できる。
【0040】
図3及び図4に示すように、モールド樹脂30は、ファン3に向かって突出する1つ以上の第1突出部31(モールド突出部)を有する。第1突出部31は、モールド樹脂30のファン3側の面である上面に設けられている。第1突出部31は、モールド樹脂30の一部である。
【0041】
図4に示すように、第1突出部31は、上面視において、回転軸21を中心とする円環状に設けられている。本実施の形態において、モールド樹脂30には、複数の第1突出部31が同心円状に形成されている。具体的には、一対となる2つの第1突出部31が回転軸21を中心として同心円状に形成されている。2つの第1突出部31の各々は、モールド樹脂30のファン3側の上面から回転軸21の軸心Cの方向に沿ってファン3に向かって突出している。
【0042】
各第1突出部31は、周方向全体において一定の幅及び一定の高さで円環状で突条に形成された突起である。各第1突出部31における高さと幅の比(高さ/幅)は、例えば、0.5以上2.0以下であるが、これに限らない。また、2つの第1突出部31の一方と他方とにおいて、高さ及び幅が異なっていてもよいし、高さ及び幅の一方が異なっていてもよいし、高さ及び幅の両方が同じであってもよい。
【0043】
図3に示すように、2つの第1突出部31のうち径方向の内側に位置する第1突出部31は、モールド樹脂30のロータ20側の内面と面一となる位置に形成されている。そして、2つの第1突出部31のうち径方向の外側に位置する第1突出部31は、内側に位置する第1突出部31と所定の間隔をあけて形成されている。外側に位置する第1突出部31は、モールド樹脂30のファン3側の上面における径方向の中方付近に形成されているが、これに限らない。
【0044】
モールド樹脂30は、回路基板40及び配線部材50も覆っている。本実施の形態において、モールド樹脂30は、回路基板40の全体を覆うとともに、配線部材50の少なくとも一部を覆っている。具体的には、配線部材50は、導電線51及びコネクタ52を含んでおり、モールド樹脂30は、コネクタ52を覆っている。なお、モールド樹脂30は、導電線51の一部を覆っていてもよい。
【0045】
回路基板40には、外部電源から供給される電源電力を巻線12に供給する駆動電力に変換するための複数の回路部品が実装されている。具体的には、回路基板40に実装された複数の回路部品によって、巻線12のU相、V相及びW相の各相に対応する駆動電力を生成する駆動回路が構成されている。回路基板40は、巻線12と電気的に接続されている。具体的には、回路基板40に実装された回路部品と巻線12とが電気的に接続されている。
【0046】
外部電源と回路基板40とは、導電線51を介して電気的に接続される。導電線51の一方の端部は、コネクタ52を介して回路基板40と電気的に接続されている。図3及び図4に示すように、導電線51は、コネクタ52から引き出されている。導電線51は、例えばリード線であり、芯線となる導線と導線の表面を絶縁被覆する絶縁体とによって構成されている。一例として、導電線51は、4本であるが、これに限らない。
【0047】
このように構成されるロータ20は、ステータ10で発生する磁束によって回転する。具体的には、回路基板40からステータ10が有する巻線12に電力が供給されると、巻線12に界磁電流が流れてステータコア11に磁束が発生する。つまり、ステータ10からロータ20に向かう磁束が生成される。一方、ロータ20では、磁石23によってステータ10に向かう磁束が生成される。そして、ステータコア11で生成された磁束とロータ20で生成される磁束との相互作用によって生じた磁気力がロータ20を回転させるトルクとなり、ロータ20が回転する。そして、ロータ20が回転すると、ロータ20が有する回転軸21に取り付けられたファン3が回転する。
【0048】
図3に示すように、ファン3は、回転軸21を固定するための貫通孔3aを有する。具体的には、回転軸21は、ファン3の貫通孔3aに嵌入されている。図1図5に示すように、ファン3は、モータ2の全体を覆うように構成されている。つまり、ファンモータ1では、ファン3を傘のようにモータ2にかぶせている。
【0049】
ファン3(回転ファン)は、インペラであり、基部60と、基部60に設けられた複数の羽根部70とを有する。ファン3は、さらに、リング部80と、第2突出部90(ファン突出部)とを有する。
【0050】
基部60、複数の羽根部70、リング部80及び第2突出部90は、樹脂材料又は金属材料によって構成されている。また、基部60、複数の羽根部70、リング部80及び第2突出部90は、一体に構成されていてもよいし、一部又は全部が別体に構成されていて互いに接合されていてもよい。
【0051】
基部60は、薄型ハット形状のファンプレートであり、有底円筒状のカップ部61と、カップ部61の開口端部からフランジ状に形成されたつば部62とを有する。
【0052】
図3図5に示すように、カップ部61は、カップ部61の底部となる平板状の平坦部61aと、カップ部61の円筒部となる円筒形の側壁部61bと、カップ部61の底部の中央に設けられたボス部61cとを有する。ボス部61cには、回転軸21が嵌入される貫通孔3aが設けられている。
【0053】
カップ部61は、モータ2を覆うように配置されている。具体的には、カップ部61の平坦部61aは、モータ2のモールド樹脂30の上面に対向しており、カップ部61の側壁部61bは、モールド樹脂30の側面に対向している。
【0054】
図3に示すように、カップ部61の平坦部61aとモールド樹脂30の上面との間には、隙間が存在している。また、カップ部61の側壁部61bとモールド樹脂30の側面との間にも隙間が存在している。なお、カップ部61の平坦部61aの直径とモールド樹脂30の上面の直径とはほぼ同じであるが、これに限らない。
【0055】
つば部62は、カップ部61の側壁部61bの端部から径方向に広がるように平面状に形成されている。つば部62とカップ部61の平坦部61aとは、略平行である。
【0056】
このように構成される基部60には、ファン翼として複数の羽根部70が設けられている。具体的には、複数の羽根部70は、基部60のつば部62に立設されている。図1及び図4に示すように、複数の羽根部70は、各々が円弧状に湾曲するように構成されており、カップ部61を囲むように放射状に配置されている。また、図1及び図4に示すように、複数の羽根部70は、リング部80で連結されている。リング部80は、複数の羽根部70の各々の上側の外側端部に接続されている。
【0057】
また、図3及び図5に示すように、基部60には、モータ2の外郭を形成するモールド樹脂30に向かって突出する1つ以上の第2突出部90が設けられている。具体的には、第2突出部90は、基部60のカップ部61が有する平坦部61aのモータ2側の面(モールド樹脂30側の面)に設けられている。本実施の形態において、第2突出部90は、基部60の一部である。
【0058】
また、図5に示すように、第2突出部90は、上面視において、回転軸21を中心とする円環状に設けられている。本実施の形態において、ファン3の基部60には、第2突出部90が1つのみ形成されている。図3に示すように、第2突出部90は、基部60のカップ部61が有する平坦部61aのモータ2側の面から回転軸21の軸心Cの方向(Z軸方向)に沿ってモールド樹脂30に向かって突出している。
【0059】
第2突出部90は、周方向全体において一定の幅及び一定の高さを有し、円環状で突条に形成された突起である。第2突出部90における高さと幅の比(高さ/幅)は、例えば、0.5以上2.0以下であるが、これに限らない。
【0060】
図3図5に示すように、上面視において、第2突出部90は、モールド樹脂30に設けられた2つの第1突出部31の間に位置している。したがって、第2突出部90の直径は、2つの第1突出部31のうちの一方の第1突出部31の直径よりも大きく、2つの第1突出部31のうちの他方の第1突出部31の直径よりも小さい。
【0061】
また、図3に示すように、モールド樹脂30の第1突出部31とファン3の第2突出部90とは、回転軸21の軸心Cと直交する回転軸21の側面方向から見た場合、軸心Cと沿った方向において少なくとも一部が重なっている。つまり、第1突出部31と第2突出部90とは、回転軸21と直交する径方向において少なくとも一部が対面している。言い換えれば、回転軸21と直交する断面には、回転軸21を中心とする径方向において、第1突出部31と第2突出部90とが交互に存在する面が存在する。この構成により、第1突出部31と第2突出部90との間の隙間が、回転軸21の軸心Cの方向と回転軸21の径方向とに連続して存在することとなり、第1突出部31と第2突出部90とによってラビリンス部を形成することができる。
【0062】
本実施の形態において、第1突出部31と第2突出部90とは、回転軸21と直交する径方向に1つずつ交互に設けられている。したがって、第1突出部31と第2突出部90との間の隙間は、XZ断面において、回転軸21の軸心Cの方向に一往復のみする略コの字状に形成されている。
【0063】
第1突出部31と第2突出部90との間の隙間の幅(距離)は、特に限定されるものではないが、第1突出部31と第2突出部90との間の隙間に水滴が架橋しない程度に広くなっているとよい。ただし、第1突出部31と第2突出部90との間の隙間の幅が広すぎると、水の浸入を抑制するためのラビリンス部としての機能が低下するので、第1突出部31と第2突出部90との間の隙間の幅は適度に狭くなっているとよい。
【0064】
このように構成されるファンモータ1では、モータ2が駆動することで回転軸21が回転し、この回転軸21の回転に連動してファン3が回転する。そして、ファン3が回転することで、ファン3が有する複数の羽根部70によって気流が発生する。これにより、ファンモータ1は、送風を行うことができる。
【0065】
ここで、本実施の形態に係るファンモータ1の作用効果について、本開示の技術に至った経緯も含めて説明する。
【0066】
従来のファンモータでは、モータにおけるロータとステータとの間に水が浸入し、その水がステータとロータとの間で凍結してモータロックに至る虞があった。特に、冷蔵庫に用いられるファンモータは、高湿度及び低温度の環境下に置かれることになるので、結露により水滴が生じてステータとロータとの間に水が浸入して、その水が凍結しやすい。
【0067】
また、ファンモータは、搭載される製品によってあらゆる姿勢で取り付けられる可能性がある。このため、ファンモータについては、あらゆる方向からの水の浸入に対して配慮することが求められる。
【0068】
そこで、このような課題に対して、本願発明者らは、鋭意検討した。その結果、ファンモータのモータとしては、アウターロータ型のモータが一般的であったが、ファンモータのモータとしてインナーロータ型のモータを採用し、その上で、ロータの外側に配置されたステータの巻線をモールド樹脂で覆う構造とし、モールド樹脂とファンとのそれぞれに突出部を設けてラビリンス部を形成することを見出した。
【0069】
具体的には、本実施の形態に係るファンモータ1は、図3に示すように、ロータ20及びロータ20の外側に位置するステータ10を有するインナーロータ型のモータ2と、ロータ20が有する回転軸21に取り付けられたファン3とを備えており、ステータ10におけるステータコア11及び巻線12は、モールド樹脂30で覆われている。モールド樹脂30は、ファン3に向かって突出する第1突出部31を有しており、ファン3は、モールド樹脂30に向かって突出する第2突出部90を有している。そして、第1突出部31及び第2突出部90の各々は、上面視において、回転軸21を中心とする円環状に設けられている。また、第1突出部31と第2突出部90とは、回転軸21と直交する径方向から見た場合、軸心Cと沿った方向において少なくとも一部が重なっている。
【0070】
このように、インナーロータ型のモータ2を採用して、ロータ20の外側に配置されたステータ10に巻き回された巻線12をモールド樹脂30で覆うことで、モータ2の上部(ファン3側の部分)において、モールド樹脂30に設けられた第1突出部31とファン3に設けられた第2突出部90とによってラビリンス部を形成することができる。つまり、モータ2とファン3との間でラビリンス部を形成することができる。これにより、モータ2の外郭であるモールド樹脂30とファン3との間の空間を通ってモータ2の内部に水が浸入することを抑制することができる。
【0071】
しかも、ステータ10に巻き回された巻線12がモールド樹脂30で覆われているので、モータ2の駆動により巻線12に発生した熱がモールド樹脂30を伝導し、モールド樹脂30全体の温度を上昇させることができる。これにより、モールド樹脂30はモータ2の外郭を構成しているので、モータ2の周囲の空気の飽和水蒸気量を上昇させて、モールド樹脂30の表面に結露が生じることを抑制することができる。また、仮に結露が生じてモールド樹脂30の表面に水が付着したとしても、モールド樹脂30の温度上昇により水の粘度が低下するので、その水をモールド樹脂30の表面を伝わせて排水させることができる。つまり、モールド樹脂30の表面に付着した水の排水性を向上させることができる。
【0072】
このように、本実施の形態に係るファンモータ1によれば、高湿度及び低温度の環境下に置かれても、固定部であるステータ10と回転部であるロータ20との間に水が浸入することを抑制することができる。つまり、耐水性が高いファンモータ1を実現することができる。これにより、ステータ10とロータ20との間で水が凍結してモータロックに至ることを抑制することができる。
【0073】
また、第1突出部31と第2突出部90との間の隙間に水が滞留したとしても、モールド樹脂30を伝導する巻線12の熱によって第1突出部31が熱せられるので、第1突出部31と第2突出部90との間の隙間で滞留した水が凍結することを抑制できる。これにより、第1突出部31と第2突出部90とによってモータ2とファン3との間にラビリンス部を形成したとしても、固定部であるモータ2と回転部であるファン3との間で水が凍結してモータロックに至ることも抑制することができる。
【0074】
また、本実施の形態に係るファンモータ1によれば、インナーロータ型のモータ2を用いて第1突出部31と第2突出部90とでラビリンス部を形成しているので、ステータ10(ステータコア11)とロータ20(磁石23)とをハウジング等の構造物で密閉しない構造であるが、耐水性が高いファンモータ1を実現することができる。
【0075】
特に、本実施の形態に係るファンモータ1では、様々な方向の水滴に対して耐水性を向上させることができる。具体的には、上方からの水滴に対しては、ファン3がモータ2に対して傘のようにかぶさっているので耐水性が向上する。また、下方からの水滴に対しては、モールド樹脂30の底部によって耐水性が向上する。また、側方からの水滴に対しては、モールド樹脂30の円筒形の外形により重力にしたがってモールド樹脂30の側面を伝って排水できるので耐水性が向上する。そして、仮に側方等からの水滴がモールド樹脂30の上面を伝っていったとしても、上記のように、第1突出部31と第2突出部90とで形成されるラビリンス部によってモータ2の内部に水が浸入することを抑制できる。
【0076】
さらに、ステータコア11と磁石23とを構造物で囲まないことによって、回転軸21の軸心Cの方向(Z軸方向)の寸法を縮小することができる。つまり、ファンモータ1の薄型化を図ることもできる。
【0077】
また、本実施の形態に係るファンモータ1において、第1突出部31は、同心円状に形成された複数の突出部であり、第2突出部90は、上面視において、複数の第1突出部31の間に位置している。
【0078】
この構成により、第1突出部31と第2突出部90との間の隙間の経路は、回転軸21の軸心Cの方向に少なくとも一往復する構造になるので、第1突出部31と第2突出部90との間の隙間を水が通り抜けてモータ2の内部に浸入することをさらに抑制することができる。したがって、ステータ10とロータ20との間に水が浸入することを一層抑制することができる。
【0079】
しかも、第1突出部31をモールド樹脂30に複数設けることで、モールド樹脂30の表面を伝う水滴の抵抗となる障壁が増えるので、モールド樹脂30の表面を伝ってモータ2の内部に水が浸入することを効果的に抑制することができる。
【0080】
また、本実施の形態に係るファンモータ1では、モールド樹脂30に設けられた第1突出部31の数は、ファン3に設けられた第2突出部90の数よりも多くなっている。
【0081】
この構成により、モールド樹脂30の表面を伝う水滴の抵抗となる障壁を多くすることができるので、第1突出部31よりも第2突出部90の方を多くする場合よりも、モールド樹脂30の表面を伝ってモータ2の内部に水が浸入することを効果的に抑制することができる。
【0082】
また、本実施の形態に係るファンモータ1において、第1突出部31と第2突出部90とは、第1突出部31及び第2突出部90の各々の数の分だけ回転軸21と直交する径方向に1つずつ交互に設けられている。
【0083】
この構成により、第1突出部31及び第2突出部90の各々の数を最大限利用して、第1突出部31と第2突出部90との間の隙間が回転軸21の軸心Cの方向に往復する回数を増やして最大化することができる。これにより、第1突出部31と第2突出部90とで形成されるラビリンス部の経路を長くすることができるので、第1突出部31と第2突出部90との間の隙間を水が通り抜けてモータ2の内部に水が浸入することをさらに抑制することができる。
【0084】
また、本実施の形態に係るファンモータ1では、ステータ10がモールド樹脂30で覆われているだけではなく、配線部材50の一部についてもモールド樹脂30で覆われている。
【0085】
この構成により、配線部材50を伝って回路基板40等に水が浸入することを抑制することができる。つまり、配線部材50を伝う水滴に対して耐水性を向上させることができる。このように、配線部材50についてもモールド樹脂30で覆うことで、モールド樹脂30の表面を伝ってモータ2の内部に水が浸入することを抑制できるだけではなく、配線部材50を伝ってモータ2の内部に水が浸入することも抑制できる。
【0086】
以上のように、本実施の形態に係るファンモータ1では、モータ2が駆動してファン3が回転しているときは、ファン3に付着する水(水滴)については、ファン3の回転による遠心力によって外部に排出することができるとともに、モータ2に付着する水(水滴)については、上記のように、結露によってモータ2の表面(モールド樹脂30の表面)に水滴が付着することを抑制したり、モータ2の表面に水滴が付着したとしても効果的に排水してモータ2の内部に水が浸入することを抑制したりできる。
【0087】
一方、モータ2の駆動を停止したときには、ステータ10の巻線12には駆動電流が流れないので、駆動電流によっては巻線12は発熱しない。このため、モータ2の駆動停止時には、モールド樹脂30の温度が上昇しないので、モータ2の周囲の空気の飽和水蒸気量が上昇せず、モールド樹脂30の表面に結露が生じるおそれがある。
【0088】
そこで、モータ2の駆動停止時には、ロータ20を回転させないロック電流が巻線12に供給されているとよい。ロック電流は、例えば回路基板40から巻線12に供給することができる。
【0089】
このように、モータ2の駆動停止時に巻線12にロック電流を供給することで、ロータ20を回転させずにファン3が回転していない場合であっても、ロック電流によって巻線12を発熱させることができるので、巻線12を覆うモールド樹脂30の温度を上昇させることができる。これにより、モールド樹脂30の表面に結露が生じることを抑制したり、仮に結露が生じたとしても凍結するリスクを軽減したりすることができる。
【0090】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係るファンモータ1Aについて、図6及び図7を用いて説明する。図6は、実施の形態2に係るファンモータ1Aの断面図である。図7は、同ファンモータ1Aの斜視図である。
【0091】
上記実施の形態1に係るファンモータ1では、モータ2のモールド樹脂30に設けられた第1突出部31の数とファン3に設けられた第2突出部90の数との差が1つであったが、本実施の形態におけるファンモータ1Aでは、モータ2Aのモールド樹脂30Aに設けられた第1突出部31Aの数とファン3に設けられた第2突出部90の数との差が複数である。
【0092】
具体的には、図6及び図7に示すように、本実施の形態におけるファンモータ1Aが備えるモータ2Aでは、第1突出部31Aが3つで、第2突出部90が1つであるので、第1突出部31Aの数と第2突出部90の数との差は、2つである。
【0093】
本実施の形態において、モールド樹脂30Aに設けられた3つの第1突出部31Aは、回転軸21と直交する径方向の最も外側に位置する1番目突出部31aと、1番目突出部31aの1つ内側に位置する2番目突出部31bと、2番目突出部31bの1つ内側に位置する3番目突出部31cとによって構成されている。
【0094】
そして、上面視において、2番目突出部31bと3番目突出部31cとの間には、上記実施の形態1のように、ファン3に設けられた第2突出部90が存在しているが、1番目突出部31aと2番目突出部31bとの間には、ファン3に設けられた第2突出部90が存在していない。また、1番目突出部31aの高さは、2番目突出部31bの高さよりも低くなっている。
【0095】
このように構成される本実施の形態におけるファンモータ1Aは、上記実施の形態に係るファンモータ1において、モールド樹脂30に設けられた2つの第1突出部31のうちの外側に位置する第1突出部31よりもさらに外側の位置に、1番目突出部31aとして2つの第1突出部31よりも高さが低い第1突出部31Aが追加された構造になっている。つまり、本実施の形態におけるファンモータ1Aは、上記実施の形態に係るファンモータ1において、第1突出部31と第2突出部90とで形成されるラビリンス部とは別に、第1突出部31よりも高さが低い第1突出部31Aが追加された構成になっている。なお、それ以外については、本実施の形態におけるファンモータ1Aは、上記実施の形態1に係るファンモータ1と同じ構成である。
【0096】
このように、2番目突出部31b及び3番目突出部31cの2つの第1突出部31Aと第2突出部90とで形成されるラビリンス部の外側に、さらに高さの低い第1突出部31A(1番目突出部31a)を設けることで、ラビリンス部とは異なる部分で第1突出部31A同士によって溝部を形成することができる。具体的には、1番目突出部31aと2番目突出部31bとの間に円環状の溝部を形成することができる。
【0097】
これにより、モールド樹脂30Aの表面を伝う水滴を、1番目突出部31aと2番目突出部31bとの間の溝部に溜めることができる。このとき、外側の1番目突出部31aは内側の2番目突出部31bよりも高さが低いので、この円環状の溝部に溜まった水は、ファンモータ1Aの配置の姿勢に応じて溝部内を重力にしたがって移動し、鉛直方向の最も低い位置で1番目突出部31aを乗り越えて外側に排水される。つまり、モールド樹脂30Aの表面を伝う水をラビリンス部に浸入する前に排水することができるので、モールド樹脂30Aに付着した水滴がラビリンス部を通り抜けてモータ2Aの内部に水が浸入することを効果的に抑制することができる。
【0098】
この場合、高さが低い1番目突出部31aの内径側の側面を傾斜させてテーパ面(傾斜面)を形成することで、溝部内の水を効率良く排水することができる。1番目突出部31aのテーパ面は、高さ方向の上側ほど1番目突出部31aの幅が狭くなるように形成するとよい。
【0099】
なお、本実施の形態では、上記のように、1番目突出部31aと2番目突出部31bとの間には第2突出部90が存在してない。よって、1番目突出部31aと2番目突出部31bとの間に形成される溝部に水滴が溜まったとしても、その溜まった水が溝部で仮に凍結したとしてもファン3とモールド樹脂30Aとがモータロックに至ることはない。
【0100】
また、モールド樹脂30Aに形成された1番目突出部31a及び2番目突出部31bについて、外側に位置する1番目突出部31aの表面粗さは、内側に位置する2番目突出部31bの表面粗さよりも大きくするとよい。
【0101】
このように、複数の第1突出部31Aのうち内側寄りの第1突出部31A(本実施の形態では、2番目突出部31b、3番目突出部31c)の表面粗さを小さくし、最も外側に位置する高さが低い第1突出部31A(1番目突出部31a)の表面粗さを大きくすることで、モールド樹脂30Aの表面に付着した水滴が表面粗さが大きい1番目突出部31aに付着しやすくなる。これにより、モールド樹脂30Aの表面に付着した水滴が1番目突出部31aよりも内側に位置するラビリンス部に移動することを抑制できる。したがって、モールド樹脂30Aの表面に付着した水滴がラビリンス部を通り抜けてモータ2Aの内部に浸入することをさらに抑制することができる。
【0102】
また、図8に示すように、モータ2Bのモールド樹脂30Bの複数の第1突出部31Bとして形成された、1番目突出部31a、2番目突出部31b及び3番目突出部31cのうち、1番目突出部31aは、当該1番目突出部31aを周方向に分断する1つ以上の分断部32を有していてもよい。
【0103】
図8に示されるファンモータのモータ2Bは、図6及び図7に示されるファンモータ1Aにおいて、1番目突出部31aに4つの分断部32を形成して、1番目突出部31aを4つに分割した構成になっている。
【0104】
このように、1番目突出部31a及び2番目突出部31bのうち外側に位置する1番目突出部31aに分断部32を形成することで、1番目突出部31aと2番目突出部31bとの間の円環状の溝部に溜まった水を分断部32から排水することができる。これにより、モールド樹脂30Bの表面を伝う水をラビリンス部に浸入する前に排水することができるので、モールド樹脂30Bに付着した水滴がラビリンス部を通り抜けてモータ2Bの内部に水が浸入することを効果的に抑制することができる。
【0105】
なお、図8では、1番目突出部31aに4つの分断部32が形成されているが、これに限らない。例えば、ファンモータが製品内で取り付けられたときの姿勢が決まっているような場合は、1番目突出部31aのうち重力方向に対して最も低い位置となる部分のみに分断部32を形成してもよい。一方、ファンモータが製品内で取り付けられたときの姿勢が決まっていないような場合は、図8に示すように複数の分断部32を等間隔で形成しておくとよい。これにより、ファンモータが実際に取り付けられた姿勢に応じて複数の分断部32の少なくとも1つから溝部に溜まった水を排水することができる。
【0106】
また、本実施の形態では、モールド樹脂30Bに設けられた第1突出部31Aの数とファン3に設けられた第2突出部90の数との差は、2つとしたが、これに限らない。例えば、第1突出部31Aの数と第2突出部90の数との差は、3つ以上であってもよい。
【0107】
(変形例)
以上、本開示に係るファンモータ1について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0108】
例えば、図9に示すように、モータ2Cのモールド樹脂30Cの側面に、周方向に延在する凸部33が形成されていてもよい。凸部33は、例えば、連続する1本の突条であるが、途中で分断していてもよい。
【0109】
この構成により、凸部33がモールド樹脂30Cの表面を伝う水滴の障壁となるので、モールド樹脂30Cの側面の下方に付着した水滴が凸部33を乗り越えてモールド樹脂30Cの上面に伝うことを抑制することができる。これにより、モールド樹脂30Cの側面に付着した水滴がラビリンス部を通り抜けてモータ2Cの内部に浸入することをさらに抑制することができる。
【0110】
また、モールド樹脂30Cの側面に凸部33を形成することで、ステータ10をモールド樹脂30Cでモールド成形する際に、凸部33を境にして上下に分割された2つの金型を用いることで、凸部33を有するモールド樹脂30Cを容易に形成することができる。例えば、凸部33の頂面に金型分割面が位置するように分割され、且つ、回転軸21の軸心Cの方向に沿って可動することができる2つの金型を用いることで、凸部33を有するモールド樹脂30Cを形成することができる。
【0111】
また、上記実施の形態1において、モールド樹脂30に設けられた第1突出部31の数は、ファン3に設けられた第2突出部90の数よりも多くしたが、これに限らない。例えば、これとは逆に、ファン3に設けられた第2突出部90の数が、モールド樹脂30に設けられた第1突出部31の数よりも多い構造であってもよい。つまり、第1突出部31及び第2突出部90の一方が同心円状に形成された複数の突出部であり、第1突出部31及び第2突出部90の他方が上面視においてその複数の突出部の間に位置していればよい。このことは、上記実施の形態2についても同様である。
【0112】
また、第1突出部31及び第2突出部90のうちの一方を1つとしたが、これに限らない。具体的には、上記実施の形態1、2では、第2突出部90を1つとしたが、これに限らない。例えば、第1突出部31及び第2突出部90の両方が複数であってもよい。
【0113】
また、上記実施の形態1において、第1突出部31と第2突出部90とは、径方向に1つずつ交互に設けられていたが、これに限らない。例えば、複数の第1突出部31のうち隣り合う2つの第1突出部31の間に複数の第2突出部90が存在していてもよいし、複数の第2突出部90のうち隣り合う2つの第2突出部90の間に複数の第1突出部31が存在していてもよい。このことは、上記実施の形態2についても同様である。
【0114】
また、上記実施の形態1では、第1突出部31と第2突出部90とで形成されるラビリンス部は、2つの第1突出部31と1つの第2突出部90とで構成されていたので、第1突出部31と第2突出部90との間の隙間の経路は、XZ断面において、回転軸21の軸心Cの方向に一往復のみする略コの字状に形成されていたが、これに限らない。例えば、ラビリンス部における第1突出部31と第2突出部90との間の隙間の経路は、XZ断面において、回転軸21の軸心Cの方向に複数往復する形状であってもよいし、回転軸21の軸心Cの方向(Z軸方向)に往復せずに略L字状であってもよい。このことは、上記実施の形態2についても同様である。
【0115】
また、上記実施の形態1、2において、ロータ20は、SPM型であったが、これに限らない。例えば、ロータ20は、ロータコアに複数の永久磁石が埋め込まれた永久磁石埋め込み型(IPM;Interior Permanent Magnet)であってもよい。この場合、永久磁石は、焼結マグネットでもよいし、ボンド磁石であってもよい。
【0116】
また、上記実施の形態1、2では、ファンモータを冷蔵庫に用いる場合を例示したが、本開示に係るファンモータは、冷蔵庫以外の製品に用いられてもよい。この場合、本開示に係るファンモータは、ショーケース、エアコン又は乾燥機等の耐水性が要求される製品に対して特に有用である。
【0117】
その他、上記実施の形態に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本開示に係るファンモータは、冷蔵庫をはじめとして様々な製品に利用することができる。
【符号の説明】
【0119】
1、1A ファンモータ
2、2A、2B、2C モータ
3 ファン
3a 貫通孔
10 ステータ
11 ステータコア
11a ティース
12 巻線
13 インシュレータ
20 ロータ
21 回転軸
22 ロータヨーク
23 磁石
30、30A、30B、30C モールド樹脂
31、31A、31B 第1突出部
31a 1番目突出部
31b 2番目突出部
31c 3番目突出部
32 分断部
33 凸部
40 回路基板
50 配線部材
51 導電線
52 コネクタ
60 基部
61 カップ部
61a 平坦部
61b 側壁部
61c ボス部
62 つば部
70 羽根部
80 リング部
90 第2突出部
図1
図2
図3
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図5
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図8
図9