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  • 特許-メタン発酵排水処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】メタン発酵排水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/28 20230101AFI20240705BHJP
   C02F 1/24 20230101ALI20240705BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C02F3/28 A ZAB
C02F1/24 D
C02F11/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020168701
(22)【出願日】2020-10-05
(65)【公開番号】P2022060930
(43)【公開日】2022-04-15
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】592059622
【氏名又は名称】株式会社エイブル
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 敏機
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-069397(JP,A)
【文献】特開2005-185967(JP,A)
【文献】特開2005-125202(JP,A)
【文献】特開平09-206786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸発酵槽とUASBメタン発酵槽とからなるメタン発酵排水処理装置において、
前記酸発酵槽の前段に、気泡の浮力を利用して固形物を浮上させて分離する固液分離手段としての加圧浮上分離装置が設けられ、該固液分離手段は、分離された前記固形物を溶解槽に送給する配管と、前記固形物が分離されて残った分離水を前記固液分離手段の下流側へ送給する配管とを有し、
前記溶解槽は、前記固形物を撹拌して有機性成分を溶解させる溶解手段と、溶解した前記有機性成分を前記固液分離手段の上流側へ返送する配管を有することを特徴とするメタン発酵排水処理装置。
【請求項2】
酸発酵槽とUASBメタン発酵槽とからなるメタン発酵排水処理装置において、
前記酸発酵槽の後段に、気泡の浮力を利用して固形物を浮上させて分離する固液分離手段としての加圧浮上分離装置が設けられ、該固液分離手段は、分離された前記固形物を溶解槽に送給する配管と、前記固形物が分離されて残った分離水を前記固液分離手段の下流側へ送給する配管とを有し、
前記溶解槽は、前記固形物を撹拌して有機性成分を溶解させる溶解手段と、溶解した前記有機性成分を前記固液分離手段の上流側へ返送する配管を有することを特徴とするメタン発酵排水処理装置。
【請求項3】
前記溶解槽に、薬液注入によりpHを調整するpH調整手段が設けられている、請求項1または2に記載のメタン発酵排水処理装置。
【請求項4】
前記溶解槽において、前記固形物がポンプにより循環撹拌される、請求項1~3のいずれかに記載のメタン発酵排水処理装置。
【請求項5】
前記溶解槽に、溶解せず残留する固形物を系外に排出する配管が設けられている、請求項1~4のいずれかに記載のメタン発酵排水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機性排水をUASBメタン発酵処理するメタン発酵排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から糖類、でんぷん、アミノ酸、アルコール類、その他の溶解性有機物を含む排水を浄化処理するに際して、メタン発酵排水処理装置が採用されている。
【0003】
メタン発酵排水処理装置は、有機物をメタン生成菌によって分解して浄化するとともに、蒸気や熱水を発生させるボイラーの熱源や電力に変換できるメタンガスを発生させるものであり、エネルギー的に非常に有利な処理装置である。
【0004】
メタン発酵排水処理装置には種々の装置が用いられているが、近年ではUASBメタン発酵排水処理装置が用いられている。しかしながらUASBメタン発酵排水処理装置の応用例は少なく、応用対象とし得る工場等の排水発生施設において、その数%しか採用されていない。
【0005】
UASBメタン発酵排水処理装置は、前段に設ける酸生成槽と後段に設けるUASBメタン発酵槽の組み合わせにより、前段の酸発酵槽で有機物を低級脂肪酸等に低分子化した後に、UASBメタン発酵槽で、メタン生成菌により副生成物としてメタンガスを発生させながら効率よく有機物を分解するものである。
【0006】
UASBメタン発酵槽は、主としてメタン生成菌を0.5~4mm径のグラニュールと呼ばれるペレット状の塊として反応槽内に保持して嫌気性処理を行う槽であり、槽内汚泥の保持濃度が4万~6万mg/Lと高く、しかも当該グラニュールのメタン生成活性が高いことからUASBメタン発酵槽を用いた装置は最も効率的な嫌気処理装置とされている。
【0007】
しかしながら動物性油脂や植物性油脂やタンパク質等の有機性固形物を含む排水、たとえば大豆製品製造排水、菓子・デザート等製造排水、食肉、魚類化工排水、あるいはその他の食品製造排水を対象とする場合、UASBメタン発酵排水処理装置を採用することは難しかった。
【0008】
すなわち、排水中に含まれる油分やたんぱく質、その他の有機性固形物の濃度が一定の値を超えると、UASBメタン発酵槽内に存在するグラニュールの表面に油分や有機性固形物が付着し、原理的には固液反応であるメタン発酵反応そのものを阻害し、メタン反応速度を低下させるからである。
【0009】
またグラニュールの表面に付着した有機性固形物によってグラニュール内部で発生したガスを外部に放出させることができなくなり、さらに当該固形物、特に油分によってグラニュール表面にガスが付着しやすくなり、その結果としてグラニュールが軽くなり、水中で浮き上がり処理水と一緒に系外に流出してしまい、システム自体が破綻してしまう。
【0010】
また多量の有機性固形物の存在は、槽内に留まるべきグラニュールの存在位置に当該固形物が占めることになり、その分のグラニュールが系外に排出され、その結果、メタン反応能力が低下する。
【0011】
上述した理由によりUASBメタン発酵排水処理装置の対象となる被処理水中の油分と有機性固形物の上限濃度は、概ねそれぞれ油分は30mg/L、有機性固形物は500mg/Lとされており、当該数値を超える排水の場合はUASBメタン発酵排水処理装置の適用が難しい。
【0012】
なお油分や有機性固形物の弊害を防ぐため油分や有機性固形物を溶解させることができる分解酵素を排水中に添加し、油分や有機性固形物を溶解させた後にUASBメタン発酵排水装置で処理することも提案されているが、大容量の溶解槽が必要となり、実施される例は少ない。
【0013】
また特許文献1には、有機性固形物が多く含まれている排水を酸発酵槽で処理した後に、酸発酵槽の処理水中の当該固形物を遠心脱水機やベルトプレスなどの汚泥脱水機で除くことにより、後段に設置されているUASBメタン発酵槽の当該固形物による障害を除くことが開示されている。
【0014】
しかしながら上記の方法は、汚泥脱水機で除いた有機性固形物を別途処理するためのコストがかかり、経済的にはよい方法とは言えない。
【0015】
さらに特許文献2には、懸濁固形物(SS)が6g/L以上で、CODcrが9g/L以上の排水をUASBメタン発酵槽で処理するにあたり、SS/CODcrの重量比を0.35以下に調整してUASBメタン発酵槽で処理することが開示されており、具体的には0.1mmのメッシュを備えたスクリーン装置で予め排水を処理して当該固形物を除き、SS/CODcrの値を上記数値内に調整した後、酸発酵槽とUASBメタン発酵槽で順に処理するものである。
【0016】
しかしながら上記の方法も、スクリーン装置で除いた懸濁固形物を別途処理するためのコストがかかり、経済的にはよい方法とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特公平3-67760号公報
【文献】特開平5-253594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は油分やたんぱく質、その他の有機物からなる有機性固形物が多量に含まれていて、従来ではUASBメタン発酵槽で処理することができないような排水を問題なく処理できるメタン発酵排水処理装置を提供することを目的とする。
【0019】
また系外に排出される固形物の量を極力少なくすることができるメタン発酵排水処理装置を提供することを目的とする。
【0020】
さらに溶解性有機物質のみならず、前記有機性固形物をもメタン発酵の対象とすることができ、熱源や動力源に変換しうるメタンガスの発生量を飛躍的に増加させることができ、エネルギーの回収率を大幅に増加し得るメタン発酵排水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者等は油分やたんぱく質、その他の有機物からなる有機性固形物を濃縮し、特定のpH範囲に保って撹拌を行うと有機性固形物の大部分が溶解できることを知見した。
【0022】
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、酸発酵槽とUASBメタン発酵槽とからなるメタン発酵排水処理装置において、前記酸発酵槽の前段または後段に固形物を分離する固液分離手段が設けられ、該固液分離手段は、分離された前記固形物を溶解槽に送給する配管と、前記固形物が分離されて残った分離水を前記固液分離手段の下流側へ送給する配管とを有し、前記溶解槽は、前記固形物を撹拌して有機性成分を溶解させる溶解手段と、溶解した前記有機性成分を前記固液分離手段の上流側へ返送する配管を有することを特徴とするメタン発酵排水処理装置である。
【0023】
このようなメタン発酵排水処理装置によれば、排水から有機性固形物を効果的に除いてUASBメタン発酵槽で処理することができる。
【0024】
本発明のメタン発酵排水処理装置において、前記固液分離手段が、気泡の浮力を利用して前記固形物を浮上させる加圧浮上分離装置からなることが好ましい。排水に含まれる有機性固形物は比較的軽いため、加圧浮上操作により発生する微細気泡を付着させることにより効率的に固液分離を行うことができる。
【0025】
本発明のメタン発酵排水処理装置において、前記溶解槽に、薬液注入によりpHを調整するpH調整手段が設けられていることが好ましい。具体的にはpH計とpH計に連動する薬液注入ポンプを設けてpHが6~8.5の範囲に入るように制御することにより、有機性固形物が溶解して発生する有機酸により液が酸性に偏って反応が阻害されることを防止することができる。
【0026】
本発明のメタン発酵排水処理装置において、前記溶解槽において、前記固形物がポンプにより循環撹拌されることが好ましい。攪拌機などの撹拌手段を用いてもよいが、ポンプにより循環撹拌する場合には撹拌機の設置が不要である上に、溶解槽の底部から溶解液を取り出して溶解槽の上方に戻すことにより固形物を効果的に撹拌できる。
【0027】
本発明のメタン発酵排水処理装置において、前記溶解槽に、溶解せず残留する固形物を系外に排出する配管が設けられていることが好ましい。本発明によれば有機性固形物の大部分を溶解させて固液分離手段の上流側へ返送することができるが、溶解せず残留する固形物は上流側へ返送されずに系内に蓄積されるので、所定の頻度で配管を通じて固形物を系外に排出することで、排水処理を安定的に継続することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のメタン発酵廃液処理装置は、被処理水中に存在する有機性固形物を除いてからUASBメタン発酵槽で処理することができるので、従来ではUASBメタン発酵処理を採用することができないような排水でもUASBメタン発酵処理することができ、UASBメタン発酵処理装置の応用分野を拡大することが可能となり、社会に貢献するところが大きい。
【0029】
さらに、UASBメタン発酵槽内のグラニュールの表面を有機性固形物が付着することがなく、グラニュールの持つ能力を最大限に発揮することができ、メタン発酵処理を効果的に行うことができる。
【0030】
また有機性固形物の大部分を溶解させてメタン発酵処理を行う事ができるので、系外に排出される固形物量を著しく少なくすることができ、固形物の廃棄処分費用を大幅に低減できる。
【0031】
また従来ではメタン発酵処理の対象とならない有機性固形物をも溶解させてメタン発酵処理の対象とすることができ、熱源や動力源に変換しうるメタンガスの発生量を飛躍的に増加させることができ、エネルギーの回収率を大幅に増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明のUASBメタン発酵排水処理装置の一実施態様を示す説明図である。
図2】本発明のUASBメタン発酵排水処理装置の他の実施態様を示す説明図である。
図3】本発明のUASBメタン発酵排水処理装置のさらに他の実施態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明を、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、固液分離装置を酸発酵槽の後段に設置する場合の、本発明のメタン発酵排水処理装置の一実施態様を示す説明図であり、1は調整槽、2は酸発酵槽、3はUASBメタン発酵槽である。
【0034】
酸発酵槽2とUASBメタン発酵槽3の間には固液分離装置としての加圧浮上分離装置4が設置され、加圧浮上分離装置4で分離された分離水をUASBメタン発酵槽3に送給する配管5と、加圧浮上分離装置4で分離された有機性固形物をスカム受け槽6を介して溶解槽7に送給する配管8とが設けられている。また溶解槽7には溶解液を酸発酵槽2に返送する配管9と、加圧浮上分離装置4に返送する配管10とが設けられている。
【0035】
また溶解槽7には循環ポンプ11が設置されており、溶解槽7の底部から溶解液を取り出して循環配管12を介して溶解槽7の上方に戻すことにより、溶解槽7内を撹拌できるようになっている。
【0036】
さらに溶解槽7には槽内液のpHを検出するpH計13と当該pH計に連動する薬液注入ポンプ14が設けられている。
【0037】
なお調整槽1にも循環ポンプ15と循環配管16が設けられていて、調整槽1内を撹拌できるようになっている。また、配管17は調整槽1と酸発酵槽2とを連通し、配管18は酸発酵槽2と加圧浮上分離槽4とを連通している。
【0038】
次に本発明のメタン発酵排水装置の操作を説明する。
溶解性有機物および油分、たんぱく質、その他の有機物からなる有機性固形物を含む被処理水は調整槽1に流入され、循環ポンプ15を稼働して調整槽1内を撹拌しながら12~24時間滞留させることにより被処理水は均一に混合される。なお調整槽1は発生元で流出される有機性排水の流量が変動しても滞留させることにより一定の流量で当該排水を処理できるような役割も持っている。
【0039】
調整槽1で均一に混合された被処理水は配管17を介して酸発酵槽2に流入され、図示されていない循環ポンプ、循環配管によって撹拌しながら、6~24時間滞留させることにより溶解性有機物の分解が進行し、溶解性有機物は低分子化する。
【0040】
酸発酵槽2で処理された処理水中には、低分子化した溶解性有機物、有機性固形物を含むが、当該処理水は配管18を介して加圧浮上分離装置4に流入されて処理される。
【0041】
一般に加圧浮上分離装置は、懸濁物質を含む水に高分子凝集剤等の凝集剤を加えて懸濁物質を凝集し、その凝集物を含む水に空気を加圧下で溶解させた加圧水を加え、その圧力を一気に常圧に戻すことによって発生する微細気泡を前記凝集物に付着させて軽くし、軽くなった凝集物を浮上させて分離する装置であるが、酸発酵槽2の処理水中に含まれる有機性固形物は比較的軽く、これを固液分離するに際しては加圧浮上分離装置が最も適している。
【0042】
加圧浮上分離装置4によって常法により有機性固形物が除かれた処理水は配管5を介してUASBメタン発酵槽3に送給され、流入水中に含まれる低分子化した溶解性有機物はグラニュール状のメタン生成菌によって分解され、その処理水は処理水流出管19から流出される。
【0043】
なお上記有機物が分解することにより発生するメタンガスはガス放出管20から取り出され、図示していないガスホルダーに一旦貯留され、ボイラーの熱源として供給され、あるいは発電機に送給され発電に供される。
【0044】
一方、加圧浮上分離装置4で分離されることにより、懸濁固形物量として2~3%に濃縮された有機性固形物の濃縮液は、スカム受け槽6で一旦貯留され、次いで配管8を介して溶解槽7に送給される。
【0045】
循環ポンプ11および循環配管12により溶解槽7内の濃縮液が撹拌される過程で、上記濃縮液中の有機性固形物は、元々被処理水に含まれていた油脂分解酵素、タンパク質分解酵素あるいは腐敗菌によって分解され、10~30日の滞留によって有機性固形物の70~90%が溶解される。この反応は20~40℃で行われるが、場合によっては溶解槽7に油脂分解酵素やたんぱく質分解酵素を添加してもよい。
【0046】
上記反応によって有機性固形物の溶解が進むと若干の有機酸が発生することにより、液が酸性に偏り反応が阻害される。よって液のpHをpH計13で計測し、液のpHが6~8.5の範囲に入るようにpH計13に連動する薬液注入ポンプ14から苛性ソーダ液等のアルカリ液が注入される。
【0047】
このようにして得られた溶解槽7の溶解液は配管9および/または10によって酸発酵槽2および/または加圧浮上分離装置4に戻され、酸発酵槽2の流入水と混合され、また加圧浮上分離装置4の流入液と混合され、循環処理される。
【0048】
なお図1の実施態様では溶解液は酸発酵槽2と加圧浮上分離装置4の両方に戻されているが、これに限定されることはなく、溶解液は酸発酵槽2のみ、あるいは加圧浮上分離装置4のみに戻してもよい。
【0049】
なお有機性固形物中には溶解が困難な繊維類、ミネラル類が10~30%含まれており、系内に未溶解固形物として蓄積してくる。
【0050】
したがってこれらの未溶解固形物は、溶解槽7に付設したブロー管21から定期的に排出され、別途処理される。
【0051】
図1に示した実施態様では固液分離装置として加圧浮上分離装置4が用いられているが、これに限定されず酸発酵槽2中に含まれる有機性固形物を分離できる装置であれば、凝集沈殿装置等いかなる固液分離装置も用いることができる。
【0052】
また溶解槽7を撹拌するにあたり、循環ポンプと循環配管に代えて、攪拌機などの他の撹拌手段を用いることができる。
【0053】
図2は固液分離装置を酸発酵槽の後段に設置する場合の本発明のメタン発酵排水処理装置の他の実施態様を示す説明図であり、調整槽と酸発酵槽を別々に設ける代わりに調整槽と酸発酵槽とを合体させた調整槽兼酸発酵槽22を設けた点を除いては、図1に示したメタン発酵排水処理装置と同様である。
【0054】
従来から調整槽および酸発酵槽よりやや大きめの調整槽兼酸発酵槽を設けて装置を簡素化することが行われており、本発明装置においてもこれを採用することができる。
【0055】
このように調整槽兼酸発酵槽22を設けた場合は、溶解槽7で得られる溶解液は配管9を介して調整槽兼酸発酵槽22に、また配管10を介して加圧浮上分離装置4に戻される。その他の操作は図1と同様なので説明を省略する。
【0056】
図3は、固液分離装置を酸発酵槽の前段に設置する場合の本発明のメタン発酵排水処理装置の他の実施態様を示す説明図である。本実施態様では、酸発酵槽2の前段に固液分離装置としての加圧浮上分離装置4が設置されている点、および酸発酵槽2の直後にメタン発酵槽3が設置されている点、そして調整槽1の直後に加圧浮上分離装置4が設置されている点を除いては図1に示したメタン発酵排水処理装置と同様である。
【0057】
図3に示したメタン発酵排水処理装置では、溶解性有機物および油分、たんぱく質、その他の有機物からなる有機性固形物を含む被処理水は調整槽1に流入され、次いで均一に混合された被処理水は配管17を介して加圧浮上分離装置4に流入されて処理される。
【0058】
加圧浮上分離装置4によって常法により有機性固形物が分離され、有機性固形物が除かれた処理水は配管18を介して酸発酵槽2に流入され、溶解性有機物は低分子化し種々の有機酸等に変化し、次いで酸発酵槽2の処理水は配管5を介してメタン発酵槽3に流入され、流入水中に含まれる低分子化した溶解性有機物はグラニュール状のメタン生成菌によって分解され、その処理水は処理水流出管19から流出される。また上記有機物が分解することにより発生するメタンガスはガス放出管20から取り出され、図示していないガスホルダーに一旦貯留される。
【0059】
一方、加圧浮上分離装置4で分離されることにより、懸濁固形物量として2~3%に濃縮された有機性固形物の濃縮液は、スカム受け槽6で一旦貯留され、次いで配管8を介して溶解槽7に送給され、図1で説明したのと同様に有機性固形物は溶解される。
【0060】
また当該溶解液は配管9および/または10によって調整槽1および/または加圧浮上分離装置4に戻され、調整槽1の流入水と混合され、また加圧浮上分離装置4の流入液と混合され、循環処理される。
【0061】
なお図3の実施態様では溶解液は調整槽1と加圧浮上分離装置4の両方に戻されているが、これに限定されることはなく、溶解液は調整槽1のみ、あるいは加圧浮上分離装置4のみに戻してもよい。
【0062】
なお溶解が困難な繊維類、ミネラル類がブロー管21から定期的に排出されることも図1と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係るメタン発酵排水処理装置は、有機物を含む排水を浄化処理するために広く利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 調整槽
2 酸発酵槽
3 UASBメタン発酵槽
4 加圧浮上分離装置
5 配管
6 スカム受け槽
7 溶解槽
8 配管
9 配管
10 配管
11 循環ポンプ
12 循環配管
13 pH計
14 薬液注入ポンプ
15 循環ポンプ
16 循環配管
17 配管
18 配管
19 処理水流出管
20 ガス放出管
21 ブロー管
22 調整槽兼酸発酵槽
図1
図2
図3