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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】光学フィルム積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20240705BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240705BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20240705BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240705BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B27/30 A
G02B1/111
G02B1/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021516176
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2020017387
(87)【国際公開番号】W WO2020218374
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2019082239
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 知之
(72)【発明者】
【氏名】國岡 竜太郎
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-212525(JP,A)
【文献】特開2005-283730(JP,A)
【文献】特開2008-262187(JP,A)
【文献】特開2018-072807(JP,A)
【文献】特開2015-055659(JP,A)
【文献】国際公開第2013/140811(WO,A1)
【文献】特開2010-256880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
G02B 1/10- 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
反射防止層と、がこの順で積層され、
反射色度が、L表色系において、-10≦a≦5、-10≦b≦10であり、
前記反射防止層の前記透明基材に対向する面とは反対側の面の表面抵抗値が1.0×1013Ω/□以上であり、
前記透明基材と前記反射防止層との間にハードコート層が設けられ、
前記ハードコート層の屈折率が1.54以上1.57以下であり、
前記ハードコート層の厚みが3μm以上7μm以下である、
光学フィルム積層体。
【請求項2】
前記反射防止層が、
屈折率が1.56以上1.66以下である中屈折率層、
屈折率が1.74以上1.90以下である高屈折率層、及び
屈折率が1.34以上1.38以下である低屈折率層が、この順で積層されている、
請求項1に記載の光学フィルム積層体。
【請求項3】
前記中屈折率層の厚みが、前記高屈折率層の屈折率が1.74以上1.80未満の場合は、55nm以上80nm以下であり、前記高屈折率層の屈折率が1.80以上1.90以下の場合は、10nm以上80nm以下であり、
前記高屈折率層の厚みが、110nm以上140nm以下であり、
前記低屈折率層の厚みが、80nm以上100nm以下である、
請求項2に記載の光学フィルム積層体。
【請求項4】
前記ハードコート層が、アクリル樹脂を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の光学フィルム積層体。
【請求項5】
前記低屈折率層が、アクリル樹脂及び中空シリカを含み、
前記アクリル樹脂と前記中空シリカとの固形分質量比が、19:80~70:29の範囲内である、
請求項2~4のいずれか一項に記載の光学フィルム積層体。
【請求項6】
前記高屈折率層が、アクリル樹脂、及びジルコニア又はチタニアを含み、
前記アクリル樹脂と前記ジルコニア又は前記チタニアとの固形分質量比が、9:90~60:39の範囲内である、
請求項2~5のいずれか一項に記載の光学フィルム積層体。
【請求項7】
前記中屈折率層が、アクリル樹脂及びジルコニアを含み、
前記アクリル樹脂と前記ジルコニアとの固形分質量比が、29:70~90:9の範囲内である、
請求項2~6のいずれか一項に記載の光学フィルム積層体。
【請求項8】
視感反射率が0.1%以上0.8%以下の範囲である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の光学フィルム積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般には、光学フィルム積層体に関する。本開示は、詳細には、透明基材と、反射防止層と、を備える光学フィルム積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーションシステム等に使用されるタッチパネルディスプレイの高品位化が求められており、例えば、ディスプレイに表示された情報の視認性を向上させるために、光反射率を低減させることが行われている。反射率を低減させる手段として、反射防止フィルムが挙げられる。例えば特許文献1、2、及び3には、反射防止フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6244760号公報
【文献】特開2014-145914号公報
【文献】特開2005-301004号公報
【発明の概要】
【0004】
特許文献1及び2に記載の反射防止フィルムは、特定波長の反射率が低下するにとどまるため、反射率が低下していない前記特定波長以外の波長に由来する特定色は、むしろ強く視認されることとなる。そのため、ディスプレイ表示の視認性を低下させたり、暗所においても前記特定色が目立つ場合があるなどの問題があった。
【0005】
また特許文献3の反射防止フィルムは、表面抵抗率を低減させているため、静電容量式のタッチパネルディスプレイに好適とは言えなかった。
【0006】
本発明の目的は、低反射で、かつ、タッチパネルディスプレイへの適用が好適な光学フィルム積層体を提供することにある。
【0007】
本開示の一態様に係る光学フィルム積層体は、透明基材と、反射防止層と、がこの順で積層されている。光学フィルム積層体は、反射色度が、L表色系において、-10≦a≦5、-10≦b≦10である。反射防止層の透明基材に対向する面とは反対側の面の表面抵抗値が1.0×1011Ω/□以上である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る光学フィルム積層体の一例を示す概略の断面図である。
図2図2Aは、金属基材付薄膜金属箔の一例を示す概略の断面図である。図2Bは、金属張透明基材材料の一例を示す概略の断面図である。
図3図3Aは、透視型電極用積層板の一例を示す概略の断面図である。図3Bは、透視型電極素材の一例を示す概略の断面図である。図3Cは、デバイスの一例を示す概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.概要
本開示の一実施形態に係る光学フィルム積層体100は、図1に示すように、透明基材1と反射防止層6とがこの順で積層されている。反射防止層6は、下方(透明基材1の方)から、中屈折率層2、高屈折率層3、及び低屈折率層4が、この順で積層されている。中屈折率層2は、屈折率が1.56以上1.66以下である。高屈折率層3は、屈折率が1.74以上1.90以下である。低屈折率層4は、屈折率が1.34以上1.38以下である。反射防止層6の透明基材1に対向する面とは反対側の面の表面抵抗値は1.0×1011Ω/□以上である。
【0010】
本実施形態の光学フィルム積層体100では、低屈折率層4の屈折率<中屈折率層2の屈折率<高屈折率層3の屈折率の条件を満たすと共に、中屈折率層2、高屈折率層3、及び低屈折率層4の屈折率が上記範囲内であることにより、光学フィルム積層体100の光反射率を低減できる。また、これらの構成により、光学フィルム積層体100をニュートラル色(無色)に近づけることが出来る。それにより、ディスプレイ等の表示の視認性を向上できると共に、暗所においても特定色の反射を抑制することができる。
【0011】
表面抵抗値が低い積層体を、静電容量式のタッチパネルディスプレイに適用した場合、静電容量値を正確に測定できないことがある。これに対して本実施形態の光学フィルム積層体100では、反射防止層6の透明基材1に対向する面とは反対側の面の表面抵抗値が1.0×1011Ω/□以上であることにより、静電容量値を正確に測定しやすく、例えば出荷検査時の静電容量値測定エラーの発生や、タッチパネル操作時の誤作動を抑制することができる。そのため、本実施形態の光学フィルム積層体100は、タッチパネルディスプレイへの適用に好適である。
【0012】
2.詳細
2-1.光学フィルム積層体
上述の通り、本実施形態の光学フィルム積層体100は、透明基材1と反射防止層6とを含む。反射防止層6は、中屈折率層2、高屈折率層3、及び低屈折率層4を含む。本実施形態の光学フィルム積層体100は、更にハードコート層5を含むことができる。このハードコート層5は、透明基材1と反射防止層6との間に設けられている(図1参照)。詳しくは、ハードコート層5は、透明基材1と中屈折率層2との間に設けられている(図1参照)。そのため、光学フィルム積層体100では、透明基材1、ハードコート層5、中屈折率層2、高屈折率層3、及び低屈折率層4が、この順に積層されている。以下、光学フィルム積層体100が備える各層の構成について詳細に説明する。
【0013】
(1)透明基材
透明基材1は、反射防止フィルムに使用されるフィルム状又はシート状の透明の基材である。
【0014】
透明基材1の平面視の形状及び寸法は特に限定されず、光学フィルム積層体100を貼り付ける対象物の平面視の形状及び寸法に応じて適宜設定される。透明基材1の厚みは、特に限定されない。
【0015】
透明基材1の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)製、トリアセチルセルロース製、又はシクロオレフィンポリマー(COP)製であることが好ましい。
【0016】
(2)ハードコート層
ハードコート層5は、中屈折率層2、高屈折率層3、及び低屈折率層4よりも硬度が大きい層である。ハードコート層5によって、積層体100の耐擦傷性を向上させることができる。
【0017】
ハードコート層5は、透明基材1上に設けられている。本実施形態のハードコート層5は透明基材1と接している。
【0018】
ハードコート層5の平面視の形状及び寸法は、透明基材1の平面視の形状及び寸法に応じて適宜設定される。例えばハードコート層5の平面視の形状は透明基材1の平面視の形状と同じであることが好ましい。また例えばハードコート層5の寸法は透明基材1の寸法と同じであることが好ましい。
【0019】
ハードコート層5の屈折率は、例えば1.54以上1.57以下であることが好ましい。その場合、ハードコート層5の厚みは、例えば3μm以上7μm以下であることが好ましい。それにより、光学フィルム積層体100を、より低反射にできると共に、ニュートラル色(無色)に近づけることが出来る。また、ハードコート層5の強度を向上させることができ、光学フィルム積層体100の強度も向上させることができる。
【0020】
ハードコート層5は、紫外線硬化型樹脂組成物製であることが好ましい。紫外線硬化型樹脂組成物は、例えば、アクリル樹脂を含むことが好ましい。すなわちハードコート層5がアクリル樹脂を含むことが好ましい。ハードコート層5を作製するための紫外線硬化型樹脂組成物は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤の例には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α-アミドオキシムエステル、チオキサントン類等が含まれる。ハードコート層5を作製するための紫外線硬化型樹脂組成物は、例えば反応性希釈剤、光重合開始剤、光増感剤等を含むことができる。
【0021】
(3)中屈折率層
中屈折率層2は、光学フィルム積層体100の反射率を低減させるための層である。中屈折率層2は、低屈折率層4よりも屈折率が大きく、また高屈折率層3よりも屈折率が小さい。
【0022】
中屈折率層2は、透明基材1上に設けられており、詳細には透明基材1上に積層されたハードコート層5上に設けられている。そのため、光学フィルム積層体100では、透明基材1、ハードコート層5、中屈折率層2の順に積層されている。また中屈折率層2は、ハードコート層5と接している。
【0023】
中屈折率層2の平面視の形状及び寸法は、透明基材1の平面視の形状及び寸法に応じて適宜設定される。例えば、中屈折率層2の平面視の形状は透明基材1の平面視の形状と同じであることが好ましい。また例えば、中屈折率層2の寸法は透明基材1の寸法と同じであることが好ましい。中屈折率層2の屈折率及び厚みについては後述する。
【0024】
中屈折率層2は、紫外線硬化型樹脂組成物製であることが好ましい。紫外線硬化型樹脂組成物は、例えば、アクリル樹脂を含むことが好ましい。すなわち、中屈折率層2がアクリル樹脂を含むことが好ましい。本実施形態の光学フィルム積層体100では、ハードコート層5もアクリル樹脂を含むことから、ハードコート層5と中屈折率層2との線膨張係数差を小さくすることができ、光学フィルム積層体100の加熱時に反りが発生することを抑制することができる。アクリル樹脂は、ハードコート層5に含まれるアクリル樹脂と同じあってもよく、異なっていてもよい。アクリル樹脂は、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を含むことが好ましい。
【0025】
本実施形態におけるアクリル樹脂についてさらに説明する。なお、下記説明において「(メタ)アクリル-」は、「アクリル-」と「メタクリル-」のうち少なくとも一方を意味する。例えば、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとのうち少なくとも一方を意味する。
【0026】
本実施形態におけるアクリル樹脂は(メタ)アクリレートの硬化物であり、即ち(メタ)アクリロイル基を含有するモノマー又はオリゴマーの硬化物である。このような(メタ)アクリレートとして、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、及びポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
前記(メタ)アクリレートは1つのアクリロイル基を官能基として含有する単官能アクリレートでもよいし、複数のアクリロイル基を官能基として含有する多官能アクリレートでもよい。本実施形態におけるアクリル樹脂は、3つ以上のアクリロイル基を官能基として含有する化合物であることが好ましい。この場合、上記ハードコート層及び反射防止層において、アクロイル基に由来する架橋構造が複数存在するため、耐擦傷性を向上させることができる。アクリル樹脂は、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート等の5官能アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能アクリレート;並びにこれらアクリレート中の基をアルキル基又はε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
【0028】
さらに、前記(メタ)アクリレートが、重合性官能基とフルオロアルキル基とを含有することで、本実施形態における光学フィルム積層体に防汚性を付与することが出来る点で好ましい。このような重合性官能基とフルオロアルキル基とを含有する(メタ)アクリレートとしては重合性官能基としてエチレン性不飽和基を含有してもよい。前記重合性官能基は(メタ)アクロイル基のみから構成されてもよく、重合性官能基とフルオロアルキル基とを含有する(メタ)アクリレートは、重合性官能基としてビニル基、アリル基、及びスチリル基からなる群から選択される少なくとも一種の基を更に含有してもよい。
【0029】
例えば2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H-ペルフルオロ-n-ブチル(メタ)アクリレート、1H,1H-ペルフルオロ-n-ペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H-ペルフルオロ-n-ヘキシル(メタ)アクリレート、1H,1H-ペルフルオロ-n-オクチル(メタ)アクリレート、1H,1H-ペルフルオロ-n-デシル(メタ)アクリレート、1H,1H-ペルフルオロ-n-ドデシル(メタ)アクリレート、1H,1H-ペルフルオロイソブチル(メタ)アクリレート、1H,1H-ペルフルオロイソオクチル(メタ)アクリレート、1H,1H-ペルフルオロイソドデシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-ペルフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H-ペルフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H-ペルフルオロノニル(メタ)アクリレート、1H,1H,11H-ペルフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、3,3,3-トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル(メタ)アクリレート、2-(ペルフルオロ-n-プロピル)エチル(メタ)アクリレート、2-(ペルフルオロ-n-ブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(ペルフルオロ-n-ヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(ペルフルオロ-n-オクチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(ペルフルオロ-n-デシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(ペルフルオロイソブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(ペルフルオロイソオクチル)エチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4-テトラフルオロブチル(メタ)アクリレート、1H,1H,6H-ペルフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、1H,1H,8H-ペルフルオロオクチル(メタ)アクリレート、1H,1H,10H-ペルフルオロデシル(メタ)アクリレート、1H,1H,12H-ペルフルオロドデシル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートジフルオロブチレートなどがあげられる。重合性官能基とフルオロアルキル基とを含有する(メタ)アクリレートは、パーフルオロポリエーテルアクリレート化合物であってもよい。このパーフルオロポリエーテルアクリレート化合物は、パーフルオロアルキル基を主鎖として有するとともに、主鎖の末端又は側鎖に重合性官能基を有することが好ましい。
【0030】
中屈折率層2を作製するための紫外線硬化型樹脂組成物は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤の例には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α-アミドオキシムエステル、チオキサントン類等が含まれる。
【0031】
中屈折率層2を作製するための紫外線硬化型樹脂組成物は、高屈折率、かつ絶縁性が高い微粒子を含有することが好ましい。すなわち、中屈折率層2は、高屈折率、かつ絶縁性が高い微粒子を含有することが好ましく、具体的にはジルコニアを含有することが好ましい。この場合、中屈折率層2の屈折率を、低屈折率層4の屈折率よりも大きくしやすい。また光学フィルム積層体100の表面抵抗値を低減することができる。このジルコニアは、粒子状であることが好ましい。すなわち中屈折率層2がジルコニア粒子を含有することが好ましい。ジルコニア粒子の平均粒径は、特に限定されないが、例えば、10nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0032】
中屈折率層2を作製するための紫外線硬化型樹脂組成物において、アクリル樹脂と、ジルコニア粒子との固形分質量比は29:70~90:9の範囲内であることが好ましく、39:60~80:19の範囲内であることがより好ましい。この場合、中屈折率層2の屈折率を適度な範囲に調整しながら、中屈折率層2の強度を確保することができ、光学フィルム積層体100の耐擦傷性を向上させることができる。
【0033】
中屈折率層2を作製するための紫外線硬化型樹脂組成物全量に対する光重合開始剤の割合は、特に限定されないが、0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましく、1質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。この場合、紫外線硬化型樹脂組成物の硬化性を向上させることができる。
【0034】
中屈折率層2を作製するための紫外線硬化型樹脂組成物は、例えば、反応性希釈剤、光増感剤等を含んでいてもよい。
【0035】
(4)高屈折率層
高屈折率層3は、光学フィルム積層体100の反射率を低減させるための層である。高屈折率層3は、低屈折率層4及び屈折率層2よりも屈折率が大きい。
【0036】
高屈折率層3は、透明基材1上に設けられており、詳細には中屈折率層2上に設けられている。そのため、光学フィルム積層体100では、透明基材1、ハードコート層5、中屈折率層2、高屈折率層3の順に積層されている。また高屈折率層3は、中屈折率層2と接している。
【0037】
高屈折率層3の平面視の形状及び寸法は、透明基材1の平面視の形状及び寸法に応じて適宜設定される。例えば、高屈折率層3の平面視の形状は透明基材1の平面視の形状と同じであることが好ましい。また例えば、高屈折率層3の寸法は透明基材1の寸法と同じであることが好ましい。高屈折率層3の屈折率及び厚みについては後述する。
【0038】
高屈折率層3は、紫外線硬化型樹脂組成物製であることが好ましい。紫外線硬化型樹脂組成物は、例えば、アクリル樹脂を含むことが好ましい。すなわち、高屈折率層3がアクリル樹脂を含むことが好ましい。本実施形態の光学フィルム積層体100では、中屈折率層2がアクリル樹脂を含むため、中屈折率層2と高屈折率層3との線膨張係数差を小さくすることができ、光学フィルム積層体100の加熱時に反りが発生することを抑制することができる。アクリル樹脂は、ハードコート層5に含まれるアクリル樹脂と同じあってもよく、異なっていてもよい。アクリル樹脂は、低屈折率層4に含まれるアクリル樹脂と同じであってもよく、異なっていてもよい。アクリル樹脂は、中屈折率層2に含まれるアクリル樹脂と同じであってもよく、異なっていてもよい。アクリル樹脂は、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を含むことが好ましい。
【0039】
高屈折率層3を作製するための紫外線硬化型樹脂組成物は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤の例には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α-アミドオキシムエステル、チオキサントン類等が含まれる。
【0040】
高屈折率層3を作製するための紫外線硬化型樹脂組成物は、特に高屈折率、かつ絶縁性が高い微粒子を含有することが好ましい。すなわち高屈折率層3は、特に高屈折率かつ絶縁性が高い微粒子を含有することが好ましく、具体的にはジルコニア又はチタニアを含有することが好ましい。この場合、高屈折率層3の屈折率を、低屈折率層4及び中屈折率層2の屈折率よりも大きくしやすい。また光学フィルム積層体100の表面抵抗値を低減することができる。このジルコニア又はチタニアは、粒子状であることが好ましい。すなわち、高屈折率層3がジルコニア粒子又はチタニア粒子を含有することが好ましい。ジルコニア粒子又はチタニア粒子の平均粒径は、特に限定されないが、例えば、10nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0041】
高屈折率層3を作製するための紫外線硬化型樹脂組成物において、アクリル樹脂と、ジルコニア粒子又はチタニア粒子との固形分質量比は、9:90~60:39の範囲内であることが好ましく、19:80~50:49の範囲内であることがより好ましい。この場合、高屈折率層3の屈折率を適度な範囲に調整しながら、高屈折率層3の強度を確保することができ、光学フィルム積層体100の耐擦傷性を向上させることができる。
【0042】
高屈折率層3を作製するための紫外線硬化型樹脂組成物全量に対する光重合開始剤の割合は、特に限定されないが、0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましく、1質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。この場合、紫外線硬化型樹脂組成物の硬化性を向上させることができる。
【0043】
高屈折率層3を作製するための紫外線硬化型樹脂組成物は、例えば、反応性希釈剤、光増感剤等を含んでいてもよい。
【0044】
(5)低屈折率層
低屈折率層4は、光学フィルム積層体100の反射率を低減させるための層である。低屈折率層4は、中屈折率層2及び高屈折率層3よりも屈折率が小さい。
【0045】
低屈折率層4は、透明基材1上に設けられており、詳細には高屈折率層3上に設けられている。そのため、光学フィルム積層体100では、透明基材1、ハードコート層5、中屈折率層2、高屈折率層3の順に積層されている。このように、中屈折率層2、高屈折率層3、低屈折率層4の順に積層することにより、光学フィルム積層体100の光反射率を低減することができる。また本実施形態の光学フィルム積層体100では、低屈折率層4は、高屈折率層3と接している。
【0046】
低屈折率層4の平面視の形状及び寸法は、透明基材1の平面視の形状及び寸法に応じて適宜設定される。例えば低屈折率層4の平面視の形状は透明基材1の平面視の形状と同じであることが好ましい。また例えば低屈折率層4の寸法は透明基材1の寸法と同じであることが好ましい。低屈折率層4の屈折率及び厚みについては後述する。
【0047】
低屈折率層4は、紫外線硬化型樹脂組成物製であることが好ましい。紫外線硬化型樹脂組成物は、例えば、アクリル樹脂を含むことが好ましい。すなわち、低屈折率層4がアクリル樹脂を含むことが好ましい。本実施形態の光学フィルム積層体100では、高屈折率層3がアクリル樹脂を含むことから、低屈折率層4と高屈折率層3との線膨張係数差を小さくすることができ、光学フィルム積層体100の加熱時に反りが発生することを抑制することができる。アクリル樹脂は、ハードコート層5に含まれるアクリル樹脂と同じあってもよく、異なっていてもよい。アクリル樹脂は、中屈折率層2に含まれるアクリル樹脂と同じであってもよく、異なっていてもよい。アクリル樹脂は、高屈折率層3に含まれるアクリル樹脂と同じであってもよく、異なっていてもよい。アクリル樹脂は、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を含むことが好ましい。
【0048】
低屈折率層4を作製するための紫外線硬化型樹脂組成物は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤の例には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α-アミドオキシムエステル、チオキサントン類等が含まれる。
【0049】
低屈折率層4を作製するための紫外線硬化型樹脂組成物は、低屈折率、かつ絶縁性が高い微粒子を含有することが好ましい。すなわち、低屈折率層4は、低屈折率、かつ絶縁性が高い微粒子を含有することが好ましく、具体的には中空シリカを含有することが好ましい。この場合、低屈折率層4の屈折率を、中屈折率層2及び高屈折率層3の屈折率よりも小さくしやすい。また光学フィルム積層体100の表面抵抗値を低減することができる。中空シリカの平均粒径は、特に限定されないが、例えば、10nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0050】
低屈折率層4を作製するための紫外線硬化型樹脂組成物において、アクリル樹脂と中空シリカとの固形分質量比は、19:80~70:29の範囲内であることが好ましく、29:70~60:39の範囲内であることがより好ましい。この場合、低屈折率層4の屈折率を適度な範囲に調整しながら、低屈折率層4の強度を確保することができ、光学フィルム積層体100の耐擦傷性を向上させることができる。
【0051】
低屈折率層4を作製するための紫外線硬化型樹脂組成物全量に対する光重合開始剤の割合は、特に限定されないが、0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましく、1質量%以上3質量%以下であることが好ましい。この場合、紫外線硬化型樹脂組成物の硬化性を向上させることができる。
【0052】
低屈折率層4を作製するための紫外線硬化型樹脂組成物は、例えば、反応性希釈剤、光増感剤等を含んでいてもよい。
【0053】
(6)中屈折率層、高屈折率層、及び低屈折率層の屈折率及び厚みについて
本実施形態の光学フィルム積層体100では、中屈折率層2の屈折率は1.56以上1.66以下であり、高屈折率層3の屈折率が1.74以上1.90以下であり、低屈折率層4の屈折率が1.34以上1.38以下である。各層の屈折率が上記の範囲内であることにより、光学フィルム積層体100の光反射率を低減することができると共に、ニュートラル色(無色)に近づけることが出来る。それにより、ディスプレイ等の視認性を向上できる共に、暗所においても特定色の反射を抑制することができる。光学フィルム積層体100の光反射率をより低減すると共に、ニュートラル色(無色)に近づけるためには、中屈折率層2の屈折率は1.58以上1.64以下であることが好ましく、高屈折率層3の屈折率は1.82以上1.88以下であることが好ましく、低屈折率層4の屈折率は1.35以上1.37以下であることが好ましい。
【0054】
本実施形態の光学フィルム積層体100では、中屈折率層2の厚みは、高屈折率層3の屈折率が1.74以上1.80未満の場合は、55nm以上80nm以下であることが好ましい。また中屈折率層2の厚みは、高屈折率層3の屈折率が1.80以上1.90以下の場合は、10nm以上80nm以下であることが好ましい。高屈折率層3の厚みは110nm以上140nm以下であることが好ましく、低屈折率層4の厚みは80nm以上100nm以下であることが好ましい。各層の厚みが上記の範囲内であることにより、光学フィルム積層体100をニュートラル色(無色)に近づけることができ、また暗所においても特定色の反射を抑制することができる。光学フィルム積層体100をよりニュートラル色(無色)に近づけるためには、中屈折率層2の厚みは20nm以上60nm以下であることがより好ましく、高屈折率層3の厚みは120nm以上130nm以下であることがより好ましく、低屈折率層4の厚みは85nm以上95nm以下であることがより好ましい。
【0055】
(7)光学フィルム積層体の物性について
(表面抵抗値)
本実施形態の光学フィルム積層体100は、その表面抵抗値が1.0×1011Ω/□以上である。そのため、光学フィルム積層体100を静電容量式のタッチパネルディスプレイ等に適用した場合において、静電容量値を正確に測定しやすく、例えば出荷検査時の静電容量値測定エラーの発生や、タッチパネル操作時の誤作動を抑制することができる。積層体100の表面抵抗値は、1.0×1012Ω/□以上であることが好ましく、1.0×1013Ω/□以上であることがより好ましい。なお、光学フィルム積層体100の表面抵抗値は、周知の高抵抗率計によって測定することができる。高抵抗率計としては、例えば三菱化学アナリテック株式会社製の商品名ハイレスタIP MCP-HT260が例示される。なお、本実施形態の光学フィルム積層体100の表面抵抗値とは、透明基材1と、反射防止層6と、がこの順で積層され、反射防止層6の透明基材1に対向する面とは反対側の面の表面抵抗値である。
【0056】
(反射色度)
本実施形態の光学フィルム積層体100は、その反射色度が、L表色系において、-10≦a≦5、-10≦b≦10であることが好ましい。この場合、光学フィルム積層体100を無色に近い、ニュートラルな色味(ニュートラル色)とすることができる。光学フィルム積層体100をよりニュートラル色(無色)に近づけるためには、光学フィルム積層体100の反射色度は、-5≦a≦2、-5≦b≦5であることがより好ましい。なお、光学フィルム積層体100の反射色度は、周知の分光測色系によって測定することができる。分光測色計としては、例えばコニカミノルタジャパン株式会社製の品番CM-3600dが例示される。
【0057】
(全光線透過率)
本実施形態の光学フィルム積層体100は、その全光線透過率が、94.0%以上であることが好ましく、より好ましくは95.0%以上である。それにより、光学フィルム積層体100の透明性が高いために、ディスプレイ等の視認性を向上できる共に、暗所においても特定色の反射を抑制することができる。
【0058】
(ヘイズ)
本実施形態の光学フィルム積層体100は、そのヘイズが、1.0%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下である。それにより、光学フィルム積層体100の透明性が高いために、ディスプレイ等の視認性を向上できる共に、暗所においても特定色の反射を抑制することができる。
【0059】
(視感反射率)
本実施形態の光学フィルム積層体100は、視感反射率が、0.1%以上0.8%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以上0.5%以下である。それにより、光学フィルム積層体100の透明性が高いために、ディスプレイ等の視認性を向上できる共に、暗所においても特定色の反射を抑制することができる。
【0060】
(8)光学フィルム積層体の用途について
本実施形態の光学フィルム積層体100は、上述の通り、タッチパネルディスプレイへの適用に好適である。具体的には、例えば、光学フィルム積層体100を、タッチパネルディスプレイが備える反射防止フィルム(反射低減層、反射低減パターン)として使用することができる。
【0061】
以下、光学フィルム積層体100を備える金属基材付薄膜金属箔200と、金属張透明基材材料300と、透視型電極用積層板400、透視型電極素材500、及びデバイス600について説明する。金属基材付薄膜金属箔200、金属張透明基材材料300、透視型電極用積層板400、及び透視型電極素材500は、デバイス600を製造するための素材でもある。
【0062】
(i)金属基材付薄膜金属箔
金属基材付薄膜金属箔200は、図2Aに示すように、薄膜金属箔21と、剥離層22と、金属基材23と、反射低減層24と、を備える。薄膜金属箔21は、第一の主面T21及び第二の主面B21を有する。剥離層22及び金属基材23は、この順で第一の主面T21上に設けられている。反射低減層24は、第二の主面B21上に設けられている。
【0063】
薄膜金属箔21は、例えば、タッチパネルセンサー、電磁波吸収シート、又は車載用アンテナ、プリント配線板等の電極材料として好適に用いられる金属箔である。薄膜金属箔21は、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム及び銀からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料製であることが好ましく、特に、銅が主成分であることが好ましい。
【0064】
薄膜金属箔21の第一の主面T21上には剥離層22が設けられ、第二の主面B21上には反射低減層24が形成されている。第一の主面T21と剥離層22との間、及び第二の主面B21と反射低減層24との間に、防錆処理層、シランカップリング処理層等が形成されていてもよい。
【0065】
剥離層22は、主に、金属基材付薄膜金属箔200から金属基材23を剥離しやすくする。剥離層22は、第一の主面T22及び第二の主面B22を有し、薄膜金属箔21の第一の主面T21の全面を覆っている。剥離層22は、例えば、ニッケル、モリブデン、クロム、鉄、チタン、タングステン、リンの単数又は複数からなる合金や酸化物から形成することができる。剥離層22は導通性を有し、剥離層22上に電解めっきを用いて薄膜金属箔21を形成できる。剥離層22の第一の主面T22側は、主として合金からなり、第二の主面B22側は、主として酸化物からなる剥離層であることが好ましい。これによって、金属基材23は、金属基材付薄膜金属箔200より剥離層22と共に剥離可能となり、剥離層22が薄膜金属箔21から剥離可能となる。
【0066】
金属基材23は、厚みが薄いために機械的強度が低い薄膜金属箔21の補強材(キャリア)として機能する。金属基材23は、第一の主面T23及び第二の主面B23を有し、剥離層22の第一の主面T22の全面を覆っている。金属基材23は、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、モリブデン、白金、金及びパラジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の材料製であることが好ましい。金属基材23は、コストの観点から、銅製であることが好ましい。銅を用いた金属基材23としては、例えば、電解銅箔、電解銅合金箔、圧延銅箔、圧延銅合金箔等を用いることができる。
【0067】
反射低減層24として、本実施形態の光学フィルム積層体100を使用することができる。反射低減層24は、図3Bに示す透視型電極素材500において、第一の反射低減パターン層51A及び第二の反射低減パターン層51Bの材料である。
【0068】
本実施形態の光学フィルム積層体100は表面抵抗値が1.0×1011Ω/□以上であるため、金属基材付薄膜金属箔200を用いてタッチパネルディスプレイを作製することにより、静電容量値を正確に測定することができ、出荷検査時の静電容量値測定エラーの発生や、タッチパネル操作時の誤作動が生じにくいタッチパネルディスプレイが得られる。また本実施形態の光学フィルム積層体100は、光反射率が低く、かつ、ニュートラルな色味であることから、金属基材付薄膜金属箔200を用いてタッチパネルディスプレイを作製することにより、その視認性を向上できると共に、暗所においても特定色の反射を抑制することができる。
【0069】
(ii)金属張透明基材材料
金属張透明基材材料300は、図2Bに示すように、透明基材31と、第一の透明接着層32Aと、第一の金属基材付薄膜金属箔200Aと、第二の透明接着層32Bと、第二の金属基材付薄膜金属箔200Bとを備える。透明基材31は、第一の主面T31及び第二の主面B31を有する。透明基材31の第一の主面T31上には、第一の透明接着層32A、及び第一の金属基材付薄膜金属箔200Aがこの順で積層されている。透明基材31の第二の主面B31上には、第二の透明接着層32B、及び第二の金属基材付薄膜金属箔200Bがこの順で積層されている。すなわち金属張透明基材材料300は、透明基材31の両面に、第一の透明接着層32A又は第二の透明接着層32Bを介して、図2Aに示す金属基材付薄膜金属箔200を貼り付けることで形成される。そのため、第一の金属基材付薄膜金属箔200A及び第二の金属基材付薄膜金属箔200Bは、図2Aに示す金属基材付薄膜金属箔200と同じである。また金属張透明基材材料300は、第一の反射低減層24Aとして光学フィルム積層体100を含み、第二の反射低減層24Bとして光学フィルム積層体100を含む。
【0070】
透明基材31は、シート状(フィルム状)である。透明基材31を構成する材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、又はポリメチルメタクリレート(PMMA)等の透明樹脂を用いることができる。透明基材31は、テトラブロモビスフェノールA等の添加型、反応型の難燃剤を含有してもよい。透明基材31は、シクロオレフィンやフィルム作成時に強く延伸させて結晶性を高めることで複屈折率を高めたポリエステルを含む透明樹脂製であってもよい。
【0071】
第一の透明接着層32Aは、第一の金属基材付薄膜金属箔200Aを透明基材31の第一の主面T31上に固定している。第二の透明接着層32Bは、第二の金属基材付薄膜金属箔200Bを透明基材31の第二の主面B31上に固定している。第一の透明接着層32Aと、第二の透明接着層32Bとは、同一の構成であってもよいし、互いに異なる構成であってもよい。第一の透明接着層32A及び第二の透明接着層32Bは、透明接着剤の硬化物である。透明接着剤を構成する材質としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂又はこれらの混合樹脂を含むことが好ましい。特にアクリル樹脂、ウレタン樹脂又はこれら混合樹脂は、透明性に優れ、光学的にも有用である。
【0072】
本実施形態の光学フィルム積層体100は表面抵抗値が1.0×1011Ω/□以上であるため、金属張透明基材材料300を用いてタッチパネルディスプレイを作製することにより、静電容量値を正確に測定することができ、出荷検査時の静電容量値測定エラーの発生や、タッチパネル操作時の誤作動が生じにくいタッチパネルディスプレイが得られる。また本実施形態の光学フィルム積層体100は、光反射率が低く、かつ、ニュートラルな色味であることから、金属張透明基材材料300を用いてタッチパネルディスプレイを作製することにより、その視認性を向上できると共に、暗所においても特定色の反射を抑制することができる。
【0073】
(iii)透視型電極用積層板
透視型電極用積層板400は、金属張透明基材材料300から第一の金属基材23A、第一の剥離層22A、第二の金属基材23B、及び第二の剥離層22Bが剥離されることで形成される。そのため透視型電極用積層板400は、図3Aに示すように、透明基材31と、第一の透明接着層32Aと、第一の反射低減層24Aと、第一の薄膜金属箔21Aと、第二の透明接着層32Bと、第二の反射低減層24Bと、第二の薄膜金属箔21Bとを備える。透明基材31の第一の主面T31上には、第一の透明接着層32A、第一の反射低減層24A、及び第一の薄膜金属箔21Aがこの順で積層されている。透明基材31の第二の主面B31上には、第二の透明接着層32B、第二の反射低減層24B、及び第二の薄膜金属箔21Bがこの順で積層されている。そのため、透視型電極用積層板400は、第一の反射低減層24Aとして光学フィルム積層体100を含み、第二の反射低減層24Bとして光学フィルム積層体100を含む。
【0074】
本実施形態の光学フィルム積層体100は表面抵抗値が1.0×1011Ω/□以上であるため、透視型電極用積層板400を用いてタッチパネルディスプレイを作製することにより、静電容量値を正確に測定することができ、出荷検査時の静電容量値測定エラーの発生や、タッチパネル操作時の誤作動が生じにくいタッチパネルディスプレイが得られる。また本実施形態の光学フィルム積層体100は、光反射率が低く、かつ、ニュートラルな色味であることから、透視型電極用積層板400を用いてタッチパネルディスプレイを作製することにより、その視認性を向上できると共に、暗所においても特定色の反射を抑制することができる。
【0075】
(iv)透視型電極素材
透視型電極素材500は、図3Bに示すように、透明基材31と、第一の透明接着層32Aと、第一の反射低減パターン層51Aと、第一の配線パターン層52Aと、第二の透明接着層32Bと、第二の反射低減パターン層51Bと、第二の配線パターン層52Bとを備える。透明基材31の第一の主面T31上には、第一の透明接着層32A、第一の反射低減パターン層51A、及び第一の配線パターン層52Aがこの順で積層されている。また透明基材31の第二の主面B31上には、第二の透明接着層32B、第二の反射低減パターン層51B、及び第二の配線パターン層52Bがこの順で積層されている。透視型電極素材500の全光線透過率が上記範囲内であれば、透視型電極素材500をタッチパネルセンサー等に好適に用いることができる。
【0076】
第一の配線パターン層52Aは、フォトエッチング法により第一の薄膜金属箔21Aの一部が除去されて、第一の薄膜金属箔21Aの一部に第一の開口部A50Aとなる隙間が形成された電気回路である。第二の配線パターン層52Bは、フォトエッチング法により第二の薄膜金属箔21Bの一部が除去されて、第二の薄膜金属箔21Bの一部に第二の開口部A50Bとなる隙間が形成された電気回路である。第一の配線パターン層52A及び第二の配線パターン層52Bの各パターン形状は、透視型電極素材500の用途等に応じて適宜調整すればよく、例えば、メッシュ(格子)形状、平行細線パターン形状、櫛刃形状等が挙げられる。図3Bでは、第一の開口部A50Aでは、第一の反射低減層24Aの一部が除去されており、また第二の開口部A50Bでは、第二の反射低減層24Bの一部が除去されている。そのため、透視型電極素材500は、図3Aに示す透視型電極用積層板400から、第一の薄膜金属箔21A及び第一の反射低減層24Aの一部が除去されると共に、第二の薄膜金属箔21B及び第二の反射低減層24Bの一部が除去されることで、形成される。そのため、透視型電極素材500は、第一の反射低減パターン層51Aとして光学フィルム積層体100を含み、第二の反射低減パターン層51Bとして光学フィルム積層体100を含む。
【0077】
本実施形態の光学フィルム積層体100は表面抵抗値が1.0×1011Ω/□以上であるため、透視型電極素材500を用いてタッチパネルディスプレイを作製することにより、静電容量値を正確に測定することができ、出荷検査時の静電容量値測定エラーの発生や、タッチパネル操作時の誤作動が生じにくいタッチパネルディスプレイが得られる。また本実施形態の積層体100は、光反射率が低く、かつ、ニュートラルな色味であることから、透視型電極素材500を用いてタッチパネルディスプレイを作製することにより、その視認性を向上できると共に、暗所においても特定色の反射を抑制することができる。
【0078】
(v)デバイス
デバイス600は、投影型静電容量方式の1種である相互容量方式のタッチパネルディスプレイである。デバイス600は、図3Cに示すように、透視型電極素材500と、制御回路61と、カバー62と、画像表示装置63と、を備える。
【0079】
制御回路61は、第一の配線パターン層52A及び第二の配線パターン層52Bと電気的に接続されている。
【0080】
カバー62は、透視型電極素材500の第一の配線パターン層52A側の面に対向して取り付けられている。なお、図3Cにおいて、第一の透明接着層32A及び第二の透明接着層32Bは省略している。
【0081】
画像表示装置63は、透視型電極素材500の第二の配線パターン層52B側の面に対向して取り付けられている。画像表示装置63は、例えば、液晶表示パネル、プラズマ画像表示パネル、電界発光(Electro Luminescence)パネル、電子ペーパー、又はブラウン管等を用いることができる。
【0082】
デバイス600において、例えば、第一の配線パターン層52Aは受信電極として、第二の配線パターン層52Bは送信電極として機能する。すなわち、デバイス600は、カバー62の表面に指示物を近づけると、受信電極及び送信電極との交点に形成されるコンデンサの静電容量が変化し、この静電容量の変化を制御回路61が検知することで、指示物を近づけた位置を特定することができる。指示物としては、例えば、ユーザーの指先、スタイラス、又は指示棒等の導電体が挙げられる。
【0083】
本実施形態のデバイス600は、第一の反射低減パターン層51Aとして光学フィルム積層体100を含み、第二の反射低減パターン層51Bとして光学フィルム積層体100を含む。本実施形態の光学フィルム積層体100は表面抵抗値が1.0×1011Ω/□以上であるため、デバイス600では、静電容量の変化を制御回路61で正確に検知することができる。また本実施形態の光学フィルム積層体100は、光反射率が低く、かつ、ニュートラルな色味であることから、デバイス600は、視認性に優れ、かつ、暗所における特定色の反射が抑制される。そのため本実施形態のデバイス600は、例えば、車載用のナビゲーションシステムのタッチパネルディスプレイに適用することが好適である。
【0084】
本実施形態のデバイス600の検出方式は相互容量方式であるが、本発明はこれに限定されず、自己容量方式の検出方式であってもよいし、自己容量方式と相互容量方式とを組み合わせた検出方式であってもよい。
【0085】
(vi)その他の用途について
上述の通り、本実施形態の積層体100はタッチパネルディスプレイに適用することが好適であるが、これに限定されない。例えば、光学フィルム積層体100は、携帯情報端末、ノートパソコン、テレビ等のディスプレイに適用してもよい。また積層体100は、タッチパネルディスプレイの内部に適用することに限定されず、ディスプレイの表面に貼り付けても良い。その場合、ディスプレイと光学フィルム積層体100とは公知の接着剤によって貼り付けることができる。
【実施例
【0086】
(実施例1~25、比較例1~10)
TAC(トリアセチルセルロース)製の透明基材上に、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層をこの順で積層することにより、実施例1~25、比較例1~10の光学フィルム積層体を作製した。ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層は、各々、表1~4に示す成分を表1~に示す割合で含む組成物の硬化物である。なお、表1~4に示す成分の詳細は以下の通りである。またハードコート層、中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層を作製する際には、以下の光重合開始剤を使用した。
・(メタ)アクリレート1:A-9570W(新中村化学工業(株)製)
・(メタ)アクリレート2:HC-301(大日精化工業(株)製)
・(メタ)アクリレート3:オプスターKZ(荒川化学工業(株)製)
・フッ素アクリレート:ビスコート4F(大阪有機化学工業(株)製)
・フルオレン系アクリレート:OGSOL EA-0250P(大阪ガスケミカル製)
・光重合開始剤:Omnirad184(IGM Resins B.V 製)
・中空シリカ:スルーリア4320(日揮触媒化成製、平均粒子径60nm)
・チタニア:ND176(テイカ社製)
・チタニア2:TYT90-06(東洋インキ社製)
・ジルコニア1:ZRDMA20WT%-G22(CIKナノテック製)
・ジルコニア2:TYZ68-04(東洋インキ社製)
・ITOナノ粒子:ITOナノ粒子トルエン分散液10wt%(アズワン製、平均粒子径20nm)。
【0087】
(評価)
実施例1~25、比較例1~10の光学フィルム積層体について、全光線透過率、ヘイズ(混濁)、視感反射率、反射色度、耐擦傷性、表面抵抗値を評価した。各評価の詳細は以下の通りである。
【0088】
(1)全光線透過率
ヘーズメーター(日本電色工業(株)製、品番NDH7000SP2)を用いて、実施例1~25、比較例1~10の光学フィルム積層体の、JIS K 7361-1:1997で規定される全光線透過率を測定した。その結果を下記の表1~4に示す。
【0089】
(2)ヘイズ
ヘーズメーター(日本電色工業(株)製、品番NDH7000SP2)を用いて、実施例1~25、比較例1~10の光学フィルム積層体の、JIS K 7361-1:1997で規定されるヘイズを測定した。その結果を下記の表1~4に示す。
【0090】
(3)視感反射率
透明基材の裏面を黒色マジックインキで塗装した上で黒色のビニールテープ(日東電工、No.21)を張り付けた状態で、分光測色計(コニカミノルタジャパン(株)製、品番CM-3600d)を用いて、C光源、10°視野、測定径4mmΦ、SCIの条件で、実施例1~25、比較例1~10の光学フィルム積層体の視感反射率を測定した。その結果を下記の表1~4に示す。
【0091】
(4)反射色度
透明基材の裏面を黒色マジックインキで塗装した上で黒色のビニールテープ(日東電工、No.21)を張り付けた状態で、分光測色計(コニカミノルタジャパン(株)製、品番CM-3600d)を用いて、C光源、10°視野、測定径4mmΦ、SCIの条件で、実施例1~25、比較例1~10の光学フィルム積層体の反射色度(a,b)を測定した。そして、以下の基準で各光学フィルム積層体の色味(ニュートラル性)を評価した。その結果を下記の表1~に示す。
【0092】
A:反射色度aが-5以上2以下であり、かつ、反射色度bが-5以上5以下である。
B:反射色度aが-10以上-5未満又は2よりも大きく5以下であり、或いは、反射色度bが-10以上5未満又は5よりも大きく10以下である。
C:反射色度aが-10未満又は5を超えており、或いは、反射色度bが-10未満又は10を超えている。
【0093】
(5)耐擦傷性
表面性測定機(Type14DR 新東科学株式会社製)を用いて、実施例1~25、比較例1~10の光学フィルム積層体の表面に、スチールウールを、250g/cmの圧力をかけながら、速度3000mm/minの条件で10回往復した後、キズの有無について目視確認して、以下の基準で評価をした。スチールウールは#0000(日本スチールウール株式会社製)を使用した。その結果を下記の表1~4に示す。
【0094】
A:傷が0~5本。
B:傷が5~20本。
C:傷が20本以上。
【0095】
(6)表面抵抗値
高抵抗率計((株)三菱化学アナリテック製の商品名ハイレスタIPMCP-HT260)を用いて、印加電圧1000Vで、プローブを反射防止層側に接触させて、実施例1~25、比較例1~10の光学フィルム積層体の表面抵抗値を測定した。なお、高抵抗率計の測定レンジが1×10~1×1012Ω/□であるため、表面抵抗値が1×1012Ω/□を超える場合には、1.0×1013Ω/□と記載とした。その結果を下記の表1~4に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【符号の説明】
【0100】
1 透明基材
2 中屈折率層
3 高屈折率層
4 低屈折率層
5 ハードコート層
6 反射防止層
100 光学フィルム積層体
図1
図2
図3