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特許7515218キャビティ並びにそのためのフレーム及び取付部材
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】キャビティ並びにそのためのフレーム及び取付部材
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/64 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
H05B6/64 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023133332
(22)【出願日】2023-08-18
(62)【分割の表示】P 2023026963の分割
【原出願日】2023-02-24
【審査請求日】2023-08-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508067736
【氏名又は名称】マイクロ波化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】塚原 保徳
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 久夫
(72)【発明者】
【氏名】和田 直之
(72)【発明者】
【氏名】緒方 俊彦
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-050641(JP,U)
【文献】特開2016-126922(JP,A)
【文献】特開2006-014820(JP,A)
【文献】特開平03-133086(JP,A)
【文献】特開2000-097440(JP,A)
【文献】中国実用新案第209315552(CN,U)
【文献】特開2016-121529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にマイクロ波の照射領域を有する組み立て式のキャビティであって、
多面体の少なくとも一部の辺に沿った複数のフレーム部材を有する1個または2個以上のフレームと、
前記1個または2個以上のフレームの複数の開口部を塞ぐように着脱可能に取り付けられた複数の取付部材と
を備え、
前記複数の取付部材は、前記照射領域にマイクロ波を導入するための取付部材であって、マイクロ波の伝送手段が接続される取付部材を含む。
【請求項2】
請求項1記載のキャビティであって、
前記1個または2個以上のフレームの複数の開口部の形状及びサイズは同じである。
【請求項3】
請求項1記載のキャビティであって、
前記多面体は、立方体である。
【請求項4】
請求項1記載のキャビティであって、
前記1個または2個以上のフレームは、2個以上のフレームを備えており、
前記キャビティは、前記2個以上のフレームを連結する連結部材をさらに備える。
【請求項5】
請求項1記載のキャビティであって、
前記1個または2個以上のフレームは、2個以上のフレームを備えており、
前記2個以上のフレームは前記取付部材によって連結される。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか記載のキャビティであって、
前記複数の取付部材は、金属の平板を含む取付部材、前記照射領域の容積を変更するための取付部材、前記照射領域のマイクロ波の電界分布を変更するための取付部材、孔を有する取付部材、覗き窓を有する取付部材、及び、開閉扉を有する取付部材から選択される1以上の取付部材をさらに含む。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか記載のキャビティと、
前記照射領域に導入されるマイクロ波を発生させるマイクロ波発生器と
を備えたマイクロ波照射装置であって、
前記複数の取付部材は、
前記照射領域のマイクロ波を検波する検波器を有する取付部材と、
前記照射領域のマイクロ波の電界分布を変更する分布変更部を有する取付部材と
を含み、
前記照射領域に導入されるマイクロ波の周波数が、前記検波器の検波結果を用いて特定した前記照射領域の共振周波数となるように前記分布変更部を制御する制御部をさらに備える。
【請求項8】
内部にマイクロ波の照射領域を有する組み立て式のキャビティの製造方法であって、
多面体の少なくとも一部の辺に沿った複数のフレーム部材を有する1個または2個以上のフレームの複数の開口部を塞ぐように複数の取付部材を前記フレームに着脱可能に取り付ける工程を含み、
前記複数の取付部材は、前記照射領域にマイクロ波を導入するための取付部材であって、マイクロ波の伝送手段が接続される取付部材を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にマイクロ波の照射領域を有するキャビティ並びにそのためのフレーム及び取付部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汎用のマイクロ波照射装置を用いてラボレベルでの実験を行っていた。汎用のマイクロ波照射装置としては、例えば、四国計測工業株式会社製のμReactorExなどが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ラボレベルの汎用のマイクロ波照射装置は、装置の内容積が決まっているため、ある反応に適していても、別の反応には必ずしも適していない。また、同一の反応について、スケールアップして実験を行いたい場合もある。したがって、内容積を可変のマイクロ波照射装置が望まれている。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、マイクロ波照射装置に用いられるキャビティであって、マイクロ波の照射領域の内容積を変更することができるキャビティまたはそのためのフレーム若しくは取付部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によるキャビティは、内部にマイクロ波の照射領域を有する組み立て式のキャビティであって、多面体の少なくとも一部の辺に沿った複数のフレーム部材を有する1個または2個以上のフレームと、1個または2個以上のフレームの複数の開口部を塞ぐように着脱可能に取り付けられた複数の取付部材とを備え、複数の取付部材は、照射領域にマイクロ波を導入するための取付部材を含む。
【0006】
また、本発明の一態様によるキャビティでは、1個または2個以上のフレームの複数の開口部の形状及びサイズは同じであってもよい。
【0007】
また、本発明の一態様によるキャビティでは、多面体は、立方体であってもよい。
【0008】
また、本発明の一態様によるキャビティでは、1個または2個以上のフレームのそれぞれは、多面体のすべての辺にそれぞれ沿った複数のフレーム部材を有してもよい。
【0009】
また、本発明の一態様によるキャビティでは、1個または2個以上のフレームは、2個以上のフレームを備えており、キャビティは、2個以上のフレームを連結する連結部材をさらに備えてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様によるキャビティでは、1個または2個以上のフレームは、2個以上のフレームを備えており、2個以上のフレームは取付部材によって連結されてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様によるキャビティでは、複数の取付部材は、金属の平板を含む取付部材、照射領域の容積を変更するための取付部材、照射領域のマイクロ波の電界分布を変更するための取付部材、孔を有する取付部材、覗き窓を有する取付部材、及び、開閉扉を有する取付部材から選択される1以上の取付部材を含んでもよい。
【0012】
また、本発明の一態様によるマイクロ波照射装置は、キャビティと、照射領域に導入されるマイクロ波を発生させるマイクロ波発生器とを備えたマイクロ波照射装置であって、複数の取付部材は、照射領域のマイクロ波を検波する検波器を有する取付部材と、照射領域のマイクロ波の電界分布を変更する分布変更部を有する取付部材とを含み、照射領域に導入されるマイクロ波の周波数が、検波器の検波結果を用いて特定した照射領域の共振周波数となるように分布変更部を制御する制御部をさらに備える。
【0013】
また、本発明の一態様によるマイクロ波照射装置は、キャビティと、照射領域に導入される所定の周波数範囲における任意の周波数のマイクロ波を発生させるマイクロ波発生器とを備えたマイクロ波照射装置であって、複数の取付部材は、照射領域のマイクロ波を検波する検波器を有する取付部材を含み、検波器の検波結果を用いて特定した照射領域の共振周波数のマイクロ波が発生されるようにマイクロ波発生器を制御する制御部をさらに備える。
【0014】
また、本発明の一態様によるマイクロ波照射装置は、キャビティと、照射領域に導入されるマイクロ波を発生させるマイクロ波発生器とを備えたマイクロ波照射装置であって、複数の取付部材は、照射領域のマイクロ波の電界分布を変更する分布変更部を有する取付部材を含み、照射領域からのマイクロ波の反射波の強度を測定する測定部と、測定部から反射波の強度を受け取り、強度が小さくなるように分布変更部を制御する制御部とをさらに備える。
【0015】
また、本発明の一態様によるマイクロ波照射装置は、キャビティと、照射領域に導入される所定の周波数範囲における任意の周波数のマイクロ波を発生させるマイクロ波発生器と、照射領域からのマイクロ波の反射波の強度を測定する測定部と、測定部から反射波の強度を受け取り、強度が小さくなる周波数のマイクロ波が発生されるように、マイクロ波発生器を制御する制御部とを備える。
【0016】
また、本発明の一態様によるフレームは、内部にマイクロ波の照射領域を形成するための組み立て式のキャビティを構成するフレームであって、多面体の少なくとも一部の辺に沿った複数のフレーム部材を有する。
【0017】
また、本発明の一態様による取付部材は、1個または2個以上のフレームの開口部を塞ぐように着脱可能に取り付けられる。
【0018】
また、本発明の一態様によるキャビティの製造方法は、内部にマイクロ波の照射領域を有する組み立て式のキャビティの製造方法であって、多面体の少なくとも一部の辺に沿った複数のフレーム部材を有する1個または2個以上のフレームの開口部を塞ぐように複数の取付部材をフレームに着脱可能に取り付ける工程を含み、複数の取付部材は、照射領域にマイクロ波を導入するための取付部材を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、組み立て式のキャビティが1個または2個以上のフレームと、そのフレームの開口部を塞ぐように着脱可能に取り付けられる取付部材とを備えることによって、マイクロ波照射装置に用いられるキャビティ内のマイクロ波の照射領域の内容積を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態によるキャビティの外観を示す斜視図
図2】同実施形態によるキャビティの構成を示す分解斜視図
図3】同実施形態によるマイクロ波照射装置の外観を示す斜視図
図4A】同実施形態による照射領域の容積を変更するための取付部材を示す斜視図
図4B】同実施形態による照射領域の容積を変更するための取付部材を示す側面図
図4C】同実施形態による照射領域の容積を変更するための取付部材を示す断面図
図5A】同実施形態による照射領域の容積を変更するための取付部材を示す斜視図
図5B】同実施形態による照射領域の容積を変更するための取付部材を示す背面図
図5C】同実施形態による照射領域の容積を変更するための取付部材を示す断面図
図5D】同実施形態による照射領域の電界分布を変更するための取付部材を示す断面図
図6】同実施形態による連結部材を示す斜視図
図7】同実施形態による連結部材によって連結されたフレームを示す正面図
図8】同実施形態による並べて配置された2個のフレームを示す斜視図
図9】同実施形態によるキャビティの外観を示す斜視図
図10】同実施形態によるフレームの他の一例を示す斜視図
図11】同実施形態によるキャビティの外観を示す斜視図
図12】同実施形態による並べて配置された4個のフレームを示す斜視図
図13】同実施形態によるキャビティの外観を示す斜視図
図14】同実施形態によるマイクロ波照射装置の構成を示す模式図
図15】同実施形態によるマイクロ波照射装置の構成を示す模式図
図16】同実施形態によるマイクロ波照射装置の構成を示す模式図
図17】同実施形態によるマイクロ波照射装置の構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明によるキャビティ並びにそのためのフレーム及び取付部材について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態によるキャビティは、1個または2個以上のフレームと、それらのフレームの複数の開口部を塞ぐように着脱可能に取り付けられる複数の取付部材とを備える組み立て式のキャビティであり、フレームの個数または取付部材の種類に応じて照射領域の内容積を増減することができるものである。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態によるキャビティ1の外観を示す斜視図であり、図2は、キャビティ1の分解斜視図であり、図3は、キャビティ1を備えるマイクロ波照射装置2の外観を示す斜視図である。
【0023】
図1図2の例において、内部にマイクロ波の照射領域を有する組み立て式のキャビティ1は、1個のフレーム10と、フレーム10の複数の開口部12-1~12-6を塞ぐように着脱可能に取り付けられた複数の取付部材20-1~20-6とを備える。図1図3では、1個のフレーム10を備えるキャビティ1の例について説明するが、キャビティ1は、2個以上のフレーム10を備えてもよい。2個以上のフレーム10を備えるキャビティ1については後述する。キャビティ1を構成するフレーム10の個数を適宜、選択することによって、キャビティ1の内容積を変化させることができる。なお、取付部材20-1~20-6を特に区別しない場合には、いずれかを指して取付部材20と呼ぶこともある。他の構成要素についても同様である。
【0024】
フレーム10は、多面体の少なくとも一部の辺に沿ったフレーム部材11を有している。フレーム10は、一例として、多面体のすべての辺にそれぞれ沿った複数のフレーム部材11を有してもよい。すなわち、フレーム10は、多面体と同様の形状であってもよい。多面体は、一例として、正多面体であってもよく、直方体であってもよい。直方体は、例えば、立方体であってもよい。フレーム10は、例えば、多面体の1以上の面に対応する1以上の開口部12を有している。
【0025】
多面体は、一例として、2以上の面の形状及びサイズが同じであってもよい。この場合には、例えば、フレーム10の2以上の開口部12の形状及びサイズは同じであってもよい。フレーム10の2以上の開口部12の形状及びサイズが同じであるとは、すべての開口部12の形状及びサイズが同じであることであってもよく、または、一部の複数の開口部12の形状及びサイズが同じであることであってもよい。フレーム10の2以上の開口部12の形状及びサイズが同じである場合には、一つの形状及びサイズの取付部材20を複数の開口部12に取り付けることができるようになり、用意する取付部材20の形状及びサイズのバリエーションを減らすことができる。この観点からは、多面体は、正多面体であることが好適であり、特に立方体(すなわち、正六面体)であることが好適である。
【0026】
フレーム部材11は、例えば、直線状の部材であってもよい。一つのフレーム部材11は、一例として、照射領域で照射されるマイクロ波の波長を超える長さを有していてもよい。複数のフレーム部材11は、例えば、多面体の頂点の位置で連結されていてもよい。その連結は、例えば、溶接などによる固定であってもよく、着脱可能な連結であってもよい。図2では、一例として、フレーム10が多面体である立方体の各辺に沿ったフレーム部材11-1~11-12を有している場合について示している。この場合には、各開口部12-1~12-6は、同じ形状及びサイズである。
【0027】
フレーム10に取り付けられる複数の取付部材20には、照射領域にマイクロ波を導入するための取付部材20-2が含まれる。照射領域にマイクロ波を導入するための取付部材20-2は、一例として、図1図2で示されるように、開口部22cを有する平板である枠部材22aと、開口部22cの位置に設けられた、導波管41の一端を固定するための導波管取付部22bとを有するものであってもよく、導波管が接続されたものであってもよく、または、照射領域側の面に配置されたアンテナと、そのアンテナと外部の同軸ケーブルとを接続させるための機構とを有するものであってもよい。
【0028】
また、複数の取付部材20は特に限定されないが、例えば、金属の平板を含む取付部材20、照射領域の容積を変更するための取付部材20、孔を有する取付部材20、覗き窓を有する取付部材20、及び開閉扉を有する取付部材20から選択される1以上の取付部材20を含んでもよい。金属の例示は、後述するとおりである。金属の平板を含むd20以外の取付部材20は、例えば、照射領域におけるマイクロ波の照射に関連する何らかの機能を有するものであってもよい。その機能は、一例として、照射領域の容積を変更する機能、温度計などのセンサ、撹拌軸などを照射領域に挿入するための機能、照射領域を視認するための機能、照射領域に物を出し入れするための機能などであってもよい。
【0029】
取付部材20-1、20-6は、金属の平板を含むものである。この取付部材20-1、20-6によって、照射領域の壁面が構成されることになる。なお、金属の平板を含む取付部材20は、例えば、図2の取付部材20-1、20-6のように、金属の1個の平板を含むものであってもよく、金属の2個以上の平板を含むものであってもよい。後者の場合については後述する。
【0030】
取付部材20-3は、開口部を有する平板である枠部材23aと、その開口部を開閉可能に閉じる開閉扉23bとを有する。開閉扉23bは、一例として、開口部を閉じるための扉部23cと、扉部23cを開閉可能に支持するヒンジ23dと、扉部23cを閉じた状態でロックすることができるロック機能付きハンドル23eとを有してもよい。開閉扉23bを有する取付部材20-3によって、照射領域に物を出し入れすることができる。なお、開閉扉を有する取付部材20は、例えば、開閉扉そのものであってもよい。この場合には、例えば、フレーム10のボルト穴10aにヒンジなどが固定されることによって、開閉扉である取付部材20がフレーム10の開口部12に取り付けられてもよい。また、一例として、扉部23cに覗き窓が設けられていてもよい。
【0031】
取付部材20-4は、開口部を有する平板である枠部材24aと、その開口部に装着された覗き窓24bとを有する。覗き窓24bは、一例として、パンチングメタルであり、照射領域において照射されるマイクロ波が通過しない程度の直径の孔が多数設けられた金属板であってもよい。覗き窓24bを有する取付部材20-4によって、マイクロ波の照射を行っている際に照射領域の状況を視認することができる。なお、覗き窓24bは、例えば、気密窓であってもよく、またはそうでなくてもよい。覗き窓24bが気密窓である場合には、ガラスまたは石英などのマイクロ波透過性の透明板が覗き窓24bに装着されていてもよい。
【0032】
取付部材20-5は、5個の孔を有する平板25aと、その各孔に装着された5個のノズル部材25bとを有する。各ノズル部材25bの内径及び長さは、照射領域から外部にマイクロ波が漏洩しないサイズになっていることが好適である。この孔を有する取付部材20-5によって、マイクロ波の照射領域に温度計などのセンサ、撹拌用の撹拌軸などを挿入することができる。また、取付部材20-5によって、例えば、原料、生成物、触媒、熱媒体、雰囲気ガスなどを照射領域に入れたり、照射領域から排出したりすることができる。なお、孔に装着されるノズル部材25bのノズルは、例えば、図1図2で示されるように、平板25aに対して垂直方向に延びるものであってもよく、または、斜め方向に延びるものであってもよい。また、使用しない孔は、蓋部材によって閉じられてもよい。ノズル部材25bに金属製の撹拌軸が挿入される場合には、撹拌軸とノズル部材25bの内周面との隙間からマイクロ波が漏洩することを防止するため、チョーク機構などのマイクロ波の漏洩防止機構が設けられてもよい。また、平板25aの孔には、ノズル以外の部材、例えば、熱電対を照射領域に挿入するための部材などが取り付けられてもよい。また、平板25aの孔の個数は1個以上であればよく、必ずしも5個でなくてもよい。
【0033】
フレーム10の開口部12が正多角形状である場合には、例えば、取付部材20の取り付け角度を変更することができる。一例として、開口部12が正方形状である場合には、取付部材20の取り付け角度を90度単位で変更することができる。
【0034】
フレーム10、及び取付部材20はそれぞれ、マイクロ波反射性の材料によって構成されることが好適である。キャビティ1内の照射領域からマイクロ波が漏洩しないようにするためである。マイクロ波反射性の材料は、例えば、金属であってもよい。金属は、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケル、ニッケル合金、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などであってもよい。
【0035】
フレーム10及び取付部材20は、フレーム10に取付部材20を着脱可能に取り付けるための機構を有していてもよい。本実施形態では、フレーム10の開口部12の各辺に沿って複数のボルト穴10aが設けられており、取付部材20の周縁の各辺に沿って複数の貫通孔20a設けられており、取付部材20がフレーム10の開口部12をそれぞれ塞ぐように配置された状態で、貫通孔20aに通したボルト19をボルト穴10aに締め付けることによって、フレーム10に取付部材20が着脱可能に取り付けられてもよい。この場合には、例えば、ボルト穴10a、貫通孔20a、及びボルト19が、フレーム10に取付部材20を着脱可能に取り付けるための機構であってもよい。なお、ボルト穴10aは、内周面がねじ切りされているものとする。また、ボルト穴10aは、貫通していないことが好適である。マイクロ波の漏洩、及び貫通孔の箇所へのマイクロ波の集中などを防止するためである。また、ボルトによるねじ止め以外の方法によって、取付部材20がフレーム10に着脱可能に取り付けられてもよい。例えば、クランプ機構などを用いて、取付部材20がフレーム10に着脱可能に取り付けられてもよい。
【0036】
また、取付部材20がフレーム10の開口部12を塞ぐように取り付けられた際に、フレーム10と取付部材20との隙間からマイクロ波が漏洩しないことが好適である。そのため、例えば、その隙間にマイクロ波の漏洩防止機構が設けられていてもよい。その漏洩防止機構は、一例として、フレーム10の開口部を取り囲むように設けられた環状の溝部と、環状の溝部に挿入される、マイクロ波を透過しない環状のシールド部材とを有していてもよい。シールド部材は、網状の金属によって構成された塑性変形する部材であってもよい。そして、フレーム10の開口部12を取付部材20によって塞ぐ際に、環状の溝部に挿入されたシールド部材が押しつぶされて塑性変形することによって、隙間からのマイクロ波の漏洩が防止されてもよい。なお、環状の溝部は、例えば、取付部材20の側に設けられてもよい。また、マイクロ波の漏洩防止機構は、その他のチョーク機構などであってもよい。
【0037】
キャビティ1内の照射領域においてマイクロ波の照射を行う際には、図3で示されるように、キャビティ1とマイクロ波発生器40とを導波管41によって接続してもよい。導波管41のキャビティ1側の端部または他の箇所に、キャビティ1の内部からマイクロ波発生器40側への蒸気、粒子などの移動を阻止するマイクロ波透過性の窓が設けられてもよい。この窓は、例えば、マイクロ波透過性材料によって構成されてもよい。マイクロ波透過性材料は特に限定されないが、例えば、石英、ガラス、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、セラミックなどであってもよい。また、この窓は、例えば、気密窓であってもよく、または、気密ではない窓であってもよい。なお、上記したように、キャビティ1とマイクロ波発生器40とは、導波管41以外のマイクロ波の伝送手段、例えば、同軸ケーブルによって接続されてもよい。
【0038】
マイクロ波発生器40は、例えば、マグネトロン、クライストロン、ジャイロトロン、または半導体素子などを用いてマイクロ波を発生させてもよい。半導体素子を用いてマイクロ波を発生させるとは、一例として、半導体素子を用いてマイクロ波を発振させることであってもよく、半導体素子を用いてマイクロ波を増幅することであってもよい。マイクロ波の周波数の帯域は、例えば、915MHz、2.45GHz、5.8GHz、24GHzの付近であってもよく、その他の300MHzから300GHzの範囲内の周波数帯域であってもよい。キャビティ1の取付部材20は変更可能であるため、例えば、照射領域にマイクロ波を導入するための取付部材20-2を異なる周波数帯のマイクロ波の導入するためのものに変更することも可能である。例えば、2.45GHz用の導波管を取り付け可能な取付部材20-2を、915MHz用の導波管を取り付け可能な取付部材20-2に変更することもできる。このように、照射領域にマイクロ波を導入するための取付部材20-2を照射するマイクロ波の周波数帯に応じて変更することができるので、実験する反応に適したマイクロ波を照射することができる。
【0039】
マイクロ波発生器40によって発生されたマイクロ波は、導波管41を介してキャビティ1内の照射領域に導入され、マイクロ波の照射対象物に照射される。マイクロ波の照射対象物は、例えば、開閉扉23bから照射領域に入れられてもよい。マイクロ波の照射対象物は特に限定されないが、例えば、固体、液体、気体であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。また、照射領域では、照射対象物にマイクロ波が照射されることによって、例えば、加熱、焼成、化学反応、乾燥、凍結乾燥、廃棄物処理、または殺菌などの処理が行われてもよい。キャビティ1内の照射領域でのマイクロ波の照射は、通常、マルチモードで行われる。また、マイクロ波発生器40の出力(パワー)は、例えば、照射領域における温度などのセンシング結果に基づいて制御されてもよい。キャビティ1では、例えば、連続処理が行われてもよく、バッチ処理が行われてもよい。
【0040】
次に、図2で示される以外の取付部材20について説明する。まず、照射領域の容積を変更するための取付部材20-7について、図4A図4Cを参照して説明する。図4Aは、取付部材20-7の斜視図であり、図4Bは、取付部材20-7の側面図であり、図4Cは、図4BのIVC-IVC線断面図である。取付部材20-7は、正方形状の開口部を有する平板である枠部材27aと、その開口部から枠部材27aの一方の面側に突出している突出部材27bとを有する。突出部材27bは、一つの正方形状の面が開口している直方体形状をしており、突出部材27bの開口部のサイズは、枠部材27aの開口部のサイズと同じであり、両者の開口部が連続するように突出部材27bが枠部材27aに固定されている。その固定は、例えば、溶接によって行われてもよい。この取付部材20-7を、突出部材27bが照射領域側となるようにフレーム10に取り付けることによって、照射領域の容積を減らすことができる。反対に、この取付部材20-7を、突出部材27bが照射領域の反対側となるようにフレーム10に取り付けることによって、照射領域の容積を増やすことができる。なお、突出部材27bの形状は変化しないため、取付部材20-7を用いて変化させることができる照射領域の容積の変化量は一定である。
【0041】
なお、図4A図4Cでは、一例として、突出部材27bが直方体形状である場合について説明したが、そうでなくてもよい。突出部材27bの形状は特に弁定されないが、例えば、ドーム形状、半球形状、円筒形状、多角筒形状、円錐形状、角錐形状、円錐台形状、角錐台形状などであってもよい。また、枠部材27aの開口部の形状も、例えば、円形状、楕円形状、矩形状、多角形状などであってもよい。
【0042】
なお、図4A図4Cで示される取付部材20-7では、照射領域の容積の変化量は決まっているが、その変化量を変化させることができてもよい。そのような、照射領域の容積の変更の程度を変化させることができる取付部材20-8について、図5A図5Cを参照して説明する。図5Aは、取付部材20-8の斜視図であり、図5Bは、取付部材20-8の背面図であり、図5Cは、図5BのVC-VC線断面図である。取付部材20-8は、円形状の開口部を有する平板である枠部材28aと、その枠部材28aの開口部から円筒形状の円筒部材51を出し入れすることによって照射領域の容積を連続的に変更することができる容積変更部28bとを有する。
【0043】
容積変更部28bは、一例として、円筒形状の側面51a、及び側面51aの両端部を塞ぐ一対の底面51b、51cを有する円筒部材51と、一端が底面51cの中心に固定された棒状部材53と、円筒部材51を覆うように設けられるカバー部材54とを備え、棒状部材53はカバー部材54を貫通している。
【0044】
また、照射領域のマイクロ波が、円筒部材51と枠部材28aの開口部との隙間からカバー部材54の内側に入るのを防止するため、またはカバー部材54の外側へのマイクロ波漏洩を防止するため、チョーク機構などのマイクロ波の進入または漏洩を防止する機構が設けられてもよい。棒状部材53を長手方向に移動させることで、それに応じて円筒部材51が、図5Cにおける左右方向に移動することになる。したがって、棒状部材53の操作に応じて、照射領域の容積を連続的に増減することができる。
【0045】
ここでは、円筒形状の円筒部材51が照射領域に出し入れされることによって照射領域の容積が変化される場合について説明したが、その他の形状の部材が照射領域に出し入れされることによって照射領域の容積が変化されてもよい。すなわち、照射領域の容積の変更の程度を変化させることができる取付部材20-8は、一例として、所定の形状の開口部を有する枠部材28aと、枠部材28aの面方向における断面形状が、その所定の形状と同じである立体部材と、その立体部材を枠部材28aの法線方向に移動させる移動機構とを備えていてもよい。枠部材28aの開口部の形状は、例えば、円形状、多角形状、矩形状、正方形状などであってもよい。また、立体部材の形状は、例えば、円筒形状、多角柱形状、直方体形状などであってもよい。また、立体部材は、例えば、中空の部材であってもよく、中実の部材であってもよい。また、照射領域の容積を変化させることができる取付部材20として、例えば、プランジャを有する取付部材20が用いられてもよい。
【0046】
また、図5Dで示されるように、円筒部材51に代えて、枠部材28aの面方向と平行な板状部材58に、棒状部材53の一端が固定されてもよい。このような構成では、照射領域の容積を変化させることはできないが、棒状部材53を長手方向に移動させることに応じて、板状部材58が移動することになり、照射領域におけるマイクロ波の電界分布を変更することができる。このように、取付部材20は、照射領域におけるマイクロ波の電界分布を変更するためのものであってもよい。なお、照射領域の容積を変更すると、通常、照射領域における電界分布も変わるため、照射領域の容積を変更するための取付部材20は、照射領域におけるマイクロ波の電界分布を変更するための取付部材20となる。
【0047】
次に、2以上のフレーム10を有するキャビティ1について説明する。キャビティ1が2以上のフレーム10を有する場合に、その2以上のフレーム10は、例えば、2以上のフレーム10を連結するための連結部材によって連結されてもよく、取付部材20によって連結されてもよい。
【0048】
図6は、連結部材30の一例を示す図である。連結部材30は、一例として、一対のフランジ部31と、一対のフランジ部31を繋ぐ筒状部材32とを備える。フランジ部31は、連結部材30をフレーム10の開口部12に取り付けるためのものであり、例えば、貫通孔31aを有していてもよい。そして、貫通孔31aにボルト19を通してフレーム10のボルト穴10aに締め付けることによって、連結部材30をフレーム10の開口部12に取り付けてもよい。連結部材30の両端のフランジ部31をボルト19でフレーム10-1、10-2の開口部12に取り付けることによって、図7で示されるように、2個のフレーム10-1、10-2を連結させることができる。なお、フレーム10-1、10-2において、連結部材30の取り付けられていない開口部12に、適宜、取付部材20が取り付けられることによってキャビティ1が構成される。
【0049】
筒状部材32は、例えば、図6で示されるように角筒形状であってもよく、円筒形状であってもよく、その他の筒形状であってもよい。また、筒状部材32は、直線状に延びていてもよく、直角または他の角度に折れ曲がっていてもよく、円弧状に湾曲していてもよい。また、一対のフランジ部31の間隔、すなわち筒状部材32の長さは任意である。筒状部材32の長さは特に限定されないが、例えば、5センチメートルから2メートルなどであってもよい。連結部材30は、マイクロ波の漏洩を防止するため、例えば、マイクロ波反射性の材料によって構成されてもよい。マイクロ波反射性の材料は、例えば、金属であってもよい。金属の例示は、上記のとおりである。
【0050】
次に、図8図9を参照して、2個のフレーム10-3、10-4を取付部材20によって連結する場合について説明する。この場合には、図8で示されるように、2個のフレーム10-3、10-4を並べて配置する。図8では、2個のフレーム10は連結されていないものとする。並べて配置された2個のフレーム10は、直方体形状であり、2個の正方形状の取付部材20と、4個の矩形状の取付部材20とを取り付けることによって、すべての開口部12を塞ぐことができる。図9は、並べて配置された2個のフレーム10に6個の取付部材20を取り付けることによって構成されたキャビティ1の一例を示す斜視図である。この場合には、4個の矩形状の取付部材20を2個のフレーム10に取り付けることによって、両フレーム10を連結している。このように、取付部材20によって複数のフレーム10を連結する場合には、複数のフレーム10がそれぞれ有する複数の開口部12が1つの取付部材20によって塞がれるように、複数のフレーム10に1つの取付部材20が取り付けられてもよい。なお、図9では、一例として、取付部材20-11が照射領域にマイクロ波を導入するためのものであり、取付部材20-12が開閉扉を有しており、取付部材20-13が金属の平板である場合について示しているが、各取付部材20は、それら以外のものであってもよいことは言うまでもない。また、取付部材20によって、3個以上のフレーム10が連結されてもよい。また、取付部材20によって連結される複数のフレーム10は、図8図9で示されるように直線状に配置されてもよく、後述するように、平面状に配置されてもよく、または、その他の形状(例えば、L字形状など)に配置されてもよい。
【0051】
ここでは、連結部材30を用いて2以上のフレーム10が連結される場合、及び取付部材20を用いて2以上のフレーム10が連結される場合について説明したが、それら以外の方法で2以上のフレーム10が連結されてもよいことは言うまでもない。一例として、フレーム10の各開口部12にフランジ部が設けられている場合には、そのフランジ部を用いて2以上のフレーム10の開口部12を連結してもよい。この場合には、2個の導波管の連結と同様に、ボルト及びナットを用いて2個のフレーム10の開口部12が連結されてもよい。
【0052】
次に、組み立て式のキャビティ1の製造方法について説明する。まず、目的とする処理に要求される照射領域の大きさを決定し、その決定した照射領域の大きさを実現できるフレーム10の個数を特定する。そして、2以上のフレーム10を用いてキャビティ1を組み立てる場合には、連結部材30を用いるかどうかも決定する。連結部材30を用いる場合には、2以上のフレーム10を連結部材30によって連結する。また、連結部材30を用いない場合、または、1個のフレーム10からキャビティ1を組み立てる場合には、所望の個数のフレーム10を配置する。また、1以上のフレーム10の各開口部に取り付ける複数の取付部材20をそれぞれ選択する。そして、1以上のフレーム10の各開口部に、選択した取付部材20を、ボルト19を用いて取り付けることによって、組み立て式のキャビティ1を製造することができる。なお、連結部材30を用いる場合には、フレーム10への取付部材20の取り付けと、2以上のフレーム10の連結部材30による連結との順序は問わない。一例として、2以上のフレーム10を連結部材30で連結してから、取付部材20を取り付けてもよく、2以上のフレーム10に取付部材20を取り付けてから連結部材30で連結してもよい。
【0053】
また、組み立てられたキャビティ1の分解は、例えば、ボルト19を緩めて取付部材20をフレーム10から取り外し、連結部材30が用いられている場合には、その連結部材30もフレーム10から取り外すことによって行われてもよい。この場合にも、取付部材20の取り外しと、連結部材30の取り外しとの順序は問わない。
【0054】
また、本発明の一実施形態によるキャビティ1を構成するフレームは、多面体の一部の辺に沿ったフレーム部材を有していないフレームであってもよい。図10は、そのようなフレーム13の一例を示す図である。図10で示されるフレーム13は、立方体の11個の辺に沿ったフレーム部材14-1~14-11を有しているが、立方体の残りの1個の辺に沿ったフレーム部材は有していない。なお、フレーム13は、立方体の1個の辺に沿ったフレーム部材を有していない以外は、フレーム10と同様のものである。
【0055】
フレーム13において、フレーム部材14-3、14-6、14-7、14-9~14-11によって囲まれた開口部は、平面方向に延びる開口部ではないため、その開口部に沿った形状の取付部材20によって塞ぐ必要がある。そのため、キャビティ1が1個のフレーム13を有する場合には、図11の例で示されるように、その開口部には、矩形状の平板が長手方向の真ん中で90度曲げられた形状を有する取付部材20-22、すなわち金属の2個の平板を含む取付部材20-22が取り付けられてもよい。なお、それ以外の4個の開口部には、平面状の取付部材20が取り付けられてもよい。平面状の取付部材20とは、例えば、取付部材20をフレーム13の開口部に取り付ける箇所が、同一平面に含まれる形状の取付部材20であってもよい。図11では、一例として、取付部材20-21が照射領域にマイクロ波を導入するためのものであり、取付部材20-12が金属の平板を含むものである場合について示しているが、各取付部材20が、それら以外のものであってもよいことは言うまでもない。
【0056】
次に、図12図13を参照して、4個のフレーム13-1~13-4を取付部材20によって連結する場合について説明する。この場合には、図12で示されるように、4個のフレーム13-1~13-4を並べて配置する。図12では、フレーム部材のない箇所が、平面視で中心となるように4個のフレーム13が配置されている。配置された4個のフレーム13は連結されていないものとする。並べて配置された4個のフレーム13は、直方体形状であり、2個の正方形状の取付部材20と、4個の矩形状の取付部材20とを取り付けることによって、すべての開口部を塞ぐことができる。図13は、そのようにして、並べて配置された4個のフレーム13に6個の取付部材20を取り付けることによって構成されたキャビティ1の一例を示す斜視図である。この場合には、2個の正方形状の取付部材20と、4個の矩形状の取付部材20とを4個のフレーム13に取り付けることによって、4個のフレーム13を連結している。なお、図13では、一例として、取付部材20-31が照射領域にマイクロ波を導入するためのものであり、取付部材20-32が開閉扉を有しており、取付部材20-33が金属の平板である場合について示しているが、各取付部材20は、それら以外のものであってもよいことは言うまでもない。この場合には、平面視で4個のフレーム13の中心となる位置に、上下方向に延びるフレーム部材が存在しないため、直方体形状の照射領域を形成することができ、マイクロ波の照射が、中心の上下方向に延びるフレーム部材によって妨げられないようにすることができる。また、例えば、より大きい照射対象物にマイクロ波を照射することも可能となる。
【0057】
また、本発明の一実施形態によるマイクロ波照射装置2では、キャビティ1において好適なマイクロ波の照射が行われるようにするため、照射領域の容積が調整されてもよく、または、マイクロ波の周波数が調整されてもよい。まず、照射領域の容積を調整する場合について図14を参照して説明し、マイクロ波の周波数を調整する場合について図15を参照して後述する。
【0058】
図14は、照射領域の容積を変更可能な組み立て式のキャビティ1を有するマイクロ波照射装置2の一例を示す模式図である。図14において、マイクロ波照射装置2は、キャビティ1と、マイクロ波発生器40と、導波管41と、キャビティ1の照射領域に導入されるマイクロ波の周波数が照射領域の共振周波数となるように、容積変更部242bを制御する制御部42とを備える。キャビティ1は、少なくとも、照射領域の容積を変更する容積変更部242bを有する取付部材20-42と、照射領域のマイクロ波を検波する検波器245bを有する取付部材20-45とを備えてもよい。キャビティ1は、それ以外の取付部材20として、例えば、照射領域にマイクロ波を導入するための取付部材20-41と、金属の平板である取付部材20-43、20-44などを備えていてもよい。制御部42は、検波器245bの検波結果を用いて、照射領域において共振周波数によるマイクロ波の照射が行われるように、容積変更部242bを制御する。
【0059】
取付部材20-42は、図5A図5Cで示される取付部材20-8と同様のものであり、枠部材242aと、枠部材242aに取り付けられた容積変更部242bとを有していてもよい。ただし、容積変更部242bは、棒状部材53を長手方向に移動させるための移動機構59を有している。移動機構59は特に限定されないが、一例として、ラックが棒状部材53に固定されたラックアンドピニオンと、ピニオンを回転させるモータとを有してもよい。この場合には、モータによってピニオンが回転され、それに応じてラック及び棒状部材53が棒状部材53の長手方向に移動してもよい。
【0060】
取付部材20-45は、開口部を有する金属の平板245aと、その開口部を介して照射領域のマイクロ波を検波する検波器245bとを有していてもよい。検波器245bは、照射領域におけるマイクロ波の強度を測定するものであってもよい。なお、開口部からマイクロ波が漏洩しないようになっていることが好適である。
【0061】
制御部42は、容積変更部242bの移動機構59を制御することによって照射領域の容積を変更し、照射領域に導入されるマイクロ波の周波数が、検波器245bの検波結果を用いて特定した共振周波数となるように制御する。そのため、制御部42は、一例として、マイクロ波発生器40によるマイクロ波の発生が開始された後に、容積変更部242bを制御して照射領域の容積を変更可能な範囲における最小値から最大値まで変更させ、その際に検波器245bからマイクロ波の強度を取得してもよい。そして、制御部42は、マイクロ波の強度が最大になる照射領域の容積を特定し、その特定した容積となるように容積変更部242bを制御してもよい。なお、その容積の特定は、例えば、円筒部材51の照射領域への進入の程度の特定であってもよい。このようにすることで、共振周波数でのマイクロ波の照射を実現することができ、照射対象物により効率的にマイクロ波を照射することができるようになる。なお、移動機構59の制御は、移動機構59が有するモータの制御であってもよい。
【0062】
図15は、周波数を調整可能なマイクロ波発生器40を有するマイクロ波照射装置2の一例を示す模式図である。図15において、マイクロ波照射装置2は、キャビティ1と、所定の周波数範囲における任意の周波数のマイクロ波を発生させることができるマイクロ波発生器40と、導波管41と、検波器245bの検波結果を用いて特定した照射領域の共振周波数のマイクロ波が発生されるようにマイクロ波発生器40を制御する制御部43とを備える。キャビティ1は、少なくとも、照射領域のマイクロ波を検波する検波器245bを有する取付部材20-45を備えてもよい。キャビティ1は、それ以外の取付部材20として、例えば、照射領域にマイクロ波を導入するための取付部材20-41と、金属の平板である取付部材20-43、20-44、20-46などを備えていてもよい。取付部材20-45は、図14と同様のものであり、その説明を省略する。発生させるマイクロ波の周波数を変化させることができるマイクロ波発生器40は、例えば、半導体素子を用いてマイクロ波を発生させてもよい。一例として、マイクロ波発生器40は、2.41GHzから2.49GHzの範囲内で周波数を変化させることができてもよい。
【0063】
制御部43は、一例として、マイクロ波発生器40によるマイクロ波の発生が開始された後に、マイクロ波発生器40を制御して、マイクロ波の周波数を変更可能な範囲における最小値から最大値まで変化させ、その際に検波器245bからマイクロ波の強度を取得してもよい。そして、制御部43は、マイクロ波の強度が最大になる周波数、すなわち共振周波数を特定し、その特定した共振周波数のマイクロ波が発生されるようにマイクロ波発生器40を制御してもよい。このようにすることで、共振周波数でのマイクロ波の照射を実現することができ、照射対象物により効率的にマイクロ波を照射することができるようになる。
【0064】
なお、図14図15では、検波結果に基づいて照射領域の容積またはマイクロ波の周波数を制御する場合について説明したが、検波結果に代えて、マイクロ波の照射領域からの反射波の強度に基づいて照射領域の容積またはマイクロ波の周波数を制御してもよい。以下、反射波の強度に基づいて照射領域の容積を調整する場合について図16を参照して説明し、反射波の強度に基づいてマイクロ波の周波数を調整する場合について図17を参照して説明する。
【0065】
図16は、照射領域からの反射波の強度に基づいて、照射領域の容積を変更するマイクロ波照射装置2の一例を示す模式図である。図16において、マイクロ波照射装置2は、キャビティ1と、キャビティ1の照射領域からのマイクロ波の反射波の強度を測定する測定部39と、マイクロ波発生器40と、導波管41と、測定部39から反射波の強度を受け取り、その強度が小さくなるように容積変更部242bを制御する制御部44とを備える。なお、図16では、マイクロ波発生器40が測定部39を有している場合について示しているが、測定部39は、マイクロ波発生器40の外部に存在してもよい。マイクロ波発生器40の外部に存在する測定部39は、例えば、導波管41の途中に設けられた、マイクロ波のパワーモニタであってもよい。このことは、後述する図17においても同様であるとする。また、キャビティ1の複数の取付部材20には、照射領域の容積を変更する容積変更部242bを有する取付部材20-42が含まれている。容積変更部242bは、図14と同様のものである。それ以外の取付部材20は、例えば、照射領域にマイクロ波を導入するための取付部材20-41と、金属の平板である取付部材20-43、20-44、20-47などであってもよい。
【0066】
制御部44は、容積変更部242bの移動機構59を制御することによって照射領域の容積を変更し、測定部39によって測定される反射波の強度が小さくなるようにする。そのため、制御部44は、一例として、マイクロ波発生器40によるマイクロ波の発生が開始された後に、容積変更部242bを制御して照射領域の容積を変更可能な範囲における最小値から最大値まで変更させ、その際に測定部39からマイクロ波の反射波の強度を取得してもよい。そして、制御部44は、マイクロ波の反射波の強度が最小になる照射領域の容積を特定し、その特定した容積となるように容積変更部242bを制御してもよい。このように、反射波の強度が小さくなることによって、照射領域において共振周波数でのマイクロ波の照射が行われることになり、照射対象物への効率的なマイクロ波の照射を実現することができる。なお、照射領域の容積の制御に関する他の一例として、制御部44は、反射波の強度が局所的に最小となるように照射領域の容積を制御してもよい。具体的には、制御部44は、反射波の強度が小さくなるように、照射領域の容積を少しずつ増加または減少させ、反射波の強度が最小となった時点で、その制御を終了してもよい。
【0067】
図17は、照射領域からの反射波の強度に基づいて、マイクロ波の周波数を制御するマイクロ波照射装置2の一例を示す模式図である。図17において、マイクロ波照射装置2は、キャビティ1と、キャビティ1の照射領域からのマイクロ波の反射波の強度を測定する測定部39と、所定の周波数範囲における任意の周波数のマイクロ波を発生させることができるマイクロ波発生器40と、導波管41と、測定部39から反射波の強度を受け取り、その強度が小さくなる周波数のマイクロ波が発生されるように、マイクロ波発生器40を制御する制御部45とを備える。キャビティ1の複数の取付部材20には、例えば、照射領域にマイクロ波を導入するための取付部材20-41と、金属の平板である取付部材20-43、20-44、20-46、20-47などが含まれてもよい。
【0068】
制御部45は、一例として、マイクロ波発生器40によるマイクロ波の発生が開始された後に、マイクロ波発生器40を制御して、マイクロ波の周波数を変更可能な範囲における最小値から最大値まで変化させ、その際に測定部39からマイクロ波の反射波の強度を取得してもよい。そして、制御部45は、マイクロ波の反射波の強度が最小になる周波数を特定し、その特定した周波数のマイクロ波が発生されるようにマイクロ波発生器40を制御してもよい。このように、反射波の強度が小さくなることによって、照射領域において共振周波数でのマイクロ波の照射が行われることになり、照射対象物への効率的なマイクロ波の照射を実現することができる。なお、マイクロ波の周波数の制御に関する他の一例として、制御部45は、反射波の強度が局所的に最小となるようにマイクロ波の周波数を制御してもよい。具体的には、制御部45は、反射波の強度が小さくなるように、マイクロ波の周波数を少しずつ増加または減少させ、反射波の強度が最小となった時点で、その制御を終了してもよい。
【0069】
また、照射領域の容積の変更以外によって照射領域におけるマイクロ波の電界分布が変更された場合にも、共振周波数及び反射波の強度は変化する。そのため、図14図16において、キャビティ1は、照射領域におけるマイクロ波の電界分布を変更する分布変更部を有する取付部材20を有していてもよく、制御部42は、照射領域に導入されるマイクロ波の周波数が共振周波数となるように分布変更部を制御してもよく、制御部44は、反射波の強度が小さくなるように分布変更部を制御してもよい。分布変更部は、一例として、容積変更部242bであってもよく、図5Dで示される、板状部材58を移動可能なものであってもよく、スリースタブチューナ、またはEHチューナなどのマイクロ波のチューナであってもよく、照射領域におけるマイクロ波の電界分布を変更することができるその他の構成であってもよい。制御部42、44による分布変更部の制御は、容積変更部242bに対する制御と同様に行われてもよい。一例として、制御部42、44は、分布変更部を制御して照射領域におけるマイクロ波の電界分布を変更させ、その際にマイクロ波の強度が最大になる電界分布、または反射波の強度が最小になる電界分布を特定し、その特定した電界分布となるように分布変更部を制御してもよい。このように、分布変更部を制御することによっても、照射領域において共振周波数によるマイクロ波の照射を実現することができる。
【0070】
なお、図14図17では、立方体形状のキャビティ1が用いられる場合について説明したが、他の形状のキャビティ1が用いられてもよい。また、図14図17のキャビティ1において、任意の取付部材20については、図14図17で示されたもの以外が用いられてもよい。
【0071】
以上のように、本発明の一実施形態によるキャビティ1は組立式であるため、任意の個数のフレーム10、13を組み合わせることによって、所望の内容積を有するキャビティ1を構成することができる。また、所望の機能を有する取付部材20をフレーム10、13に取り付けることによって、所望の機能を有するキャビティ1を構成することもできる。また、キャビティ1は組立式であるため、不要になった際には分解することができ、分解後のフレーム10、13、及び取付部材20は、他のキャビティ1を組み立てるための構成要素として再利用することができる。また、キャビティ1が、照射領域の容積を変更するための取付部材20を有する場合には、その取付部材20によって照射領域の容積を変更することも可能である。
【0072】
また、本発明の一実施形態によるキャビティ1が有するフレーム10、13の2以上の開口部の形状及びサイズが同じである場合には、取付部材20の形状及びサイズを揃えることができ、用意する取付部材20の形状及びサイズのバリエーションを減らすことができる。
【0073】
また、本発明の一実施形態によるキャビティ1では、照射領域におけるマイクロ波の電界分布を変更することによって、または発生されるマイクロ波の周波数を変更することによって、共振周波数によるマイクロ波の照射を実現することができ、照射対象物に効率的にマイクロ波を照射することができるようになる。
【0074】
また、以上の実施形態は、本発明を具体的に実施するための例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲及び均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 キャビティ
2 マイクロ波照射装置
10、13 フレーム
11、11-1~11-12、14、14-1~14-11 フレーム部材
20、20-1~20-8、20-11~20-13、20-21、20-22、20-31~20-33、20~41~20-47 取付部材
30 連結部材
39 測定部
40 マイクロ波発生器
42、43、44、45 制御部
【要約】
【課題】マイクロ波の照射領域の内容積を変更することができるキャビティを提供する。
【解決手段】内部にマイクロ波の照射領域を有する組み立て式のキャビティ1は、多面体の少なくとも一部の辺に沿った複数のフレーム部材11-1~11-12を有するフレーム10と、フレーム10の複数の開口部12-1~12-6をそれぞれ塞ぐように着脱可能に取り付けられた複数の取付部材20-1~20-6とを備える。複数の取付部材20-1~20-6は、照射領域にマイクロ波を導入するための取付部材20-2を含む。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17