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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】抗菌性組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 33/12 20060101AFI20240705BHJP
   A01N 37/10 20060101ALI20240705BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20240705BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 31/235 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 31/14 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A01N33/12 101
A01N37/10
A01N25/02
A01P3/00
A61K31/235
A61K31/14
A61K8/81
A61K9/08
A61K47/32
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020112378
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011323
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】520385021
【氏名又は名称】ウェトラブホールディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】岡野 仁夫
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-527356(JP,A)
【文献】特表2008-528135(JP,A)
【文献】特表2017-520521(JP,A)
【文献】特開平01-261304(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0132481(US,A1)
【文献】米国特許第05641498(US,A)
【文献】特開2007-145754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌化粧料用の抗菌性組成物であって、ポリビニルアルコールの水溶液および抗菌剤として非金属系抗菌剤を含有し、前記抗菌性組成物におけるポリビニルアルコールの含有率が0.5~15質量%であり、前記ポリビニルアルコールとして平均重合度が500~1700であり、ケン化度が98モル%以上であるポリビニルアルコールが用いられ、前記ポリビニルアルコール水溶液500gあたりの非金属系抗菌剤の量が0.3~1gであり、前記非金属系抗菌剤が安息香酸塩および塩化ベンザルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする抗菌性組成物。
【請求項2】
抗菌スプレー用の抗菌性組成物であって、ポリビニルアルコールの水溶液および抗菌剤として非金属系抗菌剤を含有し、前記抗菌性組成物におけるポリビニルアルコールの含有率が0.5~15質量%であり、前記ポリビニルアルコールとして平均重合度が500~1700であり、ケン化度が98モル%以上であるポリビニルアルコールが用いられ、前記ポリビニルアルコール水溶液500gあたりの非金属系抗菌剤の量が0.3~1gであり、前記非金属系抗菌剤が安息香酸塩および塩化ベンザルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする抗菌性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、織物、編物などの繊維、ヒトの皮膚などの被着体に好適に使用することができる抗菌性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウイルスの流行に対応するために種々の抗菌剤が開発されている。抗菌剤は、主としてウイルス、細菌および真菌の活性の抑制、増殖の抑制または死滅を目的として使用されている。抗菌効果の持続性に優れている抗菌性組成物として、ポリマーまたはオリゴマーとナノワイヤーとを含有し、前記ナノワイヤーが銀、鉄、銅またはそれらの組合わせからなるナノワイヤーである持続性抗菌組成物が提案されている(例えば、特許文献1の請求項1および請求項3参照)。
【0003】
前記持続性抗菌組成物は、抗菌効果の持続性に優れているとされている。しかし、前記持続性抗菌組成物にはナノワイヤーとして銀、鉄、銅などの金属が使用されているため、前記持続性抗菌組成物は、ヒトの皮膚に適用したとき、金属アレルギーを招来するおそれがあるとともに被膜を形成するため、ヒトの皮膚に適用することが好ましいものであるとは言えない。また、前記持続性抗菌組成物に含まれている抗菌剤がナノワイヤーであることから、前記持続性抗菌組成物を繊維製品などの被着体に適用したとき、当該抗菌剤が被着体から容易に離脱するおそれがある。
【0004】
したがって、近年、ヒトの皮膚にやさしく、繊維製品などの被着体に適用したときの付着性に優れ、容易に離脱する被膜を形成しがたい抗菌性組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-21014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、ヒトの皮膚にやさしく、繊維製品、ヒトの皮膚などの被着体に適用したときの付着性に優れ、被膜を形成しがたく、ヒトの皮膚、繊維製品などの被着体に好適に用いることができる抗菌性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1) 抗菌化粧料用の抗菌性組成物であって、ポリビニルアルコールの水溶液および抗菌剤として非金属系抗菌剤を含有し、前記抗菌性組成物におけるポリビニルアルコールの含有率が0.5~15質量%であり、前記ポリビニルアルコールとして平均重合度が500~1700であり、ケン化度が98モル%以上であるポリビニルアルコールが用いられ、前記ポリビニルアルコール水溶液500gあたりの非金属系抗菌剤の量が0.3~1gであり、前記非金属系抗菌剤が安息香酸塩および塩化ベンザルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする抗菌性組成物、および
(2) 抗菌スプレー用の抗菌性組成物であって、ポリビニルアルコールの水溶液および抗菌剤として非金属系抗菌剤を含有し、前記抗菌性組成物におけるポリビニルアルコールの含有率が0.5~15質量%であり、前記ポリビニルアルコールとして平均重合度が00~1700であり、ケン化度が9モル%以上であるポリビニルアルコールが用いられ、前記ポリビニルアルコール水溶液500gあたりの非金属系抗菌剤のが0.3~1gであり、前記非金属系抗菌剤が安息香酸塩および塩化ベンザルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする抗菌性組成
関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヒトの皮膚にやさしく、繊維製品、ヒトの皮膚などの被着体に適用したときの付着性に優れ、被膜を形成しがたく、ヒトの皮膚、繊維製品などの被着体に好適に用いることができる抗菌性組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の抗菌性組成物は、前記したように、ポリビニルアルコールおよび抗菌剤を含有し、前記抗菌剤として非金属系抗菌剤が用いられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の抗菌性組成物は、前記特徴を有することから、ヒトの皮膚にやさしく、繊維製品、ヒトの皮膚などの被着体に適用したときの付着性に優れ、被膜を形成しがたく、ヒトの皮膚、繊維製品などの用途に好適に用いることができる。
【0011】
本発明の抗菌性組成物において、抗菌性は、細菌および/または真菌に対して少なくとも静菌作用(細菌などの微生物の増殖を抑制する作用)を有する性質を意味し、当該抗菌性には細菌、真菌、ウイルスなどの活性の抑制、増殖の抑制または死滅の作用を呈する性質が含まれていてもよい。
【0012】
本発明の抗菌性組成物に使用されるポリビニルアルコールは、ヒトの皮膚にやさしいとともに人体に対する安全性が高く、繊維製品、ヒトの皮膚などの被着体に適用したときの付着性に優れている。
【0013】
本発明の抗菌性組成物におけるポリビニルアルコールの含有率は、繊維製品、ヒトの皮膚などの被着体に対する抗菌性組成物の付着性を向上させる観点から、0.3質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、本発明の抗菌性組成物を繊維製品、ヒトの皮膚などの被着体に適用したときに被膜が形成されることを抑制する観点から、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。したがって、本発明の抗菌性組成物におけるポリビニルアルコールの含有率は、0.3~15質量%、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは1~10質量%、さらに好ましくは3~8質量%である。本発明の抗菌性組成物におけるポリビニルアルコールの含有率が前記範囲内にあることから、繊維製品、ヒトの皮膚などの被着体に対する抗菌性組成物の付着性を向上させることができるとともに、被膜が形成されることを抑制することができる。
【0014】
ポリビニルアルコールの平均重合度は、本発明の抗菌性組成物の付着性を向上させる観点から、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1000以上であり、本発明の抗菌性組成物を繊維製品、ヒトの皮膚などの被着体に適用したときに被膜が形成されることを抑制する観点から、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2500以下である。なお、本明細書において、ポリビニルアルコールの平均重合度は、粘度法で求められる平均重合度を意味する。
【0015】
ポリビニルアルコールのケン化度は、本発明の抗菌性組成物の付着性を向上させる観点から、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上である。なお、ポリビニルアルコールのケン化度の上限値には限定がなく、高ければ高いほど好ましく、完全ケン化のポリビニルアルコールが好ましい。
【0016】
ポリビニルアルコールは、当該ポリビニルアルコールの取り扱い性を向上させる観点から、水溶液として用いられることが好ましい。ポリビニルアルコールの水溶液は、ポリビニルアルコールを所定濃度となるように水に溶解させることにより、容易に調製することができる。水としては、純水、精製水、イオン交換水、水道水などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ポリビニルアルコールを溶解させるときの水の温度は、常温であってもよく、加温されていてもよく、あるいは冷却されていてもよい。ポリビニルアルコールの水溶液におけるポリビニルアルコールの濃度は、ポリビニルアルコールの取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上であり、水に対するポリビニルアルコールの溶解性を高める観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0017】
本発明の抗菌性組成物においては、抗菌剤として非金属系抗菌剤が用いられていることから、金属アレルギーを招来するおそれがないので、ヒトの皮膚に適用することができる。非金属系抗菌剤としては、例えば、安息香酸塩、塩酸アルキルジアミンエチルグリシン、デヒドロ酢酸塩、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、クロルキシレノール、クロルヘキシジン、臭化アルキルイソキノニリウム、チモール、ピロクトンオラミン、ポリアミノプロピルビグアナイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの抗菌剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの抗菌剤は、いずれも水溶性を有しており、少量で良好な抗菌性を有するものである。安息香酸塩としては、例えば、安息香酸ナトリウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。デヒドロ酢酸塩としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0018】
非金属系抗菌剤のなかでは、少量で抗菌性を発現し、ヒトの皮膚などに対する安全性が高く、本発明の抗菌性組成物を繊維製品、ヒトの皮膚などの被着体に適用したときに被膜が形成されることを抑制し、容易に入手することができることから、安息香酸塩および塩化ベンザルコニウムが好ましい。安息香酸塩および塩化ベンザルコニウムは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0019】
本発明の抗菌性組成物における非金属系抗菌剤の含有率は、当該非金属系抗菌剤の種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、非金属系抗菌剤による抗菌性を十分に発現させる観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。本発明の抗菌性組成物における非金属系抗菌剤の含有率の上限値は、当該非金属系抗菌剤の種類および当該抗菌性組成物の用途によって異なることから一概には決定することができない。例えば、本発明の抗菌性組成物の用途が繊維である場合には、本発明の抗菌性組成物における非金属系抗菌剤の含有率の上限値は、繊維に対する付着性を高める観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。また、本発明の抗菌性組成物の用途がヒトの皮膚である場合には、本発明の抗菌性組成物における非金属系抗菌剤の含有率の上限値は、当該非金属系抗菌剤の種類によって異なることから一概には決定することができないが、通常、ヒトの皮膚に刺激などを付与しないようにする観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、より一層好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。なお、本発明の抗菌性組成物には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、銀、銅、亜鉛、白金などの金属系抗菌剤が含まれていてもよい。
【0020】
本発明の抗菌性組成物には、必要により、添加剤が含まれていてもよい。当該添加剤は、本発明の抗菌性組成物の用途に応じて適宜選択して用いることができる。添加剤としては、例えば、抗酸化剤、天然色素、ビタミンDなどの各種ビタミン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどの多糖類、ブドウ糖、乳糖などの糖類、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸などのムコ多糖、グリセリン、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール、コラーゲン、ゼラチン、アパタイト、紫外線吸収剤、紫外線防止剤、湿潤剤、保湿剤、酸化防止剤、コロイダルシリカなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。本発明の抗菌性組成物における添加剤の含有率は、当該添加剤の種類によって異なることから、本発明の目的が阻害されない範囲内で当該添加剤の種類に応じて適宜調整することが好ましい。
【0021】
本発明の抗菌性組成物は、例えば、ポリビニルアルコールまたはその水溶液、非金属系抗菌剤および必要により用いられる添加剤を常温、加温または冷却下で混合することにより、容易に調製することができるが、全量を100質量%とするために必要な量(バランス量)の水を当該抗菌性組成物に添加してもよい。
【0022】
本発明の抗菌性組成物は、ヒトの皮膚にやさしく、繊維製品、ヒトの皮膚などの被着体に適用したときの付着性に優れ、被膜を形成しがたいことから、例えば、繊維、ヒトの皮膚などの用途に好適に用いることができる。
【0023】
繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどに代表されるポリエステル;ナイロン6、ナイロン66などに代表されるポリアミド;アクリル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどに代表されるポリオレフィン;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリウレタンなどの合成樹脂からなる合成繊維;アセテートなどの半合成繊維;木綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維;レーヨンなどの再生繊維などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの繊維は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用して混紡してもよい。繊維の形態は、フィラメントであってもよく、紡糸であってもよく、また織布、不織布、編布などの繊維製品であってもよい。繊維製品としては、例えば、サージカルマスク、衣類、ハンカチ、スカーフ、バッグなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。本発明の抗菌性組成物を例えばサージカルマスクなどに適用した場合、ウイルス、菌などの飛沫による感染を抑制することが期待される。
【0024】
本発明の抗菌性組成物をヒトの皮膚、繊維製品などの用途に適用する場合、当該抗菌性組成物としてポリビニルアルコールおよび非金属系抗菌剤の濃度が高い抗菌性組成物を用意し、使用の際に当該抗菌性組成物を水で希釈したものを使用するようにしてもよい。
【0025】
本発明の抗菌性組成物は、例えば、アンプル、バイアル、スプレー容器などの容器に充填して使用することができる。当該容器の形状、大きさおよび材質には特に限定がなく、当該容器の形状、大きさおよび材質は、本発明の抗菌性組成物の用途に応じて適宜選択することができる。当該容器の一例として、容量が10~500mLである、ポリプロピレン、アクリル樹脂、AS樹脂などの樹脂からなる樹脂容器、ガラス瓶、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂などの樹脂からなる袋体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0026】
本発明の抗菌性組成物は、例えば、スプレー、含浸、塗布などの方法により、繊維に適用することができ、スプレー、塗布などの方法により、ヒトの皮膚に適用することができる。本発明の抗菌性組成物を繊維、ヒトの皮膚などの被着体に適用した後には、必要により当該抗菌性組成物を乾燥させてもよい。
【0027】
本発明の抗菌性組成物は、例えば、抗菌化粧料、抗菌スプレーなどの製品形態で用いることができる。
【0028】
本発明の抗菌性組成物を抗菌化粧料に用いる場合、本発明の抗菌性組成物は、ヒトの皮膚にやさしく、ヒトの皮膚に適用したときの付着性に優れ、被膜を形成しがたいことから、例えば、保湿化粧料、日焼け止め化粧料、抗菌化粧料、各種メーク化粧料などの化粧料に使用することができる。
【0029】
本発明の抗菌性組成物が用いられている抗菌スプレーは、当該抗菌性組成物が用いられていることから、ヒトの皮膚にやさしく、繊維製品、ヒトの皮膚などの被着体に適用したときの付着性に優れ、被膜を形成しがたいので、ヒトの皮膚、繊維製品などの被着体に好適に用いることができる。
【0030】
本発明の抗菌スプレーは、ハンドスプレーおよびエアゾールスプレーのいずれであってもよい。抗菌スプレーに用いられるスプレー容器の種類および容量は、本発明の抗菌性組成物を充填し、噴霧することができるものであればよく、特に限定されない。当該スプレー容器は、商業的に容易に入手することができるものであり、本発明は、当該スプレー容器の種類によって限定されるものではない。本発明の抗菌スプレーは、スプレー容器内に前記抗菌性組成物を充填することにより、容易に作製することができる。
【0031】
本発明の抗菌スプレーを用いて抗菌性組成物を噴霧する場合、例えば、当該抗菌スプレーから噴射される抗菌性組成物を直接的にヒトの皮膚、繊維の被着体などに噴霧することができる。被着体に付着する抗菌性組成物の量は、当該抗菌スプレーの用途などによって異なるので一概には決定することができないことから、当該抗菌スプレーの用途などに応じて適宜決定することが好ましい。
【実施例
【0032】
次に、本発明の抗菌性組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0033】
実施例1
平均重合度が1700であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を濃度が3質量%となるように水に溶解させ、ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液500gを1L容のビーカーに入れ、80℃で15分間加温した後、常温まで放冷した。
【0034】
次に、前記ポリビニルアルコール水溶液500gに非金属系抗菌剤として安息香酸ナトリウム0.5gを添加することにより、抗菌性組成物を調製した。
【0035】
実施例2
平均重合度が1700であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を濃度が5質量%となるように水に溶解させ、ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液500gを1L容のビーカーに入れ、80℃で15分間加温した後、常温まで放冷した。
【0036】
次に、前記ポリビニルアルコール水溶液500gに非金属系抗菌剤として安息香酸ナトリウム0.5gを添加することにより、抗菌性組成物を調製した。
【0037】
実施例3
平均重合度が1700であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を濃度が10質量%となるように水に溶解させ、ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液500gを1L容のビーカーに入れ、80℃で15分間加温した後、常温まで放冷した。
【0038】
次に、前記ポリビニルアルコール水溶液500gに非金属系抗菌剤として安息香酸ナトリウム0.3gを添加することにより、抗菌性組成物を調製した。
【0039】
実施例4
平均重合度が1700であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を濃度が20質量%となるように水に溶解させ、ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液500gを1L容のビーカーに入れ、80℃で15分間加温した後、常温まで放冷した。
【0040】
次に、前記ポリビニルアルコール水溶液500gに非金属系抗菌剤として安息香酸ナトリウム1gを添加することにより、抗菌性組成物を調製した。
【0041】
実施例5
平均重合度が1700であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を濃度が25質量%となるように水に溶解させ、ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液500gを1L容のビーカーに入れ、80℃で15分間加温した後、常温まで放冷した。
【0042】
次に、前記ポリビニルアルコール水溶液500gに非金属系抗菌剤として安息香酸ナトリウム0.5gを添加することにより、抗菌性組成物を調製した。
【0043】
実施例6
平均重合度が500であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-105〕を濃度が10質量%となるように水に溶解させ、ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液500gを1L容のビーカーに入れ、80℃で15分間加温した後、常温まで放冷した。
【0044】
次に、前記ポリビニルアルコール水溶液500gに非金属系抗菌剤として安息香酸ナトリウム0.5gを添加することにより、抗菌性組成物を調製した。
【0045】
実施例7
平均重合度が2400であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-124〕を濃度が10質量%となるように水に溶解させ、ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液500gを1L容のビーカーに入れ、80℃で15分間加温した後、常温まで放冷した。
【0046】
次に、前記ポリビニルアルコール水溶液500gに非金属系抗菌剤として塩化安息香酸ナトリウム0.5gを添加することにより、抗菌性組成物を調製した。
【0047】
実施例8
平均重合度が1700であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を濃度が3質量%となるように水に溶解させ、ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液500gを1L容のビーカーに入れ、80℃で15分間加温した後、常温まで放冷した。
【0048】
次に、前記ポリビニルアルコール水溶液500gに非金属系抗菌剤として塩化ベンザルコニウム0.5gを添加することにより、抗菌性組成物を調製した。
【0049】
実施例9
平均重合度が1700であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を濃度が5質量%となるように水に溶解させ、ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液500gを1L容のビーカーに入れ、80℃で15分間加温した後、常温まで放冷した。
【0050】
次に、前記ポリビニルアルコール水溶液500gに非金属系抗菌剤として塩化ベンザルコニウム0.5gを添加することにより、抗菌性組成物を調製した。
【0051】
実施例10
平均重合度が1700であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を濃度が10質量%となるように水に溶解させ、ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液500gを1L容のビーカーに入れ、80℃で15分間加温した後、常温まで放冷した。
【0052】
次に、前記ポリビニルアルコール水溶液500gに非金属系抗菌剤として塩化ベンザルコニウム0.3gを添加することにより、抗菌性組成物を調製した。
【0053】
実施例11
平均重合度が1700であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を濃度が20質量%となるように水に溶解させ、ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液500gを1L容のビーカーに入れ、80℃で15分間加温した後、常温まで放冷した。
【0054】
次に、前記ポリビニルアルコール水溶液500gに非金属系抗菌剤として塩化ベンザルコニウム1gを添加することにより、抗菌性組成物を調製した。
【0055】
実施例12
平均重合度が1700であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を濃度が25質量%となるように水に溶解させ、ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液500gを1L容のビーカーに入れ、80℃で15分間加温した後、常温まで放冷した。
【0056】
次に、前記ポリビニルアルコール水溶液500gに非金属系抗菌剤として塩化ベンザルコニウム0.5gを添加することにより、抗菌性組成物を調製した。
【0057】
実施例13
平均重合度が500であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-105〕を濃度が10質量%となるように水に溶解させ、ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液500gを1L容のビーカーに入れ、80℃で15分間加温した後、常温まで放冷した。
【0058】
次に、前記ポリビニルアルコール水溶液500gに非金属系抗菌剤として塩化ベンザルコニウム0.5gを添加することにより、抗菌性組成物を調製した。
【0059】
実施例14
平均重合度が2400であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-124〕を濃度が10質量%となるように水に溶解させ、ポリビニルアルコール水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液500gを1L容のビーカーに入れ、80℃で15分間加温した後、常温まで放冷した。
【0060】
次に、前記ポリビニルアルコール水溶液500gに非金属系抗菌剤として塩化ベンザルコニウム0.5gを添加することにより、抗菌性組成物を調製した。
【0061】
実験例1
シャーレ(直径:100mm、高さ:20mm)に深さが2~3mm程度となるように水を入れた。培地として、白米を炊飯し、得られた炊飯米を円形に押し固めた培地(直径:約8cm、厚さ:約2cm)を用いた。前記で得られた培地の底部をシャーレ内の水中に浸漬させるとともに培地全体に水を噴霧して濡らした後、当該シャーレ上に蓋を載せて室温が約37℃で相対湿度が約80%である雰囲気中で7日間放置したところ、培地の表面にカビが発生していた。発生したカビを回収し、回収されたカビを水300mL中に添加し、十分に攪拌することにより、カビが均一に分散した分散液を得た。
【0062】
ガーゼ(縦:約5cm、横:約2.5cm)を3枚重ねにしたシートを複数用意し、このシートを別々にそれぞれシャーレ(直径:100mm、高さ:20mm)に入れ、各シートに前記で得られた分散液約10mLをそれぞれ万遍なく付着させた。
【0063】
前記で得られた各シートに各実施例で得られた抗菌性組成物約10mLをそれぞれ別々にスポイトで滴下することによって抗菌性組成物を付着させ、抗菌性組成物が付着しているシートを作製した。一方、対照のため、抗菌性組成物を付着させていないシートを用意した。
【0064】
次に、各シャーレに蓋を載せた後、37℃の空気中で24時間カビを培養した。その結果、抗菌性組成物が付着しているシートが用いられているシャーレでは、いずれも、抗菌性組成物が付着している部分にカビの増殖がほとんど認められなかったが、抗菌性組成物が付着していないシートが用いられているシャーレでは、カビの増殖が明らかに認めらた。これらのことから、各実施例で得られた抗菌性組成物は、カビの増殖を抑制することから抗菌性に優れていることがわかる。
【0065】
実験例2
抗菌性組成物の付着性を評価しやすくするために、実施例1で得られた抗菌性組成物100gにアパタイト5gを添加することにより、評価用試料を調製した。
【0066】
前記で得られた評価用試料をスプレー容器(容量:約200mL)に入れて抗菌スプレー(ハンドスプレー)を作製した。被着体として不織布製のサージカルマスク(質量:3.10g)、キルト(質量:0.53g)、ガーゼ(質量:0.30g)またはサポーター(質量:1.43g)を用いた。
【0067】
抗菌スプレーから評価用試料約5mLを各被着体に噴霧することによって付着させた後、各被着体の一端を左手の手指で掴み、右手の中指で当該被着体を3回軽く弾くことにより、被着体に付着している評価用試料の一部を除去した。当該被着体の質量から評価用試料を付着させる前の被着体の質量を減じることにより、評価用試料の初期付着量を求めた。その結果を表1に示す。
【0068】
次に、各被着体を室温中で前記評価用試料を付着させてから10分間放置した後、当該被着体の質量を測定し、当該被着体に付着している評価用試料の付着量(10分間経過後の付着量)を前記と同様にして調べ、さらに各被着体に評価用試料の被膜が形成されているかどうかを目視で調べた。その結果を表1に示す。
【0069】
対照試験として、実施例1で得られた抗菌性組成物の代わりに水100gにアパタイト5gを添加することによって調製された対照試料を用いたこと以外は、前記と同様にして対照試料の初期付着量および10分間経過後の付着量を調べ、さらに各被着体に評価用試料の被膜が形成されているかどうかを前記と同様にして目視で調べた。その結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示された結果から、実施例1で得られた抗菌性組成物は、対象試料と対比して、各種被着体に対する抗菌性組成物の付着量が多いことから、付着性に優れていることがわかる。
【0072】
実験例3
実施例1で得られた抗菌性組成物または実施例8で得られた抗菌性組成物をそれぞれ約80mLの量で用意し、当該抗菌性組成物にアパタイト5gを添加し、得られた評価用試料をそれぞれ別々のスプレー容器(容量:約200mL)に入れて抗菌スプレー(ハンドスプレー)を作製した。また、対照のため、水80mLにアパタイト5gを添加し、得られた対照用試料をスプレー容器(容量:約200mL)に入れて対照用スプレー(ハンドスプレー)を作製した。
【0073】
前記で得られた抗菌スプレーから評価用試料約5mLをヒトの左腕に噴霧して付着させた後、乾燥させた。一方、右腕には対象用スプレーから対照用試料約5mLを噴霧して付着させた後、乾燥させた。
【0074】
次に、両腕を上下方向に同時に屈伸させた後、左右の両腕にそれぞれ付着している評価用試料および対象用試料を目視にて観察したところ、右腕に付着している対象用試料と対比して、実施例1で得られた抗菌性組成物および実施例8で得られた抗菌性組成物のいずれが用いられている場合であっても左腕に評価用試料が多量に残存していることが認められた。このことから、実施例1で得られた抗菌性組成物および実施例8で得られた抗菌性組成物は、いずれも対象試料と対比してヒトの皮膚に対する抗菌性組成物の付着性に優れていることがわかる。
【0075】
以上の結果から、本発明の抗菌性組成物にはヒトの皮膚にやさしいポリビニルアルコールが使用されており、本発明の抗菌性組成物は、ヒトの腕、繊維製品などの被着体に対する付着性に優れており、被膜を形成しがたいことから、ヒトの皮膚、繊維製品などの用途に好適に用いることができることがわかる。
【0076】
したがって、本発明の抗菌性組成物は、抗菌性を有し、抗菌剤の付着性に優れていることから、抗菌スプレーとして用いることができるのみならず、抗菌性組成物に消毒成分を含有させた場合には、消毒剤の付着性に優れている消毒スプレーとして用いることができる。さらに、本発明の抗菌性組成物に殺虫成分を含有させた場合には、殺虫成分の付着性に優れている殺虫スプレーとして用いることができる。