(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】埋設管探知用の導電ワイヤ及び導電ワイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01V 3/12 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
G01V3/12 B
(21)【出願番号】P 2022168417
(22)【出願日】2022-10-20
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2021172521
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592153894
【氏名又は名称】河陽電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小笹 睦博
(72)【発明者】
【氏名】小笹 史美
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-071826(JP,A)
【文献】特開2017-147268(JP,A)
【文献】特開2015-064970(JP,A)
【文献】特開平08-152480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導通性を有する導体の芯線と、前記芯線の周りを被覆するポリ塩化ビニル系の被覆材から構成された埋設管探知用の導電ワイヤであって、
前記被覆材は、ポリ塩化ビニル系の母材に、前記母材中に配合されて被覆材に導電性を付与する針状の導電性粒子を配合し、前記導電性粒子が配合された母材を混練した混練状態で被覆されており、
前記導電性粒子の長手方向に沿った長さについて、前記混練前の導電性粒子の平均長さに対する混練後の導電性粒子の平均長さの比率が、16%以上とされている
ことを特徴とする埋設管探知用の導電ワイヤ。
【請求項2】
前記導電性粒子として、針状の粒子形状を有するカーボンブラック、竹炭繊維、ルチル型酸化チタン、カーボンナノチューブが用いられている
ことを特徴とする請求項
1に記載の埋設管探知用の導電ワイヤ。
【請求項3】
前記導電性粒子が、長軸の粒子径が30~35nm、短軸の粒子径が15~30nmとされたカーボンブラックであり、
前記混練前の導電性粒子の平均長さに対する混練後の導電性粒子の平均長さの比率が16%以上とされている
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の埋設管探知用の導電ワイヤ。
【請求項4】
導通性を有する導体の芯線の周りに、ポリ塩化ビニル系の被覆材を被覆することで導電ワイヤを製造する導電ワイヤの製造方法であって、
前記被覆材には、ポリ塩化ビニル系の母材に導電性粒子を配合したものを用い、
前記被覆材を被覆するに際しては、前記導電性粒子が配合された母材を混練し、混練された母材を前記導体の芯線の周りに押し出すことで前記被覆材の被覆が行われており、
前記母材の混練には、軸方向に隣り合ったフライトのピッチまたは外径が互いに等しい混練フライトが用いられている
ことを特徴とする埋設管探知用の導電ワイヤの製造方法。
【請求項5】
前記母材に対する圧縮比を3.0以下とし、混練温度を100℃~300℃として、前
記混練を行う
ことを特徴とする請求項
4に記載の導電ワイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設した埋設管の埋設位置や深度を、地上からの電磁波探知機を用いて探知するために用いられる埋設管探知用の導電ワイヤ(ロケーティングワイヤ)及び導電ワイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従前、地中埋設用のガス管や水道管には金属管が使用されていた。このような金属管は導体であるため、電磁波探知機に反応し埋設管位置や深度を探知することができる。しかし、近年は、金属製であるため腐蝕するという問題や重量が大きくなりやすく運搬性や作業性に劣るという問題から金属管に代えてポリエチレンや塩化ビニルなどのプラスチック管が多く用いられるようになってきた。このようなプラスチック管は導体ではないため、そのままでは電磁波探知機に反応せず埋設位置や深度検知ができない。
【0003】
そこで、プラスチック管の埋設管位置や深度を探知するために、導電性を有する銅線などを芯線とする導電ワイヤが用いられるようになってきた。このような金属導体の導電ワイヤをプラスチック管に予め取り付けて埋設しておき、埋設位置や深度を確認する際には、電磁波探知機を用いて導電ワイヤを探知することでプラスチック管の位置確認や深度の確認を行うことができる。
【0004】
ところで、上述した導電ワイヤには、金属の芯線に対して耐食コーティングを設けることが必要不可欠となる。導電ワイヤが埋設される土中では、金属の芯線を露出状態のままにしておくと、腐食により芯線が短時間で破損してしまう。それゆえ、導電ワイヤには、一般的に耐食コーティングが施される。
【0005】
ここで、導電ワイヤは、被覆の種類によって、2種類に大別される。一つが被覆に不導体のポリエチレンなどが用いられた不導体タイプであり、もう一つが被覆に導電性プラスチックなどが用いられた導体タイプである。導体タイプの導電ワイヤは、内在する芯線が腐食等で断線しても被覆部分で電気的な導通状態を保つことができるため、導通性を長期間に亘って保持できるという面で優れている。
【0006】
このような導体タイプの導電ワイヤには、例えば特許文献1に示すようなものが知られている。
【0007】
すなわち、特許文献1のロケーティングワイヤは、加硫ゴムに導電性粒子であるカーボンブラックを混ぜ込んだ導電プラスチックを被覆材として用いて金属芯線の周囲を被覆して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に開示された導電ワイヤは、被覆材の主成分が加硫ゴム等の合成ゴムで形成されている。このような合成ゴムは、水中に含まれる残留塩素などの影響で劣化が進行したり、水と金属との共存下で劣化が進行したりしやすいことが知られている。そのため、地中に埋設されて長期保存されることを考えると、合成ゴムよりも変質しにくく長期保存に向く合成樹脂を被覆材として用いるのが望ましい。
【0010】
上述した合成ゴムよりも変質しにくい合成樹脂としては、ポリ塩化ビニル系の合成樹脂を用いることができる。このようなポリ塩化ビニル系の合成樹脂は、一般の電線被覆にも用いられており、耐候性に優れ、劣化を起こしにくい被覆材として知られたものであるため、導電ワイヤとして用いてもこれらの特性を発揮することが期待できる。
【0011】
しかし、ポリ塩化ビニル系の合成樹脂に、合成ゴムの場合と同様に金属粉や炭素粒子などを配合しても、十分な導通性が得られない場合が多い。それゆえ、ポリ塩化ビニル系の導体タイプの導電ワイヤは、実際の使用に用いられたことは殆どない。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みて為されたものであり、ポリ塩化ビニル系の合成樹脂を被
覆材に用いた場合でも良好な導通性を確保でき、土中で優れた耐食性と導通性を発揮できる埋設管探知用の導電ワイヤ及び導電ワイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明の導電ワイヤは以下の技術的手段を講じた。
【0014】
本発明にかかる埋設管探知用の導電ワイヤは、導通性を有する導体の芯線と、前記芯線の周りを被覆するポリ塩化ビニル系の被覆材から構成された埋設管探知用の導電ワイヤであって、前記被覆材は、ポリ塩化ビニル系の母材に、前記母材中に配合されて被覆材に導電性を付与する針状の導電性粒子を配合し、前記導電性粒子が配合された母材を混練した混練状態で被覆されており、前記導電性粒子の長手方向に沿った長さについて、前記混練前の導電性粒子の平均長さに対する混練後の導電性粒子の平均長さの比率が、16%以上とされていることを特徴とする。
【0016】
なお、好ましくは、前記導電性粒子として、針状の外観形状を有するカーボンブラック、竹炭繊維、ルチル型酸化チタン、カーボンナノチューブが用いられているとよい。
【0017】
なお、好ましくは、前記導電性粒子が、長軸の粒子径が30~35nm、短軸の粒子径が15~30nmとされたカーボンブラックであり、前記混練前の導電性粒子の平均長さに対する混練後の導電性粒子の平均長さの比率が16%以上とされているとよい。
【0018】
また、本発明にかかる導電ワイヤの製造方法は、導通性を有する導体の芯線の周りに、ポリ塩化ビニル系の被覆材を被覆することで導電ワイヤを製造する導電ワイヤの製造方法であって、前記被覆材には、ポリ塩化ビニル系の母材に導電性粒子を配合したものを用い、前記被覆材を被覆するに際しては、前記導電性粒子が配合された母材を混練し、混練された母材を前記導体の芯線の周りに押し出すことで前記被覆材の被覆が行われており、前記母材の混練には、軸方向に隣り合ったフライトのピッチまたは外径が互いに等しい混練フライトが用いられていることを特徴とする。
【0019】
なお、好ましくは、前記母材に対する圧縮比を2.0~4.0(更に好ましくは、圧縮比を3.0以下)とし、混練温度を100℃~300℃として、前記混練を行うとよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の埋設管探知用の導電ワイヤによれば、ポリ塩化ビニル系の合成樹脂を被覆材に用いた場合でも良好な導通性を確保でき、土中で優れた耐食性と導通性を発揮できる。
【0021】
また、本発明の導電ワイヤの製造方法によれば、良好な導通性を備えた被覆材で、導体の芯線の周りを確実に被覆することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の埋設管探知用の導電ワイヤの断面を模式的に示した断面図である。
【
図2】本発明の埋設管探知用の導電ワイヤを、埋設管と共に地中に配設した状況を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明にかかる埋設管探知用の導電ワイヤ1(以降、単に導電ワイヤ、又はロケーティングワイヤと呼ぶ)の実施形態を、図を参照して説明する。
【0024】
本実施形態の導電ワイヤ1は、その被覆材2に特徴があるものであり、中心線に直交する方向に沿った断面中心部に内在する芯線3の構造や、導電ワイヤ1自身の使用方法(敷設方法)は従来のものと略同様である。
【0025】
まずは、導電ワイヤ1自体の構造について説明を行う。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の導電ワイヤ1は、導通性を有する導体の芯線3と、芯線3の周りを被覆するポリ塩化ビニル系の被覆材2と、を有している。
【0027】
上述した芯線3は、金属など材料で形成されており、電気導通性を備えている。一般には、芯線3は、銅やアルミなどの電気伝導度の良好な金属を用いて線状に形成されている。また、芯線3は、金属線が単線状態で設けられていても良いし、複数の金属線をより合わしたもの(撚線)であっても良い。
【0028】
例えば、
図1に示す本実施形態の被覆材2は、7本の銅線を集線して芯線3を形成し、
その芯線3の周囲を一層の被覆材2で被覆したものである。芯線3を構成する銅線は、錫メッキを施した軟銅線であり、その直径は0.5mm~1mmである。また、芯線3は、7本の銅線を集線することで撚り径が1mm~2mmとされている。
【0029】
なお、導電ワイヤ1は、埋設管Bと共に地中に配備するにあたって容易に設置できる形状のものであれば、
図1の構造のものに限定されない。例えば、1本の芯線3を単層の被覆材2で被覆した構造や、1本の芯線3を複層の被覆材2で被覆した構造を、導電ワイヤ1に採用しても良い。
【0030】
被覆材2は、ポリ塩化ビニル系の母材4に、被覆材2自体に導電性を付与する針状の導電性粒子5を配合して形成されており、被覆材2の厚みは0.5mm~1.5mmとされている。また、被覆材2は、不導体のポリ塩化ビニル系の材料で構成されているものであるが、導電性粒子5を含有することで最大電気抵抗が5~250Ω/kmの導電性を有するものとなっている。
【0031】
具体的には、被覆材2を構成する母材4は、ポリ塩化ビニル系(塩ビ系、PVC系ということもある)、すなわちポリ塩化ビニルを主体とする合成樹脂で形成されている。母材4には、芳香族系、ナフテン系、パラフィン系、ポリエステル系、ゴム系の樹脂などの可塑剤(軟化剤)、金属酸化物などを用いた安定剤(酸化防止剤)、滑剤、ポリ塩化ビニリデンなどの強度向上材が、適宜添加されていても良い。
【0032】
さらに、母材4には、抗菌剤などが配合されていても良い。加えて、ホワイトカーボンなどの珪酸、クレータルクに代表される珪酸塩類、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムに代表される炭酸塩類、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化鉛に代表される金属酸化物、硫化亜鉛に代表される金属硫化物、硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛に代表される酸素酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムに代表される金属水酸化物、などが助剤や填料として配合されていても良い。
【0033】
導電性粒子5は、母材4中に配合されて被覆材2に導電性を付与する粒子である。このような粒子には、金属粒子、炭素粒子などのような導電性の材質で形成された、さまざまな形状のものが含まれる。しかし、本発明の導電性粒子5は、これらの導電性粒子5の中でも針状や細い棒状、言い換えれば長尺状の粒子形状(粒子の外観形状)を有したものとなっている。
【0034】
このような針状の導電性粒子5としては、導電性フィラーであるカーボンブラック粒子の中でも針状の粒子形状を備えた「ケッチェンブラック(登録商標)」などのカーボンブラック粒子、銅、ステンレス、アルミなどの金属の繊維状粒子、カーボンナノチューブやカーボンファイバー、ルチル型の酸化チタンやガラスファイバーのように針状(棒状)の粒子形状を備えた不導体粒子を導電性の金属などでコーティング又はめっきした針状の粒子などを挙げることができる。また、これらの粒子の中でも、本発明の導電ワイヤ1には、製造コストを抑えることができるだけでなく、良好な導電性を備えた針状のカーボンブラック粒子を用いるのが特に好ましい。
【0035】
具体的には、本実施形態の針状のカーボンブラック粒子は、平均粒子径が20nm~50nm、好適には30nm~40nmとされており、長軸の粒子径が30nm~35nm、短軸の粒子径が15nm~30nmとされているのが好ましい。このような粒子径の針状のカーボンブラック粒子を導電性粒子5として被覆材2に、5%~25%、より好ましくは15%~18%配合することで、従来のゴム系の被覆材と同等又はゴム系の被覆材より優れた導電性を発揮することが可能となるからである。
【0036】
ところで、上述した被覆材2を芯線3の周囲に被覆する際は、押出被覆装置が用いられる。この押出被覆装置は、被覆前の芯線3を供給する芯線供給機(アンコイラー)、樹脂を溶融・混練し、混練した樹脂を芯線3の周りに押し出す押出機、樹脂が押し出された導電ワイヤ1を水中で冷却する水槽、水槽で冷却された導電ワイヤ1を引き取る引取機(巻き取るコイラー)などで構成されている。
【0037】
そして、上述したケッチェンブラックは、押出被覆装置とは別の混練設備でポリ塩化ビニル系の母材4に導電性粒子5として配合され、混練が行われる。このようにして混練が行われたポリ塩化ビニル系の樹脂は、ペレットなどの状態で押出被覆装置に運び込まれる
。
【0038】
このようにして押出被覆装置に運び込まれたポリ塩化ビニル系の樹脂のペレットは、押出被覆装置の押出機で溶融・混練され、芯線3の周りに押し出されて、導電ワイヤ1が形成される。
【0039】
ところで、従来のゴムに導電性粒子を混練する際の混練条件をそのまま用いて、針状の導電性粒子5をポリ塩化ビニル系の母材4に混練しても、被覆された導電ワイヤには十分な導電性が得られない。針状の導電性粒子は混練により長さが短くなる傾向があり、混練の条件を変更等することで針状の導電性粒子の元の長さをできる限り残存させることができれば、良好な導電性を実現できる。
【0040】
以上のように考えて、本発明者は、導電性粒子5が針状の外観形状を保持した状態として、導電性粒子5の長手方向に沿った長さについて、混練前の導電性粒子5の平均長さに対する混練後の導電性粒子5の平均長さの比率を、16%以上、好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上残すようにしている。
【0041】
具体的には、「混練前の導電性粒子5の平均長さ」とは、混練前の複数の導電性粒子5について、長軸方向(長手方向)に沿った長さの平均長さを長さL0として求めたものである。また、「混練後の導電性粒子5の平均長さ」とは、混練後の複数の導電性粒子5について、同様に長軸方向(長手方向)に沿った長さの平均長さを長さLとして求めたものである。そして、求められた平均長さLを、平均長さL0で除した値を百分率で示したものが、上述した「比率」である。つまり、この比率は、混練で折損せずに残った導電性粒子5の平均長さを示しており、比率が高いほど混練で折損が生じなかったこと、言い換えれば導電性が高くなることを示している。そのため、本発明の導電ワイヤ1では、上述した比率を16%以上、好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上とすることで、針状の粒子形状を所定量だけ被覆材2中に残し、従来のゴム系の導電ワイヤの導電性と同等かそれ以上の導電性を発揮することを可能としている。
【0042】
次に、埋設管Bへの導電ワイヤ1の配設方法について述べる。
【0043】
図2は、本発明の導電ワイヤ1をPVC製の埋設管Bに配備する方法、及び導電ワイヤ1が配備された埋設管Bを探知する探知方法を説明するための図である。
【0044】
図2に見られるように、導電ワイヤ1は水道管の埋設本管より分岐した埋設管Bの全長に亘って、この埋設管Bに沿うようにメーターボックスの位置まで設けられる。
【0045】
導電ワイヤ1はまず末端からの水などの浸入により芯線3が錆びたりしないように導電ワイヤ1の両末端にゴム又は樹脂製のキャップをかぶせ、その上からビニル粘着テープで先端部分全体をテーピングする末端処理を行う。
【0046】
次に導電ワイヤ1は埋設本管に接続された埋設管Bの端部に固定されるが、その固定方法としては、
図2に示すように導電ワイヤ1の端部を埋設管Bの周長に沿って5~6回コイル状に巻き、さらにこのコイル部分の上からビニル粘着テープを巻き付けて埋設管Bにしっかりと固定する。
【0047】
次に、埋設管Bの長手方向に沿うように設けられた導電ワイヤ1は適当な間隔(例えば2m間隔)で埋設管B上にビニル粘着テープ等を用いて固定される。
【0048】
最後にメーターボックスに達した導電ワイヤ1は、コイル状に巻回され、メーターボックス内に収納される。ビニル粘着テープ等をボックス内の管に固定されても良い。
【0049】
導電ワイヤ1は当該導電ワイヤ1同志の接続においても、分岐接続においてもいちいち被覆材2を剥離して芯線3同志を接続するなどの繁雑な作業の必要がないなど、極めて簡便に作業できる。また、埋設管Bへの巻き付けや、導電ワイヤ1同志のねじり結束においても、本導電ワイヤ1が柔軟な可撓性を持っているので極めて容易に作業できる。また、本発明の導電ワイヤ1は、被覆材2中に抗菌剤を含有しないため、地中における耐菌性にも優れるものとなっている。
【0050】
上記のように配備した導電ワイヤ1を用いて、埋設管Bの位置や深さを探索するに際しては、地上において、図示を省略する送信機から2kHz~100kHzの周波数の高周波電流を導電ワイヤ1に導通させる。すると、導電ワイヤ1を流れる高周波電流の作用で導電ワイヤ1からは電磁波が放射される。この電磁波を地上の受信機(図示略)で探知す
ることによって導電ワイヤ1と共に埋設されている埋設管Bの位置と深さを知ることができる。
【0051】
次に、本実施形態の導電ワイヤ1の製造方法について説明する。
【0052】
本実施形態の導電ワイヤ1の製造方法は、導通性を有する導体の芯線3の周りに、ポリ塩化ビニル系の被覆材2を被覆することで導電ワイヤ1を製造するものである。被覆材2には、ポリ塩化ビニル系の母材4に導電性粒子5を配合したものが用いられる。また、被覆材2を被覆するに際しては、導電性粒子5が配合された母材4を混練設備で混練し、混練された母材4を導体の芯線3の周りに押し出すことで被覆材2の被覆が行われている。母材4の混練に用いられる混練設備には、本実施形態では1軸または2軸型の押出機が用いられている。この混練設備には、軸方向に隣り合ったフライトのピッチまたは外径が互いに異なる混練フライトが用いられている。このような混練設備の例としては、主フライトと副フライトとを交互に組み合わせたバリアフライトタイプ(BMタイプ)の混練フライトを備えたものが挙げられる。バリアフライトタイプの混練フライトは、軸方向に等ピッチで配備された主フライトと、軸方向に隣り合う主フライト間に配備される副フライトと、を備えている。なお、主フライトの外径と、副フライトの外径と、は互いに異なっている場合がある。また、軸方向に沿って副フライトの先端側に設けられる主フライトとの間のピッチと、基端側に設けられる主フライトとの間のピッチと、は互いに異なっている場合がある。
【0053】
また、上述した混練設備を用いて導電ワイヤを製造する際には、母材に対する圧縮比を2.0~4.0(更に好ましくは、3.0以下)とし、混練温度を100℃~300℃として、混練を行うのが好ましい。このような条件で混練を行うことで、導電性に優れた被覆材2を備えた導電ワイヤ1を得ることが可能となる。
【実施例】
【0054】
次に、実施例及び比較例を用いて、本発明の導電ワイヤ1の作用効果を説明する。
【0055】
実施例及び比較例は、7本の銅線を集線して形成された導体の芯線3の周りに、ポリ塩化ビニル系の被覆材を被覆することで導電ワイヤを製造したものである。
【0056】
ここで、実施例及び比較例の被覆材の被覆には、バリアフライトタイプの混練スクリュを備えた押出機を用いた。この混練スクリュは、混練スクリュの全長(長手方向に沿った全長)のうち、前側は主フライトを有するのみであるが、後側は主フライトと副フライトとの2種類の混練用フライトを有している。つまり、この実施例及び比較例に用いた混練スクリュには、外径とピッチとが互いに等しい主フライト及び副フライトが設けられている。このように後側のみに副フライトを設けた混練スクリュを用いれば、圧縮比を下げた状態でも被混練材料を高い混練度まで混練することが可能となる。つまり、従来の混練スクリュと同じ混練度まで混練をする場合でも、被混練材料の圧縮比は低くて良いので、導電性粒子5の折損を回避することができる。具体的には、実施例及び比較例に用いた混練スクリュを有する押出機の圧縮比は2.75となっており、通常(副フライトなしのもの)の混練フライトの圧縮比が3.0より大きいのに対して、圧縮比を大きく下げた混練が可能となる。なお、通常の混練フライトを有する押出機を用いて導電ワイヤを製造しても、実施例に示すような高強度の(引張強さが高い)導電ワイヤは製造できない点を出願人は確認している。
【0057】
上述したバリアフライトタイプの混練スクリュ、つまり圧縮比が2.75となる混練スクリュを用いて製造される導電ワイヤであって、被覆材の組成、混練前の導電性粒子の平均長さ、混練前の導電性粒子の平均長さに対する混練後の導電性粒子の平均長さの比率、引張強度などを、実施例と比較例とで比較した表を以下に示す。
【0058】
【0059】
表1の実験例A~Dは、PVCレジン(TK-1300)と、可塑剤(DINP)と、安定剤(OW-314RY)を混合した母材4に対して、導電性粒子5として導電性カーボンを配合したものである。導電性カーボンには、「ケッチェンブラックEC600JD」、「ライオナイトCB」、「トウカブラック5500」を適宜混合して用いた。なお、「ケッチェンブラックEC600JD」
の混練前の粒子径は34nm、「ライオナイトCB」の混練前の粒子径は30nm、「トウカブラック5500」の混練前の粒子径は25nmである。
【0060】
実験例Aは「ライオナイトCB」のみを25g、実験例B、Cは「ライオナイトCB」を30gに「トウカブラック5500」を10g、実験例Dは「ケッチェンブラックEC600JD」を12gに「トウカブラック5500」を50g配合し、各実験例の導電性粒子5としている。
【0061】
上述した実験例A~Dでは、導電性粒子5、母材4の配合量が実験例ごとに異なっているため、導電性粒子5と母材4とを配合した総量に対する導電性粒子5の配合量も実験例ごとに異なっている。具体的には、実験例Aの導電性粒子5(導電性カーボン)の配合量は10.5重量%、実験例Bの配合量は14.1重量%、実験例Cの配合量は16.4重量%、実験例Dの配合量は20.9重量%となっている。本発明では、導電性粒子5(導電性カーボン)の配合量は、15重量%~18重量%が好適とされているので、実験例A、B、Dを比較例、実験例Cを実施例として実験結果を評価した。
【0062】
実施例及び比較例の組成の被覆材を上述したバリアフライトタイプの混練スクリュを備えた押出機に投入し、導電ワイヤを製造した。なお、押出機の押出条件は、シリンダを125~150℃で加熱し、混練スクリュを60rpm~100rpmで回転させつつ押出しを行うものとなっている。このとき、押出機の内部(ネック、ヘッド、ダイスなどの箇所)での温度は150~200℃となっている。
【0063】
混練後の被覆材に含まれる導電性カーボンの平均長さを、TEMなどを用いて観測した結果、実施例である実験例Cでは、16%以上の平均長さを示す結果となった。一方、比較例である実験例A、B、Dでは、いずれも16%の平均長さしか得られず、また平均長さの値として安定した値が得られにくいという結果となった。
【0064】
このようにして製造された導電ワイヤの引張強さと伸びを計測したところ、比較例の導電ワイヤはいずれも「10.0MPa以上」という引張強さの規格を満足できず、また「180%以下」という伸びの規格も満足できない結果であった。これに対して、実施例の導電ワイヤは、引張強さが10.7MPaであり、「10.0MPa以上」という引張強さの規格を満足している。また、実施例の導電ワイヤは、伸びが180%であり、「180%以下」という伸びの規格も満足している。
【0065】
以上のことから、混練前の導電性粒子の平均長さに対する混練後の導電性粒子の平均長さの比率が16%以上となるように被覆材を混練しつつ芯線3に対して押し出しを行うと、「10.0MPa以上」という引張強さ、及び「180%以下」という伸びの規格をいずれも満足する導電ワイヤを製造することが可能であると判断される。
【0066】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
【0067】
特に、今回開示された実施形態において、明示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0068】
1 導電ワイヤ
2 被覆材
3 芯線
4 母材
5 導電性粒子
B 埋設管