(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】多方弁、配管装置、及び、給水装置
(51)【国際特許分類】
F16K 27/06 20060101AFI20240705BHJP
E03B 5/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
F16K27/06 B
E03B5/00 B
(21)【出願番号】P 2021176988
(22)【出願日】2021-10-28
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000133939
【氏名又は名称】テラル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【氏名又は名称】鈴木 治
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】中川 公輔
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0037826(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0195626(US,A1)
【文献】米国特許第05332193(US,A)
【文献】独国実用新案第000020209477(DE,U1)
【文献】特開2014-218789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/06
E03B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱室を内部に区画する、弁箱と、
前記弁箱室の内部に回転軸線周りに回転可能に配置され、弁体室を内部に区画する、円筒型の弁体と、
を備えた、多方弁であって、
前記回転軸線は、前記弁体の中心軸線と一致し、
前記弁体は、
円筒型の弁体本体と、
環状の閉止壁用封止部材と、
環状の閉止壁蓋部材と、
を有し、
前記弁体本体は、
それぞれ前記弁体室に連通する、複数の開口と、
閉止壁本体部と、
を有し、
前記複数の開口と前記閉止壁本体部とは、弁体周方向に沿って配列されており、
前記閉止壁本体部は、
閉止壁ベース部と、
前記閉止壁ベース部の弁体外周側に位置し、前記閉止壁本体部の平面視において前記閉止壁ベース部よりも小さな面積を有する、閉止壁突出部と、
を有し、
前記閉止壁蓋部材は、前記閉止壁突出部に対して、前記閉止壁本体部を通るとともに弁体径方向に延在する閉止壁軸線を中心とする外周側、かつ、前記閉止壁ベース部の前記弁体外周側に、位置しており、
前記閉止壁本体部と前記閉止壁蓋部材との間には、前記弁体外周側に向かうにつれて溝幅が小さくなる、環状のアリ溝が区画されており、
前記アリ溝内には、前記閉止壁用封止部材が収容されており、
前記閉止壁ベース部は、前記閉止壁ベース部の弁体周方向の両端部に、凸状又は凹状の係合部を有しており、
前記閉止壁蓋部材は、前記閉止壁蓋部材の前記弁体周方向の両端部に、前記係合部と係合する、凹状又は凸状の被係合部を有して
おり、
前記弁体本体と前記閉止壁蓋部材とは、それぞれ、樹脂で構成されており、それにより、弾性変形可能に構成されており、
前記係合部は、前記閉止壁軸線とは反対側へ向かって突出する凸状に構成され、
前記被係合部は、前記閉止壁軸線とは反対側へ向かって窪んだ凹状に構成されている、多方弁。
【請求項2】
前記被係合部における、
前記閉止壁軸線に平行な閉止壁軸線方向に
互いに対向する一対の壁面のうち、前記閉止壁軸線方向の弁体内周側に位置する弁体内周側壁面は、前記閉止壁軸線から遠ざかるにつれて前記閉止壁軸線方向の前記弁体外周側に向かうように傾斜しており、
前記閉止壁軸線に対して垂直な仮想平面に対する、前記係合部における前記閉止壁軸線方向の前記弁体内周側の面のなす角度αは、前記閉止壁軸線に対して垂直な仮想平面に対する、前記被係合部の前記弁体内周側壁面のなす角度βよりも、小さい、請求項
1に記載の多方弁。
【請求項3】
前記係合部の先端面と前記被係合部の底面との間には、隙間が区画されている、請求項
1又は
2に記載の多方弁。
【請求項4】
前記係合部における、前記被係合部の前記弁体内周側壁面に対向する角部は、曲面形状からなる、請求項
2に記載の多方弁。
【請求項5】
前記閉止壁蓋部材の前記弁体外周側の面は、前記閉止壁本体部の前記弁体外周側の面よりも、弁体内周側に位置している、請求項1~
4のいずれか一項に記載の多方弁。
【請求項6】
前記多方弁は、給水装置の配管装置に用いられるものであり、
前記多方弁は、三方弁として構成されており、
前記給水装置は、
前記配管装置と、
吸込配管と、
吐出配管と、
前記吸込配管及び前記吐出配管に前記配管装置を介して接続された、1号ポンプ及び2号ポンプと、
を備え、
前記多方弁は、前記吸込配管と、前記1号ポンプの吸込口と、前記2号ポンプの吸込口とに、接続される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の多方弁。
【請求項7】
前記多方弁は、給水装置の配管装置に用いられるものであり、
前記多方弁は、三方弁として構成されており、
前記給水装置は、
前記配管装置と、
吸込配管と、
吐出配管と、
前記吸込配管及び前記吐出配管に前記配管装置を介して接続された、1号ポンプ及び2号ポンプと、
を備え、
前記多方弁は、前記吐出配管と、前記1号ポンプの吐出口と、前記2号ポンプの吐出口とに、接続される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の多方弁。
【請求項8】
それぞれ請求項1~
5のいずれか一項に記載の多方弁からなる、第1多方弁及び第2多方弁を備えた、配管装置であって、
前記第1多方弁及び前記第2多方弁は、それぞれ、三方弁として構成されており、
前記第1多方弁及び前記第2多方弁は、前記回転軸線に沿って配列されており、それぞれの前記回転軸線が一致する、配管装置。
【請求項9】
前記配管装置は、給水装置に用いられるものであり、
前記給水装置は、
前記配管装置と、
吸込配管と、
吐出配管と、
前記吸込配管及び前記吐出配管に前記配管装置を介して接続された、1号ポンプ及び2号ポンプと、
を備え、
前記第1多方弁は、前記吸込配管と、前記1号ポンプの吸込口と、前記2号ポンプの吸込口とに、接続され、
前記第2多方弁は、前記吐出配管と、前記1号ポンプの吐出口と、前記2号ポンプの吐出口とに、接続される、請求項
8に記載の配管装置。
【請求項10】
請求項
9に記載の配管装置と、
前記吸込配管と、
前記吐出配管と、
前記1号ポンプ及び前記2号ポンプと、
を備えた、給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方弁、配管装置、及び、給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弁箱と、弁箱の内部に回転軸線周りに回転可能に配置された円筒型の弁体と、を備え、弁体が周方向に沿って配列された複数の開口及び閉止壁を有する、多方弁がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような従来の多方弁においては、弁箱と弁体の閉止壁との間の封止のために、閉止壁の外周面に環状のアリ溝を設け、当該アリ溝内に環状の封止部材を収容することが考えられる。封止部材を収容する溝としてアリ溝を採用することにより、封止部材が溝から脱落しにくくなると考えられる。しかし、このような構成の場合、アリ溝の形成が難しいおそれがあった。
【0005】
本発明は、アリ溝が形成しやすい、多方弁、配管装置、及び、給水装置を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の多方弁は、
弁箱室を内部に区画する、弁箱と、
前記弁箱室の内部に回転軸線周りに回転可能に配置され、弁体室を内部に区画する、円筒型の弁体と、
を備えた、多方弁であって、
前記回転軸線は、前記弁体の中心軸線と一致し、
前記弁体は、
円筒型の弁体本体と、
環状の閉止壁用封止部材と、
環状の閉止壁蓋部材と、
を有し、
前記弁体本体は、
それぞれ前記弁体室に連通する、複数の開口と、
閉止壁本体部と、
を有し、
前記複数の開口と前記閉止壁本体部とは、弁体周方向に沿って配列されており、
前記閉止壁本体部は、
閉止壁ベース部と、
前記閉止壁ベース部の弁体外周側に位置し、前記閉止壁本体部の平面視において前記閉止壁ベース部よりも小さな面積を有する、閉止壁突出部と、
を有し、
前記閉止壁蓋部材は、前記閉止壁突出部に対して、前記閉止壁本体部を通るとともに弁体径方向に延在する閉止壁軸線を中心とする外周側、かつ、前記閉止壁ベース部の前記弁体外周側に、位置しており、
前記閉止壁本体部と前記閉止壁蓋部材との間には、前記弁体外周側に向かうにつれて溝幅が小さくなる、環状のアリ溝が区画されており、
前記アリ溝内には、前記閉止壁用封止部材が収容されており、
前記閉止壁ベース部は、前記閉止壁ベース部の弁体周方向の両端部に、凸状又は凹状の係合部を有しており、
前記閉止壁蓋部材は、前記閉止壁蓋部材の前記弁体周方向の両端部に、前記係合部と係合する、凹状又は凸状の被係合部を有している。
【0007】
本発明の多方弁において、
前記弁体本体と前記閉止壁蓋部材とは、それぞれ樹脂で構成されていると、好適である。
【0008】
本発明の多方弁において、
前記係合部は、前記閉止壁軸線とは反対側へ向かって突出する凸状に構成され、
前記被係合部は、前記閉止壁軸線とは反対側へ向かって窪んだ凹状に構成されていると、好適である。
【0009】
本発明の多方弁において、
前記被係合部における、互いに前記閉止壁軸線方向に対向する一対の壁面のうち、前記閉止壁軸線方向の弁体内周側に位置する弁体内周側壁面は、前記閉止壁軸線から遠ざかるにつれて前記閉止壁軸線方向の前記弁体外周側に向かうように傾斜しており、
前記閉止壁軸線に対して垂直な仮想平面に対する、前記係合部における前記閉止壁軸線方向の前記弁体内周側の面のなす角度αは、前記閉止壁軸線に対して垂直な仮想平面に対する、前記被係合部の前記弁体内周側壁面のなす角度βよりも、小さいと、好適である。
【0010】
本発明の多方弁において、
前記係合部の先端面と前記被係合部の底面との間には、隙間が区画されていると、好適である。
【0011】
本発明の多方弁において、
前記係合部における、前記被係合部の前記弁体内周側壁面に対向する角部は、曲面形状からなると、好適である。
【0012】
本発明の多方弁において、
前記閉止壁蓋部材の前記弁体外周側の面は、前記閉止壁本体部の前記弁体外周側の面よりも、弁体内周側に位置していてもよい。
【0013】
本発明の多方弁において、
前記多方弁は、給水装置の配管装置に用いられるものであり、
前記多方弁は、三方弁として構成されており、
前記給水装置は、
前記配管装置と、
吸込配管と、
吐出配管と、
前記吸込配管及び前記吐出配管に前記配管装置を介して接続された、1号ポンプ及び2号ポンプと、
を備え、
前記多方弁は、前記吸込配管と、前記1号ポンプの吸込口と、前記2号ポンプの吸込口とに、接続されてもよい。
【0014】
本発明の多方弁において、
前記多方弁は、給水装置の配管装置に用いられるものであり、
前記多方弁は、三方弁として構成されており、
前記給水装置は、
前記配管装置と、
吸込配管と、
吐出配管と、
前記吸込配管及び前記吐出配管に前記配管装置を介して接続された、1号ポンプ及び2号ポンプと、
を備え、
前記多方弁は、前記吐出配管と、前記1号ポンプの吐出口と、前記2号ポンプの吐出口とに、接続されてもよい。
【0015】
本発明の配管装置は、
それぞれ上記の多方弁からなる、第1多方弁及び第2多方弁を備えた、配管装置であって、
前記第1多方弁及び前記第2多方弁は、それぞれ、三方弁として構成されており、
前記第1多方弁及び前記第2多方弁は、前記回転軸線に沿って配列されており、それぞれの前記回転軸線が一致してもよい。
【0016】
本発明の配管装置において、
前記配管装置は、給水装置に用いられるものであり、
前記給水装置は、
前記配管装置と、
吸込配管と、
吐出配管と、
前記吸込配管及び前記吐出配管に前記配管装置を介して接続された、1号ポンプ及び2号ポンプと、
を備え、
前記第1多方弁は、前記吸込配管と、前記1号ポンプの吸込口と、前記2号ポンプの吸込口とに、接続され、
前記第2多方弁は、前記吐出配管と、前記1号ポンプの吐出口と、前記2号ポンプの吐出口とに、接続されてもよい。
【0017】
本発明の給水装置は、
請求項11に記載の配管装置と、
前記吸込配管と、
前記吐出配管と、
前記1号ポンプ及び前記2号ポンプと、
を備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アリ溝が形成しやすい、多方弁、配管装置、及び、給水装置を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る給水装置を示す、正面図である。
【
図2】
図1の給水装置において、1号ポンプ及び2号ポンプへの流路を開放した状態の流路を示す、模式図である。
【
図3】
図1の給水装置に備えられる、本発明の一実施形態に係る多方弁及び配管装置を示す、斜視図である。
【
図4】
図3の配管装置を分解して示す、分解斜視図である。
【
図5】
図3の配管装置を、回転軸線に沿う断面により示す、断面図である。
【
図7】
図6の弁体連結体を、回転軸線に垂直なA-A線に沿う断面により示す、A-A断面図である。
【
図8】
図7の弁体連結体の一部を拡大して示す、拡大図である。
【
図9】
図6の弁体連結体を分解して示す、分解斜視図である。
【
図10】
図7の弁体連結体を分解して示す、分解断面図である。
【
図11】
図3の配管装置のうち吸込側部分を、
図2の状態で示す、断面図である。
【
図12】
図3の配管装置のうち吐出側部分を、
図2の状態で示す、断面図である。
【
図13】
図2の給水装置において、1号ポンプへの流路を閉止する操作の途中の状態(弁体の閉止壁を第2弁箱流路に対向させた状態)の流路を示す、模式図である。
【
図14】
図3の配管装置のうち吸込側部分の一部を、
図13の状態で示す、断面図である。
【
図15】
図3の配管装置のうち吐出側部分の一部を、
図13の状態で示す、断面図である。
【
図16】
図2の給水装置において、1号ポンプへの流路を閉止した状態の流路を示す、模式図である。
【
図17】
図3の配管装置のうち吸込側部分の一部を、
図16の状態で示す、断面図である。
【
図18】
図2の給水装置において、2号ポンプへの流路を閉止した状態の流路を示す、模式図である。
【
図19】
図3の配管装置のうち吸込側部分の一部を、
図18の状態で示す、断面図である。
【
図20】
図8に対応する図面であり、弁体連結体の一変形例を説明するための図面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の多方弁及び配管装置は、任意の流体に利用することができるが、液体、特には水に利用すると好適である。また、本発明の多方弁及び配管装置は、任意の用途に利用することができるが、例えば商業建造物や集合住宅等の需要先に給水するための給水装置に、好適に利用することができる。
本発明の給水装置は、例えば商業建造物や集合住宅等の需要先に給水するために、好適に利用することができる。
以下、本発明に係る、多方弁、配管装置、及び、給水装置の実施形態について、図面を参照しながら例示説明する。
各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0021】
本発明の一実施形態に係る多方弁V、配管装置2、及び、給水装置1について、
図1~
図19を参照しつつ、説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る給水装置1の外観を示している。
図2は、
図1に示す本発明の一実施形態に係る給水装置1の流路の模式図を示している。本実施形態の給水装置1は、例えば商業建造物や集合住宅等の需要先に給水するための給水装置として構成されている。給水装置1は、コンパクト性への要求が高いものである。
図1及び
図2に示すように、本実施形態において、給水装置1は、吸込配管3と、吐出配管4と、本実施形態の配管装置2と、1号ポンプP1と、2号ポンプP2と、逆流防止器5と、仕切弁6と、圧力タンク7と、を備えている。吸込配管3は、上水道配水管や高置水槽等に接続される。吐出配管4は、例えば商業建造物や集合住宅等の需要先の配管に接続される。配管装置2と、逆流防止器5と、仕切弁6と、圧力タンク7とは、吸込配管3と吐出配管4との間の流路に配置されている。1号ポンプP1及び2号ポンプP2は、吸込配管3及び吐出配管4に、配管装置2を介して接続されている。逆流防止器5は、配管装置2の上流側に配置されている。仕切弁6及び圧力タンク7は、配管装置2の下流側に配置されている。仕切弁6は、圧力タンク7の上流側に配置されている。
1号ポンプP1及び2号ポンプP2は、それぞれ縦型に構成されており、それぞれの吸込口及び吐出口が、下側を向いている。
給水装置1は、
図1に示すように、キャビネット型に構成されており、具体的には、吸込配管3から吐出配管4までの配管を収容するキャビネット8を、備えている。
ただし、給水装置1は、キャビネット型に構成されていなくてもよい。
【0022】
なお、給水装置1は、
図1及び
図2に示すものに限られず、本明細書で説明する任意の例の配管装置2を備えるとともに、1号ポンプP1及び2号ポンプP2が吸込配管3及び吐出配管4に配管装置2を介して接続されている限り、任意の構成を有してよい。
【0023】
本明細書において、「接続」とは、複数の流路どうしが直接接続される場合に限られず、複数の流路どうしが延長管等の部品を介して接続される場合も含む。
【0024】
図3~
図5は、本実施形態に係る配管装置2を示している。
図3~
図5に示すように、本実施形態の配管装置2は、弁箱連結体KAと、弁体連結体LBと、弁棒BSと、ハンドル21(
図1)と、逆止弁23と、2つの延長管24と、を備えている。
図3~
図5では、ハンドル21の図示を省略している。
【0025】
弁体連結体LBは、円筒型に構成されており、弁箱連結体KAの内部に回転軸線O周りに回転可能に配置されている。回転軸線Oは、弁体連結体LBの中心軸線と一致している。
なお、本明細書において、「円筒型」とは、厳密な円筒形状に限定されず、厳密な円筒形状に近い形状も包含する概念である。
【0026】
本明細書において、「回転軸線方向」とは、回転軸線Oに平行な方向を指す。また、「回転軸線方向第1側O1」とは、回転軸線方向における一方側を指しており、「回転軸線方向第2側O2」とは、回転軸線方向における他方側を指している。また、「弁体内周側」とは、回転軸線Oを中心とする内周側、すなわち、回転軸線Oに近い側を指しており、「弁体外周側」とは、回転軸線Oを中心とする外周側、すなわち、回転軸線Oから遠い側を指している。また、「弁体周方向」とは、回転軸線Oを中心とする周方向を指す。また、「弁体径方向」とは、回転軸線Oを中心とする径方向を指す。
【0027】
弁箱連結体KAは、2つの弁箱Aと、弁箱連結部AGと、を有している。2つの弁箱Aのうちの一方は第1弁箱A1であり、2つの弁箱Aのうちの他方は第2弁箱A2である。第2弁箱A2は、第1弁箱A1よりも回転軸線方向第2側O2に位置している。
以下において、弁箱Aについての説明は、特に断りが無い限り、第1弁箱A1及び第2弁箱A2のそれぞれについての説明である。
図5に示すように、弁箱Aは、弁箱室ACを内部に区画している。第1弁箱A1が内部に区画する弁箱室ACは、第1弁箱室AC1である。第2弁箱A2が内部に区画する弁箱室ACは、第2弁箱室AC2である。
弁箱連結部AGは、第1弁箱A1及び第2弁箱A2どうしを連結しており、第1弁箱室AC1及び第2弁箱室AC2どうしを連通させる弁箱連通室AGCを内部に区画している。
第1弁箱室AC1、第2弁箱室AC2、及び、弁箱連通室AGCは、それぞれ、円筒型をなしている。
【0028】
図3~
図4、
図11~
図12に示すように、弁箱Aが区画する弁箱室ACは、弁箱Aの弁箱本体部AMによって区画されている。弁箱Aは、複数(本実施形態では、3つ)の弁箱口AE1~AE3を有している。具体的に、弁箱Aは、第1弁箱流路AD1を区画する第1弁箱口AE1と、第2弁箱流路AD2を区画する第2弁箱口AE2と、第3弁箱流路AD3を区画する第3弁箱口AE3と、を有している。第1弁箱口AE1と第2弁箱口AE2と第3弁箱口AE3とは、それぞれ弁箱本体部AMに連結している。第1弁箱流路AD1と第2弁箱流路AD2と第3弁箱流路AD3とは、それぞれ、弁箱室ACに連通している。第2弁箱流路AD2及び第3弁箱流路AD3は、第1弁箱流路AD1の流路軸線に直交する方向において互いに対向している。弁箱Aの複数の弁箱口AE1~AE3は、弁体周方向に沿って配列されている。弁箱本体部AMは、弁箱室ACを介して第1弁箱流路AD1と対向する対向壁AWを有している。
弁箱本体部AMは、弁体Bと同軸の円筒型に構成されている。
【0029】
第1弁箱A1の弁箱本体部AMは、回転軸線方向第1側O1の端面が塞がれているとともに回転軸線方向第2側O2の端面が開放した円筒型に構成されている。弁箱連結体KA(具体的には、第1弁箱A1の弁箱本体部AM)は、回転軸線方向第1側O1の端面を塞ぐ、第1端壁AJ1を有している。第1端壁AJ1は、連結具fを介して、弁箱連結体KA(具体的には、第1弁箱A1の弁箱本体部AM)の他の部分に対して脱着可能に連結されている(
図4)。
第2弁箱A2の弁箱本体部AMは、回転軸線方向第2側O2の端面が塞がれているとともに回転軸線方向第1側O1の端面が開放した円筒型に構成されている。弁箱連結体KA(具体的には、第2弁箱A2の弁箱本体部AM)は、回転軸線方向第2側O2の端面を塞ぐ、第2端壁AJ2を有している。第2端壁AJ2は、連結具fを介して、弁箱連結体KA(具体的には、第2弁箱A2の弁箱本体部AM)の他の部分に対して脱着可能に連結されている(
図4)。
連結具fは、例えば、ボルト、ネジ、又はピンである。
【0030】
弁体連結体LBは、上述のように、円筒型に構成されており、弁箱連結体KAの内部に回転軸線O周りに回転可能に配置されている。
図4~
図6に示すように、弁体連結体LBは、2つの弁体Bと、バイパス管22と、を有している。2つの弁体Bのうちの一方は第1弁体B1であり、2つの弁体Bのうちの他方は第2弁体B2である。第2弁体B2は、第1弁体B1よりも回転軸線方向第2側O2に位置している。
以下において、弁体Bについての説明は、特に断りが無い限り、第1弁体B1及び第2弁体B2のそれぞれについての説明である。
図5に示すように、弁体Bは、弁箱室ACの内部に配置されている。第1弁体B1は、第1弁箱室AC1の内部に配置されている。第2弁体B2は、第2弁箱室AC2の内部に配置されている。弁体Bは、弁体室BCを内部に区画している。第1弁体B1が内部に区画する弁体室BCは、第1弁体室BC1である。第2弁体B2が内部に区画する弁体室BCは、第2弁体室BC2である。
バイパス管22は、弁箱連通室AGCの内部に配置されており、第1弁体B1及び第2弁体B2どうしを連結しており、第1弁体室BC1及び第2弁体室BC2どうしを連通させるバイパス通路22Cを内部に区画している。
第1弁体B1、第2弁体B2、及び、バイパス管22は、それぞれ、円筒型をなしている。回転軸線Oは、弁体Bの中心軸線と一致している。
第1弁体室BC1、第2弁体室BC2、及び、バイパス通路22Cは、それぞれ、本実施形態において円筒型をなしているが、他の形状をなしていてもよい。
【0031】
図5~
図6に示すように、バイパス管22の弁体外周側の面には、環状溝22G(以下、「バイパス管用環状溝22G」という。)が形成されている。バイパス管用環状溝22Gは、環状に構成されており、すなわち、弁体周方向に沿って全周にわたって延在している。バイパス管用環状溝22G内には、環状の封止部材D(以下、「バイパス管用封止部材D」という。)が収容されている。バイパス管用封止部材Dは、弁体周方向に沿って全周にわたって延在している。バイパス管用封止部材Dは、弁箱連結部AGの弁体内周側の面とバイパス管22の弁体外周側の面との間を流体密に封止するように構成されている。バイパス管用封止部材Dは、例えばXリングであると好適である。
【0032】
図4、
図6、
図11~
図12に示すように、弁体Bは、複数(本実施形態では、3つ)の開口BF1~BF3と、閉止壁BWと、を有している。具体的に、弁体Bは、第1開口BF1と、第2開口BF2と、第3開口BF3と、閉止壁BWと、を有している。複数の開口BF1~BF3は、それぞれ弁体室BCに連通している。第2開口BF2及び第3開口BF3は、第1開口BF1の中心軸線に直交する方向において互いに対向している。閉止壁BWは、弁体室BCを介して第1開口BF1と対向している。弁体Bの複数の開口BF1~BF3と閉止壁BWとは、弁体周方向に沿って配列されている。
【0033】
弁体Bの構成のさらなる詳細については、後述する。
【0034】
第1弁箱A1及び第1弁体B1は、第1多方弁V1を構成している。第2弁箱A2及び第2弁体B2は、第2多方弁V2を構成している。第2多方弁V2は、第1多方弁V1よりも回転軸線方向第2側O2に位置している。
本明細書においては、第1多方弁V1、第2多方弁V2を区別せずに、これらを包括的に「多方弁V」と呼ぶ場合がある。以下において、多方弁Vについての説明は、特に断りが無い限り、第1多方弁V1及び第2多方弁V2のそれぞれについての説明である。
配管装置2は、2つの多方弁Vを備えている。各多方弁Vは、それぞれ本発明の一実施形態に係る多方弁Vである。多方弁Vは、弁箱Aと、弁体Bと、を備えている。本実施形態において、多方弁Vは、三方弁として構成されている。
【0035】
2つの多方弁Vどうしは、実質的に、構造が同じであり、接続先の流路が異なるのみである。
図2に示すように、2つの多方弁のうちの第1多方弁V1は、吸込側多方弁であり、吸込配管3と、1号ポンプP1の吸込口と、2号ポンプP2の吸込口とに、接続されている。2つの多方弁のうちの第2多方弁V2は、吐出側多方弁であり、吐出配管4と、1号ポンプP1の吐出口と、2号ポンプP2の吐出口とに、接続されている。
第1多方弁V1及び第2多方弁V2は、それぞれ、回転軸線Oの周りに回転されるように構成されている。また、第1多方弁V1及び第2多方弁V2は、回転軸線Oに沿って配列されており、それぞれの回転軸線Oが一致する。本実施形態において、第1多方弁V1及び第2多方弁V2は、回転軸線O周りに同時に回転されるように構成されている。
ハンドル21は、第1多方弁V1及び第2多方弁V2を回転軸線O周りに同時に回転させる際に操作者によって操作されるように構成されている。バイパス管22及び逆止弁23は、第1多方弁V1と第2多方弁V2との間に接続されている。一方の延長管24は、第1多方弁V1と2号ポンプP2の吸込口との間に接続されている。他方の延長管24は、第2多方弁V2と2号ポンプP2の吐出口との間に接続されている。
本実施形態では、上述のように、バイパス管22が、第1多方弁V1と第2多方弁V2との間に接続されている。これにより、例えばバイパス管22が2つの延長管24どうしの間に接続されている場合等に比べて、バイパス管22をコンパクト化でき、ひいては、配管装置2のコンパクト化や低コスト化が可能になる。
ただし、バイパス管22は、2つの延長管24どうしの間に接続されていてもよい。
【0036】
第1多方弁V1において、第1弁箱口AE1は、1号ポンプP1の吸込口に接続され、第2弁箱口AE2は、吸込配管3に接続され、第3弁箱口AE3は、2号ポンプP2の吸込口に接続される(
図11)。第1多方弁V1の第3弁箱口AE3は、延長管24を介して、2号ポンプP2の吸込口に接続される。
第2多方弁V2において、第1弁箱口AE1は、1号ポンプP1の吐出口に接続され、第2弁箱口AE2は、吐出配管4に接続され、第3弁箱口AE3は、2号ポンプP2の吐出口に接続される(
図12)。第2多方弁V2の第3弁箱口AE3は、延長管24を介して、2号ポンプP2の吐出口に接続される。
【0037】
図3~
図4に示すように、第1多方弁V1及び第2多方弁V2のそれぞれの弁箱A(第1弁箱A1及び第2弁箱A2)は、それぞれの第1弁箱口AE1どうし、それぞれの第2弁箱口AE2どうし、かつ、それぞれの第3弁箱口AE3どうしが、それぞれ同じ方向を向くとともに回転軸線方向に沿って配列されるように指向される。
多方弁Vは、第1弁箱口AE1が上側を向き、第2弁箱口AE2及び第3弁箱口AE3が水平方向において互いに反対側を向くように、指向される。
第1多方弁V1の第3弁箱口AE3と2号ポンプP2の吸込口との間に接続された延長管24は、2号ポンプP2の吸込口側の接続口が、上側を向いている。
第2多方弁V2の第3弁箱口AE3と2号ポンプP2の吐出口との間に接続された延長管24は、2号ポンプP2の吐出口側の接続口が、上側を向いている。
第3弁箱口AE3と延長管24とは、一体に構成されている。ただし、第3弁箱口AE3と延長管24とは、互いに別体に構成されて、互いに接続されていてもよい。
第1多方弁V1及び第2多方弁V2のそれぞれの弁箱A(第1弁箱A1及び第2弁箱A2)は、互いに一体に構成されている。
【0038】
図4に示すように、第1多方弁V1及び第2多方弁V2のそれぞれの弁体B(第1弁体B1及び第2弁体B2)は、それぞれの第1開口BF1どうし、それぞれの第2開口BF2どうし、それぞれの第3開口BF3どうし、かつ、それぞれの閉止壁BWどうしが、それぞれ回転軸線方向に沿って配列されるように指向される。
【0039】
弁棒BSは、弁体連結体LB(ひいては弁体B)に連結されている。本実施形態において、弁棒BSは、弁体連結体LB(ひいては弁体B)に対して脱着可能に連結されている。弁棒BSの中心軸線は、回転軸線Oと一致する。弁棒BSの回転軸線方向第1側O1の端部には、ハンドル21(
図1)が取り付けられており、ハンドル21の操作によって弁棒BSを回転軸線O周りに回転させ、ひいては、弁体連結体LB(ひいては弁体B)を回転軸線O周りに回転させることができるようにされている。
すなわち、第1多方弁V1及び第2多方弁V2のそれぞれの弁体B(第1弁体B1及び第2弁体B2)は、互いに連結されており、第1多方弁V1及び第2多方弁V2のそれぞれの弁箱A(第1弁箱A1及び第2弁箱A2)に対して、回転軸線Oの周りに同時に回転されるように構成されている。
【0040】
逆止弁23は、バイパス通路22Cの内部に配置されている。
逆止弁23は、第1多方弁V1の弁体室BC(第1弁体室BC1)から第2多方弁V2の弁体室BC(第2弁体室BC2)への流体の流れのみを許容し、その逆の流体の流れを阻止するように構成されている。
【0041】
図4~
図5に示すように、弁棒BSは、回転軸線方向に延在しており、弁棒BSの回転軸線方向第1側O1の端部が、第1端壁AJよりも回転軸線方向第1側O1へ突出しており、弁棒BSの回転軸線方向第2側O2の端部が、バイパス管22の弁体内周側に位置している。弁棒BSは、弁棒BSの回転軸線方向両端部どうしの間において、第1端壁AJを回転軸線方向に貫通するとともに、第1弁体B1の弁体内周側及びバイパス管22の弁体内周側において、回転軸線方向に延在している。逆止弁23は、弁棒BSに対して回転軸線方向第2側O2に位置している。弁棒BSは、その回転軸線方向第2側O2の端部によって、逆止弁23を脱着可能に保持している。ただし、弁棒BSは、逆止弁23を脱着可能に保持していなくてもよい。
【0042】
ここで、以上のように構成された本実施形態の給水装置1の動作を説明する。
給水装置1においては、通常、1号ポンプP1及び2号ポンプP2が交互もしくは同時に運転される。このとき、給水装置1は、
図2、
図11、及び
図12に示すように、1号ポンプP1及び2号ポンプP2への流路を開放した状態にされる。この状態において、多方弁Vの弁体Bは、閉止壁BWが弁箱Aの対向壁AWに対向し、第1開口BF1、第2開口BF2、及び第3開口BF3が、それぞれ、第1弁箱流路AD1、第2弁箱流路AD2、及び第3弁箱流路AD3に対向するように、指向される(
図11~
図12)。そして、第1多方弁V1側においては、吸込配管3からの流体が、第1多方弁V1を介して、1号ポンプP1の吸込口と2号ポンプP2の吸込口に流れる(
図11)。一方、第2多方弁V2側においては、1号ポンプP1の吐出口と2号ポンプP2の吐出口とからの流体が、第2多方弁V2を介して、吐出配管4に流れる(
図12)。また、この状態において、ポンプ停止中は、第1多方弁V1の弁体室BC(第1弁体室BC1)内の流体が、バイパス管22及び逆止弁23を介して、第2多方弁V2の弁体室BC(第2弁体室BC2)へ流れ、その後、吐出配管4に流れる。
なお、本実施形態では、この状態において、閉止壁用封止部材BWSが、閉止壁用封止部材BWSの周方向の少なくとも一部にわたって、弁箱A(具体的には、対向壁AW及び/又は連結壁AK)に接触しないようにされている(
図11~
図12)。これにより、閉止壁用封止部材BWSが、閉止壁用封止部材BWSの全周にわたって、長い時間にわたって弁箱Aに押し付けられる結果、閉止壁用封止部材BWSが塑性変形することを、防ぐことができる。なお、上述した閉止壁BWの構成により、このように閉止壁用封止部材BWSが閉止壁用封止部材BWSの全周にわたって弁箱Aに接触していない状態で閉止壁用封止部材BWSに水圧がかかっても、閉止壁用封止部材BWSは外れにくいようにされている。
【0043】
給水装置1においては、例えば1号ポンプP1を点検する際等において、1号ポンプP1が停止され、2号ポンプP2のみが運転される。このとき、給水装置1は、
図16~
図17に示すように、1号ポンプP1への流路を閉止した状態にされる。この状態において、多方弁Vの弁体Bは、閉止壁BWが第1弁箱流路AD1に対向し、第1開口BF1、第2開口BF2、及び第3開口BF3が、それぞれ、弁箱Aの対向壁AW、第3弁箱流路AD3、及び第2弁箱流路AD2に対向するように、指向される(
図17)。第1弁箱流路AD1と弁体室BCとは、閉止壁BWによって互いに非連通状態にされる。そして、第1多方弁V1側においては、吸込配管3からの流体が、1号ポンプP1の吸込口には流れずに、第1多方弁V1を介して、2号ポンプP2の吸込口に流れる(
図17)。一方、第2多方弁V2側においては、詳細の図示は省略するが、1号ポンプP1の吐出口から流体が流入せずに、2号ポンプP2の吐出口からの流体が、第2多方弁V2を介して、吐出配管4に流れる。また、この状態において、ポンプ停止中は、第1多方弁V1の弁体室BC(第1弁体室BC1)内の流体が、バイパス管22及び逆止弁23を介して、第2多方弁V2の弁体室BC(第2弁体室BC2)へ流れ、その後、吐出配管4に流れる。
給水装置1において、1号ポンプ及び2号ポンプへの流路を開放した状態(
図2、
図11、及び
図12)から1号ポンプへの流路を閉止した状態(
図16~
図17)に移行する際には、多方弁Vの弁体Bが、回転軸線O周りに弁体周方向一方側(図の例では、時計回り)に180度回転される。
【0044】
給水装置1においては、例えば2号ポンプP2を点検する際等において、2号ポンプP2が停止され、1号ポンプP1のみが運転される。このとき、給水装置1は、
図18~
図19に示すように、2号ポンプP2への流路を閉止した状態にされる。この状態において、多方弁Vの弁体Bは、閉止壁BWが第3弁箱流路AD3に対向し、第1開口BF1、第2開口BF2、及び第3開口BF3が、それぞれ、第2弁箱流路AD2、弁箱Aの対向壁AW、及び第1弁箱流路AD1に対向するように、指向される(
図19)。第3弁箱流路AD3と弁体室BCとは、閉止壁BWによって互いに非連通状態にされる。そして、第1多方弁V1側においては、吸込配管3からの流体が、2号ポンプP2の吸込口には流れずに、第1多方弁V1を介して、1号ポンプP1の吸込口に流れる(
図19)。一方、第2多方弁V2側においては、詳細の図示は省略するが、2号ポンプP2の吐出口から流体が流入せずに、1号ポンプP1の吐出口からの流体が、第2多方弁V2を介して、吐出配管4に流れる。また、この状態において、ポンプ停止中は、第1多方弁V1の弁体室BC(第1弁体室BC1)内の流体が、バイパス管22及び逆止弁23を介して、第2多方弁V2の弁体室BC(第2弁体室BC2)へ流れ、その後、吐出配管4に流れる。
給水装置1において、1号ポンプ及び2号ポンプへの流路を開放した状態(
図2、
図11、及び
図12)から2号ポンプへの流路を閉止した状態(
図18~
図19)に移行する際には、多方弁Vの弁体Bが、回転軸線O周りに弁体周方向他方側(図の例では、反時計回り)に90度回転される。
【0045】
図13~
図15は、多方弁Vの弁体Bの閉止壁BWを第2弁箱流路AD2に対向させた状態を示している。この状態は、給水装置1において、1号ポンプ及び2号ポンプへの流路を開放した状態(
図2、
図11、及び
図12)から、多方弁Vの弁体Bを、回転軸線O周りに弁体周方向一方側(図の例では、時計回り)に90度回転させた状態であり、すなわち、1号ポンプP1への流路を閉止する操作の途中の状態である。この状態においては、多方弁Vの弁体Bの第1開口BF1、第2開口BF2、及び第3開口BF3は、それぞれ、第3弁箱流路AD3、第1弁箱流路AD1、及び弁箱Aの対向壁AWに対向する。また、この状態においては、多方弁Vにおいて、第2弁箱流路AD2と弁体室BCとが、互いに連通状態になる。すなわち、多方弁Vが、疑似的に四方弁となる。よって、第1多方弁V1側においては、吸込配管3からの流体が、第1多方弁V1を介して、2号ポンプP2の吸込口に流れることができる(
図14)。一方、第2多方弁V2側においては、2号ポンプP2の吐出口からの流体が、第2多方弁V2を介して、吐出配管4に流れることができる(
図15)。また、この状態において、ポンプ停止中は、第1多方弁V1の弁体室BC(第1弁体室BC1)内の流体が、バイパス管22及び逆止弁23を介して、第2多方弁V2の弁体室BC(第2弁体室BC2)へ流れ、その後、吐出配管4に流れることができる。
【0046】
本実施形態においては、弁体Bの閉止壁BWを第2弁箱流路AD2に対向させた状態において、弁体Bの閉止壁BWと弁箱Aとの間に、隙間G(以下、「第1隙間G」という。)が形成される。そして、この状態において、第2弁箱流路AD2と弁体室BCとは、この第1隙間Gを介して、互いに連通状態になる(
図14~
図15)。
なお、本実施形態においては、弁体Bの閉止壁BWを第1弁箱流路AD1に対向させた状態や、弁体Bの閉止壁BWを第3弁箱流路AD3に対向させた状態において、弁体Bの閉止壁BWと弁箱Aとの間に、第1隙間Gは形成されない(
図17、
図19)。
【0047】
本実施形態においては、弁箱Aが、対向壁AWと第2弁箱口AE2とを連結する連結壁AKを有している。連結壁AKと対向壁AWのうち少なくとも連結壁AKに連続する部分とは、弁体Bから弁体外周側に離れて位置している。これにより、弁体Bの閉止壁BWを第2弁箱流路AD2に対向させた状態において、弁体Bの閉止壁BWと弁箱A(本実施形態では、連結壁AK)との間に、第1隙間Gが形成されるようにされている。
ただし、本実施形態とは異なる構成によって、弁体Bの閉止壁BWと弁箱Aとの間に、第1隙間Gが形成されるようにされてもよい。
【0048】
このように、本実施形態では、多方弁Vは、弁体Bの閉止壁BWを第2弁箱流路AD2に対向させた状態において、第2弁箱流路AD2と弁体室BCとが、互いに連通状態になるようにされており、ひいては、多方弁Vにおける1つの弁箱流路(第2弁箱流路AD2)において弁箱流路(第2弁箱流路AD2)が完全に閉止されるのが防止されるようにされている。それにより、1号ポンプP1への流路を閉止する操作の途中において配管装置2が断水状態となるのを防止することができる。
ただし、多方弁Vは、各弁箱流路AD1~AD3のそれぞれを完全に閉止することができるように構成されてもよく、すなわち、弁体Bの閉止壁BWを第2弁箱流路AD2に対向させた状態において、第2弁箱流路AD2と弁体室BCとが、閉止壁BWによって互いに非連通状態となるようにされてもよい。
【0049】
以下、弁体Bの構成のさらなる詳細について、説明する。
図6~
図10は、本実施形態における弁体Bを説明するための図面である。
図6~
図10に示すように、弁体Bは、円筒型の弁体本体BMと、環状の閉止壁用封止部材BWSと、環状の閉止壁蓋部材BWFと、を有している。
図9~
図10では、閉止壁用封止部材BWSの図示を省略している。
弁体本体BMは、それぞれ弁体室BCに連通する、複数(本実施形態では、3つ)の開口BF1~BF3と、閉止壁本体部BWMと、を有している。これら複数の開口BF1~BF3と閉止壁本体部BWMとは、弁体周方向に沿って配列されている(
図9)。
閉止壁BWは、弁体本体BMの閉止壁本体部BWMと、閉止壁用封止部材BWSと、閉止壁蓋部材BWFと、から構成されている(
図7)。閉止壁本体部BWM及び閉止壁蓋部材BWFは、それぞれ、弁体周方向に沿って湾曲した形状を有している(
図10)。これに伴い、閉止壁BWは、弁体周方向に沿って湾曲した形状を有している(
図7)。
【0050】
本明細書では、閉止壁本体部BWMを通るとともに弁体径方向に延在する軸線を、「閉止壁軸線J」という。閉止壁軸線Jは、閉止壁本体部BWMの平面視における閉止壁本体部BWMの中心を通るとともに、回転軸線Oと垂直に交差する(
図9)。また、「閉止壁軸線方向」とは、閉止壁軸線Jに平行な方向を指す。また、「閉止壁軸線方向の弁体内周側JIとは、閉止壁軸線方向における回転軸線O側を指しており、「閉止壁軸線方向の弁体外周側JO」とは、閉止壁軸線方向における回転軸線Oとは反対側を指している(
図7)。また、「閉止壁内周側」とは、閉止壁軸線Jを中心とする内周側、すなわち、閉止壁軸線Jに近い側を指しており、「閉止壁外周側」とは、閉止壁軸線Jを中心とする外周側、すなわち、閉止壁軸線Jから遠い側を指している。また、「閉止壁周方向」とは、閉止壁軸線Jを中心とする周方向を指す。
【0051】
図7及び
図9に示すように、閉止壁本体部BWMは、閉止壁ベース部BWMBと、閉止壁突出部BWMPと、を有している。閉止壁突出部BWMPは、閉止壁ベース部BWMBの弁体外周側に位置し、閉止壁本体部BWMの平面視において閉止壁ベース部BWMBよりも小さな面積を有している。
【0052】
図6、
図9に示すように、閉止壁蓋部材BWFは、閉止壁軸線Jの周りを全周にわたって延在するように環状に構成されており、その中央に貫通穴BWFhを有している。貫通穴BWFhは、閉止壁軸線J上に位置しており、閉止壁軸線方向に閉止壁蓋部材BWFを貫通している。閉止壁蓋部材BWFの貫通穴BWFhは、閉止壁蓋部材BWFの閉止壁内周側の面によって区画されている。
図7、
図9に示すように、閉止壁蓋部材BWFは、閉止壁突出部BWMPに対して、閉止壁軸線Jを中心とする外周側(閉止壁外周側)、かつ、閉止壁ベース部BWMBの弁体外周側に、位置している。
【0053】
図6~
図7に示すように、閉止壁本体部BWMと閉止壁蓋部材BWFとの間には、環状のアリ溝BWAが区画されている。アリ溝BWAは、弁体外周側が開放しており、言い換えれば、弁体Bの弁体外周側の面に開口している。アリ溝BWAは、閉止壁本体部BWMの閉止壁突出部BWMPの閉止壁外周側の面と、閉止壁本体部BWMの閉止壁ベース部BWMBの弁体外周側の面と、閉止壁蓋部材BWFの閉止壁内周側の面とによって、区画されている。アリ溝BWAは、弁体外周側に向かうにつれて溝幅が小さくなるように構成されている(
図7)。アリ溝BWAの溝幅とは、閉止壁突出部BWMPの閉止壁外周側の面と閉止壁蓋部材BWFの閉止壁内周側の面との間の弁体周方向の距離である。
アリ溝BWA内には、閉止壁用封止部材BWSが収容されている。閉止壁本体部BWMの閉止壁突出部BWMPは、閉止壁用封止部材BWSの閉止壁内周側に位置する。閉止壁本体部BWMの閉止壁ベース部BWMBは、閉止壁用封止部材BWSの弁体内周側に位置する。閉止壁蓋部材BWFは、閉止壁用封止部材BWSの閉止壁外周側に位置する。
アリ溝BWA及び閉止壁用封止部材BWSは、閉止壁軸線Jの周りを全周にわたって延在するように環状に構成されている。
図14~
図15、
図17、
図19に示すように、閉止壁用封止部材BWSは、閉止壁BWがいずれか1つの弁箱流路AD1~AD3に対向したときに、閉止壁用封止部材BWSの周方向の少なくとも一部が、当該弁箱流路AD1~AD3の周囲で、弁箱Aの内面(具体的には、弁箱Aの弁箱本体部AMの弁体内周側の面)と接触し、それにより、閉止壁BWの弁体外周側の面と弁箱Aの内面との間を流体密に封止するように、構成されている。具体的には、本実施形態において、閉止壁用封止部材BWSは、閉止壁BWが第1弁箱流路AD1又は第3弁箱流路AD3に対向したときに、閉止壁用封止部材BWSの周方向の全部が、第1弁箱流路AD1又は第3弁箱流路AD3の周囲で、弁箱Aの内面と接触し(
図17、
図19)、また、閉止壁BWが第2弁箱流路AD2に対向したときに、閉止壁BWと弁箱Aとの間に第1隙間Gが形成されることに伴い、閉止壁用封止部材BWSの周方向の一部のみが、第2弁箱流路AD2の周囲で、弁箱Aの内面と接触する(
図14~
図15)ように、構成されている。ただし、閉止壁BWが第2弁箱流路AD2に対向したときに、閉止壁BWと弁箱Aとの間に第1隙間Gが形成されない場合、閉止壁用封止部材BWSは、閉止壁BWが第2弁箱流路AD2に対向したときにおいても、閉止壁用封止部材BWSの周方向の全部が、第2弁箱流路AD2の周囲で弁箱Aの内面と接触するように構成されてもよい。
【0054】
本実施形態では、上述のように、アリ溝BWA内には、閉止壁用封止部材BWSが収容されている。これにより、仮に、閉止壁用封止部材BWSを収容する溝として、溝幅が溝深さ方向に沿って一定であるような角溝を採用した場合に比べて、閉止壁用封止部材BWSが溝から脱落しにくくなる。配管装置2では、弁体Bが円筒型であるため、閉止壁用封止部材BWSは弁体Bの円筒形状に沿って(弁体周方向に沿って)湾曲した状態で溝内に収容されることとなり、そのため、閉止壁用封止部材BWSの持つ弾性によって、閉止壁用封止部材BWSには、戻ろうとする方向、ひいては、脱落しようとする方向に、弾性力が働く。また、弁体Bが弁箱Aに対して回転される際(
図11~
図19)に、閉止壁用封止部材BWSが弁箱口AE1~AE3に引っかかるおそれがあるため、閉止壁用封止部材BWSには、脱落する方向に荷重が掛かりやすい。そのため、アリ溝BWAの採用によって閉止壁用封止部材BWSが脱落しにくくすることには、配管装置2にとって、大きな意義がある。
なお、一般的に、アリ溝は、入口(溝の開口)が狭いという形状に起因して、角溝よりも形成(金型成形、切削加工等)が難しく、また、アリ溝内に封止部材(Oリング等)を入れる際に封止部材が傷つくおそれや、封止部材が取り外しずらいおそれがある。また、特に、ある部材の曲面上にアリ溝を形成する場合には、ある部材の平面上にアリ溝を形成する場合に比べて、所期したとおりの形状精度を得るのが難しくなるおそれがあり、また、形成に掛かるコストが高くなるおそれがあり、例えば、切削加工によって形成する場合には、通常、3軸加工機では困難であり、5軸加工機が必要となるおそれがある。所期したとおりの形状精度が得られない場合には、封止部材がアリ溝から脱落しやすくなるおそれがある。
その点、本実施形態においては、上述のように、弁体本体BMの閉止壁本体部BWMと閉止壁蓋部材BWFとの間に、アリ溝BWAが区画されており、言い換えれば、アリ溝BWAが2つの部材によって区画されている。そのため、アリ溝BWAを区画するように構成された弁体本体BMと閉止壁蓋部材BWFとを予め製造し、その後、弁体本体BM及び閉止壁蓋部材BWFをどうしを組み立てることで、アリ溝BWAを形成することができる。よって、仮にある1つの部材にアリ溝を形成する場合に比べて、アリ溝が形成しやすくなる。また、アリ溝BWA内に閉止壁用封止部材BWSを収容させる際には、例えば、まず、閉止壁蓋部材BWFを弁体本体BMから外した状態(
図9)で、閉止壁用封止部材BWSを閉止壁本体部BWMの閉止壁突出部BWMPの閉止壁外周側かつ閉止壁ベース部BWMBの弁体外周側に装着し、その後、閉止壁蓋部材BWFを閉止壁本体部BWMに対して組み付ける、という手順を踏むことができ、その場合、閉止壁用封止部材BWSは、アリ溝BWAの狭い入口を通る必要が無いので、閉止壁用封止部材BWSが傷つくおそれを回避できる。また、閉止壁用封止部材BWSを取り外す際には、この逆の手順を踏むことで、簡単に取り外すことが可能になる。また、本実施形態によれば、アリ溝BWAを区画するように構成された弁体本体BMの閉止壁本体部BWMと閉止壁蓋部材BWFとは、それぞれ、製造しやすい形状であることから、それぞれ所期したとおりの形状精度が得られやすく、ひいては、これらによって区画されるアリ溝BWAについても、所期したとおりの形状精度が得られやすい。そのため、アリ溝BWAに収容された閉止壁用封止部材BWSがアリ溝BWAから脱落しにくくすることができる。よって、品質や信頼性を向上できる。また、アリ溝BWAを区画するように構成された弁体本体BMの閉止壁本体部BWMと閉止壁蓋部材BWFとは、それぞれ製造しやすい形状であるので、アリ溝BWAの形成に掛かるコストを低減できる。
【0055】
図7~
図9に示すように、弁体本体BMの閉止壁ベース部BWMBは、閉止壁ベース部BWMBの弁体周方向の両端部に、係合部BWKを有している。一方、閉止壁蓋部材BWFは、閉止壁蓋部材BWFの弁体周方向の両端部に、係合部BWKと係合する、被係合部BWHを有している。本実施形態において、係合部BWKは、凸状に構成されており、被係合部BWHは、凹状に構成されている。これにより、弁体本体BMの閉止壁ベース部BWMBと閉止壁蓋部材BWFとは、弁体周方向の両端部で、互いに係合している。ひいては、閉止壁蓋部材BWFは、弁体本体BMに対して、脱着可能に取り付けられている。
なお、この場合、凹状に構成された被係合部BWHは、
図8に示すように、互いに対向する一対の壁面BWHa、BWHbと、これら一対の壁面BWHa、BWHbどうしを連結する底面BWHcと、を有する。
ただし、係合部BWKは、凹状に構成され、かつ、被係合部BWHは、凸状に構成されてもよい。
【0056】
本実施形態においては、上述のように、弁体本体BMの閉止壁ベース部BWMBは、閉止壁ベース部BWMBの弁体周方向の両端部に、係合部BWKを有しており、閉止壁蓋部材BWFは、閉止壁蓋部材BWFの弁体周方向の両端部に、係合部BWKと係合する、被係合部BWHを有している。これにより、閉止壁蓋部材BWFを弁体本体BMに対して、よりしっかりと取り付けることができ、閉止壁蓋部材BWFが弁体本体BMから外れにくくなる。よって、配管装置2の使用中において、弁体室BCからの内圧や弁箱流路AD1~AD3からの外圧によって閉止壁蓋部材BWFが弁体本体BMから外れるのを、効果的に抑制できる。ひいては、閉止壁蓋部材BWFが弁体本体BMから外れることによって閉止壁用封止部材BWSがアリ溝BWAから脱落するのを効果的に抑制できる。また、配管装置2の組み立て時やメンテナンス時において弁体Bを弁箱Aの外及び中へ出し入れする際において、閉止壁蓋部材BWFが弁箱Aの内面(具体的には、弁箱Aの弁箱本体部AMの弁体内周側の面)と擦れても、閉止壁蓋部材BWFが弁体本体BMから外れるのを効果的に抑制できるので、作業性を向上できる。また、閉止壁蓋部材BWFを弁体本体BMに取り付けるにあたって、締結具や工具等が不要であるため、簡単に取り付けることができ、また、部品点数を低減できる。
【0057】
弁体本体BM(ひいては、弁体連結体LB)は、樹脂で構成されていると、好適である。また、閉止壁蓋部材BWFは、樹脂で構成されていると、好適である。これにより、閉止壁蓋部材BWFを弁体本体BMに取り付ける際に、樹脂の弾性変形を利用して、閉止壁蓋部材BWFの被係合部BWHと弁体本体BMの係合部BWKとを、より簡単に係合させることができる。具体的には、例えば、この場合、
図10に白抜き矢印で示すように、閉止壁蓋部材BWFを、弁体周方向の両端部の被係合部BWHどうしが離れる方向に変形させやすいため、被係合部BWHと係合部BWKとを、より簡単に係合させることができる。よって、閉止壁蓋部材BWFを弁体本体BMに取り付ける際の作業性を向上できる。
弁体本体BM(ひいては、弁体連結体LB)と閉止壁蓋部材BWFとは、それぞれ、例えば、射出成型により製造されると、好適である。
ただし、弁体本体BMは、金属(ステンレス等)から構成されていてもよい。
【0058】
本実施形態においては、
図7~
図9に示すように、弁体本体BMの係合部BWKは、閉止壁軸線Jとは反対側へ向かって突出する凸状に構成され、かつ、閉止壁蓋部材BWFの被係合部BWHは、閉止壁軸線Jとは反対側へ向かって窪んだ凹状に構成されている。これにより、閉止壁蓋部材BWFが弁体本体BMから外れるのをより効果的に抑制できる。
ここで、「閉止壁軸線Jとは反対側」とは、閉止壁軸線Jから遠い側を指しており、より具体的には、回転軸線O及び閉止壁軸線Jを含む仮想平面とは反対側(当該仮想平面から遠い側)を指している。
なお、この構成に伴い、本実施形態においては、
図7~
図8に示すように、閉止壁蓋部材BWFの弁体周方向両側の端面BWFb(
図8)は、それぞれ、弁体Bが有する複数の開口BF1~BF3のうちのいずれか1つ(本実施形態では、第2開口BF2、第3開口BF3)の一部を区画している。
ただし、係合部BWK及び被係合部BWHの構成は任意でよい。
例えば、弁体本体BMの係合部BWKは、閉止壁軸線Jへ向かって窪んだ凹状に構成され、かつ、閉止壁蓋部材BWFの被係合部BWHは、閉止壁軸線Jへ向かって突出する凸状に構成されてもよい。
【0059】
本実施形態のように、弁体本体BMの係合部BWKが、閉止壁軸線Jとは反対側へ向かって突出する凸状に構成され、かつ、閉止壁蓋部材BWFの被係合部BWHが、閉止壁軸線Jとは反対側へ向かって窪んだ凹状に構成されている場合においては、
図8に示すように、被係合部BWHにおける、互いに閉止壁軸線方向に対向する一対の壁面BWHa、BWHbのうち、閉止壁軸線方向の弁体内周側JIに位置する壁面BWHa(以下、「弁体内周側壁面BWHa」という。)は、閉止壁軸線Jから遠ざかるにつれて閉止壁軸線方向の弁体外周側JOに向かうように傾斜しており、また、閉止壁軸線Jに対して垂直な仮想平面に対する、係合部BWKにおける閉止壁軸線方向の弁体内周側JIの面BWKaのなす角度αは、閉止壁軸線Jに対して垂直な仮想平面に対する、被係合部BWHの弁体内周側壁面BWHaのなす角度βよりも、小さいと、好適である。仮に、なす角度α及びなす角度βどうしが同じであると、係合部BWKにおける閉止壁軸線方向の弁体内周側JIの面BWKaと被係合部BWHの弁体内周側壁面BWHaとが面接触するようになるので、係合部BWKに大きな力が掛かって係合部BWKが折れるおそれがある。なす角度αをなす角度βよりも小さくすることにより、係合部BWKにおける閉止壁軸線方向の弁体内周側JIの面BWKaと被係合部BWHの弁体内周側壁面BWHaとの接触面積を低減でき、ひいては、係合部BWKに掛かる力を低減でき、係合部BWKが折れるのを抑制できる。
同様の観点から、なす角度αは、1°以下であると好適であり、0°であるとより好適である。また、なす角度βは、4°以上であると好適であり、例えば、5°であると好適である。
なお、仮になす角度βが大きすぎると、係合部BWK及び被係合部BWHどうしの係合が不安定となるおそれがあり、また、閉止壁蓋部材BWFにおける、被係合部BWHにおける弁体内周側壁面BWHaと弁体周方向の端面BWFbとの間の部分BWFcの肉厚を十分に確保しようとすると、閉止壁蓋部材BWFの弁体周方向の端面BWFbによって区画される開口BF2、BF3の流路面積が小さくなるおそれがある。このような観点から、なす角度βは、6°以下であると好適である。
ただし、なす角度α及びなす角度βどうしは同じであってもよい。
【0060】
上述のようになす角度αがなす角度βよりも小さい場合、
図8に示すように、係合部BWKにおける、被係合部BWHの弁体内周側壁面BWHaに対向する角部BWKcは、曲面形状からなる(言い換えれば、角張りが無く、アールが付けられている)と、好適である。これにより、係合部BWKにおける、被係合部BWHの弁体内周側壁面BWHaに対向する角部BWKcが、被係合部BWHの弁体内周側壁面BWHa上でよりスムーズに移動できるようになるので、閉止壁蓋部材BWFを弁体本体BMに取り付ける際に、係合部BWKが被係合部BWH内へ挿入されやすくなり、作業性を向上できる。なお、係合部BWKにおける、被係合部BWHの弁体内周側壁面BWHaに対向する角部BWKcは、係合部BWKにおける閉止壁軸線方向の両側の角部のうち、閉止壁軸線方向の弁体内周側JIの角部である。
ただし、係合部BWKにおける、被係合部BWHの弁体内周側壁面BWHaに対向する角部BWKcは、角張っていてもよい。
【0061】
図8に示すように、係合部BWKの先端面BWKtと被係合部BWHの底面BWHcとの間には、隙間N(以下、「第2隙間H」という。)が区画されていると、好適である。これにより、閉止壁蓋部材BWFを弁体本体BMに取り付ける際に、係合部BWKを被係合部BWHの外及び中へ出し入れしやすくなるので、作業性を向上できるとともに、係合部BWK及び被係合部BWHどうしが係合している状態において、弁体本体BMから閉止壁蓋部材BWFに対して、閉止壁蓋部材BWFが浮き上がる方向に力が掛かるのを抑制することができる。
ただし、係合部BWKの先端面BWKtと被係合部BWHの底面BWHcとの間には、第2隙間Nが区画されていなくてもよい。
【0062】
図8に示すように、本実施形態においては、閉止壁蓋部材BWFの弁体外周側の面BWFaは、閉止壁本体部BWMの弁体外周側の面BWMaと、同じ弁体径方向位置に位置している。
ただし、
図20に示す変形例のように閉止壁蓋部材BWFの弁体外周側の面BWFaは、閉止壁本体部BWMの弁体外周側の面BWMaよりも、弁体内周側(弁体径方向内側)に位置していてもよい。この場合、弁体Bが弁箱Aに対して回転される際に、閉止壁蓋部材BWFが弁箱口AE1~AE3に引っかかるのを回避できるので、閉止壁蓋部材BWFが外れるのを抑制でき、ひいては、閉止壁用封止部材BWSが脱落するのを抑制できる。
【0063】
本発明の多方弁、配管装置、及び、給水装置は、上述したものに限られず、様々な変形例が可能である。
例えば、第1多方弁V1と第2多方弁V2とは、同時に回転されるように構成されていなくてもよく、互いに独立して回転されるように構成されてもよい。
例えば、配管装置2は、
図1~
図2を参照しつつ説明した給水装置1とは異なる構成の給水装置1に用いられてもよいし、あるいは、給水装置1以外の用途に用いられてもよい。
また、多方弁Vの各弁箱口AE1~AE3は、それぞれ任意の流路に接続されてよい。
また、多方弁Vは、第1弁箱口AE1が上側以外の任意の方向を向くように、指向されてもよい。
また、多方弁Vは、三方弁に限られず、二方弁、四方弁等として構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の多方弁及び配管装置は、任意の流体に利用することができるが、液体、特には水に利用すると好適である。また、本発明の多方弁及び配管装置は、任意の用途に利用することができるが、例えば商業建造物や集合住宅等の需要先に給水するための給水装置に、好適に利用することができる。
本発明の給水装置は、例えば商業建造物や集合住宅等の需要先に給水するために、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 給水装置
2 配管装置
KA 弁箱連結体
LB 弁体連結体
V 多方弁
V1 第1多方弁
V2 第2多方弁
A 弁箱
A1 第1弁箱
A2 第2弁箱
AC 弁箱室
AC1 第1弁箱室
AC2 第2弁箱室
AD1 第1弁箱流路(弁箱流路)
AD2 第2弁箱流路(弁箱流路)
AD3 第3弁箱流路(弁箱流路)
AE1 第1弁箱口(弁箱口)
AE2 第2弁箱口(弁箱口)
AE3 第3弁箱口(弁箱口)
AM 弁箱本体部
AW 対向壁
AJ1 第1端壁
AJ2 第2端壁
f 連結具
AK 連結壁
AG 弁箱連結部
AGC 弁箱連通室
B 弁体
B1 第1弁体
B2 第2弁体
BC 弁体室
BC1 第1弁体室
BC2 第2弁体室
BF1 第1開口(開口)
BF2 第2開口(開口)
BF3 第3開口(開口)
BM 弁体本体
BW 閉止壁
BWS 閉止壁用封止部材
BWF 閉止壁蓋部材
BWFh 貫通穴
BWFa 弁体外周側の面
BWFb 弁体周方向の端面
BWFc 弁体内周側壁面と弁体周方向の端面との間の部分
BWM 閉止壁本体部
BWMa 弁体外周側の面
BWMB 閉止壁ベース部
BWMP 閉止壁突出部
BWA アリ溝
BWK 係合部
BWKa 閉止壁軸線方向の弁体内周側の面
BWKt 先端面
BWKc 角部
BWH 被係合部
BWHa 壁面(弁体内周側壁面)
BWHb 壁面
BWHc 底面
J 閉止壁軸線
JI 閉止壁軸線方向の弁体内周側
JO 閉止壁軸線方向の弁体外周側
BS 弁棒
G 隙間(第1隙間)
N 隙間(第2隙間)
O 回転軸線
O1 回転軸線方向第1側
O2 回転軸線方向第2側
21 ハンドル
22 バイパス管
22C バイパス通路
22G バイパス管用環状溝
D バイパス管用封止部材
23 逆止弁
24 延長管
3 吸込配管
4 吐出配管
5 逆流防止器
6 仕切弁
7 圧力タンク
8 キャビネット
P1 1号ポンプ
P2 2号ポンプ
t 固定具