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特許7515151二酸化炭素の回収装置及び二酸化炭素の回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】二酸化炭素の回収装置及び二酸化炭素の回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20240705BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20240705BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20240705BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20240705BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240705BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D53/26
B01D53/04
B01D53/14 100
C01B32/50
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020034105
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021133354
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-02-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】523089623
【氏名又は名称】株式会社JCCL
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】星野 友
(72)【発明者】
【氏名】小玉 聡
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/049629(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/014900(WO,A1)
【文献】特開2014-004521(JP,A)
【文献】特表平04-503773(JP,A)
【文献】国際公開第2017/086293(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/00-22、26-28
C01B 32/50
H01M 8/06-0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1供給空間と第1処理空間とを隔てるように配置され、前記第1供給空間に供給される原料ガスに含まれる二酸化炭素を前記原料ガスのうちの二酸化炭素以外の成分を含む夾雑ガスから分離する第1分離部を有し、前記原料ガスに含まれる二酸化炭素の少なくとも一部を取り出して、前記原料ガスよりも前記夾雑ガスに対する二酸化炭素の割合が大きい第1処理ガスを前記第1処理空間から放出する第1処理部と、
前記第1処理部によって放出された前記第1処理ガスが供給される第2供給空間と、第2処理空間とを隔てるように配置され、前記第1処理ガスに含まれる水蒸気を吸着、吸収又は透過のいずれかによって低減する第2分離部を有し、前記第1処理ガスに含まれる水蒸気の少なくとも一部を取り除いて、前記第1処理ガスよりも二酸化炭素の純度が高い第2処理ガスを放出する第2処理部と、
前記第1処理空間内のガスを吸引する吸引部と、を備え、
前記第1分離部は、前記原料ガスに含まれる二酸化炭素を選択的に透過する分離膜を含み、
前記第2処理部は、前記第1処理ガスよりも水蒸気圧が低い再生ガスを前記第2処理空間に供給する再生ガス供給部を更に有する、二酸化炭素の回収装置。
【請求項2】
前記吸引部は、前記第2供給空間を介して、前記第1処理空間内のガスを吸引し、
前記回収装置は、
前記吸引部によって吸引された前記第2処理ガスが供給される第3供給空間と、第3処理空間とを隔てるように配置され、前記第2処理ガスに含まれる水蒸気を吸着、吸収又は透過のいずれかによって低減する第3分離部を有し、前記第2処理ガスに含まれる水蒸気の少なくとも一部を取り除いて、前記第2処理ガスよりも二酸化炭素の純度が高い第3処理ガスを放出する第3処理部と、
前記第3処理ガスを吸引する第2吸引部と、
を更に備える、請求項1に記載の回収装置。
【請求項3】
前記吸引部は、前記第1処理空間と前記第2供給空間との間に設けられており、
前記回収装置は、
前記第2処理ガスを吸引する第2吸引部と、
前記第2吸引部によって吸引された前記第2処理ガスが供給される第3供給空間と、第3処理空間とを隔てるように配置され、前記第2処理ガスに含まれる水蒸気を吸着、吸収又は透過のいずれかによって低減する第3分離部を有し、前記第2処理ガスに含まれる水蒸気の少なくとも一部を取り除いて、前記第2処理ガスよりも二酸化炭素の純度が高い第3処理ガスを放出する第3処理部と、
を更に備える、請求項1に記載の回収装置。
【請求項4】
前記第1処理部は、前記第1処理空間に水蒸気を含む水蒸気含有ガスを供給する水蒸気供給部を更に有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の回収装置。
【請求項5】
前記再生ガスの温度は、前記水蒸気含有ガスの温度よりも低い、請求項に記載の回収装置。
【請求項6】
前記再生ガスは空気である、請求項1~のいずれか一項に記載の回収装置。
【請求項7】
前記第2処理ガスの水蒸気圧は、当該第2処理ガスの飽和水蒸気圧よりも小さい、請求項1~のいずれか一項に記載の回収装置。
【請求項8】
前記第2分離部は、前記第1処理ガスに含まれる水蒸気を選択的に透過する分離膜を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の回収装置。
【請求項9】
第1供給空間と第1処理空間とを隔てるように配置され、原料ガスに含まれる二酸化炭素を前記原料ガスのうちの二酸化炭素以外の成分を含む夾雑ガスから分離する第1分離部を用いて、前記第1供給空間に供給される前記原料ガスに含まれる二酸化炭素の少なくとも一部を取り出すことで、前記原料ガスよりも前記夾雑ガスに対する二酸化炭素の割合が大きい第1処理ガスを前記第1処理空間に生成する第1工程と、
前記第1処理ガスに含まれる水蒸気を吸着、吸収又は透過のいずれかによって低減する第2分離部を用いて、前記第1処理ガスに含まれる水蒸気の少なくとも一部を取り除くことで、前記第1処理ガスよりも二酸化炭素の純度が高い第2処理ガスを生成する第2工程と、
前記第1処理空間内のガスを吸引部により吸引する吸引工程と、を含み、
前記第1分離部は、前記原料ガスに含まれる二酸化炭素を選択的に透過する分離膜を含み、
前記第2工程では、前記第1処理ガスよりも水蒸気圧が低い再生ガスを更に用いて前記第2処理ガスを生成する、二酸化炭素の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素の回収装置及び二酸化炭素の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離する装置が知られている(例えば、特許文献1~3)。特許文献1には、二酸化炭素及び水蒸気を主成分ガスとして含む混合ガスから二酸化炭素と水蒸気とを分離するガス分離装置が開示されている。特許文献2には、二酸化炭素と不活性ガスを主成分とする混合ガスから、二酸化炭素と不活性ガスを個別に分離するガス回収装置が開示されている。特許文献3には、二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離膜と、二酸化炭素が分離されたガス中の水蒸気を除去する水蒸気除去手段とを備えるガス分離システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/086836号
【文献】国際公開第2017/086293号
【文献】特開2017-221864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、夾雑ガスに対する二酸化炭素の割合が上昇したガスを簡便に回収することが可能な二酸化炭素の回収装置及び二酸化炭素の回収方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る二酸化炭素の回収装置は、第1供給空間と第1処理空間とを隔てるように配置され、第1供給空間に供給される原料ガスに含まれる二酸化炭素を吸着、吸収又は透過のいずれかによって原料ガスのうちの二酸化炭素以外の成分を含む夾雑ガスから分離する第1分離部を有し、原料ガスに含まれる二酸化炭素の少なくとも一部を取り出して、原料ガスよりも夾雑ガスに対する二酸化炭素の割合が大きい第1処理ガスを第1処理空間から放出する第1処理部と、第1処理部によって放出された第1処理ガスが供給される第2供給空間と、第2処理空間とを隔てるように配置され、第1処理ガスに含まれる水蒸気を吸着、吸収又は透過のいずれかによって低減する第2分離部を有し、第1処理ガスに含まれる水蒸気の少なくとも一部を取り除いて、第1処理ガスよりも二酸化炭素の純度が高い第2処理ガスを放出する第2処理部と、を備える。第2処理部は、第1処理ガスよりも水蒸気圧が低い再生ガスを第2処理空間に供給する再生ガス供給部を更に有する。
【0006】
この二酸化炭素の回収装置では、原料ガスに含まれる二酸化炭素の夾雑ガスに対する割合が上昇した第1処理ガスが第1処理部から第2処理部の第2供給空間に送り出される。そして、第2処理部において、第2供給空間とは第2分離部によって隔てられる第2処理空間に第1処理ガスよりも水蒸気圧が低い再生ガスが供給される。これにより、第2分離部によって第1処理ガス内から水蒸気が除去されつつ、第2処理ガスの水蒸気圧が低下する。水蒸気の少なくとも一部が除去された第2処理ガスを吸引するための装置の負荷は、第2処理ガスに含まれる水蒸気の量に依存する。上記の回収装置では、第2処理ガスの水蒸気圧が低下しているので、第2処理ガスを吸引するための装置の要求性能を下げることができる。従って、原料ガスに含まれる二酸化炭素の夾雑ガスに対する割合が上昇したガスを簡便に回収することが可能となる。
【0007】
第1処理部は、第1処理空間に水蒸気を含む水蒸気含有ガスを供給する水蒸気供給部を更に有してもよい。第1分離部は、原料ガスに含まれる二酸化炭素を選択的に透過する分離膜を含んでもよい。この場合、水蒸気含有ガスによって、第1分離部の分離膜による二酸化炭素の透過が促進される。そのため、原料ガスから二酸化炭素を効率的に分離することが可能となる。
【0008】
第1処理部は、第1供給空間に水蒸気を含む水蒸気含有ガスを供給する水蒸気供給部を更に有してもよい。第1分離部は、原料ガスに含まれる二酸化炭素の吸着又は吸収を選択的に行う材料を含んでもよい。この場合、水蒸気含有ガスによって、第1分離部の上記材料に貯留された二酸化炭素の放出が促進される。そのため、原料ガスから二酸化炭素を効率的に分離することが可能となる。
【0009】
再生ガスの温度は、水蒸気含有ガスの温度よりも低くてもよい。この場合、第2処理ガスの温度が再生ガスの温度と同程度まで下げられる。そのため、第2処理ガスを吸引するための装置の要求性能をより低下させることができ、二酸化炭素の夾雑ガスに対する割合が上昇したガスをより簡便に回収することが可能となる。
【0010】
再生ガスは空気であってもよい。この場合、第2処理空間への再生ガスの供給が容易である。
【0011】
第2処理ガスの水蒸気圧は、当該第2処理ガスの飽和水蒸気圧よりも小さくてもよい。この場合、第2処理ガスが飽和水蒸気圧の水蒸気を含む場合に比べて、第2処理ガスを吸引するための装置の要求性能を低下させることが可能となる。
【0012】
上記回収装置は、第1処理空間内のガスを吸引する吸引部を更に備えてもよい。この構成では、第2処理ガスの水蒸気圧が第2処理部において下げられているので、水蒸気圧を低下させない場合に比べて、吸引部の要求性能を低下させることができる。そのため、吸引部を簡素化することが可能となる。
【0013】
第2分離部は、第1処理ガスに含まれる水蒸気を選択的に透過する分離膜を含んでもよい。この場合、第1処理ガス内の水蒸気を簡便に除去することが可能となる。
【0014】
本開示の他の側面に係る二酸化炭素の回収方法は、原料ガスに含まれる二酸化炭素を吸着、吸収又は透過のいずれかによって原料ガスのうちの二酸化炭素以外の成分を含む夾雑ガスから分離する第1分離部を用いて、原料ガスに含まれる二酸化炭素の少なくとも一部を取り出すことで、原料ガスよりも夾雑ガスに対する二酸化炭素の割合が大きい第1処理ガスを生成する第1工程と、第1処理ガスに含まれる水蒸気を吸着、吸収又は透過のいずれかによって低減する第2分離部を用いて、第1処理ガスに含まれる水蒸気の少なくとも一部を取り除くことで、第1処理ガスよりも二酸化炭素の純度が高い第2処理ガスを生成する第2工程とを含む。第2工程では、第1処理ガスよりも水蒸気圧が低い再生ガスを更に用いて第2処理ガスを生成する。
【0015】
この二酸化炭素の回収方法では、第1分離部が用いられて、原料ガスに含まれる二酸化炭素の夾雑ガスに対する割合が上昇した第1処理ガスが生成される。そして、第1処理ガスに含まれる水蒸気を低減する第2分離部と、第1処理ガスよりも水蒸気圧が低い再生ガスとが利用されて第2処理ガスが生成される。水蒸気圧が低い再生ガスを利用することで、第2分離部によって第1処理ガス内から水蒸気を除去しつつ、第2処理ガスの水蒸気圧を下げることができる。水蒸気の少なくとも一部が除去された第2処理ガスを吸引するための装置の負荷は、第2処理ガスに含まれる水蒸気の量に依存する。上記の回収方法では、第2処理ガスの水蒸気圧を下げることができるので、第2処理ガスを吸引するための装置の要求性能を下げることができる。従って、原料ガスに含まれる二酸化炭素の夾雑ガスに対する割合が上昇したガスを簡便に回収することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、夾雑ガスに対する二酸化炭素の割合が上昇したガスを簡便に回収することが可能な二酸化炭素の回収装置及び二酸化炭素の回収方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、二酸化炭素の回収装置の一例を示す模式図である。
図2図2は、二酸化炭素の回収装置の別の例を示す模式図である。
図3図3は、二酸化炭素の回収装置の別の例を示す模式図である。
図4図4は、二酸化炭素の回収装置の別の例を示す模式図である。
図5図5(a)は、実施例における計算対象の二酸化炭素の分離プロセスのフローを示す図である。図5(b)は、実施例での計算の前提条件を示す表である。
図6図6(a)は、モジュール内の供給側及び処理側のガスの圧力と温度と計算結果を示すグラフである。図6(b)は、フラッシュ法と膜分離法との水蒸気濃度の比較結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
[二酸化炭素の回収装置]
図1は、二酸化炭素の回収装置の一例を示す模式図である。図1に示される二酸化炭素の回収装置1は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を回収する装置である。具体的には、回収装置1は、供給されるガス(以下、「原料ガスG0」という。)に含まれる二酸化炭素を分離することで、原料ガスG0よりも二酸化炭素の純度(濃度)が高いガスを生成する。原料ガスG0として、例えば、工場、農業用加温機、自動車等のエンジン、ガスヒートポンプ、ボイラー、燃焼式給湯器、又は発電所等において燃料を燃焼させた後に排出される排ガス、室内又は室外の空気、あるいは、水蒸気により改質された化石燃料が利用される。
【0020】
このような原料ガスには、二酸化炭素と、二酸化炭素以外の成分を含む夾雑ガスとが含まれる。夾雑ガスには、例えば窒素、酸素、又は水素が含まれる。あるいは、原料ガスには、二酸化炭素と水蒸気とに加えて、上記夾雑ガスが含まれる場合がある。以下では、原料ガスに、二酸化炭素及び水蒸気と、二酸化炭素及び水蒸気以外の成分を含む夾雑ガスとが含まれる場合を例に説明し、夾雑ガスに含まれる成分を「夾雑ガス成分」と称する。
【0021】
燃焼排ガスを原料ガスG0として利用する場合に、原料ガスに含まれる二酸化炭素(原料ガス内の二酸化炭素)の濃度は、40%未満であってもよい。一例として、燃焼排ガス内の二酸化炭素の濃度は、3%~30%であってもよく、4%~25%であってもよく、5%~20%であってもよい。回収装置1によって二酸化炭素が分離されて得られるガス(以下、「分離ガスGc」という。)に含まれる二酸化炭素の濃度は、例えば、40%以上であってもよい。一例として、分離ガスGc内の二酸化炭素の濃度は、60%以上であってもよく、70%以上であってもよく、80%以上であってもよい。本開示において、二酸化炭素の濃度は、標準状態(0℃、1気圧)における体積基準の濃度である。回収装置1は、例えば、第1処理部10と、第2処理部30と、吸引部50とを備える。
【0022】
第1処理部10は、原料ガスG0内の二酸化炭素の少なくとも一部を取り出して、原料ガスG0よりも二酸化炭素の夾雑ガスに対する割合が大きい(以下、「第1処理ガスG1」という。)を生成する。すなわち、第1処理ガスG1における二酸化炭素の夾雑ガスに対する割合は、原料ガスG0における二酸化炭素の夾雑ガスに対する割合よりも大きい。第1処理部10は、生成した第1処理ガスG1を第2処理部30に向けて放出する。第1処理部10は、例えば、第1分離モジュール12と、原料ガス供給部22とを有する。
【0023】
第1分離モジュール12は、原料ガスG0に含まれる二酸化炭素を、原料ガスG0に含まれる夾雑ガスから分離する。第1分離モジュール12は、例えば、筐体14と、第1分離部16とを含む。筐体14は、第1分離部16を収容すると共に、内部空間を形成する。第1分離部16は、原料ガスG0に含まれる二酸化炭素を吸着、吸収又は透過のいずれかによって夾雑ガスから二酸化炭素を分離する部材である。第1分離部16は、筐体14内の内部空間を二つの空間に区画するように配置されている。以下、第1分離部16によって隔てられる一対の空間のうちの原料ガスG0が供給される空間を「供給空間Vs1」と称し、他方の空間を「処理空間Vd1」と称する。すなわち、第1分離部16は、供給空間Vs1(第1供給空間)と処理空間Vd1(第1処理空間)とを隔てるように配置されている。
【0024】
第1分離部16は、原料ガスG0内の二酸化炭素を選択的に透過する分離膜18を含んでいてもよい。本開示において、一の成分を選択的に透過するとは、供給されるガス内に含まれる各種成分のうちの当該一の成分の透過量が夾雑ガス成分の透過量よりも大きくなるように、ガスの一部を透過することである。分離膜18は、原料ガスG0内に含まれる各種成分のうちの二酸化炭素を夾雑ガス成分に比べて透過させやすい性質を有する膜である。分離膜18として、原料ガスG0内に含まれる各種成分のうちの二酸化炭素及び水蒸気を、夾雑ガス成分(例えば、窒素、酸素、及び水素等)に比べて透過させやすい性質を有する膜が用いられてもよい。分離膜18は、アルカリ性の材料によって構成されていてもよい。
【0025】
分離膜18は、例えば、塩基性官能基を有するゲル化性高分子粒子を含む単層膜を含んでいる。ゲル化性高分子粒子とは、水中または極性溶媒中にて膨潤してゲル状の微粒子となる性質を有する高分子粒子である。ゲル化性高分子粒子は、例えば、塩基性分子が含浸した中性、アルカリ性又は酸性の高分子化合物の粒子であってもよい。ゲル化性高分子粒子を含む上記単層膜の厚さは、50μm未満であってもよい。ゲル化性高分子粒子に含まれる官能基は、アミノ基、アンモニウム基、カルボン酸、及び硫酸からなる群より選択される1以上の官能基であってもよい。ゲル化性高分子粒子を構成する高分子化合物は、塩基性官能基又は酸性官能基を有するモノマーを含むモノマー成分の重合体であってもよい。含浸する塩基性分子は、分子量が61~10000のアミン含有化合物を含んでいてもよく、上記アミン含有化合物の共役酸のpKaが5~10であってもよい。含浸する塩基性分子は、水酸基、カルボン酸基、又はスルホン酸基を有していてもよい。あるいは、含浸する塩基性分子は、複数のアミノ基又は複数の水酸基を有していてもよい。
【0026】
上記モノマーは、置換アクリルアミドモノマーを含んでもよく、N-(アミノアルキル)アクリルアミドを含んでもよく、カルボン酸又はスルホン酸を含んでいてもよい。上記モノマー成分において、カルボン酸又はスルホン酸を有するモノマーの割合が1~95モル%であってもよく、5~95モル%であってもよい。上記モノマー成分は、カルボン酸又はスルホン酸を有するモノマーと疎水性基を有するモノマーを含んでいてもよい。この場合、カルボン酸又はスルホン酸を有するモノマーと疎水性基を有するモノマーとのモル比が、1:95~95:5であってもよい。カルボン酸を有するモノマーがメタクリル酸又はアクリル酸であり、疎水性基を有するモノマーがN-アルキルアクリルアミドであってもよい。あるいは、スルホン酸を有するモノマーがアクリルアミドt-ブチルスルホン酸又はビニルスルホン酸であり、疎水性基を有するモノマーがN-アルキルアクリルアミドであってもよい。
【0027】
第1分離部16は、分離膜18を支持する担体18aを更に含んでもよい。この担体18aは、多孔質の材料(例えば、多孔質のフィルム)であってもよい。ゲル化性高分子粒子を含む上記単層膜は、ゲル化性高分子粒子を含む水溶液が多孔質のフィルムの表面に塗布され、当該水溶液を乾燥させる工程を経て形成されてもよい。ゲル化性高分子粒子は、多孔質の担体18aに含まれる表面細孔を閉塞する程度の大きさを有していてもよい。ゲル化性高分子粒子の粒子径は、多孔質の担体18aの表面細孔よりも大きくてもよい。多孔質の担体18aは、互いに逆向きの第1面と第2面とを有しており、第1面において表面細孔が上記高分子粒子で閉塞され、第2面において表面細孔が上記高分子粒子で閉塞されていなくてもよい。この場合、第1面が供給空間Vs1を向き、第2面が処理空間Vd1を向くように分離膜18と担体18aとが配置されていてもよい。担体18aは、その表面に上記表面細孔よりも十分大きく規則的な凹凸構造を有していてもよい。
【0028】
原料ガス供給部22は、第1分離モジュール12の供給空間Vs1に原料ガスG0を供給する。原料ガス供給部22は、上述したように、工場等から排出される燃焼後排ガスを原料ガスG0として供給空間Vs1に供給してもよい。原料ガス供給部22から原料ガスG0が供給される供給空間Vs1の圧力は、100kPa程度(1気圧と同程度)であってもよい。一方、処理空間Vd1の圧力は、供給空間Vs1の圧力よりも低い圧力に維持されていてもよい。例えば、処理空間Vd1の圧力は50kPa以下であってもよく、20kPa以下であってもよい。処理空間Vd1が実質的に真空状態に維持されていてもよい。分離膜18に含まれる高分子粒子の径が、多孔質の担体18aが有する孔径よりも大きい場合、第1分離部16は、処理空間Vd1と供給空間Vs1との間の圧力差によっても破損し難くなる。
【0029】
第1処理部10は、水蒸気供給部24を更に有する。水蒸気供給部24は、処理空間Vd1に水蒸気を含むガスを供給する。水蒸気供給部24によって水蒸気を含むガス(以下、「水蒸気含有ガスGs」という。)が処理空間Vd1に供給されることで、第1分離部16による二酸化炭素の分離(分離膜18での二酸化炭素の透過)が促進される。具体的には、水蒸気含有ガスGsの供給によって、処理空間Vd1において二酸化炭素が希釈化され、処理空間Vd1における二酸化炭素の分圧が、供給空間Vs1における二酸化炭素の分圧に比べて低くなる。その結果、水蒸気含有ガスGsを供給しない場合に比べて、第1分離部16によって、より多くの量の二酸化炭素が分離される。なお、分離膜18での二酸化炭素の透過を促進するために用いられる水蒸気含有ガスは、スイープガスとも称される。
【0030】
水蒸気供給部24から供給される水蒸気含有ガスGsの温度は、25℃~80℃であってもよい。あるいは、水蒸気含有ガスGsの温度は、30℃~70℃であってもよく、35℃~65℃であってもよい。水蒸気含有ガスGsの相対湿度は、50%以上であってもよく、60%以上であってもよく、70%以上であってもよい。水蒸気供給部24から供給される水蒸気含有ガスGsは、工場等において発生する排熱を利用して生成されてもよい。
【0031】
第1分離モジュール12は、原料ガスG0から二酸化炭素が取り出された後の残りのガスGd1を供給空間Vs1から放出する。第1分離モジュール12は、供給空間Vs1から外部にガスGd1を放出してもよい。第1分離モジュール12は、処理空間Vd1に分離された(供給空間Vs1から処理空間Vd1に透過した)二酸化炭素を含むガス(第1処理ガスG1)を処理空間Vd1から、第2処理部30に向けて放出する。この第1処理ガスG1には、二酸化炭素に加えて、第1分離部16の分離膜18を透過した原料ガスG0内の水蒸気と、水蒸気供給部24からの水蒸気含有ガスGs内の水蒸気とが含まれている。第1処理ガスG1の相対湿度は、例えば、50%以上であってもよく、60%以上であってもよく、70%以上であってもよい。
【0032】
第2処理部30は、第1処理ガスG1内の水蒸気の少なくとも一部を取り除いて、第1処理ガスG1よりも二酸化炭素の純度が高いガスを生成する。以下、第2処理部30によって生成され、第1処理ガスG1よりも二酸化炭素の純度が高いガスを「第2処理ガスG2」と称する。第2処理部30は、第2分離モジュール32を有する。
【0033】
第2分離モジュール32は、第1処理ガスG1に含まれる水蒸気の少なくとも一部を取り除くことで、第1処理ガスG1に含まれる二酸化炭素を分離する。第2分離モジュール32は、例えば、筐体34と、第2分離部36とを含む。筐体34は、第2分離部36を収容すると共に、内部空間を形成する。第2分離部36は、第1処理ガスG1に含まれる水蒸気を吸着、吸収又は透過のいずれかによって低減する部材である。第2分離部36は、筐体34内の内部空間を二つの空間に区画するように配置されている。以下、第2分離部36によって隔てられる一対の空間のうちの第1処理ガスG1が供給される空間を「供給空間Vs2」と称し、他方の空間を「処理空間Vd2」と称する。すなわち、第2分離部36は、供給空間Vs2(第2供給空間)と処理空間Vd2(第2処理空間)とを隔てるように配置されている。
【0034】
第2分離部36は、第1処理ガスG1内の水蒸気を選択的に透過する分離膜38を含んでいてもよい。分離膜38は、第1処理ガスG1内に含まれる各種成分のうちの水蒸気を他の成分よりも透過させやすい性質を有する膜である。分離膜38は、イオン性の材料によって構成されていてもよい。
【0035】
分離膜38は、例えば、酸性官能基を有するゲル化性高分子粒子を含む単層膜を含んでいる。ゲル化性高分子粒子を含む上記単層膜の厚さは、500μm未満であってもよい。ゲル化性高分子粒子に含まれる酸性官能基が、カルボキシル基、及び硫酸基からなる群より選択される1以上の官能基、又は当該官能基とカチオンとの塩であってもよい。ゲル化性高分子粒子を構成する高分子化合物が、酸性官能基を有するモノマーを含むモノマー成分の重合体であってもよい。カルボキシル基を有する高分子化合物として、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミドt-ブチルスルホン酸、又はビニルスルホン酸を構成モノマーに含む高分子化合物が挙げられる。カチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びマグネシウムイオン等が挙げられる。
【0036】
第2分離部36は、分離膜38を支持する担体38aを更に含んでいてもよい。この担体38aは、分離膜18を支持する担体18a(多孔質の担体18a)と同様に構成されていてもよい。担体38aのうちの分離膜38が設けられた表面が、供給空間Vs2と処理空間Vd2とのうちの圧力が低い方の空間を向くように、分離膜38及び担体38aが配置されてもよい。なお、供給空間Vs2と処理空間Vd2との圧力差に基づいて、分離膜38と担体38aとの配置、及び分離膜38と担体38aとのそれぞれの面の構成が変更されてもよい。例えば、供給空間Vs2の圧力が処理空間Vd2の圧力よりも低い場合、分離膜38が、担体38aよりも供給空間Vs2側に配置されてもよい。
【0037】
第2処理部30は、再生ガス供給部42を更に有する。再生ガス供給部42は、第1処理ガスG1よりも水蒸気圧が低い再生ガスGrを処理空間Vd2に供給する。再生ガスGrの温度は、第1処理部10の水蒸気供給部24によって供給される水蒸気含有ガスGsの温度よりも低くてもよい。再生ガスGrの相対湿度は、例えば、30%~80%であってもよく、35%~75%であってもよく、40%~70%であってもよい。再生ガスGrの温度は、例えば、0℃~45℃であってもよく、5℃~40℃であってもよく、10℃~35℃であってもよい。
【0038】
再生ガス供給部42は、再生ガスGrとして空気を処理空間Vd2に供給してもよい。再生ガス供給部42が再生ガスGrとして空気を処理空間Vd2に供給する場合、上述した再生ガスGrの温度及び相対湿度は、所定の期間(例えば、1日、1週間、1月又は1年)における平均値で表される。第2分離モジュール32は、第1処理ガスG1から取り除いた水蒸気を含むガスGd2を処理空間Vd2から放出する。第2分離モジュール32は、ガスGd2を外部に放出してもよい。第2分離モジュール32は、供給空間Vs2において水蒸気が除去された後のガス(第2処理ガスG2)を吸引部50に放出する。
【0039】
吸引部50は、第1処理部10の処理空間Vd1内のガスを吸引する。吸引部50は、供給空間Vs2を介して処理空間Vd1内のガスを吸引してもよい。この場合、処理空間Vd1、供給空間Vs2、及び吸引部50は、ガスの流路を介して互いに接続されていてもよい。吸引部50は、処理空間Vd1を減圧させるコンプレッサ(圧縮機)又はポンプ(例えば、真空ポンプ)であってもよい。この場合、処理空間Vd1及び供給空間Vs2の圧力が低下する。吸引部50によって処理空間Vd1の圧力が、供給空間Vs1の圧力よりも低い値(例えば、上述した50kPa以下)に維持されてもよい。
【0040】
吸引部50によるガスの吸引によって、処理空間Vd1からの第1処理ガスG1の放出、及び供給空間Vs1からの第2処理ガスG2の放出が促進される。吸引部50は、第2処理ガスG2を吸引すると共に、吸引した第2処理ガスG2を分離ガスGcとして回収装置1の外部に送り出してもよい。また、吸引部50は、処理空間Vd1を介して水蒸気供給部24内の圧力を低い値に維持してもよい。これにより、水蒸気供給部24において、水蒸気を効率的に生成することが可能である。処理空間Vd1への水蒸気の供給量を調整するために、水蒸気供給部24と処理空間Vd1との間に圧力調整弁又は流量調整弁が設けられてもよい。あるいは、水蒸気供給部24に投入される熱量が制御されてもよい。この制御により、水蒸気供給部24における水蒸気の生成量(処理空間Vd1への水蒸気の供給量)が調節されてもよい。
【0041】
[二酸化炭素の回収方法]
続いて、二酸化炭素の回収方法の一例として、上述の回収装置1を用いる場合の回収方法を説明する。回収装置1を用いた回収方法は、少なくとも、原料ガスG0に含まれる二酸化炭素を透過によって夾雑ガスから分離する第1分離部16を用いて、原料ガスG0内の二酸化炭素の少なくとも一部を取り出すことで、原料ガスG0よりも夾雑ガスに対する二酸化炭素の割合が大きい第1処理ガスG1を生成する工程(第1工程)を含む。また、上記回収方法は、第1処理ガスG1に含まれる水蒸気を透過によって低減させる第2分離部36を用いて、第1処理ガスG1内の水蒸気の少なくとも一部を取り除くことで、第1処理ガスG1よりも二酸化炭素の純度が高い第2処理ガスG2を生成する工程(第2工程)を含む。第2処理ガスG2を生成する工程では、第1処理ガスG1よりも水蒸気圧が低い再生ガスGrが更に利用される。
【0042】
詳細に説明すると、まず、第1処理部10において、第1分離モジュール12の供給空間Vs1に原料ガス供給部22から原料ガスG0が供給される。原料ガスG0の供給と合わせて、第1分離モジュール12の処理空間Vd1は、吸引部50によって減圧されていると共に、処理空間Vd1には水蒸気供給部24から水蒸気含有ガスGsが供給されている。そのため、供給空間Vs1と処理空間Vd1とにおいて、二酸化炭素の分圧の差が生じ、供給空間Vs1に供給された原料ガスG0内に含まれる二酸化炭素の少なくとも一部が、第1分離部16(分離膜18)を透過して処理空間Vd1に送り出される。
【0043】
処理空間Vd1は吸引部50によって吸引されているので、第1分離部16を透過した二酸化炭素と水蒸気とを含む第1処理ガスG1が処理空間Vd1から第2処理部30に向けて流通する。第1処理ガスG1には、第1分離部16の分離膜18によって選択的に分離された二酸化炭素が含まれるので、第1処理ガスG1の夾雑ガスに対する二酸化炭素の割合は、原料ガスG0の夾雑ガスに対する二酸化炭素の割合よりも大きくなる。第2処理部30に流通した第1処理ガスG1は、第2処理部30において、第2分離モジュール32の供給空間Vs2に供給される。
【0044】
供給空間Vs2への第1処理ガスG1の供給と合わせて、第2分離モジュール32の処理空間Vd2には再生ガス供給部42から再生ガスGrが供給されている。これにより、第2分離モジュール32の第2分離部36(分離膜38)によって、供給空間Vs2に供給された第1処理ガスG1から水蒸気が取り除かれる。具体的には、供給空間Vs2に供給された第1処理ガスG1内の水蒸気の一部が、第2分離部36(分離膜38)を透過して処理空間Vd2に送り出される。この際、再生ガスGrの水蒸気圧が第1処理ガスG1の水蒸気圧よりも低いので、供給空間Vs2内のガスの水蒸気圧が、処理空間Vd2内の水蒸気圧と同程度まで低下し得る。すなわち、供給空間Vs2内のガスの相対湿度が100%未満になり得る。また、再生ガスGrの温度は、水蒸気含有ガスGsの温度よりも低いので、第1処理ガスG1の温度よりも低くなり得る。この場合、供給空間Vs2内のガスが、再生ガスGrによって冷却されるので、供給空間Vs2内のガスの温度が再生ガスGrと同程度の温度まで低下する。
【0045】
供給空間Vs2は吸引部50によって吸引されているので、第2分離部36によって温度が低下し、且つ水蒸気が除去された後の残りの第2処理ガスG2が供給空間Vs2から吸引部50に向けて送り出される。第2処理ガスG2内の水蒸気量は、第2分離部36による水蒸気の除去によって、当該第2処理ガスG2の飽和水蒸気量よりも低い値に低下している。また、第2処理ガスG2の温度は、再生ガスGrが処理空間Vd2に供給されることで第1処理ガスG1の温度よりも低下する。吸引部50によって吸引された第2処理ガスG2は、分離ガスGcとして回収装置1の外部に送り出される。第2処理ガスG2の二酸化炭素の濃度(純度)は、第2分離部36による水蒸気の除去によって、第1処理ガスG1の二酸化炭素の濃度(純度)よりも高くなる。以上により、吸引部50から放出される分離ガスGcの二酸化炭素の濃度は、回収装置1に供給される原料ガスG0の二酸化炭素の濃度よりも高くなる。すなわち、二酸化炭素が濃縮されたガス(夾雑ガスに対する二酸化炭素の割合が上昇したガス)が回収装置1によって回収される。
【0046】
[変形例1]
二酸化炭素の回収装置は、原料ガスG0内の二酸化炭素の夾雑ガスに対する二酸化炭素の割合を上昇させるために、二酸化炭素を選択的に透過する分離膜に代えて、二酸化炭素の吸収又は吸着と放出とを行う材料を用いてもよい。図2は、二酸化炭素の回収装置の別の例を示す模式図である。図2に示される二酸化炭素の回収装置1Aでは、第1分離モジュール12の第1分離部16が、分離膜18に代えて、原料ガスG0内の二酸化炭素の吸着又は吸収を選択的に行う材料18Aを含んでいる。
【0047】
材料18Aを含む第1分離部16は、分離膜18を含む第1分離部16と同様に、供給空間Vs1(第1供給空間)と処理空間Vd1(第1処理空間)とを隔てるように配置されている。本開示において、一の成分の吸収(吸着)を選択的に行うとは、供給されるガスに含まれる各種成分のうちの当該一の成分の吸収(吸着)量が他の成分の吸収量よりも多くなるように、ガスの一部を吸収(吸着)することである。材料18Aは、原料ガスG0内に含まれる各種成分のうちの二酸化炭素を他の成分に比べて吸着しやすい性質を有する吸着材であってもよく、二酸化炭素を他の成分に比べて吸収しやすい性質を有する吸収材であってもよい。材料18Aが吸着材である場合、材料18Aは、活性炭又はシリカゲルから構成されていてもよい。
【0048】
材料18Aが吸収材である場合、材料18Aは、分離膜18と同様に、アルカリ性の材料によって構成されてもよい。材料18Aは、例えば、アミノ基を有する高分子化合物粒子を含む。この高分子化合物粒子は、ヒドロゲル粒子であってもよい。高分子化合物粒子を構成する高分子化合物は、アミノ基を有するモノマーを含むモノマー成分の重合体であってもよい。上記モノマーは、置換アクリルアミドモノマーを含んでもよく、N-(アミノアルキル)アクリルアミドを含んでもよく、3級アミノ基を含んでいてもよい。上記モノマー成分において、アミノ基を有するモノマーの割合が5~99モル%であってもよい。
【0049】
上記モノマー成分が、アミノ基を有するモノマーと疎水性基を有するモノマーを含んでいてもよい。この場合、アミノ基を有するモノマーと疎水性基を有するモノマーのモル比が、1:99~99:1であってもよい。アミノ基を有するモノマーがN-(アミノアルキル)アクリルアミドであり、疎水性基を有するモノマーがN-アルキルアクリルアミドであってもよい。第1分離部16は、担体18aに代えて、材料18Aを支持する担体19Aを含んでいてもよい。この場合、材料18Aは、担体19A上に設けられ、アミノ基を有する高分子化合物のゲル粒子を含む膜であってもよい。あるいは、材料18Aは、担体19A上に、層状に形成されたゲル粒子を含む複数の膜であってもよい。担体19Aは、平板上の板、シート、箔、繊維集合体であってもよい。担体19Aは、多孔質体又はハニカム構造体であってもよい。担体19Aは、高分子化合物微粒子の粉末であってもよく、当該粉末を造粒した粒子であってもよい。当該粉末および粒子は、カーボン又はシリカ等の1次粒子径が100ナノメートル以下のフィラーを含んでいてもよい。
【0050】
回収装置1Aでは、水蒸気供給部24は、水蒸気を含む水蒸気含有ガスGsを供給空間Vs1に供給する。処理空間Vd1内のガスは、回収装置1と同様に、吸引部50によって吸引される。供給空間Vs1と原料ガス供給部22との間のガスの流路、及び供給空間Vs1と水蒸気供給部24との間のガスの流路には、それぞれバルブ(不図示)が設けられてもよい。処理空間Vd1から外部にガスGd1が排出されるガスの流路、及び処理空間Vd1と第2処理部30の供給空間Vs2との間のガスの流路には、それぞれバルブ(不図示)が設けられてもよい。不図示の制御装置によって、これらのバルブの開閉状態がそれぞれ切り替えられてもよい。
【0051】
以上に例示した回収装置1Aを用いた二酸化炭素の回収方法を説明すると、まず、原料ガス供給部22から第1分離モジュール12の供給空間Vs1に原料ガスG0が供給される。この際、水蒸気供給部24からの水蒸気含有ガスGsの供給、及び吸引部50による処理空間Vd1内の吸引は停止している。供給空間Vs1に供給された原料ガスG0に含まれる二酸化炭素の少なくとも一部は、材料18Aに吸収される(吸着される)。原料ガスG0は、材料18Aによって二酸化炭素が吸収されつつ処理空間Vd1に送り込まれ、材料18Aによって二酸化炭素が吸収された後の残りのガスが、ガスGd1として処理空間Vd1から排出される。以上の状態が所定期間継続されることで、材料18Aに二酸化炭素が貯留される。
【0052】
材料18Aに二酸化炭素を貯留させた後に、原料ガス供給部22からの原料ガスG0の供給、及び処理空間Vd1からの外部へのガスGd1の排出を停止し、水蒸気供給部24から供給空間Vs1に水蒸気含有ガスGsを供給させると共に、処理空間Vd1と第2処理部30の供給空間Vs2との間の流路を開放する。これにより、供給空間Vs1に供給された水蒸気含有ガスGsが、材料18Aに貯留されている二酸化炭素を処理空間Vd1に送り出し、処理空間Vd1に送り出された後の二酸化炭素を含むガスが、第1処理ガスG1として供給空間Vs2に向けて供給される。第1処理ガスG1は、材料18Aに貯留されていた二酸化炭素を含むので、原料ガスG0よりも夾雑ガスに対する二酸化炭素の割合が大きくなる。第2処理部30及び吸引部50では、上述の回収装置1と同様に第2処理ガスG2及び分離ガスGcが生成及び送り出される。
【0053】
[変形例2]
二酸化炭素の回収装置は、第1処理ガスG1内の水蒸気の少なくとも一部を除去するために、複数の第2処理部及び複数の吸引部を備えてもよい。図3は、二酸化炭素の回収装置の別の例を示す模式図である。図3に示される二酸化炭素の回収装置1Bは、第2処理部30に代えて、第2処理部30aと第2処理部30bとを備え、吸引部50に代えて、吸引部50aと吸引部50bとを備える。第2処理部30a,30bはそれぞれ第2処理部30と同様に構成されており、吸引部50a,50bはそれぞれ吸引部50と同様の機能を有する。回収装置1Bにおいて、吸引部50bによって減圧される供給空間Vs2の圧力は、吸引部50aによって減圧される供給空間Vs2の圧力よりも高くてもよい。
【0054】
この回収装置1Bを用いた二酸化炭素の回収方法を説明すると、図1に例示の回収装置1と同様に、第1処理部10(第1分離モジュール12)から第1処理ガスG1が第2処理部30aの供給空間Vs2に供給される。第2処理部30aの第2分離モジュール32において、第2分離部36によって第1処理ガスG1内の水蒸気の少なくとも一部が除去されることで、第2処理ガスG21が生成される。第2処理ガスG21の二酸化炭素の純度は、第1処理ガスG1の二酸化炭素の純度よりも高い。第2処理部30aの供給空間Vs2内のガスが吸引部50aによって吸引、圧縮され、二酸化炭素分圧及び水蒸気圧が上昇した第2処理ガスG21となる。当該第2処理ガスG21が第2処理部30bの供給空間Vs2に供給される。
【0055】
第2処理部30bの第2分離モジュール32において、第2分離部36によって第2処理ガスG21内の水蒸気の少なくとも一部が除去されることで、第2処理ガスG22が生成される。第2処理ガスG22の二酸化炭素の純度は、第2処理ガスG21の二酸化炭素の純度よりも高い。第2処理部30bの供給空間Vs2から第2処理ガスG22が吸引部50bによって吸引され、当該ガスが分離ガスGcとして回収装置1Bの外部に送り出される。
【0056】
回収装置1Bは、1以上の別の第2処理部30と、1以上の別の吸引部50とを更に備えていてもよい。図2に例示の回収装置1Aにおいて、第2処理部30及び吸引部50に代えて、第2処理部30a,30bと吸引部50a,50bとが設けられてもよい。以上の回収装置1Bでは、回収装置1,1Aと比べて、第1処理ガスG1から除去される水蒸気の量を多くすることができる。あるいは、回収装置1,1Aに比べて、吸引部(例えば、コンプレッサ)の1個あたりの性能を小さくすることができる。
【0057】
[その他の変形例]
上述の回収装置1,1Aでは、第2処理部30は、分離膜38によって第1処理ガスG1に含まれる水蒸気を低減するが、分離膜38に代えて、第1処理ガスG1に含まれる水蒸気の吸着又は吸収を選択的に行う材料(吸収材又は吸着材)を有してもよい。この場合においても、再生ガス供給部42が、第2処理部30において吸収材(吸着材)によって隔てられる一対の空間のうちの一方の空間(処理空間)に再生ガスGrを供給してもよい。このような吸収材は、酸性官能基を有するゲル化性高分子粒子を含む膜、粉体、又は粒子を含んでいてもよく、酸性官能基を有するゲル化性高分子粒子の塩と塩基性官能基を有するゲル化性高分子微粒子の塩の両方を含む膜、粉体、又は粒子を含んでいてもよい。上記吸収材は、多孔質材料等の担体に支持されていてもよく、カーボンブラック又はフュームドシリカ等のフィラーを含んでいてもよい。
【0058】
[実施形態の効果]
以上に説明した二酸化炭素の回収装置1では、原料ガスG0に含まれる夾雑ガスの割合が低下すると共に二酸化炭素の割合が上昇した第1処理ガスG1が第1処理部10から第2処理部30の供給空間Vs2に送り出される。そして、供給空間Vs2とは第2分離部36によって隔てられる処理空間Vd2に第1処理ガスG1よりも水蒸気圧が低い再生ガスGrが供給される。これにより、第2分離部36によって第1処理ガスG1内から水蒸気が除去されつつ、第2処理ガスG2の水蒸気圧が飽和水蒸気圧以下に低下する。第2処理ガスG2を吸引するための装置にかかる負荷は、第2処理ガスG2に含まれる水蒸気圧(水蒸気の量)に依存する。上記の回収装置1では、第2処理ガスG2の水蒸気圧が低下しているので、第2処理ガスG2を吸引するための装置の要求性能を下げることができる。従って、原料ガスG0に含まれる二酸化炭素の夾雑ガスに対する割合が上昇したガスを簡便に回収することが可能となる。
【0059】
以上の実施形態では、回収装置1の第1処理部10は、処理空間Vd1に水蒸気を含む水蒸気含有ガスGsを供給する水蒸気供給部24を更に有する。第1分離部16は、原料ガスG0に含まれる二酸化炭素を選択的に透過する分離膜18を含む。この場合、水蒸気含有ガスGsによって、第1分離部16の分離膜18による二酸化炭素の透過が促進される。そのため、原料ガスG0から二酸化炭素を効率的に分離することが可能となる。
【0060】
以上の実施形態では、回収装置1Aの第1処理部10は、供給空間Vs1に水蒸気を含む水蒸気含有ガスGsを供給する水蒸気供給部24を更に有する。第1分離部16は、原料ガスG0に含まれる二酸化炭素の吸着又は吸収を選択的に行う材料18Aを含む。この場合、水蒸気含有ガスGsによって、第1分離部16の材料18Aに貯留された二酸化炭素の放出(離脱)が促進される。そのため、原料ガスG0から二酸化炭素を効率的に分離することが可能となる。
【0061】
以上の実施形態では、再生ガスGrの温度は、水蒸気含有ガスGsの温度よりも低い。この場合、第2処理ガスG2の温度が再生ガスGrの温度と同程度まで下げられる。そのため、第2処理ガスG2を吸引するための装置の要求性能をより低下させることができ、夾雑ガスに対する二酸化炭素の割合が上昇したガスをより簡便に回収することが可能となる。
【0062】
以上の実施形態では、再生ガスGrは空気である。この場合、処理空間Vd2への再生ガスGrの供給が容易である。
【0063】
以上の実施形態では、第2処理ガスG2の水蒸気圧は、当該第2処理ガスG2の飽和水蒸気圧よりも小さい。この場合、第2処理ガスG2が飽和水蒸気圧の水蒸気を含む場合に比べて、第2処理ガスG2を吸引するための装置の要求性能を低下させることが可能となる。
【0064】
以上の実施形態に係る回収装置1,1Aは、処理空間Vd1内のガスを吸引する吸引部50を備える。この構成では、第2処理ガスG2の水蒸気圧が第2処理部30において下げられているので、水蒸気圧を低下させない場合に比べて、吸引部50の要求性能を低下させることができる。そのため、吸引部50を簡素化することが可能となる。
【0065】
以上の実施形態では、第2分離部36は、第1処理ガスG1に含まれる水蒸気を選択的に透過する分離膜38を含む。この場合、第1処理ガスG1内の水蒸気を簡便に除去することが可能となる。
【0066】
以上の実施形態に係る回収装置1,1A,1Bを用いた二酸化炭素の回収方法では、第1分離部16が用いられて原料ガスG0に含まれる二酸化炭素の夾雑ガスに対する割合が上昇することで(二酸化炭素が分離又は濃縮されることで)、第1処理ガスG1が生成される。そして、第1処理ガスG1に含まれる水蒸気を低減する第2分離部36と、第1処理ガスG1よりも水蒸気圧が低い再生ガスGrとが利用されて第2処理ガスG2が生成される。水蒸気圧が低い再生ガスGrを利用することで、第2分離部36によって第1処理ガスG1内から水蒸気を除去しつつ、第2処理ガスG2の水蒸気圧を低下させることができる。第2処理ガスG2を吸引するための装置の負荷は、第2処理ガスG2に含まれる水蒸気の量に依存する。上記の回収方法では、第2処理ガスG2の水蒸気圧を下げることができるので、第2処理ガスG2を吸引するための装置の要求性能を下げることができる。従って、原料ガスG0に含まれる二酸化炭素の夾雑ガスに対する割合が上昇したガスを簡便に回収することが可能となる。
【0067】
二酸化炭素を分離したうえで(例えば濃縮したうえで)回収する別の装置又は方法として、第1処理部10において二酸化炭素が分離された(例えば濃縮された)処理ガスを熱交換器、気液分離器、及びコンプレッサを介して回収する装置又は方法が考えられる。この装置又は方法では、熱交換器、気液分離器、及びコンプレッサがこの順で上流から配置され、熱交換器において処理ガスが冷却されることで、当該処理ガス内の水蒸気の一部が液化する。そして、気液分離器によって、液化した水蒸気の一部(水分)と残りの二酸化炭素を含むガスとが分離され、コンプレッサによって、分離された二酸化炭素を含むガスが吸引される。
【0068】
この装置又は方法においては、熱交換器によって冷却ガスと同程度の温度まで処理ガスが冷却され得るが、冷却後のガスは飽和水蒸気量の水蒸気を含んでいる。コンプレッサによって吸引しようとするガス内の水蒸気量に応じて、コンプレッサに要求される性能が増すので、気液分離器によって分離される二酸化炭素を含むガス(飽和水蒸気量のガス)を吸引するためのコンプレッサでは高い性能及び大きな動力が必要となる。これに対して、上記実施形態の回収装置1及び回収方法では、第2処理部30の第2分離部36において相対湿度が低い(飽和水蒸気量以下の)ガスが生成されるので、コンプレッサの要求性能を低下させることができる。
【0069】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。上述した別の装置又は方法において用いられる熱交換器及び気液分離器と、1又は複数の第2処理部(第2分離モジュール)とが併用されてもよい。図4は、二酸化炭素の回収装置の別の例を示す模式図である。図4に示される回収装置1Cは、第1処理部10と第2処理部30aとの間に設けられる熱交換器62及び気液分離器64を更に備える点で、図3に示される回収装置1Bと相違する。また、回収装置1Cは、吸引部50aが、第1処理部10と第2処理部30aとの間(気液分離器64の下流側)に配置され、吸引部50bが、第2処理部30aと第2処理部30bとの間に配置される点においても回収装置1Bと相違する。なお、下流側の第2分離モジュール32の更に下流に別の吸引部(不図示)が設けられてもよい。図4に示される回収装置1Cにおいても、1個あたりの吸引部の負荷を下げることが可能となる。図1及び図2に示される回収装置1,1Aにおいても、吸引部50(熱交換器62及び気液分離器64)が、第1処理部10と第2処理部30との間に配置されてもよい。
【0070】
上述の回収装置1,1Aでは、水蒸気供給部24によって第1処理部10の処理空間Vd1又は供給空間Vs1に水蒸気含有ガスGsが供給されるが、第1処理部10が水蒸気供給部24を有していなくてもよい。この場合、ガス内の水蒸気を除去する第2処理部30に送り込まれる第1処理ガスG1には、原料ガスG0に含まれ、且つ第1分離部16(分離膜18又は材料18A)を通過した水蒸気が含まれる。
【0071】
再生ガス供給部42によって供給される再生ガスGrの温度は、第1処理部10において水蒸気供給部24から供給される水蒸気含有ガスGsの温度と同程度であってもよく、水蒸気含有ガスGsの温度よりも高くてもよい。再生ガス供給部42は、空気とは異なるガスを供給してもよい。例えば、再生ガス供給部42は、湿度を調節可能な湿度調節器を含み、当該湿度調節器によって調節された湿度を有するガスを、再生ガスGrとして処理空間Vd2に供給してもよい。
【0072】
[評価結果]
次に実施例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。以下の実施例では、水蒸気を選択的に分離できる分離膜モジュール(上述の第2分離モジュール32)を使用した場合の除去性能を、計算により評価している。
【0073】
(計算方法)
水蒸気除去を行う対象ガスは、これまでの二酸化炭素分離膜の計算の基準ケースとしていた条件の透過側ガス(処理空間側のガス)とした。図5(a)は、計算対象としたプロセスフローを示し、図5(b)の表は、計算に用いた水蒸気分離膜の特性、ガス流量などの計算の前提条件を示す。図5(a)及び図5(b)に示される「Case 1」(ケース1)は、二酸化炭素分離膜の透過側ガスを直接水蒸気分離膜に導入した条件を示し、「Case 2」(ケース2)は透過側ガスを40℃でフラッシュし、圧縮後のガスを水蒸気分離膜に導入した条件を示す。組成膜分離モジュール内の物質収支は膜の透過流速を設定した微分方程式により、エネルギー収支は膜内のガス透過と膜を介した熱移動によるエンタルピー変化を考慮した微分方程式により、それぞれを同時にMatlabにより解き、水蒸気の除去量を算出した。
【0074】
(結果)
図6(a)は、ケース2におけるモジュール内の供給側及び透過側のそれぞれのガス分圧とガス温度の計算例を示す。膜の透過及び非透過側の水蒸気分圧差により除去されており、ガス温度は約343Kから305Kまで下がることが確認されており、熱交換器および気液分離器を省略できることがわかる。図6(b)は、水蒸気除去率のフラッシュ操作との比較を示す。ケース1では処理対象ガスに水蒸気が多く含まれるものの、全圧が低いためにスイープガス(再生ガス)との水蒸気の分圧差が小さく、水蒸気を除去できていないことがわかる。それに対してケース2では、全圧が2倍程度であるが膜分離により水蒸気が除去され、フラッシュ法よりも水蒸気濃度を低くすることができ、さらにスイープガス流量を200mol/sから300mol/sへ増やすことで、水蒸気濃度は21%から14%へ低下した。このことから、ある程度加圧されたガスに対しては膜モジュールによる脱水が有効であり、フラッシュ法と比較して所要エネルギー及びコストを大幅に削減できる可能性が示された。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示によれば、二酸化炭素の夾雑ガスに対する割合が上昇したガスを簡便に回収することが可能な二酸化炭素の回収装置及び回収方法が提供される。
【符号の説明】
【0076】
1,1A,1B,1C…二酸化炭素の回収装置、10…第1処理部、16…第1分離部、18…分離膜、18A…材料、24…水蒸気供給部、30…第2処理部、36…第2分離部、38…分離膜、42…再生ガス供給部、50…吸引部、Vs1,Vs2…供給空間、Vd1,Vd2…処理空間、G0…原料ガス、G1…第1処理ガス、G2…第2処理ガス、Gs…水蒸気含有ガス、Gr…再生ガス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6