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特許7515139期限切れ在庫情報提供方法、システム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】期限切れ在庫情報提供方法、システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/087 20230101AFI20240705BHJP
【FI】
G06Q10/087
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020104211
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021196985
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】500114069
【氏名又は名称】株式会社シノプス
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南谷 洋志
【審査官】平井 嗣人
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-325872(JP,A)
【文献】特開2020-052742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のプロセッサが実行する方法であって、
(a)棚卸時の在庫商品に付されている商品を識別するための商品コード及び棚卸時に計数した在庫数を含む棚卸データを受け付けるステップと、
(b)入荷商品を識別するための商品コード、入荷日及び入荷数を含む入荷履歴データを取得するステップと、
(c)前記入荷日から期限を算出するための商品期限データを取得するステップと、
(d)前記棚卸データ、前記入荷履歴データ及び前記商品期限データに基づき、前記在庫商品に期限切れ商品が存在するか否かを判定するステップと、
(e)前記在庫商品に期限切れ商品が存在すると判定した場合に、期限切れ商品に関する情報を提供するステップと、
を含む、期限切れ在庫情報提供方法。
【請求項2】
前記方法は、
(d1)前記棚卸データの前記在庫数を、前記入荷履歴データの前記入荷数に対して前記入荷日の新しい順で対応付けし、前記在庫数に対応する第1最古入荷日を特定するステップと、
(d2)特定された前記第1最古入荷日に基づき前記在庫商品の最古推定期限を算出するステップと、
(d3)前記最古推定期限が比較基準時よりも過去である場合には、前記在庫商品に期限切れ商品が存在すると判定するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、(d4)前記特定された第1最古入荷日よりも更に、少なくとも1回以上の過去入荷分を加味した第2最古入荷日を特定するステップを含み、
前記(d2)において、前記(d4)で特定された前記第2最古入荷日に基づき前記在庫商品の最古推定期限を算出する、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記期限は、消費期限、賞味期限、売場からの撤去期限、及び値引き開始期限のうちの少なくともいずれか1つを含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記棚卸データは、前記在庫商品の棚位置を表す棚位置情報を含み、
前記(e)において、前記期限切れ商品に対応する前記棚位置情報を提供する、請求項1~4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、(f)前記在庫商品における期限の印字位置に関する期限印字データを取得するステップを含み、
前記(e)において、前記期限切れ商品に対応する前記期限の印字位置に関する情報を提供する、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、
(g)前記(e)における提供の後に、前記期限切れ商品と判定された商品についての実期限を受け付けるステップと、
(h)受け付けた前記実期限毎に、期限切れであるか否かを含む期限に関する情報を提供するステップと、
を含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、
(g)前記(e)における提供の後に、前記期限切れ商品についての実期限及び実在庫数を受け付けるステップと、
(i)返品により得らえる在庫商品の単位数量当たりの返金額を算出するための返金データを取得するステップと、
(j)前記実期限が期限切れである在庫商品の前記実在庫と前記返金額とに基づき、全商品の返金合計金額、又は、前記返金合計金額に所定数を掛けた金額の少なくともいずれか一つを提供するステップと、
を含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の方法を実行する1又は複数のプロセッサを備える、期限切れ在庫情報提供システム。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の方法を1又は複数のプロセッサに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、期限切れ在庫情報提供方法、システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、コンビニエンスストア等の多くの小売業者の店舗においてPOS(Point of Sales)システムが普及しており、特許文献1に記載のシステムのように、収集された商品の売上データは様々に活用されている。
【0003】
コンビニエンスストアで取り扱う商品のうちの大半の商品は、メーカーとの連携によって実商品毎に賞味期限などの期限がシステムにおいて管理されている。このように期限が実商品毎に管理されている場合には、販売時にレジで商品コードがスキャンされることによって、当該商品が期限切れであるかをシステムが判断でき、期限切れ商品の販売を阻止することがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6275078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、コンビニエンスストア以外の多くの小売業者(例えば、スーパーやドラッグストア等)の店舗では、コンビニエンスストアのような実商品毎の期限の管理が行われていないことが大半である。よって、期限切れ商品を販売しないように、人手チェックによって可能な限りの努力がなされているが、多大な労力が必要であるうえ、人手不足により十分とはいえない。
【0006】
期限切れチェック作業ではないが、正確な在庫数の把握のために、定期的に棚卸が実施される。例えば在庫数が約10万個であると仮定すれば、10万個の在庫数の計数には約80人時間かかる。80人時間は、10人でやれば8時間であり、一晩で完了する。ここで、棚卸の計数時に賞味期限チェックも合わせて実施することが好ましいと考えられるが、賞味期限チェックは時間がかかる。発明者らの実験によれば、在庫数の計数と共に期限チェックを実施すると、計数のみを行う通常の棚卸に比べて5倍以上の時間が必要となることが分かった。このように、棚卸時に期限チェックを合わせて実施することは、費用及び時間の観点から難しい。したがって、現時点において多大な費用及び時間を掛けずに、在庫商品の期限チェックを実施する有効な手段がない。
【0007】
本開示は、全在庫の期限をチェックしなくても、期限切れ商品を見つけることを可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の期限切れ在庫情報提供方法は、1又は複数のプロセッサが実行する方法であって、(a)棚卸時の在庫商品に付されている商品を識別するための商品コード及び棚卸時に計数した在庫数を含む棚卸データを受け付けるステップと、(b)入荷商品を識別するための商品コード、入荷日及び入荷数を含む入荷履歴データを取得するステップと、(c)前記入荷日から期限を算出するための商品期限データを取得するステップと、(d)前記棚卸データ、前記入荷履歴データ及び前記商品期限データに基づき、前記在庫商品に期限切れ商品が存在するか否かを判定するステップと、(e)前記在庫商品に期限切れ商品が存在すると判定した場合に、期限切れ商品に関する情報を提供するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】在庫情報提供システムを示すブロック図。
図2】システムが実行する、在庫情報を提供する処理を示すフローチャート。
図3】商品Aの製造日、入荷制限、賞味期限、その他の各種期限の関係を示す図。
図4】第1及び第2最古入荷日、最古推定期限の算出に関する説明図。
図5】在庫商品の期限情報確認画面の第1例を示す図。
図6】在庫商品の期限情報確認画面の第2例を示す図。
図7】在庫商品の期限情報確認画面の第3例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の期限切れ在庫情報提供システム1について、図面を参照して説明する。本実施形態では、賞味期限を有する在庫商品を取り扱う、スーパーマーケットなどの小売店舗に利用されるシステムについて、例を挙げて説明する。
【0011】
図1に示すように、在庫情報提供システム1は、棚卸時に計数したデータを用いて期限切れ商品が存在するか否かを判定し、判定結果を提供する。在庫情報提供システム1は、棚卸データ受付部10と、入荷履歴データ取得部11と、商品期限データ取得部12と、期限切れ判定部13と、期限切れ商品情報提供部14と、を有する。これら各部10~14は、図2に示す処理を1又は複数のプロセッサ1aが実行することによって、ソフトウェアとハードウェア資源が協働して実現される。
【0012】
図1に示す棚卸データ受付部10は、棚卸データD1をユーザ又は他のシステムから受け付ける。棚卸データD1は、棚卸時の在庫商品に付されている商品を識別するための商品コード及び棚卸時に計測した在庫数を含む。本実施形態のように棚卸データD1は、在庫商品の棚位置を表す棚位置情報を含んでもよい。商品コード、在庫数及び棚位置情報は、棚卸を実行することで得られ、例えば棚卸支援システムから取得することが挙げられる。図1の例では、棚卸データD1は、商品コードが「商品A」である商品の在庫数が30個であり、「棚位置1」に存在することを示している。なお、商品コードはJANコードが利用されることが多いが、これに限定されず、種々の識別情報を利用可能である。
【0013】
図1に示す入荷履歴データ取得部11は、入荷履歴データD2を取得する。入荷履歴データD2は、入荷商品を識別するための商品コード、入荷日及び入荷数を含む。図1の例では、入荷履歴データD2は、商品コードが「商品A」である商品について、3月1日に10個入荷され、2月1日に10個入荷され、1月1日に10個入荷され、前年の12月1日に10個入荷され、前年の11月1日に10個入荷されたことを示している。入荷履歴データ取得部11は、CSV形式のデータでユーザから入荷履歴データD2を受領してもよいし、他のシステムから入荷履歴データD2を受信してもよい。
【0014】
図1に示す商品期限データ取得部12は、商品期限データD3を取得する。商品期限データD3は、入荷日から期限を算出するためのデータである。本実施形態において期限は、賞味期限、売場から撤去する撤去期限、値引き処理するための値引き開始期限、及び返品期限の4つを用いるが、少なくとも1つの期限を用いれば、期限の種類は種々変更可能である。
【0015】
期限は、消費期限、賞味期限、売場からの撤去期限、及び値引き開始期限のうちの少なくとも1つが含まれていればよい。賞味期限及び消費期限は、メーカーが決定する。撤去期限及び値引き開始期限は、本システム1を利用する小売店が決定する。返品期限は、本システム1を利用する小売店とメーカーとの間の契約で取り決められる。
【0016】
商品期限データD3は、入荷日から各種期限までの日数を直接表すデータでもよいが、本実施形態では、図3に示すように、製造日から賞味期限(又は消費期限)までの日数T1の半分の時点を入荷期限と仮定し、入荷期限までに必ず商品が入荷されているとして、入荷期限から賞味期限(又は消費期限)までの日数T2を、各種期限を算出するために用いている。例えば、図3に示すように、商品Aについての製造日から賞味期限までの日数T1は180日であり、入荷期限から賞味期限までの日数T2は180/2=90日となる。なお、本実施形態では、入荷期限を2分の1ルールとして、入荷期限から賞味期限までの日数を1/2を掛けることで算出しているが、これに限定されない。例えば、入荷期限をいわゆる3分の1ルールとして、2/3を掛けることで算出してもよい。
返品が可能な返金期限から賞味期限までの日数T3は、30日に設定されている。
売場から撤去する撤去期限から賞味期限までの日数T4は、36日に設定されている。
値引き開始期限から賞味期限までの日数T5は、54日に設定されている。
これらの期限の種類及び日数は、例示であり、適宜、変更可能である。
【0017】
図1に示す期限切れ判定部13は、棚卸データD1、入荷履歴データD2及び商品期限データD3に基づき、在庫商品に期限切れ商品が存在するか否かを判定する。判定アルゴリズムは、色々と考えられるが、本実施形態では次のアルゴリズムを用いている。本実施形態の期限切れ判定部13は、次に述べるアルゴリズムを実現するために、第1最古入荷日特定部13aと、最古推定期限算出部13bと、判定部13cと、を有する。特に限定されないが、期限切れ判定部13は、更に、第2最古入荷日特定部13dを有することが好ましい。
【0018】
図1に示す第1最古入荷日特定部13aは、棚卸データD1の在庫数に対応する第1最古入荷日を特定する。第1最古入荷日は、棚卸データD1の在庫数(30個)を、入荷履歴データD2の入荷数に対して入荷日の新しい順で対応付けした場合に、在庫数に対応する入荷日のうち最も古い入荷日を意味する。図1に示す棚卸データD1及び入荷履歴データD2を例として、図4を用いて説明する。図4に示すように、棚卸日時が3月10日であり、商品Aの在庫数が30個であった。そうすると、在庫数(30個)を、入荷日の新しい順に入荷数に対応付けすると、在庫数(30個)は、入荷日が3月1日の入荷数10個と、入荷日が2月1日の入荷数10個と、入荷日が1月1日の入荷数10個とにそれぞれ対応する。1つ以上の入荷日(3月1日、2月1日、1月1日)のうちの最も古い入荷日である1月1日が、第1最古入荷日となる。
【0019】
第2最古入荷日特定部13dは、一部の購入者による先入れ先出し方式を無視する行為がなされた場合であっても、安全マージンを加えるための処理である。図1に示す第2最古入荷日特定部13dは、第1最古入荷日特定部13aが特定した第1最古入荷日よりも更に、少なくとも1回以上の過去入荷分を加味した第2最古入荷日を特定する。図4の例では、第1最古入荷日が1月1日であり、1月1日よりも更に2回の過去入荷分を加味した第2最古入荷日(前年の11月1日)を特定する。図4に示す実施形態では、2回の過去入荷分を加味しているが、少なくとも1回以上の過去入荷分を加味すればよい。更に、本実施形態のように少なくとも2回以上の過去入荷分を加味することが好ましい。上限値は、入荷数に応じて設定可能であるが、多くても5回以内が好ましい。多すぎると期限切れと判定される商品が増えるからである。
【0020】
図1に示すように、第2最古入荷日特定部13dが実装されている構成においては、最古推定期限算出部13bは、第2最古入荷日特定部13dが特定した第2最古入荷日(前年の11月1日)に基づき在庫商品の最古推定期限を算出する。最古推定期限は、入荷履歴データD2及び商品期限データD3によって推定される複数の推定期限(5月3日、5月1日、3月31日、2月29日、1月30日)のうち、最古の期限(1月30日)である。ここでは、最古推定期限として、賞味期限を例示している、これに限定されず、値引き開始期限、撤去期限などの任意の期限を採用可能である。
【0021】
なお、第2最古入荷日特定部13dが実装されていない構成においては、最古推定期限算出部13bは、第1最古入荷日特定部13aが特定した第1最古入荷日に基づき、在庫商品の最古推定期限を算出する。第1最古入荷日(1月1日)に対応する賞味期限の最古推定期限は3月31日となる。
【0022】
図1に示す期限切れ判定部13cは、最古推定期限が比較基準時よりも過去である場合には、在庫商品に期限切れ在庫が存在すると判断する。比較基準日は、棚卸を実行した日付(図4の例では、3月10日)に設定されることが好ましいが、適宜設定可能である。図4の示す例では、最古推定期限(1月30日)は、比較基準時(3月10日)よりも過去であるため、期限切れ判定部13cが商品Aに期限切れ商品が存在すると判定する。
【0023】
図1に示す商品情報提供部14は、期限切れ判定部13が在庫商品に期限切れ商品が存在すると判断した場合に、期限切れ商品に関する情報を提供する。期限切れ商品に関する情報は、それを見た人が実商品の置かれている棚に行って、該当商品を見つけることができるようにするために、期限切れ商品を識別するための情報である。例えば、商品名、メーカー名、外観写真、商品コードなどが挙げられる。これらの情報は、既存のデータベースにアクセスして取得することが考えられる。
【0024】
特に限定されないが、本実施形態では、棚卸データD1に、在庫商品の棚位置を表す棚位置情報が含まれており、商品情報提供部14は、期限切れ商品に対応する棚位置情報を併せて提供する。棚位置情報を見れば、店舗内のどの位置に在庫商品があるかを知ることができるからである。
【0025】
商品情報提供部14が提供した期限切れ商品に関する情報に基づき、実際の在庫商品を探し出し、実際の在庫商品のどの位置に期限が付されているかが分からない状況で、期限を探すには、商品をあらゆる角度から確認する必要があり、手間が生じる。そこで、特に限定されないが、本実施形態のように、在庫商品における期限の印字位置に関する期限印字データを取得する期限印字データ取得部15を有し、商品情報提供部14は、期限切れ商品に対応する期限の印字位置に関する情報を提供するようにしてもよい。期限印字データは、店舗が取り扱う商品毎に、期限の有無および期限の印字位置に関する情報を有する。本実施形態の期限印字データは、商品の外観六面のうち、期限が印字している面を撮影した外観写真と、商品コードと、期限の有無と、が関連付けてある。
【0026】
商品情報提供部14によって期限切れ商品であると推定された情報をユーザが知ることができるが、実商品の期限を見て、頭の中で期限切れであるか否かを計算ミスせずに判断することは、一個あたりの確認時間がかかり煩雑である。
【0027】
そこで、特に限定されないが、図1に示すように、在庫情報提供システム1は、実期限・在庫受付部16と、期限情報提供部17と、を有することが好ましい。
【0028】
実期限・在庫受付部16は、図5に示す在庫商品の期限情報確認画面を提供して、期限切れ商品と判定された商品Aについての実期限及び実在庫数を受け付ける。図5では、ユーザが入力又は変更可能な箇所を四角で示している。商品情報提供部14によって期限切れ商品が存在すると在庫商品(商品A)について、実際に棚にある商品Aの実賞味期限と実個数を確認した結果を、図5に示す画面に入力する。在庫受付部16は、図5に示す画面に入力された内容を受け付ける。期限情報提供部17は、実期限・在庫受付部16が受け付けた実期限毎に、期限切れであるか否かを含む期限に関する情報を提供する。
【0029】
図5は、在庫商品を確認して、実賞味期限と実在庫数を入力した第1例である。図5に示すように、実賞味期限が5月20日である在庫数が10個であり、実賞味期限が5月10日である在庫数が8個であることが入力されると、賞味期限までの日数が71日あり、いずれも期限も到来していないため、期限に関する情報として、期限情報に何も表示しないことを以て期限切れでないことを表示する。また、実賞味期限が5月1日である在庫数が7個であり、実賞味期限が4月20日である在庫数が5個であることが入力されると、いずれも値引き開始期限(54日前)を過ぎているため、「値引き開始期限」を過ぎているとして、期限情報に値引きである旨を表示する。
【0030】
図6は、図5に対応する第2例である。実賞味期限が5月20日、5月10日が入力されると、期限情報に何も表示しないのは図5の例と同じである。実賞味期限が5月1日である在庫数が7個であり、実賞味期限が4月20日である在庫数が3個であることが入力されると、いずれも値引き開始期限(54日前)を過ぎているため、「値引き開始期限」を過ぎているとして、期限情報に値引きである旨を表示する。さらに、実賞味期限が4月14日の在庫数が2個であることが入力されると、撤去期限(36日前)が過ぎているが、返品期限(30日前)が到来していないので、撤去すべきことと返品可能であることを表示する。
【0031】
図7は、図5及び図6に対応する第3例である。実賞味期限が5月20日、5月10日が入力されると、期限情報に何も表示しないのは図5の例と同じである。実賞味期限が5月1日、4月20日が入力されると、期限情報に値引きであることを表示することは、図5の例と同じである。実賞味期限が4月14日であることが入力されると、撤去すべきことと返品可能であることを表示するのは図6の例と同じである。実賞味期限が3月5日の在庫数1個を入力すると、賞味期限切れであるので、撤去すべきことと返品不可であることが期限に関する情報として表示される。
【0032】
<ドラッグストアへの適用>
上記では、スーパーマーケット等の小売店で利用する前提で説明しているが、本システム1は、年単位で消費期限が設定される薬を取り扱うドラッグストアに適用可能である。薬の場合は食品とは異なり、消費期限が過ぎれば、メーカーに返品して返金が可能である。そこで、特に限定されないが、返金可能であることを考慮して、図1に示すように、返金データ取得部18と、金額提供部19とを設けることが好ましい。
【0033】
図1に示す返金データ取得部18は、期限切れ商品の返品により得られる在庫商品の単位数量当たりの返金額を算出するための返金データを取得する。返金データは、例えば、商品Aの1個当たりの返金額などを示す。メーカーの希望小売価格に基づく値や、仕入れ額などが挙げられる。
【0034】
図1に示す金額提供部19は、実期限が期限切れである在庫商品の実在庫と返金額とに基づき、全商品の返金合計金額、又は、返金合計金額に所定係数を掛けた金額の少なくともいずれか一つを提供する。本実施形態では、全商品の返金合計額と、返金合計金額に所定係数を掛けた金額の両方を提供する。所定係数は、0.0を超え1.0未満の数であり、例えば、0.1等が考えられるが、契約に応じて適宜設定される。返金合計金額に所定係数を掛けた金額は、本システムを用いるためのライセンスフィーなどとしてもよい。
【0035】
<期限切れ在庫情報提供方法>
図2を用いて、在庫情報提供システム1が実行する方法を、図2を用いて説明する。
【0036】
図2に示すステップST1において、棚卸データ受付部10は、棚卸時の在庫商品に付されている商品を識別するための商品コード及び棚卸時に計数した在庫数を含む棚卸データD1を受け付ける。次のステップST2において、入荷履歴データ取得部11は、入荷商品を識別するための商品コード、入荷日及び入荷数を含む入荷履歴データD2を取得する。次のステップST3において、商品期限データ取得部12は、入荷日から期限を算出するための商品期限データD3を取得する。なお、ステップST1~3は、順不同である。
【0037】
ステップST4~7を実行することによって、期限切れ判定部13は、棚卸データD1、入荷履歴データD2及び商品期限データD3に基づき、在庫商品に期限切れ商品が存在するか否かを判定する。具体的には、ステップST4において、第1最古入荷日特定部13aは、棚卸データD1の在庫数を、入荷履歴データD2の入荷数に対して入荷日の新しい順で対応付けし、在庫数に対応する第1最古入荷日を特定する。次のステップST5において、第2最古入荷日特定部13dは、特定された第1最古入荷日よりも更に、少なくとも1回以上の過去入荷分を加味した第2最古入荷日を特定する。次のステップST6において、最古推定期限算出部13bは、第2最古入荷日に基づき在庫商品の最古推定期限を算出する。次のステップST7において、判定部13cは、最古推定期限が比較基準時よりも過去である場合には、在庫商品に期限切れ商品が存在すると判定する。最古推定期限が比較基準時以降である場合は、在庫商品に期限切れ商品が存在しないと判定する。
【0038】
次のステップST8において、商品情報提供部14は、期限切れ判定部13が在庫商品に期限切れ商品が存在すると判定した場合に、期限切れ商品に関する情報を提供する。併せて棚位置情報を提供する。
【0039】
次のステップST9において、在庫受付部16は、期限切れ商品についての実期限及び実在庫数を受け付ける。次のステップST10において、期限情報提供部17は、受け付けた実期限毎に、期限切れであるか否かを含む期限に関する情報を提供する。
【0040】
特に限定されず、図2に図示しないが、次のステップにおいて、金額提供部19は、実期限が期限切れである在庫商品の実在庫と返金額とに基づき、全商品の返金合計金額、又は、返金合計金額に所定計数を掛けた金額の少なくともいずれか一つを提供してもよい。
【0041】
以上のように、本実施形態の期限切れ在庫情報提供方法は、1又は複数のプロセッサが実行する方法であって、(a)棚卸時の在庫商品に付されている商品を識別するための商品コード及び棚卸時に計数した在庫数を含む棚卸データD1を受け付けるステップと、(b)入荷商品を識別するための商品コード、入荷日及び入荷数を含む入荷履歴データD2を取得するステップと、(c)入荷日から期限を算出するための商品期限データD3を取得するステップと、(d)棚卸データD1、入荷履歴データD2及び商品期限データD3に基づき、在庫商品に期限切れ商品が存在するか否かを判定するステップと、(e)在庫商品に期限切れ商品が存在すると判定した場合に、期限切れ商品に関する情報を提供するステップと、を含む。
【0042】
本実施形態の期限切れ在庫情報提供システム1は、棚卸時の在庫商品に付されている商品を識別するための商品コード及び棚卸時に計数した在庫数を含む棚卸データD1を受け付ける棚卸データ受付部10と、入荷商品を識別するための商品コード、入荷日及び入荷数を含む入荷履歴データD2を取得する入荷履歴データ取得部11と、入荷日から期限を算出するための商品期限データD3を取得する商品期限データ取得部12と、棚卸データD1、入荷履歴データD2及び商品期限データD3に基づき、在庫商品に期限切れ商品が存在するか否かを判定する期限切れ判定部13と、在庫商品に期限切れ商品が存在すると判定した場合に、期限切れ商品に関する情報を提供する商品情報提供部14と、を備える。
【0043】
この方法又はシステム1によれば、棚卸時の在庫商品の商品コードと計数した在庫数をシステム1に入力するだけで、期限切れ商品が存在する場合に期限切れ商品に関する情報が提供されるので、棚卸時に在庫商品の期限を逐次チェックする多大な労力を消費しなくても、期限切れ商品の存在を知ることができる。全在庫の期限をチェックせずにシステムから提供された期限切れ商品のみの期限をチェックすればよく、チェック労力を著しく低減させることが可能となる。その結果、期限切れ商品が販売されることを回避可能となる。
【0044】
特に限定されないが、本実施形態のように、方法は、(d1)棚卸データD1の在庫数を、入荷履歴データD2の入荷数に対して入荷日の新しい順で対応付けし、在庫数に対応する第1最古入荷日を特定するステップと、(d2)特定された第1最古入荷日に基づき在庫商品の最古推定期限を算出するステップと、(d3)最古推定期限が比較基準時よりも過去である場合には、在庫商品に期限切れ商品が存在すると判定するステップと、を含むことが好ましい。
【0045】
この方法によれば、商品が先入れ先出しの順序に販売されたとして、在庫商品の最古推定期限を特定するので、小売りの販売事情に適したアルゴリズムにより、期限切れ在庫の有無を判定可能となる。
【0046】
特に限定されないが、本実施形態のように、方法は、(d4)特定された第1最古入荷日よりも更に、少なくとも1回以上の過去入荷分を加味した第2最古入荷日を特定するステップを含み、(d2)において、(d4)で特定された第2最古入荷日に基づき在庫商品の最古推定期限を算出することが好ましい。
【0047】
販売棚においては古い商品が手前に配置されるが、購入者がわざわざ棚奥に手を伸ばして棚奥から新しい商品を購入する可能性がある。この方法によれば、一部の購入者による先入れ先出し方式を無視する行為がなされた場合であっても、安全マージンを加えて、期限切れ在庫の有無を判定でき、判定精度を向上させることが可能となる。
【0048】
特に限定されないが、本実施形態のように、期限は、消費期限、賞味期限、売場からの撤去期限、及び値引き開始期限のうちの少なくともいずれか1つを含むことが好ましい。小売業の適切な運用を進めるうえで、好ましい。
【0049】
特に限定されないが、本実施形態のように、棚卸データD1は、在庫商品の棚位置を表す棚位置情報を含み、(e)において、期限切れ商品に対応する棚位置情報を提供することが好ましい。
【0050】
期限切れ商品に関する情報に関連して、期限切れ商品に対応する棚位置情報も提供するので、棚位置情報を見れば、期限切れ商品と判断された在庫商品の置き場所がすぐにわかるので、在庫商品の実物の期限チェックを容易に実施可能となる。
【0051】
特に限定されないが、本実施形態のように、方法は、(f)在庫商品における期限の印字位置に関する期限印字データ取得部15を取得するステップを含み、(e)において、期限切れ商品に対応する期限の印字位置に関する情報を提供することが好ましい。
【0052】
この構成によれば、期限切れ商品に関する情報が提供されるので、期限切れ商品と判断された在庫商品の実物の期限チェックを容易に実施可能となる。
【0053】
特に限定されないが、本実施形態のように、方法は、(g)(e)における提供の後に、期限切れ商品と判定された商品についての実期限を受け付けるステップと、(h)受け付けた実期限毎に、期限切れであるか否かを含む期限に関する情報を提供するステップと、を含むことが好ましい。
【0054】
この構成によれば、期限切れ商品と判断された在庫商品を確認して、実期限と実在庫数を入力するだけで、実期限毎に期限切れであるか否かを含む情報が提供されるので、実期限を見て暗算を行い期限到来か否かを判断しなくてもよく、例えば期限切れでないので棚に戻すか、棚から撤去するか、メーカーへ返品可能か、値引きシールを貼付するか等の次にすべき処置を容易理解できる。
【0055】
特に限定されないが、本実施形態のように、方法は、(g)(e)における提供の後に、期限切れ商品についての実期限及び実在庫数を受け付けるステップと、(i)返品により得らえる在庫商品の単位数量当たりの返金額を算出するための返金データを取得するステップと、(j)実期限が期限切れである在庫商品の実在庫と返金額とに基づき、全商品の返金合計金額、又は、返金合計金額に所定計数を掛けた金額の少なくともいずれか一つを提供するステップと、を含むことが好ましい。
【0056】
この構成によれば、返品によって得られる返金合計金額、又は、合計金額に所定係数を掛けた金額を提供するので、本来見つけられずに得られるはずでなかった返金合計金額を店舗がメーカーから受領する条件として、合計金額に所定係数を掛けた金額を、本システムを利用するロイヤリティとして受領する、新たなビジネスに必須となるシステムを提供可能となる。
【0057】
本実施形態の在庫情報提供システム1は、上記方法を実行する1又は複数のプロセッサを備える。
【0058】
本実施形態のプログラムは、上記方法を1又は複数のプロセッサに実行させるプログラムである。また、本実施形態のコンピュータに読み取り可能な非一時的記録媒体は、上記プログラムを記憶している。
【0059】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0060】
例えば、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現できる。特許請求の範囲、明細書、および図面中のフローに関して、便宜上「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実行することが必須であることを意味するものではない。
【0061】
図1に示す各部10~19は、所定プログラムを1又は複数のプロセッサで実行することで実現しているが、各部を専用メモリや専用回路で構成してもよい。上記実施形態のシステム1は、各部10~19を分散させて、複数のコンピュータやクラウドで実装してもよい。
【0062】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 在庫情報提供システム
10 棚卸データ受付部
11 入荷履歴データ取得部
12 商品期限データ取得部
13 期限切れ判定部
13a 第1最古入荷日特定部
13b 最古推定期限算出部
13c 判定部
13d 第2最古入荷日特定部
14 商品情報提供部
15 期限印字データ取得部
16 実期限・在庫受付部
17 期限情報提供部
18 返金データ取得部
19 金額提供部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7