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  • 特許-既設コンクリート杭の撤去方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】既設コンクリート杭の撤去方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 9/00 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
E02D9/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021028852
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022129955
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391039829
【氏名又は名称】東洋テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】早川 博久
(72)【発明者】
【氏名】酒井 暢彦
(72)【発明者】
【氏名】尾中 隆文
(72)【発明者】
【氏名】松本 郎太
(72)【発明者】
【氏名】池本 隆司
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-265666(JP,A)
【文献】特開2002-242185(JP,A)
【文献】特開2004-084164(JP,A)
【文献】特開平04-302616(JP,A)
【文献】特開2008-267034(JP,A)
【文献】特許第4851632(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第110685705(CN,A)
【文献】特開2007-077631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された既設コンクリート杭の撤去方法であって、
前記既設コンクリート杭の外周部を残しつつ、前記既設コンクリート杭の内側をくり抜いて、前記既設コンクリート杭を管状にする管状化工程と、
前記管状化工程後に、前記管状化工程で管状にされた前記既設コンクリート杭を輪切りにして、前記既設コンクリート杭を上下方向に分割する分割工程と、
前記管状化工程で管状にされた前記既設コンクリート杭の前記外周部を残しつつ、前記既設コンクリート杭の前記外周部の一部の厚さが他部の厚さに比べて薄くなるように、前記既設コンクリート杭の内側をくり抜く薄肉化工程と、
前記分割工程後に、地中にケーシングを圧入して、前記分割工程で上下方向に分割された前記既設コンクリート杭を地中に圧入された前記ケーシングで囲繞するケーシング圧入工程と、
前記ケーシング圧入工程後に、前記ケーシング圧入工程で圧入された前記ケーシングで囲繞された前記既設コンクリート杭を撤去する撤去工程と、
を備え
前記撤去工程では、前記薄肉化工程で内側をくり抜かれ、前記ケーシング圧入工程で圧入された前記ケーシングで囲繞された前記既設コンクリート杭を破砕しつつ撤去し、
前記薄肉化工程では、前記既設コンクリート杭の中心削孔部の中心から中心がずらされた偏心削孔部の外周部が円筒状に切削される、
既設コンクリート杭の撤去方法。
【請求項2】
前記分割工程後であって前記撤去工程以前に、前記管状化工程で管状にされた前記既設コンクリート杭の前記内側を介して、前記既設コンクリートが埋設された地中の部位を埋戻土又は埋戻材で埋め戻す埋戻工程をさらに備えた、請求項1に記載の既設コンクリート杭の撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設コンクリート杭の撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された既設コンクリート杭を撤去する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、クローラクレーンのリーダマストに駆動装置が設けられた既設コンクリート杭の撤去装置が開示されている。駆動装置にはスクリュー刃を取付けるオーガ軸及びケーシングを装着するケーシング回転機構がそれぞれ連結されている。オーガ軸はケーシングの内部に収容されている。
【0003】
オーガ軸が回転しつつ下降すると、外径が漸次拡大しているスクリュー刃の先端が既設コンクリート杭の中空孔に嵌入される。スクリュー刃は既設コンクリート杭の周壁に対して、内側から外側への押圧力を加える。これにより、既設コンクリート杭の最も強度の低い端面から順次既設コンクリート杭の周壁が破砕される。オーガ軸の下降と同時に、ケーシングは既設コンクリート杭の外周の土壌を掘削しつつ下降する。これにより、既設コンクリート杭の破砕に伴う粉塵の飛散が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6‐41959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような技術では、既設コンクリート杭の撤去のために、オーガ軸及びケーシングを同時に駆動する駆動装置を備えた複雑な構造の土木機械を用意する必要がある。そのため、既設コンクリート杭の撤去がより容易になる技術が望まれている。
【0006】
そこで本発明は、既設コンクリート杭の撤去がより容易になる既設コンクリート杭の撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、地中に埋設された既設コンクリート杭の撤去方法であって、既設コンクリート杭の外周部を残しつつ、既設コンクリート杭の内側をくり抜いて、既設コンクリート杭を管状にする管状化工程と、管状化工程後に、管状化工程で管状にされた既設コンクリート杭を輪切りにして、既設コンクリート杭を上下方向に分割する分割工程と、管状化工程で管状にされた既設コンクリート杭の外周部を残しつつ、既設コンクリート杭の外周部の一部の厚さが他部の厚さに比べて薄くなるように、既設コンクリート杭の内側をくり抜く薄肉化工程と、分割工程後に、地中にケーシングを圧入して、分割工程で上下方向に分割された既設コンクリート杭を地中に圧入されたケーシングで囲繞するケーシング圧入工程と、ケーシング圧入工程後に、ケーシング圧入工程で圧入されたケーシングで囲繞された既設コンクリート杭を撤去する撤去工程とを備えた既設コンクリート杭の撤去方法である。撤去工程では、薄肉化工程で内側をくり抜かれ、ケーシング圧入工程で圧入されたケーシングで囲繞された既設コンクリート杭を破砕しつつ撤去し、薄肉化工程では、既設コンクリート杭の中心削孔部の中心から中心がずらされた偏心削孔部の外周部が円筒状に切削される
【0008】
この構成によれば、地中に埋設された既設コンクリート杭の撤去方法において、管状化工程により、既設コンクリート杭の外周部が残されつつ、既設コンクリート杭の内側がくり抜かれ、既設コンクリート杭が管状にされる。分割工程により、管状化工程で管状にされた既設コンクリート杭が輪切りにされ、既設コンクリート杭が上下方向に分割される。ケーシング圧入工程により、分割工程後に地中にケーシングが圧入され、分割工程で上下方向に分割された既設コンクリート杭が地中に圧入されたケーシングで囲繞される。撤去工程により、ケーシング圧入工程で圧入されたケーシングで囲繞された既設コンクリート杭が撤去される。管状化工程、分割工程、ケーシング圧入工程及び撤去工程のそれぞれは、比較的に単純な構造の土木機械で行うことができる。したがって、既設コンクリート杭の撤去がより容易になる。
【0010】
この構成によれば、薄肉化工程により、管状化工程で管状にされた既設コンクリート杭の外周部が残されつつ、既設コンクリート杭の外周部の一部の厚さが他部の厚さに比べて薄くなるように既設コンクリート杭の内側がくり抜かれるため、厚さが薄い部分から既設コンクリート杭を破砕し易くなる。そのため、薄肉化工程で内側をくり抜かれ、ケーシング圧入工程で圧入されたケーシングで囲繞された既設コンクリート杭が破砕されつつ撤去される撤去工程では、既設コンクリート杭の撤去がより容易になる。
【0011】
また、分割工程後であって撤去工程以前に、管状化工程で管状にされた既設コンクリート杭の内側を介して、既設コンクリートが埋設された地中の部位を埋戻土又は埋戻材で埋め戻す埋戻工程をさらに備えてもよい。
【0012】
この構成によれば、撤去工程後以外にも、分割工程後であって撤去工程以前に行われる埋戻工程により、管状化工程で管状にされた既設コンクリート杭の内側を介して、既設コンクリートが埋設された地中の部位を埋戻土又は埋戻材で埋め戻すことが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の既設コンクリート杭の撤去方法によれば、既設コンクリート杭の撤去がより容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)、(C)、(E)、(F)、(H)及び(I)は、第1実施形態に係る既設コンクリート杭の撤去方法の各工程を示す斜視図であり、(B)は(A)の平面図であり、(D)は(C)の平面図であり、(G)は(F)の平面図である。
図2】埋戻工程が撤去工程以前に行われる場合を示す斜視図である。
図3】(A)、(C)、(D)、(F)、(H)及び(I)は、第2実施形態に係る既設コンクリート杭の撤去方法の各工程を示す斜視図であり、(B)は(A)の平面図であり、(E)は(D)の平面図であり、(G)は(F)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態に係る既設コンクリート杭の撤去方法について詳細に説明する。本発明の第1実施形態に係る既設コンクリート杭の撤去方法は、例えば、オールケーシング法、アースドリル工法、リバース工法などにより築造された場所打ちコンクリート杭及び既製杭工法により地中に埋設された既製杭等の既設コンクリート杭を撤去する際に適用される。以下、例として、図1(A)及び図1(B)に示されるようなオールケーシング工法により地中Eに埋設された既設コンクリート杭1を撤去する際の工程について説明する。既設コンクリート杭1は、既設コンクリート杭1の外周部4の近傍に配筋され、上下方向に延在する複数の主筋2を有する。また、既設コンクリート杭1は、既設コンクリート杭1の外周部4の近傍に配筋され、主筋2を囲繞する複数の帯筋3を有する。
【0016】
オールケーシング工法により既設コンクリート杭1が地中Eに埋設される際には、まず、地中Eに管状のケーシングチューブが圧入される。ケーシングチューブの内部の土砂がハンマーグラブで排出される。土砂が排出されたケーシングチューブの内部に主筋2及び帯筋3が配置される。主筋2及び帯筋3が配置されたケーシングチューブの内部にコンクリートが打設されつつ、ケーシングチューブが地中Eから引き抜かれる。以上の工程により、既設コンクリート杭1は地中Eに埋設されている。
【0017】
図1(C)及び図1(D)に示されるように、既設コンクリート杭1の外周部4を残しつつ、既設コンクリート杭1の内側5をくり抜いて、既設コンクリート杭1を管状にする管状化工程が行われる。管状化工程では、例えば、円管状のケーシングの下端に切削刃が設けられた切削工具により、中央削孔部6の外周部が円管状に切削される。管状化工程では、中央削孔部6の外周部が円管状に切削された後に、中央削孔部6の内側の円柱状のコンクリートがハンマーグラブにより破砕されつつ、撤去される。管状化工程では、主筋2及び帯筋3が配筋されていない既設コンクリート杭1の内側5がくり抜かれる。なお、管状化工程では、例えば、ダウンザホールハンマーにより、中央削孔部6が形成されてもよい。
【0018】
図1(E)及び図1(F)に示されるように、管状化工程後に、管状化工程で管状にされた既設コンクリート杭1を既設コンクリート杭1の延在方向に交差する輪切面7で輪切りにして、既設コンクリート杭1を上下方向に複数の輪切片8に分割する分割工程が行われる。分割工程では、例えば、中央削孔部6の内部に、既設コンクリート杭1の延在方向に交差する方向に平行な円板の外周部に切削刃が設けられた切削工具が回転されつつ挿入される。分割工程では、中央削孔部6の内部に挿入された切削工具により、切削工具が中央削孔部6の内周部に沿って移動させられつつ、主筋2と一緒に既設コンクリート杭1の外周部4が切断される。
【0019】
図1(F)及び図1(G)に示されるように、分割工程後に、地中Eにケーシング9を圧入し、分割工程で上下方向に複数の輪切片8に分割された既設コンクリート杭1を地中Eに圧入されたケーシング9で囲繞するケーシング圧入工程が行われる。ケーシング圧入工程では、例えば、既設コンクリート杭1の直径と同じ外径のケーシング9が地中Eに圧入される。ケーシング圧入工程で既設コンクリート杭1の直径と同じ外径のケーシング9が地中Eに圧中される場合には、ケーシング9の先端のビットで既設コンクリート杭1の外周部4の最も外側が切削されつつ、ケーシング9が地中Eに圧中される。なお、全周回転機等の設備の制約が無い場合には、ケーシング圧入工程では、既設コンクリート杭1の直径よりも僅かに内径が大きいケーシング9まで内径及び外径が大きいケーシング9が地中Eに圧中されてもよい。
【0020】
図1(H)に示されるように、ケーシング圧入工程後に、ケーシング圧入工程で圧入されたケーシング9で囲繞された既設コンクリート杭1を撤去する撤去工程が行われる。撤去工程では、例えば、ハンマーグラブにより、輪切片8がそのまま撤去される。図1(I)に示されるように、撤去工程後に、埋戻土又は埋戻材11により既設コンクリート杭1が埋設されていた部位を埋め戻す埋戻工程が行われる。埋戻土又は埋戻材11には、例えば、埋め戻し発生土及び流動化処理土が含まれる。埋戻工程では、埋戻土又は埋戻材11による埋め戻しが行われつつ、ケーシング9が地中Eから引き抜かれる。
【0021】
なお、図2に示されるように、埋戻工程は、分割工程後であって撤去工程以前、つまり、分割工程後であって撤去工程後又は撤去工程と同時に行われ、管状化工程で管状にされた既設コンクリート杭1の内側5の中央削孔部6を介して、既設コンクリート杭1が埋設された地中Eの部位が埋戻土又は埋戻材11で埋め戻されてもよい。以上により、既設コンクリート杭1の撤去が終了する。
【0022】
本実施形態によれば、地中Eに埋設された既設コンクリート杭1の撤去方法において、管状化工程により、既設コンクリート杭1の外周部4が残されつつ、既設コンクリート杭1の内側5がくり抜かれ、既設コンクリート杭1が管状にされる。分割工程により、管状化工程で管状にされた既設コンクリート杭1が輪切りにされ、既設コンクリート杭1が上下方向に分割される。ケーシング圧入工程により、分割工程後に地中にケーシング9が圧入され、分割工程で上下方向に分割された既設コンクリート杭1が地中Eに圧入されたケーシング9で囲繞される。撤去工程により、ケーシング圧入工程で圧入されたケーシング9で囲繞された既設コンクリート杭1が撤去される。管状化工程、分割工程、ケーシング圧入工程及び撤去工程のそれぞれは、比較的に単純な構造の土木機械で行うことができる。したがって、既設コンクリート杭1の撤去がより容易になる。
【0023】
上記特許文献1の技術のように、地中にケーシングが圧入されるのと同時に、主筋が切断されていない状態の既設コンクリート杭の周壁が破砕される技術では、主筋の配筋密度が高く、主筋が太い場合には、既設コンクリート杭の撤去が困難である。
【0024】
一方、本実施形態では、管状化工程では、主筋2及び帯筋3が配筋されていない既設コンクリート杭1の内側5がくり抜かれる。そのため、主筋2の配筋密度が高く、主筋2が太い場合でも、管状化工程は容易に行うことができる。また、管状化工程では、既設コンクリート杭1を囲繞するケーシング9が地中Eに圧入されていなくても、既設コンクリート杭1の外周部4によって、地中Eの土砂の崩壊が防がれる。
【0025】
分割工程では、管状化工程で形成された中央削孔部6の内部に挿入された切削工具により、主筋2と一緒に既設コンクリート杭1の外周部4が切断される。このため、切削工具の配置が容易であることに加えて、既設コンクリート杭1を囲繞するケーシング9が地中Eに圧入されていなくても、既設コンクリート杭1の外周部4によって、地中Eの土砂の崩壊が防がれる。つまり、分割工程では、既設コンクリート杭1の外部にケーシング9が無い状態で主筋2を切断できる。したがって、外周部4を切断した切削工具とケーシング9とが干渉しないように大きな内径のケーシング9を挿入する必要がない。また、主筋2の配筋密度が高く、主筋2が太い場合でも、主筋2の切断を伴う分割工程は容易に行うことができる。
【0026】
既設コンクリート杭1を囲繞するケーシング9は、分割工程後のケーシング圧入工程で初めて地中Eに圧入される。撤去工程では、ケーシング圧入工程で圧入されたケーシング9の内部で、分割工程で分割された輪切片8がハンマーグラブにより順次撤去される。
【0027】
つまり、本実施形態では、ケーシング9の圧入及び主筋2が配筋された既設コンクリート杭1の破砕とを一挙に行う従来の技術に比べて、各工程をオールケーシング工法で用いられる比較的に単純な構造の土木機械で行うことができる。また、単純な構造の土木機械では、その高さを抑えることができるため、作業場所の周辺の交通規制等の作業上の制約も低減される。さらに、異なる作業の各工程は順次1回だけ行われるため、異なる作業の各工程が繰り返し行われる技術に比べて作業効率が向上する。また、ケーシング圧入工程では、既設コンクリート杭1の直径と同じ外径のケーシング9が地中Eに圧入されるため、ケーシング9を小径化でき、埋戻工程で要する埋戻土又は埋戻材11の量を低減できる。
【0028】
以下、本発明の第2実施形態に係る既設コンクリート杭の撤去方法について説明する。図3(A)及び図3(B)に示されるように、上記第1実施形態と同様に、管状化工程が行われる。図3(C)に示されるように、上記第1実施形態と同様に、分割工程が行われる。
【0029】
本実施形態では、図3(D)及び図3(E)に示されるように、管状化工程で管状にされた既設コンクリート杭1の外周部4を残しつつ、平面視(横断面視)で既設コンクリート杭1の外周部4の一部の厚さt2が他部の厚さt1に比べて薄くなるように、既設コンクリート杭1の内側5をくり抜く薄肉化工程が行われる。
【0030】
薄肉化工程では、例えば、円管状のケーシングの下端に切削刃が設けられた切削工具により、中央削孔部6の中心から中心がずらされた偏心削孔部10の外周部が円管状に切削される。薄肉化工程では、偏心削孔部10の外周部が円管状に切削された後に、偏心削孔部10の内側のコンクリートがハンマーグラブにより破砕されつつ、撤去される。薄肉化工程では、主筋2及び帯筋3が配筋されている既設コンクリート杭1の内側5の部位がくり抜かれるが、すでに分割工程で主筋2が切断されているため、偏心削孔部10を容易に形成できる。
【0031】
図3(F)及び図3(G)に示されるように、上記第1実施形態と同様にケーシング圧入工程が行われる。図3(H)に示されるように、撤去工程が行われる。撤去工程では、薄肉化工程で内側5をくり抜かれ、ケーシング圧入工程で圧入されたケーシング9で囲繞された既設コンクリート杭1の輪切片8がハンマーグラブにより破砕されつつ撤去される。図3(I)に示されるように、上記第1実施形態と同様に、埋戻工程が行われる。上記第1実施形態と同様に、埋戻工程は、分割工程後であって撤去工程以前に行われ、管状化工程で管状にされた既設コンクリート杭1の内側5の中央削孔部6を介して、既設コンクリート杭1が埋設された地中Eの部位が埋戻土又は埋戻材11で埋め戻されてもよい。以上により、既設コンクリート杭1の撤去が終了する。
【0032】
本実施形態では、薄肉化工程により、管状化工程で管状にされた既設コンクリート杭1の外周部4が残されつつ、既設コンクリート杭1の外周部4の一部の厚さt2が他部の厚さt1に比べて薄くなるように既設コンクリート杭1の内側5がくり抜かれるため、厚さが薄い部分から既設コンクリート杭1を破砕し易くなる。そのため、薄肉化工程で内側5をくり抜かれ、ケーシング圧入工程で圧入されたケーシング9で囲繞された既設コンクリート杭1が破砕されつつ撤去される撤去工程では、既設コンクリート杭1の撤去がより容易になる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、本発明は、地中に埋設された既設コンクリート杭1が杭頭部に鋼管を巻いた杭(場所打ち鋼管コンクリート杭)であり、場所打ち鋼管コンクリート杭を撤去する際にも適用できる。
【0034】
また、上記実施形態では、主筋2及び帯筋3が配置されたケーシングチューブの内部にコンクリートが地表面まで打設されてケーシングチューブが地中Eから完全に引き抜かれた完成状態の既設コンクリート杭1を撤去する態様を中心に説明した。しかし、本発明は、例えば、上記実施形態のように主筋2及び帯筋3が配置されたケーシングチューブの内部にコンクリートがケーシングチューブの先端と地表面との中間まで打設されてケーシングチューブの一部が地中Eから引き抜かれたが、内部に硬化したコンクリートを含むケーシングが地中Eに残存した未完成状態の既設コンクリート杭1を撤去する際にも適用できる。
【0035】
この場合、上記実施形態と同様に、管状化工程が行われた後に、分割工程では、残存したケーシングチューブも一緒に輪切りにされる。分割工程後、内部に硬化したコンクリートを含むケーシングチューブを撤去した後に、上記実施形態と同様にケーシング圧入工程及び撤去工程が行われる。これにより、途中まで打設された既設コンクリート杭1を撤去できる。
【符号の説明】
【0036】
1…既設コンクリート杭、2…主筋、3…帯筋、4…外周部、5…内側、6…中央削孔部、7…輪切面、8…輪切片、9…ケーシング、10…偏心削孔部、11…埋戻土又は埋戻材、t1…厚さ、t2…厚さ、E…地中。
図1
図2
図3