(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ワイヤボンディング装置及びリカバリ方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
H01L21/60 301G
(21)【出願番号】P 2023099114
(22)【出願日】2023-06-16
【審査請求日】2024-03-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】笠間 広幸
(72)【発明者】
【氏名】坂田 昇
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-180348(JP,A)
【文献】特開2012-222027(JP,A)
【文献】国際公開第2014/077026(WO,A1)
【文献】特開平10-70149(JP,A)
【文献】特開2013-179255(JP,A)
【文献】国際公開第2017/109990(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンディング対象における複数のボンド点にワイヤボンディング処理を行うワイヤボンディング装置であって、
ワイヤを挿通するボンディングツールと、
前記ボンディングツールのワイヤ供給側に設けられ、前記ワイヤにテンションを付与するテンション付与部と、
前記ボンディングツールのワイヤ供給側に設けられ、前記ワイヤを保持するクランプ部と、
前記ボンディングツールに挿通されたワイヤを繰り出してボンディング対象のボンド点である第1ボンド点に接合するボンディング処理と、前記クランプ部により前記ワイヤを保持した状態で前記ワイヤを切断して前記ボンディングツールの先端から前記ワイヤが延出したワイヤテールを形成する形成処理と、を実行する制御部と、
前記ワイヤテールの状態を検知する検知部と、
を備え、
前記制御部は、
前記検知部により検知された前記ワイヤテールの状態が次のボンディング処理を実行可能か否かについて判定する判定処理と、
前記ボンディング処理を実行可能ではないと判定された場合に、前記複数のボンド点とは異なるボンド点である第2ボンド点に前記ボンディングツールにより前記ワイヤテールを押圧し、前記テンション付与部によって付与されるテンションを解放した状態、および前記クランプ部によるクランプを解放した状態において、前記ボンディングツールを上昇させて前記第2ボンド点から前記ワイヤテールを繰り出すテール再繰出し工程と、
を実行するように構成された、ワイヤボンディング装置。
【請求項2】
前記検知部は、前記ボンディングツールの先端から前記ワイヤテールが突出しているか否かを検知し、
前記制御部は、
前記検知部において前記ボンディングツールの先端から前記ワイヤテールが突出していないと検知された場合、
前記テール再繰出し工程において、前記第2ボンド点における前記ワイヤテールの繰り出しを実行する、
請求項1に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記ボンディングツールの先端から前記ワイヤテールが突出しているか否かを検知し、
前記制御部は、
前記検知部において前記ボンディングツールの先端から前記ワイヤテールが突出していると検知された場合、前記ワイヤテールが前記先端から突出している長さが第1の長さよりも長いか否かを判定する第1の突出長さ判定工程と、
前記第1の突出長さ判定工程で判定された第1の判定結果に応じた、前記第2ボンド点における前記ワイヤのボンディングを実行するボンディング工程と、
をさらに実行する請求項1に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項4】
前記第2ボンド点を含む捨てボンド領域であって、前記捨てボンド領域は、前記ワイヤテールの先端が挿入されるホールを有し、
前記制御部は、
前記第1の突出長さ判定工程において前記第1の長さよりも長いと検知された場合、前記ホールに前記ワイヤテールの一部を挿入して、前記ワイヤテールを所定の角度に曲げるテール曲げ工程をさらに実行し、
前記ボンディング工程では、前記第2ボンド点において、前記テール曲げ工程で曲げられた前記ワイヤテールの曲がり部分のボンディングを実行する、
請求項3に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項5】
前記第2ボンド点を含む捨てボンド領域であって、前記捨てボンド領域は、前記複数のボンド点が設けられる前記ボンディング対象の所定の領域であり、
前記制御部は、
前記第1の突出長さ判定工程において前記第1の長さよりも長いと検知された場合、前記ワイヤテールを前記捨てボンド領域において前記ワイヤテールを曲げるテール曲げ工程をさらに実行し、
前記ボンディング工程では、前記第2ボンド点において、前記テール曲げ工程で曲げられた前記ワイヤテールの曲がり部分のボンディングを実行する、
請求項3に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1の突出長さ判定工程において前記第1の長さよりも短いと検知された場合、前記ボンディングツールの先端から前記ワイヤテールが突出している長さが第2の長さよりも長いか否かを判定する第2の突出長さ判定工程をさらに実行し、
前記ボンディング工程では、前記第2ボンド点において、前記第2の突出長さ判定工程で判定された第2の判定結果に応じた、前記ワイヤのボンディングを実行する、
請求項3に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第2の突出長さ判定工程で前記第2の長さよりも長いと判定された場合、前記ワイヤテールを、前記第2ボンド点を含む捨てボンド領域において前記ワイヤテールを曲げるテール曲げ工程をさらに実行し、
前記ボンディング工程では、前記第2ボンド点において、前記テール曲げ工程で曲げられた前記ワイヤテールの曲がり部分のボンディングを実行する、
請求項6に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第2の突出長さ判定工程で前記第2の長さよりも短いと判定された場合、前記ボンディング工程において、前記第2ボンド点を含む捨てボンド領域における前記第2ボンド点の近傍に前記ワイヤテールを接触させて、前記ワイヤテールを曲げつつ前記第2ボンド点に、前記ワイヤテールの曲がり部分をボンディングする、
請求項6に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記テール再繰出し工程を実行した後、前記検知部において前記ボンディングツールにおける前記ワイヤテールの突出状態を検知させる再テール検知工程と、
前記再テール検知工程において、前記ボンディングツールの先端から前記ワイヤテールが突出していないと検知された場合、
前記第2ボンド点における前記ワイヤのボンディングを実行するボンディング工程と、前記テール再繰出し工程と、前記再テール検知工程と、を繰り返し実行した回数が、閾値を超えたか否かを判定するリカバリ判定工程と、
をさらに実行する、請求項1に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記ボンディングツールの先端のワイヤを前記複数のボンド点のうちの所定のボンド点にボンディングする第1ボンディング工程と、
前記第1ボンディング工程を実行した後、前記所定のボンド点から、前記第1ボンド点に向かってワイヤをループさせるワイヤループ工程と、
をさらに実行する、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項11】
前記ボンディング処理は、前記ボンディングツールの先端のワイヤをボール状に形成し、前記ボール状に形成されたワイヤを前記第1ボンド点にボンディングすることを含む、
請求項1から
請求項9のいずれか一項に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項12】
ボンディング対象における複数のボンド点にワイヤボンディング処理を行うワイヤボンディング装置を用いて実行されるリカバリ方法であって、
前記ワイヤボンディング装置は、
ワイヤを挿通するボンディングツールと、
前記ボンディングツールのワイヤ供給側に設けられ、前記ワイヤにテンションを付与するテンション付与部と、
前記ボンディングツールのワイヤ供給側に設けられ、前記ワイヤを保持するクランプ部と、
ボンディングツールに挿通されたワイヤを繰り出してボンディング対象のボンド点である第1ボンド点に接合するボンディング処理と、前記クランプ部により前記ワイヤを保持した状態で前記ワイヤを切断して前記ボンディングツールの先端から前記ワイヤが延出したワイヤテールを形成する形成処理と、を実行する制御部と、
前記ワイヤテールの状態を検知する検知部と、
を備え、
前記リカバリ方法は、
前記検知部により検知された前記ワイヤテールの状態が次のボンディング処理を実行可能か否かについて判定する判定処理と、
前記ボンディング処理を実行可能ではないと判定された場合に、前記複数のボンド点とは異なるボンド点である第2ボンド点に前記ボンディングツールにより前記ワイヤテールを押圧し、前記テンション付与部によって付与されるテンションを解放した状態、および前記クランプ部によるクランプを解放した状態において、前記ボンディングツールを上昇させて前記第2ボンド点から前記ワイヤテールを繰り出すテール再繰出し工程と、
を実行する、リカバリ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラー検出時にリカバリ動作を実行するワイヤボンディング装置及びリカバリ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1ボンド点(例えば半導体ダイのパッド)と第2ボンド点(例えばパッケージのリード)とをワイヤで電気的に接続するワイヤボンディング装置が知られている。このワイヤボンディング装置は、キャピラリ先端からワイヤを自動で突出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているワイヤボンディング装置は、把持手段によってワイヤを把持させた状態で、キャピラリを上下に振動させる加振手段によってボンディングアームの固有振動数を含む周波数で上下に振動させる。これにより、当該ワイヤボンディング装置は、キャピラリ先端からワイヤを突出させる工程を実現できる。
【0005】
しかしながら、当該ワイヤボンディング装置は、ワイヤテールに関するエラー(例えば、ワイヤテールが突出していない、ワイヤテールは突出しているが短い、ワイヤテールが曲がっているなど)が発生したときのリカバリ動作において、ワイヤテールを再度突出させる際に、上記工程のような複雑な動作を実行する必要がある。また、当該ワイヤボンディング装置では、キャピラリ先端のワイヤテールの状態に関係なく、ワイヤテールを形成する動作を画一的に実行する。そのため、当該ワイヤボンディング装置では、リカバリ動作において、適切なワイヤテールを生成できないおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ワイヤテールに関するエラーが発生したときに、簡易な動作により適切なワイヤテールを新たに突出させることが可能なワイヤボンディング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るワイヤボンディング装置は、ボンディング対象における複数のボンド点にワイヤボンディング処理を行うワイヤボンディング装置であって、ワイヤを挿通するボンディングツールと、前記ボンディングツールのワイヤ供給側に設けられ、前記ワイヤにテンションを付与するテンション付与部と、前記ボンディングツールのワイヤ供給側に設けられ、前記ワイヤを保持するクランプ部と、前記ボンディングツールに挿通されたワイヤを繰り出してボンディング対象のボンド点である第1ボンド点に接合するボンディング処理と、前記クランプ部により前記ワイヤを保持した状態で前記ワイヤを切断して前記ボンディングツールの先端から前記ワイヤが延出したワイヤテールを形成する形成処理と、を実行する制御部と、前記ワイヤテールの状態を検知する検知部と、を備え、前記制御部は、前記検知部により検知された前記ワイヤテールの状態が次のボンディング処理を実行可能か否かについて判定する判定処理と、前記ボンディング処理を実行可能ではないと判定された場合に、前記複数のボンド点とは異なるボンド点である第2ボンド点に前記ボンディングツールにより前記ワイヤテールを押圧し、前記テンション付与部によって付与されるテンションを解放した状態、および前記クランプ部によるクランプを解放した状態において、前記ボンディングツールを上昇させて前記第2ボンド点から前記ワイヤテールを繰り出すテール再繰出し工程と、を実行するように構成された。
【0008】
本発明の一態様に係るリカバリ方法は、ボンディング対象における複数のボンド点にワイヤボンディング処理を行うワイヤボンディング装置を用いて実行されるリカバリ方法であって、前記ワイヤボンディング装置は、ワイヤを挿通するボンディングツールと、前記ボンディングツールのワイヤ供給側に設けられ、前記ワイヤにテンションを付与するテンション付与部と、前記ボンディングツールのワイヤ供給側に設けられ、前記ワイヤを保持するクランプ部と、 ボンディングツールに挿通されたワイヤを繰り出してボンディング対象のボンド点である第1ボンド点に接合するボンディング処理と、前記クランプ部により前記ワイヤを保持した状態で前記ワイヤを切断して前記ボンディングツールの先端から前記ワイヤが延出したワイヤテールを形成する形成処理と、を実行する制御部と、前記ワイヤテールの状態を検知する検知部と、を備え、前記リカバリ方法は、前記検知部により検知された前記ワイヤテールの状態が次のボンディング処理を実行可能か否かについて判定する判定処理と、前記ボンディング処理を実行可能ではないと判定された場合に、前記複数のボンド点とは異なるボンド点である第2ボンド点に前記ボンディングツールにより前記ワイヤテールを押圧し、前記テンション付与部によって付与されるテンションを解放した状態、および前記クランプ部によるクランプを解放した状態において、前記ボンディングツールを上昇させて前記第2ボンド点から前記ワイヤテールを繰り出すテール再繰出し工程と、を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ワイヤテールに関するエラーが発生したときに、簡易な動作により適切なワイヤテールを新たに突出させることが可能なワイヤボンディング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係るワイヤボンディング装置の一例を示す図である。
【
図2】ボンディングアームの頂面および捨てボンド領域の一例を示す図である。
【
図3】テール画像検出部の構成の一例を示す図である。
【
図4】ボンディングツールの先端部が映る検出画像を示す図である。
【
図5】ワイヤテールの突出状態に関するエラーが発生したときに、捨てボンド点を用いてワイヤテールを生成するための各種工程を含むフローチャートである。
【
図6】ワイヤテールが突出していない場合の捨てボンディング工程の動作の一例を示す図である。
【
図7】第1のテール曲げ工程の一例を示す図である。
【
図8】第2のテール曲げ工程の一例を示す図である。
【
図9】ワイヤテールが短い場合の捨てボンディング工程の動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施の形態に限定して解するべきではない。
【0012】
===ワイヤボンディング装置1の構成===
図1~
図4を参照して、ワイヤボンディング装置1について説明する。
図1は、本実施形態に係るワイヤボンディング装置1の一例を示す図である。
図2は、ボンディングアーム20の頂面および捨てボンド領域130の一例を示す図である。
【0013】
ワイヤボンディング装置1は、ワイヤカットエラーやスパークエラーなどのワイヤテールに関するエラーが発生したときに、捨てボンド領域130において、ワイヤテールの状態に応じたリカバリが可能な装置である。また、ワイヤボンディング装置1は、リカバリの動作において、ワイヤにテンションを付与するタイミングを調整することにより、一つのクランパ(
図1のクランパ44)のみによってワイヤを把持させて、リカバリを実行できる。すなわち、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテールに関するエラーのリカバリを、より簡易な動作および装置構成で適切に実行可能な装置である。
【0014】
図1に示すように、ワイヤボンディング装置1は、例えば、XY駆動機構10と、Z駆動機構12と、ボンディングアーム20と、超音波ホーン30と、ボンディングツール40と、荷重センサ50と、超音波振動子60と、不着検出部70と、テール画像検出部80と、制御部90とを含む。
【0015】
XY駆動機構10は、例えば、XY軸方向(ボンディング面に平行な方向)に移動可能に構成されいる。XY駆動機構10には、例えば、ボンディングアーム20をZ軸方向(ボンディング面に垂直な方向)に移動可能なZ駆動機構12が設けられている。
【0016】
ボンディングアーム20は、支軸14に支持され、XY駆動機構10に対して揺動自在に構成されている。ボンディングアーム20は、XY駆動機構10から、ボンディング対象である半導体装置100が置かれたボンディングステージ16に向かって延出するよう略直方体に形成されている。ボンディングアーム20は、XY駆動機構10に取り付けられるアーム基端部22と、アーム基端部22の先端側(-Y方向側)に位置して超音波ホーン30が取り付けられるアーム先端部24と、アーム基端部22とアーム先端部24とを連結して可撓性を有する連結部23とを含む。この連結部23は、例えば、ボンディングアーム20の頂面21aから底面21bに向かって延出した所定幅のスリット25a、25b、及び、ボンディングアーム20の底面21bから頂面21aの方向に向かって延出した所定幅のスリット25cによって構成されている。このように、連結部23が各スリット25a、25b、25cによって局部的に薄肉部として構成されることで、アーム先端部24はアーム基端部22に対して撓むことができる。
【0017】
図1に示すように、ボンディングアーム20の底面21b側には、超音波ホーン30が収容される凹部26が形成されている。超音波ホーン30は、ボンディングアーム20の凹部26に収容された状態で、アーム先端部24にホーン固定ネジ32によって取り付けられている。この超音波ホーン30は、凹部26から突出した先端部においてボンディングツール40を保持しており、凹部26には超音波振動を発生する超音波振動子60が設けられている。超音波振動子60によって超音波振動が発生し、これが超音波ホーン30によってボンディングツール40に伝達される。これにより、超音波振動し60は、ボンディングツール40を介してボンディングの対象に超音波振動を付与することができる。超音波振動子60は、例えばピエゾ振動子である。
【0018】
また、
図2に示すように、ボンディングアーム20の頂面21a側には、頂面21aから底面21bに向かって順番にスリット25a及び25bが形成されている。上部のスリット25aは、下部のスリット25bよりも幅広に形成されている。そして、この幅広に形成された上部のスリット25aに、荷重センサ50が設けられている。荷重センサ50は、予圧用ネジ52によってアーム先端部24に固定されている。荷重センサ50は、アーム基端部22とアーム先端部24との間に挟み込まれるように配置されている。すなわち、荷重センサ50は、超音波ホーン30の長手方向の中心軸からボンディング対象に対する接離方向にオフセットして、ボンディングアーム20の回転中心とアーム先端部24における超音波ホーン30の取付面(すなわち、アーム先端部24におけるボンディングツール40側の先端面)との間に取り付けられている。そして、上記のように、ボンディングツール40を保持する超音波ホーン30がアーム先端部24に取り付けられているため、ボンディングの対象からの反力によりボンディングツール40の先端に荷重が加わると、アーム基端部22に対してアーム先端部24が撓み、荷重センサ50において荷重を検出することが可能となっている。荷重センサ50は、例えばピエゾ荷重センサである。
【0019】
ボンディングツール40は、ワイヤ42を挿通するためのものであり、例えば挿通穴41が設けられたキャピラリである。ボンディングツール40は、その挿通穴41にボンディングに使用するワイヤ42が挿通される。ボンディングツール40は、その先端からワイヤ42の一部を繰り出し可能に構成されている。以下、便宜上、ボンディングツール40の先端から繰り出されたワイヤ42をワイヤテール42aという。また、ボンディングツール40の先端には、ワイヤ42を押圧するための部分(以下、「先端部40a」ということもある)が設けられている。先端部40aは、ボンディングツール40の挿通穴41の軸方向の周りに回転対称の形状を有しており、挿通穴41の周囲の下面に押圧面を有している。ボンディングツール40は、バネ力などによって交換可能に超音波ホーン30に取り付けられている。
【0020】
クランパ44(クランプ部)は、例えば、ボンディングツール40の上方(+Z軸方向)に設けられ、ボンディングツール40とともに動作する。クランパ44は、例えば、クランパ制御部91から出力される制御信号に基づき、所定のタイミングでワイヤ42を把持(拘束)または解放するよう構成されている。
【0021】
テンション付与部45は、クランパ44のさらに上方(+Z軸方向)に設けられる。テンション付与部45は、例えば、ワイヤ42を挿通し、+Z軸方向への気体流を形成させて、ワイヤ42に適度なテンションを付与するよう構成されている。なお、テンション付与部45のさらに上方(+Z軸方向)に不図示のテンション付与部が設けられていてもよい。不図示のテンション付与部は、例えばたるみ防止のためのテンションをワイヤ42に付与する。
【0022】
ワイヤ42は、加工の容易さと電気抵抗の低さなどが考慮された材料が適宜選択され、例えば、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)又は銀(Ag)等である。なお、ワイヤ42は、ボンディングツール40の先端から延出したボール部43を形成する。ボール部43は、所定のボンド点(例えば半導体ダイ110の電極パッド112であり、以下、「第1ボンド点」という。)にボンディングされる。
【0023】
不着検出部70は、例えば、ボンディングツール40に挿通されたワイヤ42の先端に形成されるボール部43が、ボンディングの対象である半導体装置100に接地されているか否かを電気的に検出する。不着検出部70は、例えば、電源部71と、出力測定部72と、判定部73とを備える。電源部71は、例えば、半導体装置100とワイヤ42との間に所定の電気信号を印加する。出力測定部72は、例えば、電源部71によって供給された電気信号の出力を測定する。判定部73は、例えば、出力測定部72の測定結果に基づき、ワイヤ42が半導体装置100に電気的に接触したか否かを判定する。
【0024】
また、不着検出部70は、例えば、ワイヤ42に供給された電気信号の出力に基づき、ワイヤテール42aが半導体装置100の所定のボンド点から切断されたか否かを検出する。ここで、所定のボンド点とは、例えば、リードフレーム120の電極パッド122や捨てボンド領域130の捨てボンド点131(第2ボンド点)である。
【0025】
捨てボンド領域130は、ワイヤテールの突出状態に関するするエラー時に、正常なワイヤテールを繰り出すためのボンディング領域である。捨てボンド領域130は、例えば、半導体装置100の上面と同じZ軸方向の高さレベルの領域であり、半導体装置100の近傍に設けられる。捨てボンド領域130には、ワイヤテールを曲げるための孔(後述する
図7のホール132)が設けられていてもよい。また、捨てボンド領域130は、半導体装置100(ボンディング対象)上の所定の領域であってもよい。ワイヤボンディング装置1の記憶部(不図示)には、捨てボンド領域130、捨てボンド点131およびホール132の位置の座標が記憶される。
【0026】
テール画像検出部80は、例えば、ワイヤテール42aの状態を示す画像を検出する。テール画像検出部80は、検出した画像(以下、「検出画像」という。)を、制御部90に出力する。
図3を参照して、テール画像検出部80の構成について説明する。
図3は、テール画像検出部80の構成の一例を示す図である。
図3に示すように、テール画像検出部80は、例えば、発光器81と、レンズ82と、プリズム83と、撮像手段84とを含む。発光器81は、発光ダイオードなどで構成され、基準部材85の上部においてボンディングツール40の先端を側面から照明する。撮像手段84は、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラなどである。撮像手段84には、発光器81によって当該先端に照射された撮像光がレンズ82およびプリズム83を通じて入射される。撮像手段84は、入射された撮像光から検出画像を生成する。
【0027】
制御部90は、例えば、クランパ制御部91と、XYZ軸制御部92と、エラー判定部93とを含む。クランパ制御部91は、クランパ44の開閉動作を制御する。XYZ軸制御部92は、ボンディングツール40におけるX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の動作を制御する。
【0028】
エラー判定部93は、ワイヤテールの状態に関するエラーを検知する。ワイヤテールの状態とは、例えばボンディングツール40からワイヤテールが突出しているか否かの状態、ワイヤテールが曲がっているか否かの状態、ワイヤテールへのスパークにより形成されるボールの状態などである。言い換えると、エラー判定部93は、不着検出部70やテール画像検出部80により検知されたワイヤの先端の状態(ボール部43の状態やワイヤテールの状態)が次のボンディング処理を実行可能か否かについて判定する判定処理を実行する。
【0029】
具体的には、エラー判定部93は、例えば、テール画像検出部80から取得される検出画像においてボンディングツール40からワイヤテールが突出していないと特定した場合、ワイヤテールにエラーが発生していると判定する。また、エラー判定部93は、例えば、検出画像においてボンディングツール40からワイヤテールが突出している長さが閾値よりも短いと特定した場合、ワイヤテールにエラーが発生していると判定してもよい。また、エラー判定部93は、不着検出部70や検出画像においてワイヤテールへのスパークによってワイヤテールにボールが正常に形成されていないと特定した場合、ワイヤテールにエラーが発生していると判定してもよい。具体的には、エラー判定部93は、検出画像に映るボールの直径と、予め設定された閾値とを比較して、ボールの直径が閾値未満である場合、ワイヤテールにエラーが発生していると判定する。なお、エラー判定部93は、制御部90に含まれる機能であるとして説明したが、これに限定されず、例えば制御部90とは別の機能部であってもよい。
【0030】
制御部90は、XY駆動機構10、Z駆動機構12、超音波ホーン30(超音波振動子60)、クランパ44、荷重センサ50、不着検出部70、テール画像検出部80などの各構成との間で信号の送受信が可能になるよう接続されている。制御部90は、これらの構成の動作を制御することにより、ワイヤテール42aが正常に生成できなかった場合(エラー判定部93においてボール部43やワイヤテールの状態に関するエラーが特定された場合)、一つのクランパ44のみを用いて、正常なワイヤテール42aを生成するためのリカバリ動作を実行できる。
【0031】
また、制御部90は、検出画像に基づき、ボンディングツール40(キャピラリ)の先端のワイヤテールの突出状態を検知する。ワイヤテールの突出状態とは、例えば、ボンディングツール40の先端部40aからワイヤテールが突出しているか否かの状態、ワイヤテールが先端部40aからどの程度突出しているかの状態などである。以下、
図4を参照して、制御部90における、ボンディングツール40の先端部40aからワイヤテールが突出しているか否かの判定動作の概要、ワイヤテールの長さの検知動作の概要について説明する。
図4は、ボンディングツール40の先端部40aが映る検出画像を示す図である。
【0032】
制御部90は、
図4に示す検出画像に含まれる先端部40aからワイヤテールが突出しているか否かを検知する(テール検知工程)。具体的には、制御部90は、
図4(a)に示すように、先端部40aの先端から基準部材85に向かって延出する部分を示す画素が特定されない場合、先端部40aからワイヤテールが突出していないと検知する。例えば、先端部40aからワイヤテールが突出していない状態は、ボンディングツール40の先端のヘリ(例えば押圧面から挿通穴にわたる領域)にワイヤテール42aの先端部40aが張り付いているような状態を含む。また、制御部90は、
図4(b)に示すように、先端部40aの先端から基準部材85に向かって延出する部分を示す画素が特定される場合、先端部40aからワイヤテールが突出していると検知する。
【0033】
また、制御部90は、
図4に示す検出画像に含まれる先端部40aから延出するワイヤテール42aの長さを検知する(第1の突出長さ判定工程、第2の突出長さ判定工程)。具体的には、制御部90は、例えば、先端部40aの先端から基準部材85に向かって延出する部分を示す画素数を特定することにより、記憶部(不図示)を参照して当該画素数に対応する長さを、ワイヤテール42aの長さとして特定してもよい。また、制御部90は、ボンディングツール40の先端から基準部材85に向かって延出する部分を示す画素数と、基準部材85の画素数とを相対的に比較した結果に基づき、ワイヤテール42aの長さを特定してもよい。例えば、制御部90は、
図4(b)のようにワイヤテール42aの長さを200μmと特定し、
図4(c)のようにワイヤテール42aの長さを50μmと特定する。
【0034】
制御部90には、例えば、制御するための情報(以下、「制御情報」という。)を入力するための操作部140と、制御情報を出力するための表示部141とが接続されている。作業者は、表示部141で画面を確認して、操作部140で制御情報(上昇情報、下降情報、捨てボンド点の座標など)を入力する。なお、制御部90は、CPU及びメモリなどを備えるコンピュータ装置であり、メモリには予めワイヤボンディングに必要な処理を実行するためのプログラムなどが格納される。制御部90は、後述するワイヤボンディング方法において説明するボンディングツール40の動作を制御するための各工程を行うように構成されている(例えば、各工程をコンピュータに実行させるためのプログラムを備える)。
【0035】
===処理内容===
図1~
図9を参照して、ワイヤボンディング装置1の制御部90が実行するワイヤボンディング処理の各種工程について説明する。
図5は、ワイヤテールの突出状態に関するエラーが発生したときに、捨てボンド点を用いてワイヤテールを生成するための各種工程を含むフローチャートである。
図6は、ワイヤテールが突出していない場合の捨てボンディング工程の動作の一例を示す図である。
図7は、第1のテール曲げ工程の一例を示す図である。
図8は、第2のテール曲げ工程の一例を示す図である。
図9は、ワイヤテールが短い場合の捨てボンディング工程の動作の一例を示す図である。
【0036】
以下では、まず、ステップS101の前に実行される工程の概要について説明する。
図1に示すように、ワイヤボンディング装置1は、ボンディングツール40から延び出るワイヤテール42aにボール部43を形成させる。次に、ワイヤボンディング装置1は、ボンディングツール40を半導体ダイ110の電極パッド112に向かって下降させて、ボール部43を電極パッド112に接触させる。そして、ワイヤボンディング装置1は、超音波振動をON制御する(第1ボンディング工程)。ワイヤボンディング装置1は、ボンディングツール40を+Z軸方向に上昇させつつ、ボンディングツール40からワイヤ42を繰り出す。
【0037】
次に、ワイヤボンディング装置1は、電極パッド122(ワイヤ接合部)に向かってワイヤ42を屈曲させながら、ワイヤ42のワイヤループを形成させる(ワイヤループ工程)。そして、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤ42の一部を電極パッド122(複数のボンド点)の上面に押圧して、超音波振動をON制御する(ボンディング工程)。ワイヤボンディング装置1は、ボンディングツール40を+Z軸方向に上昇させて、先端部40aからワイヤテール42aを繰り出す(テール繰出し工程)。そして、ワイヤボンディング装置1は、クランパ44でワイヤ42をクランプする。ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aをボンディングツール40から突出させた状態でワイヤ42を+Z軸方向に上昇させて、ワイヤテール42aを電極パッド122(ワイヤ接合部)から切断する(切断工程)。このとき、クランパ44はワイヤ42をクランプしている。
【0038】
ワイヤボンディング装置1では、この状態において、ステップS101の処理が実行される。なお、上記において、2点間のワイヤボンディングについて説明したが、これに限定されない。例えば、バンプボンディングに対して、ステップS101以降を実行してもよい。この場合、ワイヤボンディング装置1は、上記のボンディング工程において、ボンディングツール40の先端のワイヤ42をボール状に形成し、ボール状に形成されたワイヤ42をボンド点にボンディングすることとする。
【0039】
ステップS101において、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤカットエラーやスパークエラーなどのワイヤテールの状態に関するエラーを検知する。すなわち、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aが正常に生成されていない可能性がある状態を検知する。
【0040】
ステップS102において、ワイヤボンディング装置1は、テール検知工程を実行する。テール検知工程は、ワイヤテール42aの突出状態を検知する工程である。
図3に示すように、テール検知工程では、発光器81から発光される撮像光をボンディングツール40(キャピラリ)の先端部40aに照射して、レンズ82を通じてプリズム83で反射された当該撮像光を取得した撮像手段84によって検出画像(例えば立体画像や
図4に示す画像)が生成される。ワイヤボンディング装置1は、上述したように検出画像に基づきボンディングツール40からワイヤテールが出ているか否かを検知する。
【0041】
ステップS103において、ワイヤボンディング装置1は、テール検知工程においてボンディングツール40からワイヤテール42aが突出していないと判定された場合(ステップS102:テールなし)、捨てボンディング工程(ボンディング工程)を実行する。これにより、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aが突出していない状況に最適な捨てボンディング工程を実行できるため、適切かつ迅速にワイヤテール42aを新たに突出させることができる。捨てボンディング工程は、捨てボンド領域130の捨てボンド点131にワイヤ42を押圧してボンディングする工程である。
【0042】
捨てボンディング工程を実行する際に、ワイヤボンディング装置1は、テンション解放工程を実行する。テンション解放工程は、テンション付与部45によるワイヤに対するテンションを解放する工程である。ワイヤボンディング装置1は、テンション解放工程を実行することにより、クランパ44が一つのみで以下の工程を実現することができる。また、テンション解放工程では、テンション付与部45より上方に不図示のテンション付与部が設けられている場合、当該不図示のテンション付与部によるワイヤ42に対するテンション(ワイヤ42のたるみ防止のためのテンション)については解放しなくてもよい。
【0043】
ステップS104において、ワイヤボンディング装置1は、テール再繰出し工程を実行する。テール再繰出し工程は、クランパ44を解放した状態で、捨てボンド点131(第2ボンド点)においてワイヤテール42aを新たに繰り出す工程である。
【0044】
図6を参照して、捨てボンディング工程およびテール再繰出し工程の一例について説明する。
図6(a)~
図6(c)に示す工程が捨てボンディング工程であり、
図6(d)~
図6(g)に示す工程がテール再繰出し工程である。
【0045】
図6(a)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、クランパ44でワイヤ42をクランプした状態で、ボンディングツール40が捨てボンド点131とXY平面で一致するように、ボンディングツール40を移動させる。次に、
図6(b)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、先端部40aと捨てボンド点131との接触状態を電気的または荷重検出により検知する。次に、
図6(c)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、先端部40aに荷重をかけるとともに、超音波振動を与える。
【0046】
次に、
図6(d)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、クランパ44でワイヤ42をクランプした状態を解除してワイヤテールを繰り出せる状態に移行させる。この時点では、クランパ44のクランプを解除しても、ワイヤ42に対するテンションが解放されているため、ボンディングツール40からワイヤ42が抜けることはない。なお、
図6では
図6(a)においてテンション解放工程が実行されるように記載しているがこれに限定されず、例えば
図6(d)のクランプを解放するまでにテンション解放工程が実行されていればよい。次に、
図6(e)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、ボンディングツール40を+Z軸方向に移動させて、ワイヤテール42aを繰り出す。次に、
図6(f)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、クランパ44でワイヤ42をクランプする。次に、
図6(g)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aを捨てボンド点131から切断する。なお、
図6(f)または
図6(g)の時点で、ワイヤボンディング装置1は、テンション付与部45によるテンションをONにしてもよい。
【0047】
ステップS105において、ワイヤボンディング装置1は、ステップS102のテール検知工程と同様である再テール検知工程を実行する。
【0048】
ステップS106において、ワイヤボンディング装置1は、テール再繰出し工程を実行したにもかかわらず、ワイヤテール42aが突出していないと検知された場合(ステップS105:テールなし)、リカバリ判定工程を実行する。リカバリ判定工程は、予め設定されるリカバリ回数を超過しているか否かを判定する。リカバリ回数は、例えばステップS103~ステップS105の処理を繰り返し連続で行った回数である。
【0049】
リカバリ判定工程においてリカバリ回数が超過していると判定された場合(ステップS106:YES)、ワイヤボンディング装置1は、装置を停止して、例えば管理者に装置を停止させたことを通知する(ステップS107)。すなわち、ワイヤボンディング装置1では、リカバリ回数が所定の回数(例えば3回)を超えていると判定した場合、ワイヤテール42aを正常に生成できない状態が続いていると判定して、装置を停止させて管理者による復旧を可能とさせる。これにより、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aを突出させることが不可能な状態を迅速に回復させることができる。
【0050】
リカバリ判定工程においてリカバリ回数が超過していないと判定された場合(ステップS106:NO)、ワイヤボンディング装置1は、ステップS103から処理を繰り返す。
【0051】
このように、ワイヤボンディング装置1では、ワイヤテール42aがボンディングツール40から突出していないような、ワイヤテール42aの突出状態に関するエラーが発生した場合に、正常なワイヤテール42aを生成できる。
【0052】
ステップS108において、テール検知工程においてボンディングツール40からワイヤテール42aが突出していると判定された場合(ステップS102およびステップS105:テールあり)、ワイヤボンディング装置1は、第1の突出長さ判定工程を実行する。
【0053】
第1の突出長さ判定工程は、ボンディングツール40から突出しているワイヤテール42aの長さ(以下、「突出長さ」という。)が予め設定された長さ(以下、「第1の長さ」という。)よりも長いか短いかを判定する工程である。具体的には、ワイヤボンディング装置1は、テール画像検出部80で取得される検出画像を解析することにより、ボンディングツール40の先端と、ワイヤテール42aの先端との間の長さを突出長さとして特定する。ワイヤボンディング装置1は、特定された突出長さと第1の長さとを比較する。これにより、ワイヤボンディング装置1は、突出しているワイヤテール42aの長さに対する最適な捨てボンディング工程を実行できるため、適切かつ迅速にワイヤテール42aを新たに突出させることができる。
【0054】
第1の長さは、例えば、捨てボンド領域130のホール132(
図7を参照)を用いることが可能な長さ以上長い長さである。言い換えると、第1の長さは、ホール132を用いる後述するテール曲げ工程(ステップS109)を実行可能な長さである。
【0055】
ステップS109において、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aの長さが第1の長さよりも長いと検知された場合(ステップS108:長い)、捨てボンド領域130のホール132を用いるテール曲げ工程(以下、「第1のテール曲げ工程」という。)を実行する。
【0056】
第1のテール曲げ工程は、ホール132を用いて、ワイヤテール42aを所定の角度曲げる工程である。これにより、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aが長い場合、ワイヤテール42aを予め曲げることにより、捨てボンド点131でのボンディングを円滑に実行でき、適切なワイヤテール42aを生成できる。
【0057】
図7を参照して、第1のテール曲げ工程の一例について説明する。まず、
図7(a)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、クランパ44でワイヤ42をクランプした状態で、記憶部(不図示)に記憶されるホール132の座標に基づき、ホール132の中心と、ボンディングツール40の挿通穴41とがXY平面で一致するように、ボンディングツール40を移動させる。次に、
図7(b)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aをホール132に挿入する。このとき、ワイヤボンディング装置1は、Z軸方向のボンドレベル(Bond Level)から予め設定された所定の深さまでワイヤテール42aを挿入して、ボンディングツール40を停止させる。次に、
図7(c)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、ボンディングツール40をXY平面に沿って移動させて、ワイヤテール42aとZ軸とが所定の角度(例えば60度)となるように、ワイヤテール42aをホール132に当てながら曲げる。次に、
図7(d)、
図7(e)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、ボンディングツール40を捨てボンド点131に移動させる(処理をステップS112に移行する)。
【0058】
ステップS110において、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aの突出長さが第1の長さよりも短いと判定された場合(ステップS108:短い)、第2の突出長さ判定工程を実行する。
【0059】
第2の突出長さ判定工程は、ボンディングツール40から突出しているワイヤテール42aの突出長さが予め設定された長さ(以下、「第2の長さ」という。)よりも長いか短いかを判定する工程である。具体的には、ワイヤボンディング装置1は、テール画像検出部80で取得される検出画像を解析することにより、ボンディングツール40の先端と、ワイヤテール42aの先端との間の長さを突出長さとして特定する。ワイヤボンディング装置1は、特定された突出長さと第2の長さとを比較する。これにより、ワイヤボンディング装置1は、突出しているワイヤテール42aの長さに対する、ワイヤテール42aをテール曲げる最適な動作および捨てボンディング工程を実行できるため、適切かつ迅速にワイヤテール42aを新たに突出させることができる。
【0060】
第2の長さは、例えば、第1の長さよりも短く、予め設定された所定の長さ以上長い長さである。言い換えると、第2の長さは、ホール132を用いることができない長さ(例えばボンディングツール40の先端とボンドレベルまでの距離+所定の長さ未満)であって、後述する第3のテール曲げ工程を実行するには長い長さである。
【0061】
ステップS111において、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aの長さが第2の長さよりも長いと検知された場合(ステップS110:長い)、ホール132を用いないテール曲げ工程(以下、「第2のテール曲げ工程」という。)を実行する。
【0062】
第2のテール曲げ工程は、ホール132を用いずに、ワイヤテール42aを所定の角度曲げる工程である。これにより、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aを予め曲げることにより、捨てボンド点131へのボンディングを円滑に実行でき、適切なワイヤテール42aを生成できる。
【0063】
図8を参照して、第2のテール曲げ工程の一例について説明する。まず、
図8(a)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、クランパ44でワイヤ42をクランプした状態で、ボンド領域130の所定のポイント133と、ボンディングツール40の挿通穴41とがXY平面で一致するように、ボンディングツール40を移動させる。次に、
図8(b)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aの先端をポイント133と接触させる。具体的には、ワイヤボンディング装置1は、ボンドレベル(Z軸方向の高さレベル)にワイヤテール42aの長さを加えたZ軸方向の高さで、ボンディングツール40を停止させる。次に、
図8(c)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aとZ軸とが所定の角度(例えば60度)となるように、ワイヤテール42aの先端をポイント133に接触させながらワイヤテール42aを曲げる。具体的には、ワイヤボンディング装置1は、例えば、ボンディングツール40をポイント133からズラしつつ、先端部40aをボンドレベルに近づけるように、ボンディングツール40を移動させる。次に、
図8(d)、
図8(e)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、ボンディングツール40を捨てボンド点131に移動させる。
【0064】
ステップS112およびステップS113において、ワイヤボンディング装置1は、第1のテール曲げ工程または第2のテール曲げ工程において曲げられたワイヤテール42aに対して、後述する
図9(a)~
図9(d)と同様の工程を実行する。
【0065】
なお、ワイヤテール42aの長さが第2の長さよりも短いと検知された場合(ステップS110:短い)においては、ステップS112およびステップS113の工程が、ステップS103およびステップS104と異なっていてもよい。
【0066】
図9を参照して、ワイヤテール42aの長さが第2の長さよりも短いと検知された場合における、テール曲げ工程(以下、「第3のテール曲げ工程」という。)、捨てボンディング工程およびテール再繰出し工程の一例について説明する。
図9(a)~
図9(d)に示す工程が「第3のテール曲げ工程」であり、
図9(e)および
図9(f)に示す工程が「捨てボンディング工程」であり、
図9(g)~
図9(i)に示す工程が「テール再繰出し工程」である。
【0067】
まず、
図9(a)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、クランパ44でワイヤ42をクランプした状態で、捨てボンド点131の近傍のポイント134と、ボンディングツール40の挿通穴41とがXY平面で一致するように、ボンディングツール40を移動させる。捨てボンド点131の近傍とは、例えば、捨てボンド点131からワイヤテール42aの長さに等しい距離離れたポイントであってもよいし、捨てボンド点131から予め設定された距離離れたポイントであってもよい。次に、
図9(b)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aの先端をポイント134と接触させる。具体的には、ワイヤボンディング装置1は、ボンドレベル(Z軸方向の高さレベル)にワイヤテール42aの長さを加えたZ軸方向の高さで、ボンディングツール40を停止させる。次に、
図9(c)、
図9(d)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、ポイント134とワイヤテール42aの先端との接触状態を保持しつつ、ワイヤテール42aを曲げながらボンディングツール40の先端部40aを捨てボンド点131に接触させる。具体的には、ワイヤボンディング装置1は、例えば、ボンディングツール40をポイント134からズラしつつ、先端部40aを捨てボンド点131と重なるように、ボンディングツール40を移動させる。第3のテール曲げ工程を実行することにより、ワイヤボンディング装置1は、ボンディングツール40からワイヤテール42aが抜け出すことを防止することができる。
【0068】
次に、
図9(e)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、捨てボンド点131とワイヤ42との接触状態を荷重もしくは電気的に検知する。次に、
図9(f)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、先端部40aに荷重をかけて超音波振動を与える。なお、
図9(e)の処理を実行する前に、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤ42がボンディングツール40から抜け出さないように、ワイヤ42に対するテンションを解放してもよい。
【0069】
次に、
図9(g)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、クランパ44を解放してワイヤテール42aを繰り出せる状態に移行する。そして、ワイヤボンディング装置1は、ボンディングツール40を+Z軸方向に移動させる。これにより、ボンディングツール40からワイヤテール42aが繰り出される。次に、
図9(h)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、クランパ44でワイヤ42をクランプする。次に、
図9(i)に示すように、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aを捨てボンド点131から切断する。なお、
図9(h)の時点で、テンション付与部45によるワイヤ42へのテンションをONにしてもよい。
【0070】
ステップS114において、ワイヤボンディング装置1は、第1のテール曲げ工程、第2のテール曲げ工程または第3のテール曲げ工程を通じて、テール再繰出し工程を実行した後、ステップS102のテール検知工程と同様の再テール検知工程を実行する。
【0071】
ボンディングツール40からワイヤテール42aが突出していないと検知された場合(ステップS114:テールなし)、ワイヤボンディング装置1は、ステップ106から処理を繰り返す。
【0072】
ステップS115において、ワイヤボンディング装置1は、ボンディングツール40からワイヤテール42aが突出していると検知された場合(ステップS114:テールあり)、第3の突出長さ判定工程を実行する。
【0073】
第3の突出長さ判定工程は、テール再繰出し工程で繰り出されたワイヤテール42aの突出長さが予め定められた正常の長さ範囲に含まれるか否かを判定する工程である。第3の突出長さ判定工程では、ワイヤテール42aの突出長さが予め設定された正常の長さ範囲よりも長いか短いかを判定してもよい。ワイヤボンディング装置1は、正常の長さ範囲よりも短いと検知された場合(ステップS115:短い)には処理をステップS110から繰り返し、正常の長さ範囲よりも長いと検知された場合(ステップS115:長い)には処理をステップS109から繰り返す。
【0074】
ステップS116において、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aの長さが正常の長さ範囲に含まれると判定された場合(ステップS115:正常)、スパーク工程を実行する。
【0075】
スパーク工程は、ボンディングツール40を所定のZ軸方向の高さまで上昇させて、放電電極(不図示)とワイヤテール42aとの間で放電させて、ワイヤテール42aの先端にボールを形成させる工程である。
【0076】
ステップS117において、ワイヤボンディング装置1は、スパークが成功したか否かを判定する。ワイヤボンディング装置1は、例えば、スパークにより形成されるボールの直径が所定の範囲内に含まれる場合、スパークが成功したと判定する。ここで、ワイヤボンディング装置1は、例えば撮像手段84によって取得される検出画像を解析することによりボールの直径を検知する。
【0077】
スパークが失敗したと判定した場合(ステップS117:失敗)、ワイヤボンディング装置1は、処理をステップS108から繰り返す。スパークが成功したと判定した場合(ステップS117:成功)、ワイヤボンディング装置1は、通常のボンディング工程に移行する。
【0078】
なお、上記において、ワイヤボンディング装置1は、所定のステップの後に、リカバリ回数を超過したか否かの判定処理を実行してもよい。例えば、ワイヤボンディング装置1は、ステップS108およびステップS115で「短い」と判定された場合などの後に、リカバリ回数を超過したか否かの判定処理を実行してもよい。これにより、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aを正常に生成できない状態が続いていると判定して、装置を停止させて管理者による復旧を可能とさせる。
【0079】
また、上記では、ワイヤボンディング装置1は、半導体装置100(ボンディング対象)の近傍に設けられる捨てボンド領域130を用いて捨てボンディング工程を実行するものとして説明した。ワイヤボンディング装置1は、捨てボンド領域130が半導体装置100(ボンディング対象)上に設けれられる場合、捨てボンド領域130にホール132を形成することができない。この場合、ワイヤボンディング装置1は、
図5のステップS109に替えて、ステップS111を実行する。これにより、ワイヤボンディング装置1は、電極パッド122により近い半導体装置100上の所定の領域で捨てボンディング工程を実行できるため、より迅速なリカバリ動作が可能となる。
【0080】
以上のとおり、ワイヤボンディング装置1は、従来のワイヤボンディング装置と比較して、簡易な装置構成により、迅速かつ適切にリカバリ動作を実行できる。
【0081】
例えば、従来のワイヤボンディング装置では、ワイヤカットエラー、スパークミスエラーなどのエラーが発生した場合、ボンディング動作を停止させていた。そして、ワイヤボンディング装置は、警報を発してオペレータに通知することにより、オペレータがエラーを除去して、ボンディング動作を再開させていた。すなわち、従来のワイヤボンディング装置では、エラーが発生した場合、ボンディング動作を停止させるため、稼働率が低下するという問題が生じる。
【0082】
これに対して、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテールの状態に関するエラーが発生した場合、捨てボンド点131において自動的にワイヤテール42aを生成するため、装置を停止させることなく継続してボンディングを実行させることができる。さらに、ワイヤボンディング装置1では、テンション解放する状態と、クランパ44でワイヤ42をクランプする状態とを適切なタイミングで実行することにより、一つのクランパ44のみでワイヤテール42aを繰り出すことができる。すなわち、ワイヤボンディング装置1では、簡易な装置構成により、迅速にワイヤテール42aを繰り出すリカバリ動作が可能となる。
【0083】
また、例えば、従来のワイヤボンディング装置では、リカバリ動作において、ワイヤテールの状態に関係なく、画一的な動作によってワイヤテールを繰り出していた。
【0084】
これに対して、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテールの状態に関するエラーが発生した場合、ワイヤテール42aの突出状態に応じた、ワイヤテール42aを繰り出すリカバリ動作を実行する。具体的には、ワイヤボンディング装置1は、ボンディングツール40からワイヤテール42aが突出しているか否か、ワイヤテール42aが突出している場合はワイヤテール42aの長さが長いか短いか、に応じた、ワイヤテール42aのリカバリ動作を実行する。これにより、ワイヤボンディング装置1は適切なワイヤテール42aを繰り出すことができる。
【0085】
===まとめ===
<1>ワイヤボンディング装置1は、ボンディング対象における複数のボンド点(例えば電極パッド122)にワイヤボンディング処理を行うワイヤボンディング装置1であって、ワイヤ42を挿通するボンディングツール40と、前記ボンディングツール40のワイヤ42供給側に設けられ、ワイヤ42にテンションを付与するテンション付与部45と、前記ボンディングツール40のワイヤ42供給側に設けられ、前記ワイヤ42を保持するクランパ44(クランプ部)と、前記ボンディングツール40に挿通されたワイヤ42を繰り出してボンディング対象のボンド点であるボンド点(第1ボンド点)に接合するボンディング処理と、前記クランパ44(クランプ部)により前記ワイヤ42を保持した状態で前記ワイヤ42を切断して前記ボンディングツール40の先端から前記ワイヤ42が延出したワイヤテール42aを形成するテール繰出し工程(形成処理)と、を実行する制御部90と、前記ワイヤテール42aの状態を検知する不着検出部70やテール画像検出部80(検知部)と、を備え、前記制御部90は、前記不着検出部70やテール画像検出部80(検知部)により検知された前記ワイヤテール42aの状態が次のボンディング処理を実行可能か否かについて判定する判定処理と、前記ボンディング処理を実行可能ではないと判定された場合に、前記複数のボンド点とは異なるボンド点である捨てボンド点131(第2ボンド点)に前記ボンディングツール40により前記ワイヤテール42aを押圧し、前記テンション付与部45によって付与されるテンションを解放した状態、および前記クランパ44(クランプ部)によるクランプを解放した状態において、前記ボンディングツール40を上昇させて前記捨てボンド点131(第2ボンド点)から前記ワイヤテール42aを繰り出すテール再繰出し工程と、を実行する。これにより、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテールに関するエラーが発生したときに、簡易な動作により適切なワイヤテールを新たに突出させることが可能となる。また、ワイヤボンディング装置1は、ボンディングツール40の+Z方向側に一つのクランパのみの簡易な構成によって、適切なワイヤテールを新たに突出されることができるため、装置の製造に要する費用を少なくできる。
【0086】
<2>ワイヤボンディング装置1において、不着検出部70やテール画像検出部80(検知部)は、ボンディングツール40の先端部40a(先端)からワイヤテール42aが突出しているか否かを検知し、制御部90は、不着検出部70やテール画像検出部80(検知部)においてボンディングツール40の先端部40a(先端)からワイヤテール42aが突出していないと検知された場合、テール再操出し工程において、捨てボンド点131(第2ボンド点)におけるワイヤテール42aの繰り出しを実行する。これにより、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aが突出していない状況に対する最適な捨てボンディング工程を実行できるため、捨てボンド点131でのボンディングを円滑に実行でき、適切なワイヤテール42aを生成できる。
【0087】
<3>ワイヤボンディング装置1において、不着検出部70やテール画像検出部80(検知部)は、ボンディングツール40の先端部40a(先端)からワイヤテール42aが突出しているか否かを検知し、制御部90は、不着検出部70やテール画像検出部80(検知部)においてボンディングツール40の先端部40a(先端)からワイヤテール42aが突出していると検知された場合、ワイヤテール42aが先端部40a(先端)から突出している長さが第1の長さよりも長いか否かを判定する第1の突出長さ判定工程と、第1の突出長さ判定工程で判定された第1の判定結果に応じた、捨てボンド点131(第2ボンド点)におけるワイヤ42のボンディングを実行する捨てボンディング工程(ボンディング工程)と、をさらに実行する<1>または<2>に記載のワイヤボンディング装置1。これにより、ワイヤボンディング装置1は、突出しているワイヤテール42aの長さに対する最適な捨てボンディング工程を実行できるため、捨てボンド点131でのボンディングを円滑に実行でき、適切なワイヤテール42aを生成できる。
【0088】
<4>ワイヤボンディング装置1において、捨てボンド点131(第2ボンド点)を含む捨てボンド領域130であって、捨てボンド領域130は、ワイヤテール42aの先端部40a(先端)が挿入されるホール132を有し、制御部90は、第1の突出長さ判定工程において第1の長さよりも長いと検知された場合、ホール132にワイヤテール42aの一部を挿入して、ワイヤテール42aを所定の角度に曲げるテール曲げ工程をさらに実行し、捨てボンディング工程(ボンディング工程)では、捨てボンド点131(第2ボンド点)において、テール曲げ工程で曲げられたワイヤテール42aの曲がり部分のボンディングを実行する、<3>に記載のワイヤボンディング装置1。これにより、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aが長い場合、ワイヤテール42aを予め曲げることにより、捨てボンド点131でのボンディングを円滑に実行でき、適切なワイヤテール42aを生成できる。
【0089】
<5>ワイヤボンディング装置1において、捨てボンド点131(第2ボンド点)を含む捨てボンド領域130であって、捨てボンド領域130は、複数のボンド点が設けられる半導体装置100(ボンディング対象)上の所定の領域であり、制御部90は、第1の突出長さ判定工程において第1の長さよりも長いと検知された場合、ワイヤテール42aを捨てボンド領域130においてワイヤテール42aを曲げるテール曲げ工程をさらに実行し、捨てボンディング工程(ボンディング工程)では、捨てボンド点131(第2ボンド点)において、テール曲げ工程で曲げられたワイヤテール42aの曲がり部分のボンディングを実行する、<3>に記載のワイヤボンディング装置1。これにより、ワイヤボンディング装置1は、電極パッド122により近いボンディング対象(ここでは半導体装置100)上の所定の領域で捨てボンディング工程を実行できるため、より迅速なリカバリ動作が可能となる。
【0090】
<6>ワイヤボンディング装置1において、制御部90は、第1の突出長さ判定工程において第1の長さよりも短いと検知された場合、ボンディングツール40の先端部40a(先端)からワイヤテール42aが突出している長さが第2の長さよりも長いか否かを判定する第2の突出長さ判定工程をさらに実行し、捨てボンディング工程では、捨てボンド点131(第2ボンド点)において、第2の突出長さ判定工程で判定された第2の判定結果に応じた、ワイヤ42のボンディングを実行する、<3>から<5>のいずれか一つに記載のワイヤボンディング装置1。これにより、ワイヤボンディング装置1は、突出しているワイヤテール42aの長さに対する、ワイヤテール42aをテール曲げる最適な動作および捨てボンディング工程を実行できるため、適切かつ迅速にワイヤテール42aを新たに突出させることができる。
【0091】
<7>ワイヤボンディング装置1において、前記制御部90は、第2の突出長さ判定工程で第2の長さよりも長いと判定された場合、ワイヤテール42aを捨てボンド領域130においてワイヤテール42aを曲げるテール曲げ工程(第2のテール曲げ工程)をさらに実行し、捨てボンディング工程では、捨てボンド点131(第2ボンド点)において、テール曲げ工程で曲げられたワイヤテール42aの曲がり部分のボンディングを実行する、<6>に記載のワイヤボンディング装置1。これにより、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aを予め曲げることにより、捨てボンド点131へのボンディングを円滑に実行でき、適切なワイヤテール42aを生成できる。
【0092】
<8>ワイヤボンディング装置1において、制御部90は、第2の突出長さ判定工程で第2の長さよりも短いと判定された場合、捨てボンディング工程(ボンディング工程)において、捨てボンド領域130における捨てボンド点131(第2ボンド点)の近傍にワイヤテール42aを接触させて、ワイヤテール42aを曲げつつ捨てボンド点131(第2ボンド点)に、ワイヤテール42aの曲がり部分をボンディングする、<6>または<7>に記載のワイヤボンディング装置1。これにより、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aを予め曲げることにより、捨てボンド点131へのボンディングを円滑に実行でき、適切なワイヤテール42aを生成できる。
【0093】
<9>ワイヤボンディング装置1において、制御部90は、テール再繰出し工程を実行した後、不着検出部70やテール画像検出部80(検知部)においてボンディングツール40におけるワイヤテール42aの突出状態を検知する再テール検知工程と、再テール検知工程において、ボンディングツール40の先端部40a(先端)からワイヤテール42aが突出していないと検知された場合、捨てボンディング工程(ボンディング工程)、テール再繰出し工程および再テール検知工程が繰り返し実行された回数が、閾値を超えたか否かを判定するリカバリ判定工程と、をさらに実行する、<1>から<8>のいずれか一つに記載のワイヤボンディング装置1。これにより、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aを突出させることが不可能な状態を迅速に回復させることができる。
【0094】
<10>ワイヤボンディング装置1において、制御部90は、ボンディングツール40の先端部40a(先端)のワイヤ42を複数のボンド点のうちの所定のボンド点(例えば電極パッド112)にボンディングする第1ボンディング工程と、第1ボンディング工程を実行した後、所定のボンド点(例えば電極パッド112)から、例えば電極パッド122(第1ボンド点)に向かってワイヤ42をループさせるワイヤループ工程と、をさらに実行する、<1>から<9>のいずれか一つに記載のワイヤボンディング装置1。これにより、ワイヤボンディング装置1は、二点間のワイヤボンディングにおいて、ワイヤテールに関するエラーが発生した場合、適切なワイヤテール42aを突出させることができる。
【0095】
<11>ワイヤボンディング装置1において、ボンディング工程(ボンディング処理)は、ボンディングツール40の先端部40a(先端)のワイヤ42をボール状に形成し、ボール状に形成されたワイヤ42をボンド点(不図示)にボンディングすることを含む、<1>から<9>のいずれか一つに記載のワイヤボンディング装置1。これにより、ワイヤボンディング装置1は、バンプボンディングにおいて、ワイヤテールに関するエラーが発生した場合、適切なワイヤテール42aを突出させることができる。
【0096】
上記発明の実施形態を通じて説明された実施の態様は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施形態の記載に限定されるものではない。そのような組み合わせ又は変更若しくは改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0097】
1…ワイヤボンディング装置、12…Z駆動機構、40…ボンディングツール、42…ワイヤ、42a…ワイヤテール、44…クランパ、60…超音波振動子、80…テール画像検出部、90…制御部。
【要約】 (修正有)
【課題】ワイヤテールに関するエラーが発生したときに、簡易な動作により適切なワイヤテールを新たに突出させるワイヤボンディング装置及びリカバリ方法を提供する。
【解決手段】ワイヤボンディング装置1において、制御部90は、検知部(テール画像検出部80)が検知したワイヤ42のワイヤテールの状態が次のボンディング処理を実行可能か否かについて判定する判定処理と、ボンディング処理を実行可能ではないと判定した場合に、半導体ダイ110の複数のボンド点(電極パッド112)とは異なるボンド点である第2ボンド点(捨てボンド点131)にボンディングツール40によりワイヤテールを押圧し、テンション付与部45によって付与されるテンションを解放した状態及びクランプ部(クランパ44)によるクランプを解放した状態において、ボンディングツールを上昇させて第2ボンド点からワイヤテールを繰り出すテール再繰出し工程を実行する。
【選択図】
図1